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JP5999844B2 - 酸性ガス分離用モジュール - Google Patents

酸性ガス分離用モジュール Download PDF

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JP5999844B2 JP2013155229A JP2013155229A JP5999844B2 JP 5999844 B2 JP5999844 B2 JP 5999844B2 JP 2013155229 A JP2013155229 A JP 2013155229A JP 2013155229 A JP2013155229 A JP 2013155229A JP 5999844 B2 JP5999844 B2 JP 5999844B2
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Description

本発明は、水蒸気を含む原料ガスから、促進輸送膜を用いて酸性ガスを分離して取り出す酸性ガス分離用モジュールに関する。
従来、複数のガス成分が含まれる原料ガスから酸性ガス等の特定成分を選択的に分離するために、特定成分を選択的に透過する分離膜を備えたスパイラル型、平膜型、中空糸型など各種形式の膜モジュールが用いられている。
スパイラル型分離膜モジュールは、分離膜、原料ガス供給側流路用部材および透過側流路用部材を中心管の回りに巻回させて形成されたものであり、分離膜として薄膜化が比較的容易なシート状分離膜を用いているために膜面積を向上させることが比較的容易であるとともに、耐圧性に優れ、しかも比較的安価に製造できるという利点を有する。
スパイラル型分離膜モジュールでは、分離膜を透過して分離された特定成分を効率良く中心管に回収するために、略平行な複数の溝を備えた透過側流路用部材を、複数の溝と中心管の中心軸とが略垂直となるように配置して、分離膜、原料ガス供給側流路用部材とともに中心管に巻回させている(特許文献1〜3等)。
このようなスパイラル型分離膜モジュールにおいて、原料ガス中の最も透過しやすい透過成分(第1易透過成分)の分離は、一般的に、供給側における原料ガスの流れと、透過側における透過ガスの流れとを向流にすることにすることにより、最も効率的に実施することができる。その理由は、向流の流れ状態を形成することにより、第1易透過成分の透過推進力となる分離膜の原料ガス側と透過ガス側との間の分圧差を、分離膜モジュールの全長範囲に亘って良好に保持することできるためである。
一方、水蒸気を含む原料ガスなど、分離対象よりも透過性の高い成分(ここでは水蒸気)を含む場合は、分離膜の原料ガス側と透過ガス側との間の分圧差は、原料ガス側と透過ガス側の双方における水蒸気の存在量に大きく影響される。水蒸気はその大半が原料ガスの入り口側付近で透過してしまうことから、モジュールの長さ方向の大半にわたって水蒸気が存在しなくなる。そのため、透過ガス側は入り口付近を除く大半の部分において水蒸気はほとんど存在せず、分離対象の分圧が高い状態となる。透過ガス側の分圧が高いと透過の推進力となる分圧差が小さくなってしまい分離対象の透過性が悪化するという問題がある。
特許文献4には、水蒸気を含む原料ガスから二酸化炭素を分離する分離膜モジュールにおいて、透過ガスの取り出し口を、原料ガスの入り口と出口の間の中間部に設けて原料ガス入り口側を並流に、出口側を向流にすることにより効率的に二酸化炭素を分離回収する方法が開示されている。特許文献4において、分離膜モジュールに用いられている分離膜はポリイミド膜等の高分子系分離膜が例示されている。
一方、二酸化炭素等の酸性ガスの分離膜として、原料ガス中の1つあるいは複数の特定成分と選択的に、かつ、可逆的に反応して輸送する物質(キャリア)を膜中に含有し、このキャリアを利用して特定成分を膜の反対側に輸送分離する促進輸送膜を用いたスパイラル型分離膜モジュールが提案されている。
特許文献5等に記載されている、本出願人が提案している酸性ガス分離膜モジュールでは、水存在下において塩基性を示し(OHを放出)、そのOHがCOと反応することで膜中に選択的にCOを取り込むことができるようなアルカリ金属化合物をキャリアとして用いている。
特開平11−197469号公報 特開2000−288541号公報 特開2004−283701号公報 特開平10−57746号公報 特開2013―111507号公報
特許文献5のように、水存在下において促進輸送膜を用いた膜分離では、水(水蒸気)存在下でなければキャリアが機能しないため、水は分離膜中において必須である。しかしながら、既に述べたように水蒸気は膜透過性が非常に高く、その大半が原料ガスの入り口側付近で透過してしまうことから、モジュールの長さ方向の大半にわたって水蒸気が存在しなくなる。
特許文献4では、上記水蒸気の易透過性に対応した分離回収方法が開示されている。しかしながら、特許文献4では、分離膜の原料ガス側と透過ガス側との分圧差を維持するために透過ガスの流れを制御しているにすぎず、分離膜内の水蒸気の保持効果はあるものの充分ではない。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、水存在下で酸性ガスと反応する酸性ガスキャリアを含む促進輸送膜を備えた、分離性能の高い酸性ガス分離用モジュールを提供することを目的とするものである。
本発明の酸性ガス分離用モジュールは、
酸性ガスと水蒸気を少なくとも含む原料ガスが供給される供給ガス流路部材と、
少なくとも親水性化合物と供給ガス流路用部材に供給された原料ガス中の酸性ガスと水存在下で反応する酸性ガスキャリアを含む促進輸送膜と、
酸性ガスキャリアと反応して促進輸送膜を透過した酸性ガスが流れる透過ガス流路用部材とが積層されてなる積層体を有し、
この積層体が、管壁に貫通孔が形成された透過ガス集合管に巻回されてなる酸性ガス分離用モジュールであって、
透過ガス流路用部材が、少なくとも促進輸送膜側の面に複数の溝を有し、
この複数の溝と透過ガス集合管の中心軸とのなす角θが、0°以上75°以下である。なす角θは、45°以下であることが好ましい。
本明細書において、「複数の溝と透過ガス集合管の中心軸とのなす角θ」とは、透過ガス集合管の中心軸の酸性ガス分離用モジュールにおける原料ガスの下流方向を0度、上流方向を180度とした場合の、溝と中心軸とのなす角を意味する。
透過ガス流路部材は、凹凸(溝畝)を有するように合成繊維で編成されてなる合繊編物からなることが好ましく、トリコット編地からなり、溝がトリコット編地の隣接する2本のウェールにより形成されてなる態様であることがより好ましい。
水存在下で酸性ガスと反応する酸性ガスキャリアとしては、アルカリ金属化合物が好ましい。
透過ガス集合管の一端側から供給ガス流路用部材に原料ガスを透過ガス集合管の長さ方向に供給し、透過ガス集合管の他端から酸性ガスを取り出す態様、すなわち、並流で使用されるものであることが好ましい。
本発明の酸性ガス分離用モジュールは、酸性ガスと水蒸気を少なくとも含む原料ガスを、原料ガス中の酸性ガスと水存在下で反応する酸性ガスキャリアを含む促進輸送膜を用いたスパイラル型モジュールにおいて、透過ガス流路部材として、少なくとも促進輸送膜側の面に透過ガス集合管の中心軸とのなす角θが、0°以上75°以下である複数の溝を有したものを備えている。かかる構成によれば、透過ガス流路部材において透過ガスを導く複数の溝に供給ガスの下流方向の成分を有していることから、易透過性の水蒸気を透過ガス流路部材内の長さ方向の広範囲にとどめ、透過ガス流路部材に隣接する促進輸送膜に水成分を供給することができる。従って、本発明によれば、水存在下で酸性ガスと反応する酸性ガスキャリアを含む促進輸送膜を備えたスパイラル型酸性ガス分離モジュールにおいて、高い分離性能を実現することができる。
本発明の酸性ガス分離用モジュールの一実施の形態を示す一部切り欠き概略構成図である。 透過ガス流路部材の厚み方向断面形状の模式図である。 透過ガス流路部材の溝と透過ガス集合管の中心軸とのなす角θを示す模式図である。 透過ガス集合管と従来の透過ガス流部材との配置を示す上面模式図である。 本実施形態の透過ガス集合管と透過ガス流部材との配置を示す上面模式図である。 透過ガス集合管に積層体が巻回された円筒状巻回体の一部を示す断面図である。 酸性ガス分離用モジュールの透過ガス集合管に積層体を巻き付ける前の状態を示す概略模式図である。 酸性ガス分離用モジュールの製造工程図である。 図7Aに続く酸性ガス分離用モジュールの製造工程図である。 図7Bに続く酸性ガス分離用モジュールの製造工程図である。 スパイラル型モジュール製造工程を示す図である。 スパイラル型モジュール製造工程の変形例を示す図である。
図面を参照して本発明に係る一実施形態の酸性ガス分離用モジュールについて説明する。図1は、本発明の酸性ガス分離用モジュールの一実施の形態を示す一部切り欠き概略構成図である。本明細書の図面において、視認しやすくするために各部の縮尺は適宜変更して示してある。
「背景技術」の項において述べたように、水蒸気を含む原料ガスのガス分離を行う場合は、スパイラル型ガス分離用モジュールにおいて、原料ガスの流れの向きと透過ガスの流れの向きは、原料ガス側と透過ガス側の分圧差を維持する観点において、必ずしも向流がよいとは限らない。特許文献4によれば、原料ガスの入り口側を並流にし、出口側を向流にすることが好ましいとされている。
水存在下で酸性ガスと反応する酸性ガスキャリアを備えた促進輸送膜の場合は、原料ガスの上流側の促進輸送膜はほぼ水が飽和状態であるため、その透過速度は非常に速く、また、原料ガスは水蒸気を含む100℃以上の高温であるため、水蒸気が既に分離されてしまった下流側の原料ガスは高温を維持した乾いたガスとなる。従って、下流側の促進輸送膜に元々含まれていた水分も加熱されて水蒸気となり、透過ガス集合管12へと回収されやすい。更に、本発明者らの得た知見によると、水存在下で酸性ガスと反応する酸性ガスキャリアを備えた促進輸送膜では、分離性能への寄与は、分離膜中の水の有無の方が、原料ガスと透過ガスとの分圧差より格段に大きい。
かかる観点に基づき、本発明者らは、透過ガス流路用部材においてできるだけ下流側まで水分を保持することで、促進輸送膜内部における水分を保持し、高い分離性能を実現可能とする構成を検討した結果、本発明に至った。
図1に示すように酸性ガス分離用モジュール10は、
酸性ガスと水蒸気を少なくとも含む原料ガス20が供給される供給ガス流路部材30と、
少なくとも親水性化合物と、供給ガス流路用部材30に供給された原料ガス20中の酸性ガスと水存在下で反応する酸性ガスキャリアとを含む促進輸送膜を備えたガス分離膜1と、
酸性ガスキャリアと反応して促進輸送膜を透過した酸性ガスと水蒸気を含む透過ガス22が流れる透過ガス流路用部材36とが積層されてなる積層体14を単数あるいは複数有し、
単数あるいは複数の積層体14が、管壁に貫通孔12Aが形成された透過ガス集合管12に巻回され、且つ、その最外周が被覆層16で覆われてなる筒状のスパイラルユニットを備え、
このスパイラルユニットの両端にそれぞれテレスコープ防止板18が取り付けられて構成されている。
酸性ガス分離用モジュール10において、透過ガス流路用部材36は、少なくとも促進輸送膜を備えたガス分離膜1側の面に複数の溝36Rを有しており、この複数の溝36Rは、透過ガス集合管12の中心軸と0°以上75°以下の角度θをなして形成されている。
かかる構成の酸性ガス分離用モジュール10は、その一端部10A側から積層体14に酸性ガスと水蒸気を含む原料ガス20が供給されると、後述する積層体14の構成により、原料ガス20から、酸性ガスと水蒸気を含む透過ガス22が、透過ガス流路用部材36および貫通孔12Aを介して透過ガス集合管12に集積され、この透過ガス集合管12に接続された排出口26より回収される。また、供給ガス流路用部材30の空隙等を通過した、酸性ガス22が分離された残余ガス24は、酸性ガス分離用モジュール10において、排出口26が設けられた側の供給ガス流路用部材30や酸性ガス分離膜1の端部より排出される。
まず、透過ガス流路用部材36について説明する。透過ガス流路用部材36は、キャリアと反応して酸性ガス分離層を透過した酸性ガス及び水蒸気を含む透過ガス22が貫通孔12Aに向かって流れる部材である。透過ガス流路用部材は、スペーサーとしての機能を有し、また透過した酸性ガスを透過ガス流路用部材よりも内側に流す機能を有する。
図2は、透過ガス流路用部材36の厚み方向断面模式図である。図示されるように、透過ガス流路用部材36の溝36Rは、2つの細長い凸部36Wによって形成されている。図2において、複数の溝36Rは、略同一の断面積を有しており、略規則的に形成されてなる例について示してあるが、個々の溝の36Rの断面積は異なっていてもよいし、略規則的に形成されていなくてもよい。図2及び後記する積層体14の断面図において、複数の溝36Rは、ガス分離膜1側の面にのみ形成されている場合について記載しているが、両面に形成されていてもよい。
なお、透過ガス流路用部材36において、透過ガス22は溝36Rを流れやすいが、細長い凸部36Wが空隙を有する素材により構成されてなる場合は凸部36Wの内部を流れる透過ガス22も存在する。特に、供給される原料ガスが大気圧以上の圧力を有している場合は、供給ガス側と透過ガス側に差圧により、透過ガス集合管12に向かった、スパイラルユニットの半径方向に透過ガス22は流れやすくなっている。
既に述べたように、透過ガス流路用部材36において、複数の溝36Rは、透過ガス集合管12の中心軸と0°以上75°以下の角度θをなして形成されている。なす角θについて図3を参照して説明する。図3には透過ガス集合管12の中心軸12Cにおいて、酸性ガス分離用モジュールにおける原料ガス20の下流方向に矢印を付して示してある。
図3に示されるように、透過ガス集合管12の中心軸12Cと溝36Rのなす角θは、図示される0度を基準としており、透過ガス集合管12側が正の角度である。
図4Aは、透過ガス集合管12と、「背景技術」の項目において述べた、従来のスパイラル型ガス分離モジュールに使用されている透過ガス流路用部材36との配置を示す上面模式図である。図示されるように、従来の透過ガス流路用部材においても、複数の細長い凸部36Wと溝36Rを備えているが、溝36Rと透過ガス集合管12の中心軸とのなす角θは略90°となっている。
図4Bは、本実施形態の酸性ガス分離用モジュール10における、透過ガス集合管12と、透過ガス流路用部材36との配置を示す上面模式図である。図示されるように、溝36Rと透過ガス集合管12の中心軸とは、原料ガスの上流側から下流側へ向かう成分を有する角度をなしている。
本発明者らは、水存在下で酸性ガスと反応する酸性ガスキャリアを備えた促進輸送膜を用いて、水蒸気を含む原料ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス分離用モジュール10における、促進輸送膜内における水の有無による分離性能への影響の大きさ、及び、水の易透過性を考慮すると、この溝36Rと透過ガス集合管12の中心軸とのなす角θは、0°以上75°以下の角度の範囲とすることにより、促進輸送膜内に良好に水を保持して、モジュール形態でも平膜での測定と遜色ない分離性能を実現できることを見出した。
なす角θは、原料ガスの水蒸気含有量や流速等に応じて適宜設計することができる。原料ガス20の水蒸気含有量が多いほど、また、流速が早い程、供給ガス流路用部材30において、より下流領域まで水蒸気を保持することができるので、なす角θは大きな角度を有していてよい。また、供給される原料ガスの圧力が高いほど、なす角θは0°に近くなるように設計することが好ましい。発電所などから排出される排煙ガスなどに含まれる水蒸気量を考慮すると、なす角θは45°以下であることが好ましい。
透過ガス流路用部材36の素材は、上記構成を有していれば特に制限されないが、空隙のあいた編地であることが好ましく、凹凸(溝畝)を有するように合成繊維で編成されてなる合繊編物からなることが好ましく、トリコット編地であることが好ましい。トリコット編地は、略平行に形成された複数のウェールを備えている。従ってこの複数のウェールは、透過ガス流路用部材の細長い凸部36Wとして好適であり、隣接する2本のウェールにより溝36Rが形成される。
透過ガス流路用部材36は、酸性ガス分離層1を透過した透過ガス22の流路となるため、抵抗が少ないことが好ましく、具体的には、空隙率が高く、圧をかけたときの変形が少なく、かつ、圧損が少ないことが望ましい。空隙率に関しては、30%以上95%以下が好ましく、35%以上92.5%以下がより好ましく、さらには40%以上90%以下が好ましい。なお、空隙率の測定は次のように行うことができる。まず、透過ガス流路用部材の空隙部に超音波を利用するなどして十分に水を滲み込ませ、表面の余分な水分を取った後、単位面積あたりの質量を測定する。この質量を乾燥質量から差し引いた値が、透過ガス流路用部材の空隙に入った水の容積であり、水の密度で換算し、空隙量、ひいては空隙率を測定することができる。このとき、十分に水が滲み込んでいない場合は、アルコール系などの表面張力の低い溶剤を用いても測定が可能である。
圧をかけたときの変形は、引張試験を行ったときの伸度により近似でき、10N/10mm幅の荷重をかけたときの伸度が5%以内であることが好ましく、4%以内であることがより好ましい。
また、圧損に関しては、一定の流量で流した圧縮空気の流量損失に近似でき、15cm角の透過ガス流路用部材36に室温で15L/min流した際に、7.5L/min以内の損失であることが好ましく、7L/min以内の損失であることがより好ましい。
編地を形成する繊維の素材としては、高温で水蒸気を含有する原料ガスを流すことを想定すると、耐湿熱性を有することが好ましい。具体的素材としては、エポキシ含浸ポリエステルなどポリエステル系、ポリプロピレンなどポリオレフィン系、ポリテトラフルオロエチレンなどフッ素系が好ましい。
本明細書において、耐熱湿性のうちの「耐熱性」とは、80℃以上の耐熱性を有していることを意味する。具体的に、80℃以上の耐熱性とは、80℃以上の温度条件下に2時間保存した後も保存前の形態が維持され、熱収縮あるいは熱溶融による目視で確認しうるカールが生じないことを意味する。また、耐熱湿性のうちの「耐湿性」とは、40℃80%RHの条件下に2時間保存した後も保存前の形態が維持され、熱収縮あるいは熱溶融による目視で確認しうるカールが生じないことを意味する。
透過ガス流路用部材の厚みは、特に限定されないが、100μm以上1000μm以下が好ましく、より好ましくは150μm以上950μm以下、さらに好ましくは200μm以上900μm以下である。
上記したように、水存在下で酸性ガスと反応する酸性ガスキャリアを備えた促進輸送膜を用いて、水蒸気を含む原料ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス分離用モジュール10は、原料ガス20と透過ガス22との分圧差による分離性能への影響は、促進輸送膜内における水の有無に比して小さいが、水の易透過性を考慮すると、透過ガス集合管12の一端、すなわち、酸性ガス分離用モジュール10の入り口10A側から供給ガス流路用部材30に原料ガス20を透過ガス集合管12の長さ方向に供給し、透過ガス集合管12の他端、すなわち、酸性ガス分離用モジュール10の出口10B側から酸性ガスを取り出す、並流で使用されるものであることが好ましい。
酸性ガス分離用モジュール10は、酸性ガスと水蒸気を少なくとも含む原料ガス20を、原料ガス中の酸性ガスと水存在下で反応する酸性ガスキャリアを含む促進輸送膜を用いたスパイラル型モジュールにおいて、透過ガス流路部材36として、少なくとも促進輸送膜側の面に透過ガス集合管12の中心軸とのなす角θが、0°以上75°以下である複数の溝36Rを有したものを備えている。かかる構成によれば、透過ガス流路部材36において透過ガスを導く複数の溝36Rに供給ガスの下流方向の成分を有していることから、易透過性の水蒸気を透過ガス流路部材内の長さ方向の広範囲にとどめ、透過ガス流路部材36に隣接する促進輸送膜に水成分を供給することができる。従って、本発明によれば、水存在下で酸性ガスと反応する酸性ガスキャリアを含む促進輸送膜を備えたスパイラル型酸性ガス分離モジュールにおいて、高い分離性能を実現することができる。
以下に、酸性ガス分離用モジュール10を構成する透過ガス流路部材36以外の構成要素について、図1、及び図5、図6を参照して説明する。
<透過ガス集合管、被覆層、テレスコープ防止板>
図1に示されるように、透過ガス集合管12は、その管壁に複数の貫通孔12Aが形成された円筒状の管である。透過ガス集合管12は通常両端が開口した構成としているが、排出口26と反対側の一端は、閉じられている方が、貫通孔12Aから集合した透過ガス22に排出口26側に向かう流れを作り易く好ましい。図1に示されるように、透過ガスを並流にて取り出す場合には、原料ガス20が供給される側の一端が閉じられている態様が好ましいことになる。酸性ガス分離用モジュール10を複数基直列に連結させて使用する場合には、透過ガス22を回収する側と反対側の端部に配置された酸性ガス分離用モジュール10についてのみ、排出口26と反対側の一端が閉じられていることが好ましい。
なお、透過ガス22の流れを作り易くする等、透過ガス22を回収の効率化や、改質等を目的として、透過ガス集合管12内に、透過ガス22以外の流体を流してもよい。そのような場合には、排出口26と反対側の一端は閉じられていない方が良い場合もある。
透過ガス集合管12の表面積にしめる貫通孔12Aの割合(開口率)は、1.5%以上80%以下であることが好ましく、3%以上75%以下であることがより好ましく、さらには5%以上70%以下であることが好ましい。さらに、上記開口率は、実用的な観点から、5%以上25%以下であることが好ましい。各下限値以上とすることで、効率的に酸性ガス22を収集することができる。また、各上限値以下とすることで、筒の強度を高め、加工適性を十分に確保することができる。
貫通孔12Aの形状は特に限定されないが、0.5〜20mmφの円形の穴が開いていることが好ましい。また、貫通孔12Aは、透過ガス集合管12表面に対して均一に配置されることが好ましい。
被覆層16は、酸性ガス分離用モジュール10内を通過する原料ガス20を遮断しうる遮断材料で形成されている。この遮断材料はさらに耐熱湿性を有していることが好ましい。
テレスコープ防止板18は、外周環状部18Aと内周環状部18Bと放射状スポーク部18Cとを有しており、それぞれ耐熱湿性の材料で形成されていることが好ましい。
具体的には、テレスコープ防止板18の材質は、金属材料(例えば、SUS、アルミニウム、アルミニウム合金、錫、錫合金等)、樹脂材料(例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ナイロン12、ナイロン66、ポリサルフィン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリル・エチレン・スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ニトリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等)、およびこれら樹脂の繊維強化プラスチック(例えば繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維、アラミド繊維などで、特に長繊維が好ましい。具体例としては、例えばガラス長繊維強化ポリプロピレン、ガラス長繊維強化ポリフェニレンサルファイドなど)、並びに、セラミックス(例えばゼオライト、アルミナなど)等が挙げられる。
<積層体>
図1及び図5を参照して積層体14について説明する。積層体14は、二つ折りした酸性ガス分離膜1の内側に供給ガス流路用部材30が挟み込まれ、これらの径方向内側で酸性ガス分離膜1が透過ガス流路用部材36に、これらに浸透した封止部(図1においては不図示)を介して封止されて構成される。
積層体14を透過ガス集合管12に巻き付ける枚数は、特に限定されず、単数でも複数でもよいが、枚数(積層数)を増やすことで、酸性ガス分離膜の膜面積を向上させることができる。これにより、1本のモジュールで酸性ガス22を分離できる量を向上させることができる。また、膜面積を向上させるには、積層体14の長さをより長くしてもよい。
また、積層体14の枚数が複数の場合、50枚以下が好ましく、45枚以下がより好ましく、さらには40枚以下が好ましい。これらの枚数以下であると、積層体14を巻き付けることが容易となり、加工適性が向上する。
積層体14の幅は、特に限定されないが、50mm以上10000mm以下であることが好ましく、60mm以上9000mm以下であることがより好ましく、さらには70mm以上8000mm以下であることが好ましい。さらに、積層体14の幅は、実用的な観点から、200mm以上2000mm以下であることが好ましい。各下限値以上とすることで、樹脂の塗布(封止)があっても、有効な酸性ガス分離膜1の膜面積を確保することができる。また、各上限値以下とすることで、巻き芯の水平性を保ち、巻きずれの発生を抑制することができる。
図5は透過ガス集合管に積層体が巻回された円筒状巻回体の一部を示す断面図である。
図5に示すように、スパイラル型モジュールにおいては、積層体14が透過ガス集合管に巻回されて、断面において透過ガス集合管12上に積層体14が積み重なった構成を備えている。積層体14同士は両端において接着部40を介して接着されている。
積層体14は、図5に示されるように、透過ガス集合管12側から順に、透過ガス流路用部材36、酸性ガス分離膜1、供給ガス流路用部材30、酸性ガス分離膜1を積層している。酸性ガス分離膜1は、多孔質膜2と補助支持膜3とが積層されてなる多孔質支持体4と、多孔質支持体4の多孔質膜2側に配された、原料ガス中の酸性ガスを分離する機能を有する酸性ガス分離促進輸送膜5を備えている。多孔質支持体4と透過ガス流路用部材36との積層体端にガスの流入を封止するための封止部34が設けられている。
<<供給ガス流路用部材>>
供給ガス流路用部材30は、酸性ガス分離モジュールの一端部から酸性ガスを含む原料ガスが供給される部材であり、スペーサーとしての機能を有し、且つ、原料ガスに乱流を生じさせることが好ましいことから、ネット状の部材が好ましく用いられる。ネットの形状によりガスの流路が変わることから、ネットの単位格子の形状は、目的に応じて、例えば、菱形、平行四辺形などの形状から選択して用いられる。また、高温で水蒸気を含有する原料ガスを供給することを想定すると、供給ガス流路用部材は、後述する酸性ガス分離層と同様に耐湿熱性を有することが好ましい。
供給ガス流路用部材の材質としては、何ら限定されるものではないが、紙、上質紙、コート紙、キャストコート紙、合成紙、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、アラミド、ポリカーボネートなどの樹脂材料、金属、ガラス、セラミックスなどの無機材料等が挙げられる。樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン及びポリフッ化ビニリデン等が好適なものとして挙げられる。
また、耐湿熱性の観点から好ましい材質としては、セラミック、ガラス、金属などの無機材料、100℃以上の耐熱性を有した有機樹脂材料などが挙げられ、高分子量ポリエステル、ポリオレフィン、耐熱性ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、アラミド、ポリカーボネート、金属、ガラス、セラミックスなどが好適に使用できる。より具体的には、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエーテルイミド、及び、ポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれた少なくとも1種の材料を含んで構成されることが好ましい。
供給ガス流路用部材の厚みは、特に限定されないが、100μm以上1000μm以下が好ましく、より好ましくは150μm以上950μm以下、さらに好ましくは200μm以上900μm以下である。
<<酸性ガス分離膜>>
(酸性ガス分離促進輸送膜)
酸性ガス分離促進輸送膜5(以下において、単に促進輸送膜5と称する。)は、親水化合物および酸性ガスキャリアを含むものである。
((酸性ガスキャリア))
酸性ガスキャリアとは、間接的に酸性ガスと反応するもの、また、そのもの自体が直接酸性ガスと反応するものを言う。間接的に酸性ガスと反応するとは、例えば、供給ガス中に含まれる他のガスと反応し、塩基性を示し、その塩基性化合物と酸性ガスが反応することなどが挙げられる。この種の酸性ガスキャリアとしては、より具体的には、スチームと反応してOHを放出し、そのOHがCOと反応することで膜中に選択的にCOを取り込むことができるようなアルカリ金属化合物が挙げられる。
また、直接酸性ガスと反応する酸性ガスキャリアとしては、そのもの自体が塩基性であるような、例えば、窒素含有化合物や硫黄酸化物などが挙げられる。
アルカリ金属化合物としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種、これを含む水溶液にアルカリ金属イオンと錯体を形成する多座配位子を添加した水溶液、アンモニア、アンモニウム塩、各種直鎖状、及び環状のアミン、アミン塩、アンモニウム塩等ことが挙げられる。また、これらの水溶性誘導体も好ましく用いることができる。促進輸送膜中に長期間保持できるキャリアが有用であるから、アミノ酸やベタインなどの蒸発しづらいアミン含有化合物が特に好ましい。
なお、本明細書において、アルカリ金属化合物とは、アルカリ金属そのもののほか、その塩およびそのイオンを含む意味で用いる。
アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、及び炭酸セシウムなどが挙げられる。
アルカリ金属重炭酸塩としては、例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、及び炭酸水素セシウムなどが挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、及び水酸化セシウムなどが挙げられる。
これらの中でも、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、また、酸性ガスとの親和性がよいという観点から、水に対する溶解度の高いカリウム、ルビジウム、及びセシウムをアルカリ金属元素として含む化合物が好ましい。
ここで、本実施形態では、炭酸ガス分離膜として、吸湿性の促進輸送膜を用いているため、製造時に吸湿した水分で促進輸送膜がゲル状となり促進輸送膜が製造時に膜同士や他の部材にくっつくという現象(ブロッキング)が生じ易い。このブロッキングが起こると、促進輸送膜を剥がす際に促進輸送膜がそのくっつきにより欠陥を生じてしまい、結果としてガス漏れが生じ得る。したがって、本実施形態では、ブロッキング抑止を図る方が好ましい。
そこで、本実施形態では、キャリアは、アルカリ金属化合物を2種以上含むことが好ましい。2種以上のキャリアとすることで、膜中の同種のキャリアを距離的に離すことでブロッキングの不均一さを生み出してブロッキング抑止を図ることができるからである。
さらに、キャリアは、潮解性を有する第1アルカリ金属化合物と、当該第1アルカリ金属化合物よりも潮解性が低く比重が小さい第2アルカリ金属化合物とを含むことがより好ましい。具体的に、第1アルカリ金属化合物として炭酸セシウムが挙げられ、第2アルカリ金属化合物として炭酸カリウムが挙げられる。
キャリアが第1アルカリ金属化合物と第2アルカリ金属化合物を含むことで、比重が小さい第2アルカリ金属化合物が促進輸送膜の膜面側に配置され(つまり促進輸送膜の表面側に偏在して配置され)、比重が大きい第1アルカリ金属化合物が促進輸送膜の膜内側に配置される(つまり促進輸送膜の多孔質支持体側に偏在して配置される)。そして、膜面側に配置される第2アルカリ金属化合物は第1アルカリ金属化合物よりも潮解性が低いため、膜面側に第1アルカリ金属化合物が配置される場合に比べて、膜面がべたつかず、ブロッキングを抑止することができる。また、膜内側には潮解性の高い第1アルカリ金属化合物が配置されるので、単に第2アルカリ金属化合物が膜全体に配置される場合に比べて、ブロッキングを抑止するとともに、炭酸ガスの分離効率を高めることができる。
具体的には、酸性ガス分離層10において、キャリアとして2種以上のアルカリ金属化合物(第1及び第2アルカリ金属化合物)を適用した場合、促進輸送膜5は多孔質支持体4とは反対側の表面側の第2層とその下方で多孔質支持体4側の第1層とからなる。そして、促進輸送膜5は全体において親水性化合物(親水性ポリマー)で構成されているが、その中で、第2層には主に潮解性が低く比重が小さい第2アルカリ金属化合物が含有されている。第1層には主に潮解性を有する第1アルカリ金属化合物が存在する。なお、第2層の厚さは特に限定されないが、十分な潮解性の抑制機能を発揮させるために、0.01〜150μmであることが好ましく、0.1〜100μmであることがより好ましい。
促進輸送膜5においては、図示した状態において、表面側に第2アルカリ金属化合物を含む第2層が偏在し、その下方に第1アルカリ金属化合物を含む第1層が広がる形態として示しているが、これに限定されるものではない。例えば、両層の界面は明確でなくてもよく両者が傾斜的に変化する状態で区分されていてもよい。また、その界面が一定でなく、蛇行した状態であってもよい。
潮解性が低く比重が小さい第2アルカリ金属化合物を含有する第2層の作用により、膜の潮解性が抑制される。このように第2アルカリ金属化合物が偏在する理由について述べると、2種以上のアルカリ金属の比重の差によるものと解される。すなわち、2種以上のアルカリ金属のうち1種を低比重にすることで、その製膜時に塗布液中で比重の軽いものを上方(表面側)に局在させることが可能となる。そして、膜内部の第1層に含有する潮解性を有する第1アルカリ金属化合物のもつ二酸化炭素等の高い輸送力を維持しながら、第2層の膜表面では第2アルカリ金属化合物のもつより結晶化しやすい性質等により結露等を防ぐことができる。これにより、ブロッキングを抑止するとともに、炭酸ガスの分離効率を高めることができる。
なお、第2アルカリ金属化合物はブロッキング抑止のため膜面側にのみあればよいので、第2アルカリ金属化合物は第1アルカリ金属化合物よりも少量含まれていることが好ましい。これにより、潮解性の高い第1アルカリ金属化合物は膜全体において相対的に量が多くなり、炭酸ガスの分離効率をより高めることができる。
ここで、2種以上のアルカリ金属化合物の種類数とは、アルカリ金属の種類によって定まるものとし、対イオンが異なっていても1種とは数えないこととする。つまり、炭酸カリウムと水酸化カリウムとが併用されていても1種と数えることとする。
2種以上のアルカリ金属化合物の組合せとしては、下記表1に記載のものが好ましい。なお、表0においては、アルカリ金属の名称でアルカリ金属化合物を表示しているが、その塩やイオンであってもよい意味である。
キャリア全体の親水性化合物層における含有量は、その種類にもよるが、塗布前の塩析を防ぐとともに、酸性ガスの分離機能を確実に発揮させるため、0.3質量%〜80質量%であることが好ましく、さらに0.5〜70質量%であることがより好ましく、さらに1〜65質量%であることが特に好ましい。
キャリアとして、2種以上のアルカリ金属化合物を適用する場合、2種以上のアルカリ金属化合物の含有量を、膜の主成分である親水性化合物及び2種以上のアルカリ金属化合物等の固形分の合計質量との関係で示すと、2種以上のアルカリ金属化合物の質量比率が25質量%以上85質量%以下であることが好ましく、30質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。この量を上記の範囲とすることで、ガス分離機能を十分に発揮させることができる。
2種以上のアルカリ金属化合物のうち、第1アルカリ金属化合物よりも潮解性が低く比重が小さい第2アルカリ金属化合物(促進輸送膜5の表面側に偏在したアルカリ金属化合物)ついては、親水性化合物及び2種以上のアルカリ金属化合物等の固形分の合計質量(典型的には乾燥後の分離層の総質量)に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましい。上限は特にないが、10質量%以下であることが好ましく、7.5質量%以下であることがより好ましい。この量が少なすぎるとブロッキングを防げないことがあり、多すぎるとハンドリングできないことがある。
第2アルカリ金属化合物と第1アルカリ金属化合物との比率は特に限定されないが、第2アルカリ金属化合物100質量部に対して、第1アルカリ金属化合物が50質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましい。上限値としては、100000質量部以下が好ましく、80000質量部以下がより好ましい。当該両者の比率をこの範囲で調整することにより、ブロッキング性とハンドリング性とを高いレベルで両立することができる。
窒素含有化合物としては、例えば、グリシン、アラニン、セリン、プロリン、ヒスチジン、タウリン、ジアミノプロピオン酸などのアミノ酸類、ピリジン、ヒスチジン、ピペラジン、イミダゾール、トリアジンなどのヘテロ化合物類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類や、クリプタンド〔2.1〕、クリプタンド〔2.2〕などの環状ポリエーテルアミン類、クリプタンド〔2.2.1〕、クリプタンド〔2.2.2〕などの双環式ポリエーテルアミン類やポルフィリン、フタロシアニン、エチレンジアミン四酢酸などを用いることができる。
硫黄化合物としては、例えば、シスチン、システインなどのアミノ酸類、ポリチオフェン、ドデシルチオールなどを用いることができる。
((親水性化合物))
親水性化合物はバインダーとして機能するものであり、促進輸送膜5に使用するときに水を保持して酸性ガスキャリアによる酸性ガスの分離機能を発揮させる。親水性化合物は、水に溶けて、もしくは、水に分散して塗布液を形成することができるとともに、促進輸送膜5が高い親水性(保湿性)を有する観点から、親水性が高いものが好ましく、親水性化合物自体の質量に対して、5倍以上1000倍以下の質量の水を吸収するものであるものが好ましい。
親水性化合物としては、親水性、製膜性、強度などの観点から、例えば、寒天、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩、およびポリビニルアルコール−ポリアクリル酸(PVAPAA)共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルブチラール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリ−N−ニルアセトアミド、ポリアクリルアミド等の親水性ポリマーが好適であり、特にPVA−PAA共重合体が好ましい。PVA−PAA共重合体は、吸水能が高い上に、高吸水時においてもハイドロゲルの強度が大きい。PVAPAA共重合体におけるポリアクリル酸塩の含有率は、例えば5モル%以上95モル%以下が好ましく、好ましくは30モル%以上70モル%以下がさらに好ましい。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩や有機アンモニウム塩等が挙げられる。
市販されているPVA−PAA共重合体として、例えば、クラストマー−AP20(商品名:クラレ社製)が挙げられる。
促進輸送膜5中の酸性ガスキャリアの含有量としては、親水性化合物の量との比率、酸性ガスキャリアの種類にもよるが、酸性ガスキャリアとしての機能が発揮され、かつ使用環境下における酸性ガス分離層としての安定性に優れるという点から0.1質量%以上80質量%以下であることが好ましく、さらに0.2質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、さらに0.3質量%以上65質量%以下であることが特に好ましい。
促進輸送膜5は分離特性に悪影響を及ぼさない範囲で、親水性化合物、酸性ガスキャリアおよび水以外の、他の成分(添加剤)を含んでいてもよい。任意に用いうる成分としては、例えば、親水性化合物および酸性ガスキャリアを含む促進輸送膜5形成用水溶液(塗布液)を多孔質支持体上に塗布し、乾燥する過程において、塗布液膜を冷却してゲル化させる、いわゆるセット性を制御するゲル化剤、上記塗布液を塗布装置で塗布する際の塗布時の粘度を調製する粘度調整剤、促進輸送膜5の膜強度向上のための架橋剤、酸性ガス吸収促進剤、その他、界面活性剤、触媒、補助溶剤、膜強度調整剤、さらには、形成された酸性ガス分離層の欠陥の有無の検査を容易とするための検出剤などが挙げられる。
促進輸送膜5の平均厚さは、酸性ガス分離層として性能に優れたものが得られるという点から、1μm以上200μm以下が好ましく、3μm以上150μm以下がより好ましくは、5μm以上120μm以下が特に好ましい。
(多孔質支持体膜)
促進輸送膜5を支持する多孔質支持体4は多孔質膜2と補助支持膜3とが積層してなるものである。補助支持膜3を備えることにより、力学的強度を向上させることができ、塗布機などでハンドリングしても、しわがよらないなどの効果があり、生産性を向上させることができる。
((多孔質膜))
多孔質膜2は、被分離ガスである二酸化炭素等の酸性ガス及び水蒸気に対して透過性を有するものである。
多孔質膜2は、促進輸送膜形成時の促進輸送材料の浸み込みを抑制するという観点から、その孔径は小さいことが好ましい。最大孔径が1μm以下であることが好ましい。孔径の下限値は特に限定されないが、0.001μm程度である。
ここで、最大孔径はバブルポイント法により計測、算出した値を意味するものとする。例えば、測定装置として、PMI社製パームポロメーターを用い、バブルポイント法(JIS K 3832に準拠)により測定することができる。ここで、最大孔径とは多孔質膜の孔径分布において最も大きい孔径の値である。
多孔質膜2の厚みは、1μm以上100μm以下が好ましい。
また、多孔質膜2の、少なくとも促進輸送膜5と接する側の表面が疎水性表面であることが好ましい。表面が親水性であると、使用環境下で水分を含有した促進輸送膜が多孔部分に浸み込み易くなり、膜厚分布や経時での性能劣化を引き起こす懸念がある。
ここで疎水性とは、室温(25℃)における水の接触角が80°程度以上であることを指す。
ただし、親水性多孔質膜の膜厚が、促進輸送膜の膜厚以下であれば、その限りではない。
本発明において、多孔質膜2は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォンアラミド、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリルなどの樹脂材料からなる多孔質樹脂シートである。
酸性ガス分離用モジュールは、その適用用途に応じて使用温度が異なるものの、例えば、130℃程度の高温かつ蒸気を使用した加湿下で使用される場合が多い。そのため、多孔質膜は130℃においても孔構造の変化が少ない耐熱性を有し、また加水分解性の少ない素材からなることが好ましい。そのような観点からは、ポリプロピレンや、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素含有樹脂からなる群より選択される樹脂を含んで形成されるものが好ましく、最も好ましいのは、PTFE多孔質膜である。
((補助支持膜))
補助支持膜3は、多孔質膜2の補強用に備えられるものであり、強度、耐延伸性及び気体透過性が良好であれば、特に制限はなく、不織布、織布、織布、及び、最大孔径が0.001μm以上500μmであるメッシュなどを適宜選択して用いることができる。
補助支持膜3の厚みは50μm以上300μm以下が好ましい。
補助支持膜3も、既述の多孔質膜2と同様に、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない素材からなることが好ましい。不織布、織布、編布を構成する繊維としては、耐久性、耐熱性に優れる、ポリプロピレンや、アラミド(商品名)などの改質ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有樹脂などからなる繊維が好ましい。メッシュを構成する樹脂材料も同様の素材を用いることが好ましい。
これらの材料のうち、安価で力学的強度の強いポリプロピレン(PP)からなる不織布を用いることが特に好ましい。
図6は透過ガス集合管に積層体を巻き付ける前の状態を模式的に示す図であり、接着部34、40(以下、接着剤と呼ぶことがある)の形成領域の一実施形態を表した図である。図6に示すように、接着部40は、透過ガス流路用部材36で貫通孔12Aを覆い、透過ガス集合管12に積層体14を図中矢印C方向に巻き付けた状態で、酸性ガス分離膜1と透過ガス流路用部材36を接着するとともに封止している。一方で、接着部34は、透過ガス集合管12に積層体14を巻き付ける前から酸性ガス分離膜1と透過ガス流路用部材36を接着するとともに封止している。図6においては、巻き付ける前に接着部34により接着されている酸性ガス分離膜1と透過ガス流路用部材36を分離して示している。
接着部34、40は共に、巻き始めの酸性ガス分離膜1と透過ガス流路用部材36の間の周方向端部が開口したいわゆるエンベロープ状となっている。そして、接着部34で囲まれた領域には、酸性ガス分離膜1を透過した透過ガス22が貫通孔12Aまで流れる流路P1が形成される。同様に、接着部40で囲まれた領域には、酸性ガス分離膜1を透過した透過ガス22が貫通孔12Aまで流れる流路P2が形成される。
接着部34及び40に用いられる接着剤は、耐熱湿性を有するものである。
材質としては、耐熱湿性を有するものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリルニトリル共重合体、ブタジエン−アクリルニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。
特に好ましいのはエポキシ樹脂である。
なお、接着剤の濡れ性を向上させるため、溶剤や、界面活性剤を含有していてもかまわない。
<スパイラル型モジュールの製造方法>
次に、上述した構成の酸性ガス分離用モジュールの製造方法を説明する。
図7A〜図7Cは酸性ガス分離用モジュールの製造工程図である。酸性ガス分離用モジュール10の製造方法では、まず図7Aに示すように、カプトンテープまたは接着剤等の固定部材55で、長尺状の透過ガス流路用部材36の先端部を透過ガス集合管12の管壁(外周面)に固定する。ここで、管壁には、軸方向に沿ってスリット(不図示)が設けられていることが好ましい。この場合、スリットに、透過ガス流路用部材36の先端部を入れ込み、透過ガス集合管12の内周面に固定部材55で固定するようにする。この構成によれば、透過ガス流路用部材36を含んだ積層体14を透過ガス集合管12に巻き付けるときに、テンションをかけながら巻き付けるようにしても、透過ガス集合管12の内周面と透過ガス流路用部材36との摩擦で、透過ガス流路用部材36がスリットから抜けない、すなわち、透過ガス流路用部材36の固定が維持される。
次に、図7Bに示すように、酸性ガス分離促進輸送膜5を内側に二つ折りした長尺状の酸性ガス分離膜1に長尺状の供給ガス流路用部材30を挟み込む。なお、酸性ガス分離膜1を二つ折りする際は、図7Bに示すように酸性ガス分離膜1を二分割してもよいが、ずらして折ってもよい。
次に、二つ折りした酸性ガス分離膜1の外表面のうち一方の外表面(多孔質支持体4の補助支持膜3の表面)に対して、膜の幅方向両端部と長手方向一端部に接着剤を塗布する(エンベロープ状に塗布する)。
次に、図7Cに示すように、透過ガス集合管12に固定した透過ガス流路用部材36の表面に、接着剤34を介して、供給ガス流路用部材30を挟んだ酸性ガス分離膜1を貼り付ける。なお、酸性ガス分離膜1を貼り付ける際、接着剤34が塗布されていない一端がガス集合管12側となるように貼り付ける。これにより、接着部34全体として巻き始めの酸性ガス分離膜1と透過ガス流路用部材36の間の周方向端部が開口した形となり、接着部34に囲まれた領域に、酸性ガス分離膜1を透過した透過ガス22が貫通孔12Aまで流れる流路P1が形成される。
次に、透過ガス流路用部材36に貼り付けた酸性ガス分離膜1の表面(貼り付け面とは逆の面の多孔質支持体4の補助支持膜3の表面)に対して、膜の幅方向両端部と長手方向一端部に接着剤40を塗布する。
次いで、図8に模式的に示すように、透過ガス集合管12を矢印C方向に回転させることにより、積層体14を透過ガス流路用部材36で貫通孔12Aを覆うように、透過ガス集合管12に多重に巻き付ける。この際、積層体14に張力をかけながら巻き付けることが好ましい。
なお、供給ガス流路用部材30を酸性ガス分離膜1を二つ折りにした間に挟み込んだものを1ユニットとし、このユニットと透過ガス流路用部材36を交互に積層し、結果として図9に示すように積層体14を複数重ねて(本例では3ユニット分)、透過ガス集合管に多重に巻き付けてもよい。なお、複数ユニット重ねる場合には、集合管に巻きつけた後の段差が大きくならないように、図9に示すように、少しずつずらして重ねる。
以上の工程を経ることにより円筒状巻回体が得られ、得られた円筒状巻回体の両端部をトリミング(端面修正加工)した後に、円筒状巻回体の最外周を被覆層16で覆って、両端にテレスコープ防止板18を取り付けることで図1に示す酸性ガス分離用モジュール10が得られる。
以下、本発明の酸性ガス分離用モジュールを実施例によりさらに詳細に説明する。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1〜3、比較例1)
クラストマーAP-20(クラレ社製):2.4質量%、25%グルタルアルデヒド水溶液(Wako社製):0.01質量%を含む水溶液に、1M塩酸をpH1になるまで添加し、架橋後、キャリアとしての40%炭酸セシウム(稀産金属社製)水溶液を炭酸セシウム濃度が3.66質量%になるように添加し、次いで、40%炭酸カリウム(Wako社製)水溶液を炭酸カリウム濃度が0.61質量となるように添加し、更に、ブロッキング抑止剤として1%ラピゾールA−90(日油社製)を0.003質量%となるように添加し、昇温後、撹拌し脱泡し、別に調温しておいた寒天水溶液を加えて塗布組成物とした。
この塗布組成物を、孔径0.1μm、厚み30μmのPTFE多孔質膜(GE社製)に塗布し、硬化させた後二つ折りにし、表1に記載の透過ガス流路用部材を、溝のラインを、19mmφの透過ガス集合管に向かって、表1に記載の角度だけ傾けて配置したものと、供給側流路剤としてポリプロピレンのネット(線径50μm、目開き500μm)とともに、3方向端面に接着材を塗布したユニットを作製した。
このユニット3セット積層した後、透過ガス集合管にまきつけてスパイラル型分離膜モジュールを作製した。
(評価)
作製したスパイラル型分離膜モジュールを筒型の密閉容器に収納し、テストガスとしてCO/H=10/90の割合で混合した混合ガスを10000ml/minで供給し
これを飽和水蒸気下で、圧力2atm、温度130℃にてモジュール内に供給し、透過ガスの流量を石けん流量計にて測定し、また、組成をガスクロマトグラフィにより分析した。
表2に、その評価結果を示す。表2において、ガス透過性は、透過ガス流量が100ml/min以上である場合をA、50ml/min以上100ml/min未満である場合をB、50ml/min未満である場合をCとした。また、CO/H選択性(分離係数)を算出した。CO/H選択性を示す分離係数αは、定常状態(標準温度・標準気圧:STP)における各成分の透過係数Q(m/ms Pa)比であるので、透過側ガスの流量と組成比より算出した。
α=Q(CO)/Q(H
本実施例及び比較例では、αが100以上である場合をA、αが30以上100未満である場合をB、αが30未満である場合をCとした。
表2に示されるように、透過ガス流路部材の溝と透過ガス集合管の中心軸とのなす角θが、実施例に示される角度を有するように配置させることで、ガス透過性及びCO選択性共に、従来の配置である比較例1に比して良好な結果が得られ、本発明の有効性が示された。
1 酸性ガス分離膜
2 多孔質膜
3 補助支持膜
4 多孔質支持体
5 酸性ガス分離促進輸送膜
10 酸性ガス分離用モジュール
12 透過ガス集合管
14 酸性ガス分離用積層体
20 原料ガス
22 透過ガス
30 供給ガス流路用部材
36 透過ガス流路用部材
36R 溝
34、40 封止部

Claims (5)

  1. 酸性ガスと水蒸気を少なくとも含む原料ガスが供給される供給ガス流路部材と、
    少なくとも親水性化合物と前記供給ガス流路用部材に供給された前記原料ガス中の前記酸性ガスと水存在下で反応する酸性ガスキャリアを含む促進輸送膜と、
    前記酸性ガスキャリアと反応して前記促進輸送膜を透過した前記酸性ガスが流れる透過ガス流路用部材とが積層されてなる積層体を有し、
    該積層体が、管壁に貫通孔が形成された透過ガス集合管に巻回されてなる酸性ガス分離用モジュールであって、
    前記透過ガス流路用部材が、少なくとも前記促進輸送膜側の面に複数の溝を有し、
    該複数の溝と、前記透過ガス集合管の中心軸とのなす角θが、0°以上45°以下である酸性ガス分離用モジュール。
  2. 前記透過ガス流路部材が合繊編物からなる請求項1記載の酸性ガス分離用モジュール。
  3. 前記透過ガス流路部材がトリコット編地からなり、前記溝が前記トリコット編地の隣接する2本のウェールにより形成されてなる請求項1または2記載の酸性ガス分離用モジュール。
  4. 前記酸性ガスキャリアが、アルカリ金属化合物を含む請求項1〜いずれか1項記載の酸性ガス分離用モジュール。
  5. 前記透過ガス集合管の一端側から前記供給ガス流路用部材に前記原料ガスを前記透過ガス集合管の長さ方向に供給し、前記透過ガス集合管の他端から前記酸性ガスを取り出すものである請求項1〜いずれか1項記載の酸性ガス分離モジュール。
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