JP2010276080A - エネルギー吸収部材及び該エネルギー吸収部材を設置した構造物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係るエネルギー吸収部材1は、鋼材のせん断塑性変形を利用した履歴型のエネルギー吸収部材であって、上下に配置されて構造物に固定される一対の角形鋼管状部材12を備えてなるブラケット部材3、5と、これら一対のブラケット部材3、5間の上下で対応する面間に亘って塑性化部を有するダンパー部材11をボルト接合してなるものである。
【選択図】 図1
Description
そして、軸方向の塑性変形により履歴エネルギー吸収するものとしては、例えば特許文献1(実開昭63-101603号公報)、特許文献2(特開平7-229204号公報)などのように軸材の座屈を防止するために鋼管およびコンクリートにより補剛したものがある。また、軸材の補剛の他の態様として、特許文献3(実開平-6-71602号公報)のように形鋼で補剛したもの、特許文献4(特開平4-149345号公報)や特許文献5(特開平7-324377号公報)のように鋼管で補剛したもの、さらには特許文献6(特開平7-324378号公報)のように鉄筋コンクリートで補剛したものがある。
なお、ダンパー部材は、上下一対のブラケット部材間に、対向する面同士が対になるように設置するのが好ましい。
図1乃至図5に基づいて本発明の実施の形態1に係るエネルギー吸収部材を説明する。
本実施の形態に係るエネルギー吸収部材1は、図1に示すように、構造物の上側の梁2の交点に接合される上側ブラケット部材3と、下側の梁5の交点に接合される下側ブラケット部材7と、上側ブラケット部材3と下側ブラケット部材7の間に高力ボルト9によってボルト接合されたダンパー部材11を備えている。
上側ブラケット部材3は、その上端側が梁の交点に接合され、下端側にダンパー部材11の上端部がボルト接合されている。また、下側ブラケット部材7は、その下端部が梁の交点に接合され、上端側にダンパー部材11の下端部がボルト接合されている。
上側ブラケット部材3と下側ブラケット部材7は同形状であり、共に軸方向直交断面が四角形の角形鋼管12によって形成されている。角形鋼管12は本発明の角形鋼管状部材の一態様である。
上側ブラケット部材3と下側ブラケット部材7はその周面の各面が同一平面になるように上下に配置され、上下のブラケット部材間において対応する面同士に亘ってダンパー部材11が設置されている。
また、本実施の形態では角形鋼管状部材の例として軸方向直交断面が四角形のものを示したが、角形鋼管状部材の形状としては、四角以上であれば、四角形以外の例えば、6角形、8角形などの偶数角の多角形であってもよい。
もっとも、ある面にダンパー部材11を設置するとその面に対向する面にもダンパー部材11を設置し、対向する面同士で一対になるようにダンパー部材11を設置するのが好ましい。対向する面の片側にのみダンパー部材11を設置した場合、地震時などに偏芯力が発生し、ブラケット部材のねじれ変形の原因となるからである。
ダンパー部材11は、図1及び図2に示されるように、上下ブラケット部材の4面に設置されている。
ダンパー部材11は、図3〜図5に示すように、溝形鋼13の上下端部に矩形状の厚板15を溶接し、厚板15に挟まれた溝形鋼13におけるウェブ17に矩形状の開口部を設け、該開口部に溝形鋼13の背面側からせん断パネルとして機能する低降伏点鋼19を隅肉溶接で接合したものである。
厚板15と溝形鋼13との接合方法として、本実施の形態では、溝形鋼13の両端部のウェブ17を切除して、その切除した部分に厚板15を溶接している。
厚板15にはボルト穴21が多数設けられており、このボルト穴21に高力ボルト9を挿入することによって、ダンパー部材11を上下ブラケットにボルト接合できるようになっている。
この点は、厚板15と角形鋼管12を接合する高力ボルト9についても同様である。
さらに、小さい力ではあるが、曲げねじれ座屈(横座屈)へも配慮が必要である。すなわち、溝形鋼13を用いると、溝形鋼13のせん断中心は溝形鋼13のウェブ17よりも内側に寄っているためその距離(通常の溝形鋼で2cm程度)とせん断力に比例した捩じりモーメントを受ける。これによって、大きくはないが、若干剛性が低下するとともに横座屈を誘発する要因であるので、これに対する配慮も必要である。
このように、2方向からの力を受けるダンパー部材には上記のような力が作用するが、本実施の形態におけるダンパー部材11は、上記付加応力及び横座屈を考慮した断面形状に設定するため、溝形鋼13のフランジ23の外面に補剛板24を設置している。
また、低降伏点鋼の幅厚比(短辺方向の幅/板厚)は、20〜60の範囲にするのが好ましい。その理由は、幅厚比が60よりも大きいとせん断座屈により耐力低下が顕著になるために好ましくなく、また幅厚比が20未満であると塑性化に伴う歪硬化が顕著となるために好ましくないからである。なお、低降伏点鋼のより望ましい幅厚比は30〜50の範囲である。
この点をより具体的に説明する。
さらに、本実施の形態においては、せん断変形する低降伏点鋼19は、その幅厚比を20〜60に設定しているので、エネルギー吸収性能が高い。
またさらに、本実施の形態においては、厚板15とブラケット部材とをボルト接合しているので、地震時の補修の際の取外し取付を容易に行うことができる。もっとも、厚板15とブラケット部材との接合を溶接で行ってもよい。
また、適切なサイズの溝形鋼がない場合には、厚板15をプレス成形したり、厚板15を溶接組み立てしたりして作成してもよい。もっとも、溝形鋼を用いる方がコストを低減できるというメリットがある。
もっとも、溝形鋼や溝形状の部材を用いる場合には、図6に示すように、角型鋼管の各面の両面に背中合わせにダンパー部材11を配置することも可能であり、設置の態様の幅が広い。
図7は本発明の実施の形態2に係るエネルギー吸収部材1の説明図であり、実施の形態1と同一部分及び対応する部分には同一の符号を付してある。本実施の形態のエネルギー吸収部材1が実施の形態1と異なる点は、実施の形態1のブラケット部材3、7は角形鋼管12によって構成されていたが、本実施の形態のブラケット部材3、7は、角形鋼管12が埋め込まれた鉄筋コンクリート部27を有する点である。
つまり、本実施の形態に係るエネルギー吸収部材1のブラケット部材3、7は、鉄筋コンクリートからなる鉄筋コンクリート部27を有し、該鉄筋コンクリート部27に角形鋼管12がその径の1.0倍以上埋め込まれている。そして、ブラケット部材3、7は鉄筋コンクリート部27を介して構造物に固定される。
孔29を設けることにより、コンクリートの施工性も向上し、品質の高いプレキャストブラケットにすることができる。
なお、角形鋼管12とコンクリートとの一体化を図る手段として、孔29を設けることに加えて、あるいは孔29を設ける代わりに、スタッド、鉄筋、厚板15などの部材を角形鋼管12に設置したり、角形鋼管12の下端に鋼管径よりも大きなエンドプレートを溶接するなどしたりしてもよい。
また、上記の例では、角形鋼管12が鉄筋コンクリートに埋め込まれる長さを角形鋼管12の径の1.0倍以上としたが、角形鋼管12の径の1.5倍以上とするのがより好ましい。
図8は本発明の実施の形態3に係るエネルギー吸収部材1の説明図であり、実施の形態1と同一部分及び対応する部分には同一の符号を付してある。本実施の形態のエネルギー吸収部材1が実施の形態1と異なる点は、実施の形態1のダンパー部材11は角形鋼管12の外面側に設置されていたが、本実施の形態のダンパー部材11は角形鋼管12の内面側に設置した点である。
また、実施の形態1においては、厚板15と溝形鋼13との接合方法として、溝形鋼13の両端部のウェブ17を切除して、その切除した部分に厚板15を接合したが、本実施の形態においては、溝形鋼13の両端部のウェブを切除することなくウェブ部分に厚板15を接合している点においても相違する。
また、溝形鋼13の両端部のウェブを切除することなくウェブ部分に厚板15を接合することで、加工が容易となる。
プレキャスト柱に角形鋼管12(STKR□-500x12)を埋め込み、この角形鋼管12にダンパー部材11を1面せん断でボルト接合する。本実施例の場合、コンクリートとの一体化を増大させる手段として角形鋼管12に設ける孔はφ130とする。
ダンパー部材11は、コ−250x90x9x13の溝形鋼13のウェブ17の中央に縦48cm横21cmの開口を設け、低降伏点鋼19(LY225、厚さ6mm)を貼り、裏側から全周隅肉溶接を施す。この場合、低降伏点鋼19の短辺側の幅厚比は23.3となっている。低降伏点鋼19のパネルの中央にSS400のリブ25を設置し、溝形鋼13のフランジ23の内側と低降伏点鋼19に両面隅肉溶接する。
なお、低降伏点鋼19は、厚さ9mmのものを用いてもよく、この場合には低降伏点鋼19の短辺側の幅厚比は35となる。また、この場合には、低降伏点鋼19を接合するためにウェブ内側からも全周隅肉溶接を施すようにする。
5 下側の梁 7 下側ブラケット部材 9 高力ボルト
11 ダンパー部材 12 角形鋼管 13 溝形鋼
15 厚板 17 ウェブ 19 低降伏点鋼
21 ボルト穴 23 フランジ 24 補剛板
25 リブ 27 鉄筋コンクリート部 29 孔
Claims (8)
- 鋼材のせん断塑性変形を利用した履歴型のエネルギー吸収部材であって、上下に配置されて構造物に固定される一対の角形鋼管状部材を備えてなるブラケット部材と、これら一対のブラケット部材間の上下で対応する面間に亘って塑性化部を有するダンパー部材をボルト接合してなることを特徴とするエネルギー吸収部材。
- 前記ダンパー部材は、前記ブラケット部材にボルト接合可能な上下一対の板材と、該板材間に溶接接合されると共にウェブ部分に開口部が形成された溝形形状の鋼材と、前記開口部に接合されて塑性変形によりエネルギーを吸収するせん断パネルとを備えてなることを特徴とする請求項1記載のエネルギー吸収部材。
- 前記せん断パネルの少なくとも短辺側の幅厚比が20から60の範囲に設定されていることを特徴とする請求項2記載のエネルギー吸収部材。
- 前記せん断パネルに、低降伏点鋼を用いることを特徴とする請求項2または3に記載のエネルギー吸収部材。
- 前記せん断パネルの座屈を防止するための補剛材を有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のエネルギー吸収部材。
- 前記ブラケット部材は、鉄筋コンクリート又はプレキャスト鉄筋コンクリートからなる鉄筋コンクリート部を有し、該鉄筋コンクリート部に前記角形鋼管状部材がその径の1.0倍以上埋め込まれており、前記ブラケット部は前記鉄筋コンクリート部を介して構造物に固定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエネルギー吸収部材。
- 前記角形鋼管状部材と、前記鉄筋コンクリートまたはプレキャスト鉄筋コンクリートとの間の付着力を増大するための付着力増大手段を設けたことを特徴とする請求項6記載のエネルギー吸収部材。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載のエネルギー吸収部材を設置したことを特徴とする構造物。
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