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JP2014141539A - 油脂の乾式分別法 - Google Patents

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JP2014141539A JP2013008955A JP2013008955A JP2014141539A JP 2014141539 A JP2014141539 A JP 2014141539A JP 2013008955 A JP2013008955 A JP 2013008955A JP 2013008955 A JP2013008955 A JP 2013008955A JP 2014141539 A JP2014141539 A JP 2014141539A
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Abstract

【課題】
結晶量の多いパーム核油などの油脂の乾式分別において、晶析・圧搾濾過工程での結晶スラリーの増粘と固液分離効率の低下の問題を回避し、撹拌晶析により結晶画分を高収率で得ることができる、分別精度の高い乾式分別法を提供する。
【解決手段】
乾式分別における晶析・圧搾濾過工程を多段に分けて繰り返して、それぞれの結晶画分に主要結晶成分を濃縮して主要結晶成分に富む結晶画分を得る。多段分取することにより、晶析・圧搾濾過工程での結晶量を結晶スラリーがポンプ輸送出来る範囲内に制御出来るとともに固液分離効率を高めることが出来る。

【選択図】なし

Description

本発明は、油脂の撹拌晶析と圧搾濾過による乾式分別法に関するものである。
油脂の主な分別法として、一般的にアセトンやヘキサン等の溶剤を使用する溶剤分別法と溶剤を使用せずに加温融解した油脂単独を冷却し結晶析出させてから固液分離する乾式分別法がある。
溶剤分別は、結晶画分と液体画分の分画性能は極めて良好であるが、溶剤を使用しているため、その取扱には安全衛生上、十分な注意が必要であり、設備も大掛かりになるうえに、溶剤を除去するためにコスト高となる問題がある。
そのため、最近ではより簡便で安全性も高い乾式分別法が検討されるようになってきている。
乾式分別法は、一般的には溶剤を用いず加熱によって完全に融解された原料油脂を晶析槽内で撹拌しながら冷却し、結晶を析出させた後、圧搾及び又は濾過によって結晶画分と濾液(未固化の低融点画分)に分画する方法であるが、かかる撹拌晶析法では結晶画分の結晶量が多すぎると結晶スラリーが粘度上昇し圧搾及び/または濾過装置にポンプ輸送できなくなることより、該撹拌晶析法は比較的晶析後の結晶量の少ない油脂の分別に利用されているにすぎない。
上記の問題を解決するために、晶析後の結晶量の多い油脂の乾式分別法として、各種の静置晶析法が提案されている。例えば、マレー半島他の東南アジア諸国におけるパーム核油の分別法は、パーム核油を27℃程度まで予備冷却してから、多数のトレイに注油して18〜21℃で静置晶析した後、濾布でラッピングして圧濾により固液分離する方法である。本方法は、晶析後の結晶量の多い油脂の分別が可能であり、設備費も比較的安価という利点はあるが、手作業によるラッピング作業のため多くの労力を要すること、圧濾による固液分離精度に限界があり、高品質の結晶画分を高収率で得るのが困難という問題があった。
上記手作業の問題と固液分離精度の向上を目的とし、新たな静置晶析法が提案されている。特許文献1には、原料油脂を圧搾機能を備えるフィルターの濾室内に仕込み、結晶析出温度で所定の結晶量が析出するまで保持した後、圧搾して固体画分と液体画分を分別する方法が開示されている。本方法によると、手作業の問題は解決できるが、晶析と圧搾を同装置で行うため、処理量を大きくするためには、多くのフィルターを必要とし、設備費が高くなる。また、フィルターを本来の機能とは異なる用い方をしているため、フィルターの故障が起こりやすく生産性がやや低いという問題があった。
特許文献2では、原料油脂へ固液分離した低融点画分を所要量混合し、予備冷却後に多数の小さなトレーに原料油脂を分注し、冷風により静置冷却・晶析を行い、その後トレーから剥離、解砕することにより流動性のある結晶スラリーを得て、ポンプによりフィルターに移送し圧搾及び又は濾過して結晶画分とロ液に分画する方法が示されている。本方法によると、晶析後の結晶量が比較的低くなるため晶析後の圧搾及び/または濾過装置へのポンプ輸送が容易になる利点はあるが、晶析後の結晶量が不安定で固液分離後の結晶画分品質が不安定であることや晶析温度が比較的低いため冷却コストが高いという問題があった。
なお、結晶量の多い油脂の撹拌晶析法としては、特許文献3のような向流式乾式分別法が提案されている。該方法は、少なくとも2段階の乾式分別晶析工程を含む方法で、第2オレインフラクションを第1オレインフラクションに再循環して、結晶量を低減して撹拌晶析後の結晶量をポンプ輸送可能な許容範囲とするものである。本方法も、結晶スラリーのポンプ輸送の問題は解決できるが、工程が複雑で各晶析段階での温度制御が容易でないという問題があった。
特開昭63−39992号公報 特開平9−263785号公報 特開平3−41195号公報
本発明は、結晶量の多い油脂の乾式分別法において、油脂中の主要結晶成分に富む結晶画分を高収率で簡便に得る、油脂の撹拌晶析による分別法の提供を課題とする。特に、パーム核油の乾式分別法において、パーム核油中融点成分に富む結晶画分としてパーム核ステアリンを高収率でより簡便に得る、油脂の撹拌晶析による分別法の提供を課題とする。
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、撹拌晶析法における結晶スラリーの増粘の問題の解消法、結晶への濾液抱き込み量の低減法を見出し、撹拌晶析法でも簡便に高収率で結晶画分中の主要結晶成分に富む結晶画分を得る方法を見出した。
即ち、本発明の第1は、結晶画分の分別収率が30〜80重量%と結晶量の多い油脂の2分割乾式分別法において、撹拌晶析と圧搾濾過による乾式分別で結晶画分側に主要結晶成分を濃縮せしめて結晶画分を得て、濾液画分に残存する主要結晶画分は次段の撹拌晶析と圧搾濾過による乾式分別で結晶画分側に濃縮せしめて結晶画分を得る、多段分取による油脂の分別法である。
第2は、油脂がパーム核油であり、主要結晶成分がパーム核油中融点成分であり、結晶画分がパーム核ステアリンである第1記載の油脂の分別法である。
第3は、圧搾濾過に供する結晶スラリーの結晶量が固体脂含有量として10〜20重量%である第1または第2記載の油脂の分別法である。
第4は、多段分別により得られた全パーム核ステアリンの混合油の沃素価が5〜9であり、かつ全パーム核ステアリンの分別収率が対原料油脂30〜50重量%である、第2または第3記載のパーム核油の分別法である。
第5は、多段分取の最終段で得られる濾液画分として得られるパーム核オレインの沃素価が23〜27である第2〜第4いずれか1記載のパーム核油の分別法である。
本発明によれば、結晶画分の分別収率が30〜80重量%と結晶量の多い油脂の2分割乾式分別法において、撹拌晶析時の結晶スラリーの増粘の問題を解消し、かつ結晶への濾液抱き込み量の低減を可能とした事により、主要結晶成分に富む結晶画分を、低コストで簡便に得ることができる。すなわち、本発明によれば、濾液抱き込み量の少ない高品質の結晶画分をより高分別収率で得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明は、結晶画分の分別収率が30〜80重量%と結晶量の多い油脂の2分割乾式分別法に利用することができる。具体的には、パーム核油、ヤシ油、ババス油のようなラウリン系油脂の2分割、前記ラウリン系油脂や大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、米糠油、パーム低融点部に例示される液状油脂の水素添加油の2分割に利用することにより、濾液抱き込み量の少ない高品質の結晶画分をより高分別収率で得ることができる。前記各種水素添加油を高融点部、中融点部及び低融点部に3分割する分別の場合、比較的結晶量の少ない高融点部を除去してから、比較的結晶量の多い中融点部と低融点部の2分割に本発明を好適に利用することができる。結晶画分の分別収率は30〜80重量%であるのが好ましく、さらに好ましくは30〜60重量%、最も好ましくは30〜50重量%である。結晶画分の分別収率が30重量%未満であると、従来の1段乾式撹拌分別で処理可能であるため、本発明を利用するのは好ましくない。分別収率が80重量%を超えると、結晶画分中の主要結晶成分含量が不十分となり、高品質の結晶画分を得られないため、好ましくない。
本発明における油脂中の主要結晶成分とは、原料油脂がパーム核油、ヤシ油、ババス油のような非水素添加ラウリン系油脂では、炭素数10〜18の飽和脂肪酸、特に炭素数12及び14の飽和脂肪酸を多く含有する3飽和トリグリセリドが該当する。かかるラウリン系油脂は前記主要結晶成分のような中融点成分に富む結晶画分と炭素数10以下の脂肪酸、オレイン酸やリノール酸の不飽和脂肪酸を含有するトリグリセリドを主要成分とする低融点画分から成るため、一般的に2分割により分別される。本発明のパーム核ステアリンとは上記中融点成分に富む画分であり分別結晶画分として得られるものであるが、かかるパーム核ステアリンは体温付近でシャープな融解性状を示すため、そのまままたは水素添加を施したうえでチョコレート様食品用の油脂、ラウリン系ハードバターとして利用されている。また、本発明のパーム核オレインとは上記の低融点成分に富む画分であり分別濾液画分として得られるものである。
ラウリン系油脂の水素添加油の場合は、上記3飽和グリセリドとオレイン酸やリノール酸の不飽和脂肪酸が水素添加されて生成したステアリン酸やトランス脂肪酸を含むトリグリセリドが主要結晶成分に該当する。また、液状油脂の水素添加油では、水素添加で生成されるステアリン酸、トランス脂肪酸を含有するトリグリセリドが主要結晶成分に相当し、一般的に中融点部として得られるものである。
本発明における撹拌晶析とは、加熱により融解した原料油脂を、冷却開始から晶析完了まで終始撹拌しながら結晶化を行う晶析の方法である。また、圧搾濾過とは、晶析した結晶スラリーに圧力をかけながら濾過して固液分離する方法で、圧搾されたケーキ側が結晶画分、濾液側が濾液画分である。
この発明による乾式分別法は典型的には、例えば、一般的に結晶画分の結晶量が30〜50重量%となるように2分割されることが多いパーム核油の分別は以下の手順で行うことが出来る。
1)原料油脂を45℃以上、好ましくは50〜70℃に加熱して、完全に融解する。
2)融解した油脂を撹拌装置及び冷媒による冷却装置が付いた晶析槽内で、撹拌しながら冷却し、晶析を行う。このときの冷媒温度は、晶析後にポンプ輸送可能な流動性のある結晶スラリーとなるよう適宜設定する。
3)晶析終了後に、結晶スラリーを圧搾ロ過器にポンプ輸送する。
4)圧搾ロ過しパーム核油中融点成分が濃縮された結晶画分と濾液画分に分離する。
5)濾液画分に残存するパーム核油中融点成分を濃縮、分離するために、得られた濾液画分を1)〜4)の操作を繰り返して、パーム核油中融点成分が濃縮された2段目結晶画分と2段目濾液画分に分離する。
6)必要であれば、さらに2段目濾液画分を1)〜4)の操作を繰り返して、パーム核油中融点成分が濃縮された3段目結晶画分と3段目濾液画分に分離する。
かくしてパーム核油中融点成分富む油脂であるパーム核ステアリンが多段で分取され、それらは混合使用する事もできる。
結晶量の多いパーム核油を1段だけの撹拌晶析で結晶化すると、結晶量が多すぎて結晶スラリーが増粘または固化して、その後の固液分離が困難になる。本発明の多段分取によれば、結晶スラリーの結晶量をポンプ輸送可能な流動性のあるものに制御出来るため、従来からパーム油などの撹拌晶析による乾式分別に使われている公知の晶析缶などが好適に利用できる。
晶析工程での撹拌速度は、冷却開始から油温が晶析最下点温度に低下するまでは特に制限はないが、比較的早い方が冷却効率を高めて冷却時間も短縮出来るので有利である。油温が晶析最下点まで低下してから晶析スラリーの圧搾濾過前までは濾液成分の結晶画分中への残液率(抱き込み)の低い分離効率の高い結晶を得るために、結晶が沈降しない範囲での低速撹拌が好ましい。なお、晶析最下点温度とは晶析工程中に油温が最も低くなった温度で、通常使用冷媒温度付近になる。
本発明の圧搾濾過に供する結晶スラリーの好ましい結晶量は、固体脂含有量として10〜20重量%、好ましくは10〜15重量%である。10重量%未満であると圧搾濾過での分離性は良好であるが、結晶画分の分別収率が低く効率的でない。20重量%を超えると、結晶スラリーの粘度が高くなり圧搾ロ過工程へのポンプ輸送が困難になるとともに、圧搾ロ過工程での結晶画分への濾液成分の残液率(抱き込み)が高くなり分別精度が低下するので好ましくない。なお、固体脂含有量の測定は、BRUKER社製固体脂測定装置などによるNMR―パルスで簡便に測定出来、工程管理も容易である。
また、上記の結晶量を圧搾濾過終了まで晶析装置内で維持するために、原料油脂の1段目の攪拌晶析後に冷媒温度を晶析時の冷媒温度より2〜4℃高い温度に昇温して低速攪拌しながら保持するのが好ましい。この操作を行わないか2℃未満の昇温であると、結晶スラリー保持中に結晶析出がさらに進行し、結晶スラリーの粘度上昇または固化が起こるため好ましくない。4℃を超えて昇温すると、結晶の部分溶解が起こるとともに圧搾濾過性の低下も生じるためやはり好ましくない。なお2段目以降の攪拌晶析後では、冷媒温度の昇温は特に必須でなく、昇温しなくても結晶スラリー保持中のさらなる結晶析出の進行はほとんど起こらない。
結晶画分と濾液画分の分離には、フィルタープレスやメンブランフィルターなどの圧搾濾過の方法を用いるのが好ましい。特に、結晶画分として中融点成分に富むパーム核ステアリンを得るには、最大圧力30Kg/cm2のような高圧圧搾により結晶画分への濾液残液率を低下させるのが望ましい。また、濾液残液率の低下のために、圧搾後の結晶ケーキの厚みを出来るだけ薄くするのが有利で、当該厚みを25mm以下さらに望ましくは15mm以下にするのが好ましい。
なお、濾液残液率の算出法として、下記の式を利用すると簡便に算出出来、算出された残液率で工程管理しても分別精度管理に何ら支障がない。
残液率%=(結晶画分IV−真の結晶IV)÷(濾液画分IV−真の結晶IV)×100(パーム核油中融点成分の主要成分は3飽和トリグリセリドであることから、真の結晶IV=0とする。)
本発明における多段分取として、攪拌晶析と圧搾濾過の操作を3回以上繰り返すことも可能であるが、晶析設備や圧搾濾過設備の稼動効率の点から、4回以上の繰り返しは実用的ではない。多段分取回数は2〜3回が好ましく、最も好ましくは2回である。
本発明において、多段分取によって得られる全パーム核ステアリンの混合油の沃素価は、5〜9であるのが好ましく、さらに好ましくは5〜8であり、最も好ましくは5〜7である。沃素価が下限未満であると、主な中融点成分である炭素数10〜18の飽和脂肪酸、特に12及び14の飽和脂肪酸、を含有する3飽和トリグリセリド含有量が高くなる一方で、パーム核ステアリンの分別収率が低くなりすぎるため経済性の観点から好ましくない。逆に、沃素価が上限を超えるとパーム核ステアリンが低融点成分を多く含有し、固化後の常温での硬さ不足や耐熱保形性の低下が生じるため好ましくない。本発明の多段分取によって得られる全パーム核ステアリンの混合油の対原料油脂の分別収率は、30〜50重量%であるのが好ましく、より好ましくは35〜50重量%、最も好ましくは40〜50重量%である。分別収率が下限未満であると、経済性の観点から好ましくなく、上限を超えるとパーム核ステアリンの固化後の常温での硬さ不足や耐熱保形性の低下が生じるため好ましくない。
本発明において、多段分取後に最終段の濾液画分として得られるパーム核オレインの沃素価は23〜27であるのが好ましく、さらに好ましくは24〜26である。沃素価が下限未満であると、パーム核オレインの融点がやや高くなるとともにパーム核ステアリンの分別収率が低下するため好ましくない。上限を超えると、パーム核オレインの融点は低くなるがパーム核ステアリンの品質(硬さ、耐熱保形性)が低下する傾向にある。
以下に実施例を記載するが、この発明の技術思想がこれらの例示によって限定されるものではない。なお、各例中の%は、全て重量%を意味する。
<原料油調製>
パーム核より搾油しパーム核油を得た。このパーム核油Aの沃素価は17.5であった。
実施例1
<1段目の分別>
パーム核油A 4Kgを60℃に加熱し完全に融解して、冷媒ジャケット付きの直径185mm、高さ175mmの晶析槽に入れ、17℃の冷媒を冷媒ジャケットに循環しながら攪拌冷却した。攪拌羽根はステンレススチール製のくり抜き状長方形羽根(外幅150mm、外高100mm、内幅110mm、内高80mm)を用い、油温が60℃から晶析最下点温度の21℃に低下するまでの攪拌速度を30rpmで冷却し、21℃に低下後に攪拌速度を20rpmに減速し、冷媒温度を23℃とし、5時間保持して晶析を終了した。終了時点のSFCは13.5%であった。その後、冷媒温度を25℃に昇温して結晶スラリーを保持しながら圧搾濾過機にポンプ移入した。圧搾は2.0Kg/cm2/minで15分で30Kg/cm2まで昇圧し、さらに同圧で15分間保持して圧搾濾過した。圧搾した結晶画分として、沃素価5.30のパーム核ステアリンAF1を分別収率21.4%で得た。結晶画分への濾液残液率は25.1%と分離精度良好であった。なお、濾液画分AL1の沃素価は21.1であった。
<2段目の分別>
1段目の乾式分別の方法で得た濾液画分AL1 4Kgを60℃に加熱し完全に融解して、冷媒ジャケット付きの直径185mm、高さ175mmの晶析槽に入れ、15℃の冷媒を冷媒ジャケットに循環しながら攪拌冷却した。攪拌羽根は上記1段目と同羽根を用い、6時間保持して晶析を終了した。終了時点のSFCは12.5%であった。
その後、結晶スラリーを圧搾濾過機にポンプ移入した。圧搾は2.0Kg/cm2/minで15分で30Kg/cm2まで昇圧し、さらに同圧で15分間保持して圧搾濾過した。結晶画分として沃素価6.50のパーム核ステアリンAF2を分別収率19.8%で得た。結晶画分への残液率は26.3%と良好であった。なお、濾液画分AL2の沃素価は24.7であった。
<パーム核ステアリンの混合>
1段目で得られたAF1と2段目で得られたAF2を混合し、沃素価5.81のパーム核ステアリンを分別収率37.0%で得ることができた。
実施例2
実施例1の2段目分別において、15℃の冷媒循環の時間を6時間から2時間に変更し、その後冷媒温度を21℃に変更してから4時間保持して、実施例1同様の撹拌晶析を行った。終了時点のSFCは11.1%であった。その後、実施例1同様に圧搾濾過し、沃素価5.60のパーム核ステアリンBF2を分別収率12.4%で得た。結晶画分への残液率は24.0%と良好であった。なお、濾液画分BL2の沃素価は23.3であった。
比較例1
実施例1で用いたパーム核油Aを1段だけの攪拌晶析で分別する目的で、実施例1の1段目分別の冷媒温度を23℃に変えて、その他の条件は実施例1同条件で攪拌晶析を行った。晶析途上の結晶スラリーのSFCが18%程度までは良好な流動性であったが、さらに結晶化が進行したSFC20%程度でほとんど流動性が無くなり、その後の圧搾ロ過に供することが出来るような結晶スラリーは得られなかった。晶析途上のSFC18%での圧搾濾過結果は、パーム核ステアリンCF1の沃素価は5.20で分別収率25.9%、パーム核オレインCL1の沃素価は21.8であり、分離精度は比較的良好であったが晶析不十分でパーム核ステアリン分別収率は低すぎるものであった。
比較例2
実施例1の1段目の分別において、冷媒温度を17℃で3時間晶析を行った。晶析途上のSFC14%程度においては良好な流動性を保っていたが、SFC15%程度で急激に増粘し、流動性が無くなり、その後の圧搾ロ過に供することが出来るような結晶スラリーは得られなかった。晶析途上のSFC14%での圧搾濾過結果は、パーム核ステアリンDF1の沃素価は5.30で分別収率21.4%、パーム核オレインDL1の沃素価は20.7であり、分離精度は比較的良好であったが晶析不十分でパーム核ステアリンDF1の分別収率は低すぎるものであった。
実施例1、2、比較例1、2のテスト結果を表1に示す。
なお、以後のテスト結果では以下の測定値である。
SFC:結晶スラリーの固体脂含有量%
SFC測定方法:結晶スラリー 3±0.3gを長さ180mm,直径10mmの試験管に採取して、可及的速やかにBRUKER社製SFC測定装置 「minispec pc120 SFC測定装置」プローブに挿入し、結晶スラリーSFCをNMR−パルスで測定した。
沃素価はウイィス―シクロヘキサン法にて測定。
表1に実施例1〜2、比較例1〜2の分別結果を示す。
表1
Figure 2014141539
実施例1では、パーム核ステアリンの沃素価がそれぞれ5.3、6.5と中融点成分に富むパーム核ステアリンを対分別原料から21.4%、15.6%の収率で得た。中融点成分に富むパーム核ステアリンの合計収率は37.0%と高収率であった。また、実施例2では、中融点成分に富むパーム核ステアリンの合計収率は33.8%とやや低い結果ではあったが、比較例対比では高収率であった。一方、1段の分別で実施例1同レベルの結晶化部分収率を得ようとすると、結晶スラリーの急速な増粘が起こり、結晶画分と濾液画分の分離が出来なくなる結果であった。また、1段で分離可能な結晶量で圧搾濾過すると、分離精度は良好であったが晶析不十分なため結晶画分の分別収率は低く、パーム核オレインの沃素価も実施例1の2段目パーム核オレインよりもかなり低いものであった。
本発明は、結晶量の多い油脂の乾式分別法において、油脂中の主要結晶成分に富む結晶画分を高収率で簡便に得る、油脂の撹拌晶析による分別法に関し、特に、パーム核油の乾式分別法において、パーム核油中融点成分に富む結晶画分としてパーム核ステアリンを高収率でより簡便に得る、油脂の撹拌晶析による分別法に関するものである。

Claims (5)

  1. 結晶画分の分別収率が30〜80重量%と結晶量の多い油脂の2分割乾式分別法において、撹拌晶析と圧搾濾過による乾式分別で結晶画分側に主要結晶成分を濃縮せしめて結晶画分を得て、濾液画分に残存する主要結晶画分は次段の撹拌晶析と圧搾濾過による乾式分別で結晶画分側に濃縮せしめて結晶画分を得る、多段分取による油脂の分別法。
  2. 油脂がパーム核油であり、主要結晶成分がパーム核油中融点成分であり、結晶画分がパーム核ステアリンである請求項1記載の油脂の分別法。
  3. 圧搾濾過に供する結晶スラリーの結晶量が固体脂含有量として10〜20重量%である請求項1または請求項2記載の油脂の分別法。
  4. 多段分取で得た全パーム核ステアリンの混合油の沃素価が5〜9であり、かつ全パーム核ステアリンの分別収率が対原料油脂30〜50重量%である請求項2または請求項3記載の油脂の分別法。
  5. 多段分取の最終段で得たパーム核オレインの沃素価が23〜27である請求項2〜請求項4のいずれか1項記載の油脂の分別法。
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