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JP2015090887A - 発光素子及び発光装置 - Google Patents

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Yoshifumi Tsutai
美史 傳井
誉史 阿部
Takashi Abe
誉史 阿部
佐藤 豊
Yutaka Sato
豊 佐藤
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Abstract

【課題】耐熱性を向上させることができ、かつ、小型化することができる発光素子及び発光装置を提供する。【解決手段】半導体発光チップ11に接着剤12により波長変換部材13が配設されている。波長変換部材13は、形成基材13Aに、蛍光体材料と、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体などのバインダ原料とを含む蛍光体膜原料を塗布し、常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより形成されたものである。接着剤12は、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体などを含む接着剤原料を常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものである。【選択図】図1

Description

本発明は、蛍光体材料を用いた発光素子及び発光装置に関する。
蛍光体を用いた発光装置としては、例えば、蛍光体をエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂に分散させて配置したものが知られている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。しかし、この発光装置では、LEDの高出力化やLEDの発熱に伴い、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂が劣化したり、変形、剥離したりして、高出力化を図ることが難しいという問題があった。その解決策として、エポキシ樹脂またはシリコーン樹脂に代えて、例えば、ガラスに蛍光体を分散させた発光装置が開発されている(例えば、特許文献3から特許文献5参照)。この発光装置によれば、分散媒に無機材料を用いることにより構造的な耐熱性を向上させることができる。
特許第3364229号公報 特許第3824917号公報 特開2009−91546号公報 特開2008−143978号公報 特開2008−115223号公報
しかしながら、一般的な低融点ガラスは、実質500℃以上で加熱しなければ蛍光体を分散させることができる程度に軟化させることは難しい(引用文献4実施例参照)。例えば、鉛などの重金属を加えることで低融点化することはできるものの、それらの元素が許容される用途は環境や人体への影響の観点から現在では極めて少ない。そのため、蛍光体によっては、熱の影響により性能が劣化してしまう場合があるという問題があった。
また、ガラスに蛍光体を分散させる場合には、母材となるガラスの強度を維持するために蛍光体の充填率を高くすることができず、LEDの高輝度化に伴い、必要以上に励起光が透過してしまうという問題が生じていた。この透過を抑制するには、蛍光体を分散させたガラスの厚みを厚くしなければならない。その結果、発光装置の薄型化を図ることができず、また、ガラスの厚みが増すことで光透過性が低下してしまい、更に、放熱が阻害されてしまうなどの問題もあった。
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、耐熱性を向上させることができ、かつ、小型化することができる発光素子及び発光装置を提供することを目的とする。
本発明の発光素子は、半導体発光チップに接着剤により波長変換部材が配設されたものであって、波長変換部材は、形成基材と、この形成基材の少なくとも一面に形成され、粒子状の蛍光体材料とバインダとを含む蛍光体膜とを有し、蛍光体膜は、形成基材の少なくとも一面に、蛍光体材料と、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、及び、アモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含むバインダ原料とを含む蛍光体膜原料を塗布し、常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより形成され、接着剤は、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体、ケイ酸化合物、リン酸化合物、加熱により少なくとも一部の炭素が脱離して無機結合となるケイ素樹脂からなる群のうちの少なくとも1種を含む接着剤原料を常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものである。
本発明の発光装置は、本発明の発光素子を備えたものである。
本発明によれば、波長変換部材に、主として無機材料よりなるバインダを用いるようにしたので、発光素子から発生する熱に対する耐熱性を向上させることができ、高出力化及び高輝度化を図ることができる。また、波長変換部材は、形成基材の少なくとも一面に、蛍光体材料と、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、及び、アモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含むバインダ原料とを含む蛍光体膜原料を塗布して形成するようにしたので、蛍光体膜における蛍光体材料の充填率を高くすることができ、蛍光体膜の厚みを薄くすることができる。よって、小型化することができると共に、放熱効率も向上させることができ、設計の自由度を高くすることができる。更に、蛍光体膜は、常温で反応又は500℃以下の温度で熱処理することにより得られるので、低温で形成することができ、蛍光体材料の特性劣化を抑制することができる。
加えて、接着剤に主成分の大半が無機材料もの又は少なくとも一部が無機結合の材料を用いるようにしたので、耐熱性をより向上させることができる。また、樹脂に比べて熱伝導性も向上させることができるので、波長変換部材において発生した熱を半導体発光チップの方に伝えることができ、半導体発光チップを介して放熱性を向上させることができる。更に、発光素子の周りを樹脂で封止しなくてもよいので、放熱性をより向上させることができる。よって、蛍光体材料の劣化を抑制することができる。
また、形成基材の厚みを0.05mm以上3mm以下とするようにすれば、形状を保持しつつ、より小型化することができる。
更に、形成基材をガラス、石英、サファイア又は多結晶アルミナにより構成するようにすれば、ガラスよりも熱伝導率が高いため放熱性を向上させることができ、耐熱温度も飛躍的に向上するため、劣化を抑制することができる。
加えて、蛍光体材料の一次粒子の平均粒径を1μm以上20μm以下とするようにすれば、又は、蛍光体膜の表面粗さを算術平均粗さRaで10μm以下とするようにすれば、又は、蛍光体膜の膜厚分布を±10%以内とするようにすれば、色むらを抑制し、均一化して、性能を安定化させることができる。
本発明の一実施の形態に係る発光素子の構成を表す図である。 図1の発光素子を用いた発光装置の構成を表す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る発光素子10の構成を表わすものである。この発光素子10は、例えば、半導体発光チップ11と、この半導体発光チップ11に対して接着剤12により配設された波長変換部材13とを備えている。半導体発光チップ11は、例えば、図示しないが、発光層を含む複数の半導体層を積層した構造を有し、一対の電極が配設されている。半導体発光チップ11としては、例えば、LEDチップが挙げられ、励起光として紫外光、青色光、又は緑色光を発するものが用いられる。中でも、半導体発光チップ11としては、青色光を発するものが好ましい。容易に白色を得ることができると共に、紫外光は周囲の部材を劣化させる等の影響があるのに対して、青色光はそのような影響が小さいからである。半導体発光チップ11は、発光層を上側にして配置するフェースアップ型のものでも、発光層を下側にして配置するフェースダウン型のものでもよい。
波長変換部材13は、例えば、半導体発光チップ11の発光面の上に接着剤12を介して直接配設されている。波長変換部材13は、例えば、形成基材13Aと、この形成基材13Aの少なくとも一面に形成された蛍光体膜13Bとを有している。なお、図1では、蛍光体膜13Bを形成基材13Aの表面又は裏面の一方に形成した場合について示したが、両面に形成するようにしてもよく、また、表面及び裏面に代えて、又は、表面及び裏面の少なくとも一方に加えて、側面に形成するようにしてもよい。波長変換部材13は、形成基材13Aを半導体発光チップ11の側として配設してもよく、また、蛍光体膜13Bを半導体発光チップ11の側として配設してもよい。
形成基材13Aは、例えば、ガラスや石英、サファイアなどの透光性を有するものにより構成することが好ましく、特に、サファイアにより構成するようにすれば、ガラスと同様に光学的に透明であり、かつ、ガラスと比較しても大幅に放熱性を向上させることができ、蛍光体材料の劣化を抑制することができるのでより好ましい。また、形成基材13Aは、高純度の多結晶アルミナにより構成するようにしてもよい。サファイアと比較して低コストであり、光吸収も少なく、更に熱伝導率はサファイアと同等であるからである。形成基材13Aの特性としては、例えば、400nmから800nmの波長域において光透過率が90%以上有していることが好ましい。また、形成基材13Aは、例えば、ガラス又はサファイアを用いた場合には、光を散乱させるためにすりガラス状に表面を荒らすようにしてもよい。多結晶アルミナを用いた場合には、内部の粒界により光が散乱されるため、特に表面に処理を施すこと無く散乱光を得ることが可能である。
形成基材13Aの厚みは、例えば、0.05mm以上3mm以下であることが好ましい。3mm以下とすることにより小型化することができ、かつ、3mmよりも厚いと必要以上に厚みが厚くなり、放熱性、光透過性も低下してしまうからである。また、0.05mmよりも薄いと、自己形状保持が難しくなり、印刷時に用いる固定治具の影響などにより平面度が維持できない可能性があるからである。形成基材13Aは、蛍光体膜13Bを形成する際に、このような厚みのものを用いて波長変換部材13を形成するようにしてもよいが、これよりも厚いものを用いて蛍光体膜13Bを形成したのち、研磨などにより形成基材13Aの厚みを薄くするようにしてもよい。但し、波長変換部材13の形状が大きく、形成基材13A自体が構造保持のための役割を担う場合には、形成基材13Aの厚みは3mmより厚くてもよい。なお、形成基材13Aは、どのような形でもよく、円形板状でも、四角板状でもよい。また、図1では平面状の場合を示したが、凹面状、凸面状、又は、電球形状でもよい。
蛍光体膜13Bは、例えば、粒子状の蛍光体材料と、この蛍光体材料を接着するバインダとを含んでおり、必要に応じて、フィラーを含んでいてもよい。蛍光体膜13Bの厚みは、例えば、10μm以上1mm以下であることが好ましく、20μm以上500μm以下であればより好ましい。薄すぎると蛍光体材料の量が少なくなり、色の調整が難しくなってしまい、厚すぎると光の散乱が増えすぎて光の吸収が顕著となり、外部に光が取り出しにくくなってしまうからである。蛍光体膜13Bの表面粗さ、すなわち、蛍光体膜13Bの形成基材13Aと反対側の表面の表面粗さは、算術平均粗さRaで10μm以下とすることが好ましく、また、蛍光体膜13Bの膜厚分布は、±10%以内とすることが好ましい。色むらを抑制し、均一化して、性能を安定化させることができるからである。蛍光体膜13Bの表面粗さ、又は、蛍光体膜13Bの膜厚分布は、例えば、蛍光体膜13Bを形成したのち、表面を研磨又は研削することにより調整することができる。
蛍光体材料は、例えば、蛍光体粒子を含んでおり、蛍光体粒子の表面に被覆層が形成されていてもよい。蛍光体粒子としては、例えば、BaMgAl1017:Eu、ZnS:Ag,Cl、BaAl:EuあるいはCaMgSi:Euなどの青色系蛍光体、ZnSiO:Mn、(Y,Gd)BO:Tb、ZnS:Cu,Al、(M1)SiO:Eu、(M1)(M2)S:Eu、(M3)Al12:Ce、SiAlON:Eu、CaSiAlON:Eu、(M1)SiN:Euあるいは(Ba,Sr,Mg)O・aAl:Mnなどの黄色または緑色系蛍光体、(M1)SiO:Euあるいは(M1)S:Euなどの黄色、橙色または赤色系蛍光体、(Y,Gd)BO:Eu,YS:Eu、(M1)Si:Eu、(M1)AlSiN:EuあるいはYPVO:Euなどの赤色系蛍光体が挙げられる。なお、上記化学式において、M1は、Ba,Ca,SrおよびMgからなる群のうちの少なくとも1つが含まれ、M2は、GaおよびAlのうちの少なくとも1つが含まれ、M3は、Y、Gd、LuおよびTeからなる群のうち少なくとも1つが含まれる。
中でも、波長変換部材13の耐熱性を考慮すると、蛍光体粒子は、(M3)Al12:Ce、SiAlON:Eu、CaSiAlON:Eu、(M1)SiN:Eu、(M1)Si:Eu、あるいは(M1)AlSiN:Euにより構成されることが好ましい。M1およびM3は上述した通りである。蛍光体粒子は、半導体発光チップ11の種類等に応じて選択される。蛍光体材料には、1種または2種以上の蛍光体粒子が用いられ、複数種を用いる場合には、混合して用いてもよく、また、複数層に分けて積層するようにしてもよい。
蛍光体粒子の被覆層は、例えば、希土類酸化物,酸化ジルコニウム,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化アルミニウム,イットリウム・アルミニウム・ガーネットなどのイットリウムとアルミニウムの複合酸化物,酸化マグネシウム,およびMgAlなどのアルミニウムとマグネシウムの複合酸化物からなる群のうちの少なくとも1種の金属酸化物を主成分として含んでいることが好ましい。耐水性および耐紫外光などの特性を向上させることができるからである。中でも、希土類酸化物又は酸化ジルコニウムが好ましい。希土類酸化物としては、イットリウム,ガドリニウム,セリウムおよびランタンからなる群のうちの少なくとも1種の元素を含むものより好ましく、また、酸化ジルコニウムを用いれば更に好ましい。より高い効果を得ることができ、また、コストを抑制することができるからである。
蛍光体材料の一次粒子の平均粒径は、例えば、1μm以上20μm以下とすることが好ましい。平均粒径を小さくすることにより、色むらを抑制して、均一化することができるからである。但し、小さくし過ぎると、蛍光体材料自体の光学特性が低下してしまう場合が多く、また、1μmよりも小さい粒子は二次凝集し、微小化の効果が失われてしまうことが多いため、1μm以上とすることが好ましい。
バインダは、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、及び、アモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含むバインダ原料を、常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものである。酸化ケイ素前駆体としては、例えば、ペルヒドロポリシラザン、エチルシリケート、メチルシリケートを主成分としたものが好ましく挙げられる。これらの酸化ケイ素前駆体は、常温あるいは熱処理における加水分解あるいは酸化により容易に二酸化ケイ素などの酸化ケイ素となり、バインダとして機能させることができるからである。なお、バインダとしては、酸化ケイ素前駆体が反応して完全に酸化ケイ素となっている必要はなく、未反応部分や不完全反応部分を含んでいてもよい。
また、ケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウムが好ましく挙げられる。ケイ酸化合物は、脱水状態のものを用いても、水和物を用いてもよい。シリカ又はアモルファスシリカとしては、例えば、ナノサイズの超微粒子粉末を用い、例えば、一次粒子径としての平均粒子径が5nm以上100nm以下の超微粒子粉末を用いることが好ましく、5nm以上50nm以下の超微粒子粉末を用いればより好ましい。これらケイ酸化合物、シリカ、又は、アモルファスシリカは、溶媒に溶解又は分散させて熱処理、乾燥させることにより固形化し、バインダとして機能させることができる。
バインダ原料の熱処理温度は、形成基材13A及び蛍光体材料への熱的影響を小さくするために500℃以下とすることが好ましく、熱的影響をより小さくする必要がある場合には300℃以下とすればより好ましく、200℃以下とすれば更に好ましい。また、バインダ原料を常温で反応させるようにすれば、熱的影響がないのでより好ましい。用いる形成基材13A及び蛍光体材料の耐熱特性に応じて、バインダ原料の種類を選択し、それによりバインダ原料を常温で反応させるのか、又は、何度で熱処理するのかを調節することが好ましい。また、熱処理の際の雰囲気は、蛍光体材料が熱により酸化して劣化しやすい場合には、窒素雰囲気などの非酸化雰囲気とすることが好ましい。
フィラーは、例えば、蛍光体材料の充填率を調整するためのものであり、透光性を有する無機材料よりなるものが好ましく、酸化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子、または、酸化ジルコニウム粒子などが挙げられる。より好ましくは酸化ケイ素粒子が好ましく、その形態は、結晶でもガラスでもよい。フィラーの平均粒子径は、例えば、蛍光体材料と同じ1μmから20μm程度が好ましい。
波長変換部材13は、形成基材13Aの少なくとも一面に、蛍光体材料と、バインダ原料とを含む蛍光体膜原料を塗布し、常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより形成されたものである。塗布の方法としては、例えば、印刷法、スプレー法、ディスペンサーによる描画法、又はインクジェット法が挙げられる。塗布は、必要な膜厚となるまで繰り返し行ってもよい。
例えば、印刷法を用いる場合であれば、1種又は2種以上の蛍光体材料と、バインダ原料と、希釈溶媒と、必要に応じてフィラーとを混合してペースト状の蛍光体膜原料とし、形成基材13Aの少なくとも一面に印刷法、例えば、スクリーン印刷により塗布する。印刷法、例えば、スクリーン印刷は、蛍光体膜13Bの面内の膜厚分布の均一性を高くすることができるので好ましい。また、例えば、スプレー法を用いる場合であれば、1種又は2種以上の蛍光体材料と、バインダ原料と、希釈溶媒と、必要に応じてフィラーとを混合してスラリー状の蛍光体膜原料とし、形成基材13Aの少なくとも一面にスプレーガンを用いて噴霧ガスと共に塗布する。スプレーの噴霧径、およびスプレーガンを一定の速度でトラバースさせながら均一に移動させることにより蛍光体膜13Bの面内の膜厚分布の均一性を高くすることができるので好ましい。
このようにして蛍光体膜原料を塗布した後、例えば、塗布した蛍光体膜原料を乾燥させて希釈溶媒を除去する。その際、必要に応じて500℃以下、より好ましくは300℃以下、更には200℃以下の範囲で加熱してもよい。これにより、バインダ原料が常温あるいは熱処理により反応し、又は、熱処理により固形化する。
なお、蛍光体膜13Bの面積が非常に小さい場合には、同一の形成基材13Aの面上に複数の蛍光体膜13Bを形成したのち、ダイシングなどにより切断するようにしてもよい。蛍光体膜13Bは、形成基材13Aの全面に形成してもよく、パターニングしてもよい。このように複数の波長変換部材13について一括で処理するようにすれば、低コスト化、短時間化、及び、効率化を図ることができるので好ましい。また、一部において蛍光体膜13Bの厚みにばらつきが生じても、ダイシングにより選別することができるので、品質の安定化を図ることができるので好ましい。更に、微細なパターンが必要な場合には、スクリーン印刷であれば、一枚の形成基材13Aに一度に大量のパターンを印刷することができるので好ましい。
接着剤12は、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体、ケイ酸化合物、リン酸化合物、及び、加熱により少なくとも一部の炭素が脱離して無機結合となるケイ素樹脂からなる群のうちの少なくとも1種を含む接着剤原料を常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものである。これらの材料は、透光性を有し、かつ、主成分の大半が無機材料又は少なくとも一部が無機結合の材料であるので、発光特性に与える影響が小さく、かつ、耐熱性に優れるので好ましい。
酸化ケイ素前駆体としては、例えば、ペルヒドロポリシラザン、エチルシリケート、メチルシリケートを主成分としたものが好ましく挙げられる。これらの酸化ケイ素前駆体は、常温あるいは熱処理における加水分解あるいは酸化により容易に二酸化ケイ素などの酸化ケイ素となり、接着剤12として機能させることができる。なお、接着剤12としては、酸化ケイ素前駆体が反応して完全に酸化ケイ素となっている必要はなく、未反応部分や不完全反応部分を含んでいてもよい。
ケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウムが好ましく挙げられる。ケイ酸化合物は、脱水状態のものを用いても、水和物を用いてもよい。リン酸化合物としては、例えば、リン酸アルミニウムが好ましく挙げられる。ケイ酸化合物及びリン酸化合物は、溶媒に溶解又は分散させて熱処理、乾燥させることにより固形化し、接着剤12として機能させることができる。加熱により少なくとも一部の炭素が脱離して無機結合となるケイ素樹脂としては、例えば、オルガノポリシロキサンが挙げられる。このようなケイ素樹脂は、加熱により有機基が離脱して有機成分が少なくなるので耐熱性が高く、また、接着剤12として機能させることができるものである。
接着剤原料の熱処理温度は、形成基材13A及び蛍光体材料への熱的影響を小さくするために500℃以下とすることが好ましく、熱的影響をより小さくする必要がある場合には300℃以下とすればより好ましく、200℃以下とすれば更に好ましい。また、接着剤原料を常温で反応させるようにすれば、熱的影響がないのでより好ましい。用いる形成基材13A及び蛍光体材料の耐熱特性に応じて、接着剤原料の種類を選択し、それにより接着剤原料を常温で反応させるのか、又は、何度で熱処理するのかを調節することが好ましい。また、熱処理の際の雰囲気は、蛍光体材料又は半導体発光チップ11が熱により酸化して劣化しやすい場合には、窒素雰囲気などの非酸化雰囲気とすることが好ましい。
なお、接着剤12を厚く形成したい場合や、接着剤原料の粘度を高めたい場合などには、接着剤原料にフィラーを加え、接着剤12がフィラーを含むようにしてもよい。フィラーとしては、例えば、透光性を有する無機材料よりなるものが好ましく、酸化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子、または、酸化ジルコニウム粒子などが挙げられる。
図2は、この蛍光素子10を用いた発光装置20の一構成例を表わすものである。この発光装置20は、基板21の上に発光素子10が搭載されている。発光素子10の周りには例えばリフレクタ枠22が形成されている。発光素子10の周りには、封止剤を配設しなくてもよい。樹脂の封止剤で覆う場合に比べて放熱性を向上させることができるからである。また、図示しないが、発光素子10の側部に封止剤を配置し、基板21上の回路を保護するようにしてもよい。更に、図示しないが、発光素子10の上面も覆うように封止剤を配置してもよい。外部からの水分や有害なガスが直接触れることによる影響を軽減することができるからである。
このように本実施の形態によれば、波長変換部材13に、主として無機材料よりなるバインダを用いるようにしたので、発光素子10から発生する熱に対する耐熱性を向上させることができ、高出力化及び高輝度化を図ることができる。また、波長変換部材13は、形成基材13Aの少なくとも一面に、蛍光体材料と、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、及び、アモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含むバインダ原料とを含む蛍光体膜原料を塗布して形成するようにしたので、蛍光体膜13Bにおける蛍光体材料の充填率を高くすることができ、蛍光体膜13Bの厚みを薄くすることができる。よって、小型化することができると共に、放熱効率も向上させることができ、設計の自由度を高くすることができる。更に、蛍光体膜13Bは、常温で反応又は500℃以下の温度で熱処理することにより得られるので、低温で形成することができ、蛍光体材料の特性劣化を抑制することができる。
加えて、接着剤12に、透光性が有り、かつ、主成分の大半が無機材料のもの又は少なくとも一部が無機結合の材料を用いるようにしたので、耐熱性をより向上させることができる。また、樹脂に比べて熱伝導性も向上させることができるので、波長変換部材13において発生した熱を半導体発光チップ11の方に伝えることができ、半導体発光チップ11を介して放熱性を向上させることができる。更に、発光素子10の周りを樹脂で封止しなくてもよいので、放熱性をより向上させることができる。よって、蛍光体材料の劣化を抑制することができる。
また、形成基材13Aの厚みを0.05mm以上3mm以下とするようにすれば、形状を保持しつつ、より小型化することができる。
更に、形成基材13Aをサファイア又は多結晶アルミナにより構成するようにすれば、ガラスよりも熱伝導率が高いため放熱性を向上させることができ、耐熱温度も飛躍的に向上するため、劣化を抑制することができる。
加えて、蛍光体材料の一次粒子の平均粒径を1μm以上20μm以下とするようにすれば、又は、蛍光体膜13Bの表面粗さを算術平均粗さRaで10μm以下とするようにすれば、又は、蛍光体膜13Bの膜厚分布を±10%以内とするようにすれば、色むらを抑制し、均一化して、性能を安定化させることができる。
(実施例1−1〜1−4)
接着剤原料として、エチルシリケート(実施例1−1)、リン酸アルミニウム(実施例1−2)、加熱により少なくとも一部の炭素が脱離して無機結合となるケイ素樹脂(オルガノポリシロキサン)(実施例1−3)、ケイ酸ナトリウム(実施例1−4)を用意し、2枚のガラス板の間に接着剤原料を塗布し、加熱処理することにより、2枚のガラス板を接着剤12により接着した。各接着剤原料には液状のものを用いた。いずれの実施例についても、2枚のガラス板を接着させることができた。そののち、各実施例について、100℃から300℃に加熱する耐熱試験を行った。その結果を表1に示す。表1において、○は剥離なしを表し、×は剥離を表す。
Figure 2015090887
表1に示したように、いずれについても良好な耐熱性が得られ、特に、実施例1−2のリン酸アルミニウム、実施例1−3の加熱により少なくとも一部の炭素が脱離して無機結合となるケイ素樹脂、及び、実施例1−4のケイ酸ナトリウムについて高い効果を得ることができた。すなわち、いずれも接着剤12として有効であることが分かった。
(実施例2−1〜2−4)
ガラス板とセラミック板とを接着剤12により接着したことを除き、他は実施例1−1〜1−4と同様にして耐熱性試験を行った。接着剤原料は、実施例2−1がエチルシリケート、実施例2−2がリン酸アルミニウム、実施例2−3が加熱により少なくとも一部の炭素が脱離して無機結合となるケイ素樹脂(オルガノポリシロキサン)、実施例2−4がケイ酸ナトリウムである。得られた結果を表2に示す。表2において、○は剥離なしを表し、×は剥離を表す。
Figure 2015090887
表2に示したように、いずれについても良好な耐熱性が得られ、特に、実施例2−3の加熱により少なくとも一部の炭素が脱離して無機結合となるケイ素樹脂、及び、実施例2−4のケイ酸ナトリウムについて高い効果を得ることができた。すなわち、いずれも接着剤12として有効であることが分かった。
(実施例3−1〜3−4)
接着剤原料に酸化ケイ素粒子のフィラーを添加したことを除き、他は実施例2−1〜2−4と同様にして耐熱性試験を行った。接着剤原料は、実施例3−1がエチルシリケート、実施例3−2がリン酸アルミニウム、実施例3−3が加熱により少なくとも一部の炭素が脱離して無機結合となるケイ素樹脂(オルガノポリシロキサン)、実施例3−4がケイ酸ナトリウムである。得られた結果を表3に示す。表3において、○は剥離なしを表し、×は剥離を表す。
Figure 2015090887
表3に示したように、実施例3−3の加熱により少なくとも一部の炭素が脱離して無機結合となるケイ素樹脂、及び、実施例3−4のケイ酸ナトリウムについて高い効果を得ることができた。すなわち、フィラーを添加しても良好な接着性を得られることが分かった。
(実施例4−1〜4−4の発光装置の作製)
まず、蛍光体材料と、バインダ原料と、フィラーと、希釈溶媒とを混合し、蛍光体膜原料を作製した。蛍光体材料としては、一次粒子の平均粒子径がそれぞれ15μm程度のYAl12:Ceよりなる蛍光体粒子とCaAlSiN:Euよりなる蛍光体粒子とを用いた。バインダ原料としては、実施例4−1ではエチルシリケート、実施例4−2ではペルヒドロポリシラザン、実施例4−3ではケイ酸ナトリウムの水和物、又は、実施例4−4ではシリカあるいはアモルファスシリカの超微粒子粉末を溶剤で懸濁化したものをそれぞれ用いた。フィラーとしては、平均粒子径が15μm程度の二酸化ケイ素粒子を用いた。希釈溶媒としては、テルピネオールを用いた。
次いで、厚みが1mmの透明なガラス板よりなる形成基材13Aの一面に、作製した蛍光体膜原料を印刷し、必要な厚みとなるように塗布した。そののち、150℃で乾燥させることにより、希釈溶媒を除去した。これにより、各実施例について、形成基材13Aの一面に、厚みが約80μmの蛍光体膜13Bが形成された波長変換部材13を得た。得られた蛍光体膜13Bの表面粗さを測定したところ、算術平均粗さRaは10μm以下であった。蛍光体膜13Bの膜厚分布についても測定したところ、±10%以内であった。
得られた各波長変換部材13と、別途用意した半導体発光チップ11とを、接着剤12により接着し、図1に示したような発光素子10をそれぞれ作製した。接着剤原料としては、各実施例について、それぞれ、エチルシリケート、リン酸アルミニウム、加熱により少なくとも一部の炭素が脱離して無機結合となるケイ素樹脂(オルガノポリシロキサン)、又は、ケイ酸ナトリウム(実施例1−4)を用い、接着材原料を半導体発光チップ11と波長変換部材13との間に塗布したのち、加熱することにより接着した。また、半導体発光チップ11には、青色LEDチップを用い、白色を発光する発光素子10とした。
各実施例の発光素子10について、通電を行い、発光試験を行った結果、いずれについても良好な白色の発光が得られた。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、発光素子10及び発光装置20の構造について具体的に説明したが、他の構造を有するように構成してもよい。また、上記実施の形態では、波長変換部材13について具体的に説明したが、さらに他の構成要素を備えていてもよい。
更に、上記実施の形態では、形成基材13Aの少なくとも一面に、1種又は2種以上の蛍光体材料を含む蛍光体膜13Bを形成した波長変換部材13について説明したが、2種の蛍光体材料を混合して用いるのではなく、形成基材13Aの少なくとも一面に、異なる蛍光体材料を含む蛍光体膜13Bを積層して形成するようにしてもよく、また、形成基材13Aの両面に、異なる蛍光体材料を含む蛍光体膜13Bを形成するようにしてもよい。
加えて、上記実施の形態では、発光素子10として、LEDを用いる場合について説明したが、レーザー発光ダイオードなどの他の半導体発光素子を用いるようにしてもよい。特に、本発明によれば、高出力化を図ることができるので、高出力を必要とする用途、例えば、レーザープロジェクタ、LEDヘッドライト、又は、レーザーヘッドライトに好ましく用いることができる。
LEDチップやレーザー発光ダイオードチップなどの半導体発光チップを用いた発光素子及び発光装置に用いることができる。
10…発光素子、11…半導体発光チップ、12…接着剤、13…波長変換部材、13A…形成基材、13B…蛍光体膜、20…発光装置、21…基板、22…リフレクタ枠

Claims (8)

  1. 半導体発光チップに接着剤により波長変換部材が配設された発光素子であって、
    前記波長変換部材は、形成基材と、この形成基材の少なくとも一面に形成され、粒子状の蛍光体材料とバインダとを含む蛍光体膜とを有し、
    前記蛍光体膜は、前記形成基材の少なくとも一面に、前記蛍光体材料と、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体、ケイ酸化合物、シリカ、及び、アモルファスシリカからなる群のうちの少なくとも1種を含むバインダ原料とを含む蛍光体膜原料を塗布し、常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより形成され、
    前記接着剤は、加水分解あるいは酸化により酸化ケイ素となる酸化ケイ素前駆体、ケイ酸化合物、リン酸化合物、及び、加熱により少なくとも一部の炭素が脱離して無機結合となるケイ素樹脂からなる群のうちの少なくとも1種を含む接着剤原料を常温で反応させるか、又は、500℃以下の温度で熱処理することにより得られたものである
    ことを特徴とする発光素子。
  2. 前記蛍光体膜蛍光体膜原料は、前記形成基材の少なくとも一面に、印刷法又はスプレー塗布法により塗布されたことを特徴とする請求項1記載の発光素子。
  3. 前記形成基材の厚みは、0.05mm以上3mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の発光素子。
  4. 前記形成基材は、ガラス、石英、サファイア又は多結晶アルミナにより構成されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1に記載の発光素子。
  5. 前記蛍光体材料の一次粒子の平均粒径は、1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1に記載の発光素子。
  6. 前記蛍光体膜の表面粗さは、算術平均粗さRaで10μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1に記載の発光素子。
  7. 前記蛍光体膜の膜厚分布は、±10%以内であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1に記載の発光素子。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか1に記載の発光素子を備えたことを特徴とする発光装置。
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