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JP2015126155A - 薄膜キャパシタ - Google Patents

薄膜キャパシタ Download PDF

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JP2015126155A JP2013270787A JP2013270787A JP2015126155A JP 2015126155 A JP2015126155 A JP 2015126155A JP 2013270787 A JP2013270787 A JP 2013270787A JP 2013270787 A JP2013270787 A JP 2013270787A JP 2015126155 A JP2015126155 A JP 2015126155A
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Abstract

【課題】耐圧性能の低下を防止した薄膜キャパシタを提供する。
【解決手段】下部電極2と、下部電極上に設けられた誘電体層3と、誘電体層上に形成された上部電極4とを備え、誘電体層の一部に含まれる欠陥6を内包する絶縁体構造物5を有した薄膜キャパシタ1とする。絶縁体構造物の最外部はテーパー断面形状を有する。絶縁体構造物のテーパー断面形状は、(1)絶縁体構造物の最外部であってかつ絶縁体構造物の最大高さの50%の位置に接する接線と、(2)誘電体層と上部電極との界面である線と、が成す角度が25度よりも小であるテーパー断面角度を有している。また、絶縁体構造物の最外部は欠陥の端部と接しておらず、欠陥の端部から絶縁体構造物の最外部までの距離が、誘電体膜の厚みの20倍以上150倍以下となっている。
【選択図】図1

Description

本発明は薄膜キャパシタに関する。
近年の各種電子機器では、電子部品を実装するスペースが縮小される傾向にある。このためキャパシタ(いわゆる「コンデンサ」をいう。)では素子の低背化が要求されている。
キャパシタの低背化には誘電体層を薄くすることが有効である。誘電体層厚を薄くしたキャパシタとして、スパッタリング法等の薄膜形成技術を用いて誘電体層を形成したキャパシタ(以下、「薄膜キャパシタ」という。)が知られている(特許文献1参照。)。特許文献1に記載の薄膜キャパシタは、ベース基板上に、第1の電極層、誘電体層、第2の電極層をこの順に積層して形成されている。
従来の薄膜キャパシタでは、誘電体層厚を薄くしていくと、誘電体層に欠陥が生じて短絡不良が発生したり、リーク電流が増加したり、耐電圧が低下したりするといった問題があった。ここで「欠陥」とは、誘電体層上や誘電体層内部に存在する、異物や誘電体のクラック、ピンホールなどのような誘電体の正常な状態とは異なる部位のことをいう。
特許文献1では、短絡不良の発生、リーク電流の増加、耐電圧の低下という問題は、誘電体層に存在するピンホール部や結晶粒界に起因して発生するとの考えを示している。特許文献1は、この問題の解決手段として、誘電体層のピンホール部や結晶粒界と第1の電極層の間に、第1の電極層を構成する材料を酸化させて絶縁層を形成する技術を開示している。
特許文献2は、下層の導体パターン上に、絶縁層または低誘電体層を積層し、この絶縁層等の上に上層の導体パターンを積層してなる多層配線基板における絶縁層等の欠損部分を補修する技術を開示している。この技術では、絶縁層等の形成後に、下層の導体パターンを一方の電極とした電着法を用いて、絶縁層等の欠損部分に、エポキシ樹脂等の絶縁性材料を付着させている。
特許文献3は、誘電体層のピンホール部などに対して電気泳動法を用いた樹脂絶縁物を形成する製造方法を開示している。
特開2002−26266号公報 特開2002−185148号公報 特開2008−160040号公報
特許文献1乃至3の発明者らが開示するように、誘電体層の欠陥をなんらかの絶縁体構造物でコーティングし、耐圧性能を向上させようとする技術は知られている。しかし、本発明者らはこのようなコーティングをおこなっても薄膜キャパシタに耐圧性能が十分に得られない場合があることを見いだした。
例えば、絶縁体構造物最外部が急峻なテーパー断面角度を有する場合は、あるいは、絶縁体構造物の端部から欠陥の端部までの距離を近接させざるを得ない場合は、絶縁体構造物に蓄えられた電荷が、絶縁体構造物と誘電体層との界面を伝わって欠陥に達してしまい、薄膜キャパシタの耐圧は低下する。
本発明は、上記知見に鑑みてなされたものであり、耐圧性能を向上させた薄膜キャパシタを提供することを目的とする。
上記の課題を解決する薄膜キャパシタは、下部電極と、下部電極上に設けられた誘電体層と、誘電体層上に形成された上部電極とを備える。薄膜キャパシタの誘電体層には欠陥が含まれている。薄膜キャパシタの誘電体層と上部電極層との界面には絶縁体構造物が形成されている。この絶縁体構造物は、欠陥を上部電極に対して露出しないよう内包する。また、絶縁体構造物の断面構造は、(1)絶縁体構造物の端部であってかつ絶縁体構造物の最大高さの50%の位置に接する接線と、(2)誘電体層と上部電極との界面である線と、が成す角度(以下、これを「テーパー断面角度」という。)が25度よりも小となる、なだらかなテーパー断面角度を有している。薄膜キャパシタをこの構造とすることにより、絶縁体構造物と誘電体層との界面における電荷の移動を抑制する効果が得られる。この効果の原因は必ずしも明らかではないが、発明者らは、第一には絶縁体構造物の最外部と欠陥とが乖離しているため絶縁体構造物と誘電体層との界面を移動する電荷が欠陥に至る前に消費されること、第二に絶縁体構造物の最外部がなだらかな形状を有しているため電界集中が生じにくくなっていること、これら二つによるものと考えている。この効果の結果、本願発明の実施により薄膜キャパシタの短絡不良を防止し、充分な容量等の特性を確保することができる。このような絶縁体構造物は、電気泳動法を用いた電着樹脂の形成によって実現される。また、電気泳動法によれば、電流リークの原因となる欠陥に対して選択的に絶縁体構造物を形成できる。
欠陥の端部から絶縁体構造物の最外部までの最短距離は、誘電体層の厚みの20倍以上150倍以下である。絶縁体構造物の最外部に蓄積された電荷は、誘電体層の厚さ方向(電気抵抗値R1を有する)と、絶縁体構造物と誘電体層との界面方向(電気抵抗値R2を有する)と、に移動する可能性がある。本発明者らは、シミュレーションおよび実験を通じてこれらの電気抵抗を検討した。抵抗値R1とR2との関係は、誘電体層および絶縁物構造体の材料種類によって変動はあるものの、おおむね抵抗値R1がR2の約150倍であった。欠陥の端部から絶縁体構造物の最外部までの最短距離(以下、この距離を「Lmin」と表記する。)が、誘電体層の厚みの150倍を超えた場合、薄膜キャパシタに短絡やリーク電流が生じる確率が増加する。これは絶縁体構造物の最外部に蓄積した電荷が、相対的に電気抵抗が低い誘電体層の厚み方向へ流れようとするためと考えられる。薄膜キャパシタ製品の見地からも、絶縁体抵抗物の大きさは小さいほうが好ましい。面積が大きいと薄膜キャパシタの容量を損なう傾向があるためである。また、薄膜キャパシタに微細パターニングを施す場合に樹脂が障害となる場合がある。ただし、Lminが誘電体層の厚みの20倍を下回った場合も、薄膜キャパシタに短絡やリーク電流が生じる確率が増加する。これは平面方向での電荷消費が十分でなく欠陥に電荷が到達してしまうためと考えられる。
テーパー断面角度は、1度以上10度以下であることが好ましい。10度を超える角度の場合は、最外部での電荷の蓄積が大きくなり短絡やリーク電流が生じる可能性がある。また、1度未満の角度の場合は、膜の密着不良が発生する場合があり、電荷の蓄積が広範囲におよぶため、やはり短絡やリーク電流が生じる可能性がある。
本発明の薄膜キャパシタによれば、短絡不良を防止した薄膜キャパシタを提供することができる。
本発明の実施形態に係る薄膜キャパシタを示した模式断面図である。 本発明の実施形態に係る電着部分の光学顕微鏡による観察像である。 本発明の実施形態に係る電着部分のSEM(走査型電子顕微鏡)による断面観察像である。 本発明の実施形態に係る電着装置の概略図である。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態における薄膜キャパシタの断面図である。薄膜キャパシタ1は、下部電極2、下部電極2上に形成された誘電体層3、さらにその上に形成された上部電極4により構成されている。
本実施形態における下部電極2の材料は、公知の導電性材料を適宜選択することができる。公知の導電性材料とは、たとえば、金属、金属酸化物、導電性有機材料などをいう。特に、下部電極2は低電気抵抗であることが望ましく、機械的強度が高いことが望ましいため、金属材料を用いることが好ましい。中でも、NiやCuは電気抵抗の低い比較的強靭な金属材料であるため好ましい。特に、高温負荷信頼性および耐湿負荷信頼性の見地から、少なくともNiを含んだ導電体であることが望ましい。ここでいうNiを含んだ導電体とは純Ni(Ni99.9%以上)のこと、もしくはNi系の合金のことをいう。Ni系の合金の場合、例えばPt、Pd、Ir、Ru、Rhなどの貴金属元素を含むことが望ましく、その含有量は50wt%以下が望ましい。このような含有率の範囲内であれば、純Niを使用した場合と同等な薄膜キャパシタ1の高温負荷信頼性および耐湿負荷信頼性が得られる。
本実施形態における下部電極2の形態は、金属を含む導電性の箔、金属を含む焼結体あるいは任意の基板上に形成された導電性薄膜など、各種の形態を選択することができる。下部電極2は、特に金属多結晶体よりなるNi金属箔であることが好ましい。金属箔にすることで、誘電体層との熱膨張係数の差を小さくすることが可能となり、薄膜キャパシタ1の容量の減少を抑制することが可能となる。導電性薄膜としては、例えば、Si基板やセラミック基板(図示せず)の上に、下部電極2としてスパッタリングや蒸着等によってNi電極層を形成して用いてもよい。このような形態の場合、基板は誘電体層3との熱膨張係数差が小さな材料を選択することが望ましい。基板には、例えばNi膜つきのSi基板、Ni膜つきのセラミック基板などを用いることができる。これにより、熱膨張係数差に起因する薄膜キャパシタ1の容量低下を抑制することができる。
本実施形態における下部電極2の形態は、さらに下部電極2と誘電体層3との間には異なる導電性材料を介在させたものであってもよい。あるいは、多層電極構造であってもよい。多層電極構造としては、誘電体層3と接する面側にNi電極層を配置した多層電極膜とすることができる。このような多層電極層は、例えばCu金属箔にNi電極層をスパッタリングや蒸着等によって形成し積み重ねた構造であってもよい。ただし、Ni電極層と誘電体層3とが接している場合は、薄膜キャパシタ1の高温負荷信頼性および耐湿負荷信頼性がさらに向上する。
本実施形態における誘電体層3の材料は、誘電率の大きいペロブスカイト型の酸化物誘電体が好ましい。ペロブスカイト型の誘電体の中でも、鉛を含まないチタン酸バリウム系の誘電体が環境保全の見地から好ましい。チタン酸バリウム系の誘電体の場合、Baサイトの一部をCa、Srなどのアルカリ土類で置換したものを用いてもよい。またTiサイトの一部をZr、Sn、Hfなどの元素で置換したものを用いてもよい。さらに、この誘電体に希土類元素やMn、V、Nb、Taなどを添加してもよい。
本実施形態における誘電体層3の形成は、薄膜形成で通常使用される方法、例えば溶液の塗布、スパッタリング、蒸着、PLD(Pulse Laser Deposition)、CVDなど適宜用いることができる。
本実施形態における誘電体層3の構造は、膜厚が1000nm以下の薄膜であることが好ましい。1000nmを超える場合、単位面積あたりの容量値が減少してしまう虞がある。また膜厚の下限は特にないが、薄くなるに従い絶縁抵抗値が小さくなる。そのため50nm以上は必要と考えられる。以上の絶縁抵抗値と容量の関係を考慮し、薄膜キャパシタ1の好ましい誘電体層3の膜厚の範囲は250nmから1000nmであると考えられる。なお、本実施形態における誘電体層3には、確率論的に回避困難な欠陥が内包されている。
本実施形態では、誘電体層3を形成した後に絶縁体構造物5を形成する。誘電体層3の表面は、絶縁体構造物5を形成する前に表面処理あるいは物理洗浄等をおこなっておくことが好ましい。表面処理としては酸やアルカリによるエッチング、プラズマによるエッチングなどをおこなってもよい。物理洗浄としては超音波洗浄や研磨などをおこなってもよい。これらの処理により、誘電体層3と絶縁体構造物5との界面状態が良好になるため長期的に電気特性が安定となる。また、後述する絶縁体構造物5の形成工程において、絶縁体構造物5の形成を誘電体層3の欠陥に対して集中させるよう、選択性を発揮させることができる。
本実施形態における絶縁体構造物5の材料は、高電気抵抗の樹脂材料であることが好ましい。絶縁体構造物5そのものが高電気抵抗の柔軟な構造となることにより、完成後の薄膜キャパシタ1の使用を通じて誘電体層3との界面の電気状態が変化しにくくなるためである。このような樹脂材料は、公知の高電気抵抗の樹脂材料から適宜選択することができる。具体的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、フェノール樹脂、PEEK樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料の中から選択することができる。これらの樹脂材料は、単独で、あるいは、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態における絶縁体構造物5の構造は、誘電体層3の欠陥を略中心においた絶縁体のパッチ状構造となっている。本実施形態に係る代表的な絶縁体構造物5の形状を図2および図3に示す。図2は、本実施形態の絶縁体構造物5を上面から見た光学顕微鏡による観察像である。誘電体層3には不純物粒子が付着後に剥離してできた欠陥6が存在するところ、絶縁体構造物5は、欠陥6が略中心に位置するような略円形のパッチ形状として誘電体層3の上に形成されている。欠陥6の端部と絶縁体構造物5の最外部とが形成するLminは、図2のような平面の観察写真から読み取ることができる。本実施形態の絶縁体構造物5は、図2中の矢印に示すとおり40μmである。欠陥6が不規則な形状、例えば比較的長距離に及ぶ傷などであった場合、欠陥の形状に応じて長円状や曲線状のパッチ形状として形成される場合がある。その場合のLminは、欠陥6の端部と絶縁体構造物5の最外部との最短距離を読み取ることで定義できる。読み取るべき位置は、絶縁体構造物5から欠陥6の方向へ、最も電荷が流れやすい箇所として経験的に判断することができる。図3は、本実施形態の絶縁体構造物5のSEM(走査型電子顕微鏡)による断面観察像である。断面観察は、欠陥6を中心に下部電極2、誘電体層3および絶縁体構造物5を切断した断面についておこなっている。図2および図3に例示する本実施形態の絶縁体構造物5の一例では、上述のとおりLminが40μmであり、誘電体層3の膜厚が1μmであるため、誘電体層3の膜厚とLminとの比率は40倍となる。本発明の実施による薄膜キャパシタの絶縁耐圧低下を、より効果的に抑制できる範囲である。特に特徴的な点として、絶縁体構造物5が、(1)欠陥6を完全に覆うように形成された膜厚の均一な薄層であること、(2)パッチ形状端部においてなだらかなテーパー断面角度を有すること、がわかる。特に(2)については、誘電体層表面に対して約5度程度のテーパー断面角度となっている。
本実施形態における絶縁体構造物5に見られる上記(1)と(2)とのごとき独特の形状は、純水を溶媒とし、上記の樹脂材料のモノマーを分散させて実施する電気泳動法により、誘電体層3の表面に樹脂材料を電着して形成することができる。ただし、本実施形態の電気泳動法は、従来の樹脂材料の電着形成とは異なる装置の構造であり、形成条件である。図4に、本発明の実施形態に係る電着装置の概略図を示す。具体的には、(A)電気泳動法に用いるアノード電極8を、電極本体であるSUS系材料表面に、アルミナやシリカあるいは酸化鉄等の酸化物からなる不動体被膜を形成した構造とすること、(B)電着溶液中の樹脂材料含有量を、0.1wt%以上1.0wt%以下の低濃度とする製造条件を用いること、である。
上記の要件(A)と(B)とを組み合わせた電着泳動法によって、本実施形態における絶縁体構造物5の形状が得られる原因は必ずしも明らかではない。本発明者らは、研究を通じて以下のようにメカニズムを推測している。
要件(A)により、電着溶液中の樹脂材料モノマーからの電子引き抜き反応が抑制され、極性モノマーの割合が低下する。極性モノマーは誘電体層3の電界が最大である欠陥6に集まろうとする。他の非極性モノマーは、極性モノマーに引きずられるように誘電体層3の表面に移動するが、欠陥6に吸引されるほどの電気的ポテンシャルを有するわけではないため、欠陥6に到達する前に誘電体層3上に吸着される。非極性モノマーの運動エネルギーは、電着溶液中の集団としてはある分布を持っている。そのため、絶縁体構造物5の形状は、非極性モノマーの運動エネルギー分布に応じた、面方向と厚み方向との広がりをもつ。この結果、本実施形態の絶縁体構造物5は、誘電体層3において、欠陥6を略中心に配して端部がテーパー形状となった略円形のパッチ状形状を呈する。
なお、絶縁体構造物5のテーパー断面角度は電流の強弱によっても変化する。高電流ではテーパー断面角度が大きくなり、低電流ではテーパー断面角度が小さくなる傾向がある。この結果は、極性モノマーが欠陥6に吸引されるポテンシャルが増減することによって非極性モノマーが到達できる誘電体層3の面積も変化するためと考えられる。本実施形態では、樹脂材料の電気泳動法として低い電流(1〜50mA)で電着を実施している。
要件(B)により、電着溶液中の過剰なモノマー会合が抑制される。本実施形態における電気泳動法は、純水の溶媒中に樹脂材料のモノマーを分散させておこなう。この場合、モノマーの濃度が高ければ溶媒中でモノマー同士の会合が起こり、モノマーが集合体として誘電体層3の表面に運ばれる場合がある。集合体としてのモノマーには極性モノマーが含まれうるため、多くのモノマーが欠陥6の付近に堆積する可能性がある。電着溶液中の樹脂材料含有量を、0.1wt%以上1.0wt%以下の低濃度とすることにより、溶媒中でのモノマーの会合確率が低下するため、モノマーが集合体でなく単体で誘電体層3の表面に移動する確率が高くなる。この結果、絶縁体構造物5の形状は、モノマーの運動エネルギー分布のみに応じた、面方向と厚み方向との広がりをもち、欠陥6を略中心に配して最外部がテーパー形状となった略円形のパッチ状形状を呈する。
なお、上記のように電着溶液中の樹脂材料含有量を調整するほか、電着溶液中に適量の分散剤を添加してもよい。このような分散剤には、公知の界面活性剤を適宜用いることができる。特に、界面活性剤であるアルキルグルコシドやポリエチレングリコール、脂肪酸ナトリウムなどを用いることができる。あるいは、超音波撹拌によって樹脂材料のモノマーを分散させてもよい。
本実施形態の薄膜キャパシタ1では、絶縁体構造物5を形成した後に上部電極4を形成する。本実施形態の上部電極4の材料は、公知の導電性材料を適宜選択することができる。公知の導電性材料とは、たとえば、金属、金属酸化物、導電性有機材料などをいい、これらを適宜選択することができる。特に、上部電極4は低電気抵抗であること、機械的強度が高いことが好ましい。そのため、金属を用いることが好ましい。中でもNiやCuは電気抵抗の低い比較的強靭な金属材料であるため好ましい。上部電極4は、Ni電極層あるいはCu電極層の単層からなっていてもよいが、Ni電極層とCu電極層の二層構造であってもよい。上部電極4と誘電体層3あるいは絶縁体構造物5との間には、異なる導電性材料を介在させてもよい。上部電極4にNi電極層を含む場合は、信頼性の見地から、Ni電極層側が誘電体層3に接触していることが望ましい。上部電極4の全部または一部にNi電極層を用いる場合、下部電極層1と同様に純NiもしくはNi系の合金を用いることができる。Ni系の合金である場合、例えばPt、Pd、Ir、Ru、Rhなどの貴金属元素を含むことが望ましく、その含有量は50wt%以下が望ましい。さらにその厚みは、0.1μm以上2.0μm以下が好ましい範囲である。
本実施形態のNi電極層の上には、Cu電極層が形成されていてもよい。ここでいうCu電極層は純Cu(Cu99.9%以上)、もしくはCu系の合金が好ましい。合金の場合、例えばPt、Pd、Ir、Ru、Rhなどの貴金属元素を含むことが望ましく、その含有量は50wt%以下が望ましい。CuはAuやAgと抵抗率が同等で、工業的に使用し易い特徴がある。そのため電子機器の配線に多く使用されている。またその抵抗率が比較的小さいため、薄膜キャパシタの電極層として使用する場合、等価直列抵抗(ESR)を減少させるといった効果がある。
上部電極4の形成にあたっては、薄膜形成で通常使用される方法、例えば溶液の塗布、スパッタリング、蒸着、PLD(Pulse Laser Deposition)、CVDなど適宜用いることができる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
100mm×100mmの大きさのNi金属箔上に誘電体層(BaTiO系誘電体)をスパッタリング法により800nmの厚みで成膜した。その後アニールし、Ni金属箔上の誘電体層を結晶化させた。絶縁物構造体を形成する前処理として、スクラブ洗浄により、異物などを除去した。
結晶化した誘電体層を備えたNi金属箔を、アノード電極としてSUS系材料にアルミナ不動体被膜を形成した電極を備え、電解液として純水にイミド系樹脂を1wt%含有した電解液を供えた電着槽に浸漬した。Ni箔を電着液に浸漬した状態で、電着の状況を目視観察しながら電流35mAで電圧を適宜制御しながら電着を実施し、200℃のオーブンでキュアさせて絶縁体構造物を形成した。ここまでの試料から複数の絶縁体構造物の部分を分取し、外観を光学顕微鏡で、断面を電子顕微鏡でそれぞれ観察したところ、絶縁体構造物の形状は、最大膜厚が1.2μm、テーパー断面角度が18度、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が36μm(誘電体厚みの約30倍)であった。その後、上部電極層としてNiとCuとを、この順でそれぞれスパッタリング法により成膜した。
上部電極層形成後、上部電極層のパターニングを行い、340℃の真空中でアニールを行った。このアニールは、Cu電極層の粒子成長のために行った。パターニングを実施した5mm×5mmのキャパシタ素子100個について、以下に示す容量値、絶縁抵抗値の測定を行った。
容量値はAgilent社製LCRメーター4284Aを使用し、1kHz、1Vrms、室温(25℃)にて測定を行った。絶縁抵抗値はAgilent社製4339B高抵抗計を使用し、DC4V、室温(25℃)での測定を行った。
その結果、測定点の90%(90/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。
(実施例2)
ポリイミド濃度0.8%、電流30mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、測定を実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が42μm(誘電体厚みの35倍)、テーパー断面角度は15度であり、測定点の93%(93/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。
(実施例3)
ポリイミド濃度0.6%、電流25mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、測定を実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が48μm(誘電体厚みの40倍)、テーパー断面角度は10度であり、測定点の98%(98/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。
(実施例4)
ポリイミド濃度0.5%、電流20mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、測定を実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が60μm(誘電体厚みの50倍)、テーパー断面角度は8度であり、測定点の100%(100/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。
(実施例5)
ポリイミド濃度0.4%、電流15mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、測定を実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が84μm(誘電体厚みの70倍)、テーパー断面角度は5度であり、測定点の99%(99/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。
(実施例6)
ポリイミド濃度0.3%、電流10mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、測定を実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が108μm(誘電体厚みの90倍)、テーパー断面角度は3度であり、測定点の97%(97/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。
(実施例7)
ポリイミド濃度0.2%、電流5mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、測定を実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が120μm(誘電体厚みの100倍)、テーパー断面角度は1度であり、測定点の94%(94/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。
(実施例8)
ポリイミド濃度0.1%、電流2mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、測定を実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が144μm(誘電体厚みの120倍)、テーパー断面角度は0.5度であり、測定点の91%(91/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。
(実施例9)
ポリイミド濃度3%、電流50mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、測定を実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が24μm(誘電体厚みの20倍)、テーパー断面角度は23度であり、測定点の75%(75/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。
(実施例10)
ポリイミド濃度2%、電流40mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、測定を実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が30μm(誘電体厚みの25倍)、テーパー断面角度は21度であり、測定点の85%(85/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。
(実施例11)
ポリイミド濃度0.08%、電流1mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、測定を実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が276μm(誘電体厚みの130倍)、テーパー断面角度は0.4度であり、測定点の83%(83/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。
(実施例12)
ポリイミド濃度0.06%、電流0.5mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が180μm(誘電体厚みの150倍)、テーパー断面角度は0.3度であり、測定点の77%(77/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。
(比較例1)
ポリイミド濃度10%、電流80mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が12μm(誘電体厚みの10倍)、テーパー断面角度は28度であり、測定点の3%(3/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。これは、平面方向から電荷が誘電体層の欠陥に流れてしまったことが原因と考えられる。
(比較例2)
ポリイミド濃度0.8%、電流0.3mAで電着した以外は実施例1と同様に作製、実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が240μm(誘電体厚みの200倍)、テーパー断面角度は0.3度であり、測定点の5%(5/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。これは、絶縁体構造物が大き過ぎたため、電荷が相対的に抵抗の低い誘電体層の欠陥に流れてしまったことが原因と考えられる。
(比較例3)
表面(誘電体層の方向を向いた面)に不導体皮膜を形成しないアノード電極を用いた以外は実施例1と同様に作製、実施した。その結果、絶縁体構造物の最外部から欠陥の端部までの最短距離が6μm(誘電体厚みの約5倍)、テーパー断面角度は43度であり、測定点の1%(1/100pcs)で、容量値2.5×10−7F以上、絶縁抵抗値5×10+8Ω以上の良品が得られた。これは、テーパー断面角度が急だったため、絶縁体構造物の最外部を起点として、電荷が誘電体層の欠陥に流れてしまったことが原因と考えられる。
以上説明した一連の実施例と比較例とを表1にまとめる。
本発明者らは、実施例と比較例とを通じ、本発明の実施により得られる薄膜キャパシタは、良好な耐圧性能を有していることを確認した。
1 薄膜コンデンサ
2 下部電極
3 誘電体層
4 上部電極
5 絶縁体構造物
6 誘電体層の欠陥
7 電着装置
8 アノード電極
9 カソード電極
10 電着用試料(下部電極2および誘電体層3を設けた被成膜体)
11 電着槽

Claims (2)

  1. 下部電極と、前記下部電極上に設けられた誘電体層と、前記誘電体層上に形成された上部電極とを備え、
    前記誘電体層は欠陥を含み、
    前記誘電体層と前記上部電極層との界面には絶縁体構造物が形成されており、
    前記絶縁体構造物は、前記欠陥を前記上部電極に対して露出しないよう内包し、
    前記絶縁体構造物の断面構造は、(1)絶縁体構造物の端部であってかつ絶縁体構造物の最大高さの50%の位置に接する接線と、(2)誘電体層と上部電極との界面である線と、が成す角度が1度以上25度よりも小であるテーパー断面角度を有しており、
    前記欠陥端部から絶縁体構造物の最外部までの距離は、誘電体膜の厚みの20倍以上150倍以下である
    ことを特徴とする薄膜キャパシタ。
  2. 前記テーパー断面角度は1度以上10度以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜キャパシタ。
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