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JP2015101746A - 超硬合金およびこれを用いた表面被覆切削工具 - Google Patents

超硬合金およびこれを用いた表面被覆切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】耐欠損性に優れる超硬合金を提供する。【解決手段】超硬合金は、炭化タングステン粒子と、コバルト、ニッケルおよび鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を有する結合相と、を含み、結合相を7質量%以上13質量%以下の範囲で含有し、炭化タングステン粒子のうち、結晶粒内方位差が1.5?以上である炭化タングステン粒子の割合は、炭化タングステン粒子の全粒子数に対して6%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、超硬合金およびこれを用いた表面被覆切削工具に関する。
炭化タングステン粒子(以下「WC粒子」とも記す)を主成分とする超硬合金で構成された切削工具を用いて、各種被削材の切削加工が行なわれている。たとえば特開2008−133508号公報(特許文献1)には切削工具に使用される超硬合金として、断面組織を観察した場合に多角形状でかつ角部の曲率半径が50nm以上の丸みを呈するWC粒子を含む超硬合金が開示されている。
特開2008−133508号公報
一般に超硬合金はWC粒子(結晶粒)とコバルト等の元素を含む結合相とから構成され、粉末冶金法によって製造されている。そして粉末冶金法によって得られた焼結体に刃先処理等の所定の加工を行なうことにより切削工具とすることができる。
近年、切削加工において被削材の難削化が進行しており、さらに被削材形状の複雑化が相俟って、切削工具の使用条件は過酷化を極めている。特に複雑形状の加工は断続切削となりやすく、刃先の欠損によって工具寿命が低下するケースが増加している。従来、たとえば特許文献1に示されるように、WC粒子の形状等に着目して耐欠損性の改良が図られてきた。しかしながら、このような手法に基づく改良効果はほぼ飽和状態に達しており、近時の切削加工で要求される水準を満たせていないのが現状である。
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは耐欠損性に優れる超硬合金を提供することにある。
本発明の実施形態に係る超硬合金は、炭化タングステン粒子と、コバルト、ニッケルおよび鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を有する結合相と、を含み、結合相を7質量%以上13質量%以下の範囲で含有し、炭化タングステン粒子のうち、結晶粒内方位差が1.5°以上である炭化タングステン粒子の割合は、炭化タングステン粒子の全粒子数に対して6%以下である。
本発明の実施形態に係る超硬合金は耐欠損性に優れる。
本発明の一実施形態に係る超硬合金におけるEBSD解析結果の一例を示す模式図である。 参考例に係る超硬合金におけるEBSD解析結果の一例を示す模式図である。
[本願発明の実施形態の説明]
まず、本願発明の実施形態(以下「本実施形態」とも記す)の概要を以下の(1)〜(6)に列記して説明する。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行なったところ、特定の範囲で結合相を含有する超硬合金組織において、WC粒子(結晶粒)がその内部に有する歪(ひずみ)と超硬合金の耐欠損性との間に相関があることを見出した。そして更に研究を重ねることにより本発明を完成させるに至った。すなわち本実施形態に係る超硬合金および表面被覆切削工具は以下の構成を備える。
(1)本実施形態に係る超硬合金は、炭化タングステン粒子と、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および鉄(Fe)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を有する結合相と、を含み、当該結合相を7質量%以上13質量%以下の範囲で含有する。
そして、当該炭化タングステン粒子のうち、結晶粒内方位差が1.5°以上である炭化タングステン粒子の割合は、炭化タングステン粒子の全粒子数に対して6%以下である。
上記のように超硬合金が特定範囲で結合相を含有することにより、靭性と硬度とが両立された合金組織を構成することができる。そして本発明者の研究によれば結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子は、超硬合金に衝撃が加わった場合に欠損の起点となりやすい粒子である。したがって、このようなWC粒子の割合を6%以下に制限することにより耐欠損性が向上する。
(2)炭化タングステン粒子の平均粒径は、0.4μm以上3.0μm以下であることが好ましい。平均粒径が0.4μm以上であることにより切削時の亀裂の伝搬が抑制され、平均粒径が3.0μm以下であることにより十分な硬度を確保することができる。これにより超硬合金の耐欠損性が更に向上する。
(3)超硬合金は、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)および硼素(B)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とから構成される化合物の1種以上を含む化合物相または固溶体相をさらに含み、該化合物相または固溶体相を0.1質量%以上50質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
すなわち、超硬合金は、(i)炭化タングステン粒子と、(ii)周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とから構成される化合物の1種以上を含む化合物相または固溶体相と、(iii)結合相と、(iv)不可避不純物と、を含み、当該化合物相または固溶体相を0.1質量%以上50質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
このような化合物相または固溶体相を含むことにより、超硬合金組織の結合力が高まり、超硬合金の耐摩耗性を向上させることができる。
(4)超硬合金は切削工具に用いられることが好ましい。上記のような超硬合金は優れた耐欠損性を有するため切削工具用として特に有用である。なお切削工具とは、具体的には、ドリル、エンドミル、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切り工具、リーマまたはタップのいずれかを示す。
(5)さらに本実施形態は、上記超硬合金を用いた表面被覆切削工具にも係わり、該表面被覆切削工具は、基材と、基材上に形成された被膜とを備え、当該基材は、上記超硬合金により構成される。耐欠損性に優れる超硬合金の表面に被膜を形成することにより更に切削性能を向上させることができる。
(6)本実施形態の表面被覆切削工具において、被膜は物理蒸着法および化学蒸着法の少なくともいずれかにより形成されることが好ましい。物理蒸着法を用いることにより基材の強度低下を伴わず被膜を形成することができる。また化学蒸着法を用いることにより基材と被膜との密着強度を高めることができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本実施形態に係る超硬合金および表面被覆切削工具についてより詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
<超硬合金>
本実施形態の超硬合金は、WC粒子と、Co、NiおよびFeからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を有する結合相と、を含み、当該結合相を7質量%以上13質量%以下の範囲で含有する。
そしてWC粒子のうち、結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合は、WC粒子の全粒子数に対して6%以下である。
(結晶粒内方位差)
ここで結晶粒内方位差とは、電子線後方散乱回折(EBSD:Electron Backscatter Diffraction)法によって測定される結晶粒の歪(ひずみ)の程度を示す指標である。EBSDとは走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)における電子線回折の一種であり、その回折パターンから結晶方位を解析することができる。
本発明者の研究によれば、結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子(結晶粒)の割合が全WC粒子のうち6%以下である超硬合金は耐欠損性に優れる。この理由の詳細は明らかではないが、結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子は結晶性が低いため、繰り返し衝撃が加わる条件下で欠損の起点となりやすいと考えられる。したがって、このようなWC粒子の割合を6%以下に制限することにより耐欠損性が向上するものと考えることができる。なお、結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合は好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下である。このようなWC粒子の割合が少ない程、耐欠損性が向上する傾向にあるからである。
(結晶粒内方位差の測定方法)
結晶粒内方位差は市販されているSEMおよびEBSD装置を用いて測定することができる。結晶粒内方位差は具体的には次のようにして測定するものとする。
(測定サンプルの作製方法)
測定サンプルは、超硬合金の任意の表面または断面を鏡面加工することにより作製することができる。ここで鏡面加工の方法としては、たとえば、ダイヤモンドペーストで研磨する方法、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置を用いる方法、クロスセクションポリッシャ(CP:Cross section Polisher)装置を用いる方法、およびこれらを組み合わせた加工方法等を挙げることができる。
(測定データの解析方法)
EBSD法による結晶粒内方位差の測定およびデータの解析は次のようにして行なわれる。
[1]測定面積内の全測定点(ピクセル)の方位を測定し、隣接するピクセル間の方位差が15°以上である境界を結晶粒界とみなし、これに囲まれた領域を結晶粒とする。
[2]結晶粒内の全ての測定点(ピクセル)の方位データの平均値を求め、その値を同結晶粒の「平均結晶粒内方位」とする。
[3]「平均結晶粒内方位」と、同結晶粒内で最大に方位の異なる解析点での結晶方位との差を「結晶粒内方位差」とする。
[4]測定面積内の粒子数に対して、「結晶粒内方位差」が1.5°以上である粒子数の割合を算出する。
以上のようなデータ解析は、たとえばTSLソリューションズ製のEBSP解析ソフトウェア「OIM Analysis」によって行なうことができる。この際、測定面積内の全粒子数が300個以上となるようにSEMの倍率および視野数を適宜調整するものとする。
図1および図2を参照して、本実施形態の超硬合金組織について説明する。図1は本実施形態の超硬合金組織におけるEBSD解析結果の一例を示す模式図である。また図2は参考例の超硬合金組織におけるEBSD解析結果の一例を示す模式図である。図1および図2には、結晶粒内方位差が0.75°以下であるWC粒子1、結晶粒内方位差が0.75°〜1.5°であるWC粒子2、結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子3、および結合相4をハッチングで区別して図示している。
図中のハッチングで識別されるように、図1では結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子3が非常に少なく、結晶粒内方位差が0.75°以下であるWC粒子1が多く分布している。他方、図2では結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子3および結晶粒内方位差が0.75°〜1.5°であるWC粒子2が多く分布していることが分かる。図2に示す参考例の組織では、衝撃が加わるとWC粒子3が起点となって欠損が発生する。これに対して図1に示す本実施形態の組織では、欠損の起点となり得るWC粒子3が6%以下と少ないため、優れた耐欠損性を有することができる。
(WC粒子)
本実施形態におけるWC粒子は、その平均粒径が0.4μm以上3.0μm以下であることが好ましい。平均粒径が0.4μm未満であると合金組織に亀裂が発生した場合に亀裂の伝播が起こりやすい傾向にあり、他方3.0μmを超えると合金組織の硬度が低下する傾向にあるからである。なおここで「平均粒径」は次のようにして測定するものとする。まず上記「測定データの解析方法」の[1]で説明した方法によって、一つの結晶粒として識別された領域(面積)に対する円相当径を求め、この円相当径をWC粒子の粒子径とする。そして視野画像内のWC粒子のそれぞれについて粒子径(円相当径)を求め、それらの算術平均値を「平均粒径」とする。
(結合相)
本実施形態の結合相は、合金組織内でWC粒子同士を結合している。そして結合相は、Co、NiおよびFeからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を有し、超硬合金に7質量%以上13質量%以下の範囲で含有されている。結合相の含有量が7質量%未満であると焼結性が低下して、合金組織の靭性が低下する場合があり、他方結合相が13質量%を超えると結合相の厚さが増加して硬度が低下する場合がある。なお結合相の含有量は、好ましくは8質量%以上12質量%以下であり、より好ましくは9質量%以上11質量%以下である。
(化合物相または固溶体相)
本実施形態の超硬合金は、周期表の第4族元素(Ti、Zr、Hf等)、第5族元素(V、Nb、Ta等)および第6族元素(Cr、Mo、W等)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とから構成される化合物の1種以上を含む化合物相または固溶体相をさらに含むことができる。
ここで「化合物相または固溶体相」とは、かかる相を構成する化合物が固溶体を形成していてもよいし、固溶体を形成せず個々の化合物として存在していてもよいことを示す。このような化合物相または固溶体相を含むことにより、超硬合金組織の結合力が向上し、超硬合金の耐摩耗性を向上させることができる。
化合物相または固溶体相の含有量は、0.1質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましい。このような範囲で化合物相または固溶体相を含む超硬合金は特に耐摩耗性に優れる。なお化合物相または固溶体相の含有量は、より好ましくは0.5質量%以上30質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上15質量%以下である。
化合物相または固溶体相を構成する具体的な化合物としては、たとえばTiC、TiCN、TaC、TaN、TaCN、NbC、ZrC、ZrN、ZrCN、Cr32等を挙げることができる。これらの化合物は特に耐摩耗性の観点から好ましい。
なお本明細書において上記のように化合物を化学式で表わす場合、原子比を特に限定しない場合は従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のもののみに限定されるものではない。たとえば単に「TiCN」と記す場合、「Ti」と「C」と「N」の原子比は50:25:25の場合のみに限られず、また「TiN」と記す場合も「Ti」と「N」の原子比は50:50の場合のみに限られず、従来公知のあらゆる原子比が含まれるものとする。
(その他)
本実施形態の超硬合金は、上記に示した構成の他、組織中に局所的に遊離炭素と呼ばれる異常相を含んでいても構わない。また超硬合金は、その表面に脱β層やCo富化層や表面硬化層が形成されているものであってもよい。
(超硬合金の用途)
本実施形態の超硬合金は優れた耐欠損性を有するため、特に耐欠損性が要求される切削工具への適用性が高い。そのような切削工具としては、たとえば、ドリル、エンドミル、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切り工具、リーマまたはタップを例示することができる。
<超硬合金の製造方法>
(WC粉末の準備)
出発原料となるWC粉末としては高温炭化処理されたものが好ましい。ここで高温炭化処理とは、具体的には1900℃〜2150℃の温度で2時間〜8時間保持してタングステンの炭化を行なう処理を示す。さらに高温炭化処理からの冷却条件は、炭化温度(1900℃〜2150℃)から1200℃〜1500℃まで2℃/min〜8℃/mimの速度で冷却するものであることが好ましい。これにより一次粒子の結晶粒内方位差を最小化することができる。
(超硬合金原料の混合)
WC粉末とその他超硬合金を構成する原料との混合は、WC粒子に強い衝撃が加わらない状態で行なうことが好ましい。強い衝撃によってWC粒子に歪が加わり結晶粒内方位差が増加する場合もあるからである。
ここで強い衝撃が加わらない混合方法としては、たとえば次のような方法を例示することができる。すなわち、原料粉末の混合物を粉砕用ボールが入っていないボールミル内で長時間撹拌する方法、あるいは原料粉末の混合物をV型混合機で長時間撹拌する方法が好適である。ここで撹拌方式は特に限定されず、強い衝撃が加わらない方法であればいかなる方法も採用され得る。たとえば、インペラを用いる方法、水流のみを用いる方法、およびこれらを併用する方法等を例示することができる。
本実施形態の超硬合金は、たとえば次のような手順に従って製造される。まず高温炭化処理を経たWC粉末とその他原料とを、水、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコール等の溶媒とともに混合機(撹拌機)に投入し低速回転で長時間撹拌する。次いで得られた混合物を乾燥させた後、所定の形状に成形する。そしてこの成形体を焼結することにより、WC粒子が目的の結晶粒内方位差を有する超硬合金を製造することができる。
(焼結)
なお上記成形体の焼結は、1350℃〜1450℃までのなるべく低い温度で行なわれることが好ましい。高温で焼結が行なわれると固溶再析出現象によって結晶粒成長が促進され、超硬合金の硬度が低下して目的の性能が得られない場合もあるからである。なお本発明者の研究によれば、結合相を7質量%以上13質量%以下の範囲で含有する超硬合金では、焼結温度を1350℃以上1420℃未満とすると特に硬度が高まる傾向にある。
以下、上記に説明した超硬合金を用いた表面被覆切削工具について説明する。
<表面被覆切削工具>
本実施形態の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された被膜とを備え、該基材は上記に説明した本実施形態の超硬合金により構成される。本実施形態の超硬合金を基材に用いることにより、耐欠損性に優れる表面被覆切削工具を得ることができる。
(被膜)
本実施形態の被膜は、基材の全面を覆うようにして形成されていてもよいし、基材の一部分のみを覆うようにして形成されていてもよいが、その形成目的が切削工具の諸特性の向上(すなわち切削性能の向上)にあることから、全面を覆うかもしくは一部分を覆う場合であっても切削性能の向上に寄与する部位の少なくとも一部分を覆うことが好ましい。なお被膜の構成は部分的に異なっていてもよい。
被膜で基材を覆うことにより、切削工具の耐摩耗性、耐酸化性、靭性および使用済み刃先部の識別のための色付き性等の諸特性が向上する。
かかる被膜は、周期表の第4族元素(Ti、Zr、Hf等)、第5族元素(V、Nb、Ta等)、第6族元素(Cr、Mo、W等)、Al、およびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、または当該元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素との化合物からなる層を1層以上含むことが好ましい。
上記のような元素または化合物としては、たとえばTiCN、TiN、TiCNO、TiO2、TiNO、TiB2、TiBN、TiSiN、TiSiCN、TiAlN、TiAlCrN、TiAlSiN、TiAlSiCrN、AlCrN、AlCrCN、AlCrVN、TiAlBN、TiBCN、TiAlBCN、TiSiBCN、AlN、AlCN、Al23、ZrN、ZrCN、ZrN、ZrO2、HfC、HfN、HfCN、NbC、NbCN、NbN、Mo2C、WC、W2C、Cr、Al、Ti、Si、Vなどを挙げることができる。またこれらの元素または化合物に対し、他の元素が微量にドープされたものであってもよい。なお上記Al23には、α−Al23、κ−Al23、γ−Al23またはアモルファス状態のものが含まれるものとする。
(被膜の形成方法)
本実施形態の被膜は、PVD法およびCVD法の少なくともいずれかの方法により形成されることが好ましい。
PVD法としては、従来公知の真空蒸着法やスパッタリング法等を採用することができる。具体的には、たとえば、マグネトロンスパッタリング法、アーク式イオンプレーティング法、ホロカソード法、イオンビーム法、電子ビーム法、バランストマグネトロンスパッタリング法、アンバランストマグネトロンスパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法等を挙げることができる。PVD法で被膜を形成することにより、基材の強度低下を伴わず被膜を形成することができる。
またCVD法としては、たとえば従来公知のプラズマCVD法などを採用することができる。CVD法で被膜を形成することにより、被膜と基材との密着強度を向上させることができる。
CVD法で複数の層を積層する場合、複数の層のうち少なくとも1層はMT−CVD(Medium Temperature-CVD)法を用いて成膜されることが好ましい。通常のCVD法は、約1020℃〜1030℃で成膜を行なうのに対して、MT−CVD法は約850℃〜950℃という比較的低温で行なうことができるため、成膜の際に加熱による基材へのダメージを低減することができる。したがって、MT−CVD法によって成膜される層は、基材に近接させて形成されていることが好ましい。
被膜の厚さ(2層以上で形成される場合はその全体の厚さ)は、1μm以上30μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上20μm以下であり、さらに好ましくは4μm以上15μm以下である。その厚さが1μm未満の場合、耐摩耗性の向上作用が十分に示されないためであり、他方30μmを超えてもそれ以上の諸特性の向上が認められないことから経済的に有利ではない。しかし、経済性を無視する限りその厚さは30μm以上としても構わない。被膜の厚さの測定方法としては、たとえば被膜を形成した刃先交換型切削チップを切断し、その断面をSEMにより測定するものとする。また被膜の組成は、エネルギー分散型X線分析装置(EDS:Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)により測定するものとする。
<表面被覆切削工具の製造方法>
本実施形態の表面被覆切削工具は、上記のように超硬合金からなる基材を得、たとえばホーニング処理等の種々の刃先加工を行なった後、該基材上に被膜を形成することにより製造することができる。
なお、被膜形成後に該被膜に圧縮残留応力を付与してもよい。被膜に圧縮残留応力が付与されることにより被膜の靭性が向上するからである。圧縮残留応力の付与はPVD法によって形成された被膜に対して特に有効である。圧縮残留応力は、たとえば、ブラスト法、ブラシ法、バレル法およびイオン注入法等によって導入することができる。
以下、実施例を用いて本実施形態についてさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
以下のようにして、超硬合金から構成される基材と該基材上に被膜とを有する表面被覆切削工具(刃先交換型切削チップ)No.1〜14を作製した。
まずタングステン粉末と炭素粉末とを1950℃で5時間保持して炭化した後、7℃/minの速度で1300℃まで冷却することにより、WC粉末を得た。このWC粉末のフィッシャー法による平均粒径(以下「FSSS(Fisher Sub Sieve Sizer value)」とも記す)は、2.5μmであった。
WC粉末とCo粉末とTaC粉末とを、Co(6質量%)、TaC(2.0質量%)、WC粉末(残部)となるように配合して超硬合金原料粉末を得た。この超硬合金原料粉末を原料1−Aとする。原料1−Aの内容を表1に示す。
Figure 2015101746
次いで、この原料1−Aと液体パラフィン(2質量%)とエタノール溶媒とを粉砕用ボールを入れないボールミルで24時間撹拌して混合物を得た。そして、この混合物をスプレードライ乾燥して造粒粉末を得た。
次いで、この造粒粉末をプレス成形して、10Pa以下の真空雰囲気下14010℃で1時間焼結することにより焼結体を得た。このような混合/造粒/焼結を行なうプロセスを製法1−1とする。製法1−1の内容を表2に示す。
Figure 2015101746
続いて焼結体の刃先稜線にSiCブラシホーニング処理を行ない、さらに刃先交換型チップの底面に対して平坦研磨処理を行なって、刃先交換型切削チップ形状(「SEMT13T3AGSN−G」、住友電工ハードメタル株式会社製)を有する表面被覆切削工具の基材を得た。
この基材の表面に、PVD法の一種であるイオンプレーティング法によって厚さ4.5μmのTiAlN層からなる被膜を形成した。以上のようにして表面被覆切削工具No.1を得た。
(WC粒子の評価)
この表面被覆切削工具No.1の基材において、結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合、および平均粒径(EBSD法によるもの)を前述の方法に従って測定した。結果を表3に示す。
Figure 2015101746
表1および表2に示すように原料および焼結体の製法を変更し、それらを表3に示すように組み合わせる以外は上記と同様にして、表面被覆切削工具No.2〜14を得た。そして上記と同様にして結晶粒内方位差および平均粒径を評価した。結果を表3に示す。なお表3中、工具No.に「*」が付されたものが実施例に係る表面被覆切削工具に相当し、それ以外が比較例に相当する。
<評価>
表面被覆切削工具No.1〜14の切削性能を以下のようにして評価した。
(鋼の強断続フライス加工による初期欠損率の評価)
刃先交換型切削チップをカッタ(型番「WGC4160R」、住友電工ハードメタル株式会社製)にセットし、次の切削条件で鋼の強断続フライス加工を行なうことにより初期欠損率を評価した。すなわち切削長300mmとする加工を行なって初期欠損の有無を確認した。そして同操作を10回(N=10)行なって欠損率を算出した。結果を表3に示す。
(切削条件)
被削材:S45C スリット有りブロック材(300mm×100mm)
切削速度(Vc):100m/min
送り(f):0.60mm/rev
切り込み(ap):1.8mm
クーラント:なし(乾式切削)
センターカット。
(結果と考察)
(i)実施例:工具No.2、6、7および11〜13
工具No.2、6、7および11〜13は、いずれも欠損率が低く、優れた耐欠損性を有していた。この理由は次のように考えることができる。すなわち、合金組織中において結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合が6%以下であることにより、衝撃が加わった際に欠損の起点となり得る部分が少ない。これにより耐欠損性が向上すると考えられる。さらにCo配合量が7質量%以上13質量%以下であることにより、靭性と硬度とが両立された合金組織となっていると考えられる。
(ii)比較例:工具No.1
工具No.1は、工具No.2、6、7、11、12および13(実施例)と比較して、結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合は同等であるにも関わらず、これらに比べ欠損率が高い結果となった。この理由は、Co配合量が6質量%(7質量%未満)と少なかったため焼結性が悪く、合金組織の靭性が低下して欠損しやすくなったものと考えることができる。
(iii)比較例:工具No.3〜5および8〜10
これらの工具ではいずれも欠損率が高く(60%〜80%)、耐欠損性に劣るものであった。この理由は、合金組織において結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合が多い(いずれも6%を超過)ことに起因していると考えることができる。すなわち断続切削時に衝撃が加わった際、結晶粒内方位差の大きいWC粒子が起点となり欠損が発生していると考えることができる。
(iv)比較例:工具No.14
工具No.14は、工具No.2、6、7、11、12および13(実施例)と比較して、結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合は同等であるにも関わらず、これらに比べ欠損率が高い結果となった。この理由は、Co配合量が14質量%(13質量%を超過)と多いため硬度が低く、断続切削時の衝撃で工具が変形して欠損に至ったものと推定される。
<実施例2>
以下のようにして、超硬合金から構成される基材と該基材上に被膜とを有する表面被覆切削工具(刃先交換型切削チップ)No.15〜21を作製した。
まず表4に示すように、製造条件を変更する以外は、実施例1と同様にして、原料2−Aを得た。
Figure 2015101746
次に表5に示す製法2−1に従って混合/造粒/焼結の各操作を行なって焼結体を得た。
Figure 2015101746
続いて焼結体の刃先稜線にSiCブラシホーニング処理を行ない、さらに刃先交換型チップの底面に対して平坦研磨処理を行なって、刃先交換型切削チップ形状(「SEMT13T3AGSN−G」、住友電工ハードメタル株式会社製)を有する表面被覆切削工具の基材を得た。
この基材の表面に、イオンプレーティング法によって厚さ4.3μmのTiAlN層からなる被膜を形成した。以上のようにして、表面被覆切削工具No.15を得た。
(WC粒子の評価)
この表面被覆切削工具No.15の基材において、結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合、および平均粒径(EBSD法によるもの)を前述の方法に従って測定した。結果を表6に示す。
Figure 2015101746
表4および表5に示すように原料および焼結体の製法を変更し、それらを表6に示すように組み合わせる以外は上記と同様にして、表面被覆切削工具No.16〜21を得た。そして上記と同様にして結晶粒内方位差および平均粒径を評価した。結果を表6に示す。なお表6中、工具No.に「*」が付されたものが実施例に係る表面被覆切削工具に相当し、それ以外が比較例に相当する。
<評価>
表面被覆切削工具No.15〜21の切削性能を以下のようにして評価した。
(SUS材のフライス加工による境界欠損の評価)
刃先交換型切削チップをカッタ(型番「WGC4160R」、住友電工ハードメタル株式会社製)にセットし、次の切削条件でSUS材のフライス加工を行なった。そして切削長300mm毎に、コンパレータを用いて逃げ面側から見た欠損量を計測し、欠損量が0.3mm以上となった時点で寿命と判定した。結果を表6に示す。
(切削条件)
被削材:SUS304ブロック材(300mm×100mm)
切削速度(Vc):170m/min
送り(f):0.35mm/rev
切り込み(ap):1.6mm
クーラント:なし(乾式切削)
センターカット。
(結果と考察)
(i)実施例:工具No.15
工具No.15は、合金組織において結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合が6%以下であり、耐欠損性に優れていた。ただし、これと同様に合金組織において結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合が6%以下である工具No.16、17、19および20と比較すると寿命までの切削長はやや短いものであった。この理由は、WC粒子の平均粒径が0.4μm未満と小さいために、僅かに生じた欠損の起点から亀裂が伝播し易かったためであると推定できる。
(ii)実施例:工具No.21
工具No.21は、合金組織において結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合が6%以下であり、耐欠損性に優れていた。ただし、これと同様に合金組織において結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合が6%以下である工具No.16、17、19および20と比較すると寿命までの切削長はやや短い結果であった。この理由は、WC粒子の平均粒径が3.5μmと大きいために、硬度が低下して切削時の衝撃で変形を来し欠損に至ったものと推定される。
(iii)比較例:工具No.18
工具No.18は寿命までの切削長が特に短く耐欠損性に劣るものであった。この理由は、合金組織において結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合が多い(6%を超過)ことに起因していると考えることができる。すなわち加工時の衝撃でこれらのWC粒子が起点となって欠損が発生していると推定される。
以上の結果から耐欠損性をより一層向上させるとの観点から、WC粒子の平均粒径は、0.4μm以上3.0μm以下であることが好ましいといえる。
<実施例3>
以下のようにして、超硬合金から構成される基材と該基材上に被膜とを有する表面被覆切削工具(刃先交換型切削チップ)No.22〜30を作製した。
まず表7に示すように、製造条件を変更する以外は、実施例1と同様にして、原料3−Aを得た。
Figure 2015101746
次に表8に示す製法3−1に従って混合/造粒/焼結の各操作を行なって焼結体を得た。
Figure 2015101746
続いて焼結体の刃先稜線にSiCブラシホーニング処理を行ない、さらに刃先交換型チップの底面に対して平坦研磨処理を行なって、刃先交換型切削チップ形状(「CNMG120408N−GU」、住友電工ハードメタル株式会社製)を有する表面被覆切削工具の基材を得た。
この基材の表面に、CVD法を用いてTiN層(0.2μm)とMT−TiCN層(6.0μm)とTiBN層(0.8μm)とα−Al23層(5.0μm)とTiN層(0.2μm)とをこの順で積層した被膜を形成した(括弧内の数値は厚さを示す)。なおここでMT−TiCN層とは、MT−CVD法によって形成されたTiCN層であることを示している。以上のようにして表面被覆切削工具No.22を得た。
(WC粒子の評価)
この表面被覆切削工具No.22の基材において、結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合、および平均粒径(EBSD法によるもの)を前述の方法に従って測定した。結果を表9に示す。
Figure 2015101746
表7および表8に示すように原料および焼結体の製法を変更し、それらを表9に示すように組み合わせる以外は上記と同様にして、表面被覆切削工具No.23〜30を得た。そして上記と同様にして結晶粒内方位差および平均粒径を評価した。結果を表9に示す。なお表9中、工具No.に「*」が付されたものが実施例に係る表面被覆切削工具に相当し、それ以外が比較例に相当する。
<評価>
表面被覆切削工具No.22〜30の切削性能を以下のようにして評価した。
(鋼の断続切削加工による耐欠損性の評価)
刃先交換型切削チップをホルダー(型番「DCLNR2525」、住友電工ハードメタル株式会社製)にセットし、次の切削条件で鋼の断続切削加工を行なった。そしてN=3として、欠損に至るまでの被削材のスリット部による平均衝撃回数を計測した。結果を表9に示す。
(切削条件)
被削材:SCr420H丸棒 丸棒に4本のスリットあり
切削速度(Vc):270m/min
送り(f):0.21mm/rev
切り込み(ap):1.5mm
クーラント:あり(湿式切削)。
(結果と考察)
(i)実施例:工具No.23および27〜29
これらの工具は、欠損までの衝撃回数が多く耐欠損性に優れていた。この理由は、合金組織において結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合が6%以下であることにより、切削時の衝撃で欠損の起点となり得る部分が少なく、かつCo配合量が7質量%以上13質量%以下であることにより靭性と硬度の両立を図ることができたものと考えることができる。
(ii)比較例:工具No.22
工具No.22は、合金組織において結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合が6%以下であるにも関わらず、欠損までの衝撃回数が少なかった。この理由は、Co配合量が6質量%(7質量%未満)と少ないため焼結性が悪く、靭性が低下して欠損が発生しやすくなったものと考えることができる。
(iii)比較例:工具No.24〜26
工具No.24〜26は、いずれも欠損までの衝撃回数が少なかった。この理由は、合金組織において結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合が多い(6%を超過)ため、切削時の衝撃によりこれらのWC粒子が起点となって欠損が発生したものと考えることができる。
(iv)比較例:工具No.30
工具No.30は、ほぼ同条件で製造された工具No.29(実施例)と比較して衝撃回数が顕著に少なかった。この理由は、Co配合量が多い(13質量%を超過)ため、基材硬度が低く摩耗が進行しやすいとともに、衝撃時に基材が変形を来し欠損に至ったものと推定される。
<実施例4>
以下のようにして、超硬合金から構成される基材と該基材上に被膜とを有する表面被覆切削工具(刃先交換型切削チップ)No.31〜36を作製した。
まず表10に示すように、製造条件を変更する以外は、実施例1と同様にして、原料4−Aを得た。
Figure 2015101746
次に表11に示す製法4−1に従って混合/造粒/焼結の各操作を行なって焼結体を得た。
Figure 2015101746
続いて焼結体の刃先稜線にSiCブラシホーニング処理を行ない、さらに刃先交換型チップの底面に対して平坦研磨処理を行なって、刃先交換型切削チップ形状(「CNMG120408N−GU」、住友電工ハードメタル株式会社製)を有する表面被覆切削工具の基材を得た。
この基材の表面に、CVD法を用いてTiN層(0.2μm)とMT−TiCN層(5.0μm)とTiBN層(0.4μm)とα−Al23層(5.2μm)とTiN層(0.2μm)とをこの順で積層した被膜を形成した。以上のようにして表面被覆切削工具No.31を得た。
(WC粒子の評価)
この表面被覆切削工具No.31の基材において、結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合、および平均粒径(EBSD法によるもの)を前述の方法に従って測定した。結果を表12に示す。
Figure 2015101746
表10および表11に示すように原料および焼結体の製法を変更し、それらを表12に示すように組み合わせる以外は上記と同様にして、表面被覆切削工具No.32〜36を得た。そして上記と同様にして結晶粒内方位差および平均粒径を評価した。結果を表12に示す。なお工具No.31〜36はいずれも実施例に相当する(表12中、工具No.に「*」を付している。)。
<評価>
表面被覆切削工具No.31〜36の切削性能を以下のようにして評価した。
(SUS材の旋削加工による境界欠損の評価)
刃先交換型切削チップをホルダー(型番「DCLNR2525」、住友電工ハードメタル株式会社製)にセットし、次の切削条件でSUS材の旋削加工を行なうことにより境界欠損を評価した。すなわちコンパレータを用いて逃げ面側から見た摩耗量および欠損量を計測し、摩耗量または欠損量が0.3mm以上となった時点で寿命と判定した。結果を表12に示す。
(切削条件)
被削材:SUS316丸棒
切削速度(Vc):150m/min
送り(f):0.29mm/rev
切り込み(ap):1.6mm
クーラント:あり(湿式切削)。
(結果と考察)
(i)実施例:工具No.31
工具No.31は、工具No.32〜35に比して欠損までの寿命が短かった。この理由は、WC粒子の平均粒径が0.3μm(0.4μm未満)と小さく切削時に発生した亀裂が伝搬しやすかったものと推定される。
(ii)実施例:工具No.36
工具No.36も、工具No.32〜35に比して欠損までの寿命が短かった。この理由は、WC粒子の平均粒径が3.4μm(3.0μmを超過)と大きく、硬度が低くなり摩耗が生じやすい状態となっていたと推定される。
これらの結果から、WC粒子の平均粒径は0.4μm以上3.0μm以下であることにより、更に耐欠損性を高めることができると考えられる。
以上より、WC粒子と、Co、NiおよびFeからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を有する結合相と、を含み、結合相を7質量%以上13質量%以下の範囲で含有し、WC粒子のうち、結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子の割合は、WC粒子の全粒子数に対して6%以下である、実施例に係る超硬合金は、かかる条件を満たさない比較例の超硬合金に比して優れた耐欠損性を有するものであることが確認できた。
以上のように本実施形態および実施例の説明を行ったが、上述した実施形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 結晶粒内方位差が0.75°以下であるWC粒子
2 結晶粒内方位差が0.75°〜1.5°であるWC粒子
3 結晶粒内方位差が1.5°以上であるWC粒子
4 結合相

Claims (6)

  1. 炭化タングステン粒子と、
    コバルト、ニッケルおよび鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を有する結合相と、を含み、
    前記結合相を7質量%以上13質量%以下の範囲で含有し、
    前記炭化タングステン粒子のうち、結晶粒内方位差が1.5°以上である炭化タングステン粒子の割合は、前記炭化タングステン粒子の全粒子数に対して6%以下である、超硬合金。
  2. 前記炭化タングステン粒子の平均粒径は、0.4μm以上3.0μm以下である、請求項1に記載の超硬合金。
  3. 前記超硬合金は、周期表の第4族元素、第5族元素および第6族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とから構成される化合物の1種以上を含む化合物相または固溶体相をさらに含み、
    前記化合物相または前記固溶体相を、0.1質量%以上50質量%以下の範囲で含有する、請求項1または請求項2に記載の超硬合金。
  4. 前記超硬合金は、切削工具に用いられる、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の超硬合金。
  5. 基材と、前記基材上に形成された被膜とを備え、
    前記基材は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の超硬合金により構成される、表面被覆切削工具。
  6. 前記被膜は、物理蒸着法および化学蒸着法の少なくともいずれかにより形成される、請求項5に記載の表面被覆切削工具。
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