(発明の詳細な説明)
(1.概要)
トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーは、共通の配列エレメントと構造モチーフを共有する、種々の増殖因子を含む。これらのタンパク質は、脊椎動物および無脊椎動物の両方における広範な種々の細胞型に対して生物学的作用を発揮することが公知である。このスーパーファミリーのメンバーは、胚発生の間に、パターン形成および組織の特異化において重要な機能を果たし、そして、脂質生成、筋発生、軟骨形成、心臓発生、造血、神経発生および上皮細胞分化を含む種々の分化プロセスに影響を及ぼし得る。TGF−βファミリーのメンバーの活性を操作することによって、しばしば、生物において有意な生理学的変化を引き起こすことが可能である。例えば、ウシのPiedmonteseおよびBelgian Blue品種は、GDF8(ミオスタチンとも呼ばれる)遺伝子に機能喪失変異を有しており、筋肉量の顕著な増加を引き起こしている。Grobetら、Nat Genet.1997年、17巻(1号):71〜4頁。さらに、ヒトでは、GDF8の不活性な対立遺伝子は、筋肉量の増加、および、報告によれば、非常に優れた強度と関連している。Schuelkeら、N Engl J Med 2004年、350巻:2682〜8頁。
TGF−βシグナルは、I型およびII型のセリン/スレオニンキナーゼ受容体の異種複合体(heteromeric complex)によって媒介され、これらは、リガンド刺激の際に、下流のSmadタンパク質をリン酸化および活性化する(Massague、2000年、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.1巻:169〜178頁)。これらのI型およびII型受容体は、システインリッチな領域を持つリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および、予測セリン/スレオニン特異性を持つ細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。I型受容体は、シグナル伝達に必須であり、そして、II型受容体は、リガンド結合およびI型受容体の発現に必要とされる。I型およびII型のアクチビン受容体は、リガンド結合後に安定な複合体を形成し、II型受容体によるI型受容体のリン酸化をもたらす。
2つの関連するII型受容体(ActRII)であるActRIIAおよびActRIIBが、アクチビンに対するII型受容体として同定されている(MathewsおよびVale、1991年、Cell 65巻:973〜982頁;Attisanoら、1992年、Cell 68巻:97〜108頁)。ActRIIAおよびActRIIBは、アクチビンに加えて、BMP7、Nodal、GDF8およびGDF11を含むいくつかの他のTGF−βファミリータンパク質と生化学的に相互作用し得る(Yamashitaら、1995年、J.Cell Biol.130巻:217〜226頁;LeeおよびMcPherron、2001年、Proc.Natl.Acad.Sci.98巻:9306〜9311頁;YeoおよびWhitman、2001年、Mol.Cell 7巻:949〜957頁;Ohら、2002年、Genes Dev.16巻:2749〜54頁)。ALK4は、アクチビン、特にアクチビンAに対する主たるI型受容体であり、そして、ALK−7は同様に、アクチビン、特にアクチビンBに対する受容体として機能し得る。特定の実施形態では、本発明は、本主題のGDFトラップポリペプチドでActRIIB受容体のリガンド(ActRIIBリガンドとも呼ばれる)に拮抗することに関する。ActRIIB受容体の例示的なリガンドには、一部のTGF−βファミリーメンバー、例えばアクチビンA、アクチビンB、Nodal、GDF8、GDF11およびBMP7が含まれる。
アクチビンは、TGF−βスーパーファミリーに属する二量体ポリペプチド増殖因子である。3つの主なアクチビン形態(A、BおよびAB)が存在し、これらは、2つの密接に関連するβサブユニットのホモ二量体/ヘテロ二量体(それぞれ、βAβA、βBβBおよびβAβB)である。ヒトゲノムはまた、アクチビンCおよびアクチビンEもコードしているが、これらは、主として肝臓で発現されており、そして、βCもしくはβEを含むヘテロ二量体形態もまた公知である。TGF−βスーパーファミリーにおいて、アクチビンは、卵巣および胎盤の細胞におけるホルモン生成を刺激し得、神経細胞の生存を支援し得、細胞周期の進行に対して細胞型に依存して正もしくは負に影響を及ぼし得、そして、少なくとも両生類の胚において中胚葉分化を誘導し得る、独特かつ多機能の因子である(DePaoloら、1991年、Proc Soc Ep Biol Med.198巻:500〜512頁;Dysonら、1997年、Curr Biol.7巻:81〜84頁;Woodruff、1998年、Biochem Pharmacol.55巻:953〜963頁)。さらに、刺激されたヒト単球性白血病細胞から単離された赤血球分化因子(EDF)は、アクチビンAと同一であることが分かった(Murataら、1988年、PNAS、85巻:2434頁)。アクチビンAは、骨髄における赤血球生成を促進することが示唆されている。いくつかの組織では、アクチビンのシグナル伝達は、その関連するヘテロ二量体であるインヒビンによって拮抗される。例えば、下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出の間に、アクチビンは、FSHの分泌および合成を促進するが、インヒビンは、FSHの分泌および合成を抑制する。アクチビンの生活性を調節し得、そして/または、アクチビンに結合し得る他のタンパク質としては、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP)およびα2−マクログロブリンが挙げられる。
Nodalタンパク質は、中胚葉および内胚葉の誘導および形成、ならびに初期胚形成における心臓および胃などの軸構造物の以降の組織化において機能を果たす。発生中の脊椎動物の胚の背側組織は脊索および前索板の軸構造物に主に寄与し、同時に、それは周辺細胞を動員して非軸性の胚性構造物を形成することが実証されている。Nodalは、I型およびII型の両受容体ならびにSmadタンパク質として公知の細胞内のエフェクターを通してシグナル伝達するようである。最近の研究は、ActRIIAおよびActRIIBがNodalのためのII型受容体の役目を果たすという考えを支持している(Sakumaら、Genes Cells.2002年、7巻:401〜12頁)。Nodalリガンドは、それらの補助因子(例えば、cripto)と相互作用して、Smad2をリン酸化するアクチビンI型およびII型受容体を活性化させることが示唆されている。Nodalタンパク質は、中胚葉形成、前方パターニングおよび左右軸の特異化を含む、初期の脊椎動物の胚に重要な多くの事象との関係が示唆されている。実験上の証拠は、Nodalシグナル伝達が、アクチビンおよびTGF−βに特異的に応答することが前に示されたルシフェラーゼレポーターである、pAR3−Luxを活性化することを実証している。しかし、Nodalは、骨形態発生タンパク質に特異的に応答性であるレポーターであるpTlx2−Luxを誘導することができない。最新結果は、Nodalシグナル伝達がアクチビン−TGF−β経路SmadのSmad2およびSmad3の両方によって媒介されることの直接の生化学的証拠を提供する。さらなる証拠は、細胞外のcriptoタンパク質がNodalシグナル伝達のために必要とされることを示し、このことは、Nodalシグナル伝達をアクチビンまたはTGF−βのシグナル伝達から差別化する。
増殖および分化因子8(GDF8)は、ミオスタチンとしても公知である。GDF8は、骨格筋量の負の調節因子である。GDF8は、発生中および成体の骨格筋で高く発現される。トランスジェニックマウスでのGDF8ヌル変異は、骨格筋の著しい肥大および過形成を特徴とする(McPherronら、Nature、1997年、387巻:83〜90頁)。骨格筋量の類似した増加は、ウシ(Ashmoreら、1974年、Growth、38巻:501〜507頁;SwatlandおよびKieffer、J. Anim. Sci.、1994年、38巻:752〜757頁;McPherronおよびLee、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1997年、94巻:12457〜12461頁およびKambadurら、Genome Res.、1997年、7巻:910〜915頁)、および驚くべきことにヒト(Schuelkeら、N Engl J Med、2004年、350巻:2682〜8頁)のGDF8の天然に存在する変異において明白である。研究は、ヒトのHIV感染に関連する筋肉消耗には、GDF8タンパク質発現の増加が付随することも示している(Gonzalez−Cadavidら、PNAS、1998年、95巻:14938〜43頁)。さらに、GDF8は筋肉特異的酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)の生成を調節すること、および筋芽細胞増殖を調節することができる(国際公開第00/43781号)。GDF8プロペプチドは、成熟したGDF8ドメイン二量体に非共有結合的に結合し、その生物活性を不活性化することができる(Miyazonoら、(1988年)J. Biol. Chem.、263巻:6407〜6415頁;Wakefieldら(1988年)J. Biol. Chem.、263巻:7646〜7654頁およびBrownら(1990年)Growth Factors、3巻:35〜43頁)。GDF8または構造的に関連するタンパク質に結合して、それらの生物活性を阻害する他のタンパク質には、フォリスタチン、および潜在的に、フォリスタチン関連のタンパク質が含まれる(Gamerら(1999年)Dev. Biol.、208巻:222〜232頁)。
BMP11としても公知の増殖および分化因子11(GDF11)は、分泌タンパク質である(McPherronら、1999年、Nat. Genet.22巻:260〜264頁)。GDF11は、マウスの発生中、尾芽、肢芽、上顎および下顎弓、ならびに後根神経節で発現される(Nakashimaら、1999年、Mech. Dev.80巻:185〜189頁)。GDF11は、中胚葉および神経の両組織をパターン化することにおいて、特異な役割を演ずる(Gamerら、1999年、Dev Biol.、208巻:222〜32頁)。GDF11は、発生中のニワトリの肢における軟骨形成および筋発生の負の調節因子であることが示された(Gamerら、2001年、Dev Biol.229巻:407〜20頁)。筋肉でのGDF11の発現はまた、GDF8に類似した方法で筋成長を調節することにおけるその役割を示唆する。さらに、脳でのGDF11の発現は、GDF11が神経系の機能に関する活性を有することもできることを示唆する。興味深いことに、GDF11は嗅上皮で神経発生を阻害することが見出された(Wuら、2003年、Neuron.37巻:197〜207頁)。
骨形成性タンパク質1(OP−1)とも呼ばれる骨形態発生タンパク質(BMP7)は、軟骨および骨の形成を誘導することが周知である。さらに、BMP7は多数の生理過程を調節する。例えば、BMP7は、上皮骨形成の現象の役割を担う、骨誘導因子である可能性がある。BMP7は、カルシウム調節および骨ホメオスタシスで役割を果たすことが見出されてもいる。アクチビンと同様に、BMP7は、II型受容体、ActRIIAおよびActRIIBに結合する。しかし、BMP7およびアクチビンは、ヘテロマーの受容体複合体に異なるI型受容体を動員する。観察された主要なBMP7のI型受容体はALK2であったが、アクチビンはALK4(ActRIIB)に排他的に結合した。BMP7およびアクチビンは異なる生物反応を引き出して、異なるSmad経路を活性化した(Macias−Silvaら、1998年、J Biol Chem.273巻:25628〜36頁)。
本明細書で実証されるように、改変体ActRIIBポリペプチド(ActRIIB)であるGDFトラップポリペプチドは、野生型の可溶性ActRIIBポリペプチドと比較してインビボで赤血球レベルを高めることにおいてより有効であり、貧血および無効赤血球生成の様々なモデルで有益な影響を及ぼす。さらに、EPO受容体活性化因子と組み合わせたGDFトラップポリペプチドの使用は、赤血球形成の実質的な増加をもたらすことが示される。造血は、エリスロポエチン、G−CSFおよび鉄のホメオスタシスを含む種々の要因によって調節される複雑なプロセスであることに注意すべきである。用語「赤血球レベルを増加させる」および「赤血球の形成を促進する」とは、ヘマトクリット、赤血球数およびヘモグロビン測定値のような臨床的に観察可能な測定基準(metrics)を指し、そのような変化が生じる機構に関しては中立であることが意図される。
赤血球レベルを刺激することに加えて、GDFトラップポリペプチドは、例えば筋成長を促進することを含む様々な治療適用に有用である(参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、PCT公開WO2006/012627およびPCT公開WO2008/097541を参照)。特定の例では、筋肉を増加させるためにGDFトラップポリペプチドを投与する場合、赤血球に対する影響を低減または最小にすることが望ましいことがある。GDFトラップポリペプチドによって処置されている患者、またはその処置候補である患者で様々な血液学的パラメータをモニターすることによって、適当な投薬(投与の量および頻度を含む)を、個々の患者の必要性、ベースラインの血液学的パラメータおよび処置目的に基づいて判定することができる。さらに、治療の進捗および1つまたは複数の血液学的パラメータに対する経時的影響は、患者ケアの促進、適当な維持投薬(量および頻度の両方)の判定などによって、GDFトラップポリペプチドを投薬されている患者の管理において有益となることがある。
EPOとは、赤血球系前駆細胞の赤血球への成長および成熟に関与する糖タンパク質ホルモンである。EPOは、胎児期には肝臓により生成され、成体では腎臓により生成される。成体において、腎不全の帰結として一般的に生じるEPOの生成の減少は、貧血をもたらす。EPOは、遺伝子操作法により、EPO遺伝子でトランスフェクトした宿主細胞からの、該タンパク質の発現および分泌に基づき生成されている。このような組換えEPOの投与は、貧血の処置において有効であった。例えば、Eschbachら(1987年、N Engl J Med、316巻:73頁)は、慢性腎不全により引き起こされる貧血を矯正するためのEPOの使用について記載している。
EPOの効果は、EPO受容体と称する、サイトカイン受容体のスーパーファミリーに属する細胞表面受容体へのEPOの結合、および該細胞表面受容体の活性化によって媒介される。ヒトEPO受容体およびマウスEPO受容体は、クローニングされ、発現している(D’Andreaら、1989年、Cell、57巻:277頁;Jonesら、1990年、Blood、76巻:31頁;Winkelmanら、1990年、Blood、76巻:24頁;WO90/08822/米国特許第5,278,065号)。ヒトEPO受容体遺伝子は、約224アミノ酸の細胞外ドメインを含む483アミノ酸の膜貫通タンパク質をコードし、マウスEPO受容体との約82%のアミノ酸配列の同一性を示す(米国特許第6,319,499号を参照されたい)。クローニングされて哺乳動物細胞で発現した全長EPO受容体(66〜72kDa)は、赤血球系前駆細胞上の天然受容体のアフィニティーと同様のアフィニティー(KD=100〜300nM)でEPOに結合する。したがって、この形態は、主要なEPO結合決定基を含有すると考えられ、EPO受容体と称する。他の近縁のサイトカイン受容体との類比によれば、EPO受容体は、アゴニストに結合すると二量体化すると考えられる。それにも関わらず、多量体の複合体であり得るEPO受容体の詳細な構造、およびその活性化の特異的機構は、完全には理解されていない(米国特許第6,319,499号)。
EPO受容体の活性化は、複数の生物学的効果を結果としてもたらす。複数の生物学的効果としては、未成熟赤芽球の増殖の増大、未成熟赤芽球の分化の増大、および赤血球系前駆細胞におけるアポトーシスの減少が挙げられる(Liboiら、1993年、Proc Natl Acad Sci USA、90巻:11351〜11355頁;Kouryら、1990年、Science、248巻:378〜381頁)。増殖を媒介するEPO受容体のシグナル伝達経路と、分化を媒介するEPO受容体のシグナル伝達経路とは、異なると考えられる(Noguchiら、1988年、Mol Cell Biol、8巻:2604頁;Patelら、1992年、J Biol Chem、1992年、267巻:21300頁;Liboiら、同上)。一部の結果は、アクセサリータンパク質が、分化シグナルの媒介に必要とされ得ることを示唆する(Chibaら、1993年、Nature、362巻:646頁;Chibaら、1993年、Proc Natl Acad Sci USA、90巻:11593頁)が、上記受容体の構成的活性化形態は、増殖および分化のいずれも刺激し得るので、分化におけるアクセサリータンパク質の役割については、議論が一致していない(Pharrら、1993年、Proc Natl Acad Sci USA、90巻:938頁)。
EPO受容体活性化因子としては、低分子赤血球生成刺激剤(ESA)のほか、EPOベースの化合物が挙げられる。前者の例は、ポリエチレングリコールへと共有結合的に連結した二量体のペプチドベースのアゴニスト(商品名:Hematide)であり、これは、健康なボランティアならびに慢性腎疾患および内因性の抗EPO抗体の両方を有する患者において赤血球生成刺激特性を示している(Steadら、2006年、Blood、108巻:1830〜1834頁;Macdougallら、2009年、N Engl J Med、361巻:1848〜1855頁)。他の例としては、非ペプチドベースのESA(Qureshiら、1999年、Proc Natl Acad Sci USA、96巻:12156〜12161頁)が挙げられる。
EPO受容体活性化因子としてはまた、EPO受容体自体には接触せずに、内因性EPOの生成を増強することにより赤血球生成を間接的に刺激する化合物も挙げられる。例えば、低酸素誘導転写因子(HIF)は、正常酸素状態下では、細胞内調節機構により抑制される(不安定化する)、EPO遺伝子発現の内因性刺激因子である。したがって、HIFプロリルヒドロキシラーゼ酵素の阻害剤が、in vivoにおけるEPO誘導活性について調査されている。EPO受容体の他の間接的な活性化因子としては、EPO遺伝子発現を持続的に(tonically)阻害するGATA−2転写因子の阻害剤(Nakanoら、2004年、Blood、104巻:4300〜4307頁)、およびEPO受容体シグナル伝達の負の調節因子として機能する造血細胞ホスファターゼ(HCPまたはSHP−1)の阻害剤(Klingmullerら、1995年、Cell、80巻:729〜738頁)が挙げられる。
本明細書中で使用される用語は、一般に、本発明の文脈の範囲内で、かつ、各々の用語が使用される特定の文脈において、当該分野におけるその通常の意味を有する。本発明の組成物および方法、ならびに、これらの作製方法および使用方法の記載において、専門家にさらなる案内を提供するために、特定の用語が以下または本明細書中の他の場所で論じられている。用語の任意の使用の範囲または意味は、その用語が使用される特定の文脈から明らかである。
「約」および「およそ」は、一般に、測定の性質または正確さが既知の測定された量についての誤差の容認可能な程度を意味するものとする。代表的には、例示的な誤差の程度は、所与の値または値の範囲の、20パーセント(%)以内、好ましくは10パーセント(%)以内、そしてより好ましくは5%以内である。
あるいは、そして、特に生物学的な系において、用語「約」および「およそ」は、所与の値の1桁以内、好ましくは、5倍以内、そしてより好ましくは2倍以内の値を意味し得る。本明細書中に与えられる数量は、特に明記しない限り近似値であり、明白に記述されない場合には、用語「約」または「およそ」が、推量され得ることを意味する。
本発明の方法は、配列を互いに比較する工程を包含し得、この比較には、野生型配列の1または複数の変異体(配列改変体)に対する比較を含む。このような比較は代表的には、例えば、当該分野で周知の配列アラインメントのプログラムおよび/またはアルゴリズム(例えば、少数の名を挙げれば、BLAST、FASTAおよびMEGALIGN)を用いた、ポリマー配列のアラインメントを含む。当業者は、変異が残基の挿入または欠失を含む場合のこのようなアラインメントにおいて、配列のアラインメントは、挿入もしくは欠失された残基を含まないポリマー配列中に「ギャップ」(代表的には、ダッシュまたは「A」で表される)を導入することを容易に理解し得る。
「相同」は、そのあらゆる文法的な形態および語の綴りのバリエーションにおいて「共通する進化的起源」を有する2つのタンパク質間の関係を指し、同じ生物種のスーパーファミリーからのタンパク質ならびに異なる生物種からの相同タンパク質を含む。このようなタンパク質(およびこれをコードする核酸)は、%同一性の観点であれ、特定の残基もしくはモチーフおよび保存された位置の存在によるものであれ、その配列類似性によって反映されるように、配列の相同性を有する。
用語「配列類似性」は、そのあらゆる文法的な形態において、共通する進化の起源を共有している場合も共有していない場合もある、核酸もしくはアミノ酸配列間の同一性もしくは対応性の程度をいう。
しかし、一般的な用法およびこの出願において、用語「相同」は、「高度に」のような副詞で修飾されるとき、配列の類似性を指す場合があり、そして、共通する進化の起源に関連していてもしていなくてもよい。
(2.GDFトラップポリペプチド)
特定の態様では、本発明はGDFトラップポリペプチド、例えば、可溶性の改変体ActRIIBポリペプチド、例えば、ActRIIBポリペプチドのフラグメント、機能的改変体、および修飾された形態を含めたものに関する。特定の実施形態では、GDFトラップポリペプチドは、少なくとも1の、対応する野生型ActRIIBポリペプチドと同様または同一の生物活性を有する。例えば、本発明のGDFトラップポリペプチドは、ActRIIBリガンドに結合し、その機能を阻害し得る(例えば、アクチビンA、アクチビンAB、アクチビンB、Nodal、GDF8、GDF11またはBMP7)。任意選択で、GDFトラップポリペプチドは赤血球レベルを増加させる。GDFトラップポリペプチドの例としては、1つまたは複数の配列の差異を有するヒトActRIIB前駆体ポリペプチド(配列番号1または39)、および1つまたは複数の配列の差異を有する可溶性ヒトActRIIBポリペプチド(例えば、配列番号2、3、7、11、26、28、29、32、37、38、40および41)が挙げられる。
本明細書中で使用される場合、用語「ActRIIB」は、任意の種に由来するアクチビン受容体IIb型(ActRIIB)タンパク質のファミリー、および、変異誘発もしくは他の修飾法によってこのようなActRIIBタンパク質から誘導された改変体を指す。本明細書におけるActRIIBに対する言及は、現在同定されている形態のうちの任意の1つに対する言及であるものと理解される。ActRIIBファミリーのメンバーは、一般に、システインリッチな領域を持つリガンド結合細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび予測セリン/スレオニンキナーゼ活性を持つ細胞質ドメインから構成される、膜貫通タンパク質である。ヒトActRIIA可溶性細胞外ドメイン(比較のために準備した)およびActRIIB可溶性細胞外ドメインのアミノ酸配列を図1に示す。
用語「ActRIIBポリペプチド」は、ActRIIBファミリーメンバーの任意の天然に存在するポリペプチド、ならびに、有用な活性を保持するその任意の改変体(変異体、フラグメント、融合物およびペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを包含する。例えば、WO2006/012627を参照のこと。例えば、ActRIIBポリペプチドは、ActRIIBポリペプチドの配列に対して少なくとも約80%同一な、そして、任意選択で、少なくとも85%、90%、95%、97%、99%もしくはそれより高い同一性を持つ配列を有する任意の公知のActRIIBの配列から誘導されたポリペプチドを包含する。例えば、ActRIIBポリペプチドは、ActRIIBタンパク質および/またはアクチビンに結合し、これらの機能を阻害し得る。GDFトラップであるActRIIBポリペプチドは、インビボで赤血球の形成を促進する際の活性について選択され得る。ActRIIBポリペプチドの例としては、ヒトActRIIB前駆体ポリペプチド(配列番号1および39)および可溶性ヒトActRIIBポリペプチド(例えば、配列番号2、3、7、11、26、28、29、32、37、38、40および41)が挙げられる。本明細書中に記載される全てのActRIIB関連ポリペプチドのアミノ酸の番号付けは、他に特に指定がなければ、配列番号1についての番号付けに基づく。
ヒトActRIIB前駆体タンパク質の配列は以下の通りである。
シグナルペプチドに一重下線を付す。細胞外ドメインは太字で示し、そして、潜在的なN連結グリコシル化部位は四角で囲む。
64位にアラニンを持つ形態も、以下の通り文献に報告されている。
ヒトActRIIBの可溶性(細胞外)の、プロセシング後のポリペプチド配列は以下の通りである。
A64を持つ代替の形態は以下の通りである。
一部の条件では、タンパク質はN末端に「SGR...」配列を伴って生成され得る。細胞外ドメインのC末端「テール」に下線を付す。「テール」が欠失された配列(△15配列)は以下の通りである。
A64を持つ代替の形態は以下の通りである。
一部の条件では、タンパク質はN末端に「SGR...」配列を伴って生成され得る。ヒトActRIIB前駆体タンパク質をコードする核酸配列は以下の通りである(GenbankエントリーNM_001106のヌクレオチド5〜1543)(示した配列は64位にアラニンを提供し、代わりにアルギニンを提供するように修飾され得る)。
ヒトActRIIBの可溶性(細胞外)ポリペプチドをコードする核酸配列は以下の通りである(示した配列は64位にアラニンを提供し、代わりにアルギニンを提供するように修飾され得る。
特定の実施形態では、本発明は、可溶性ActRIIBポリペプチドの改変体の形態であるGDFトラップポリペプチドに関する。本明細書中に記載されるように、用語「可溶性ActRIIBポリペプチド」は、一般に、ActRIIBタンパク質の細胞外ドメインを含むポリペプチドを指す。本明細書中で使用される場合、用語「可溶性ActRIIBポリペプチド」は、任意の天然に存在するActRIIBタンパク質の細胞外ドメイン、ならびに、有用な活性を保持するその任意の改変体(変異体、フラグメントおよびペプチド模倣形態を含む)を包含する。例えば、ActRIIBタンパク質の細胞外ドメインはリガンドに結合し、一般に可溶性である。可溶性ActRIIBポリペプチドの例としては、ActRIIBの可溶性ポリペプチド(例えば、配列番号2、3、7、11、26、28、29、32、37、38、40および41)が挙げられる。可溶性ActRIIBポリペプチドの他の例は、ActRIIBタンパク質の細胞外ドメインに加えて、シグナル配列を含む。実施例1を参照のこと。シグナル配列は、ActIIBのネイティブなシグナル配列、または組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)のシグナル配列もしくはミツバチメリチン(HBM)のシグナル配列などの、別のタンパク質からのシグナル配列であり得る。
本開示は、ActRIIBの機能的に活性な部分および改変体を同定する。出願人は、配列番号1のアミノ酸64に対応する位置にアラニンを有する(A64)、Hildenら(Blood.1994年4月15日;83巻(8号):2163〜70頁)によって開示されている配列を有するFc融合タンパク質が、アクチビンおよびGDF−11に対して比較的低い親和性を有することを確認した。対照的に、64位にアルギニンを持つ(R64)同じFc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF−11に対して、低ナノモルから高ピコモルまでの範囲で親和性を有する。したがって、R64を持つ配列は、本開示では、ヒトActRIIBの野生型参照配列として使用される。
Attisanoら(Cell.1992年1月10日;68巻(1号)97〜108頁)は、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端におけるプロリンノットの欠失により、アクチビンに対する受容体の親和性が減少することを示した。配列番号1のアミノ酸20〜119を含有するActRIIB−Fc融合タンパク質、「ActRIIB(20〜119)−Fc」は、プロリンノット領域および完全な膜近傍ドメインを含むActRIIB(20〜134)−Fcと比較してGDF−11およびアクチビンへの結合が減少している。しかし、ActRIIB(20〜129)−Fcタンパク質は、プロリンノット領域が破壊されているにもかかわらず、野生型と比較して同様だがいくらか減少した活性を保持する。したがって、アミノ酸134、133、132、131、130および129で終止するActRIIB細胞外ドメインは全て活性であると予想されるが、134または133で終止する構築物が最も活性であり得る。同様に、残基129〜134のいずれかにおける変異によってリガンドの結合親和性が大幅に変更されるとは予想されない。この裏付けとして、P129およびP130の変異によってリガンドの結合は実質的に低下しない。したがって、ActRIIB−Fc融合タンパク質であるGDFトラップポリペプチドは、早ければアミノ酸109(最後のシステイン)で終了し得るが、109〜119で終わる形態は、リガンドの結合が減少していると予想される。アミノ酸119は、不完全に保存されているので、容易に変更または切断される。128以後で終わる形態はリガンドの結合活性を保持している。119〜127で終わる形態は、中間の結合能を有する。これらの形態はいずれも、臨床的または実験的な設定に応じて使用することが望ましい場合がある。
ActRIIBのN末端において、アミノ酸29以前で始まるタンパク質は、リガンドの結合活性を保持していると予想される。アミノ酸29は開始システインを表す。24位におけるアラニンからアスパラギンへの変異により、リガンドの結合に実質的に影響を及ぼすことなくN−連結グリコシル化配列が導入される。これにより、アミノ酸20〜29に対応する、シグナル切断ペプチドとシステイン架橋領域との間の領域における変異が良好に許容されることが確認される。具体的には、20位、21位、22位、23位および24位から始まる構築物は活性を保持し、25位、26位、27位、28位および29位から始まる構築物も活性を保持すると予想される。実施例中に示されるデータは、驚くべきことに、22位、23位、24位または25位から始まる構築物が最も活性であることを実証している。
総合すると、ActRIIBの活性部分は配列番号1のアミノ酸29〜109を含み、GDFトラップ構築物は、例えば、配列番号1または39のアミノ酸20〜29に対応する残基から始まり、配列番号1または39のアミノ酸109〜134に対応する位置で終わるActRIIBの部分を含み得る。他の例としては、配列番号1または39の20〜29または21〜29からの1つの位置から始まり、119〜134、119〜133、129〜134、または129〜133からの1つの位置で終わる構築物が挙げられる。他の例としては、配列番号1または39の20〜24(もしくは21〜24、もしくは22〜25)からの1つの位置から始まり、109〜134(もしくは109〜133)、119〜134(もしくは119〜133)または129〜134(もしくは129〜133)からの1つの位置で終わる構築物が挙げられる。これらの範囲内の改変体、特に、配列番号1または39の対応する部分に対して少なくとも80%、85%、90%、95%または99%の同一性を有する改変体も企図される。特定の実施形態では、GDFトラップポリペプチドは、配列番号1または39のアミノ酸残基25〜131と、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、それから本質的になるか、または、それからなる。特定の実施形態では、GDFトラップポリペプチドは、配列番号7、26、28、29、32、37または38と、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、それから本質的になるか、または、それからなる。好ましい実施形態では、GDFトラップポリペプチドは、配列番号7、26、28、29、32、37または38のアミノ酸配列からなるか、または、それから本質的になる。
本開示は、図1に示されるように、合成ActRIIB構造の分析結果を含み、これは、リガンド結合ポケットが残基Y31、N33、N35、L38〜T41、E47、E50、Q53〜K55、L57、H58、Y60、S62、K74、W78〜N83、Y85、R87、A92、およびE94〜F101によって規定されることを実証している。これらの位置において、保存的変異は許容されると予想されるが、K74A変異は、R40A、K55A、F82A、およびL79位における変異と同様に良好に許容される。R40はツメガエルにおいてKであり、この位置の塩基性アミノ酸が許容されることを示している。Q53は、ウシのActRIIBではRであり、ツメガエルのActRIIBではKであり、したがって、R、K、Q、NおよびHを含めたアミノ酸がこの位置で許容される。したがって、GDFトラップタンパク質の一般式は、配列番号1または39のアミノ酸29〜109を含むものであるが、任意選択で、20〜24または22〜25の範囲の1つの位置から始まり、129〜134の範囲の1つの位置で終わり、リガンド結合ポケットにおいて1、2、5、10または15以下の保存的なアミノ酸の変化を含み、リガンド結合ポケットの40位、53位、55位、74位、79位および/または82位において0、1またはそれ以上の非保存的な変更を含む。このようなタンパク質は、配列番号1または39のアミノ酸29〜109の配列に対して80%、90%、95%または99%を超える配列同一性を保持し得る。可変性が特に良好に許容され得る結合ポケットの外側の部位は、細胞外ドメインのアミノ末端およびカルボキシ末端(上述のように)、および42〜46位および65〜73位を含む。65位におけるアスパラギンからアラニンへの変更(N65A)は、A64バックグラウンドにおけるリガンドの結合を実際に改善し、したがって、R64バックグラウンドにおいてリガンドの結合に対する好ましくない影響を有さないと予想される。この変化により、A64バックグラウンドにおけるN65のグリコシル化が排除される可能性があり、したがって、この領域における著しい変化が許容される可能性があることが実証されている。R64A変化は許容性が乏しいが、R64Kは良好に許容され、したがって、Hなどの別の塩基性残基が64位において許容され得る。
ActRIIBは、完全に保存された細胞外ドメインの大きなストレッチ(stretch)を持ち、ほぼ全ての脊椎動物にわたって良好に保存されている。ActRIIBに結合するリガンドの多くも高度に保存されている。したがって、種々の脊椎動物の生物体からのActRIIB配列を比較することにより、変更され得る残基への洞察がもたらされる。したがって、活性な、GDFトラップとして有用なヒトActRIIB改変体ポリペプチドは、別の脊椎動物のActRIIBの配列からの対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸を含み得、または、ヒトまたは他の脊椎動物の配列中の残基と同様の残基を含み得る。以下の例は、活性なActRIIB改変体を定義するためのこのアプローチを例示している。L46は、ツメガエルのActRIIBではバリンであるので、この位置は変更され得、任意選択で、V、IまたはFなどの別の疎水性残基、またはAなどの非極性残基に変更され得る。E52は、ツメガエルではKであり、これは、この部位で、E、D、K、R、H、S、T、P、G、YおよびおそらくAなどの極性残基を含めた多種多様の変化が許容され得ることを示している。T93は、ツメガエルではKであり、これは、この位置において幅広い構造的差異が許容されることを示しており、S、K、R、E、D、H、G、P、GおよびYなどの極性残基が好ましい。F108は、ツメガエルではYであり、したがって、Yまたは他の疎水性群、例えばI、VまたはLが許容されるはずである。E111は、ツメガエルではKであり、これは、この位置において、D、R、KおよびH、ならびにQおよびNを含めた、荷電残基が許容されることを示している。R112は、ツメガエルではKであり、これは、この位置において、RおよびHを含めた塩基性残基が許容されることを示している。119位のAは比較的不完全に保存されており、げっ歯類ではPとして、ツメガエルではVとして現れ、したがって、この位置では本質的にいかなるアミノ酸も許容されるはずである。
本開示は、さらなるN−連結グリコシル化部位(N−X−S/T)を加えることにより、ActRIIB−Fc融合タンパク質の血清半減期がActRIIB(R64)−Fc形態と比較して増加することを実証する。24位にアスパラギンを導入することにより(A24N構築物)、より長い半減期を与え得るNXT配列が作製される。他のNX(T/S)配列は、42〜44(NQS)および65〜67(NSS)において見出されるが、後者は64位のRで効率的にグリコシル化されないことがあり得る。N−X−S/T配列は、一般に、図1において定義されるリガンド結合ポケットの外側の位置に導入され得る。非内因性N−X−S/T配列の導入に特に適した部位としては、アミノ酸20〜29、20〜24、22〜25、109〜134、120〜134または129〜134が挙げられる。N−X−S/T配列は、ActRIIB配列とFcまたは他の融合成分との間のリンカーにも導入され得る。このような部位は、以前から存在しているSまたはTに対して正しい位置にNを導入することによって、または、以前から存在しているNに対応する位置にSまたはTを導入することによって、最小の労力で導入され得る。したがって、N−連結グリコシル化部位を生じる望ましい変更は、A24N、R64N、S67N(できるかぎりN65Aの変更と組み合わせる)、E106N、R112N、G120N、E123N、P129N、A132N、R112SおよびR112Tである。グリコシル化されることが予測されるSはどれも、グリコシル化によってもたらされる保護のために、免疫原性部位を生じることなくTに変更され得る。同様に、グリコシル化されることが予測されるTはどれも、Sに変更され得る。したがって、S67TおよびS44Tの変更が企図される。同様に、A24N改変体では、S26Tの変更が使用され得る。したがって、GDFトラップは、1つまたは複数の、追加の非内因性N−連結グリコシル化コンセンサス配列を有するActRIIB改変体であり得る。
ActRIIBのL79位は、変更されたアクチビン−ミオスタチン(GDF−11)結合特性を与えるために変更され得る。L79Pにより、GDF−11の結合が、アクチビンの結合よりも大きな程度で減少する。L79EまたはL79DはGDF−11の結合を保持する。著しいことに、L79EおよびL79D改変体は、アクチビンの結合が大幅に減少した。インビボでの実験は、これらの非アクチビン受容体が赤血球を増加させる著しい能力を保持し、他の組織に対する作用の減少を示すことを示す。これらのデータは、アクチビンに対する作用が減少したポリペプチドを得ることについての望ましさおよび実行可能性を実証する。例示的な実施形態では、本明細書中に記載される方法は、配列番号1または39の79位に対応する位置に酸性アミノ酸(例えば、DまたはE)を、任意選択で1つまたは複数の追加のアミノ酸置換、付加、または欠失と組み合わせて含む改変体ActRIIBポリペプチドであるGDFトラップポリペプチドを利用する。
記載される差異は、種々の方法に組み合わせられ得る。さらに、本明細書中に記載される変異誘発プログラムの結果は、保存が多くの場合有益であるアミノ酸位がActRIIBにあることを示す。これらとしては、64位(塩基性アミノ酸)、80位(酸性または疎水性アミノ酸)、78位(疎水性、そして特にトリプトファン)、37位(酸性、そして特にアスパラギン酸またはグルタミン酸)、56位(塩基性アミノ酸)、60位(疎水性アミノ酸、特にフェニルアラニンまたはチロシン)が挙げられる。したがって、本明細書中に開示される改変体それぞれにおいて、本開示は保存され得るアミノ酸のフレームワークを提供する。保存が望ましいと考えられる他の位置は以下の通りである:52位(酸性アミノ酸)、55位(塩基性アミノ酸)、81位(酸性)、98位(極性または荷電、特にE、D、RまたはK)。
特定の実施形態では、ActRIIBポリペプチドの単離されたフラグメントは、ActRIIBポリペプチドをコードする核酸(例えば、配列番号4および5)の対応するフラグメントから組換えにより生成されるポリペプチドをスクリーニングすることによって得られ得る。さらに、フラグメントは、従来のメリフィールド固相f−Mocもしくはt−Boc化学のような当該分野で公知の技術を用いて化学的に合成され得る。フラグメントは、(組換えにより、または、化学合成により)生成され得、そして、例えば、ActRIIBタンパク質またはActRIIBリガンドのアンタゴニスト(インヒビター)またはアゴニスト(アクチベーター)として機能し得るペプチジルフラグメントを同定するために試験され得る。
特定の実施形態では、GDFトラップポリペプチドは、配列番号2、3、7、11、26、28、29、32、37、38、40または41から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一なアミノ酸配列を有する改変体ActRIIBポリペプチドである。特定の場合では、GDFトラップは、配列番号2、3、7、11、26、28、29、32、37、38、40または41から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、GDFトラップは、配列番号2、3、7、11、26、28、29、32、37、38、40または41から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、配列番号1のL79に対応する位置は酸性アミノ酸(例えば、DまたはEアミノ酸残基)である。
特定の実施形態では、本発明は、治療効率または安定性(例えば、エクスビボ貯蔵寿命およびインビボでのタンパク質分解に対する抵抗性)の増強のような目的のために、GDFトラップポリペプチドの構造を修飾することによって機能的改変体を作製することを企図する。GDFトラップポリペプチドはまた、アミノ酸の置換、欠失または付加によって生成され得る。例えば、ロイシンのイソロイシンもしくはバリンでの単発的な置換、アスパラギン酸のグルタミン酸での単発的な置換、スレオニンのセリンでの単発的な置換、または、あるアミノ酸の、構造的に関連したアミノ酸での同様の置換(例えば、保存的変異)は、結果として生じる分子の生物学的活性に対して大きな影響を及ぼさないと予想するのは理にかなっている。保存的置換は、その側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で行われる置換である。GDFトラップポリペプチドのアミノ酸配列の変化によって機能的改変体がもたらされているかどうかは、GDFトラップポリペプチドの、修飾されていないGDFトラップポリペプチドまたは野生型ActRIIBポリペプチドと比較した、細胞における反応を生じる能力、または、修飾されていないGDFトラップポリペプチドまたは野生型ActRIIBポリペプチドと比較した、1つまたは複数のリガンド、例えば、アクチビン、GDF−11またはミオスタチンなどに結合する能力を評価することにより容易に決定され得る。
いくつかの特定の実施形態では、本発明は、ActRIIBポリペプチドが変更されたリガンド結合活性(例えば、結合親和性または結合特異性)を有するように、ActRIIBポリペプチドの細胞外ドメイン(リガンド結合ドメインとも称される)において変異を作製することを企図する。特定の場合では、このようなGDFトラップポリペプチドは、特異的なリガンドに対して、変更された(上昇または減少した)結合親和性を有する。他の場合では、GDFトラップポリペプチドは、ActRIIBリガンドに対して、変更された結合特異性を有する。
例えば、本開示は、アクチビンと比較してGDF8/GDF11に優先的に結合するGDFトラップポリペプチドを提供する。このような選択的な改変体は、治療効果のために赤血球細胞レベルの非常に大きな増加が必要となり得、およびある程度の的外れの作用が許容され得る、重篤な疾患の処置のためにはあまり望ましくない可能性があるが、本開示は、さらに、的外れの作用を減少させることについてのこのようなペプチドの望ましさを確立する。例えば、ActRIIBタンパク質のアミノ酸残基、例えばE39、K55、Y60、K74、W78、D80、およびF101はリガンド結合ポケット内にあり、そのリガンド、例えばアクチビンおよびGDF8などへの結合を媒介する。したがって、本発明は、これらのアミノ酸残基に1つまたは複数の変異を含む、ActRIIB受容体の変更されたリガンド結合ドメイン(例えば、GDF8結合ドメイン)を含むGDFトラップを提供する。任意選択で、変更されたリガンド結合ドメインは、ActRIIB受容体の野生型のリガンド結合ドメインと比較して、GDF8などのリガンドに対する選択性が増加されていることがあり得る。例示のように、これらの変異は、アクチビンを越える、GDF8への変更されたリガンド結合ドメインの選択性を増加させる。任意選択で、変更されたリガンド結合ドメインは、GDF8の結合についてのKdに対するアクチビンの結合についてのKdの比を有し、それは、野生型のリガンド結合ドメインに対する比と比較して少なくとも2倍、5倍、10倍、または100倍までも大きい。任意選択で、変更されたリガンド結合ドメインは、GDF8の阻害についてのIC50に対するアクチビンの阻害についてのIC50の比を有し、それは、野生型のリガンド結合ドメインと比較して少なくとも2倍、5倍、10倍、または100倍までも大きい。任意選択で、変更されたリガンド結合ドメインは、アクチビンの阻害についてのIC50の、少なくとも2分の1、5分の1、10分の1、または100分の1までも小さいIC50でGDF8を阻害する。
特定の例として、ActIIBのリガンド結合ドメインの正荷電アミノ酸残基Asp(D80)は、アクチビンではなくGDF8に優先的に結合するGDFトラップポリペプチドを生成するために異なるアミノ酸残基に変異され得る。D80残基は、非荷電アミノ酸残基、負荷電アミノ酸残基、および疎水性アミノ酸残基からなる群より選択されるアミノ酸残基に変えられることが好ましい。さらなる特定の例として、疎水性残基、L79は、GDF11の結合を保持する一方でアクチビンの結合を大きく低下させるために、酸性アミノ酸のアスパラギン酸またはグルタミン酸に変更され得る。当業者に認識されるように、記載された変異、改変体または修飾の大半は、核酸レベルで、または、いくつかの場合、翻訳後修飾または化学合成によって作製され得る。このような技法は当該分野で周知である。
特定の実施形態では、本発明は、ActRIIBポリペプチドのグリコシル化を変更するために、ActRIIBに特異的な変異を有するGDFトラップポリペプチドを企図する。GDFトラップポリペプチドのグリコシル化部位の例は、図1に例示される(例えば、下線を付したNX(S/T)部位)。このような変異は、1または複数のグリコシル化部位(例えば、O−連結もしくはN−連結のグリコシル化部位)を導入もしくは排除するように選択され得る。アスパラギン連結グリコシル化認識部位は、一般に、トリペプチド配列、アスパラギン−X−スレオニン(ここで、「X」は任意のアミノ酸である)を含み、この配列は、適切な細胞のグリコシル化酵素によって特異的に認識される。変化はまた、(O−連結グリコシル化部位については)野生型ActRIIBポリペプチドの配列への、1または複数のセリンもしくはスレオニン残基の付加、または、1または複数のセリンもしくはスレオニン残基による置換によってなされ得る。グリコシル化認識部位の第1位もしくは第3位のアミノ酸の一方もしくは両方における種々のアミノ酸置換もしくは欠失(および/または、第2位におけるアミノ酸の欠失)は、修飾されたトリペプチド配列において非グリコシル化をもたらす。GDFトラップポリペプチドにおける糖質部分の数を増加させる別の手段は、GDFトラップポリペプチドへのグリコシドの化学的もしくは酵素的なカップリングによるものである。使用されるカップリング様式に依存して、糖は、(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)遊離カルボキシル基;(c)遊離スルフヒドリル基(例えば、システインのもの);(d)遊離ヒドロキシル基(例えば、セリン、スレオニンまたはヒドロキシプロリンのもの);(e)芳香族残基(例えば、フェニルアラニン、チロシンまたはトリプトファンのもの);または(f)グルタミンのアミド基に付加され得る。これらの方法は、本明細書中に参考として援用されるWO 87/05330ならびにAplinおよびWriston(1981年)CRC Crit. Rev. Biochem.、259〜306頁に記載されている。GDFトラップポリペプチド上に存在する1または複数の糖質部分の除去は、化学的および/または酵素的に達成され得る。化学的な脱グリコシル化は、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物へのGDFトラップポリペプチドの曝露を含み得る。この処理は、アミノ酸配列をインタクトなままにしつつ、連結糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除くほとんどもしくは全ての糖の切断を生じる。化学的な脱グリコシル化は、さらに、Hakimuddinら(1987年)Arch. Biochem. Biophys.259巻:52頁、およびEdgeら(1981年)Anal. Biochem.118巻:131頁によって記載されている。GDFトラップポリペプチド上の糖質部分の酵素的切断は、Thotakuraら(1987年)Meth.Enzymol.138巻:350頁に記載されるように、種々のエンドグリコシダーゼもしくはエキソグリコシダーゼの使用により達成され得る。GDFトラップポリペプチドの配列は、適切なように、使用される発現系のタイプに応じて調節され得る。というのも、哺乳動物、酵母、昆虫および植物の細胞は全て、ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る異なるグリコシル化パターンを導入し得る。一般に、ヒトにおいて使用するためのGDFトラップポリペプチドは、適切なグリコシル化を提供する哺乳動物細胞株(例えば、HEK293細胞株またはCHO細胞株)において発現されるが、他の哺乳動物発現細胞株も同様に有用であることと期待される。
本開示はさらに、改変体、特に、任意選択で切断型改変体を含むGDFトラップポリペプチドの組み合わせ改変体のセットを作製する方法を企図する;組み合わせ変異体のプールは、GDFトラップの配列を同定するために特に有用である。このような組み合わせライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、変更された特性(例えば、変更された薬物動態または変更されたリガンド結合)を有するGDFトラップポリペプチド改変体を作製するため、であり得る。種々のスクリーニングアッセイが以下に提供され、そして、このようなアッセイは、改変体を評価するために使用され得る。例えば、GDFトラップポリペプチド改変体は、ActRIIBポリペプチドに結合する能力、ActRIIBリガンドのActRIIBポリペプチドへの結合を妨害する能力、または、ActRIIBリガンドにより引き起こされるシグナル伝達に干渉する能力についてスクリーニングされ得る。
GDFトラップポリペプチドまたはその改変体の活性はまた、細胞ベースのアッセイまたはインビボアッセイにおいて試験され得る。例えば、造血に関与する遺伝子の発現に対するGDFトラップポリペプチド改変体の作用が評価され得る。これは、必要な場合、1または複数の組換えActRIIBリガンドタンパク質(例えば、アクチビン)の存在下で行われ得、そして、GDFトラップポリペプチドおよび/またはその改変体、そして任意選択でActRIIBリガンドを生成するように細胞がトランスフェクトされ得る。同様に、GDFトラップポリペプチドは、マウスもしくは他の動物に投与され得、そして、1または複数の血液測定値(例えば、RBC数、ヘモグロビンのレベル、ヘマトクリットレベル、貯蔵鉄、または網状赤血球数)が、当該分野で認識された方法を用いて評価され得る。
参照GDFトラップポリペプチドに対して、選択的効力を有する、組み合わせで得られる(combinatorially−derived)改変体が作製され得る。このような改変体タンパク質は、組換えDNA構築物から発現されたとき、遺伝子治療のプロトコルにおいて使用され得る。同様に、変異誘発は、対応する修飾されていないGDFトラップポリペプチドとは劇的に異なる細胞内半減期を有する改変体を生じ得る。例えば、変更されたタンパク質は、タンパク質分解、または、修飾されていないGDFトラップポリペプチドの崩壊もしくは他の方法で不活性化をもたらす他のプロセスに対してより安定性であるかもしくは安定性が低いかのいずれかにされ得る。このような改変体およびこれをコードする遺伝子は、GDFトラップポリペプチドの半減期を調節することによってGDFトラップポリペプチドレベルを変更するために利用され得る。例えば、短い半減期は、より一過性の生物学的作用を生じ得、そして、誘導性の発現系の一部である場合、細胞内での組換えGDFトラップポリペプチドレベルのより厳しい制御を可能にし得る。Fc融合タンパク質では、変異は、タンパク質の半減期を変更するために、リンカー(存在する場合)および/またはFc部分において作製され得る。
特定の実施形態では、本発明のGDFトラップポリペプチドは、さらに、ActRIIBポリペプチド中に天然に存在する任意のものに加えて、翻訳後修飾を含み得る。このような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が挙げられるがこれらに限定されない。結果として、GDFトラップポリペプチドは、ポリエチレングリコール、脂質、多糖類もしくは単糖類およびホスフェイトのような非アミノ酸成分を含み得る。このような非アミノ酸成分の、GDFトラップポリペプチドの機能に対する影響は、他のGDFトラップポリペプチド改変体について本明細書中に記載されるようにして試験され得る。GDFトラップポリペプチドの新生形態を切断することによってGDFトラップポリペプチドが細胞内で生成される場合、翻訳後プロセシングもまた、このタンパク質の正確な折り畳みおよび/または機能にとって重要となり得る。様々な細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH−3T3またはHEK293)が、このような翻訳後の活性のための特定の細胞機構および特徴的なメカニズムを有し、そして、GDFトラップポリペプチドの正確な修飾およびプロセシングを保証するように選択され得る。
特定の態様では、GDFトラップポリペプチドは、少なくともActRIIBポリペプチドの一部分と1または複数の融合ドメインとを有する融合タンパク質を含む。このような融合ドメインの周知の例としては、ポリヒスチジン、Glu−Glu、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(例えば、Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)、またはヒト血清アルブミンが挙げられるがこれらに限定されない。融合ドメインは、所望される特性を与えるように選択され得る。例えば、いくつかの融合ドメインが、アフィニティクロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。アフィニティ精製の目的では、グルタチオン−、アミラーゼ−、およびニッケル−もしくはコバルト−結合化樹脂のような、アフィニティクロマトグラフィーのための適切なマトリクスが使用される。このようなマトリクスの多くは、Pharmacia GST精製システムおよび(HIS6)融合パートナーと共に有用なQIAexpressTMシステム(Qiagen)のような「キット」の形態で利用可能である。別の例としては、融合ドメインは、GDFトラップポリペプチドの検出を容易にするように選択され得る。このような検出ドメインの例としては、種々の蛍光タンパク質(例えば、GFP)、ならびに、「エピトープタグ」(これは、特定の抗体に利用可能な、通常は短いペプチド配列である)が挙げられる。特定のモノクローナル抗体に容易に利用可能な周知のエピトープタグとしては、FLAG、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)およびc−mycタグが挙げられる。いくつかの場合、融合ドメインは、関連のプロテアーゼが融合タンパク質を部分的に消化し、それによって、そこから組換えタンパク質を解放することを可能にする、第Xa因子またはトロンビンのようなプロテアーゼ切断部位を有する。解放されたタンパク質は、次いで、その後のクロマトグラフィーによる分離によって、融合ドメインから単離され得る。特定の好ましい実施形態では、GDFトラップポリペプチドは、インビボでGDFトラップポリペプチドを安定化させるドメイン(「安定化」ドメイン)と融合される。「安定化」とは、それが、崩壊の減少によるものであるか、腎臓によるクリアランスの減少によるものであるか、他の薬物動態作用によるものであるかとは無関係に、血清半減期を増加させる任意のものを意味する。免疫グロブリンのFc部分との融合は、広範囲のタンパク質に対して所望の薬物動態特性を与えることが公知である。同様に、ヒト血清アルブミンへの融合は、所望の特性を与え得る。選択され得る融合ドメインの他のタイプとしては、多量体化(例えば、二量体化、四量体化)ドメインおよび機能的ドメイン(例えば、赤血球レベルのさらなる増加のような付加的な生物学的機能を与えるもの)が挙げられる。
具体例として、本発明は、Fcドメインに融合されたActRIIBポリペプチドの細胞外(例えば、リガンド結合)ドメインを含むActRIIB−Fc融合タンパク質であるGDFトラップを提供する。例示的なFcドメインの配列は、以下に示される(配列番号6)。
任意選択で、Fcドメインは、Asp−265、リジン322およびAsn−434のような残基における1または複数の変異を有する。特定の場合、これらの変異のうち1または複数(例えば、Asp−265変異)を持つ変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインに対する、Fcγ受容体への結合能の低下を有する。他の場合では、これらの変異のうち1または複数(例えば、Asn−434変異)を持つ変異型Fcドメインは、野生型Fcドメインに対する、MHCクラスI関連のFc受容体(FcRN)への結合能の増加を有する。
融合タンパク質の様々な成分は、所望の機能と両立するあらゆる様式で配列され得ることが理解される。例えば、GDFトラップポリペプチドは、異種ドメインに対してC末端側に配置されても、あるいは、異種ドメインが、GDFトラップポリペプチドに対してC末端側に配置されてもよい。GDFトラップポリペプチドドメインと異種ドメインとは、融合タンパク質において隣接している必要はなく、そして、さらなるドメインもしくはアミノ酸配列が、いずれかのドメインに対してC末端もしくはN末端側に、または、これらのドメイン間に含められてもよい。
特定の実施形態では、GDFトラップ融合タンパク質は、式A−B−Cで示されるアミノ酸配列を含む。B部分は、配列番号26のアミノ酸26〜132に対応するアミノ酸配列からなるN−およびC−末端が切断されたActRIIBポリペプチドである。AおよびC部分は、独立に、0、1またはそれ以上のアミノ酸であり得、AおよびC部分はどちらも、存在する場合はBと異種である。Aおよび/またはC部分は、リンカー配列を介してB部分に付加され得る。例示的なリンカーとしては、2〜10、2〜5、2〜4、2〜3グリシン残基などの短いポリペプチドリンカー、例えば、Gly−Gly−Glyリンカーなどが挙げられる。他の適切なリンカーは、本明細書中に上記される。特定の実施形態では、GDFトラップ融合タンパク質は、式A−B−Cで示されるアミノ酸配列を含み、式中、Aはリーダー配列であり、Bは配列番号26のアミノ酸26〜132からなり、Cはインビボ安定性、インビボ半減期、取込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成、および/または精製のうちの1つまたは複数を増強するポリペプチド部分である。特定の実施形態では、GDFトラップ融合タンパク質は、式A−B−Cで示されるアミノ酸配列を含み、式中、AはTPAリーダー配列であり、Bは配列番号26のアミノ酸26〜132からなり、Cは免疫グロブリンFcドメインである。好ましいGDFトラップ融合タンパク質は、配列番号26で示されるアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態では、本発明のGDFトラップポリペプチドは、GDFトラップポリペプチドを安定化させ得る1または複数の修飾を含む。例えば、このような修飾は、GDFトラップポリペプチドのインビトロ半減期を増強させるか、GDFトラップポリペプチドの循環半減期を増強させるか、または、GDFトラップポリペプチドのタンパク質分解を減少させる。このような安定化修飾としては、融合タンパク質(例えば、GDFトラップポリペプチドと安定化ドメインとを含む融合タンパク質が挙げられる)、グリコシル化部位の修飾(例えば、GDFトラップポリペプチドへのグリコシル化部位の付加が挙げられる)、および糖質部分の修飾(例えば、GDFトラップポリペプチドからの糖質部分の除去が挙げられる)が挙げられるがこれらに限定されない。融合タンパク質の場合、GDFトラップポリペプチドは、IgG分子(例えば、Fcドメイン)などの安定化ドメインに融合される。本明細書中で使用される場合、用語「安定化ドメイン」は、融合タンパク質の場合のように融合ドメイン(例えば、Fc)を指すだけでなく、糖質部分のような非タンパク質性修飾、または、ポリエチレングリコールのような非タンパク質性ポリマーも含む。
特定の実施形態では、本発明は、GDFトラップポリペプチドの単離および/または精製された形態(他のタンパク質から単離されたか、そうでなければ、他のタンパク質を実質的に含まないもの)を利用可能にする。
特定の実施形態では、本発明のGDFトラップポリペプチド(修飾されていないか、または修飾された)は、種々の当該分野で公知の技法によって生成され得る。例えば、このようなGDFトラップポリペプチドは、Bodansky、M. Principles
of Peptide Synthesis、Springer Verlag、Berlin(1993年)およびGrant G. A.(編)、Synthetic Peptides: A User’s Guide、W. H. Freeman and Company、New York(1992年)に記載されているものなどの、標準のタンパク質化学の技法を使用して合成され得る。さらに、自動ペプチド合成装置が市販されている(例えば、Advanced ChemTech Model 396;Milligen/Biosearch 9600)。あるいは、GDFトラップポリペプチド、そのフラグメントまたは改変体は、当該分野で周知のように、種々の発現系(例えば、E.coli、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、バキュロウイルス)を使用して組換えにより生成され得る。さらなる実施形態では、修飾されたか、または修飾されていないGDFトラップポリペプチドは、例えば、プロテアーゼ、例えばトリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシン、または対の塩基性アミノ酸変換酵素(PACE)を使用して、組換えにより生成された完全長GDFトラップポリペプチドを消化することによって生成され得る。コンピュータ解析(市販のソフトウェア、例えば、MacVector、Omega、PCGene、Molecular Simulation,Inc.を使用する)は、タンパク質分解の切断部位を同定するために使用され得る。あるいは、このようなGDFトラップポリペプチドは、化学的切断によって(例えば、臭化シアン、ヒドロキシアミン)などの当該分野で公知の標準技法などで組換えにより生成された完全長GDFトラップポリペプチドから生成され得る。
(3.GDFトラップポリペプチドをコードする核酸)
特定の態様では、本発明は、本明細書中に開示されるGDFトラップポリペプチドのいずれかをコードする単離されたおよび/または組換えの核酸を提供する。配列番号4は、天然に存在するActRIIB前駆体ポリペプチドをコードし、一方配列番号5は、可溶性ActRIIBポリペプチドをコードし、配列番号25、27、30および31は可溶性GDFトラップをコードする。本主題の核酸は、一本鎖もしくは二本鎖であり得る。このような核酸は、DNA分子もしくはRNA分子であり得る。これらの核酸は、例えば、GDFトラップポリペプチドを作製するための方法において、または(例えば、遺伝子治療アプローチにおいて)直接的な治療剤として使用され得る。
特定の態様では、GDFトラップポリペプチドをコードする本主題の核酸はさらに、配列番号5、25、27、30および31の改変体である核酸を含むものと理解される。改変体ヌクレオチド配列は、対立遺伝子改変体のような、1または複数のヌクレオチドの置換、付加もしくは欠失によって異なる配列を含み、したがって、配列番号5、25、27、30および31に指定されるコード配列のヌクレオチド配列とは異なるコード配列を含む。
特定の実施形態では、本発明は、配列番号5、25、27、30または31に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または100%同一な単離されたかまたは組換えの核酸配列を提供する。当業者は、配列番号5、25、27、30または31に対して相補的な核酸配列、および配列番号5、25、27、30または31の改変体もまた、本発明の範囲内であることを理解する。さらなる実施形態では、本発明の核酸配列は、異種ヌクレオチド配列と共に、または、DNAライブラリーにおいて、単離、組換えおよび/または融合され得る。
他の実施形態では、本発明の核酸はまた、配列番号5、25、27、30または31に指定されるヌクレオチド配列に対して高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、配列番号5、25、27、30または31の相補配列、あるいは、これらのフラグメントを含む。上述のように、当業者は、DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件が変更され得ることを容易に理解する。例えば、約45℃における6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)でのハイブリダイゼーションの後に、50℃における2.0×SSCの洗浄を行い得る。例えば、洗浄工程における塩濃度は、50℃における約2.0×SSCの低ストリンジェンシーから、50℃における約0.2×SSCの高ストリンジェンシーまで選択され得る。さらに、洗浄工程における温度は、室温(約22℃)の低ストリンジェンシー条件から、約65℃の高ストリンジェンシー条件まで上昇され得る。温度と塩の両方が変更されても、温度または塩濃度が一定に保たれ、他の変数が変更されてもよい。一実施形態では、本発明は、室温における6×SSCとその後の室温で2×SSCでの洗浄の低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸を提供する。
遺伝子コードにおける縮重に起因して配列番号5、25、27、30または31に示される核酸と異なる単離された核酸もまた、本発明の範囲内である。例えば、多数のアミノ酸が1を超えるトリプレットによって示される。同じアミノ酸を特定するコドンまたは同義語(例えば、CAUおよびCACはヒスチジンに対する同義語である)は、タンパク質のアミノ酸配列に影響を及ぼさない「サイレント」変異を生じ得る。特定の実施形態では、GDFトラップポリペプチドは、代替のヌクレオチド配列によってコードされる。代替のヌクレオチド配列は、ネイティブなGDFトラップ核酸配列に対して変性しているが、なお同じ融合タンパク質をコードする。特定の実施形態では、配列番号26を有するGDFトラップは、配列番号30を含む代替の核酸配列によってコードされる。しかしながら、哺乳動物細胞の中には、本主題のタンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列の多型が存在することが予想される。当業者は、天然の対立遺伝子改変に起因して、所与の種の個体間に、特定のタンパク質をコードする核酸の1または複数のヌクレオチド(約3〜5%までのヌクレオチド)におけるこれらの改変が存在し得ることを理解する。任意およびあらゆるこのようなヌクレオチドの改変と、結果として生じるアミノ酸の多型とは、本発明の範囲内である。
特定の実施形態では、本発明の組換え核酸は、発現構築物において1または複数の調節性ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。調節性のヌクレオチド配列は、一般に、発現のために使用される宿主細胞に対して適切なものである。種々の宿主細胞について、多数のタイプの適切な発現ベクターおよび適切な調節性配列が当該分野で公知である。代表的には、上記1または複数の調節性ヌクレオチド配列としては、プロモーター配列、リーダー配列もしくはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写終結配列、翻訳開始配列および翻訳終結配列、ならびに、エンハンサー配列もしくはアクチベーター配列が挙げられ得るがこれらに限定されない。当該分野で公知の構成的もしくは誘導性のプロモーターが、本発明によって企図される。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または、1を超えるプロモーターの要素を組み合わせたハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。発現構築物は、プラスミドのようにエピソーム上で細胞中に存在し得るか、または、発現構築物は、染色体中に挿入され得る。好ましい実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするために、選択可能なマーカー遺伝子を含む。選択可能なマーカー遺伝子は、当該分野で周知であり、そして、使用される宿主細胞により変化する。
本発明の特定の態様では、本主題の核酸は、GDFトラップポリペプチドをコードし、そして、少なくとも1つの調節性配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む発現ベクターにおいて提供される。調節性配列は当該分野で認識され、そして、GDFトラップポリペプチドの発現を誘導するように選択される。したがって、用語、調節性配列は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメントを含む。例示的な調節性配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1990年)に記載される。例えば、作動可能に連結されたときにDNA配列の発現を制御する広範な種々の発現制御配列のいずれかが、GDFトラップポリペプチドをコードするDNA配列を発現させるためにこれらのベクターにおいて使用され得る。このような有用な発現制御配列としては、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスもしくはサイトメガロウイルスの前初期プロモーター、RSVプロモーター、lacシステム、trpシステム、TACもしくはTRCシステム、T7 RNAポリメラーゼによってその発現が誘導されるT7プロモーター、ファージλの主要なオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼもしくは他の糖分解酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母α−接合因子(mating factor)のプロモーター、バキュロウイルス系の多角体プロモーター、ならびに、原核生物もしくは真核生物の細胞、または、そのウイルスの遺伝子の発現を制御することが公知である他の配列、ならびにこれらの種々の組合せが挙げられる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択および/または発現されることが所望されるタンパク質のタイプのような要因に依存し得ることが理解されるべきである。さらに、ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力およびベクターによってコードされる任意の他のタンパク質(例えば、抗生物質マーカー)の発現もまた考慮されるべきである。
本発明の組換え核酸は、クローニングされた遺伝子またはその一部を、原核生物細胞、真核生物細胞(酵母、鳥類、昆虫または哺乳動物)のいずれか、または両方において発現させるために適切なベクター中に連結することによって生成され得る。組換えGDFトラップポリペプチドの生成のための発現ビヒクルとしては、プラスミドおよび他のベクターが挙げられる。例えば、適切なベクターとしては、以下のタイプのプラスミドが挙げられる:原核生物細胞(例えば、E.coli)における発現のための、pBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミドおよびpUC由来のプラスミド。
いくつかの哺乳動物発現ベクターは、細菌中でのベクターの増殖を促進するための原核生物の配列と、真核生物細胞において発現される1または複数の真核生物の転写単位との両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neoおよびpHyg由来のベクターは、真核生物細胞のトランスフェクションに適切な哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのいくつかは、原核生物細胞および真核生物細胞の両方における複製および薬物耐性選択を容易にするために、細菌プラスミド(例えば、pBR322)からの配列を用いて修飾される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)またはエプスタイン−バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)のようなウイルスの誘導体が、真核生物細胞におけるタンパク質の一過的な発現のために使用され得る。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、遺伝子治療送達系の説明において以下に見出され得る。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において用いられる種々の方法は、当該分野で周知である。原核生物細胞および真核生物細胞の両方についての他の適切な発現系、ならびに、一般的な組換え手順については、Molecular Cloning A Laboratory Manual、2nd Ed.、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)第16および17章を参照のこと。いくつかの場合において、バキュロウイルス発現系を用いて組換えポリペプチドを発現させることが望ましくあり得る。このようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来のベクター(例えば、pVL1392、pVL1393およびpVL941)、pAcUW由来のベクター(例えば、pAcUWl)およびpBlueBac由来のベクター(例えば、β−galを含むpBlueBac III)が挙げられる。
好ましい実施形態では、ベクターは、CHO細胞における本主題のGDFトラップポリペプチドの生成のために設計される(例えば、Pcmv−Scriptベクター(Stratagene,La Jolla,Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)およびpCI−neoベクター(Promega,Madison,Wisc))。明らかであるように、本主題の遺伝子構築物は、例えば、タンパク質(融合タンパク質または改変体タンパク質を含む)を生成するため、精製のために、培養物において増殖させた細胞において本主題のGDFトラップポリペプチドの発現を引き起こすために使用され得る。
本発明はまた、1または複数の本主題のGDFトラップポリペプチドのコード配列(例えば、配列番号4、5、25、27、30または31)を含む組換え遺伝子をトランスフェクトされた宿主細胞に関する。宿主細胞は、任意の原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。例えば、本発明のGDFトラップポリペプチドは、E.coliのような細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を用いる)、酵母細胞または哺乳動物細胞において発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
したがって、本発明はさらに、本主題のGDFトラップポリペプチドを生成する方法に関する。例えば、GDFトラップポリペプチドをコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞は、GDFトラップポリペプチドの発現を起こすことが可能な適切な条件下で培養され得る。GDFトラップポリペプチドは、GDFトラップポリペプチドを含む細胞および培地の混合物から分泌および単離され得る。あるいは、GDFトラップポリペプチドは、細胞質または膜画分に保持され得、そして、細胞が回収、溶解され、そして、タンパク質が単離される。細胞培養物は、宿主細胞、培地および他の副産物を含む。細胞培養に適切な培地は、当該分野で周知である。本主題のGDFトラップポリペプチドは、タンパク質の精製についての当該分野で公知の技術(イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、およびGDFトラップポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体を用いた免疫親和性精製を含む)を用いて、細胞培養培地、宿主細胞またはこの両方から単離され得る。好ましい実施形態では、GDFトラップポリペプチドは、その精製を促進するドメインを含む融合タンパク質である。
別の実施形態では、精製用リーダー配列(例えば、組換えGDFトラップポリペプチドの所望の部分のN末端に位置するポリ−(His)/エンテロキナーゼ切断部位の配列)をコードする融合遺伝子は、Ni2+金属樹脂を用いる親和性クロマトグラフィーによる、発現された融合タンパク質の精製を可能にし得る。その後、精製用リーダー配列は、引き続いて、エンテロキナーゼでの処理によって除去され、精製GDFトラップポリペプチドを提供し得る(例えば、Hochuliら、(1987年)J.Chromatography 411巻:177頁;およびJanknechtら、PNAS USA 88巻:8972頁を参照のこと)。
融合遺伝子を作製するための技術は周知である。本質的には、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNAフラグメントの接合は、ライゲーションのための平滑末端もしくはスタガード(staggered)末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じた粘着末端のフィルイン(filling−in)、所望されない接合を回避するためのアルカリ性ホスファターゼ処理、および酵素によるライゲーション、を用いる従来の技術に従って行われる。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む従来の技術によって合成され得る。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅は、2つの連続した遺伝子フラグメント間の相補的なオーバーハング(overhang)を生じるアンカープライマーを用いて行われ得、これらのフラグメントは、その後、キメラ遺伝子配列を生じるようにアニーリングされ得る(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992年を参照のこと)。
(4.スクリーニングアッセイ)
特定の態様では、本発明は、ActRIIBポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストである化合物(因子)を同定するための、本主題のGDFトラップポリペプチド(例えば、可溶性の改変体ActRIIBポリペプチド)の使用に関する。このスクリーニングによって同定された化合物は、インビボまたはインビトロでの、赤血球、ヘモグロビンおよび/または網状赤血球のレベルを調節する能力を評価するために試験され得る。これらの化合物は、例えば、動物モデルにおいて試験され得る。
ActRIIBのシグナル伝達を標的化することによって、赤血球またはヘモグロビンのレベルを増加させるための治療剤についてスクリーニングするための多数のアプローチが存在する。特定の実施形態では、選択された細胞株においてActRIIB媒介性の作用を混乱させる因子を同定するために、化合物のハイスループットスクリーニングが行われ得る。特定の実施形態では、アッセイは、ActRIIBポリペプチドの、その結合パートナー、例えばActRIIBリガンドなど(例えば、アクチビン、Nodal、GDF8、GDF11またはBMP7)への結合を特異的に阻害または減少させる化合物をスクリーニングおよび同定するために行われ得る。あるいは、アッセイは、ActRIIBポリペプチドの、その結合パートナー、例えばActRIIBリガンドなどへの結合を増強する化合物を同定するために使用され得る。さらなる実施形態では、化合物は、ActRIIBポリペプチドと相互作用するその能力によって同定され得る。
種々のアッセイ形式が十分であり、そして、本開示を考慮すれば、本明細書中に明示的に記載されない形式は、本明細書中に記載されていないにもかかわらず、当業者によって理解される。本明細書中に記載されるように、本発明の試験化合物(因子)は、任意の組み合わせ化学の方法によって作製され得る。あるいは、本主題の化合物は、インビボまたはインビトロで合成された天然に存在する生体分子であり得る。組織増殖の調節因子として作用するその能力について試験される化合物(因子)は、例えば、細菌、酵母、植物または他の生物によって生成されても(例えば、天然の生成物)、化学的に生成されても(例えば、ペプチド模倣物を含む低分子)、組換えにより生成されてもよい。本発明によって企図される試験化合物としては、非ペプチジル有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物、糖、ホルモンおよび核酸分子が挙げられる。特定の実施形態では、試験因子は、約2000ダルトン未満の分子量を持つ小さな有機分子である。
本発明の試験化合物は、単一の別個の実体として提供され得るか、または、組み合わせ化学によって作製されたような、より複雑度の高いライブラリーにおいて提供され得る。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、ハロゲン化アルキル、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテルおよび有機化合物の他の分類を含み得る。試験システムに対する試験化合物の提示は、特に、最初のスクリーニング段階において、単離された形態または化合物の混合物としてのいずれかであり得る。任意選択で、化合物は、任意選択で他の化合物で誘導体化され得、そして、化合物の単離を容易にする誘導体化基を有し得る。誘導体化基の非限定的な例としては、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位体、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、光活性化クロスリンカー、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、所与の期間に調査される化合物の数を最大にするためには、ハイスループットアッセイが望ましい。精製もしくは半精製(semi−purified)されたタンパク質で誘導され得るような、無細胞のシステムにおいて行われるアッセイは、試験化合物によって媒介される分子標的における変更の迅速な発生と比較的容易な検出とを可能にするように作られ得るという点で、しばしば、「一次」スクリーニングとして好ましい。さらに、試験化合物の細胞毒性またはバイオアベイラビリティの作用は、一般に、インビトロのシステムでは無視され得るが、その代わりに、このアッセイは主として、ActRIIBポリペプチドとその結合パートナー(例えば、ActRIIBリガンド)との間の結合親和性の変更において明らかになり得るような、分子標的に対する薬物の作用に焦点を当てている。
単なる例示として、本発明の例示的なスクリーニングアッセイでは、関心のある化合物は、アッセイの意図に応じて適宜、通常ActRIIBリガンドに結合し得る単離および精製されたActRIIBポリペプチドと接触させられる。その後、化合物とActRIIBポリペプチドとの混合物は、ActRIIBリガンドを含む組成物に加えられる。ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体の検出および定量は、ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の複合体の形成の阻害(または助長)における化合物の効力を決定するための手段を提供する。化合物の効力は、種々の濃度の試験化合物を用いて得られたデータから用量応答曲線を生成することによって評価され得る。さらに、比較のためのベースラインを提供するためのコントロールアッセイもまた行われ得る。例えば、コントロールアッセイでは、単離および精製されたActRIIBリガンドは、ActRIIBポリペプチドを含む組成物に加えられ、そして、ActRIIB/ActRIIBリガンド複合体の形成は、試験化合物の非存在下で定量される。一般に、反応物が混合され得る順序は変化し得、そして、同時に混合され得ることが理解される。さらに、適切な無細胞アッセイ系を与えるように、精製したタンパク質の代わりに、細胞の抽出物および溶解物が使用され得る。
ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の複合体の形成は、種々の技術によって検出され得る。例えば、複合体の形成の調節は、例えば、検出可能に標識されたタンパク質、例えば、放射標識(例えば、32P、35S、14Cまたは3H)、蛍光標識(例えば、FITC)、または、酵素標識されたActRIIBポリペプチドまたはその結合タンパク質を用いて、イムノアッセイによって、あるいは、クロマトグラフィーによる検出によって定量され得る。
特定の実施形態では、本発明は、直接的または間接的のいずれかで、ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用の程度を測定する、蛍光偏光アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー遷移(FRET)アッセイの使用を企図する。さらに、光導波管(waveguide)(PCT公開WO96/26432および米国特許第5,677,196号)、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面電荷センサ、および表面力センサに基づくもののような、他の検出様式が、本発明の多くの実施形態と適合性がある。
さらに、本発明は、ActRIIBポリペプチドとその結合パートナーとの間の相互作用を妨害または助長する因子を同定するための、「ツーハイブリッドアッセイ」としても公知である相互作用トラップアッセイの使用を企図する。例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら(1993年)Cell 72巻:223〜232頁;Maduraら(1993年)J Biol Chem 268巻:12046〜12054頁;Bartelら(1993年)Biotechniques 14巻:920〜924頁;およびIwabuchiら(1993年)Oncogene 8巻:1693〜1696頁を参照のこと。特定の実施形態では、本発明は、ActRIIBポリペプチドとその結合タンパク質との間の相互作用を解離させる化合物(例えば、低分子またはペプチド)を同定するための、逆ツーハイブリッドシステムの使用を企図する。例えば、VidalおよびLegrain(1999年)Nucleic Acids Res 27巻:919〜29頁;VidalおよびLegrain(1999年)Trends Biotechnol 17巻:374〜81頁;ならびに米国特許第5,525,490号;同第5,955,280号;および同第5,965,368号を参照のこと。
特定の実施形態では、本主題の化合物は、ActRIIBポリペプチドと相互作用するその能力によって同定される。化合物と、ActRIIBポリペプチドとの間の相互作用は、共有結合性であっても非共有結合性であってもよい。例えば、このような相互作用は、光架橋、放射性標識リガンド結合、およびアフィニティクロマトグラフィーを含むインビトロの生化学的な方法を用いて、タンパク質レベルで同定され得る(Jakoby WBら、1974年、Methods in Enzymology 46巻:1頁)。特定の場合には、化合物は、ActRIIBポリペプチドに結合する化合物を検出するためのアッセイのような、機構ベースのアッセイにおいてスクリーニングされ得る。これは、固相もしくは流体相の結合事象を含み得る。あるいは、ActRIIBポリペプチドをコードする遺伝子は、レポーターシステム(例えば、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質)と共に細胞中にトランスフェクトされ、そして、好ましくは、ハイスループットスクリーニングによって、ライブラリーに対して、または、ライブラリーの個々のメンバーを用いてスクリーニングされ得る。他の機構ベースの結合アッセイ(例えば、自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイ)が使用され得る。結合アッセイは、ウェル、ビーズもしくはチップに固定されているか、または、固定された抗体によって捕捉されている標的を用いて行われ得るか、あるいは、キャピラリー電気泳動によって分離され得る。結合した化合物は通常、比色または蛍光または表面プラズモン共鳴を用いて検出され得る。
5.例示的な治療用途
特定の実施形態では、本発明のGDF Trapポリペプチドを用いて、齧歯動物および霊長動物、そして、特に、ヒト患者などの哺乳動物における赤血球レベルを増大させることができる。GDF Trapポリペプチドは、必要に応じて、EPO受容体活性化因子と組み合わせて、無効赤血球生成を処置するのに有用であり得る。鉄動態研究に基づき、再生不良性貧血、出血、または末梢溶血とは元来識別される(Rickettsら、1978年、Clin Nucl Med、3巻:159〜164頁)無効赤血球生成は、骨髄中に存在する赤血球系前駆体(赤芽球)の数を考慮して予測されるよりも成熟RBCの生成が少ない多様な貧血群を表す(Tannoら、2010年、Adv Hematol、2010巻:358283頁)。このような貧血では、エリスロポエチンレベルの上昇にも関わらず、成熟RBC生成の無効に起因して、組織低酸素症が持続する。ついには、エリスロポエチンレベルの上昇が赤芽球の大規模な増殖を駆動する悪循環が発生し、これは、髄外赤血球生成(Aizawaら、2003年、Am J Hematol、74巻:68〜72頁)、赤芽球誘導性骨病変(Di Matteoら、2008年、J Biol Regul Homeost Agents、22巻:211〜216頁)に起因する脾腫(脾臓の腫大)を潜在的にもたらし、治療用RBC輸血の非存在下においてもなお、組織鉄過剰(Pippardら、1979年、Lancet、2巻:819〜821頁)に起因する脾腫(脾臓の腫大)を潜在的にもたらす。したがって、赤血球生成の有効性を促進することにより、GDF Trapポリペプチドは、上記の悪循環を打破し、根底にある貧血だけでなく、また、エリスロポエチンレベルの上昇、脾腫、骨病変、および組織鉄過剰といった関連する合併症も緩和し得る。GDF Trapポリペプチドは、貧血およびEPOレベルの上昇のほか、脾腫、赤芽球誘導性骨病変、および鉄過剰、ならびにそれらの付随する病変などの合併症を包含する、無効赤血球生成を処置し得る。脾腫を伴う病変としては、胸痛または腹痛および網内系過形成が挙げられる。髄外造血は、脾臓だけでなく、潜在的には他の組織においても、髄外造血性偽腫瘍の形態で生じ得る(Musallamら、2012年、Cold Spring Harb Perspect Med、2巻:a013482)。赤芽球誘導性骨病変に付随する病変としては、低骨塩密度、骨粗鬆症、および骨疼痛が挙げられる(Haidarら、2011年、Bone、48巻:425〜432頁)。鉄過剰に付随する病変としては、ヘプシジン抑制および食餌の鉄の過剰吸収(Musallamら、2012年、Blood Rev、26巻(補遺1号):S16〜S19頁)、多発性内分泌障害および肝線維症/肝硬変(Galanelloら、2010年、Orphanet J Rare Dis、5巻:11頁)、ならびに鉄過剰性心筋症(Lekawanvijitら、2009年、Can J Cardiol、25巻:213〜218頁)が挙げられる。
無効赤血球生成の最も一般的な原因であるサラセミア症候群は、完全アルファヘモグロビン鎖の生成と完全ベータヘモグロビン鎖の生成との不均衡が赤芽球の成熟の間におけるアポトーシスの増加をもたらす遺伝性異常ヘモグロビン症である(Schrier、2002年、Curr Opin Hematol、9巻:123〜126頁)。サラセミアは総体として、世界中で最も高頻度の遺伝障害であり、疫学的パターンを変化させながら、米国および全世界のいずれにおいても増加しつつある公衆衛生問題に寄与することが予測されている(Vichinsky、2005年、Ann NY Acad Sci、1054巻:18〜24頁)。サラセミア症候群は、それらの重症度に応じて命名されている。したがって、α−サラセミアとしては、軽症型α−サラセミア(また、α−サラセミア形質としても公知であり、2つのα−グロビン遺伝子が損なわれる)、ヘモグロビンH症(3つのα−グロビン遺伝子が損なわれる)、および重症型α−サラセミア(また、胎児水腫としても公知であり、4つのα−グロビン遺伝子が損なわれる)が挙げられる。β−サラセミアとしては、軽症型β−サラセミア(また、β−サラセミア形質としても公知であり、1つのβ−グロビン遺伝子が損なわれる)、中等症β−サラセミア(2つのβ−グロビン遺伝子が損なわれる)、ヘモグロビンE症サラセミア(2つのβ−グロビン遺伝子が損なわれる)、および重症型β−サラセミア(また、クーリー貧血としても公知であり、2つのβ−グロビン遺伝子が損なわれ、β−グロビンタンパク質の完全な非存在を結果としてもたらす)が挙げられる。β−サラセミアは、複数の臓器に影響を及ぼし、相当の罹患率および死亡率と関連し、現在のところ一生にわたるケアを必要とする。近年では、鉄のキレート化と組み合わせた定期的な輸血の使用に起因して、β−サラセミアを有する患者の平均余命が延長しているが、輸血および消化管による鉄の吸収過剰から生じる鉄過剰は、心疾患、血栓症、性腺機能低下症、甲状腺機能低下症、糖尿病、骨粗鬆症、および骨減少症など、重篤な合併症を引き起こし得る(Rundら、2005年、N Engl J Med、353巻:1135〜1146頁)。本明細書において、β−サラセミアのマウスモデルにより実証される通り、GDF Trapポリペプチドを、必要に応じて、EPO受容体活性化因子と組み合わせて用いて、サラセミア症候群を処置することができる。
GDF Trapポリペプチド、必要に応じて、EPO受容体活性化因子と組み合わせて、サラセミア症候群に加えて、無効赤血球生成による障害を処置するために用いることができる。このような障害としては、鉄芽球性(siderblastic)貧血(遺伝性または後天性);赤血球生成障害貧血(I型およびII型);鎌状赤血球貧血;遺伝性球状赤血球症;ピルビン酸キナーゼ欠損症;葉酸欠損症(先天性疾患、摂取量の減少、または要求量の増加に起因する)、コバラミン欠損症(先天性疾患、悪性貧血、吸収障害、膵臓機能不全、または摂取の減少に起因する)、特定の薬物、または説明されていない原因(先天性赤血球生成異常貧血(anema)、不応性巨赤芽球性貧血、または赤白血病)などの状態により潜在的に引き起こされる巨赤芽球性貧血;骨髄線維症(骨髄化生)および脊髄ろうを包含する骨髄ろう性貧血;先天性造血性ポルフィリン症;ならびに鉛中毒が挙げられる。
本明細書中で使用される場合、障害または状態を「予防する」治療薬は、統計的試料において、無処置の対照試料に対して、処置試料における障害もしくは状態の出現を低下させるか、あるいは、無処置の対照試料に対して、障害もしくは状態の1または複数の症状の発症を遅延させるか、または、重篤度を低下させるような化合物を指す。用語「処置する」は、本明細書中で使用される場合、一度確立された状態の改善もしくは除去を含む。いずれの場合にも、予防または処置は、医師または他の医療提供者によって提供される診断、および、治療剤の投与の意図される結果において認識され得る。
本明細書中で示されるように、EPO受容体活性化因子と必要に応じて組み合わせたGDFトラップポリペプチドは、健康な個体における赤血球、ヘモグロビンまたは網状赤血球のレベルを増加させるために使用され得、そして、このようなGDFトラップポリペプチドは、選択された患者集団において使用され得る。適切な患者集団の例としては、貧血を有する患者のような望ましくない低い赤血球またはヘモグロビンレベルを有する患者、および、大きな外科手術またはかなりの血液喪失を生じ得る他の処置を受ける予定の患者のような、望ましくない低い赤血球またはヘモグロビンレベルを生じる危険性のある患者、が挙げられる。一実施形態では、適切な赤血球レベルを有する患者は、赤血球レベルを増加させるためにGDFトラップポリペプチドで処置され、その後、血液が採血され、そして、後に輸血に使用するために保存される。
本明細書中に開示される、EPO受容体活性化因子と必要に応じて組み合わせたGDFトラップポリペプチドは、貧血を有する患者における赤血球レベルを増加させるために使用され得る。ヒトにおけるヘモグロビンレベルを観察するとき、適切な年齢および性別のカテゴリーにとっての正常値未満のレベルは貧血の指標となり得るが、個体の変動が考慮される。例えば、12g/dlのヘモグロビンレベルは、一般に、一般的な成人集団において正常の下限と考えられる。潜在的な原因としては、血液喪失、栄養不良、薬物療法反応、骨髄に伴う種々の問題および多くの疾患が挙げられる。より具体的には、貧血は、例えば、慢性腎不全、骨髄異形成症候群、慢性関節リウマチ、骨髄移植を含む種々の障害に関連している。貧血はまた、以下の状態とも関連し得る:固形腫瘍(例えば、乳がん、肺がん、結腸がん);リンパ系の腫瘍(例えば、慢性リンパ球性白血病、非ホジキンおよびホジキンリンパ腫);造血系の腫瘍(例えば、白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫);放射線治療;化学療法(例えば、白金を含むレジメン);炎症および自己免疫疾患(慢性関節リウマチ、他の炎症性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、急性もしくは慢性の皮膚疾患(例えば、乾癬)、炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)が挙げられるがこれらに限定されない);急性もしくは慢性の腎疾患もしくは腎不全(特発性もしくは先天性の状態を含む);急性もしくは慢性の肝臓病;急性もしくは慢性の出血;患者の同種もしくは自己抗体および/または宗教上の理由(例えば、いくつかのエホバの証人(Jehovah’s Witness))に起因する赤血球の輸血が可能ではない状況;感染(例えば、マラリア、骨髄炎);異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球病、サラセミアを含む);薬物の使用または乱用(例えば、アルコールの誤用);輸血を回避するためのあらゆる要因から貧血を有する小児患者;ならびに、循環過負荷に関する問題に起因して輸血を受けることができない、老齢の患者または貧血と共に基礎心肺疾患を有する患者。
骨髄異形成症候群(MDS)とは、骨髄性血液細胞生成の無効および急性骨髄性白血病への形質転換の危険性を特徴とする血液学的状態の多様な集合である。MDS患者では、血液幹細胞が、健康な赤血球、白血球、または血小板へと成熟しない。MDS障害としては、例えば、不応性貧血、環状鉄芽球(ringed sideroblast)を伴う不応性貧血、過剰な芽球を伴う不応性貧血、形質転換した過剰な芽球を伴う不応性貧血、多系統異形成を伴う不応性血球減少症、および孤立性5q染色体異常と関連する骨髄異形成症候群が挙げられる。これらの障害は、造血性細胞の量および質の両方における不可逆性の欠失として顕在化するので、MDS患者の大半は慢性貧血に罹患している。したがって、MDS患者は、赤血球レベルを増大させるための、輸血および/または増殖因子(例えば、エリスロポエチンまたはG−CSF)による処置をついには必要とする。しかし、多くのMDS患者は、このような治療の頻度に起因する副作用を発症する。例えば、高頻度の赤血球輸血を施される患者は、余剰鉄の蓄積に由来する組織および臓器の損傷を有し得る。下記の実施例で明示される通り、GDF Trapポリペプチドを用いて、MDSのマウスモデルにおける貧血を処置した。したがって、本明細書で開示されるGDF Trapポリペプチドを用いて、MDSを有する患者を処置することができる。特定の実施形態では、EPO受容体活性化因子と組み合わせたGDF Trapポリペプチドの組み合わせを用いて、MDSを患う患者を処置することができる。他の実施形態では、GDF Trapポリペプチドと、例えば、サリドマイド、レナリドミド、アザシチジン(azacitadine)、デシタビン、エリスロポエチン、デフェロキサミン、抗胸腺細胞(antihymocyte)グロブリン、フィルグラスチム(G−CSF)、およびエリスロポエチンシグナル伝達経路アゴニストを包含する、MDSを処置するための1または複数のさらなる治療剤との組合せを用いて、MDSを患う患者を処置することができる。
GDF Trapポリペプチドは、必要に応じて、EPO受容体活性化因子と組み合わせて、赤血球(RBC)形態のわずかな変化と関連することが典型的な、骨髄の増殖低下による貧血を処置するのに適するであろう。低増殖性貧血には、以下のものが含まれる:1)慢性疾患の貧血、2)腎臓疾患の貧血、および3)代謝低下状態に関連する貧血。これらの型の各々では、内因性のエリスロポイエチンレベルは、観察される貧血の程度に対して不適切に低い。他の低増殖性貧血には、以下のものが含まれる:4)早期の鉄欠乏貧血、および5)骨髄損傷に起因する貧血。これらの型では、内因性のエリスロポイエチンレベルは、観察される貧血の程度に対して適切に上昇している。
最も一般的な型は慢性疾患の貧血であり、それは炎症、感染、組織損傷およびがんなどの状態を包含し、骨髄での低いエリスロポイエチンレベルおよびエリスロポイエチンへの不十分な応答の両方によって識別される(Adamson、2008年、Harrison’s Principles of Internal Medicine、第17版;McGraw Hill、New York、628〜634頁)。多くの因子が、がん関連の貧血に寄与し得る。いくつかは、疾患過程自体、および炎症性サイトカイン、例えばインターロイキン1、インターフェロンγおよび腫瘍壊死因子の生成に関連する(Bronら、2001年、Semin Oncol 28巻(補遺8号):1〜6頁)。その影響の中で、炎症は重要な鉄調節ペプチドヘプシジンを誘導し、それによってマクロファージからの鉄のエクスポートを阻害し、一般に赤血球生成のための鉄の利用可能性を制限する(Ganz、2007年、J Am Soc Nephrol 18巻:394〜400頁)。様々な経路を通しての血液喪失も、がん関連の貧血に寄与することができる。がん進行による貧血の有病率は、前立腺がんでの5%から多発性骨髄腫での90%まで、がん型によって変動する。がん関連の貧血は、倦怠および生活の質の低下、処置効力の低下および死亡率の増加を含む、重大な結果を患者にもたらす。
慢性腎臓疾患は、腎機能障害の程度によって重症度が変動する、低増殖性貧血に関連する。そのような貧血は、主に、エリスロポイエチンの不十分な生成および赤血球の生存の低下による。慢性腎臓疾患は、透析または腎移植が患者生存のために必要とされる末期(5期)疾患まで、数年または数十年にわたって徐々に通常進行する。貧血はしばしばこの過程の初期に発生し、疾患の進行に伴い悪化する。腎臓疾患の貧血の臨床上の結果は十分に記載されており、その例には、左心室肥大の発達、認知機能障害、生活の質の低下、および免疫機能の変化が含まれる(Levinら、1999年、Am J Kidney Dis 27巻:347〜354頁;Nissenson、1992年、Am J Kidney Dis 20巻(補遺1号):21〜24頁;Revickiら、1995年、Am J Kidney Dis 25巻:548〜554頁;Gafterら、1994年、Kidney Int 45巻:224〜231頁)。慢性腎臓疾患のマウスモデル(下記の実施例を参照)で出願人によって実証されるように、EPO受容体活性化因子と必要に応じて組み合わせたGDFトラップポリペプチドは、腎臓疾患の貧血を処置するために用いることができる。
低代謝速度をもたらす多くの状態は、軽度から中等度の低増殖性貧血をもたらし得る。内分泌欠乏状態は、そのような状態の1つである。例えば、貧血は、アジソン病、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、または去勢されたかもしくはエストロゲンで処置された男性で起こることがある。軽度から中等度の貧血はまた、特に高齢者で一般的な状態である、食事からのタンパク質摂取の低下で起こることもある。最後に、貧血は、ほとんどあらゆる原因から生じる慢性肝疾患患者で起こることがある(Adamson、2008年、Harrison’s Principles of Internal Medicine、第17版;McGraw Hill、New York、628〜634頁)。
外傷または分娩後出血からなど、十分な量の急性失血によって生じる貧血は、急性出血後貧血として公知である。急性失血は、他の血液成分と共に比例的なRBC枯渇があるので、貧血を伴わない血液量減少を最初に引き起こす。しかし、血液量減少は、血管外から血管区画へ流体を移動させる生理学的機構を急速に引き起こし、血液希釈および貧血をもたらす。慢性であれば、失血により体内に貯蔵されている鉄が徐々に枯渇し、最終的に鉄欠乏症につながる。出願人により実証されたように、マウスモデルにおいて(下記の実施例を参照されたい)、EPO受容体活性化因子と必要に応じて組み合わせたGDFトラップポリペプチドは、急性失血の貧血からの速やかな回復のために使用され得る。
鉄欠乏性貧血は、中間段階として負の鉄均衡および鉄欠乏赤血球生成を含む、鉄欠乏増加の段階的進行の最終段階である。妊娠、不十分な食事、腸の吸収不良、急性または慢性の炎症および急性または慢性の血液喪失などの状態で例示されるように、鉄欠乏は、鉄要求の増加、鉄摂取の減少または鉄損失の増加から起こることがある。この型の軽度から中等度の貧血では、骨髄は低増殖性のままであり、RBC形態はほとんど正常である。しかし、軽度の貧血でさえ、多少の小球性淡色性RBCを生じることがあり、重度の鉄欠乏貧血への移行には、骨髄の過剰増殖およびますます増加する小球性および淡色性のRBCが付随する(Adamson、2008年、Harrison’s Principles
of Internal Medicine、第17版;McGraw Hill、New York、628〜634頁)。鉄欠乏性貧血のための適当な療法は、その原因および重症度によって決まり、経口用鉄処方物、非経口鉄処方物およびRBC輸血が主要な従来の選択肢である。EPO受容体活性化因子と必要に応じて組み合わせたGDFトラップポリペプチドは、慢性鉄欠乏性貧血を処置するために単独で、または特に多因子起源の貧血を処置するために従来の治療手法と一緒に、用い得る。
低増殖性貧血は、炎症、感染またはがん進行の二次的な機能不全の代わりに、骨髄の一次機能不全または不全症から生じ得る。顕著な例は、がん化学療法薬またはがん放射線療法に起因する骨髄抑制である。臨床試験の広範な精査は、軽度の貧血が化学療法の後に100%の患者で起こり得、より重度の貧血はそのような患者の最高80%で起こり得ることを見出した(Groopmanら、1999年、J Natl Cancer Inst 91巻:1616〜1634頁)。骨髄抑制薬には、以下のものが含まれる:1)ナイトロジェンマスタード(例えば、メルファラン)およびニトロソウレア(例えば、ストレプトゾシン)などのアルキル化剤;2)葉酸拮抗薬(例えば、メトトレキセート)、プリン類似体(例えば、チオグアニン)およびピリミジン類似体(例えば、ゲムシタビン)などの代謝拮抗物質;3)アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)などの細胞傷害抗生物質;4)キナーゼインヒビター(例えば、ゲフィチニブ);5)タキサン(例えば、パクリタキセル)およびビンカアルカロイド(例えば、ビノレルビン)などの分裂抑制剤;6)モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ);ならびに7)トポイソメラーゼインヒビター(例えば、トポテカンおよびエトポシド)。化学療法誘発貧血のマウスモデル(下記の実施例を参照)で実証されるように、EPO受容体活性化因子と必要に応じて組み合わせたGDFトラップポリペプチドは、化学療法剤および/または放射線療法に起因する貧血を処置するために用いることができる。
GDF Trapポリペプチドはまた、必要に応じて、EPO受容体活性化因子と組み合わせて、小型(小球性)RBC、大型(大球性)RBC、奇形RBC、または色調異常(低色素性)RBCを一部分で特徴とするRBC成熟の障害による貧血を処置するのにも適するであろう。
特定の実施形態では、GDF Trapポリペプチドを、無効赤血球生成のための支持療法と組み合わせて用いる(例えば、同時に投与する場合もあり、異なる時点で投与する場合もあるが、一般に、薬理学的効果の重複を達成するような様式で投与する)ことができる。このような療法としては、貧血を処置するための、赤血球または全血の輸血が挙げられる。慢性貧血または遺伝性貧血では、鉄ホメオスタシスのための正常な機構が輸血の反復で圧迫され、最終的には、心臓、肝臓、および内分泌腺などの生体組織において、毒性であり、潜在的に致死性である鉄の蓄積がもたらされる。したがって、無効赤血球生成に慢性的に罹患する患者のための支持療法としてはまた、尿および/または便への鉄の排出を促進し、これにより、組織鉄過剰を防止するかまたは逆転させる、1または複数の鉄キレート化分子による処置も挙げられる(Hershko、2006年、Haematologica、91巻:1307〜1312頁;Caoら、2011年、Pediatr Rep、3巻(2号):e17頁)。有効な鉄キレート化剤は、ヒドロキシルラジカルおよび酸化生成物の触媒性の生成を介して大半の鉄毒性の原因となる可能性があるトランスフェリン非結合鉄の酸化形態である第二鉄(Espositoら、2003年、Blood、102巻:2670〜2677頁)に選択的に結合し、これを中和することが可能でなければならない。これらの薬剤は、構造的に多様であるが、全てが、個別の鉄原子と共に、1:1(六座キレート化剤)、2:1(三座キレート化剤)、または3:1(二座キレート化剤)の化学量論比で、八面体の中和配位複合体を形成することが可能な、酸素供与体原子または窒素供与体原子を保有する(Kalinowskiら、2005年、Pharmacol Rev、57巻:547〜583頁)。有効な鉄キレート化剤はまた、比較的低分子量(700ドルトン未満)でもあり、水および脂質のいずれにおいても可溶性であり、罹患組織への接触が可能となる。鉄キレート化分子の特定の例は、毎日の非経口投与を必要とする、細菌起源の六座キレート化剤であるデフェロキサミン、ならびに経口活性合成薬剤であるデフェリプロン(二座)およびデフェラシロクス(三座)である。2つの鉄キレート化剤の同日における投与からなる組合せ療法は、キレート化単剤療法に対して不応性の患者において有望であり、また、患者のデフェロキサミン(dereroxamine)単独に対する服薬遵守不良の問題の克服においても有望である(Caoら、2011年、Pediatr Rep、3巻(2号):e17頁;Galanelloら、2010年、Ann NY Acad Sci、1202巻:79〜86頁)。
特定の実施形態では、GDF Trapポリペプチドを、無効赤血球生成のためのヘプシジンアゴニストと組み合わせて用いることができる。主に肝臓で産生される循環ポリペプチドであるヘプシジンは、吸収腸細胞、肝細胞、およびマクロファージに局在化する鉄排出タンパク質であるフェロポーチンの分解を誘導するその能力のために、鉄代謝の優れた調節因子であると考えられている。大まかに述べると、ヘプシジンは、細胞外における鉄のアベイラビリティーを低減するので、ヘプシジンアゴニストは、無効赤血球生成の処置において有益であり得る(Nemeth、2010年、Adv Hematol、2010巻:750643頁)。この見解は、β−サラセミアのマウスモデルにおけるヘプシジン発現増大の有益な効果により裏付けられている(Gardenghiら、2010年、J Clin Invest、120巻:4466〜4477頁)。
加えて、本明細書で示される通り、GDF Trapポリペプチドを、低用量範囲のEPO受容体活性化因子と組み合わせて用いて、赤血球の増加を達成することができる。これは、高用量のEPO受容体活性化因子と関連する、公知のオフターゲット効果および危険性を軽減するのに有益であり得る。特定の実施形態では、本発明は、それを必要とする個体へと、治療有効量のGDF TrapポリペプチドまたはGDF TrapポリペプチドとEPO受容体活性化因子との組合せ(または併用療法)を投与することにより、その個体における貧血を処置または防止する方法を提供する。これらの方法は、哺乳動物、そして、特に、ヒトの治療的処置および予防的処置のために用いることができる。
GDF Trapポリペプチドを、EPO受容体活性化因子と組み合わせて用いて、これらの活性化因子の、EPOの有害作用を受けやすい患者において必要とされる用量を低減することができる。EPOの主要な有害作用は、ヘマトクリットレベルまたはヘモグロビンレベルの過剰な増大および多血症である。ヘマトクリットレベルの増大は、高血圧症(より特定すれば、高血圧症の悪化)および血管内血栓症をもたらし得る。報告されている他のEPOの有害作用であって、それらの一部が高血圧症と関連する有害作用は、頭痛、インフルエンザ様症候群、シャントの閉塞、心筋梗塞、および血栓症に起因する脳痙攣、高血圧性脳症、および赤血球無形成(applasia)である(Singibarti、(1994年)、J. Clin Investig、72巻(補遺6号)、S36〜S43頁;Horlら(2000年)、Nephrol Dial Transplant、15巻(補遺4号)、51〜56頁;Delantyら(1997年)、Neurology、49巻、686〜689頁;Bunn(2002年)、N Engl J Med、346巻(7号)、522〜523頁)。
本明細書で開示されるGDF Trapポリペプチドの赤血球レベルに対する迅速な効果は、これらの薬剤が、EPOとは異なる機構により作用することを示す。したがって、これらのアンタゴニストは、EPOに十分に応答しない患者における赤血球レベルおよびヘモグロビンレベルを増大させるために有用であり得る。例えば、GDF Trapポリペプチドは、通常〜増加(>300IU/kg/週)用量のEPOの投与が、ヘモグロビンレベルの、標的レベルまでの増大を結果としてもたらさない患者に有益であり得る。EPO応答が不十分な患者は、全ての型の貧血について見出されるが、がんを有する患者および末期腎疾患を有する患者では、非応答者の数の多いことが特に高頻度で観察されている。EPOに対する不十分な応答は、構成的(すなわち、EPOによる初回の処置の場合に観察される)な場合もあり、後天的(例えば、EPOにより反復的に処置すると観察される)な場合もある。
患者は、患者を標的とするヘモグロビンレベル(通常は、約10g/dlと約12.5g/dlとの間、代表的には約11.0g/dl(Jacobsら(2000年)Nephrol Dial Transplant 15巻、15〜19頁もまた参照のこと))まで回復させることを意図した投薬レジメンで処置され得るが、より低い標的レベルでは、より少ない心臓血管系の副作用が引き起こされ得る。あるいは、ヘマトクリットレベル(細胞によって占有される血液サンプルの容積の割合)が、赤血球の状態の指標として使用され得る。健康な個体についてのヘマトクリットレベルは、成人男性について41〜51%、そして、成人女性について35〜45%の範囲である。標的ヘマトクリットレベルは、通常、約30〜33%である。さらに、ヘモグロビン/ヘマトクリットレベルは、個々人で変動する。したがって、最適には、標的ヘモグロビン/ヘマトクリットレベルは、患者ごとに個別化され得る。
特定の実施形態では、本発明は、GDFトラップポリペプチドを用いて処置されているか、または処置される候補の患者を、その患者における1つまたは複数の血液学的パラメータを測定することによって管理するための方法を提供する。血液学的パラメータは、GDFトラップポリペプチドを用いた処置の候補である患者に対する適切な投薬を評価するため、GDFトラップポリペプチドを用いた処置中に血液学的パラメータをモニタリングするため、GDFトラップポリペプチドを用いた処置中に投薬量を調節するかどうかを評価するため、および/またはGDFトラップポリペプチドの適切な維持用量を評価するために使用され得る。1つまたは複数の血液学的パラメータが正常レベルの外側である場合、GDFトラップポリペプチドを用いた投薬は減少、延期または終了され得る。
本明細書中で提供される方法に従って測定され得る血液学的パラメータとしては、例えば、赤血球レベル、血圧、貯蔵鉄、および、当該分野で認識されている方法を使用する、赤血球レベルの増加と相関する体液中に見出される他の因子が挙げられる。そのようなパラメータは、患者からの血液試料を使用して決定され得る。赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、および/またはヘマトクリットレベルの増加により、血圧の上昇が引き起こされ得る。
一実施形態では、GDFトラップポリペプチドを用いて処置される候補である患者において、1つまたは複数の血液学的パラメータが正常範囲の外側、または正常の高値側である場合、そのときは、血液学的パラメータが自然にまたは治療介入によってのいずれかで正常または許容されるレベルに戻るまで、GDFトラップポリペプチド投与の開始が延期され得る。例えば、候補の患者が高血圧または前高血圧である場合、そのときは、患者は、患者の血圧を低下させるために血圧降下剤を用いて処置され得る。個々の患者の状態に適した任意の血圧降下剤が使用され得、例えば、利尿薬、アドレナリンインヒビター(アルファ遮断薬およびベータ遮断薬を含む)、血管拡張薬、カルシウムチャネル遮断薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)インヒビター、またはアンジオテンシンII受容体遮断薬が挙げられる。血圧は、食事および運動レジメンを使用して代替的に処置され得る。同様に、候補の患者が正常よりも低いか、または正常の低値側の貯蔵鉄を有する場合、そのときは、患者は、患者の貯蔵鉄が正常または許容されるレベルに戻るまで、適切な食事および/または鉄サプリメントのレジメンを用いて処置され得る。正常よりも高い赤血球レベルおよび/またはヘモグロビンレベルを有する患者に対して、そのときは、そのレベルが正常または許容されるレベルに戻るまでGDFトラップポリペプチドの投与が延期され得る。
特定の実施形態では、GDFトラップポリペプチドを用いて処置される候補である患者において、1つまたは複数の血液学的パラメータが正常範囲の外側、または正常の高値側である場合、そのときは、投与の開始が延期されないことがある。しかし、GDFトラップポリペプチドの投薬量または投薬の頻度は、GDFトラップポリペプチドが投与されると上昇する血液学的パラメータの許容されない増加リスクを低下させる量に設定され得る。あるいは、GDFトラップポリペプチドと、望ましくないレベルの血液学的パラメータに対処する治療剤を組み合わせた治療レジメンが患者のために開発され得る。例えば、患者の血圧が上昇している場合、そのときは、GDFトラップポリペプチドおよび血圧降下剤の投与を含む治療レジメンが設計され得る。所望より低い貯蔵鉄を有する患者に対して、GDFトラップポリペプチドおよび鉄の補給の治療レジメンが開発され得る。
一実施形態では、1つまたは複数の血液学的パラメータについてのベースラインパラメータは、GDFトラップポリペプチドを用いて処置される候補である患者に対して確立され得、適切な投薬レジメンが、ベースライン値に基づいて患者に対して確立される。あるいは、患者の病歴に基づいて確立されたベースラインパラメータが、患者に対して適切なGDFトラップポリペプチド投薬レジメンを通知するために使用され得る。例えば、健康な患者が、規定の正常範囲を超える確立された血圧のベースライン数値を有する場合、GDFトラップポリペプチドを用いた処置の前に、その患者の血圧を一般集団について正常だとみなされる範囲に至らせる必要がないことがあり得る。患者の、GDFトラップポリペプチドを用いた処置前の1つまたは複数の血液学的パラメータのベースライン値は、GDFトラップポリペプチドを用いた処置中の、血液学的パラメータの任意の変化をモニタリングするための関連性のある比較値としても使用され得る。
特定の実施形態では、1つまたは複数の血液学的パラメータは、GDFトラップポリペプチドを用いて処置されている患者において測定される。血液学的パラメータは、処置中の患者をモニタリングし、GDFトラップポリペプチドを用いた投薬または別の治療剤を用いた追加の投薬の調節または終了を可能にするために使用され得る。例えば、GDFトラップポリペプチドの投与によって血圧、赤血球レベル、またはヘモグロビンレベルが上昇したか、または貯蔵鉄が減少した場合、そのときは、GDFトラップポリペプチドの用量は、1つまたは複数の血液学的パラメータに対するGDFトラップポリペプチドの作用を減少させるために、その量または頻度が減少され得る。GDFトラップポリペプチドの投与によって、患者にとって不都合な1つまたは複数の血液学的パラメータの変化が生じた場合、そのときは、GDFトラップポリペプチドの投薬は、一時的に、血液学的パラメータが許容されるレベルに戻るまでか、または永久に、のいずれかで終了され得る。同様に、GDFトラップポリペプチドの投与の用量または頻度を減らした後、1つまたは複数の血液学的パラメータが許容される範囲内に至らない場合、そのときは、投薬は終了され得る。GDFトラップポリペプチドを用いた投薬を減らすかまたは終了する代わりに、またはそれに加えて、患者は、血液学的パラメータの望ましくないレベルに対処する追加の治療剤、例えば、血圧降下剤または鉄のサプリメントなどが投薬され得る。例えば、GDFトラップポリペプチドを用いて処置されている患者の血圧が上昇している場合、そのときは、GDFトラップポリペプチドを用いた投薬は同じレベルで継続され得、および処置レジメンに血圧降下剤が追加されるか、GDFトラップポリペプチドを用いた投薬は減らされ得(例えば、量および/または頻度について)、および処置レジメンに血液降下剤が追加されるか、または、GDFトラップポリペプチドを用いた投薬は終了され得、および患者は血圧降下剤を用いて処置され得る。
(6.薬学的組成物)
特定の実施形態では、本発明の化合物(例えば、GDFトラップポリペプチド)は、薬学的に受容可能なキャリアと共に処方される。例えば、GDFトラップポリペプチドは、単独で、または、薬学的処方物(治療用組成物)の成分として投与され得る。本主題の化合物は、ヒトまたは獣医学における医薬での使用のために任意の簡便な方法で投与するために処方され得る。
特定の実施形態では、本発明の治療方法は、全身に、または、移植物もしくはデバイスとして局所的に組成物を投与する工程を包含する。投与される場合、本発明において使用するための治療用組成物は、当然のことながら、発熱物質を含まない生理学的に容認可能な形態である。また上記の組成物中に任意選択で含められ得るGDFトラップポリペプチド以外の治療上有用な因子は、本発明の方法において、本主題の化合物(例えば、GDFトラップポリペプチド)と同時に、または連続して投与され得る。
代表的に、化合物は、非経口投与される。非経口投与に適した薬学的組成物は、1または複数のGDFトラップポリペプチドを、1または複数の薬学的に受容可能な無菌かつ等張の水性もしくは非水性の溶液、分散物、懸濁物もしくはエマルジョン、または、使用直前に無菌の注射可能な溶液もしくは分散物へと再構成され得る無菌粉末と組み合わせて含み得、この組成物は、抗酸化物質、緩衝液、静菌剤、処方物を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、または、懸濁剤もしくは増粘剤を含み得る。本発明の薬学的組成物中で採用され得る適切な水性および非水性のキャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびこれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、ならびに、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、コーティング材料(例えば、レシチン)の使用によって、分散剤の場合には必要とされる粒子径の維持によって、そして、界面活性剤の使用によって維持され得る。
さらに、組成物は、カプセル化され得、または、標的組織部位(例えば、骨髄)へと送達するための形態で注射され得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、標的組織部位(例えば、骨髄)に1または複数の治療用化合物(例えば、GDFトラップポリペプチド)を送達し得、成長中の組織のための構造を提供し得、そして、最適には身体内へと再吸収され得るマトリクスを含み得る。例えば、マトリクスは、GDFトラップポリペプチドの遅速放出を提供し得る。このようなマトリクスは、他の移植医療用途に現在使用される材料から形成され得る。
マトリクス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、見かけ上の様相および界面の特性に基づく。本主題の組成物の特定の用途が、適切な処方物を画定する。組成物のための可能性のあるマトリクスは、生分解性でかつ化学的に画定された硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸およびポリ無水物であり得る。他の可能性のある材料は、生分解性でかつ生物学的に十分に画定されたもの(例えば、骨または皮膚のコラーゲン)である。さらなるマトリクスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリクスの成分を含む。他の可能性のあるマトリクスは、非生分解性でかつ化学的に画定されたもの(例えば、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオグラス、アルミン酸塩、または他のセラミクス)である。マトリクスは、上述のタイプの材料のいずれかの組合せ(例えば、ポリ乳酸およびヒドロキシアパタイト、または、コラーゲンおよびリン酸三カルシウム)を含み得る。バイオセラミクスは、組成物中(例えば、カルシウム−アルミン酸−リン酸中)で変化され得、孔径、粒子径、粒子の形状および生分解性を変更するように加工され得る。
特定の実施形態では、本発明の方法は、例えば、カプセル、カシェ、丸剤、錠剤、ロゼンジ(矯味矯臭薬を含む基材、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガントを用いて)、散剤、顆粒剤、または、水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁物として、または、水中油もしくは油中水の液体エマルジョンとして、または、エリキシルもしくはシロップとして、または、トローチ(ゼラチンおよびグリセリン、または、スクロースおよびアカシアのような不活性基材を用いて)および/またはマウスウォッシュなどの形態(この各々が、活性成分として所定量の因子を含む)で、経口投与され得る。因子はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとしても投与され得る。
経口投与のための固体投薬形態(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)において、本発明の1または複数の治療用化合物は、1または複数の薬学的に受容可能なキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)および/または、以下のうちのいずれかと共に混合され得る:(1)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸);(2)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなど);(3)湿潤剤(例えば、グリセロール);(4)崩壊剤(例えば、寒天(agar−agar)、炭酸カルシウム、ポテトもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム);(5)溶液抑制因子(solution retarding agent)(例えば、パラフィン);(6)吸収加速剤(例えば、四級アンモニウム化合物);(7)加湿剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなど);(8)吸着剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ);(9)潤滑剤(例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびこれらの混合物);および(10)着色剤。カプセル、錠剤および丸剤の場合には、薬学的組成物はまた、緩衝剤を含み得る。同様のタイプの固形組成物もまた、ラクトースすなわち乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を用いて、軟充填ゼラチンカプセルおよび硬充填ゼラチンカプセル中の充填物として用いられ得る。
経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁物、シロップおよびエリキシルが挙げられる。活性成分に加え、液体投薬形態は、当該分野で一般に用いられる不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含み得る。不活性な希釈剤に加え、経口用組成物はまた、加湿剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、芳香剤および保存剤のようなアジュバントを含み得る。
懸濁物は、活性な化合物に加えて、懸濁剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにこれらの混合物を含み得る。
本発明の組成物はまた、保存剤、加湿剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントを含み得る。微生物の作用の阻止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノールなど)を含めることによって保証され得る。糖、塩化ナトリウムなどのような等張化剤を組成物中に含めることも望ましくあり得る。さらに、注射可能な薬学的形態の吸収の延長は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅らせる因子を含めることによってもたらされ得る。
投薬レジメンは、本発明の主題の化合物(例えば、GDFトラップポリペプチド)の作用を修飾する種々の要因を考慮して主治医によって決定されることが理解される。種々の要因としては、患者の赤血球数、ヘモグロビンレベルまたは他の診断指標、所望の標的赤血球数、患者の年齢、性別および食事、赤血球レベルの低下に寄与し得るあらゆる疾患の重篤度、投与時間、ならびに他の臨床的要因が挙げられるがこれらに限定されない。最終組成物への他の公知の増殖因子の添加もまた、投薬量に影響を及ぼし得る。進行は、赤血球およびヘモグロビンのレベルの周期的な評価、ならびに、網状赤血球レベルおよび造血プロセスの他の指標の評価によってモニターされ得る。
特定の実施形態では、本発明はまた、GDFトラップポリペプチドのインビボ産生のための遺伝子治療を提供する。このような治療は、上に列挙したような障害を有する細胞または組織中にGDFトラップポリヌクレオチド配列を導入することによってその治療作用を達成する。GDFトラップポリヌクレオチド配列の送達は、キメラウイルスのような組換え発現ベクターまたはコロイド分散系を用いて達成され得る。GDFトラップポリヌクレオチド配列の治療的送達には、標的化されたリポソームの使用が好ましい。
本明細書中で教示されるような遺伝子治療に利用され得る種々のウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、または、レトロウイルスのようなRNAウイルスが挙げられる。レトロウイルスベクターは、マウスもしくはトリのレトロウイルスの誘導体であり得る。単一の外来遺伝子が挿入され得るレトロウイルスベクターの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベーマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺癌ウイルス(MuMTV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)。多数のさらなるレトロウイルスベクターが多数の遺伝子を組み込み得る。これらのベクターは全て、形質導入された細胞が同定および生成され得るように、選択マーカーについての遺伝子を移送または組み込み得る。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質またはタンパク質を付着させることによって、標的特異的とされ得る。好ましい標的化は、抗体を用いて達成される。当業者は、GDFトラップポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的な送達を可能にするために、特定のポリヌクレオチド配列がレトロウイルスゲノム中に挿入され得るか、または、ウイルスエンベロープに付着され得ることを認識する。
あるいは、組織培養細胞は、従来のリン酸カルシウムトランスフェクション法によって、レトロウイルスの構造遺伝子gag、polおよびenvをコードするプラスミドを用いて直接トランスフェクトされ得る。これらの細胞は、次いで、関心のある遺伝子を含むベクタープラスミドでトランスフェクトされる。得られた細胞は、培養培地中にレトロウイルスベクターを放出する。
GDFトラップポリヌクレオチドのための別の標的化送達システムは、コロイド分散系である。コロイド分散系としては、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズおよび脂質ベースの系(水中油エマルジョン、ミセル、混合型ミセルおよびリポソームを含む)が挙げられる。本発明の好ましいコロイド系は、リポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして有用な人工の膜小胞である。RNA、DNAおよびインタクトなビリオンが、水性の内部に封入され得、そして、生物学的に活性な形態で細胞へと送達され得る(例えば、Fraleyら、Trends Biochem. Sci.、6巻:77頁、1981年を参照のこと)。リポソームビヒクルを用いた効率的な遺伝子移入のための方法は当該分野で公知であり、例えば、Manninoら、Biotechniques、6巻:682頁、1988年を参照のこと。リポソームの組成は、通常リン脂質の組合せであり、通常ステロイド(特に、コレステロール)と組合わされる。他のリン脂質または他の脂質もまた使用され得る。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度および二価のカチオンの存在に依存する。
リポソームの生成において有用な脂質の例としては、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシド)が挙げられる。例示的なリン脂質としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。例えば、器官特異性、細胞特異性および細胞小器官特異性に基づいたリポソームの標的化もまた可能であり、当該分野で公知である。
(実施例)
本発明は、ここで、一般的に記載されてきたが、単に特定の実施形態および本発明の実施形態を例示する目的のために含められ、本発明を限定することは意図されない以下の実施例を参照するとより容易に理解される。
(実施例1 GDFトラップの作製)
出願人は以下の通りGDFトラップを構築した。GDF11および/またはミオスタチンと比較してアクチビンAへの結合が大幅に減少している(配列番号1の79位におけるロイシンからアスパラギン酸への置換の結果として)修飾されたActRIIB細胞外ドメインを有するポリペプチドを、間に最小限のリンカー(3つのグリシンアミノ酸)を用いて、ヒトもしくはマウスのFcドメインに融合させた。この構築物を、それぞれ、ActRIIB(79D 20〜134)−hFcおよびActRIIB(L79D 20〜134)−mFcと呼ぶ。79位にアスパラギン酸ではなくグルタミン酸を持つ代替の形態について同様に行った(L79E)。以下の配列番号7について、226位にバリンではなくアラニンを持つ代替の形態も作製し、試験された全ての点において同等に実施した。79位のアスパラギン酸(配列番号1に対して、または配列番号7に対して第60位)に以下で灰色のマーカーを付す。配列番号7に対して、226位のバリンも以下で灰色のマーカーを付す。
GDFトラップ ActRIIB(L79D 20−134)−hFcを、CHO細胞株から精製されたものとして以下に示す(配列番号7)。
GDFトラップのActRIIBから誘導された部分は、以下に示されるアミノ酸配列(配列番号32)を有し、その部分を、単量体として、または単量体、二量体以上の複合体として非Fc融合タンパク質として使用し得る。
GDFトラップタンパク質を、CHO細胞株中で発現させた。3つの異なるリーダー配列を検討した。
選択された形態は、TPAリーダーを採用し、そして、以下のプロセシングを受けていないアミノ酸配列を有する。
このポリペプチドは、以下の核酸配列によってコードされる(配列番号12)。
精製を、例えば、以下のうちの3またはそれ以上を任意の順序で含む一連のカラムクロマトグラフィー工程によって達成し得る:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびカチオン交換クロマトグラフィー。精製は、ウイルス濾過およびバッファの交換で完了し得る。精製スキームの例では、細胞培養培地をプロテインAカラムに通し、150mMのトリス/NaCl(pH8.0)で洗浄し、次いで50mMのトリス/NaCl(pH8.0)で洗浄し、0.1Mのグリシン、pH3.0を用いて溶出する。ウイルス排除工程として、低pHの溶出物を室温で30分間保持する。次いで、溶出物を中和し、Qセファロースイオン交換カラムに通し、50mMのトリス、pH8.0、50mMのNaClで洗浄し、150mM〜300mMのNaCl濃度を伴う50mMのトリス、pH8.0中に溶出する。次いで、溶出物を50mMのトリス、pH8.0、1.1Mの硫酸アンモニウム中に移し変え、フェニルセファロースカラムに通し、洗浄し、150〜300mMの硫酸アンモニウムを伴う50mMのTris、pH8.0中に溶出する。溶出物を、使用のために透析および濾過する。
追加のGDFトラップ(ミオスタチンまたはGDF11と比較してアクチビンAの結合の割合が減少するように修飾されたActRIIB−Fc融合タンパク質)は、本明細書中に参考として援用される、PCT/US2008/001506およびWO2006/012627に記載されている。
(実施例2 GDF−11およびアクチビン媒介性シグナル伝達についてのバイオアッセイ)
A−204レポーター遺伝子アッセイを、GDF−11およびアクチビンAによるシグナル伝達に対するActRIIB−Fcタンパク質およびGDFトラップの作用を評価するために使用した。細胞株:ヒト横紋筋肉腫(筋肉から誘導された)。レポーターベクター:pGL3(CAGA)12(Dennlerら、1998年、EMBO 17巻:3091〜3100頁に記載されている)。CAGA12モチーフはTGF−ベータ応答性遺伝子(PAI−1遺伝子)に存在するので、このベクターは、一般的に、Smad2および3を介するシグナル伝達の因子に用いる。
1日目:A−204細胞を48ウェルプレート中に分ける。
2日目:A−204細胞を、10ugのpGL3(CAGA)12またはpGL3(CAGA)12(10ug)+pRLCMV(1ug)およびFugeneでトランスフェクトする。
3日目:因子を加える(培地+0.1%BSA中に希釈)。インヒビターは、細胞への追加前に因子と一緒に1時間プレインキュベートする必要がある。6時間後、細胞をPBSでリンスし、そして細胞を溶解する。
この後にルシフェラーゼアッセイを行う。いかなるインヒビターも存在しない状況で、アクチビンAは、10倍のレポーター遺伝子発現の刺激、およびED50〜2ng/mlを示した。GDF−11:16倍の刺激、ED50:約1.5ng/ml。
このアッセイにおいて、ActRIIB(20〜134)はアクチビン、GDF−8およびGDF−11の活性の強力なインヒビターである。改変体も同様にこのアッセイで試験した。
(実施例3 N末端およびC末端の切断によるGDF−11の阻害)
N末端および/またはC末端における切断を伴うActRIIB(20〜134)−hFcの改変体を作製し、GDF−11およびアクチビンのインヒビターとしての活性について試験した。活性を以下に示す(条件培地において測定)。
見ることができるように、C末端における3(...PPTで終わる)、6(...YEPで終わる)またはそれより多いアミノ酸の切断は、その分子の活性の3倍以上の低下を引き起こす。ActRIIB部分の最後の15アミノ酸の切断は活性の大幅な損失を引き起こす(WO2006/012627を参照のこと)。
アミノ末端の切断は、ActRIIB(20〜131)−hFcタンパク質のバックグラウンドにおいて行った。活性を以下に示す(条件培地において測定)。
したがって、N末端からの2、3または4アミノ酸の切断は、完全長細胞外ドメインを持つバージョンよりも活性なタンパク質の生成につながる。追加の実験は、5アミノ酸が切断されたActRIIB(25〜131)−hFcが、切断されていない形態と等価な活性を有し、N末端における追加の欠失は引き続きタンパク質の活性を低下させることを示す。したがって、最適な構築物は、配列番号1のアミノ酸133〜134の間で終わるC末端および配列番号1のアミノ酸22〜24から始まるN末端を有する。アミノ酸21または25に対応するN末端は、ActRIIB(20〜134)−hFc構築物と同様の活性をもたらす。これらの切断は、L79DまたはL79E改変体などのGDFトラップにおいても使用され得る。
(実施例4 ActRIIB−Fc改変体、細胞ベースの活性)
ActRIIB−Fcタンパク質およびGDFトラップの活性を、上記の細胞ベースのアッセイで試験した。結果を以下の表に要約する。いくつかの改変体を異なるC末端切断構築物において試験した。上記のように、5または15アミノ酸の切断は活性の低下を引き起こした。GDFトラップ(L79DおよびL79E改変体)は、アクチビンの結合の実質的な損失を示した一方、ほとんど野生型のGDF−11阻害を保持した。
いくつかの改変体を、ラットにおける血清半減期について評価した。ActRIIB(20〜134)−Fcはおよそ70時間の血清半減期を有する。ActRIIB(A24N 20〜134)−Fcはおよそ100〜150時間の血清半減期を有する。A24N改変体は細胞ベースのアッセイ(上記)およびインビボアッセイ(下記)において、野生型分子と等価な活性を有する。長い半減期と相まって、これは、経時的に、A24N改変体が、タンパク質単位当たり、野生型分子よりも、大きな作用をもたらすことを意味する。A24N改変体、および、任意の、上記の試験された他の改変体を、L79DまたはL79E改変体などのGDFトラップ分子と組み合わせることができる。
(実施例5 GDF−11およびアクチビンAの結合)
特定のActRIIB−Fcタンパク質およびGDFトラップのリガンドへの結合をBiaCoreTMアッセイにおいて試験した。
ActRIIB−Fc改変体または野生型タンパク質を、抗hFc抗体を使用したシステム上に捕獲した。リガンドを注入し、捕獲された受容体タンパク質の上に流した。結果を以下の表に要約する。
これらのデータは、細胞ベースのアッセイのデータを確認し、A24N改変体が、ActRIIB(20〜134)−hFc分子のリガンド結合活性と同様のリガンド結合活性を保持し、L79DまたはL79E分子がミオスタチンおよびGDF11の結合を保持するが、アクチビンAへの結合の著しい減少を示す(定量化できない)ことを実証している。
WO2006/012627(その全体が参考として本明細書中に援用される、例えば59〜60頁を参照されたい)に報告されているように、他の改変体を作製し、デバイスと結合させたリガンドを使用し、受容体を結合させたリガンドの上に流して試験した。注目すべきことに、K74Y、K74F、K74I(およびおそらく他のK74における疎水性の置換、例えばK74Lなど)、およびD80Iは、野生型K74分子と比較して、GDF11結合に対するアクチビンA結合の割合の減少を引き起こす。これらの改変体についてのデータの表を以下に再現する。
(実施例6 非ヒト霊長類においてActRIIB−hFcは赤血球生成を刺激する)
雄性および雌性のカニクイザルに、ActRIIB(20〜134)−hFc(IgG1)を、1カ月間、週一回、皮下注射により投与した。48匹のカニクイザル(24匹/性別)を、4つの処置群(6匹の動物/性別/群)のうちの1つに割り当て、そして、4週間にわたり、週一回(合計5用量)、ビヒクルまたは3mg/kg、10mg/kgもしくは30mg/kgのActRIIB−hFcのいずれかの皮下注射を施した。評価したパラメータには、一般的な臨床病理学(血液学、臨床化学、凝固および尿検査)を含めた。ActRIIB−hFcは、処置した動物において、15日目までに、平均の絶対的網状赤血球値の統計的に有意な上昇を引き起こした。36日目までに、ActRIIB−hFcは、平均絶対的網状赤血球および赤血球分布幅の値の上昇、ならびに、平均血球ヘモグロビン濃度の低下を含む、いくつかの血液学的変化を引き起こした。全ての処置群および両方の性別が影響を受けた。これらの作用は、骨髄からの未成熟な網状赤血球の放出に対するActRIIB−hFcの正の作用と一致している。この作用は、処置した動物から薬物を洗い出した後に逆転した(研究の56日目までに)。したがって、本発明者らは、ActRIIB−hFcが赤血球生成を刺激すると結論付ける。
(実施例7 ActRIIB−mFcは、脾臓の赤血球生成活性の刺激により、マウスにおける赤血球生成の局面を促進する)
この試験では、骨髄および脾臓内の造血前駆細胞の頻度に対するActRIIB(20−134)−mFcのインビボ投与の効果を分析した。C57BL/6マウスの1群に、対照としてPBSを注射し、マウスの第2群に、10mg/kgのActRIIB−mFcを2用量投与し、両群を8日後に屠殺した。末梢血を使用して完全血球計算を行い、大腿および脾臓を使用してインビトロクローン原性アッセイを行って、各器官内のリンパ球前駆細胞、赤血球前駆細胞および骨髄系前駆細胞の含量を査定した。この研究の短期間の枠では、処置したマウスにおいて赤血球、ヘモグロビンまたは白血球のレベルの有意な変化は見られなかった。大腿では、対照と処置群との間で、有核細胞数または前駆細胞含量に差異はなかった。脾臓では、化合物で処置した群は、皿当たりの成熟赤血球前駆細胞(CFU−E)コロニー数、脾臓当たりの頻度および全前駆細胞数で、統計学的に有意な増加を経験した。さらに、脾臓当たりの骨髄系前駆細胞(CFU−GM)、未成熟赤血球前駆細胞(BFU−E)の数および全前駆細胞数の増加を認めた。
(動物)
6〜8週齢の雌性C57BL/6マウス16匹を試験に使用した。マウス8匹について、1日目および3日目に10mg/kgの用量の試験化合物ActRIIB−mFcを皮下注射し、マウス8匹について、対照ビヒクルのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)をマウス当たり100μLの量で皮下注射した。全てのマウスを、最初の注射の8日後に、関連する動物の取り扱いに関するガイドライン(Animal Care Guidelines)に従って屠殺した。個々の動物からの末梢血(PB)試料を心臓穿刺によって採取し、完全血球計算および鑑別(CBC/Diff)に使用した。各マウスから大腿および脾臓を収集した。
(行った試験)
(CBC/Diff計算)
心臓穿刺によって各マウスからPBを採取し、適切なマイクロティナ(microtainer)管内に置いた。試料を、CellDyn3500カウンターで分析するためにCLVに送った。
(クローン原性アッセイ)
骨髄系列、赤血球系列およびリンパ球系列のクローン原性前駆細胞を、下記のインビトロのメチルセルロースベース培地系を使用して査定した。
(成熟赤血球前駆細胞)
成熟赤血球系列のクローン原性前駆細胞(CFU−E)を、組換えヒト(rh)エリスロポイエチン(3U/mL)を含有するメチルセルロースベース培地MethoCultTM3334中で培養した。
(リンパ球前駆細胞)
リンパ球系列のクローン原性前駆細胞(CFU−pre−B)を、rhインターロイキン7(10ng/mL)を含有するメチルセルロースベース培地MethoCult(登録商標)3630中で培養した。
(骨髄系前駆細胞および未成熟赤血球前駆細胞)
顆粒球−単球系列のクローン原性前駆細胞(CFU−GM)、赤血球系列のクローン原性前駆細胞(BFU−E)および多分化能系列のクローン原性前駆細胞(CFU−GEMM)を、組換えマウス(rm)幹細胞因子(50ng/mL)、rhインターロイキン6(10ng/mL)、rmインターロイキン3(10ng/mL)およびrhエリスロポイエチン(3U/mL)を含有するメチルセルロースベース培地MethoCultTM3434中で培養した。
(方法)
マウスの大腿および脾臓を、標準のプロトコルによって処理した。簡単に述べると、21ゲージの針および1ccの注射器を使用して2%のウシ胎仔血清を含有するイスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Media)(IMDM2%FBS)で大腿腔を洗い流すことによって骨髄を得た。70μMのフィルターを通して脾臓をつぶし、そのフィルターをIMDM2%FBSですすぐことによって脾臓細胞を得た。次いで、Neubauer計算チャンバーを使用して単一の細胞懸濁物について3%氷酢酸中での有核細胞の計算を行って、器官当たりの全細胞を算出することができるようにした。次いで、混入した赤血球を除去するために、全脾臓細胞を3倍量の塩化アンモニウム溶解緩衝液で希釈し、氷上で10分間インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、IMDM2%FBSに再懸濁させ、第2の細胞計算を行って溶解後の細胞の細胞濃度を決定した。
細胞ストックを作製し、各メチルセルロースベース培地の処方物に加えて、各培地処方物中の各組織について最適なプレーティング(plating)濃度を得た。骨髄細胞を、成熟赤血球前駆細胞を査定するためにMethoCultTM3334中、皿当たり細胞1×105個をプレーティングし、リンパ球前駆細胞を査定するためにMethoCultTM3630中、皿当たり細胞2×105個をプレーティングし、未成熟赤血球前駆細胞および骨髄系前駆細胞を査定するためにMethoCultTM3434中、皿当たり細胞3×104個をプレーティングした。脾臓細胞を、成熟赤血球前駆細胞を査定するためにMethoCultTM3334中、皿当たり細胞4×105個をプレーティングし、リンパ球前駆細胞を査定するためにMethoCultTM3630中、皿当たり細胞4×105個をプレーティングし、未成熟赤血球前駆細胞および骨髄系前駆細胞を査定するためにMethoCultTM3434中、皿当たり細胞2×105個をプレーティングした。3連の皿にプレーティングした培養物を、37℃、5%CO2で、訓練された職員によってコロニーの列挙および評価が行われるまでインキュベートした。成熟赤血球前駆細胞を2日間培養し、リンパ球前駆細胞を7日間培養し、成熟赤血球前駆細胞および骨髄系前駆細胞を12日間培養した。
(分析)
クローン原性アッセイの3連の培養物ならびに全データセットについての対照群および処置群について平均+/−1標準偏差を計算した。
各組織におけるコロニー形成細胞(CFC)の頻度を下記:
皿当たりのプレーティングされた細胞
皿当たりのスコア化した平均CFC
の通り計算した。
大腿または脾臓当たりの全CFCを下記:
スコア化された全CFC×大腿または脾臓当たりの有核細胞数(RBC溶解の後)
培養された有核細胞の数
の通り計算した。
標準のt検定を行って、PBS対照マウスと化合物で処置したマウスとの間で、細胞または造血前駆細胞の平均数に差異があるかどうかを査定した。コロニーの列挙の潜在的な主観性のために、0.01未満のp値を有意であるとみなす。各群についての平均値(+/−SD)を下記の表に示す。
ActRIIB(20〜134)−mFcを用いたマウスの処置は、この研究の短期間の枠では、赤血球またはヘモグロビンの含有量の有意な増加をもたらさなかった。しかし、前駆細胞含有量に対する作用は顕著であった。大腿では、対照と処置群間で、有核細胞数または前駆細胞含量に差異はなかった。脾臓では、化合物で処置した群は、赤血球溶解前の有核細胞数および皿当たりの成熟赤血球前駆細胞(CFU−E)コロニー数、脾臓当たりの頻度および全前駆細胞数に統計学的に有意な増加を経験した。さらに、骨髄系(CFU−GM)、未成熟赤血球(BFU−E)の数、および脾臓当たりの全前駆細胞数にも増加を認めた。したがって、より長期間の過程にわたって、ActRIIB(20〜134)−mFc処置は、赤血球およびヘモグロビンの含有量の上昇をもたらし得ることを予想する。
(実施例8 GDFトラップは、インビボで赤血球レベルを増加させる)
12週齢の雄性C57BL/6NTacマウスを、2つの処置群のうちの1つに割り当てた(N=10)。マウスに、ビククルまたは改変体ActRIIBポリペプチド(「GDFトラップ」)[ActRIIB(L79D 20〜134)−hFc]のいずれかを、4週間、週2回、10mg/kgを皮下注射(SC)により投薬した。研究の終了時に、全血を心臓穿刺によりEDTA含有管に採取し、HM2血液分析器(Abaxis,Inc)を使用して細胞分布について分析した。
GDFトラップを用いた処置は、ビヒクル対照と比較して、白血球(WBC)の数への統計的に有意な作用を有さなかった。赤血球(RBC)数は、対照と比較して処置群において増加した(以下の表を参照のこと)。ヘモグロビン含有量(HGB)およびヘマトクリット(HCT)の両方も、追加の赤血球によって増加した。赤血球の平均幅(RDWc)は、処置した動物において高く、これは未成熟の赤血球プールの増加を示している。したがって、GDFトラップを用いた処置は、白血球集団に対する識別できる作用を伴わずに、赤血球の増加をもたらす。
(実施例9 GDFトラップは、インビボにおける赤血球レベル増加についてActRIIB−Fcよりも優れている)
19週齢の雄性C57BL/6NTacマウスを、3つの群のうちの1つに無作為に割り当てた。マウスに、ビヒクル(10mMのトリス緩衝生理食塩水、TBS)、野生型ActRIIB(20〜134)−mFc、またはGDFトラップActRIIB(L79D 20〜134)−hFcを、3週間、週に2回、皮下注射により投薬した。ベースライン、および投薬の3週間後に、血液を頬出血で採取し、血液分析器(HM2、Abaxis,Inc.)を使用して細胞分布について分析した。
ActRIIB−FcまたはGDFトラップを用いた処置は、ビヒクル対照と比較して、白血球(WBC)数に対する有意な作用を有さなかった。赤血球含有量(RBC)、ヘマトクリット(HCT)、およびヘモグロビンレベルは全て、対照または野生型構築物のいずれと比較しても、GDFトラップ処置マウスにおいて上昇した(以下の表を参照されたい)。したがって、直接比較では、GDFトラップは、野生型ActRIIB−Fcタンパク質よりも有意に大きな程度まで赤血球の増加を促進する。実際に、この実験では、野生型ActRIIB−Fcタンパク質は、赤血球の統計的に有意な増加を引き起こさず、これは、この作用を明らかにするためには、より長いか、または、より高い投薬が必要になることを示唆している。
(実施例10 切断されたActRIIB細胞外ドメインを用いたGDFトラップの作製)
実施例1に記載されるように、ActRIIB(L79D 20〜134)−hFcと呼ばれるGDFトラップを、TPAリーダーの、ロイシンからアスパラギン酸への置換(配列番号1の残基79において)を含有するActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1の残基20〜134)へのN末端融合、および最小限のリンカー(3つのグリシン残基)を用いたヒトFcドメインのC末端融合により作製した(図3)。この融合タンパク質に対応するヌクレオチド配列を図4に示す。
ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcと呼ばれる、切断されたActRIIB細胞外ドメインを持つGDFトラップを、TPAリーダーの、ロイシンからアスパラギン酸への置換(配列番号1の残基79において)を含有する切断された細胞外ドメイン(配列番号1の残基25〜131)へのN末端融合、および最小限のリンカー(3つのグリシン残基)を用いたヒトFcドメインのC末端融合により作製した(図5)。この融合タンパク質に対応するヌクレオチド配列を図6に示す。
(実施例11 二重に切断されたActRIIB細胞外ドメインを持つGDFトラップによる選択的なリガンド結合)
GDFトラップおよび他のActRIIB−hFcタンパク質の、いくつかのリガンドに対する親和性を、BiacoreTM機器を用いてインビトロで評価した。結果を以下の表に要約する。konおよびkoffの正確な決定を妨害した、複合体の非常に急速な会合と解離のため定常状態親和性フィットによりKd値を得た。
切断された細胞外ドメインを持つGDFトラップ、ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcは、L79D置換を欠くActIIB−hFc対応物と比較してアクチビンAおよびアクチビンBの結合の明白な損失ならびにGDF11の結合のほぼ完全な保持を伴って、より長い改変体であるActRIIB(L79D 20〜134)−hFcによって示されるリガンド選択性に匹敵したか、またはそれに勝った。切断単独(L79D置換なし)では、本明細書中に示されるリガンド間の選択性は変更されなかったことに注目されたい[ActRIIB(L79 25〜131)−hFcとActRIIB(L79 20〜134)−hFcを比較]。
(実施例12 代替のヌクレオチド配列を用いたActRIIB(L79D 25〜131)−hFcの作製)
ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcを作製するために、ネイティブな79位(配列番号1)においてアスパラギン酸置換を持ち、N末端およびC末端の切断を伴うヒトActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1の残基25〜131)を、ネイティブなActRIIBリーダーではなくTPAリーダー配列とN末端融合させ、最小限のリンカー(3つのグリシン残基)を介してヒトFcドメインとC末端融合させた(図5)。この融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の1つを図6(配列番号27)に示し、正確に同じ融合タンパク質をコードする代替のヌクレオチド配列を図9(配列番号30)に示す。このタンパク質を、実施例1に記載される方法体系を使用して発現させおよび精製した。
(実施例13 切断されたActRIIB細胞外ドメインを持つGDFトラップはマウスにおいて赤血球前駆体の増殖を増加させる)
ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcを、赤血球前駆体の増殖に対するその作用を決定するために評価した。雄性のC57BL/6マウス(8週齢)を、1日目および4日目に、ActRIIB(L79D 25〜131)−hFc(10mg/kg、s.c.;n=6)またはビヒクル(TBS;n=6)で処置し、次いで8日目に、脾臓、脛骨、大腿骨、および血液を採取するために安楽死させた。脾臓および骨髄の細胞を単離し、5%ウシ胎仔血清を含有するイスコフ改変ダルベッコ培地中に希釈し、特殊化メチルセルロースベース培地に懸濁させ、2日間または12日間培養して、コロニー形成単位−赤血球(CFU−E)段階およびバースト形成単位−赤血球(BFU−E)段階で、それぞれ、クローン原性の前駆体のレベルを評価した。BFU−Eの決定用のメチルセルロースベース培地(MethoCult M3434、Stem Cell Technologies)には、CFU−Eの決定用のメチルセルロース培地(MethoCult M3334、Stem Cell Technologies)には存在しない組換えのマウス幹細胞因子、インターロイキン3、およびインターロイキン6を含めたが、どちらの培地も、他の構成成分の中でエリスロポエチンを含有した。BFU−EおよびCFU−Eの両方について、各組織試料から誘導された2連の培養プレートにおいてコロニーの数を決定し、結果の統計分析は処置群当たりのマウスの数に基づいた。
ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcで処置したマウスからの脾臓由来培養物は、CFU−Eコロニーの数が対照マウスからの対応する培養物の2倍であったが(P<0.05)、一方、BFU−Eコロニーの数はインビボの処置で有意に差異がなかった。骨髄培養物からのCFU−EまたはBFU−Eのコロニーの数も処置によって有意に異ならなかった。予想通りに、脾臓由来培養物におけるCFU−Eコロニーの数の増加は、安楽死時に、対照と比較してActRIIB(L79D 25〜131)−hFcで処置したマウスにおける赤血球レベル(11.6%増加)、ヘモグロビン濃度(12%増加)、およびヘマトクリットレベル(11.6%増加)の非常に有意な(P<0.001)変化を伴った。これらの結果は、切断されたActRIIB細胞外ドメインを持つGDFトラップのインビボ投与が、赤血球レベルの増加に対するその全体的な作用の一部として、赤血球前駆体の増殖を刺激し得ることを示している。
(実施例14 切断されたActRIIB細胞外ドメインを持つGDFトラップは、マウスにおける化学療法誘発性貧血を相殺する)
出願人は、微小管重合を遮断することによって細胞分裂を阻害するパクリタキセルに基づく化学療法誘発性貧血のマウスモデルにおいて、赤血球生成のパラメータに対するActRIIB(L79D 25〜131)−hFcの作用を調査した。雄性のC57BL/6マウス(8週齢)を4つの処置のうちの1つに割り当てた:
1)パクリタキセル(25mg/kg、i.p.)
2)ActRIIB(L79D 25〜131)−hFc(10mg/kg、i.p.)3)パクリタキセル+ActRIIB(L79D 25〜131)−hFc
4)ビヒクル(TBS)。
パクリタキセルは0日目に投与したが、一方、ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcまたはビヒクルは0日目および3日目に投与した。CBC分析のために、1日目、3日目、および5日目に別々のコホートから血液試料を採取し、処置群1〜3(上記)についての結果を、所与の時点におけるビヒクルからの差異の割合として表した。パクリタキセルのみのコホートで、3日目におけるパクリタキセルの毒性による消耗が問題であった(n=1);その他の場合は、時点当たり、処置当たりn=3〜5。ビヒクルと比較して、パクリタキセル単独では、5日目においてヘモグロビン濃度がほぼ13%減少したが、一方、ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcの添加は、このパクリタキセルに誘発された減少を妨げた(図11)。ヘマトクリットおよびRBCレベルについても同様の作用を観察した。パクリタキセルの非存在下では、ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcは、3日目および5日目において、ヘモグロビン濃度をビヒクルと比較して10%増加させた(図11)。したがって、切断されたActRIIB細胞外ドメインを持つGDFトラップは、化学療法誘発性貧血を相殺するために十分に赤血球レベルを増加させ得る。
(実施例15 切断されたActRIIB細胞外ドメインを持つGDFトラップは、マウスにおける腎摘出誘発性貧血を逆転させる)
出願人は、腎摘出された慢性腎疾患マウスモデルにおける貧血に対するActRIIB(L79D 25〜131)−hFcの作用を調査した。雄性のC57BL/6マウス(11週齢)について、偽手術またはエリスロポエチン生成能を低下させるための片側腎摘出のいずれかを行った。手術後回復のためにマウスに1週間与え、次いでActRIIB(L79D 25〜131)−hFc(10mg/kg、i.p.;条件当たりn=15)またはビヒクル(TBS;条件当たりn=15)で週2回、全部で4週間処置した。投薬開始前および処置の4週間後に血液試料を採取した。ビヒクルで処置した腎摘出されたマウスは、4週間の処置期間にわたって赤血球数の有意な減少を示したが、一方、ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcを用いた処置では、腎臓のエリスロポエチン生成能が低下したにもかかわらず、赤血球細胞レベルの減少を妨げただけでなく、ベースライン上に17%増加させた(P<0.001)(図12)。腎摘出されたマウスにおいて、ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcは、ヘモグロビン濃度およびヘマトクリットレベルにおいてもベースラインからの有意な増加を生じ、そして、注目すべきことに、これらの赤血球生成のパラメータそれぞれを、腎摘出された条件下で、偽手術の条件下とほぼ同程度まで刺激した(図13)。したがって、切断されたActRIIB細胞外ドメインを持つGDFトラップは、慢性腎疾患モデルにおいて貧血を逆転させるために十分に赤血球レベルを増加させ得る。
(実施例16 切断されたActRIIB細胞外ドメインを持つGDFトラップは、ラットにおける、失血によって誘発される貧血からの回復を改善する)
出願人は、急性失血によって誘発される貧血(急性出血後貧血)のラットモデルにおいて赤血球生成のパラメータに対するActRIIB(L79D 25〜131)−hFcの作用を調査した。雄性のSprague−Dawleyラット(およそ300g)に、供給メーカー(Harlan)において長期にわたる頸静脈カテーテルを受けさせた。−1日目に、各ラットから、イソフルラン麻酔下でカテーテルを介して5分間にわたって全血液量の20%を抜き取った。除去した血液量は、Leeおよび共同研究者(J Nucl Med 25巻:72〜76頁、1985年)によって、120gを超える体重のラットに対して導かれた以下の関係:
全血液量(ml)=0.062×体重(g)+0.0012
に従って計算された全血液量についての値に基づいた。
血液除去の時点で、カテーテルを介して等量のリン酸緩衝生理食塩水で置換した。0日目および3日目に、ラットをActRIIB(L79D 25〜131)−hFc(10mg/kg、s.c.;n=5)またはビヒクル(TBS;n=5)で処置した。−1日目(ベースライン)、0日目、2日目、4日目、および6日目に、CBC分析のための血液試料を、カテーテルを介して取り出した。
対照のラットは、0日目までに、赤血球レベルのほぼ15%の落下を伴い、20%の失血に対して応答した。これらのレベルは、2日目および4日目においてベースラインよりも有意に低いままであり、6日目までに十分に回復しなかった(図14)。ActRIIB(L79D 25〜131)−hFcで処置したラットは、20%の失血後にほぼ同一の赤血球レベルの低下を示したが、これらのラットは、その後2日目までにそのようなレベルにおける完全な回復、続いて4日目および6日目にさらなる上昇を示し、これは、対応する時点における、対照レベルを超える非常に有意な改善を示している(図14)。ヘモグロビン濃度についても同様の結果を得た。これらの知見は、切断されたActRIIB細胞外ドメインを持つGDFトラップが、急性出血によって引き起こされる貧血からの赤血球レベルの急速な回復をもたらし得ることを実証している。
(実施例17 切断されたActRIIB細胞外ドメインを持つGDFトラップは、非ヒト霊長類における赤血球レベルを増加させる)
2つのGDFトラップ、ActRIIB(L79D 20〜134)−hFcおよびActRIIB(L79D 25〜131)−hFcを、カニクイザルにおける赤血球生成を刺激するそれらの能力について評価した。サルを、1日目および8日目にGDFトラップ(10mg/kg;n=雄性4/雌性4)、またはビヒクル(n=雄性2/雌性2)で皮下に処置した。1日目(前処置ベースライン)、3日目、8日目、15日目、29日目、および44日目に血液試料を採取し、赤血球レベル(図15)、ヘマトクリット(図16)、ヘモグロビンレベル(図17)、および網状赤血球レベル(図18)について分析した。ビククルで処置したサルは、処置後の全ての時点で、繰り返しの血液試料採取の予想された影響である、赤血球、ヘマトクリット、およびヘモグロビンのレベルの低下を示した。対照的に、ActRIIB(L79D 20〜134)−hFcまたはActRIIB(L79D 25〜131)−hFcを用いた処置では、最初の処置後の時点(3日目)までにこれらのパラメータが増加し、この研究の継続期間中、実質的に上昇したレベルを持続した(図15〜17)。重要なことに、ActRIIB(L79D 20〜134)−hFcまたはActRIIB(L79D 25〜131)−hFcで処置したサルにおける網状赤血球レベルは、8日目、15日目、および29日目において、ビヒクルと比較して実質的に増加した(図18)。この結果は、GDFトラップの処置が、赤血球前駆体の生成を増加させ、赤血球レベルの上昇をもたらすことを実証している。
総合すると、これらのデータは、切断されたGDFトラップ、ならびに完全長改変体を、GDF11の選択的アンタゴニストとして、およびインビボにおける赤血球形成を増加させるための潜在的な関連リガンドとして使用し得ることを実証している。
(実施例18 ActRIIB5から誘導されたGDFトラップ)
ActIIB膜貫通ドメインを含むエクソン4が異なるC末端配列で置き換わった、代替の、可溶性の形態のActRIIB(ActRIIB5と呼ばれる)が報告された(WO2007/053775)。
リーダーを持たないネイティブなヒトActRIIB5の配列は以下の通りである。
ロイシンからアスパラギン酸への置換、または他の酸性の置換を、以下の配列を有する改変体ActRIIB5(L79D)を構築するために、記載のようにネイティブな79位(下線を付して強調)において行い得る。
この改変体を、以下の配列を持つヒトActRIIB5(L79D)−hFc融合タンパク質を作製するために、TGGGリンカーを用いてヒトFcに連結し得る。
この構築物をCHO細胞において発現させ得る。
(実施例19)
マウスにおけるEPOと切断型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDF Trapとによる組合せ処置の効果
EPOが、赤血球系前駆体の増殖を増大させることにより赤血球の形成を誘導するのに対し、GDF Trapは、EPOの効果を補完または増強する様式で、赤血球の形成に潜在的に影響を及ぼし得る。したがって、本出願者らは、EPOとActRIIB(L79D 25−131)−hFcとによる組合せ処置の、赤血球生成パラメータに対する効果について調査した。雄C57BL/6マウス(9週齢)に、組換えヒトEPO単独(エポエチンアルファ、1800単位/kg)、ActRIIB(L79D 25−131)−hFc単独(10mg/kg)、EPOおよびActRIIB(L79D 25−131)−hFcの両方、またはビヒクル(トリス緩衝食塩水)による単回の腹腔内注射を施した。血液、脾臓、および大腿骨を回収するために、投与の72時間後にマウスを安楽死させた。
脾臓および大腿骨を処理して、フローサイトメトリー解析のために赤血球系前駆体細胞を得た。摘出後、5%のウシ胎仔血清を含有するイスコフ改変ダルベッコ培地中で脾臓を切り刻み、1mLの滅菌シリンジからプランジャーで70μmの細胞ストレーナーを通して押しだすことにより機械的に解離させた。大腿骨から、残存するあらゆる筋肉または結合組織を取り除き、端部を切り取って、3mLのシリンジにつないだ21ゲージの注射針を介して、残りの骨幹を5%のウシ胎仔血清を含有するイスコフ改変ダルベッコ培地でフラッシュすることにより、骨髄の回収を可能とした。細胞懸濁物を遠心分離し(2000rpmで10分間にわたり)、細胞ペレットを、5%のウシ胎仔血清を含有するPBSに再懸濁させた。各組織に由来する細胞(106個)を抗マウスIgGと共にインキュベートして、非特異的結合を遮断し、次いで、マウス細胞表面マーカーCD71(トランスフェリン受容体)およびTer119(細胞表面グリコフォリンAと関連する抗原)に対する蛍光標識抗体と共にインキュベートし、洗浄し、フローサイトメトリーで解析した。試料中の死細胞は、ヨウ化プロピジウムで対染色することにより解析から除外した。脾臓または骨髄における赤血球系の分化は、分化の経過にわたり減少するCD71標識、および前赤芽球期と共に始まり終末の赤血球系分化の間に増加するTer119標識の程度により評価した(Socolovskyら、2001年、Blood、98巻:3261〜3273頁;Yingら、2006年、Blood、108巻:123〜133頁)。したがって、フローサイトメトリーを用いて、記載される通りに、前赤芽球(CD71highTer119low)、好塩基性赤芽球(CD71highTer119high)、多染性赤芽球+正染性赤芽球(CD71medTer119high)、および後期正染性赤芽球+網状赤血球(CD71lowTer119high)の数を決定した。
EPOとActRIIB(L79D 25−131)−hFcとによる組合せ処置は、驚くほど活発な赤血球の増加をもたらした。この実験の72時間にわたる時間枠では、EPO単独もActRIIB(L79D 25−131)−hFc単独も、ヘマトクリットを、ビヒクルと比較して有意には増加させなかったのに対し、2つの薬剤による組合せ処置は、ヘマトクリットをほぼ25%増加させ、これは、予測外に相乗作用的であった、すなわち、それらの個別の効果の合計を超えた(図19)。この種類の相乗作用は一般に、個別の薬剤が異なる細胞機構を介して作用することの証拠であると考えられる。同様の結果はまた、ヘモグロビン濃度(図20)および赤血球濃度(図21)についても観察され、組合せ処置によりそれらの各々もまた相乗作用的に増加した。
赤血球系前駆体レベルの解析は、より複雑なパターンを明らかにした。マウスでは、脾臓が、誘導性(「ストレス」による)赤血球生成に関与する主要な臓器であると考えられる。72時間の時点の脾組織のフローサイトメトリー解析は、EPOが、赤血球生成前駆体のプロファイルを、ビヒクルと比較して顕著に変化させ、3分の1を超えて減少する後期前駆体(後期正染性赤芽球+網状赤血球)を犠牲にして、好塩基性赤芽球の数を170%超増加させることを明らかにした(図22)。重要なことは、組合せ処置が、好塩基性赤芽球を、EPO単独より低度においてであるが、ビヒクルと比較して有意に増加させる一方、後期前駆体の減少のない成熟を補助したことである(図22)。したがって、EPOとActRIIB(L79D 25−131)−hFcとによる組合せ処置は、赤血球生成を、前駆体の増殖および成熟の平衡ある増強を介して増大させた。脾臓とは対照的に、組合せ処置後における骨髄の前駆体細胞プロファイルは、EPO単独後における前駆体細胞プロファイルと察知可能な程度には異ならなかった。本出願者らは、脾の前駆体プロファイルから、72時間を超えて実験を拡張すれば、組合せ処置が、網状赤血球レベルの増大をもたらし、成熟赤血球レベルの持続的な上昇を伴うことを予測する。
まとめると、これらの知見は、切断型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDF Trapを、EPOと組み合わせて投与して、in vivoにおける赤血球の形成を相乗作用的に増大させ得ることを実証する。相補的であるが明確にされていない機構を介して作用することにより、GDF Trapは、EPO受容体活性化因子単独の強力な増殖効果を調節しながら、低用量のEPO受容体活性化因子により目的の赤血球レベルを達することをやはり可能とし、これにより、高レベルのEPO受容体の活性化と関連する潜在的な有害作用または他の問題を回避することを可能にする。
(実施例20)
切断型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDF Trapは、骨髄異形成症候群のマウスモデルにおけるRBCレベルを増大させる
骨髄異形成症候群(MDS)とは、末梢における血球減少症、不応性貧血、および急性骨髄性白血病への進行の危険性により臨床的に特徴づけられる、骨髄不全による多様な障害である。RBCの輸血は、疲労を緩和し、生活の質を改善し、生存を延長するための、MDSにおいて主要な維持療法であるが、定期的な輸血は、これらの患者において、鉄過剰を結果としてもたらすことが典型的であり、これは、罹患率および死亡率に対する有害作用を伴うものであり、鉄キレート化療法などの救済手段の使用をもたらし得る(Dreyfus、2008年、Blood Rev、22巻、補遺2号:S29〜34頁;Jabbourら、2009年、Oncologist、14巻:489〜496頁)。一部のMDS患者では、組換えエリスロポエチン(EPO)およびその誘導体が代替の治療法であるが(Estey、2003年、Curr Opin Hematol、10巻:60〜67頁)、近年の研究は、このクラスの薬剤が、ある用量で、血栓塞栓性事象および腫瘍成長に起因する罹患率および死亡率の危険性の増加と関連することを示唆する(Krapfら、2009年、Clin J Am Soc Nephrol、4巻:470〜480頁;Glaspy、2009年、Annu Rev Med、60巻:181〜192頁)。したがって、慢性輸血に付随する鉄過剰や外因性EPOおよびその誘導体に固有の危険性を伴わずにRBCレベルを増大させる、代替のMDS治療が必要とされている。
したがって、本出願者らは、急性白血病への形質転換を包含する、MDSの主要な特徴を再現するトランスジェニックマウスモデル(Linら、2005年、Blood、106巻:287〜295頁;Beachyら、2010年、Hematol Oncol Clin North Am、24巻:361〜375頁)において、ActRIIB(L79D 25−131)−hFcの、RBCレベルに対する効果について調査した。3カ月齢で始めて、雄および雌のNUP98−HOXD13マウスを、毎週2回ずつ、ActRIIB(L79D 25−131)−hFc(10mg/kg、皮下)またはビヒクル(TBS)で処置した。野生型の同腹子には、ActRIIB(L79D 25−131)−hFcまたはビヒクルを投与し、対照として使用した。血液試料は、投与の開始前に回収し、その後1カ月間隔でも回収し、CBC測定を実施した。
ベースラインにおいて、NUP98−HOXD13マウスと野生型対照との間では、複数の差違が注目された。とりわけ、雄NUP98−HOXD13マウスは、野生型マウスと比較してRBC濃度の低下(−8.8%、p<0.05)およびヘマトクリットの減少(−8.4%、p<0.05)を有意に表し、雌NUP98−HOXD13マウスも同様の傾向を示した。投与の3カ月後の結果(平均値±SD)を、以下の表に示す。
ビヒクルと比較して、3カ月間にわたるActRIIB(L79D 25−131)−hFcによる処置は、雄および雌いずれのNUP98−HOXD13マウスにおいても、RBC濃度およびヘモグロビン濃度を有意に上昇させた(約30%)。これらの雄マウスではまた、ヘマトクリットも有意に増大し、雌マウスにおいても有意性への傾向を伴って増加した。したがって、切断型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDF Trapは、MDSのマウスモデルにおいて、RBCレベルを有意に増大させ得る。輸血が、本質的に外因性鉄の供給源であるのに対し、GDF Trapは、赤血球生成を介して内因性鉄の蓄積の使用を促進し、これにより、鉄過剰およびその負の帰結を回避することにより、RBCレベルを増大させる。加えて、実施例19で言及した通り、GDF Trapは、赤血球生成を刺激するための、EPO受容体活性化因子により用いられる細胞機構とは異なる(相補的ではあるが)細胞機構を介して作用し、これにより、EPO受容体の活性化と関連する潜在的な有害作用を回避する。
(実施例21)
β−サラセミアのマウスモデルにおける、切断型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDF Trapの、RBCレベルおよびRBCの形態に対する効果
無効赤血球生成の最も一般的な原因を表すサラセミア症候群では、α−グロビン鎖の発現とβ−グロビン鎖の発現との不均衡が、赤芽球の成熟の間におけるアポトーシスの増加に起因して、貧血を結果としてもたらす。現在のところ、RBC輸血が、サラセミアにおける主要な維持療法であるが、時間と共に、特定の組織において潜在的に致死性の鉄蓄積を引き起こす(Tannoら、2010年、Adv Hematol、2010巻:358283頁)。例えば、鉄過剰と関連する心疾患は、重症型サラセミアを有する患者における死亡率のうちの50%を占め得る(Borgna−Pignattiら、2005年、Ann NY Acad Sci、1054巻:40〜47頁)。重要なことは、内因性EPOレベルが上昇し、サラセミア症候群における病因のほか、他の無効赤血球生成による障害における病因にも典型的に寄与し、したがって、組換えEPOの治療用途が不適切となり得ることである。したがって、サラセミアおよび他の無効赤血球生成による障害のための代替療法であって、慢性輸血に付随する鉄過剰を伴わずにRBCレベルを増大させる療法が必要とされている。
本出願者らは、β−主要グロビンをコードする遺伝子の全コード領域を欠失させた中等症β−サラセミアのマウスモデルにおいて、ActRIIB(L79D 25−131)−mFcの、RBC形成に対する効果について調査した。このHbbth−1対立遺伝子についてホモ接合性のマウスは、循環RBCに対して高比率で封入体を伴う低色素性の小球性(micocytic)貧血を示す(Skowら、1983年、Cell、1043巻:1043〜1052頁)。予備的実験では、2〜5カ月齢のHbb−/−β−サラセミアマウス(C57BL/6J−Hbbd3th/J)を、毎週2回ずつの皮下注射により、ActRIIB(L79D 25−131)−mFc(10mg/kg)またはビヒクル(トリス緩衝食塩水)を施すように、無作為に割り当てた。野生型の同腹子には、ビヒクルを投与してさらなる対照として使用した。血液試料(100μl)は、CBC解析のために、投与の開始前に頬採血により回収し、その後定期的な間隔でも頬採血により回収した。ベースラインにおける血液学的パラメータの特徴づけにより、Hbb−/−β−サラセミアマウスは、重度に貧血性であることが確認され(図23)、4週間にわたるActRIIB(L79D 25−131)−mFcによるHbb−/−マウスの処置は、ビヒクルで処置したHbb−/−マウスと比較して、RBC数を顕著に増加させ、これにより、このモデルにおいて観察される貧血を半分に低減した(図24)。また、処置に関連するヘマトクリットの増加およびヘモグロビン濃度の増大も認められた。重要なことは、Hbb−/−マウスのActRIIB(L79D 25−131)−mFcによる処置が、ビヒクルで処置したHbb−/−マウスと比較して、RBC形態の改善ならびに溶血および赤血球破砕物の低減もまた結果としてもたらし(図25)、したがって、赤血球生成の根本的な改善を示したことである。よって、切断型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDF Trapポリペプチドは、RBC数を増加させ、かつ、RBCの形態を改善することにより、β−サラセミアのマウスモデルにおける貧血に対する治療的利益をもたらし得る。貧血を軽減しながら赤芽球の成熟を促進することにより、GDF Trapポリペプチドは、無効赤血球生成を処置し得る。本質的に外因性鉄の供給源である輸血とは異なり、GDF Trapポリペプチドは、赤血球生成を介して内因性鉄の蓄積の使用を促進し、これにより、鉄過剰およびその負の帰結を回避することにより、RBCレベルを上昇させ得る。
(実施例22)
β−サラセミアのマウスモデルにおける、切断型ActRIIB細胞外ドメインを有するGDF Trapの、EPOレベル、脾腫、骨密度、および鉄過剰に対する効果
無効赤血球生成と関連する低酸素症は、骨髄内および骨髄外のいずれにおいても赤芽球の大規模な増殖を駆動し得る、EPOレベルの上昇を引き起こし、脾腫(脾臓の腫大)、赤芽球誘導性骨病変をもたらし、治療用RBC輸血の非存在下においてもなお、組織鉄過剰をもたらす。鉄過剰を処置しなければ、サラセミアの重度形態における心筋症(Lekawanvijitら、2009年、Can J Cardiol、25巻:213〜218頁)に起因することが最も多い、組織における鉄沈着、多臓器機能不全、および早発の死亡がもたらされる(Borgna−Pignattiら、2005年、Ann NY Acad Sci、1054巻:40〜47頁;Borgna−Pignattiら、2011年、Expert Rev Hematol、4巻:353〜366頁)。赤血球生成の有効性を増加させることにより、GDF Trapポリペプチドは、根底にある貧血およびEPOレベルの上昇だけでなく、また、脾腫、骨病変、および鉄過剰が関連する合併症も緩和し得る。
本出願者らは、実施例21において研究した中等症β−サラセミアの同じマウスモデルにおいて、GDF Trapポリペプチドの、これらのパラメータに対する効果について調査した。3カ月齢のHbb−/−β−サラセミアマウス(C57BL/6J−Hbbd3th/J)を、毎週2回ずつ2カ月間にわたる皮下注射により、ActRIIB(L79D 25−131)−mFc(1mg/kg、n=7)またはビヒクル(トリス緩衝食塩水、n=7)を施すように、無作為に割り当てた。野生型の同腹子には、ビヒクル(n=13)を投与してさらなる対照として使用した。血液試料(100μl)は、CBC解析のために、研究の終了時に回収した。研究の終了時に、二重エネルギーx線吸収測定法(DEXA)により骨塩密度を決定し、ELISAにより血清EPOレベルを決定し、2’,7’−ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテートおよびフローサイトメトリーにより反応性酸素種(ROS)を定量化し(Suraganiら、2012年、Blood、119巻:5276〜5284頁)、定量的ポリメラーゼ連鎖反応によりヘプシジンmRNAレベルを決定した。
本GDF Trapポリペプチドは、無効赤血球生成の緩和と符合する複数の血液学的効果を発揮した。2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25−131)−mFcによるHbb−/−マウスの処置は、RBCカウントを、ビヒクルを投与したHbb−/−マウスと比較して25%増加させた(図26)。Hbb−/−マウスにおいて、ActRIIB(L79D 25−131)−mFcによる処置はまた、2カ月の時点で、ビヒクル対照と比較して、ヘモグロビン濃度およびヘマトクリットも有意に増加させた。これらの変化には、循環網状赤血球レベルの低減(ActRIIB(L79D 25−131)−mFcまたはビヒクルのそれぞれにより処置したHbb−/−マウスについて、44.8±5.0%に対して31.3±2.3%)が伴い、これは、貧血の緩和と符合する。実施例21における通り、ActRIIB(L79D 25−131)−mFcによるHbb−/−マウスの処置は、ビヒクルを投与したHbb−/−マウスと比較して、RBC形態の改善および赤血球破砕物の低減を結果としてもたらした。健康な個体と比較して、サラセミアを有する患者は、RBC破壊速度の増加と、ヘム異化の産物であり、溶血のマーカーである、ビリルビンの血清レベルの上昇とを示す(Orten、1971年、Ann Clin Lab Sci、1巻:113〜124頁)。Hbb−/−マウスにおいて、ActRIIB(L79D 25−131)−mFcによる処置は、2カ月の時点で、血清ビリルビンレベルを、ビヒクルと比較してほぼ半分に低減し(図27)、これにより、ActRIIB(L79D 25−131)−mFcが、RBC形成を促進しながら、成熟RBCの構造的/機能的完全性を予測外に改善し得ることの証拠ももたらされる。重要なことは、ActRIIB(L79D 25−131)−mFcによるHbb−/−マウスの処置が、同じモデルにおいて、2カ月の時点で、血清EPOレベルを、ビヒクルと比較して、60%超低減した(図28)。EPOレベルの上昇は、β−サラセミアにおける無効赤血球生成の顕著な特徴であるので、本実施例におけるこのようなレベルの低減は、ActRIIB(L79D 25−131)−mFcが、サラセミアのこのマウスモデルにおいて、それが引き起こす貧血だけでなく、無効赤血球生成自体も緩和することの強力な証拠である。
本GDF Trapポリペプチドはまた、無効赤血球生成の主要な合併症を表すエンドポイントの有益な変化ももたらした。サラセミア患者では、EPOにより刺激される赤血球系過形成および髄外赤血球生成により、脾腫および骨の悪化の両方が引き起こされる。Hbb−/−マウスでは、2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25−131)−mFcによる処置が、脾臓重量を、ビヒクルと比較して有意に低減し(図29)、骨塩密度を野生型の値へと完全に回復させた(図30)。本GDF Trapポリペプチドによる処置ではまた、鉄ホメオスタシスも有意に改善された。血清鉄は、非結合(遊離)鉄、および循環中の鉄元素の輸送に特化したタンパク質であるアポトランスフェリン(トランスフェリンを形成する)に結合した鉄の両方からなる。血清鉄が、全身の鉄の比較的少量で不安定な成分を構成するのに対し、主に細胞内に見出される鉄蓄積の別の形態であるフェリチンの血清レベルは、より大量でそれほど不安定でない成分を表す。鉄負荷の第3の尺度は、トランスフェリンによる鉄の結合容量が満たされた程度である、トランスフェリンの飽和度である。Hbb−/−マウスでは、2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25−131)−mFcによる処置は、鉄の過負荷のこれらの指標の各々を、ビヒクルと比較して有意に低減した(図31)。これらの多様な鉄ホメオスタシスのパラメータに対するその効果に加えて、ActRIIB(L79D 25−131)−mFcは、脾臓、肝臓、および腎臓における組織化学的解析により決定される通り、Hbb−/−マウスにおける組織鉄過剰も正常化させた(図32)。さらに、本GDF Trapポリペプチドは、鉄ホメオスタシスの優れた調節因子であると考えられ(Gantz、2011年、Blood、117巻:4425〜4433頁)、そのレベルが食餌の鉄の取込みと反比例して変化する肝臓タンパク質である、ヘプシジンの発現に対しても有益な効果を発揮した。ActRIIB(L79D 25−131)−mFcによる処置は、Hbb−/−マウスの肝臓におけるヘプシジンの異常に低い発現を逆転させた(図33)。最後に、同様のデザインを有する別の研究を実施して、本GDF Trapの、鉄過剰の毒性作用の多くを媒介すると考えられる反応性酸素種(ROS)に対する効果も決定した(Rundら、2005年、N Engl J Med、353巻:1135〜1146頁)。3カ月齢のHbb−/−マウスでは、1mg/kgで毎週2回ずつ2カ月間にわたるActRIIB(L79D 25−131)−mFcによる処置が、ROSレベルをほぼ正常化させ(図34)、したがって、サラセミアおよび無効赤血球生成を特徴とする他の疾患において、ROSにより媒介される組織損傷を大幅に低減すると予測される。
まとめると、上記の知見は、GDF Trapポリペプチドは、貧血およびEPOレベルの上昇のほか、脾腫、赤芽球誘導性骨病変、および鉄過剰、ならびにそれらの付随する病変などの合併症を包含する、無効赤血球生成を処置し得ることを実証する。脾腫を伴う病変としては、胸痛または腹痛および網内系過形成が挙げられる。髄外造血は、脾臓だけでなく、潜在的には他の組織においても、髄外造血性偽腫瘍の形態で生じ得る(Musallamら、2012年、Cold Spring Harb Perspect Med、2巻:a013482)。赤芽球誘導性骨病変に付随する病変としては、低骨塩密度、骨粗鬆症、および骨疼痛が挙げられる(Haidarら、2011年、Bone、48巻:425〜432頁)。鉄過剰に付随する病変としては、ヘプシジン抑制および食餌の鉄の過剰吸収(Musallamら、2012年、Blood Rev、26巻(補遺1号):S16〜S19頁)、多発性内分泌障害および肝線維症/肝硬変(Galanelloら、2010年、Orphanet J Rare Dis、5巻:11頁)、ならびに鉄過剰性心筋症(Lekawanvijitら、2009年、Can J Cardiol、25巻:213〜218頁)が挙げられる。無効赤血球生成のための既存の療法とは対照的に、ActRIIB(L79D 25−131)−mFcなどのGDF Trapポリペプチドは、RBCレベルを併せて増大させながら、マウスモデルにおける鉄過剰を低減することが可能である。この新規の能力は、GDF Trapポリペプチドを、貧血処置の経過にわたり身体に外因性鉄の負荷をもたらし、かつ、無効赤血球生成の根底にある状態を緩和することなく外因性鉄の負荷をもたらすことが本質的である輸血から区別する。
(参考としての援用)
本明細書中で言及される全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が、具体的かつ個別に参考として援用されると示されるかのように、その全体が本明細書に参考として援用される。
本主題の特定の実施形態が考察されてきたが、上記明細書は、例示的であり、限定的なものではない。本明細書および以下の特許請求の範囲を精査すれば、多くの変更が当業者に明らかとなる。本発明の完全な範囲は、その等価物の完全な範囲と共に特許請求の範囲を、そして、このような変更と共に明細書を参照することによって決定されるべきである。
特定の局面では、本開示は、GDF Trapポリペプチドを患者に投与するための方法を提供する。一部分で、本開示は、GDF Trapポリペプチドを用いて、赤血球レベルおよびヘモグロビンレベルを増大させ得ることを実証する。一部分で、本開示は、GDF Trapポリペプチドを用いて、無効赤血球生成を有する患者を処置し、貧血、脾腫、鉄過剰、または骨障害など、無効赤血球生成と関連する1または複数の状態を軽減し得ることを実証する。特定の局面では、本開示は、GDF Trapポリペプチドを用いて、サラセミアを有する患者における無効赤血球生成を処置する一方で、赤血球の輸血に対する必要を軽減し、易罹患性組織における鉄沈着と関連する罹患率および死亡率を軽減するための方法を提供する。特に、GDF Trapポリペプチドをこのように用いて、中等症β−サラセミアを包含する、β−サラセミア症候群を処置することができる。GDF Trapポリペプチドはまた、筋肉成長を促進することなど、他の治療用途のために、または他の治療用途を避けるためにも用いることができる。筋肉成長を促進するためにGDF Trapポリペプチドを投与する特定の場合、GDF Trapポリペプチドの投与の間における赤血球に対する効果をモニタリングすることが所望の場合もあり、赤血球に対する望ましくない効果を低減するために、GDF Trapポリペプチドの用量を決定または調整することが所望の場合もある。例えば、赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、またはヘマトクリットレベルの増大は、血圧の上昇を引き起こし得る。
本発明の好ましい実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
患者における無効赤血球生成を処置するための方法であって、それを必要とする患者に、配列番号1のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを投与する工程を含み、該ポリペプチドが、配列番号1の79位に対応する位置に酸性アミノ酸を含む方法。
(項目2)
前記患者が、群:脾腫、鉄過剰、赤芽球誘導性骨病変、および骨髄過形成から選択される障害を有する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記患者が、群:サラセミア、鉄芽球性貧血、および赤血球生成障害貧血から選択される障害を有する、項目1から2のいずれかに記載の方法。
(項目4)
前記患者が、組織鉄過剰を有する、項目1から3のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記患者が、髄外赤血球生成または脾腫を有する、項目1から4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記患者が、赤芽球誘導性骨病変を有する、項目1から5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記患者が、望ましくない程度に高レベルの内因性エリスロポエチンを有する、項目1から6のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記患者が、サラセミア症候群を有する、項目1から7のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記患者が、β−サラセミア症候群を有する、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記患者が、中等症β−サラセミアを有する、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、項目1から10のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸29〜109の配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含む、項目1から10のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸29〜109の配列と同一であるアミノ酸配列を含む、項目1から10のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記方法が、無効赤血球生成のための支持療法を投与する工程をさらに含む、項目1から13のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記支持療法が、赤血球または全血の輸血である、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記支持療法が、1つの鉄キレート化剤または複数の鉄キレート化剤の投与をさらに含む、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記鉄キレート化剤が、
a.デフェロキサミン(デスフェリオキサミンB、デスフェロキサミンB、DFO−B、DFOA、DFB、またはデスフェラールとしても公知である);
b.デフェリプロン(また、フェリプロックスとしても公知である);および
c.デフェラシロクス(また、ビス−ヒドロキシフェニル−トリアゾール、ICL670、またはExjade(商標)としても公知である)
から選択される化合物である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記方法が、ヘプシジンアゴニストの投与をさらに含む、項目1から17のいずれかに記載の方法。