JP5999844B2 - 酸性ガス分離用モジュール - Google Patents
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Description
酸性ガスと水蒸気を少なくとも含む原料ガスが供給される供給ガス流路部材と、
少なくとも親水性化合物と供給ガス流路用部材に供給された原料ガス中の酸性ガスと水存在下で反応する酸性ガスキャリアを含む促進輸送膜と、
酸性ガスキャリアと反応して促進輸送膜を透過した酸性ガスが流れる透過ガス流路用部材とが積層されてなる積層体を有し、
この積層体が、管壁に貫通孔が形成された透過ガス集合管に巻回されてなる酸性ガス分離用モジュールであって、
透過ガス流路用部材が、少なくとも促進輸送膜側の面に複数の溝を有し、
この複数の溝と透過ガス集合管の中心軸とのなす角θが、0°以上75°以下である。なす角θは、45°以下であることが好ましい。
水存在下で酸性ガスと反応する酸性ガスキャリアとしては、アルカリ金属化合物が好ましい。
酸性ガスと水蒸気を少なくとも含む原料ガス20が供給される供給ガス流路部材30と、
少なくとも親水性化合物と、供給ガス流路用部材30に供給された原料ガス20中の酸性ガスと水存在下で反応する酸性ガスキャリアとを含む促進輸送膜を備えたガス分離膜1と、
酸性ガスキャリアと反応して促進輸送膜を透過した酸性ガスと水蒸気を含む透過ガス22が流れる透過ガス流路用部材36とが積層されてなる積層体14を単数あるいは複数有し、
単数あるいは複数の積層体14が、管壁に貫通孔12Aが形成された透過ガス集合管12に巻回され、且つ、その最外周が被覆層16で覆われてなる筒状のスパイラルユニットを備え、
このスパイラルユニットの両端にそれぞれテレスコープ防止板18が取り付けられて構成されている。
酸性ガス分離用モジュール10において、透過ガス流路用部材36は、少なくとも促進輸送膜を備えたガス分離膜1側の面に複数の溝36Rを有しており、この複数の溝36Rは、透過ガス集合管12の中心軸と0°以上75°以下の角度θをなして形成されている。
なお、透過ガス流路用部材36において、透過ガス22は溝36Rを流れやすいが、細長い凸部36Wが空隙を有する素材により構成されてなる場合は凸部36Wの内部を流れる透過ガス22も存在する。特に、供給される原料ガスが大気圧以上の圧力を有している場合は、供給ガス側と透過ガス側に差圧により、透過ガス集合管12に向かった、スパイラルユニットの半径方向に透過ガス22は流れやすくなっている。
図4Aは、透過ガス集合管12と、「背景技術」の項目において述べた、従来のスパイラル型ガス分離モジュールに使用されている透過ガス流路用部材36との配置を示す上面模式図である。図示されるように、従来の透過ガス流路用部材においても、複数の細長い凸部36Wと溝36Rを備えているが、溝36Rと透過ガス集合管12の中心軸とのなす角θは略90°となっている。
また、圧損に関しては、一定の流量で流した圧縮空気の流量損失に近似でき、15cm角の透過ガス流路用部材36に室温で15L/min流した際に、7.5L/min以内の損失であることが好ましく、7L/min以内の損失であることがより好ましい。
図1に示されるように、透過ガス集合管12は、その管壁に複数の貫通孔12Aが形成された円筒状の管である。透過ガス集合管12は通常両端が開口した構成としているが、排出口26と反対側の一端は、閉じられている方が、貫通孔12Aから集合した透過ガス22に排出口26側に向かう流れを作り易く好ましい。図1に示されるように、透過ガスを並流にて取り出す場合には、原料ガス20が供給される側の一端が閉じられている態様が好ましいことになる。酸性ガス分離用モジュール10を複数基直列に連結させて使用する場合には、透過ガス22を回収する側と反対側の端部に配置された酸性ガス分離用モジュール10についてのみ、排出口26と反対側の一端が閉じられていることが好ましい。
なお、透過ガス22の流れを作り易くする等、透過ガス22を回収の効率化や、改質等を目的として、透過ガス集合管12内に、透過ガス22以外の流体を流してもよい。そのような場合には、排出口26と反対側の一端は閉じられていない方が良い場合もある。
具体的には、テレスコープ防止板18の材質は、金属材料(例えば、SUS、アルミニウム、アルミニウム合金、錫、錫合金等)、樹脂材料(例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ナイロン12、ナイロン66、ポリサルフィン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリル・エチレン・スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ニトリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等)、およびこれら樹脂の繊維強化プラスチック(例えば繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維、アラミド繊維などで、特に長繊維が好ましい。具体例としては、例えばガラス長繊維強化ポリプロピレン、ガラス長繊維強化ポリフェニレンサルファイドなど)、並びに、セラミックス(例えばゼオライト、アルミナなど)等が挙げられる。
図1及び図5を参照して積層体14について説明する。積層体14は、二つ折りした酸性ガス分離膜1の内側に供給ガス流路用部材30が挟み込まれ、これらの径方向内側で酸性ガス分離膜1が透過ガス流路用部材36に、これらに浸透した封止部(図1においては不図示)を介して封止されて構成される。
図5に示すように、スパイラル型モジュールにおいては、積層体14が透過ガス集合管に巻回されて、断面において透過ガス集合管12上に積層体14が積み重なった構成を備えている。積層体14同士は両端において接着部40を介して接着されている。
<<供給ガス流路用部材>>
供給ガス流路用部材30は、酸性ガス分離モジュールの一端部から酸性ガスを含む原料ガスが供給される部材であり、スペーサーとしての機能を有し、且つ、原料ガスに乱流を生じさせることが好ましいことから、ネット状の部材が好ましく用いられる。ネットの形状によりガスの流路が変わることから、ネットの単位格子の形状は、目的に応じて、例えば、菱形、平行四辺形などの形状から選択して用いられる。また、高温で水蒸気を含有する原料ガスを供給することを想定すると、供給ガス流路用部材は、後述する酸性ガス分離層と同様に耐湿熱性を有することが好ましい。
(酸性ガス分離促進輸送膜)
酸性ガス分離促進輸送膜5(以下において、単に促進輸送膜5と称する。)は、親水化合物および酸性ガスキャリアを含むものである。
((酸性ガスキャリア))
酸性ガスキャリアとは、間接的に酸性ガスと反応するもの、また、そのもの自体が直接酸性ガスと反応するものを言う。間接的に酸性ガスと反応するとは、例えば、供給ガス中に含まれる他のガスと反応し、塩基性を示し、その塩基性化合物と酸性ガスが反応することなどが挙げられる。この種の酸性ガスキャリアとしては、より具体的には、スチームと反応してOH−を放出し、そのOH−がCO2と反応することで膜中に選択的にCO2を取り込むことができるようなアルカリ金属化合物が挙げられる。
また、直接酸性ガスと反応する酸性ガスキャリアとしては、そのもの自体が塩基性であるような、例えば、窒素含有化合物や硫黄酸化物などが挙げられる。
なお、本明細書において、アルカリ金属化合物とは、アルカリ金属そのもののほか、その塩およびそのイオンを含む意味で用いる。
アルカリ金属重炭酸塩としては、例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、及び炭酸水素セシウムなどが挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、及び水酸化セシウムなどが挙げられる。
これらの中でも、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、また、酸性ガスとの親和性がよいという観点から、水に対する溶解度の高いカリウム、ルビジウム、及びセシウムをアルカリ金属元素として含む化合物が好ましい。
さらに、キャリアは、潮解性を有する第1アルカリ金属化合物と、当該第1アルカリ金属化合物よりも潮解性が低く比重が小さい第2アルカリ金属化合物とを含むことがより好ましい。具体的に、第1アルカリ金属化合物として炭酸セシウムが挙げられ、第2アルカリ金属化合物として炭酸カリウムが挙げられる。
キャリアが第1アルカリ金属化合物と第2アルカリ金属化合物を含むことで、比重が小さい第2アルカリ金属化合物が促進輸送膜の膜面側に配置され(つまり促進輸送膜の表面側に偏在して配置され)、比重が大きい第1アルカリ金属化合物が促進輸送膜の膜内側に配置される(つまり促進輸送膜の多孔質支持体側に偏在して配置される)。そして、膜面側に配置される第2アルカリ金属化合物は第1アルカリ金属化合物よりも潮解性が低いため、膜面側に第1アルカリ金属化合物が配置される場合に比べて、膜面がべたつかず、ブロッキングを抑止することができる。また、膜内側には潮解性の高い第1アルカリ金属化合物が配置されるので、単に第2アルカリ金属化合物が膜全体に配置される場合に比べて、ブロッキングを抑止するとともに、炭酸ガスの分離効率を高めることができる。
硫黄化合物としては、例えば、シスチン、システインなどのアミノ酸類、ポリチオフェン、ドデシルチオールなどを用いることができる。
親水性化合物はバインダーとして機能するものであり、促進輸送膜5に使用するときに水を保持して酸性ガスキャリアによる酸性ガスの分離機能を発揮させる。親水性化合物は、水に溶けて、もしくは、水に分散して塗布液を形成することができるとともに、促進輸送膜5が高い親水性(保湿性)を有する観点から、親水性が高いものが好ましく、親水性化合物自体の質量に対して、5倍以上1000倍以下の質量の水を吸収するものであるものが好ましい。
市販されているPVA−PAA共重合体として、例えば、クラストマー−AP20(商品名:クラレ社製)が挙げられる。
促進輸送膜5を支持する多孔質支持体4は多孔質膜2と補助支持膜3とが積層してなるものである。補助支持膜3を備えることにより、力学的強度を向上させることができ、塗布機などでハンドリングしても、しわがよらないなどの効果があり、生産性を向上させることができる。
多孔質膜2は、被分離ガスである二酸化炭素等の酸性ガス及び水蒸気に対して透過性を有するものである。
多孔質膜2は、促進輸送膜形成時の促進輸送材料の浸み込みを抑制するという観点から、その孔径は小さいことが好ましい。最大孔径が1μm以下であることが好ましい。孔径の下限値は特に限定されないが、0.001μm程度である。
多孔質膜2の厚みは、1μm以上100μm以下が好ましい。
ここで疎水性とは、室温(25℃)における水の接触角が80°程度以上であることを指す。
ただし、親水性多孔質膜の膜厚が、促進輸送膜の膜厚以下であれば、その限りではない。
補助支持膜3は、多孔質膜2の補強用に備えられるものであり、強度、耐延伸性及び気体透過性が良好であれば、特に制限はなく、不織布、織布、織布、及び、最大孔径が0.001μm以上500μmであるメッシュなどを適宜選択して用いることができる。
補助支持膜3の厚みは50μm以上300μm以下が好ましい。
これらの材料のうち、安価で力学的強度の強いポリプロピレン(PP)からなる不織布を用いることが特に好ましい。
材質としては、耐熱湿性を有するものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリルニトリル共重合体、ブタジエン−アクリルニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。
特に好ましいのはエポキシ樹脂である。
なお、接着剤の濡れ性を向上させるため、溶剤や、界面活性剤を含有していてもかまわない。
次に、上述した構成の酸性ガス分離用モジュールの製造方法を説明する。
図7A〜図7Cは酸性ガス分離用モジュールの製造工程図である。酸性ガス分離用モジュール10の製造方法では、まず図7Aに示すように、カプトンテープまたは接着剤等の固定部材55で、長尺状の透過ガス流路用部材36の先端部を透過ガス集合管12の管壁(外周面)に固定する。ここで、管壁には、軸方向に沿ってスリット(不図示)が設けられていることが好ましい。この場合、スリットに、透過ガス流路用部材36の先端部を入れ込み、透過ガス集合管12の内周面に固定部材55で固定するようにする。この構成によれば、透過ガス流路用部材36を含んだ積層体14を透過ガス集合管12に巻き付けるときに、テンションをかけながら巻き付けるようにしても、透過ガス集合管12の内周面と透過ガス流路用部材36との摩擦で、透過ガス流路用部材36がスリットから抜けない、すなわち、透過ガス流路用部材36の固定が維持される。
なお、供給ガス流路用部材30を酸性ガス分離膜1を二つ折りにした間に挟み込んだものを1ユニットとし、このユニットと透過ガス流路用部材36を交互に積層し、結果として図9に示すように積層体14を複数重ねて(本例では3ユニット分)、透過ガス集合管に多重に巻き付けてもよい。なお、複数ユニット重ねる場合には、集合管に巻きつけた後の段差が大きくならないように、図9に示すように、少しずつずらして重ねる。
以下、本発明の酸性ガス分離用モジュールを実施例によりさらに詳細に説明する。
クラストマーAP-20(クラレ社製):2.4質量%、25%グルタルアルデヒド水溶液(Wako社製):0.01質量%を含む水溶液に、1M塩酸をpH1になるまで添加し、架橋後、キャリアとしての40%炭酸セシウム(稀産金属社製)水溶液を炭酸セシウム濃度が3.66質量%になるように添加し、次いで、40%炭酸カリウム(Wako社製)水溶液を炭酸カリウム濃度が0.61質量となるように添加し、更に、ブロッキング抑止剤として1%ラピゾールA−90(日油社製)を0.003質量%となるように添加し、昇温後、撹拌し脱泡し、別に調温しておいた寒天水溶液を加えて塗布組成物とした。
このユニット3セット積層した後、透過ガス集合管にまきつけてスパイラル型分離膜モジュールを作製した。
作製したスパイラル型分離膜モジュールを筒型の密閉容器に収納し、テストガスとしてCO2/H2=10/90の割合で混合した混合ガスを10000ml/minで供給し
これを飽和水蒸気下で、圧力2atm、温度130℃にてモジュール内に供給し、透過ガスの流量を石けん流量計にて測定し、また、組成をガスクロマトグラフィにより分析した。
α=Q(CO2)/Q(H2)
本実施例及び比較例では、αが100以上である場合をA、αが30以上100未満である場合をB、αが30未満である場合をCとした。
表2に示されるように、透過ガス流路部材の溝と透過ガス集合管の中心軸とのなす角θが、実施例に示される角度を有するように配置させることで、ガス透過性及びCO2選択性共に、従来の配置である比較例1に比して良好な結果が得られ、本発明の有効性が示された。
2 多孔質膜
3 補助支持膜
4 多孔質支持体
5 酸性ガス分離促進輸送膜
10 酸性ガス分離用モジュール
12 透過ガス集合管
14 酸性ガス分離用積層体
20 原料ガス
22 透過ガス
30 供給ガス流路用部材
36 透過ガス流路用部材
36R 溝
34、40 封止部
Claims (5)
- 酸性ガスと水蒸気を少なくとも含む原料ガスが供給される供給ガス流路用部材と、
少なくとも親水性化合物と前記供給ガス流路用部材に供給された前記原料ガス中の前記酸性ガスと水存在下で反応する酸性ガスキャリアを含む促進輸送膜と、
前記酸性ガスキャリアと反応して前記促進輸送膜を透過した前記酸性ガスが流れる透過ガス流路用部材とが積層されてなる積層体を有し、
該積層体が、管壁に貫通孔が形成された透過ガス集合管に巻回されてなる酸性ガス分離用モジュールであって、
前記透過ガス流路用部材が、少なくとも前記促進輸送膜側の面に複数の溝を有し、
該複数の溝と、前記透過ガス集合管の中心軸とのなす角θが、0°以上45°以下である酸性ガス分離用モジュール。 - 前記透過ガス流路用部材が合繊編物からなる請求項1記載の酸性ガス分離用モジュール。
- 前記透過ガス流路用部材がトリコット編地からなり、前記溝が前記トリコット編地の隣接する2本のウェールにより形成されてなる請求項1または2記載の酸性ガス分離用モジュール。
- 前記酸性ガスキャリアが、アルカリ金属化合物を含む請求項1〜3いずれか1項記載の酸性ガス分離用モジュール。
- 前記透過ガス集合管の一端側から前記供給ガス流路用部材に前記原料ガスを前記透過ガス集合管の長さ方向に供給し、前記透過ガス集合管の他端から前記酸性ガスを取り出すものである請求項1〜4いずれか1項記載の酸性ガス分離モジュール。
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