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JP2015101780A - モールドの製造方法、および微細凹凸構造を表面に有する成形体とその製造方法 - Google Patents

モールドの製造方法、および微細凹凸構造を表面に有する成形体とその製造方法 Download PDF

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雅資 井川
Masashi Igawa
雅資 井川
広志 尾野本
Hiroshi Onomoto
広志 尾野本
英子 岡本
Hideko Okamoto
英子 岡本
秀樹 益田
Hideki Masuda
秀樹 益田
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Abstract

【課題】アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドを簡便かつ生産性よく製造でき、しかも耐久性に優れたモールドを製造できるモールドの製造方法、および微細凹凸構造を表面に有する成形体とその製造方法の提供。【解決手段】アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドを製造する方法であって、アルミニウム基材をリン酸電解液に浸漬して電圧を印加し、アルミニウム基材の表面を陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程(a)と、前記工程(a)の後、アルミニウム基材をリン酸電解液に浸漬した状態で電圧を実質的に印加せずに保持し、前記工程(a)で形成された酸化皮膜の少なくとも一部を除去する工程(b)を有し、前記リン酸電解液の濃度が0.05mol/L以上2.5mol/L以下であり、液温が18℃以上45℃以下である、モールドの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、モールドの製造方法、および微細凹凸構造を表面に有する成形体とその製造方法に関する。
近年、微細加工技術の進歩により、成形体の表面にナノスケールの微細凹凸構造を付与することが可能となった。ナノスケールの微細凹凸構造は、例えばモスアイ効果と呼ばれる反射防止機能や、ロータス効果と呼ばれる撥水機能のように、構造由来の機能が発現することから、ナノスケールの微細凹凸構造を産業上に利用する検討が盛んに行われている。
成形体の表面に微細凹凸構造を付与する技術は様々である。これらのうち、モールドの表面に形成された微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写する方法は、簡便かつ少ない工程で成形体の表面に微細凹凸構造を付与できるため、工業生産に適している。近年、微細凹凸構造を表面に有する大面積のモールドを簡便に製造する方法として、アルミニウム基材を陽極酸化することによって複数の細孔を有する酸化皮膜(陽極酸化ポーラスアルミナ)を利用する方法が注目されている。
陽極酸化によって形成される酸化皮膜においては、陽極酸化時の印加電圧に比例して細孔の間隔(ピッチ)が大きくなる傾向にある。細孔の間隔を比較的簡単に制御できる点においても、該方法は、モールドの製造方法として適している。
好適な深さであり、規則的な配列の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドを製造するには、陽極酸化を利用して、陽極酸化を二段階に分けて実施する方法が適している。すなわち、下記の工程(i)〜工程(iii)を順次行い、モールドに好適な細孔を得る。
工程(i):アルミニウム基材の表面を陽極酸化し、細孔の深さを無視して細孔を規則的に配列させる工程。
工程(ii):工程(i)で形成された酸化皮膜の一部または全部を除去する工程。
工程(iii):工程(ii)の後、アルミニウム基材を再び陽極酸化して、規則的な配列を保ったまま任意の深さの細孔を形成する工程。
特に工程(iii)において、陽極酸化により形成された細孔の孔径を拡大するエッチングを併用すれば、陽極酸化とエッチングを繰り返すことで細孔を任意のテーパー形状や細孔の稜線が階段状の略円錐形に調整することができる。
ところで、陽極酸化を利用してモールドを製造する際、細孔の形状を精密に設計するためには、通常、陽極酸化とエッチングに用いる処理液(電解液やエッチング液)の薬品種、濃度、および温度などを別々に設計する。すなわち、陽極酸化とエッチングには、別々の処理液が必要となる。
しかし、陽極酸化とエッチングに別々の処理液を用いるということは、処理液を張る処理槽の数が増えるだけにとどまらず、各処理に付帯する温度調整設備や洗浄設備、さらにはそれらを設置するスペースなども必要となり、工業化の観点からは著しく不利である。また、アルミニウム基材の処理槽間の移動を考慮すると、生産性にも劣る。
陽極酸化とエッチングを同一の処理液で実施した例は、これまでにも報告されている。
例えば特許文献1には、光学素子の金型を陽極酸化にて作製する方法が開示されている。特許文献1では、リン酸水溶液にアルミニウムを浸漬して、印可通電の有無で陽極酸化とエッチングを切り替えている。
特許文献2には、アルミニウム基材をリン酸水溶液に浸漬して、印可通電の有無の繰り返しにより、細孔の形状を調整して光学素子の金型を製造する方法が開示されている。
特許文献3には、モールドの基材を処理液に浸漬し、印可電圧の切り替えのみで陽極酸化とエッチングを切り替えて実行し、モールドを製造する方法が開示されている。
特開2012−58424号公報 特開2013−7886号公報 特開2013−130819号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法は実際には、陽極酸化とエッチングを別々の処理液で実施する場合に比べて、細孔径(細孔の開口部の径)が十分に広がりきらず、モールドの表面に形成された微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写する際に離型不良が起こりやすいなど、モールドとしての耐久性に問題があった。しかも、電圧印可時に流れる電流密度と細孔径の拡大に要する時間とのバランスをとることが困難であり、モールドの生産性が低下しやすかった。
このように、陽極酸化とエッチングを同一の処理液で実施する場合は、必ずしも簡便にモールドを作製できるわけではなかった。
また、特許文献1では、細孔のピッチが400nmを超えるモールドを作製しているが、細孔のピッチは陽極酸化での電圧に比例する傾向にあるため、400nm以上のピッチを得るには相応の高電圧設備が必要であり、経済的ではない。また、このモールドを用いて得られる成形体の表面には、400nmを超えるピッチの微細凹凸構造が転写されるが、400nmを超えるピッチでは可視光線の散乱が起こりやすく、反射防止性能等が損なわれる恐れがあった。
特許文献2では、処理液に関して好ましい種類や温度・濃度範囲には言及していない。特許文献2の実施例では10℃の5重量%リン酸水溶液を使用しているが、この条件では60V印可時の電流密度が小さく、しかもエッチング速度も著しく遅いため、モールドの生産性が悪い。また、細孔径が小さいモールドでは、転写時に樹脂が細孔に入りにくく、モールドの転写性に劣る傾向にある。また、硬化させた樹脂をモールドから離型する場合にも、細孔径が小さいと樹脂が細孔内に残ってしまい、離型不良の原因にもなりやすい。
特許文献3では、モールドとしての耐久性と生産性の両方を満足させる条件、特に陽極酸化条件およびエッチング条件については言及していない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドを簡便かつ生産性よく製造でき、しかも耐久性に優れたモールドを製造できるモールドの製造方法、および微細凹凸構造を表面に有する成形体とその製造方法の提供を課題とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、陽極酸化時の電解液の条件を種々検討することで、電圧印可しない時に適度なエッチング速度を有するのみならず、数十Vの低い電圧域で陽極酸化したとき電流密度が適度に流れる条件を見つけた。そこで、陽極酸化とエッチングを同一の処理液(電解液)で実施しながらも、モールドの生産性を損なうことなく、しかも耐久性に優れたモールドの製造条件を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1] アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドを製造する方法であって、下記の工程(a)、(b)を有し、かつ下記リン酸電解液の濃度が0.05mol/L以上2.5mol/L以下であり、液温が18℃以上45℃以下である、モールドの製造方法。
工程(a):アルミニウム基材をリン酸電解液に浸漬して電圧を印加し、アルミニウム基材の表面を陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
工程(b):前記工程(a)の後、アルミニウム基材をリン酸電解液に浸漬した状態で電圧を実質的に印加せずに保持し、前記工程(a)で形成された酸化皮膜の少なくとも一部を除去する工程。
[2] 前記工程(a)において、前記アルミニウム基材に印加される電圧が、20V以上150V以下である、[1]に記載のモールドの製造方法。
[3] [1]または[2]に記載のモールドの製造方法でモールドを製造し、そのモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写する、微細凹凸構造を表面に有する成形体の製造方法。
[4] 微細凹凸構造を表面に有する成形体であって、前記微細凹凸構造が、[1]または[2]に記載のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造の反転構造である、微細凹凸構造を表面に有する成形体。
本発明によれば、アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドを簡便かつ生産性よく製造でき、しかも耐久性に優れたモールドを製造できるモールドの製造方法、および微細凹凸構造を表面に有する成形体とその製造方法を提供できる。
陽極酸化アルミナを表面に有するモールドの製造工程を示す断面図である。 微細凹凸構造を表面に有する成形体の製造装置の一例を示す構成図である。 微細凹凸構造を表面に有する成形体の一例を示す断面図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「細孔」とは、アルミニウム基材の表面の酸化皮膜に形成された微細凹凸構造の凹部のことをいう。
また、「細孔の間隔」は、隣接する細孔同士の中心間距離を意味する。
また、「突起」とは、成形体の表面に形成された微細凹凸構造の凸部のことをいう。
また、「微細凹凸構造」は、凸部または凹部の平均間隔がナノスケールであるの構造を意味する。
また、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートの総称であり、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、「(メタ)アクリロニトリル」はアクリロニトリルおよびメタクリロニトリルの総称であり、「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミドおよびメタクリルアミドの総称である。
また、「活性エネルギー線」は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
また、「透明」とは、少なくとも波長400〜760nmの光を透過することを意味する。
「モールドの製造方法」
本発明のモールドの製造方法は、下記の工程(a)、(b)を有する。また、工程(b)の後に下記工程(c)を有することが好ましい。
工程(a):アルミニウム基材をリン酸電解液に浸漬して電圧を印加し、アルミニウム基材の表面を陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
工程(b):前記工程(a)の後、アルミニウム基材をリン酸電解液に浸漬した状態で電圧を実質的に印加せずに保持し、前記工程(a)で形成された酸化皮膜の少なくとも一部を除去する工程。
工程(c):前記工程(a)と、前記工程(b)とを交互に繰り返す工程。
以下、各工程について詳細に説明する。
<工程(a)>
工程(a)は、アルミニウム基材をリン酸電解液に浸漬して電圧を印加し、アルミニウム基材の表面を陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程である。
アルミニウム基材の形状は特に限定されず、板状、円柱状、円筒状等、モールドとして使用可能な形状であればどのような形状であってもよい。
アルミニウム基材としては、アルミニウム基材表面が鏡面であるものが好ましい。アルミニウム基材表面が鏡面であれば、透明な成形体にモールドとして使用した場合でも、透明度が損なわれにくい。アルミニウム基材表面の鏡面化の手段としては特に制限されず、例えばアルミニウム基材の表面を物理的に切削または研磨する方法;アルミニウム基材を電解研磨する方法;アルミニウム基材を化学研磨する方法;これらの組み合わせなどが挙げられる。
アルミニウム基材の純度は、98質量%以上が好ましく、99.0質量%以上がより好ましく、99.5質量%以上がさらに好ましく、99.9質量%以上が最も好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。
ところで、純度の高いアルミニウムを用いた場合、所望の形状(例えば円筒状など)に加工する際に、アルミニウムが柔らかすぎて加工しにくくなる場合がある。そこで、アルミニウムにマグネシウムを添加して所定の形状に加工したものをアルミニウム基材として用いてもよい。マグネシウムを添加することで、アルミニウムの強度が高まるため加工しやすくなる。ただし、マグネシウムの添加量が増えるに連れて、得られるモールドの微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写した成形体のヘイズが上昇する傾向にある。よって、マグネシウムの添加量はアルミニウムの強度と成形体のヘイズを考慮して決定するのが好ましく、通常は、アルミニウム基材の総質量に対して0.1〜2質量%程度が好ましい。
工程(a)では、処理槽中でリン酸電解液を用いてアルミニウム基材を陽極酸化する。リン酸電解液は、電圧を印可したときの陽極酸化の反応速度と、下記工程(b)にて電圧を印可しない時の酸化皮膜の溶解速度のバランスがとりやすく、一種類の処理液で陽極酸化(工程(a))とエッチング(工程(b))を行うことができる。すなわち、リン酸電解液は、エッチング液を兼ねることができ、簡便かつ生産性よくモールドを製造するのに適している。
リン酸電解液の温度は18℃以上45℃以下であり、20℃以上40℃以下が好ましい。リン酸電解液の温度が18℃より低いと、下記工程(b)でのエッチング速度が不十分となり、モールドの製造時間が著しく長くなり、モールドの生産性が低下する。また、下記工程(b)を経てもモールド表面に形成される細孔の径が小さいため、モールドとして使用した際に転写不良が起こりやすい。一方、リン酸電解液の温度が45℃より高いと、工程(a)にて適用できる電圧域が狭くなる。そのため、例えば高めの電圧で陽極酸化すると、著しく高い電流密度が瞬間的に流れる「ヤケ」と呼ばれる現象を招き、細孔が壊れたり、モールドの外観が損なわれたりしやすくなる。また、溶媒の蒸発によりリン酸電解液の濃度が変化してしまう場合がある。
リン酸電解液の濃度は0.05mol/L以上2.5mol/L以下である。リン酸電解液の濃度が0.05mol/Lよりも薄いと、工程(a)での反応速度(陽極酸化速度)が遅く、生産性の低下を招く。また、下記工程(b)を経てもモールド表面に形成される細孔の径が小さいため、モールドとして使用した際に転写不良が起こりやすい。一方、リン酸電解液の濃度が2.5mol/Lよりも濃いと、工程(a)にて適用できる電圧域が狭くなる。そのため、例えば高めの電圧で陽極酸化すると「ヤケ」が発生し、細孔が壊れたり、モールドの外観が損なわれたりしやすくなる。
リン酸電解液の溶媒としては特に制限されないが、水、アルコール、エーテルなどが挙げられる。
工程(a)における印加電圧は、20V以上150V以下が好ましく、30V以上100V以下がより好ましく、40V以上80V以下がさらに好ましい。特に印加電圧が40V以上であれば、細孔の間隔が比較的大きい(100nmを超える)酸化皮膜を簡便に形成できる。一方、電圧が150V以下であれば、可視光の波長よりも小さい間隔で細孔を形成できるため、得られるモールドの微細凹凸構造を転写した成形体のヘイズが上昇するのを抑制できる。
工程(a)における通電時間は、5秒以上60秒以下が好ましい。通電時間が5秒以上であれば、最終的に得られる酸化皮膜の厚さを後述する80nm以上にしやすい。厚さが80nm未満の酸化皮膜では、細孔の深さも80nmに満たず、モールドとして用いた場合、得られる成形体が十分な反射防止性能を示さないおそれがある。一方、通電時間が60秒以下であれば、最終的に得られる酸化皮膜の厚さを後述する0.8μm以下にしやすい。厚さが0.8μm超の酸化皮膜では、酸化皮膜が厚くなる分だけ細孔も深くなるため、モールドとして用いた場合、離型不良を起こしやすくなるおそれがある。
工程(a)では、電圧印加直後、すなわち、電圧の印加を開始してから10秒間の電流密度を20mA/cm以下、より好ましくは10mA/cm以下としてもよい。電圧印加直後の電流密度を20mA/cm以下とすることは、すなわち、電流の跳ね上がりを抑制することを意味し、モールド表面の白濁を抑制できる。その結果、得られるモールドの微細凹凸構造を転写した成形体のヘイズが上昇するのをより効果的に抑制でき、反射率がより低い成形体が得られる。
ところで、同一の濃度、同一の印加電圧であっても、電解液の温度が変わるとアルミニウム基材表面での反応が均一に進行しにくくなることがある。また、電圧を印加して陽極酸化を実施すると、電解液は印可電圧と流れた電流量とによるジュール熱よって温度が上昇する傾向にある。電解液は温度が変化すると電気伝導度も変化し、それにより電流密度が変動してしまう原因となる場合がある。よって、陽極酸化中はリン酸電解液の温度を上記範囲内において一定に管理することが好ましい。
なお、リン酸はアルミニウムの陽極酸化で代表的に用いられる電解液であるが、リン酸電解液を用いて陽極酸化を行う場合は、規則性の高い細孔を形成することを意図して、0〜5℃の低温域で例えば電圧195Vの条件で陽極酸化するのが一般的である。
対して、工程(a)における陽極酸化の条件は、温度も印可電圧も上述したとおり、一般的な条件から大きくかい離しているといえる。一般的に、リン酸を電解液として用いて陽極酸化する場合、電流が流れにくく陽極酸化の進みが非常に遅くなってしまう。そのため、高電圧を印加し電流を流れやすくすることが一般的に行われているが、高電圧を印加するとアルミニウム基材の発熱が大きくなってしまうため、電解液を低温に維持し、やけや熱暴走を抑制する必要があった。
しかしながら、本発明においては、電解液として用いるリン酸電解液の濃度を0.05〜2.5mol/Lと特定の範囲とすることで、0〜5℃の低温域よりも高い温度(すなわち、18℃以上45℃以下)で工程(a)の陽極酸化を実施することができる。特に、印加電圧を20〜150Vと一般的に知られている範囲から大幅に低くすれば、低温域よりも高い温度で工程(a)の陽極酸化をより容易に実施することができる。
<工程(b)>
工程(b)は、前記工程(a)の後、アルミニウム基材をリン酸電解液に浸漬した状態で電圧を実質的に印加せずに保持し、前記工程(a)で形成された酸化皮膜の少なくとも一部を除去する工程である。
工程(a)の後に工程(b)を行うと、すなわち、工程(a)の後に電圧の印加を中断して、工程(a)と同じ処理槽中でリン酸電解液にアルミニウム基材を保持することで、工程(a)によって形成された酸化皮膜の一部が除去されて、細孔の孔径が拡大する。よって、工程(b)は孔径拡大処理工程でもある。
ここで、「電圧を実質的に印加しない」および「電圧の印加を中断する」とは、アルミニウム基材に印加する電圧を0Vとすることだけでなく、アルミニウム基材に電流が流れず酸化皮膜の形成が進まない程度まで電圧を低下させることも含む。
工程(b)の時間が長いほど、すなわち、電圧を印加せずにアルミニウム基材をリン酸電解液中に浸漬させる時間が長いほど、細孔の孔径は大きくなる傾向にある。ただし、時間が長すぎると酸化皮膜がすべて溶解し、細孔が消失してしまう。工程(a)での印可電圧により、酸化皮膜に生じる細孔の間隔も変動するため、すなわち、隣接する細孔同士を隔てる壁の厚さが変動するため、工程(b)の時間は一概に決められないが、モールドの生産性を考慮すると、30分以内が好ましく、20分以内がより好ましく、10分以内がさらに好ましい。
工程(b)におけるリン酸電解液の温度は、18℃以上45℃以下であれば、工程(a)におけるリン酸電解液の温度と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、工程(b)中は、リン酸電解液の温度を上記範囲内において一定に管理することが好ましい。
<工程(c)>
工程(c)は、前記工程(a)と、前記工程(b)とを交互に繰り返す工程である。
工程(b)の後に工程(a)を行うと、既存の酸化皮膜の下に新たな酸化皮膜が形成され、既存の細孔の底部から下方に延びる新たな細孔が形成される。
工程(a)と工程(b)とを交互に繰り返すことによって、細孔の形状を開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状にでき、その結果、周期的な複数の細孔からなる酸化皮膜が表面に形成されたモールドを得ることができる。
工程(a)および工程(b)の条件、例えば、陽極酸化のリン酸電解液の温度や濃度、酸化時間、孔径拡大処理の時間、孔径拡大処理中のリン酸電解液の温度を上述した範囲内において適宜設定することによって、様々な形状の細孔を有する酸化皮膜を形成できる。モールドを用いて製造される成形体の用途等に応じて、これら条件を適宜設定すればよい。
工程(a)の回数は、回数が多いほど細孔を滑らかなテーパー形状にすることができる点から、工程(c)の前に行った工程(a)も含めて少なくとも3回が好ましい。同じく、工程(b)の回数も、回数が多いほど細孔を滑らかなテーパー形状にすることができる点から、工程(c)の前に行った工程(b)も含めて少なくとも3回が好ましい。それぞれの回数が2回以下の場合、非連続的に細孔の孔径が減少する傾向にあり、このようなモールドを用いて反射防止物品(反射防止膜等)を製造した場合、その反射率低減効果が劣る可能性がある。
工程(c)は、工程(a)で終了してもよく、工程(b)で終了してもよい。
工程(a)および工程(c)における陽極酸化を長時間施すほど深い細孔を得ることができるが、微細凹凸構造を転写するためのモールドとして用いる場合、工程(c)を経て最終的に得られる酸化皮膜の厚さは、80nm以上0.8μm以下程度でよい。また、工程(a)および工程(b)を繰り返す際に、前回に行った各工程と同一の条件で行う必要はなく、上述した範囲内であれば、各種条件を適宜変更しても構わない。
また、工程(b)における孔径拡大処理が長いほどモールドの製造時間は長くなるが、短すぎても孔径が十分に拡大されず、モールドとしての使用が難しくなる。すなわち、孔径拡大が不十分な場合、形成される細孔の径(細孔の開口部の径)が小さいため、転写時に樹脂が細孔に入りにくく、モールドの転写性が悪化する可能性がある。また、硬化させた樹脂をモールドから離型する場合にも、細孔径が小さいと樹脂が細孔内に残ってしまい、離型不良の原因にもなりやすい。これらの問題は細孔径が大きいほど起こりにくいが、平均して60nm以上の細孔径であればモールドとしての実用に耐えうる。
<他の工程>
本発明のモールドの製造方法では、工程(a)の前処理工程として、下記工程(α)、(β)を行ってもよい。
工程(α):アルミニウム基材を電解液に浸漬して電圧を印加し、アルミニウム基材の表面を陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
工程(β):前記工程(α)で形成された酸化皮膜の少なくとも一部を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
前処理工程は、アルミニウム基材の表面に細孔発生点、すなわち細孔の発生をその場所に誘発する起点を形成する工程である。
陽極酸化の初期に形成される酸化皮膜は、細孔の位置や大きさが不均一で規則性は皆無であるが、酸化皮膜が厚くなるとともに、徐々に細孔の配列の規則性が増していく。あらかじめ細孔発生点を形成しておけば、特に、細孔発生点が規則的に配列している場合、陽極酸化の初期、すなわち形成される酸化皮膜が薄い状態であっても、規則的に配列した細孔が形成され、サブミクロンオーダーで細孔の深さが調節され、規則的に配列した細孔を容易に製造することができる。
(工程(α))
工程(α)で用いる電解液としては、酸性水溶液またはアルカリ性水溶液が挙げられ、酸性水溶液が好ましい。酸性水溶液としては、無機酸類(硫酸、リン酸等)、有機酸類(シュウ酸、マロン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸等)が挙げられ、硫酸、シュウ酸、リン酸が特に好ましい。
リン酸を電解液として用いる場合:
工程(α)において、リン酸を電解液として用いる場合、リン酸の濃度は0.05mol/L以上2.5mol/L以下が好ましい。シュウ酸の濃度が2.5mol/Lを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがあったり、ヤケが発生し酸化皮膜が破壊されたりしてしまう可能性がある。リン酸の濃度が0.05mol/L未満であると、反応速度(陽極酸化速度)が遅く、生産性の低下を招く場合がある。
電解液の温度は、40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。電解液の温度が40℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
シュウ酸を電解液として用いる場合:
工程(α)において、シュウ酸を電解液として用いる場合、シュウ酸の濃度は0.7mol/L以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7mol/Lを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
硫酸を電解液として用いる場合:
工程(α)において、硫酸を電解液として用いる場合、硫酸の濃度は0.7mol/L以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7mol/Lを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
工程(α)において、アルミニウム基材に印加する電圧値及び印加時の条件は、前記工程(a)と同じであってもよい。また、酸化皮膜の厚さは電流密度と酸化時間の積である積算電気量に比例するため、形成する酸化皮膜の厚さに応じて、電圧、電流密度、酸化時間を適宜変更すればよい。アルミニウム基材に電圧を印加する時間は、モールドの生産性の観点から5分以上120分以下であることが好ましい。
工程(α)において形成される酸化皮膜の厚さは、0.5μm以上10μm以下が好ましい。酸化皮膜の厚さがこの範囲内にあれば、後述の工程(β)において酸化皮膜を除去した際に、アルミニウム基材の表面の機械加工の痕は十分に除かれ、かつ結晶粒界の段差が視認できるほど大きくはないため、モールド由来のマクロな凹凸が成形体本体の表面へ転写するのを回避できる。
工程(α)において形成される酸化皮膜の厚さは、陽極酸化にて消費される合計の電気量に比例する。合計の電気量や、電圧ごとに消費される電気量の比を調整することで、酸化皮膜の厚さ、および初期陽極酸化で形成される酸化皮膜の厚さの比を制御することができる。
(工程(β))
工程(β)は、工程(α)で形成された酸化皮膜の少なくとも一部を除去する酸化皮膜除去工程である。工程(β)において、酸化皮膜の一部または全部を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、アルミナ(酸化皮膜)を選択的に溶解する溶液に浸漬する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸・リン酸混合溶液等が挙げられる。
工程(β)において、前記溶液中にアルミニウム基材を浸漬する時間は、除去する酸化皮膜の厚さやクロム酸・リン酸の濃度に応じて適宜調整すればよいが、モールドの生産性の観点から、15〜300分であることが好ましい。
以下、図1を参考に、上記工程(a)、(b)を含む本発明のモールドの製造方法について、詳細に説明する。また、ここでは、上述の工程(c)、(α)、(β)を含む場合の製造方法について説明する。
まず、機械加工されたアルミニウム基材10に電圧を印加し、前記アルミニウム基材の表面を陽極酸化して酸化皮膜を形成させる(工程(α))。工程(α)の初期に形成される細孔は、規則性が低くランダムに細孔が発生するが、長時間陽極酸化を行うと、細孔が深くなるに従って、徐々に細孔の配列周期の規則性が高くなっていく。これにより、例えば図1に示すように、アルミニウム基材10の表面に、規則性が高く配列した複数の細孔12を有する酸化皮膜14を形成することができる。また、工程(α)の後に、細孔がランダムに発生した細孔上部などの陽極酸化皮膜の少なくとも一部、または陽極酸化皮膜を全て除去することで(工程(β))、例えば図1に示すように、アルミニウム基材10の表面に、規則性が高く配列した複数の窪み16を有する酸化皮膜14を形成することができる。
複数の窪み16が形成されたアルミニウム基材を用い、上記工程(a)、(b)を行うことで、窪み16が細孔発生点として作用し、細孔がより規則的に配列したモールドを製造することができる。
具体的には、まず、複数の窪み16が形成されたアルミニウム基材10を、リン酸電解液中に浸漬し、電圧を印加して陽極酸化を行うと、図1に示すように、アルミニウム基材10が陽極酸化されて、複数の細孔12を有する酸化皮膜14が再び形成される(工程(a))。
そして、アルミニウム基材10への電圧の印加を中断し、同じ処理槽中でアルミニウム基材10をリン酸電解液中に保持することで、図1に示すように、形成された酸化皮膜14の一部が除去されて、細孔12の孔径が拡大する(工程(b))。
さらに、電圧を印加する工程(a)、および電圧の印加を中断して、アルミニウム基材10をリン酸電解液中に浸漬させたまま保持する工程(b)を交互に繰り返すことによって(工程(c))、図1に示すように、細孔12の形状を開口部から深さ方向に徐々に径が収縮するテーパー形状とすることができる。その結果、周期的な複数の細孔12からなる酸化皮膜14がアルミニウム基材10の表面に形成されたモールド18を得ることができる。
<作用効果>
以上説明した本発明のモールドの製造方法にあっては、陽極酸化に用いる電解液の種類と濃度と温度を特定することで、1つの処理槽で陽極酸化速度とエッチング速度を共に好適な範囲とすることができる。よって、本発明であれば、陽極酸化工程の終了後にアルミニウム基材を処理槽から引き上げて、別の処理槽に浸漬させてエッチングを行うという作業が不要となり、製造工程、及び装置の簡略化が可能である。しかも、陽極酸化とエッチングとを同一の処理液で実施しながらも、モールドの生産性を損なうことなく、かつ離型不良が起こりにくい耐久性に優れたモールドを製造できる。
なお、ここでいう陽極酸化とエッチングには、上述した前処理工程(工程(α)、(β))は含まれない。
「モールド」
本発明のモールドの製造方法によれば、アルミニウム基材の表面に、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状の細孔が比較的規則的に配列して形成され、その結果、微細凹凸構造を有する酸化皮膜(陽極酸化ポーラスアルミナ)が表面に形成されたモールドを製造できる。
このようにして得られるモールドの隣接する細孔の平均間隔は、可視光の波長以下が好ましく、100nm以上400nm以下がより好ましい。細孔の平均間隔が100nm以上であれば、モールドの表面を転写して得られる成形体(反射防止物品等)の反射防止性能を損なうことなく耐擦傷性能を向上できる。しかも、突起同士の合一に起因する成形体の白化を抑制することができる。一方、細孔の平均間隔が400nm以下であれば、モールドの表面の転写によって得られた成形体の表面(転写面)において可視光の散乱が起こりにくくなり、十分な反射防止機能が発現するため、反射防止膜等の反射防止物品の製造に適する。
細孔の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する細孔間の間隔(細孔の中心から隣接する細孔の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
また、モールドを反射防止物品(反射防止膜等)の製造に用いる場合、細孔の平均間隔が400nm以下であるとともに、細孔の平均深さが80nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。細孔の平均深さが80nm未満のモールドを用いた場合、反射防止物品の反射防止性能が十分ではなくなるおそれがある。
また、モールドの細孔のアスペクト比(=平均深さ/平均間隔)は、0.25以上が好ましく、0.5以上がさらに好ましく、0.75以上がもっとも好ましい。アスペクト比が0.25以上であれば、反射率が低い表面を形成でき、その入射角依存性も十分に小さくなる。
細孔の平均深さは、電子顕微鏡観察によって倍率30000倍で観察したときにおける、細孔の最低部と、細孔間に存在する凸部の最頂部との間の垂直距離を50点測定し、これらの値を平均したものである。
モールドの微細凹凸構造が形成された表面は、離型が容易になるように、離型処理が施されていてもよい。離型処理の方法としては、例えば、リン酸エステル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、フッ素ポリマー等をコーティングする方法;フッ素化合物を蒸着する方法;フッ素系表面処理剤またはフッ素シリコーン系表面処理剤をコーティングする方法などが挙げられる。
また、本発明のモールドの製造方法により得られるモールドを用いれば微細凹凸構造を表面に有する成形体を一つのモールドから多量に得ることができる。
「成形体の製造方法」
本発明の、微細凹凸構造を表面に有する成形体の製造方法は、本発明のモールドの製造方法でモールドを製造し、そのモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造を、成形体本体の表面に転写する方法である。
モールドの微細凹凸構造(細孔)を転写して製造された成形体は、その表面にモールドの微細凹凸構造の反転構造(突起)が、鍵と鍵穴の関係で転写される。
モールドの微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写する方法としては、例えば、モールドと成形体本体(透明基材)の間に未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填し、モールドの微細凹凸構造に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が接触した状態で、活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた後にモールドを離型する方法が好ましい。これによって、成形体本体の表面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸構造が形成された成形体を製造できる。得られた成形体の微細凹凸構造は、モールドの微細凹凸構造の反転構造となる。
<成形体本体>
成形体本体(透明基材)としては、活性エネルギー線の照射を、該成形体本体を介して行うため、活性エネルギー線の照射を著しく阻害しないものが好ましい。成形体本体の材料としては、例えばポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ガラスなどが挙げられる。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる方法は、熱硬化性樹脂組成物を用いる方法に比べて加熱や硬化後の冷却を必要としないため、短時間で微細凹凸構造を転写することができ、量産に好適である。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の充填方法としては、モールドと成形体本体(透明基材)の間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給した後に圧延して充填する方法;活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布したモールド上に成形体本体をラミネートする方法;あらかじめ成形体本体上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布してモールドにラミネートする方法などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合反応性化合物と、活性エネルギー線重合開始剤とを含有する。上記の他に、用途に応じて非反応性のポリマーや活性エネルギー線ゾルゲル反応性成分が含まれていてもよく、増粘剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、溶剤、無機フィラー等の各種添加剤が含まれていてもよい。
重合反応性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
ラジカル重合性結合を有する単官能モノマーとしては、(メタ)アクリレート誘導体(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、スチレン誘導体(スチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリルアミド誘導体((メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合性結合を有する多官能モノマーとしては、二官能性モノマー(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等)、三官能モノマー(ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等)、四官能以上のモノマー(コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等)、二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーなどが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。
分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するオリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマーなどが挙げられる。
活性エネルギー線重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる際に用いる活性エネルギー線の種類に応じて適宜選択することが好ましい。
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、カルボニル化合物(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等)、硫黄化合物(テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、チオキサントン(2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等)、アセトフェノン(ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等)、ベンゾインエーテル(ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等)、アシルホスフィンオキサイド(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における活性エネルギー線重合開始剤の含有量は、重合反応性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましい。活性エネルギー線重合開始剤が0.1質量部未満では、重合が進行しにくい。一方、活性エネルギー線重合開始剤が10質量部を超えると、硬化樹脂が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。
非反応性のポリマーとしては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、例えば、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物などが挙げられる。
アルコキシシラン化合物としては、RSi(OR’)で表されるものが挙げられる。RおよびR’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、xおよびyはx+y=4の関係を満たす整数である。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシランなどが挙げられる。
アルキルシリケート化合物としては、RO[Si(OR)(OR)O]で表されるものが挙げられる。R〜Rはそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表し、zは3〜20の整数を表す。具体的にはメチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケートなどが挙げられる。
<製造装置>
微細凹凸構造を表面に有する成形体は、例えば、図2に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
微細凹凸構造(図示略)を表面に有するロール状モールド20と、ロール状モールド20の表面に沿って移動する帯状のフィルム42(成形体本体)との間に、タンク22から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を供給する。
ロール状モールド20と、空気圧シリンダ24によってニップ圧が調整されたニップロール26との間で、フィルム42および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を、フィルム42とロール状モールド20との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド20の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
ロール状モールド20の下方に設置された活性エネルギー線照射装置28から、フィルム42を通して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を硬化させることによって、ロール状モールド20の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44を形成する。
剥離ロール30により、表面に硬化樹脂層44が形成されたフィルム42をロール状モールド20から剥離することによって、図3に示すような成形体40を得る。
活性エネルギー線照射装置28としては、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化が進行するエネルギー量であればよく、通常、100〜10000mJ/cm程度である。
<成形体>
このようにして製造された成形体40は、図3に示すように、フィルム42(成形体本体)の表面に硬化樹脂層44が形成されたものである。
硬化樹脂層44は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
本発明により得られたモールドを用いた場合の成形体40の表面の微細凹凸構造は、酸化皮膜の表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる複数の突起46を有する。
微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
(用途)
本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体は、表面の微細凹凸構造によって、反射防止性能、撥水性能等の種々の性能を発揮する。
微細凹凸構造を表面に有する成形体がシート状またはフィルム状の場合には、反射防止膜として、例えば、画像表示装置(テレビ、携帯電話のディスプレイ等)、展示パネル、メーターパネル等の対象物の表面に貼り付けたり、インサート成形したりして用いることができる。また、撥水性能を活かして、風呂場の窓や鏡、太陽電池部材、自動車のミラー、看板、メガネのレンズ等、雨、水、蒸気等に曝されるおそれのある対象物の部材としても用いることができる。
微細凹凸構造を表面に有する成形体が立体形状の場合には、用途に応じた形状の成形体本体(透明基材)を用いて反射防止物品を製造しておき、これを上記対象物の表面を構成する部材として用いることもできる。
また、対象物が画像表示装置である場合には、その表面に限らず、その前面板に対して、微細凹凸構造を表面に有する成形体を貼り付けてもよいし、前面板そのものを、微細凹凸構造を表面に有する成形体から構成することもできる。例えば、イメージを読み取るセンサーアレイに取り付けられたロッドレンズアレイの表面、FAX、複写機、スキャナ等のイメージセンサーのカバーガラス、複写機の原稿を置くコンタクトガラス等に、微細凹凸構造を表面に有する成形体を用いても構わない。また、可視光通信等の光通信機器の光受光部分等に、微細凹凸構造を表面に有する成形体を用いることによって、信号の受信感度を向上させることもできる。
また、微細凹凸構造を表面に有する成形体は、上述した用途以外にも、光導波路、レリーフホログラム、光学レンズ、偏光分離素子等の光学用途や、細胞培養シートとしての用途に展開できる。
なお、微細凹凸構造を表面に有する成形体は、図示例の成形体40に限定はされない。例えば、微細凹凸構造は、硬化樹脂層44を設けることなく、熱インプリント法によってフィルム42の表面に直接形成されていてもよい。ただし、ロール状モールドを用いて効率よく微細凹凸構造を形成できる点から、硬化樹脂層44の表面に微細凹凸構造が形成されていることが好ましい。
<作用効果>
以上説明した本発明の、微細凹凸構造を表面に有する成形体の製造方法にあっては、本発明のモールドの製造方法でモールドを製造し、そのモールドの表面に形成された微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写しているため、ヘイズが低く、反射率が十分に低減された成形体を製造できる。
また、本発明によれば、本発明のモールドの製造方法で得られたモールドを用いることによって、このモールドの微細凹凸構造の反転構造を表面に有する成形体を一工程で簡便に製造できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<モールドの細孔の測定>
酸化皮膜が表面に形成されたモールドの一部を切り取って、表面に白金を1分間蒸着し、電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM−6701F」)を用いて、加速電圧3.00kVで1万倍に拡大して観察した。細孔の平均間隔(ピッチ)は一直線上に並んだ6個の細孔の中心間距離を平均して求めた。
また、モールドの一部を切り取って、その縦断面に白金を1分間蒸着し、同じく電解放出型走査電子顕微鏡を用いて加速電圧3.00kVで観察した。各断面サンプルを2〜5万倍に拡大して観察し、観察範囲で5個の細孔の深さ、および酸化皮膜表面近傍の細孔径(開口部の径)を測定し、それぞれ平均して細孔の平均深さと平均細孔径を算出した。
<成形体の突起の測定>
成形体(フィルム)の表面および縦断面に白金を10分間蒸着し、電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM−6701F」)を用いて、加速電圧3.00kVの条件で成形体の表面および断面を観察した。
成形体の表面を1万倍に拡大して観察し、一直線上に並んだ6個の突起(凸部)の中心間距離を平均して突起の平均間隔(ピッチ)を求めた。また、成形体の断面を5万倍で観察し、10本の突起の高さを平均して突起の平均高さを求めた。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製>
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製):25質量部、
ペンタエリスリトールトリアクリレート(第一工業製薬株式会社製):25質量部、
エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製):25質量部、
ポリエチレングリコールジアクリレート(東亞合成株式会社製):25質量部、
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製):1質量部、
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(BASF社製):0.5質量、
ポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸(日本ケミカルズ販売株式会社製):0.1質量部、
を混合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを得た。
「実施例1」
<モールドの製造>
純度99.99質量%、厚さ0.3mmのアルミニウム板を50mm×50mmの大きさに切断し、過塩素酸/エタノール溶液(体積比=1/4)中で電解研磨し、これをアルミニウム基材として用いた。
このアルミニウム基材を0.5mol/Lのリン酸水溶液(液温30℃)に浸漬し、40Vの定電圧で15分間陽極酸化し(工程(α))、その後、6質量%のリン酸と1.8質量%クロム酸を混合した70℃の水溶液に2時間浸漬して酸化皮膜を除去して(工程(β))、前処理を行った。
引き続き、下記工程(a)〜(c)を行った。
工程(a):
リン酸電解液として、0.5mol/Lのリン酸水溶液を処理槽中で30℃に調整し、前処理後のアルミニウム基材を浸漬した。40Vの定電圧で30秒間陽極酸化を実施し、アルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成した。
工程(b):
工程(a)を終えた後、工程(a)と同じ処理槽中で前記リン酸水溶液の中にアルミニウム基材を浸漬したままの状態で8分間静置し、エッチングにより細孔の孔径を拡大した。
工程(c):
工程(a)と工程(b)を合計五回ずつ繰り返した後、リン酸水溶液からアルミニウム基材を引き上げた。
工程(c)の後のアルミニウム基材を脱イオン水で洗浄し、さらに表面の水分をエアーブローで除去し、平均間隔100nm、平均深さ約190nm、平均細孔径が約75nmの略円錐形状の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドを得た。結果を表1に示す。
このようにして得られたモールドを、TDP−8(日光ケミカルズ株式会社製)を0.1質量%に希釈した水溶液に10分間浸漬して、一晩風乾することによって離型処理した。
(成形体の製造)
離型処理したモールドと、成形体本体(透明基材)であるアクリルフィルム(三菱レイヨン株式会社製、「アクリプレン HBS010」)との間に、前記組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを充填して、高圧水銀ランプで積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射することによって、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを硬化させた。その後、モールドを剥離し、成形体本体と活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aの硬化物(硬化樹脂層)からなる成形体(フィルム)を得た。
このようにして製造した成形体の表面には微細凹凸構造が形成されており、突起の平均間隔(ピッチ)は100nm、突起の平均高さは約180nmであった。
「実施例2」
前処理の陽極酸化を0.3mol/Lのシュウ酸水溶液を用い、液温15℃にて40Vで30分実施し、かつ工程(a)のリン酸水溶液の濃度を2.0mol/Lとした以外は、実施例1と同様にしてモールドを製造した。
得られたモールドは、平均間隔100nm、平均深さ約200nm、平均細孔径が約90nmの略円錐形状の細孔を有する酸化皮膜が形成されていた。結果を表1に示す。
「実施例3」
前処理の陽極酸化を0.3mol/Lのシュウ酸水溶液を用い、液温15℃にて40Vで30分実施し、かつ工程(a)のリン酸水溶液の濃度を0.1mol/Lとした以外は、実施例1と同様にしてモールドを製造した。
得られたモールドは、平均間隔100nm、平均深さ約90nm、平均細孔径が約60nmの略円錐形状の細孔を有する酸化皮膜が形成されていた。結果を表1に示す。
「比較例1」
前処理の陽極酸化を0.3mol/Lのシュウ酸水溶液を用い、液温15℃にて40Vで30分実施し、かつ工程(a)のリン酸水溶液の濃度を0.03mol/Lとした以外は、実施例1と同様にしてモールドを製造した。
得られたモールドは、平均間隔100nm、平均深さ約70nm、平均細孔径が約40nmの略円錐形状の細孔を有する酸化皮膜が形成されていた。結果を表1に示す。
「実施例4」
前処理の陽極酸化を0.3mol/Lのシュウ酸水溶液を用い、液温15℃にて40Vで30分実施し、かつ工程(a)のリン酸水溶液の温度を40℃とした以外は、実施例1と同様にしてモールドを製造した。
得られたモールドは、平均間隔100nm、平均深さ約210nm、平均細孔径が約80nmの略円錐形状の細孔を有する酸化皮膜が形成されていた。結果を表1に示す。
「実施例5」
前処理の陽極酸化を0.3mol/Lのシュウ酸水溶液を用い、液温15℃にて40Vで30分実施し、かつ工程(a)のリン酸水溶液の温度を20℃とした以外は、実施例1と同様にしてモールドを製造した。
得られたモールドは、平均間隔100nm、平均深さ約115nm、平均細孔径が約60nmの略円錐形状の細孔を有する酸化皮膜が形成されていた。結果を表1に示す。
「比較例2」
前処理の陽極酸化を0.3mol/Lのシュウ酸水溶液を用い、液温15℃にて40Vで30分実施し、かつ工程(a)のリン酸水溶液の温度を10℃とした以外は、実施例1と同様にしてモールドを製造した。
得られたモールドは、平均間隔100nm、平均深さ約45nm、平均細孔径が約40nmの略円錐形状の細孔を有する酸化皮膜が形成されていた。結果を表1に示す。
「実施例6」
前処理の陽極酸化を0.8mol/Lのシュウ酸水溶液を用い、液温15℃にて60Vで15分実施し、かつ工程(a)の定電圧を60Vとし、陽極酸化時間を20秒とし、工程(b)でのエッチング時間を5分とした以外は、実施例1と同様にしてモールドを製造した。
得られたモールドは、平均間隔140nm、平均深さ約230nm、平均細孔径が約75nmの略円錐形状の細孔を有する酸化皮膜が形成されていた。結果を表1に示す。
「比較例3」
前処理の陽極酸化を0.8mol/Lのシュウ酸水溶液を用い、液温15℃にて60Vで15分実施し、かつ工程(a)のリン酸水溶液の温度を10℃とし、定電圧を60Vとし、陽極酸化時間を20秒とし、工程(b)でのエッチング時間を5分とした以外は、実施例1と同様にしてモールドを製造した。
得られたモールドは、平均間隔140nm、平均深さ約100nm、平均細孔径が約50nmの略円錐形状の細孔を有する酸化皮膜が形成されていた。結果を表1に示す。
「実施例7」
前処理の陽極酸化を0.8mol/Lのシュウ酸水溶液を用い、液温15℃にて80Vで15分実施し、かつ工程(a)の定電圧を80Vとし、陽極酸化時間を20秒とし、工程(b)でのエッチング時間を17分とし、工程(a)と工程(b)を五回ずつ交互に繰り返した後、最後に工程(a)を行って工程(c)を終了した以外は、実施例1と同様にしてモールドを製造した。
得られたモールドは、平均間隔180nm、平均深さ約360nm、平均細孔径が約170nmの略円錐形状の細孔を有する酸化皮膜が形成されていた。結果を表1に示す。
Figure 2015101780
表1から明らかなように、工程(a)と工程(b)において、1つの処理槽で、リン酸電解液を用いて陽極酸化とエッチングを行うことで、簡便、かつ少ない工程数でテーパー形状の細孔を有するモールドを製造することができた。よって、本発明であれば、モールドを簡便かつ生産性よく製造できることが示された。
また、実施例1〜7のモールドの表面には、平均細孔径が60nm以上の細孔を有する酸化皮膜が形成されていた。よって、これらのモールドによれば、モールドの表面に形成された微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写する際に離型不良が起こりにくく、耐久性に優れる。
一方、比較例1〜3のモールドの表面には、平均細孔径が50nm以下の細孔を有する酸化皮膜が形成されていた。よって、細孔径が十分に広がりきらず、モールドの表面に形成された微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写する際に離型不良が起こりやすく、耐久性に劣っていた。
本発明のモールドの製造方法によって得られたモールドは、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、撥水性物品の経済的・効率的な量産にとって有用である。
また、本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体の製造方法で得られた成形体は、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、撥水性物品として好適である。
10 アルミニウム基材
12 細孔
14 酸化皮膜
16 窪み
18 モールド
20 ロール状モールド
22 タンク
24 空気圧シリンダ
26 ニップロール
28 活性エネルギー線照射装置
30 剥離ロール
38 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
40 成形体
42 フィルム
44 硬化樹脂層
46 突起

Claims (4)

  1. アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドを製造する方法であって、
    下記の工程(a)、(b)を有し、かつ下記リン酸電解液の濃度が0.05mol/L以上2.5mol/L以下であり、液温が18℃以上45℃以下である、モールドの製造方法。
    工程(a):アルミニウム基材をリン酸電解液に浸漬して電圧を印加し、アルミニウム基材の表面を陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
    工程(b):前記工程(a)の後、アルミニウム基材をリン酸電解液に浸漬した状態で電圧を実質的に印加せずに保持し、前記工程(a)で形成された酸化皮膜の少なくとも一部を除去する工程。
  2. 前記工程(a)において、前記アルミニウム基材に印加される電圧が、20V以上150V以下である、請求項1に記載のモールドの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のモールドの製造方法でモールドを製造し、そのモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写する、微細凹凸構造を表面に有する成形体の製造方法。
  4. 微細凹凸構造を表面に有する成形体であって、
    前記微細凹凸構造が、請求項1または2に記載のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造の反転構造である、微細凹凸構造を表面に有する成形体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016008345A (ja) * 2014-06-26 2016-01-18 三菱レイヨン株式会社 微細凹凸構造を表面に有するモールド及びその製造方法、並びに微細凹凸構造を表面に有する成形体

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