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JP2014169397A - ポリカーボネート樹脂製造方法 - Google Patents

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JP2014169397A JP2013042115A JP2013042115A JP2014169397A JP 2014169397 A JP2014169397 A JP 2014169397A JP 2013042115 A JP2013042115 A JP 2013042115A JP 2013042115 A JP2013042115 A JP 2013042115A JP 2014169397 A JP2014169397 A JP 2014169397A
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正志 横木
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Abstract

【課題】得られたポリカーボネート樹脂の共重合組成が一定で色調が良好であることに加え、ポリカーボネート樹脂の製造過程において、フルオレン基を有するジヒドロキシ化合物のハンドリング適性が大幅に向上するポリカーボネート樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】フルオレン基を有するジヒドロキシ化合物を少なくとも含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融重縮合してポリカーボネート樹脂を製造する方法において、前記ジヒドロキシ化合物が水分量を6000質量ppm以上12000質量ppm以下含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂製造方法に関する。
ポリカーボネート樹脂は一般的に石油資源から誘導される原料を用いて製造される。しかしながら、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネート樹脂の提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動などをもたらすことからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたポリカーボネート樹脂の開発が求められている。
このようなことから、例えば、植物由来モノマーとして、イソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換反応により、ポリカーボネート樹脂を得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、イソソルビドを原料として含むポリカーボネート樹脂は、透明性が高く、光弾性係数が低くかつ耐熱性を有するため、液晶表示装置の位相差板、基板などの光学用途に使用することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(以下BHEPFと称する)とイソソルビドを原料とする、光弾性係数が低く、耐熱性、成形性に優れ、光学用途に適したポリカーボネート樹脂が提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
又、BHEPF中に含有するフェノキシエタノールの量に着目し、該フェノキシエタノールの量が500ppmを越えると、末端停止剤として働き、所望のポリマーが得られにくくなることが開示されている(例えば、特許文献5参照)。尚、前記BHEPFの製造方法及び精製方法は公知である(例えば、特許文献6、7参照)。
英国特許第1,079,686号明細書 特開2006−28441号公報 特開2004−67990号公報 特開2005−29744号公報 特開2012−77266号公報 特開平7−165657号公報 特開2008−222708号公報
近年、液晶用ディスプレイ機器やモバイル機器等に用いられる光学フィルムを含む透明フィルムの分野では、コスト低減のため、従来の溶媒を用いた溶液キャスト製膜法から、溶媒を用いずに樹脂を熱溶融して成形する溶融製膜法でフィルム化されることが望まれている。
一方、このような分野で用いられるポリカーボネート透明フィルムは、屈折率や耐熱性、靭性などの要求特性を確保するために、一般的に複数のジオール成分を共重合させたポリカーボネート樹脂が用いられ、特性を一定に保つ必要があるため、共重合組成が一定である必要がある。しかしながら、一般的にフルオレン環を有するジオールは微粉であり、飛散しやすく、また、含有する液体成分が多量に残存すると流動性が悪化し、配管やサイ
ロなどに堆積しやすく、結果的にポリカーボネート樹脂の組成が一定になりにくい。また、光学フィルムは一般に色調が悪化すると、ディスプレイ画面の視認性が劣るため、色調が良好なものが望まれる。
本発明の目的は、上記従来の課題を解消し、得られたポリカーボネート樹脂の共重合組成が一定で色調が良好であることに加え、ポリカーボネート樹脂の製造過程において、前記BHEPFのハンドリング適性が大幅に向上するポリカーボネート樹脂の製造方法を提供する。
本発明者らは上記課題を解決するべく検討を重ねた結果、フルオレン環をもつジヒドロキシ化合物、具体的には後述する式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂の製造方法において、水分を6000質量ppm以上12000質量ppm以下含むフルオレン環をもつジヒドロキシ化合物を用いることにより、共重合組成が一定で色調が良好であることに加え、ポリカーボネート樹脂の製造過程において、前記BHEPFのハンドリング適性が大幅に向上することを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[5]に存する。
[1] 下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を少なくとも含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融重縮合してポリカーボネート樹脂を製造する方法において、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物が水分量を6000質量ppm以上12000質量ppm以下含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 2014169397
(上記式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を示し、X及びXは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキレン基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に、0〜5の整数を示す。)
[2] 前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物が9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンまたは9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンであることを特徴とする[1]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[3] 前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を予め窒素置換した後、溶融重縮合反応に供することを特徴とする[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[4] 容量0.01m以上20m以下のサイロにおいて前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を窒素置換することを特徴とする[3]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[5] 前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を25kg以上10000kg以下
前記サイロに投入し、窒素置換することを特徴とする請求項[3]又は[4]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明の方法によれば、ポリカーボネート樹脂の共重合組成が一定で、色調が良好なポリカーボネート樹脂を得ることができるのに加え、ポリカーボネート樹脂の製造過程において、前記式(1)の化合物のハンドリング適性が大幅に向上する。すなわち、本発明により、高品質のポリカーボネート樹脂の効率的製造方法を提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を少なくとも含むポリカーボネート樹脂の製造方法であって、原料として用いるジヒドロキシ化合物のうち少なくとも1種が、水分量を6000質量ppm以上12000質量ppm以下含む下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物であることを特徴とする。
Figure 2014169397
(上記式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を示し、X及びXは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキレン基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に、0〜5の整数を示す。)
ポリカーボネート樹脂は、上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に加え、必要に応じて、下記式(2)〜(6)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことができる。
Figure 2014169397
HO−R−OH (3)
(上記式(3)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数4〜20のシクロアルキレン基を示す。)
HO−CH−R−CH−OH (4)
(上記式(4)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数4〜20のシクロアルキレン基を
示す。)
H−(O−R−OH (5)
(上記式(5)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基を示し、pは2〜100の整数である。)
HO−R−OH (6)
(上記式(6)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数2〜20のアルキレン基、又は下記式(7)で表される基を示す。)
Figure 2014169397
なお、以下において、各種の基の炭素数は、当該基が置換基を有する場合、その置換基の炭素数をも含めた合計の炭素数を意味する。
[式(1)で表されるジヒドロキシ化合物]
本発明に係るポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む。
Figure 2014169397
上記式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を示す。
中でも、前記R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜15のアリール基が好ましく、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキル基であるのがより好ましい。
ここで、R〜Rにおける前記置換基は、エステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲンから選ばれるいずれかの基又は原子であることが好ましい。該置換基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
又、R〜Rのうち、RおよびRが無置換のアルキル基であり、RおよびRが水素原子であるか、R〜Rが全て水素原子であることが特に好ましい。 R〜Rが水素原子以外の置換基である場合、ベンゼン環のフルオレン環への結合位置に対して3位又は5位に結合していることが好ましく、該無置換のアルキル基としては、メチル基またはエチル基が好ましい。
一方、上記式(1)中、X及びXは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキレン基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基を示し、m及びnは、それ
ぞれ独立に、0〜5の整数である。
中でも、前記X及びXは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜6のアルキレン基であるのが好ましい。
ここで、上記式(1)中のX及びXにおける前記置換基は、エステル基、エーテル基、カルボン酸、アミド基、ハロゲン原子から選ばれるいずれかの基又は原子であることが好ましい。該置換基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
前記X及びXは、無置換の炭素数1〜4のアルキレン基がさらに好ましく、無置換のメチレン基、無置換のエチレン基、無置換のプロピレン基が特に好ましい。
尚、前記XとXとは同じであることが好ましい。
前記m及びnはそれぞれ独立に0〜2の整数であるのが好ましく、0又は1が特に好ましい。尚、mとnとは同じであることが好ましい。
特に、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、フルオレン環の対称軸を対称軸として左右対称構造であることが好ましい。
前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、具体的には、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられる。
これらの中で、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレンが好ましいかものとして挙げられるが、何らこれらのジヒドロキシ化合物に限定されるものではない。前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、特に好ましくは、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCF)または9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BHEPF)である。
前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物には、フルオレン骨格を有するため、ポリカーボネート樹脂を製造する際の原料として取り扱う場合、通常、固体の状態にあるものが含まれ、取り扱い性を向上させるために、粉砕等により小径化すると飛散しやすくなる
傾向がある。
本発明において、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物中に含まれる、水分量は通常6000質量ppm以上であり、7000質量ppm以上が好ましく、8000質量ppm以上がさらに好ましい。水分量が少なすぎると仕込みの際に飛散しやすくなったり、窒素置換のために真空にした際に留出しやすくなったりする傾向がある。一方、前記化合物の含有量は通常12000質量ppm以下であり、11900質量ppm以下が好ましく、11800質量ppm以下がさらに好ましい。水分量が多すぎると、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物粉体の流動性が悪化し、サイロ壁面や配管、特に荷姿がフレコンである場合はフレコン内袋中に、水分が残留しやすく、その結果、得られるポリカーボネート樹脂の共重合組成が目標通りになりにくくなる。
前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の含有する水分量は、使用前の乾燥や乾燥後アルミ包材などに包装する等公知の方法により制御することができる。
一方、前記の式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の含有する水分量は乾燥することにより制御可能であるが、乾燥温度が高すぎたり、乾燥時間が長すぎたりすると、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物が劣化し、得られるポリカーボネート樹脂の色調が悪化する傾向がある。
ここで、乾燥温度の下限としては、通常、100℃以上で行うことが乾燥効率の点から好ましく、105℃以上がさらに好ましく、110℃以上が特に好ましい。また、上限としては、通常、155℃以下で行うことが原料の分解を防ぐ点から好ましく、150℃以下がさらに好ましく、145℃以下が特に好ましい。
乾燥時の圧力としては、減圧下でおこなうことが乾燥効率の点から好ましく、上限としては、通常1000Pa以下が好ましく、500Pa以下がさらに好ましく、300Pa以下が特に好ましい。また、下限としては、通常10Pa以上である。
乾燥時間の下限としては、通常、1時間以上で行うことが乾燥効率の点から好ましく、5時間以上がさらに好ましく、8時間以上が特に好ましい。また、上限としては、通常、100時間以下で行うことが生産性の点から好ましく、80時間以下がさらに好ましく、60時間以下が特に好ましい。
また、水分量を増加させるためには、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に蒸気を1時間以上10時間未満晒したり、乾燥後10日以上50%湿度以上の環境下で吸湿させたり、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を原料ホッパーに投入後、一定量の水を加えるなどの方法がある。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法によれば、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物中に含まれる、水分量を特定の範囲に制御することにより、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を、スケールの大小に関わらず、飛散したり容器に付着したりすることなく取り扱うことが可能になる。
原料投入設備が自動化されている場合、スケールが大きくなればなるほど、上記の効果が顕著である。前記ジヒドロキシ化合物を投入するサイロの容量は0.01m(10L)以上が好ましく、0.1m(100L)以上がより好ましく、0.5mがさらに好ましく、1mが特に好ましい。一方、プラントの規模に応じた実用的な大きさである観点から、20m以下が好ましく、10m以下がより好ましく、5mが特に好ましい。 又、サイロに投入する前記ジヒドロキシ化合物の量は、25kg以上が好ましく、50kg以上がより好ましく、100kg以上がさらに好ましく、200kg以上が特に好ましい。一方、プラントの規模に応じた実用的な投入量である観点から、10000kg(10t)以下が好ましく、5000kg(5t)以下がより好ましく、1000kg(1t)以下が特に好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法によれば、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物中に含まれる、水分量を特定の範囲に制御することにより、例えば、0.5m以上のサイロに前記ジヒドロキシ化合物を150kg以上投入し、窒素置換を実施した後に該サイロから排出した場合においても、該ジヒドロキシ化合物が多量に飛散したり、サイロに付着したり、配管を閉塞させたりすることなく定量的に目的の重量を重合反応に供することができる。
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の一種のみを含んでいてもよく、二種以上を含んでいてもよい。
[式(2)で表されるジヒドロキシ化合物]
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、必要に応じて、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことができる。
Figure 2014169397
上記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にあるイソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのジヒドロキシ化合物のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
[式(3)〜(6)で表されるジヒドロキシ化合物]
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、必要に応じて、下記式(3)〜(6)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことができる。
HO−R−OH (3)
(上記式(3)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数4〜20のシクロアルキレン基を示す。)
HO−CH−R−CH−OH (4)
(上記式(4)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数4〜20のシクロアルキレン基を示す。)
H−(O−R−OH (5)
(上記式(5)中、R置換若しくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基を示し、pは2〜100の整数である。)
HO−R−OH (6)
(上記式(6)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数2〜20のアルキレン基、又は下記式(7)で表される基を示す。)
Figure 2014169397
<式(3)で表されるジヒドロキシ化合物>
HO−R−OH (3)
(上記式(3)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数4〜20のシクロアルキレン基を示す。)
前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物としては、Rに置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を有する炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜18の脂環式ジヒドロキシ化合物である。ここで、Rが置換基を有する場合、当該置換基としては、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
前記式(3)のジヒドロキシ化合物は、Rのシクロアルキレン基由来の環構造を有することにより、得られるポリカーボネート樹脂を成形したときの成形品の靭性を高めることが可能となり、なかでもフィルムに成形したときの靭性を高めることができる。
前記Rのシクロアルキレン基としては、環構造を有する炭化水素基であれば特に制限は無く、橋頭炭素原子を有するような橋かけ構造であっても構わない。ジヒドロキシ化合物の製造が容易で不純物量を少なくすることができるという観点から、前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物は、5員環構造又は6員環構造を含む化合物、即ち、Rが置換若しくは無置換のシクロペンチレン基又は置換若しくは無置換のシクロへキシレン基であるジヒドロキシ化合物が好ましい。このようなジヒドロキシ化合物であれば、5員環構造又は6員環構造を含むことにより、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高くすることができる。該6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。
なかでも、前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rが下記式(8)で示される種々の異性体であることが好ましい。ここで、式(8)中、R11は水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基を示す。R11が置換基を有する炭素数1〜12のアルキル基である場合、当該置換基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
Figure 2014169397
(上記式(8)中、R11は水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物として、より具体的には、テトラメチルシクロブタンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シク
ロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオール等のシクロヘキサンジオール類;トリシクロデカンジオール類;ペンタシクロジオール類等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
<式(4)で表されるジヒドロキシ化合物>
HO−CH−R−CH−OH (4)
(上記式(4)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数4〜20のシクロアルキレン基を示す。)
前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物としては、Rに置換若しくは無置換のシクロアルキレン基を有する炭素数4〜20、好ましくは炭素数3〜18の脂環式ジヒドロキシ化合物である。ここで、Rが置換基を有する場合、当該置換基としては、置換若しくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
前記式(4)のジヒドロキシ化合物は、Rのシクロアルキレン基由来の環構造を有することにより、得られるポリカーボネート樹脂を成形したときの成形品の靭性を高めることが可能となり、なかでもフィルムに成形したときの靭性を高めることができる。
のシクロアルキレン基としては、環構造を有する炭化水素基であれば特に制限は無く、橋頭炭素原子を有するような橋かけ構造であっても構わない。ジヒドロキシ化合物の製造が容易で不純物量を少なくすることができるという観点から、前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物は、5員環構造又は6員環構造を含む化合物、即ち、Rが置換若しくは無置換のシクロペンチレン基又は置換若しくは無置換のシクロへキシレン基であるジヒドロキシ化合物が好ましい。このようなジヒドロキシ化合物であれば、5員環構造又は6員環構造を含むことにより、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高くすることができる。該6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。なかでも、前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rが前記式(8)で示される種々の異性体であることが好ましい。
前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物として、より具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のシクロヘキサンジオール類;3,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン等のスピロアルカン類が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。即ち、これらのジヒドロキシ化合物は、製造上の理由から異性体の混合物として得られる場合があるが、その際にはそのまま異性体混合物として使用することもできる。例えば、3,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、3,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン、及び4,9−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02.6]デカンの混合物を使用することができる。
前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物の具体例のうち、特に、シクロヘキサンジメタノール類が好ましく、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
<式(5)で表されるジヒドロキシ化合物>
H−(O−R−OH (5)
(上記式(5)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基を示し、pは2〜100の整数である。)
前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物としては、Rに置換若しくは無置換の炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜5のアルキレン基を有するジヒドロキシ化合物である。ここでpは2〜100、好ましくは6〜50、より好ましくは12〜40の整数である。
前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物としては、具体的にはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量150〜4000)などが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物としては、分子量300〜2000のポリエチレングリコールが好ましく、中でも分子数600〜1500のポリエチレングリコールが好ましい。
これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
<式(6)で表されるジヒドロキシ化合物>
HO−R−OH (6)
(上記式(6)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数2〜20のアルキレン基、又は下記式(7)で表される基を示す。)
Figure 2014169397
前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物は、Rに置換若しくは無置換の炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜10のアルキレン基、又は前記式(7)に示す基を有するジヒドロキシ化合物である。Rのアルキレン基が置換基を有する場合、当該置換基としては炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。
前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物のうち、Rが置換若しくは無置換の炭素数2〜20のアルキレン基であるジヒドロキシ化合物としては、具体的にはエチレングルコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられるが何らこれらに限定されるものではない。
また、Rが前記式(7)に示すアセタール環基であるジヒドロキシ化合物としては、スピログリコールなどが挙げられる。
これらのジヒドロキシ化合物のなかでも、入手のし易さ、取扱いの容易さ、重合時の反応性の高さ、得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点からは、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。また耐熱性の観点からは、アセタール環を有するスピログリコールが好ましい。これらは得られるポリカーボネート樹脂の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
尚、本発明において、ポリカーボネート樹脂は、前記式(3)〜(6)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも、前記式(4)及び/又は前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいることが好ましく、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいることがより好ましい。
[その他のジヒドロキシ化合物]
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、前記式(1)〜(6)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の他、さらに必要に応じて、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
その他のジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール類等が挙げられる。
ビスフェノール類としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
ただし、構造内に芳香族環を有するジヒドロキシ化合物は、前記式(1)で表されるものを除き光学特性に悪影響を及ぼす場合があるため、このようなジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が、ポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計に対して、50モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。特に本発明におけるポリカーボネート樹脂は、前記式(1)で表されるものを除き、構造内に芳香族環を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含まないことが好ましい。
[式(1)〜(6)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合]
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂に含まれるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計に対して、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が、40質量%以上が好ましく、42質量%以上がより好ましく、44質量%以上がさらに好ましい。該構造単位の含有割合が過度に少ないと、ポリカーボネート樹脂を光学フィルムとして利
用する際の特性が好ましくならない場合がある。一方、前記含有割合は95質量%以下がよく、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。該構造単位の含有割合が過度に多いと、ポリカーボネート樹脂を光学フィルムとして利用する際、ガラス転移温度が高すぎて製膜が困難になったり、脆くなったりする場合があるので特性が好ましいものとならない場合がある。
また、本発明において、ポリカーボネート樹脂が、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む場合、ポリカーボネート樹脂に含まれるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計に対して、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合が、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。該構造単位の含有割合が過度に少ないと、光学フィルムとして利用する際ガラス転移温度が低く、フィルムにした場合に変形などが生じやすく、また、表面硬度が低下して傷つきやすくなる場合がある。一方、好ましくは60質量%以下、より好ましくは58質量%以下、さらに好ましくは56質量%以下である。該構造単位の含有割合が過度に多いと、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度が過度
に高くなりフィルム成形が困難になる場合がある。
また、ポリカーボネート樹脂が、前記式(3)〜(6)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂に含まれるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.0015質量%以上がより好ましく、0.002質量%以上がさらに好ましい。一方、前記含有量は1質量%未満が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下がさらに好ましい。前記式(3)〜(6)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を、ポリカーボネート樹脂中に上記下限値以上含むことにより、該ポリカーボネート樹脂を溶融し成形する際に、熱による異物や気泡の発生を防止したり、ポリカーボネート樹脂の着色を防止したりすることができる。ただし、該構造単位が過度に多いと、ガラス転移温度が低く、フィルムにした場合に変形などが生じやすくなるため、この割合は上記上限値未満とすることで耐熱性が良好なフィルムを得ることができる。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂は、前記式(3)〜(6)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位中、いずれか一種の式で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のみを含有していてもよく、また、二種以上の式で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有していてもよいが、いずれのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むかは、ポリカーボネート樹脂の用途に応じた要求特性を満たすように適宜決定される。特に、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、好ましくは分子量300〜2000のポリエチレングリコール、特に好ましくは分子量600〜1500のポリエチレングリコールを、ポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計に対して0.001質量%以上、特には0.0015質量%以上、又、1質量%以下、特には0.01質量%以下含むことが好ましい。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂は、前記式(3)〜(6)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位中、いずれか一種の式で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のみを含有していてもよく、また、二種以上の式で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含有していてもよいが、いずれのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むかは、ポリカーボネート樹脂の用途に応じた要求特性を満たすように適宜決定される。特に、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、好ましくは分子量300〜2000のポリエチレングリコール、特に好ましくは分子量600〜1500のポリエチレングリコールを、ポリカーボネート樹脂中のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の合計に対して0.5質量%以上、特には1質量%以上、又、4質量%以下、特には3質量%以下含むことが好ましい。
[ポリカーボネート樹脂の製造方法]
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、それ自体既知の通常用いられる重合方法で製造することができ、その重合方法は、ホスゲンを用いた溶液重合法、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法のいずれの方法でもよい。さらに具体的には、例えば、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と、必要に応じて、前記式(2)〜(6)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物と、さらに必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物とを、重合触媒の存在下に、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が好ましい。
<炭酸ジエステル>
この溶融重合法で用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記式(10)で表されるものが挙げられる。
Figure 2014169397
(上記式(10)中、A及びAは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6〜18の芳香族基である。)
前記式(10)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーネート、ビス(ビフェニル)カーボネートなどに代表されるジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどに代表されるジアルキルカーボネート類が挙げられる。なかでも、好ましくはジアリールカーボネート類が用いられ、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
これらの炭酸ジエステルは、一種を単独で用いても良く、二種以上を併用してもよい。
反応に用いる炭酸ジエステルのモル比率は、全ジヒドロキシ化合物に対して、0.90以上が好ましく、0.96以上がさらに好ましい。このモル比率が0.90より小さくなると、製造されたポリカーボネート樹脂の末端水酸基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化したり、所望する高分子量体が得られなかったりすることがある。一方、前記モル比率は1.10以下が好ましく、1.04以下がさらに好ましい。このモル比率が1.10より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量のポリカーボネート樹脂の製造が困難となったりする他、製造されたポリカーボネート樹脂中の残存炭酸ジエステル量が増加し、この残存炭酸ジエステルが、成形時、又は成形品の臭気の原因となることがある。
また、本前記ポリカーボネートのカーボネート結合の一部がジカルボン酸構造に置換されたポリエステルカーボネートを用いることもできる。前記ジカルボン酸構造を形成するジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、4,4'−ジフ
ェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができ、得られたポリマーの耐熱性や熱安定性の観点から、芳香族ジカルボン酸が好ましく、特には取扱いや入手のし易さから、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、中でもテレフタル酸が好適である。これらのジカルボン酸成分はジカルボン酸そのものとして本発明の高分子の原料とすることができるが、製造法に応じて、メチルエステル体、フェニルエステル体等のジカルボン酸エステルや、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料とすることもできる。
<重合触媒>
本発明において、上述のように前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記式(10)で表される炭酸ジエステルとをエステル交換反応させてポリカーボネート樹脂を製造する。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常、エステル交換反応触媒存在下でエステル交換反応により重縮合を行う。溶融重合における重合触媒(エステル交換触媒)としては、顕著な物性低下を招くものでなければ特に制限されないが、通常使用可能なものとして、長周期型周期表(Nomenclature of Ino
rganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における「第1族元素」及び/又は「第2族元素」(以下、単に「1族金属化合物」、「2族金属化合物」と表記する。)の金属化合物が使用される。1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ酸塩化合物、ホスフィン系化合物、塩基性ホスホニウム化合物、アミン系化合物、塩基性アンモニウム化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
重合触媒として用いられる1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、リン酸水素二セシウム、フェニルリン酸二ナトリウム、フェニルリン酸二カリウム、フェニルリン酸二リチウム、フェニルリン酸二セシウム;ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート;ビスフェノールAの二ナトリウム塩、二カリウム塩、二リチウム塩、二セシウム塩等が挙げられ、中でもリチウム化合物が好ましい。
また、2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
これらの1属金属化合物及び/又は2族金属化合物は一種を単独で用いても良く、二種以上を併用してもよい。
また1属金属化合物及び/又は2族金属化合物と併用される塩基性ホウ酸塩化合物としては、例えば、テトラメチルホウ酸、テトラエチルホウ酸、テトラプロピルホウ酸、テトラブチルホウ酸、トリメチルエチルホウ酸、トリメチルベンジルホウ酸、トリメチルフェニルホウ酸、トリエチルメチルホウ酸、トリエチルベンジルホウ酸、トリエチルフェニルホウ酸、トリブチルベンジルホウ酸、トリブチルフェニルホウ酸、テトラフェニルホウ酸、ベンジルトリフェニルホウ酸、メチルトリフェニルホウ酸、ブチルトリフェニルホウ酸等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
ホスフィン系化合物又は塩基性ホスホニウム化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
これらの塩基性化合物も一種を単独で用いても良く、二種以上を併用してもよい。
上記重合触媒の使用量は、1属金属化合物及び/又は2族金属化合物を用いる場合、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物1モルに対して、金属換算量として、0.1μモル以上用いるのが好ましく、0.5μモル以上がより好ましく、1μモル以上が更に好ましい。重合触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性が得られにくい傾向となる。一方、重合触媒を100μモル以下用いるのが好ましく、50μモル以下がより好ましく、25μ以下が更に好ましい。重合触媒の使用量が多すぎると、得られるポリカーボネート樹脂の色相が悪化し、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、目標とする品質のポリカーボネート樹脂の製造が困難になることがある。
また、ポリエステルカーボネートを得る場合には、上記塩基性化合物と併用して、または併用せずに、チタン化合物、スズ化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、ジルコニウム化合物、鉛化合物、オスミウム化合物等のエステル交換触媒を用いることもできる。これらのエステル交換触媒の使用量は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物1molに対して、金属換算量として、通常、10μmol〜1000μmolの範囲内で用い、好ましくは20μmol〜800μmolの範囲内であり、特に好ましくは50μmol〜500μmolである。
<重合反応工程>
ポリカーボネート樹脂の製造に当たり、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物は、固体として供給してもよいし、加熱して溶融状態として供給してもよい。
さらに、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物や、前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物、前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物及び前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物それぞれについては、固体として供給してもよいし、加熱して溶融状態として供給してもよいし、水に可溶なものであれば、水溶液として供給してもよい。その他のジヒドロキシ化合物についても同様である。
本発明において、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と、必要に応じて、前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物、前記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物、前記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物、前記式(5)で表されるジヒドロキシ化合物及び前記式(6)で表されるジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物と、さらに必要に応じて用いられるその他のジヒドロキシ化合物とを、重合触媒の存在下で、炭酸ジエステルと反応させる方法は、通常、二段階以上の多段工程で実施される。
反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの
方法でもよい。
具体的には、第1段目の反応は140℃〜220℃、好ましくは150℃〜200℃の温度で0.1時間〜10時間、好ましくは0.5時間〜3時間実施される。第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら反応温度を上げていき、同時に発生するフェノール等のモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力が200Pa以下で、210℃〜280℃の温度範囲のもとで重縮合反応を行う。
<リン酸化合物や亜リン酸化合物の添加>
ポリカーボネート樹脂を溶融重合法で製造する際に、着色を防止する目的で、リン酸化合物や亜リン酸化合物又はこれらの金属塩を重合時に添加することができる。
リン酸化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸トリアルキルの一種又は二種以上が好適に用いられる。これらは、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上添加することが好ましく、0.0003モル%以上添加することがさらに好ましい。リン酸化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さくなることがある。一方、これらは、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.005モル%以下添加することが好ましく、0.003モル%以下添加することがさらに好ましい。上記上限より多いと、ポリカーボネート樹脂のヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることがある。
亜リン酸化合物としては、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトの中から一種又は二種以上が好適に使用できる。これらの亜リン酸化合物は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上添加することが好ましく、0.0003モル%以上添加することがさらに好ましい。亜リン酸化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さくなることがある。一方、これらは、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.005モル%以下添加することが好ましく、0.003モル%以下添加することがさらに好ましい。上記上限より多いと、ポリカーボネート樹脂のヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
リン酸化合物や亜リン酸化合物又はこれらの金属塩は併用して添加することができるが、その場合の添加量は、リン酸化合物や亜リン酸化合物又はこれらの金属塩の総量として、全ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001モル%以上が好ましく、0.0003モル%以上がさらに好ましい。この添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さくなることがある。一方、前記添加量は0.005モル%以下が好ましく、0.003モル%以下がさらに好ましい。この添加量が上記上限より多いと、ポリカーボネート樹脂のヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
なお、リン酸化合物、亜リン酸化合物の金属塩としては、これらのアルカリ金属塩や亜鉛塩が好ましく亜鉛塩が特に好ましい。また、このリン酸亜鉛塩の中でも、長鎖アルキルリン酸亜鉛塩がより好ましい。
[ポリカーボネート樹脂の物性]
<ガラス転移温度>
本発明において、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、90℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上が特に好ましい。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性がある。一方、前記ガラス転移温度は、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、1
60℃以下が特に好ましい。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の成形安定性が悪くなる場合があり、またフィルムの透明性を損なう場合がある。
さらに、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度の変動幅は、3℃以内がよく、2℃以内が好ましく、1℃以内がさらに好ましい。尚、該変動幅は、得られたポリカーボネート樹脂を任意にサンプリングした時、該ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度の変動に関していう。変動幅が大きいと成形の際に、押出機や射出成形機の負荷が変動したり、フィルム成形の際に冷却ロールへの剥離状況が変化したりして、均一な成形体が得られないことがある。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定できる。
<共重合組成>
本発明において、ポリカーボネート樹脂の共重合組成変動幅を下記のとおり定義する。
共重合組成変動幅:|F(1)g−F(1)p
(1)g:仕込んだ全ジヒドロキシ化合物中に対する、式(1)の化合物のモル分率
(1)p:得られたポリカーボネート樹脂から任意に採取した複数のサンプルにおける、全ジヒドロキシ化合物由来の構造単位に対する、式(1)の化合物由来の構造単位のモル分率
上記共重合組成の変動幅は、0.003が好ましく、0.002がより好ましく、0.001がさらに好ましい。上記共重合組成の変動が大きいと、得られたポリカーボネート樹脂から任意に採取した複数のサンプルにおいて、光学特性や溶融粘度が変動する結果、均一な成形品が得られない場合がある。
本願においては、式(1)で表されるジヒドロキシ化合物中に水分量を6000質量ppm未満含む場合は、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物が飛散する等によって、一方、水分を12000質量ppmより多く含む場合は、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物がサイロや配管の壁に付着する等によって、上記共重合組成に変動が生じると推定される。
<還元粘度>
本発明において、ポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができる。ポリカーボネート樹脂の還元粘度は、後掲の実施例の項に記載されるように、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート樹脂濃度を0.6g/dLに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定して求めることができる。
ポリカーボネート樹脂の還元粘度に特に制限は無いが、0.30dL/g以上が好ましく、0.33dL/g以上がより好ましい。ポリカーボネート樹脂の還元粘度が上記下限値より小さいと成形品の機械的強度が小さくなるという問題が生じる可能性がある。一方、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下がさらに好ましい。還元粘度が上記上限値より大きいと、成形する際の流動性が低下し、生産性が低下するという問題が生じたり、ポリカーボネート樹脂中の異物などを濾過で除去することが困難になり異物低減が難しくなったり、成形の際に気泡が混在したりして成形品の品質が低下する可能性がある。
<溶融粘度>
本発明において、ポリカーボネート樹脂は、温度240℃、せん断速度91.2sec−1での溶融粘度が、500Pa・sec以上が好ましく、800Pa・sec以上がより好ましく、900Pa・sec以上が特に好ましい。ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が上記下限値より小さいと成形品の機械的強度が小さくなるという問題が生じる可能性が
ある。一方、2500Pa・sec以下が好ましく、2300Pa・sec以下がより好ましく、2000Pa・sec以下が特に好ましい。溶融粘度が上記上限値より大きいと、成形する際の流動性が低下し、生産性が低下するという問題が生じたり、成形の際に成形品に気泡が混入して成形品の外観が低下したり、ポリカーボネート樹脂中の異物を濾過などにより除去することが困難になったりするという問題が生じる可能性がある。
ポリカーボネート樹脂の溶融粘度は、120℃で、6hr乾燥した試料を、径1mmφ×長さ10mmLのキャピラリーを有するダイを具備したキャピラリーレオメーター(東洋精機(株)製)を用いて、240℃に加熱して剪断速度γ=9.12〜1824(sec−1)間で測定し、91.2sec−1での溶融粘度を読み取った値として求めることができる。
<ペレットYI>
発明において、ポリカーボネート樹脂の着色を示す指標であるペレットYIは、50未満がよく、45未満が好ましく、40未満がさらに好ましい。ペレットYIが大きすぎると成形して得られるフィルムの黄色味が悪くなり、ディスプレイ用途に使用する際に、視認性が悪化する傾向がある。
[ポリカーボネート樹脂ペレット]
重縮合により得られたポリカーボネート樹脂は、通常、重縮合槽の底部に設けられた抜き出し口からストランド状に抜き出して、水冷しながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状、チップ状等の粒状体とされる。ここで、本発明において「ペレット」とは、粒状体に切断された樹脂を意味するものである。また、後述するとおり、ポリカーボネート樹脂に各種の添加剤を添加して溶融混練した後に、ペレット状、チップ状等の粒状体とされるものも本発明におけるペレットに含まれる。なお、本発明において、粒状体とされたポリカーボネート樹脂のペレットを、「ポリカーボネート樹脂ペレット」、又は、単に「ポリカーボネート樹脂」と称することがある。
[添加剤]
本発明において、ポリカーボネート樹脂には、成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。
係る熱安定剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられる。さらに具体的には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
中でも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,
4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。
これらの熱安定剤は、一種を単独で用いても良く、二種以上を併用してもよい。
前記熱安定剤の添加方法は、溶融重合時にリン酸化合物や亜リン酸化合物、又はそれらの塩を添加せず、ポリカーボネート樹脂を得た後に、前記熱安定剤を添加してもよいが、溶融重合時にリン酸化合物や亜リン酸化合物、又はそれらの塩を添加し、加えて更に前記熱安定剤を追加添加することもできる。即ち、適当量の亜リン酸化合物やリン酸化合物を配合して、ポリカーボネート樹脂を得た後に、さらに亜リン酸化合物を配合すると、ポリカーボネート樹脂のヘイズの上昇、着色、及び耐熱性の低下を抑制しつつ、さらに多くの熱安定剤を配合でき、色相の悪化の防止が可能となる。また、前記熱安定剤は、例えば、溶融押出し法等の押出機を用いてフィルム等の成形を行う場合、押出機に前記熱安定剤やその他の添加剤を添加して成形してもよく、予め押出機を用いて、樹脂中に前記熱安定剤やその他の添加剤を添加して、ペレット等の形状にしてその後の成形に用いてもよい。
これらの熱安定剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂を100質量部とした場合、0.0001質量部以上が好ましく、0.0005質量部以上がより好ましく、0.001質量部以上がさらに好ましい。一方、1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましく、0.2質量部以下がさらに好ましい。
本発明において、ポリカーボネート樹脂には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することもできる。
前記酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の一種又は二種以上が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、一種を単独で用いても良く、二種以上を併用してもよい。
これら酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネートを100質量部とした場合、0.0001質量部以上0.5質量部以下が好ましい。
さらに、ポリカーボネート樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる核剤、難燃剤、無機充填剤、衝撃改良剤、発泡剤、染顔料、他の樹脂等を添加することができる。これら添加剤は、それ自体既知の通常用いられるものである。
本発明において、上記添加剤を配合したポリカーボネート樹脂のペレットは、例えば、
ポリカーボネート樹脂と上記添加剤を同時に若しくは任意の順序で、タンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー等により混合したものを溶融混練した後に、又は、混練ロール、押出機等の混合機により混合した後に、上記のとおり、ストランド状に抜き出して粒状体に切断することにより製造することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、下記の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
以下の説明において、化合物の略号は次の通りである。
BHEPF;9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
ISB;イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB)
PEG#1000;数平均分子量1000のポリエチレングリコール(三洋化成(株)製)
DPC;ジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)
[物性等の測定]
以下の例において、物性等の測定は特に明記しない限り次の方法により行った。なお、物性等の測定は以下の方法に限定されるものではなく、当業者が適宜選択することができる。
<ガラス転移温度(Tg)>
示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、DSC220)を用いて、ポリカーボネート樹脂約10mgを20℃/minの昇温速度で加熱して測定し、JIS−K7121(1987)に準拠して、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度を求め、それをガラス転移温度とした。
<還元粘度>
ポリカーボネート樹脂の還元粘度は森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、溶媒として、塩化メチレンを用い、温度20.0℃±0.1℃で測定した。濃度は0.6g/dLになるように、精密に調整した。
溶媒の通過時間t、溶液の通過時間tから、下記式:
ηrel=t/t
より相対粘度ηrelを求め、相対粘度ηrelから、下記式: ηsp=(η−η)/η=ηrel−1より比粘度ηspを求めた。
比粘度ηspを濃度c(g/dL)で割って、下記式:
ηred=ηsp/c
より還元粘度(換算粘度)ηredを求めた。
この数値が高いほど分子量が大きい。
<ポリカーボネートのペレットYI値>
ポリカーボネートの色相は、ASTM D1925に準拠して、ペレットの反射光におけるYI値(イエローインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い、測定条件は測定径30mm、SCE(正反射光除去)を選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校
正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った
<水分の定量>
BHEPFをカールフィッシャー式水分計(三菱化学(株)製CA−200)を用いて200℃で測定した。
<共重合組成>
本発明で例示するBHEPFとISBとPEG#1000の共重合ポリカーボネートの場合のH NMRの解析は以下のとおり行う。次のピークの積分値を算出する。(α):8.0−7.6ppm:全BHEPF構造単位由来(プロトン数:2、分子量:464.51)
(β):5.6−4.8ppm:全ISB構造単位由来(プロトン数:3、分子量:172.14)
(γ):3.7−3.5ppm:全PEG#1000構造単位由来(プロトン数:82.3、分子
量:1025.99)
(δ):2.8−1.0ppm:ヒドロキシ末端基由来(プロトン数:1、分子量:17.01)
[原料BHEPF]
<BHEPF(a)>
BHEPFを何ら処理することなくポリカーボネートの製造に供した。該BHEPF中の水分量は11800ppmであった。
<BHEPF(b)>
BHEPFを何ら処理することなくポリカーボネートの製造に供した。該BHEPF中の水分量は4800ppmであった。
<BHEPF(c)>
前記BHEPF(a)300kgをコニカル式乾燥機にて110℃、200Pa、10時間乾燥した。該BHEPF中の水分量は6500ppmであった。
<BHEPF(d)>
前記BHEPF(a)300kgをコニカル式乾燥機にて140℃、200Pa、50時間乾燥した。該BHEPF中の水分量は3200ppmであった。
<BHEPF(e)>
前記BHEPF(b)300kgと水1.0kgを回転式タンブラーにて、混合した。該BHEPF中の水分量は10500ppmであった。
<BHEPF(f)>
前記BHEPF(a)300kgと水1.5kgを回転式タンブラーにて、混合した。該BHEPF中の水分量は15400ppmであった。
ポリカーボネートの製造に供したBHEPF(a)〜(f)中の水分量を表−1に示す。
Figure 2014169397
[実施例1]
BHEPF(a)300kgをフレコンバックより1mのサイロに投入し、サイロ内
を真空にした後に窒素にて置換をおこなった。その後、撹拌翼および130℃に制御された還流冷却器を具備し、窒素置換され、DPC、ISB、PEG#1000が溶解している重合反応装置(1)に、ホッパー内のBHEPFと酢酸マグネシウム4水和物を投入した。ポリカーボネート原料のモル比率がBHEPF/ISB/PEG#1000/DPC/酢酸マグネシウム4水和物=0.445/0.552/0.003/1.015/1.20×10−5となるように仕込んだ。
重合反応装置(1)内を熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに30分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応装置(1)に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。
重合反応装置(1)を一旦大気圧にまで復圧させた後、撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置(2)に、重合反応装置(1)内のオリゴマー化された内容物を移した。次いで、重合反応装置(2)内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて圧力200Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、内容物をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレットにした。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.353dL/g、ガラス転移温度は145℃、ペレットYIは32、ポリカーボネート樹脂の共重合組成BHEPF/ISB/PEG#1000=0.446/0.551/0.003で、外観良好であった。
[実施例2]
実施例1において、BHEPF(c)をBHEPF(a)に変えた以外は実施例1と同
様に行った。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.351dL/g、ガラス転移温度は145℃、ペレットYIは43、ポリカーボネート樹脂の共重合組成BHEPF/ISB/PEG#1000=0.444/0.553/0.003で、実施例1とほぼ同等のポリカーボネート樹脂が得られた。
[実施例3]
実施例1において、BHEPF(a)をBHEPF(e)に変えた以外は実施例1と同
様に行った。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.348dL/g、ガラス転移温度は145℃、ペレットYIは37、ポリカーボネート樹脂の共重合組成BHEPF/ISB/PEG#1000=0.445/0.552/0.003で、実施例1とほぼ同等のポリカーボネート樹脂が得られた。
[比較例1]
実施例1において、BHEPF(a)をBHEPF(b)に変えた以外は実施例1と同
様に行った。BHEPF(b)をフレコンバックより投入する際に、BHEPFの微粉が少量飛散した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.339dL/g、ガラス転移温度は144℃、ペレットYIは35、ポリカーボネート樹脂の共重合組成BHEPF/ISB/PEG#1000=0.442/0.555/0.003であり、実施例1に比べて共重合組成が変動し、YIが上昇した。
[比較例2]
実施例1において、BHEPF(a)をBHEPF(d)に変えた以外は実施例1と同
様に行った。BHEPF(d)をフレコンバックより投入する際に、BHEPFの微粉が
少量飛散した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.341dL/g、ガラス転移温度は144℃、ペレットYIは51、ポリカーボネート樹脂の共重合組成BHEPF/ISB/PEG#1000=0.441/0.555/0.004であり、実施例1に比べて共重合組成が変動し、YIが大幅に上昇した。
[比較例3]
実施例1において、BHEPF(a)をBHEPF(d)に変えた以外は実施例1と同
様に行った。BHEPF(f)をフレコンバックより投入する際に、BHEPFの微粉が投入ホッパーに多く付着した。得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.341dL/g、ガラス転移温度は144℃、ペレットYIは51、ポリカーボネート樹脂の共重合組成BHEPF/ISB/PEG#1000=0.439/0.557/0.004であり、実施例1に比べて共重合組成が変動した。
実施例1〜3及び比較例1〜3の結果を表−2に示す。
Figure 2014169397
表−2に示すように、BHEPF中の水分量が6000質量ppm以上12000質量ppm以下である実施例1〜3の場合、得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度が高く、ポリマー組成は原料使用量から求められる理論組成からのずれが少なかった。加えてYIが低く着色の少ないポリカーボネート樹脂が得られた。
一方で、BHEPF中に水分を6000質量ppmより少なく含有する比較例1および比較例2の場合、BHEPFが飛散しやすくなり、重合反応装置(I)に投入する原料モル比率が変動するため、得られたポリカーボネート樹脂の共重合組成が大きく変動するとともに、YIが大幅に上昇し共重合反応速度が低下した結果、得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度も低下した。
また、BHEPF中の水分を12000質量ppmより多くさせた比較例3の場合、BHEPFが壁に付着しやすくなり、重合反応装置(I)に投入する原料モル比率が変動するため、得られたポリカーボネート樹脂の共重合組成が大きく変動するとともに、共重合反応速度が低下した結果、得られたポリカーボネート樹脂の還元粘度も低下した。

Claims (5)

  1. 下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を少なくとも含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融重縮合してポリカーボネート樹脂を製造する方法において、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物が水分量を6000質量ppm以上12000質量ppm以下含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂の製造方法。
    Figure 2014169397
    (上記式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を示し、X及びXは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキレン基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に、0〜5の整数を示す。)
  2. 前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物が9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンまたは9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンであることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  3. 前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を予め窒素置換した後、溶融重縮合反応に供することを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  4. 容量0.01m以上20m以下のサイロにおいて前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を窒素置換することを特徴とする請求項3に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
  5. 前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物を25kg以上10000kg以下前記サイロに投入し、窒素置換することを特徴とする請求項3又は4に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
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