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JP2014097697A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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JP2014097697A
JP2014097697A JP2012249677A JP2012249677A JP2014097697A JP 2014097697 A JP2014097697 A JP 2014097697A JP 2012249677 A JP2012249677 A JP 2012249677A JP 2012249677 A JP2012249677 A JP 2012249677A JP 2014097697 A JP2014097697 A JP 2014097697A
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pneumatic
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Hiroki Endo
広樹 遠藤
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Yokohama Rubber Co Ltd
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Abstract

【課題】氷上路面での走行性能および乾燥路面での操縦安定性能を両立すること。
【解決手段】トレッド面11に、タイヤ周方向に延在する複数の主溝で区画形成されたリブ状の陸部、および/または主溝に交差する複数のラグ溝と主溝とで区画形成されたブロック状の陸部31を有する空気入りタイヤにおいて、陸部31にてトレッド面11に開口しタイヤ周方向に交差する方向に延在するとともに、そのタイヤ径方向内側端5aにおいてサイプ幅W2よりも拡径された拡径部6を有するサイプ5を備え、拡径部6は、陸部31の少なくともタイヤ幅方向外側の側壁に開口するとともに、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に位置を漸次変化して形成される。
【選択図】図4

Description

本発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、氷上路面での走行性能および乾燥路面での操縦安定性能を両立した空気入りタイヤに関するものである。
空気入りタイヤにおいて、氷上路面での走行性能を向上するため、陸部にサイプを配置することでトレッド面と路面との間の水をサイプに受け入れる除水効果を向上させることが一般的である。その反面、サイプを多く配置すると、陸部の剛性が低下し、乾燥路面での操縦安定性が低下する。このため、氷上路面での走行性能および乾燥路面での操縦安定性能を両立させる課題がある。
例えば、特許文献1は、サイプが深さ方向に拡大部を有する空気入りタイヤが示されている。この空気入りタイヤは、拡大部を有することでサイプに蓄えられる水量を増加させて吸水性能および排水性能を増加する。
また、例えば、特許文献2は、サイプが拡径部を有するとともに、拡径部の径は陸部の側壁に近づくにつれて大きくなる空気入りタイヤが示されている。この空気入りタイヤは、拡径部がタイヤ径方向内側の端部に形成されているため、タイヤ転動時にサイプに荷重が入力された場合におけるクラック発生を抑制するとともに、氷路面を走行する際の排水効果を得る。また、この空気入りタイヤは、拡径部が陸部の側壁に向かって大きくなっているため、吸収された水が両端側に向けて流れて排出される。
また、例えば、特許文献3は、サイプのタイヤ径方向内側端においてサイプ幅が広がることにより形成された拡径部が設けられており、サイプの底部には、サイプの長手方向中央部において最もサイプ深さが浅い浅底部が設けられ、拡径部は、浅底部から陸部の側壁に向かって延びるとともに浅底部から陸部の側壁に向かって径が大きくなる空気入りタイヤが示されている。この空気入りタイヤは、氷路面とトレッド面との間の水を拡径部内で吸収する吸収機能を向上する。また、この空気入りタイヤは、サイプの長手方向中央部に溜まった水が浅底部から陸部の側壁に向かって流れやすい。また、この空気入りタイヤは、拡径部が浅底部から陸部の側壁に向かって大きくなっているため、拡径部の長手方向中央部の径が両端側よりも細くなることによって、サイプが水を吸収する際に中央部の水圧が両端側よりも高くなり、吸収された水が両端側に向けて流れて排出される。
また、例えば、特許文献4は、接地表面からサイピング状細溝の最大深さの20[%]以上かつ90[%]以下の領域に拡副部を設け、拡副部は溝幅やタイヤ径方向の長さが陸部の幅方向の中央側から側縁側に向かって拡大する空気入りタイヤが示されている。この空気入りタイヤは、路面から水を効果的に吸い上げ、氷雪路での走行性能を向上する。
特開平1−101205号公報 特開2011−88468号公報 特開2011−105180号公報 特許第4299804号公報
上述した特許文献1〜特許文献4に記載の空気入りタイヤのように、サイプの溝幅を部分的に拡幅することで、水の吸水量が向上することになる。しかしながら、その反面、サイプの溝幅を拡幅すると、陸部の剛性が低下し、特に乾燥路面での操縦安定性が低下することになる。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、氷上路面での走行性能および乾燥路面での操縦安定性能を両立することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、第1の発明の空気入りタイヤは、トレッド面に、タイヤ周方向に延在する複数の主溝で区画形成されたリブ状の陸部、および/または前記主溝に交差する複数のラグ溝と前記主溝とで区画形成されたブロック状の陸部を有する空気入りタイヤにおいて、前記陸部にて前記トレッド面に開口しタイヤ周方向に交差する方向に延在するとともに、そのタイヤ径方向内側端においてサイプ幅よりも拡径された拡径部を有するサイプを備え、前記拡径部は、前記陸部の少なくともタイヤ幅方向外側の側壁に開口するとともに、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に位置を漸次変化して形成されることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、サイプにより踏面とトレッド面との間の水を溝内に受け入れる除水効果やエッジ効果を得るとともに、拡径部に水を蓄えることで除水性能を向上することができる。また、この空気入りタイヤによれば、拡径部が陸部の少なくともタイヤ幅方向外側の側壁に開口することで、サイプの溝内に受け入れた水を陸部のタイヤ幅方向外側に排水することができる。特に、この空気入りタイヤによれば、拡径部がタイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に位置を漸次変化して形成されていることで、タイヤの回転にともなう遠心力の作用を受けて排水されるため、排水性を向上することができる。このため、氷上路面での走行性能を維持することができる。一方、サイプの配置により陸部の剛性が低下する傾向となるが、この空気入りタイヤによれば、拡径部がタイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に位置を漸次変化して形成されていることで、陸部のタイヤ幅方向外側においてサイプの溝深さがタイヤ幅方向外側よりも浅くなり、陸部のタイヤ幅方向外側の剛性がタイヤ幅方向内側よりも高くなる。このため、乾燥路面での操縦安定性を維持することができる。よって、この空気入りタイヤによれば、氷上路面での走行性能および乾燥路面での操縦安定性能を両立することができる。
また、第2の発明の空気入りタイヤは、第1の発明において、前記サイプは、前記トレッド面までの前記拡径部のタイヤ幅方向内側端におけるタイヤ径方向寸法D1と、前記タイヤ径方向寸法D1のタイヤ径方向最外側位置を通過してタイヤ赤道面に直交する基準面までの前記拡径部のタイヤ幅方向外側端におけるタイヤ径方向寸法D2とが、0.3≦D2/D1≦0.7の関係を満たすことを特徴とする。
D2/D1が0.3以上の場合、サイプの水を受け入れる容量が向上する傾向となる。一方、D2/D1が0.7以下の場合、遠心力による拡径部の排水効果が向上する傾向となる。この空気入りタイヤによれば、0.3≦D2/D1≦0.7の関係を満たすことで、サイプの容量を維持しつつ拡径部の排水効果を得ることができ、氷上路面での走行性能を維持することができる。
また、第3の発明の空気入りタイヤは、第1または第2の発明において、前記サイプは、前記拡径部の幅W1と、前記拡径部以外であるサイプ幅W2とが、2.0≦W1/W2≦5.0の関係を満たすことを特徴とする。
W1/W2が2.0以上の場合、除水効果および排水効果が向上する傾向となる。一方、W1/W2が5.0以下の場合、陸部の剛性が向上する傾向となる。この空気入りタイヤによれば、除水効果および排水効果を維持し、かつ、剛性低下を抑えて乾燥路面での操縦安定性を維持するとともにサイプの倒れ込みを抑えてエッジ効果を維持することができる。
また、第4の発明の空気入りタイヤは、第3の発明において、前記サイプは、前記拡径部のタイヤ径方向寸法D3と、前記拡径部以外であるサイプ幅W2とが、2.0≦D3/W2≦5.0の関係を満たすことを特徴とする。
D3/W2が2.0以上の場合、除水効果および排水効果が向上する傾向となる。一方、D3/W2が5.0以下の場合、陸部の剛性が向上する傾向となる。この空気入りタイヤによれば、除水効果および排水効果を維持し、かつ、剛性低下を抑えて乾燥路面での操縦安定性を維持するとともにサイプの倒れ込みを抑えてエッジ効果を維持することができる。
また、第5の発明の空気入りタイヤは、第1〜第4の何れか1つの発明において、前記拡径部は、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けて径を漸次大きく変化して形成されることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、拡径部における排水効果を顕著に得ることができる。
また、第6の発明の空気入りタイヤは、第1〜第5の何れか1つの発明において、車両装着時に車両の前進方向を基準とした回転方向が指定されており、かつ前記サイプは、その延在方向のタイヤ幅方向外側端がタイヤ幅方向内側端よりも回転方向の後側となるようにタイヤ幅方向に対して10[°]以上40[°]以下に角度を有して形成されることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、サイプの角度を10[°]以上とすることで、タイヤの回転力を利用して排水効果が向上する。一方、サイプの角度を40[°]以下とすることで、タイヤ周方向のエッジ効果が向上する。このため、氷上路面での走行性能を向上することができる。
また、第7の発明の空気入りタイヤは、第1〜第6の何れか1つの発明において、前記拡径部は、タイヤ幅方向内側端が前記陸部内で終端して形成されることを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、拡径部のタイヤ幅方向内側端を陸部内で終端させることで、陸部の剛性が向上するため、乾燥路面での操縦安定性を向上することができる。
また、第8の発明の空気入りタイヤは、第1〜第7の何れか1つの発明において、前記サイプは、少なくともタイヤ幅方向最外側の前記陸部に形成されることを特徴とする。
乾燥路面を走行する際、タイヤ幅方向での力はタイヤ幅方向最外側の陸部に掛かる。従って、少なくともタイヤ幅方向最外側の陸部にサイプを設けて、この陸部の剛性を維持することで、乾燥路面での操縦安定性を維持する効果を顕著に得ることができる。
本発明に係る空気入りタイヤは、氷上路面での走行性能および乾燥路面での操縦安定性能を両立することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤにおけるトレッド面の平面図である。 図2は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの一部子午断面図である。 図3は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤにおける他の例のトレッド面の平面図である。 図4は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤにおける陸部の斜視図である。 図5は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤにおける他の例の陸部の斜視図である。 図6は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤにおける他の例の陸部の斜視図である。 図7は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大子午断面図である。 図8は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤにおける他の例の陸部の斜視図である。 図9は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤにおける他の例のトレッド面の平面図である。 図10は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤにおける他の例の陸部の斜視図である。 図11は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤにおける他の例の陸部の斜視図である。 図12は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤにおけるトレッド面の平面図であり、図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部子午断面図であり、図3は、本実施形態に係る空気入りタイヤにおける他の例のトレッド面の平面図である。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周方向である。また、タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤの回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
本実施形態の空気入りタイヤは、氷雪路面に用いられるスタッドレスタイヤやオールシーズンタイヤとして好適である。この空気入りタイヤは、図1および図2に示すように、トレッド部1を有している。トレッド部1は、ゴム材からなり、空気入りタイヤのタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面(以下、トレッド面という)11が空気入りタイヤの輪郭となる。本実施形態において、トレッド面11は、空気入りタイヤを装着する車両(図示せず)が走行した場合に路面と接触する踏面となる。
トレッド面11は、図1〜図3に示すように、タイヤ周方向に沿って延在する複数の主溝2が、タイヤ幅方向に複数並設されている。タイヤ周方向に沿って延在するとは、タイヤ周方向に対して±5度以下(実質0度)の角度を有していることを含む。この主溝2は、タイヤ新品時を基準とし、トレッド面11に開口する溝幅が3[mm]以上で、かつ溝深さが4[mm]以上に規定されたものをいう。そして、トレッド面11は、複数の主溝2により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道面と平行なリブ状の陸部3が複数形成されている(図3参照)。
また、トレッド面11は、図1に示すように、主溝2に交差(連通)して設けられてタイヤ周方向にエッジ成分を有するラグ溝4が、タイヤ周方向に複数並設されている。ラグ溝4は、タイヤ幅方向に対して平行、または所定の角度を有して設けられている。また、ラグ溝4は、屈曲または湾曲して設けられている場合もある。このラグ溝4は、タイヤ新品時を基準とし、主溝2や、後述するサイプ5の規定に属さず、かつ溝深さが主溝2の溝深さ以下のものをいう。そして、トレッド面11は、複数のラグ溝4がタイヤ幅方向に隣接する主溝2に連通して設けられることで、この複数の主溝2および複数のラグ溝4により、リブ状の陸部3が、複数のブロック状の陸部31として形成される。図1では、ブロック状の陸部31として示している。なお、ラグ溝4が、タイヤ幅方向に隣接する主溝2の一方にのみ連通して設けられている場合は、リブ状の陸部3となる。
上述した陸部3(31)の表面であるトレッド面11には、サイプ5が形成されている。サイプ5は、トレッド面11に開口しており、タイヤ周方向に交差し、主にタイヤ幅方向に延在して細溝状に切り込まれたものである。サイプ5は、本実施形態では、図1〜図3に示すように、タイヤ幅方向最外側の陸部3(31)およびこれにタイヤ幅方向の隣接する3(31)において、両端が当該陸部3(31)をタイヤ幅方向で貫通した開口サイプとして設けられている。また、サイプ5は、本実施形態では、図1〜図3に示すように、タイヤ幅方向中央の陸部3(31)において、タイヤ幅方向外側端のみ当該陸部3(31)をタイヤ幅方向で貫通し、タイヤ幅方向内側端が当該陸部3(31)内で終端して閉塞された片側開口サイプとして設けられている。なお、図には明示しないが、サイプ5は、両端が陸部3(31)内で終端して閉塞された閉口サイプとして設けられていてもよい。このサイプ5は、踏面とトレッド面11との間の水を溝内に受け入れる除水効果や、エッジ効果を向上させるためのものであり、1つのリブ状の陸部3またはブロック状の陸部31に複数形成されていることが好ましい。なお、サイプ5は、タイヤ新品時を基準とし、トレッド面11に開口する溝幅が1.2[mm]以下で、かつ溝深さがラグ溝4の溝深さ以下に規定されたものをいう。
また、サイプ5は、本実施形態では、図1および図3において、タイヤ周方向およびタイヤ径方向で直線状に形成された一次元形状の一次元サイプとして示されている。この一次元サイプの他には、図には明示しないが、タイヤ周方向のみで屈曲または湾曲したものや、タイヤ径方向のみで屈曲または湾曲したもののように切り込み面が二次元形状の二次元サイプ、あるいは、タイヤ周方向およびタイヤ径方向で屈曲または湾曲することにより、タイヤ周方向で対向する各切り込み面が、立体状で相互に噛み合う立体サイプ(三次元サイプ)がある。
図4は、本実施形態に係る空気入りタイヤにおける陸部の斜視図であり、図5および図6は、本実施形態に係る空気入りタイヤにおける他の例の陸部の斜視図であり、図7は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部拡大子午断面図である。
図4〜図6においては、ブロック状の陸部31を示しているが、リブ状の陸部3であってもよい。図4〜図6に示すように、陸部31は、トレッド面11に開口しタイヤ周方向に交差する方向に延在するサイプ5が設けられている。サイプ5は、そのタイヤ径方向内側端5aとなる溝底においてサイプ幅W2よりも拡径された拡径部6を有する。
拡径部6は、陸部31の少なくともタイヤ幅方向外側の側壁に開口する。すなわち、陸部31のタイヤ幅方向内側の側壁に開口していてもよい。この拡径部6は、そのタイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に位置を漸次変化して形成されている。
拡径部6が、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に位置を漸次変化して形成される形態は、図4に示すように、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に直線状に傾斜して形成される形態がある。その他、図5に示すように、拡径部6は、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に湾曲状に傾斜して形成される形態がある。また、図6に示すように、拡径部6は、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けて一部タイヤ幅方向に沿って形成され、その先がタイヤ径方向外側に傾斜(直線状または湾曲状)して形成される形態がある。すなわち、拡径部6は、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向内側に至る要素がなく、タイヤ径方向外側にのみ位置を漸次変化して形成されている。
このように、本実施形態の空気入りタイヤは、トレッド面11に、タイヤ周方向に延在する複数の主溝2で区画形成されたリブ状の陸部3、および/または主溝2に交差する複数のラグ溝4と主溝2とで区画形成されたブロック状の陸部31を有する空気入りタイヤにおいて、陸部3,31にてトレッド面11に開口しタイヤ周方向に交差する方向に延在するとともに、そのタイヤ径方向内側端5aとなる溝底においてサイプ幅W2よりも拡径された拡径部6を有するサイプ5を備え、拡径部6は、陸部3,31の少なくともタイヤ幅方向外側の側壁に開口するとともに、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に位置を漸次変化して形成される。
この空気入りタイヤによれば、サイプ5により踏面とトレッド面11との間の水を溝内に受け入れる除水効果やエッジ効果を得るとともに、拡径部6に水を蓄えることで除水性能を向上することが可能になる。また、この空気入りタイヤによれば、拡径部6が陸部3,31の少なくともタイヤ幅方向外側の側壁に開口することで、サイプ5の溝内に受け入れた水を陸部3,31のタイヤ幅方向外側に排水することが可能になる。特に、この空気入りタイヤによれば、拡径部6がタイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に位置を漸次変化して形成されていることで、タイヤの回転にともなう遠心力の作用を受けて排水されるため、排水性を向上することが可能になる。このため、氷上路面での走行性能を維持することが可能になる。一方、サイプ5の配置により陸部3,31の剛性が低下する傾向となるが、この空気入りタイヤによれば、拡径部6がタイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に位置を漸次変化して形成されていることで、陸部3,31のタイヤ幅方向外側においてサイプ5の溝深さがタイヤ幅方向外側よりも浅くなり、陸部3,31のタイヤ幅方向外側の剛性がタイヤ幅方向内側よりも高くなる。このため、乾燥路面での操縦安定性を維持することが可能になる。よって、この空気入りタイヤによれば、氷上路面での走行性能および乾燥路面での操縦安定性能を両立することが可能になる。
なお、サイプ5において、上述した二次元サイプおよび三次元サイプを適用すれば、対向する各切り込み面で支え合うことで陸部3,31の剛性を維持することができるため好ましい。
また、本実施の形態の空気入りタイヤでは、サイプ5は、拡径部6のタイヤ幅方向内側端におけるタイヤ径方向寸法D1と、拡径部6のタイヤ幅方向外側端におけるタイヤ径方向寸法D2とが、0.3≦D2/D1≦0.7の関係を満たすことが好ましい。
D2/D1が0.3以上の場合、サイプ5の水を受け入れる容量が向上する傾向となる。一方、D2/D1が0.7以下の場合、遠心力による拡径部6の排水効果が向上する傾向となる。この空気入りタイヤによれば、0.3≦D2/D1≦0.7の関係を満たすことで、サイプ5の容量を維持しつつ拡径部6の排水効果を得ることができ、氷上路面での走行性能を維持することが可能になる。
なお、一般に、トレッド面11は、図2に示すように、タイヤ赤道面CLの位置がタイヤ径方向最外側となり、タイヤ幅方向外側に向けて漸次タイヤ径方向内側に所定の曲率をもって形成されている。特に、タイヤ幅方向最外側の陸部3,31では、図7に示すように、タイヤ幅方向内側と比較して小さい曲率をもって形成されている。このような場合を含め、タイヤ径方向寸法D1とタイヤ径方向寸法D2との規定を以下のようにする。
すなわち、図7に示すように、トレッド面11までの拡径部6のタイヤ幅方向内側端におけるタイヤ径方向寸法D1と、タイヤ径方向寸法D1のタイヤ径方向最外側位置(トレッド面11)を通過してタイヤ赤道面CLに直交する基準面Sまでの拡径部6のタイヤ幅方向外側端におけるタイヤ径方向寸法D2とが、0.3≦D2/D1≦0.7の関係を満たす。
また、本実施形態の空気入りタイヤでは、図4に示すように、サイプ5は、拡径部6の幅W1と、拡径部6以外であるサイプ幅W2とが、2.0≦W1/W2≦5.0の関係を満たすことが好ましい。
W1/W2が2.0以上の場合、除水効果および排水効果が向上する傾向となる。一方、W1/W2が5.0以下の場合、陸部3,31の剛性が向上する傾向となる。この空気入りタイヤによれば、除水効果および排水効果を維持し、かつ、剛性低下を抑えて乾燥路面での操縦安定性を維持するとともにサイプの倒れ込みを抑えてエッジ効果を維持することが可能になる。
また、本実施形態の空気入りタイヤでは、図4に示すように、サイプ5は、拡径部6のタイヤ径方向寸法D3と、拡径部6以外であるサイプ幅W2とが、2.0≦D3/W2≦5.0の関係を満たすことが好ましい。
D3/W2が2.0以上の場合、除水効果および排水効果が向上する傾向となる。一方、D3/W2が5.0以下の場合、陸部3,31の剛性が向上する傾向となる。この空気入りタイヤによれば、除水効果および排水効果を維持し、かつ、剛性低下を抑えて乾燥路面での操縦安定性を維持するとともにサイプの倒れ込みを抑えてエッジ効果を維持することが可能になる。
図8は、本実施形態に係る空気入りタイヤにおける他の例の陸部の斜視図である。図8に示すように、本実施形態の空気入りタイヤでは、拡径部6は、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けて径を漸次大きく変化して形成されることが好ましい。
この空気入りタイヤによれば、拡径部6における排水効果を顕著に得ることが可能になる。
図9は、本実施形態に係る空気入りタイヤにおける他の例のトレッド面の平面図である。図9に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、車両装着時に車両の前進方向を基準とした回転方向Rが指定されており、かつサイプ5は、その延在方向のタイヤ幅方向外側端がタイヤ幅方向内側端よりも回転方向の後側となるようにタイヤ幅方向に対して10[°]以上40[°]以下に角度θを有して形成されることが好ましい。
なお、図9では、ラグ溝4を有してブロック状の陸部31を有する空気入りタイヤであるが、図3に示すようなリブ状の陸部3を有する空気入りタイヤについても同様に角度θを有して形成されることが好ましい。また、図9は、車両装着時の上方から視たものである。回転方向Rの指定は、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸、あるいはタイヤに添付されたカタログによって表示され得る。
この空気入りタイヤによれば、サイプ5の角度θを10[°]以上とすることで、タイヤの回転力を利用して排水効果が向上する。一方、サイプ5の角度θを40[°]以下とすることで、タイヤ周方向のエッジ効果が向上する。このため、氷上路面での走行性能を向上することが可能になる。
図10および図11は、本実施形態に係る空気入りタイヤにおける他の例の陸部の斜視図である。図10および図11に示すように、拡径部6は、タイヤ幅方向内側端が陸部3,31内で終端して形成されることが好ましい。
図10は、サイプ5自体のタイヤ幅方向内側端が陸部3,31内で終端して形成されている形態を示す。また、図11は、サイプ5のタイヤ幅方向内側端が陸部3,31のタイヤ幅方向内側に貫通しているが、拡径部6のタイヤ幅方向内側端が陸部3,31内で終端して形成されている形態を示す。
この空気入りタイヤによれば、拡径部6のタイヤ幅方向内側端を陸部3,31内で終端させることで、陸部3,31の剛性が向上するため、乾燥路面での操縦安定性を向上することが可能になる。
また、本実施形態の空気入りタイヤでは、サイプ5は、少なくともタイヤ幅方向最外側の陸部3,31に形成されることが好ましい。
乾燥路面を走行する際、タイヤ幅方向での力はタイヤ幅方向最外側の陸部3,31に掛かる。従って、少なくともタイヤ幅方向最外側の陸部3,31にサイプ5を設けて、この陸部3,31の剛性を維持することで、乾燥路面での操縦安定性を維持する効果を顕著に得ることが可能になる。
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、氷上路面走行性能および乾燥路面操縦安定性能に関する性能試験が行われた(図12参照)。
この性能試験では、タイヤサイズ195/65R15の空気入りタイヤを、正規リム(15×6J)に組み付け、正規内圧(230[kPa])を充填し、試験車両(国産1.4リットルFF車)に装着した。
なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
氷上路面走行性能の評価方法では、上記試験車両により氷上試験路で半径30[m]の円を定常旋回走行するまでにかかる時間が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、指数が96以上であることが好ましく、かつ指数が大きいほど氷上路面での走行性能が高く好ましい。
乾燥路面操縦安定性能の評価方法では、上記試験車両により直線の乾燥路面の試験路を60[km/h]で走行しつつ走行レーンを変更した際の初期応答性を、ドライバーが官能評価により評価した。この場合、5人のドライバーによる評価を平均したものを評価点とし、従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、指数が98以上であることが好ましく、かつ指数が大きいほど乾燥路面での操縦安定性能が高く好ましい。
図12において、従来例、比較例および実施例1〜実施例16の空気入りタイヤは、陸部のトレッド面に、タイヤ径方向内側端に拡径部を有するサイプを備える。サイプは、トレッド面までの拡径部のタイヤ幅方向内側端におけるタイヤ径方向寸法D1が7.5[mm]とされ、かつサイプ幅W2が0.4[mm]とされている。
そして、従来例の空気入りタイヤは、拡径部が陸部のタイヤ幅方向両側の側壁に開口し、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向に位置が一定に形成されている。また、比較例の空気入りタイヤは、拡径部が陸部のタイヤ幅方向両側の側壁に開口し、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向内側に傾斜して形成されている。
一方、実施例1〜実施例16の空気入りタイヤは、拡径部が陸部のタイヤ幅方向外側の側壁に開口し、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に傾斜して形成されている。実施例1〜実施例12、実施例14の空気入りタイヤは、拡径部が陸部のタイヤ幅方向両側の側壁に開口して形成されている(図4参照)。実施例1〜実施例13の空気入りタイヤは、サイプが図1におけるタイヤ幅方向最外側以外の陸部に配置されている。また、実施例3〜実施例16の空気入りタイヤは、D2/D1が規定の範囲とされている。実施例6〜実施例16の空気入りタイヤは、W1/W2およびD3/W2が規定の範囲とされている。実施例9,12,14,16の空気入りタイヤは、拡径部がタイヤ径方向外側に向けて径が漸次大きく形成されている(図8参照)。実施例10〜実施例16の空気入りタイヤは、サイプの角度が規定の配置および範囲とされている。実施例13,15,16の空気入りタイヤは、拡径部のタイヤ幅方向内側端が陸部内で終端して形成されている。実施例14〜実施例16の空気入りタイヤは、サイプが図1におけるタイヤ幅方向最外側の陸部に配置されている。
図12の試験結果に示すように、実施例1〜実施例16の空気入りタイヤは、それぞれ氷上路面走行性能および乾燥路面操縦安定性能が改善されていることが分かる。
1 トレッド部
11 トレッド面
2 主溝
3,31 陸部
4 ラグ溝
5 サイプ
5a タイヤ径方向内側端
6 拡径部

Claims (8)

  1. トレッド面に、タイヤ周方向に延在する複数の主溝で区画形成されたリブ状の陸部、および/または前記主溝に交差する複数のラグ溝と前記主溝とで区画形成されたブロック状の陸部を有する空気入りタイヤにおいて、
    前記陸部にて前記トレッド面に開口しタイヤ周方向に交差する方向に延在するとともに、そのタイヤ径方向内側端においてサイプ幅よりも拡径された拡径部を有するサイプを備え、
    前記拡径部は、前記陸部の少なくともタイヤ幅方向外側の側壁に開口するとともに、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けてタイヤ径方向外側に位置を漸次変化して形成されることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記サイプは、前記トレッド面までの前記拡径部のタイヤ幅方向内側端におけるタイヤ径方向寸法D1と、前記タイヤ径方向寸法D1のタイヤ径方向最外側位置を通過してタイヤ赤道面に直交する基準面までの前記拡径部のタイヤ幅方向外側端におけるタイヤ径方向寸法D2とが、0.3≦D2/D1≦0.7の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記サイプは、前記拡径部の幅W1と、前記拡径部以外であるサイプ幅W2とが、2.0≦W1/W2≦5.0の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記サイプは、前記拡径部のタイヤ径方向寸法D3と、前記拡径部以外であるサイプ幅W2とが、2.0≦D3/W2≦5.0の関係を満たすことを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記拡径部は、タイヤ幅方向内側端からタイヤ幅方向外側端に向けて径を漸次大きく変化して形成されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
  6. 車両装着時に車両の前進方向を基準とした回転方向が指定されており、かつ前記サイプは、その延在方向のタイヤ幅方向外側端がタイヤ幅方向内側端よりも回転方向の後側となるようにタイヤ幅方向に対して10[°]以上40[°]以下に角度を有して形成されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記拡径部は、タイヤ幅方向内側端が前記陸部内で終端して形成されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
  8. 前記サイプは、少なくともタイヤ幅方向最外側の前記陸部に形成されることを特徴とする請求項1〜7の何れか1つに記載の空気入りタイヤ。
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