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JP2015123605A - 延伸フィルムの巻回体の製造方法 - Google Patents

延伸フィルムの巻回体の製造方法 Download PDF

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JP2015123605A
JP2015123605A JP2013267704A JP2013267704A JP2015123605A JP 2015123605 A JP2015123605 A JP 2015123605A JP 2013267704 A JP2013267704 A JP 2013267704A JP 2013267704 A JP2013267704 A JP 2013267704A JP 2015123605 A JP2015123605 A JP 2015123605A
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Kyosuke Inoue
恭輔 井上
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Abstract

【課題】ゲージバンド及び横ダン等の、連続的な厚みムラに起因する不具合が抑制され、且つ、配向角の変動が少ない、延伸フィルムの巻回体の製造方法を提供する。【解決手段】延伸フィルムの巻回体の製造方法であって、長尺の延伸前フィルムを供給する供給工程と、前記長尺の延伸前フィルムをオシレートさせるオシレーション工程と、オシレートされた状態の前記長尺の延伸前フィルムの両端部をトリミングする第1のトリミング工程と、前記トリミングされた長尺の延伸前フィルムを延伸して長尺の延伸フィルムを形成する延伸工程と、前記長尺の延伸フィルムをロール状に巻き取って長尺の延伸フィルムの巻回体を得る巻回工程とを有する、延伸フィルムの巻回体の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、延伸フィルムの巻回体の製造方法に関する。
光学フィルム等のフィルムは、通常、製造効率の向上のため、長尺のフィルムとして製造される。さらに、ある種の長尺の光学フィルムは、所望の光学特性を発現するため、フィルムの長手方向に対して所定の方向に厳密に制御された配向角を有することが求められる。このような長尺の光学フィルムは、溶融押出成形法、溶液キャスト法等の方法により連続的に製造され、さらに、必要に応じて延伸等の処理が施され、その後、ロール状に巻き取られ巻回体にされ、この巻回体の状態で保存及び運搬されるのが一般的である。
このように、溶融押出成形法、溶液キャスト法等の方法で長尺の光学フィルムを製造した場合、得られるフィルムに連続的な厚みムラが形成されることがある。例えば、フィルムの幅方向のある位置において相対的に厚い部分が、フィルムの長手方向に連続的に形成され、フィルムの幅方向の別のある位置において相対的に薄い部分が、フィルムの長手方向に連続的に形成される、という現象が起こりうる。このような連続的な厚みムラがあるフィルムを巻回体とした場合、厚い部分が重なった状態で巻回されることにより、厚い部分に相当する位置に、ゲージバンドと呼ばれる、帯状に盛り上がった、径の太い部分が発生しうる。一方、薄い部分に相当する位置は、巻回が潰れた状態となることため、巻回体表面に、横ダンと呼ばれる、巻回体の軸方向に略平行な方向に現れるスジが発生しうる。ゲージバンド及び横ダンが存在する状態で巻回体を保存すると、フィルムの変形を招き、光学フィルムとしての品質が低下しうる。そのため、このような不具合を低減することが求められる。
ゲージバンド及び横ダンの発生を低減する方法として、巻回体の製造において、オシレーションを行なうことが知られている。即ち、巻回体の製造工程において、フィルムを幅方向にオシレートすることにより、厚みムラを分散させることが知られている(特許文献1及び2)。特に、特許文献1では、延伸処理をした後、長尺の延伸フィルムの両端部をトリミングする前に、オシレーションを行い、オシレートされた状態でトリミングされた長尺のフィルムを得ることが記載されている。
特開2002−87690号公報 特開2010−150041号公報
しかしながら、長尺の延伸フィルムの製造においてかかるオシレーションを行なった場合、得られるフィルムの配向角に変動が生じるという問題点がある。かかる配向角の変動は、厳密な配向角の制御が求められる光学フィルムの製造においては、特に大きな問題となる。
したがって、本発明の目的は、ゲージバンド及び横ダン等の、連続的な厚みムラに起因する不具合が抑制され、且つ、配向角の変動が少ない、延伸フィルムの巻回体の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上述課題を解決するため検討した結果、オシレーションを、延伸工程の前に行うことを着想した。本発明者は、当該着想に基づいてさらに検討した結果、オシレーション及びトリミングを行った後、フィルムを延伸工程に供し、その後巻回工程を行うことにより、配向角の変動を低減させながら、延伸後の巻回における連続的な厚みムラに起因する不具合を抑制しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、下記〔1〕〜〔8〕が提供される。
〔1〕 延伸フィルムの巻回体の製造方法であって、
長尺の延伸前フィルムを供給する、供給工程と、
前記長尺の延伸前フィルムをオシレートさせる、オシレーション工程と、
オシレートされた状態の前記長尺の延伸前フィルムの両端部をトリミングする、第1のトリミング工程と、
前記トリミングされた長尺の延伸前フィルムを延伸して、長尺の延伸フィルムを形成する、延伸工程と、
前記長尺の延伸フィルムをロール状に巻き取って、長尺の延伸フィルムの巻回体を得る、巻回工程と
を有する、延伸フィルムの巻回体の製造方法。
〔2〕 前記延伸工程の後から前記巻回工程までにおいて、オシレーションを実質的に行わない、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 前記延伸工程の後、前記巻回工程の前に、前記長尺の延伸フィルムの両端部をトリミングする第2のトリミング工程をさらに含む、〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 前記供給工程で供給する、前記長尺の延伸前フィルムが、溶融押出成形法で形成されたものである、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔5〕 前記第1のトリミング工程後に、前記トリミングされた長尺の延伸前フィルムをロール状に巻き取って、予備巻回体を得る、予備巻回工程をさらに含み、
前記予備巻回工程で得られた予備巻回体から、前記トリミングされた長尺の延伸前フィルムを繰り出し、これを前記延伸工程に供給する、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔6〕 前記第1のトリミング工程における、前記長尺の延伸前フィルムのオシレートされる振幅が、20〜200mmである、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔7〕 前記長尺の延伸フィルムの少なくとも一方の表面の表面粗さRaが、5〜50nmである、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔8〕 前記長尺の延伸フィルムの少なくとも一方の表面側の層が、弾性体粒子を含むメタクリル樹脂からなる、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の製造方法。
本発明の延伸フィルムの巻回体の製造方法によれば、配向角の変動が少ない延伸フィルムの巻回体を、ゲージバンド及び横ダン等の、連続的な厚みムラに起因する不具合が抑制された状態で製造することができる。
図1は、本発明の製造方法を実施するための装置及びそれを用いた本発明の製造方法の実施の一例を概略的に示す側面図である。 図2は、図1に示す繰り出し巻回体110を拡大して示す斜視図である。 図3は、図1に示す第1のトリミング装置120を拡大して示す斜視図である。 図4は、図1に示す第1のトリミング装置120を拡大して示す上面図である。 図5は、本発明の製造方法を実施するための装置及びそれを用いた本発明の製造方法の実施の別の一例における、供給工程から予備巻回工程までの部分を概略的に示す側面図である。 図6は、本発明の製造方法を実施するための装置及びそれを用いた本発明の製造方法の実施の別の一例における、予備巻回体から延伸前フィルムを繰り出し、延伸工程以降の工程を行う部分を概略的に示す側面図である。 図7は、任意工程である、延伸フィルムにマスキングフィルムを重ねる工程を示す側面図である。
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明おいて、「略平行」の文言は、正確に平行な場合に加えて、例えば±5°程度の誤差を許容しうることを意味する。
また、以下の説明において、文脈上明らかな場合は、長尺の延伸前フィルム及び長尺の延伸フィルムを、それぞれ単に延伸前フィルム及び延伸フィルムという場合がある。
〔1.概要〕
本発明の延伸フィルムの巻回体の製造方法は、長尺の延伸前フィルムを供給する供給工程と、長尺の延伸前フィルムをオシレートさせるオシレーション工程と、オシレートされた状態の長尺の延伸前フィルムの両端部をトリミングする第1のトリミング工程と、トリミングされた長尺の延伸前フィルムを延伸して長尺の延伸フィルムを形成する延伸工程と、長尺の延伸フィルムをロール状に巻き取って長尺の延伸フィルムの巻回体を得る巻回工程とを有する。
図1は、本発明の製造方法を実施するための装置及びそれを用いた本発明の製造方法の実施の一例を概略的に示す側面図である。図1において、製造装置10は、製造ラインの上流から順に、繰り出し巻回体110を含む供給装置、第1のトリミング装置120、延伸装置130、第2のトリミング装置140及び巻回体160を含む巻回装置を有する。
製造装置10の操作において、繰り出し巻回体110から繰り出されて供給された延伸前フィルム11は、矢印A11方向に搬送され、第1のトリミング装置120において第1のトリミング工程が行われ、それによりその両端部がトリミングされ、トリミングされた延伸前フィルム12となる。トリミングされた延伸前フィルム12は延伸装置130に搬送され、延伸装置130において延伸工程が行われ、それにより延伸フィルム13となる。延伸フィルム13は第2のトリミング装置140に搬送され、第2のトリミング装置140において第2のトリミング工程が行われ、それによりその両端部がトリミングされ、トリミングされた延伸フィルム14となる。トリミングされた延伸フィルム14は、巻回装置により巻き取られて巻回工程が行われ、その結果巻回体160が得られる。
本願においては、フィルムが搬送される方向を単にMD方向ということがある。長尺のフィルムを搬送する場合、搬送されるフィルムの長手方向はMD方向と一致する。また、装置においてMD方向と直交し、搬送されるフィルム面に平行な方向を、TD方向ということがある。長尺のフィルムを搬送する場合、TD方向は、フィルムの幅方向と一致する。
〔2.供給工程及びオシレーション工程〕
供給工程及びオシレーション工程では、長尺の延伸前フィルムを供給し、オシレートさせる。
供給工程で供給する延伸前フィルムとしては、溶融押出成形法、溶液キャスト法等の方法により連続的に形成されたものを用いうる。特に、溶融押出成形法で形成されたものを用いることが好ましい。溶融押出成形法では、フィルムを効率的に製造することができるが、フィルムに連続的な厚みムラが形成されることがある。そこで、溶融押出成形法で形成された長尺の延伸前フィルムを用いて本発明の製造方法を行なうことにより、連続的な厚みムラに起因する不具合の発生を抑制することができ、その結果、高品質な巻回体を効率的に製造することが可能となる。
オシレーション工程の操作は、供給工程の操作と同時に行ないうる。例えば、オシレーション工程の操作は、供給装置中のフィルムの搬送方向に影響する一部の部材、又は供給装置全体を周期的に動かすことにより行いうる。オシレーション工程の操作はまた、供給工程後第1のトリミング工程の前の任意の時点において行なってもよい。例えば、オシレーション工程の操作は、供給装置より下流であって、且つ第1のトリミング装置より上流の任意の位置において、搬送されるフィルムを支持する装置を周期的に動かすことにより行なってもよい。
オシレーション工程を行なう際のオシレーションの方向は、フィルムをTD方向に周期的に移動させるような任意の方向としうる。図1に示す例のように、繰り出し巻回体110から延伸前フィルムを繰り出す場合において、供給工程の操作と同時にオシレーション工程の操作を行う際の、具体的なオシレーションの方向の例を、図2を参照して説明する。図2は、図1に示す繰り出し巻回体110を拡大して示す斜視図である。図2において、繰り出し巻回体110は円筒形の芯111と、その周りに巻回された延伸前フィルム11とを含む。芯111はその軸がTD方向となるよう設置され、軸を中心に回転し、それにより延伸前フィルム11が矢印A11方向に搬送される。
このように操作される繰り出し巻回体110を用いた供給工程において、芯111を、矢印A21に示す通り、軸方向に周期的に動かすことにより、オシレーションを行ないうる。このような操作によれば、供給工程から搬出される延伸前フィルム11の位置が、TD方向に略平行な方向にオシレートされ、それにより、フィルムの搬送ライン上におけるフィルムのオシレーションが達成される。
または、芯111を、その中心点Pを中心にして、矢印A22に示す通り、搬送される延伸前フィルム11の面と略平行な方向に、周期的に角運動させることによっても、オシレーションを行ないうる。このような操作によれば、供給工程から搬出される延伸前フィルム11の搬出される向きが、フィルム面に略平行な方向にオシレートされ、それにより、フィルムの搬送ライン上におけるフィルムのオシレーションが達成される。
オシレーション工程において延伸前フィルムをオシレートさせる振幅は、特に限定されず、第1のトリミング工程において求められる好ましいオシレーションの振幅が得られるよう、適宜調整しうる。通常は、オシレーション工程を行なった直後の振幅より、その下流の第1のトリミング工程における振幅のほうが小さくなりうる。
〔3.第1のトリミング工程〕
第1のトリミング工程では、オシレートされた状態の長尺の延伸前フィルムの両端部をトリミングする。フィルムの端部とは、フィルムの幅方向の端部であり、端部のトリミングとは、フィルムの幅方向の端部を切断して除くことをいう。
図1に示した第1のトリミング装置120によるトリミングの具体的な操作を、図3を参照して説明する。図3は、図1に示す第1のトリミング装置120を拡大して示す斜視図である。実際の操作では、フィルムの両端部をトリミングするが、図示の便宜のため、図3においては、手前側の端部のトリミングのみを図示している。
図3において、トリミング装置120は、矢印A31で示される位置に設けられたカッター(不図示)、カッターによる切断位置においてフィルムを支持する支持ローラー121、及びカッターにより切断された耳21を巻き取り回収する巻取りローラー122を含む。トリミング装置120を用いた第1のトリミングの操作において、矢印A11方向に搬送された延伸前フィルム11は、カッターにより切断され、フィルム幅方向の中央部の、トリミングされた延伸前フィルム12と、耳21とに分けられる。耳21は矢印A32方向に搬送され、巻取りローラー122により巻き取られ、回収される。
第1のトリミング工程においては、長尺の延伸前フィルムのオシレートされる振幅は、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上であり、一方好ましくは200mm以下、より好ましくは60mm以下である。振幅を、前記下限以上とすることにより、一般的な光学用途の長尺の延伸フィルムの製造において、ゲージバンド及び横ダンの発生を、特に良好に低減することができる。また、振幅を前記上限以下とすることにより、歩留まりの高い延伸フィルムの巻回体の製造を行いうる。
「トリミング工程における」フィルムのオシレートされる振幅とは、フィルムの搬送ライン中の、耳を切断する位置においてフィルムがオシレートされる振幅である。さらに、振幅とは、搬送ライン中の耳を切断する位置において、連続的に通過するフィルムの幅方向の中心を観察した際に、かかる中心が、TD方向に周期的に移動する距離の最大値である。
第1のトリミング工程においては、延伸前フィルムのオシレートされる振幅を、図4を参照してより具体的に説明する。図4は、図1に示す第1のトリミング装置120を拡大して示す上面図である。図4においては、図示の便宜のため、フィルムの幅に対する振幅の割合を、実際の態様より大きくして、振幅を強調して示している。
図4において、延伸前フィルム11は、オシレートされながら矢印A11で示される方向に搬送される。延伸前フィルム11が矢印A31で示される切断位置に到達する時点での、延伸前フィルム11の幅方向の中心は、概念的に、波状の破線11Cで示される。かかる破線11Cの振幅は、図4において矢印41で示される長さとなり、これが、第1のトリミング工程において延伸前フィルムのオシレートされる振幅となる。かかる振幅が例えば20mmである場合、延伸前フィルム11の幅方向の中心は、オシレーションの中心から±10mmの範囲で移動する。
また、オシレーションの周期は、破線11Cで描かれる波の周期で示され、オシレーションの周期の長さは、かかる波の1周期が描かれる延伸前フィルムの長さとして示される。かかる破線11Cの周期は、図4において矢印A42で示される長さとなる。オシレーションの周期の長さは、好ましくは50m以上、より好ましくは100m以上であり、一方好ましくは500m以下、より好ましくは300m以下である。オシレーションの周期を、当該範囲内とすることにより、一般的な光学用途の長尺の延伸フィルムの製造において、ゲージバンド及び横ダンの発生を、特に良好に低減することができる。
第1のトリミング工程は、通常、フィルムの幅方向の伸縮を伴わずに行ないうる。従って、延伸前フィルム11の幅方向の中心と、延伸前フィルム11の端部とは略平行にオシレートしうる。従って、延伸前フィルム11の幅方向の中心を観察する代わりに、耳21の幅を観察することによっても、オシレーションの振幅及び周期の長さを測定することができる。
第1のトリミング工程を行なうことにより、トリミングされた延伸前フィルムが得られ、これがさらに搬送されて延伸工程に供給される。図4の例を参照して説明すると、トリミングされた延伸前フィルム12は、端部が直線状になり、見かけ上オシレートされていない状態でMD方向に搬送される。即ち、トリミングされた延伸前フィルム12の中心は、破線12Cで示される通り、MD方向に略平行な直線となる。しかしながら、トリミングされた延伸前フィルム12において、厚みムラは、オシレートされた状態で存在している。例えば、トリミングされた延伸前フィルム12において、ゲージバンドの原因となる相対的に厚い部分は、波状の形状で存在することとなる。これにより、以下の工程でさらなるオシレーションを行なわなくても、ゲージバンド及び横ダンの少ない巻回体を容易に得ることが可能となる。
〔4.延伸工程〕
延伸工程では、トリミングされた長尺の延伸前フィルムを延伸して長尺の延伸フィルムを形成する。
再び図1を参照して説明すると、トリミングされた延伸前フィルム12は、延伸装置130に供給され、ここで延伸される。延伸の態様、延伸の条件、及び延伸に用いる装置は特に限定されず、所望の延伸フィルムが得られるよう適宜設定しうる。延伸の態様の例としては、縦延伸(フィルム長手方向の延伸)、横延伸(フィルム幅方向の延伸)、斜め延伸、及びこれらを組み合わせて逐次又は同時に行う延伸が挙げられる。延伸の倍率は、好ましくは1.5倍以上であり、一方好ましくは5.0倍以下である。延伸装置の具体例としては、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、ローラー延伸機等が挙げられる。
〔5.第2のトリミング工程及びその他の任意の工程〕
本発明の製造方法では、延伸工程の後、巻回工程の前に、任意の工程として、長尺の延伸フィルムの両端部をトリミングする第2のトリミング工程を行ないうる。
延伸工程後の延伸フィルムは、その両端部において、凹凸及び/又は延伸倍率の不規則な部分が存在しうる。この傾向は、延伸工程において、テンター延伸機等の特定の延伸機を用いた場合は特に顕著である。そこで、第2のトリミング工程を行なうことにより、そのような凹凸及び/又は延伸倍率の不規則な部分が存在する部分を除去し、高品質な巻回体を製造することができる。
図1の例を参照して具体的に説明すると、延伸工程により得られた延伸フィルム13は、第2のトリミング装置140に供給され、ここで、カッター(不図示)、支持ローラー141及び巻き取りローラー142により、第1のトリミング装置120と同様のトリミングを行う。これにより、トリミングされた延伸フィルム14を得て、一方耳41は切断し回収することができる。
本発明の製造方法においては、延伸工程の後から巻回工程までにおいて、オシレーションを実質的に行わないことが好ましい。
オシレーションを実質的に行なわないとは、オシレーションの振幅が、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mmm以下となるよう搬送を行うことをいう。オシレーションを実質的に行わないことにより、厳密が配向角が制御された延伸フィルムを容易に得ることができる。
従来技術においては、延伸工程後にオシレーション及びトリミングを行い、ゲージバンド等の発生を低減し且つ歩留まりを高めることが行なわれていた。しかし、そのような延伸工程後のオシレーションを行った場合、配向角の変動の低減が困難であった。しかしながら本願発明者が見出したところによれば、延伸工程前にオシレーション及びトリミングを行うことによって、配向角の変動を低減させながら、延伸後の巻回における連続的な厚みムラに起因する不具合を抑制することができ、さらに、延伸工程の後から巻回工程までにおいて、オシレーションを実質的に行わないことにより、配向角の変動をさらに低減させることができる。
本発明の製造方法においては、巻回工程の前に、延伸フィルムにマスキングフィルムを重ねる工程を行ってもよい。即ち、延伸フィルムにマスキングフィルムを重ね、これらを重ねたまま巻回工程において巻回し、これにより径方向において延伸フィルムとマスキングフィルムが交互に位置する巻回体を得ることができる。具体的には、図7に示す通り、マスキングフィルムの巻回体151から、マスキングフィルム51を繰り出し、これを、延伸フィルム14に重ねることにより、当該工程を行いうる。
マスキングフィルムを重ねる工程を行なうことにより、延伸フィルムに存在する厚みムラをマスキングフィルムの変形により吸収し、ゲージバンド及び横ダン等の、連続的な厚みムラに起因する不具合をさらに低減させることができる。さらに、マスキングフィルムを重ねることにより、延伸フィルムが滑り性の低いフィルムであっても、巻回体におけるスクラッチの発生を抑制することができる。
しかしながら、本願の製造方法によれば、延伸前のオシレーション工程により、連続的な厚みムラに起因する不具合を抑制することができるので、マスキングフィルムを重ねる工程を行なわなくても、これらの不具合の無い巻回体を得ることができる。さらに、供給する延伸前フィルムの材料を適宜選択する等の手段により、延伸工程により得られる長尺の延伸フィルムの少なくとも一方の表面の表面粗さRaを、好ましくは5〜50nm、より好ましくは10〜30nmといった範囲とすることにより、延伸フィルムの滑り性を良好なものとし、スクラッチの発生も抑制することができる。したがって、これらにより、マスキングフィルムを省略しても、マスキングフィルムを有している場合と同等の品質を有する、延伸フィルムの巻回体を得ることができる。巻回体の製造において、マスキングフィルムのコストは製造コストのうちの大きな割合を占めうるので、マスキングフィルムを省略しても同等の品質を得られることは、顕著に有利な効果である。
〔6.巻回工程〕
巻回工程では、長尺の延伸フィルム(第2のトリミング等の任意工程を行なった場合は、かかる任意工程後の長尺の延伸フィルム)をロール状に巻き取って、延伸フィルムの巻回体を得る。
〔7.変形例〕
本発明の製造方法は、上で説明した例に限定されず、この例に変形を加えた方法であってもよい。
例えば、図1に示す例では、繰り出し巻回体110、即ち予め調製された長尺の延伸前フィルムの巻回体から延伸前フィルムを繰り出すことにより供給工程を行っている。しかしながら、供給工程はこのような態様に限られず、例えば、溶融押出成形法又は溶液キャスト法等の方法により連続的に製造される長尺の延伸前フィルムを、一旦巻回せずにそのまま次工程に供給することにより、供給工程を行なってもよい。このような供給工程を行なうことにより、工程を省略して効率的な製造を行なうことができる。また、繰り出し巻回体110を予め調製する際にゲージバンド等が発生することを防止できる。
また例えば、図1に示す例では、第1のトリミング工程で得られた、トリミングされた延伸前フィルム12をそのまま延伸装置130に搬送して延伸工程を行っている。しかしながら、本発明の製造方法はこのような態様に限られず、例えば、第1のトリミング工程後に、トリミングされた長尺の延伸前フィルムをロール状に巻き取って、予備巻回体を得る、予備巻回工程をさらに含み、予備巻回工程で得られた予備巻回体から、トリミングされた長尺の延伸前フィルムを繰り出し、これを延伸工程に供給してもよい。このような予備巻回工程を行なった場合、工程が増加することとなる。しかしながら、予備巻回工程を行なうことにより、予備巻回工程までを一つの製造ラインで行い、その後の工程を複数の製造ラインで並行して行うといった、自由度の高い製造を行なうことが可能となる。そのため、オシレーション工程のための設備投資等における費用を軽減し、より低コストで製造を行なうことが可能となる。
上に述べた変形を加えた具体例を、図5及び図6を参照して説明する。図5は、本発明の製造方法を実施するための装置及びそれを用いた本発明の製造方法の実施の別の一例における、供給工程から予備巻回工程までの部分を概略的に示す側面図である。図6は、本発明の製造方法を実施するための装置及びそれを用いた本発明の製造方法の実施の別の一例における、予備巻回体から延伸前フィルムを繰り出し、延伸工程以降の工程を行う部分を概略的に示す側面図である。
図5に示す装置は、製造ラインの上流から順に、供給装置510、第1のトリミング装置120、及び予備巻回体570を含む予備巻回装置を有する。供給装置510としては、例えば溶融押出成形法により延伸前フィルムを連続的に形成する装置を用いうる。供給装置510から供給された延伸前フィルム11は、矢印A11方向に搬送され、図1に示した例と同様に第1のトリミング工程に供され、その後、トリミングされた延伸前フィルム12は予備巻回工程に供され予備巻回体570となる。
得られた予備巻回体570は、図6に示す装置におけるさらなる工程に供される。まず、予備巻回体570から、トリミングされた延伸前フィルム12が繰り出され、その後、図1の例と同様に、延伸装置130での延伸工程、任意に第2のトリミング装置140でのトリミング工程に供され、その後巻回工程に供され、延伸フィルムの巻回体160が得られる。
〔8.延伸前フィルムの具体例〕
続いて、供給工程において供給される延伸前フィルムについて、具体的に説明する。
供給工程において供給される延伸前フィルムは、長尺の延伸フィルムである。本願において、長尺とは、幅に対して、少なくとも5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。
本願において、延伸前フィルムとは、延伸工程に供される前のフィルムである。延伸前フィルムは、通常、未延伸のフィルムであるが、予備的な延伸が既に施されたフィルムであってもよい。延伸前フィルムは、面内方向には実質的に配向を有さないことが好ましく、延伸前フィルムの正面レターデーションReは、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下である。
延伸前フィルムの材料としては、延伸フィルムの用途に適合した任意の材料を適宜選択して用いうる。
延伸前フィルムの好ましい例としては、固有複屈折値が負の樹脂Aからなる1層以上のa層と、透明な樹脂Bからなる1層以上のb層とを備える延伸前の積層体cが挙げられる。積層体cは、好ましくは、1層のa層と、そのおもて面及び裏面のそれぞれに接して設けられた2層のb層とを含むものとしうる。当該層構成を有する積層体cを用いることにより、延伸フィルムとして、位相差板等の光学フィルムとして好適に使用しうるものを製造できる。
樹脂Aとしては通常は熱可塑性樹脂を用いる。樹脂Aに含まれる重合体の例としては、スチレン系重合体、ポリアクリロニトリル重合体、ポリメチルメタクリレート重合体、及びこれらの多元共重合ポリマーが挙げられる。スチレン系重合体は、スチレン単位構造を繰り返し単位の一部又は全部として有する重合体であり、例えば、ポリスチレン;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カルボキシスチレン、p−フェニルスチレン等のスチレン系単量体と、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、酢酸ビニル等のその他の単量体との共重合体などが挙げられる。これらの中でも位相差発現性が高いという観点からスチレン系重合体が好ましく、中でもポリスチレン、スチレンとN−フェニルマレイミドとの共重合体又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。
これらの重合体としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
樹脂Aに含まれる重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、重合体がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあることにより、得られる延伸フィルムの機械的強度及び成型加工性などが高度にバランスされる。
樹脂Aは、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、強化剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含みうる。これらの添加剤の量は、樹脂Aに含まれる重合体100重量部に対して、通常0〜50重量部、好ましくは0〜30重量部である。
樹脂Aのガラス転移温度をTg(a)(℃)、樹脂Bのガラス転移温度をTg(b)(℃)とした場合、Tg(a)>Tg(b)+8℃であることが好ましく、Tg(a)>Tg(b)+20℃であることがより好ましく、Tg(a)>Tg(b)+24℃であることがさらに好ましい。また、一般的には、Tg(a)<Tg(b)+50℃である。
また、樹脂Aのビカット軟化温度をTeg(a)(℃)、樹脂Bのビカット軟化温度をTeg(b)(℃)とした場合、Teg(a)>Teg(b)+15℃であることが好ましく、Teg(a)>Teg(b)+20℃であることがより好ましく、Teg(a)>Teg(b)+25℃であることがさらに好ましい。また、一般的には、Teg(a)<Teg(b)+50℃である。
a層とb層とが積層された積層体cを共延伸するとき、温度Tg(a)(℃)付近で延伸すると、得られる延伸フィルムにおいて樹脂Aの複屈折特性を十分かつ均一に発現させることができる。このとき、樹脂Aのガラス転移温度Tg(a)及びビカット軟化温度Teg(a)を前記のように樹脂Bのガラス転移温度Tg(b)及びビカット軟化温度Teg(b)よりも高くしておくと、b層は、そのガラス転移温度Tg(b)又はビカット軟化温度Teg(b)よりも高い温度で延伸されることになるので、重合体はほとんど配向せず、実質的に無配向の状態にできる。
樹脂Bは、透明な樹脂である。透明な樹脂とは、厚み1mmの試験片を形成して測定した全光線透過率が、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である樹脂をいう。
樹脂Bとしては通常は熱可塑性樹脂を用いる。樹脂Bに含まれる重合体の例としては、アクリル重合体、メタクリル重合体、ポリカーボネート重合体、ポリエステル重合体、ポリエーテルスルホン重合体、ポリアリレート重合体、ポリイミド重合体、鎖状ポリオレフィン重合体、ポリエチレンテレフタレート重合体、ポリスルホン重合体、ポリ塩化ビニル重合体、ジアセチルセルロース重合体、トリアセチルセルロース重合体、脂環式オレフィン重合体などが挙げられる。これらの中でも、樹脂Bとしては、脂環式オレフィン重合体及びメタクリル重合体が好適である。
メタクリル重合体は、メタクリル酸アルキルエステル単位を主モノマー単位として含む重合体である。メタクリル重合体の例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルの単独重合体;アルキル基の水素がOH基、COOH基若しくはNH基などの官能基によって置換された炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルの単独重合体;又はメタクリル酸アルキルエステルと、スチレン、酢酸ビニル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸アルキルエステルなどのメタクリル酸アルキルエステル以外のエチレン性不飽和単量体との共重合体等が挙げられる。これらのうち、アクリル酸アルキルエステルがメタクリル酸アルキルエステルとの共重合に好適である。好適なメタクリル重合体では、官能基によって置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル単位を、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99.9重量%、さらに好ましくは50〜99.5重量%含有し、アクリル酸アルキルエステル単位を好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.5〜50重量%含有する。
脂環式オレフィン重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環構造を有する非晶性の熱可塑性重合体である。脂環式オレフィン重合体中の脂環構造の例としては、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。脂環構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
脂環式オレフィン重合体を構成する脂環構造を有する繰り返し単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式オレフィン重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式オレフィン重合体としては、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体若しくはノルボルネン構造を有する単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物等が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環(共)重合体水素化物は、透明性、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適に用いることができる。
なお、これらの重合体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
樹脂Bに含まれる重合体の分子量は使用目的に応じて適宜選定されるが、溶媒としてシクロヘキサンを用いて(但し、重合体がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレン換算(溶媒がトルエンのときは、ポリスチレン換算)の重量平均分子量(Mw)で、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上であり、通常100,000以下、好ましくは80,000以下、より好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあることにより、得られる延伸フィルムの機械的強度及び成型加工性などが高度にバランスされる。
樹脂Bは、主成分としての重合体に加えて、ゴム粒子などの弾性体粒子を含みうる。弾性体粒子を含むことにより、得られる延伸フィルムの表面に、所望の表面粗さを付与し、且つ樹脂Bの層に、光学フィルムとして好適な物性を付与することができる。樹脂Bにおける粒子の含有割合は、1〜60重量%としうる。また、粒子の粒径は、数平均粒径で、50nm〜800nmとしうる。
特に好ましい態様において、樹脂Bは、弾性体粒子を含むメタクリル樹脂である。即ち、樹脂Bは、上に述べたメタクリル重合体と、弾性体粒子とを含む樹脂であることが好ましい。そして、かかる樹脂Bが延伸フィルムの少なくとも一方の表面側の層を構成することにより、延伸フィルムの滑り性を良好なものとし、巻回体におけるスクラッチの発生を抑制することができる。
樹脂Bには、必要に応じて、樹脂Aと同様の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含みうる。これらの添加剤の量は、樹脂Bに含まれる重合体100重量部に対して、通常0〜50重量部、好ましくは0〜30重量部である。
樹脂Bのガラス転移温度Tg(b)は、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上である。また、樹脂Bのガラス転移温度Tg(b)の上限値は、通常140℃以下である。
〔9.延伸フィルムの具体例〕
供給工程において供給される延伸前フィルムとして上に述べた積層体cを用いた場合に得られる延伸フィルムの例について、具体的に説明する。
延伸前フィルムとして積層体cを用いて本発明の製造方法を実施し、延伸の条件等を適宜調節することにより、固有複屈折値が負の樹脂AからなるA層と、透明な樹脂BからなるB層とを備え、(1)|A層の正面レターデーション|>|B層の正面レターデーション|であり、(2)A層及びB層の総厚が薄く、(3)A層及びB層の総厚に占めるA層の厚みの割合が大きく、(4)総延伸倍率が大きい光学積層体を、延伸フィルムとして製造することができる。これにより、厚みが薄く、耐久性及び光学均一性に優れる光学積層体を実現できる。
A層の厚みは、A層及びB層の総厚に対する割合で、通常40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。このようにA層の厚みを厚くすることにより、総厚を薄くしても延伸フィルムの光学均一性が低下することを抑制でき、好適な光学特性を発現させることができる。また、A層及びB層の総厚に対するA層の厚みの割合の上限は、通常80%未満である。A層を厚くしすぎると、脆くなりハンドリングが困難となる傾向がある。
延伸フィルムが備えるA層及びB層の層数は1層でもよく、2層以上でもよい。A層及びB層を2層以上備える場合、A層及びB層それぞれの厚みの合計により、前記のA層及びB層の総厚に対するA層の厚みの割合を算出するものとする。延伸フィルムにおける各層の厚みは、延伸フィルムをエポキシ樹脂に包埋したのち、ミクロトーム(例えば、大和光機工業(株)、RUB−2100)を用いて0.05μm厚にスライスし、透過型電子顕微鏡を用いて断面を観察することにより測定しうる。
積層体cの各層の厚み及び層構成並びに延伸倍率などの延伸条件を適宜調整することにより、このような各層の厚み及び層構成を有する延伸フィルムを製造しうる。
積層体cの各層の厚み及び層構成並びに延伸倍率及び延伸温度などの延伸条件を適宜調整することにより、A層の正面レターデーションRe(A)は、B層の正面レターデーションRe(B)との間で|Re(A)|>|Re(B)|との関係を満たす延伸フィルムを製造しうる。|Re(A)|>|Re(B)|とすることにより、光学的に調整を行った樹脂AからなるA層の光学特性を効果的に利用することができる。|Re(A)|≦|Re(B)|であると、延伸フィルムにおいて光学補償機能が十分に発現しないおそれがある。
具体的なA層の正面レターデーションRe(A)の範囲を挙げると、例えば波長400〜700nmの光で測定したA層の正面レターデーションRe(A)(nm)は、好ましくは30nm以上70nm以下である。
なお、正面レターデーションReとは、面内の遅相軸方向の屈折率nxと、面内で前記遅相軸に直交する方向の屈折率nyとの差に、フィルム(又は各層)の平均厚みDを乗算した値、すなわち、Re=(nx−ny)×Dである。また、A層及びB層が2層以上存在する場合、前記のA層の正面レターデーションRe(A)及びB層の正面レターデーションRe(B)とは、各A層及びB層の正面レターデーションの合計を指す。さらに、レターデーションの評価は、特に断らない限り、波長590nmの光に対して行なうものとする。
B層は、実質的に無配向な層であることが好ましい。実質的に無配向とは、B層内において直交するx方向とy方向の屈折率nBxとnByの差が小さく、A層内において直交するx方向とy方向の屈折率をそれぞれnAx、nAy、A層の厚みをdA、B層の厚みをdBとしたとき、|(nAx−nAy)×dA|+|(nBx−nBy)×dB|の値が|(nAx−nAy)×dA|の値の1.1倍以下であることをいう。
|Re(B)|は、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下であることが特に好ましい。|Re(B)|を小さくすることにより、延伸フィルムに所望の光学補償機能を十分に発揮させることができる。
具体的なB層の正面レターデーションRe(B)の範囲を挙げると、例えば波長400〜700nmの光で測定したB層の正面レターデーションRe(B)(nm)は、好ましくは0nm以上15nm以下である。
延伸フィルムにおいて、A層及びB層がそれぞれ少なくとも1層ずつ存在していれば、A層及びB層の層数及び順番に制限は無い。延伸フィルムにおける層構成の好ましい例を挙げると、A層及びB層がこの順で存在する層構成;B層、A層及びB層がこの順で存在する層構成、などが挙げられる。また、A層が2層以上存在する場合は各A層は同じでも異なっていても良く、B層が2層以上存在する場合は各B層は同じでも異なっていてもよい。
延伸フィルムは、A層及びB層の総厚(即ち、A層の厚みとB層の厚みの総合計)が、通常60μm以下であり、50μm以下や、40μm以下とすることもできる。積層体cを延伸して得られる延伸フィルムはこのように薄い総厚でありながらも優れた耐久性及び光学均一性を有するという顕著な利点を有する。また、総厚が薄いため、反り等の変形を生じにくい。したがって、積層体cを延伸して得られる延伸フィルムを光学用パネルに設けた場合でも、当該光学用パネルにおいて反りを生じ難くできる。さらに、総厚が薄いことにより、光学用パネルの軽量化及び薄膜化が可能であり、材料を削減できるので製造コストを下げることが可能である。
前記のA層及びB層の総厚の下限は、延伸フィルムの強度をハンドリング性を損なわない程度に保つ観点から、通常25μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは35μm以上である。
本発明の製造方法により巻回体として得られた延伸フィルムは、例えば位相差板等の光学フィルムとして、液晶表示装置、及びその他の表示装置の構成要素として好適に使用しうる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
〔実施例1〕
図4〜図6に概略的に示す装置を用いて、本発明の製造方法を実施した。
(1−1.延伸前フィルムの供給工程、及びオシレーション工程)
内層樹脂としてのポリスチレン樹脂(NovaChemicals社製、商品名「DylarkD332」、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ガラス転移温度128℃、以下において「Dyl」と略記)と、外層樹脂としてのゴム粒子を含むメタクリル樹脂(住友化学社製、製品名「スミペックスHT55Z」、ガラス転移温度105℃、以下において「55Z」と略記)とを、溶融状態で、溶融押出装置510(図5)のTダイからシート状に押出して冷却することにより、内層樹脂が外層樹脂に挟まれた2種3層の多層フィルムを、延伸前フィルム11として連続的に調製した。延伸前フィルム11の膜厚は、外層21μm/内層36μm/外層21μmで合計78μmであった。
延伸前フィルムの調製に際し、溶融押出装置510を、TD方向に周期的に動かすことにより、延伸前フィルム11をオシレートさせ、MD方向即ち矢印A11方向に搬出した。
(1−2.第1のトリミング工程、及び予備巻回工程)
工程(1−1)で搬出された延伸前フィルム11を、第1のトリミング装置120(図5)に搬送してトリミングした。第1のトリミング工程における、延伸前フィルム11のオシレートされる量は、振幅(図4の矢印A41で示される長さ)が80mm(即ちオシレーションの中心から±40mm)であり、周期の長さ(図4の矢印A42で示される長さ)が200mであった。この、第1のトリミングの結果、幅1350mmの、トリミングされた長尺の延伸前フィルム12が得られた。これを、ロール状に巻き取って、予備巻回体570(図5)を得た。
(1−3.延伸工程、第2のトリミング工程及び巻回工程)
工程(1−2)で得られた予備巻回体570から、延伸前フィルム12を連続的に繰り出し、テンター式の同時二軸延伸機130(図6)に供給し、延伸工程を行い、膜厚25μmの延伸フィルム13を得た。延伸工程における延伸温度は130℃、延伸倍率は縦方向(即ちフィルムの長手方向)を2倍、横方向(フィルムの幅方向)を1.5倍とした。延伸フィルム13を、第2のトリミング装置140に供給し、フィルムの両端部をトリミングして、幅1350mmの延伸フィルム14とした。2000mの延伸フィルム14をロールに巻き取って、巻回体160を得た。延伸工程の後から巻回工程までの、フィルムのTD方向のオシレーションは、4mm(即ちオシレーションの中心から±2mm)以下に抑制し、従って、オシレーションを実質的に行なわなかった。
(1−4.評価)
延伸フィルム14を巻き取る直前に、延伸フィルム14の配向角をインラインの位相差計(AxoScan、AXOMETRICS社製)にて測定した。その結果、配向角の方向は、比較例1で測定された方向と変化無く、同じ角度であった。
得られた延伸フィルム14のおもて面及び裏面における表面粗さRaは、20nmであった。
得られた巻回体160の外観を目視で観察し、ゲージバンドがはっきり見えるものを「不良」、ゲージバンドが僅かに見えるものを「可」、ゲージバンドが見えないものを「良」とする評価基準に従って評価したところ、「良」と評価された。
また、得られた巻回体160から引き出した延伸フィルムの表面を観察し、スクラッチの発生の有無を、スクラッチの発生が認められるものを「不良」、認められないものを「良」とする評価基準に従って評価したところ、「良」と評価された。
〔実施例2〕
工程(1−1)でのオシレーションの量を変更し、それにより、工程(1−2)中の第1のトリミング工程における、延伸前フィルム11のオシレートされる量を、振幅120mm(即ちオシレーションの中心から±60mm)とした他は、実施例1と同様にして、延伸フィルム14の巻回体160を得て、評価した。
延伸フィルム14を巻き取る直前に、延伸フィルム14の配向角を測定した結果、配向角の方向は、比較例1で測定された方向と変化無く、同じ角度であった。
得られた延伸フィルム14のおもて面及び裏面における表面粗さRaは、20nmであった。
ゲージバンドの観察結果は、「良」と評価された。
スクラッチの発生の有無は、「良」と評価された。
〔実施例3〕
工程(1−1)でのオシレーションの量を変更し、それにより、工程(1−2)中の第1のトリミング工程における、延伸前フィルム11のオシレートされる量を、振幅40mm(即ちオシレーションの中心から±20mm)とした他は、実施例1と同様にして、延伸フィルム14の巻回体160を得て、評価した。
延伸フィルム14を巻き取る直前に、延伸フィルム14の配向角を測定した結果、配向角の方向は、比較例1で測定された方向と変化無く、同じ角度であった。
得られた延伸フィルム14のおもて面及び裏面における表面粗さRaは、20nmであった。
ゲージバンドの観察結果は、「可」と評価された。
スクラッチの発生の有無は、「良」と評価された。
〔比較例1〕
工程(1−1)でのオシレーションを行なわず、それにより、工程(1−2)中の第1のトリミング工程における、延伸前フィルム11のオシレートされる量を、振幅0mmとした他は、実施例1と同様にして、延伸フィルム14の巻回体160を得て、評価した。
延伸フィルム14を巻き取る直前に、延伸フィルム14の配向角を測定した。この配向角を基準に、他の実施例及び比較例の配向角の方向を評価した。
得られた延伸フィルム14のおもて面及び裏面における表面粗さRaは、20nmであった。
ゲージバンドの観察結果は、「不良」と評価された。
スクラッチの発生の有無は、「良」と評価された。
〔比較例2〕
以下の変更以外は、実施例1と同様にして、延伸フィルム14の巻回体160を得て、評価した。
工程(1−1)でのオシレーションを行なわず、それにより、工程(1−2)中の第1のトリミング工程における、延伸前フィルム11のオシレートされる量を、振幅0mmとした。さらに、工程(1−3)の、延伸工程後、第2のトリミング前において、フィルムを支持する装置(不図示)をTD方向に周期的に動かすことにより、第2のトリミング工程において、延伸フィルム13をオシレートさせた。オシレートされた量は、振幅が80mm(即ちオシレーションの中心から±40mm)であり、周期の長さが200mであった。
延伸フィルム14を巻き取る直前に、延伸フィルム14の配向角を測定した結果、配向角の方向は、比較例1で測定された方向に比べて最大で0.1°変化していた。
得られた延伸フィルム14のおもて面及び裏面における表面粗さRaは、20nmであった。
ゲージバンドの観察結果は、「可」と評価された。
スクラッチの発生の有無は、「良」と評価された。
以上の実施例及び比較例の概要を、下記表1にまとめて示す。
Figure 2015123605
以上の結果から明らかな通り、実施例1〜3において得られた延伸フィルムの巻回体では、オシレーションを行っていない比較例1に比べて配向角の変化が無かった。加えて、実施例1〜3において得られた延伸フィルムの巻回体では、ゲージバンドの発生も少なかった。さらに、実施例1〜3において得られた延伸フィルムの巻回体では、マスキングフィルムを用いずに巻回したにも拘わらず、スクラッチの発生も少なかった。従って、本発明の製造方法により、高品質な延伸フィルムの巻回体が得られたことが確認された。
10:製造装置
11:延伸前フィルム
12:トリミングされた延伸前フィルム
13:延伸フィルム
14:トリミングされた延伸フィルム
21:耳
51:マスキングフィルム
110:繰り出し巻回体
111:芯
P:芯の中心点
120:第1のトリミング装置
121:支持ローラー
122:巻取りローラー
130:延伸装置
140:第2のトリミング装置
141:支持ローラー
142:巻き取りローラー
151:マスキングフィルムの巻回体
160:巻回体
510:供給装置
570:予備巻回体

Claims (8)

  1. 延伸フィルムの巻回体の製造方法であって、
    長尺の延伸前フィルムを供給する、供給工程と、
    前記長尺の延伸前フィルムをオシレートさせる、オシレーション工程と、
    オシレートされた状態の前記長尺の延伸前フィルムの両端部をトリミングする、第1のトリミング工程と、
    前記トリミングされた長尺の延伸前フィルムを延伸して、長尺の延伸フィルムを形成する、延伸工程と、
    前記長尺の延伸フィルムをロール状に巻き取って、長尺の延伸フィルムの巻回体を得る、巻回工程と
    を有する、延伸フィルムの巻回体の製造方法。
  2. 前記延伸工程の後から前記巻回工程までにおいて、オシレーションを実質的に行わない、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記延伸工程の後、前記巻回工程の前に、前記長尺の延伸フィルムの両端部をトリミングする第2のトリミング工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記供給工程で供給する、前記長尺の延伸前フィルムが、溶融押出成形法で形成されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記第1のトリミング工程後に、前記トリミングされた長尺の延伸前フィルムをロール状に巻き取って、予備巻回体を得る、予備巻回工程をさらに含み、
    前記予備巻回工程で得られた予備巻回体から、前記トリミングされた長尺の延伸前フィルムを繰り出し、これを前記延伸工程に供給する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記第1のトリミング工程における、前記長尺の延伸前フィルムのオシレートされる振幅が、20〜200mmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記長尺の延伸フィルムの少なくとも一方の表面の表面粗さRaが、5〜50nmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記長尺の延伸フィルムの少なくとも一方の表面側の層が、弾性体粒子を含むメタクリル樹脂からなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
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