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JP2013224015A - 光透過性フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

光透過性フィルムおよびその製造方法 Download PDF

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JP2013224015A
JP2013224015A JP2013017232A JP2013017232A JP2013224015A JP 2013224015 A JP2013224015 A JP 2013224015A JP 2013017232 A JP2013017232 A JP 2013017232A JP 2013017232 A JP2013017232 A JP 2013017232A JP 2013224015 A JP2013224015 A JP 2013224015A
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Japan
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mold
film
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light transmissive
convex structure
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JP2013017232A
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Satoru Ozawa
覚 小澤
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Mitsubishi Chemical Corp
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Publication date
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Abstract

【課題】単一のモールドから高さの異なる微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルムを連続的に製造する方法、および光透過性フィルムを提供する。
【解決手段】表面に微細凹凸構造の反転構造を有するモールドと基材フィルム42との間に、モールド溶解成分を含む微細凹凸構造原料を挟持させる挟持工程と、微細凹凸構造原料を加熱しておよび/または硬化させて、モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層44が基材フィルム42表面に形成された光透過性フィルム40を得る転写工程と、光透過性フィルム40とモールドとを分離する分離工程とを繰り返すうちに、フィルムの長手方向Fに高さの異なる微細凹凸構造が形成されるように、モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層44を基材フィルム42表面に形成する光透過性フィルム40の製造方法と、フィルムの長手方向Fにおいて微細凹凸構造の高さが異なる光透過性フィルム40。
【選択図】図4

Description

本発明は、微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルムおよびその製造方法に関する。
近年、可視光の波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルムなどの物品は、反射防止効果、ロータス効果等を発現することが知られている。特に、モスアイ構造と呼ばれる凹凸構造は、空気の屈折率から物品の材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルムの製造方法としては、例えば、下記の工程(i)〜(iii)を有する方法、すなわち光ナノインプリント法が知られている(特許
文献1)。
(i)表面に微細凹凸構造の反転構造を有するモールドと、光透過性フィルムの本体となる基材フィルムとの間に、活性エネルギー線硬化性組成物を挟持する工程。
(ii)活性エネルギー線硬化性組成物に紫外線などの活性エネルギー線を照射し、該活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させて微細凹凸構造を有する硬化樹脂層を形成し、光透過性フィルムを得る工程。
(iii)光透過性フィルムとモールドとを分離する工程。
また、活性エネルギー線硬化性組成物の代わりに熱可塑性樹脂を用い、熱可塑性樹脂が流動する温度にモールドを加熱し、微細凹凸構造を転写する熱ナノインプリント法も知られている(特許文献2)。
特開2007−076089号公報 特開2001−26052号公報
ところで、光透過性フィルムの微細凹凸構造の高さの最適値は、微細凹凸構造のピッチや、光透過性フィルムの用途によって異なる。例えば、同じピッチで比較した場合、微細凹凸構造の高さが高い方がアスペクト比は高くなり、より高い反射防止性能を得ることができる。しかし、微細凹凸構造の高さを高くしすぎると耐擦傷性が低下するなどの問題も生じてくる。
従って、光透過性フィルムの用途によって最適な微細凹凸構造の高さは変わってくる。
しかしながら、特許文献1に記載の光ナノインプリント法や、特許文献2に記載の熱ナノインプリント法では、通常、1つのモールドから転写される微細凹凸構造の形状(高さ)は1種類であり、異なる高さの微細凹凸構造が転写された光透過性フィルムを得ることはできない。
そのため、それぞれの用途に応じた光透過性フィルムを製造するためには、用途に最適な高さの微細凹凸構造の反転構造を有するモールドを用意する必要があった。
本発明は、単一のモールドから高さの異なる微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルムを連続的に製造する方法、および光透過性フィルムを提供する。
本発明者らは鋭意検討した結果、モールド表面を溶解させる成分を活性エネルギー線硬化性組成物、あるいは熱可塑性樹脂等の微細凹凸構造原料に配合させて、賦形中にモールド表面を溶解させることで、モールドの表面形状が変化し、その結果、高さの異なる微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の光透過性フィルムの製造方法は、基材フィルムの表面に、微細凹凸構造を有する硬化樹脂層が形成された光透過性フィルムを製造する方法であって、表面に前記微細凹凸構造の反転構造を有するモールドと基材フィルムとの間に、モールド溶解成分を含む微細凹凸構造原料を挟持させる挟持工程と、前記微細凹凸構造原料を加熱して、および/または、微細凹凸構造原料に活性エネルギー線を照射して硬化させて、前記モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層が基材フィルム表面に形成された光透過性フィルムを得る転写工程と、得られた光透過性フィルムとモールドとを分離する分離工程とを有し、前記挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返すうちに、フィルムの長手方向に高さの異なる微細凹凸構造が形成されるように、モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層を基材フィルム表面に形成することを特徴とする。
ここで、前記挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返すうちに、フィルムの長手方向に高さが連続的に変化する微細凹凸構造が形成されるように、モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層を基材フィルム表面に形成することが好ましい。
また、前記モールド表面の微細凹凸構造の反転構造が、陽極酸化アルミナからなることが好ましい。
さらに、前記モールド溶解成分が、下記条件(a)を満たすリン酸エステル化合物であることが好ましい。
条件(a):50℃のリン酸エステル化合物中にモールドを22時間浸漬させた後のモールド質量が、浸漬前に比べて0.01%以上減少すること。
また、前記リン酸エステル化合物が、下記式(1)で表わされるポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル化合物であることが好ましい。
式(1)中、R1はアルキル基であり、mは1〜20であり、nは1〜3である。
また、本発明の光透過性フィルムは、基材フィルムの表面に、微細凹凸構造を有する硬化樹脂層が形成された光透過性フィルムであって、前記微細凹凸構造は、モールド表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、フィルムの長手方向において、前記微細凹凸構造の高さが異なることを特徴とする。
ここで、フィルムの長手方向において、前記微細凹凸構造の高さが連続的に変化していることが好ましい。
本発明によれば、単一のモールドから高さの異なる微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルムを連続的に製造する方法、および光透過性フィルムを提供できる。
表面に陽極酸化アルミナを有するモールドの製造工程を示す断面図である。 光透過性フィルムの製造装置の一例を示す構成図である。 本発明の光透過性フィルムの一定領域部分の一例を示す断面図である。 連続して製造された本発明の光透過性フィルムの一例を示す断面図である。 光透過性フィルムの他の製造方法を説明する図である。 浸漬試験前のモールド表面の走査型電子顕微鏡像である。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを意味し、「光透過性」とは、少なくとも波長400〜1170nmの光を透過することを意味し、「活性エネルギー線」とは、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
[光透過性フィルムの製造方法]
本発明の光透過性フィルムの製造方法は、基材フィルムの表面に、微細凹凸構造を有する硬化樹脂層が形成された光透過性フィルムをナノインプリント法により製造する方法である。
なお、本発明で用いるナノインプリント法は、光ナノインプリント法であっても、熱ナノインプリント法であっても構わないが、転写性、生産性の観点から光ナノインプリント法を用いることが好ましい。以下、光ナノインプリント法の例に沿って本発明を詳細に説明する。
また、本発明により得られる光透過性フィルムの微細凹凸構造は、凸型でも凹型も構わない。凸型では表面に付着した汚れがとれやすい利点が、凹型では耐擦傷性に優れる利点が考えられるため、光透過性フィルムの用途に応じて適切な型を選択できる。以下の例では凸型の微細凹凸構造を有する光透過性フィルムの製造方法の一例を説明する。
本発明の光透過性フィルムの製造方法は、下記の工程(i)〜(iii)を有する。
(i)表面に微細凹凸構造の反転構造を有するモールドと基材フィルムとの間に、モールド溶解成分を含む微細凹凸構造原料を挟持させる挟持工程。
(ii)微細凹凸構造原料に活性エネルギー線を照射し、微細凹凸構造原料を硬化させて、モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層が基材フィルム表面に形成された光透過性フィルムを得る転写工程。
(iii)得られた光透過性フィルムとモールドとを分離する分離工程。
本発明の光透過性フィルムの製造方法は、挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返すうちに、フィルムの長手方向に高さの異なる微細凹凸構造が形成されるように、モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層を基材フィルム表面に形成することを特徴とする。
ここで、「フィルムの長手方向」とは、光透過性フィルムの製造方向である。
また、「微細凹凸構造の高さ」とは、微細凹凸構造が凸型の場合は該微細凹凸構造を構成する凸部の高さのことであり、微細凹凸構造が凹型の場合は該微細凹凸構造を構成する凹部の深さのことである。
すなわち、本発明では、光透過性フィルムを製造するにつれて微細凹凸構造の高さが変化、具体的には高さが減少するように、モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層を基材フィルム表面に形成する。このとき、フィルムの長手方向に高さが連続的に変化する微細凹凸構造が形成されるように硬化樹脂層を基材フィルム表面に形成することが好ましく、一定領域においては高さの均一な微細凹凸構造が形成されつつ、一定領域毎に高さが連
続的に減少する微細凹凸構造が形成されるように硬化樹脂層を基材フィルム表面に形成することが特に好ましい。一定領域において高さの均一な微細凹凸構造が形成されれば、得られる光透過性フィルムの性能が安定しやすくなる。特に、0.5cm2以上の領域において高さの均一な微細凹凸構造が形成されるようにすることが好ましく、より好ましくは1.0cm2以上の領域である。一定領域の上限については特に制限されず、光透過性フィルムの用途に応じて設定すればよい。
なお、本発明において「高さの均一な微細凹凸構造」とは、微細凹凸構造の高さの差が10nm以下である状態とする。
また、微細凹凸構造のピッチが同じ場合、微細凹凸構造の高さによって反射率が変化することから、光透過性フィルムの反射率を微細凹凸構造の高さの指標として用いることができる。本発明では、波長550nmの反射率の斑が0.5%以内の場合を微細凹凸構造の高さが均一である状態とする。
本発明の光透過性フィルムの製造方法は、上述したように、転写工程においてモールド溶解成分を含む微細凹凸構造原料を用い、かつ、挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返すうちに、フィルムの長手方向に高さの異なる微細凹凸構造が形成されるように、モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層を基材フィルム表面に形成する。モールド溶解成分を含む微細凹凸構造原料を用いることで、光透過性フィルムの製造を続けていくうちにモールド表面がモールド溶解成分によって溶解し、モールドの反転構造(微細凹凸構造)が変化、具体的には減少する。その結果、単一のモールドからフィルムの長手方向に高さの異なる微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルムが連続的に得られる。
以下、本発明に用いる微細凹凸構造原料、基材フィルム、モールド、製造装置について、具体的に説明する。
<微細凹凸構造原料>
光ナノインプリント法により光透過性フィルムを製造する場合、微細凹凸構造原料としては、活性エネルギー線硬化性組成物を用いる。
活性エネルギー線硬化性組成物(以下、単に「硬化性組成物」という。)は、モールド溶解成分と、重合性化合物と、重合開始剤とを含有する。
(モールド溶解成分)
モールド溶解成分としては、モールドを溶解することができれば特に限定されず、用いるモールドの材質に応じて適宜選択される。モールドの材質としては、金属(表面に酸化皮膜が形成されたものを含む。)、石英、ガラス、樹脂、セラミックス等が挙げられるが、後述するように陽極酸化アルミナを用いることが好適である。
陽極酸化アルミナに適したモールド溶解成分としては、リン酸あるいはリン酸を含むリン酸エステル化合物が好適である。リン酸エステル化合物のその他の機能としては特に限定されないが、例えば内部離型剤として用いることができる。
以下、モールドとして表面に陽極酸化アルミナからなる微細凹凸構造が形成されたモールド、モールド溶解成分としてリン酸を用いた場合を例にとり、さらに具体的に説明する。
アルミナは酸やアルカリに溶解することが知られており、その中でもリン酸は溶解力が高い(非特許文献(空気調和・衛生工学、第79巻、第9号、p70)参照)。モールド表面が溶解し、モールドの反転構造(微細凹凸構造)が変化することによって、異なる高さの微細凹凸構造を単一つのモールドから連続的に転写することができる。
従って、陽極酸化アルミナからなる微細凹凸構造が形成されたモールドを用いる場合には、モールド溶解成分としてリン酸を含む硬化性組成物を用いるのが好ましい。モールド
溶解成分としてはリン酸そのものを硬化性組成物に添加してもよいが、リン酸を硬化性組成物に均一に溶解させることが困難であったり、リン酸の添加によって硬化性組成物に水分が混入したりする可能性がある。そこで、リン酸を含むリン酸エステル化合物を硬化性組成物に添加させることが好適である。さらに、リン酸エステル化合物を均一に溶解させるため、硬化性組成物の調製の段階で、リン酸エステル化合物と他の成分(後述する重合性化合物や重合開始剤など)とを混合しておくことが好ましい。
本発明で用いるリン酸エステル化合物は、モールド表面を溶解させることが必須である。モールドを溶解させるかどうかはリン酸エステル化合物に含まれるリン酸量などに影響されるが、実際にリン酸エステル化合物にモールドを浸漬させ、質量変化を調べ判断することが好ましい。
溶解力が大きいほど光透過性フィルムの製造中に早くモールドが溶解する傾向がある。溶解力が低いとモールド表面が溶解されずモールドの微細凹凸構造が変化しにくいため、硬化樹脂層に転写される微細凹凸構造の高さも変化しにくい。一方、溶解力が大きすぎるとモールド表面が過剰に溶解され、モールドの微細凹凸構造が大幅に変化する(高さが極端に小さくなる)こととなり、硬化樹脂層に転写される微細凹凸構造に大きな斑が生じやすくなる。
そこで、本発明では、溶解力の指標となる下記条件(a)を満たすリン酸エステル化合物をモールド溶解成分として用いることが好ましい。
条件(a):50℃のリン酸エステル化合物中にモールドを22時間浸漬させた後のモールド質量が、浸漬前に比べて0.01%以上減少すること。
条件(a)を満たすかどうかは、以下のようにして判断できる。
すなわち、50℃のリン酸エステル化合物中にモールドを22時間浸漬させて浸漬試験を行った後、モールドを取り出して洗浄し、浸漬試験前と洗浄後のモールドの質量を測定し、下記式より減少率を求める。減少率が0.01%以上であれば、条件(a)を満たすものと判断する。
減少率(%)={(浸漬前のモールドの質量−洗浄後のモールドの質量)/浸漬前のモールドの質量}×100
減少率が0.01%以上であれば、リン酸エステル化合物が適度な溶解力を有するため、挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返すうちに、モールド表面が適度な速さで溶解しやすくなる。従って、フィルムの長手方向において高さの異なる微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層が基材フィルム表面に形成された光透過性フィルムが得られやすくなる。減少率は0.1%以上が好ましい。
一方、減少率の上限値については、モールド表面を過剰に溶解するのを抑制する観点から、1%以下が好ましく、0.7%以下がより好ましい。
なお、リン酸エステル化合物が液体の場合には、そのままモールドを浸漬させればよい。一方、リン酸エステル化合物が固体の場合には、リン酸エステル化合物を加熱したり減圧したりして液体とするか、モールドに影響がない溶媒にリン酸エステル化合物を溶解させて溶液として、これらにモールドを浸漬させればよい。特に、溶媒にリン酸エステル化合物を溶解させる場合には、リン酸エステル化合物の濃度はできるだけ高い方が、モールドに対するリン酸エステル化合物の溶解力を素早く判断できる。
リン酸エステル化合物としては、条件(a)を満たすものが好ましいが、その中でも特に、下記式(1)で表わされるポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル化合物(以下、「化合物(1)」という。)を用いると、離型剤としての効果も発揮するため好ましい。
式(1)中、R1はアルキル基である。R1はとしては、炭素数3〜18のアルキル基が好ましい。
また、式(1)中、mはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、1〜20であり、1〜10が好ましい。一方、nは1〜3である。
化合物(1)は、モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体の何れであってもよい。また、ジエステル体またはトリエステル体である場合、1分子中の複数のポリオキシエチレンアルキル残基は、それぞれ異なっていてもよい。
モールド溶解成分として化合物(1)を用いれば、硬化性組成物の硬化物である硬化樹脂層とモールドとの離型性がより向上し、微細凹凸構造の成形に好適である。また、モールドから離型する際の負荷が極めて低くなるので、欠陥の少ない微細凹凸構造が転写された光透過性フィルムを生産性よく得られる。さらに、化合物(1)を用いることで、離型性能を長時間に渡って維持することができる。
化合物(1)のうち、上述した条件(a)を満たし、かつモールド溶解成分として用いることが可能な化合物は、市販品として入手できる。例えば、日光ケミカルズ株式会社製の「TDP−10」、「TDP−8」、「TDP−6」、「TDP−2」、「DDP−10」、「DDP−8」、「DDP−6」、「DDP−4」、「DDP−2」;アクセル社製の「INT−1856」;城北化学工業株式会社製の「JP506−H」などが挙げられる。
化合物(1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ところで、モールドの溶解速度は、硬化性組成物中のモールド溶解成分の含有量や、転写工程時にモールドと接触する側の表面にモールド溶解成分が染み出てくる(ブリードアウト)量などに依存する。従って、挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返すうちに高さの異なる微細凹凸構造を硬化樹脂層に転写するには、モールド溶解成分の含有量やブリードアウト量が重要となる。
ブリードアウト量は、重合性化合物とモールド溶解成分の相溶性に依存する。相溶性が悪いほどブリードアウト量が多くなるため、モールドの溶解が起りやすい。特に、モールド溶解成分としてリン酸を含むリン酸エステル化合物を用いた場合は重合性化合物との相溶性によってブリードアウト量が顕著に変わる。従って、リン酸を含むリン酸エステル化合物と重合性化合物との組み合わせを調節することで、モールドの溶解速度を制御することもできる。
リン酸を含むリン酸エステル化合物の相溶性を確認する方法として、硬化性組成物にリン酸エステル化合物を添加し、攪拌した際の透明性で判断する方法が考えられる。相溶性が高いほど硬化性組成物の透明性が高い。透明性の評価としては、光散乱や分光光度計を用いて透過率を測定する方法が挙げられる。また、実際のリン酸を含むリン酸エステル化合物の添加量が少ない場合には、試験的にそれ以上に添加して相溶性を判断しても構わない。例えば、透明性を透過率で判断する場合、硬化性組成物にリン酸を含むリン酸エステル化合物を3質量部添加・攪拌した際の波長500nmにおける透過率が95%以上であると、相溶性が良いためブリードアウト量が抑制されモールド溶解が起りにくくなる。一方、透過率が95%より小さいと、相溶性が悪いためブリードアウトしやくなり、モールド溶解が起りやすくなるため好ましい。挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返すうちに高さの異なる微細凹凸構造を効率的に硬化樹脂層に転写するためには、前記透過率が50%以下であるとさらに好ましい。
モールド溶解成分の含有量は、後述する重合性化合物100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。モールド溶解成分の含有量が多くなるほど溶解速度が早くなる傾向にある。ただし、モールド溶解成分を必要以上に含有させると、モールド表面が過剰に溶解され、微細凹凸構造が消失したり、所望とする高さの微細凹凸構造が転写されなくなったりする場合がある。従って、モールド溶解成分の含有量は、3質量部以下が好ましい。
一方、ブリードアウト量は、重合性化合物とモールド溶解成分の相溶性によって変わり、相溶性が悪いほどブリードアウト量が多くなるため、溶解速度が早くなる傾向がある。特に、リン酸エステル化合物は重合性化合物との相溶性によってブリードアウト量が顕著に変わる。従って、リン酸エステル化合物と重合性化合物との組み合わせを調節することで、モールドの溶解速度を制御することもできる。
(重合性化合物)
重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等の二官能性モノマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能モノマー;コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能以上のモノマー;二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサ
ゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。
オリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。
(重合開始剤)
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4'−ビス(
ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。重合開始剤の含有量が0.1質量部未満であると、重合が進行しにくい。一方、重合開始剤の含有量が10質量部を超えると、硬化樹脂層が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。
(その他の成分)
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物、紫外線吸収剤および/または光安定剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、シランカップリング剤、着色剤、強化剤、無機フィラー、防汚性を向上させるためのフッ素化合物等の添加剤、微粒子、耐衝撃性改質剤等の公知の添加剤、少量の溶媒を含んでいてもよい。
非反応性のポリマー:
非反応性のポリマーとしては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物:
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
アルコキシシラン化合物としては、下記式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」という。)が挙げられる。
R2xSi(OR3)y ・・・(2)
ただし、式(2)中、R2およびR3はそれぞれ炭素数1〜10のアルキル基を表し、xおよびyはx+y=4の関係を満たす整数である。
化合物(2)としては、具体的に、テトラメトキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン等が挙げられる。
アルキルシリケート化合物としては、下記式(3)で表される化合物(以下、「化合物(3)」という。)が挙げられる。
R4O[Si(OR6)(OR7)O]zR5 ・・・(3)
ただし、式(3)中、R4〜R7はそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表し、zは3〜20の整数を表す。
化合物(3)としては、具体的に、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等が挙げられる。
紫外線吸収剤および/または光安定剤:
紫外線吸収剤および/または光安定剤は、黄帯色の抑制やヘイズの上昇抑制等の耐候性を付与する役割を果たす。
紫外線吸収剤および/または光安定剤としては、例えばベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ベンゾエート系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の「チヌビン400」、「チヌビン479」、「チヌビン109」;共同薬品株式会社製の「Viosorb110」等の紫外線吸収剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製の「チヌビン152」、「チヌビン292」等の光安定剤が挙げられる。
紫外線吸収剤および/または光安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
紫外線吸収剤および/または光安定剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましく、0.01〜3質量部がより好ましく、0.01〜1質量部がさらに好ましく、0.01〜0.5質量部が特に好ましい。これらの含有量が0.01質量部以上であれば、黄帯色の抑制やヘイズの上昇抑制などの耐候性の向上効果が得られやすくなる。一方、これらの含有量が5質量部以下であれば、硬化性組成物が十分に硬
化するので、硬化樹脂層の耐擦傷性の低下を抑制しやすい。また、耐候性試験での指紋拭き取り性の低下も抑制できる。
(疎水性材料)
硬化樹脂層の微細凹凸構造の表面の水接触角を90°以上にするためには、疎水性の材料を形成し得る硬化性組成物として、フッ素含有化合物またはシリコーン系化合物を含む組成物を用いることが好ましい。
フッ素含有化合物:
フッ素含有化合物としては、下記式(4)で表されるフルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。
−(CF2)q−X ・・・(4)
ただし、式(4)中、Xはフッ素原子または水素原子を表し、qは1以上の整数を表し、1〜20が好ましく、3〜10がより好ましく、4〜8が特に好ましい。
フッ素含有化合物としては、フッ素含有モノマー、フッ素含有シランカップリング剤、フッ素含有界面活性剤、フッ素含有ポリマー等が挙げられる。
フッ素含有モノマーとしては、フルオロアルキル基置換ビニルモノマー、フルオロアルキル基置換開環重合性モノマー等が挙げられる。
フルオロアルキル基置換ビニルモノマーとしては、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリレート、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリルアミド、フルオロアルキル基置換ビニルエーテル、フルオロアルキル基置換スチレン等が挙げられる。
フルオロアルキル基置換開環重合性モノマーとしては、フルオロアルキル基置換エポキシ化合物、フルオロアルキル基置換オキセタン化合物、フルオロアルキル基置換オキサゾリン化合物等が挙げられる。
フッ素含有モノマーとしては、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリレートが好ましく、下記式(5)で表される化合物が特に好ましい。
CH2=C(R8)C(O)O−(CH2)p−(CF2)q−X ・・・(5)
ただし、式(5)中、R8は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子またはフッ素原子を表し、pは1〜6の整数を表し、1〜3が好ましく、1または2がより好ましく、qは1〜20の整数を表し、3〜10が好ましく、4〜8がより好ましい。
フッ素含有シランカップリング剤としては、フルオロアルキル基置換シランカップリング剤が好ましく、下記式(6)で表される化合物が特に好ましい。
(R9)aR10bSiYc ・・・(6)
ただし、式(6)中、R9はエーテル結合またはエステル結合を1個以上含んでいてもよい炭素数1〜20のフッ素置換アルキル基を表す。R9としては、3,3,3−トリフルオロプロピル基、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、3−トリフルオロメトキシプロピル基、3−トリフルオロアセトキシプロピル基等が挙げられる。
また、R10は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。R10としては、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
Yは、水酸基または加水分解性基を表す。
加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、R11C(O)O(ただし、R11は、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。)等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオ
キシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、Cl、Br、I等が挙げられる。
R11C(O)Oとしては、CH3C(O)O、C2H5C(O)O等が挙げられる。
a、b、cは、a+b+c=4であり、かつa≧1、c≧1を満たす整数を表し、a=1、b=0、c=3が好ましい。
フッ素含有シランカップリング剤としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリアセトキシシラン、ジメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
フッ素含有界面活性剤としては、フルオロアルキル基含有アニオン系界面活性剤、フルオロアルキル基含有カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
フルオロアルキル基含有アニオン系界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガ−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸またはその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)またはその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸またはその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。
フルオロアルキル基含有カチオン系界面活性剤としては、フルオロアルキル基含有脂肪族一級、二級または三級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
フッ素含有ポリマーとしては、フルオロアルキル基含有モノマーの重合体、フルオロアルキル基含有モノマーとポリ(オキシアルキレン)基含有モノマーとの共重合体、フルオロアルキル基含有モノマーと架橋反応性基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。フッ素含有ポリマーは、共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。
フッ素含有ポリマーとしては、フルオロアルキル基含有モノマーとポリ(オキシアルキレン)基含有モノマーとの共重合体が好ましい。
ポリ(オキシアルキレン)基としては、下記式(7)で表される基が好ましい。
−(OR12)r− ・・・(7)
ただし、式(7)中、R12は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、rは2以上の整数を表す。R12としては、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、−CH(CH3)CH(CH3)−等が挙げられる。
ポリ(オキシアルキレン)基は、同一のオキシアルキレン単位(OR12)からなるものであってもよく、2種以上のオキシアルキレン単位(OR12)からなるものであってもよい。2種以上のオキシアルキレン単位(OR12)の配列は、ブロックであってもよ
く、ランダムであってもよい。
シリコーン系化合物:
シリコーン系化合物としては、(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン樹脂、シリコーン系シランカップリング剤等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸変性シリコーンとしては、シリコーン(ジ)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(親水性材料)
硬化樹脂層の微細凹凸構造の表面の水接触角を25°以下にするためには、親水性の材料を形成し得る硬化性組成物として、少なくとも親水性モノマーを含む組成物を用いることが好ましい。また、耐擦傷性や耐水性付与の観点からは、架橋可能な多官能モノマーを含むものがより好ましい。なお、親水性モノマーと架橋可能な多官能モノマーは、同一(すなわち、親水性多官能モノマー)であってもよい。さらに、硬化性組成物は、その他のモノマーを含んでいてもよい。
親水性の材料を形成し得る硬化性組成物としては、下記の重合性化合物を含む組成物を用いることがより好ましい。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの10〜50質量%、
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの30〜80質量%、
単官能モノマーの0〜20質量%の合計100質量%からなる重合性化合物。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合反応混合物、ウレタンアクリレート類(ダイセル・サイテック株式会社製の「EBECRYL220」、「EBECRYL1290」、「EBECRYL1290K」、「EBECRYL5129」、「EBECRYL8210」、「EBECRYL8301」、「KRM8200」)、ポリエーテルアクリレート類(ダイセル・サイテック株式会社製の「EBECRYL81」)、変性エポキシアクリレート類(ダイセル・サイテック株式会社製の「EBECRYL3416」)、ポリエステルアクリレート類(ダイセル・サイテック株式会社製の「EBECRYL450」、「EBECRYL657」、「EBECRYL800」、「EBECRYL810」、「EBECRYL811」、「EBECRYL812」、「EBECRYL1830」、「EBECRYL845」、「EBECRYL846」、「EBECRYL1870」)等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有量は、重合性化合物100質量%中、10〜50質量%が好ましく、耐水性、耐薬品性の点から、20〜50質量%がより好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。一方、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有量が10質量%以上であれば、弾性率が高くなって耐擦傷性が向上する。4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有量が50質量%以下であれば、表面に小さな亀裂が入りにくく、外観不良となりにくい。
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートとしては、東亞合成株式会社製の「アロニックスM−240」、「アロニックスM260」;新中村化学工業株式会社製の「NKエス
テルAT−20E」、「NKエステルATM−35E」等の長鎖ポリエチレングリコールを有する多官能アクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエチレングリコールジメタクリレートにおいて、一分子内に存在するポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位の合計は、6〜40が好ましく、9〜30がより好ましく、12〜20が特に好ましい。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が6以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が40以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が良好となり、硬化性組成物が分離しにくい。
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの含有量は、重合性化合物100質量%中、30〜80質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの含有量が30質量%以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。一方、2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの含有量が80質量%以下であれば、弾性率が高くなって耐擦傷性が向上する。
単官能モノマーとしては、親水性単官能モノマーが好ましい。
親水性単官能モノマーとしては、新中村化学工業株式会社製の「M−20G」、「M−90G」「、M−230G」等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のエステル基に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、単官能アクリルアミド類、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等のカチオン性モノマー類等が挙げられる。
また、単官能モノマーとして、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン等の粘度調整剤、基材フィルムへの密着性を向上させるアクリロイルイソシアネート類等の密着性向上剤等を用いてもよい。
単官能モノマーの含有量は、重合性化合物100質量%中、0〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。単官能モノマーを用いることにより、基材フィルムと硬化樹脂層との密着性が向上する。単官能モノマーの含有量が20質量%以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートまたは2官能以上の親水性(メタ)アクリレートが不足することなく、防汚性または耐擦傷性が十分に発現する。
単官能モノマーは、1種または2種以上を(共)重合した低重合度の重合体として硬化性組成物に0〜35質量部配合してもよい。低重合度の重合体としては、新中村化学工業株式会社製の「M−230G」等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート類と、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェートとの40/60共重合オリゴマー(例えばMRCユニテック株式会社製の「MGポリマー」)等が挙げられる。
以上説明した硬化性組成物は、モールド溶解成分を含有するため、モールド表面を適度に溶解させやすい。その結果、光透過性フィルムの製造とともにモールド表面が溶解して表面形状(微細凹凸構造)が変化するため、異なる高さの微細凹凸構造を単一の金型から連続的に転写することができる。
また、リン酸エステル化合物は離型剤の役割も果たすので、モールドと硬化樹脂層との離型性を長時間にわたって維持できる。
<基材フィルム>
基材フィルムとしては、フィルム越しに活性エネルギー線照射を行うため、光透過性の高いフィルムが好ましく、例えばアクリルフィルムやPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ポリカーボネートフィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムなどを用いることができる。
<モールド>
モールドの材料としては、金属(表面に酸化皮膜が形成されたものを含む。)、石英、ガラス、樹脂、セラミックス等が挙げられる。
本発明に用いるモールドは、例えば下記に示す方法(I)、(II)によって製造できる。中でも、大面積化が可能であり、かつ作製が簡便である点から、方法(I)が特に好ましい。
(I)アルミニウム基材の表面に、複数の細孔(凹部)を有する陽極酸化アルミナを形成する方法。
(II)基材の表面にリソグラフィ法によって微細凹凸構造を形成する方法。
方法(I)としては、下記の工程(a)〜(e)を有するのが好ましい。
(a)アルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、アルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)工程(c)と工程(d)を繰り返し行い、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウム基材の表面に形成されたモールドを得る工程。
工程(a):
図1に示すように、アルミニウム基材10を陽極酸化すると、細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
アルミニウム基材の形状としては、ロール状、円管状、平板状、シート状等が挙げられる。
また、アルミニウム基材は、表面状態を平滑化にするために、機械研磨、羽布研磨、化学的研磨、電解研磨処理(エッチング処理)などで研磨されることが好ましい。また、アルミニウム基材は、所定の形状に加工する際に用いた油が付着していることがあるため、陽極酸化の前にあらかじめ脱脂処理されることが好ましい。
アルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。
電解液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。
シュウ酸を電解液として用いる場合:
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
化成電圧が30〜60Vの時、平均間隔が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が
溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
硫酸を電解液として用いる場合:
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vの時、平均間隔が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
工程(b):
図1に示すように、酸化皮膜14を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点16にすることで細孔の規則性を向上することができる。なお、それほど高い規則性が必要とされない場合、酸化皮膜14の少なくとも一部を除去しても良く、工程(a)の後に、後述する工程(d)を行っても構わない。
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
工程(c):
図1に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム基材10を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
工程(d):
図1に示すように、細孔12の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
工程(e):
図1に示すように、工程(c)の陽極酸化と、工程(d)の細孔径拡大処理を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成され、アルミニウム基材10の表面に陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))を有するモールド本体18が得られる。
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を有する陽極酸化アルミナを用いて形成された微細凹凸構造(モスアイ構造)の反射率低減効果は不十分である。
細孔12の形状としては、略円錐形状、角錐形状、円柱形状等が挙げられ、円錐形状、角錐形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましい。
細孔12間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下である。細孔1
2間の平均間隔は、20nm以上が好ましい。
細孔12間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する細孔12間の間隔(細孔12の中心から隣接する細孔12の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
細孔12の深さは、平均間隔が100nmの場合は、80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好ましく、150〜300nmが特に好ましい。
細孔12の深さは、電子顕微鏡観察によって倍率30000倍で観察したときにおける、細孔12の最底部と、細孔12間に存在する凸部の最頂部との間の距離を測定した値である。
細孔12のアスペクト比(細孔の深さ/細孔間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。
その他の工程:
本発明においては、工程(e)にて得られたモールド本体18をそのままモールドとしてもよいが、モールド本体18の微細凹凸構造が形成された側の表面を離型剤(外部離型剤)で処理してもよい。
離型剤としては、アルミニウム基材の陽極酸化アルミナと化学結合を形成し得る官能基を有するものが好ましい。具体的には、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ素化合物等が挙げられ、離型性に優れる点、モールド本体との密着性に優れる点から、シラノール基あるいは加水分解性シリル基を有することが好ましく、その中でも加水分解性シリル基を有するフッ素化合物が特に好ましい。
加水分解性シリル基を有するフッ素化合物の市販品としては、フルオロアルキルシラン、信越化学工業株式会社製の「KBM−7803」;ダイキン工業株式会社製の「オプツール」シリーズ;住友スリーエム株式会社製の「ノベックEGC−1720」等が挙げられる。
離型剤による処理方法としては、下記の方法1、方法2が挙げられ、モールド本体の微細凹凸構造が形成された側の表面をムラなく離型剤で処理できる点から、方法1が特に好ましい。
方法1:離型剤の希釈溶液にモールド本体を浸漬する方法。
方法2:離型剤またはその希釈溶液を、モールド本体の微細凹凸構造が形成された側の表面に塗布する方法。
方法1としては、下記の工程(f)〜(j)を有する方法が好ましい。
(f)モールド本体を水洗する工程。
(g)モールド本体にエアーを吹き付け、モールド本体の表面に付着した水滴を除去する工程。
(h)加水分解性シリル基を有するフッ素化合物を溶媒で希釈した希釈溶液に、モールド本体を浸漬する工程。
(i)浸漬したモールド本体をゆっくりと溶液から引き上げる工程。
(j)モールド本体を乾燥させる工程。
工程(f):
モールド本体には、多孔質構造を形成する際に用いた薬剤(細孔径拡大処理に用いたリン酸水溶液等)、不純物(埃等)等が付着しているため、水洗によってこれを除去する。
工程(g):
モールド本体にエアーを吹き付け、目に見える水滴はほぼ除去する。
工程(h):
希釈用の溶媒としては、フッ素系溶媒、アルコール系溶媒等の公知の溶媒を用いればよい。中でも、適度な揮発性、濡れ性等を有するため、外部離型剤溶液を均一に塗布できる点で、フッ素系溶媒が好ましい。フッ素系溶媒としては、ハイドロフルオロポリエーテル、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、ジクロロペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するフッ素化合物の濃度は、希釈溶液(100質量%)中、0.01〜0.2質量%が好ましい。
浸漬時間は、1〜30分が好ましい。
浸漬温度は、0〜50℃が好ましい。
工程(i):
浸漬したモールド本体を溶液から引き上げる際には、電動引き上げ機等を用いて、一定速度で引き上げ、引き上げ時の揺動を抑えることが好ましい。これにより塗布ムラを少なくできる。
引き上げ速度は、1〜10mm/秒が好ましい。
工程(j):
モールド本体を乾燥させる工程では、モールド本体を風乾させてもよく、乾燥機等で強制的に加熱乾燥させてもよい。
乾燥温度は、30〜150℃が好ましい。
乾燥時間は、5〜300分が好ましい。
なお、モールド本体の表面が離型剤で処理されたことは、モールド本体の表面の水接触角を測定することによって確認できる。離型剤で処理されたモールド本体の表面の水接触角は、60°以上が好ましく、90°以上がより好ましい。水接触角が 60°以上であれば、モールド本体の表面が離型剤で十分に処理され、離型性が良好となる。
<製造装置>
本発明の光透過性フィルムの製造方法は、上述したモールド溶解成分を含む硬化性組成物を用い、挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返し行う。
各工程は、例えば図2に示す製造装置を用いて、下記のように行われる。
表面に微細凹凸構造(図示略)を有するロール状モールド20と、ロール状モールド20の表面に沿って移動する帯状の基材フィルム42との間に、タンク22から硬化性組成物38を供給する。
ロール状モールド20と、空気圧シリンダ24によってニップ圧が調整されたニップロール26との間で、基材フィルム42および硬化性組成物38をニップし、硬化性組成物38を基材フィルム42とロール状モールド20との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド20の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
ロール状モールド20の下方に設置された活性エネルギー線照射装置28から、基材フィルム42を通して硬化性組成物38に活性エネルギー線を照射し、硬化性組成物38を硬化させることによって、ロール状モールド20の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44を形成する。
剥離ロール30により、表面に硬化樹脂層44が形成された基材フィルム42をロール状モールド20から剥離することによって、図3に示すような、一定領域において高さの均一な微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルム40を得る。
そして、挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返すことで、図4に示すように、フィ
ルムの長手方向Fにおいて微細凹凸構造の高さが異なる光透過性フィルム40が得られる。
活性エネルギー線照射装置28としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cm2が好ましい。
<作用効果>
以上説明した本発明の光透過性フィルムの製造方法によれば、モールド溶解成分を含む硬化性組成物を用い、挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返すうちに、フィルムの長手方向に高さの異なる微細凹凸構造が形成されるように、モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層を基材フィルム表面に形成する。このように挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返すと、モールド表面がモールド溶解成分によって適度に溶解される。その結果、光透過性フィルムの製造とともにモールド表面が溶解して表面形状(微細凹凸構造)が変化するため、フィルムの長手方向に高さの異なる微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材フィルムの表面に形成できる。
従って、本発明であれば、単一のモールドから高さの異なる微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルムを連続的に製造できる。これにより、例えば光透過性フィルムの用途に応じて反射防止性能と耐擦傷性とのバランスを変えた微細凹凸構造を有する光透過性フィルムを単一のモールドから効率的に製造できるので、微細凹凸構造の高さが異なる複数のモールドを準備する必要がない。
特に、硬化性組成物中のモールド溶解成分の含有量やブリードアウト量を調整したり、条件(a)における減少率を調整したリン酸エステル化合物を用いたりすれば、モールド表面の溶解速度を制御できるので、図4に示すように一定領域においては高さの均一な微細凹凸構造が形成されつつ、一定領域毎に高さが連続的に減少する微細凹凸構造が形成されるように硬化樹脂層を基材フィルム表面に形成できる。
<他の実施形態>
本発明の光透過性フィルムの製造方法は、上述した方法に限定されない。上述した方法では、図2に示す製造装置を用い、基材フィルム42に活性エネルギー線を照射して光透過性フィルム40を製造しているが、例えば支持フィルムに支持された基材フィルムを用い、以下のようにして光透過性フィルムを製造してもよい。
すなわち、図5に示すように、支持フィルム48によって裏面側から支持された基材フィルム42の表面と、ロール状モールド20との間に、硬化性組成物38を供給し、支持フィルム48を通して硬化性組成物38に活性エネルギー線を照射して、基材フィルム42の表面に微細凹凸構造を有する硬化樹脂層44が形成された光透過性フィルム40を製造する。このようにして得られた光透過性フィルム40は支持フィルム48で支持されており、必要に応じて支持フィルム48を光透過性フィルム40から剥離する。
支持フィルム48としては、剥離可能なフィルムであれば特に限定されないが、例えばPETフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。
支持フィルム48は、単層フィルムであってもよいし、多層フィルムであってもよい。
また、上述した方法は光ナノインプリント法を用いた方法であるが、熱ナノインプリント法を用いてもよい。この場合、上述した硬化性組成物の代わりに、モールド溶解成分を含む熱可塑性樹脂を用い、該熱可塑性樹脂が流動する温度にモールドを加熱して、モールドの反転構造を硬化樹脂層に転写する。
[光透過性フィルム]
図3、4は、本発明の光透過性フィルムの一例を示す断面図である。なお、図3はフィ
ルムの長手方向における一定領域部分を示す図であり、図4は連続的に製造された光透過性フィルムを示す図である。
図3、4に示す光透過性フィルム40は、基材フィルム42の表面に、微細凹凸構造を有する硬化樹脂層44が形成されている。
基材フィルム42は、光透過性を有するフィルムである。基材フィルムの材料としては、アクリルフィルム、PETフィルム、ポリカーボネートフィルム、TACフィルムなどが挙げられる。
硬化樹脂層44は、上述した硬化性組成物の硬化物からなる膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
陽極酸化アルミナのモールドを用いた場合の光透過性フィルム40の表面の微細凹凸構造は、陽極酸化アルミナの表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、硬化性組成物の硬化物からなる複数の凸部46を有する。
微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
凸部間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下である。陽極酸化アルミナのモールドを用いて凸部を形成した場合、凸部間の平均間隔は100から200nm程度となることから、250nm以下が特に好ましい。
また、凸部間の平均間隔は、凸部の形成のしやすさの点から、20nm以上が好ましい。
凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
本発明の光透過性フィルムは、フィルムの長手方向において微細凹凸構造の高さが連続的に変化していることが好ましく、より好ましくは、図4に示すように、一定領域においては高さの均一な微細凹凸構造が形成されつつ、一定領域毎に高さが連続的に減少していることが好ましい。特に、0.5cm2以上の領域において高さの均一な微細凹凸構造が形成されていることが好ましく、より好ましくは1.0cm2以上の領域である。一定領域の上限については特に制限されず、光透過性フィルムの用途に応じて設定すればよい。
凸部の高さは、フィルムの長手方向Fにおいて異なっていれば特に制限されないが、凸部間の平均間隔が100nmの場合は、80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好ましく、150〜300nmが特に好ましい。凸部の高さが80nm以上であれば、反射率が十分低くなり、かつ反射率の波長依存性が少ない。凸部の高さが500nm以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。
凸部の高さは、電子顕微鏡によって倍率30000倍で観察したときにおける、凸部の最頂部と、凸部間に存在する凹部の最底部との間の距離を測定した値である。
また、凸部のアスペクト比(凸部の高さ/凸部間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。凸部のアスペクト比が0.8以上であれば、反射率が十分に低くなる。凸部のアスペクト比が5.0以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。
凸部の形状は、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最表面から深さ方向に連続的に増加する形状、すなわち、凸部の高さ方向の断面形状が、三角形、台形、釣鐘型等の形状
が好ましい。
硬化樹脂層44の屈折率と基材フィルム42の屈折率との差は、0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましい。屈折率差が0.2以下であれば、硬化樹脂層44と基材フィルム42との界面における反射が抑えられる。
表面に微細凹凸構造を有する場合、その表面が疎水性の材料から形成されていればロータス効果により超撥水性が得られ、その表面が親水性の材料から形成されていれば超親水性が得られることが知られている。
硬化樹脂層44の材料が疎水性の場合の微細凹凸構造の表面の水接触角は、90°以上が好ましく、110°以上がより好ましく、120°以上が特に好ましい。水接触角が90°以上であれば、水汚れが付着しにくくなるため、十分な防汚性が発揮される。また、水が付着しにくいため、着氷防止を期待できる。
硬化樹脂層44の材料が親水性の場合の微細凹凸構造の表面の水接触角は、25°以下が好ましく、23°以下がより好ましく、21°以下が特に好ましい。水接触角が25°以下であれば、表面に付着した汚れが水で洗い流され、また油汚れが付着しにくくなるため、十分な防汚性が発揮される。該水接触角は、硬化樹脂層44の吸水による微細凹凸構造の変形、それに伴う反射率の上昇を抑える点から、3°以上が好ましい。
<作用効果>
以上説明した本発明の光透過性フィルムは、単一のモールドから得られたものであり、フィルムの長手方向において微細凹凸構造の高さが異なる。従って、各用途に適した高さの領域毎に本発明の光透過性フィルムを切断することで、1つのフィルムから様々な用途に適したフィルムが得られる。
光透過性フィルムの用途としては、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、撥水性物品、より具体的にはディスプレー用反射防止フィルム、自動車メーターカバー、自動車ミラー、自動車窓、有機または無機エレクトロルミネッセンスの光取り出し効率向上部材、太陽電池部材等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(モールドの細孔の平均間隔および深さの測定)
陽極酸化アルミナの一部を削り、断面にプラチナを1分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM−7400F」)を用いて、加速電圧3.00kVの条件にて断面を観察し、細孔の平均間隔および細孔の深さを測定した。各測定は、それぞれ5点について行い、平均値を求めた。
(光透過性フィルムの凸部の平均間隔および高さの測定)
光透過性フィルムの破断面にプラチナを10分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM−7400F」)を用いて、加速電圧:3.00kVの条件にて断面を観察し、凸部の平均間隔および凸部の高さを測定した。各測定は、それぞれ5点について行い、平均値を求めた。
(モールド溶解による減少率の測定)
リン酸エステル化合物にモールドを50℃の条件で22時間浸漬させて浸漬試験を行っ
た。浸漬試験後、モールドを取り出し、アセトン、クロロホルムを用いて洗浄した。浸漬前と洗浄後のモールドの質量を測定し、減少率を下記式より求めた。また、洗浄後のモールドについて、走査型電子顕微鏡観察を行った。
減少率(%)={(浸漬前のモールドの質量−洗浄後のモールドの質量)/浸漬前のモールドの質量}×100
(モールド溶解成分と重合性化合物の相溶性評価:透過率の測定)
モールド溶解成分を重合性化合物の混合液100質量部に対して3質量部添加し攪拌させた混合液を石英セルに充填し、リファレンスを空の石英セルとして、分光光度計U−3300(株式会社日立製作所製)を用いて、波長200〜800nmの範囲、スキャンスピード300nm/分の条件で透過率を測定した。
(反射率の測定)
微細凹凸構造が形成されていない側の面を黒く塗った光透過性フィルムについて、分光光度計(株式会社日立製作所製、「U−4100」)を用いて、入射角5°の条件で波長380nm〜780nmの間の相対反射率を測定した。
(モールドの作製)
純度99.9%のアルミニウムインゴットに鍛造処理を施して、直径:200mm、長さ350mmに切断した圧延痕のない平均結晶粒径:40μmの円筒状アルミニウム原型に、羽布研磨処理を施した後、これを過塩素酸/エタノール混合溶液中(体積比:1/4)で電解研磨し、鏡面化したものをアルミニウム基材として用いた。
工程(a):
該アルミニウム原型について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30分間陽極酸化を行った。
工程(b):
厚さ3μmの酸化皮膜が形成されたアルミニウム原型を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に2時間浸漬して、酸化皮膜を除去した。
工程(c):
該アルミニウム原型について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム原型を、30℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
前記工程(c)および工程(d)を合計で5回繰り返し、平均間隔:100nm、深さ:160nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたロール状のモールド本体を得た。
工程(f):
シャワーを用いてモールド本体の表面のリン酸水溶液を軽く洗い流した後、モールド本体を流水中に10分間浸漬した。
工程(g):
モールド本体にエアーガンからエアーを吹き付け、モールド本体の表面に付着した水滴を除去した。
工程(h):
モールド本体を、オプツールDSX(ダイキン化成品販売株式会社製)を希釈剤HD−ZV(株式会社ハーベス製)で0.1質量%に希釈した溶液に室温で10分間浸漬した。工程(i):
モールド本体を希釈溶液から3mm/秒でゆっくりと引き上げた。
工程(j):
モールド本体を一晩風乾して、離型剤で処理されたモールドを得た。
得られたモールドの走査型電子顕微鏡像を図6に示す。
なお、モールド溶解性の評価には、50mm×50mm×厚さ0.3mmのアルミニウム板(純度99.99%)をアルミニウム基材として使用し、上記工程(c)まで実施し
たものを用いた。
[実施例1]
<硬化性組成物の調製>
重合性化合物としてポリエチレングリコールジアクリレート(東亜合成株式会社製、「アロニックスM260」)20質量部と、トリメチロールエタン/アクリル酸/無水コハク酸の縮合反応物(大阪有機化学工業株式会社製、「TAS」)70質量部と、ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)3質量部と、メチルアクリレート(三菱化学株式会社製)7質量部とを混合して混合液を調製した。
この混合液に、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、「IRGACURE184」)1.0質量部と、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、IRGACURE819)0.1質量部と、モールド溶解成分としてリン酸エステル化合物(アクセル社製、「INT−1856」)0.3質量部と、紫外線吸収剤(共同薬品株式会社、「Viosorb110」)0.2質量部とを添加し、硬化性組成物を調製した。
なお、モールド溶解成分として用いたリン酸エステル化合物について、モールド溶解による減少率の測定したところ、0.41%であった。
さらにモールド溶解成分の重合性化合物の相溶性を調べるため、INT−1856を重合性化合物の混合液100質量部に対して3質量部添加し攪拌させた混合液の500nmにおける透過率を測定したところ、透過率は47%であり、内部離型剤と重合性化合物との相溶性が悪く、ブリードしやすいという結果が得られた。
<光透過性フィルムの製造>
図4に示す製造装置を用い、以下のようにして光透過性フィルムを製造した。
ロール状モールド20としては、先に作製したモールドを用いた。
基材フィルム42としては、アクリルフィルム(三菱レイヨン株式会社製、「アクリプレンHBS010」、厚さ:100μm)を用い、その裏面に、支持フィルム48として粘着剤付きPETフィルム(株式会社サンエー化研製、「SAT−116T」、厚さ:38μm)を貼り合わせた。
ロール状モールド20と、ロール状モールド20の表面に沿って移動する、帯状の支持フィルム48によって裏面側から支持された帯状の基材フィルム42との間に、タンク22から硬化性組成物38を供給した。
ついで、ロール状モールド20の下方に設置された活性エネルギー線照射装置28より、支持フィルム48側から基材フィルム42を通して硬化性組成物38に、積算光量800mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化性組成物38を硬化させることによって、ロール状モールド20の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44を形成した。
剥離ロール30により、表面に硬化樹脂層44が形成された基材フィルム42を支持フィルム48と共にロール状モールド20から剥離することによって、支持フィルム48で支持された光透過性フィルム40を得た。
その結果、10000mの光透過性フィルムを連続的に、かつ安定的に製造できた。
得られた光透過性フィルムの、製造開始から900m経過した付近の凸部間の平均間隔は100nmであり、凸部の高さは160nmであり、波長550nmの反射率は0.1%であった。
2700m付近の凸部間の平均間隔は100nmであり、凸部の高さは130nmであり、波長550nmの反射率は0.2%であった。
4500mでの付近の凸部間の平均間隔は100nmであり、凸部の高さは100nmであり、波長550nmの反射率は0.4%であった。
6300m付近の凸部間の平均間隔は100nmであり、凸部の高さは95nmであり、波長550nmの反射率は0.8%であった。
7200m付近の凸部間の平均間隔は100nmであり、凸部の高さは90nmであり、波長550nmの反射率は1.2%であった。
10000m付近の凸部間の平均間隔は100nmであり、凸部の高さは70nmであ
り、波長550nmの反射率は2.6%であった。
また、前記測定した付近それぞれにおける1cm2内おいて、凸部の高さで10nm超、反射率で0.5%超の斑は確認されなかった。
以上の結果より、実施例1の場合、一定領域においては高さの均一な微細凹凸構造が形成されつつ、一定領域毎に高さが連続して減少している微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルムを単一のモールドから製造することができた。
[比較例1]
重合性化合物としてトリメチロールエタン/アクリル酸/無水コハク酸の縮合反応物(大阪有機化学工業株式会社製、「TAS」)45質量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製)の45質量部、ラジカル重合性シリコーンオイル(信越化学工業社製、X−22−1602)の10質量部を混合して混合液を調製した。
この混合液に、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、「IRGACURE184」)3.0質量部と、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、IRGACURE819)0.2質量部と、モールド溶解成分としてリン酸エステル化合物(アクセル社製、「INT−1856」)0.1質量部とを添加し、硬化性組成物を調製した。
また、INT−1856を重合性化合物の混合液100質量部に対して3質量部添加し攪拌させた混合液の500nmにおける透過率を測定したところ、透過率は95%であった。従って、モールド溶解成分と重合性化合物の相溶性は良く、ブリードしにくいという結果が得られた。
得られた硬化性組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で光透過性フィルムを10000m作製した。
その結果、製造開始直後から10000mまで、凸部間の平均周期は100nmであり、凸部の高さは150nmであり、波長550nmの反射率は0.1%であり、いずれも変化してなかった。
以上の結果より、比較例1の場合、硬化性組成物中のリン酸エステル化合物の含有量が少なく、さらにリン酸エステル化合物のブリードアウト量が少なかったため、モールド表面の溶解が起らなかったと考えられる。そのため、単一のモールドから高さの異なる微細凹凸構造を表面に有する光透過性フィルムを製造することはできなかった。
14 陽極酸化アルミナ
20 ロール状モールド
38 活性エネルギー線硬化性組成物
40 光透過性フィルム
42 基材フィルム
44 硬化樹脂層
F 長手方向

Claims (7)

  1. 基材フィルムの表面に、微細凹凸構造を有する硬化樹脂層が形成された光透過性フィルムを製造する方法であって、
    表面に前記微細凹凸構造の反転構造を有するモールドと基材フィルムとの間に、モールド溶解成分を含む微細凹凸構造原料を挟持させる挟持工程と、
    前記微細凹凸構造原料を加熱して、および/または、微細凹凸構造原料に活性エネルギー線を照射して硬化させて、前記モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層が基材フィルム表面に形成された光透過性フィルムを得る転写工程と、
    得られた光透過性フィルムとモールドとを分離する分離工程とを有し、
    前記挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返すうちに、フィルムの長手方向に高さの異なる微細凹凸構造が形成されるように、モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層を基材フィルム表面に形成する、光透過性フィルムの製造方法。
  2. 前記挟持工程と転写工程と分離工程とを繰り返すうちに、フィルムの長手方向に高さが連続的に変化する微細凹凸構造が形成されるように、モールドの反転構造が転写された硬化樹脂層を基材フィルム表面に形成する、請求項1に記載の光透過性フィルムの製造方法。
  3. 前記モールド表面の微細凹凸構造の反転構造が、陽極酸化アルミナからなる、請求項1または2に記載の光透過性フィルムの製造方法。
  4. 前記モールド溶解成分が、下記条件(a)を満たすリン酸エステル化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光透過性フィルムの製造方法。
    条件(a):50℃のリン酸エステル化合物中にモールドを22時間浸漬させた後のモールド質量が、浸漬前に比べて0.01%以上減少すること。
  5. 前記リン酸エステル化合物が、下記式(1)で表わされるポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル化合物である、請求項4に記載の光透過性フィルムの製造方法。

    [式(1)中、R1はアルキル基であり、mは1〜20であり、nは1〜3である。]
  6. 基材フィルムの表面に、微細凹凸構造を有する硬化樹脂層が形成された光透過性フィルムであって、
    前記微細凹凸構造は、モールド表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、
    フィルムの長手方向において、前記微細凹凸構造の高さが異なる、光透過性フィルム。
  7. フィルムの長手方向において、前記微細凹凸構造の高さが連続的に変化している、請求項6に記載の光透過性フィルム。
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