JP2015191163A - 画像表示装置用前面保護パネル - Google Patents
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Abstract
Description
前面保護パネルは、長時間表示光に曝されたり発熱する画像表示パネルからの伝熱を受けたりするが、これらの環境下でも経時劣化が少ないガラス板は好適な材料として用いられてきた。
こうした要求に対し、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明樹脂材料が、ガラス代替透明材料として検討されるようになってきた。
しかし、アクリル樹脂や環状オレフィン樹脂は、シートを薄肉化すると脆さが際立ってしまい、ラミネートや組込工程等での破損ロスが増加しやすく、これら樹脂からシート化することも、そのシートを前面保護パネルとして表示装置へ組み込むことも、安定して歩留まり良く量産することが困難であるばかりでなく、組み込まれた製品における耐衝撃性も従来材料に比べて低下してしまう場合が多い。さらに、これら樹脂は、一般に溶融製膜法によってシート化することができるが、熱成形加工時にゲル化反応が起こりやすく、それがシート内に異物として視認される事が多いため、非常に欠陥管理の厳しい当該用途に用いることは著しく困難である。
しかし、芳香族化合物をモノマー構成単位に含むがゆえに光吸収が起こり、全光線透過率がガラスや上記透明樹脂と較べて著しく低下する。そのため、画像表示装置の前面保護パネルとしては不適である。また、素材の固有複屈折が大きいため、通常の押出成形シートでも残留応力による光学歪に起因にして屈折率異方性が大きくなる傾向がある。例えば、これを実装した画像表示装置の画像を、偏光サングラスを通して視認した場合に、虹彩模様が全面に現れて画像認識が著しく困難になることがある。そのため、成形シートの光学歪を除去する特段の工程が必要となることがあり、こうした工程を加えても要求される低光学歪の水準にまで低減させられない場合が多い。
い耐熱性と透明性を維持しながら、屈折率の小さい高透明性のISBから得られるポリカーボネート樹脂が得られることが記載され、上記分野への適用に好適であることが記載されている。
従って、本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、シート成形性、面内位相差、耐衝撃性、光線透過率、鉛筆硬度、耐湿熱性に優れ、薄肉化、軽量化、高意匠化等の要求に資する画像表示装置の前面保護パネルを提供することにある。
すなわち、本発明は以下の発明により構成される。
[1]下記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)とを有し、
ポリカーボネート樹脂を構成するジヒドロキシ化合物の全構造単位のうち前記構造単位(a)が占める割合が、40モル%以上であるポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物からなる画像表示装置用前面保護パネル。
HO−R1−OH (2)
(式(2)中、R1は炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
HO−CH2−R2−CH2−OH (3)
(式(3)中、R2は炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
H−(O−R3)p−OH (4)
(式(4)中、R3は炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基を表し、pは2〜100の整数である。)
HO−R4−OH (5)
(式(5)中、R4は炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基、又は置換若しくは無置換のアセタール環を有する基を表す。)[3]前記ポリカーボネート樹脂を構成するジヒドロキシ化合物の全構造単位のうち前記構造単位(a)が占める割合が、90モル%以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記ポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.45dl/g以上であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[5]前記樹脂組成物を溶融製膜法により50μm以上300μm以下の厚さに押出成形して得られた、[1]乃至[4]のいずれか1項に記載の画像表示装置用前面保護パネル。
本発明は、下記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)とを有し、
ポリカーボネート樹脂を構成するジヒドロキシ化合物の全構造単位のうち前記構造単位(a)が占める割合が、40モル%以上であるポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物からなる画像表示装置用前面保護パネル。
(1)ポリカーボネート樹脂及びそれに基づく樹脂組成物
本発明を構成するポリカーボネート樹脂及びそれに基づく樹脂組成物について詳述する。
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物(以下、「ジヒドロキシ化合物(1)」と称す場合がある。)に由来する構造単位(a)と、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)とを有するポリカーボネート樹脂(以下、「本発明のポリカーボネート樹脂(A)」又は「ポリカーボネート樹脂(A)」と称す場合がある。)を含有することを特徴とする。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上記一般式(1)で表される構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)(以下「構造単位(1)」と称す場合がある。)を含むものである。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)に含まれるジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位のうち、構造単位(1)(即ち構造単位(a))が占める割合は、特に限定されないが、下限値としては通常40モル%以上、好ましくは45モル%以上、より好ましくは50モル%以上、特に好ましは55モル%以上である。上限値としては通常90モル%以下、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、特に好ましは75モル%以下である。この割合より多い場合、樹脂の脆さがとりわけ際立ち、溶融製膜法によるシート化や、そのシートを用いた組立工程において、工程内破損が頻発することが多くなる。
ジヒドロキシ化合物(1)としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。
尚、イソソルビド等の環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物(1)は、酸素によって徐々に酸化されやすい。このため、保管や、製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱ったりすることが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生し、例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いて本発明のポリカーボネート樹脂(A)を製造すると、得られるポリカーボネート樹脂(A)に着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりする原因となる。また、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないこともあり、好ましくない。
ール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等のアミン系化合物が挙げられる。その中でも、その効果と後述する蒸留除去のしやすさから、ナトリウム又はカリウムのリン酸塩、亜リン酸塩が好ましく、中でもリン酸水素2ナトリウム、亜リン酸水素2ナトリウムが好ましい。
また、前述の如く、ジヒドロキシ化合物(1)の酸化分解生成物を含むジヒドロキシ化合物(1)をポリカーボネート樹脂(A)の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂(A)の着色を招く可能性があり、また、物性を著しく劣化させる可能性があるだけではなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないことがある。
なお、ジヒドロキシ化合物(1)の蟻酸含有量の測定はイオンクロマトグラフィーを使用し、以下の手順に従い行われる。以下の手順では、代表的なジヒドロキシ化合物(1)として、イソソルビドを例とする。
イオンクロマトグラフは、Dionex社製のDX−500型を用い、検出器には電気伝導度検出器を用いる。測定カラムとして、Dionex社製ガードカラムにAG−15、分離カラムにAS−15を用いる。測定試料を100μlのサンプルループに注入し、溶離液に10mM−NaOHを用い、流速1.2ml/分、恒温槽温度35℃で測定する
。サプレッサーには、メンブランサプレッサーを用い、再生液には12.5mM−H2SO4水溶液を用いる。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は構造の一部に前記構造単位(1)以外に、ジヒドロキシ化合物(1)以外のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)を含有する。
ジヒドロキシ化合物(1)以外のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(b)を含有する本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、例えば、後述の本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造方法に従って、ジヒドロキシ化合物(1)以外のジヒドロキシ化合物の1種又は2種以上を用いて製造される。
以下において、式(2)、(3)、(4)、(5)で表されるジヒドロキシ化合物をそれぞれ、「ジヒドロキシ化合物(2)」、「ジヒドロキシ化合物(3)」、「ジヒドロキシ化合物(4)」、「ジヒドロキシ化合物(5)」と称し、ジヒドロキシ化合物(2)、(3)、(4)、(5)に由来する構造単位をそれぞれ「構造単位(2)」、「構造単位(3)」、「構造単位(4)」、「構造単位(5)」と称す場合がある。
(式(2)中、R1は炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
HO−CH2−R2−CH2−OH (3)
(式(3)中、R2は炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
H−(O−R3)p−OH (4)
(式(4)中、R3は炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基を表し、pは2〜100の整数である。)
HO−R4−OH (5)
(式(5)中、R4は炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基、又は置換若しくは無置換のアセタール環を有する基を表す。)
上記ジヒドロキシ化合物(2)〜(5)のうち、本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、特に、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことが好ましく、なかでも、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことが好ましく、この場合には、得られるポリカーボネート樹脂(A)に柔軟性を付与することができる。
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物のうち、R4が炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基である脂肪族ジヒドロキシ化合物が挙げられ、このような脂肪族ジヒドロキシ化合物として、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール等が挙げられる。
尚、前記例示化合物は、本発明に使用し得る脂肪族ジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、通常、5員環構造又は6員環構造を含む化合物が挙げられる。脂環式ジヒドロキシ化合物が5員環構造又は6員環構造であることにより、得られるポリカーボネート樹脂(A)の耐熱性が高くなる可能性がある。6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素数は通常70以下であり、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。炭素数が過度に大きいと、耐熱性が高くなるが、合成が困難になったり、精製が困難になったり、コストが高価になる傾向がある。炭素数が小さいほど、精製しやすく、入手しやすい傾向がある。
前記式(3)で表される脂環式ジヒドロキシ化合物であるシクロヘキサンジメタノールとしては、前記式(3)において、R2が下記式(3a)(式中、R5は水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数12のアルキル基を表す。)で示される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
)(式中、mは0、又は1を表す。)で表される種々の異性体を包含する。このようなものとしては、具体的には、2,6−デカリンジオール、1,5−デカリンジオール、2,3−デカリンジオール等が用いられる。
尚、前記例示化合物は、本発明に使用し得る脂環式ジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらの脂環式ジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物であるポリオキシアルキレンジヒドロキシ化合物は、可撓性や柔軟性、重合反応性、得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から好ましい。また、前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物であるポリオキシアルキレンジヒドロキシ化合物は、R3に炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5の置換若しくは無置換のアルキレン基を有する化合物である。pは2〜100、好ましくは2〜50、より好ましくは6〜30、更に好ましくは12〜15の整数である。
尚、前記例示化合物は、本発明に使用し得るポリオキシアルキレンジヒドロキシ化合物の一例であって、何らこれらに限定されるものではない。これらのポリオキシアルキレンジヒドロキシ化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物は、R4に炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基、又は置換若しくは無置換のアセタール環を有する基を有するジヒドロキシ化合物である。R4のアルキレン基が置換基を有する場合、当該置換基としては炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。また、R4のアセタール環を有する基が置換基を有する場合、当該置換基としては炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
耐熱性の観点からは、アセタール環を有する基を有するジヒドロキシ化合物類が好ましく、特には上記式(8)に代表されるような複数の環構造を有するものが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)が脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有する場合、本発明のポリカーボネート樹脂(A)中の構造単位(1)と、構造単位(b)である前述のジヒドロキシ化合物(2)〜(5)に由来する構造単位とのモル比率は、任意の割合で選択できるが、前記モル比率を調整することで、衝撃強度(例えば、ノッチ付きシャルピー衝撃強度)が向上する可能性があり、更にポリカーボネート樹脂(A)に所望のガラス転移温度を得ることが可能である。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)においては、上記構造単位(1)及び構造単位(2)〜(5)に加えて、更にその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいても良い。その他のジヒドロキシ化合物としては、芳香族系ジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基としてアルキル基を有するビスフェノール化合物;ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン等の芳香族環を連結する2価基が置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等の芳香族環をエーテル結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン等の芳香族環をスルホン結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等の芳香族環をスルフィド結合で連結したビスフェノール化合物等が挙げられるが、好ましくは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」と略記することがある。)が挙げられる。
上述のその他のヒドロキシ化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、一般に用いられる重合方法で製造することができ、その重合方法は、ホスゲンを用いた界面重合法、炭酸ジエステルとエステル交換反応させる溶融重合法のいずれの方法でもよいが、重合触媒の存在下に、ジヒドロキシ化合物を、より環境への毒性の低い炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が好ましい。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(6)で表されるものが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
数1〜18の脂肪族基、又は、置換若しくは無置換の芳香族基である。
上記式(6)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、これらの不純物は重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
このモル比率が0.90より小さくなると、製造されたポリカーボネート樹脂(A)の末端ヒドロキシル基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、本発明の樹脂組成物を成形する際に着色を招いたり、エステル交換反応の速度が低下したり、所望の高分子量体が得られない可能性がある。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述のようにジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と前記式(6)で表される炭酸ジエステルをエステル交換反応させて製造することができる。より詳細には、エステル交換反応させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常、エステル交換反応触媒の存在下でエステル交換反応により溶融重合を行う。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、又は炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩といった塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩が好ましい。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアン
モニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
また、上記ポリカーボネート樹脂(A)の透明性、色相、耐光性を特に優れたものとするために、触媒が、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物であるのが好ましい。
上記の中でもリチウム及び2族金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物を用いる場合は、金属換算量として、反応に供する全ジヒドロキシ化合物1モル当たり、好ましくは0.1μモル以上、更に好ましくは0.5μモル以上、特に好ましくは0.7μモル以上とする。また上限としては、好ましくは20μモル、更に好ましくは10μモル、特に好ましくは3μモル、最も好ましくは2.0μモルである。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、ジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとをエステル交換反応により溶融重合させることによって得られるが、原料であるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルは、エステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。
以下、更には0.0001体積%〜10体積%、中でも0.0001体積%〜5体積%、特には0.0001体積%〜1体積%の雰囲気下で行うことが、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相悪化防止の観点から好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階で溶融重合させて製造することが好ましい。溶融重合を複数の反応器で実施する理由は、溶融重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、溶融重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。前記反応器は、上述の通り、少なくとも2つ以上であればよいが、生産効率などの観点からは、3つ以上、好ましくは3〜5つ、特に好ましくは、4つである。
更には、留出するモノマーの量を抑制するために、重合反応器に還流冷却器を用いることは有効であり、特に未反応モノマー成分が多い重合初期の反応器でその効果は大きい。還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択することができるが、通常、還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において45〜180℃であり、好ましくは80〜150℃、特に好ましくは100〜130℃である。還流冷却器に導入される冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下し、低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造にあたっては、前記反応器が2つ以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力を変えていく、などしてもよい。
重合条件としては、重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相や耐光性の観点から重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本発明の目的を達成することができない可能性がある。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の製造において、ジヒドロキシ化合物(1)を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを触媒の存在下、エステル交換反応させる方法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第1段目のエステル交換反
応温度(以下、「内温」と称する場合がある)は好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上、さらにより好ましくは200℃以上であることがよい。また、第1段目のエステル交換反応温度は、好ましくは270℃以下、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下、さらにより好ましくは220℃以下であることがよい。第1段目のエステル交換反応における滞留時間は通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間であり、第1段目のエステル交換反応は、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。第2段目以降はエステル交換反応温度を上げていき、通常、210〜270℃、好ましくは220〜250℃の温度でエステル交換反応を行い、同時に発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら最終的には反応系の圧力が200Pa以下となるように、通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜6時間、特に好ましくは1〜3時間重縮合反応が行われる。
特にポリカーボネート樹脂(A)の着色や熱劣化あるいはヤケを抑制し、衝撃強度が高い良好なポリカーボネート樹脂(A)を得るには、全反応段階における反応器内温の最高温度が255℃未満、より好ましくは250℃以下、特に225〜245℃であることが好ましい。また、重合反応後半の重合速度の低下を抑止し、熱履歴によるポリカーボネート樹脂(A)の熱劣化を最小限に抑えるために、反応の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
ヒドロキシ化合物の含有量の下限は通常1重量ppmである。尚、これら芳香族モノヒドロキシ化合物は、用いる原料により、当然置換基を有していてもよく、例えば、炭素数が5以下であるアルキル基等を有していてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、上述の通り溶融重合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
押出機中の、溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常150〜300℃、好ましくは200〜270℃、更に好ましくは230〜260℃である。溶融混練温度が150℃より低いと、ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する。300℃より高いと、ポリカーボネートの熱劣化が激しくなり、分子量の低下による機械的強度の低下や、着色、ガスの発生、異物の発生、更にはヤケの発生を招く。前記異物やヤケの除去のためのフィルターは該押出機中あるいは押出機出口に設置することが好ましい。
また、溶融押出されたポリカーボネート樹脂(A)を冷却してペレット化する際は、空
冷、水冷等の冷却方法を使用することが好ましい。空冷の際に使用する空気は、HEPAフィルター(JIS Z8112で規定されるフィルターが好ましい。)等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐことが望ましい。より好ましくはJIS B 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルームのなかで実施することが好ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、更にフィルターにて水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは種々あるが、10〜0.45μmのフィルターが好ましい。
リン酸化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸トリアルキルの1種又は2種以上が好適に用いられる。これらは、反応に供する全ヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、更に好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。リン化合物の添加量が前記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、前記上限より多いと、透明性が低下する原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりする。
かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸、及びこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル
ェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。
これらの熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.2重量部が更に好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の好ましい物性について、以下に示す。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、145℃未満である。この範囲を超えてポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度が高すぎる場合には、着色し易くなり、衝撃強度を向上させることが困難になるおそれがある。また、この場合には、成形時において金型表面の形状を成形品に転写させる際に、金型温度を高く設定する必要がある。そのため、選択できる温度調節機が制限されてしまったり、金型表面の転写性が悪化したりするおそれがある。
また、本発明のポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は通常90℃以上であり、好ましくは95℃以上である。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度を145℃未満とする方法としては、ポリカーボネート樹脂(A)中の構造単位(a)の割合を少なくしたり、ポリカーボネート樹脂(A)の製造に用いるジヒドロキシ化合物として、耐熱性の低い脂環式ジヒドロキシ化合物を選定したり、ポリカーボネート樹脂(A)中のビスフェノール化合物等の芳香族系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合を少なくしたりする方法等が挙げられる。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は、後述の実施例に記載の方法で測定されたものである。
本発明のポリカーボネート樹脂(A)の重合度は、溶媒としてフェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンの重量比1:1の混合溶媒を用い、ポリカーボネート樹脂(A)濃度を1.00g/dlに精密に調整し、温度30.0℃±0.1℃で測定した還元粘度(以下、単に「還元粘度」と記す場合がある。)として、好ましくは0.45dl/
g以上、更に好ましくは0.50dl/g以上、特に好ましくは0.52dl/g以上であるが、0.70dl/g以下、更には0.65dl/g以下のものが好適に用いられる場合がある。ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度が過度に低いと、機械的強度が弱くなる場合があり、ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度が過度に高いと、成形時の押出負荷が高まり、過剰に剪断発熱して熱分解を引き起こしたり、押出機やギアポンプ等の設備の耐久負荷の上限を上回ったり、得られるシート状成形体の厚み精度が不十分になったり等の不具合を生じる場合がある。
前述の通り、本発明のポリカーボネート樹脂(A)には、本発明の趣旨を損なわない範囲でその他の添加剤を加えて、本発明の樹脂組成物とすることができる。
このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、酸性化合物又はその誘導体、紫外線吸収剤、光安定剤、無機充填材などが挙げられる。更に、本発明の趣旨を損なわない範囲で、樹脂組成物に通常用いられる核剤、難燃剤、衝撃改良剤、発泡剤、染顔料を配合してもよい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の化合物が挙げられる。
ァイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
これらの酸性化合物又はその誘導体は、本発明のポリカーボネート樹脂(A)の重縮合反応において使用される塩基性エステル交換触媒を中和する化合物として、樹脂組成物の製造工程において添加することができる。
無機充填材としては、例えば、ガラスカットファイバー、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、炭化ケイ素、窒化ケイ素、珪酸カルシウム類、石膏、石膏ウィスカ等の強化材、ガラス粉末、シリカ、架橋アクリル粉末、ゼオライト、焼成カオリン等のアンチブロッキング剤、アルミニウム、チタン、鉄、銅、黄銅などからなる金属粉や金属酸化物粉や金属被覆ガラス粉、炭素繊維、活性炭、カーボンブラック、黒鉛等の炭素質フィラー、顔料、染料等の着色剤が例示できる。従来公知のビスフェノールAを主モノマーとする芳香族ポリカーボネート樹脂は、金属充填材や塩基性充填材の一部を混合すると加熱溶融下で樹脂分解が促進されてしまう不具合が生じることが多いが、本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、こうした不具合が極めて生じにくく、より豊かな意匠を付与できる利点がある。
本発明の樹脂組成物は、本発明のポリカーボネート樹脂(A)と必要に応じて用いられるその他の添加剤等の配合成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。
本発明の樹脂組成物は、JIS K7191に準拠して測定した、曲げ応力1.80M
Paでの荷重たわみ温度が70℃以上であることが、本用途の耐熱要求の観点で好ましい。また、130℃以下であることが、成形加工の温度条件が過度に高くならずに済む点から好ましい。この荷重たわみ温度の下限としては、75℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。また、上限としては、125℃以下がより好ましい。
<物性・特性>
本発明の前面保護パネルは、例えば大型テレビジョン、コンピュータ端末のモニタ、車載用カーナビゲーションシステムのモニタ、車載用または弱電機器等のコントロールタッチパネル、タブレット型携帯ディスプレイ、携帯型スマートフォン等の各種画像表示装置の前面保護パネルとして好適に用いることができる。
本発明の樹脂組成物からなる前面保護パネルは、従来公知のガラス板製パネルと比べて、軽量化、薄肉化、高意匠性付与に資する。
本発明の前面保護パネルは、熱成形により形状付与することができ、例えば前面側に凸形状を有する画像表示装置の前面に配置したり、画像表示装置の端部に回り込むような形状の前面保護パネルを配置したりすることも可能である。
本発明の前面保護パネルは、本発明に用いる樹脂組成物を常法に従って成形して得られるシートを用いてなるが、該成形シートの製造法は、好ましくはTダイ成形法やインフレーション成形法等の溶融押出成形法であり、特に好ましくはTダイ成形法である。
本発明の前面保護パネルは、画像表示装置の前面にあって、表示される画像が欠陥や歪み等で損なわれて視認されてはいけない。このため溶融押出成形法によってシート化するにあたり、ゲル、気泡、焼け等の樹脂由来の異物欠点が極めて少なく、また流れ方向及び幅方向に均一な厚さであって局所的な位相差等の光学歪が無いことが求められる。
これを解消するためには、幅方向の厚み精度を高めるだけでなく、樹脂に掛かる応力が局所的に生じないように、全幅にわたって樹脂を整流させる必要がある。溶融樹脂の流路面に傷や付着物等の凹凸が無いように維持管理したり、Tダイのリップ面に離型剤等を付けたり、樹脂劣化しない範囲内でできるだけ樹脂温度を高めたり、過度に樹脂圧が高まらないように押出速度を制御したり、Tダイの前にスタティックミキサやサーモジナイザ等の撹拌構造を設けたりすることで、局所的な応力発生を抑制することができる。好ましい幅方向の光学歪精度は、面内位相差で通常±10%以内、好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。
冷却ロール温度は、通常20〜150℃、好ましくは40〜140℃、特に好ましくは60〜130℃である。冷却ロール温度が前記温度より低い場合、シート表面にギアマークが生じたり、局所的な光学歪ムラが著しくなったりする。一方前記温度より高い場合、押し出されたシートが冷却ロールから剥離しにくくなり、剥離マークが生じたり、ロールが汚染されたりする傾向がある。
基材となる樹脂シートとハードコート層との密着性を更に高めるために、必要に応じて樹脂シート表面にコロナ放電処理やプラズマ放電処理等を施すことができる。あるいは使用するコート剤に適したプライマーを下地処理として塗工してもよい。画像表示装置がタッチパネル等の手が触れる機会が多い用途の場合、ハードコート処理を行うことがとりわけ好ましい。
いられる。
本発明の前面保護パネルは、更に反射防止、指紋付着防止、曇り防止等の各種機能性コーティングがなされていることが好ましい。これらも従来公知の方法で付与すればよく、処理がなされた別途フィルムを本発明に用いるシートに貼合する方法でもよい。
(1)ポリカーボネート樹脂組成物中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比の測定
ポリカーボネート樹脂組成物中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比は、ポリカーボネート樹脂組成物30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、溶液とし、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温で1H NMRスペクトルを測定した。各ジヒド
ロキシ化合物に由来する構造単位に基づくシグナル強度比より各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比を求めた。
減圧吸引配管を具備した同方向二軸押出機、ギアポンプ、ポリマーフィルタ、Tダイを順次連結した溶融押出製膜機を用いて、約1400mm幅のシートを引き取り、両端のネックイン部をスリットして1000〜1200mm幅のシートを採取した。ポリマーフィルタとTダイとの間の流路には、サーモジナイザを設けた。
押出温度は、220〜255℃の中で調整した。但し、導管内壁に設置した温度計の測定温度が265℃を超えないようにした。
冷却ロール温度は、70〜130℃の中で調整し、ギアマーク発生条件と剥離マーク発生条件との間でシート採取した。
シートを連続採取してロール状に巻き取る場合は、オレフィン系共押出フィルムからなるマスキングフィルムを片面にニップ貼合させてから巻き取った。このようにして厚さ50〜500μmのシートを得た。
なお、表1に記載のシート成形性については、成形できたものを○、できなかったものを×とした。
押し出された後、ネックイン部をスリットしたシートの幅方向に50mm間隔で測定点をマークし、その近傍をデジタルゲージで厚さを測定し、王子計測機器社製位相差測定機『KOBRA−WR』で面内位相差を測定した。また、面内位相差測定点のムラとして最大値と最小値の差が、10%未満のとき○、10%以上30%未満のとき△、30%以上のとき×とした。
上記(2)シート化工程で得たシートを、中心部に60mmΦの貫通孔を備えた縦幅200mm、横幅200mm、厚み10mmの金属プレート上に設置した。この時、プレー
トの中心が貫通孔の中心上に設置されるようにした。次いでこの上に、同じく中心部に60mmΦの貫通孔を備えた縦幅200mm、横幅200mm、厚み10mmの金属プレートを重ねあわせた。2枚の金属板には各々、4隅に位置合わせ兼固定用のボルト穴が設けられている。このボルト穴にボルトを通し、反対側のナットと締め付ける事により樹脂プレートを固定した。次いでこの樹脂プレートの中心に重さ150gの鉄球を所定の高さから落とし耐衝撃性を評価した。所定の高さからの落球試験を一つの樹脂に関して、都度樹脂プレートを未使用のものに交換しながら5回実施した。尚、樹脂プレートに当たった後に跳ね返った鉄球が再度当たらないように試験を行った。
一方、上記(3)成形性の評価(厚み0.7mm)においてショートショットとなり樹脂プレートを得られなかった樹脂に関しては耐衝撃性を評価しなかった。
上記(2)シート化工程で得たシートを、JIS K 7105に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業(株)製:NDH2000)により、D65光源にて光線透過率を測定した。光線透過率は、90%以上が合格である。
鉛筆硬度は、厚さ3mmの試験片を用い、JIS−K5600に準拠して、荷重750g、測定スピード30mm/min、測定距離7mmで測定した。鉛筆硬度は、F以上の硬さがよく、H以上の硬さがより好ましい。鉛筆硬度がHB以下の場合、得られる成形品が傷つきやすく、外観が損なわれやすいという問題点を生じるおそれがある。なお、鉛筆硬度は、硬い方から順番に4H,3H,2H,H,F,HB,B,2B,3B,4Bの順番で表される。実施例および比較例にかかる成型品の鉛筆硬度を測定することで、表面硬度を評価した。表面硬度はHB以上が合格である。
得られたシートを、温度60℃、相対湿度75%に調整された恒温恒湿装置中に96時間放置した後に取出し、形状変化の有無を確認した。尚、樹脂シートは恒温恒湿装置中の網目状の金属からなるサンプル棚に設置された。
形状変化が見られない樹脂の耐湿熱性を○、湿熱試験後の樹脂シートを平面上に水平に設置した際に樹脂シートの端部が1mm以上5mm未満浮き上がる変形が見られた樹脂の耐湿熱性を△、湿熱試験後の樹脂シートを平面上に水平に設置した際に樹脂シートの端部が5mm以上浮き上がった、若しくは樹脂シート全体が変形し原型を留めていなかった樹脂の耐湿熱性を×とした。
(ジヒドロキシ化合物)
・ISB:イソソルビド (ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB)
・CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール(新日本理化社製、商品名:SKY CHDM)
・TCDDM:TCDDM:トリシクロデカンジメタノール(OXEA社製)
(炭酸ジエステル)
・DPC:ジフェニルカーボネート(三菱化学社製)
(熱安定剤)
・AS2112:化合物名、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(
ADEKA社製)
(酸化防止剤)
・IRGANOX1010:化合物名、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン社製
)
(芳香族ポリカーボネート樹脂)
・NOVAREX 7022R:ビスフェノール−Aに由来する構造のみを有する芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
(アクリル樹脂)
・ACRYPET VH(三菱レイヨン社製)
(環状オレフィン樹脂)
・TOPAS 5013L−10(ポリプラスチックス社製)
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、ISBとCHDM、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.50/0.50/1.00/1.3×10-6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005vol%〜0.001vol%)。続いて熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始し、40分で内温を210℃にし、内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに60分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気は、還流冷却器への入口温度として100℃に制御された蒸気を冷媒として用いた還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
得られた樹脂組成物の画像表示装置用前面保護パネルとしての各種評価結果を表1に示す。
実施例1において、仕込み組成をISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.70/0.30/1.00/1.3×10-6になるように変更した以外は、実施例1と同様にカーボネート共重合体樹脂組成物のシート成形体を得た。
[実施例3]
実施例1において、仕込み組成をISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.85/0.15/1.00/1.3×10-6になるように変更した以外は、実施例1と同様にカーボネート共重合体樹脂組成物のシート成形体を得た。
実施例1において、仕込み組成をISB/TCDDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.70/0.30/1.00/1.3×10-6になるように変更した以外は、実施例1と同様にカーボネート共重合体樹脂組成物のシート成形体を得た。
実施例1において、仕込み組成をISB/TCDDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.80/0.20/1.00/1.3×10-6になるように変更した以外は、実施例1と同様にカーボネート共重合体樹脂組成物のシート成形体を得た。
[実施例6]
実施例1において、復圧する際の撹拌動力を変更した以外は、実施例1と同様にカーボネート共重合体樹脂組成物のシート成形体を得た。このポリカーボネート樹脂の還元粘度は、0.567dL/gであった。
実施例1において、復圧する際の撹拌動力を変更した以外は、実施例1と同様にカーボネート共重合体樹脂組成物のシート成形体を得た。このポリカーボネート樹脂の還元粘度は、0.515dL/gであった。
実施例1において、仕込み組成をISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.30/0.70/1.00/1.3×10-6になるように変更した以外は、実施例1と同様にカーボネート共重合体樹脂組成物のシート成形体を得た。
実施例1において、シート成形用材料を市販の芳香族ポリカーボネート樹脂、NOVAREX 7022Rに変更した以外は、実施例1と同様にシート成形体を得た。
実施例1において、シート成形用材料を市販のアクリル樹脂、ACRYPET VHに変更した以外は、実施例1と同様にシート成形体を得た。
実施例1において、シート成形用材料を市販の環状オレフィン樹脂、TOPAS 5013L−10に変更した以外は、実施例1と同様にシート成形体を得た。
実施例1〜7に示す発明例は、シート成形性のみならず、画像表示装置用前面保護パネルに必要な、面内位相差、耐衝撃性、光線透過率、鉛筆硬度、体質熱性等の観点で何れも優れた性能を有している。
一方、比較例1は構造単位(a)に由来する構造の組成比率が低すぎ、鉛筆硬度と耐湿熱性が不十分だった。
比較例2は市販の芳香族ポリカーボネート樹脂を用いたシートであるが、面内位相差の値とそのムラが大きく、また鉛筆硬度が低かった。比較例3は市販のアクリル樹脂を用いたシートであるが、耐衝撃性と耐湿熱性とが不十分であった。比較例4は市販の環状オレフィン樹脂を用いたシートであるが、シート前面にゲル状の透明異物が多数視認され、満足なシート成形体を得られなかった。
Claims (5)
-
前記ポリカーボネート樹脂中の構造単位(b)が、下記式(2)〜(5)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位よりなる群から選ばれる何れかの構造単位であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置用前面保護パネル。
HO−R1−OH (2)
(式(2)中、R1は炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
HO−CH2−R2−CH2−OH (3)
(式(3)中、R2は炭素数4〜20の置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を表す。)
H−(O−R3)p−OH (4)
(式(4)中、R3は炭素数2〜10の置換若しくは無置換のアルキレン基を表し、pは2〜100の整数である。)
HO−R4−OH (5)
(式(5)中、R4は炭素数2〜20の置換若しくは無置換のアルキレン基、又は置換若しくは無置換のアセタール環を有する基を表す。) - 前記ポリカーボネート樹脂を構成するジヒドロキシ化合物の全構造単位のうち前記構造単位(a)が占める割合が、90モル%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- 前記ポリカーボネート樹脂の還元粘度が0.45dl/g以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記樹脂組成物を溶融製膜法により50μm以上300μm以下の厚さに押出成形して得られた、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像表示装置用前面保護パネル。
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