以下本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を、「(メタ)アクリロイル基」は「メタクリロイル基および/またはアクリロイル基」をそれぞれ意味する。
また、「活性エネルギー線」とは、電子線、紫外線、可視光線、プラズマ、赤外線などの熱線等を意味する。
<ロール状モールドの製造方法>
本発明のロール状モールドの製造方法においては、ロール状の金型基材の表面に微細凹凸構造を作製する方法である。本発明においては、シームレスでロール状のモールドを簡便に製造できるという点で、陽極酸化を利用し、アルミニウム基材の表面に複数の細孔(凹部)を有する陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜:アルマイト)を形成する方法が用いられる。
より具体的には、表面に陽極酸化アルミナを有するロール状モールドは、例えば下記(a)〜工程(e)を経て製造できる。図1を参考に各工程について説明する。
(a)ロール状のアルミニウム基材を電解液中で陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜の少なくとも一部を除去する工程。
(c)ロール状のアルミニウム基材を電解液中で再度陽極酸化し、複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の一部を除去し、細孔径を拡大させる工程。
(e)前記工程(c)と工程(d)を繰り返し行う工程。
(工程(a)):
工程(a)では、電解液中でロール状のアルミニウム基材30に電圧を印加して陽極酸化し酸化皮膜44を形成する。アルミニウム基材30を陽極酸化すると、細孔42を有する酸化皮膜44が形成される。
アルミニウム基材の純度は、97〜99.99質量%であることが好ましく、99.5〜99.9質量%であることがより好ましい。アルミニウムの純度が97質量%未満では、陽極酸化時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがあるため好ましくない。
ところで、純度の高いアルミニウムを用いた場合、所望の形状(例えば円筒状など)に加工する際に、アルミニウム基材が柔らかすぎて加工しにくい場合がある。そこで、アルミニウムにマグネシウムを添加して所定の形状に加工したものを、アルミニウム基材30として用いてもよい。マグネシウムを添加することで、アルミニウムの強度が高まるため加工しやすくなる。アルミニウムに添加するマグネシウムの添加量は、アルミニウム基材の総質量に対して0.1〜3質量%程度であることが好ましい。
工程(a)で用いる電解液としては、酸性水溶液またはアルカリ性水溶液が挙げられ、酸性水溶液が好ましい。酸性水溶液としては、無機酸類(硫酸、リン酸等)、有機酸類(シュウ酸、マロン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸等)が挙げられ、硫酸、シュウ酸、リン酸が特に好ましい。また、これらの混合物であっても構わない。
シュウ酸を電解液として用いる場合:
工程(a)において、シュウ酸を電解液として用いる場合、シュウ酸の濃度は0.7mol/l(以下、単純に「M」と表記する)以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
硫酸を電解液として用いる場合:
工程(a)において、硫酸を電解液として用いる場合、硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象が起こり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
工程(a)において形成される酸化皮膜44の厚さは、電流密度と酸化時間の積である積算電気量に比例するため、形成する酸化皮膜44の厚みに応じて、電圧、電流密度、酸化時間を適宜変更すればよい。アルミニウム基材30に電圧を印加する時間は、モールドの生産性の観点から0.5分以上120分以下であることが好ましい。
工程(a)において形成される酸化皮膜44の厚さは、0.1〜10μmが好ましい。酸化皮膜44の厚さがこの範囲内にあれば、後述の工程(b)において酸化皮膜44の少なくとも一部を除去した際に、アルミニウム基材30の表面の機械加工の痕は十分に除かれ、かつ結晶粒界の段差が視認できるほど大きくならないため、モールド由来のマクロな凹凸が成形体本体の表面へ転写するのを回避できる。
(工程(b)):
工程(b)では、工程(a)で形成された酸化皮膜44の少なくとも一部を除去する工程である。規則性の高い微細凹凸構造が必要である場合、酸化皮膜44を全て除去し、規則正しく配列した陽極酸化の細孔発生点46を形成することが好ましい。陽極酸化の細孔発生点46を形成することで細孔42の規則性を向上することができる。
酸化皮膜44を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜44を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えばクロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
工程(b)において、前記溶液中にアルミニウム基材を浸漬する時間は、除去する酸化皮膜44の厚みやクロム酸・リン酸等の処理液の濃度に応じて適宜調整すればよいが、モールドの生産性の観点から、15〜300分であることが好ましい。
(工程(c)):
工程(c)では、酸化皮膜44の少なくとも一部を除去したアルミニウム基材30を電解液中、再度陽極酸化し、細孔42を有する酸化皮膜44を形成する。工程(b)において、酸化皮膜44を全て除去した場合、細孔発生点46を起点として規則正しく配列した細孔42を形成することができる。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行っても、条件を適宜変更して行っても構わない。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
(工程(d)):
工程(d)では、工程(c)で形成された酸化皮膜44の細孔42の径を拡大させる処理(以下、「細孔径拡大処理」という。)を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜44を溶解する溶液に浸漬して酸化皮膜44の一部を溶解し、陽極酸化で得られた細孔42の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
(工程(e)):
工程(e)では、工程(c)の陽極酸化と、工程(d)の細孔径拡大処理を繰り返す。すると、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔42を有する陽極酸化アルミナが形成され、アルミニウム基材の表面に陽極酸化アルミナを有するロール状モールド50が得られる。
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を有する陽極酸化アルミナを用いて製造された微細凹凸構造の反射率低減効果は不十分となる場合がある。
このようにして作製された金型本体の表面には、細孔(凹部)が複数形成され、微細凹凸構造が構成される。微細凹凸構造の凹部の形状としては、円錐状・釣鐘状・先鋭状など、深さ方向と直交する方向の凹部の断面積が最表面から深さ方向に連続的または階段状に減少する形状が好ましい。
凹凸構造の隣り合う凹部の平均間隔は20nm以上400nm以下が好ましく、40nm以上250nm以下がより好ましい。隣り合う凹部の平均間隔が400nmより大きいと可視光を散乱するため、ロール状モールドを用いて微細凹凸構造を転写した成形体を反射防止物品として使用する場合、透明性が低下する場合がある。隣り合う凹部の平均間隔が25nm以下であると、微細凹凸構造を転写することが困難となる場合がある。
また、凹部の平均深さは、100〜500nmであることが好ましく、150〜400nmがよりに好ましい。凹部の深さが100nm以下であると、ロール状モールドを用いて微細凹凸構造を転写した成形体を反射防止物品として使用する場合、反射防止性能が低下する場合がある。凹部の深さが500nmを超えると、該ロール状モールドを用いて製造した成形体において、微細凹凸構造の機械的特性が低下してしまう場合がある。
なお、本発明のロール状モールドの製造方法においては、上述の工程(a)〜工程(e)を全て実施する必要はなく、高い規則性が必要でない場合には、工程(c)〜工程(e)のみを行っても構わない。
<アルミニウム基材の処理槽からの取り出し>
ここで、工程(a)から工程(e)の各工程間において、アルミニウム基材を搬送する際、陽極酸化に用いる電解液や、酸化皮膜の少なくとも一部の溶解に用いる溶液などの処理液に浸漬されたアルミニウム基材を液中から排出し(取り出し)、次の工程にアルミニウム基材を搬送する必要がある。このような液中からアルミニウム基材取り出すと、アルミニウム基材の表面に付着した処理液が重力方向下方へと流れ、アルミニウム基材表面の重力方向下方に集中して滞留してしまう(図9領域S参照)。電解液としては、硫酸やシュウ酸、リン酸などの強酸が用いられる場合が多いために、領域Sに電解液が集中した状態で所定の時間が経過すると、領域Sの微細凹凸構造の形状が変化してしまう場合がある。なお、本願発明においては、アルミニウム基材を処理槽から取り出した後に、重力方向下方等のアルミニウム基材表面の特定領域上に集中して電解液や処理液が所定時間存在し、アルミニウム基材表面に影響を及ぼす状態を、電解液や処理液が「滞留」する、と称する。
特に、酸化皮膜の少なくとも一部を溶解する工程である工程(b)および工程(d)の後、次の工程にアルミニウム基材の搬送においては、領域Sにおける微細凹凸構造の形状への影響が大きくなる。
そこで、本発明においては、アルミニウム基材表面の重力方向下方に、処理液が集中して滞留しないように、アルミニウム基材が処理槽から取り出される。以下に、細孔径拡大処理を例示しながら、その具体的な方法を説明する。
図2は、細孔径拡大処理装置の一例を示す断面図である。
細孔径拡大処理装置10は、処理液で満たされた細孔径拡大槽12と、細孔径拡大槽12の上部を覆い、細孔径拡大槽12からオーバーフローした処理液を受けるための樋部14が周縁に形成された上部カバー16と、処理液を一旦貯留する貯留槽18と、樋部14で受けた処理液を貯留槽18へ流下させる流下流路20と、貯留槽18の処理液を、アルミニウム基材30よりも下側の、細孔径拡大槽12の底部近傍に形成された供給口22へ返送する返送流路24と、返送流路24の途中に設けられたポンプ26と、供給口22から吐出された処理液の流れを調整する整流板28と、中空円柱状のアルミニウム基材30に挿入され、中心軸31が水平に保持された軸心34と、軸心34の中心軸31(すなわちアルミニウム基材30に中心軸)を回転軸として軸心34およびアルミニウム基材30を回転させる駆動装置(図示略)と、貯留槽18の処理液の温度を調節する調温手段40とを有する。
ポンプ26は、貯留槽18から返送流路24を通って細孔径拡大槽12へ向かう処理液の流れを形成するとともに、供給口22から勢いを付けて処理液を吐出させることによって、細孔径拡大槽12の底部から上部へ上昇する処理液の流れを形成するものである。
整流板28は、供給口22から吐出された処理液が細孔径拡大槽12の底部全体からほぼ均一に上昇するように処理液の流れを調整する、複数の貫通孔が形成された板状部材であり、表面が略水平となるようにアルミニウム基材30と供給口22との間に配置される。
駆動装置(図示略)は、リング状のチェーンまたは、ギヤ等の部材(図示略)によって軸心34の中心軸31に接続されたモーター等である。
調温手段40としては、水、オイル等を熱媒とした熱交換器、電気ヒータ等が挙げられる。
細孔径拡大処理装置10を用いたアルミニウム基材30の細孔径拡大処理は、例えば、下記のように行う。
アルミニウム基材30を細孔径拡大槽12の処理液に浸漬させた状態にて、駆動装置(図示略)を駆動させ、軸心34の中心軸31(すなわちアルミニウム基材30に中心軸)を回転軸として軸心34およびアルミニウム基材30を回転させる。
アルミニウム基材30を回転させながら、処理液に浸漬させた状態でアルミニウム基材30の細孔径拡大処理を行う。
アルミニウム基材30の細孔径拡大処理を行う間、アルミニウム基材30を回転させながら、細孔径拡大槽12から処理液の一部を排出しつつ、細孔径拡大槽12に同量の処理液を供給する。具体的には、細孔径拡大槽12から処理液をオーバーフローさせ、オーバーフローした処理液を貯留槽18に流下させ、処理液の温度を貯留槽18で調節した後、該処理液を、アルミニウム基材30よりも下側に設けられた供給口22から細孔径拡大槽12内に返送する。この際、ポンプ26によって供給口22から勢いを付けて処理液を吐出させ、さらに整流板28によって供給口22から吐出された処理液が細孔径拡大槽12の底部全体からほぼ均一に上昇するように処理液の流れを調整することによって、陽極酸化槽12の底部から上部へ上昇する処理液のほぼ均一な流れが形成される。
細孔径拡大槽12への処理液の供給量(供給口22からの処理液の吐出量)は、41L/分以上が好ましい。処理液の供給量が41L/分以上であれば、細孔径拡大槽12全体に処理液の充分な流れが生じる。ポンプ26の能力の点から、処理液の供給量は、55L/分以下が好ましい。
アルミニウム基材30の回転数は、3rpm以上が好ましい。アルミニウム基材30の回転数が3rpm以上であれば、アルミニウム基材30の周囲における処理液の濃度や温度のムラが充分に抑えられる。駆動装置の能力の点から、アルミニウム基材30の回転数は、10rpm以下が好ましい。
一定処理時間経過後、アルミニウム基材30を上下駆動装置(図示略)にて処理液より引き上げる。本発明においては、アルミニウム基材30の表面底部の同一箇所に処理液が滞留しないよう、アルミニウム基材30を処理液から取り出される。
本発明の一実施形態においては、アルミニウム基材30を回転させながら処理液より排出する。このようにアルミニウム基材を取りだすと、アルミニウム基材の表面に残った処理液が、アルミニウム基材表面の特定部分上に集中して滞留することがない。従って、図5の領域Sのように、転写面の一部に微細凹凸構造の高さのばらつきが発生することが抑制される。前記排出する際のアルミニウム基材30の回転数は、処理液が周囲に飛散しない程度であればいくらでもよいが、3rpm以上が好ましい。アルミニウム基材30の回転数が3rpm以上であれば、アルミニウム基材30の同一箇所に滞留しない。駆動装置の能力の点から、アルミニウム基材30の回転数は、10rpm以下が好ましい。なお、アルミニウム基材を処理液から取りだす全過程において、アルミニウム基材を回転させる必要はなく、アルミニウム基材全体が処理液から排出されてから、所定の時間だけアルミニウム基材を回転させてもよい。このような態様についても、「アルミニウム基材を回転させながら処理液から取り出す」ことに含むものとする。
本発明の一実施形態においては、アルミニウム基材30を処理液より引き上げる際、ノズル36より洗浄水などの液体およびエアーなどの気体をアルミニウム基材に吹きかけながら処理液より排出する。洗浄水又はエアーについてはアルミニウム基材の底部に向けて吹きかけることが好ましい。洗浄水又はエアを供給する場合、アルミニウム基材30を回転させる必要はないが、アルミニウム基材の表面にまんべんなくエア又は洗浄水を供給する観点から、アルミニウム基材30を回転させながら処理液から取り出し、ノズル36からエアまたは処理液を吹き掛けることが好ましい。また、エアおよび処理液の双方を同時に吹きかけてもよい。
また、本発明の一態様においては、図3に示されるように、アルミニウム基材30の本体の中心軸31を水平面に対して傾斜させた状態で、アルミニウム基材30が処理液から排出される。このようにアルミニウム基材30を取り出すと、アルミニウム基材30が傾斜しているため、アルミニウム基材の表面に残った処理液が本体の一方の端部の表面の端部(すなわち、最後まで処理液にに触れている部分)に集中する。よって、図4に示すように、液残りに起因した微細凹凸構造の高さのばらつきが発生する領域Sは、ロール状モールド50の端部の表面(非転写部12)の一箇所で起こり、中央部の表面(転写部13)での高さのばらつきの発生を防ぐことができる。ロールtoロール法の転写では、ロール状モールド50の中央部の表面(転写部33)が転写に使用され、端部の表面(非転写部32)は転写に使用されない。よって、非転写部32に高さのばらつきが発生しても、成形品の性能に影響を与える恐れはない。
また、アルミニウム基材30の本体の中心軸31を水平面に対して傾斜させた状態で、且つアルミニウム基材30を中心軸31を中心に回転させながら、処理槽12から取り出してもよい。このようにアルミニウム基材30を取りだすと、微細凹凸構造の高さのばらつきが発生することをより効果的に防止することができる。さらに、アルミニウム基材30の本体の中心軸31を水平面に対して傾斜させた状態で、アルミニウム基材30を回転させながら処理液から取り出し、回転するアルミニウム基材30にエア又は洗浄水を吹き付けてもよい。このようにアルミニウム基材30を取り出すと、アルミニウム基材30の表面に残った電解液やエッチャントなどの処理液が、アルミニウム基材表面の一箇所に集中するをより効果的に防止することができる。
<電解液とエッチャントとの混合液を用いた方法>
本発明の一実施形態において、モールドの製造方法は、下記の工程(1)〜工程(4)とを含む。以下のような方法においては、陽極酸化と細孔径拡大処理とを同一の槽内で行うことができるために、処理液からアルミニウム基材を取りだす回数を減らすことができ、アルミニウム基材表面の重力方向下方に微細凹凸構造の高さのばらつきが発生することを抑制することができる。以下のその方法を説明する。
工程(1):複数の酸を混合した電解液中に、アルミニウム基材を浸漬する工程。
工程(2):前記電解液に浸漬された前記アルミニウム基材に電圧を印加する工程。
工程(3):前記アルミニウム基材に電圧を実質的に印加せず、前記アルミニウム基材を前記電解液中に浸漬したまま保持する工程。
工程(4):前記工程(2)と、前記工程(3)とを交互に繰り返す工程。
(工程(1))
本発明のモールドの製造方法において、工程(1)は複数の酸を混合した電解液中に、アルミニウム基材を浸漬する工程である。
工程(1)において用いられるアルミニウム基材は、前述の工程(a)と同様のもので構わない。
工程(1)〜(4)において用いる、アルミニウム基材を浸漬する電解液としては、複数の酸を混合したものを用いる。本発明において、「複数の酸」とは、酸化皮膜の形成に寄与する酸(以下、「第1の酸」ということもある)と、酸化皮膜の少なくとも一部を溶解し、酸化皮膜に形成された細孔を拡大する細孔径拡大処理に有用な酸(以下、「第2の酸」ということもある)とを組み合わせたもののことを指す。
前記複数の酸としては、硫酸、リン酸、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、およびクエン酸から選択される少なくとも二種の酸であることが好ましい。
ここで、第1の酸としては、シュウ酸、硫酸が挙げられ、第2の酸としては、リン酸が挙げられる。
工程(1)〜(4)において、このような二種以上の酸を混合したものを電解液として用いることにより、アルミニウム基材表面の陽極酸化処理と細孔径拡大処理を1つの槽で行うことができるため、陽極酸化終了後や細孔径拡大処理終了後に、アルミニウム基材を処理液から取り出し、別の槽の処理液に浸漬させて処理を行うという作業が不要となり、製造工程、及び装置の簡略化が可能となる。さらに、処理液からアルミニウム基材を取りだす回数を減らすことができ、アルミニウム基材表面の重力方向下方に微細凹凸構造の高さのばらつきが発生することを抑制することができる。
前記複数の酸としては、シュウ酸とリン酸の組み合わせが好ましい。複数の酸として、シュウ酸、およびリン酸を用いることで、アルミニウム基材の表面に規則性の高い細孔が形成されやすく、かつ細孔の形状の制御が容易であるため好ましい。
複数の酸を混合した電解液の組成の決定方法は、まず第1の酸と第2の酸を決め、陽極酸化時の温度に応じてそれぞれの酸の濃度を決定する方法が好ましい。
例えば、第1の酸が硫酸であり、第2の酸がリン酸であり、陽極酸化を行う際の電解液の温度が、30℃以下、好ましくは20℃以下の場合、電解液中の硫酸の濃度は、0.7M以下が好ましく、0.05〜0.7Mがより好ましい。電解液中の硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。一方、電解液中のリン酸の濃度は、3M以下が好ましく、0.02〜3Mがより好ましい。電解液中のリン酸の濃度が、3M以下であれば、細孔径拡大速度を制御しやすくなるため好ましい。
また、例えば、第1の酸がシュウ酸であり、第2の酸がリン酸であり、陽極酸化を行う際の電解液の温度が4℃以上20℃未満の場合、電解液中のシュウ酸の濃度は、0.05M以上1M以下が好ましい。電解液中のシュウ酸の濃度が1M以下であれば、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなるのを防ぐことができるため好ましい。また、電解液中のリン酸の濃度は、5M以下が好ましく、0.05〜5Mがより好ましく、0.1〜3Mが更に好ましい。電解液中のリン酸の濃度が、5M以下であれば、細孔径拡大速度を制御しやすくなるため好ましい。
陽極酸化を行う際の電解液の温度が、20℃以上35℃未満の場合、電解液中のシュウ酸の濃度は、1M以下が好ましく、0.05〜1Mがより好ましい。電解液中のシュウ酸の濃度が1M以下であれば、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなるのを防ぐことができるため好ましい。また、電解液中のリン酸の濃度は、0.3M以下が好ましく、0.02〜0.3Mがより好ましく、0.05〜0.3Mが更に好ましい。電解液中のリン酸の濃度が、0.3M以下であれば、細孔径拡大速度を制御しやすくなるため好ましい。
本発明において、複数の酸を混合した電解液中の第1の酸と第2の酸の混合比率は、1
:9〜9:1が好ましい。複数の酸を混合した電解液中の第1の酸と第2の酸の混合比率が、1:9〜9:1であれば、アルミニウム基材の表面に規則性の高い細孔が形成されやすく、かつ細孔の形状の制御が容易であるため好ましい。
(工程(2)):
本発明のモールドの製造方法において、工程(2)は、複数の酸を混合した電解液に浸漬された前記アルミニウム基材に電圧を印加する工程である。すなわち、工程(2)は、複数の酸を混合した電解液中でアルミニウム基材の陽極酸化を行う工程である。
アルミニウム基材の表面の一部または全部を電解液に浸漬して陽極酸化を行うことによって、複数の酸を混合した電解液に浸漬した部分に酸化皮膜を形成することができる。
複数の酸を混合した電解液の組成と温度は、陽極酸化時の細孔の深化と、細孔径拡大処理時の細孔径拡大速度に影響を与える。本発明において、複数の酸を混合した電解液中の第2の酸の濃度を濃くする、もしくは複数の酸を混合した電解液の温度を高くすると、細孔径の拡大速度が速くなり、短時間で細孔を拡大することができる。一方、拡大速度が速くなる分、細孔径の制御が困難となる。従って、アルミニウム基材の表面に、所望の形状、かつ細孔径を有する細孔を形成させるためには、複数の酸を混合した電解液中の複数の酸の濃度、および複数の酸を混合した電解液の温度を制御することが重要である。
工程(2)において、アルミニウム基材に印加する電圧の条件は、40〜180Vが好ましい。工程(b)において、アルミニウム基材に印加する電圧が、40V以上であれば、細孔の間隔が100nmを超える酸化皮膜を、簡便に形成できるため好ましい。また、アルミニウム基材に印加する電圧が180V以下であれば、電解液を低温に維持する装置や、アルミニウム基材の背面に冷却液を噴射するなどの特殊な手法を用いる必要がなく、簡便な装置で陽極酸化することができるため好ましい。
工程(2)において、アルミニウム基材に印加する電圧は、陽極酸化工程の最初から最後まで一定であってもよく、途中で変化させてもよい。途中で電圧を変化させる場合は、段階的に電圧を上昇させてもよく、連続的に電圧を上昇させてもよい。
また、アルミニウム基材に電圧を印加した直後の電流密度が10mA/cm2以下となる場合、40V以上の最高電圧を最初から印加してもよい。または、40V未満の電圧で初期の陽極酸化を行い、段階的にまたは連続的に電圧を上昇させ、最終的に電圧を40〜180Vの範囲となるよう調整してもよい。ここで、「最高電圧」とは、工程(2)における電圧の最高値を意味し、工程(2)の終了時の電圧と一致する。
また、段階的に電圧を上昇させる場合、一定時間同じ電圧で保持してもよく、一時的に電圧を低下してもよい。また、電圧の昇圧速度が0.05〜5V/sとなるように経時的に連続して電圧が上昇するようにしてもよい。
電圧を一時的に低下させる場合、一時的に電圧が0Vになってもよいが、陽極酸化の途中で電圧が0Vになると、陽極にかかっていた電場が解消される。そのため、途中で電圧が0Vになった後に電圧を上昇させて再度電場をかけたとき、アルミニウム基材と酸化皮膜が部分的に剥離して、酸化皮膜の厚さが不均一になることがある。よって、途中で電圧が0Vにならないように陽極酸化を行うことが好ましい。
ここで、「一定時間」とは、1〜10分間のことを意味する。
また、任意の電圧から次の電圧へと昇圧する際の昇圧速度は特に制限されず、瞬時に昇圧してもよいし、徐々に昇圧してもよい。ただし、電圧を急激に昇圧する場合、アルミニウム基材に流れる電流密度が瞬間的に増大し、ヤケが生じる場合がある。一方、昇圧速度が遅すぎると、電圧を上昇させている間に、酸化皮膜が厚く形成されてしまう場合がある。従って、電圧の昇圧速度は0.05〜5V/sが好ましい。連続的に電圧を上昇させる
場合の昇圧速度についても同様である。
工程(2)においてアルミニウム基材に電圧を印加して陽極酸化を行う時間は、3〜600秒間が好ましく、30〜120秒間がより好ましい。アルミニウム基材に電圧を印加する時間が、3〜600秒間であれば、アルミニウム基材表面の酸化皮膜の厚さを後述する0.01〜0.8μmに制御しやすいため好ましい。
アルミニウム基材表面の酸化皮膜の厚さが0.01μm未満では、細孔の深さも0.01μmに満たないため、モールドとして用いた場合、得られる成形体が十分な反射防止性能を示さないおそれがある。酸化皮膜の厚さが0.8μm超では、酸化皮膜が厚くなる分だけ細孔も深くなるため、モールドとして用いた場合、離型不良を起こしやすくなるおそれがある。
(工程(3)):
本発明のモールドの製造方法において、工程(3)は、前記アルミニウム基材に電圧を実質的に印加せず、前記アルミニウム基材を複数の酸を混合した電解液中に浸漬したまま保持する工程である。本発明においては、工程(2)の後に電圧の印加を中断して、同じ反応槽中で、複数の酸を混合した電解液にアルミニウム基材を保持することで、酸化皮膜に形成されている細孔を拡径することができる。このように、本発明のモールドの製造方法によれば、1つの反応槽でアルミニウム基材の陽極酸化と、細孔径拡大処理を行うことができるため、陽極酸化工程終了後に、アルミニウム基材を槽から引き揚げて、別の槽に浸漬させて細孔径拡大処理を行うという作業が不要となり、製造工程、及び装置の簡略化が可能である。さらに、アルミニウム基材の表面に付着した電解液が重力方向下方に集中してしまい、微細凹凸構造の高さのばらつきが発生することを抑制することができる。
本発明においては、アルミニウム基材への電圧の印加を中断した後、複数の酸を混合した電解液中にアルミニウム基材を浸漬させたまま保持する時間を長くするほど、細孔の孔径が大きくなる。なお、本発明においては、「電圧の印加を中断する」、あるいは「実質的に電圧を印加しない」とは、アルミニウム基材に印加する電圧を0Vとすることだけでなく、基材に電流が流れず陽極酸化皮膜の形成が進まない程度まで電圧を低下させることを含むものである。
工程(3)において、アルミニウム基材を複数の酸を混合した電解液中に浸漬させたまま保持する際の、電解液の温度は、5〜40℃が好ましく、10〜35℃がより好ましい。電解液の温度が5〜40℃であれば、細孔径拡大処理の速度を制御することができ、細孔をより簡便にテーパー形状とすることができるため好ましい。
また、工程(3)において、アルミニウム基材を複数の酸を混合した電解液中に浸漬させる時間(以下、「浸漬時間」という)は、電解液の組成や温度により適宜調整することができる。例えば、複数の酸を混合した電解液中の第2の酸の濃度が0.5Mであり、電解液の温度が、20℃以上35℃未満である場合の浸漬時間は、15〜200分間が好ましく、30〜120分間がより好ましい。浸漬時間が200分間を超えると、生産効率上好ましくない。また、細孔径拡大処理が過剰に行われ、テーパー形状の細孔が得られない場合がある。一方、浸漬時間が15分間未満の場合、細孔がテーパー状にならない恐れがある。すなわち、浸漬時間が15〜200分間であれば、効率的にテーパー形状を有する細孔を形成することができるため好ましい。
複数の酸を混合した電解液中の第2の酸の濃度が比較的低濃度の場合、すなわち、0.05M以上0.5M未満である場合は、孔径拡大の進行が遅くなる傾向にある。このような場合は、浸漬時間を長くする、及び/または電解液の温度を上げて対応することができる。複数の酸を混合した電解液中の第2の酸の濃度が0.05M以上0.5M未満であり、電解液の温度が20℃未満の場合、浸漬時間は30分以上200分以下が好ましく、45分以上180分以下がより好ましい。
複数の酸を混合した電解液中の第2の酸の濃度が0.05M以上0.5M未満であり、電解液の温度が20℃以上35℃未満の場合、浸漬時間は30〜180分間が好ましく、
45〜160分間がより好ましい。
一方、複数の酸を混合した電解液中の第2の酸の濃度が比較的高濃度の場合、すなわち、0.5M以上5M以下である場合は、孔径拡大の進行が速くなる傾向にある。このような場合は、浸漬時間を短くする、及び/または前記電解液の温度を下げて対応することができる。
複数の酸を混合した電解液中の第2の酸の濃度が0.5M以上であり、前記電解液の温度が20℃未満の場合、浸漬時間は15分以上200分以下が好ましく、30分以上120分以下がより好ましい。
複数の酸を混合した電解液中の第2の酸の濃度が0.5M以上であり、前記電解液の温度が20℃以上35℃以下の場合、浸漬時間は10分以上120分以下が好ましく、20分以上100分以下がより好ましい。
(工程(4))
本発明のロール状モールドの製造方法において、工程(4)は、前記工程(2)と前記工程(3)とを交互に繰り返す工程である。
工程(4)を実施する回数、すなわち、前記工程(2)と前記工程(3)の繰り返し回数は、回数が多いほど細孔を滑らかなテーパー形状にすることができる点から、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。また、工程(2)と工程(3)の繰り返し回数の上限は、生産効率上の観点から、10回以下が好ましい。工程(b)と工程(c)の繰り返し回数の合計が2回以下の場合、非連続的に細孔の孔径が減少するため、このような細孔を有するモールドを用いて反射防止物品(反射防止膜等)を製造した場合、反射率低減効果が不充分となる可能性がある。
工程(4)は、工程(2)で終了してもよく、工程(3)で終了してもよいが、形成される細孔の孔径が連続的に変化するテーパー形状を形成する観点から、工程(3)で終了することが好ましい。細孔がテーパー形状を有することで、屈折率を連続的に増大させることができ、波長による反射率の変動(波長依存性)を抑制し、可視光の散乱を抑制して低反射率にできるという効果が得られるため好ましい。
また、本発明のモールドの製造方法においては、工程(1)の前に、前述の工程(a)と、クロム酸・リン酸混合溶液などを用い、陽極酸化皮膜の少なくとも一部を除去する工程(b)を別途行っても良い。
本実施形態においては、同じ槽で陽極酸化と細孔径拡大処理とが行われるため、陽極酸化皮膜を溶解する工程である工程(3)から工程(2)へと、都度アルミニウム基材の搬送が不要である。したがって、アルミニウム基材の表面に残った電解液やエッチャントなどの処理液が、アルミニウム基材表面の領域Sなどの一箇所に残り、微細凹凸構造の高さのばらつきが発生することが抑制される。また、本実施形態において、処理液からアルミニウム基材を取りだす際には、前述と同様の方法でアルミニウム基材を処理液から取り出す。これにより、アルミニウム基材の表面に残った電解液やエッチャントなどの処理液が、アルミニウム基材表面の領域Sなどの一箇所に残り、微細凹凸構造の高さのばらつきが発生することを抑制することができる。
<モールド>
本発明のロール状モールドの製造方法によれば、表面に微細凹凸構造の高さのばらつきが発生することが抑制され、アルミニウム基材の表面に、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状の細孔が規則的に配列して形成され、その結果、アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドを製造することができる。
本発明のロール状モールドにおける細孔の間隔は、可視光の波長以下が好ましく、20〜400nmが好ましく、40nm以上250nm以下がより好ましい。細孔の間隔が20nm以上であれば、本発明のモールドの表面を転写して得られる成形体(反射防止物品等)の反射防止性能を損なうことなく耐擦傷性能を向上できる。細孔の間隔が400nm以下であれば、モールドの表面の転写によって得られた成形体の表面(転写面)において可視光の散乱が起こりにくくなり、十分な反射防止機能が発現するため、反射防止膜等の反射防止物品の製造に適する。
また、ロール状モールドを反射防止物品(反射防止膜等)の製造に用いる場合、細孔の間隔が400nm以下であるとともに、細孔の深さが100nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましい。細孔の深さが100nm未満のモールドを用いた場合、反射防止物品の反射防止性能が不十分となる可能性があるため好ましくない。細孔の深さの上限としては、500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましい。細孔の深さが、500nm以下であれば、形成された反射防止物品において、細孔の反転形状を有する突起の機械的強度を保つことができるため好ましい。すなわち、モールドを反射防止物品(反射防止膜等)の製造に用いる場合の細孔の深さは、100〜500nmであることが好ましく、150〜400nmであることがより好ましい。
また、モールドの細孔のアスペクト比(細孔の深さ/細孔の間隔)は、0.25以上が好ましく、0.5以上がさらに好ましく、0.75以上が最も好ましい。アスペクト比が0.25以上であれば、反射率が低い表面を形成でき、その入射角依存性も十分に小さくなる。また、モールドの細孔のアスペクト比の上限は、細孔の反転形状を有する突起の機械的強度を保つ観点から、4以下であることが好ましい。
複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドの表面は、離型が容易になるように、離型処理が施されていてもよい。離型処理の方法としては、例えば、リン酸エステル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、フッ素ポリマー等をコーティングする方法、フッ素化合物を蒸着する方法、フッ素系表面処理剤またはフッ素シリコーン系表面処理剤をコーティングする方法等が挙げられる。
<微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法>
本発明の、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、本発明のロール状モールドの製造方法で得られたロール状モールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造を、物品本体の表面に転写する方法である。
ロール状モールドの微細凹凸構造(細孔)を転写して製造された物品は、その表面にロール状モールドの微細凹凸構造の反転構造(凸部)が、鍵と鍵穴の関係で転写される。
ロール状モールドの微細凹凸構造を物品本体の表面に転写する方法としては、例えば、ロール状モールドと透明基材(物品本体)の間に未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填し、ロール状モールドの微細凹凸構造に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が接触した状態で、活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた後にロール状モールドを離型する方法が好ましい。これによって、透明基材の表面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸構造が形成された物品を製造できる。得られた物品の微細凹凸構造は、ロール状モールドの微細凹凸構造の反転構造となる。
<物品本体>
透明基材(基材フィルム)としては、活性エネルギー線の照射を、該透明基材を介して行うため、活性エネルギー線の照射を著しく阻害しないものが好ましい。透明基材の材料としては、例えばポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ガラス等が挙げられる。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる方法は、熱硬化性樹脂組成物を用いる方法に比べて加熱や硬化後の冷却を必要としないため、短時間で微細凹凸構造を転写することができ、量産に好適である。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の充填方法としては、ロール状モールドと透明基材の間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給した後に圧延して充填する方法、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布したロール状モールド上に透明基材をラミネートする方法、あらかじめ透明基材上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布してロール状モールドにラミネートする方法等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合反応性化合物と、活性エネルギー線重合開始剤とを含有する。上記の他に、用途に応じて非反応性のポリマーや活性エネルギー線ゾルゲル反応性成分が含まれていてもよく、増粘剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、溶剤、無機フィラー等の各種添加剤が含まれていてもよい。
重合反応性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
ラジカル重合性結合を有する単官能モノマーとしては、(メタ)アクリレート誘導体(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、スチレン誘導体(スチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリルアミド誘導体((メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合性結合を有する多官能モノマーとしては、二官能性モノマー(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等)、三官能モノマー(ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等)、四官能以上のモノマー(コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等)、二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。
分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するオリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。
活性エネルギー線重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる際に用いる活性エネルギー線の種類に応じて適宜選択することが好ましい。
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、カルボニル化合物(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等)、硫黄化合物(テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、チオキサントン(2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等)、アセトフェノン(ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等)、ベンゾインエーテル(ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等)、アシルホスフィンオキサイド(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における活性エネルギー線重合開始剤の含有量は、重合反応性化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。活性エネルギー線重合開始剤が0.1質量部未満では、重合が進行しにくい。活性エネルギー線重合開始剤が10質量部を超えると、硬化樹脂が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。
非反応性のポリマーとしては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性成分としては、例えば、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
アルコキシシラン化合物としては、RxSi(OR’)yで表されるものが挙げられる。RおよびR’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、xおよびyはx+y=4の関係を満たす整数である。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン等が挙げられる。
アルキルシリケート化合物としては、R1O[Si(OR3)(OR4)O]zR2で表されるものが挙げられる。R1〜R4はそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表し、zは3〜20の整数を表す。具体的にはメチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等が挙げられる。
<製造装置>
微細凹凸構造を表面に有する物品は、例えば、図5に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
複数の細孔を有する陽極酸化アルミナが外周面に形成されたロール状モールド50と、ロール状モールド50の表面に沿って移動する帯状の基材フィルム52(物品本体)との間に、タンク54から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物56を供給する。
ロール状モールド50と、空気圧シリンダ58によってニップ圧が調整されたニップロール60との間で、基材フィルム52および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物56をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物56を、基材フィルム52とロール状モールド50との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド50の外周面の細孔内に充填する。
ロール状モールド50と基材フィルム52との間に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物56が挟まれた状態で、ロール状モールド50の下方に設置された活性エネルギー線照射装置62を用い、基材フィルム52側から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物56に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物56を硬化させることによって、ロール状モールド50の外周面の複数の細孔が転写された硬化樹脂層64を形成する。
剥離ロール66によって、硬化樹脂層64が表面に形成された基材フィルム52をロール状モールド50から剥離することによって、物品68を得る。
活性エネルギー線照射装置62としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cm2が好ましい。
<物品>
図6に示す物品68は、基材フィルム52(透明基材)の表面に硬化樹脂層64が形成されたものである。
硬化樹脂層64は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
本発明におけるロール状モールドを用いた場合の物品68の表面の微細凹凸構造は、例えば酸化皮膜の表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる複数の凸部70を有する。
微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
本発明の製造方法によって製造された物品は、表面の微細凹凸構造によって、反射防止性能、撥水性能等の種々の性能を発揮する。
微細凹凸構造を表面に有する物品がシート状またはフィルム状の場合には、反射防止膜として、例えば、画像表示装置(テレビ、携帯電話のディスプレイ等)、展示パネル、メーターパネル等の対象物の表面に貼り付けたり、インサート成形したりして用いることができる。また、撥水性能を活かして、風呂場の窓や鏡、太陽電池部材、自動車のミラー、看板、メガネのレンズ等、雨、水、蒸気等にさらされるおそれのある対象物の部材としても用いることができる。
微細凹凸構造を表面に有する物品が立体形状の場合には、用途に応じた形状の透明基材を用いて反射防止物品を製造しておき、これを上記対象物の表面を構成する部材として用いることもできる。
また、対象物が画像表示装置である場合には、その表面に限らず、その前面板に対して、微細凹凸構造を表面に有する物品を貼り付けてもよいし、前面板そのものを、微細凹凸構造を表面に有する物品から構成することもできる。例えば、イメージを読み取るセンサーアレイに取り付けられたロッドレンズアレイの表面、FAX、複写機、スキャナ等のイメージセンサーのカバーガラス、複写機の原稿を置くコンタクトガラス等に、微細凹凸構造を表面に有する物品を用いても構わない。また、可視光通信等の光通信機器の光受光部分等に、微細凹凸構造を表面に有する物品を用いることによって、信号の受信感度を向上させることもできる。
また、微細凹凸構造を表面に有する物品は、上述した用途以外にも、光導波路、レリーフホログラム、光学レンズ、偏光分離素子等の光学用途や、細胞培養シートとしての用途に展開できる。
以上説明した本発明の、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法にあっては、本発明のロール状モールドの製造方法で得られたロール状モールドを用いているため、凸部の高さのばらつきが抑えられた微細凹凸構造を表面に有する物品を製造できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
(陽極酸化アルミナの検査)
陽極酸化アルミナの表面に照明手段から光を照射し、陽極酸化アルミナの表面からの反射光を撮像手段にて撮像し、撮像手段により撮像された画像から色の情報を取得し、該色の情報に基づいて、陽極酸化アルミナの細孔のばらつきがあるかを判定した。
(実施例1)
中空円柱状のアルミニウム基材(純度:99.99%、長さ:280mm、外径:200mm、内径:155mm)に羽布研磨処理を施した後、これを過塩素酸/エタノール混合溶液中(体積比=1/4)で電解研磨した。
ついで、アルミニウム基材を、0.3mol/L水溶液からなる107Lの電解液中で、浴温:15.7℃、直流:40V、電解液の供給量:41L/分、アルミニウム基材の回転数:6rpmの条件下で30分間陽極酸化を行い、酸化皮膜を形成した(工程(a))。
形成された酸化皮膜を、6質量%のリン酸と1.8質量%のクロム酸混合水溶液中で一旦溶解除去した(工程(b))後、再び工程(a)と同一条件下において、45秒間陽極酸化を行い、酸化皮膜を形成した(工程(c))。
その後、細孔径拡大処理装置10を用いて、5質量%リン酸水溶液(31.7℃)中に8分間浸漬して、酸化皮膜の細孔を拡径する細孔径拡大処理(工程(d))を施した。浸漬時間経過後、アルミニウム基材を6rpmにて回転させながら処理液より引き上げた。
さらに工程(c)と工程(d)を繰り返し、工程(c)を合計で5回、工程(d)を合計で5回行った(工程(e))。アルミニウム基材の外周面に略円錐形状のテーパ状の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成されたロール状モールドAを得た。得られたロール状モールドAを撮像手段にて撮影し陽極酸化アルミナの細孔のばらつきがあるかを判定した。結果を図7に示す。なお、図7、図8は円筒状のモールドの外周面を撮像し、これを展開した図である。
ついで、離型剤(ダイキン工業社製、オプツールDSX(商品名))の0.1質量%溶液にロール状モールドAを10分間ディッピングし、24時間風乾して離型処理を行った。
図5に示す製造装置を用いて、複数の凸部を表面に有する物品を製造した。
ロール状モールド50としては、ロール状モールドAを用いた。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物56としては、下表1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aを用いた。
基材フィルム52としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、商品名:A4300、厚さ:75μm)を用いた。
基材フィルム52側から、積算光量1100mJ/cm2の紫外線を、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物Aに照射し、活性エネルギー線化性樹脂組成物Aの硬化を行った。
得られた物品を目視で観察した結果、高さムラに起因するような欠陥は発見されなかった。
(比較例1)
工程(d)において処理液からの引き上げ時に、アルミニウム基材を回転させない以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム基材の外周面に略円錐形状のテーパ状の細孔を有する陽極酸化アルミナが形成されたロール状モールドBを得た。得られたロール状モールドBを撮像手段にて撮影し陽極酸化アルミナの細孔のばらつきがあるかを判定した。結果を図8に示す。
ついで、実施例1と同様にして、ロール状モールドBの離型処理を行った。
ついで、ロール状モールド50としてロール状モールドBを用いた以外は、実施例1と同様にして、複数の凸部を表面に有する物品を製造した。得られた物品を目視で観察した結果、高さムラに起因する周期的な欠陥が発見された。
細孔径拡大処理後、アルミニウム基材を回転させながら引き上げを行って製造された実施例1のロール状モールドAは、図7中で色の濃淡の変化が少ないことから分かるように、細孔の深さのばらつきが少なかった。その結果、複数の凸部を表面に有する物品においても、凸部の高さのばらつき、すなわち欠陥が発見されなかった。
一方、細孔径拡大処理後、アルミニウム基材を回転させずに引き上げを行って製造された比較例1のロール状モールドBは、図8に色の濃い部分で示されるように、細孔の深さのばらつきが大きい帯状の領域が存在していた。その結果、複数の凸部を表面に有する物品においても、凸部の高さのばらつき、すなわち欠陥が発見された。