JP2015117535A - 耐力壁 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 枠体2に斜材8等の耐力要素を設けた耐力壁1において、枠体2の一部、および前記耐力要素と枠体2の間に介在させる変形吸収用のデバイスのいずれか一方または両方を、焼鈍した鋼製の部材とする。例えば、枠体2が、中桟となる横フレーム材6を境界として上下に並ぶ複数の区画層a,bに区画され、各区画層に耐力要素が設けられた耐力壁である。一部の区画層aに設けられた耐力要素が面材7であり、他の区画層bに設けられた耐力要素が斜材8である。斜材8を設けた区画層bの横フレーム材4等の焼鈍材とする。
【選択図】 図1
Description
引張り型耐力ブレースは、比較的軽量な鋼材を用いて安価に生産できる特長を持つ一方、荷重・変形履歴(復元力特性)は、「スリップ型」の特性を示す。スリップ型の欠点としては、次の点が挙げられる。
・大地震の際、ブレースが塑性化して伸びた後、地震による揺れ戻しの力が作用したとき、伸びた分だけブレースが水平力に全く抵抗しない。
・そのため、揺れ戻し時には、建物が逆方向の水平力に対してブレースで抵抗するまで、何の抵抗力も持たないままで水平に動くことになり、ブレースが抵抗し出すときに衝撃を生じる。このことは、住人が建物に対する不安や不満を持つ一要因となり得る。
メンブレン型耐力壁は、一例を示すと、図27のように、壁面を複数(4分割または6分割)に区画し、各区画層に折板104を用いている。地震時に、水平力に対しては折板104がエネルギーを吸収する機構となっている。同耐力壁は、実験により適切な条件下では紡錘型に近い挙動を示すことが確認されている。
・耐力壁の全面に折板104を張るため、設備開口用等の孔を得ることができない。孔を開けることで耐力性能低下が予測される。耐力壁に設備開口用の孔を設けないようにするには、建物のプランが制約される。建築物建築計画においては、やむなくその耐力壁位置に開口部(給・排気用貫通口、採光用開口等)を設けなくてはならないこともある。
・切り欠かれた設備開口部分を、施工現場において同様な折板を増し張りする補強方法が先行技術として提案されているが、その施工の手間、品質保持、施工管理上等の現場省略施工の観点から、採用するには難がある。
・仮に折板104に設備開口用の孔を開けて補強したとしても、その部分の剛性評価方法が確立されていない。
すなわち、ブレース105で構成される区画層と折板104で構成される区画層の剛性が異なるため、縦フレーム材に曲げ応力が発生してしまう。具体的には、図29(A)のように地震が来て水平力Pがかかったときに、同図(B)のように耐力壁の各区画層の剛性が同じであると、各区画層の変形が同じとなり、縦フレーム材101に曲げが入らない。しかし、同図(C)のように、折板104を用いた区画層に対してブレース105を用いた区画層の剛性が高くて曲がり難いと、折板104を用いた区画層とブレース105を用いた区画層との間の部分106で縦フレーム材101に曲げ応力が発生してしまう。
この場合、縦フレーム材101に地震時の負荷(曲げ)応力を考慮した構造計算が必要であり、構造計算が煩雑となる。このため、煩雑な構造計算を必要とせずに、鉛直方向の荷重(圧縮、引張り)のみを受けるようにしたい。
この為には、折板104を用いた区画層とブレース105を用いた区画層の剛性(単位変形量当たりの力の大きさ)を合わせる必要がある。
この発明の他の目的は、エネルギー吸収性能に優れながら、鋼材使用量が少なくて済み、また性能低下や施工上の不利を生じることなく開口部分を設けることができ、かつ異なる種類の耐力要素を用いることにより生じる縦フレーム材の腰折れ状の性状を簡易に防止することができる面材・ブレース併用型の耐力壁を提供することである。
前記枠体の一部、および前記耐力要素と前記枠体の間に介在させる部材のいずれか一方または両方を、焼鈍した鋼製の部材としたことを特徴とする。
なお、この耐力壁は、壁パネルとして構成されたものであっても、また現場組立されたものであっても良い。壁パネルとして構成されたものである場合、前記縦フレーム材は、それぞれ建築物の柱となるものであっても、またパネル併用軸組み構造の建築物等において、柱とは別に設けられる壁パネル内のフレーム材であっても良い。
2本の斜材の交点付近が接合される横フレーム材に、靱性の向上が最も大きく求められる。そのため、この横フレーム材を焼鈍した部材とすることで、靱性が向上による耐力壁のエネルギー吸収量の増大の効果がより効果的に得られる。
一部の区画層に設けられた前記耐力要素がこの区画層を覆う面材であり、他の一部の区画層に設けられた前記耐力要素が斜材であり、この斜材が設けられた区画層の一部を前記焼鈍した鋼製の部材としても良い。
斜材を用いた区画層は、そのままでは面材を用いた区画層に比べて剛性が高くなるが、この区画層の一部を前記焼鈍した部材としたため、この部材が区画層の変形を吸収する変形吸収手段として機能し、面材を用いた区画層と同様の剛性となるように調整できる。そのため、耐力要素して面材を用いる区画層と斜材を用いる区画層を併用しながら、異なる種類の耐力要素を用いることにより生じる縦フレーム材の腰折れ状の性状を防止することができる。焼鈍した部材を変形吸収手段として用いて区画層の剛性調整を行うため、各フレーム材や斜材の強度を変えて構造設計で区画層の剛性の調整を行う場合と異なり、煩雑な構造計算を行うことなく、簡単に剛性が調整できる。
このように、面材・ブレース併用型の耐力壁としたため、紡錘型に近い履歴を示しエネルギー吸収性能に優れながら、鋼材使用量が少なくて済み、また性能低下や施工上の不利を生じることな開口部分を設けることができる。また、上記のように焼鈍した部材を用いることで、異なる種類の耐力要素を用いることにより生じる縦フレーム材の腰折れ状の性状を簡易に防止することができる。
上記のように区画層の変形を吸収するデバイスを介在させることで、複数の区画層の剛性の均等化が容易に行えて、縦フレーム材の腰折れ状の性状を簡易に防止することができる。また、このデバイスを焼鈍した部材とすることで、さらなるエネルギーの吸収量が見込める。
このように角パイプを輪切りにした形状の部材を変形吸収用のデバイスとすることで、このデバイスが簡単に制作できる。
なお、この面材・ブレース併用耐力壁1は、外壁パネル等の壁パネルとして構成されているが、軸組工法建物の一部となる壁として構成されたものであっても良い。また、縦フレーム材3は、建築物の柱となる部材であっても、またパネル併用軸組み工法建物等において、柱とは別に設けられて柱に沿って設けられる部材であっても良い。前記柱は、壁に内蔵される柱であっても良い。
前記波板の他に、図5に示すように平坦な板材を用いても良い。この場合、例えば前記面材7として、スキンパネルや耐力合板を使用しても良い。
また、2本の斜材8の互いの近づき側の端部を、横フレーム材4(5,6)に対してこの横フレーム材4(5,6)の長手方向に互いに離れた位置Eで接合している。これにより、2本の斜材8の軸心の交点Cを、これら斜材8の近づき側の端部を接合する前記横フレーム材4(5,6)に対して上下に偏心させている。2本の斜材8は、上端面を横フレーム材4(5,6)の下面に溶接により接合している。
なお、焼鈍とは、加熱した後に徐冷するという処理であり、成分の拡散促進、内部応力の除去等のために行う熱処理法の一つである。
・比較的板厚が薄い軽量形鋼は、鉄鋼製品として圧延加工されたままの一次製品ではなく、冷間圧延することで製品化している。
・これは、冷間成形により加工された軽量形鋼はその寸法精度に高い要求があるためである。
・この冷間圧延の過程では内部応力等によりひずみ硬化が起こった為、硬く(強度が強く)ねばり強さが劣る状態となっている。一般的に規格値(JIS規格等)では、降伏点等の下限値のみで定めているため、市中材の冷間鋼材は降伏点等の強度が規格値よりも上回っているものが多い。
・焼鈍は、鋼に所定の熱を加えて鋼を硬くした上で徐々に冷し、鋼を構成する結晶を調質することで内部応力除去や、そのねばり強さを向上させる効果が得られる熱処理加工である。
・焼鈍前の機械的性質は、規格値(降伏点、破断強度)を大きく上回っている。
・一方、所定の温度による焼鈍加工を行うことで、降伏点が規格値に近づき、ねばり強さが向上する。
このように、紡錘型に近い履歴を示しエネルギー吸収性能に優れながら、鋼材使用量が少なくて済み、また性能低下や施工上の不利を生じることなく開口部分を設けることができ、かつ異なる種類の耐力要素を用いることにより生じる縦フレーム材3の腰折れ状の性状を簡易に防止することができる。
・耐力壁1の区画層a,bごとの剛性調製を容易に行うことができる。
・水平力エネルギーの吸収を行うことができる。
・耐力壁1内の波形鋼板等からなる面材7による区画層aと斜材8の区画層bの剛性を同じにすることにより、部分的な剛性低下を防ぐことができる。
・耐力壁1の両端部の縦フレーム材3が腰折れの性状とならず、耐力壁1の両端の縦フレーム材3に曲げモーメントが伝達されることを防ぐことができる。
・焼鈍材を用いることにより、更なるエネルギー吸収が見込める。
・耐力壁1の区画層bごとの剛性調製を容易に行うことができる。
・水平力エネルギーの吸収を行うことができる。
・耐力壁1内の波形鋼板等からなる面材7による区画層aと斜材8の区画層bの剛性を同じにすることにより、部分的な剛性低下を防ぐことができる。
・耐力壁1の両端部の縦フレーム材3が腰折れの性状とならず、耐力壁1の両端の縦フレーム材3に曲げモーメントが伝達されることを防ぐことができる。
・焼鈍材を用いることにより、更なるエネルギー吸収が見込める。
横フレーム材4,5が変形したときに建物躯体の梁30と干渉すると、前記横フレーム材4,5の変形が妨げられ、結果的に剛性が上がってしまうが、前記横フレーム材4,5が変形する寸法以上の隙間を設けることで、変形が妨げられることが防止され、区画層bの適切な剛性が保持される。
図21(B)の例は、斜材8を設けた区画層bを中央側の2箇所とし、これらの区画層bでは、いずれも2本の斜材8は上端側が交点側となり、交点の付近にデバイス9Bを配置している。
図21(C)の例は、同図(B)の例と同じく、斜材8を設けた区画層bを中央側の2箇所としているが、中央側2箇所の区画層bにおいて、斜材8の傾斜方向が互いに逆であり、上側の区画層bの斜材8と下側の区画層の斜材8とが一直線上に位置してX形を成すように配置されている。デバイス9Bは、4本の斜材8の交点に配置している。この場合、デバイス9Bは、各区画層b毎に別々に設けても、一つで2つの区画層bの変形を吸収する構成としても良い。他の各デバイス9C,9Dを設ける場合や、これらのデバイスを設けない場合に、同図の区画層a,bの配置としても良い。
同図の例では、前記変形吸収手段となるデバイス9Aを、斜材8の下端と縦フレーム材8との間に介在させている。
2…枠体
3…縦フレーム材
4,5…横フレーム材
6…横フレーム材(中桟)
7…面材(耐力要素)
7a…山部
7b…谷部
8…斜材(耐力要素)
9…変形吸収手段
9A〜9D…デバイス
9Ca…デバイス本体(角パイプ)
26…束材〈角パイプ〉
30…梁
a,b…区画層
d…隙間
C…交点
Claims (7)
- 左右の縦フレーム材およびこれら左右の縦フレーム材間に設けた複数の横フレーム材を有する枠体に耐力要素を設けた耐力壁において、
前記枠体の一部、および前記耐力要素と前記枠体の間に介在させる部材のいずれか一方または両方を、焼鈍した鋼製の部材としたことを特徴とする耐力壁。 - 請求項1に記載の耐力壁において、前記耐力要素として、互いに傾斜方向が逆となる2本の斜材を有し、これら2本の斜材が互いの軸心の交点の付近で接合される横フレーム材を、前記焼鈍した鋼製の部材とした耐力壁。
- 請求項2に記載の耐力壁において、前記2本の斜材の軸心の交点を、この交点付近で接続される前記横フレーム材に対して上下に偏心させ、この偏心により発生する曲げによる前記横フレーム材の変形を前記枠体の変形吸収に利用する耐力壁。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の耐力壁において、前記枠体が、前記左右の縦フレーム材と、これら左右の縦フレーム材の上端間および下端間にそれぞれ接合された上下の横フレーム材と、前記左右の縦フレーム材間に接合された中桟となる横フレーム材とを備え、前記中桟となる横フレーム材を境界として上下に並ぶ複数の区画層に区画され、各区画層に耐力要素が設けられ、
一部の区画層に設けられた前記耐力要素がこの区画層を覆う面材であり、他の一部の区画層に設けられた前記耐力要素が斜材であり、この斜材が設けられた区画層の一部を前記焼鈍した鋼製の部材とした耐力壁。 - 請求項4に記載の耐力壁において、前記斜材として、互いに傾斜方向が異なりかつ一端が互いに近づく2本の斜材を有し、これら2本の斜材の近づき側端を接合する横フレーム材と前記2本の斜材との間に、前記区画層の変形を吸収するデバイスを介在させ、このデバイスを前記焼鈍した鋼製の部材とした耐力壁。
- 請求項5に記載の耐力壁において、前記デバイスが、角パイプを輪切りにした形状の部材を、パイプ中心が耐力壁の表裏方向に向くように配置した構成である耐力壁。
- 請求項5に記載の耐力壁において、前記デバイスが、角パイプを縦に配置した構成である耐力壁。
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