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JP2014185088A - 経口組成物、脂肪細胞分化抑制剤および飲食品 - Google Patents

経口組成物、脂肪細胞分化抑制剤および飲食品 Download PDF

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JP2014185088A JP2013059478A JP2013059478A JP2014185088A JP 2014185088 A JP2014185088 A JP 2014185088A JP 2013059478 A JP2013059478 A JP 2013059478A JP 2013059478 A JP2013059478 A JP 2013059478A JP 2014185088 A JP2014185088 A JP 2014185088A
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adipocyte differentiation
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fat
adipocytes
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陽子 曽野
Atsushi Suwa
淳 諏訪
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Abstract

【課題】 脂肪細胞分化を抑制することができる経口組成物、脂肪細胞分化抑制剤およびこれらを含む食品を提供する。
【解決手段】 本発明の脂肪細胞分化を抑制するための経口組成物は、γ−オリザノールを含有するので脂肪細胞分化を抑制することができ、肥大脂肪細胞の増加を抑制し小型脂肪細胞の存在比率を高めることによって、肥満を防止するとともに脂肪分解しやすい体質に改善して体重の減少を促すことができ、ダイエット用食品、美容食品、運動療法時向けの食品および肥満治療食などとして最適に用いることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、脂肪細胞分化を抑制するための経口組成物、脂肪細胞分化抑制剤および飲食品に関する。
近年、糖尿病、高血圧、高脂血症といった生活習慣病が社会的に大きな問題となっている。また、これら生活習慣病と内臓脂肪蓄積を伴う肥満(内臓肥満)が集積することで、動脈硬化疾患発症の原因となることが明らかとされ、このような一連の病態が集積した状態をメタボリックシンドロームと呼んでいる。日本人は、米国人よりもメタボリックシンドロームの影響が大きいとされ、2008年から特定検診制度も導入され、内臓肥満が生活習慣病発症の重大なリスクファクターであることは周知されてきている。
肥満は、体脂肪量の過剰状態であり、この状態には、脂肪細胞自身の肥大化と脂肪細胞の数の増加が関与しているものと考えられている。今日では、過食、偏食および運動不足などのライフワーク上の理由による体重の増加および体型の変化に悩む人が非常に多く存在している。そのため、簡便で効果的な方法によって体重の増加および体型の変化を抑制して、美と健康を維持することが強く望まれている。通常、極端な体重の変化や体型の変化には成熟脂肪細胞が関与していると考えられている。
成熟脂肪細胞は前駆脂肪細胞が分化したものであり、形態によりいわゆる「小型脂肪細胞」と「肥大脂肪細胞」に大別されている。また、別の観点からは、「褐色脂肪細胞」と「白色脂肪細胞」の2つにも大別されている。
「肥大脂肪細胞」は「小型脂肪細胞」が脂肪を細胞内に蓄積している状態であり、場合によっては「小型脂肪細胞」には見られない細胞増殖を生じることが知られている。「肥大脂肪細胞」の発生によって、細胞増殖により新たに発生した脂肪細胞にもさらに脂肪が蓄積され、顕著な体重増加および体型変化を引き起こすという悪循環が起こり得る。そのため、「肥大脂肪細胞」の発生を抑制若しくは防止することで、顕著な体重の増加および体型変化を防ぐことが可能である。
また、成熟脂肪細胞には「白色脂肪細胞」と「褐色脂肪細胞」が含まれる。「白色脂肪細胞」は脂肪を蓄積する機能を有する脂肪細胞であり、絶食などのエネルギー不足の状態に陥ったときに不足するエネルギーを補う目的で脂肪を分解することが知られている。一方、「褐色脂肪細胞」は平常状態においても脂肪を酸化分解することが知られている。
成人における脂肪細胞の殆どは「白色脂肪細胞」であることがわかっている。近年、「白色脂肪細胞」は、β受容体などの刺激によりミトコンドリア脱共役蛋白質1(UCP1)を発現させた場合には、褐色脂肪細胞に似た機能、すなわち脂肪分解する機能を発揮することがわかってきた。ただ、この現象は「小型脂肪細胞」には生じるが「肥大脂肪細胞」には生じないことが知られつつある。
以上より、脂肪細胞数の増加を防止若しくは脂肪細胞数の減少を促進させるだけでなく、「小型脂肪細胞」から「肥大脂肪細胞」への変化を抑制または防止することにより、体内の成熟脂肪細胞における「小型脂肪細胞」の存在比率を高めることができる。そして、「小型脂肪細胞」の存在比率が高ければ、UCP1を活性化させることにより効果的に脂肪を分解し、減少させることが可能となる。
しかし、現状では、成熟脂肪細胞の増加を抑制若しくは減少させるとともに、「小型脂肪細胞」から「肥大脂肪細胞」への変化を抑制若しくは防止する方法は知られていない。
たとえば、肥満を解消し、また予防するための食品および医薬品として、特許文献1には、白色脂肪細胞への脂肪蓄積を抑制するための組成物が開示されている。この組成物は、α−リポ酸とコエンザイムQ10とともに、バリン、ロイシン又はイソロイシンから選ばれる少なくとも一種のアミノ酸を含有する内服用組成物である。しかし、特許文献1には、脂肪細胞の分化を抑制して小型脂肪細胞の存在比率を高め、脂肪分解効率を向上させて体重減少を促すことは記載されていない。
特開2006−151909号公報
正常な脂肪細胞は、分化によって細胞内に中性脂肪を蓄積して肥大化した「肥大脂肪細胞」に成熟し、さらに肥大化したり細胞増殖したりすることにより顕著な体重増加につながっていく。脂肪細胞の分化を抑制することができれば、体重増加を抑えることができるとともに、正常な成熟脂肪細胞である小型脂肪細胞の数を維持または増加させ、中性脂肪の代謝を促進しやすい体質に改善することができる。このような改善により、運動による脂質代謝効果を向上させ、また一時的な過食等によるダイエットリバウンドを抑制することができる。また、脂肪細胞が肥大化しないため、スリムな体型を維持することができるという美容効果が期待できる。さらに、セルライトの発生を予防する効果をも期待できる。
そこで、本発明の目的は、脂肪細胞分化を抑制することができる経口組成物、脂肪細胞分化抑制剤およびこれらを含む食品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、γ−オリザノール存在下では、前駆脂肪細胞株3T3-L1細胞を分化誘導した後の細胞内へのトリグリセライドの蓄積が抑制されていることを見出した。すなわち、γ−オリザノールが細胞の脂肪細胞分化を抑制することを示した。また、γ−オリザノールを与えたマウスは、コントロールと比較して体重が減少傾向にあることがわかった。したがって、γ−オリザノールは、脂肪細胞分化を抑制することにより、肥大脂肪細胞の増加を抑制して小型脂肪細胞の存在比率を高め、脂肪分解効率を向上させて体重の減少を促したことが推測された。
本発明は、γ−オリザノールを含有する、脂肪細胞分化を抑制するための経口組成物を提供する。
また本発明は、上記経口組成物において、上記γ−オリザノールが、米糠または米糠由来の抽出物として含有される経口組成物を提供する。
また本発明は、γ−オリザノールを含有する脂肪細胞分化抑制剤を提供する。
また本発明は、上記脂肪細胞分化抑制剤において、上記γ−オリザノールが、米糠または米糠由来の抽出物として含有される脂肪細胞分化抑制剤を提供する。
また本発明は、上記脂肪細胞分化抑制剤を含有する容器詰飲食品を提供する。
本発明によれば、以上のように、脂肪細胞の分化を抑制することができるため、肥大脂肪細胞の増加を抑制し小型脂肪細胞の存在比率を高めることによって、肥満を防止することができる。また、UCP1の活性化などにより脂肪分解の効率を高めることによって、肥満防止にとどまらず体重減少をも促し、理想的な体型を取得しかつ維持することができる。
試験1においてOil Red O染色後の細胞を肉眼で観察した結果を示す図であり、図1の(a)および(b)はコントロール、図1の(c)はピオグリタゾン存在下、図1の(d)はγ−オリザノール存在下の結果を示す。 試験1においてOil Red O染色後の細胞を光学顕微鏡で観察した結果を示す図であり、図2の(a)および(b)はコントロール、図2の(c)はピオグリタゾン存在下、図2の(d)はγ−オリザノール存在下の結果を示す。 試験2において空腹時血糖値(FBG)を測定した結果を示すグラフ。 試験2において腹腔内にグルコース投与後の血糖値変化を測定した結果を示すグラフ。 試験2における血糖値曲線下面積(AUC)を示すグラフ。 試験2における解剖時の体重(Body weight)を示すグラフ。 試験2における解剖時の白色脂肪組織重量(WAT)を示すグラフ。 試験2における解剖時の肝臓重量を示すグラフ。 試験2における血中の中性脂肪値(TG)を示すグラフ。 試験2における血中の遊離脂肪酸値(NEFA)を示すグラフ。 試験2における血中の血糖値(GLU)を示すグラフ。 試験3において試験食開始後の体重変化を示すグラフ。 試験3において腹腔内にグルコース投与後の血糖値変化を測定した結果を示すグラフ。 試験3における血糖値曲線下面積(AUC)を示すグラフ。 試験3における解剖時の体重(Body weight)を示すグラフ。 試験3における解剖時の肝臓重量を示すグラフ。
本発明の経口組成物および脂肪細胞分化抑制剤は、γ−オリザノールを含有する。
γ−オリザノールは、主に米糠に含有される、フェルラ酸のエステル類の混合物である。γ−オリザノールとして、精製されたγ−オリザノールを用いてもよいし、米糠または米糠由来の抽出物として含有されてもよい。
米糠は、玄米の精米工程で生じるものであり、精米歩合90%程度までで得られる赤糠、85%程度までで得られる中糠、75%程度までで得られる白糠、さらに精米を進めて得られる特上糠または特白糠に分類される。本発明に用いる米糠としては、これらのいずれであってもよい。
米糠由来の抽出物は、たとえば米糠油、脱脂米糠などであってもよい。米糠油は米糠から抽出される植物油であり、脱脂米糠は米糠から油を抽出した後の糠である。米糠油および脱脂米糠は、米糠を圧搾する方法、米糠を有機溶媒抽出法により脱脂する方法などの公知の方法により得ることができる。
本発明の経口組成物および脂肪細胞分化抑制剤は、γ−オリザノールの他の成分をさらに含有していてもよい。たとえば、経口組成物および脂肪細胞分化抑制剤は、米糠に含有されるγ−オリザノール以外の成分をさらに含有していてもよい。このような成分には、たとえばフィチン酸、イノシトール、フェルラ酸、各種ビタミンおよび各種ミネラルなどが含まれる。
本発明の経口組成物および脂肪細胞分化抑制剤は、経口摂取を容易にするため、一般的に食品や医薬品で用いられる公知の成分を含有させることができ、適当な方法で加工することができる。
本発明の経口組成物および脂肪細胞分化抑制剤は、担体および添加剤などをさらに含有していてもよい。
担体および添加剤としては、賦形剤、粘結剤、抗酸化剤、酸味料、強化剤、流動化剤、滑沢剤、オリゴ糖、食物繊維、甘味料および香料などを使用することができる。
賦形剤は、たとえば、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール類、結晶セルロース、乳糖、白糖、ブドウ糖、デンプン、炭酸塩類およびリン酸塩類等を使用することができる
粘結剤は、たとえばゼラチン、アルギン酸、キサンタンガム、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カラギーナン、プルランおよびペクチン等を使用することができる。
抗酸化剤は、たとえばショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、サポニン等の乳化剤、アスコルビン酸およびトコフェロール等を使用することができる。
酸味料は、たとえば乳酸、クエン酸、グルコン酸およびグルタミン酸などを使用することができる。
強化剤は、たとえばビタミン類、アミノ酸類、乳酸塩、クエン酸塩およびグルコン酸塩などを使用することができる。
流動化剤は、たとえば二酸化ケイ素などを使用することができる。また、滑沢剤は、ショ糖脂肪酸エステルおよびステアリン酸塩類などを使用することができる。
オリゴ糖は、たとえばラクチュロース、ラフィノース、フルクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖および大豆オリゴ糖などを使用することができる。
食物繊維は、水溶性食物繊維および水不溶性食物繊維を使用することができる。たとえば難消化性デキストリン、セルロース、アップルファイバー、ポテトデキストロース、サイリウムおよびビートファイバーなどが挙げられる。
甘味料は、たとえばスクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ソーマチン、ステビア、ネオテームおよびグリシルリチンなどを使用することができる。
香料は、たとえばハッカ油、ユーカリ油、ケイヒ油、ウイキョウ油、チョウジ油、オレンジ油、レモン油、ローズ油、フルーツフレーバー、ミントフレーバー、ペパーミントパウダー、dl-メントールおよびl-メントールなどを使用することができる。
また、添加物として、乳酸菌などの生菌または死菌を配合してもよい。また、その他のプロバイオティクス素材、プレバイオティクス素材、ビタミン、並びに生薬およびハーブ等の植物そのものまたは抽出物を添加物として配合してもよい。
本発明の経口組成物および脂肪細胞分化抑制剤には、外観の改善等を目的として、従来公知の種々の着色剤が含有されてもよい。着色剤としては、たとえば、パプリカ、リコピン、炭粉、紅芋粉、クチナシ色素、有色野菜粉末、スピルリナおよびクロレラ等の藻類粉末、並びに油溶化処理された色素製剤等が挙げられる。また、食感の向上等を目的として、米粉、たとえばうるち米粉およびもち米粉、並びに澱粉類、たとえばタピオカ澱粉および馬鈴薯澱粉などが含有されてもよい。
本発明の経口組成物および脂肪細胞分化抑制剤は、さらに、小麦および米粉等の穀類、大豆および小豆等の豆類、果物、水飴等の糖質、食物繊維、水、並びに大豆油および菜種油等の食用油等の他の原料を含んでもよい。また、本発明の経口組成物および脂肪細胞分化抑制剤は、甘味剤、抗酸化剤、ビタミン類、ミネラル類、香料および色素等の従来公知の食品添加物等、従来食品に添加される他の成分を含んでもよい。
本発明の経口組成物および脂肪細胞分化抑制剤は、飲食品、医薬品および医薬部外品などに利用することができる。飲食品である場合、たとえば一般食品、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、老人用食品、サプリメントおよび菓子などであることができる。医薬品または医薬部外品である場合には、内服薬および外用薬のいずれでもよいが、内服薬であれば高い効果を得ることができる。
本発明の経口組成物および脂肪細胞分化抑制剤の形態は、たとえば、液体、錠剤、顆粒、細粒、粉体、タブレット、カプセル、液体、ペースト、ゲル、並びにその他の一般的に飲食品および医薬品として摂取される形態であることができる。
本発明は、上述した脂肪細胞分化抑制剤を含有する飲食品をも包含する。飲食品としては、たとえば一般食品、特定保健用食品および病者用食品などの特別用途食品、栄養補助食品、ダイエット食品および美容食品などの機能性食品、老人用食品、サプリメント、飲料ならびに菓子などであることができる。
本発明の飲食品は、容器詰飲食品として提供されてもよい。本発明の容器詰飲食品は、上述した脂肪細胞分化抑制剤を含有する飲食品が容器に充填され密封された状態で提供される飲食品である。すなわち、本発明の容器詰飲食品は、γ−オリザノールを含有する、脂肪細胞分化を抑制するための容器詰飲食品である。飲食品は、殺菌処理後に容器に充填されてもよい。
本発明の容器詰飲食品は、濃縮加工されており希釈してから摂取するものであってもよいし、希釈せずにそのまま摂取するものであってもよい。容器としては、一般に飲食品に用いられる容器を用いることができ、たとえばレトルトパウチ、紙パック、PETボトル、金属缶およびガラス瓶などであることができる。
本発明の経口組成物、脂肪細胞分化抑制剤および容器詰飲食品に含有されるγ−オリザノールの含有量は、特に限定されないが、脂肪細胞分化を効果的に抑制するという観点からは、0.1mg〜500mg/100g、たとえば1mg〜100mg/100gおよび5mg〜50mg/100gであってもよい。
以下の実施例に示すように、本発明に含有されるγ−オリザノールは、脂肪細胞分化を抑制し、小型脂肪細胞量を維持若しくは増加させることにより、脂肪分解し易い体質に改善し、食事コントロールまたは運動により得られるダイエット効果を向上させるだけでなく、平常時における脂肪分解能を向上させる可能性もある。したがって、本発明は、ダイエット用食品、美容食品、運動療法時向けの食品および肥満治療食などとして最適に用いることができる。本発明は、ダイエット、美容または肥満改善に適している旨の表示を付した飲食品であることができる。また、肥大脂肪細胞の生成を防ぐ側面もあることから、肥満、糖尿病およびこれらに関する種々の疾患の予防および改善に寄与することもでき、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、動脈硬化、耐糖能異常、高血圧、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症および肝疾患などの予防および改善のための経口組成物、医薬品、飲食品などにも用いることができる。また、本発明は、歯周病(歯肉炎、歯周炎)などの糖尿病の合併症の予防および改善のための経口組成物、医薬品、飲食品などに用いることができる。また、本発明は、上述した疾患の予防または改善に適している旨の表示を付した飲食品とすることもできる。
以下にγ−オリザノールについての試験結果を示す。
〔試験1〕
前駆脂肪細胞3T3-L1細胞を用いてインビトロ試験を行った。3T3-L1細胞は、マウスの繊維芽細胞から脂肪を蓄積する株として分離された細胞であり、細胞自体が不死化されているため、分化誘導前は、繊維芽細胞として大量増殖することができる。また、3T3-L1細胞は、インスリン、デキタメタゾンおよび3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)により、脂肪細胞に95%以上分化誘導することができる。
(培地調製)
継代用培地として、継代用培地A(DMEM(4.5g.mL Glu) (Sigma, glucose, D5769)、10%BS(Gibco,16170, lot#990250)および1%抗生物質(Gibco, Antibiotic-Antimycotic, 15240-062))、並びに継代用培地B(DMEM(4.5g.mL Glu)、10%FBS(Biowest, S1560, lot#SO5094S1560)および1%抗生物質)を用いた。BSおよびFBSは、非働化処理(56℃、30分)したものを用いた。
分化誘導培地としては、継代用培地Bに、10μg/mLインスリン溶液(Wako,093-06351, lot#DOG7017)、0.25μM Dexamethasone (DEX) (Sigma, D4902) および0.11mg/mL IBMX (3-イソブチル-1-メチルキサンチン) (Sigma, 15879)を加えたものを用いた。分化促進培地としては、継代用培地Bに5μg/mLインスリン溶液を加えたものを用いた。分化誘導培地および分化促進培地は用時調製した。
(サンプルの調製方法)
[ピオグリタゾン]
アディポネクチンの分泌を促進して脂肪細胞の分化を促進すると考えられているチアゾリジン誘導体のピオグリタゾンをコントロールとして用いた。ピオグリタゾン塩酸塩(Wako,1ot#LAN0167、WEL4297)をDMSOにて溶解後、培地にて最終濃度が10μMになるように調製した。
[γ−オリザノール]
γ−オリザノール(TCI, O0172)をDMSOに溶解し、5mM濃度に調整したγ−オリザノール溶液を用いた。実験には、最終濃度が5μMとなるように、培地で希釈して用いた。
(細胞培養とサンプル添加方法)
3T3-L1細胞(大日本住友製薬, Embryo mouse)は、継代用培地Aにて必要量を増殖させ、12ウェルコラーゲンコート培養プレート(住友ベークライト,スミロンセルタイトC-1)に、1.5×104ce1l/ウェル(6ウェルプレートの場合は、3.75×104ce11/ウェル)の濃度となるように、細胞懸濁液1mL(6ウェルプレートの場合は、2mL)を播種し、37℃、5%CO2下で2日間培養した。その後、継代用培地Bに培地交換し、コンフルエント後、1-2日間、継代用培地Bにて培養を続け、分化誘導培地に交換した(day 0)。分化誘導培地により分化誘導して48時間以内に、分化促進培地に交換した(day 2)。各々のサンプルは、分化誘導培地交換時(day 0)から、day7-8まで、継続的に添加し続けた。
(脂肪細胞のOil Red染色方法)
[試薬調製]
冷10%ホルマリン/PBS(pH7.4)は、PBSに10%(v/v)量ホルマリンを添加し、pH7.4に調整して調製し、4℃で保管した。本試験では、10%中性緩衝ホルマリン液(Wake, 060-03845)を使用した。
染色液には0.5% Oil Red O/イソプロパノール溶液を用いた。Oil Red O(Wake, 154-02072)をイソプロパノール(Sigma)中にスターラーでよく振盪溶解し、飽和溶液として調製した。調製後少なくとも5日放置した。使用直前に、0.5% Oil Red O/イソプロパノール溶液と蒸留水とを3:2の割合で混合し、10分間、室温にて放置した(用時調製)。
[染色方法]
上記の培養方法にて、day7-8まで培養した、6ウェルプレートの3T3-L1細胞を用いた。培地が入った状態で、冷10%ホルマリン/PBSを、1ml/ウェル添加し、20分間、室温にて放置した。培地をデカントで除き、新たに冷10%ホルマリン/PBSを1.5ml/ウェル添加し、1時間、室温にて放置した。ホルマリン溶液をデカントで除き、蒸留水(1ml/ウェル)で2-3回洗浄し、残った蒸留水をピペットマンで完璧に除いた。60%イソプロパノール(1ml/ウェル)で1回洗浄後、渡過した染色液を1ml/ウェル添加し、1時間、室温にて放置した。染色後、60%イソプロパノール(1ml/ウェル)で1回洗浄し、蒸溜水(1ml/ウェル)で2-3回洗浄した。水を張った状態で顕微鏡観察を行い、写真を撮影した。また、良く風乾させた後、スキャナで全体写真を撮影した。
(Oil Red O染色の結果)
各サンプル存在下で上記培養方法にて分化を促進させた7〜8日目における3T3-L1細胞の油滴を、Oil Red O染色にて赤色で染めた。図1は、Oil Red O染色後の細胞を肉眼で観察した結果を示す図である。図2は、Oil Red O染色後の細胞を光学顕微鏡で観察した結果を示す図である。図1の(a)および(b)、並びに図2の(a)および(b)は、サンプルを添加していないコントロールの結果を示す。図1の(c)および図2の(c)は、ピオグリタゾン存在下、図1の(d)および図2の(d)はγ−オリザノール存在下での結果を示す。
図1および図2に示すように、コントロールおよびピオグリタゾンでは、細胞内にトリグリセライドの蓄積が観察され、脂肪細胞への分化が強く促進されていることが確認できた。一方、γ−オリザノール存在下では、赤色で染色されている部分が明らかに少なく、細胞内にトリグリセライドが蓄積されていないことが確認できた。すなわち、γ−オリザノールは、脂肪細胞への分化を抑制していることが示唆された。
〔試験2および3〕
次に、マウスを用いてin vivo試験を行った。
(試験食)
試験食には、以下の組成の高脂肪食(HFD)およびγ−オリザノール含有飼料(γ-oryzanol)を用いた(オリエンタル酵母工業作製)。γ−オリザノールには、γ−オリザノール(Wako, 152-01272)を用いた。各飼料は固形であり、通常乾燥(90℃、90分)させ、γ線照射(30kGy)させたものである。また、普通食(CTL)としてはAIN-93M調整食(オリエンタル酵母工業社製)を用いた。
(飼育条件)
床敷(ALPHA-driTM(エルエスジー))で飼育し、飲水としてはフィルターろ過水(自由摂取)を与えた。飼育条件は、温度20〜25℃、湿度45〜70%および一日の照明時間12時間とした。通常食(CE-2固形)にて予備飼育後、体重を測定し、各群の体重の平均値の有意差がなくなるように、群分けを行った後、試験食を開始した。
(ipGTT方法)
1晩(15時間)絶食後、動物の尾を穿刺し、簡易血糖値測定装置を用いて血糖値を測定した(空腹時血糖値)。空腹時血糖値を測定した後、試験2では1.5g/kg B.W(40% w/v溶液)、試験3では2g/kg B.Wのグルコースを腹腔内投与した。グルコース腹腔内投与後の所定時間毎に、空腹時血糖値測定と同様に尾を穿刺し、簡易血糖値測定装置を用いて血糖値を測定した。
(解剖方法)
絶食後、それぞれ動物をイソフルラン(フラン、1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)麻酔下にて開腹し、下大静脈から採血後、失血死させた。なお、へパリンナトリウムを通した注射針を用いた。採取した血液は、遠心分離により血漿状態にした後に保管した。失血死をさせた後、肝臓および白色脂肪組織をそれぞれ摘出し、解析に用いた。摘出した各組織は、PBS(-)にて洗浄し余分な水分を取り除いた後、液体窒素にて凍結し、解析に用いるまで−80℃にて保管した。
(肝中脂質の測定方法)
液体窒素にて組織破壊器具(マイクロテックニチオン)一式を十分に冷やしておき、それらを用いて肝臓を粉々にした。0.5M酢酸(Sigma)、メタノール(Sigma)およびクロロホルム(Sigma)(1: 2.5:1.25)が入ったガラス円沈管に、粉砕した肝臓を入れ、2分間ホモジネートし、20秒間ボルテックスした後、10分間室温にて放置した。その後、クロロホルムを加え20秒間ボルテックスし、0.5M酢酸を加え1分間ボルテックスした。1,500×gで10分(4℃)遠心分離を行い、下層をパスツールピペットにて別容器に移した。残った上層に再度クロロホルムを加え、1分間ボルテックスした後、1,500×gで10分(4℃)遠心分離を行い、再抽出した。集めた下層をドラフト内で乾燥させ、イソプロピルアルコール(Sigma):TritonX100(Sigma)=9:1の混合液にて激しく損拌して溶解した。得られたサンプル溶液について、コレステロールE−テストワコー(Wake, 439-17501)およびトリグリセライドE−テストワコー(Wake,432-40201)を用いて肝中脂質を測定した。
(試験2)
糖尿病発症マウスであるKK-Ay/TaJcld(日本クレア社より入手)を用いて、高脂肪食(HFD)を給餌させた群およびγ−オリザノール含有飼料を給餌させた群において、体重、グルコース投与後の血糖値変化、組織重量および血中指標を測定した。マウスは個飼いにより飼育した。水および餌は自由摂取とした。
給餌方法は、各日分の摂餌量を測定し、1日の平均摂餌量を算出した。
[体重変化]
体重は、毎週同じ時間に測定した。試験食開始後の体重変化は、高脂肪食(HFD)群と比べて、γ−オリザノール群に有意な差はなかった(図示せず)。
[ipGTT]
各群について、ipGTTにより空腹時血糖値(FBG)を測定した結果を図3に示す。また、ipGTTにより腹腔内にグルコース投与後の血糖値変化を測定した結果を図4に示す。また、各群について、血糖値曲線下面積(AUC)を算出した結果を図5に示す。
γ−オリザノール群の空腹時血糖値(FBG)は、HFD群と比べて低かった(図3)。また、腹腔内にグルコースを投与した後、特に60分後以降において、γ−オリザノール群の血糖値は、HFD群と比べて有意に低下していた(図4)。γ−オリザノール群の血糖値曲線下面積(AUC)もまたHFD群と比べて有意に低かった(図5)。
[体重および組織重量]
各群について25日間または26日間各々の試験食で飼育した後、解割を実施し、組織を採取し、体重(Body weight)、白色脂肪組織(副串丸周囲脂肪)重量(WAT)、および肝臓重量(LIVER)を測定した。それらの結果をそれぞれ図6〜8に示す。γ−オリザノール群は、HFD群と比較して、体重は同等であったが、白色脂肪組織重量および肝臓重量のいずれも低い値を示した。
[血中指標]
解剖時に採取した血液サンプルは、遠心分離により血漿にした後、血中の中性脂肪値(TG)、遊離脂肪酸値(NEFA)、血糖値(GLU)およびインスリン値(INS)を測定した。その結果を図9〜11に示す。
その結果、γ−オリザノール群では、HDF群と比較して、中性脂肪値(TG)、遊離脂肪酸値(NEFA)および血糖値(GLU)が減少した。
(試験3)
ノーマルマウスであるC57BL6J(日本チャールズ・リバー社より入手)を用いて、普通食(CTL)を与えた群、高脂肪食(HFD)を与えた群およびγ−オリザノールを与えた群において、体重変化、グルコース投与後の血糖値変化および組織重量を測定した。マウスは、4匹/ケージの群飼いにより飼育した。予備飼育期間および試験食開始後の餌は、自由摂取とした。
[体重変化]
体重は、毎週同じ時間に測定した。試験食開始後の体重変化を図12に示す。HFD群と比べて、CTL群の体重は有意に減少した。また、γ−オリザノール群の体重は、HFD群と比較して、常時低い値を示した。また、摂餌量については、どの群においても差はなかった(図示せず)。
[ipGTT]
各群について、ipGTTにより腹腔内にグルコース投与後の血糖値変化を測定した結果を図13に示す。また、各群について、血糖値曲線下面積(AUC)を算出した結果を図15に示す。図13および図14に示すように、CTL群は、HFD群と比較して、腹腔内にグルコースを投与後、全ての時間において有意に血糖値が低下し、AUCも有意に低かった。γ−オリザノール群においては、HFD群と比較して、グルコース投与後30分後および60分後に血糖値が有意に低下しており、AUCも有意に低かった。
[体重および組織重量]
各群について99日間または100日間、各々の試験食で飼育した後、解剖を実施し、組織を採取し、体重(Body weight)、および肝臓重量(LIVER)を測定した。それらの結果をそれぞれ図15および16に示す。HFD群は、CTL群と比較して、どの項目においても有意に増加していた。一方、HFD群にγ−オリザノールを添加した食餌群であるγ−オリザノール群においては、HFD群と比較して体重および肝臓重量共に低かった。
〔考察〕
試験1の結果から、γ−オリザノール存在下では、3T3-L1内へのトリグリセライドの蓄積が抑制されていたため、分化が抑制されていると考えられる。試験3において、γ−オリザノールを与えたC57BL6Jマウスは、高脂肪食群と比較して体重が常時低い値を示したことからも、γ−オリザノールが脂肪細胞分化を抑制することにより、脂肪細胞の肥大化を抑制したと推測できる。すなわち、γ−オリザノールは、脂肪細胞分化を抑制することにより肥大脂肪細胞の増加を抑制して体重増加を抑制するだけでなく、脂肪分解機能を有する小型脂肪細胞の存在比率を高めることにより脂肪分解効率を向上させ、体重を減少させる作用を有することが示唆された。
また、試験2および3において、γ−オリザノール群では、HFD群と比較して腹腔内にグルコースを投与した後の血糖値が有意に低下したことから、γ−オリザノールが脂肪細胞分化を抑制することにより、小型脂肪細胞の減少によるアディポネクチンの分泌低下を抑制し、その結果インスリン抵抗性を改善させたことが示唆された。すなわち、γ−オリザノールは、脂肪細胞の分化を抑制することによりインスリン抵抗性を改善させる作用を有することが示唆された。
本発明は、ダイエット用食品、美容食品、運動療法時向けの食品および肥満治療食などに好適に利用可能であり、また、肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、動脈硬化、耐糖能異常、高血圧、高脂血症、高中性脂肪血症、高コレステロール血症、肝疾患および歯周病などの予防および改善のための経口組成物、医薬品、飲食品などにも利用可能である。

Claims (5)

  1. γ−オリザノールを含有する、脂肪細胞分化を抑制するための経口組成物。
  2. 前記γ−オリザノールが、米糠または米糠由来の抽出物として含有される、請求項1記載の脂肪細胞分化を抑制するための経口組成物。
  3. γ−オリザノールを含有する脂肪細胞分化抑制剤。
  4. 前記γ−オリザノールが、米糠または米糠由来の抽出物として含有される、請求項3記載の脂肪細胞分化抑制剤。
  5. 請求項3または4に記載の脂肪細胞分化抑制剤を含有する容器詰飲食品。

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