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JP2014028423A - 切削インサート、刃先交換式エンドミル及びエンドミル本体 - Google Patents

切削インサート、刃先交換式エンドミル及びエンドミル本体 Download PDF

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JP2014028423A
JP2014028423A JP2012170456A JP2012170456A JP2014028423A JP 2014028423 A JP2014028423 A JP 2014028423A JP 2012170456 A JP2012170456 A JP 2012170456A JP 2012170456 A JP2012170456 A JP 2012170456A JP 2014028423 A JP2014028423 A JP 2014028423A
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Chuji Yasuki
宙志 保木
Yasuharu Imai
康晴 今井
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Mitsubishi Materials Corp
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Abstract

【課題】凹部を有する切れ刃のうち、外周刃においては切れ刃強度を確保でき、コーナ刃においては切削代の偏りが生じるようなことを防止でき、切れ刃の早期摩耗や欠損が抑制され、かつランピング性能をも確保して、高品位な切削加工が安定して維持されるとともに、工具寿命を延長できること。
【解決手段】エンドミル本体の先端外周部に着脱可能に装着される切削インサート1Aであって、切れ刃15は、仮想輪郭線Pが直線状をなす外周刃16と、外周刃16に連なり、仮想輪郭線Pが凸曲線状をなすコーナ刃17と、コーナ刃17の外周刃16とは反対側に連なるランピング刃24とを有し、すくい面12を正面に見て、外周刃16及びコーナ刃17には、仮想輪郭線Pに対して凹む凹部18が形成され、コーナ刃17における仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さNは、外周刃16における仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さMより小さくされている。
【選択図】図6

Description

本発明は、刃先交換式エンドミルの切れ刃を構成する切削インサート、該切削インサートを取り付けた刃先交換式エンドミル、及びそのエンドミル本体に関するものである。
従来、この種の刃先交換式エンドミルとして、例えば下記特許文献1に示されるような、円柱状をなし、軸線回りに回転されるエンドミル本体の先端外周部に、複数の切削インサートが周方向に間隔をあけて着脱可能に装着されたものが知られている。切削インサートは、板状をなすインサート本体を有し、インサート本体の厚さ方向を向く一面がすくい面とされ、インサート本体の厚さ方向に交差する方向を向く側面が逃げ面とされ、これらすくい面と逃げ面との交差稜線が切れ刃とされている。
切れ刃は、この切削インサートがエンドミル本体に装着されたときに、エンドミル本体の軸線に平行となるように直線状をなす外周刃(直線主切刃)と、外周刃の先端側に位置するとともに、エンドミル本体先端側に向かうに従い漸次エンドミル本体の径方向の内側に向かって凸曲線状をなすコーナ刃(湾曲副切刃)と、コーナ刃の外周刃とは反対側(径方向の内側)に連なるランピング刃(直線副切刃)とを有している。
特許文献1の刃先交換式エンドミルは、前述のように構成された切削インサートを用いて肩加工、溝加工、沈み込み加工、スミR加工等を行う、刃先交換式のラジアスエンドミルである。
一方、下記特許文献2に示されるような、切削インサートの切れ刃に凹部(ニック)を形成した刃先交換式エンドミルが知られている。このように切れ刃に凹部を形成することで、切屑が分断されやすくなって切屑処理性が向上し、また被削材への食い付き時の衝撃緩和や切削負荷の低減を図ることができる。
ここで例えば、特許文献1の切削インサートの切れ刃のうち、外周刃及びコーナ刃に、特許文献2に記載の凹部を形成することで、刃先交換式のラフィングラジアスエンドミルとすることが考えられる。この場合、切削インサートとしては、例えば図10に示されるような形状となる。
図10(a)〜(c)に示される刃先交換式ラフィングラジアスエンドミル用の切削インサート101A〜101Cは、同一のエンドミル本体に装着されるものであり、該エンドミル本体に装着された状態で、これら切削インサート101A〜101Cは互いに切れ刃115の基本形状である仮想輪郭線が一致するように配置される一方、凹部の位置は前記仮想輪郭線に沿う方向(切れ刃115の刃長方向)にずらされるようになっている。
このように、切れ刃115の凹部の位置が互いに異なる複数種類(図10の例では3つ)の切削インサート101A〜101Cを用いることで、これら切削インサート101A〜101Cのうち、一の切削インサートの切れ刃115の回転軌跡(エンドミル本体の軸線回りの回転軌跡)から被削材の加工面に投影(転写)された凹凸、特に該加工面の凸部が、他の切削インサートの切れ刃115によってそれぞれ切削されて平滑な加工面となり、加工面品位を高めることができる。
特開2000−42821号公報 特開平7−299636号公報
しかしながら、前述した刃先交換式エンドミルにおいては、下記の課題があった。
図10(a)〜(c)に示される切削インサート101A〜101Cの切れ刃115のうち、エンドミル本体の軸線から遠く配置されて切削速度が速い外周刃116においては、切屑の厚さも厚くなって切削負荷が大きくなることから、刃先強度を十分に確保する必要がある。そこで、これら切削インサート101A〜101Cの切れ刃115の波形状を決めるにあたっては、刃先強度が確保されるようにまず外周刃116の凹部を設定し、この凹部を基にして(つまり外周刃116の凹部の長さと同等となるように)コーナ刃117の凹部を設定している。
しかしながら、各切削インサート101A〜101Cの外周刃116における切削の取り代(以下、切削代という)は互いに略均等にしやすい一方で、各切削インサート101A〜101Cのコーナ刃117における切削代を均等にすることは難しかった。すなわち、コーナ刃117は、エンドミル本体の軸線に対して傾斜するように延びている(所謂切れ刃が寝ている状態である)ことから、エンドミル本体の軸線に略平行な外周刃116のように切削代を均等に設定することができなかった。
ここで、切削インサート101A〜101Cのコーナ刃117の切削代について、具体的に説明する。図11(a)〜(c)は、前述した各切削インサート101A〜101Cをエンドミル本体に装着して切削したときの、各切削インサート101A〜101Cのコーナ刃117における切削代を、被削材Wの切削部分を黒く着色して表したものである。
図11(a)〜(c)に示されるように、これら切削インサート101A〜101Cのうち、一の切削インサート101Aにおけるコーナ刃117の切削代は、他の切削インサート101B、101Cのコーナ刃117の切削代よりも大きくなっている。このように切削インサート101A〜101Cのコーナ刃117の切削代に偏りがあると、切削負荷の高い所定の切削インサート101Aのコーナ刃117が、早期に摩耗したり欠損するおそれがある。
特に、図11(a)〜(c)に示されるように、工具軸線方向への切り込み深さapが、コーナ刃117において切削に寄与しにくい凹部(溝部)の前記軸線方向の長さに対して同等(或いはそれ以下)である場合には、これら切削インサート101A〜101Cのうち一部のコーナ刃117が機能しなくなり(図11の例では切削インサート101Bのコーナ刃117が機能していない)、該一部のコーナ刃117以外の他のコーナ刃117に対する切削負荷が顕著に増大することになる。すなわち、切り込み量(特に切り込み深さap)が小さくなるに従い、切削インサート101A〜101Cの各切れ刃115ごとの切削代のバランスが悪くなって、工具に振動が発生し、切削代が大きい切れ刃115にチッピングが発生しやすくなる。従って、安定した切削を行うには切り込み量の下限値を小さくできなかった。
ところで、図11(a)〜(c)を参照すると、切削インサート101Aのコーナ刃117の切削代が、切削インサート101Cのコーナ刃117の切削代より大きい。また、切削インサート101Bのコーナ刃117は殆ど機能していない(切削代がない)。これらの切削代を均等にする目的で、例えば切削インサート101Aのコーナ刃117における先端部、すなわち該コーナ刃117の内周側(外周刃116とは反対側)に連なるランピング刃118(図10参照)との連結部分に、前記仮想輪郭線に沿う長さが小さい(つまり幅狭の)凹部を形成することが考えられる。これにより、各コーナ刃117同士の切削代を均等にしやすくはなるが、その一方で、ランピング刃118の刃先強度を確保できなくなり、ランピング性能が低下するおそれがある。
一方、各切削インサート101A〜101Cの切れ刃115において、前述のように予め外周刃116の波形状を決める代わりに、まず各コーナ刃117の切削代が均等となるように切れ刃115に凹部を形成した場合には、該凹部に隣接する凸部の長さが小さくなることで、これを基にして波形状を設定した外周刃116の切れ刃強度が確保できなくなるおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、凹部を有する切れ刃のうち、外周刃においては切れ刃強度を確保でき、コーナ刃においては切削代の偏りが生じるようなことを防止でき、これにより切れ刃の早期摩耗や欠損が抑制され、かつランピング性能をも確保して、高品位な切削加工が安定して維持されるとともに、工具寿命を延長することができる切削インサート、刃先交換式エンドミル及びエンドミル本体を提供することを目的としている。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明は、円柱状をなし、軸線回りに回転されるエンドミル本体の先端外周部に着脱可能に装着される切削インサートであって、板状をなすインサート本体を有し、前記インサート本体の厚さ方向を向く一面がすくい面とされ、前記インサート本体の厚さ方向に交差する方向を向く側面が逃げ面とされ、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線が切れ刃とされており、前記切れ刃は、該切れ刃の基本形状である仮想輪郭線が直線状をなす外周刃と、前記外周刃に連なり、前記仮想輪郭線が凸曲線状をなすコーナ刃と、前記コーナ刃の前記外周刃とは反対側に連なるランピング刃と、を有し、前記すくい面を正面に見て、前記切れ刃のうち、前記外周刃及び前記コーナ刃には、前記仮想輪郭線に対して凹む凹部が形成され、前記コーナ刃における前記ランピング刃との連結部分には前記凹部は形成されておらず、前記コーナ刃における前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さは、前記外周刃における前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さより小さくされていることを特徴とする。
本発明の切削インサートをエンドミル本体の先端外周部に装着して、被削材を切削加工(転削加工)する際は、該切削インサートの切れ刃のうち、外周刃がエンドミル本体の外周端に配置され、コーナ刃がエンドミル本体の先端外周端において前記外周刃より径方向内側に配置される。また、ランピング刃はコーナ刃の径方向内側に配置される。そして、エンドミル本体を軸線回りに回転させて切削インサートで被削材に切り込んでいくと、該切削インサートの切れ刃のうち、外周刃及びコーナ刃が凹部を有する波形状とされていることで、この切れ刃全長が一度に被削材に食い付くことはなく、凹部に隣接する各凸部から徐々に被削材に食い付くことになるとともに、切屑も細かく分断されやすくなって、衝撃緩和や切削負荷の低減、切屑処理性の向上などの効果が得られる。
そして、本発明の切削インサートでは、軸線から遠く配置されて切削速度が速い外周刃の前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さに対して、該外周刃よりも軸線近くに配置されて切削速度が遅いコーナ刃の前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さを小さくしたことにより、下記の顕著な効果を奏する。
すなわち、切削速度が速く、また切屑の厚さも厚くなる外周刃においては、刃先強度(切れ刃強度)を十分に確保する必要がある。本発明によれば、外周刃の前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さに対応して、被削材に切り込んでいく凸部における切れ刃長さが確保されるとともに、刃先強度が高められ、これによりチッピングや欠損が抑制されて、安定した切削加工を維持できる。
一方、外周刃より切削速度が遅く、また切屑の厚さも薄くなるコーナ刃においては、外周刃ほどの刃先強度は必要とされていない。そこで本発明では、コーナ刃の前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さを外周刃の前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さよりも小さく設定した。このように、コーナ刃の凹部の長さが短くされることで、該コーナ刃において刃長方向(仮想輪郭線に沿う方向)に隣り合う凹部同士の配置間隔を小さく設定でき、さらにこれら凹部に隣接する凸部同士の配置間隔も小さくできる。これにより、例えば複数の切削インサートをエンドミル本体の先端外周部に軸線回りに間隔をあけて装着するとともに、これら切削インサートの回転軌跡における切れ刃同士の凹部の仮想輪郭線に沿う方向の位置をずらして配置(つまり凹部の位相をずらして配置)した場合に、各切削インサートのコーナ刃の切削代を、互いに略均等にすることができる。
具体的に、本発明とは異なり、例えば前述した図10及び図11に示される従来の切削インサート101A〜101Cのように、コーナ刃117の前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さを外周刃116の前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さと同様の設定とした場合、所定の切削インサート101Aのコーナ刃117の切削代が、他の切削インサート101B、101Cのコーナ刃117の切削代よりも大きくなるとともに、該切削インサート101Aのコーナ刃117の切削負荷が他よりも大きくなって、コーナ刃117が早期摩耗したり欠損するおそれがある。特に、図11(a)〜(c)に示されるように、工具軸線方向への切り込み深さ(切り込み量)apが、コーナ刃117において切削に寄与しにくい凹部(溝部)の軸線方向の長さに対して同等(或いはそれ以下)である場合には、これら切削インサート101A〜101Cのうち一部のコーナ刃117が機能しなくなり、該一部のコーナ刃117以外の他のコーナ刃117に対する切削負荷が顕著に増大することになる。
一方、本発明によれば、各切削インサートの切れ刃において、外周刃同士の切削代のみならず、コーナ刃同士の切削代も略均等とされており、つまり所定の切削インサートのコーナ刃の切削負荷が他の切削インサートのコーナ刃よりも大きくなるようなことが防止されていて、コーナ刃が早期に摩耗したりチッピングや欠損することが抑制される。特に、前記切り込み深さapが小さい場合であっても、該切り込み深さapは、コーナ刃の凹部の軸線方向の長さよりは小さくなりにくいことから、各コーナ刃の切削負荷の偏りを顕著に抑制できる。
さらに、コーナ刃におけるランピング刃との連結部分には、凹部は形成されていないことから、ランピング刃の刃先強度が十分に確保されて、沈み込み加工などにおけるランピング性能が安定して維持される。
このように、本発明の切削インサートによれば、切れ刃に凹部を設けて衝撃緩和や切削負荷の低減、切屑処理性の向上などの効果を奏しつつ、該切れ刃のうち、外周刃においては切れ刃強度を確保することができ、またコーナ刃においては切削代の偏りが生じるようなことを防止でき、これにより切れ刃の早期摩耗や欠損が抑制され、かつランピング性能をも確保して、高品位な切削加工が安定して維持されるとともに、工具寿命を延長できるのである。
また、本発明の切削インサートにおいて、前記外周刃及びコーナ刃には、前記凹部に隣接する凸部が形成され、該凸部は前記仮想輪郭線に沿って延びており、前記コーナ刃における前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さNに対する前記仮想輪郭線に沿う前記凸部の長さnの比n/Nが、前記外周刃における前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さMに対する前記仮想輪郭線に沿う前記凸部の長さmの比m/Mより大きくされていることとしてもよい。
この場合、一の切削インサートの切れ刃の回転軌跡から被削材の加工面に投影された凹凸、特に該加工面の凸部が、他の切削インサートの切れ刃によってそれぞれ切削されて平滑な加工面となり、加工面品位を高めることができる。確実に加工品位を向上させるためには、各切削インサートのコーナ刃及び外周刃におけるそれぞれの凸部の回転軌跡をオーバーラップさせる必要があるが、例えば上記構成とは異なり、コーナ刃と外周刃において前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さN、Mに対する前記仮想輪郭線に沿う前記凸部の長さn、mの比n/N、m/Mが一定であると、前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さの違いにより、コーナ刃のオーバーラップ長さが外周刃より小さくなって、コーナ刃で切削された加工面の加工品位が外周刃で切削された加工面の加工品位よりも劣ることになってしまう。そこで、本発明の上述した構成のように、コーナ刃における前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さNに対する前記仮想輪郭線に沿う前記凸部の長さnの比n/Nを、外周刃における前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さMに対する前記仮想輪郭線に沿う前記凸部の長さmの比m/Mより大きくすることで、コーナ刃と外周刃の各凸部のオーバーラップ長さを略同等とすることができ、コーナ刃と外周刃で切削された加工面の加工品位の差を小さくすることができる。
また、本発明の切削インサートにおいて、前記コーナ刃のすくい角が、前記外周刃のすくい角より大きくされていることとしてもよい。
この場合、切削速度が速く、また切屑の厚さも厚い外周刃におけるすくい角が小さくされているので、該外周刃における切れ刃強度が確保されて、チッピングや欠損が効果的に抑制されることになる。一方、外周刃よりも切削負荷が小さいコーナ刃においては、すくい角が大きくされていることで、鋭い切れ味を確保でき、切削抵抗が低減されるとともに、加工品位が高められる。
また、本発明の切削インサートにおいて、前記コーナ刃のすくい角は、前記外周刃から前記ランピング刃側に向かうに従い大きくされていることとしてもよい。
この場合、コーナ刃のうち、切削速度が速く切屑の厚さも厚い(つまり切削負荷が大きい)外周刃側の部位においては、該コーナ刃のすくい角が小さくされているので、刃先強度が確保され、チッピングや欠損が抑制される。一方、コーナ刃のうち、切削速度が遅く切屑の厚さも薄い(つまり切削負荷が小さい)ランピング刃側の部位においては、該コーナ刃のすくい角が大きくされているので、鋭い切れ味を確保でき、切削抵抗が低減されるとともに、加工品位が高められる。
また本発明は、円柱状をなすエンドミル本体の先端外周部に、該エンドミル本体の軸線回りに間隔をあけて複数のインサート取付座が形成され、これらインサート取付座に複数種類の切削インサートが着脱可能に装着される刃先交換式エンドミルであって、前記切削インサートとして、上述した切削インサートを備え、前記切削インサートの前記切れ刃のうち、前記外周刃の前記仮想輪郭線は、前記エンドミル本体の軸線に平行となるように延び、前記コーナ刃の前記仮想輪郭線は、前記エンドミル本体の先端側に向かうに従い漸次前記軸線に直交する径方向の内側に向かって延びており、複数種類の前記切削インサートは、前記軸線回りの回転軌跡で、互いに前記切れ刃の前記仮想輪郭線が一致するように配置される一方、前記凹部の位置は前記仮想輪郭線に沿う方向にずらされていることを特徴とする。
本発明の刃先交換式エンドミルによれば、複数種類の切削インサートを、エンドミル本体のインサート取付座に装着するだけの簡単な作業によって、これら切削インサートの切れ刃の凹部同士の位置が前記仮想輪郭線に沿う方向(つまり切れ刃の刃長方向)に互いにずらされることとなり、被削材の加工面品位を高めることができる。すなわち、これら切削インサートをエンドミル本体に装着する際に、切れ刃位置を調整するような面倒な作業等は不要であって、作業性に優れている。
また本発明は、上述した刃先交換式エンドミルに用いられるエンドミル本体であって、このエンドミル本体の外周面には、前記インサート取付座の工具回転方向後方側に配置されるとともに、前記切削インサートの前記切れ刃の前記凹部に対応して前記軸線回りに延びる溝が形成されていることを特徴とする。
本発明のエンドミル本体によれば、インサート取付座に装着される切削インサートの切れ刃の凹部に対応して、該エンドミル本体の外周面に溝が形成されているので、切削インサートをインサート取付座に装着する際の取り付け間違いを防止できる。すなわち、複数種類の切削インサートの中から、所定のインサート取付座の工具回転方向後方側に形成された溝に対応した切れ刃の凹部を備えた所定の切削インサートを選んで、該インサート取付座に装着するだけでよく、切削インサートの取り付け作業が簡単かつ正確に行える。
また、切削インサートの切れ刃の凹部に対応して、エンドミル本体に溝が形成されているので、前記凹部に隣接する凸部には、前記溝に隣接するリブ等(エンドミル本体の外周面において溝よりも突出する部位)が対応配置されることとなり、該エンドミル本体の外周面と被削材の加工面との接触を防止して加工面品位を確保しつつも、このエンドミル本体の剛性と、インサート取付座に対する切削インサートの着座安定性を高めることができる。
本発明の切削インサート、刃先交換式エンドミル及びエンドミル本体によれば、凹部を有する切れ刃のうち、外周刃においては切れ刃強度を確保でき、コーナ刃においては切削代の偏りが生じるようなことを防止でき、これにより切れ刃の早期摩耗や欠損が抑制され、かつランピング性能をも確保して、高品位な切削加工が安定して維持されるとともに、工具寿命を延長することができる。
本発明の一実施形態に係る刃先交換式エンドミルを示す斜視図である。 図1の刃先交換式エンドミルを工具先端から見た正面図である。 図2の刃先交換式エンドミルを、矢視A方向から見た側面図である。 図2の刃先交換式エンドミルを、矢視B方向から見た側面図である。 刃先交換式エンドミルに用いられる複数種類の切削インサートを示す斜視図である。 切削インサートを示す上面図である。 図6のX−X断面、Y−Y断面を説明する部分断面図である。 複数種類の切削インサートのコーナ刃における切削代を説明する図である。 複数種類の切削インサートの変形例を示す斜視図である。 従来の刃先交換式エンドミルに用いられる複数種類の切削インサートを示す斜視図である。 従来の複数種類の切削インサートのコーナ刃における切削代を説明する図である。
以下、本発明の一実施形態に係る刃先交換式エンドミル10について、図面を参照して説明する。
図1〜図6に示されるように、本実施形態の刃先交換式エンドミル10は、凹部(ニック)18を有する切れ刃15を備えた荒削り用の複数種類の切削インサート1A〜1Cが、円柱状をなし、軸線O回りに回転されるエンドミル本体(ホルダ)2の先端外周部に着脱可能に装着された刃先交換式のラフィングエンドミルであり、これら切削インサート1A〜1Cは、エンドミル本体2の軸線O回りの回転軌跡で、互いに切れ刃15の基本形状である仮想輪郭線P(図6参照)が一致するように配置される一方、互いの凹部18同士の位置は仮想輪郭線Pに沿う方向(切れ刃15の刃長方向)にずらされていて、これら切れ刃15全ての回転軌跡としては略円筒状をなしている。尚、図5に示されるように、本実施形態では3種類の切削インサート1A〜1Cが用いられており、これら切削インサート1A〜1Cの切れ刃15同士は、凹部18の位置が互いに仮想輪郭線Pに沿う方向にずらされてエンドミル本体2に装着されていて(つまり凹部18の位相がずらされていて)、具体的には、互いの凹部18の位置が、各切れ刃15の切削代が均等(3等分)となるようにずらされている。ただし、これら切削インサート1A〜1Cは、切れ刃15同士の凹部18の位置が仮想輪郭線Pに沿う方向にずらされて装着されていればよく、前記3等分に限定されない。
また、この刃先交換式エンドミル10は、切削インサート1A〜1Cの切れ刃15のエンドミル本体2の軸線O回りの回転軌跡が、該切れ刃15のうちエンドミル本体2の外周端に位置する外周刃16においては、該エンドミル本体2の軸線Oに平行となるように直線状をなす一方、エンドミル本体2の先端外周端に位置するコーナ刃17においては、エンドミル本体2先端側に向かうに従い漸次エンドミル本体2の径方向内側に向かって凸曲線状をなすようにされた、刃先交換式のラジアスエンドミルでもある。
つまり、本実施形態の刃先交換式エンドミル10は、刃先交換式のラフィングラジアスエンドミルである。
この刃先交換式エンドミル10は、エンドミル本体2の軸線O方向の後端部(図3及び図4における上端部)が、不図示の工作機械の主軸に回転可能に保持されて、その軸線O回りのうち工具回転方向Tに回転させられつつ、軸線Oに交差する方向や軸線O方向に送り出されることにより、切削インサート1A〜1Cの切れ刃15で被削材を切削(転削)加工する、刃先交換式の転削工具である。
尚、本明細書においては、エンドミル本体2の軸線O方向に沿う前記工作機械の主軸とは反対側(図1、図3及び図4における下側)を先端側といい、エンドミル本体2の前記主軸側(図1、図3及び図4における上側)を後端側という。また、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
エンドミル本体2は、鋼材等からなり、その先端外周部には、周方向に間隔をあけて複数のチップポケット3が形成されている。本実施形態では、エンドミル本体2の先端外周部を周方向に間隔をあけて切り欠くように、3つのチップポケット3が形成されており、これらチップポケット3は、エンドミル本体2の先端側及び径方向外側に向けて開口されている。また、チップポケット3において工具回転方向Tを向く壁面には、凹状をなすインサート取付座4A〜4Cが形成されている。
これらインサート取付座4A〜4Cには、複数種類の切削インサート1A〜1Cのうち、所定のインサート取付座に対応する一種類の切削インサートが着脱可能に装着される。インサート取付座4A〜4Cにおいて工具回転方向Tを向く壁面は、切削インサート1A〜1Cの取付面とされており、該取付面には、切削インサート1A〜1Cの後述する貫通孔20に挿通されたクランプネジ5がねじ込まれるネジ孔6が形成されている。本実施形態では、切削インサート1A〜1Cの貫通孔20の数(2つ)に対応して、インサート取付座4A〜4Cの取付面に、ネジ孔6が2つ形成されている。
また、これらインサート取付座4A〜4Cは、装着される切削インサート1A〜1Cの形状に対応して形成されているとともに、互いに形状が異なっており、所定のインサート取付座に対して、正規の切削インサート以外の誤った切削インサートが装着されようとした場合には、作業者が誤った取り付けを容易に認識できるようになっている。
また、エンドミル本体2の外周面において、周方向に隣り合うチップポケット3同士の間には、切削インサート1A〜1Cの切れ刃15の凹部18及び該凹部18に隣接する凸部19に対応して周方向に延びる溝7及びリブ8が形成されている。これら溝7及びリブ8は、インサート取付座4A〜4Cの工具回転方向T後方側に配置されているとともに、所定のインサート取付座に装着される所定の切削インサートの逃げ面14の後述する溝部22及びリブ部23に連なるように形成されている。
すなわち、各チップポケット3間に位置する溝7及びリブ8は、その工具回転方向T前方側に隣接するインサート取付座4A〜4C及びこれに装着される切削インサート1A〜1Cに対応して各別に形成されているとともに、各チップポケット3間に位置する溝7及びリブ8同士は、互いに形状が異なっている。
具体的に、切削インサートの逃げ面14における溝部22の工具回転方向T後方側には、エンドミル本体2の軸線O方向の位置が同一とされて溝7が連なっており、逃げ面14におけるリブ部23の工具回転方向T後方側には、軸線O方向の位置が同一とされてリブ8が連なっている。
図5及び図6に示されるように、切削インサート1A〜1Cは、超硬合金等の硬質材料からなる縦長板状のインサート本体11を有している。インサート本体11の厚さ方向を向く一対の面のうち、上面(一面)はすくい面12とされており、この切削インサート1A〜1Cがエンドミル本体2に装着されたときに、すくい面12は工具回転方向Tを向くようになっている。また、インサート本体11の厚さ方向を向く一対の面のうち、下面(他面)は、インサート取付座4A〜4Cの前記取付面に当接される着座面13とされている(図2を参照)。
また、インサート本体11において、すくい面12及び着座面13の周囲に配置されるとともに該インサート本体11の厚さ方向に交差する方向(具体的には前記厚さ方向に略垂直な方向)を向く側面は、逃げ面14とされている。また、インサート本体11において、すくい面12と逃げ面14との交差稜線は、切れ刃15とされている。
この切れ刃15は、上述のように刃先交換式のラジアスエンドミルの切れ刃とされるため、その基本形状は、すくい面12に対向する方向から見て図6に2点鎖線(符号P)で示されるように、インサート本体11の長手方向(図6における上下方向)に直線状に延びる外周刃16と、この外周刃16の一端に接するようにして連なり略1/4円弧状をなすコーナ刃17と、コーナ刃17の外周刃16とは反対側に連なる直線状のランピング刃24とから構成される。
このような切れ刃15の基本形状を、本明細書では切れ刃15の仮想輪郭線Pと呼ぶ。すなわち、切れ刃15は、この切削インサート1A〜1Cがエンドミル本体2に装着されたときに、仮想輪郭線Pがエンドミル本体2の軸線Oに平行となるように延びて直線状をなす外周刃16と、外周刃16の先端側に位置するとともに、仮想輪郭線Pが先端側に向かうに従い漸次径方向の内側に向かって延びて凸曲線状をなすコーナ刃17と、コーナ刃17の径方向内側に位置するとともに、該コーナ刃17から径方向内側に離間するに従い漸次後端側に向かって延びるランピング刃24とを有している。
これら切削インサート1A〜1Cがエンドミル本体2のインサート取付座4A〜4Cに装着された状態で、各切削インサート1A〜1Cの切れ刃15の仮想輪郭線P同士は、互いにエンドミル本体2の軸線O回りの回転軌跡が一致するようにされている。
本実施形態では、切れ刃15の仮想輪郭線Pが、すくい面12の中央を通りインサート本体11の厚さ方向に延びるインサート中心線(不図示)に関して2回対称(180°回転対称)に設けられており、従って切れ刃15も一対形成されている。
また、インサート本体11には、該インサート本体11を厚さ方向に貫通してすくい面12及び着座面13に開口する貫通孔20が形成されている。図6に示されるように、本実施形態では同形同大の一対の貫通孔20が、すくい面12に対向する方向から見て、前記インサート中心線を挟んでインサート本体11の長手方向に並ぶように形成されている。
また、すくい面12上に符号21で示されるものは、一対の切れ刃15のうち、一方の切れ刃15に接近して配置された使用刃確認指標(使用刃確認目印)である。切削インサート1A〜1Cは、この使用刃確認指標21以外において、前記インサート中心線を中心とした180°回転対称体となっている。
また、上述した本実施形態の切削インサート1A〜1Cの切れ刃15は、刃先交換式のラフィングエンドミルの切れ刃でもあるため、図6に示されるようにすくい面12を正面に見て、切れ刃15のうち、外周刃16及びコーナ刃17には、仮想輪郭線Pに対して凹む凹部18が間隔をあけて形成されているとともに、これら外周刃16及びコーナ刃17は波形状とされている。
具体的に、図6に示されるインサート上面視において、切れ刃15の凹部18は、凹曲線状をなしており、凹部18とともに切れ刃15の波形を構成して該凹部18に隣接する凸部19は、該切れ刃15の仮想輪郭線Pに沿うように、直線状又は凹部18より曲率半径の大きい凸曲線状をなしている。図6において、外周刃16の凸部19は、該外周刃16の仮想輪郭線P部分に沿って直線状をなしており、コーナ刃17の凸部19は、該コーナ刃17の仮想輪郭線P部分に沿って凸曲線状をなしている。尚、切れ刃15における凹部18と凸部19との連結端は凸曲線状とされており、これにより凹部18と凸部19とは滑らかに連なっている。
そして、切削インサート1A〜1Cは、切れ刃15のうちコーナ刃17における仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さNが、外周刃16における仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さMよりも小さくされている。
すなわち、本実施形態では、コーナ刃17の凹部18の長さNが小さいことで、該コーナ刃17において刃長方向に隣り合う凹部18同士の配置間隔も小さくされており、これにより、切れ刃15のうち、コーナ刃17における凹部18及び凸部19からなる波形状の波長が、外周刃16における凹部18及び凸部19からなる波形状の波長より小さくされている。
具体的に、図6に示されるようにすくい面12を正面に見て、コーナ刃17における仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さNに対する仮想輪郭線Pに沿う凸部19の長さnの比n/Nが、外周刃16における仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さMに対する仮想輪郭線Pに沿う凸部19の長さmの比m/Mより大きくされている。尚、図5(b)に示される切削インサート1Bの切れ刃15については、他の切削インサート1A、1Cの各切れ刃15に対して凹部18及び凸部19の仮想輪郭線Pに沿う位置(つまり凹凸の位相)をずらすとともに滑らかにコーナ刃17と外周刃16とを連結する目的で例外的に、上記比の関係が異なっている。
ここで、上記凹凸の位相をずらすとは、具体的には切削インサート1A〜1Cの各切れ刃15の対応する凸部19同士が刃長方向(仮想輪郭線Pに沿う方向)にオーバーラップしつつずらされて配置されることであり、特に、図5(a)(c)に示される切削インサート1A、1Cの外周刃16における凸部19(符号16が指す部分)同士を確実にオーバーラップさせることが望ましい。この構成を確実に得る目的で、上記比n/Nは、上記比m/Mより大きくされている。
また、このような切れ刃15の凹部18及び凸部19に対応して、インサート本体11の逃げ面14には、図5に示されるように、すくい面12から着座面13に達するように延びる溝部22及びリブ部23が、インサート周方向に交互となるように複数形成されている。言い換えれば、逃げ面14に溝部22及びリブ部23が形成されていることにより、該逃げ面14とすくい面12との交差稜線に形成される切れ刃15が、凹部18及び凸部19を有する凹凸形状(波形状)をなすことになる。従って、切れ刃15は、この凹凸形状のうち凸部19のみが切削に関与することになり、切屑は凹部18において分断されて生成される。
尚、本実施形態の切削インサート1A〜1Cは、前記逃げ面14が溝部22及びリブ部23も含めてすくい面12から着座面13側に向かうに従い漸次後退するように傾斜しており、切れ刃15に予め逃げ角が付与されたポジティブインサートとされている。また、着座面13はその全体が前記厚さ方向に垂直な平面とされているのに対し、すくい面12は、切れ刃15に沿った周縁部に該すくい面12の面方向内側に向かうに従い漸次前記厚さ方向に後退するポジ面が形成され、このポジ面よりも面方向内側の前記貫通孔20の開口部を含む部分が前記厚さ方向に垂直な平面とされている。
そして、図6及び図7に示されるように、切れ刃15のうち、コーナ刃17におけるすくい角C(例えば図6のX−X断面におけるすくい角)は、外周刃16におけるすくい角C(例えば図6のY−Y断面におけるすくい角)より大きくされている。本実施形態では、切れ刃15のすくい角Cは、−10°〜15°である。また、コーナ刃17のすくい角Cは、外周刃16からランピング刃24側に向かうに従い連続的に、又は段階的に大きくされている。
また、図7において、本実施形態では、切れ刃15にチャンファホーニングが形成されており、該チャンファホーニングのホーニング幅Eは、0.2mmであり、ホーニング角Fは、12°である。尚、切れ刃15にチャンファホーニングを形成する代わりに、丸ホーニングを形成しても構わない。また、切れ刃15のすくい面12側には、ランドが形成されており、該ランドのランド幅Dは、0.7mmである。ただし、上記各寸法は一例であり、本実施形態に限定されるものではない。
また、図2に示されるように、工具先端から切削インサート1A〜1Cの逃げ面14を正面に見て、切れ刃15のうちコーナ刃17は、インサート本体11の厚さ方向に突出する凸曲線状をなしている。また、図4に示されるように、工具径方向から切削インサート1Aの逃げ面14を正面に見て、切れ刃15のうち外周刃16は、コーナ刃17から離間するに従い(エンドミル本体2の後端側に向かうに従い)漸次前記厚さ方向に後退するように傾斜して延びている。
また、図6において、インサート本体11の一対の切れ刃15のうち、一方の切れ刃15のコーナ刃17における外周刃16とは反対側の端部には、該コーナ刃17との間に鈍角をなすようにこのコーナ刃17に交差して直線状に延びるランピング刃24が形成されている。ランピング刃24は、一方の切れ刃15のコーナ刃17の端部と、他方の切れ刃15の外周刃16の端部とを繋いでおり、切削インサート1A〜1Cがエンドミル本体2に装着されたときに、該エンドミル本体2の先端面から突出して配置される。ランピング刃24は、例えば特許文献1(特開2000−42821号公報)の図2に示されるような、刃先交換式エンドミル10が沈み込み加工する際などにおいて、被削材に切り込まれる。
また、図6に示されるように、コーナ刃17におけるランピング刃24との連結部分には、凹部18は形成されていない。すなわち、コーナ刃17は、その凸部19からランピング刃24に連なっているとともに、該コーナ刃17の凹部18は、ランピング刃24から離間した位置(ランピング刃24との連結部分以外の部位)に形成されている。
以上説明した本実施形態の刃先交換式エンドミル10を用いて被削材を切削加工(転削加工)する際は、切削インサート1A〜1Cの切れ刃15のうち、外周刃16がエンドミル本体2の外周端に配置され、コーナ刃17がエンドミル本体2の先端外周端において外周刃16より径方向内側に配置される。また、ランピング刃24はコーナ刃17の径方向内側に配置される。そして、エンドミル本体2を軸線O回りに回転させて切削インサート1A〜1Cで被削材に切り込んでいくと、該切削インサート1A〜1Cの切れ刃15のうち、外周刃16及びコーナ刃17が凹部18を有する波形状とされていることで、この切れ刃全長が一度に被削材に食い付くことはなく、凹部18に隣接する各凸部19から徐々に被削材に食い付くことになるとともに、切屑も細かく分断されやすくなって、衝撃緩和や切削負荷の低減、切屑処理性の向上などの効果が得られる。
そして、本実施形態の切削インサート1A〜1Cでは、軸線Oから遠く配置されて切削速度が速い外周刃16の仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さMに対して、該外周刃16よりも軸線O近くに配置されて切削速度が遅いコーナ刃17の仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さNを小さくしたことにより、下記の顕著な効果を奏する。
すなわち、切削速度が速く、また切屑の厚さも厚くなる外周刃16においては、刃先強度(切れ刃強度)を十分に確保する必要がある。本実施形態によれば、外周刃16の仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さMに対応して、被削材に切り込んでいく凸部19における切れ刃長さ(刃長)が確保されるとともに、刃先強度が高められ、これによりチッピングや欠損が抑制されて、安定した切削加工を維持できる。
一方、外周刃16より切削速度が遅く、また切屑の厚さも薄くなるコーナ刃17においては、外周刃16ほどの刃先強度は必要とされていない。そこで本実施形態では、コーナ刃17の仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さNを外周刃16の仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さMよりも小さく設定した。このように、コーナ刃17の凹部18の長さNが短くされることで、該コーナ刃17において刃長方向(仮想輪郭線Pに沿う方向)に隣り合う凹部18同士の配置間隔を小さく設定でき、さらにこれら凹部18に隣接する凸部19同士の配置間隔も小さくできる。これにより、本実施形態で説明したように、複数種類の切削インサート1A〜1Cをエンドミル本体2の先端外周部に軸線O回りに間隔をあけて装着するとともに、これら切削インサート1A〜1Cの回転軌跡における切れ刃15同士の凹部18の仮想輪郭線Pに沿う方向の位置をずらして配置(つまり凹部18の位相をずらして配置)した場合に、各切削インサート1A〜1Cのコーナ刃17の切削代を、互いに略均等にすることができる。
具体的に、本実施形態とは異なり、例えば図10及び図11に示される従来の切削インサート101A〜101Cのように、コーナ刃117の仮想輪郭線に沿う凹部の長さを外周刃116の仮想輪郭線に沿う凹部の長さと同様の設定とした場合、所定の切削インサート101Aのコーナ刃117の切削代が、他の切削インサート101B、101Cのコーナ刃117の切削代よりも大きくなるとともに、該切削インサート101Aのコーナ刃117の切削負荷が他よりも大きくなって、コーナ刃117が早期摩耗したり欠損するおそれがある。特に、図11(a)〜(c)に示されるように、工具軸線O方向への切り込み深さ(切り込み量)apが、コーナ刃117において切削に寄与しにくい凹部(溝部)の軸線O方向の長さに対して同等(或いはそれ以下)である場合には、これら切削インサート101A〜101Cのうち一部のコーナ刃117が機能しなくなり、該一部のコーナ刃117以外の他のコーナ刃117に対する切削負荷が顕著に増大することになる。
一方、図8(a)〜(c)は、本実施形態の切削インサート1A〜1Cをエンドミル本体2に装着して切削したときの、各切削インサート1A〜1Cのコーナ刃17における切削代を、被削材Wの切削部分を黒く着色して表したものである。
本実施形態によれば、各切削インサート1A〜1Cの切れ刃15において、外周刃16同士の被削材Wの切削代のみならず、図8に示されるように、コーナ刃17同士の被削材Wの切削代も略均等とされており、つまり所定の切削インサートのコーナ刃17の切削負荷が他の切削インサートのコーナ刃17よりも大きくなるようなことが防止されていて、コーナ刃17が早期に摩耗したりチッピングや欠損することが抑制される。特に、前記切り込み深さapが小さい場合であっても、該切り込み深さapは、コーナ刃17の凹部18の軸線O方向の長さよりは小さくなりにくいことから、各コーナ刃17の切削負荷の偏りを顕著に抑制できる。
さらに、コーナ刃17におけるランピング刃24との連結部分には、凹部18は形成されていないことから、ランピング刃24の刃先強度が十分に確保されて、沈み込み加工などにおけるランピング性能が安定して維持される。
このように、本実施形態の切削インサート1A〜1Cによれば、切れ刃15に凹部18を設けて衝撃緩和や切削負荷の低減、切屑処理性の向上などの効果を奏しつつ、該切れ刃15のうち、外周刃16においては切れ刃強度を確保することができ、またコーナ刃17においては切削代の偏りが生じるようなことを防止でき、これにより切れ刃15の早期摩耗や欠損が抑制され、かつランピング性能をも確保して、高品位な切削加工が安定して維持されるとともに、工具寿命を延長できるのである。
また、本実施形態の切削インサート1A〜1Cにおいて、外周刃16及びコーナ刃17には、凹部18に隣接する凸部19が形成され、該凸部19は仮想輪郭線Pに沿って延びており、コーナ刃17における仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さNに対する仮想輪郭線Pに沿う凸部19の長さnの比n/Nが、外周刃16における仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さMに対する仮想輪郭線Pに沿う凸部19の長さmの比m/Mより大きくされているので、下記の効果を奏する。
すなわちこの構成により、一の切削インサートの切れ刃15の回転軌跡から被削材の加工面に投影された凹凸、特に該加工面の凸部が、他の切削インサートの切れ刃15によってそれぞれ切削されて平滑な加工面となり、加工面品位を高めることができる。確実に加工品位を向上させるためには、各切削インサート1A〜1Cのコーナ刃17及び外周刃16におけるそれぞれの凸部19の回転軌跡をオーバーラップさせる必要があるが、例えば上記構成とは異なり、コーナ刃17と外周刃16において仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さN、Mに対する仮想輪郭線Pに沿う凸部19の長さn、mの比n/N、m/Mが一定であると、仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さの違いにより、コーナ刃17のオーバーラップ長さが外周刃16より小さくなって、コーナ刃17で切削された加工面の加工品位が外周刃16で切削された加工面の加工品位よりも劣ることになってしまう。そこで、本実施形態で説明した構成のように、コーナ刃17における仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さNに対する仮想輪郭線Pに沿う凸部19の長さnの比n/Nを、外周刃16における仮想輪郭線Pに沿う凹部18の長さMに対する仮想輪郭線Pに沿う凸部19の長さmの比m/Mより大きくすることで、コーナ刃17と外周刃16の各凸部19のオーバーラップ長さを略同等とすることができ、コーナ刃17と外周刃16で切削された加工面の加工品位の差を小さくすることができる。
また、コーナ刃17のすくい角Cが、外周刃16のすくい角Cより大きくされているので、下記の効果を奏する。
すなわち、切削速度が速く、また切屑の厚さも厚い外周刃16におけるすくい角Cが小さくされているので、該外周刃16における切れ刃強度が確保されて、チッピングや欠損が効果的に抑制されることになる。一方、外周刃16よりも切削負荷が小さいコーナ刃17においては、すくい角Cが大きくされていることで、鋭い切れ味を確保でき、切削抵抗が低減されるとともに、加工品位が高められる。
また、コーナ刃17のすくい角Cが、外周刃16からランピング刃24側に向かうに従い大きくされているので、下記の効果を奏する。
すなわち、コーナ刃17のうち、切削速度が速く切屑の厚さも厚い(つまり切削負荷が大きい)外周刃16側の部位においては、該コーナ刃17のすくい角Cが小さくされているので、刃先強度が確保され、チッピングや欠損が抑制される。一方、コーナ刃17のうち、切削速度が遅く切屑の厚さも薄い(つまり切削負荷が小さい)ランピング刃24側の部位においては、該コーナ刃17のすくい角Cが大きくされているので、鋭い切れ味を確保でき、切削抵抗が低減されるとともに、加工品位が高められる。
また、本実施形態では、切削インサート1A〜1Cの切れ刃15の凹部18が凹曲線状をなしているので、例えば本実施形態とは異なり、切れ刃の凹部が複数の直線の組み合わせにより折れ曲がりつつ全体として凹状とされるような場合(例えば矩形凹状など)に比べて、切れ刃強度が高められ、また切屑詰まりも抑制される。
また、凹部18とともに切れ刃15の波形を構成して該凹部18に隣接する凸部19が、切れ刃15の仮想輪郭線Pに沿って形成されているので、この凸部19が切削した被削材の加工面に凹凸がより形成されにくくなって、加工面品位が高められる。具体的に、本実施形態によれば、例えば、切れ刃に波形状を有しない切削インサートを備えた刃先交換式ラジアスエンドミルにより被削材を切削して得られる切削痕に近い加工面品位を得ることができる。
また、本実施形態の刃先交換式エンドミル10では、エンドミル本体2のインサート取付座4A〜4Cに切削インサート1A〜1Cを装着することで、これら切削インサート1A〜1Cは、軸線O回りの回転軌跡で、互いに切れ刃15の仮想輪郭線Pが一致するように配置される一方、凹部18及び凸部19の位置は仮想輪郭線Pに沿う方向にずらされている。従って、この刃先交換式エンドミル10によれば、複数種類の切削インサート1A〜1Cを、エンドミル本体2のインサート取付座4A〜4Cに装着するだけの簡単な作業によって、これら切削インサート1A〜1Cの切れ刃15の凹部18同士及び凸部19同士の位置が仮想輪郭線Pに沿う方向(つまり切れ刃15の刃長方向)に互いにずらされることとなり、被削材の加工面品位を高めることができる。すなわち、これら切削インサート1A〜1Cをエンドミル本体2に装着する際に、切れ刃位置を調整するような面倒な作業等は不要であって、作業性に優れている。
また、本実施形態のエンドミル本体2によれば、インサート取付座4A〜4Cに装着される切削インサート1A〜1Cの切れ刃15の凹部18及び凸部19に対応して、該エンドミル本体2の外周面に溝7及びリブ8が形成されているので、切削インサート1A〜1Cをインサート取付座4A〜4Cに装着する際の取り付け間違いを防止できる。すなわち、複数種類の切削インサート1A〜1Cの中から、所定のインサート取付座の工具回転方向T後方側に形成された溝7及びリブ8に対応した切れ刃15形状(凹部18及び凸部19)を備えた所定の切削インサートを選んで、該インサート取付座に装着するだけでよく、切削インサート1A〜1Cの取り付け作業が簡単かつ正確に行える。
また、切削インサート1A〜1Cの切れ刃15の凹部18及び凸部19に対応して、エンドミル本体2に溝7及びリブ8が形成されているので、該エンドミル本体2の外周面と被削材の加工面との接触を防止して加工面品位を確保しつつも、このエンドミル本体2の剛性と、インサート取付座4A〜4Cに対する切削インサート1A〜1Cの着座安定性を高めることができる。
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前述の実施形態では、エンドミル本体2には3つのチップポケット3が形成されており、インサート取付座4A〜4Cは該チップポケット3に対応して3種類設けられるとともに、これに対応して切削インサート1A〜1Cも3種類が設けられているが、チップポケット3、インサート取付座4及び切削インサート1の数や種類は、前述の実施形態に限定されない。
具体的に、例えば、エンドミル本体2に6つのチップポケット3が形成され、これらチップポケット3に3種類のインサート取付座4A〜4Cが一対ずつ設けられるとともに、3種類の切削インサート1A〜1Cが一対ずつ装着されていてもよく、或いは、6種類のインサート取付座4が1つずつ設けられるとともに、6種類の切削インサート1が1つずつ装着されていてもよい。
また、前述の実施形態では、切削インサート1A〜1Cが、縦長板状のインサート本体11を有すると説明したが、インサート本体11は板状であればよく、前述の縦長板状に限定されるものではない。
また、切削インサート1A〜1Cには、切れ刃15が180°回転対称に一対設けられているとしたが、切れ刃15の配置や数は、前述した実施形態に限定されない。
ここで、図9に示される切削インサート1A〜1Cは、前述した実施形態の変形例である。この変形例では、切れ刃15のすくい角Cが前述の実施形態で説明したものより大きくなっており、該すくい角Cは、0°〜25°である。このように、切れ刃15のすくい角Cを全体に大きく設定することで、低抵抗でより切れ味に優れた切削インサート1A〜1Cとすることができる。
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述した実施形態及び変形例(尚書き等)で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
1A、1B、1C 切削インサート
2 エンドミル本体
4A、4B、4C インサート取付座
7 溝
10 刃先交換式エンドミル
11 インサート本体
12 すくい面
14 逃げ面
15 切れ刃
16 外周刃
17 コーナ刃
18 凹部
19 凸部
24 ランピング刃
C すくい角
M 外周刃における仮想輪郭線に沿う凹部の長さ
m 外周刃における仮想輪郭線に沿う凸部の長さ
N コーナ刃における仮想輪郭線に沿う凹部の長さ
n コーナ刃における仮想輪郭線に沿う凸部の長さ
O 軸線
P 切れ刃の仮想輪郭線
T 工具回転方向

Claims (6)

  1. 円柱状をなし、軸線回りに回転されるエンドミル本体の先端外周部に着脱可能に装着される切削インサートであって、
    板状をなすインサート本体を有し、
    前記インサート本体の厚さ方向を向く一面がすくい面とされ、
    前記インサート本体の厚さ方向に交差する方向を向く側面が逃げ面とされ、
    前記すくい面と前記逃げ面との交差稜線が切れ刃とされており、
    前記切れ刃は、
    該切れ刃の基本形状である仮想輪郭線が直線状をなす外周刃と、
    前記外周刃に連なり、前記仮想輪郭線が凸曲線状をなすコーナ刃と、
    前記コーナ刃の前記外周刃とは反対側に連なるランピング刃と、を有し、
    前記すくい面を正面に見て、
    前記切れ刃のうち、前記外周刃及び前記コーナ刃には、前記仮想輪郭線に対して凹む凹部が形成され、
    前記コーナ刃における前記ランピング刃との連結部分には前記凹部は形成されておらず、
    前記コーナ刃における前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さは、前記外周刃における前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さより小さくされていることを特徴とする切削インサート。
  2. 請求項1に記載の切削インサートであって、
    前記外周刃及びコーナ刃には、前記凹部に隣接する凸部が形成され、該凸部は前記仮想輪郭線に沿って延びており、
    前記コーナ刃における前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さNに対する前記仮想輪郭線に沿う前記凸部の長さnの比n/Nが、前記外周刃における前記仮想輪郭線に沿う前記凹部の長さMに対する前記仮想輪郭線に沿う前記凸部の長さmの比m/Mより大きくされていることを特徴とする切削インサート。
  3. 請求項1又は2に記載の切削インサートであって、
    前記コーナ刃のすくい角が、前記外周刃のすくい角より大きくされていることを特徴とする切削インサート。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の切削インサートであって、
    前記コーナ刃のすくい角は、前記外周刃から前記ランピング刃側に向かうに従い大きくされていることを特徴とする切削インサート。
  5. 円柱状をなすエンドミル本体の先端外周部に、該エンドミル本体の軸線回りに間隔をあけて複数のインサート取付座が形成され、これらインサート取付座に複数種類の切削インサートが着脱可能に装着される刃先交換式エンドミルであって、
    前記切削インサートとして、請求項1〜4のいずれか一項に記載の切削インサートを備え、
    前記切削インサートの前記切れ刃のうち、前記外周刃の前記仮想輪郭線は、前記エンドミル本体の軸線に平行となるように延び、前記コーナ刃の前記仮想輪郭線は、前記エンドミル本体の先端側に向かうに従い漸次前記軸線に直交する径方向の内側に向かって延びており、
    複数種類の前記切削インサートは、前記軸線回りの回転軌跡で、互いに前記切れ刃の前記仮想輪郭線が一致するように配置される一方、前記凹部の位置は前記仮想輪郭線に沿う方向にずらされていることを特徴とする刃先交換式エンドミル。
  6. 請求項5に記載の刃先交換式エンドミルに用いられるエンドミル本体であって、
    このエンドミル本体の外周面には、前記インサート取付座の工具回転方向後方側に配置されるとともに、前記切削インサートの前記切れ刃の前記凹部に対応して前記軸線回りに延びる溝が形成されていることを特徴とするエンドミル本体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP6004301B2 (ja) * 2014-03-18 2016-10-05 株式会社タンガロイ 切削インサート及び刃先交換式回転切削工具

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