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JP2015059067A - 焼結体及びその製造方法 - Google Patents

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JP2015059067A JP2013194329A JP2013194329A JP2015059067A JP 2015059067 A JP2015059067 A JP 2015059067A JP 2013194329 A JP2013194329 A JP 2013194329A JP 2013194329 A JP2013194329 A JP 2013194329A JP 2015059067 A JP2015059067 A JP 2015059067A
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Shintaro Hayashi
慎太郎 林
高橋 健太郎
Kentaro Takahashi
健太郎 高橋
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Abstract

【課題】フッ素系、塩素系等のハロゲン系腐食性ガスあるいはこれらのプラズマに対して優れた耐食性を有するとともに、高い導電性及び高い耐熱衝撃性を有する焼結体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の焼結体は、酸化イットリウム及び繊維状炭素を含有してなる焼結体であって、この繊維状炭素は複数本凝集されて凝集体とされ、この凝集体の平均粒子径は1μm以下であり、相対密度は上記の焼結体の理論密度の95%以上かつ97%未満であり、表面粗さRaは1μm以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、焼結体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、フッ素系、塩素系等のハロゲン系腐食性ガスあるいはこれらのプラズマを用いる半導体製造装置に用いて好適な焼結体及びその製造方法に関するものである。
従来、IC、LSI、VLSI等の半導体装置、あるいは液晶ディスプレイ等の製造ラインに用いられるエッチング装置、スパッタリング装置、CVD装置等の真空プロセス装置の構成材料として用いられる部材、例えば、フッ素、塩素等のハロゲン系腐食性ガスまたはこれらのプラズマに曝されるという厳しい条件下にて用いられる部材としては、セラミックス部材が広く用いられている。
このようなセラミックス部材としては、例えば、静電チャック、クランプリング、フォーカスリング、エッチング電極等を挙げることができる。
これらのセラミックス部材を構成する材料としては、フッ素、塩素等のハロゲン系腐食性ガスまたはこれらのプラズマに対して良好な耐食性を示すセラミックス材料があり、従来より、周期律表第3族元素を含むセラミックスからなる焼結体、例えば、酸化イットリウムまたはイットリウム−アルミニウム複合酸化物と、繊維状炭素とを含有してなる焼結体が提案されている(特許文献1参照)。
特開2009−184881号公報
ところで、従来の周期律表第3族元素を含む焼結体では、従来から半導体製造装置、例えばプラズマプロセス装置やエッチング装置等に使用されているアルミナや酸化ケイ素と比べて機械的強度が低く、装置内にて放電等により損傷したり、あるいはプラズマ入熱による熱衝撃により破損したり等により、パーティクルが発生する要因になるという問題点があった。
したがって、周期律表第3族元素を含む焼結体を半導体製造装置に適用する場合、使用する装置や使用範囲が限定されてしまい、汎用性に欠けるという問題点があった。
また、プラズマプロセス装置やエッチング装置等に使用される場合、例えば、ハロゲン系腐食性ガスまたはこれらのプラズマを用いる工程に適用される部材については、エッチング電極、フォーカスリング、シャワープレートのように耐食性に加えて導電性が要求されるものがある。しかしながら、周期律表第3族元素を含む焼結体は、絶縁性を有するものであるから、上記のような耐食性及び導電性が要求される部材については、適用することが難しいという問題点があった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、フッ素系、塩素系等のハロゲン系腐食性ガスあるいはこれらのプラズマに対して優れた耐食性を有するとともに、高い導電性及び高い耐熱衝撃性を有する焼結体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、酸化イットリウム及び繊維状炭素を含有してなる焼結体について、この繊維状炭素を複数本凝集して凝集体とし、この凝集体の平均粒子径を1μm以下とし、相対密度を該焼結体の理論密度の95%以上かつ97%未満とし、表面粗さRaを1μm以下とすれば、フッ素系、塩素系等のハロゲン系腐食性ガスあるいはこれらのプラズマに対して優れた耐食性を有することはもちろんのこと、導電性に優れ、耐熱衝撃性にも優れていることを知見し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明の焼結体は、酸化イットリウム及び繊維状炭素を含有してなる焼結体であって、前記繊維状炭素は複数本凝集されて凝集体とされ、この凝集体の平均粒子径は1μm以下であり、相対密度は前記焼結体の理論密度の95%以上かつ97%未満であり、表面粗さRaは1μm以下であることを特徴とする。
本発明の焼結体では、体積固有抵抗は、0.01Ω・cm以上かつ1000Ω・cm以下であることが好ましい。
4点曲げ強度は、120MPa以上であることが好ましい。
前記繊維状炭素は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ及びカーボンファイバーの群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
本発明の焼結体の製造方法は、酸化イットリウムを溶媒中に分散してなる酸化イットリウムスラリーと繊維状炭素を溶媒中に分散してなる繊維状炭素スラリーとを混合して混合スラリーとする工程と、前記混合スラリーを乾燥または乾燥・造粒して乾燥物または造粒物とする工程と、前記乾燥物または造粒物を、1460℃以上かつ1600℃未満の温度の下、かつ1MPa以上かつ20MPa以下の圧力下にて焼成し、酸化イットリウム及び繊維状炭素を含有してなる焼結体とする工程と、を有することを特徴とする。
本発明の焼結体の製造方法では、前記繊維状炭素スラリーにおける前記繊維状炭素の分散粒径は200nm以下であることが好ましい。
本発明の焼結体によれば、この焼結体中の繊維状炭素を複数本凝集して凝集体とし、この凝集体の平均粒子径を1μm以下とし、この焼結体の相対密度を、この焼結体の理論密度の95%以上かつ97%未満とし、さらに、表面粗さRaを1μm以下としたので、フッ素系、塩素系等のハロゲン系腐食性ガスあるいはこれらのプラズマに対して優れた耐食性を有する上に、耐熱衝撃性をも有し、さらには高い導電性をも有することができる。したがって、エッチング電極、フォーカスリング、シャワープレートのような耐食性に加えて導電性が要求される部材についても適用することができる。
本発明の焼結体の製造方法によれば、酸化イットリウムを溶媒中に分散してなる酸化イットリウムスラリーと繊維状炭素を溶媒中に分散してなる繊維状炭素スラリーとを混合して混合スラリーとする工程と、前記混合スラリーを乾燥または乾燥・造粒して乾燥物または造粒物とする工程と、前記乾燥物または造粒物を、1460℃以上かつ1600℃未満の温度の下、かつ1MPa以上かつ20MPa以下の圧力下にて焼成し、酸化イットリウム及び繊維状炭素を含有してなる焼結体とする工程と、を有するので、フッ素系、塩素系等のハロゲン系腐食性ガスあるいはこれらのプラズマに対して優れた耐食性を有し、耐熱衝撃性をも有し、さらには高い導電性をも有する焼結体を作製することができる。
本発明の焼結体及びその製造方法を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
[焼結体]
本発明の一実施形態の焼結体は、酸化イットリウム(Y)及び繊維状炭素を含有してなる焼結体であり、この焼結体の相対密度は、この焼結体の理論密度の95%以上かつ97%未満であり、この焼結体の表面粗さRaは1μm以下である。
この焼結体では、ハロゲン系プラズマに対して特に耐食性の高い酸化イットリウム(Y)粒子が三次元に配置されてマトリックスを構成している。一方、繊維状炭素は、酸化イットリウム(Y)粒子の粒界部分に三次元に分散している。
ここで、「繊維状炭素が三次元に分散している」とは、繊維状炭素が特定の配向性を示すことなく、酸化イットリウム粒子同士の粒界部分に分散している状態を示している。すなわち、この焼結体から一定体積の試料を採取し、この試料中に含まれる全ての繊維状炭素のそれぞれの方向の平均値を算出した場合、その平均値は零になるということである。
この酸化イットリウム(Y)粒子の平均粒子径は、0.1μm以上かつ10μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以上かつ5μm以下である。
ここで、酸化イットリウム(Y)粒子の平均粒子径が0.1μm未満では、焼結体の内部での酸化イットリウム(Y)粒子間の粒界の全体量が増加することから、この焼結体に導電性を発現させるためには粒界中に存在する繊維状炭素の添加量を増加させる必要があるが、この繊維状炭素の添加量の増加は耐食性を低下させる虞があるので好ましくない。
一方、平均粒子径が10μmを超えると、酸化イットリウム(Y)粒子が大きくなりすぎてしまい、酸化イットリウム(Y)粒子間の粒界の全体量が減少することとなり、その結果、この少ない粒界中に繊維状炭素が偏在することから焼結体中の導電性に偏りが生じ、プラズマプロセス装置やエッチング装置等に適用した場合に異常放電等の問題が生じるので好ましくない。また、平均粒子径が10μmを超えた場合、相対的に酸化イットリウム(Y)粒子の表面積が減少し、よって、焼結する際の駆動力である表面エネルギーが減少し、高密度の焼結体を得るのが難しくなるので、好ましくない。
この焼結体では、酸化イットリウム(Y)粒子からなるマトリックスの粒界部分に、繊維状炭素が単体として、あるいは、複数の繊維状炭素が凝集した凝集体として存在している。
この繊維状炭素は、直径が200nm以下、長さが20μm以下の、単層カーボンナノチューブ(SCNT)、二層カーボンナノチューブ(DCNT)、多層カーボンナノチューブ(MCNT)及びカーボンファイバー(CF)の群から選択される1種または2種以上が好適に用いられる。
また、凝集体の場合、その平均粒子径は1μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下である。
この凝集体の平均粒子径が1μmより大きいと、ハロゲン系プラズマを用いたプラズマプロセス装置やエッチング装置等の半導体製造装置に使用される場合に、凝集体の部分がプラズマにより選択的に消失し易くなり、よって、耐食性が低下し、さらには導電性の低下、パーティクルの発生を生じさせるので、半導体製造装置用部材として好ましくない。
また、この凝集体の平均粒子径が1μmより大きくなった場合、高温での加圧により焼結体を生成する際に、この凝集体が焼結を阻害する要因となり、特に低圧による焼成時に得られる焼結体の密度が向上せず、体積固有抵抗も十分に低下しないので好ましくない。
さらに、この凝集体の平均粒子径が1μmより大きいと、粒界に導電パスを形成することが難しくなり、焼結体に所望の導電性を発現させるためには大量の繊維状炭素が必要となるので好ましくない。
この焼結体の相対密度は、この焼結体の理論密度の95%以上かつ97%未満が好ましく、より好ましくは理論密度の96%以上かつ97%以下である。
ここで、相対密度が理論密度の95%未満では、焼結体の内部の気孔が独立して存在することなく、隣接する気孔同士が互いに繋がる開気孔構造となり、この焼結体をプラズマに晒した場合にプラズマが気孔内に入り込み、この気孔を端緒として焼結体にマイクロクラックや割れ等が生じ易くなり、耐食性が低下するので好ましくない。
また、気孔の影響により焼結体の表面粗さが粗くなり、よって、表面精度が高い加工ができなくなるので好ましくない。
一方、相対密度が理論密度の97%以上では、焼結体の耐食性は優れるものの、熱衝撃に対して弱くなり、よって、耐熱衝撃性が低下するので好ましくない。
この焼結体の表面粗さRa(=10点平均表面粗さ)は、1μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.8μm以下である。
ここで、表面粗さRaが1μmを超えると、焼結体に応力がかかった場合に、破壊の起点になる虞があるので好ましくない。
この焼結体の体積固有抵抗は、0.01Ω・cm以上かつ1000Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1Ω・cm以上かつ100Ω・cm以下、さらに好ましくは1Ω・cm以上かつ30Ω・cm以下である。
ここで、この焼結体の体積固有抵抗が0.01Ω・cm未満では、焼結体の導電性が高くなりすぎてしまい、プラズマプロセス装置やエッチング装置等に適用した場合に異常放電等の問題が生じるので好ましくない。
一方、この焼結体の体積固有抵抗が1000Ω・cmを超えると、焼結体の導電性が低くなりすぎて、この焼結体中の導電性に偏りが生じ、プラズマプロセス装置やエッチング装置等に適用した場合に異常放電等の問題が生じるので好ましくない。
この焼結体の体積固有抵抗を0.01Ω・cm以上かつ1000Ω・cm以下の範囲にするには、繊維状炭素を、酸化イットリウム(Y)粒子間の粒界に存在させることが重要である。
このように、繊維状炭素が酸化イットリウム(Y)粒子間の粒界に存在している場合の繊維状炭素の含有率は、酸化イットリウム(Y)及び繊維状炭素の合計体積に対して0.5体積%以上かつ5体積%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5体積%以上かつ2体積%以下である。
なお、繊維状炭素の含有率が0.5体積%未満では、繊維状炭素の含有量が少なくなりすぎてしまい、繊維状炭素の存在する位置が局所的になり、その結果、焼結体中の導電性に偏りが生じ、プラズマプロセス装置やエッチング装置等に適用した場合に異常放電等の問題が生じるので好ましくない。
一方、繊維状炭素の含有率が5体積%を超えると、繊維状炭素の含有量が多くなりすぎてしまい、その結果、繊維状炭素が凝集し易くなり、耐食性も低下してしまうので好ましくない。
この焼結体の4点曲げ強度は、120MPa以上であることが好ましく、より好ましくは140MPa以上、さらに好ましくは150MPa以上である。
ここで、4点曲げ強度が120MPa未満では、焼結体の熱衝撃耐性が低くなりすぎてしまい、その結果、小さい温度差でも破損の虞があるので好ましくない。
[焼結体の製造方法]
本実施形態の焼結体の製造方法は、酸化イットリウムを溶媒中に分散してなる酸化イットリウムスラリーと繊維状炭素を溶媒中に分散してなる繊維状炭素スラリーとを混合して混合スラリーとする工程と、この混合スラリーを乾燥または乾燥・造粒して乾燥物または造粒物とする工程と、この乾燥物または造粒物を、1460℃以上かつ1590℃の温度の下、かつ1MPa以上かつ20MPa以下の圧力下にて焼成し、酸化イットリウム及び繊維状炭素を含有してなる焼結体とする工程と、を有する。
以下、本実施形態の焼結体の製造方法について詳細に説明する。
「混合工程」
酸化イットリウムを溶媒中に分散してなる酸化イットリウムスラリーと、繊維状炭素を溶媒中に分散してなる繊維状炭素スラリーとを混合して混合スラリーとする工程である。
(酸化イットリウムスラリー)
酸化イットリウム粒子を溶媒中に分散してなるスラリーであり、酸化イットリウム粒子のスラリー中の含有率は、酸化イットリウム粒子が均一に分散していればよく、特に限定しないが、好ましくは30質量%以上かつ70質量%以下である。
この酸化イットリウムスラリーは、酸化イットリウム粒子を所定量、溶媒に投入し、必要に応じて分散剤を所定量投入し、攪拌機、湿式ボールミル等を用いて酸化イットリウム粒子を溶媒に均一に分散させることにより作製することができる。
(繊維状炭素スラリー)
繊維状炭素を溶媒中に分散してなるスラリーであり、繊維状炭素が均一に分散している必要があることから、繊維状炭素のスラリー中の含有率は0.5質量%以上かつ1.5質量%以下が好ましい。
ここで、繊維状炭素のスラリー中の含有率が0.5質量%未満では、繊維状炭素の量が少なすぎてしまい、酸化イットリウム粒子に対して所定量の繊維状炭素を確保するためには、大量の繊維状炭素スラリーが必要となり、また、酸化イットリウム粒子に対して所定量の繊維状炭素を添加、調製することが困難になり、製造効率及び製造コストの点から好ましくない。
一方、繊維状炭素のスラリー中の含有率が1.5質量%を超えると、スラリーの粘度が極端に高くなり、繊維状炭素の均一分散が困難になるので好ましくない。
この繊維状炭素スラリー中の繊維状炭素の分散粒径(平均二次粒子径)は、200nm以下であることが好ましく、170nm以下であることがより好ましい。
ここで、繊維状炭素の分散粒径が200nmを超えると、上記の酸化イットリウムスラリーと混合、あるいは混合・乾燥した際に、繊維状炭素が凝集して粗大な凝集体となり、その結果、生成した焼結体中の繊維状炭素が粗大になり、耐食性が低下するので好ましくない。
この繊維状炭素スラリーは、繊維状炭素を所定量、溶媒に投入し、必要に応じて分散剤やバインダーを所定量投入し、高速ホモジナイザー、超音波分散機、湿式ジェットミル等の分散機を用いて繊維状炭素を溶媒に均一に分散させることにより作製することができる。
ここで、繊維状炭素は凝集力が強いので、溶媒に投入した段階で、機械的な応力を加えて解こうを行う必要がある。この場合、高速ホモジナイザー、超音波分散機、湿式ジェットミル等を用いて、繊維状炭素に機械的応力を加えればよい。
上記の各スラリーに用いられる溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;が好適に用いられる。
また、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の環状炭化水素;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン類;も好適に用いられる。
これらの水及び溶媒のうち1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記の各スラリーに用いられる分散剤やバインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリカルボン酸塩、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の有機高分子を用いることができる。
上記の酸化イットリウムスラリーと繊維状炭素スラリーとを、混合して混合スラリーとする。
この場合、繊維状炭素スラリーの凝集を防止するためには、混合と同時に機械的応力を加えることのできる混合装置が好ましく、例えば、高速ホモジナイザー、超音波分散機、湿式ジェットミル等が好適である。
「乾燥または造粒工程」
上記の混合スラリーを乾燥または乾燥・造粒して乾燥物または造粒物とする工程である。
乾燥・造粒する装置としては、スプレードライヤー等の噴霧乾燥機が好適に用いられる。
この乾燥または造粒工程により、上記の混合スラリーは、乾燥物、あるいは平均粒子径が100μm以下、好ましくは70μm以下の乾燥した顆粒となる。
「焼成工程」
上記の乾燥物または造粒物を、非酸化性雰囲気中、高温高圧下にて焼成する工程である。
非酸化性雰囲気としては、窒素ガス(N)、アルゴン(Ar)等の不活性ガス雰囲気が好ましいが、上記の乾燥物または造粒物の酸化を極力抑えたい場合には、窒素ガス(N)に水素ガス(H)を数体積%添加した還元性ガス雰囲気等が好適である。
焼成温度としては、1460℃以上かつ1600℃未満の範囲が好ましく、より好ましくは1550℃以上かつ1600℃未満の範囲である。
焼成圧力としては、1MPa以上かつ20MPa以下が好ましく、より好ましくは10MPa以上かつ20MPa以下である。
ここで、圧力が1MPa未満では、得られた焼結体の相対密度が95%より低くなり、耐食性が低下するので好ましくない。また、導電性が低下し、半導体製造装置用部材としての使用が制限されるので好ましくない。導電性が低下する理由は、酸化イットリウム粒子の焼結が進むにつれて繊維状炭素の再配列により一部で凝集が生じ、その結果、繊維状炭素の三次元的な配列が失われるからである。
一方、圧力が20MPaを超えると、得られた焼結体の相対密度及び導電性共に問題は生じないが、加圧焼成装置の加圧能力を超える虞があり、その結果、焼結体の加圧焼成装置を設計する際に、加圧面積に制限が生じる。
焼成時間は、焼成温度及び焼成圧力に依存するので一概にはいえないが、概ね2時間以上かつ6時間以下である。
この焼成工程により、上記の乾燥物または造粒物は、酸化イットリウム及び繊維状炭素を含有してなる焼結体となる。
以上説明したように、本実施形態の焼結体によれば、酸化イットリウム及び繊維状炭素を含有してなる焼結体の相対密度を、この焼結体の理論密度の95%以上かつ97%未満とし、さらに、表面粗さRaを1μm以下としたので、フッ素系、塩素系等のハロゲン系腐食性ガスあるいはこれらのプラズマに対して優れた耐食性を有する上に、耐熱衝撃性をも有し、さらには高い導電性をも有することができる。したがって、エッチング電極、フォーカスリング、シャワープレートのような耐食性に加えて導電性が要求される部材についても適用することができる。
この焼結体は、含まれる繊維状炭素が高アスペクト比であることから、この繊維状炭素の含有量を少量に抑えることができ、よって、酸化イットリウム単体とほぼ同等のハロゲン系プラズマに対する耐食性を有することができる。
また、相対密度を、この焼結体の理論密度の95%以上かつ97%未満としたので、この焼結体の表面粗さRaが1μm以下となるように精密に表面加工することができる。
また、急激に150℃の温度差を加えるような熱サイクル試験を行った場合においても、120MPa以上の強度を有し、かつ熱衝撃耐性が高い。したがって、プラズマプロセス用部材として十分使用に耐えることができる。
さらに、この焼結体は、半導体製造装置用の部材として、現行の絶縁性部材で導電性が求められる部材への置き換えや、急激な加熱、冷却が求められる部材への適用が可能である。
本実施形態の焼結体の製造方法によれば、酸化イットリウムを溶媒中に分散してなる酸化イットリウムスラリーと繊維状炭素を溶媒中に分散してなる繊維状炭素スラリーとを混合して混合スラリーとする際に、繊維状炭素が混合スラリー中にて再凝集することを抑止することができる。したがって、後工程である乾燥または造粒工程にて、繊維状炭素が再凝集することを抑止することができる。
また、上記の混合スラリーを乾燥または乾燥・造粒して乾燥物または造粒物とする工程と、この乾燥物または造粒物を、1460℃以上かつ1600℃未満の温度の下、かつ1MPa以上かつ20MPa以下の圧力下にて焼成する工程とを有するので、焼成の際に1MPa以上の加圧を同時に行うことにより、酸化イットリウム粒子の粒成長を抑止しつつ焼結体の密度を向上させることができる。また、繊維状炭素が形成する導電パスの切断を行わずに、得られた焼結体の導電性を0.01Ω・cm以上かつ1000Ω・cm以下に制御することができる。
以上により、繊維状炭素が、1μm以上の粗大な凝集物を形成することなく、酸化イットリウム粒子の粒界中に三次元的に分散した導電パスを形成してなる焼結体を作製することができ、その結果、フッ素系、塩素系等のハロゲン系腐食性ガスあるいはこれらのプラズマに対して優れた耐食性を有し、耐熱衝撃性をも有し、さらには高い導電性をも有する焼結体を作製することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
直径5〜15nm、長さ1〜2μmの多層カーボンナノチューブ(MCNT)を純水中に、含有率が1.0質量%となるように加え、さらに分散剤を添加し、回転二枚刃式ホモジナイザー装置を用いて解こう前処理を行った。次いで、湿式ジェットミルを用いて分散処理を行い、多層カーボンナノチューブ(MCNT)スラリーを得た。このMCNTスラリー中のMCNTの分散粒径(平均二次粒子径)は170nmであった。
一方、平均粒子径が3μmの酸化イットリウム(Y)粉体を純水中に、含有率が40質量%となるように加え、さらに分散剤を添加し、撹拌機を用いて攪拌を行い、酸化イットリウム(Y)スラリーを得た。
次いで、上記のMCNTスラリーとYスラリーとを、MCNTの体積百分率が2.0体積%となるように調製して混合し、さらに攪拌機を用いて攪拌し、混合スラリーを得た。
次いで、この混合スラリーを噴霧乾燥法により乾燥、造粒し、MCNTを2.0体積%含有するY−MCNT顆粒(Y−MCNT複合粒子)を得た。このY−MCNT顆粒の粒子径は30μm以上かつ100μm以下の範囲であった。
次いで、このY−MCNT顆粒を窒素ガス(N)雰囲気中にて脱脂処理し、次いで、アルゴン(Ar)雰囲気下、1550℃にて圧力10MPa下で加圧焼成を行い、実施例1のY−MCNT焼結体を得た。
この実施例1のY−MCNT焼結体について、相対密度、体積固有抵抗、表面粗さRa及びMCNTの凝集径を測定した。
測定方法は、次のとおりである。
(1)相対密度
−MCNT焼結体から直径48mm、厚み4mmの円板状の試験片を切りだし、この試験片の真密度(d)をアルキメデス法により測定し、この真密度(d)のY−MCNT焼結体の理論密度(d)に対する比(d/d)を百分率で表した。
(2)体積固有抵抗
−MCNT焼結体から直径48mm、厚み4mmの円板状の試験片を切りだし、この試験片の体積固有抵抗を、抵抗率計 ロレスタGP(三菱化学アナリテック社製)を用いて四端子法により測定した。ここでは、測定電圧を90Vとした。
(3)表面粗さRa
−MCNT焼結体の表面粗さを、接触式表面粗さ計を用いて測定した。
(4)MCNT凝集体の平均粒子径
−MCNT焼結体の破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、50000倍の倍率にて観察し、この破断面に存在するMCNT凝集体のうち12個の直径(粒子径)をそれぞれ測定し、これらの測定値から凝集体の平均粒子径を算出した。
(5)4点曲げ強度
−MCNT焼結体から縦4mm、横3mm、高さ36mmの柱状の試験片を切りだし、万能試験機 5500型(インストロン社製)を用いて、上記の試験片の室温20℃における4点曲げ強度を測定した。また、上記の試験片を120℃に加熱したものを20℃の水中に落下して急冷させた試験片、及び上記の試験片を170℃に加熱したものを20℃の水中に落下して急冷させた試験片、それぞれについても4点曲げ強度を測定し、熱衝撃耐性を評価した。
(6)消耗レート
−MCNT焼結体に、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)を体積比1:1にて混合した混合ガスと、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)を体積比1:1にて混合した混合ガスとを、それぞれ流量2mL/minにて流動させた各混合ガス中にて、プラズマを3時間暴露し、この焼結体の表面における消耗レート(nm/hr)を測定した。
以上の測定による結果、この焼結体の相対密度は96.1%、体積固有抵抗は1.2Ω・cm、表面粗さRaは0.42μm、MCNT凝集体の平均粒子径は0.5μm、4点曲げ強度は、20℃のものが145.2MPa、120℃に加熱したものが140.8MPa、170℃に加熱したものが141.2MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では104.2nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では61.5nm/hrであった。
[実施例2]
MCNTスラリーとYスラリーとを、MCNTの体積百分率が0.5体積%となるように調製して混合した他は、実施例1に準じて、実施例2のY−MCNT焼結体を作製し評価した。
その結果、この焼結体の相対密度は96.9%、体積固有抵抗は923.2Ω・cm、表面粗さRaは0.21μm、MCNT凝集体の平均粒子径は0.3μm、4点曲げ強度は、20℃のものが128.1MPa、120℃に加熱したものが127.4MPa、170℃に加熱したものが120.5MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では89.2nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では54.6nm/hrであった。
[実施例3]
MCNTスラリーとYスラリーとを、MCNTの体積百分率が5.0体積%となるように調製して混合した他は、実施例1に準じて、実施例3のY−MCNT焼結体を作製し評価した。
その結果、この焼結体の相対密度は95.5%、体積固有抵抗は0.014Ω・cm、表面粗さRaは0.75μm、MCNT凝集体の平均粒子径は0.9μm、4点曲げ強度は、20℃のものが152.6MPa、120℃に加熱したものが151.7MPa、170℃に加熱したものが149.8MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では129.8nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では64.8nm/hrであった。
[実施例4]
加圧焼成の条件を、10MPaから1MPaに変更した他は、実施例1に準じて、実施例4のY−MCNT焼結体を作製し評価した。
その結果、この焼結体の相対密度は95.0%、体積固有抵抗は582.4Ω・cm、表面粗さRaは0.94μm、MCNT凝集体の平均粒子径は0.6μm、4点曲げ強度は、20℃のものが158.6MPa、120℃に加熱したものが155.4MPa、170℃に加熱したものが153.9MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では121.5nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では64.2nm/hrであった。
[実施例5]
加圧焼成の条件を、10MPaから20MPaに変更した他は、実施例1に準じて、実施例5のY−MCNT焼結体を作製し評価した。
その結果、この焼結体の相対密度は96.8%、体積固有抵抗は0.5Ω・cm、表面粗さRaは0.31μm、MCNT凝集体の平均粒子径は0.4μm、4点曲げ強度は、20℃のものが155.2MPa、120℃に加熱したものが151.2MPa、170℃に加熱したものが150.4MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では99.8nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では59.2nm/hrであった。
[実施例6]
MCNTの替わりに、直径150nm、長さ20μmのカーボンファイバー(CF)を用いて、このカーボンファイバー(CF)の含有率が1.0質量%のCFスラリーを得、このCFスラリーとYスラリーとを、カーボンファイバー(CF)の体積百分率が2.0体積%となるように調製して混合した他は、実施例1に準じて、実施例2のY−CF焼結体を作製し評価した。
その結果、この焼結体の相対密度は95.0%、体積固有抵抗は20.5Ω・cm、表面粗さRaは0.81μm、CF凝集体の平均粒子径は0.8μm、4点曲げ強度は、20℃のものが156.8MPa、120℃に加熱したものが155.1MPa、170℃に加熱したものが151.5MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では106.1nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では60.8nm/hrであった。
[比較例1]
加圧焼成の条件を、1550℃から1450℃に変更した他は、実施例1に準じて、比較例1のY−MCNT焼結体を作製し評価した。
その結果、この焼結体の相対密度は94.8%、体積固有抵抗は3.2Ω・cm、表面粗さRaは1.15μm、MCNT凝集体の平均粒子径は0.5μm、4点曲げ強度は、20℃のものが140.5MPa、120℃に加熱したものが138.2MPa、170℃に加熱したものが135.6MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では195.5nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では102.4nm/hrであった。
以上により、比較例1の焼結体は、実施例1〜6の焼結体と比べて、焼結体内の残留気孔の影響により表面粗さが粗くなり、消耗レートも増加していた。
[比較例2]
加圧焼成の条件を、1550℃から1600℃に変更した他は、実施例1に準じて、比較例2のY−MCNT焼結体を作製し評価した。
その結果、この焼結体の相対密度は97.0%、体積固有抵抗は0.9Ω・cm、表面粗さRaは0.31μm、MCNT凝集体の平均粒子径は0.5μm、4点曲げ強度は、20℃のものが147.2MPa、120℃に加熱したものが130.1MPa、170℃に加熱したものが110.5MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では91.1nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では56.2nm/hrであった。
以上により、比較例2の焼結体は、実施例1〜6の焼結体と比べて、急冷の温度差が大きくなると、4点曲げ強度が低下することが分かった。
[比較例3]
加圧焼成の条件を、1550℃から1800℃に変更した他は、実施例1に準じて、比較例3のY−MCNT焼結体を作製し評価した。
その結果、この焼結体の相対密度は99.8%、体積固有抵抗は0.7Ω・cm、表面粗さRaは0.24μm、MCNT凝集体の平均粒子径は0.5μm、4点曲げ強度は、20℃のものが150.2MPa、120℃に加熱したものが114.9MPa、170℃に加熱したものが21.6MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では85.6nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では51.4nm/hrであった。
以上により、比較例3の焼結体は、実施例1〜6の焼結体と比べて、急冷の温度差が大きくなると、4点曲げ強度が急激に低下することが分かった。
[比較例4]
MCNTスラリー中のMCNTの分散粒径(平均二次粒子径)を、170nmから240nmに変更した他は、実施例1に準じて、比較例4のY−MCNT焼結体を作製し評価した。
その結果、この焼結体の相対密度は96.8%、体積固有抵抗は5.2Ω・cm、表面粗さRaは0.62μm、MCNT凝集体の平均粒子径は1.1μm、4点曲げ強度は、20℃のものが130.2MPa、120℃に加熱したものが110.5MPa、170℃に加熱したものが58.2MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では110.5nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では64.2nm/hrであった。
以上により、比較例4の焼結体は、実施例1〜6の焼結体と比べて、MCNT凝集体近傍を起因とする欠陥により、4点曲げ強度が急激に低下することが分かった。
[比較例5]
加圧焼成の条件を、10MPaから0.5MPaに変更した他は、実施例1に準じて、比較例5のY−MCNT焼結体を作製し評価した。
その結果、この焼結体の相対密度は93.8%、体積固有抵抗は1215.6Ω・cm、表面粗さRaは1.25μm、MCNT凝集体の平均粒子径は0.6μm、4点曲げ強度は、20℃のものが142.6MPa、120℃に加熱したものが140.8MPa、170℃に加熱したものが138.2MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では150.8nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では81.9nm/hrであった。
以上により、比較例5の焼結体は、実施例1〜6の焼結体と比べて、焼結体内の残留気孔の影響により表面粗さが粗くなり、消耗レートも増加していた。
[比較例6]
加圧焼成の条件を、10MPaから25MPaに変更した他は、実施例1に準じて、比較例6のY−MCNT焼結体を作製し評価した。
その結果、この焼結体の相対密度は97.5%、体積固有抵抗は0.4Ω・cm、表面粗さRaは0.26μm、MCNT凝集体の平均粒子径は0.4μm、4点曲げ強度は、20℃のものが156.7MPa、120℃に加熱したものが142.3MPa、170℃に加熱したものが108.8MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では98.8nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では58.8nm/hrであった。
以上により、比較例6の焼結体は、実施例1〜6の焼結体と比べて、急冷の温度差が大きくなると、4点曲げ強度が低下することが分かった。
[比較例7]
MCNTスラリーとYスラリーとを、MCNTの体積百分率が10.0体積%となるように調製して混合した他は、実施例1に準じて、比較例7のY−MCNT焼結体を作製し評価した。
その結果、この焼結体の相対密度は93.9%、体積固有抵抗は0.008Ω・cm、表面粗さRaは1.02μm、MCNT凝集体の平均粒子径は1.8μm、4点曲げ強度は、20℃のものが132.8MPa、120℃に加熱したものが130.8MPa、170℃に加熱したものが128.9MPa、消耗レートは、六フッ化イオウ(SF)及び酸素(O)では146.2nm/hr、三塩化ホウ素(BCl)及び塩素(Cl)では89.2nm/hrであった。
以上により、比較例7の焼結体は、実施例1〜6の焼結体と比べて、MCNTの緻密化が阻害されることによる焼結体内の残留気孔の影響により、表面粗さが粗くなり、消耗レートも増加していた。

Claims (6)

  1. 酸化イットリウム及び繊維状炭素を含有してなる焼結体であって、
    前記繊維状炭素は複数本凝集されて凝集体とされ、この凝集体の平均粒子径は1μm以下であり、
    相対密度は前記焼結体の理論密度の95%以上かつ97%未満であり、表面粗さRaは1μm以下であることを特徴とする焼結体。
  2. 体積固有抵抗は、0.01Ω・cm以上かつ1000Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1記載の焼結体。
  3. 4点曲げ強度は、120MPa以上であることを特徴とする請求項1または2記載の焼結体。
  4. 前記繊維状炭素は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ及びカーボンファイバーの群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の焼結体。
  5. 酸化イットリウムを溶媒中に分散してなる酸化イットリウムスラリーと繊維状炭素を溶媒中に分散してなる繊維状炭素スラリーとを混合して混合スラリーとする工程と、
    前記混合スラリーを乾燥または乾燥・造粒して乾燥物または造粒物とする工程と、
    前記乾燥物または造粒物を、1460℃以上かつ1600℃未満の温度の下、かつ1MPa以上かつ20MPa以下の圧力下にて焼成し、酸化イットリウム及び繊維状炭素を含有してなる焼結体とする工程と、
    を有することを特徴とする焼結体の製造方法。
  6. 前記繊維状炭素スラリーにおける前記繊維状炭素の分散粒径は200nm以下であることを特徴とする請求項5記載の焼結体の製造方法。
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