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JP2015034097A - 水性シランカップリング剤組成物及びその製造方法、表面処理剤並びに物品 - Google Patents

水性シランカップリング剤組成物及びその製造方法、表面処理剤並びに物品 Download PDF

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JP2015034097A
JP2015034097A JP2013164336A JP2013164336A JP2015034097A JP 2015034097 A JP2015034097 A JP 2015034097A JP 2013164336 A JP2013164336 A JP 2013164336A JP 2013164336 A JP2013164336 A JP 2013164336A JP 2015034097 A JP2015034097 A JP 2015034097A
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Kazuhiro Tsuchida
和弘 土田
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Shin Etsu Chemical Co Ltd
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Abstract

【課題】アルコール等の揮発性有機化合物を含まず、且つ経時での発生もなく、高温条件下においても良好な貯蔵安定性を有し、種々改質材料として有望なジカルボン酸基を官能基として有するシランカップリング剤を用いた水性シランカップリング剤組成物及びその製造方法、該組成物を含む表面処理剤並びに該処理剤にて処理された物品を提供する。
【解決手段】(i)下記一般式(1)で示されるシランカップリング剤、及び
(ii)水
を含み、固体含有量が全組成物に対して0.5〜50質量%であり、ヘッドスペース法ガスクロマトグラフィーにより検出される該組成物の揮発成分のうち、揮発性有機化合物の含有量が10質量%以下であることを特徴とする水性シランカップリング剤組成物。
Figure 2015034097

(式中、Rは炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、nは2又は3である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、ジカルボン酸基を有するシラン化合物をベースとする水性シランカップリング剤組成物、その製造方法及び該組成物を含む表面処理剤並びに該処理剤にて処理された物品に関する。
加水分解性シリル基と有機反応性基を有する有機ケイ素化合物は、一般にシランカップリング剤と称され、しばしば無機材料−有機材料間の結合材料として接着剤、塗料添加剤、樹脂改質剤として使用されている。シランカップリング剤の加水分解物としての使用において有する課題は、アルコキシシリル基に代表される加水分解性シリル基の加水分解により発生するアルコール及びシラノールの安定化剤兼希釈剤として添加される揮発性の有機溶剤を高い割合で含有することである。
一般に、アルコキシシランの部分加水分解物や酸系の加水分解触媒を用いることにより、ある程度の貯蔵安定性を保有するシランのゾルゲル系塗料を製造することは可能であるが、これら塗料はアルコールをはじめとした有機溶剤系に限定されるものである。アルコキシシランの完全な加水分解に十分な水を使用し、高い固体含有量を有する場合に前記系の貯蔵安定性を著しく低下させ、塗料として製造する途中にシランの加水分解縮合の制御が困難となり、高分子化・ゲル化することも公知である。
特表2009−524709号公報(特許文献1)には、水で希釈可能なゾルゲル組成物として、グリシジルオキシプロピルアルコキシシラン、水性シリカゾル、有機酸、チタン又はジルコニウムの有機金属化合物を必須成分とするアルコール低含有のシロキサン水系塗料に関する技術が開示されているが、その使用用途については腐食保護、プライマー等の記述のみであり、有効性を実証する実施例の記載もない。また、この塗料では揮発性有機化合物として有機酸の残存が懸念されている。
シランカップリング剤の有機反応性基としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、メルカプト基、イソシアネート基、ケチミン構造基、スチリル基が代表的であり、これらを有するシランカップリング剤は公知のものとして種々応用例が知られている。
これらの中でも水溶性に寄与するアミノ基を有するシランカップリング剤は、水溶性に優れるばかりではなく、高い水溶液安定性を示し、加水分解により発生したアルコールを除去したアルコール不含のシラン水溶液の調製が可能であり、環境負荷の少ない材料として期待されている。一方で同様に高い水溶性を示すカルボン酸基を有するシランカップリング剤のアルコール不含水溶液の製造、応用例は報告がない。
加水分解によりカルボン酸基を発生する酸無水物基を官能基として有するシランカップリング剤及びその加水分解性縮合物は、粘着剤組成物における粘着力調整剤(特開平8−302320号公報(特許文献2))、エポキシ樹脂ベースの硬化性組成物の架橋剤(特開2006−22158号公報(特許文献3))などが代表的な用途として挙げられ、他にもポリイミド樹脂改質剤等様々な分野で使用されている。
特開2012−46576号公報(特許文献4)では、上記酸無水物基含有シランカップリング剤を任意に加水分解させ、ジカルボン酸構造基含有のシラノール型シランカップリング剤としたものを封止用エポキシ樹脂の改質剤として使用する技術が開示されている。しかしながら、本技術では、使用するカップリング剤から発生するアルコールに関しての言及はなく、シランカップリング剤の加水分解水溶液による使用の範囲といえる。
このように酸無水物基並びにカルボン酸基を官能基として有するシランカップリング剤は、幅広い用途においてその効果が実証されており、同様の効果を有しながら使用における揮発性有機化合物の発生のない材料は、環境にも優しいことから、関連分野において所望される材料であった。
特表2009−524709号公報 特開平8−302320号公報 特開2006−22158号公報 特開2012−46576号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、アルコール等の揮発性有機化合物を含まず、且つ経時での発生もなく、高温条件下においても良好な貯蔵安定性を有し、種々改質材料として有望なジカルボン酸基を官能基として有するシランカップリング剤を用いた水性シランカップリング剤組成物及びその製造方法、該組成物を含む表面処理剤並びに該処理剤にて処理された物品を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(i)下記一般式(1)で示されるシランカップリング剤、及び(ii)水を含み、固体含有量が全組成物に対して0.5〜50質量%であり、ヘッドスペース法ガスクロマトグラフィーにより検出される該組成物の揮発成分のうち、揮発性有機化合物の含有量が10質量%以下である水性シランカップリング剤組成物が、アルコール等の揮発性有機化合物を含まず、且つ経時での発生もなく、高温条件下においても良好な貯蔵安定性を有し、種々改質材料として有望であることを見出し、本発明をなすに至った。
Figure 2015034097

(式中、Rは炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、nは2又は3である。)
従って、本発明は、下記の水性シランカップリング剤組成物及びその製造方法、表面処理剤並びに物品を提供する。
〔1〕
(i)下記一般式(1)で示されるシランカップリング剤、及び
(ii)水
を含み、固体含有量が全組成物に対して0.5〜50質量%であり、ヘッドスペース法ガスクロマトグラフィーにより検出される該組成物の揮発成分のうち、揮発性有機化合物の含有量が10質量%以下であることを特徴とする水性シランカップリング剤組成物。
Figure 2015034097

(式中、Rは炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、nは2又は3である。)
〔2〕
固体含有量が全組成物に対して30〜50質量%であり、且つ50℃で一カ月保管した際の粘度上昇が10%未満であることを特徴とする〔1〕記載の水性シランカップリング剤組成物。
〔3〕
下記一般式(2)で示される無水コハク酸基含有シランカップリング剤を加水分解反応させた後に、発生したアルコールを除去することを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の水性シランカップリング剤組成物の製造方法。
Figure 2015034097

(式中、R、nは上記と同じであり、Xは炭素数1〜4の一価炭化水素基である。)
〔4〕
〔1〕又は〔2〕に記載の水性シランカップリング剤組成物を含む表面処理剤。
〔5〕
〔4〕記載の表面処理剤にて処理された基材を含む物品。
〔6〕
表面処理される基材が、ガラスクロス、ガラステープ、ガラスマット、ガラスペーパーから選ばれるガラス繊維製品である〔5〕記載の物品。
〔7〕
表面処理される基材が、無機フィラーである〔5〕記載の物品。
〔8〕
表面処理される基材が、セラミック又は金属である〔5〕記載の物品。
本発明の水性シランカップリング剤組成物は、1分子中にジカルボン酸基を含有するシランカップリング剤を用いることにより、高い水溶性を示し、高濃度においても安定性に優れたものとなり得る。本発明の水性シランカップリング剤組成物は、用いるシランカップリング剤の加水分解が実質的に完了しているため、無機材料に対するシリル基の反応性が高く、従来のシランカップリング剤のような使用時における加水分解工程を経ないことから、実使用における生産性に優れるものであり、また揮発性有機化合物を実質的に含まず、且つ発生もないことから作業者のみならず、作業環境に与える負荷が少ない。本表面処理剤を使用した改質樹脂は、ガラスをはじめ、種々無機材料との密着性に優れる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の安定な水性シランカップリング剤組成物は、(i)下記一般式(1)で示されるシランカップリング剤及び(ii)水を含むものである。
Figure 2015034097

(式中、Rは炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、nは2又は3である。)
上記式(1)中、Rは炭素数1〜10、好ましくは1〜6の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられ、これらの中でもメチル基、エチル基、フェニル基が好ましい。
また、nは2又は3である。なお、上記n=1に相当するシランカップリング剤は、加水分解により発生するシラノールの数が少ないことから水溶性が低く、水溶液の安定性が不十分であり、且つ無機材料との反応効率も低いことから不適である。
本発明の水性シランカップリング剤組成物は、ヘッドスペース法ガスクロマトグラフィー測定により検出される該組成物の揮発成分のうち、揮発性有機化合物の含有量が10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは含有しないものである。揮発性有機化合物の含有量が10質量%を超えると本組成物を使用する作業者、並びに周辺環境に与える負荷が大きく、本発明の主旨から外れてしまう組成物となる。
本発明における揮発性有機化合物は、主にシランカップリング剤に含まれるアルコキシシリル基の加水分解によって発生するアルコールを指す。また、先述のとおり、シランカップリング剤水溶液の安定化剤として意図的に添加するアルコールなどの水性有機溶剤やシランの加水分解触媒としての有機酸、塩酸、硫酸などの無機酸も揮発性有機化合物の一つである。
本発明の水性シランカップリング剤組成物は、固体含有量が全組成物に対して0.5〜50質量%であり、好ましくは30〜50質量%であり、更に好ましくは30〜40質量%である。具体的には、組成物を加熱・乾燥させ、残存する固体残存量(g)/組成物全量(g)=0.005〜0.5となればよい。固体含有量が0.5質量%未満である場合には、組成物による形成皮膜が十分な耐水性、プライマー効果を発現しない。一方、固体含有量が50質量%より大きくなる場合には、組成物の安定性が著しく低下するため、製造が困難となる。
本発明においては、固体含有量が全組成物に対して30質量%以上であり、且つ50℃で一カ月保管した際の粘度上昇が10%未満である水性シランカップリング剤組成物が好ましい。なお、本発明において、粘度は毛細管式動粘度計により測定した25℃における値である。
本発明の水性シランカップリング剤組成物は、下記一般式(2)
Figure 2015034097

(式中、R、nは上記と同じであり、Xは炭素数1〜4の一価炭化水素基である。)
で示される無水コハク酸基含有シランカップリング剤を加水分解反応させた後に、発生したアルコールを除去する工程を設けることにより調製できる。加水分解反応後、発生したアルコールを除去する工程により、ヘッドスペース法ガスクロマトグラフィー測定により検出される該組成物の揮発成分のうち、揮発性有機化合物の含有量(アルコール含量)を10質量%以下とすることが可能となる。
上記式(2)中、Xは炭素数1〜4の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基などが挙げられ、これらの中でもメチル基、エチル基が好ましい。
無水コハク酸基含有シランカップリング剤の具体的な例としては、トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸、トリエトキシシリルプロピル無水コハク酸、メチルジメトキシシリルプロピル無水コハク酸、メチルジエトキシシリルプロピル無水コハク酸などが挙げられるが、ここに例示されるものに限らない。
本発明においては、何れのシランカップリング剤でも同様の手法により安定な水性シランカップリング剤組成物が得られるわけではなく、本発明は加水分解により発生するジカルボン酸構造がキー骨格となり、所望の水性材料を得るに至る。
具体的な加水分解反応条件として、反応温度は30〜110℃、減圧度は60hPa〜常圧が好ましく、得られる組成物の安定性を冒さない範囲であればこれに限定されない。反応温度が110℃より高い場合には、得られる組成物の安定性が低下し、製造が困難となるおそれがある。一方、反応温度が30℃未満である場合には、十分に加水分解反応が進行せず、経時でのアルコール発生が起こりかねない。
上記加水分解反応後、発生したアルコールを除去する方法としては、常圧留去並びに減圧留去が挙げられ、該留去工程は上述した加水分解反応工程と並行して行ってもよく、生産効率の観点からは並行して行うことが好ましい。その際の温度条件、減圧条件は上記加水分解反応工程時と同様である。
加水分解反応に使用する水の量は、原料の無水コハク酸基含有シランカップリング剤1モルに対して最低でも4モル必要であるが、実質本発明は水を溶媒とするため過剰に存在すればよい。
上記シランカップリング剤を加水分解する際には、公知技術の加水分解触媒は使用しない。これは加水分解後のアルコール除去工程を経た後に残存した場合、該触媒化合物が揮発性有機化合物であり得るため、環境負荷の観点より含有が望ましくないためである。
本発明の水性シランカップリング剤組成物は、前述の通り、主成分はシラノールを含む構造であるため、それ自体で表面処理剤(プライマー、あるいは無機材料と有機樹脂との複合材料の改質剤)として機能する。
この場合、表面処理剤において、主成分であるシランカップリング剤の含有量は、表面処理剤全体の0.1〜50質量%、特に0.5〜30質量%であることが好ましい。
なお、本発明の表面処理剤としては、上記水性シランカップリング剤組成物の他に、界面活性剤、防腐剤、変色防止剤、酸化防止剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
本発明の表面処理剤で表面処理される基材としては、一般に加水分解性シリル基と反応し、結合を形成する無機材料及びカルボン酸基と反応して結合する有機樹脂等の有機材料であれば適用可能であり、基材の形状については特に指定されない。その中でも代表的な無機材料としては、ケイ素、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、スズ及びそれらの単独又は複合酸化物からなる無機フィラーや、ガラス繊維をはじめとしたガラスクロス、ガラステープ、ガラスマット、ガラスペーパー等のガラス繊維製品、セラミック、鉄、アルミニウム、銅、銀、金、マグネシウム等の金属基材等が挙げられる。また、代表的な有機材料としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、厚紙、木材、無垢木、チップボード等が挙げられる。なお、ここに例示したものに限定されるものではない。
本発明の表面処理剤の表面処理方法、硬化条件等としては特に限定されるものではないが、具体的には、フローコート(浸漬法)、スピンコート等が直接基材へ処理する場合の方法として挙げられ、また、予め未処理の無機フィラーと分散媒体の樹脂からなるコンパウンドに添加、混合することによる混練処理にも適応される。
また代表的な硬化条件としては、加熱・乾燥が挙げられ、表面処理後に60〜180℃、好ましくは80〜150℃で5分〜2時間加熱・乾燥し、溶媒の除去と同時に表面処理剤中の主成分であるシランカップリング剤と基材表面とを化学反応させることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記例中、粘度、比重、屈折率は、25℃において測定した値であり、部は質量部である。なお、粘度はJIS Z 8803に基づいて測定した。比重はJIS Z 8804に基づいて測定した。屈折率はJIS K 0062に基づいて測定した。
また、アルコール含量は、ヘッドスペースオートサンプラー(パーキンエルマー社製、TurboMatrix HS40)を用いて、試料1gを容量20mLのセプタム付きバイアル瓶に密閉後60℃×10分間保持し、気液平衡に到達した際に捕集した気体成分を次の条件で測定した値である。
GC装置:アジレントテクノロジー社製 HP7820A
検出器:熱伝導度型検出器(TCD)
カラム:HP INNOWAX19091N−033(長さ30m×内径0.25mm
×膜厚0.15μm)
カラム温度:40℃(1.5分保持)→15℃/分→80℃(4分保持)
測定時間 計8.2分
注入口温度:250℃
検出器温度:250℃
キャリアガス:He
キャリアガス流量:1.4mL/min
水性シランカップリング剤組成物(表面処理剤)の調製
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸(信越化学工業社製:X−12−967C)262.3部を納め、その中にイオン交換水1,000部を投入、撹拌した後に加熱し、内温約100℃に到達するまで反応により発生したメタノール及び水を常圧留去した。この時点での総留去量は500部であった。この反応生成物にイオン交換水を添加することで固体含有量を30質量%に調整したものは、淡黄色透明な液体であり、粘度4.1mm2/s、比重1.10、屈折率1.374、pH1.9、ヘッドスペース法ガスクロマトグラフィーによるメタノール含量0.1質量%未満であった。
得られた反応生成物は、下記式で示されるものである。
Figure 2015034097
[実施例2]
実施例1で使用したトリメトキシシリルプロピル無水コハク酸をメチルジメトキシシリルプロピル無水コハク酸に変更し、それ以外は同様の工程を実施した。得られた反応生成物にイオン交換水を添加することで固体含有量を30質量%に調整したものは、淡黄色透明な液体であり、粘度8.4mm2/s、比重1.06、屈折率1.351、pH1.9、ヘッドスペース法ガスクロマトグラフィーによるメタノール含量0.1質量%未満であった。
得られた反応生成物は、下記式で示されるものである。
Figure 2015034097
[比較例1]特開2012−46576号公報記載の実施例:加水分解物1調製の追試
撹拌機、還流冷却器、温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸(信越化学工業社製:X−12−967C)262.3部を納め、その中にイオン交換水144部を投入、撹拌し、混合物が2層に分離しなくなるまで十分に撹拌混合することで淡黄色透明液体として目的物を得た。得られた目的物のヘッドスペース法ガスクロマトグラフィーによるメタノール含量は15質量%であった。また、IR測定によりカルボキシル基のピークが観測され、酸無水物基のピークが消失していることを確認した。
[比較例2]
実施例1で使用したトリメトキシシリルプロピル無水コハク酸をジメチルメトキシシリルプロピル無水コハク酸に変更し、それ以外は同様の工程を実施した。加水分解時は均一溶液だったものの、後のアルコール除去工程においてメタノール除去に伴い、粘度が増大し、最終的には流動性を失い、所望の材料を得るに至らなかった。
ガラス繊維とエポキシ樹脂との密着性評価
[実施例3,4、比較例3〜5]
上記で得られた反応生成物又はトリメトキシシリルプロピル無水コハク酸が1質量%となるように水で希釈したものを表面処理剤とし、ガラス繊維(直径20μm)に処理した後、100℃で30分間乾燥することで表面処理ガラス繊維を得た。該表面処理ガラス繊維上に、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:JER828)と硬化剤(トリエチレンテトラミン)より構成される熱硬化組成物の直径数十μm〜数百μmの液滴を、液滴同士が接触しないように付着させた後、熱硬化(80℃で1.5時間処理した後、100℃で2時間処理)して球状樹脂成型物を成形し、複合界面特性評価装置(東栄産業社製:HM410)を用いたマイクロドロップレット法により表面処理ガラス繊維−エポキシ樹脂間のせん断強度を測定した。ここで、繊維の直径をD[μm]、球状樹脂成型物に埋め込まれた部分の繊維の長さをL[μm]、該球状樹脂成型物を繊維軸方向に引き抜く際の荷重をF[mN]とすると、単位面積あたりのせん断強度τ[MPa]はτ=F/πDLによって求められる。使用した表面処理剤の主成分とせん断強度の結果を表1に示す。
Figure 2015034097
上記の実施例及び比較例の結果は、本発明の表面処理剤を用いて形成される改質表面がエポキシ樹脂への密着効果を実証する他、十分に加水分解されることでガラス繊維への処理効率も向上しており、良好なカップリング効果が発現されることを実証するものである。
封止用エポキシ樹脂と銀基材との密着性評価
[実施例5,6、比較例6〜8]
特開2012−46576号公報記載の実施例に準拠し、表2記載の封止用エポキシ樹脂コンパウンド組成物を調製した。銀基材と該組成物をタブレット化したものとを175℃、6.9MPa、2分間の条件で一体成形して銀基材(直径3.6mm、厚さ0.5mm)上に円錐台状の成型品(上部直径3mm×底部直径3.6mm×高さ3mm、界面面積10mm2)を得た後、銀基材を固定し、エポキシ樹脂成型品の側面を押してそのトルクを測定した。結果を表2に併記する。
なお、表2において、添加した水性シランカップリング剤組成物の量は、主成分(固体含有量)に換算して示した。
Figure 2015034097
X−12−967C:トリメトキシシリルプロピル無水コハク酸
エポキシ樹脂:三菱化学社製YX−4000K
フェノール樹脂硬化剤:明和化成社製MEH−7851SS
無機充填剤:平均粒径10.8μm、BET比表面積5.1m2/gの球状溶融シリカ
シランカップリング剤:信越化学工業社製KBM−573
硬化促進剤:トリフェニルホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加物
離型剤:酸化ポリエチレンワックス(クラリアントジャパン社製PED191)
着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製カーボン#5)
上記の実施例及び比較例の結果は、本発明の表面処理剤のインテグラルブレンドによる改質表面がエポキシ樹脂への密着効果を実証する他、十分に加水分解されていることでシリカ並びに銀基材への処理効率も向上しており、良好なカップリング効果が発現されることを実証するものである。
水性シランカップリング剤組成物の安定性評価
[実施例1,2、比較例9]
実施例1,2の組成物並びに実施例1の固形分を60質量%としたものを比較例9の組成物として、各々を密閉条件下、50℃の恒温室にて保管し、経過時間ごとの初期粘度値からの上昇率を表3に示す。
Figure 2015034097
上記の実施例及び比較例の結果は、本発明の水性シランカップリング剤組成物が50℃といった高温条件下においても良好な安定性を保持するものであることを実証するものである。
本発明の水性シランカップリング剤組成物は、ヘッドスペース法ガスクロマトグラフィー測定により検出される該組成物の揮発成分のうち、揮発性有機化合物の含有量が10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは含有しないものである。揮発性有機化合物の含有量が10質量%を超えると本組成物を使用する作業者、並びに周辺環境に与える負荷が大きく、本発明の主旨から外れてしまう組成物となる。
本発明における揮発性有機化合物は、主にシランカップリング剤に含まれるアルコキシシリル基の加水分解によって発生するアルコールを指す。また、先述のとおり、シランカップリング剤水溶液の安定化剤として意図的に添加するアルコールなどの水性有機溶剤やシランの加水分解触媒としての有機酸も揮発性有機化合物の一つである。

Claims (8)

  1. (i)下記一般式(1)で示されるシランカップリング剤、及び
    (ii)水
    を含み、固体含有量が全組成物に対して0.5〜50質量%であり、ヘッドスペース法ガスクロマトグラフィーにより検出される該組成物の揮発成分のうち、揮発性有機化合物の含有量が10質量%以下であることを特徴とする水性シランカップリング剤組成物。
    Figure 2015034097
    (式中、Rは炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、nは2又は3である。)
  2. 固体含有量が全組成物に対して30〜50質量%であり、且つ50℃で一カ月保管した際の粘度上昇が10%未満であることを特徴とする請求項1記載の水性シランカップリング剤組成物。
  3. 下記一般式(2)で示される無水コハク酸基含有シランカップリング剤を加水分解反応させた後に、発生したアルコールを除去することを特徴とする請求項1又は2記載の水性シランカップリング剤組成物の製造方法。
    Figure 2015034097
    (式中、R、nは上記と同じであり、Xは炭素数1〜4の一価炭化水素基である。)
  4. 請求項1又は2記載の水性シランカップリング剤組成物を含む表面処理剤。
  5. 請求項4記載の表面処理剤にて処理された基材を含む物品。
  6. 表面処理される基材が、ガラスクロス、ガラステープ、ガラスマット、ガラスペーパーから選ばれるガラス繊維製品である請求項5記載の物品。
  7. 表面処理される基材が、無機フィラーである請求項5記載の物品。
  8. 表面処理される基材が、セラミック又は金属である請求項5記載の物品。
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