本発明は蓄光体の製造方法に関し、特に、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料を抑制できると共に、簡便に残光輝度を上げつつ、燐光を放つ部位の位置ばらつきを生じ難くできる蓄光体の製造方法に関するものである。
従来より、部材の表面の一部を燐光によって発光させる手段として、蓄光顔料を含有する蓄光層を基体シートの表面の全部に形成し、マスキングによって蓄光層を部分的に隠蔽するものが知られている。マスキングは、粘着シートを基体シートの表面に貼付したり印刷用ペーストを基体シートの表面に印刷したりすることで行われる。この場合、マスキングにより隠蔽された蓄光層は燐光を放つことに使われないので、隠蔽された蓄光層に含まれる蓄光顔料が無駄になるという問題があった。
そこで、部材の表面に蓄光層を部分的に形成する技術として、例えば、蓄光顔料を含有する燐光柄層(蓄光層)が形成された基体シートを成形金型内に送り込み、成形金型を閉じた後にキャビティ内に溶融樹脂を射出充満し、成形と同時に成形体の表面に燐光柄層を接着する技術が知られている(特許文献1)。特許文献1に開示される技術では、マスキングすることなく蓄光層を部分的に形成できるので、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料が生じることを防止できる。
しかしながら特許文献1に開示される技術では、燐光柄層(蓄光層)は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の通常の印刷法により作られるので、基体シートに形成される蓄光層の厚さ(乾燥厚さ)は60〜150μm程度であった。それが成形金型内で接着されることによって成形体の表面に蓄光層が形成されるので、成形体の表面の蓄光層の厚さも60〜150μm程度であった。蓄光層の残光輝度は蓄光層の厚さにほぼ比例して高くなる傾向があるが、印刷法では蓄光層の厚さを大きくすることが難しい。そのため、蓄光層に含まれる蓄光顔料の種類や配合量等を変更しなければ残光輝度を上げ難いという問題点があった。
また、特許文献1に開示される技術では、キャビティ内に送り込まれた基体シートは、キャビティ内に充填された溶融樹脂によってキャビティ内を移動し、最終的にキャビティ内面に押し付けられる。基体シートに形成された蓄光層は、溶融樹脂とキャビティ内面とに挟まれた位置で溶融樹脂(成形体)の表面に接着される。成形および接着のときにキャビティ内で基体シートが移動するので、成形体の表面に対する蓄光層の位置にばらつきが生じ易いという問題点があった。
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料を抑制できると共に、簡便に残光輝度を上げつつ、燐光を放つ部位の位置ばらつきを生じ難くできる蓄光体の製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段および発明の効果
この目的を達成するために請求項1記載の蓄光体の製造方法によれば、蓄光顔料が混合された高分子化合物が、蓄光部成形工程により成形型に流し込まれて蓄光部が成形される。その蓄光部成形工程により成形された蓄光部の背面に、接着工程により、対象物に取着される基盤部が接着される。蓄光部は蓄光顔料が混合されているので、基盤部の正面側の特定の箇所に、燐光を放つ蓄光顔料を配置できる。その結果、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料を抑制できる効果がある。
また、蓄光部は成形型に流し込まれて成形されるので、成形型を適宜設計することにより、蓄光部の形状を適宜設定できると共に、蓄光部の厚さを容易に大きくすることができる。蓄光顔料が混合された蓄光部の残光輝度は、励起光が透らなくなる所定の厚さまでは蓄光部の厚さにほぼ比例して高くなるので、簡便に残光輝度を上げることができる効果がある。
また、蓄光部の位置は成形型により決定され、基盤部との接着のときにも移動しないので、基盤部に対する蓄光部の位置ばらつきを生じ難くできる効果がある。
さらに、蓄光部により基盤部の正面に、可視光下で視認される所定の図柄が形成されるので、可視光下における視覚的興趣を向上できる効果がある。
請求項2記載の蓄光体の製造方法によれば、基盤部は、正面視における面積が、蓄光部の正面視における面積より大きく設定されている。基盤部は対象物に取着される部位なので、基盤部の正面視における面積を、蓄光部の正面視における面積より大きく設定することで、基盤部を対象物に取着し易くすることができる。その結果、請求項1の効果に加え、蓄光体を対象物に取着するときの自在性を向上できる効果がある。
請求項3記載の蓄光体の製造方法によれば、接着工程は、蓄光部成形工程により成形型に流し込まれた高分子化合物の硬化により蓄光部を基盤部に接着する。蓄光部を構成する高分子化合物の硬化と基盤部の接着とを同時に行うことで、蓄光部を構成する高分子化合物を硬化させた後、その蓄光部を基盤部に接着する場合と比較して、蓄光体の製造工程を短縮化できる。よって、請求項1又は2の効果に加え、蓄光体の製造工程を短縮化できる効果がある。
請求項4記載の蓄光体の製造方法によれば、基盤部成形工程により、高分子化合物が成形型に流し込まれて基盤部が成形される。接着工程は、基盤部成形工程により成形型に流し込まれた高分子化合物の硬化により蓄光部を基盤部に接着する。基盤部を構成する高分子化合物の硬化と蓄光部の接着とを同時に行うことで、基盤部を構成する高分子化合物を硬化させた後、その基盤部を蓄光部に接着する場合と比較して、蓄光体の製造工程を短縮化できる。よって、請求項1から3のいずれかの効果に加え、蓄光体の製造工程を短縮化できる効果がある。
請求項5記載の蓄光体の製造方法によれば、基盤部は、柔軟性を有する部材により形成される。蓄光部は、シリコーン製の高分子化合物により形成され、硬化により基盤部に接着される。シリコーン製の高分子化合物は硬化してゴム状となるので、基盤部の柔軟性を維持したまま接着される。その結果、請求項3の効果に加え、蓄光部が接着された基盤部の柔軟性を維持できる効果がある。
請求項6記載の蓄光体の製造方法によれば、蓄光部は、少なくとも一部が基盤部に対して正面側に凸起して形成されるので、請求項1から5のいずれかの効果に加え、蓄光体を立体的にすることができ視覚的興趣を向上できる効果がある。
請求項7記載の蓄光体の製造方法によれば、蓄光部成形工程により成形された蓄光部の背面に、反射層配置工程により、蓄光顔料の燐光を反射する反射層が配置される。その反射層配置工程により配置された反射層は、蓄光部と基盤部との間に挟み込まれるので、請求項1から6のいずれかの効果に加え、蓄光部の残光輝度を向上できる効果がある。
請求項8記載の蓄光体の製造方法によれば、蓄光顔料を含有する蓄光部が、蓄光部配置工程により、成形型のキャビティ内面に配置される。その蓄光部配置工程により蓄光部が配置されたキャビティ内に高分子化合物が流し込まれて、蓄光部接着工程により、対象物に取着される基盤部が成形されつつ蓄光部が基盤部に接着される。これにより、請求項1の効果と同様の効果がある。
請求項9記載の蓄光体の製造方法によれば、基盤部の正面の2箇所以上に蓄光部が分かれて形成または配置されるので、請求項1から8のいずれかの効果に加え、蓄光体のデザイン性を向上できる効果がある。
請求項10記載の蓄光体の製造方法によれば、板状または塊状に形成された支持体の表面に窪み状に形成される凹部、又は、表面から裏面に亘って貫通形成される凹部に、配置工程により蓄光部が配置される。これにより、案内や標識等の用途や目的に応じた蓄光部を支持体に配置できる。よって、請求項1から9のいずれかの効果に加え、蓄光体の汎用性を向上できる効果がある。
(a)は本発明の第1実施の形態における蓄光体の斜視図であり、(b)は蓄光体の軸方向断面図である。
(a)は蓄光体の斜視図であり、(b)は蓄光体の製造工程を説明する成形型、基盤部および蓄光部の断面図である。
(a)は第2実施の形態における蓄光体の斜視図であり、(b)は蓄光体の製造工程を説明する成形型、基盤部および蓄光部の断面図である。
(a)は第3実施の形態における蓄光体の斜視図であり、(b)は蓄光体の製造工程を説明する成形型および蓄光部の断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して蓄光体1について説明する。図1は本発明の第1実施の形態における蓄光体1の斜視図であり、図1(b)は蓄光体1の軸方向断面図である。図1(a)及び図1(b)に示すように蓄光体1は、鋼管パイプ(パイプP)や鉄筋(図示せず)の端部に被着されるキャップであり、パイプPや鉄筋の端部が剥き出しになることを防ぐ保護具(安全用品)である。
図1(a)に示すように蓄光体1は、円筒状に形成される内筒2と、内筒2の一端に設けられる略円盤状の支持体3と、内筒2の外側に位置し支持体3の外周から軸方向に延設される外筒4と、支持体3の略中心に貫通形成される凹部3aと、凹部3aに装着される蓄光体11とを主に備えている。蓄光体1を構成する内筒2、支持体3及び外筒4等は、ポリエチレン等の合成樹脂製により一体に形成されている。
図1(b)に示すように、内筒2はパイプPに嵌入される部位であり、一端に支持体3が設けられている。支持体3は、内筒2をパイプPに嵌入するときにハンマー等により打撃される部位であり、パイプPの端部に先端が当接する外筒4が外周に設けられている。当接部5は、凹部3aを形成する内壁部6の外側かつ内筒2の内側に位置するピン状乃至は環状に形成される部位であり、内筒2に嵌入された有底筒状の補強部材7の底部が当接する。
補強部材7は、内筒2を補強するためのナイロン等の合成樹脂製の部材であり、軸中心に円筒状の孔部7aが形成されている。孔部7aは、外径がパイプPの外径より小さい鉄筋(図示せず)が嵌入される部位である。補強部材7に孔部7aが形成されるので、パイプPに代えて、鉄筋(図示せず)を孔部7aに嵌入することで、鉄筋の端部に蓄光体1を装着することができる。内壁部6は、補強部材7の底面と当接部5とにより囲まれた空間内に蓄光体11を保持するための部位であり、軸方向長(図1(b)上下方向長さ)が当接部5の軸方向長より小さく設定されている。
蓄光体11は、平板状に形成された基盤部12と、基盤部12の正面側(上面側、図1(b)上側)に凸起して一体に形成された蓄光部13とを備えている。基盤部12は、正面視における面積が、正面視における蓄光部13の面積より大きく設定されており、補強部材7と内壁部6との間に基盤部12が位置し、内壁部6の内側に蓄光部13が位置する。また、基盤部12の厚さ(図1(b)上下方向寸法)は、当接部5及び内壁部6の軸方向長の差と略等しい値に設定されているので、凹部3aの内側に蓄光部13を配置できる。さらに、蓄光部13の厚さは内壁部6の軸方向長と同一乃至はわずかに小さめに設定されているので、蓄光部13は支持体3と面一乃至はわずかに凹んで配置される。その結果、蓄光部13の視認性を確保しつつ、支持体3をハンマー等で打撃したときに蓄光部13は打撃されないようにできる。
次に図2を参照して蓄光体11について説明する。図2(a)は蓄光体11の斜視図であり、図2(b)は蓄光体11の製造工程を説明する成形型101、基盤部12及び蓄光部13の断面図である。図2(a)に示すように蓄光体11は、正面視して略円形状に形成される基盤部12と、基盤部12に積重されると共に基盤部12に対して正面側に凸起して形成される正面視して略円形状の蓄光部13とを備えている。本実施の形態では、基盤部12及び蓄光部13はシリコーン製(シリコーンゴム製)であり、蓄光部13を構成するシリコーン(高分子化合物)には蓄光顔料が混合されている。
蓄光顔料としては、太陽光や人工照明の光を照射したときに暗所で比較的長い時間発光を持続する機能をもつ1種乃至は複数種の顔料が用いられる。例えば、硫黄系や酸化物系の蓄光顔料を用いることができる。硫黄系の蓄光顔料としては、例えば、硫化カルシウム/ビスマス系、硫化亜鉛/銅系等を挙げることができる。酸化物系の蓄光顔料としては、例えば、M1Al2O4,M2Al14O25(但しM1,M2はカルシウム、ストロンチウム、バリウムの内の少なくとも1種)で表される化合物の一方または両方を母結晶とするものを挙げることができる。
蓄光部13は蓄光顔料に加えて着色剤が混合され、基盤部12とは異なる色に調製されることで、可視光下で視認される所定の図柄(本実施の形態では円)が形成されている。これにより、蓄光部13が燐光を発しない明時(太陽光や人工照明の光の照射下)においても、可視光下における視覚的興趣を向上できる。なお、蓄光部13による図柄は、円等の幾何学模様に限られるものではなく、その他の図記号、文字、模様等を採用できる。
次に図2(b)を参照して、蓄光体11の製造方法について説明する。蓄光体11は、成形型101に凹設された第1凹面102及び第2凹面103に高分子化合物を流し込み、硬化させることにより製造される。第1凹面102により蓄光部13を型成形するためのキャビティが形成され、第2凹面103は基盤部12を型成形するためのキャビティが形成される。本実施の形態では、成形型101はFRP製であり、注型成形により蓄光体11が製造される。
蓄光体11を製造するには、まず、変成シリコーンを主成分とする縮合型の1成分系シリコーン製(変成シリコーン系)の高分子化合物に蓄光顔料および着色剤を混合する。次いで、蓄光顔料および着色剤が混合された液状の高分子化合物を、成形型101の第1凹面102に流し込む(蓄光部成形工程)。第1凹面102に流し込まれた高分子化合物が完全に硬化する前に、蓄光顔料が混合されていない変成シリコーン系(縮合型の1成分系)の高分子化合物を、成形型101の第2凹面103に流し込む(基盤部成形工程)。第1凹面102に流し込まれた高分子化合物(基盤部12及び蓄光部13)の硬化により、第2凹面103に流し込まれた高分子化合物(蓄光部13)と基盤部12とを接着させる(接着工程)。高分子化合物の硬化後、基盤部12及び蓄光部13を成形型101から脱型し、蓄光体11を得る。
以上説明した蓄光体11の製造方法によれば、蓄光部13は蓄光顔料が混合されているので、基盤部12の正面側の特定の箇所に、燐光を放つ蓄光顔料を配置できる。蓄光顔料を含有する蓄光層をマスキングにより部分的に隠蔽する場合、隠蔽された蓄光層に含まれる蓄光顔料が無駄になるが、本製造方法によれば、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料を抑制できる。その結果、蓄光体11が必要とする蓄光顔料の量(蓄光顔料のコスト)を低減できる。
また、蓄光部13は成形型101に流し込まれて成形されるので、成形型101(第1凹面102)を適宜設計することにより、蓄光部13の形状を適宜設定できる。また、蓄光部13の厚さを容易に大きくすることができる。蓄光顔料が混合された蓄光部13の残光輝度は、励起光が透らなくなる所定の厚さまでは蓄光部13の厚さにほぼ比例して高くなるので、簡便に残光輝度を上げることができる。
また、成形型101の第1凹面102(キャビティ内面)及び第2凹面103の位置関係によって基盤部12に対する蓄光部13の位置が決定され、その位置関係は基盤部12と蓄光部13とが接着されるときも変わらないので、基盤部12に対する蓄光部13の位置ばらつきを生じ難くできる。
また、基盤部12を構成する高分子化合物の硬化と蓄光部13の接着とを同時に行うので、基盤部12を構成する高分子化合物を硬化させた後、その基盤部12を蓄光部13に接着する場合と比較して、蓄光体11の製造工程を短縮化できる。特に、基盤部12及び蓄光部13の硬化と、蓄光部13と基盤部12との接着とが同時に行われるので、硬化後の高分子化合物(蓄光部13)の濡れ性等に影響されることなく、基盤部12及び蓄光部13の接合強度を確保できる。
また、蓄光体11は注型成形により製造されるので、成形型101の製造コストを抑えることができ、小ロット生産を可能にできる。さらに、成形型101に流し込む液状の高分子化合物に蓄光顔料を混合するので、蓄光部13に対する蓄光顔料の配合率を高めることができる。その結果、蓄光部13の残光輝度を向上できる。
ここで、蓄光顔料は、第1凹面102に流し込む高分子化合物及び蓄光顔料の総質量100質量部に対して3〜70質量部、好ましくは30〜70質量部の割合で混合される。これにより、液状の高分子化合物の流動性を確保しつつ蓄光部13の残光輝度を確保できる。なお、蓄光顔料の配合が少なくなるにつれ蓄光部13の残光輝度が低下する傾向がみられ、30質量部より少なくなると、蓄光部13の残光輝度が基盤部12の色の影響を受けて顕著に低くなることがある。また、蓄光顔料の配合が70質量部より多くなると、高分子化合物の種類や蓄光顔料の粒度にもよるが、流動性が低下し注型成形が困難になる傾向がみられる。
図1に戻って、蓄光体1の製造方法について説明する。蓄光体1の内筒2に補強部材7を嵌入する前に、内筒2の背面側(図1(b)下側)から蓄光体11を配置する(配置工程)。配置された蓄光体11は、内壁部6の内側に蓄光部13が位置し、内壁部6の先端側に基盤部12が位置する。次いで、補強部材7の底面が当接部5の先端に当接するまで、内筒2内に補強部材7を嵌入する。これにより、補強部材7と内壁部6との間に蓄光体11が保持される。
蓄光体11は、基盤部12の正面視における面積が、蓄光部13の正面視における面積より大きく設定されているので、内壁部6(図1(b)参照)の先端を基盤部12の上面に位置させることができる。その結果、基盤部12により凹部3aから蓄光体11が離脱することが阻止されるので、支持体3と補強部材7との間に蓄光体11を簡易に保持できる。その結果、パイプPや鉄筋(図示せず)の先端に蓄光体1を取り付けることにより、支持体3及び外筒4によりパイプPや鉄筋の端部が剥き出しになることを防止できると共に、蓄光部13の燐光により夜間も注意を喚起できる。
また、支持体3に貫通形成される凹部3aに蓄光部13が配置されるので、案内や標識、注意喚起等の用途や目的に応じた蓄光部13を支持体3に配置できる。その結果、支持体3の形状等に応じて、蓄光体11の汎用性を向上できると共に、応用範囲を拡大できる。
次に図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、基盤部12と蓄光部13とが密着する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、基盤部22と蓄光部23との間に反射層24が介設される場合について説明する。図3(a)は第2実施の形態における蓄光体21の斜視図であり、図3(b)は蓄光体21の製造工程を説明する成形型201、基盤部22及び蓄光部23の断面図である。
図3(a)に示すように蓄光体21は、正面視して略矩形状に形成される透明な基盤部22と、基盤部22に積重されると共に基盤部22に対して正面側に凸起して幾何学模様が形成された蓄光部23と、蓄光部23と基盤部22との間に介設された反射層24とを備えている。本実施の形態では、基盤部22及び蓄光部23はエポキシ系樹脂製であり、蓄光部23を構成するエポキシ系樹脂(高分子化合物)には蓄光顔料および着色剤が混合されている。蓄光顔料は、第1実施の形態で説明したものと同一であるので、説明を省略する。
基盤部22は、略平板状に形成された基部22aと、基部22aの中央が凸起した凸起部22bとを備えている。また、蓄光部23は、凸起部22bの周囲に分かれて配置される第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bを備えている。本実施の形態では、凸起部22bは正面視して略円形状に形成され、第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bは正面視して略C形に形成されている。第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bは、種類の異なる蓄光顔料が混合されており、互いに異なる色の燐光を放つように構成されている。なお、基部22aに対する凸起部22bの高さは、基部22aに対する第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bの高さと同一の値に設定されている。
次に図3(b)を参照して、蓄光体21の製造方法について説明する。蓄光体21は、成形型201に凹設された第2凹面203及び2つの第1凹面202に高分子化合物を流し込み、硬化させることにより製造される。2つの第1凹面202により蓄光部23(第1蓄光部23a及び第2蓄光部23b)及び反射層24を型成形するためのキャビティが形成され、第2凹面203により基盤部22を型成形するためのキャビティが形成される。本実施の形態では、成形型201はシリコーン製であり、注型成形により蓄光体21が製造される。
蓄光体21を製造するには、まず、エポキシ系樹脂(高分子化合物)に蓄光顔料および着色剤を混合する。種類の異なる蓄光顔料が混合された高分子化合物を2種類用意しておく。次いで、一方の蓄光顔料および着色剤が混合された高分子化合物を、成形型201の一方の第1凹面202(図3(b)右側)に流し込み、他方の蓄光顔料および着色剤が混合された高分子化合物を、他方の第1凹面202(図3(b)左側)に流し込む(蓄光部成形工程)。第1凹面202に流し込まれた高分子化合物が硬化して収縮したところ(凹んで第2凹面203との境界に対して低くなったところ)に、反射層24を形成する高分子化合物を塗布する(反射層配置工程)。本実施の形態では、反射層24(白色反射層)は、ポリエステル系樹脂等に酸化チタン粉末を混合した白色塗料により形成される。
白色塗料が硬化した後、透明なエポキシ系樹脂(高分子化合物)を、成形型201の第2凹面203に流し込む(基盤部成形工程)。第2凹面203に流し込まれた高分子化合物の硬化により、反射層24に基盤部22が接着される(接着工程)。高分子化合物の硬化後、基盤部22、蓄光部23及び反射層24を成形型201から脱型し、蓄光体21を得る。
以上説明した蓄光体21の製造方法によれば、蓄光部23の背面に反射層24が配置され、反射層24は蓄光部23と基盤部22との間に挟み込まれる。その結果、蓄光顔料による燐光が正面側(基盤部22の反対側)に反射されるので、第1実施の形態で得られる効果に加え、蓄光部23の残光輝度を向上できる。
また、第1凹面202に流し込まれた高分子化合物が硬化して収縮したところ(第1凹面202内)に、反射層24を形成する高分子化合物(白色塗料)が塗布されるので、蓄光部23の周囲に白色塗料をはみ出し難くできる。その結果、蓄光部23の周囲にはみ出した白色塗料(反射層)が原因となって、蓄光体21の見栄えが悪くなることを防止できる。
なお、蓄光体21は、シリコーン系と比較して撥水性の弱いエポキシ系樹脂により基盤部22が形成されるので、基盤部22の背面に粘着剤を塗布することによる粘着層の形成を容易にできる。これにより、対象物(図示せず)に対する蓄光体21の取着手段の適用例を増やすことができ、蓄光体21の応用範囲を拡大できる。
また、基盤部22の正面の複数箇所(本実施の形態では2箇所)に蓄光部23(第1蓄光部23a及び第2蓄光部23b)が分かれて形成されるので、蓄光体21のデザイン性を向上できる。なお、その蓄光部23は、成形型201を適宜設計することにより任意の位置に形成できる。さらに、第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bは、互いに異なる色の燐光を放つように設定されているので、蓄光体21のデザイン性をさらに向上できる。
なお、本実施の形態では、白色塗料の塗布により反射層24を形成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、基盤部22や蓄光部23を形成する場合と同様に、高分子化合物の流し込みにより反射層24を形成することは当然可能である。また、予め用意された白色のシート(白色形成物)を、第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bと基盤部22との間に配置し挟み込むことにより反射層24とすることは当然可能である。
次に図4を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、高分子化合物製の基盤部12,22が型成形により形成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、別途用意した基盤部32を蓄光部33に接着して蓄光体31を製造する場合について説明する。図4(a)は第3実施の形態における蓄光体31の斜視図であり、図4(b)は蓄光体31の製造工程を説明する成形型301及び蓄光部33の断面図である。
図4(a)に示すように蓄光体31は、正面視して略矩形状に形成される基盤部32と、基盤部32に積重されると共に基盤部32に対して正面側に凸起して図記号(矢印)が形成された蓄光部33とを備えている。本実施の形態では、基盤部32は柔軟性を有する布製であり、蓄光部33を構成するシリコーンゴム(高分子化合物)には蓄光顔料および着色剤が混合されている。蓄光顔料は、第1実施の形態で説明したものと同一であるので、説明を省略する。
次に図4(b)を参照して、蓄光体31の製造方法について説明する。蓄光体31は、成形型301に凹設された凹面302に高分子化合物を流し込み、硬化させて蓄光部33を形成すると共に、蓄光部33に基盤部32を接着することにより製造される。凹面302により蓄光部33を型成形するためのキャビティが形成される。本実施の形態では、成形型301はアルミニウム合金製(金属製)であり、注型成形により蓄光体31が製造される。
蓄光体31を製造するには、まず、シリコーン(高分子化合物)に蓄光顔料および着色剤を混合する。次いで、蓄光顔料および着色剤が混合された液状の高分子化合物を、成形型301の凹面302に流し込む(蓄光部成形工程)。凹面302に流し込まれた高分子化合物が硬化して収縮したところ(凹んで成形型301の上面の高さに対して低くなったところ)に、透明な高分子化合物(本実施の形態では、蓄光顔料および着色剤が混合されていないシリコーン)を流し込む。
凹面302に流し込まれた透明な高分子化合物が硬化する前に、成形型301の上面に基盤部32(布製)を置き、凹面302内の高分子化合物と基盤部32とを接触させる。シリコーン(液状の高分子化合物)は基盤部32の繊維間に浸透する。高分子化合物の硬化により、主にアンカー効果によって、蓄光部33と基盤部32とが接着される(接着工程)。蓄光部33と基盤部32とが接着した後、蓄光部33を成形型301から脱型し、蓄光体31を得る。
以上説明した蓄光体31の製造方法によれば、成形型301(凹面302)に流し込まれた高分子化合物の硬化により蓄光部33が基盤部32に接着される。蓄光部33を構成する高分子化合物の硬化と基盤部32の接着とを同時に行うことで、蓄光部33を構成する高分子化合物を硬化させた後、その蓄光部33を基盤部32に接着する場合と比較して、蓄光体31の製造工程を短縮化できる。
また、蓄光顔料が混合された高分子化合物の収縮後、凹面302に透明な高分子化合物を流し込み、その凹面302内の高分子化合物と基盤部32とを接触させるので、基盤部32と凹面302内の高分子化合物とを確実に接触させることができる。また、凹面302内の高分子化合物の収縮(所謂ヒケ)を補うことができるので、凹面302内の高分子化合物の収縮により蓄光部33と基盤部32との接合強度が低下することを防止できる。また、蓄光部33の周囲に高分子化合物がはみ出して硬化した場合も、高分子化合物が透明なので、蓄光体31の見栄えが悪化することを抑制できる。
また、基盤部33の背面に布製の基盤部32が固定され、正面視における基盤部32の大きさは正面視における蓄光部33より大きく設定されるので、衣服等(対象物)の表面に布製の基盤部32を縫い付けることができる。なお、アイロン等の熱により溶融する熱接着層を基盤部32の背面に設けることで、衣服等(対象物)の表面に基盤部32を貼り付けることも可能である。
また、基盤部32は柔軟性を有する部材(布製)により形成され、蓄光部33は、シリコーン製の高分子化合物により形成される。シリコーン製の高分子化合物の硬化により蓄光部33は基盤部32に接着される。シリコーン製の高分子化合物は基盤部32(布)の繊維間に浸透して硬化するので、アンカー効果により蓄光部33は基盤部32に強固に接着される。また、シリコーン製の高分子化合物は硬化後にゴム状となるので、基盤部32の柔軟性も維持される。その結果、蓄光部33が接着された基盤部32の柔軟性を維持できる。
なお、シリコーン製の高分子化合物と基盤部32との接着メカニズムをアンカー効果に限定するものではない。基盤部32の種類によって、基盤部32の表面と蓄光部33とを化学反応により接着するようにすることは当然可能である。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、基盤部12,22,32や蓄光部13,23,33の形状や大きさは、蓄光体11,21,31の目的に応じて、適宜設計される。
上記第1実施の形態では、縮合型の1成分系シリコーン製(変成シリコーン系)の高分子化合物を用いて蓄光体11を成形する場合について説明したが、他の高分子化合物を採用することは当然可能である。他の高分子化合物としては、例えば、付加型のシリコーン系、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、紫外線硬化樹脂が挙げられる。また、高分子化合物は1成分系(1液型)樹脂に限定するものではなく、2液型などの多成分系樹脂を用いることは当然可能である。
なお、蓄光体11の材質や形状、成形型101の耐久性等を考慮して、成形型101は材質を適宜設定できる。また、第2実施の形態および第3実施の形態における高分子化合物も、第1実施の形態と同様に、他の高分子化合物を採用することは当然可能である。なお、第1実施の形態および第2実施の形態を、減圧下で注型成形を行う真空注型とすることも可能である。
上記第1実施の形態および第2実施の形態では、注型成形により蓄光体11,21を製造する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の成形手段を採用することは当然可能である。他の成形手段としては、例えば、射出成形、中空成形、圧縮成形が挙げられる。射出成形、中空成形、圧縮成形により蓄光体11,21を製造する場合、金属製の成形型101,201を用い、別の成形型と組み合せてキャビティを形成する。
射出成形や中空成形により蓄光体11,21を製造する場合は、高分子化合物(合成樹脂や合成ゴム等)のマスターバッチと蓄光顔料(最終的に混練する目標値の約半分量)とをミキサー等を用いて混合し、所定の温度に加熱しながら押出機等を使用して混練する。次いで、得られた混練品と蓄光顔料(最終的に混練する残量)とをミキサー等を用いて混合し、所定の温度に加熱しながら押出機等を使用して混練する。
なお、蓄光顔料を複数回に分けて混練せずに一度に混練する場合には、高分子化合物のマスターバッチと蓄光顔料とを混練するときの流動性が低下し、蓄光顔料の分散性が低下する傾向がみられる。これに対し、蓄光顔料を複数回に分けて混練することにより流動性を向上させ、蓄光顔料の分散性を向上できる。その結果、蓄光顔料が蓄光部13,23の一部に偏在することを防止できる。そして、軟化温度に加熱した高分子化合物を、射出圧力を加えて成形型に流し込み、キャビティに充填して成形する。
圧縮成形により蓄光体を製造する場合には、粉末状(顆粒状)の高分子化合物(主に熱硬化性樹脂)と蓄光顔料とを混合し、それらを成形型のキャビティに流し込んだ後、加熱および加圧をすることにより硬化させ成形する。
上記第1実施の形態では、パイプPや鉄筋の端部が剥き出しになることを防ぐ保護具(安全用品)としての蓄光体1を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、支持体3の形状や大きさを適宜設計することにより、蓄光体を案内板や標識等とすることは当然可能である。
また、上記実施の形態で説明した蓄光体11,21,31は任意の形状に成形できるので、蓄光体11,21,31をマスコット、ペンダント、キーホルダー等の玩具、日用雑貨、名札等の小物や、床材や縁石等の建築用部材や土木用部材とすることは当然可能である。
上記実施の形態では、基盤部12,22,32の表面に蓄光部13,23,33が一つ配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、物理的に分離した2以上の蓄光部を基盤部の表面に設けることは当然可能である。
上記第1実施の形態では、支持体3が板状(平面状)に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、蓄光体の形態に応じて塊状(立体状)に形成することは当然可能である。
また、支持体3に凹部3aが貫通形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、支持体が塊状に形成されるときには、支持体の表面に凹部を窪み状に形成し、その凹部に蓄光体を装着可能にすることは当然可能である。
上記第1実施の形態および第2実施の形態では、一つの成形型101,201により蓄光部13,23及び基盤部12,22を接合(接着)して蓄光体11,21を製造する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、蓄光部13,23を成形する成形型と、蓄光部13,23と基盤部12,22とを接合(接着)する成形型とを異ならせることは可能である。
この場合、まず、一の成形型(図示せず)により蓄光部13,23を成形する。この場合の成形は、注型成形、射出成形、圧縮成形等、種々の成形方法を採用できる。その後、成形された蓄光部13,23を他の成形型(図示せず)のキャビティ内面に配置(仮固定)する(蓄光部配置工程)。次いで、蓄光部13,23が配置された他の成形型内(キャビティ内)に高分子化合物を流し込んで、基盤部12,22を成形しつつ蓄光部13,23を基盤部12,22に接着する(蓄光部接着工程)。この場合の基盤部12,22の成形も、注型成形、射出成形、圧縮成形等、種々の成形方法を採用できる。以上のように、蓄光部13,23を成形する成形型と、蓄光部13,23と基盤部12,22とを接合(接着)する成形型とを異ならせた場合も、第1実施の形態または第2実施の形態で得られる効果を実現できる。
また、注型成形、射出成形、圧縮成形等により蓄光部13,23を成形するのではなく、蓄光顔料を含有する蓄光シートや陶板(無機材料製基板)等の燐光を放つ性質をもつ部材(以下「蓄光部材」と称す)を、所定の外形形状に調製して用いることは当然可能である。その場合、まず、所定の形状に調製された蓄光部材(蓄光部)を成形型のキャビティ内面に配置する(蓄光部配置工程)。次いで、蓄光部材(蓄光部)が配置された成形型内(キャビティ内)に高分子化合物を流し込んで、基盤部を成形しつつ蓄光部を基盤部に接着する(蓄光部接着工程)。この場合も、基盤部の成形は注型成形、射出成形、圧縮成形等、種々の成形方法を採用でき、第1実施の形態または第2実施の形態で得られる効果を実現できる。
蓄光部材(蓄光部)の背面に接着層を設けることは当然可能である。接着層としては、高分子化合物の素材に適した感熱性あるいは感圧性の高分子化合物を適宜選択する。また、蓄光部材(蓄光部)の背面に反射層(白色反射層)を設けることは当然可能である。反射層としては、白色塗料を塗布して蓄光部材(蓄光部)の背面に形成された塗装層や、蓄光部材(蓄光部)の背面に配置される白色シートを用いることができる。その白色シート(反射層)に接着層を設けることも当然可能である。
上記第3実施の形態では基盤部32が布製の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の材質や部材を採用することは当然可能である。他の材質や部材としては、例えば、紙製や合成樹脂製のシートや壁紙;皮革(天然皮革、人造皮革);合成樹脂製やガラス製、金属製の板材;金属製や合成樹脂製の網;タイル(無機材料製)等が挙げられる。また、合成樹脂製等の再帰反射板を基盤部32とすることも当然可能である。基盤部32として種々の材質や部材を採用できるので、蓄光体31の用途を拡大できる。
なお、紙、皮革等(繊維の集合体)や網等の網目(繊維間や線材間の隙間)を有するものを基盤部32として採用した場合には、網目を埋めるような状態で高分子化合物が硬化することによりアンカー効果が得られる。シリコーン(シリコーンゴム)は難接着材であるが、アンカー効果を利用することにより基盤部32と蓄光部33との接着強度を向上できる。
上記第3実施の形態では、蓄光部33の硬化と同時に基盤部32を接着する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、蓄光部33を成形した(硬化させた)後、接着剤等を用いて、基盤部32に蓄光部33を接着することは当然可能である。その場合、基盤部32と蓄光部33との接着強度を向上させるため、基盤部32や蓄光部33にプライマ処理を施すことは可能である。
また、第2実施の形態で説明した反射層24を、第1実施の形態および第3実施の形態で説明した蓄光体11,31に設けることは当然可能である。蓄光部13,33の背面に反射層24を設けることにより、蓄光部13,33の残光輝度を向上できる。なお、反射層24を設ける代わりに、基盤部12,32を白色にして、基盤部12,32によって蓄光部13,33の燐光を反射するような構成とすることは当然可能である。
蓄光部13,23,33(蓄光部材を含む)の厚さとしては、蓄光顔料の粒度、基盤部12,22,32の色(背景色)や大きさにもよるが、0.5mmから10cmが好適に用いられる。蓄光部13,23,33(蓄光部材を含む)の残光輝度を基盤部12,22,32の色に影響され難くするためである。
本実施の形態では、蓄光部13,23,33が硫黄系や酸化物系の蓄光顔料を含有する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、外部からの励起光のエネルギーを吸収して燐光を放つ他の蓄光顔料を採用することは当然可能である。また、蓄光部13,23,33が着色剤を含有する場合について説明したが、着色剤は必ずしも必要ではない。
1,11,21,31 蓄光体
3 支持体
3a 凹部
12,22,32 基盤部
22a 基部(基盤部)
22b 凸起部(基盤部)
13,23,33 蓄光部
23a 第1蓄光部(蓄光部)
23b 第2蓄光部(蓄光部)
24 反射層
101,201,301 成形型
102,202 第1凹面(キャビティ内面)
本発明は蓄光体の製造方法に関し、特に、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料を抑制できると共に、簡便に残光輝度を上げつつ、燐光を放つ部位の位置ばらつきを生じ難くできる蓄光体の製造方法に関するものである。
従来より、部材の表面の一部を燐光によって発光させる手段として、蓄光顔料を含有する蓄光層を基体シートの表面の全部に形成し、マスキングによって蓄光層を部分的に隠蔽するものが知られている。マスキングは、粘着シートを基体シートの表面に貼付したり印刷用ペーストを基体シートの表面に印刷したりすることで行われる。この場合、マスキングにより隠蔽された蓄光層は燐光を放つことに使われないので、隠蔽された蓄光層に含まれる蓄光顔料が無駄になるという問題があった。
そこで、部材の表面に蓄光層を部分的に形成する技術として、例えば、蓄光顔料を含有する燐光柄層(蓄光層)が形成された基体シートを成形金型内に送り込み、成形金型を閉じた後にキャビティ内に溶融樹脂を射出充満し、成形と同時に成形体の表面に燐光柄層を接着する技術が知られている(特許文献1)。特許文献1に開示される技術では、マスキングすることなく蓄光層を部分的に形成できるので、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料が生じることを防止できる。
しかしながら特許文献1に開示される技術では、燐光柄層(蓄光層)は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の通常の印刷法により作られるので、基体シートに形成される蓄光層の厚さ(乾燥厚さ)は60〜150μm程度であった。それが成形金型内で接着されることによって成形体の表面に蓄光層が形成されるので、成形体の表面の蓄光層の厚さも60〜150μm程度であった。蓄光層の残光輝度は蓄光層の厚さにほぼ比例して高くなる傾向があるが、印刷法では蓄光層の厚さを大きくすることが難しい。そのため、蓄光層に含まれる蓄光顔料の種類や配合量等を変更しなければ残光輝度を上げ難いという問題点があった。
また、特許文献1に開示される技術では、キャビティ内に送り込まれた基体シートは、キャビティ内に充填された溶融樹脂によってキャビティ内を移動し、最終的にキャビティ内面に押し付けられる。基体シートに形成された蓄光層は、溶融樹脂とキャビティ内面とに挟まれた位置で溶融樹脂(成形体)の表面に接着される。成形および接着のときにキャビティ内で基体シートが移動するので、成形体の表面に対する蓄光層の位置にばらつきが生じ易いという問題点があった。
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料を抑制できると共に、簡便に残光輝度を上げつつ、燐光を放つ部位の位置ばらつきを生じ難くできる蓄光体の製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段および発明の効果
この目的を達成するために請求項1記載の蓄光体の製造方法によれば、蓄光顔料が混合された高分子化合物が、対象物に取着される基盤部が接触される面または基盤部が成形される面に対して凹設された成形型の第1凹面に流し込まれて、蓄光部成形工程により蓄光部が成形される。その蓄光部成形工程により成形された蓄光部の背面に、接着工程により基盤部が接着され、基盤部に対して蓄光部が正面側に部分的に凸起して設けられる。蓄光部は蓄光顔料が混合されているので、基盤部の正面側の特定の箇所に、燐光を放つ蓄光顔料を配置できる。その結果、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料を抑制できる効果がある。
また、蓄光部は成形型に流し込まれて成形されるので、成形型を適宜設計することにより、蓄光部の形状を適宜設定できると共に、蓄光部の厚さを容易に大きくすることができる。蓄光顔料が混合された蓄光部の残光輝度は、励起光が透らなくなる所定の厚さまでは蓄光部の厚さにほぼ比例して高くなるので、簡便に残光輝度を上げることができる効果がある。
また、蓄光部の位置は成形型に凹設された第1凹面により決定され、基盤部との接着のときにも移動しないので、基盤部に対する蓄光部の位置ばらつきを生じ難くできる効果がある。また、蓄光部は、基盤部に対して正面側に凸起して形成されるので、蓄光体を立体的にすることができ視覚的興趣を向上できる効果がある。
さらに、蓄光部により基盤部の正面に、可視光下で視認される所定の図柄が形成されるので、可視光下における視覚的興趣を向上できる効果がある。
また、基盤部は、正面視における面積が、蓄光部の正面視における面積より大きく設定されている。基盤部は対象物に取着される部位なので、基盤部の正面視における面積を、蓄光部の正面視における面積より大きく設定することで、基盤部を対象物に取着し易くすることができる。その結果、蓄光体を対象物に取着するときの自在性を向上できる効果がある。
請求項2記載の蓄光体の製造方法によれば、接着工程は、蓄光部成形工程により成形型に流し込まれた高分子化合物の硬化により蓄光部を基盤部に接着する。蓄光部を構成する高分子化合物の硬化と基盤部の接着とを同時に行うことで、蓄光部を構成する高分子化合物を硬化させた後、その蓄光部を基盤部に接着する場合と比較して、蓄光体の製造工程を短縮化できる。よって、請求項1の効果に加え、蓄光体の製造工程を短縮化できる効果がある。
請求項3記載の蓄光体の製造方法によれば、蓄光部成形工程の後、基盤部成形工程により、高分子化合物が、成形型に凹設されると共に背面視における第1凹面の面積より背面視における面積が大きく設定される第2凹面に流し込まれて基盤部が成形される。接着工程は、基盤部成形工程により成形型に流し込まれた高分子化合物の硬化により蓄光部を基盤部に接着する。基盤部を構成する高分子化合物の硬化と蓄光部の接着とを同時に行うことで、基盤部を構成する高分子化合物を硬化させた後、その基盤部を蓄光部に接着する場合と比較して、蓄光体の製造工程を短縮化できる。よって、請求項1又は2の効果に加え、蓄光体の製造工程を短縮化できる効果がある。
請求項4記載の蓄光体の製造方法によれば、基盤部は、柔軟性を有する部材により形成される。蓄光部は、シリコーン製の高分子化合物により形成され、硬化により基盤部に接着される。シリコーン製の高分子化合物は硬化してゴム状となるので、基盤部の柔軟性を維持したまま接着される。その結果、請求項2の効果に加え、蓄光部が接着された基盤部の柔軟性を維持できる効果がある。
請求項5記載の蓄光体の製造方法によれば、蓄光部成形工程により第1凹面に成形された蓄光部の背面であって第1凹面内に、反射層配置工程により、蓄光顔料の燐光を反射する反射層が配置される。その反射層配置工程により配置された反射層は、蓄光部と基盤部との間に挟み込まれるので、請求項1から4のいずれかの効果に加え、蓄光部の残光輝度を向上できる効果がある。
請求項6記載の蓄光体の製造方法によれば、蓄光顔料を含有する蓄光部が、蓄光部配置工程により、対象物に取着される基盤部が成形される成形型のキャビティ内面に凹設された第1凹面に配置される。その蓄光部配置工程により蓄光部が配置されたキャビティ内に高分子化合物が流し込まれて、蓄光部接着工程により基盤部が成形されつつ蓄光部が基盤部に接着され、基盤部に対して蓄光部が正面側に部分的に凸起して設けられる。基盤部は、正面視における面積が、正面視における蓄光部の面積より大きく設定される。これにより、請求項1の効果と同様の効果がある。
請求項7記載の蓄光体の製造方法によれば、基盤部の正面の2箇所以上に蓄光部が分かれて形成または配置されるので、請求項1から6のいずれかの効果に加え、蓄光体のデザイン性を向上できる効果がある。
請求項8記載の蓄光体の製造方法によれば、配置工程により、板状または塊状に形成された支持体の表面から裏面に亘って貫通形成される凹部に、請求項1から7のいずれかに記載の製造方法により製造された蓄光体の蓄光部を配置し、凹部を形成する内壁部の背面側に蓄光体の基盤部が配置される。これにより、案内や標識等の用途や目的に応じた蓄光部を支持体に配置できると共に、基盤部により凹部から蓄光体が離脱することが阻止される。よって、請求項1から7のいずれかの効果に加え、蓄光体の汎用性を向上できる効果がある。
(a)は本発明の第1実施の形態における蓄光体の斜視図であり、(b)は蓄光体の軸方向断面図である。
(a)は蓄光体の斜視図であり、(b)は蓄光体の製造工程を説明する成形型、基盤部および蓄光部の断面図である。
(a)は第2実施の形態における蓄光体の斜視図であり、(b)は蓄光体の製造工程を説明する成形型、基盤部および蓄光部の断面図である。
(a)は第3実施の形態における蓄光体の斜視図であり、(b)は蓄光体の製造工程を説明する成形型および蓄光部の断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して蓄光体1について説明する。図1は本発明の第1実施の形態における蓄光体1の斜視図であり、図1(b)は蓄光体1の軸方向断面図である。図1(a)及び図1(b)に示すように蓄光体1は、鋼管パイプ(パイプP)や鉄筋(図示せず)の端部に被着されるキャップであり、パイプPや鉄筋の端部が剥き出しになることを防ぐ保護具(安全用品)である。
図1(a)に示すように蓄光体1は、円筒状に形成される内筒2と、内筒2の一端に設けられる略円盤状の支持体3と、内筒2の外側に位置し支持体3の外周から軸方向に延設される外筒4と、支持体3の略中心に貫通形成される凹部3aと、凹部3aに装着される蓄光体11とを主に備えている。蓄光体1を構成する内筒2、支持体3及び外筒4等は、ポリエチレン等の合成樹脂製により一体に形成されている。
図1(b)に示すように、内筒2はパイプPに嵌入される部位であり、一端に支持体3が設けられている。支持体3は、内筒2をパイプPに嵌入するときにハンマー等により打撃される部位であり、パイプPの端部に先端が当接する外筒4が外周に設けられている。当接部5は、凹部3aを形成する内壁部6の外側かつ内筒2の内側に位置するピン状乃至は環状に形成される部位であり、内筒2に嵌入された有底筒状の補強部材7の底部が当接する。
補強部材7は、内筒2を補強するためのナイロン等の合成樹脂製の部材であり、軸中心に円筒状の孔部7aが形成されている。孔部7aは、外径がパイプPの外径より小さい鉄筋(図示せず)が嵌入される部位である。補強部材7に孔部7aが形成されるので、パイプPに代えて、鉄筋(図示せず)を孔部7aに嵌入することで、鉄筋の端部に蓄光体1を装着することができる。内壁部6は、補強部材7の底面と当接部5とにより囲まれた空間内に蓄光体11を保持するための部位であり、軸方向長(図1(b)上下方向長さ)が当接部5の軸方向長より小さく設定されている。
蓄光体11は、平板状に形成された基盤部12と、基盤部12の正面側(上面側、図1(b)上側)に凸起して一体に形成された蓄光部13とを備えている。基盤部12は、正面視における面積が、正面視における蓄光部13の面積より大きく設定されており、補強部材7と内壁部6との間に基盤部12が位置し、内壁部6の内側に蓄光部13が位置する。また、基盤部12の厚さ(図1(b)上下方向寸法)は、当接部5及び内壁部6の軸方向長の差と略等しい値に設定されているので、凹部3aの内側に蓄光部13を配置できる。さらに、蓄光部13の厚さは内壁部6の軸方向長と同一乃至はわずかに小さめに設定されているので、蓄光部13は支持体3と面一乃至はわずかに凹んで配置される。その結果、蓄光部13の視認性を確保しつつ、支持体3をハンマー等で打撃したときに蓄光部13は打撃されないようにできる。
次に図2を参照して蓄光体11について説明する。図2(a)は蓄光体11の斜視図であり、図2(b)は蓄光体11の製造工程を説明する成形型101、基盤部12及び蓄光部13の断面図である。図2(a)に示すように蓄光体11は、正面視して略円形状に形成される基盤部12と、基盤部12に積重されると共に基盤部12に対して正面側に凸起して形成される正面視して略円形状の蓄光部13とを備えている。本実施の形態では、基盤部12及び蓄光部13はシリコーン製(シリコーンゴム製)であり、蓄光部13を構成するシリコーン(高分子化合物)には蓄光顔料が混合されている。
蓄光顔料としては、太陽光や人工照明の光を照射したときに暗所で比較的長い時間発光を持続する機能をもつ1種乃至は複数種の顔料が用いられる。例えば、硫黄系や酸化物系の蓄光顔料を用いることができる。硫黄系の蓄光顔料としては、例えば、硫化カルシウム/ビスマス系、硫化亜鉛/銅系等を挙げることができる。酸化物系の蓄光顔料としては、例えば、M1Al2O4,M2Al14O25(但しM1,M2はカルシウム、ストロンチウム、バリウムの内の少なくとも1種)で表される化合物の一方または両方を母結晶とするものを挙げることができる。
蓄光部13は蓄光顔料に加えて着色剤が混合され、基盤部12とは異なる色に調製されることで、可視光下で視認される所定の図柄(本実施の形態では円)が形成されている。これにより、蓄光部13が燐光を発しない明時(太陽光や人工照明の光の照射下)においても、可視光下における視覚的興趣を向上できる。なお、蓄光部13による図柄は、円等の幾何学模様に限られるものではなく、その他の図記号、文字、模様等を採用できる。
次に図2(b)を参照して、蓄光体11の製造方法について説明する。蓄光体11は、成形型101に凹設された第1凹面102及び第2凹面103に高分子化合物を流し込み、硬化させることにより製造される。第1凹面102により蓄光部13を型成形するためのキャビティが形成され、第2凹面103は基盤部12を型成形するためのキャビティが形成される。本実施の形態では、成形型101はFRP製であり、注型成形により蓄光体11が製造される。
蓄光体11を製造するには、まず、変成シリコーンを主成分とする縮合型の1成分系シリコーン製(変成シリコーン系)の高分子化合物に蓄光顔料および着色剤を混合する。次いで、蓄光顔料および着色剤が混合された液状の高分子化合物を、成形型101の第1凹面102に流し込む(蓄光部成形工程)。第1凹面102に流し込まれた高分子化合物が完全に硬化する前に、蓄光顔料が混合されていない変成シリコーン系(縮合型の1成分系)の高分子化合物を、成形型101の第2凹面103に流し込む(基盤部成形工程)。第1凹面102に流し込まれた高分子化合物(基盤部12及び蓄光部13)の硬化により、第2凹面103に流し込まれた高分子化合物(蓄光部13)と基盤部12とを接着させる(接着工程)。高分子化合物の硬化後、基盤部12及び蓄光部13を成形型101から脱型し、蓄光体11を得る。
以上説明した蓄光体11の製造方法によれば、蓄光部13は蓄光顔料が混合されているので、基盤部12の正面側の特定の箇所に、燐光を放つ蓄光顔料を配置できる。蓄光顔料を含有する蓄光層をマスキングにより部分的に隠蔽する場合、隠蔽された蓄光層に含まれる蓄光顔料が無駄になるが、本製造方法によれば、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料を抑制できる。その結果、蓄光体11が必要とする蓄光顔料の量(蓄光顔料のコスト)を低減できる。
また、蓄光部13は成形型101に流し込まれて成形されるので、成形型101(第1凹面102)を適宜設計することにより、蓄光部13の形状を適宜設定できる。また、蓄光部13の厚さを容易に大きくすることができる。蓄光顔料が混合された蓄光部13の残光輝度は、励起光が透らなくなる所定の厚さまでは蓄光部13の厚さにほぼ比例して高くなるので、簡便に残光輝度を上げることができる。
また、成形型101の第1凹面102(キャビティ内面)及び第2凹面103の位置関係によって基盤部12に対する蓄光部13の位置が決定され、その位置関係は基盤部12と蓄光部13とが接着されるときも変わらないので、基盤部12に対する蓄光部13の位置ばらつきを生じ難くできる。
また、基盤部12を構成する高分子化合物の硬化と蓄光部13の接着とを同時に行うので、基盤部12を構成する高分子化合物を硬化させた後、その基盤部12を蓄光部13に接着する場合と比較して、蓄光体11の製造工程を短縮化できる。特に、基盤部12及び蓄光部13の硬化と、蓄光部13と基盤部12との接着とが同時に行われるので、硬化後の高分子化合物(蓄光部13)の濡れ性等に影響されることなく、基盤部12及び蓄光部13の接合強度を確保できる。
また、蓄光体11は注型成形により製造されるので、成形型101の製造コストを抑えることができ、小ロット生産を可能にできる。さらに、成形型101に流し込む液状の高分子化合物に蓄光顔料を混合するので、蓄光部13に対する蓄光顔料の配合率を高めることができる。その結果、蓄光部13の残光輝度を向上できる。
ここで、蓄光顔料は、第1凹面102に流し込む高分子化合物及び蓄光顔料の総質量100質量部に対して3〜70質量部、好ましくは30〜70質量部の割合で混合される。これにより、液状の高分子化合物の流動性を確保しつつ蓄光部13の残光輝度を確保できる。なお、蓄光顔料の配合が少なくなるにつれ蓄光部13の残光輝度が低下する傾向がみられ、30質量部より少なくなると、蓄光部13の残光輝度が基盤部12の色の影響を受けて顕著に低くなることがある。また、蓄光顔料の配合が70質量部より多くなると、高分子化合物の種類や蓄光顔料の粒度にもよるが、流動性が低下し注型成形が困難になる傾向がみられる。
図1に戻って、蓄光体1の製造方法について説明する。蓄光体1の内筒2に補強部材7を嵌入する前に、内筒2の背面側(図1(b)下側)から蓄光体11を配置する(配置工程)。配置された蓄光体11は、内壁部6の内側に蓄光部13が位置し、内壁部6の先端側に基盤部12が位置する。次いで、補強部材7の底面が当接部5の先端に当接するまで、内筒2内に補強部材7を嵌入する。これにより、補強部材7と内壁部6との間に蓄光体11が保持される。
蓄光体11は、基盤部12の正面視における面積が、蓄光部13の正面視における面積より大きく設定されているので、内壁部6(図1(b)参照)の先端を基盤部12の上面に位置させることができる。その結果、基盤部12により凹部3aから蓄光体11が離脱することが阻止されるので、支持体3と補強部材7との間に蓄光体11を簡易に保持できる。その結果、パイプPや鉄筋(図示せず)の先端に蓄光体1を取り付けることにより、支持体3及び外筒4によりパイプPや鉄筋の端部が剥き出しになることを防止できると共に、蓄光部13の燐光により夜間も注意を喚起できる。
また、支持体3に貫通形成される凹部3aに蓄光部13が配置されるので、案内や標識、注意喚起等の用途や目的に応じた蓄光部13を支持体3に配置できる。その結果、支持体3の形状等に応じて、蓄光体11の汎用性を向上できると共に、応用範囲を拡大できる。
次に図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、基盤部12と蓄光部13とが密着する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、基盤部22と蓄光部23との間に反射層24が介設される場合について説明する。図3(a)は第2実施の形態における蓄光体21の斜視図であり、図3(b)は蓄光体21の製造工程を説明する成形型201、基盤部22及び蓄光部23の断面図である。
図3(a)に示すように蓄光体21は、正面視して略矩形状に形成される透明な基盤部22と、基盤部22に積重されると共に基盤部22に対して正面側に凸起して幾何学模様が形成された蓄光部23と、蓄光部23と基盤部22との間に介設された反射層24とを備えている。本実施の形態では、基盤部22及び蓄光部23はエポキシ系樹脂製であり、蓄光部23を構成するエポキシ系樹脂(高分子化合物)には蓄光顔料および着色剤が混合されている。蓄光顔料は、第1実施の形態で説明したものと同一であるので、説明を省略する。
基盤部22は、略平板状に形成された基部22aと、基部22aの中央が凸起した凸起部22bとを備えている。また、蓄光部23は、凸起部22bの周囲に分かれて配置される第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bを備えている。本実施の形態では、凸起部22bは正面視して略円形状に形成され、第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bは正面視して略C形に形成されている。第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bは、種類の異なる蓄光顔料が混合されており、互いに異なる色の燐光を放つように構成されている。なお、基部22aに対する凸起部22bの高さは、基部22aに対する第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bの高さと同一の値に設定されている。
次に図3(b)を参照して、蓄光体21の製造方法について説明する。蓄光体21は、成形型201に凹設された第2凹面203及び2つの第1凹面202に高分子化合物を流し込み、硬化させることにより製造される。2つの第1凹面202により蓄光部23(第1蓄光部23a及び第2蓄光部23b)及び反射層24を型成形するためのキャビティが形成され、第2凹面203により基盤部22を型成形するためのキャビティが形成される。本実施の形態では、成形型201はシリコーン製であり、注型成形により蓄光体21が製造される。
蓄光体21を製造するには、まず、エポキシ系樹脂(高分子化合物)に蓄光顔料および着色剤を混合する。種類の異なる蓄光顔料が混合された高分子化合物を2種類用意しておく。次いで、一方の蓄光顔料および着色剤が混合された高分子化合物を、成形型201の一方の第1凹面202(図3(b)右側)に流し込み、他方の蓄光顔料および着色剤が混合された高分子化合物を、他方の第1凹面202(図3(b)左側)に流し込む(蓄光部成形工程)。第1凹面202に流し込まれた高分子化合物が硬化して収縮したところ(凹んで第2凹面203との境界に対して低くなったところ)に、反射層24を形成する高分子化合物を塗布する(反射層配置工程)。本実施の形態では、反射層24(白色反射層)は、ポリエステル系樹脂等に酸化チタン粉末を混合した白色塗料により形成される。
白色塗料が硬化した後、透明なエポキシ系樹脂(高分子化合物)を、成形型201の第2凹面203に流し込む(基盤部成形工程)。第2凹面203に流し込まれた高分子化合物の硬化により、反射層24に基盤部22が接着される(接着工程)。高分子化合物の硬化後、基盤部22、蓄光部23及び反射層24を成形型201から脱型し、蓄光体21を得る。
以上説明した蓄光体21の製造方法によれば、蓄光部23の背面に反射層24が配置され、反射層24は蓄光部23と基盤部22との間に挟み込まれる。その結果、蓄光顔料による燐光が正面側(基盤部22の反対側)に反射されるので、第1実施の形態で得られる効果に加え、蓄光部23の残光輝度を向上できる。
また、第1凹面202に流し込まれた高分子化合物が硬化して収縮したところ(第1凹面202内)に、反射層24を形成する高分子化合物(白色塗料)が塗布されるので、蓄光部23の周囲に白色塗料をはみ出し難くできる。その結果、蓄光部23の周囲にはみ出した白色塗料(反射層)が原因となって、蓄光体21の見栄えが悪くなることを防止できる。
なお、蓄光体21は、シリコーン系と比較して撥水性の弱いエポキシ系樹脂により基盤部22が形成されるので、基盤部22の背面に粘着剤を塗布することによる粘着層の形成を容易にできる。これにより、対象物(図示せず)に対する蓄光体21の取着手段の適用例を増やすことができ、蓄光体21の応用範囲を拡大できる。
また、基盤部22の正面の複数箇所(本実施の形態では2箇所)に蓄光部23(第1蓄光部23a及び第2蓄光部23b)が分かれて形成されるので、蓄光体21のデザイン性を向上できる。なお、その蓄光部23は、成形型201を適宜設計することにより任意の位置に形成できる。さらに、第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bは、互いに異なる色の燐光を放つように設定されているので、蓄光体21のデザイン性をさらに向上できる。
なお、本実施の形態では、白色塗料の塗布により反射層24を形成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、基盤部22や蓄光部23を形成する場合と同様に、高分子化合物の流し込みにより反射層24を形成することは当然可能である。また、予め用意された白色のシート(白色形成物)を、第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bと基盤部22との間に配置し挟み込むことにより反射層24とすることは当然可能である。
次に図4を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、高分子化合物製の基盤部12,22が型成形により形成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、別途用意した基盤部32を蓄光部33に接着して蓄光体31を製造する場合について説明する。図4(a)は第3実施の形態における蓄光体31の斜視図であり、図4(b)は蓄光体31の製造工程を説明する成形型301及び蓄光部33の断面図である。
図4(a)に示すように蓄光体31は、正面視して略矩形状に形成される基盤部32と、基盤部32に積重されると共に基盤部32に対して正面側に凸起して図記号(矢印)が形成された蓄光部33とを備えている。本実施の形態では、基盤部32は柔軟性を有する布製であり、蓄光部33を構成するシリコーンゴム(高分子化合物)には蓄光顔料および着色剤が混合されている。蓄光顔料は、第1実施の形態で説明したものと同一であるので、説明を省略する。
次に図4(b)を参照して、蓄光体31の製造方法について説明する。蓄光体31は、成形型301に凹設された凹面302に高分子化合物を流し込み、硬化させて蓄光部33を形成すると共に、蓄光部33に基盤部32を接着することにより製造される。凹面302により蓄光部33を型成形するためのキャビティが形成される。本実施の形態では、成形型301はアルミニウム合金製(金属製)であり、注型成形により蓄光体31が製造される。
蓄光体31を製造するには、まず、シリコーン(高分子化合物)に蓄光顔料および着色剤を混合する。次いで、蓄光顔料および着色剤が混合された液状の高分子化合物を、成形型301の凹面302に流し込む(蓄光部成形工程)。凹面302に流し込まれた高分子化合物が硬化して収縮したところ(凹んで成形型301の上面の高さに対して低くなったところ)に、透明な高分子化合物(本実施の形態では、蓄光顔料および着色剤が混合されていないシリコーン)を流し込む。
凹面302に流し込まれた透明な高分子化合物が硬化する前に、成形型301の上面に基盤部32(布製)を置き、凹面302内の高分子化合物と基盤部32とを接触させる。シリコーン(液状の高分子化合物)は基盤部32の繊維間に浸透する。高分子化合物の硬化により、主にアンカー効果によって、蓄光部33と基盤部32とが接着される(接着工程)。蓄光部33と基盤部32とが接着した後、蓄光部33を成形型301から脱型し、蓄光体31を得る。
以上説明した蓄光体31の製造方法によれば、成形型301(凹面302)に流し込まれた高分子化合物の硬化により蓄光部33が基盤部32に接着される。蓄光部33を構成する高分子化合物の硬化と基盤部32の接着とを同時に行うことで、蓄光部33を構成する高分子化合物を硬化させた後、その蓄光部33を基盤部32に接着する場合と比較して、蓄光体31の製造工程を短縮化できる。
また、蓄光顔料が混合された高分子化合物の収縮後、凹面302に透明な高分子化合物を流し込み、その凹面302内の高分子化合物と基盤部32とを接触させるので、基盤部32と凹面302内の高分子化合物とを確実に接触させることができる。また、凹面302内の高分子化合物の収縮(所謂ヒケ)を補うことができるので、凹面302内の高分子化合物の収縮により蓄光部33と基盤部32との接合強度が低下することを防止できる。また、蓄光部33の周囲に高分子化合物がはみ出して硬化した場合も、高分子化合物が透明なので、蓄光体31の見栄えが悪化することを抑制できる。
また、基盤部33の背面に布製の基盤部32が固定され、正面視における基盤部32の大きさは正面視における蓄光部33より大きく設定されるので、衣服等(対象物)の表面に布製の基盤部32を縫い付けることができる。なお、アイロン等の熱により溶融する熱接着層を基盤部32の背面に設けることで、衣服等(対象物)の表面に基盤部32を貼り付けることも可能である。
また、基盤部32は柔軟性を有する部材(布製)により形成され、蓄光部33は、シリコーン製の高分子化合物により形成される。シリコーン製の高分子化合物の硬化により蓄光部33は基盤部32に接着される。シリコーン製の高分子化合物は基盤部32(布)の繊維間に浸透して硬化するので、アンカー効果により蓄光部33は基盤部32に強固に接着される。また、シリコーン製の高分子化合物は硬化後にゴム状となるので、基盤部32の柔軟性も維持される。その結果、蓄光部33が接着された基盤部32の柔軟性を維持できる。
なお、シリコーン製の高分子化合物と基盤部32との接着メカニズムをアンカー効果に限定するものではない。基盤部32の種類によって、基盤部32の表面と蓄光部33とを化学反応により接着するようにすることは当然可能である。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、基盤部12,22,32や蓄光部13,23,33の形状や大きさは、蓄光体11,21,31の目的に応じて、適宜設計される。
上記第1実施の形態では、縮合型の1成分系シリコーン製(変成シリコーン系)の高分子化合物を用いて蓄光体11を成形する場合について説明したが、他の高分子化合物を採用することは当然可能である。他の高分子化合物としては、例えば、付加型のシリコーン系、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、紫外線硬化樹脂が挙げられる。また、高分子化合物は1成分系(1液型)樹脂に限定するものではなく、2液型などの多成分系樹脂を用いることは当然可能である。
なお、蓄光体11の材質や形状、成形型101の耐久性等を考慮して、成形型101は材質を適宜設定できる。また、第2実施の形態および第3実施の形態における高分子化合物も、第1実施の形態と同様に、他の高分子化合物を採用することは当然可能である。なお、第1実施の形態および第2実施の形態を、減圧下で注型成形を行う真空注型とすることも可能である。
上記第1実施の形態および第2実施の形態では、注型成形により蓄光体11,21を製造する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の成形手段を採用することは当然可能である。他の成形手段としては、例えば、射出成形、中空成形、圧縮成形が挙げられる。射出成形、中空成形、圧縮成形により蓄光体11,21を製造する場合、金属製の成形型101,201を用い、別の成形型と組み合せてキャビティを形成する。
射出成形や中空成形により蓄光体11,21を製造する場合は、高分子化合物(合成樹脂や合成ゴム等)のマスターバッチと蓄光顔料(最終的に混練する目標値の約半分量)とをミキサー等を用いて混合し、所定の温度に加熱しながら押出機等を使用して混練する。次いで、得られた混練品と蓄光顔料(最終的に混練する残量)とをミキサー等を用いて混合し、所定の温度に加熱しながら押出機等を使用して混練する。
なお、蓄光顔料を複数回に分けて混練せずに一度に混練する場合には、高分子化合物のマスターバッチと蓄光顔料とを混練するときの流動性が低下し、蓄光顔料の分散性が低下する傾向がみられる。これに対し、蓄光顔料を複数回に分けて混練することにより流動性を向上させ、蓄光顔料の分散性を向上できる。その結果、蓄光顔料が蓄光部13,23の一部に偏在することを防止できる。そして、軟化温度に加熱した高分子化合物を、射出圧力を加えて成形型に流し込み、キャビティに充填して成形する。
圧縮成形により蓄光体を製造する場合には、粉末状(顆粒状)の高分子化合物(主に熱硬化性樹脂)と蓄光顔料とを混合し、それらを成形型のキャビティに流し込んだ後、加熱および加圧をすることにより硬化させ成形する。
上記第1実施の形態では、パイプPや鉄筋の端部が剥き出しになることを防ぐ保護具(安全用品)としての蓄光体1を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、支持体3の形状や大きさを適宜設計することにより、蓄光体を案内板や標識等とすることは当然可能である。
また、上記実施の形態で説明した蓄光体11,21,31は任意の形状に成形できるので、蓄光体11,21,31をマスコット、ペンダント、キーホルダー等の玩具、日用雑貨、名札等の小物や、床材や縁石等の建築用部材や土木用部材とすることは当然可能である。
上記実施の形態では、基盤部12,22,32の表面に蓄光部13,23,33が一つ配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、物理的に分離した2以上の蓄光部を基盤部の表面に設けることは当然可能である。
上記第1実施の形態では、支持体3が板状(平面状)に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、蓄光体の形態に応じて塊状(立体状)に形成することは当然可能である。
また、支持体3に凹部3aが貫通形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、支持体が塊状に形成されるときには、支持体の表面に凹部を窪み状に形成し、その凹部に蓄光体を装着可能にすることは当然可能である。
上記第1実施の形態および第2実施の形態では、一つの成形型101,201により蓄光部13,23及び基盤部12,22を接合(接着)して蓄光体11,21を製造する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、蓄光部13,23を成形する成形型と、蓄光部13,23と基盤部12,22とを接合(接着)する成形型とを異ならせることは可能である。
この場合、まず、一の成形型(図示せず)により蓄光部13,23を成形する。この場合の成形は、注型成形、射出成形、圧縮成形等、種々の成形方法を採用できる。その後、成形された蓄光部13,23を他の成形型(図示せず)のキャビティ内面に配置(仮固定)する(蓄光部配置工程)。次いで、蓄光部13,23が配置された他の成形型内(キャビティ内)に高分子化合物を流し込んで、基盤部12,22を成形しつつ蓄光部13,23を基盤部12,22に接着する(蓄光部接着工程)。この場合の基盤部12,22の成形も、注型成形、射出成形、圧縮成形等、種々の成形方法を採用できる。以上のように、蓄光部13,23を成形する成形型と、蓄光部13,23と基盤部12,22とを接合(接着)する成形型とを異ならせた場合も、第1実施の形態または第2実施の形態で得られる効果を実現できる。
また、注型成形、射出成形、圧縮成形等により蓄光部13,23を成形するのではなく、蓄光顔料を含有する蓄光シートや陶板(無機材料製基板)等の燐光を放つ性質をもつ部材(以下「蓄光部材」と称す)を、所定の外形形状に調製して用いることは当然可能である。その場合、まず、所定の形状に調製された蓄光部材(蓄光部)を成形型のキャビティ内面に配置する(蓄光部配置工程)。次いで、蓄光部材(蓄光部)が配置された成形型内(キャビティ内)に高分子化合物を流し込んで、基盤部を成形しつつ蓄光部を基盤部に接着する(蓄光部接着工程)。この場合も、基盤部の成形は注型成形、射出成形、圧縮成形等、種々の成形方法を採用でき、第1実施の形態または第2実施の形態で得られる効果を実現できる。
蓄光部材(蓄光部)の背面に接着層を設けることは当然可能である。接着層としては、高分子化合物の素材に適した感熱性あるいは感圧性の高分子化合物を適宜選択する。また、蓄光部材(蓄光部)の背面に反射層(白色反射層)を設けることは当然可能である。反射層としては、白色塗料を塗布して蓄光部材(蓄光部)の背面に形成された塗装層や、蓄光部材(蓄光部)の背面に配置される白色シートを用いることができる。その白色シート(反射層)に接着層を設けることも当然可能である。
上記第3実施の形態では基盤部32が布製の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の材質や部材を採用することは当然可能である。他の材質や部材としては、例えば、紙製や合成樹脂製のシートや壁紙;皮革(天然皮革、人造皮革);合成樹脂製やガラス製、金属製の板材;金属製や合成樹脂製の網;タイル(無機材料製)等が挙げられる。また、合成樹脂製等の再帰反射板を基盤部32とすることも当然可能である。基盤部32として種々の材質や部材を採用できるので、蓄光体31の用途を拡大できる。
なお、紙、皮革等(繊維の集合体)や網等の網目(繊維間や線材間の隙間)を有するものを基盤部32として採用した場合には、網目を埋めるような状態で高分子化合物が硬化することによりアンカー効果が得られる。シリコーン(シリコーンゴム)は難接着材であるが、アンカー効果を利用することにより基盤部32と蓄光部33との接着強度を向上できる。
上記第3実施の形態では、蓄光部33の硬化と同時に基盤部32を接着する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、蓄光部33を成形した(硬化させた)後、接着剤等を用いて、基盤部32に蓄光部33を接着することは当然可能である。その場合、基盤部32と蓄光部33との接着強度を向上させるため、基盤部32や蓄光部33にプライマ処理を施すことは可能である。
また、第2実施の形態で説明した反射層24を、第1実施の形態および第3実施の形態で説明した蓄光体11,31に設けることは当然可能である。蓄光部13,33の背面に反射層24を設けることにより、蓄光部13,33の残光輝度を向上できる。なお、反射層24を設ける代わりに、基盤部12,32を白色にして、基盤部12,32によって蓄光部13,33の燐光を反射するような構成とすることは当然可能である。
蓄光部13,23,33(蓄光部材を含む)の厚さとしては、蓄光顔料の粒度、基盤部12,22,32の色(背景色)や大きさにもよるが、0.5mmから10cmが好適に用いられる。蓄光部13,23,33(蓄光部材を含む)の残光輝度を基盤部12,22,32の色に影響され難くするためである。
本実施の形態では、蓄光部13,23,33が硫黄系や酸化物系の蓄光顔料を含有する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、外部からの励起光のエネルギーを吸収して燐光を放つ他の蓄光顔料を採用することは当然可能である。また、蓄光部13,23,33が着色剤を含有する場合について説明したが、着色剤は必ずしも必要ではない。
1,11,21,31 蓄光体
3 支持体
3a 凹部
6 内壁部
12,22,32 基盤部
22a 基部(基盤部)
22b 凸起部(基盤部)
13,23,33 蓄光部
23a 第1蓄光部(蓄光部)
23b 第2蓄光部(蓄光部)
24 反射層
101,201,301 成形型
102,202 第1凹面(キャビティ内面)
103,203 第2凹面
302 凹面(第1凹面)
本発明は蓄光体の製造方法に関し、特に、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料を抑制できると共に、簡便に残光輝度を上げつつ、燐光を放つ部位の位置ばらつきを生じ難くできる蓄光体の製造方法に関するものである。
従来より、部材の表面の一部を燐光によって発光させる手段として、蓄光顔料を含有する蓄光層を基体シートの表面の全部に形成し、マスキングによって蓄光層を部分的に隠蔽するものが知られている。マスキングは、粘着シートを基体シートの表面に貼付したり印刷用ペーストを基体シートの表面に印刷したりすることで行われる。この場合、マスキングにより隠蔽された蓄光層は燐光を放つことに使われないので、隠蔽された蓄光層に含まれる蓄光顔料が無駄になるという問題があった。
そこで、部材の表面に蓄光層を部分的に形成する技術として、例えば、蓄光顔料を含有する燐光柄層(蓄光層)が形成された基体シートを成形金型内に送り込み、成形金型を閉じた後にキャビティ内に溶融樹脂を射出充満し、成形と同時に成形体の表面に燐光柄層を接着する技術が知られている(特許文献1)。特許文献1に開示される技術では、マスキングすることなく蓄光層を部分的に形成できるので、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料が生じることを防止できる。
しかしながら特許文献1に開示される技術では、燐光柄層(蓄光層)は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の通常の印刷法により作られるので、基体シートに形成される蓄光層の厚さ(乾燥厚さ)は60〜150μm程度であった。それが成形金型内で接着されることによって成形体の表面に蓄光層が形成されるので、成形体の表面の蓄光層の厚さも60〜150μm程度であった。蓄光層の残光輝度は蓄光層の厚さにほぼ比例して高くなる傾向があるが、印刷法では蓄光層の厚さを大きくすることが難しい。そのため、蓄光層に含まれる蓄光顔料の種類や配合量等を変更しなければ残光輝度を上げ難いという問題点があった。
また、特許文献1に開示される技術では、キャビティ内に送り込まれた基体シートは、キャビティ内に充填された溶融樹脂によってキャビティ内を移動し、最終的にキャビティ内面に押し付けられる。基体シートに形成された蓄光層は、溶融樹脂とキャビティ内面とに挟まれた位置で溶融樹脂(成形体)の表面に接着される。成形および接着のときにキャビティ内で基体シートが移動するので、成形体の表面に対する蓄光層の位置にばらつきが生じ易いという問題点があった。
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料を抑制できると共に、簡便に残光輝度を上げつつ、燐光を放つ部位の位置ばらつきを生じ難くできる蓄光体の製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段および発明の効果
この目的を達成するために請求項1記載の蓄光体の製造方法によれば、蓄光顔料が混合された高分子化合物が、対象物に取着される基盤部が接触される面または基盤部が成形される面に対して凹設された成形型の第1凹面に流し込まれて、蓄光部成形工程により蓄光部が成形される。その蓄光部成形工程により成形された蓄光部の背面に、接着工程により基盤部が接着され、基盤部に対して蓄光部が正面側に部分的に凸起して設けられる。蓄光部は蓄光顔料が混合されているので、基盤部の正面側の特定の箇所に、燐光を放つ蓄光顔料を配置できる。その結果、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料を抑制できる効果がある。
また、蓄光部は成形型に流し込まれて成形されるので、成形型を適宜設計することにより、蓄光部の形状を適宜設定できると共に、蓄光部の厚さを容易に大きくすることができる。蓄光顔料が混合された蓄光部の残光輝度は、励起光が透らなくなる所定の厚さまでは蓄光部の厚さにほぼ比例して高くなるので、簡便に残光輝度を上げることができる効果がある。
また、蓄光部の位置は成形型に凹設された第1凹面により決定され、基盤部との接着のときにも移動しないので、基盤部に対する蓄光部の位置ばらつきを生じ難くできる効果がある。また、蓄光部は、基盤部に対して正面側に凸起して形成されるので、蓄光体を立体的にすることができ視覚的興趣を向上できる効果がある。
さらに、蓄光部により基盤部の正面に、可視光下で視認される所定の図柄が形成されるので、可視光下における視覚的興趣を向上できる効果がある。
また、基盤部は、正面視における面積が、蓄光部の正面視における面積より大きく設定されている。基盤部は対象物に取着される部位なので、基盤部の正面視における面積を、蓄光部の正面視における面積より大きく設定することで、基盤部を対象物に取着し易くすることができる。その結果、蓄光体を対象物に取着するときの自在性を向上できる効果がある。
さらに、蓄光部成形工程により第1凹面に成形された蓄光部の背面であって第1凹面内に、反射層配置工程により、蓄光顔料の燐光を反射する反射層が配置される。その反射層配置工程により配置された反射層は、蓄光部と基盤部との間に挟み込まれるので、蓄光部の残光輝度を向上できる効果がある。
請求項2記載の蓄光体の製造方法によれば、接着工程は、蓄光部成形工程により成形型に流し込まれた高分子化合物の硬化により蓄光部を基盤部に接着する。蓄光部を構成する高分子化合物の硬化と基盤部の接着とを同時に行うことで、蓄光部を構成する高分子化合物を硬化させた後、その蓄光部を基盤部に接着する場合と比較して、蓄光体の製造工程を短縮化できる。よって、請求項1の効果に加え、蓄光体の製造工程を短縮化できる効果がある。
請求項3記載の蓄光体の製造方法によれば、蓄光部成形工程の後、基盤部成形工程により、高分子化合物が、成形型に凹設されると共に背面視における第1凹面の面積より背面視における面積が大きく設定される第2凹面に流し込まれて基盤部が成形される。接着工程は、基盤部成形工程により成形型に流し込まれた高分子化合物の硬化により蓄光部を基盤部に接着する。基盤部を構成する高分子化合物の硬化と蓄光部の接着とを同時に行うことで、基盤部を構成する高分子化合物を硬化させた後、その基盤部を蓄光部に接着する場合と比較して、蓄光体の製造工程を短縮化できる。よって、請求項1又は2の効果に加え、蓄光体の製造工程を短縮化できる効果がある。
請求項4記載の蓄光体の製造方法によれば、基盤部は、柔軟性を有する部材により形成される。蓄光部は、シリコーン製の高分子化合物により形成され、硬化により基盤部に接着される。シリコーン製の高分子化合物は硬化してゴム状となるので、基盤部の柔軟性を維持したまま接着される。その結果、請求項2の効果に加え、蓄光部が接着された基盤部の柔軟性を維持できる効果がある。
請求項5記載の蓄光体の製造方法によれば、蓄光顔料を含有する蓄光部が、蓄光部配置工程により、対象物に取着される基盤部が成形される成形型のキャビティ内面に凹設された第1凹面に配置される。その蓄光部配置工程により蓄光部が配置されたキャビティ内に高分子化合物が流し込まれて、蓄光部接着工程により基盤部が成形されつつ蓄光部が基盤部に接着され、基盤部に対して蓄光部が正面側に部分的に凸起して設けられる。基盤部は、正面視における面積が、正面視における蓄光部の面積より大きく設定される。これにより、請求項1の効果と同様の効果がある。
また、蓄光部配置工程により第1凹面に配置された蓄光部の背面であって第1凹面内に、反射層配置工程により、蓄光顔料の燐光を反射する反射層が配置される。その反射層配置工程により配置された反射層は、蓄光部と基盤部との間に挟み込まれるので、蓄光部の残光輝度を向上できる効果がある。
請求項6記載の蓄光体の製造方法によれば、基盤部の正面の2箇所以上に蓄光部が分かれて形成または配置されるので、請求項1から5のいずれかの効果に加え、蓄光体のデザイン性を向上できる効果がある。
請求項7記載の蓄光体の製造方法によれば、配置工程により、板状または塊状に形成された支持体の表面から裏面に亘って貫通形成される凹部に、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法により製造された蓄光体の蓄光部を配置し、凹部を形成する内壁部の背面側に蓄光体の基盤部が配置される。これにより、案内や標識等の用途や目的に応じた蓄光部を支持体に配置できると共に、基盤部により凹部から蓄光体が離脱することが阻止される。よって、請求項1から6のいずれかの効果に加え、蓄光体の汎用性を向上できる効果がある。
(a)は本発明の第1実施の形態における蓄光体の斜視図であり、(b)は蓄光体の軸方向断面図である。
(a)は蓄光体の斜視図であり、(b)は蓄光体の製造工程を説明する成形型、基盤部および蓄光部の断面図である。
(a)は第2実施の形態における蓄光体の斜視図であり、(b)は蓄光体の製造工程を説明する成形型、基盤部および蓄光部の断面図である。
(a)は第3実施の形態における蓄光体の斜視図であり、(b)は蓄光体の製造工程を説明する成形型および蓄光部の断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して蓄光体1について説明する。図1は本発明の第1実施の形態における蓄光体1の斜視図であり、図1(b)は蓄光体1の軸方向断面図である。図1(a)及び図1(b)に示すように蓄光体1は、鋼管パイプ(パイプP)や鉄筋(図示せず)の端部に被着されるキャップであり、パイプPや鉄筋の端部が剥き出しになることを防ぐ保護具(安全用品)である。
図1(a)に示すように蓄光体1は、円筒状に形成される内筒2と、内筒2の一端に設けられる略円盤状の支持体3と、内筒2の外側に位置し支持体3の外周から軸方向に延設される外筒4と、支持体3の略中心に貫通形成される凹部3aと、凹部3aに装着される蓄光体11とを主に備えている。蓄光体1を構成する内筒2、支持体3及び外筒4等は、ポリエチレン等の合成樹脂製により一体に形成されている。
図1(b)に示すように、内筒2はパイプPに嵌入される部位であり、一端に支持体3が設けられている。支持体3は、内筒2をパイプPに嵌入するときにハンマー等により打撃される部位であり、パイプPの端部に先端が当接する外筒4が外周に設けられている。当接部5は、凹部3aを形成する内壁部6の外側かつ内筒2の内側に位置するピン状乃至は環状に形成される部位であり、内筒2に嵌入された有底筒状の補強部材7の底部が当接する。
補強部材7は、内筒2を補強するためのナイロン等の合成樹脂製の部材であり、軸中心に円筒状の孔部7aが形成されている。孔部7aは、外径がパイプPの外径より小さい鉄筋(図示せず)が嵌入される部位である。補強部材7に孔部7aが形成されるので、パイプPに代えて、鉄筋(図示せず)を孔部7aに嵌入することで、鉄筋の端部に蓄光体1を装着することができる。内壁部6は、補強部材7の底面と当接部5とにより囲まれた空間内に蓄光体11を保持するための部位であり、軸方向長(図1(b)上下方向長さ)が当接部5の軸方向長より小さく設定されている。
蓄光体11は、平板状に形成された基盤部12と、基盤部12の正面側(上面側、図1(b)上側)に凸起して一体に形成された蓄光部13とを備えている。基盤部12は、正面視における面積が、正面視における蓄光部13の面積より大きく設定されており、補強部材7と内壁部6との間に基盤部12が位置し、内壁部6の内側に蓄光部13が位置する。また、基盤部12の厚さ(図1(b)上下方向寸法)は、当接部5及び内壁部6の軸方向長の差と略等しい値に設定されているので、凹部3aの内側に蓄光部13を配置できる。さらに、蓄光部13の厚さは内壁部6の軸方向長と同一乃至はわずかに小さめに設定されているので、蓄光部13は支持体3と面一乃至はわずかに凹んで配置される。その結果、蓄光部13の視認性を確保しつつ、支持体3をハンマー等で打撃したときに蓄光部13は打撃されないようにできる。
次に図2を参照して蓄光体11について説明する。図2(a)は蓄光体11の斜視図であり、図2(b)は蓄光体11の製造工程を説明する成形型101、基盤部12及び蓄光部13の断面図である。図2(a)に示すように蓄光体11は、正面視して略円形状に形成される基盤部12と、基盤部12に積重されると共に基盤部12に対して正面側に凸起して形成される正面視して略円形状の蓄光部13とを備えている。本実施の形態では、基盤部12及び蓄光部13はシリコーン製(シリコーンゴム製)であり、蓄光部13を構成するシリコーン(高分子化合物)には蓄光顔料が混合されている。
蓄光顔料としては、太陽光や人工照明の光を照射したときに暗所で比較的長い時間発光を持続する機能をもつ1種乃至は複数種の顔料が用いられる。例えば、硫黄系や酸化物系の蓄光顔料を用いることができる。硫黄系の蓄光顔料としては、例えば、硫化カルシウム/ビスマス系、硫化亜鉛/銅系等を挙げることができる。酸化物系の蓄光顔料としては、例えば、M1Al2O4,M2Al14O25(但しM1,M2はカルシウム、ストロンチウム、バリウムの内の少なくとも1種)で表される化合物の一方または両方を母結晶とするものを挙げることができる。
蓄光部13は蓄光顔料に加えて着色剤が混合され、基盤部12とは異なる色に調製されることで、可視光下で視認される所定の図柄(本実施の形態では円)が形成されている。これにより、蓄光部13が燐光を発しない明時(太陽光や人工照明の光の照射下)においても、可視光下における視覚的興趣を向上できる。なお、蓄光部13による図柄は、円等の幾何学模様に限られるものではなく、その他の図記号、文字、模様等を採用できる。
次に図2(b)を参照して、蓄光体11の製造方法について説明する。蓄光体11は、成形型101に凹設された第1凹面102及び第2凹面103に高分子化合物を流し込み、硬化させることにより製造される。第1凹面102により蓄光部13を型成形するためのキャビティが形成され、第2凹面103は基盤部12を型成形するためのキャビティが形成される。本実施の形態では、成形型101はFRP製であり、注型成形により蓄光体11が製造される。
蓄光体11を製造するには、まず、変成シリコーンを主成分とする縮合型の1成分系シリコーン製(変成シリコーン系)の高分子化合物に蓄光顔料および着色剤を混合する。次いで、蓄光顔料および着色剤が混合された液状の高分子化合物を、成形型101の第1凹面102に流し込む(蓄光部成形工程)。第1凹面102に流し込まれた高分子化合物が完全に硬化する前に、蓄光顔料が混合されていない変成シリコーン系(縮合型の1成分系)の高分子化合物を、成形型101の第2凹面103に流し込む(基盤部成形工程)。第1凹面102に流し込まれた高分子化合物(基盤部12及び蓄光部13)の硬化により、第2凹面103に流し込まれた高分子化合物(蓄光部13)と基盤部12とを接着させる(接着工程)。高分子化合物の硬化後、基盤部12及び蓄光部13を成形型101から脱型し、蓄光体11を得る。
以上説明した蓄光体11の製造方法によれば、蓄光部13は蓄光顔料が混合されているので、基盤部12の正面側の特定の箇所に、燐光を放つ蓄光顔料を配置できる。蓄光顔料を含有する蓄光層をマスキングにより部分的に隠蔽する場合、隠蔽された蓄光層に含まれる蓄光顔料が無駄になるが、本製造方法によれば、燐光を放つことに寄与しない蓄光顔料を抑制できる。その結果、蓄光体11が必要とする蓄光顔料の量(蓄光顔料のコスト)を低減できる。
また、蓄光部13は成形型101に流し込まれて成形されるので、成形型101(第1凹面102)を適宜設計することにより、蓄光部13の形状を適宜設定できる。また、蓄光部13の厚さを容易に大きくすることができる。蓄光顔料が混合された蓄光部13の残光輝度は、励起光が透らなくなる所定の厚さまでは蓄光部13の厚さにほぼ比例して高くなるので、簡便に残光輝度を上げることができる。
また、成形型101の第1凹面102(キャビティ内面)及び第2凹面103の位置関係によって基盤部12に対する蓄光部13の位置が決定され、その位置関係は基盤部12と蓄光部13とが接着されるときも変わらないので、基盤部12に対する蓄光部13の位置ばらつきを生じ難くできる。
また、基盤部12を構成する高分子化合物の硬化と蓄光部13の接着とを同時に行うので、基盤部12を構成する高分子化合物を硬化させた後、その基盤部12を蓄光部13に接着する場合と比較して、蓄光体11の製造工程を短縮化できる。特に、基盤部12及び蓄光部13の硬化と、蓄光部13と基盤部12との接着とが同時に行われるので、硬化後の高分子化合物(蓄光部13)の濡れ性等に影響されることなく、基盤部12及び蓄光部13の接合強度を確保できる。
また、蓄光体11は注型成形により製造されるので、成形型101の製造コストを抑えることができ、小ロット生産を可能にできる。さらに、成形型101に流し込む液状の高分子化合物に蓄光顔料を混合するので、蓄光部13に対する蓄光顔料の配合率を高めることができる。その結果、蓄光部13の残光輝度を向上できる。
ここで、蓄光顔料は、第1凹面102に流し込む高分子化合物及び蓄光顔料の総質量100質量部に対して3〜70質量部、好ましくは30〜70質量部の割合で混合される。これにより、液状の高分子化合物の流動性を確保しつつ蓄光部13の残光輝度を確保できる。なお、蓄光顔料の配合が少なくなるにつれ蓄光部13の残光輝度が低下する傾向がみられ、30質量部より少なくなると、蓄光部13の残光輝度が基盤部12の色の影響を受けて顕著に低くなることがある。また、蓄光顔料の配合が70質量部より多くなると、高分子化合物の種類や蓄光顔料の粒度にもよるが、流動性が低下し注型成形が困難になる傾向がみられる。
図1に戻って、蓄光体1の製造方法について説明する。蓄光体1の内筒2に補強部材7を嵌入する前に、内筒2の背面側(図1(b)下側)から蓄光体11を配置する(配置工程)。配置された蓄光体11は、内壁部6の内側に蓄光部13が位置し、内壁部6の先端側に基盤部12が位置する。次いで、補強部材7の底面が当接部5の先端に当接するまで、内筒2内に補強部材7を嵌入する。これにより、補強部材7と内壁部6との間に蓄光体11が保持される。
蓄光体11は、基盤部12の正面視における面積が、蓄光部13の正面視における面積より大きく設定されているので、内壁部6(図1(b)参照)の先端を基盤部12の上面に位置させることができる。その結果、基盤部12により凹部3aから蓄光体11が離脱することが阻止されるので、支持体3と補強部材7との間に蓄光体11を簡易に保持できる。その結果、パイプPや鉄筋(図示せず)の先端に蓄光体1を取り付けることにより、支持体3及び外筒4によりパイプPや鉄筋の端部が剥き出しになることを防止できると共に、蓄光部13の燐光により夜間も注意を喚起できる。
また、支持体3に貫通形成される凹部3aに蓄光部13が配置されるので、案内や標識、注意喚起等の用途や目的に応じた蓄光部13を支持体3に配置できる。その結果、支持体3の形状等に応じて、蓄光体11の汎用性を向上できると共に、応用範囲を拡大できる。
次に図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、基盤部12と蓄光部13とが密着する場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、基盤部22と蓄光部23との間に反射層24が介設される場合について説明する。図3(a)は第2実施の形態における蓄光体21の斜視図であり、図3(b)は蓄光体21の製造工程を説明する成形型201、基盤部22及び蓄光部23の断面図である。
図3(a)に示すように蓄光体21は、正面視して略矩形状に形成される透明な基盤部22と、基盤部22に積重されると共に基盤部22に対して正面側に凸起して幾何学模様が形成された蓄光部23と、蓄光部23と基盤部22との間に介設された反射層24とを備えている。本実施の形態では、基盤部22及び蓄光部23はエポキシ系樹脂製であり、蓄光部23を構成するエポキシ系樹脂(高分子化合物)には蓄光顔料および着色剤が混合されている。蓄光顔料は、第1実施の形態で説明したものと同一であるので、説明を省略する。
基盤部22は、略平板状に形成された基部22aと、基部22aの中央が凸起した凸起部22bとを備えている。また、蓄光部23は、凸起部22bの周囲に分かれて配置される第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bを備えている。本実施の形態では、凸起部22bは正面視して略円形状に形成され、第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bは正面視して略C形に形成されている。第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bは、種類の異なる蓄光顔料が混合されており、互いに異なる色の燐光を放つように構成されている。なお、基部22aに対する凸起部22bの高さは、基部22aに対する第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bの高さと同一の値に設定されている。
次に図3(b)を参照して、蓄光体21の製造方法について説明する。蓄光体21は、成形型201に凹設された第2凹面203及び2つの第1凹面202に高分子化合物を流し込み、硬化させることにより製造される。2つの第1凹面202により蓄光部23(第1蓄光部23a及び第2蓄光部23b)及び反射層24を型成形するためのキャビティが形成され、第2凹面203により基盤部22を型成形するためのキャビティが形成される。本実施の形態では、成形型201はシリコーン製であり、注型成形により蓄光体21が製造される。
蓄光体21を製造するには、まず、エポキシ系樹脂(高分子化合物)に蓄光顔料および着色剤を混合する。種類の異なる蓄光顔料が混合された高分子化合物を2種類用意しておく。次いで、一方の蓄光顔料および着色剤が混合された高分子化合物を、成形型201の一方の第1凹面202(図3(b)右側)に流し込み、他方の蓄光顔料および着色剤が混合された高分子化合物を、他方の第1凹面202(図3(b)左側)に流し込む(蓄光部成形工程)。第1凹面202に流し込まれた高分子化合物が硬化して収縮したところ(凹んで第2凹面203との境界に対して低くなったところ)に、反射層24を形成する高分子化合物を塗布する(反射層配置工程)。本実施の形態では、反射層24(白色反射層)は、ポリエステル系樹脂等に酸化チタン粉末を混合した白色塗料により形成される。
白色塗料が硬化した後、透明なエポキシ系樹脂(高分子化合物)を、成形型201の第2凹面203に流し込む(基盤部成形工程)。第2凹面203に流し込まれた高分子化合物の硬化により、反射層24に基盤部22が接着される(接着工程)。高分子化合物の硬化後、基盤部22、蓄光部23及び反射層24を成形型201から脱型し、蓄光体21を得る。
以上説明した蓄光体21の製造方法によれば、蓄光部23の背面に反射層24が配置され、反射層24は蓄光部23と基盤部22との間に挟み込まれる。その結果、蓄光顔料による燐光が正面側(基盤部22の反対側)に反射されるので、第1実施の形態で得られる効果に加え、蓄光部23の残光輝度を向上できる。
また、第1凹面202に流し込まれた高分子化合物が硬化して収縮したところ(第1凹面202内)に、反射層24を形成する高分子化合物(白色塗料)が塗布されるので、蓄光部23の周囲に白色塗料をはみ出し難くできる。その結果、蓄光部23の周囲にはみ出した白色塗料(反射層)が原因となって、蓄光体21の見栄えが悪くなることを防止できる。
なお、蓄光体21は、シリコーン系と比較して撥水性の弱いエポキシ系樹脂により基盤部22が形成されるので、基盤部22の背面に粘着剤を塗布することによる粘着層の形成を容易にできる。これにより、対象物(図示せず)に対する蓄光体21の取着手段の適用例を増やすことができ、蓄光体21の応用範囲を拡大できる。
また、基盤部22の正面の複数箇所(本実施の形態では2箇所)に蓄光部23(第1蓄光部23a及び第2蓄光部23b)が分かれて形成されるので、蓄光体21のデザイン性を向上できる。なお、その蓄光部23は、成形型201を適宜設計することにより任意の位置に形成できる。さらに、第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bは、互いに異なる色の燐光を放つように設定されているので、蓄光体21のデザイン性をさらに向上できる。
なお、本実施の形態では、白色塗料の塗布により反射層24を形成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、基盤部22や蓄光部23を形成する場合と同様に、高分子化合物の流し込みにより反射層24を形成することは当然可能である。また、予め用意された白色のシート(白色形成物)を、第1蓄光部23a及び第2蓄光部23bと基盤部22との間に配置し挟み込むことにより反射層24とすることは当然可能である。
次に図4を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、高分子化合物製の基盤部12,22が型成形により形成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、別途用意した基盤部32を蓄光部33に接着して蓄光体31を製造する場合について説明する。図4(a)は第3実施の形態における蓄光体31の斜視図であり、図4(b)は蓄光体31の製造工程を説明する成形型301及び蓄光部33の断面図である。
図4(a)に示すように蓄光体31は、正面視して略矩形状に形成される基盤部32と、基盤部32に積重されると共に基盤部32に対して正面側に凸起して図記号(矢印)が形成された蓄光部33とを備えている。本実施の形態では、基盤部32は柔軟性を有する布製であり、蓄光部33を構成するシリコーンゴム(高分子化合物)には蓄光顔料および着色剤が混合されている。蓄光顔料は、第1実施の形態で説明したものと同一であるので、説明を省略する。
次に図4(b)を参照して、蓄光体31の製造方法について説明する。蓄光体31は、成形型301に凹設された凹面302に高分子化合物を流し込み、硬化させて蓄光部33を形成すると共に、蓄光部33に基盤部32を接着することにより製造される。凹面302により蓄光部33を型成形するためのキャビティが形成される。本実施の形態では、成形型301はアルミニウム合金製(金属製)であり、注型成形により蓄光体31が製造される。
蓄光体31を製造するには、まず、シリコーン(高分子化合物)に蓄光顔料および着色剤を混合する。次いで、蓄光顔料および着色剤が混合された液状の高分子化合物を、成形型301の凹面302に流し込む(蓄光部成形工程)。凹面302に流し込まれた高分子化合物が硬化して収縮したところ(凹んで成形型301の上面の高さに対して低くなったところ)に、透明な高分子化合物(本実施の形態では、蓄光顔料および着色剤が混合されていないシリコーン)を流し込む。
凹面302に流し込まれた透明な高分子化合物が硬化する前に、成形型301の上面に基盤部32(布製)を置き、凹面302内の高分子化合物と基盤部32とを接触させる。シリコーン(液状の高分子化合物)は基盤部32の繊維間に浸透する。高分子化合物の硬化により、主にアンカー効果によって、蓄光部33と基盤部32とが接着される(接着工程)。蓄光部33と基盤部32とが接着した後、蓄光部33を成形型301から脱型し、蓄光体31を得る。
以上説明した蓄光体31の製造方法によれば、成形型301(凹面302)に流し込まれた高分子化合物の硬化により蓄光部33が基盤部32に接着される。蓄光部33を構成する高分子化合物の硬化と基盤部32の接着とを同時に行うことで、蓄光部33を構成する高分子化合物を硬化させた後、その蓄光部33を基盤部32に接着する場合と比較して、蓄光体31の製造工程を短縮化できる。
また、蓄光顔料が混合された高分子化合物の収縮後、凹面302に透明な高分子化合物を流し込み、その凹面302内の高分子化合物と基盤部32とを接触させるので、基盤部32と凹面302内の高分子化合物とを確実に接触させることができる。また、凹面302内の高分子化合物の収縮(所謂ヒケ)を補うことができるので、凹面302内の高分子化合物の収縮により蓄光部33と基盤部32との接合強度が低下することを防止できる。また、蓄光部33の周囲に高分子化合物がはみ出して硬化した場合も、高分子化合物が透明なので、蓄光体31の見栄えが悪化することを抑制できる。
また、基盤部33の背面に布製の基盤部32が固定され、正面視における基盤部32の大きさは正面視における蓄光部33より大きく設定されるので、衣服等(対象物)の表面に布製の基盤部32を縫い付けることができる。なお、アイロン等の熱により溶融する熱接着層を基盤部32の背面に設けることで、衣服等(対象物)の表面に基盤部32を貼り付けることも可能である。
また、基盤部32は柔軟性を有する部材(布製)により形成され、蓄光部33は、シリコーン製の高分子化合物により形成される。シリコーン製の高分子化合物の硬化により蓄光部33は基盤部32に接着される。シリコーン製の高分子化合物は基盤部32(布)の繊維間に浸透して硬化するので、アンカー効果により蓄光部33は基盤部32に強固に接着される。また、シリコーン製の高分子化合物は硬化後にゴム状となるので、基盤部32の柔軟性も維持される。その結果、蓄光部33が接着された基盤部32の柔軟性を維持できる。
なお、シリコーン製の高分子化合物と基盤部32との接着メカニズムをアンカー効果に限定するものではない。基盤部32の種類によって、基盤部32の表面と蓄光部33とを化学反応により接着するようにすることは当然可能である。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、基盤部12,22,32や蓄光部13,23,33の形状や大きさは、蓄光体11,21,31の目的に応じて、適宜設計される。
上記第1実施の形態では、縮合型の1成分系シリコーン製(変成シリコーン系)の高分子化合物を用いて蓄光体11を成形する場合について説明したが、他の高分子化合物を採用することは当然可能である。他の高分子化合物としては、例えば、付加型のシリコーン系、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、紫外線硬化樹脂が挙げられる。また、高分子化合物は1成分系(1液型)樹脂に限定するものではなく、2液型などの多成分系樹脂を用いることは当然可能である。
なお、蓄光体11の材質や形状、成形型101の耐久性等を考慮して、成形型101は材質を適宜設定できる。また、第2実施の形態および第3実施の形態における高分子化合物も、第1実施の形態と同様に、他の高分子化合物を採用することは当然可能である。なお、第1実施の形態および第2実施の形態を、減圧下で注型成形を行う真空注型とすることも可能である。
上記第1実施の形態および第2実施の形態では、注型成形により蓄光体11,21を製造する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の成形手段を採用することは当然可能である。他の成形手段としては、例えば、射出成形、中空成形、圧縮成形が挙げられる。射出成形、中空成形、圧縮成形により蓄光体11,21を製造する場合、金属製の成形型101,201を用い、別の成形型と組み合せてキャビティを形成する。
射出成形や中空成形により蓄光体11,21を製造する場合は、高分子化合物(合成樹脂や合成ゴム等)のマスターバッチと蓄光顔料(最終的に混練する目標値の約半分量)とをミキサー等を用いて混合し、所定の温度に加熱しながら押出機等を使用して混練する。次いで、得られた混練品と蓄光顔料(最終的に混練する残量)とをミキサー等を用いて混合し、所定の温度に加熱しながら押出機等を使用して混練する。
なお、蓄光顔料を複数回に分けて混練せずに一度に混練する場合には、高分子化合物のマスターバッチと蓄光顔料とを混練するときの流動性が低下し、蓄光顔料の分散性が低下する傾向がみられる。これに対し、蓄光顔料を複数回に分けて混練することにより流動性を向上させ、蓄光顔料の分散性を向上できる。その結果、蓄光顔料が蓄光部13,23の一部に偏在することを防止できる。そして、軟化温度に加熱した高分子化合物を、射出圧力を加えて成形型に流し込み、キャビティに充填して成形する。
圧縮成形により蓄光体を製造する場合には、粉末状(顆粒状)の高分子化合物(主に熱硬化性樹脂)と蓄光顔料とを混合し、それらを成形型のキャビティに流し込んだ後、加熱および加圧をすることにより硬化させ成形する。
上記第1実施の形態では、パイプPや鉄筋の端部が剥き出しになることを防ぐ保護具(安全用品)としての蓄光体1を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、支持体3の形状や大きさを適宜設計することにより、蓄光体を案内板や標識等とすることは当然可能である。
また、上記実施の形態で説明した蓄光体11,21,31は任意の形状に成形できるので、蓄光体11,21,31をマスコット、ペンダント、キーホルダー等の玩具、日用雑貨、名札等の小物や、床材や縁石等の建築用部材や土木用部材とすることは当然可能である。
上記実施の形態では、基盤部12,22,32の表面に蓄光部13,23,33が一つ配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、物理的に分離した2以上の蓄光部を基盤部の表面に設けることは当然可能である。
上記第1実施の形態では、支持体3が板状(平面状)に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、蓄光体の形態に応じて塊状(立体状)に形成することは当然可能である。
また、支持体3に凹部3aが貫通形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、支持体が塊状に形成されるときには、支持体の表面に凹部を窪み状に形成し、その凹部に蓄光体を装着可能にすることは当然可能である。
上記第1実施の形態および第2実施の形態では、一つの成形型101,201により蓄光部13,23及び基盤部12,22を接合(接着)して蓄光体11,21を製造する場合について説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、蓄光部13,23を成形する成形型と、蓄光部13,23と基盤部12,22とを接合(接着)する成形型とを異ならせることは可能である。
この場合、まず、一の成形型(図示せず)により蓄光部13,23を成形する。この場合の成形は、注型成形、射出成形、圧縮成形等、種々の成形方法を採用できる。その後、成形された蓄光部13,23を他の成形型(図示せず)のキャビティ内面に配置(仮固定)する(蓄光部配置工程)。次いで、蓄光部13,23が配置された他の成形型内(キャビティ内)に高分子化合物を流し込んで、基盤部12,22を成形しつつ蓄光部13,23を基盤部12,22に接着する(蓄光部接着工程)。この場合の基盤部12,22の成形も、注型成形、射出成形、圧縮成形等、種々の成形方法を採用できる。以上のように、蓄光部13,23を成形する成形型と、蓄光部13,23と基盤部12,22とを接合(接着)する成形型とを異ならせた場合も、第1実施の形態または第2実施の形態で得られる効果を実現できる。
また、注型成形、射出成形、圧縮成形等により蓄光部13,23を成形するのではなく、蓄光顔料を含有する蓄光シートや陶板(無機材料製基板)等の燐光を放つ性質をもつ部材(以下「蓄光部材」と称す)を、所定の外形形状に調製して用いることは当然可能である。その場合、まず、所定の形状に調製された蓄光部材(蓄光部)を成形型のキャビティ内面に配置する(蓄光部配置工程)。次いで、蓄光部材(蓄光部)が配置された成形型内(キャビティ内)に高分子化合物を流し込んで、基盤部を成形しつつ蓄光部を基盤部に接着する(蓄光部接着工程)。この場合も、基盤部の成形は注型成形、射出成形、圧縮成形等、種々の成形方法を採用でき、第1実施の形態または第2実施の形態で得られる効果を実現できる。
蓄光部材(蓄光部)の背面に接着層を設けることは当然可能である。接着層としては、高分子化合物の素材に適した感熱性あるいは感圧性の高分子化合物を適宜選択する。また、蓄光部材(蓄光部)の背面に反射層(白色反射層)を設けることは当然可能である。反射層としては、白色塗料を塗布して蓄光部材(蓄光部)の背面に形成された塗装層や、蓄光部材(蓄光部)の背面に配置される白色シートを用いることができる。その白色シート(反射層)に接着層を設けることも当然可能である。
上記第3実施の形態では基盤部32が布製の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の材質や部材を採用することは当然可能である。他の材質や部材としては、例えば、紙製や合成樹脂製のシートや壁紙;皮革(天然皮革、人造皮革);合成樹脂製やガラス製、金属製の板材;金属製や合成樹脂製の網;タイル(無機材料製)等が挙げられる。また、合成樹脂製等の再帰反射板を基盤部32とすることも当然可能である。基盤部32として種々の材質や部材を採用できるので、蓄光体31の用途を拡大できる。
なお、紙、皮革等(繊維の集合体)や網等の網目(繊維間や線材間の隙間)を有するものを基盤部32として採用した場合には、網目を埋めるような状態で高分子化合物が硬化することによりアンカー効果が得られる。シリコーン(シリコーンゴム)は難接着材であるが、アンカー効果を利用することにより基盤部32と蓄光部33との接着強度を向上できる。
上記第3実施の形態では、蓄光部33の硬化と同時に基盤部32を接着する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、蓄光部33を成形した(硬化させた)後、接着剤等を用いて、基盤部32に蓄光部33を接着することは当然可能である。その場合、基盤部32と蓄光部33との接着強度を向上させるため、基盤部32や蓄光部33にプライマ処理を施すことは可能である。
また、第2実施の形態で説明した反射層24を、第1実施の形態および第3実施の形態で説明した蓄光体11,31に設けることは当然可能である。蓄光部13,33の背面に反射層24を設けることにより、蓄光部13,33の残光輝度を向上できる。なお、反射層24を設ける代わりに、基盤部12,32を白色にして、基盤部12,32によって蓄光部13,33の燐光を反射するような構成とすることは当然可能である。
蓄光部13,23,33(蓄光部材を含む)の厚さとしては、蓄光顔料の粒度、基盤部12,22,32の色(背景色)や大きさにもよるが、0.5mmから10cmが好適に用いられる。蓄光部13,23,33(蓄光部材を含む)の残光輝度を基盤部12,22,32の色に影響され難くするためである。
本実施の形態では、蓄光部13,23,33が硫黄系や酸化物系の蓄光顔料を含有する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、外部からの励起光のエネルギーを吸収して燐光を放つ他の蓄光顔料を採用することは当然可能である。また、蓄光部13,23,33が着色剤を含有する場合について説明したが、着色剤は必ずしも必要ではない。
1,11,21,31 蓄光体
3 支持体
3a 凹部
6 内壁部
12,22,32 基盤部
22a 基部(基盤部)
22b 凸起部(基盤部)
13,23,33 蓄光部
23a 第1蓄光部(蓄光部)
23b 第2蓄光部(蓄光部)
24 反射層
101,201,301 成形型
102,202 第1凹面(キャビティ内面)
103,203 第2凹面
302 凹面(第1凹面)