(第1の実施形態)
以下、図1乃至図16を用いて、第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態における画像形成装置1の全体構成を示す図である。
<画像形成装置のハードウェア構成>
画像形成装置1は、複写、印刷等により記録媒体の一例である用紙Pに画像を形成するものである。本実施形態においては図1に示されるように画像形成装置1の最上部にスキャナ部11が設けられている。スキャナ部11は、コンタクトガラス111に載せられた原稿を光学的に読み取ることによりRGB画像情報を生成する。具体的には、スキャナ部11は用紙Pに光を当ててその反射光をCCD(Charge CouPled Devices)、又はCIS(Contact Image Sensor)等の読取センサ112で受光することによってRGB画像情報を読み取る。なお、RGB画像情報とは、用紙Pに形成される画像を表す情報であり、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の明度を含むものである。
また、画像形成装置1には駆動ローラ141、従動ローラ142、二次転写ローラ145が設けられ、これらの駆動ローラ141、従動ローラ142、二次転写ローラ145に中間転写ベルト143が架け渡されている。そして、中間転写ベルト143と接するように4つの感光体ドラム122C、122M、122Y、122Kが設けられている。感光体ドラム122C、122M、122Y、122Kにはそれぞれ、シアン(C)色、マゼンタ(M)色、イエロー(Y)色、ブラック(K)色のトナーによって画像が形成される。各感光体ドラムに形成された画像が中間転写ベルト143の表面の同じ部分に転写されることによって、中間転写ベルト143の表面にカラーのトナー画像が形成される。
二次転写ローラ145と対向する位置に二次転写対向ローラ146が設けられている。中間転写ベルト143の表面に形成されているトナー像を用紙Pに転写(以降、二次転写という)するために、二次転写ローラ145は二次転写対向ローラ146との間に中間転写ベルト143を挟み込み、二次転写バイアスをかける。なお、二次転写バイアスとして、中間転写ベルト143の表面に帯電されている静電荷とは逆の電荷を付与する。
感光体ドラム122Cの近傍には帯電部123Cが設けられている。帯電部123Cは感光体ドラム122Cの表面を一様に帯電する。また感光体ドラム122Cの近傍には露光部124Cが設けられている。露光部124Cは、帯電された感光体ドラム122Cの表面に、後述する制御部によって決定されたC色のトナー付着量に基づいて静電潜像を形成する。さらに、感光体ドラム122Cの近傍には現像部125Cが設けられており、現像部125Cは、静電潜像が形成された感光体ドラム122Cにトナーを付着して感光体ドラム122Cの表面にトナー像を形成する。
また、感光体ドラム122Cに対向して一次転写ローラ144Cが設けられている。一次転写ローラ144Cは、感光体ドラム122Cの表面のトナー像を中間転写ベルト143に転写するために一次転写バイアスをかける。なお、一次転写バイアスとして、感光体ドラム122Cの表面に帯電されている静電荷とは逆の電荷を付与する。
以降の説明では、感光体ドラム122C、帯電部123C、露光部124C、現像部125Cを有するものを作像部12Cという。また、画像形成装置1は作像部12M、12Y、12Kを有しており、それぞれM色、Y色、K色のトナーを用いて作像する点を除いては作像部12Cと同様の構成を有している。
給紙部13は、二次転写ローラ145および二次転写対向ローラ146の間に用紙Pを供給する。給紙部13は、給紙トレイ131、給紙ローラ132、給紙ベルト133、およびレジストローラ134を備えている。給紙トレイ131は用紙Pを収容している。給紙ローラ132は、給紙トレイ131に収容されている用紙Pを給紙ベルト133の方へ搬送するために設けられている。このように設けられている給紙ローラ132は収容されている用紙Pのうち最上段にある用紙Pを一枚ずつ取り出し、給紙ベルト133に載せる。
給紙ベルト133は、給紙ローラ132によって取り出された用紙Pを二次転写ローラ145と二次転写対向ローラ146の間に向けて、矢印(A1)の方向へ搬送する。給紙ベルト133において、用紙Pが二次転写ローラ145に到達する手前にはレジストローラ134が設けられる。中間転写ベルト143におけるトナー像が形成されている部分が二次転写ローラ145の位置に到達するタイミングで、レジストローラ134は用紙Pを送り出す。
定着装置15は、中間転写ベルト143から用紙Pに転写されたトナーを定着させる。定着とは、熱と圧力が同時にトナーに加わることによってトナーの樹脂成分が用紙Pに溶着することである。定着装置15においては、未定着画像に接触して回転する定着部材としての定着ベルト151と、この定着ベルト151との間でニップ部151Aを形成する加圧部材としての定着対向ローラ152とが互いに対向して設けられている。定着ベルト151は定着対向ローラ152との間でトナーが転写された用紙Pを挟みこんで用紙Pを加圧する。また、定着ベルト151は定着対向ローラ152とともに用紙Pを排出口の方へ搬送するように、矢印(A3)の方向へ回転する。なお、定着ベルト151に替えて、定着部材の一例である定着ローラを用いてもよい。
定着ベルト151は、図2に示されるように外径が40mm、厚さ1mmのアルミニウム製のローラ芯151a、ローラ芯151aの表面を被覆する断熱層151bを有している。断熱層151bはシリコンゴムによって形成されており、その厚さは3mmである。
また、断熱層151bの外側には良熱伝導層151cが形成される。良熱伝導層151cは、断熱層151bより熱伝導性が高いニッケル、ステンレス、アルミニウム、銅、グラファイトシートによって形成される。このように良熱伝導層151cが形成されることにより、定着ベルト151の温度むらを低減することが可能となる。また、良熱伝導層151cの外側にはPFA、PTFE等のフッ素系樹脂からなる5〜30μmの離形層151dが形成される。離形層151dが形成されることによって、定着ベルト151によって加圧された用紙Pは、その後、離形層151dから離れやすくなる。
定着対向ローラ152は、外径が40mm、厚さ2mmのアルミニウム製のローラ芯152a、ローラ芯152aの表面を被覆する断熱層152bを有しており、定着ベルト151との間にニップ部151Aを形成する。
また、定着ベルト151の外側には、図示しない電源からの電力により定着ベルト151を加熱する加熱部153が設けられている。図3は定着装置15の構成を示す斜視図である。加熱部153は図3に示されるように複数の加熱器153a乃至加熱器153gを有している。加熱器153a乃至加熱器153gは定着ベルト151の幅方向、すなわち定着部材の回転方向に並んで配置されており、それぞれが定着ベルト151の一部を加熱する。具体的には、加熱器153aは図3に示される定着ベルト151の部分aを加熱する。また、加熱器153aは平面を有する形状であり、その平面の部分が定着ベルト151の部分aに接して定着ベルト151を外側から加熱する。同様にして、加熱器153b乃至加熱器153gは定着ベルト151のそれぞれ部分b乃至部分gを加熱する。これにより、定着ベルト151に複数の加熱領域が形成される。
具体的には、定着ベルト151を通過する用紙Pの所定の部分に付着しているトナー付着量が0でない場合(以降、この部分を画像部という)、用紙Pの画像部にはトナーによって画像が形成されており、そのトナーを定着させる必要がある。そのため対応する加熱部153の加熱器は用紙Pの画像部を加圧する定着対向ローラ152の部分を160℃にするように定着ベルト151を加熱する。また、定着ベルト151を通過する用紙Pの所定の部分に付着しているトナー付着量が0の場合、対応する加熱部153の加熱器は用紙Pの非画像部を加圧する定着対向ローラ152の部分を110℃とするよう定着ベルト151を加熱する。以降、用紙Pに付着しているトナー付着量が0の部分を非画像部という。なお、加熱部153の加熱器が定着ベルトを加熱する温度は用紙Pの画像部についてトナーを定着させるものであればよく、種々の条件により適切な数値が設定される。
さらに、図3に示されるように加熱部153の近傍には定着ベルト151の温度を測定する温度測定部154が設けられており、温度測定部154は複数の温度センサ154a乃至温度センサ154gを有している。図3に示されるように加熱器153aで加熱される定着ベルト151の部分aの温度を温度センサ154aが測定する。同様にして温度センサ154b乃至温度センサ154gはそれぞれ定着ベルト151の部分b乃至部分gの温度を測定する。これにより、定着ベルト151の複数の加熱領域の温度が検出される。
また、定着対向ローラ152の側面近傍には定着対向ローラ152の温度を測定する温度測定部155が設けられており、温度測定部155は温度センサ155a乃至温度センサ155gを有している。これにより、定着対向ローラ152の複数の加熱領域の温度が検出される。上記のように加熱部153によって加熱された定着ベルト151は定着対向ローラ152と接しているため定着対向ローラ152は定着ベルト151からの熱が移動して加熱される。図3に示されるように、加熱器153aで加熱される定着ベルト151の部分aと対向する定着対向ローラ152の部分a’の温度を温度センサ155aが測定する。同様にして温度センサ155b乃至温度センサ155gはそれぞれ定着対向ローラ152の部分b’乃至部分g’の温度を測定する。
図1に戻って、画像形成装置1の図中左側面には、定着ベルト151および定着対向ローラ152によって加熱および加圧され、画像が定着した用紙Pを画像形成装置1の外側に排出する排紙口10が設けられている。
また、画像形成装置1の外側には表示・操作部18が設けられている。表示・操作部18は、パネル表示部181および操作部182を有している。パネル表示部181は設定値や選択画面等が表示され、ユーザからの入力を受け付けるタッチパネル等である。操作部182は、画像形成に係る各種情報をユーザが入力するためのテンキー、開始指示をユーザが入力するスタートキー等である。
また、画像形成装置1には上記の各部を制御するための制御部が設けられている。図4は、本実施形態における画像形成装置1の制御部のハードウェア構成を示す図である。制御部は、図4に示されるようにCPU(Central Processing Unit)1011、メインメモリ(MEM−P)1012、ノースブリッジ(NB)1013、サウスブリッジ(SB)1014を有している。また、制御部は、AGP(Accelerated Graphics Port)バス1015、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)1016を有している。さらに、制御部は、ローカルメモリ(MEM−C)1017、HD(Hard Disk)1018、HDD(Hard Disk Drive)1019、PCIバス1020、ネットワークI/F1021を有している。
CPU1011は、メインメモリ1012に記憶されたプログラムに従って、データを加工・演算したり、上記した各部の動作を制御したりするものである。メインメモリ1012は制御部の記憶領域であり、ROM(Read Only Memory)1012a、RAM(Random Access Memory)1012bを有している。ROM1012aは、制御部の各機能を実現させるプログラムやデータを記憶する。ROM1012aに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、FD、CD−R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
RAM1012bは、プログラムやデータの展開、およびメモリ印刷時の描画用メモリ等として用いる。NB1013は、CPU1011と、MEM−P1012、SB1014、およびAGPバス1015とを接続するためのブリッジである。SB1014は、NB1013と周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。AGPバス1015は、グラフィック処理を高速化するためのグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースである。ASIC1016は、MEM−C1017を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジック等により画像データの回転等を行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)からなる。ASIC1016は、PCIバス1020を介してUSB(Universal Serial Bus)インタフェースに接続されている。また、ASIC1016は、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)インタフェース等のネットワークI/F1021に接続されている。
MEM−C1017は、コピー用画像バッファおよび符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD1018は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HDD1019は、CPU1011の制御にしたがってHD1018に対するデータの読み出し又は書き込みを制御する。ネットワークI/F1021は、通信ネットワークを介して情報処理装置等の外部機器と情報を送受信する。
<画像形成装置1の機能構成>
本実施形態における画像形成装置1の制御部の機能構成について図5を用いて説明する。図5は、画像形成装置1の制御部の機能構成を示す図である。
制御部は画像形成装置1の動作を制御するものであり、図5に示されるように送受信部191、入力受付部192、画像読取制御部193、画像形成情報生成部194、画像形成制御部196、記憶・読出処理部199、記憶部1900を有している。これら各部は、図4に示されているROM1012aに記憶されているプログラムに従ったCPU1011からの命令によって動作することで実現される機能又は手段である。また、制御部は、図4に示されているROM1012a又はHD1018によって構築される記憶部1900を有している。
送受信部191は、図4に示されているネットワークI/F1021によって実現され、通信ネットワークを介して情報処理装置等からRGB画像情報を受信する。RGB画像情報とは、用紙Pに形成される画像を表す情報であり、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の明度を用いて示されたものである。入力受付部192は、図1に示されている表示・操作部18でユーザによって入力された情報を受け付ける。画像読取制御部193は、図1に示されているスキャナ部11が原稿に記載されている画像を光学的に読み取りRGB画像情報を生成するよう制御する。
画像形成情報生成部194は、送受信部191が受信したRGB画像情報、又はスキャナ部11が読み取ったRGB画像情報に基づいて画像形成情報を生成する。具体的には、画像形成情報生成部194はRGB画像情報に対して色空間変換処理を行い、用紙Pに付着するC色、M色、Y色、K色の各トナー付着量Vc、Vm、Vy、Vkを画素ごとに算出する。なお、画像形成情報生成部194は色空間変換処理のほかに下色除去処理、シェーディング補正、位置ズレ補正、色空間の変換、ガンマ補正等を行ってもよい。また、画像形成情報とは、用紙Pに画像を形成するために画素ごとに付着するC色、M色、Y色、K色の各トナー付着量Vc、Vm、Vy、Vkを表す情報である。
画像形成制御部196は、作像部12C、12M、12Y、12Kを制御する作像制御部1962、給紙部13を制御する給紙制御部1963、一次転写ローラ144、二次転写ローラ145、中間転写ベルト143等を制御する転写制御部1964、定着装置15を制御する定着制御部1965を有する。
ここで、定着制御部1965について図6乃至図13を用いて詳細に説明する。定着制御部1965は熱量決定部19651および加熱制御部19652を有している。熱量決定部19651は画像形成情報生成部194によって生成された画像形成情報に基づいて、用紙Pの各部分が画像部であるか非画像部であるか判定する。また、熱量決定部19651は定着ベルト151の温度、用紙Pの紙坪量、用紙Pの平滑度、用紙Pのトナー付着量、定着対向ローラ152の温度に基づいて、加熱部153に加える熱量を決定する。加熱制御部19652は熱量決定部19651によって決定された熱量で加熱部153が定着ベルト151を加熱するよう制御する。
トナーが適切に定着されるように、かつ、エネルギー消費を節約するように、加熱部153は用紙Pの画像部を定着するために必要な温度(第一の温度という)に定着ベルト151を加熱する。また、定着の必要がない用紙Pの非画像部がニップ部151Aを通過するとき用紙Pを加圧する部分の定着ベルト151は第一の温度より低い所定の温度(第二の温度という)となるように加熱部153が加熱する。なお、定着ベルト151の温度は温度測定部154によって測定される。
例として、用紙Pが図6に示されるように画像部a、非画像部b、画像部cによって構成され、矢印(A4)に示される方向に進行しながらニップ部151Aを通過したとする。その場合、加熱部153は図7に示される温度変化をするように加熱制御部19652によって制御される。図7に示されるように、用紙Pの画像部aおよび画像部cが定着装置15のニップ部151Aに挿入されているとき加熱部153によって加熱された定着ベルト151が第一の温度となっている必要がある。そのため、図7のb’に示されるように画像部cがニップ部151Aに挿入される所定の時間前に加熱部153が定着ベルト151を加熱し始める。
ここで、定着ベルト151の温度が第一の温度となるために加熱部153が定着ベルトを加熱する熱量は定着ベルトの温度、用紙Pの紙坪量、用紙Pの平滑度、用紙Pのトナー付着量、定着対向ローラ152の温度に基づいて、熱量決定部19651が決定する。具体的には、定着ベルト151の温度が高いほど、加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量が少なくても第一の温度に到達することができる。そのため、図8(1)に示されるように、定着ベルト151の温度が高いほど加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量が少なくなるよう、熱量決定部19651が熱量を決定する。
また、用紙Pの非画像部がニップ部151Aを通過するときは、定着ベルト151の温度と、図8の(2)に示される関係にある熱量で加熱部153が定着ベルト151を加熱するよう熱量決定部19651が熱量を決定する。さらに、用紙Pがニップ部151Aを通過していないときは、定着ベルト151の温度と、図8の(3)に示される関係にある熱量で加熱部153が定着ベルト151を加熱するよう熱量決定部19651が熱量を決定する。
また、用紙Pの1m2あたりの重量である紙坪量が大きいほど、定着処理のときに用紙Pに熱が移動しやすくトナーが加熱されにくい。そのため、図9(1)に示されるように用紙Pの紙坪量が大きいほど加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量が多くなるよう熱量決定部19651が熱量を決定する。
また、用紙Pの平滑度が高くなるほどトナーは用紙Pに定着しやすくなるので、用紙Pの平滑度が低い場合に比べて低い温度で定着処理を行えばよい。そのため、図10(1)に示されるように用紙Pの平滑度が高くなるほど加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量が少なくなるよう熱量決定部19651が熱量を決定する。
また、用紙Pのトナー付着量が多いほど高い温度でトナーが定着される必要がある。そのため、図11(1)に示されるようにトナー付着量が多いほど加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量が多くなるよう熱量決定部19651が熱量を決定する。
また、加熱部153は定着ベルト151より熱容量が大きい。したがって、加熱部153が高温であれば加熱部153は定着ベルト151を少ない熱量で第一の温度に加熱することが可能であるが、加熱部153が低温であれば加熱部153が定着ベルト151を加熱するのに時間がかかる。すなわち、図12(1)に示されるように加熱部153の温度が高いほど、加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量を少なくするよう熱量決定部19651が熱量を決定する。なお、加熱部153の温度は図示しない温度測定部としての温度センサにより測定される。
同様に、定着対向ローラ152は定着ベルト151より熱容量が大きい。したがって、定着対向ローラ152が低温であれば加熱部153が発生する熱は定着対向ローラ152に伝わり、定着ベルト151を加熱するために多くの熱量を必要とする。定着対向ローラ152が高温であるほど、加熱部153は定着ベルト151を少ない熱量で第一の温度に加熱することが可能である。すなわち、図13(1)に示されるように定着対向ローラ152の温度が高いほど、加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量を少なくするよう熱量決定部19651が熱量を決定する。
なお、非画像部がニップ部151Aを通過するときは、用紙Pの紙坪量、用紙Pの平滑度、用紙Pのトナー付着量、定着対向ローラ152の温度それぞれについて、図9乃至図13の(2)に示される関係となるように、熱量決定部19651が熱量を決定する。
また、用紙Pがニップ部151Aを通過していないときは、用紙Pの紙坪量、用紙Pの平滑度、用紙Pのトナー付着量、定着対向ローラ152の温度それぞれについて、図9乃至図13の(3)に示される関係となるように、熱量決定部19651が熱量を決定する。
また、用紙Pがニップ部151Aを通過していないときは一の用紙P1がニップ部を通過してから次の用紙P2がニップ部151Aを通過するまでの時間が長いほど、定着ベルト151の温度は低くてよい。そのため、図14(1)に示されるように用紙間の間隔が大きいほど加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量を少なくするよう熱量決定部19651が熱量を決定する。
なお、定着ベルト151は定着部材の一例であり、用紙Pの平滑度および紙坪量はそれぞれ記録媒体の特性の一例である。
<<実施形態の処理・動作>>
続いて、図15および図16を用いて、本実施形態に係る画像形成システムの処理を説明する。図15は、画像形成装置1が画像を形成する処理の概要を示す処理フロー図である。図16は、定着処理の詳細を示す処理フロー図である。
図15に示されるように、まず、送受信部191がRGB画像情報を外部の情報処理装置等から受信する(ステップS21)。送受信部191がRGB画像情報を受信すると、画像形成情報生成部194がRGB画像情報に基づいて画像形成情報を生成する(ステップS22)。
具体的には、画像形成情報生成部194はRGB画像情報に対して色空間変換処理を行うことによって、トナー付着量Vc、Vm、Vy、Vkを算出する。なお、画像形成情報生成部194は、RGB画像情報に対して色空間変換処理のほか、下色除去処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の公知の画像処理を実行してもよい。さらに、画像形成情報生成部194は用紙P上の全ての画素についてトナー付着量Vc、Vm、Vy、Vkを算出し、用紙Pにおける位置とその位置に対応するトナー付着量を表す情報である画像形成情報を生成する。
ステップS22で画像形成情報が生成されると、給紙制御部1963の制御によって給紙部13が給紙処理を行う(ステップS23)。具体的には、給紙部13の給紙ローラ132が給紙トレイ131に収容されている用紙Pを1枚ずつ取り出し、給紙ベルト133に載せる。給紙ベルト133は、図1に示す矢印(A1)の向きに移動することによって、載せられた用紙Pをレジストローラ134の方へ搬送する。搬送された用紙Pがレジストローラ134に到達すると、中間転写ベルト143の表面に形成されたトナー像が二次転写ローラ145に到達するまでレジストローラ134が用紙Pを挟み込んで待機させる。そして、中間転写ベルト143の表面に形成されたトナー像が二次転写ローラ145に到達するタイミングで、レジストローラ134は二次転写ローラ145と二次転写対向ローラ146の間に用紙Pを送り込む。
一方、作像制御部1962の制御によって作像部12C、12M、12Y、12Kは各感光体ドラム122に各トナーを付着させる作像処理を行う(ステップS24)。具体的には、帯電部123Cが感光体ドラム122Cの表面を一様に帯電させる。そして、露光部124Cが、画像形成情報生成部194によって生成された画像形成情報のトナー付着量Vcに基づいて感光体ドラム122Cの表面にレーザ光を照射する。これによって、感光体ドラム122Cの表面にはトナー付着量VcのC色のトナーを用紙Pに付着させるための静電潜像が形成される。
感光体ドラム122Cの表面に静電潜像が形成されると、現像部125CはC色のトナーを用いて静電潜像を現像する。このようにすると、感光体ドラム122Cの表面にC色のトナー像が作像される。同様にして、感光体ドラム122M、122Y、122Kの表面にはそれぞれM色、Y色、K色のトナーによるトナー像が作像される。これらの作像のための処理は感光体ドラム122Cの表面にC色のトナー像が作像されるための処理と同様であるため説明を省略する。
各感光体ドラム122の表面に各トナーによってトナー像が作像されると、転写制御部1964の制御によって転写処理が行われる(ステップS25)。具体的には、まず、一次転写ローラ144が中間転写ベルト143に一次転写バイアスをかける。すると、中間転写ベルト143に各感光体ドラム122の表面のトナー像が転写(以降、一次転写という)される。
トナー像が転写された中間転写ベルト143は、駆動ローラ141および従動ローラ142の回転によって矢印(A2)の方向へ移動する。また、中間転写ベルト143におけるトナー像が転写された部分が二次転写ローラ145に到達するタイミングでレジストローラ134が用紙Pを送り出す。用紙Pがレジストローラ134によって送り出され、二次転写ローラ145に到達すると、二次転写ローラ145は二次転写対向ローラ146との間で用紙Pと中間転写ベルト143を挟み込み、用紙Pに二次転写バイアスをかける。これにより中間転写ベルト143の表面に形成されているトナー像が用紙Pに転写(以降、二次転写という)される。
このように、用紙Pにトナー像が転写されると、定着制御部1965の制御によって定着装置15が定着処理を行う(ステップS26)。具体的には、図16に示されるように、まず加熱部153が定着ベルト151を加熱する(ステップS261)。ここでは、熱量決定部19651は、加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量を決定する。そして、加熱制御部19652が加熱部153を制御して定着ベルト151を加熱させる。
熱量決定部19651は画像形成情報生成部194によって生成された画像形成情報に基づいて、用紙Pの各部分が画像部であるか非画像部であるか判定する。そして、熱量決定部19651は用紙Pの画像部であると判定された部分に接する定着ベルト151を加熱部153が加熱する熱量を決定する。
具体的には、図8(1)に示されるように、定着ベルト151の温度が高いほど加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量が少なくするよう、熱量決定部19651が熱量を決定する。また、図9(1)に示されるように用紙Pの紙坪量が大きいほど加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量を多くするよう熱量決定部19651が熱量を決定する。また、図10(1)に示されるように用紙Pの平滑度が高くなるほど加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量を少なくするよう熱量決定部19651が熱量を決定する。
また、図11(1)に示されるようにトナー付着量が多いほど加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量を多くするよう熱量決定部19651が熱量を決定する。また、図12(1)に示されるように加熱部153の温度が高いほど、加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量を少なくするよう熱量決定部19651が熱量を決定する。同様に、図13(1)に示されるように定着対向ローラ152の温度が高いほど、加熱部153が定着ベルト151を加熱する熱量を少なくするよう熱量決定部19651が熱量を決定する。
熱量決定部19651は用紙Pの非画像部であると判定された部分に接する定着ベルト151を加熱部153が加熱する熱量を定着ベルトの温度について、図8乃至図13の(2)に示される関係にある熱量で定着ベルト151を加熱する。用紙Pの紙坪量、用紙Pの平滑度、用紙Pのトナー付着量、定着対向ローラの温度、加圧ローラの温度についても同様である。
このように用紙Pの画像部、非画像部に接する部分の定着ベルト151を加熱する熱量が決定されたら、決定された熱量で加熱部153は定着ベルト151を加熱する。
そして、搬送された用紙Pが定着ベルト151と定着対向ローラ152とが接する位置に到達すると、定着ベルト151は定着対向ローラ152との間に用紙Pを挟み込む。このとき、定着ベルト151は加熱部153によって加熱されているので、定着ベルト151は用紙Pを加圧するのと同時に所定の温度で用紙Pを加熱する(ステップS262)。そして、用紙P上に転写されたトナー像を形成するトナーは溶融し、溶融されたトナーが付着した用紙Pを定着ベルト151が定着対向ローラ152とともに加圧するとトナーが用紙Pに定着する。
ここで、ステップS261で行われる加熱部153が定着ベルト151を加熱する処理について図4を用いて詳細に説明する。定着ベルト151は内部に設けられている加熱部153によって加熱される。このとき定着ベルト151は図1の矢印(A3)の方向に回転しており、加熱部153は回転している定着ベルト151を加熱するため、定着ベルト151は全体に渡って高温となる。
図15に戻って定着装置15によって用紙Pにトナーが定着されると、用紙Pは排紙口10から画像形成装置1の外へ排出される(ステップS27)。
<<第1の実施形態の補足>>
また、本実施形態では、定着ベルト151の外側に加熱部153が設けられているが、図17に示されるように定着ベルト151の内側に加熱部153を設け、定着ベルト151の外側から加圧部156が定着ベルト151を加熱部153に押し当ててもよい。
このようにして設けられている加圧部156は定着ベルト151より熱容量が大きい。したがって、加圧部156が低温であれば加熱部153が発生する熱は加圧部156に伝わり、定着ベルト151を加熱するのに多量の熱量を要する。加圧部156が高温であるほど、加熱部153は定着ベルト151を少ない熱量で第一の温度に加熱することが可能である。すなわち、図18(1)に示されるように加圧部156(加圧ローラ)の温度が高いほど、定着ベルト151に加えられる熱量を少なくするよう熱量決定部19651が決定する。なお、加圧部156(加圧ローラ)の温度は図示しない温度センサにより測定される。
また、本実施形態において、加熱部153は加熱器153a乃至加熱器153gの7つの加熱器を有しているが、加熱器の数はそれ以外としてもよい。
また、本実施形態では、ステップS21で送受信部191が画像情報を受信するとしているが、画像読取制御部193によって制御されている読取センサ112がコンタクトガラス111に載せられた原稿用紙等からRGB画像情報を読み取るとしてもよい。
また、本実施形態では、画像形成装置1がC色、M色、Y色、K色のトナーを用いて画像を形成するとしているが、C色、M色、Y色、K色のトナーの他にクリアートナー、白色トナー等の特殊トナーを用いてもよい。
また、本実施形態においては、画像形成装置1はRGB画像情報に基づいて画像を形成する処理が記載されているが、モノクロの画像を表す画像情報に基づいて画像を形成してもよい。
(第2の実施形態)
図19は、第2の実施形態に係る両面印刷機構を備えた画像形成装置の全体構成を示す図である。その構成は、図1の水平型の画像形成装置と、用紙搬送方向が異なり、また反転搬送経路を有する点を除けば、基本的に同じであるので、同じ構成部材については同じ参照番号を付すことで、説明を省略する。ここでは、本実施形態の画像形成装置の構成・動作につき、定着装置と用紙の反転搬送や両面印刷に関してのみ行う。
片面印刷の場合に用紙Pに画像を形成する動作は、図1に関連して説明したのと同じであるが、両面印刷の場合には、次のように動作することになる。画像形成装置1は、用紙Pの片面に画像を形成・定着し、切換爪138を切り換えることにより用紙Pを反転路136へ導く。次に、切換爪139を切り換え、反転後の用紙Pを再給紙路137からレジストローラ134へと再給紙する。このとき、中間転写ベルト143上には裏面画像となるトナー像を形成して担持させておき、用紙Pの裏面にトナー像を転写して定着装置15’による定着処理を経て排紙スタック部140上に排紙する。以降より、両面印刷の場合に最初に印刷される面を第一面と呼び、その裏面を第二面と呼ぶ。
図20は、本実施形態の画像形成装置における定着装置の構成を示す図である。本実施形態における定着装置15’は、図17の定着装置と同じく、定着ベルトの内部加熱方式を採用している。定着装置15’は、未定着画像に接触して回転する定着部材としての定着ベルト151と、この定着ベルト151との間でニップ部151Aを形成する加圧部材としての加圧ローラ152とを有している。また定着装置15’は、商用電源からの電力により定着ベルト151を加熱する加熱部としてのサーマルヒータ153等を有している。サーマルヒータは、板状基体に抵抗発熱体を形成したサーマルヘッドで構成されている。
定着ベルト151は、外径が40mmで厚みが50〜100μmのPI製の基体151aと、この基体151aの表面に被覆された弾性層151bとを有している。弾性層151bはシリコンゴムで形成されており、厚みは50〜100μmである。定着ベルト151の表面には、耐久性を高めて離形性を確保するために、PFA又はPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5〜50μmの離形層151cが形成されている。なお、定着ベルトの基体151aはポリイミドに限らず、ニッケルやSUS等の金属基体であってもよい。
定着ベルト151内部には、支持部材161があり、ニップ部151Aの箇所には押圧ローラ160と加圧ローラ152が設置され、図示しない側板外部部材と接続されて上記定着部材を支持している。
加圧ローラ152は、外径が40mmで厚みが2mmの鉄製の芯金152aと、この芯金152aの表面に被覆された弾性層152bとを有している。弾性層152bはシリコンゴムで形成されており、厚みは5mmである。弾性層152bの表面には、離型性を高めるために厚みが40μm程度のフッ素樹脂層を形成するのが望ましい。なお、加圧ローラ152は図示しない付勢手段により定着ベルト151に圧接されている。
図21は、サーマルヒータの模式図である。加熱部としてのサーマルヒータ153は、定着ベルト151の幅方向あるいは用紙搬送方向に直交する方向に等間隔で配置された複数のヒータ153a乃至153gを有している。各ヒータ153a乃至153gは、加熱領域に対応し、それぞれ独立に加熱可能となっている。サーマルヒータに代えてセラミックヒータとすることもできる。サーマルヒータ153はヒータ153a乃至153gの7つを有しているが、ヒータの数はそれ以外としてもよい。なお、サーマルヒータ153は図示しない付勢手段により定着ベルト151の表面に押し当てられている。
また、定着ベルト151の外周側でヒータ153と対向する位置には、定着ベルトを加圧する押さえ部材としての押圧ローラ160が配設されている。この押圧ローラ160によって定着ベルト151がヒータ153に接触するようになっている。
定着ベルト151のニップ部151Aの下流であってヒータ153の上流に、定着ベルト151の表面温度を検知するサーミスタ154が設けられ、ヒータ153上にはヒータ153の温度を検知するサーミスタ155が設けられている。サーミスタ154、155は温度測定部の一例である。
さらに、定着装置15’には、ヒータ153に電力を供給する電源170と、サーミスタ154,155の検知情報に基づいて電源170を制御する定着制御部175と、各ヒータ153の加熱領域の加熱性能情報を保持する加熱性能記憶部180とが設けられている。定着制御部175は、用紙P上に画像を形成するための画像情報に基づいて、サーマルヒータ153の加熱割合を変化させる。ここで、定着制御部175は、CPU、ROM、RAM、I/Oインタフェース等を包含するマイクロコンピュータを意味する。加熱性能記憶部180については後述する。
次に、定着制御について説明する。図22は、用紙P上に形成された画像領域と非画像領域の代表的なパターンを示す図で、副走査方向での制御が必要となる。図22(a)は、用紙Pの搬送方向(A4)の先端側から順に、画像領域a、非画像領域b、画像領域a’が存在する画像形成パターンを示したもので、図6に対応する。定着対象のトナーが存在する画像領域aと画像領域a’は定着を必要とするが、トナーが存在しない非画像領域bでは定着の必要はない。
図22(b)は、用紙Pの搬送方向(A4)の先端側から順に、画像領域a、非画像領域bが存在する画像形成パターンを示したものである。定着対象のトナーが存在する画像領域aは定着を必要とするが、トナーが存在しない非画像領域bでは定着の必要はない。
図23は、用紙P上に形成された画像領域と非画像領域の別のパターンを示す図で、主走査方向での制御が必要となる。図23(a)は、用紙Pの搬送方向(A4)に示される方向)と直交方向(定着ベルトの幅方向)に、画像領域cと非画像領域dが存在する画像形成パターンを示したものである。定着対象のトナーが存在する画像領域cは定着を必要とするが、トナーが存在しない非画像領域dでは定着の必要はない。
図23(b)は、用紙Pの搬送方向(A4)の直交方向の一部に画像領域eがあり、残りの領域fでは用紙Pの搬送方向(A4)の先行側に画像領域g、後方側に非画像領域hがある画像形成パターンを示したものである。定着対象のトナーが存在する画像領域e,gは定着を必要とするが、トナーが存在しない非画像領域hでは定着の必要はない。
図22(a)において、図示しない画像処理装置から上記パターンの画像情報が定着制御部175へ入力される。非画像領域bに対応する定着ベルト151の部位の温度が、画像領域a,a’に対応する定着ベルト151の部位の温度よりも低くなるように、定着制御部175は電源170およびヒータ153を制御する。
ここで、画像領域又は非画像領域に対応する定着ベルト151の部位とは、画像領域又は非画像領域に密着する定着ベルト151の部位という意味である。すなわち、用紙幅全体にわたって分布している画像領域aに対応するベルト部位が所定の定着温度を得られるように、ヒータ153a乃至153gの全域に電力を供給する一方、非画像領域bに対応するベルト部位では供給電力を低減する。そして、紙後端の画像領域a’に対応するベルト部位が定着温度に達するように、再びヒータ153a乃至153gに電力を供給する。
図22(b)においても同様に、画像領域aに対応するベルト部位が所定の定着温度を得られるように、ヒータ153a乃至153gの全域に電力を供給する一方、非画像領域bに対応するベルト部位では供給電力を低減する。
図23(a)では、用紙幅のほぼ半分にわたって分布している画像領域cに対応するベルト部位が所定の定着温度を得られるように、ヒータ153a乃至153gに電力を供給する。具体的には、定着制御部175は、非画像領域dに対応する定着ベルト151の部位の温度が、画像領域cに対応する定着ベルト151の部位の温度よりも低くなるようにする。例えば、ヒータ153e乃至153gの供給電力をヒータ153a乃至153dの供給電力より小さくする。
図23(b)では、用紙幅全体にわたって画像領域が分布しているe,f-g領域に対応するベルト部位が所定の定着温度を得られるように、ヒータ153a乃至153gの全域に電力を供給する。その後は、用紙のほぼ幅半分にわたって分布している画像領域eに対応するベルト部位が所定の定着温度を得られるように、例えばヒータ153a乃至153dの供給電力をヒータ153e乃至153gの供給電力より大きくする。
これらの定着制御における実際の供給電力では、各図中の斜線部で示すように、画像領域がニップ部に入るよりも前の部分で予備的な加熱がなされるように調整されている。このような予備的な加熱領域は、主にヒータの周方向の長さや、ヒータ自身にも昇温時間が必要となることを考慮した領域である。予備加熱領域は、省エネルギーの観点からできるだけ小さいことが望ましい。
また定着制御としては、非画像領域b,d,hに対応する部位で電力供給を完全に停止してもよいが、温度が下がり過ぎると、次の画像領域(図22(a)では画像領域a’)での定着温度への立ち上がり応答性が悪くなる。そのため、ヒータ153を点滅させ又はヒータ153に低電力を供給することで、定着ベルト151の温度を所定値以上に保つことが望ましい。
図24は、図22(a)の画像形成パターンの場合の、定着部材である定着ベルトの目標温度と時間の関係を示す図である。実線が示すように、画像領域a,a’では定着ベルト温度を第一の温度に設定しているが、非画像領域bでは定着ベルト温度を、室温より高く第一の温度より低い第二の温度に保つように制御している。図22(b)、図23(a)、図23(b)の画像形成パターンの場合にも、同様に各ヒータ153a乃至153gを制御することにより、画像領域では定着ベルト温度を第一の温度に設定し、非画像領域では定着ベルト温度を第二の温度に設定することができる。
このように、非画像領域b,d,hに対応する部位でもヒータへの給電は行われるが、供給電力は削減される。すなわち、画像領域および予備加熱域に相当する領域Rの供給電力よりも、非画像部で予備加熱域にも相当しない領域R’では供給電力が小さくできるため、省エネルギー化が可能となる。
以上のように、片面印刷時の定着制御でも、副走査方向と主走査方向の両方向において画像領域と非画像領域によって加熱を異ならせるが、図19の画像形成装置において両面印刷する際には、さらに考慮すべき点が増える。すなわち、第二面(裏面)の印刷時には、第二面の画像領域、非画像領域だけでなく、第一面の画像の有無により定着温度を変更する。それは、第一面に定着済みの画像が有ると、その部分で用紙Pの熱容量が増えるためであり、第二面の印刷時にはより多くの熱量を供給する必要がある。そこで両面印刷時の定着制御においては、第二面の定着温度を第一面の画像の有無によっても、変更する。
両面印刷時の具体的な定着温度を、表1および表2に示す。
第一面印刷時の定着温度は、表1に示すように、非画像領域に対しては第二の温度とし、画像領域に対して第一の温度とする(これは片面印刷の場合と同じである)。第二面印刷時の定着温度は、表2に示すように、第二面の画像の有無と第一面の画像の有無により4つの場合に分ける。便宜上、単純に第一面、第二面と全体的な表現をするが、複数のヒータによって分割される領域毎での制御である。第二面の非画像領域は、第一面の画像の有無にかかわらず第二の温度とする。第二面の画像領域は、第一面に画像が無ければ第一の温度とし、第一面に画像があれば第一の温度に補正温度αを加えた温度とする。
補正温度αは一定値でもよいが、第一面または第二面に形成された画像濃度、画像色等において適宜決定することも可能である。ここで画像濃度および画像色は、定着制御部175が画像処理装置(図示しない)からの画像情報により判断する。
次に、両面印刷時の定着制御について説明する。図25は、用紙Pの両面上に形成された画像領域と非画像領域を示す図である。図25(a)は、用紙Pの第一面であり、用紙Pの搬送方向(A4)の先行側から順に、画像領域a、非画像領域b、画像領域a’が存在する画像形成パターンを示したものである。図25(b)は、用紙の第二面であり、用紙Pの搬送方向(A4)の先行側から順に、非画像領域b、画像領域a、画像領域a’が存在する画像形成パターンを示したものである。定着対象のトナーが存在する画像領域aは定着を必要とするが、トナーが存在しない非画像領域bでは定着の必要はない。
両面印刷時の第一面に図25(a)で示した画像が形成・定着されたとする場合において、第二面を定着する際、図示しない画像処理装置から図25(b)で示したパターンの画像情報が定着制御部175へ入力される。それにより、第二面の非画像領域bに対応する定着ベルト151の部位の温度が、第一の温度となるように、定着制御部175は電源170およびヒータ153を制御する。続いて、第一面が非画像領域bである第二面の画像領域aに対応する定着ベルト151の部位の温度が、第一の温度となるように、定着制御部175は電源170およびヒータ153を制御する。
そして、第一面が画像領域a’である第二面の画像領域a’に対応する定着ベルト151の部位の温度が、第一の温度+補正温度αとなるように、定着制御部175は電源170およびヒータ153を制御する。ここで、定着制御部175は、第二面の画像領域における画像濃度および画像色と、第一面の画像領域における画像濃度および画像色に基づいて補正温度αも算出しておく。なお、ヒータ153a乃至153gの各加熱領域を予備的に加熱するための予備加熱領域である図中の斜線部で供給電力は投入される。
図26は、図25(a)の画像形成パターンの場合の、定着部材の目標温度と時間の関係を示す図である。実線が示すように、画像領域a,a’では定着温度を第一の温度に設定しているが、非画像領域bでは定着温度を、室温より高く第一の温度より低い第二の温度に保つように制御している。これは、片面印刷時と同じであり、図26は図24と同じグラフとなる。
図27は、図25(b)の画像形成パターンの場合の、定着部材の目標温度と時間の関係を示す図である。実線が示すように、非画像領域bは定着温度を第二の温度に設定しているが、画像領域aでは定着温度を、第一の温度に保つように制御している。さらに、画像領域a’では定着温度を、第一の温度+補正温度αに保つように制御している。
比較のため、第二面の定着部材の温度を第一面の画像の有無で変化しない場合の目標温度と時間の関係を破線で示す。第二面の画像を着実に定着させるためには、常に想定される最大の定着温度である第一の温度+補正温度β(β≧α)とする必要がある。このため、用紙Pの両面の画像領域によっては、領域R間において、必要以上に熱供給を行う場合があった。
以上説明したように、本実施形態によれば、第一面に画像がなく、第二面に画像領域とその前後の予備加熱領域を含む領域Rにおいて、定着温度を低く設定することができる。また、画像濃度と画像色により補正温度αを調整するので、第二面の画像領域a’においても定着温度を適正に設定することができる。これにより、余分な熱供給をすることなく、エネルギーを節減することが可能となる。また、定着制御部175はヒータ153a乃至153gの任意の箇所に熱量を供給することができるので、さらに余分な熱供給を抑えることができる。
なお、以上ではフルカラー印刷の場合で説明したが、特定色あるいはブラックによるモノクロ印刷時であっても、使用されない感光体が存在するだけで、動作的には同様である。
ところで、加熱領域は、製造に起因して初期的に又は継時的変化によって加熱領域のばらつきが発生して、加熱のための電力密度が高い領域や低い領域等が発生する場合がある。そこで、定着制御部175が電源170およびヒータ153を制御する際に、図20に示す、加熱性能記憶部180より加熱領域の加熱情報を参照して実際の電力投入量を設定する。加熱性能記憶部180は、例えば、EEPROMなどの書き換え可能な不揮発メモリを用いればよい。
これにより、各加熱領域の加熱性能のばらつきに起因する定着部材表面の温度むらを抑え、画像品質を向上させるとともに、余分な熱供給をすることなく、さらにエネルギーを節減することが可能となる。