JP2014532545A - スパイラル巻回膜エレメント及び透過液キャリア - Google Patents

Abstract

スパイラル巻回膜エレメント用の透過液キャリアは、例えばトリコット構成の２つ又は３つの層を有する。２つの外側の、又は唯一の層が透過液キャリアの透過液チャネル中への膜シートの移動に抵抗する。透過液キャリアシートの全厚は典型的なトリコット透過液キャリアシートの厚みと同様であり得る。透過液キャリアシートはその表面を親水性にするためにコートされ得る。コーティングは、例えば、架橋ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）又はポリビニルピロリドン（ＰＶＰ）であり得る。スパイラル巻回エレメントにおいて、透過液キャリアシートは１以上の層として中央管の周りに巻き付けられ得る。透過液キャリアシート内のチャネルは中央管の長手方向軸に対してスパイラル状に配向される。【選択図】 図６

Description

本明細書は、スパイラル巻回膜エレメント及びモジュール、並びにスパイラル巻回膜エレメント及びモジュールのための透過液キャリアに関する。

スパイラル巻回膜エレメントは、１以上の膜リーフとフィードスペーサーシートを有孔中央管の周りに巻き付けることにより作成される。これらのリーフは、２つのほぼ長方形の膜シートの間に配置された透過液キャリアシートを有する。これらの膜シートは３つの辺に沿って互いに密封される。リーフの４番目の辺は開放されており、中央管に突き当たる。また、透過液キャリアシートの１以上の層は、中央管の周りに巻き付けられて中央管の孔を覆って膜リーフを支持すると共にリーフの辺と中央管との間に流路を提供し得る。透過水ともいわれる生産水は膜シートを貫通した後透過液キャリアシートを通って流れて中央管に達する。

透過液キャリアシートはエポキシ又はメラミンをコートしたポリエステルフィラメントから織られたトリコット生地であり得る。このトリコット生地は多孔性であり、一連の平行なリッジを形成しており、これらのリッジは膜リーフがつぶれるのを防ぎ、生地の一方の側で溝により分離されている。これらの溝は中央管に対して垂直に配向されていて、透過水がリーフを通り中央管に向かって内方に流れるためのあまり遮断されてない通路を提供する。例えばフェルト若しくは別の不織布又はその他多孔性のシート材料製の別の補強用又は反バギング（anti-bagging）層を、膜シートとトリコット生地の間に配置して膜シートがトリコットの溝の中に押し込まれないようにしてもよい。

米国特許第６６５６３６２号は、高圧スパイラル巻回膜と共に使用し得る透過液キャリアシート及び補強用シートのための様々な大きさ及び材料を開示している。国際公開第０３／１０１５７５号は、流れに対して低い抵抗を有するように企画された透過液キャリア材料を開示している。米国特許第４８０２２９８号及び同第７０４８８５５号は、膜シートに直接接合される透過液キャリア材料を記載している。米国特許出願公開第２００４／０１９５１６４号は、中央管の周りに巻き付けられた透過液キャリアの１つの層の開口の百分率を乗じた中央管内の孔の総面積（ａ）が、中央管の内部断面積（ｂ）と少なくとも同程度であるスパイラル巻回膜エレメントを記載している。

米国特許第４８０２９８２号

以下に詳細に記載される透過液キャリアは２つ又は３つの層を含む。２つの外側の、又は唯一の層が透過液キャリア内の透過液チャネル中への膜シートの移動に抵抗する。透過液チャネルは中心層内、又は外側層の内部、又は両者に位置し得る。これらの層は全てトリコットシートから作成され得る。透過液チャネルは、これらチャネルが膜シートにより遮断されない程度に透過液流に対してより少ない抵抗を示す。また膜シートは、透過液チャネル中に伸び出ないので、より高い圧力に耐え得るか、又は蒙る損傷がより少ない。透過液キャリアシートの全厚は典型的な単一層トリコット透過液キャリアシートの厚みと同様であり得、例えば約０．０１０〜０．０１２インチであり得る。

以下に記載される透過液キャリアシートはその表面を親水性するためにコートされる。親水性コーティングは透過液チャネル内の水の流れを促進する。コーティングは、例えば架橋されたポリビニルアルコール（ＰＶＡ）、ポリビニルピロリドン（ＰＶＰ）又はその他の化学物質であり得る。

以下に記載される透過液キャリアシートは１以上の層として中央管の周りに巻き付けられる。透過液キャリアシート内のチャネルは中央管の長手方向軸に対してスパイラル状に配向される。チャネルのスパイラル状の配向は、膜リーフの開放縁部における透過液キャリアシート内のチャネルから、中央管内の孔までの、中央管の長さに沿った透過液流に対する抵抗を低減する。

透過液キャリアシートはスパイラル巻回膜エレメント又はモジュールとして使用し得る。透過液キャリアシート、又はそれらの特徴の任意の１以上を組み合わせて同じスパイラル巻回膜エレメント又はモジュールに使用し得る。

図１は、スパイラル巻回膜エレメントの一部を切り取った透視図である。 図２は、図１のエレメントを含むスパイラル巻回膜モジュールの一部を切り取った透視図である。 図３は、透過液キャリアシートの最上層の写真である。 図４は、透過液キャリアシートの中間層の写真である。 図５は、透過液キャリアシートの底層の写真である。 図６は、スパイラル巻回膜エレメントの中央管の周りに巻き付けられた透過液キャリアシートの側面図である。

図１及び２を参照して、スパイラル巻回膜エレメント１０は、１以上の膜リーフ１２及びフィードスペーサーシート１４を有孔中央管１６の周りに巻き付けることによって形成される。膜リーフ１２はエンベロープということもできる。フィードスペーサーシート１４はブラインチャネルスペーサーということもできる。中央管１６はコア、透過管又は生産水収集管ということもできる。リーフ１２は、透過液キャリアシート２０を包囲する２つのほぼ長方形の膜シート１８を含む。中央管１６に突き当たる膜リーフ１２の縁部は開放されているが、リーフ１２の他の３つの縁部は、例えば接着剤によって密封される。

膜シート１８は支持又は裏打ち層上にキャストされた分離層を有し得る。分離層は、例えば、酢酸セルロース、ポリアミド、薄膜複合材又はその他の分離膜に形成し得る材料であり得る。分離層は、例えば、逆浸透、ナノろ過又は限外ろ過範囲の細孔を有し得る。透過水ともいわれるろ過された生産水は膜シートを通過するが、溶解した塩若しくは懸濁した固体又はその他の汚染物質の通過は膜シート１８によりその細孔径に応じて排斥される。

透過液キャリア２０は膜リーフ１２の開放当接縁部を介して中央管１６内の複数の列の小さい孔２２と流体接触している。第１の膜リーフ１２が中央管１６に取り付けられる前に、膜リーフ１２内の透過液キャリア２０と同じ材料であってもなくてもよい追加の透過液キャリアシート（図には示してない）、又は第１の膜リーフ１２の透過液キャリア２０の延長部が、１以上の層内の中央管１６の周りに巻き付けられ得る。この最初に巻き付けられる透過液キャリア２０は孔２２を覆って膜リーフ１２を支持し、透過水を膜リーフ１２から中央管１６内の孔２２に伝導するための通路を提供する。孔２２は通例約０．１２５インチ（３．２ｍｍ）の直径を有しており、生産水を中央管１６の内部に伝導する。

各々のリーフ１２は、同様に中央管１６の周りに巻き付けられたフィードスペーサーシート１４により分離されている。フィードスペーサー１４はエレメント１０の両方の端部と流体接触しており、膜シート１８の表面を横切る供給溶液のための導管として作用する。供給流の方向は中央管１６の軸Ａと平行な入口端部２４から集中端部２６に向かう方向である。

図２を参照して、スパイラル巻回膜モジュール３０は圧力容器３２の内部に配置されたエレメント１０を有する。圧力容器３２はほぼ管状の本体３４、入口端部３６及び出口端部３８を有する。供給水は圧力容器３２の入口（図には示してない）を通って入る。供給水はエレメント１０のフィードスペーサー１４を通って進む。膜シート１８を通り抜けない保持液（retentate）又は排斥水（reject water）といってもよい供給水の一部分は排出管４２を通って圧力容器３２を出る。生産水、又は透過水は、中央管１６の内部に集められた後、通例中央管１６の第１の端部５２から第２の端部５４に向かう方向に進む。最後、又は唯一のエレメント１０の第２の端部５４は密封され得るか、圧力容器３２を出ることができるか、又は圧力容器を出る取付具に接続され得る。第１又は唯一のエレメント１０の第１の端部５２は密封され得るか、圧力容器３２を出ることができるか、又は圧力容器３２を出る取付具に接続され得る。圧力容器３２内に複数のエレメント１０がある場合、上流のエレメント１０の第２の端部５４は通例下流のエレメントの第１の端部５２に接続される。供給水は圧力容器内の複数のエレメント１０のフィードスペーサー１４を通って連続して流れる。周辺のシールをエレメント１０の外側のラップ（図には示してない）と圧力容器３２の内部との間に設けて、供給水がエレメント１０のフィードスペーサー１４を通過することなくエレメント１０を通り越して流れるのを防止し得る。

図３、４及び５は透過液キャリア２０の上層６０、中間層６２及び下層６４を示す。中間層６２は任意である。層６０、６２、６４の各々は織ったシートである。層６０、６２、６４はトリコット生地に織り上げたコートされたポリマー性のフィラメントから作成され得る。トリコット生地において、ヤーンはニットのカラムに沿って垂直にジグザグに伸び、結果として生地の畝面ともいわれる前面上に透過液チャネル６８を分離する一連の平行な隆起した畝６６を形成する。生地の進路面（course side）ということもできる裏面において、リブが隆起した畝６６に対して垂直に形成されるが、リブは隆起した畝６６と同様には鋭く画定されず、隆起した畝６６程高くない。

図３、４及び５において、上層６０及び下層６４は中間層６２より薄くてもよいが、３つの層６０、６２、６４は全て隆起した畝６６を有する。層６０、６２、６４は互いの上に配置されて透過液キャリア２０を形成する。上層６０及び下層６４は、それらの裏面が透過液キャリア２０の外側になるように透過液キャリア内で配向される。内部の層６２はその裏面を上層６０又は下層６４のいずれかに向けて配向され得る。全ての層６０、６２、６４の隆起した畝６６は、透過液キャリアの平面に対して垂直に透過液キャリア２０を通過する線が各々の層６０、６２、６４の隆起した畝６６を通過し得るように、互いの上に配置されるのが好ましい。

本発明者は、単一層トリコット透過液キャリア膜１８で、リーフ１２の隆起した畝に接触する面の垂れ下がり（sagging）又は凸状に浮き出し（embossing）が、特に高圧で作動する海水向け用途の場合、リーフ１２の他の面より多いことを観察した。中央管１６に向かって流れる透過液によって生じる圧力損失は隆起した畝の間の溝の高さの３乗と共に変化する。溝中への膜シート１８の垂れ下がりは透過液流により生じる圧力損失を増大させる。上層６０及び下層６４をそれらの進路面が膜シート１８支持するように配向することによって、垂れ下がり及び圧力損失が低減する。しかし、層６０、６２、６４は、それらの全厚が典型的な単一層透過液キャリアの厚み（例えば約０．０１０〜０．０１２インチ）とほぼ同じであり、また層６０、６２、６４内の溝６８の全体の深さが典型的な単一層透過液キャリア内の溝の深さとほぼ同じになるように編まれる。従って、本明細書に記載されている透過液キャリア２０は、隣接する膜シート１８が透過液チャネル６８中に垂れ下がるのに抵抗することによって、中央管１６に向かう透過液の流れに対する圧力損失を低減し得る。これにより、膜シート１８を通る正味の推進圧（ＮＤＰ）が上昇し、従って透過液のスループット、又は収集速度が上昇する。

透過液キャリア２０内のフィラメントはナイロン、ポリプロピレン又はポリエステルのような有機ポリマーで作成され得る。有機ポリマーで構築された透過液キャリアは通常水で濡れないので、水はその上で自発的に拡がることがない。本明細書に記載されている透過液キャリア２０は、これを親水性にして透過液チャネル６８内の水の流れを促進するためにコートされる。コーティングは適度な分子量の架橋ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）、ポリビニルピロリドン（ＰＶＰ）又は別の同様な化学物質であり得る。

図６を参照して、膜リーフ１２を中央管１６に取り付ける前に透過液キャリア材料７０のシートが中央管１６の周りに巻き付けられる。透過液キャリア材料７０は中央管を一回以上、例えば２〜４回取り巻き、初期ラップを形成し得る。リーフ１２から排出される透過液は初期ラップを通過して中央管の孔２２に到達する。

典型的な初期ラップで、透過液キャリアは中央管の周りに巻き付けられ、その隆起した畝は中央管の中心の長手方向軸に沿って１つの点の周りの円をたどる。しかし、トリコット生地は水流に対するその抵抗が異方性である。水は、生地の平面に対して垂直方向には容易に流れることができるが、生地の平面内の透過液チャネルに沿ってはあまり容易ではなく、また生地の平面内の畝に対して垂直方向にはさらに容易ではない。典型的な初期ラップにおいて、中央管に向かって半径方向に流れる透過液に対する抵抗は低い可能性がある。しかし、透過液の少なくとも幾らかはリーフから中央管の孔の間に排出され、中央管の長さに沿って軸方向に進み、孔に到達することになる。この軸方向の透過液流に対する抵抗は高い。加えて、トリコットは２０−４０％の範囲の気孔率の値を有しているので、孔の面積のかなりの部分がトリコットにより塞がれる。

軸方向の透過液流に対する抵抗を低下させるために、透過液キャリア材料７０は、その透過液チャネル６８の方向に対してある角度で切断されている。例えば、透過液キャリア材料の後縁７２は透過液チャネル６８に対して８０度以下又は７０度以下の角度７４であり得る。角度７４は４５度より大きいか、又は６０度より大きくてもよい。その結果、透過液チャネル６８は中央管１６の軸Ａに対してスパイラル状に配向される。図６で、畝６６及び透過液チャネル６８の幅はそれらのスパイラル状の通路を示すために誇張されている。スパイラル状の透過液チャネル６８は、透過液が中央管１６に向かって内方に移動するとき中央管１６の長さに沿った透過液の移動を可能にすることによって、中央管１６内の孔２２に向かう透過液の軸方向の流れに対する抵抗を低下させる。正味の推進圧が同じ量だけ上昇し、従って透過液のスループットが大きくなる。

透過液キャリア材料７０はいずれの面を中央管１６に接触させて巻き付けてもよい。しかし、透過液キャリア材料７０の畝面を中央管１６の外側の表面に接触させて孔２２の閉塞を低減するのが好ましい。さらに、透過液キャリア材料７０はそれ程高い圧力に抵抗する必要はないので、透過液キャリア材料７０はリーフ１２に用いられる典型的な透過液キャリアより高い透過率又は気孔率で編むことができる。

スパイラル巻回エレメント１０における透過液のスループット又は収集速度は膜を横切ってかけられる圧力に関係する。リーフ１２内の透過液チャネル６８を通り、リーフ１２の縁部から中央管１６の孔２２に向かう透過液流を推進するのに必要とされる圧力は、膜を通る透過液流の正味の推進圧を同じ量低減する。複数の層６０、６２、６４を有する１以上の透過液キャリア２０、透過液キャリア２０上の親水性コーティング、及びスパイラル状の透過液チャネル８６を有する中央管の周りのラップを使用することにより、正味の推進圧が増大し、同じ加えた圧力でエレメント１０当たりより多くの透過液流が可能になる。

本明細書では具体例を用いて、最良の態様を含めて本発明を開示し、また当業者があらゆるデバイス又はシステムを作り使用し、あらゆる援用された方法を実施することを含めて本発明を実施することができるようにした。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲に定義されており、当業者には自明の他の例を包含し得る。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない等価な構造要素を含む場合、特許請求の範囲内に入ると考えられる。

Claims (12)

1. ａ）進路面及び隆起した畝を有する畝面を有するトリコット生地の第１の層、並びに
   ｂ）進路面及び隆起した畝を有する畝面を有するトリコット生地の第２の層
   を含む透過液キャリアであって、
   第１の層及び第２の層の隆起した畝が両方とも透過液キャリアの内部に向かって配向されている、透過液キャリア。
2. さらに、第１の層及び第２の層の間に配置された隆起した畝を有するトリコット生地の第３の層を含む、請求項１記載の透過液キャリア。
3. 第１の層の隆起した畝が第２の層の隆起した畝の上に配置されている、請求項１記載の透過液キャリア。
4. 第３の層の隆起した畝が、第１の層の隆起した畝及び第２の層の隆起した畝の間に配置されている、請求項２記載の透過液キャリア。
5. ０．０１２インチ以下の厚さを有する、請求項１記載の透過液キャリア。
6. 第１の層及び第２の層のフィラメントがこれらの表面を親水性にするようにコートされている、請求項１記載の透過液キャリア。
7. 中央管の周りに巻き付けられた請求項１記載の透過液キャリアを含む膜リーフ、及び中央管の周りの第２の透過液キャリアの初期ラップを有しており、第２の透過液キャリアが中央管の中心の長手方向軸に対してスパイラル状に配向された透過液チャネルを含む、スパイラル巻回膜エレメント。
8. 親水性コーティングを含む透過液キャリアシート。
9. 親水性コーティングが架橋ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンを含む、請求項８記載の透過液キャリアシート。
10. ａ）中央管、及び
    ｂ）中央管の周りに巻き付けられた透過液チャネルを含む透過液キャリア
    を含み、透過液チャネルが中央管の中心の長手方向軸に対してスパイラル状に配向されている、スパイラル巻回膜エレメント。
11. 透過液キャリアがトリコットシートを含み、透過液チャネルがトリコットシートの隣接する畝の間のスペースにより画定される、請求項１０記載のスパイラル巻回膜エレメント。
12. 透過液キャリアが親水性コーティングでコートされている、請求項１０記載のスパイラル巻回膜。