JP2014206194A - 湿式摩擦材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ウェーブ部の谷部Bの摩耗で摩擦特性が低下しても、係合初期には湿式摩擦基材12の全体面でトルクは遅れなく適切に立ち上り、係合解除時にはウェーブ部の弾性復元力により一方のディスクが他のディスクから、即ち、湿式摩擦材1がカウンタプレート2から迅速に離れ、引摺りが抑制される。この完全係合時は、ウェーブ部が潰れてディスク相互間が全面接触し、高トルクも十分に伝達できるようになる。このように、1ウェーブ単位の山部T及び谷部B及び平面部Hによって、1ウェーブ単位の状態を任意に設定できるから、その荷重の設定、小型化及び軽量化が可能となり、湿式摩擦材の荷重が任意に設定できるから、その荷重の大きさの設定により、小型化、車両の燃費向上に繋がる。
【選択図】図1
Description
ところが、この湿式摩擦材は、係合時にウェーブ部が常に最初にカウンタプレートに接触するため、ウェーブ部の摩耗が生じ易く、摩擦特性が低下する。ここで、従来の湿式摩擦材はディスクの径方向全域に亘ってウェーブ部が形成されており、そのため、係合初期の他のディスクに対するウェーブ部の接触面圧が低くなる。その結果、ウェーブ部の摩耗で摩擦特性が低下すると、係合初期のトルクの立ち上りが遅れ、スムーズな変速が行われず変速ショックを生じ易くなる。
このようにすることにより、係合初期に一方のディスクがウェーブ部においてカウンタプレートに接触して湿式摩擦材とカウンタプレートが摩擦係合するが、ウェーブ部はディスク外周側にのみ設けられているため、他のディスクに対するウェーブ部の接触面圧が高くなると共に、摩擦係合部の有効半径が大きくなり、ウェーブ部の摩耗で摩擦特性が低下しても、係合初期にトルクは遅れなく適切に立ち上る。また、係合解除時には、ウェーブ部の弾性復元力により一方のディスクが他のディスクから迅速に離れ、引摺りが抑制される。この完全係合時は、ウェーブ部が潰れてディスク同士が全面接触し、高トルクも十分に伝達できるようにしている。
また、特に、特許文献1の湿式摩擦材は、ディスク外周側にのみウェーブを付与するものであるから、そのウェーブを付与している個所と付与していない箇所の境界には、ストレス歪が集中し、湿式摩擦材の寿命を短くするという問題点が予測される。特に、特許文献1は連続ウェーブであるため、ウェーブ荷重が大きくなり、小型化(車両燃費向上)に寄与していない。
即ち、従来からある湿式摩擦材の円周方向の連続ウェーブ形状では、引き摺りトルクを低減するためにウェーブ点数を多くして一つ一つのウェーブ形状を尖らせることで相手材との接触面積を小さくして対応していた。しかしながら、ウェーブ形状を尖らせることでウェーブ荷重は大きくなってしまい、結果として、A/Tを小型化して車両燃費を向上させるということには貢献できない。逆に、ウェーブ荷重を低減させようとウェーブ点数を少なくするとウェーブ形状がなだらかになるため相手材への接触面積が大きくなってしまい引き摺りトルクが大きくなっていた。
A/T用湿式摩擦材において、耐熱性・耐久性摩擦性能に弊害なく、低ウェーブ荷重領域にて低引き摺りトルクである湿式摩擦材の開発が望まれていた。
ここで、前記ウェーブ部と前記平面部の割合が3:1〜1:4とは、1ウェーブ単位が山部及び谷部からなるウェーブ部と平面部から構成されていることから、この1ウェーブ単位中の山部と谷部の割合を合わせたウェーブ部の割合と平面部の割合が3:1〜1:4の範囲内にあることを示す。
例えば、環状の湿式摩擦材の全周にウェーブ部のみが連続してN個周期的に形成されていたとすると、請求項2の発明にかかる湿式摩擦材は、少なくとも1個以上少ないウェーブ部単位を有するもの、つまり、N−1個以下のウェーブ部単位を有しているものである。そしてウェーブ部単位の山部及び谷部の高さは、N個周期的に形成されていたとしたときと同じ山高さを有しているものである。ここで山高さとは、谷部Bの底の最下点からの山部の高さの頂点までの距離を指す。
このように山部及び谷部からなるウェーブ部と平面部を1ウェーブ単位とし、前記1ウェーブ単位中の前記ウェーブ部と前記平面部の割合を3:1〜1:4とすることで引き摺りトルクとウェーブ荷重の低減が可能となる。
したがって、引き摺りトルクはウェーブ部の配置によって確実に低減し、ウェーブ荷重は連続して複数周期的に形成したときより確実に低減する。
したがって、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、ウェーブ部に荷重が負荷された時、山部及び谷部の何れからも連続的に同様に変化させることができ、湿式摩擦材に不連続によるストレスが入ることがない。
図1のように、湿式摩擦材1は、一般に鋼板からリング状(円環状)に形成された芯金としてのコアプレート10と、このコアプレート10の両側の表面に接合されたペーパー系の湿式摩擦基材12とからなっている。なお、コアプレート10には、一般に回転軸等のトルク伝達要素のスプラインまたは同様なものと係合する係合歯11が一体に備えられ、この例では内周側に設けられている。そして、本実施の形態の湿式摩擦材1では、そのコアプレート10は容易に弾性変形する鋼板、特に、バネ鋼板から形成されると共に、その円周方向に波状の凹凸からなるウェーブが付され、それによって、ペーパー系の湿式摩擦基材12を含む全体に後述するウェーブが付されている。
更に、図3に示すように、例示の湿式摩擦材1は山部T1の頂点と谷部B1の最下点の間を角度α、ウェーブ部12aの山部T1から谷部B1を角度β、平面部の角度をγとして形成されている。ここで角度α、角度β、角度γは湿式摩擦材1の円周の中心に対する円周方向の角度を示している。
即ち、コアプレート10の円周方向に、山部T1〜T6と谷部B1〜B6とからなるウェーブ部12aと、このウェーブ部12aに続いて平面部H1〜H6が形成されることで、ウェーブ部12aと平面部H1〜H6がリング形状のコアプレート10の全周に60度が1周期で、それが6周期配されることになる。
本発明を実施する場合のウェーブ単位は2〜10ウェーブ単位とすることができ、好ましくは3〜10ウェーブ単位とすることができる。図4に本実施の形態の実施例1の3ウェーブ単位を有する展開図を示す。
ここで、ウェーブ単位の平面部Hにトルク伝達要素のスプラインに係合する係合歯11を1個の平面部Hに1個または2個形成するのが望ましく、2〜10個の山部Tと谷部Bを形成しても、その間の平面部Hに係合歯11が配置される。本実施の形態のコアプレート10には、図2に示すように平面部Hに1個係合歯11を設けている。
つまり、実施例1の山部Tの高さ(h2−h1)と谷部Bの深さ(h1−h3)は、山高さhを0.06mmとして9個周期的に形成したときの連続ウェーブと同じ高さ/深さであり、ウェーブ部12aの山部Tの形状、つまり山形状、及び谷部Bの形状、つまり谷形状は、山高さhを0.06mmとした9山相当の形状である。
実施例2では、山高さhは0.16mmとし、山数は3個である。このとき山部Tのピーク値は0.08mmである。また、山部Tの形状は、山高さhが0.16mmとしたときの9山相当とし、コアプレート10の全周に対するウェーブ割合を70%とした。ここで実施例1と実施例2は山部Tの高さが異なるため同じ9山相当でも形状は相違する。
なお、図4において、仮想線の11は係合歯11の中心位置を示すものである。
(1) まず、山高さhを規定し、山部と谷部のウェーブ形状を山部と谷部が接続する接続点を中心に180度の点対称とした形状とし、このウェーブ形状が連続して周期的に複数現れる連続ウェーブを湿式摩擦材1に設けたと仮定する。
(2) 次に、前記(1)で規定した連続ウェーブの山高さhをそのままとして、連続ウェーブを湿式摩擦材1に設けたときのウェーブ部数から少なくとも1周期分ウェーブ部数を減らして所望のウェーブ部数とし、湿式摩擦材1の全周に対するウェーブ部割合を規定する。
(3) 所望のウェーブ部数としたウェーブ部12aを湿式摩擦材1の全周に均等に配置する。このときウェーブ部12aの形状は山部Tと谷部Bの接続は連続ウェーブ形状とし、山部Tから平面部Hへは連続ウェーブ形状としたときより緩やかに接続する形状とする。また、谷部Bから平面部Hへは連続ウェーブ形状としたときより緩やかに接続する。このとき、山部Tから平面部Hへの接続形状と対称形状になるようにする。このようにすることによりウェーブ部12a相互間に平面部Hが設けられ、山部Tから平面部Hへの接続形状と谷部Bから平面部Hへの接続形状も、山部と谷部が接続する接続点を中心に180度反転した点対称となっている。
実施例4では、山高さhを、0.16mmとし、山数は3個である。そして山部Tの形状は山高さhを0.16mmとしたときの11山相当である。
実施例3と実施例4のウェーブ部12aの割合は30%とした。
ここで、比較例1の山数は11個で、山部の高さ0.13mm、比較例2の山数は3個で、山部の高さ0.08mmである。比較例1及び比較例2は連続ウェーブであり平面部がないためウェーブ部12aの割合が、100%である。また比較例3はウェーブがない平面部のみのものであり、ウェーブ部12aの割合は0%である。
そして実施例1乃至実施例4、比較例1乃至比較例3の引き摺りトルクを測定するにあたり、湿式摩擦材1として、基材繊維としてのリンターパルプ25重量%及びアラミド繊維30重量%からなる繊維基材と、充填材としてのカシューダスト15重量%及びケイソウ土30重量%からなる摩擦調整剤とからなる抄紙体に、30重量%の樹脂率(摩擦材全体に対する割合)でレゾール型のフェノール樹脂を樹脂結合剤として含浸した摩擦材基材12を、プレステンパー(焼戻しをプレスして行う方法)したコアプレート10に加熱硬化・接着したものを使用して試験を行った。
評価のための測定方法としては、ウェーブ荷重測定方法として、荷重を測定する市販のプッシュプルゲージ(アイコー製、イマダ製等がある)と山部Tまたは谷部Bの深さを測定する市販のディプスゲージ(ミツトヨ製)を組合せた荷重測定機を用いて、荷重と変位量との関係からウェーブが完全に無くなった時の荷重を測定した。
また、引き摺りトルク測定方法としては、台上試験機を用いて下記条件で引き摺りトルクの測定を行った
表2から分かるように、ウェーブ荷重については、ウェーブ荷重の目標値200(N)に対し、実施例1乃至実施例4の何れもが目標のウェーブ荷重200(N)以下であった。比較例1はウェーブ荷重648(N)と目標を大きくはずれているが、比較例2及び比較例3はウェーブ荷重目標値内で良好であった。
これらの結果から山高さhを同じにしたとき、ウェーブ部12aの割合は、30%より少なくするとウェーブ荷重がより大きくなり好ましくない。またウェーブ部12aの割合が70%を越えるとウェーブ荷重はより小さくすることができるが引き摺りトルクは上昇し悪くなる傾向にある。30%〜70%内であればウェーブ荷重と引き摺りトルクを低く抑えた湿式摩擦材1が得られる。
更に、1つのウェーブ部12aと、それに繋がる1つの平面部Hを1ウェーブ単位とするものであり、本発明を実施する場合には、2周期以上、好ましくは3周期以上のウェーブ部12aで構成されているから、平面部Hにトルク伝達要素のスプラインに噛み合う湿式摩擦材1の係合歯11との配設が容易である。
2 カウンタプレート
10 コアプレート
12 湿式摩擦基材
12a ウェーブ部
T 山部
B 谷部
H 平面部
Claims (4)
- 環状の湿式摩擦材において、内外周に亘って形成されて円周方向に延びる山部及び谷部からなるウェーブ部と平面部を1ウェーブ単位とし、前記1ウェーブ単位中の前記ウェーブ部と前記平面部の割合を3:1〜1:4として、前記1ウェーブ単位を前記環状の湿式摩擦材の円周方向に複数形成したことを特徴とする湿式摩擦材。
- 前記1ウェーブ部単位の前記ウェーブ部と前記平面部は、環状の湿式摩擦材の内外周に亘って形成されて円周方向に延びる山部及び谷部からなるウェーブ部のみを前記環状の湿式摩擦材の全周に連続して複数周期的に形成したときのウェーブ部数から、少なくとも1周期分を廃止して前記環状の湿式摩擦材の円周方向に均一に配置し、前記均一に配置したウェーブ部間に平面部を設けたものであり、かつ、前記環状の湿式摩擦材の全周に連続して複数周期的に形成したときのウェーブ部と同一の山高さとしたことを特徴とする請求項1に記載の湿式摩擦材。
- 前記ウェーブ部の山部及び谷部の形状は、前記山部と前記谷部の接続する位置で点対称であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の湿式摩擦材。
- 前記環状の湿式摩擦材の全周方向に対するウェーブ部の割合が30〜70%としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の湿式摩擦材。
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