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JP2014019719A - インキ組成物およびこれを用いた加飾シート - Google Patents

インキ組成物およびこれを用いた加飾シート Download PDF

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Abstract

【課題】ハードコート層にミクロサイズの無機粒子を含む加飾成形品を製造する際に用いられる加飾シートにおいて、該加飾シートのハードコート層形成層に用いられるインキ組成物、該インキ組成物を用いた干渉縞を効果的に抑制できる加飾シートを提供する。
【解決手段】電離放射線硬化性官能基Aとしてビニル基、(メタ)アクリロイル基およびアリル基から選ばれる少なくとも一種を有する、重量平均分子量が50000以上である多官能性ラジカル重合型プレポリマーと、表面に電離放射線硬化性官能基Bを有する反応性無機粒子Aと、多官能イソシアネート化合物と、0.5〜3.0μmの平均粒子径を有する無機粒子Bとを含んでなる、インキ組成物、これを用いた加飾シート、該シートを用いた加飾成形体である。
【選択図】図1

Description

本発明は、インキ組成物および該インキ組成物をハードコート層形成層に用いた加飾シートに関する。
従来、三次元曲面などの複雑な表面形状を有する樹脂成形体の加飾には、射出成形同時加飾方法が用いられる。射出成形同時加飾方法とは、射出成形の際に、金型内に挿入された加飾シートをキャビティ内に射出注入された溶融した射出樹脂と一体化させて、樹脂成形体表面に加飾を施す方法であり、樹脂成形体と一体化される加飾シートの構成の違いにより、一般に、射出成形同時ラミネート加飾法と射出成形同時転写加飾法とに大別される。
射出成形同時転写加飾法においては、加飾シートを金型内面に密着させて型締した後、キャビティ内に溶融した射出樹脂を射出して、加飾シートと射出樹脂とを一体化し、次いで加飾成形品を冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離することにより、所望の加飾が施された転写層を転写した加飾成形品を得ることができる。
このようにして得られる加飾成形品は、従来用いられている家庭用電化製品、自動車内装品などの分野に加えて、例えば近年パソコン市場の拡大に伴う、日常携帯できるモバイルパソコンを含めたノート型のパソコンの分野での使用や、自動車外装、携帯電話分野での使用も注目されている。
上記のような加飾シートは、一般的に未硬化のハードコート層形成層、平滑化層(アンカーコート層)、加飾成形品に所望の意匠性を付与するための絵柄層、および転写層を接着性よく樹脂成形体に転写するための接着層からなり、樹脂成形体と一体化した加飾シートから基材シートを剥離した後、ハードコート層形成層を硬化させることによって転写層が形成される。このような加飾シートは、使用前にロール状の形態で保管しておくと、加飾シートの最表面にあるハードコート層形成層が、対向する裏面の基材シートに付着してしまう、いわゆるブロッキングが発生する場合がある。
上記のような問題に対して、特開2012−041479号公報には、ハードコート層形成層を、特定の重合性プレポリマーとサブミクロンオーダーの反応性無機粒子とを含む樹脂組成物を用いて形成することにより、ハードコート層の硬度等を損ねることなくブロッキングを防止できる加飾シートが提案されている。
ところで、特開2011−167844号公報には、樹脂成形体の表面に金属光沢感を付与するための加飾シートにおいて、絵柄層を金属蒸着膜等で形成すると、絵柄層とアンカー層との界面で反射した光が干渉し合い、剥離層の表面に干渉縞が発生してしまうため、絵柄層ないしアンカー層中に、シリカ等の微粒子を添加して、反射光を散乱させることにより、干渉縞を防止することが提案されている。
特開2012−041479号公報 特開2011−167844号公報
上記のように、特開2012−041479号公報の加飾シートは、ハードコート層形成層は、樹脂成分としてのプレポリマーと無機粒子を含むため、硬化により形成されたハードコート層は、樹脂本来の屈折率よりも低くなり、その結果、平滑化層が樹脂等で形成されていると、ハードコート層と平滑化層との屈折率差が大きくなり、転写後の加飾成形品表面に干渉縞が発生する場合があることが判明した。
一方、特開2011−167844号公報で提案されている加飾シートは、図3に示すように、平滑化層に干渉縞防止剤(シリカ等の微粒子)を添加して、平滑化層の表面に凹凸を形成して光散乱を生じさせるものであるため、平滑化層(アンカーコート層)上に絵柄層を形成する場合に、平滑化層内の干渉縞防止剤(シリカ等の微粒子)の存在により、絵柄印刷適性等に影響が生じる場合がある。
本発明者らは、今般、特開2012−041479号公報の加飾シートにおいて、ハードコート層に、さらにミクロサイズの無機粒子を加えることにより、高硬度特性などの表面特性を保ちつつ、干渉縞を抑えることができるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、高硬度特性などの表面特性を保ちつつ、干渉縞を抑えることができるハードコート層を形成することができる、インキ組成物を提供することである。
また、本発明の別の目的は、該インキ組成物を用いた干渉縞を効果的に抑制できる加飾シートを提供することである。
また、本発明の別の目的は、上記の加飾シートを用いて製造した加飾成形品を提供することである。
本発明によるインキ組成物は、電離放射線硬化性官能基Aとしてビニル基、(メタ)アクリロイル基およびアリル基から選ばれる少なくとも一種を有する、重量平均分子量が50000以上である多官能性ラジカル重合型プレポリマーと、表面に電離放射線硬化性官能基Bを有する反応性無機粒子Aと、多官能イソシアネート化合物と、0.5〜3.0μmの平均粒子径を有する無機粒子Bとを含んでなることを特徴とするものである。
また、本発明の態様によれば、前記無機粒子Bが、前記多官能性ラジカル重合型プレポリマーと前記反応性無機粒子Aの合計質量100質量部に対して、1.0〜10.0 質量部含まれることが好ましい。
また、本発明の別の態様によれば、前記無機粒子Bが、前記多官能性ラジカル重合型プレポリマーと前記反応性無機粒子Aの合計質量100質量部に対して、2.0〜5.0 質量部含まれることがさらに好ましい。
また、本発明の態様によれば、前記反応性無機粒子Aが、5nm以上、300nm未満の平均粒子径を有することが好ましい。
また、本発明の態様によれば、前記無機粒子Bが、シリカ粒子であることが好ましい。
また、本発明の態様によれば、前記反応性無機粒子A が、反応性シリカ粒子および/または反応性異形シリカ粒子であることが好ましい。
また、本発明の態様によれば、前記反応性無機粒子Aの固形分の含有量が、前記プレポリマーの固形分と前記反応性無機粒子Aの固形分との合計質量に対して、15質量%以上かつ60質量%以下であることが好ましい。
また、本発明によれば、基材フィルムの片面に、少なくともハードコート層形成層および平滑化層を順に備えた加飾シートであって、
前記ハードコート層形成層が、前記基材フィルム上に上記のインキ組成物を含んでなることを特徴とする加飾シートも提供される。
また、本発明の態様によれば、前記平滑化層が、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびビニル系共重合体樹脂からなる群から選択されることが好ましい。
また、本発明の態様によれば、前記平滑化層の厚さが、前記無機粒子Bの平均粒子径よりも大きいことが好ましい。
また、本発明によれば、上記の加飾シートを用いて製造される、加飾成形品も提供される。
本発明によれば、加飾成形品の表面に現れる干渉縞を効果的に抑制することができるインキ組成物、および該インキ組成物を含んでなる加飾シートを提供することができる。また、本発明によれば、加飾シートの平滑化層の表面に絵柄層を設けた場合であっても、絵柄層に影響を与えること無く、効果的に干渉縞を抑制することができる。さらに、ハードコート層形成層が上記した特定の樹脂組成物と反応性無機粒子Aとを含むため、高い意匠性を保ちつつ、高硬度性などの表面特性と耐ブロッキングおよび成形性とをより高いレベルで実現できる。
本発明による加飾シートの断面を示す模式図である。 本発明による加飾成形品の断面を示す模式図である。 従来技術による加飾シートの断面を示す模式図である。
<定義>
本明細書において、「電離放射線硬化性」とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などの照射により励起して、重合反応を生じることにより架橋、硬化する性能のことである。
また、本明細書において、「電離放射線硬化性官能基」とは、上記電離放射線硬化性を発現しうる官能基を意味する。
また、本明細書において、「重量平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された値を意味し、標準サンプルにポリスチレンを用いた条件で測定された値を意味する。
さらに、本明細書において、「平均粒子径」とは、溶液中の粒子を動的光散乱方法で測定し、粒子径分布を累積分布で表したときの50%粒子径(d50:メジアン径)であり、例えばMicrotrac粒度分析計(日機装株式会社製)等を用いて測定することができる。
<インキ組成物>
本発明によるインキ組成物は、後記するような、基材フィルムの片面に、少なくともハードコート層形成層および平滑化層を順に備えた加飾シートにおけるハードコート層形成層を形成するためのインキ組成物であって、多官能性ラジカル重合型プレポリマーと特定の反応性無機粒子Aと多官能イソシアネート化合物と特定の無機粒子Bとを必須成分として含むものである。以下、本発明によるインキ組成物を構成する成分について、説明する。
<多官能性ラジカル重合型プレポリマー>
本発明によるインキ組成物に含まれる多官能性ラジカル重合型プレポリマーは、電離放射線硬化性官能基Aを有するプレポリマーであれば特に限定されるものではない。このような電離放射線硬化性官能基Aを有するラジカル重合型プレポリマーとしては、例えば、アクリル(メタ)アクリレート系プレポリマー、ウレタン(メタ)アクリレート系プレポリマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマー、エポキシ(メタ)アクリレート系プレポリマー、およびポリエーテル(メタ)アクリレート系プレポリマーなどのプレポリマーが好ましく挙げられる。これらのなかでも、アクリル(メタ)アクリレート系プレポリマーが好ましい。本発明においては、これらのプレポリマーを単独で、あるいは複数を組合せて用いてもよい。
ここで、アクリル(メタ)アクリレート系プレポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、これと共重合可能な、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの官能基含有(メタ)アクリル系化合物、あるいは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボン酸とを共重合してなるプレポリマーである。
ウレタン(メタ)アクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンプレポリマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
ポリエステル(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルプレポリマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるプレポリマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
エポキシ(メタ)アクリレート系プレポリマーは、例えば比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系プレポリマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレート系プレポリマーを用いることもできる。
ポリエーテル(メタ)アクリレート系ポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
本発明で用いられるプレポリマーの重量平均分子量は、50000以上であることを要し、より好ましくは50000超〜145000であり、さらに好ましくは53000〜115000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、インキ組成物のチキソ性が得られるため塗布が容易であり、かつ良好な成形性も得られる。
また、優れた表面特性を得る観点から、プレポリマーの二重結合当量は、100〜800、好ましくは150〜500、より好ましくは150〜300である。なお、二重結合当量は、電離放射線硬化性官能基1molあたりの分子量を意味する。
<反応性無機粒子A>
インキ組成物に含まれる反応性無機粒子Aは、表面に電離放射線硬化性官能基Bを有する。なお、電離放射線硬化性官能基とは、上記電離放射線硬化性を発現し得る官能基のことであり、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基およびアリル基といったエチレン性不飽和結合やエポキシ基、シラノール基などの官能基のことである。本発明においては、高硬度性および耐スクラッチ性の向上の観点から、電離放射線硬化性官能基Bが、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、およびアリル基であることが好ましい。
反応性無機粒子Aとしては、シリカ粒子(コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカなど)、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、酸化亜鉛粒子などの金属酸化物粒子が好ましく挙げられ、高硬度性の向上の観点から、シリカ粒子およびアルミナ粒子が好ましく、特にシリカ粒子が好ましい。
反応性無機粒子Aの形状としては、球、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、これらの形状が均一で、整粒であることが好ましい。また、反応性無機粒子Aの平均粒子径は、インキ組成物により形成する層の厚さにより適宜選択しうるが、通常5nm以上、300nm未満が好ましく、10〜100nmがより好ましい。通常、加飾シートに加えられる無機粒子は、フィルムの強度および透過性を確保する意味で、粒子径が小さいものほど好ましく、ハンドリング性も考慮すると10〜100nmがより好ましい。
また、無機粒子のなかでも、高硬度性の観点からは、異形無機粒子が好ましい。異形無機粒子は、無機粒子が平均連結数2〜40個の連結凝集した無機粒子群からなるものが好ましい。連結凝集は、規則的であっても不規則的であってもよい。無機粒子群を形成する無機粒子としては、シリカ(コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカなど)、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛などの金属酸化物からなる無機粒子が好ましく挙げられ、高硬度性の向上の観点から、シリカあるいはアルミナからなる異形無機粒子であることが好ましい。すなわち、異形無機粒子は、シリカ粒子あるいはアルミナ粒子が平均連結数2〜40個の連結凝集したシリカ粒子群あるいはアルミナ粒子群からなるものであることが好ましく、特に、シリカ粒子が平均連結数2〜40個の連結凝集したシリカ粒子群からなる異形シリカ粒子が好ましい。
上記無機粒子群を形成する無機粒子の形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形などが好ましく挙げられ、これらの形状が均一で、整粒であることが好ましい。また、無機粒子群を形成する無機粒子の平均粒子径は、通常5nm以上、300nm未満が好ましく、10〜100nmであることがより好ましい。また、異形無機粒子の平均粒子径としては、インキ組成物により形成する層の厚さにより適宜選択しうるが、通常5nm以上、300nm未満が好ましく、10〜100nmがより好ましい。なお、平均粒子径は、上記した無機粒子の平均粒子径と同じ方法により測定したものである。
本発明において使用される反応性無機粒子Aは、上記したシリカ粒子または異形シリカ粒子の表面に、電離放射線硬化性官能基Bを有する反応性シリカ粒子または反応性異形シリカ粒子であることが好ましい。このような電離放射線硬化性官能基Bを表面に有することで、重合後にハードコート層を形成するポリマーとの親和性が良好となる。これら粒子の表面に電離放射線硬化性官能基Bを結合させるには、シランカップリング剤を用いることができる。
シランカップリング剤としては、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アリル基などを有する公知のシランカップリング剤が好ましく挙げられ、より具体的には、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などが好ましく挙げられ、より好ましくは、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシランである。
無機粒子をシランカップリング剤で表面装飾する方法は、特に制限はなく公知の方法であればよく、シランカップリング剤をスプレーする乾式の方法や、無機粒子を溶剤に分散させてからシランカップリング剤を加えて反応させる湿式の方法などが挙げられる。
反応性無機粒子Aの固形分の含有量は、プレポリマーの固形分と反応性無機粒子Aの固形分との合計に対して、5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上であり、30質量%以上であることが特に好ましい。また、反応性無機粒子Aの固形分の含有量の上限の範囲としては、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。反応性無機粒子Aの含有量を上記範囲内とすることにより、インキ組成物を用いてハードコート層形成層を形成する際、基材フィルム(あるいは離型層)上にインキ組成物を塗布して形成したハードコート層形成層は、必要に応じて熱乾燥するだけでタックフリーとなるため、電離放射線の照射や高温の焼付けなどによる半硬化処理を行うことなく、シートをロール状に巻き取ってもブロッキング(裏移り)することがない。
<多官能イソシアネート化合物>
インキ組成物に含まれる多官能イソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上有する多官能イソシアネート化合物であることが好ましい。このような多官能イソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、あるいは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(ないしは脂環式)イソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。また、これら各種イソシアネートの付加体または多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等や、ブロック化されたイソシアネート化合物等も挙げられる。
また、本発明においては、多官能イソシアネート化合物のうち、電離放射線硬化性官能基Cとしてビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも一種を有するものが、高硬度性の観点から特に好ましく、具体的には「Laromer LR9000(商品名)」(BASF社製)のように、エチレン性不飽和結合を有する官能基を少なくとも1個と、2個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート化合物が好ましい。
<無機粒子B>
本発明において、インキ組成物には上記反応性無機粒子Aに加えて、平均粒子径が0.5〜3.0μmの無機粒子Bが添加される。この無機粒子Bの存在により、加飾シートに生じる干渉縞が解消する。干渉縞の発生原因は、ハードコート層とこれに隣接する平滑化層との屈折率の差が大きくなることで、反射した光が干渉するためであると考えられており、ハードコート層にナノサイズの反応性無機粒子Aを加えるとは屈折率が大きくなると考えられている。本発明者らは、鋭意検討の結果、ナノサイズの反応性無機粒子Aに加えて、ミクロサイズの無機粒子Bをハードコート層形成組成物中に加えることで、転写後の成形品表面の干渉縞を抑制できることを知得した。理論に拘束されるものではないが、この効果はミクロサイズの無機粒子Bが、ハードコート層と平滑化層との界面を粗すことにより、達成されると考えられる。可視光の波長の下限がおよそ400nmであるため、0.5μm以上の平均粒子径を有する無機粒子を使用することにより、干渉縞の発生を効果的に抑制することができる。しかし、フィルムの強度および透過性を確保する観点から、粒子は大きすぎない方が好ましく、無機粒子Bの粒子径は0.5μm〜3.0μmの範囲がより好ましい。
無機粒子Bは、上記反応性無機粒子Aと同じ材料であっても異なる材料であっても良い。したがって、反応性無機粒子Aに用いられる材料は全て使用可能であるが、特にシリカ粒子が好ましい。
無機粒子Bの含有量は、多官能性ラジカル重合型プレポリマーと反応性無機粒子Aの合計質量100質量部に対して1.0〜10.0質量部であるのが好ましい。この範囲であれば効果的に干渉縞の発生を抑制することができる。また、無機粒子Bの含有量が官能性ラジカル重合型プレポリマーと反応性無機粒子Aの合計質量100質量部に対して2.0〜5.0質量部であると特に好ましい。この範囲の含有量であると、加飾成形品表面に白化も生じず、より高いレベルの意匠性を備えることができる。
本発明によるインキ組成物は、上記したプレポリマー、反応性無機粒子A、平均粒子径が0.5〜3.0μmの無機粒子Bおよび多官能イソシアネート化合物を必須成分として含むが、プレポリマーの固形分と反応性無機粒子Aとの合計に対するプレポリマーの固形分の含有量は、95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは85質量%以下であり、70質量%以下であることが特に好ましい。また、プレポリマーの固形分の含有量の下限の範囲としては、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。プレポリマーの含有量を上記範囲内とすることにより、インキ組成物を用いてハードコート層形成層を形成する際、基材フィルム(あるいは離型層)上にインキ組成物を塗布して形成したハードコート層形成層は、必要に応じて熱乾燥するだけでタックフリーとなるため、電離放射線の照射や高温の焼付けなどによる半硬化処理を行うことなく、シートをロール状に巻き取ってもブロッキング(裏移り)することがない。また、半硬化処理の必要がなくなるため、成形した際に成形前後の加飾シートの面積比が130%以上となるような深絞りであっても、最大延伸部に塗膜割れや白化が生じることなく、良好に型の形状に追従できるハードコート層形成層の形成が可能となる。さらに、成形転写後にハードコート層形成層を電離放射線を用いて硬化することにより、優れた高硬度性が得られる。
また、インキ組成物中の多官能イソシアネート化合物の固形分の含有量は、プレポリマーの固形分100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、3〜15質量部がさらに好ましい。多官能イソシアネート化合物の固形分の含有量を上記範囲内とすることにより、優れた高硬度性と成形性を維持したまま、成形時の耐熱性が得られる。
<その他の成分>
本発明によるインキ組成物は、粘度を調整する目的で溶媒を含有してもよい。溶媒としては、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、メチルグリコール、メチルグリコールアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ニトロメタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロルエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンなどのその他の物;またはこれらの混合物が好ましく挙げられる。より好ましい溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
インキ組成物中の溶媒の量は、組成物の粘度に応じて適宜選定すればよいが、プレポリマーの固形分、反応性無機粒子A、無機粒子Bおよびその他後述する光重合開始剤などを合わせた固形分の含有量が通常10〜70質量%程度、好ましくは20〜50質量%となるような量である。
インキ組成物には、光重合開始剤を配合してもよい。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ケトン系、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、ケタール系、アントラキノン系、ジスルフィド系、チオキサントン系、チウラム系、フルオロアミン系などの光重合開始剤が挙げられる。なかでも、アセトフェノン系、ケトン系、ベンゾフェノン系が好ましく挙げられる。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で使用することができ、また複数を組み合わせて使用することもできる。
光重合開始剤の含有量は、プレポリマーの固形分100質量部に対して、0.5〜10質量部程度とすることが好ましく、より好ましくは1〜8質量部、さらに好ましくは3〜8質量部である。
本発明によるインキ組成物には、得られる所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、チキソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、熱ラジカル発生剤、アルミキレート剤などが挙げられる。
また、インキ組成物には、その効果を阻害しない範囲で、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂などのポリマーや、電離放射線硬化性官能基としてビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基およびエポキシ基から選ばれる少なくとも一種を有するモノマー、例えばウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびポリエーテル(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートなどの反応性モノマーを配合することもできる。
<加飾シート>
本発明による加飾シートは、基材フィルムの片面に、少なくともハードコート層形成層および平滑化層とを順に備えた加飾シートであって、前記ハードコート層形成層が、前記基材フィルム上にインキ組成物を含んでなるものである。以下、本発明による加飾シートを、図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明による加飾シートの好ましい一態様についての断面を示す模式図である。加飾シート1は、ポリエステルフィルム等からなる基材フィルム10の一方の表面に、ハードコート層形成層14、平滑化層16が順に積層された層構成を備えたものであり、ハードコート層形成層14中に反応性無機粒子A40および無機粒子B42を含んでなる。この無機粒子Bの存在により、ハードコート層形成層14と平滑化層16との界面が粗されている。本発明の好ましい実施態様においては、後記するようにハードコート層の離型性を向上する目的で、基材フィルム10とハードコート層形成層14との間に、離型層12が設けられていてもよい。本発明の好ましい態様として、平滑化層16上には、さらに、絵柄層18および接着層20が順に形成されていてもよい。また、基材フィルム10の他方の面(ハードコート層形成層14を設けた面とは反対側の面)に帯電防止層22が設けられていてもよい。以下、本発明による加飾シートを構成する各層について説明する。
<基材フィルム>
基材フィルム10は、加飾シート1の支持体となるものであり、ハードコート層形成層14および平滑化層16を支持できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、基材フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、三酢酸セルロース、セロファン、ポリカーボネート、ポリウレタン系などのエラストマー系樹脂などによるものを好適に利用できる。これらのなかでも、成形性および耐熱性の観点から、ポリエステル系樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という。)が好ましい。
基材フィルムの厚さとしては、成形性や形状追従性、取り扱いが容易であるとの観点から、25〜150μmの範囲が好ましく、さらに25〜75μmの範囲がより好ましい。
<離型層>
加飾シートを用いて成形品の表面を加飾する際、ハードコート層形成層14、平滑化層16、絵柄層18および接着層20が順に積層してなる転写層24は、基材シート11から剥離されるが、離型層12は、この剥離を容易にするために必要に応じて設けられる層であり、基材フィルム10とハードコート層形成層14との間に設けられる。離型層を設けることにより、加飾シート1から転写層24を確実かつ容易に被転写体(成形体)へ転写させ、基材フィルム10、離型層12および必要に応じて設けられる帯電防止層22からなる剥離層26を確実に剥離することができる。
離型層には、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース樹脂系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤、アクリル樹脂系離型剤およびこれらの複合型離型剤などの離型剤が好ましく用いられる。これらのなかでも、離型層とハードコート層形成層との剥離強度を所定の範囲内とし、剥離層26を確実に剥離する観点から、メラミン樹脂系離型剤、またはアクリル樹脂系離型剤、あるいはアクリル−メラミン系などこれらを複合したものを好ましく用いることができる。
メラミン樹脂系離型剤を用いる場合、離型剤の硬化を促進するため、酸触媒を使用することが好ましい。上記酸触媒としては特に限定されず、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などが好ましく挙げられる。酸触媒の使用量は、メラミン樹脂系離型剤に含まれるメラミン樹脂の固形分に対して0.05〜3%程度が好ましく、0.05〜1%がより好ましい。また、離型剤の硬化を促進させるために、130〜170℃の加熱処理を10秒〜2分程度行うことが好ましい。
離型層の厚みは、概ね0.1〜5μm程度であるが、1μm以下とすることがより好ましい。
<ハードコート層形成層>
基材フィルム10(必要に応じて離型層12)上に設けられるハードコート層形成層14は、剥離層26が剥離された後、後記するように、硬化させることによりハードコート層となる。このハードコート層は加飾された成形品の最外層であり、摩滅や薬品などから成形品や絵柄層を保護するための層である。このハードコート層形成層14は、インキ組成物を、基材フィルム10(必要に応じて離型層12)上に塗布することにより形成される。ハードコート層形成層14は、硬化することで、優れた高硬度性と耐スクラッチ性はもちろんのこと、耐薬品性や耐汚染性などの表面物性に優れるという性能を有する層であることを要する。
ハードコート層形成層は、上記したインキ組成物を基材フィルム(または離型層)上に塗布することにより形成される。塗布方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、ダイコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などが挙げられる。
ハードコート層形成層の厚さは、0.5〜30μmの範囲が好ましく、より好ましくは3〜15μmである。厚さを上記範囲内とすることにより、優れた高硬度性と耐スクラッチ性はもちろんのこと、耐薬品性や耐汚染性などの表面物性が得られると同時に、優れた成形性や形状追従性を得ることができる。また、材料費の点でも有利である。
<平滑化層>
本発明においては、加飾シート1のハードコート層形成層14上に、平滑化層16が設けられる。平滑化層はハードコート層形成層に隣接する層であり、ハードコート層と接している面と対向する面を平滑にするための層である。したがって、平滑化層が樹脂成形体に対して充分な接着性を有する場合には、そのまま成形品に接着する接着層として用いられても良い。さらに、平滑化層16は、ハードコート層形成層14と、後記する接着層20、または絵柄層18がある場合は絵柄層18、との密着性を向上させるために設けられる、いわゆるアンカーコート層であってもよい。
平滑化層16は、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などを使用し、例えば上記のように形成したハードコート層形成層14の上に、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などにより塗布して形成することができる。平滑化層16の厚さは、通常0.1〜5μm程度であり、好ましくは1〜5μm程度である。無機粒子Bとの関係において、平滑化層のハードコート層と接している面と対向する面を平滑にする上で、平滑化層の厚さは無機粒子Bの平均粒子径よりも大きいことがさらに好ましい。
<絵柄層>
本発明による加飾シートに、所望により設けられる絵柄層18は、加飾成形品に所望の意匠性を付与するための層である。絵柄層18の絵柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる絵柄を挙げることができる。また、絵柄層18は、上記絵柄を表現する柄パターン層および全面ベタ層を単独でまたは組み合わせて設けることができ、全面ベタ層は、通常、隠蔽層、着色層、着色隠蔽層などとして用いられる。
絵柄層18は、通常は、上記のように形成したハードコート層形成層14の上、あるいは平滑化層16の上に、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂をバインダーとし、適当な色の顔料または染料を着色剤として含有する印刷インキによる印刷を行うことで形成する。印刷方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷法が挙げられる。絵柄層18の厚みは、意匠性の観点から5〜40μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。
<接着層>
本発明による加飾シートに、所望により設けられる接着層20は、転写層24を接着性よく樹脂成形体に転写するために形成される層である。この接着層20には、樹脂成形体の素材に適した感熱性または感圧性の樹脂を適宜使用する。例えば、樹脂成形体の材質がアクリル系樹脂の場合は、アクリル系樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂成形体の材質がポリフェニレンオキサイド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用することが好ましい。さらに、樹脂成形体の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂を使用することが好ましい。
接着層20の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。なお、絵柄層18が樹脂成形体に対して充分な接着性を有する場合には、接着層20を設けなくてもよい。接着層20の厚さは、通常0.1〜5μm程度が好ましい。
<帯電防止層>
また、本発明による加飾シートは、基材シート11のハードコート層形成層14を設けた面とは反対側の面に帯電防止層22が設けられていてもよい。帯電防止層22は、加飾シートへの異物の付着を防止するために好ましく設けられる層である。
帯電防止層に用いられる帯電防止剤としては、カルボン酸系、スルホン酸系、リン酸系などのアニオン性界面活性剤;第4級アンモニウム系などのカチオン系界面活性剤;アルキルベタイン系、アルキルイミダゾリン系、アルキルアラニン系などの両性界面活性剤;アルキレンオキサイド重合体、アルキレンオキサイド共重合体、脂肪族アルコール−アルキレンオキサイド付加物などのノニオン系界面活性剤;カーボンや、金、白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、モリブデンなどの各種金属粉末などの無機導電性物質;ポリアセチレン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール、あるいはアミノカルボン酸、ジカルボン酸およびポリエチレングリコールからなるポリエーテルエステルアミド樹脂などの導電性高分子などが好ましく挙げられる。
帯電防止層は、上記した帯電防止剤と有機溶剤などからなる塗料を、グラビアコート法、ロールコート法などのコート法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法により、基材フィルム上に塗布することにより形成される。帯電防止層の厚さは、通常0.1〜5μmであることが好ましい。帯電防止層の厚さを上記範囲内とすることにより、優れた帯電防止性能が効率よく得られる。
本発明による加飾シートは、ハードコート層形成層が必要に応じて熱乾燥するだけタックフリーとなるため、耐ブロッキング性に優れ、同時に耐熱性も付与できるので製造効率に優れるものである。また、タックフリーとするために電離放射線の照射や高温の焼付けなどによる半硬化処理を行う必要がないため、優れた成形性や形状追従性を有するものとなる。さらに、成形転写後にハードコート層形成層を電離放射線を用いて硬化することにより、優れた高硬度性および耐スクラッチ性が得られる。これらのことから、家庭用電化製品、自動車内装品などの分野や、パソコンの分野、とりわけパソコンの筐体など、幅広い分野において使用することができる。
<成形品の製造方法>
図2は、本発明による2種類の無機粒子を有する加飾成形品の好ましい一態様についての断面を示す模式図である。図2に示される加飾成形品2は、樹脂成形体30の表面に、接着層20、絵柄層18、平滑化層16およびハードコート層形成層14が硬化してなるハードコート層32が順に積層したものである。このような加飾成形品の製造方法について、以下、説明する。
本発明による加飾シートを用いた成形品の製造方法は、(1)射出成形金型の内側に上記した加飾シートを配置する工程、(2)前記金型のキャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、前記加飾シートが表面に積層されて一体化した樹脂成形体を形成する工程、(3)前記樹脂成形体を金型から取り出す工程、(4)前記樹脂成形体から前記加飾シートの基材フィルムを剥離する工程、(5)前記樹脂成形体に電離放射線を照射して、前記加飾シートのハードコート層形成層を硬化させて成形品を形成する工程、を含む。以下、各工程について説明する。
<工程(1)>
工程(1)は、本発明による加飾シートを成形金型内に配し、挟み込む工程である。具体的には、加飾シートを、可動型と固定型とからなる成形用金型内に転写層24を内側にして、つまり、基材フィルム10が固定型側となるように加飾シートを送り込む。この際、枚葉の加飾シートを1枚ずつ送り込んでもよいし、長尺の加飾シートの必要部分を間欠的に送り込んでもよい。
加飾シートを成形金型内に配する際、(i)単に金型を加熱し、金型に真空吸引して密着するように配する、あるいは(ii)転写層24側から熱盤を用いて加熱し軟化させて、加飾シートが金型内の形状に沿うように予備成形して、金型内面に密着させる型締を行って、配することができる。(ii)の時の加熱温度は、基材フィルム10のガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(または融点)未満の範囲であることが好ましく、通常はガラス転移温度近傍の温度で行う。なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲であり、一般に70〜130℃程度である。また、(ii)の場合には、加飾シートを成形金型表面により密着させる目的で、加飾シートを熱盤で加熱し軟化させる際に、真空吸引することもできる。
<工程(2)>
工程(2)は、キャビティ内に溶融樹脂を射出し、冷却・固化して、樹脂成形体と加飾シートとを積層一体化させる射出工程である。射出樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、射出樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、加飾シートが、形成された樹脂成形体と一体化して貼り付き、加飾成形品となる。射出樹脂の加熱温度は、射出樹脂によるが、一般に180〜280℃程度である。
加飾成形品に用いられる射出樹脂としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂あるいは、熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)であればよく、様々な樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂(耐熱ABS樹脂を含む)、AS樹脂、AN樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独でもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
<工程(3)および工程(4)>
工程(3)は、加飾シートと樹脂成形体とが一体化した成形体を金型から取り出す工程であり、工程(4)は、その一体化した成形体から、加飾シート1のハードコート層形成層14と基材フィルム10(離型層が設けられている場合は、離型層12)との間で剥離するように、加飾シートの基材フィルム側(即ち、基材フィルム10および離型層12)を剥離する工程である。加飾シート1が離型層12を備えている場合、離型層12とハードコート層形成層14との境界面で、基材フィルム10、離型層12および必要に応じて設けられる帯電防止層22を含む剥離層26を、加飾成形品2から容易に剥離することができる。このようにして、樹脂成形体30の表面に、接着層20、絵柄層18、平滑化層16およびハードコート層形成層14が順に積層した成形品が得られる。
<工程(5)>
工程(5)は、工程(4)において剥離層26が剥離されて、成形品の最表面に位置するハードコート層形成層14を電離放射線を用いて硬化させて、ハードコート層を形成する工程である。工程(5)の硬化は、酸素濃度2%以下の雰囲気下で電離放射線を照射して行うことができる。このように硬化を行うことで、さらに優れた高硬度性および耐スクラッチ性を得ることができる。
酸素濃度2%以下の雰囲気は、例えば窒素、アルゴン、水素など、好ましくは窒素を用いる、あるいは酸素濃度が2%以下程度となるように空気吸引を行うなどの方法により得ることができる。
ハードコート層形成層14の硬化は、電子線および紫外線などの電離放射線を照射して行うことができる。電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いるプレポリマーやモノマーの種類、あるいはハードコート層形成層14の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が好ましい。照射線量は、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。また、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射し、その照射線量は500〜1500mJ程度である。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
このようにして得られた加飾成形品2は、優れた高硬度性を有し、耐薬品性や耐汚染性などの表面物性にも優れるものである。また、転写後の成形品表面での干渉縞の発生も効果的に抑制されるため意匠性に優れ、かつ、高硬度性も維持された加飾成形品が得られる。本発明による加飾成形品は、これらの優れた特性を活かして、家庭用電化製品、自動車内装品などの分野や、パソコンの分野、とりわけパソコンの筐体など、幅広い分野において好適に使用することができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明が実施例により限定されるものではない。
実施例1
<プレポリマーの調製>
冷却器、滴下ロートおよび温度計付きの2L四つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン(MIBK)120g、メチルエチルケトン(MEK)210gを仕込み、四つ口フラスコに、グリシジルメタクリレート(GMA)80g、メチルメタクリレート(MMA)20gおよびアゾ系の開始剤(アゾビスイソブチロニトリル,AIBN−1)0.75gからなる混合液を滴下ロートで2時間かけて滴下させながら、100〜110℃の温度下で4時間反応させた後、アゾ系の開始剤(アゾビスイソブチロニトリル,AIBN−2)0.6gをさらに加えて、3時間保温後、室温まで冷却した。これに、アクリル酸(AA)40.6g、トリフェニルホスフィン2g、およびメトキノン0.5gからなる混合液を加えて、付加反応を行った。水酸化カリウム溶液の中和滴定で、反応性生物の酸価の消失を確認し、反応を終了させた。
得られたプレポリマーの重量平均分子量は80000であり、二重結合当量は250g/mol(計算値)であり、固形分は30%であった。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値であり、標準サンプルにポリスチレンを用いた条件で測定された値である。
<インキ組成物の調製>
上記で得られたプレポリマーを20.0質量部(固形分6質量部)と、反応性異形シリカ粒子(「ELCOM V−8803(品番)」,日揮触媒化成株式会社製,反応性異形シリカ粒子,平均連結数:規則的に2〜10個,異形無機粒子の平均粒子径;25nm)10質量部(固形分4質量部)と、反応性多官能イソシアネート(「Laromer LR9000(品番)」,BASF社製)1質量部(固形分1質量部)と、無機粒子(「E220A(品番)」,東ソー・シリカ株式会社製,シリカ粒子,平均粒子径;1.5μm)0.1質量部(固形分0.1質量部)と、光重合開始剤(「IRGACURE 184(品番)」,チバ・ジャパン株式会社製,1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)0.4質量部と、溶媒(メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトンの混合溶剤、配合比70:30)6.7質量部とを混合して、インキ組成物を得た。
<加飾シートの作製>
基材フィルム(「F99(品番)」、厚さ50μm,東レ株式会社製)上に、メラミン系樹脂を主成分とする塗工液(「メラン265」(品番),日立化成工業株式会社製,イソブチルアルコール変性メラミン樹脂)を塗工量2g/mでグラビア印刷して離型層を形成し、上記組成のインキ組成物を、塗工量6g/mでグラビア印刷してハードコート層形成層を形成した。続いて、ハードコート層形成層上に、アクリル系樹脂を主成分とする塗料を塗工量4g/mでグラビア印刷して平滑化層(アンカーコート層)を形成し、その平滑化層上に、次いでアクリル系印刷インキを塗工量8g/mで、木目模様をグラビア印刷して絵柄層を形成し、アクリル系塗工液を厚さ4μmで塗布して接着層を形成した。
さらに、基材フィルムの離型層を設けた面とは反対側の面に、カチオン系界面活性剤を主成分とする塗工液(カチオン系界面活性剤:第4級アンモニウム塩)を塗工量1g/mでグラビア印刷して帯電防止層を形成することにより、加飾シートを得た。
<加飾成形品の作製>
上記で得られた加飾シートを、70℃に加熱した金型に吸引し、金型内面に密着させた。金型は、80mm角の大きさで、立ち上がり10mm、コーナー部が3Rのトレー状である深絞り度の高い形状のものを用いた。一方、射出樹脂としてABS樹脂(「クラスチックMTH−2(品番)」,日本エイアンドエル株式会社製)を用いて、これを230℃にて溶融状態にしてから、キャビティ内に射出した。冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離して、樹脂成形体の表面に接着層、印刷層、平滑化層およびハードコート層形成層を順に備えた成形品を得た。さらに、大気雰囲気下において、出力可変型UVランプシステム(「DRS−10/12QN(型番)」,フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を用い、照射線量:1000mJで、成形体に紫外線を照射して、ハードコート層形成層を硬化させてハードコート層とすることにより、加飾成形品を得た。
実施例2
インキ組成物の調製において、プレポリマーの固形分量を8質量部とし、反応性無機微粒子の固形分量を2質量部に変更した以外は実施例1と同様にして加飾シートを作製し、実施例1と同様にして加飾成形品を作製した。
実施例3
インキ組成物の調製において、無機粒子Bの固形分量を0.2質量部に変更した以外は実施例1と同様にして加飾シートを作製し、実施例1と同様にして加飾成形品を作製した。
実施例4
インキ組成物の調製において、プレポリマーの固形分量を8質量部とし、反応性無機微粒子の固形分量を2質量部に変更した以外は実施例3と同様にして加飾シートを作製し、実施例3と同様にして加飾成形品を作製した。
比較例1、2
<インキ組成物の調製>
下記の表1に示される組成に従い各成分を混合してインキ組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして加飾シートを作製し、実施例1と同様にして加飾成形品を作製した。表中の溶媒の配合量は、溶媒を加えた量と、プレポリマーと(反応性)無機粒子A中に含まれる溶媒との合計量であり、「固形分含有量」とは、プレポリマー、(反応性)無機粒子A、無機粒子B(比較例においては含まれていない)、(反応性)多官能イソシアネート、光重合開始剤および溶剤の合計に対するプレポリマー固形分、(反応性)無機粒子A、(反応性)多官能イソシアネート、無機粒子B(比較例においては含まれていない)、および光重合開始剤の合計の含有量(質量%)である。なお、実施例1〜4で使用したインキ組成物の組成も表1に併せて記載した。
<干渉縞の評価>
得られた樹脂成形品表面に三波長蛍光灯で可視光を照射し、干渉縞の有無を下記の基準で評価した。
◎:樹脂成形品表面に干渉縞が全く確認できなかった
○:樹脂成形品表面に軽微な白化が確認されたが、実用上問題はない
×:樹脂成形品表面に干渉縞が確認された
評価結果は下記の表1に示される通りであった。
※1:溶媒の量は、溶媒を加えた量と、プレポリマーと反応性無機粒子Aとして使用した「ELCOM V−8803(品番)」に含まれる溶媒との合計量である。
※2:プレポリマー、反応性無機粒子A、(反応性)多官能イソシアネート、無機粒子B、光重合開始剤及び溶媒の合計に対するプレポリマー固形分、反応性無機粒子A、(反応性)多官能イソシアネート、無機粒子B及び光重合開始剤の合計の含有量(質量%)である。
1 加飾シート
2 加飾成形品
10 基材フィルム
12 離型層
14 ハードコート層形成層
16 平滑化層
18 絵柄層
20 接着層
22 帯電防止層
24 転写層
26 剥離層
30 樹脂成形体
32 ハードコート層
40 反応性無機粒子A
42 無機粒子B

Claims (11)

  1. 電離放射線硬化性官能基Aとしてビニル基、(メタ)アクリロイル基およびアリル基から選ばれる少なくとも一種を有する、重量平均分子量が50000以上である多官能性ラジカル重合型プレポリマーと、表面に電離放射線硬化性官能基Bを有する反応性無機粒子Aと、多官能イソシアネート化合物と、0.5〜3.0μmの平均粒子径を有する無機粒子Bとを含んでなる、インキ組成物。
  2. 前記無機粒子Bが、前記多官能性ラジカル重合型プレポリマーと前記反応性無機粒子Aの合計質量100質量部に対して、1.0〜10.0質量部含まれる、請求項1に記載のインキ組成物。
  3. 前記無機粒子Bが、前記多官能性ラジカル重合型プレポリマーと前記反応性無機粒子Aの合計質量100質量部に対して、2.0〜5.0質量部含まれる、請求項1または2に記載のインキ組成物。
  4. 前記反応性無機粒子Aが、5nm以上、300nm未満の平均粒子径を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインキ組成物。
  5. 前記無機粒子Bが、シリカ粒子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインキ組成物。
  6. 前記反応性無機粒子Aが、反応性シリカ粒子および/または反応性異形シリカ粒子である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインキ組成物。
  7. 前記反応性無機粒子Aの固形分の含有量が、前記プレポリマーの固形分と前記反応性無機粒子Aの固形分との合計質量に対して、15質量%以上かつ60質量%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインキ組成物。
  8. 基材フィルムの片面に、少なくともハードコート層形成層および平滑化層を順に備えた加飾シートであって、
    前記ハードコート層形成層が、前記基材フィルム上に請求項1〜7のいずれか一項に記載のインキ組成物を含んでなることを特徴とする、加飾シート。
  9. 前記平滑化層が、2液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびビニル系共重合体樹脂からなる群から選択される、請求項8に記載の加飾シート。
  10. 前記平滑化層の厚さが、前記無機粒子Bの平均粒子径よりも大きい、請求項8または9に記載の加飾シート。
  11. 請求項8〜10のいずれか一項に記載の加飾シートを用いて製造される、加飾成形品。
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