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JP2015010049A - モンテルカストアルキルエステルを製造する方法 - Google Patents

モンテルカストアルキルエステルを製造する方法 Download PDF

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JP2015010049A
JP2015010049A JP2013135497A JP2013135497A JP2015010049A JP 2015010049 A JP2015010049 A JP 2015010049A JP 2013135497 A JP2013135497 A JP 2013135497A JP 2013135497 A JP2013135497 A JP 2013135497A JP 2015010049 A JP2015010049 A JP 2015010049A
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mol
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朋洋 志水
Tomohiro Shimizu
朋洋 志水
弘行 神薗
Hiroyuki Kamizono
弘行 神薗
小林 健介
Kensuke Kobayashi
健介 小林
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Tokuyama Corp
Original Assignee
Tokuyama Corp
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Abstract

【課題】 特定の不純物の含有量が低減した、高純度の1−(((1(R)−(3−(2−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル)フェニル)−3−(2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル)プロピル)チオ)メチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルを効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】 2−(2−(3(S)−(3−(2−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル)フェニル)−3−メタンスルホニルオキシプロピル)フェニル)−2−プロパノールと1−メルカプトメチルシクロプロパン酢酸アルキルエステルとの強塩基存在下における反応において、反応系中に特定量の弱塩基性窒素含有有機化合物を存在させる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、抗アレルギー薬として有用なモンテルカストナトリウム(化学名称:1−(((1(R)−(3−(2−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル)フェニル)−3−(2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル)プロピル)チオ)メチル)シクロプロパン酢酸ナトリウム)の合成中間体である1−(((1(R)−(3−(2−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル)フェニル)−3−(2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル)プロピル)チオ)メチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルの新規な製造方法に関する。
化学式(1)
Figure 2015010049
で示されるモンテルカストナトリウムは、気管支平滑筋等の標的細胞上のCysLT1受容体にアンタゴニストとして結合し、システイニルロイコトリエンが受容体と結合することを妨げ、気管支喘息の症状を改善する治療薬として知られている。このような治療薬として有用なモンテルカストナトリウムは、非常に高純度であることが望まれていることから、製造過程において不純物の生成を抑制することが極めて重要である。
モンテルカストナトリウムの製造方法としては、公知の方法によって得られた化学式(2)
Figure 2015010049
で示される2−(2−(3(S)−(3−(2−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル)フェニル)−3−メタンスルホニルオキシプロピル)フェニル)−2−プロパノール(以下、メシレート体とも言う。)と、化学式(3)
Figure 2015010049
(式中、Rは水素原子、または、アルキル基とする。)
で示される1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸、または、そのアルキルエステルとを反応させてチオエーテル化し、化学式(4)
Figure 2015010049
(式中、Rは水素原子、または、アルキル基とする。)
で示される1−(((1(R)−(3−(2(E)−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル)フェニル)−3−(2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル)プロピル)チオ)メチル)シクロプロパン酢酸(以下、モンテルカスト遊離酸とも言う。)、または、そのアルキルエステル(以下、モンテルカストアルキルエステルとも言う。)とした後、必要に応じて加水分解し、ナトリウム塩化することによって、モンテルカストナトリウムを得る方法が知られている。
そして、上記チオエーテル化反応について、例えば、特許文献1には、メシレート体と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸メチルエステルとを、アセトニトリル溶媒中、炭酸セシウム存在下で反応させることによって、化学式(5)
Figure 2015010049
で示される1−(((1(R)−(3−(2−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル)フェニル)−3−(2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル)プロピル)チオ)メチル)シクロプロパン酢酸メチルエステル(以下、モンテルカストメチルエステルとも言う。)を製造する方法が記載されている。
さらに、特許文献2には、化学式(6)
Figure 2015010049
で示される1−(((1(S)−(3−(2(E)−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル)フェニル)−3−(2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル)−1−プロパノール(以下、ジオール体とも言う。)とメタンスルホン酸クロリドとを、テトラヒドロフラン(以下、THFとも言う。)溶媒中、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(使用量の記載なし)存在下でメシル化反応させてメシレート体とし、後処理にて反応液を濾過して有機アミン塩等を除去してから、1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸メチルエステルのN,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAとも言う。)溶液を加え、次いで水酸化ナトリウム水溶液を加えることによって、チオエーテル化と加水分解を同じ反応系中で行ない、モンテルカスト遊離酸を製造する方法が記載されている。また、特許文献3には、ジオール体をN,N−ジイソプロピルエチルアミン(ジオール体1モルに対して1.5モル使用)存在下でメシル化した後、後処理を行なわずに、過剰のN,N−ジイソプロピルエチルアミン(ジオール体1モルに対して約0.5モル存在)存在下、1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸及びN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFとも言う。)を加え、次いでナトリウムメトキシドを加えて、モンテルカスト遊離酸を製造する方法が記載されている。
特開平5−105665号公報 特表2008−510840号公報 国際公開第2008/023044号
しかしながら、本発明者が、上記特許文献記載の条件に基づき、チオエーテル化反応について検討を行なったところ、モンテルカスト遊離酸と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルとを反応させると、化学式(7)
Figure 2015010049
(式中、Rはアルキル基とする。)
で示される1−(((1(R)−(3−(2(E)−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル)フェニル)−3−(2−(1−プロペニル)フェニル)プロピル)チオ)メチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステル(以下、メチルスチレン体とも言う。)が多く副生することが分かった。そして、当該不純物が加水分解されて生成する、化学式(8)
Figure 2015010049
で示される1−(((1(R)−(3−(2(E)−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル)フェニル)−3−(2−(1−プロペニル)フェニル)プロピル)チオ)メチル)シクロプロパン酢酸は、一旦生成してしまうと精製等によって除去することが困難であり、高純度のモンテルカストナトリウムを得るためには、チオエーテル化工程において当該メチルスチレン体の生成を抑制する方法の開発が望まれた。
したがって、本発明の目的は、チオエーテル化工程においてメチルスチレン体の生成を抑制した、高純度のモンテルカストアルキルエステルを製造する方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を行なった。具体的には、上記のように、チオエーテル化反応においてメチルスチレン体が生成するのは、チオエーテル化反応で副生するメタンスルホン酸によって、三級アルコール部位の分子内脱水が起こるためと考え、当該副反応を抑制する方法について検討した。そこで、当該メタンスルホン酸を捕捉するために、チオエーテル化反応に用いられるn−ブチルリチウムや水酸化ナトリウム等の強塩基を過剰量使用したところ、メシレート体の脱離反応が起こり、化学式(9)
Figure 2015010049
で示される2−(2−(3(S)−(3−(2−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル)フェニル)アリル)フェニル)−2−プロパノール等の不純物が生成し、最終的に高純度のモンテルカストナトリウムが得られなかった。そこで、上記メタンスルホン酸を捕捉する方法についてさらに検討したところ、チオエーテル化反応において、反応系中に弱塩基性の有機化合物を特定量以上存在させることによって、驚くべきことに、上記のような脱離反応が起こることなく、当該副反応が抑制され、最終的にメチルスチレン体の含有量を低減された高純度のモンテルカストナトリウムが得られることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、前記メシレート体と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルとを、pKbが−40以上0以下である塩基の存在下でチオエーテル化反応させることにより、前記モンテルカストアルキルエステルを製造する方法において、前記反応における反応系中にpKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物を前記メシレート体1モルに対して1.0モル以上存在させることを特徴とする方法である。
また、本発明においては、前記ジオール体をpKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物の存在下でメシル化することによって得られる、前記メシレート体及びpKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物を含む反応液を、そのまま上記チオエーテル化反応に用いることができる。すなわち、もう一つの本発明は、前記ジオール体、メタンスルホン酸クロリド、及び、pKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物を混合して前記メシレート体及びpKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物を含む溶液を得るメシル化工程、当該溶液と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸エステルとpKbが−40以上0以下である塩基とを混合して前記モンテルカストアルキルエステルを含む溶液を得るチオエーテル化工程を含む前記モンテルカストアルキルエステルの製造方法において、前記チオエーテル化工程の反応系中にpKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物を前記メシレート体1モルに対して1.0モル以上存在させることを特徴とする方法である。このように、メシル化反応で得られた反応液を用い、連続してチオエーテル化反応を行なっても、本発明の効果は得られるものであり、効率的で好ましい。
本発明によれば、メシレート体と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルとを特定の強塩基存在下で反応させてモンテルカストアルキルエステルを製造する方法において、反応系中に特定の弱塩基性有機化合物をメシレート体1モルに対して1.0モル以上存在させることによって、不純物、特にメチルスチレン体の生成量が低減された、高純度のモンテルカストアルキルエステルを取得することができる。
本発明は、メシレート体と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルとを特定の強塩基存在下で反応させてモンテルカストアルキルエステルを製造する方法において、反応系中にpKbが1〜6である窒素含有有機化合物(以下、弱塩基性有機化合物とも言う。)を特定量存在させることを特徴とする方法である。
本発明で使用されるメシレート体は、特に制限されるものではなく、公知の方法で製造されたものを使用することができる。また、本発明では、当該メシレート体として、ジオール体とメタンスルホン酸クロリドとを反応させて得られたメシレート体を含む溶液をそのまま使用することが好ましい。すなわち、本発明では、ジオール体、メタンスルホン酸クロリド、及び、弱塩基性有機化合物を混合してメシレート体及び弱塩基性有機化合物含む溶液を得るメシル化工程に続いて、当該溶液と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルと強塩基とを混合してモンテルカストアルキルエステルを含む溶液を得るチオエーテル化工程を行なうことが好ましい態様である。そこで、以下に、当該メシル化工程及びチオエーテル化工程を順に説明する。
((メシル化工程))
本発明において、前記メシル化工程は、弱塩基性有機化合物の存在下にて、ジオール体とメタンスルホン酸クロリドとをメシル化反応させてメシレート体を得る工程である。
(ジオール体)
当該メシル化工程で使用されるジオール体は、公知の方法で製造されたものが特に制限なく使用される。当該ジオール体の形態は特に制限されず、結晶、アモルファス、またはこれらが混合した形態であってもよく、粉末、塊状物、または、これらが混合した形状であってもよく、溶媒和物であってもよい。また、当該メシル化工程において、メシル化反応の反応性を考慮すると、使用する化合物の水分量が制御されていることが好ましく、具体的には、水分量が1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。なお、水分量を当該範囲に制御することが好適であることは、下記のメタンスルホン酸クロリド、弱塩基性有機化合物及び反応溶媒においても該当する。
(メタンスルホン酸クロリド)
当該メシル化工程で使用されるメタンスルホン酸クロリドは、市販の試薬や工業品が特に制限されるものではなく使用される。当該メタンスルホン酸クロリドの使用量は、前記ジオール体1モルに対して1.0モル以上1.6モル以下であることが好ましく、1.1モル以上、1.4モル以下であることがより好ましい。
(pKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物(弱塩基性有機化合物))
当該メシル化工程では、ジオール体とメタンスルホン酸クロリドを反応させるのに、pKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物(弱塩基性有機化合物)が必要である。当該メシル化工程において、過剰の弱塩基性有機化合物を使用することによって、得られるメシレート体を含む反応溶液中に当該メシル化反応で消費されなかった弱塩基性有機化合物が存在することになり、当該余剰の弱塩基性有機化合物によって、次のチオエーテル化工程にて、本発明の効果を得ることができる。
当該メシル化工程において、当該弱塩基性有機化合物は、pKbが1以上6以下の窒素含有有機化合物であればよく、当該メシル化工程における反応性や、次のチオエーテル化工程で副生するメタンスルホン酸の捕捉能力、精製操作における除去の容易さ等を考慮すると、pKbが3以上6以下であることが好ましい。具体的には、第三級有機アミン及びピリジン誘導体が用いられ、反応性等を考慮すると、トリエチルアミンやN,N−ジイソプロピルエチルアミン等のトリアルキルアミン(pKb3〜6)、ピリジンや4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン誘導体(pKb3〜6)を用いることが好ましく、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを用いることが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、複数種を併せて用いることもでき、第三級有機アミンとピリジン誘導体を併用することもできる。また、当該メシル化工程における弱塩基性有機化合物の使用量は、メシレート体1モルに対して1モル以上15モル以下であれば良いが、次のチオエーテル化工程にて、反応系中に弱塩基性有機化合物を存在させることを考慮すると、2モル以上であることが好ましい。なお、当該メシル化工程において、弱塩基性有機化合物を過剰量使用せず、次のチオエーテル化工程において、反応系中に存在する弱塩基性有機化合物の量がメシレート体1モルに対して1.0モル以上となるように追加することもできる。
(反応溶媒)
当該メシル化工程では、反応溶媒を用いることが好ましい。当該反応溶媒は特に制限されず、ジオール体を溶解するものであればよく、具体的には、アセトニトリル、THF、DMF、DMA、トルエン、N−メチルピロリドンを用いることができ、次のチオエーテル化工程を考慮すると、THF、DMF、DMA、N−メチルピロリドンが好ましく、THFが特に好ましく用いられる。これらは単独でも、複数種を混合して使用することもできる。当該反応溶媒の使用量は、操作性や反応性を考慮すると、ジオール体1gに対して、0.5mL以上200mL以下であればよく、1mL以上100mL以下であることが好ましく、2mL以上50mL以下であることがより好ましい。
(メシル化工程の反応条件)
当該メシル化工程において、弱塩基性有機化合物の存在下にて、ジオール体とメタンスルホン酸クロリドとを反応させる方法は特に限定されず、ジオール体、メタンスルホン酸クロリド、弱塩基性有機化合物、及び、必要に応じて反応溶媒を混合すればよく、その際の方法や順序も特に限定されない。具体的には、ジオール体、弱塩基性有機化合物を反応溶媒に溶解させた後、メタンスルホン酸クロリドを加える方法が好ましい。また、当該メシル化工程において、反応の温度は、−50℃以上20℃以下であればよく、−40℃以上10℃以下であることが好ましく、−30℃以上0℃以下であることがより好ましい。当該温度範囲とすることによって、不純物の副生が抑制され、効率的に反応を行なうことができる。また、反応の時間は、通常、2時間以上24時間以下である。
本発明において、当該メシル化工程で得られたメシレート体及び弱塩基性有機化合物を含む反応液は、そのまま次のチオエーテル化反応に用いることができる。なお、当該メシル化工程では、メシル化反応で副生する酸と弱塩基性有機化合物によって副生するアミン塩やピリジン塩等が反応液中に析出するが、これらの塩については、そのまま次の工程に用いてもよく、除去してもよい。当該塩は、デカンテーションやろ過等一般的な方法によって除去することができる。
((チオエーテル化工程))
チオエーテル化工程とは、本発明であるところの、反応系中に特定量の弱塩基性有機化合物を存在させて、メシレート体と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルとを特定の強塩基存在下で反応させてモンテルカストアルキルエステルを製造する方法を行なうものであり、前記メシル化工程で得られたメシレート体を含む溶液をそのまま使用することができる。
(メシレート体)
本発明で使用されるメシレート体は、前記の通り、特に制限されるものではなく、公知の方法で製造されたものを使用することができる。当該メシレート体の形態は特に制限されず、固体として単離されたものであってもよく、任意の溶媒との溶液やスラリーの状態であってもよく、前記メシル化工程で得られたメシレート体を含む溶液をそのまま使用することが好ましい。固体の場合は、結晶、アモルファス、または、これらが混合した形態であってもよく、粉末、塊状物、または、これらが混合した形態であってもよく、溶媒和物であってもよい。また、当該チオエーテル化反応に使用する溶媒を含む湿体であってもよく、反応に影響を及ぼさない範囲でその他の溶媒を含んでいてもよい。
(1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステル)
本発明で使用される1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルは、メシレート体をチオエーテル化してモンテルカストアルキルエステルを得るために用いられるものであり、特に制限されるものではないが、メシレート体との反応性や、得られたモンテルカストアルキルエステルからモンテルカストナトリウムを製造する工程における反応性等を考慮すると、当該アルキルエステルのアルキル基が、炭素数が1〜5であることが好ましく、直鎖状であることが好ましく、特にメチル基またはエチル基であることが好ましい。また、当該1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルの形態は特に制限されず、メシレート体と同様に、当該チオエーテル化反応に使用する溶媒を含む湿体であってもよく、反応に影響を及ぼさない範囲でその他の溶媒を含んでいてもよい。本発明において、当該1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸エステルの使用量は、メシレート体1モルに対して1.0モル以上1.5モル以下であればよく、1.1モル以上1.3モル以下であることが好ましい。
(pKbが−40以上0以下である塩基(強塩基))
本発明で使用されるpKbが−40以上0以下である塩基(以下、強塩基とも言う。)は、メシレート体と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルとをチオエーテル化反応させるために必要とされる。なお、本発明において、pKbの値は25℃におけるものとする。当該強塩基は、pKbの値が−40以上0以下であれば、当該チオエーテル化反応が十分に進行するため、特に制限されるものではないが、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物(pKb−2〜0)、ナトリウムメトキシド、リチウムメトキシド、t−ブトキシナトリウム、t−ブトキシカリウム等の金属アルコキシド(pKb−3〜−1.5)、メチルリチウム、ブチルリチウム等のアルキルリチウム(pKb−39〜−34)、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化金属(pKb−21)、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド等の金属アミド(pKb−23〜−22)等が挙げられ、なかでも、t−ブトキシナトリウム、t−ブトキシカリウムが好ましく、特にt−ブトキシカリウムが好ましい。本発明において、当該強塩基の使用量は、メシレート体1モルに対して1.0モル以上であればよく、上記脱離反応による不純物生成を考慮すると、メシレート体1モルに対して1.0モル以上1.3モル以下であることが好ましい。なお、本発明において、メシレート体として、メシル化工程で得られたメシレート体を含む溶液を用いる場合において、メシル化反応で副生したアミン塩及び/又はピリジン塩を除去していない場合は、当該アミン塩によって当該チオエーテル化反応の反応性が低下するため、当該強塩基の使用量を、メシレート体1モルに対して、2.1〜2.4モルとすることが好ましい。
(pKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物(弱塩基性有機化合物))
本発明では、当該チオエーテル化工程における反応系中に、前記強塩基の他に、pKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物(弱塩基性有機化合物)をメシレート体1モルに対して1.0モル以上存在させることが特徴である。当該量の弱塩基性有機化合物を存在させることによって、特に前記メチルスチレン体の生成が抑制され、不純物量が低減されたモンテルカストアルキルエステルを取得することができる。
本発明において、当該弱塩基性有機化合物は、前記メシル化工程と同様に、pKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物であればよく、副生するメタンスルホン酸の捕捉能力、精製操作における除去の容易さ等を考慮すると、pKbが3以上6以下であることが好ましい。具体的には、前記メシル化工程に例示した化合物が同様に用いられる。当該弱塩基性有機化合物を用いることによって、当該チオエーテル化反応を阻害することなく、副生したメタンスルホン酸が捕捉され、不純物であるメチルスチレン体の含有量を低減させることができる。なお、前記メシレート体として、メシル化工程で得られたメシレート体を含む溶液を用いる場合で、前記メシル化工程で弱塩基性有機化合物を過剰量使用しなかった場合は、当該チオエーテル化工程において、反応系中に存在する弱塩基性有機化合物の量がメシレート体1モルに対して1.0モル以上となるように追加しなければならない。チオエーテル化工程にて、弱塩基性有機化合物を追加する場合には、前記メシル化工程で使用した化合物と同じ化合物を用いてもよいし、異なる化合物を用いてもよく、複数種を併用することもできる。
(反応溶媒)
本発明において、メシレート体と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルとを反応させる際には、反応溶媒を用いることが好ましい。当該反応溶媒は特に制限されるものではなく、メシレート体を溶解させるものであればよい。具体的には、THF、DMF、DMA、N−メチルピロリドン、炭酸ジメチルが挙げられ、なかでも、THFを用いることが好ましい。これらは単独でも、複数種を混合して使用することもできる。また、当該チオエーテル化工程において使用する溶媒量は、操作性や反応性を考慮すると、メシレート体1gに対して、1mL以上200mL以下であればよく、当該反応の反応性や効率を考慮すると、3mL以上100mL以下とすることが好ましく、5mL以上50mL以下とすることがより好ましい。なお、本発明において、メシレート体として、メシル化工程で得られたメシレート体を含む溶液を用いる場合は、当該溶液に含まれる溶媒の種類や量を考慮して、当該反応溶媒の種類と量を適宜調整する必要がある。
(チオエーテル化工程の反応条件)
本発明で、メシレート体と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルとを特定の強塩基存在下で反応させる方法は特に制限されず、メシレート体、1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステル、強塩基、弱塩基性有機化合物、及び、必要に応じて反応溶媒を混合すればよく、その際の方法や順序も特に制限されないが、反応開始時に反応系中に弱塩基性有機化合物が存在していることが好ましい。具体的には、例えば、前記メシル化工程で得られたメシレート体を含む溶液と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルとを混合し、必要に応じて弱塩基性有機化合物を追加してから、強塩基を添加する方法や、1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルと強塩基と反応溶媒とを予め混合し、必要に応じて弱塩基性有機化合物を追加し、次いでメシレート体を加える方法等が挙げられる。また、本発明において、反応の温度は、−30〜20℃であればよく、当該反応の反応性や効率を考慮すると、−20〜15℃とすることが好ましく、−10〜10℃とすることがより好ましい。また、反応の時間は、通常、4〜48時間である。
本発明で得られたモンテルカストアルキルエステルを含む溶液は、適宜後処理を行なうことにより、モンテルカストアルキルエステルを粗体あるいは結晶として得ることができるが、当該モンテルカストアルキルエステルは結晶性が良くないことから、溶液の状態で次の工程に供することが好ましい。すなわち、当該モンテルカストアルキルエステルは、公知の方法、例えば、加水分解してモンテルカスト遊離酸としてからナトリウム塩化することによって、モンテルカストナトリウムとすることができる。本発明で得られるモンテルカストアルキルエステルは、不純物であるメチルスチレン体の含有量が低減された、高純度のものであるため、当該モンテルカストアルキルエステルを用いることによって、非常に高純度のモンテルカストナトリウムを得ることができる。
((加水分解工程))
当該加水分解工程は、本発明で得られたモンテルカストアルキルエステルを加水分解してモンテルカスト遊離酸を得る工程である。モンテルカストアルキルエステルの加水分解の方法は特に制限されないが、具体的には、特許文献1に記載の方法、すなわち、THFとメタノールの混合溶媒中、モンテルカストアルキルエステルと水酸化ナトリウム水溶液とを混合する方法が挙げられる。また、当該モンテルカストアルキルエステルは、前記チオエーテル化工程で得られた溶液として、あるいは、粗体や結晶として用いることができ、前記チオエーテル化工程で得られた溶液をそのまま用いることが好ましい。
このようにして得られたモンテルカスト遊離酸は、そのままナトリウム塩化することもできるが、一旦アミン塩として精製した後で、中和し、再度モンテルカスト遊離酸とすることが好ましい。モンテルカスト遊離酸のアミン塩は、モンテルカスト遊離酸やモンテルカストナトリウムと比較して、精製が容易の為、最終的に得られるモンテルカストナトリウムを高純度化することができる。
モンテルカスト遊離酸をアミン塩化する方法は特に制限されないが、一般的には、モンテルカスト遊離酸と対応するアミンを反応させることによって、モンテルカスト遊離酸のアミン塩が得られる。当該アミン塩化で用いられるアミンの種類は特に制限されず、公知のものが用いられ、その使用量は、1.0当量以上、2.0当量以下であることが好ましい。また、反応溶媒として、酢酸エチルや酢酸ブチル等の酢酸エステル及びトルエンを使用することができるが、精製効果を考慮すると、酢酸エステルを用いることが好ましい。当該溶媒の使用量は、特に制限されず、モンテルカスト遊離酸のアミン塩の溶液を得られればよいが、操作性や回収率を考慮すると、モンテルカスト遊離酸1gに対して反応溶媒を1mL以上100mL以下にすることが好ましい。さらに、アミン塩化する際の反応温度は、特に制限されないが、0℃以上80℃以下であることが好ましい。反応後は、溶媒留去等の公知の方法で固液分離することによって、モンテルカスト遊離酸のアミン塩を固体として得ることができる。具体的には、反応液の温度を10℃以下に冷却することによって、モンテルカスト遊離酸のアミン塩の結晶を析出させ、ろ過や遠心分離等の方法で固液分離することによって、モンテルカスト遊離酸のアミン塩を結晶として取得することが好ましい。このようにして得られたモンテルカスト遊離酸のアミン塩の固体は、公知の方法、例えば、再結晶やリスラリー等によって1回以上精製されることによって、最終的に得られるモンテルカストナトリウムがより高純度となるため好ましい。
さらに、当該アミン塩を中和して、再度モンテルカスト遊離酸とする方法についても特に制限されないが、一般的には、当該アミン塩と酸とを反応させることによってモンテルカスト遊離酸とすることができる。当該中和で用いられる酸の種類や量は特に制限されず、酢酸やシュウ酸等の有機酸、塩化水素や硫酸等の無機酸を使用することができるが、有機酸を用いることが好ましい。また、反応溶媒として、メタノールやエタノール等のアルコール、酢酸エチルや酢酸ブチル等の酢酸エステル、ジクロロメタンやクロロホルム等のハロゲン系溶媒、トルエンやベンゼン等の芳香族炭化水素を使用することができ、当該溶媒の使用量は、特に制限されず、前記モンテルカスト遊離酸のアミン塩が溶解すればよいが、操作性や回収率を考慮すると、モンテルカスト遊離酸のアミン塩1gに対して、溶媒を1mL以上100mL以下用いることが好ましい。さらに、中和する際の反応温度は、特に制限されないが、0℃以上60℃以下であることが好ましい。反応後は、反応液の温度を30℃以下に冷却することにより、モンテルカスト遊離酸の結晶を析出させ、ろ過や遠心分離等の方法で固液分離することによって、モンテルカスト遊離酸を結晶として取得することができる。
((ナトリウム塩化工程))
当該ナトリウム塩化工程は、モンテルカスト遊離酸をナトリウム塩化してモンテルカストナトリウムを得る工程である。モンテルカスト遊離酸をナトリウム塩化する方法は特に制限されず、公知の方法、例えば、モンテルカスト遊離酸と、水酸化ナトリウムやナトリウムメトキシド等の塩基とを反応させることによって行なわれる。当該塩基の使用量は、モンテルカスト遊離酸1モルに対して1モルであればよい。また、当該ナトリウム塩化は溶媒中で行なうことが好ましく、当該溶媒の種類や使用量は特に限定されないが、メタノール等を、モンテルカスト遊離酸1gに対して10mL用いることが好ましい。また、当該反応の温度や時間も特に限定されず、20℃、1時間であればよい。反応後は、固液分離することによって、モンテルカストナトリウムの結晶またはアモルファスを得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
また、本実施例において、モンテルカストメチルエステル、モンテルカストジプロピルアミン塩、モンテルカストナトリウム及びメチルスチレン体の純度及び不純物量は、下記に従って測定した。
<純度及び不純物量の測定方法>
装置:高速液体クロマトグラフ装置(Waters Corporation製)
検出器:紫外吸光光度検出器(Waters Corporation製)
測定波長:238nm
カラム:ZORBAX SB−PHENYL、内径4.6mm、長さ50mm(Agilent Technologies, Inc.製)
カラム温度:30℃ 一定温度
サンプル温度:25℃ 一定温度
移動相A:蒸留水/トリフルオロ酢酸=1000/1.5
移動相B:アセトニトリル/トリフルオロ酢酸=1000/1.5
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を表1のように変えて濃度勾配制御する。
流速:1.2ml/分
測定時間:45分
上記条件において、モンテルカストメチルエステルは約12.9分、モンテルカスト遊離酸、モンテルカストジプロピルアミン塩、及び、モンテルカストナトリウムは約7.7分、メチルスチレン体は約19.9分にピークが確認される。以下の実施例、比較例において、上記化合物の純度または含有量は、上記条件で測定される全ピークの面積値の合計に対する各化合物のピークの面積値の割合である。
Figure 2015010049
実施例1
(メシル化工程)
窒素雰囲気下で、ジオール体5.0g(純度99.6%)にトルエン15ml、アセトニトリル40ml及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン2.1gを加えて撹拌混合して得られた液を−30℃に冷却した後、メタンスルホン酸クロリド1.4gとアセトニトリル5mlを混合した溶液を30分かけて滴下し、同温にて反応液を5時間撹拌した。析出した結晶を加圧濾過によって濾取し、アセトニトリル5ml及びヘキサン10mlで洗浄して、メシレート体の結晶5.1g(収率85.9%)を取得した。
(チオエーテル化工程)
窒素雰囲気下で、メシレート体の結晶5.0gに1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸メチルエステル1.5g、トリエチルアミン1.0g及びDMF50mlを加えて撹拌混合し、溶解させて得られた溶液を−10℃に冷却した後、t−ブトキシカリウム1.3gを30分かけて投入し、反応液を4℃に昇温して、同温にて16時間撹拌した。得られた反応液を20℃に昇温し、酢酸エチル50ml及び水100mlを添加し、有機層を分離し、溶媒を留去して、モンテルカストメチルエステルのオイル6.39g(モンテルカストメチルエステル純度80.6%、メチルスチレン体含有量1.03%)を得た。
実施例2
実施例1のチオエーテル化工程において、トリエチルアミン1.0gをN,N−ジイソプロピルエチルアミン1.1gに変更した以外は同様の操作を行ない、モンテルカストメチルエステルのオイル6.39g(モンテルカストメチルエステル純度80.6%、メチルスチレン体含有量0.92%)を得た。
実施例3
(メシル化工程)
窒素雰囲気下で、ジオール体5.0g(純度99.5%)にTHF15ml及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン2.1gを加えて撹拌混合し、得られた液を−10℃に冷却した後、メタンスルホン酸クロリド1.4gとTHF5mlとを混合した溶液を30分かけて滴下し、同温にて2時間撹拌した。得られた反応液をろ過して、固体を除去し、メシレート体のTHF溶液を取得した。
(チオエーテル化工程)
窒素雰囲気下で、メシレート体のTHF溶液に1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸メチルエステル1.8g、N,N−ジイソプロピルエチルアミン2.1g及びTHF30mlを加えて撹拌混合し、溶解させて得られた溶液を−10℃に冷却した後、t−ブトキシカリウム1.4gを30分かけて投入し、反応液を4℃に昇温して、同温にて16時間撹拌した。得られた反応液を20℃に昇温し、5%食塩水10mlを加えて反応を停止した。水層を分離し、5%食塩水10mlを用いて有機層を洗浄して、モンテルカストメチルエステルのTHF溶液(モンテルカストメチルエステル純度83.9%、メチルスチレン体含有量0.77%)を得た。
実施例4
(メシル化工程)
窒素雰囲気下で、ジオール体5.0g(純度99.5%)にTHF15ml及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン2.1gを加えて撹拌混合し、得られた液を−10℃に冷却した後、メタンスルホン酸クロリド1.4gとTHF5mlとを混合した溶液を30分かけて滴下し、同温にて2時間撹拌し、メシレート体のTHF溶液を取得した。
(チオエーテル化工程)
窒素雰囲気下で、メシレート体のTHF溶液に1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸メチルエステル1.8g、N,N−ジイソプロピルエチルアミン2.1g及びTHF30mlを加えて撹拌混合し、溶解させて得られた溶液を−10℃に冷却した後、t−ブトキシカリウム2.8gを30分かけて投入し、反応液を4℃に昇温して、同温にて16時間撹拌した。得られた反応液を20℃に昇温し、5%食塩水10mlを加えて反応を停止した。水層を分離し、5%食塩水10mlを用いて有機層を洗浄して、モンテルカストメチルエステルのTHF溶液(モンテルカストメチルエステル純度83.9%、メチルスチレン体含有量0.77%)を得た。
実施例5
実施例4のチオエーテル化工程において、N,N−ジイソプロピルエチルアミンの使用量を2.1gから0.7gに変更した以外は同様の操作を行ない、モンテルカストメチルエステルのTHF溶液(モンテルカストメチルエステル純度80.1%、メチルスチレン体含有量0.90%)を得た。
実施例6
実施例4のメシル化工程において、N,N−ジイソプロピルエチルアミンの使用量を2.1gから4.2gに変更し、チオエーテル化工程において、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを使用しない以外は同様の操作を行ない、モンテルカストメチルエステルのTHF溶液(モンテルカストメチルエステル純度82.6%、メチルスチレン体含有量0.58%)を得た。
実施例7
実施例6のメシル化工程において、N,N−ジイソプロピルエチルアミン4.2gをトリエチルアミン4.0gに変更した以外は同様の操作を行ない、モンテルカストメチルエステルのTHF溶液(モンテルカストメチルエステル純度80.1%、メチルスチレン体含有量0.91%)を得た。
実施例8
実施例6のメシル化工程において、N,N−ジイソプロピルエチルアミン4.2gをピリジン2.6gに変更した以外は同様の操作を行ない、モンテルカストメチルエステルのTHF溶液(モンテルカストメチルエステル純度81.1%、メチルスチレン体含有量0.84%)を得た。
実施例9
実施例6のチオエーテル化工程において、1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸メチルエステル1.5gを1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸エチルエステル1.6gに変更した以外は同様の操作を行ない、モンテルカストエチルエステルのTHF溶液(モンテルカストエチルエステル純度81.3%、メチルスチレン体含有量0.73%)を得た。
実施例10
実施例6のチオエーテル化工程において、t-ブトキシカリウム2.8gをt-ブトキシナトリウム2.6gに変更した以外は同様の操作を行ない、モンテルカストメチルエステルのTHF溶液(モンテルカストメチルエステル純度81.0%、メチルスチレン体含有量0.74%)を得た。
実施例11
実施例6のチオエーテル化工程において、t-ブトキシカリウム2.8gをナトリウムメトキシド1.4gに変更した以外は同様の操作を行ない、モンテルカストメチルエステルのTHF溶液(モンテルカストメチルエステル純度80.0%、メチルスチレン体含有量0.69%)を得た。
実施例12
窒素雰囲気下で、実施例3で得られたモンテルカストメチルエステルのTHF溶液にメタノール30ml及び10%水酸化ナトリウム水溶液10.3gを加え、25℃で6時間撹拌混合した。得られた反応液にトルエン30mlを加えて有機層を分離し、分離した有機層に0.5M酒石酸10.3gを加えてpHを4に調整し、溶媒を留去して有機層の液量を15mlとしてから、5℃で12時間撹拌した。析出した固体を濾取し、トルエン5mlで2回洗浄し、減圧乾燥することによって、モンテルカスト遊離酸の粗体5.1g(モンテルカスト遊離酸純度95.3%、メチルスチレン体含有率0.92%)を得た。
窒素雰囲気下で、モンテルカスト遊離酸の粗体5.0gに酢酸ブチル45mlを加えて撹拌混合し、得られた液に、ジプロピルアミン0.86gを酢酸ブチル5mlに溶解させた溶液を滴下した。固体が全て溶解したことを確認した後、1−(((1(R)−(3−(2(E)−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル)フェニル)−3−(2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル)プロピル)チオ)メチル)シクロプロパン酢酸ジプロピルアミン塩(以下、モンテルカストジプロピルアミン塩とも言う。)の種結晶5.0mgを加え、3時間撹拌した後、4℃に冷却し、同温で16時間撹拌し、−10℃に冷却し、同温で2時間撹拌した。析出した結晶を加圧濾過によって濾取し、酢酸ブチル5ml及びヘプタン10mlで洗浄し、減圧乾燥して、モンテルカストジプロピルアミン塩の結晶4.7g(モンテルカストジプロピルアミン塩純度99.7%、メチルスチレン体含有率0.03%)を得た(収率79.8%)。
モンテルカストジプロピルアミン塩の結晶3.0gにトルエン30ml及び水15mlを加えて撹拌混合し、得られた液に、酢酸0.30gを加え、30分間撹拌した後、水層を除去して得られた有機層を4℃に冷却し、析出した結晶を加圧濾過によって濾取し、減圧乾燥して、モンテルカスト遊離酸の結晶を得た。得られたモンテルカスト遊離酸の結晶にメタノール30mlを加えて撹拌混合した液に、水酸化ナトリウム0.15gを加え、1時間撹拌した後、溶媒を留去し、析出した結晶を加圧濾過によって濾取し、減圧乾燥して、モンテルカストナトリウム2.9g(モンテルカストナトリウム純度99.9%、メチルスチレン体含有率0.02%)を得た(収率93.2%)。
比較例1
実施例1のチオエーテル化工程において、トリエチルアミンを使用しない以外は同様の操作を行ない、モンテルカストメチルエステルのオイル6.28g(モンテルカストメチルエステル純度77.0%、メチルスチレン体含有量3.12%)を得た。
比較例2
実施例3のチオエーテル化工程において、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを使用しない以外は同様の操作を行ない、モンテルカストメチルエステルのTHF溶液(モンテルカストメチルエステル純度78.6%、メチルスチレン体含有量2.31%)を得た。
比較例3
比較例2で得られたモンテルカストメチルエステルのTHF溶液について、実施例12と同様の操作を行ない、モンテルカストナトリウム(モンテルカストナトリウム純度99.5%、メチルスチレン体含有率0.33%)を得た。
実施例1〜11では、チオエーテル化工程において、反応系中にメシレート体1モルに対して1.0モル以上の弱塩基性有機化合物が存在するようにして反応を行なったところ、不純物であるメチルスチレン体の生成が抑制され、純度が80%以上でメチルスチレン体の含有量が1%以下である高純度のモンテルカストメチルエステルが得られた。一方、比較例1〜2では、チオエーテル化工程において、反応系中存在する弱塩基性有機化合物がメシレート体1モルに対して1.0モル未満として反応を行なったところ、メチルスチレン体が多く生成し、高純度のモンテルカストメチルエステルを得ることができなかった。さらに、本発明で得られたモンテルカストメチルエステルのTHF溶液を用いてモンテルカストナトリウムを製造したところ、高純度でモンテルカストメチルスチレン体含有量の低いモンテルカストナトリウムが得られた。

Claims (3)

  1. 下記式(1)
    Figure 2015010049
    で示されるメシレート体と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルとをpKbが−40以上0以下である塩基の存在下に反応させることにより、下記式(2)
    Figure 2015010049
    (式中、Rはアルキル基とする。)
    で示されるモンテルカストアルキルエステルを製造する方法において、
    前記反応における反応系中にpKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物を前記メシレート体1モルに対して1.0モル以上存在させることを特徴とする方法。
  2. 下記式(3)
    Figure 2015010049
    で示されるジオール体、メタンスルホン酸クロリド、及び、pKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物を混合して下記式(1)
    Figure 2015010049
    で示されるメシレート体及びpKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物を含む溶液を得るメシル化工程、当該溶液と1−(メルカプトメチル)シクロプロパン酢酸アルキルエステルとpKbが−40以上0以下である塩基とを混合して下記式(2)
    Figure 2015010049
    (式中、Rはアルキル基とする。)
    で示されるモンテルカストアルキルエステルを含む溶液を得るチオエーテル化工程を含むことを特徴とする前記モンテルカストアルキルエステルを製造する方法において、
    前記チオエーテル化工程における反応系中にpKbが1以上6以下である窒素含有有機化合物を前記メシレート体1モルに対して1.0モル以上存在させることを特徴とする方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法で下記式(2)
    Figure 2015010049
    (式中、Rはアルキル基とする。)
    で示されるモンテルカストアルキルエステルを製造する工程、当該モンテルカストアルキルエステルを加水分解して下記式(4)
    Figure 2015010049
    で示されるモンテルカスト遊離酸を得る加水分解工程、当該モンテルカスト遊離酸をナトリウム塩化してモンテルカストナトリウムを得るナトリウム塩化工程を含むモンテルカストナトリウムの製造方法。
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