JP2015161374A - 軸シール装置、水中構造体および軸シール装置の制御方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1には、海流などの力を利用する水中発電機において、軸に設置された回転ユニット内部への水の浸入を阻止する封止機構が開示されている。
また、特許文献2には、シール部の中間にシール室が備えられ、シール室に注入液が装てんされた軸シール装置が開示されている。ここで、シール部のシール能力が低下するとシール室に装てんされていた注入液が漏れ、この場合注入液送給手段から注入液が自動的に送給される。そして、送給された注入液の流量を検出し、シール異常を作業者に報知することが開示されている。
また、上記特許文献2に開示された発明では、注入液が漏れたと検知することでシール機能喪失の検知および報知を行うため、例えば舶用シールなどの水中に用いられるシール(注入液が油であり、シール面の摩耗を抑えかつ摩擦損失を低減するために注入液の微少リークを許容するシール)には適用できないという問題があった。
また、例えば水中などその設置場所により構造体が揺動する場合は、シール用の注入液を貯蔵するタンクも揺動する。このようにタンクが揺動すると、タンク内の注入液の液面が不安定となり、注入液の圧力や液量などの計測を正確に行うことができないという問題があった。
また、本発明は、揺動によってオイル液面が不安定となることを抑止することができる軸シール装置、水中構造体および軸シール装置の制御方法を提供することを目的とする。
水中に設置された水中構造体に設けられ、該水中構造体の本体内部から水中へと突出する回転軸をシールする軸シール構造を備えた軸シール装置において、前記軸シール構造は、第1シール部と、該第1シール部との間に給油空間を有して前記本体内部側に設けられた第2シール部と、前記第1シール部から水中側にオイルが漏出するとともに前記第2シール部から前記本体内部側に漏出する所定の給油圧にて前記給油空間に対してオイルを供給する給油ポンプと、を備え、前記給油ポンプから供給される前記オイルの前記給油圧および前記第1シール部または前記第2シール部から漏出する前記オイルのリーク流量をもとに前記軸シール装置の異常を検知する制御部を備えていることを特徴とする軸シール装置を採用する。
また、第1シール部または第2シール部が摩耗などによって劣化すると、軸シール構造の使用時間の経過とともに水中および水中構造体の本体内部へのオイルのリーク流量が増える。そこで、第1シール部または第2シール部から漏出する前記オイルのリーク流量に基づいて軸シール構造の異常を検知することとしたため、水中もしくは水中構造体内部へのオイルのリーク流量が一定の値を上回ると異常を検知することで、軸シール機能が喪失する異常状態を事前に検知し対策を講じることができる。
また、水中構造体内部への浸水を防ぐことで、発電機などの機器が海水などに浸からないため、機器の取り換えに伴うコストや、またシール機能回復後の復帰までに要するコストを抑えることができ、また復帰までの期間の長期化を避けることができる。また、水中構造体内部に浸水しないため、水中構造体のバランスが崩れずまた浮上機能も失われないことから、水上まで水中構造体を確実に浮上させることができる。
また、第1シール部または第2シール部が摩耗などによって劣化すると、軸シール構造の使用時間の経過とともに水中および水中構造体の本体内部へのオイルのリーク流量が増える。そこで、第1シール部または第2シール部から漏出する前記オイルのリーク流量に基づいて軸シール構造の異常を検知することとしたため、水中もしくは水中構造体内部へのオイルのリーク流量が一定の値を上回ると異常を検知することで、軸シール機能が喪失する異常状態を事前に検知し対策を講じることができる。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図1乃至12を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係る水中構造体の縦断面図が示されている。発電ポッド(水中構造体)1は、海中に設置され、海流をエネルギーに変換する。また、発電ポッド1は、長期間海中に設置され使用可能に設計され、例えば耐用年数が20年とされている。発電ポッド1は、例えば海底に固定された係留用ブロックに一端が固定された係留索の他端に接続された状態で、海中に浮遊しているとする。
図1に示されるように、発電ポッド1は、プロペラ部50と、軸(回転軸)55と、発電機40と、軸シール装置7と、を主な構成として備えている。
発電ポッド1は、軸55の先端に接続されたプロペラ部50が海流により回転するエネルギーを、発電機40によって電力エネルギーに変換するものである。ここで、プロペラ部50と軸55の先端の一部を除いて発電ポッド1の機器はナセル80内部に収容されている。ナセル80外部は海水であり、発電ポッド1の内部の機器が海水によって浸水しないように、軸55に対して軸シール装置7が設けられている。
軸シール装置7は、メカニカルシールとされた軸シール構造5と、制御部10と、オイルタンク20と、給油ポンプ27と、ドレンタンク30と、を主な構成として備えている。
図2に示されるように、軸シール構造5は、ダブルシール構造とされており、軸55に固定され軸55とともに回転する回転側シール部材5aと、ナセル80に固定された静止側シール部材5b及び5cと、を主な構成として備えている。
軸シール構造5の回転側シール部材5aと静止側シール部材5bとの摺動部分近傍が第1シール部5Eとされている。第1シール部5Eの外部となる軸55とナセル80との間は海水で満たされており、その圧力は圧力計17で計測される。圧力計17で計測される圧力を海水圧P1とする。
また、軸シール構造5の回転側シール部材5aと静止側シール部材5cとの摺動部分近傍が第2シール部5Iとされている。第2シール部5Iの外部となる軸55とナセル80との間は発電ポッド1の内部に連通しており、その圧力は圧力計15で計測される。圧力計15で計測される圧力を機内圧P2とする。
ドレンタンク30には、ドレンタンク用オイル液位計31、ドレンタンク用オイル温度計33及びドレンタンク表面温度計35が設置され、それぞれドレンタンクオイル液位Hd、ドレンタンクオイル温度Td、ドレンタンク表面温度T_Hdを計測する。
また、第1シール部5Eから海水側へ漏出するオイルの流量、すなわち海水側リーク流量をQ1、第2シール部5Iからナセル80内部側へ漏出しドレンタンク30へと流れるオイルの機内側リーク流量をQ2とする。
上述した各計器は、発電ポッド1が長期間海中に設置されることから、同様に長期間使用可能な機器を使用するものとする。
制御部10は、オイル液位計21、オイル温度計23、タンク表面温度計25、圧力計29、圧力計15、圧力計17、ドレンタンク用オイル液位計31、ドレンタンク用オイル温度計33及びドレンタンク表面温度計35が計測した各値を取得する。さらに、制御部10には、傾斜計11及び加速度計13が接続されており、発電ポッド1のナセル80の傾斜度C0及び加速度A0を取得する。
ここで、制御部10の取得する各値がオイル液面の揺れなどによる誤差を含まないように、オイルタンク20及びドレンタンク30を揺動からの影響を防ぐ免振構造が備えられている。
なお、図1において制御部10は発電ポッド1内に設置されている形態としているが、発電ポッド1外(例えば地上の監視場所)に設置し、有線・無線等の通信装置により、発電ポッド1内の各種センサと情報の授受を行うこととしてもよい。
図3に示されるように、オイルタンク20は免振装置101及び球関節103を介してナセル80の天井から吊り下げられている。免振装置101は、前後左右に並進可能な支持装置であり、ナセル80の横揺れを吸収する。具体的には、免振装置101の上面と下面とが水平方向に相対移動可能とされたリニアガイドとダンパー装置とされており、上下面が相対移動する際に横揺れを減衰するようになっている。球関節103は、ハウジング内部に球状部が自由に回転可能に保持された支持装置であり、ナセル80が傾斜した場合であってもオイルタンク20が鉛直方向に吊り下げられるようにして傾斜を吸収するようになっている。ナセル80の天井、免振装置101、球関節103及びオイルタンク20は各々がワイヤまたは軸などにより接続されている。以上の構造により、オイルタンク20はナセル80の揺動の影響を抑制され、オイルタンク20のオイル液面の揺動が抑えられ、液面が安定化されるようになっている。
なお、ドレンタンク30においても同様の免震構造が備えらえている。
また、図8及び図9は、オイルタンク20のオイル液位の補正処理を表す1つのフローチャートを温度変化補正、位置姿勢変化補正の各補正処理に分割したものである。
また、図10及び図11は、ドレンタンク30のオイル液位の補正処理を表す1つのフローチャートを温度変化補正、位置姿勢変化補正の各補正処理に分割したものである。
図4に示すように、圧力計29により給油圧Psが検知され(S401)、圧力計17により海水圧P1が検知される(S402)。次に、ステップS401で検知された給油圧Psが、給油圧のアラーム値Psaより大きいかどうかの判定を行い(S403)、アラーム値Psaより大きい場合は給油圧Psは正常であるとみなしAに遷移する。
トリップ動作としては、まず軸55の回転が停止され、その後海上においてトリップ箇所の確認、修理などを行うため、発電ポッド1を海上へ浮上させる処理が行われる。
[数1]
Psa>Pst≧P1+Δp ・・・(1)
図5に示すように、サンプリング時間Δt前のオイルタンク20のオイル液位Hs_i-1を検知する(S501)。サンプリング時間Δtは所定の時間であり、任意に設定可能である。
次に、オイル液位計21により現在のオイルタンク20のオイル液位Hs_iを検知する(S502)。この時、図3のように免振構造を備えたオイルタンク20であることからオイル液位は正しく計測されていると考えられるが、そのオイル液位が信頼性のある値か否かを判定するために、オイル液位検知時の発電ポッド1の周囲外乱の影響を確認する。このとき、フローチャートはWへ遷移する。
図8に示されるように、オイル液位計21によりオイルタンク20のオイル液位Hsを検知する(S801)。
次に、オイル温度計23によりオイルタンク20内のオイル温度Tsを検知し、基準となるオイル温度に対する温度変化ΔTsを算出する(S802)。算出されたΔTs及びオイルの体積膨張係数からオイルの体積変化ΔVsを算出する(S803)。
次に、タンク表面温度計25によりオイルタンク20のタンク表面温度T_Hsを検知し、基準となるタンク表面温度に対する温度変化ΔT_Hsを算出する(S804)。算出されたΔT_Hs及びオイルタンク20のタンク材の線膨張係数からオイルタンク20の内容積変化ΔV_Hsを算出する(S805)。
次に、所定の時間内でのオイル液位の変動が所定の範囲内か否かを判定し(S807)、オイル液位の変動が所定の範囲内であれば上記ステップS806にて補正したオイルタンク20のオイル液位Hsを評価に用いることとし(S808)、Xに遷移、すなわちステップS502に戻る。
一方、上記ステップS807において、オイル液位の変動が所定の範囲を超えている場合には、発電ポッド1の位置や姿勢に大きく変動があったと考えられることから、位置姿勢変化補正を行うためDに遷移する。
図9に示されるように、発電ポッド1のナセル80に設置された傾斜計11及び加速度計13などにより、ナセル80の傾斜度C0及び加速度A0などを計測し、ナセル80の位置や姿勢の変動を検知する(S901)。次に、オイルタンク20のオイル液位の変動がナセル80の位置や姿勢の変動と関連があるか、すなわちオイル液位の変動とナセル80の位置や姿勢の変動との周波数や振幅が合致しているか否かを判定する(S902)。オイル液位の変動とナセル80の位置や姿勢の変動との周波数や振幅が合致している場合は、ナセル80の位置や姿勢の変動の影響を除くため、この変動の周波数成分を取り除くべくオイル液位Hsに対しLPF処理(Low Pass Filter:ローパスフィルタ)を行う。これは、リークによるオイル液位の緩やかな減少に対し、ナセル80の位置や姿勢の変動による周波数は定性的に高いと考えられることにより、LPF処理により高域周波数信号を減衰させて遮断し、低域周波数のみを信号として通過させてもリーク流量の計算への影響は少ないと考えられるためである。このように、LPF処理が行われ補正されたオイル液位Hsを評価に用いることとし(S903)、Yに遷移、すなわちステップS502に戻る。
ステップS502では、図8のX、図9のYまたはZよりオイル液位検知時の発電ポッド1の周囲外乱の影響を加味し補正した現在のオイルタンク20の液位Hs_iを用いることとする。
[数2]
Qs_i=(Hs_i-1−Hs_i)×Ss/Δt ・・・(2)
[数3]
Vs_t=∫Qs(t)dt ・・・(3)
[数4]
Vs=Hs_i×Ss ・・・(4)
一方、上記ステップS507において、現在のオイルタンク油量Vsがアラーム値αVs_t以下の場合は、さらに現在のオイルタンク油量Vsがトリップ値βVs_tより大きいかどうかの判定を行い(S508)、大きい場合は監視者にアラームを発信した上で(S509)、Bへ遷移する。ここで、給油流量Qsのトレンドデータの急激な変化やトリップ動作の準備状況などから、必要であればBへ遷移せずステップS510へ遷移する。
トリップ動作としては、まず軸55の回転が停止され、その後海上においてトリップ箇所の確認、修理などを行うため、発電ポッド1を海上へ浮上させる処理が行われる。
[数5]
αVs_t>βVs_t≧Vs_t ・・・(5)
図6に示すように、サンプリング時間Δt前のドレンタンク30のオイル液位Hd_i-1を検知する(S601)。サンプリング時間Δtは所定の時間であり、任意に設定可能である。
次に、ドレンタンク用オイル液位計31により現在のドレンタンク30のオイル液位Hd_iを検知する(S602)。この時、図3のように免振構造を備えたドレンタンク30であることからオイル液位は正しく計測されていると考えられるが、そのオイル液位が信頼性のある値か否かを判定するために、オイル液位検知時の発電ポッド1の周囲外乱の影響を確認する。このときフローチャートはW’へ遷移する。
図10に示されるように、ドレンタンク用オイル液位計31によりドレンタンク30のオイル液位Hdを検知する(S101)。
次に、ドレンタンク用オイル温度計33によりドレンタンク30内のオイル温度Tdを検知し、基準となるオイル温度に対する温度変化ΔTdを算出する(S102)。算出されたΔTd及びオイルの体積膨張係数からオイルの体積変化ΔVdを算出する(S103)。
次に、ドレンタンク表面温度計35によりドレンタンク30のタンク表面温度T_Hdを検知し、基準となるタンク表面温度に対する温度変化ΔT_Hdを算出する(S104)。算出されたΔT_Hd及びドレンタンク30のタンク材の線膨張係数からドレンタンク30の内容積変化ΔV_Hdを算出する(S105)。
次に、所定の時間内でのドレンタンク30のオイル液位の変動が所定の範囲内か否かを判定し(S107)、オイル液位の変動が所定の範囲内であれば上記ステップS106にて補正したドレンタンク30のオイル液位Hdを評価に用いることとし(S108)、X’に遷移、すなわちステップS602に戻る。
一方、上記ステップS107において、ドレンタンク30のオイル液位の変動が所定の範囲を超えている場合には、発電ポッド1の位置や姿勢に大きく変動があったと考えられることから、位置姿勢変化補正を行うためD’に遷移する。
図11に示されるように、発電ポッド1のナセル80に設置された傾斜計11及び加速度計13などにより、ナセル80の傾斜度C0及び加速度A0などを計測し、ナセル80の位置や姿勢の変動を検知する(S111)。次に、ドレンタンク30のオイル液位の変動がナセル80の位置や姿勢の変動と関連があるか、すなわちオイル液位の変動とナセル80の位置や姿勢の変動との周波数や振幅が合致しているか否かを判定する(S112)。ドレンタンク30のオイル液位の変動とナセル80の位置や姿勢の変動との周波数や振幅が合致している場合は、ナセル80の位置や姿勢の変動の影響を除くため、この変動の周波数成分を取り除くべくオイル液位Hdに対しLPF処理を行う。これは、リークによるオイル液位の緩やかな増加に対し、ナセル80の位置や姿勢の変動による周波数は定性的に高いと考えられることにより、LPF処理により高域周波数信号を減衰させて遮断し、低域周波数のみを信号として通過させてもリーク流量の計算への影響は少ないと考えられるためである。このように、LPF処理が行われ補正されたオイル液位Hdを評価に用いることとし(S113)、Y’に遷移、すなわちステップS602に戻る。
ステップS602では、図10のX’、図11のY’またはZ’よりオイル液位検知時の発電ポッド1の周囲外乱の影響を加味し補正した現在のドレンタンク30の液位Hd_iを用いることとする。
[数6]
Q2_i=(Hd_i−Hd_i-1)×Sd/Δt ・・・(6)
一方、上記ステップS604において、現在の機内側リーク流量Q2_iがアラーム値Q2a以上の場合は、さらに機内側リーク流量Q2_iがトリップ値Q2tより小さいかどうかの判定を行い(S605)、小さい場合は監視者にアラームを発信した上で(S606)、Cへ遷移する。ここで、機内側リーク流量Q2のトレンドデータの急激な変化やトリップ動作の準備状況などから、必要であればCへ遷移せずステップS607へ遷移する。
トリップ動作としては、まず軸55の回転が停止され、その後海上においてトリップ箇所の確認、修理などを行うため、発電ポッド1を海上へ浮上させる処理が行われる。
[数7]
Q2a<Q2t ・・・(7)
図7に示すように、現在の海水側へのリーク流量Q1_iを計算する(S701)。現在の海水側へのリーク流量Q1_iは、以下の式(8)で表される。
[数8]
Q1_i=Qs_i−Q2_i ・・・(8)
一方、上記ステップS702において、現在の海水側リーク流量Q1_iがアラーム値Q1a以上の場合は、さらに海水側リーク流量Q1_iがトリップ値Q1tより小さいかどうかの判定を行い(S703)、小さい場合は監視者にアラームを発信した上で(S704)、フローを終了する。ここで、海水側リーク流量Q1のトレンドデータの急激な変化やトリップ動作の準備状況などから、必要であればフローを終了せずステップS705へ遷移する。
トリップ動作としては、まず軸55の回転が停止され、その後海上においてトリップ箇所の確認、修理などを行うため、発電ポッド1を海上へ浮上させる処理が行われる。
[数9]
Q1a<Q1t ・・・(9)
軸シール構造5において、オイルが第1シール部5Eから水中側へ、第2シール部5Iから発電ポッド1内部側へ漏出することから、外部の水の浸入およびシールの異常摩耗を防ぎ、軸シール構造5の軸シール機能をより安全に保つことができる。また、給油ポンプ27から供給されているオイルの給油圧に基づいて軸シール構造5の異常を検知することとしたので、給油圧が所定の値を下回り軸シール構造5のシール機能が喪失する異常状態を正確に予測することで、軸シール構造5が完全にシール機能を喪失する前に異常状態に対する対策を講じることができる。
また、第1シール部5Eまたは第2シール部5Iが摩耗などによって劣化すると、軸シール構造5の使用時間の経過とともに水中および発電ポッド1の本体内部へのオイルのリーク流量が増える。よって、水中もしくは発電ポッド1内部へのオイルのリーク流量が一定の値を上回ると異常を検知することにより、軸シール機能が喪失する異常状態を事前に検知し対策を講じることができる。
また、発電ポッド1内部への浸水を防ぐことで、発電機40などの機器が海水などに浸からないため、機器の取り換えに伴うコストや、またシール機能回復後の復帰までに要するコストを抑えることができ、また復帰までの期間の長期化を避けることができる。また、発電ポッド1内部に浸水しないため、発電ポッド1のバランスが崩れずまた浮上機能も失われないことから、水上まで発電ポッド1を確実に浮上させることができる。
図12に示されるように、オイルタンク20内には、オイル液面を上方から覆う密閉蓋111と、密閉蓋111をオイル液面に押し付ける加圧バネ113とが設けられている。加圧バネ113は、圧縮バネとされており、上端がオイルタンク20の天井に取り付けられ、下端が密閉蓋111の上面に取り付けられている。密閉蓋111は、オイル液面の揺動を防ぐための例えば金属製の蓋であり、その端部の周囲にはオイルタンク20との摩擦を防ぐため、及び密閉性を高めるために、弾性部材115が設けられている。密閉蓋111は、周囲に設けられた弾性部材115を介してオイルタンク20と接することで、オイルを密閉する。加圧バネ113は、密閉蓋111が油面に接液するように圧力を加える。なお、加圧バネ113に代えて、密閉蓋111を油面に対して加圧状態で接液させる他の方法であってもよい。以上の構成により、オイルタンク20はナセル80の揺動の影響を抑制され、オイルタンク20のオイル液面の揺動が抑えられ、液面が安定化されるようになっている。
なお、ドレンタンク30においても同様の構造が適用可能である。
オイル液面に対して加圧状態で接液する密閉蓋111をオイルタンク20内部に有することから、オイル液面が発電ポッド1の位置や姿勢の影響を受けないため、オイルタンク20のオイル液位などを正しく計測することができる。さらに、位置や姿勢の影響を受けないことによりオイルタンク20のオイル液面が大きく揺動しないことからオイル中に気泡が混入しないため、給油ポンプ27の異常を防止することができる。
以下、本発明の第2実施形態について、図13及び図14を用いて説明する。
上記した第1実施形態では、軸シール構造は1つであるとしたが、本実施形態では、さらにバックアップシールを備えるとするものである。その他の点については第1実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
図13に示されるように、バックアップシール60は、固定シール61と、ストッパ63と、アクチュエータ65と、金属ベローズ67とを備えており、軸シール構造5の機内側に設置されている。
異常が発生していない場合は、図13のようにストッパ63が固定シール61を保持している。ストッパ63が固定シール61を保持しない場合、金属ベローズ67の弾性力により図13において左から右向きの力が働き、図14のように固定シール61は軸55の端面に押し付けられる形状であるところ、ストッパ63が固定シール61を保持することで固定シール61が軸55に接触しない。
軸シール構造5の故障など、軸シール構造5に異常が発生した場合、機内側に海水が浸入する前に対策を講じることができるようにトリップ信号が発信され、監視者がトリップ動作を実施するために発電ポッド1を海上へ浮上させる。
しかし、シール機能が大きく失われ、海上へ浮上させる間に海水が機内側へ大量に漏れ出す恐れがある。このようなシール機能喪失に先んじてバックアップシール60を機能させる。
トリップ動作としては、まず軸55の回転が停止され、次にバックアップシール60が起動される。
バックアップシール60では、図14のようにアクチュエータ65が駆動し、ストッパ63が外れる。金属ベローズ67の弾性力と、軸シール構造5を経由して浸入した海水の流体力とにより固定シール61が軸55の端面に押し付けられ、固定シール61と軸55の端面が接触することにより海水がシールされ機内側に浸入するのを防ぐことができる。
その後海上においてトリップ箇所の確認、修理などを行うため、発電ポッド1を海上へ浮上させる処理が行われる。
軸シール構造5の異常検知後に、バックアップシール60を起動させることとしたので、異常が発生してから対策を講じるまでの間に、発電ポッド1の本体内部に海水が浸入するのを防ぐことができる。
5 軸シール構造
5a 回転側シール部材
5b,5c 静止側シール部材
5E 第1シール部
5I 第2シール部
7 軸シール装置
10 制御部
11 傾斜計
13 加速度計
15 圧力計
17 圧力計
20 オイルタンク
21 オイル液位計
23 オイル温度計
25 タンク表面温度計
27 給油ポンプ
29 圧力計
30 ドレンタンク
31 ドレンタンク用オイル液位計
33 ドレンタンク用オイル温度計
35 ドレンタンク表面温度計
40 発電機
50 プロペラ部
55 軸(回転軸)
60 バックアップシール
61 固定シール
63 ストッパ
65 アクチュエータ
67 金属ベローズ
80 ナセル
101 免震装置
103 球関節
111 密閉蓋
113 加圧バネ
115 弾性部材
Claims (10)
- 水中に設置された水中構造体に設けられ、該水中構造体の本体内部から水中へと突出する回転軸をシールする軸シール構造を備えた軸シール装置において、
前記軸シール構造は、
第1シール部と、
該第1シール部との間に給油空間を有して前記本体内部側に設けられた第2シール部と、
前記第1シール部から水中側にオイルが漏出するとともに前記第2シール部から前記本体内部側に漏出する所定の給油圧にて前記給油空間に対してオイルを供給する給油ポンプと、
を備え、
前記給油ポンプから供給される前記オイルの前記給油圧および前記第1シール部または前記第2シール部から漏出する前記オイルのリーク流量をもとに前記軸シール装置の異常を検知する制御部を備えていることを特徴とする軸シール装置。 - 前記給油ポンプに導かれる前記オイルを貯蔵するオイルタンクと、
該オイルタンク内のオイル液位を計測するオイル液位計と、
を備え、
前記制御部は、前記オイル液位計により計測された前記オイル液位をもとに前記軸シール構造の異常を検知することを特徴とする請求項1に記載の軸シール装置。 - 前記制御部は、前記オイル液位に対し、前記オイルの温度変化の影響補正および前記水中構造体の位置姿勢変化の影響補正を行うことを特徴とする請求項2に記載の軸シール装置。
- 前記オイルタンクは、前記水中構造体の揺動からの影響を防ぐ免振装置を備えていることを特徴とする請求項2または3に記載の軸シール装置。
- 前記オイルタンクは、前記水中構造体内部の上部から、球関節を介して吊り下げられていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の軸シール装置。
- 前記オイルタンクは、前記オイルの液面に対して加圧状態で接液する密閉蓋を備えていることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の軸シール装置。
- 前記第2シール部から前記水中構造体の本体内部へ漏出する前記オイルを貯蔵するドレンタンクと、
該ドレンタンクのオイル液位を計測するドレンタンク用オイル液位計と、
を備え、
前記制御部は、前記ドレンタンク内のオイル液位に対し、前記オイルの温度変化の影響補正および前記水中構造体の位置姿勢変化の影響補正を行うことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の軸シール装置。 - 前記第2シール部の前記本体内部側に設けられ、前記回転軸をシールするバックアップシールを備え、
前記制御部は、前記軸シール構造の異常検知後に、前記バックアップシールを起動させることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の軸シール装置。 - 請求項1から請求項8のいずれかに記載の軸シール装置を備えていることを特徴とする水中構造体。
- 水中に設置された水中構造体に設けられ、該水中構造体の本体内部から水中へと突出する回転軸をシールする軸シール構造を備えた軸シール装置の制御方法において、
前記軸シール構造は、
第1シール部と、
該第1シール部との間に給油空間を有して前記本体内部側に設けられた第2シール部と、
前記第1シール部から水中側にオイルが漏出するとともに前記第2シール部から前記本体内部側に漏出する所定の給油圧にて前記給油空間に対してオイルを供給する給油ポンプと、
を備え、
前記給油ポンプから供給される前記オイルの前記給油圧および前記第1シール部または前記第2シール部から漏出する前記オイルのリーク流量をもとに前記軸シール装置の異常を検知するステップを有することを特徴とする軸シール装置の制御方法。
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