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JP2014081578A - 光送信装置 - Google Patents

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Hirokazu Takenouchi
弘和 竹ノ内
Masaki Asobe
雅生 遊部
Takeshi Umeki
毅伺 梅木
Kouji Enbutsu
晃次 圓佛
Akio Tokura
明雄 登倉
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  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)

Abstract

【課題】従来技術の位相感応増幅器の前段で光信号に損失があると、その損失分がそのままS/N比の劣化に繋がる。光源および変調器の間に光分岐手段が必要になり、光源および変調器を別個の素子とする必要があったため、より安価で小型な、光源および変調器を集積化した変調器集積化光源を用いることができない問題があった。
【解決手段】本発明の光送信装置は、光源および変調器として、DFBレーザーからの連続光を励起光として利用し、光分岐手段を不要とすることによって位相感応増幅器前段の損失を最小限に抑えた変調器集積化DFBレーザーを備える。低雑音増幅器前段の損失を最小化して、増幅器全体のS/N比を改善する。LD光源およびEA変調器が一体になっていることで、これらを別個の構成とするよりも結合損を小さく抑える。1つのパッケージに収めた、小型で安価な光源および変調器を利用できる。信号光の低損失化と、励起基本波光の抽出とを両立する光送信装置の新たな構成を実現する。
【選択図】図7

Description

本発明は、本発明は光通信システムにおいて用いられる光送信装置に関する。
従来の光伝送システムにおける光送信装置では、長距離の光ファイバで光信号を伝搬させるため、生成した光信号を、光増幅器によって増幅してから送信している。光送信装置における光増幅器としては、従来、エルビウムやプラセオジム等の希土類元素を添加した光ファイバに励起光を入射して信号光を増幅するファイバレーザー増幅器や、半導体レーザー増幅器が用いられてきた。
しかしながら、これらのレーザー増幅器は、劣化した信号光パルス波形を整形する機能を持っていない。またこれらのレーザー増幅器においては、不可避的かつランダムに発生する自然放出光が、信号成分とは全く無関係に混入される。このため、信号光のS/N比が増幅の前後で少なくとも3dB低下する。これらは、デジタル信号伝送時における伝送符号誤り率の上昇につながり、伝送品質を低下させる要因になっている。
このような従来技術のレーザー増幅器の限界を打開する手段として、位相感応光増幅器(Phase Sensitive Amplifier:PSA)が検討されている。この位相感応光増幅器は、伝送ファイバの分散の影響によって劣化した信号光パルス波形を整形するための機能を持っている。また、信号光とは無関係の直交位相を持つ自然放出光を抑圧できるために、原理的に、増幅の前後で信号光のS/N比を劣化させることなく同一に保つことができる。
図1は、従来の位相感応光増幅器の基本的な構成を示す図である。この光増幅器は、位相感応光増幅部101と、励起光源102と、励起光位相制御部103と、2つの光分岐部104−1、104−2とから構成される。
この光増幅器は、位相感応光増幅部101における信号光の位相と励起光の位相とが一致すると入力信号光110が増幅され、両者の位相が90度ずれた直交する位相関係になると、入力信号光110が減衰する特性を持っている。この特性を利用して増幅利得が最大となるように励起光―信号光間の位相を一致させると、信号光と直交する位相の自然放出光を発生させずに、つまりS/N比を劣化させずに信号光を増幅することができる。
信号光および励起光の位相同期を実現するために、光分岐部104−1で分岐された入力信号光110の位相に同期するように励起光111の位相が制御される。励起光位相制御部103は、光分岐部104−2で分岐された出力信号光112の一部を狭帯域の検出器によって検波し、出力信号が最大となるように励起光111の位相を制御する。その結果、位相感応光増幅部101では、信号光の位相と、励起光の位相とが同期するように制御され、S/N比の劣化のない光増幅を実現することができる。
励起光位相制御部103は、図1に示したような励起光源102の出力側で励起光の位相を制御する構成の他に、励起光源102自体の位相を直接制御する構成としても良い。このような位相感応増幅器においては、信号とは無関係の直交位相を持つ自然放出光を抑圧できる。このため、原理的に、増幅の前後で信号光のS/N比を劣化させず同一に保つことができる。さらに、この位相感応光増幅器は、ファイバの分散や変調器のチャープの影響によって劣化した信号光波形を整形するための機能を持っている。
このような低雑音の位相感応光増幅器を光送信装置における光増幅器として用いることによって、光信号の伝送特性を改善することができ、光伝送路における中継間隔を延ばすことが期待されている。
上述の従来技術の光送信装置では、以下に述べるような問題が存在していた。図1に示した光送信装置における位相感応光増幅部101には、二次または三次の非線形光学効果を有する媒質が用いられる。従来、これらの位相感応光増幅器は主に、光の量子状態を制御するスクィージング等の基礎研究分野で用いられてきた。初期の位相感応光増幅器の研究では二次非線形光学結晶を用いた研究が報告されている。
二次の非線形光学効果を利用する場合は、非特許文献1に示されるように、光学結晶等を非線形媒質として用い、信号光の第二高調波に相当する波長を励起光として用いる。励起光および信号光を、非線形媒質に入射し、三光波混合を利用した縮退パラメトリック増幅(Optical Parametric Amplifier:OPA)を行うことによって、位相感応光増幅が実現される。
図2は、従来技術の二次非線形光学効果を利用した位相感応光増幅器の構成を説明する図である。図2に示すように、従来技術では、レーザー光源201からの比較的高い強度を持つレーザー光を分岐する。分岐光の一方をSHG(Second Harmonic Generation)結晶202に入射し、他方を信号光210として用いる。第二高調波に変換された励起光211および信号光210を、縮退光パラメトリック増幅の可能な非線形光学結晶203に入射して、位相感応光増幅を行う。
位相感応光増幅器においては、信号と位相の合った光のみを増幅するために、上述のように信号光および励起光の位相が一致するか、または、πラジアンだけずれている必要がある。すなわち二次の非線形光学効果を用いる場合は、第二高調波に相当する波長である励起光の位相φ2ωsと、信号光の位相φωsとが、次式(1)の関係を満たすことが必要となる。
Δφ=φ2ωs/2−φωs=nπ(ただし、nは整数) 式(1)
図3は、従来の二次非線形光学効果を利用した位相感応光増幅器における、入力信号光‐励起光間の位相差Δφと、利得(dB)との関係を示すグラフである。横軸のΔφが−π、0またはπのときに、利得が最大となっていることがわかる。
図2に示した二次非線形光学効果を利用した位相感応光増幅器の構成においても、図1で示したように出力信号光の一部を分岐して狭帯域の検出器で検波し、出力信号が最大となるように励起光の位相を制御して、信号光および励起光の位相同期を実現することができる。
詳細は後に述べるが、上述の縮退パラメトリック増幅は、非縮退パラメトリック増幅において、信号光の波長とアイドラ光の波長とが一致した特別な場合である。二次の非線形光学効果を用いる場合は、第二高調波に相当する波長である励起光の位相φSHと、信号光の位相φ、アイドラ光の位相φが以下の(式2)の関係を満たすことで、非縮退パラメトリック増幅による位相感応増幅を行うことが可能である。
Δφ=φSH/2−(φ+φ)/2=nπ(ただし、nは整数) 式(2)
近年光通信の高度化が進むにつれて、図1および図2に示したような位相感応光増幅器の光通信への応用が注目を集めつつある。光通信の分野では通信用光部品との親和性が高い光ファイバの三次非線形光学効果を利用した構成の報告がある。三次の非線形光学効果を用いる場合は、光ファイバ等を非線形媒質として用い、非特許文献2に示されるように、信号光と同じ波長の1つの励起光を用いる。励起光および信号光を、非線形媒質に入射し、四光波混合を利用した縮退パラメトリック増幅を行うことにより位相感応光増幅を実現することができる。
三次の非線形媒質を用い、信号光と同じ波長の1つの励起光を用いる場合は、励起光の位相φωpと、信号光の位相φωsとが、次の式(3)の関係を満たすことが必要となる。
Δφ=φωp−φωs=nπ(ただし、nは整数) 式(3)
信号光と同じ波長の1つの励起光の代わりに、非特許文献3に示されるように、信号光の光周波数をωとするときに次式(4)を満たす光周波数ωp1,ωp2をそれぞれ有する2つの励起光を用いても良い。
2ω=ωp1+ωp2 式(4)
三次の非線形媒質を用い、2つの光周波数ωp1,ωp2に相当する波長の2つの励起光を用いる場合は、励起光の位相φωp1,φωp2と信号光の位相φωsとが、次式(5)の関係を満たすことが必要となる。
Δφ=(φωp1+φωp2)/2−φωs=nπ(ただし、nは整数) (式5)
三次の非線形媒質を用いる場合でも、二次の非線形光学効果を用いる場合と同様に出力信号光の一部を分岐して狭帯域の検出器で検波し、出力信号が最大となるように励起光の位相を制御して、信号光および励起光の位相同期を実現することができる。
前述のように、光ファイバを用いた方式には、信号光と同じ波長の1つの励起光を用いる第1の方式、または、信号光とは異なる2つの波長の励起光を用いる第2の方式がある。1つの励起光を用いる第1の方式の場合は、励起光を信号光から分離する必要がある。このために、非特許文献2に示されるようにループ型のファイバ干渉計を用いて、信号光と励起光とを分離する。しかし、この方式では、光ファイバ中のGAWBS(guided acoustics wave Brillouin scattering)による位相変調がファイバをそれぞれ逆方向へ伝搬する光に相関のない形で加わる。このために、雑音特性が劣化してしまう。この問題を避けるために、近年は非特許文献3に示されるような2つの励起光を用いる第2の方式が良く研究されている。
図4は、従来技術の三次非線形光学効果を利用した位相感応光増幅器の構成を説明する図である。光ファイバおよび2つの励起光を用いた場合の構成を示す。非特許文献3に示されるように、まず、光ファイバ中の四光波混合等の手段を用いて、入射する信号410の平均的な位相と同期した第1の励起光411−1および第2の励起光411−2を生成する。次に、2つの励起光(411−1、411−2)および信号光410をエルビウム添加ファイバレーザー増幅器(EDFA)402にて増幅し、高非線形性光ファイバ403に入射する。図4では信号光410および2つの励起光(411−1、411−2)を合波してEDFAで増幅する構成となっているが、2つの励起光だけをEDFAで増幅し、信号光と合波してから光ファイバ403に入射しても同様の効果が得られる。信号光と2つの励起光との間に上述の式(5)で示した関係が成立するように位相を調整することによって、四光波混合による位相感応光増幅を実現することができる。
J. A. Levenson, I. Abram, T. Rivera, and P. Grainger, "Reduction of quantum noise in optical parametric amplification," J. Opt. Soc. Am. B, vol. 10, pp. 2233-2238 (1993) W. Imajuku, and A. Takada, "Gain characteristics of coherent optical amplifiers using a Mach-Zehnder interferometer with Kerr Media," IEEE J. Quantum Electron., vol. 35, no. 11, pp. 1657-1665 (1999) R. Slavik et al., "All-optical phase and amplitude regenerator for next-generation telecommunications system," Nature Photonics., vol. 4, pp. 690-695 (2010) T. Umeki, O. Tadanaga, and M. Asobe, "Highly efficient wavelength converter using direct-bonded PPZnLN ridge waveguide," IEEE J. Quantum Electron., vol. 46, no. 8, pp. 1003-1008 (2010). M. Asobe et al., "Chirp reduction utilizing phase squeezing property in PPLN-based phase sensitive amplifier," In Proceedings of the European Conference and Exhibition on Optical Communication (ECOC 2011, Geneva, Switzerland) We.10.P1.32
しかしながら、上述の従来技術の位相感応光増幅器を含む光送信装置では、未だ以下に述べるような問題点が存在していた。二次非線形光学結晶を用いた従来の位相感応光増幅器では、主にSHGまたはパラメトリック増幅を起こすのに十分な、高い出力のパルスレーザ光源を用いて動作させる構成しか示されていない。一般的に微弱な光を扱う光通信システムに適用できるような光送信装置の構成は、未だ提案されていなかった。
光ファイバを用いた従来技術の位相感応光増幅では、光通信システムに適用可能な構成は示されているものの、四光波混合を用いるため、信号光の波長と、励起光の波長とが近接する構成となっている。図4に示した構成では、光ファイバ中の非線形光学効果を利用できるようにEDFAなどの光ファイバ増幅器によって必要なパワーを得る構成が示されている。しかしながら、図4に示した構成では、EDFAで光増幅を行う際に増幅自然放出光(ASE光)が雑音として励起光に重畳してしまう。励起光の波長と信号光の波長とが接近しているために、ASE光を取り除くことは困難であり、信号光の近傍の波長にもEDFAから発生するASE光が重畳してしまう。結果として、信号光のS/N比が劣化し、低雑音で光増幅を行うことができない。そこで、この問題点を解決する位相感応光増幅器を含む光送信装置として、非特許文献4によって新しい構成が提案されている。
図5は、非特許文献4に示された、パラメトリック増幅効果を利用して信号光の特定の位相成分だけを増幅する位相感応光増幅器を含む光送信装置を備えた光通信システムの構成図である。光通信システムは、伝送路である光ファイバ507−2の左側にある光送信装置と、光ファイバ507−2の右側にある光受信装置から構成されている。この光送信装置は、分極反転された二次非線形光学材料から成る導波路を備えた二次非線形光学素子から構成される位相感応光増幅器500を備えている。図5に示した光送信装置の構成についてはさらに後で述べるが、この構成によると、光通信で用いる微弱な光パワーからパラメトリック光増幅を利用するのに十分なパワーを得るために光ファイバ増幅器を用いていながら、光増幅に伴って発生するASE光を信号光に重畳させずに位相感応光増幅を実現できる。図4に示した従来技術の位相感応光増幅器を含む光送信装置では実現されなかった、光信号のS/N比を劣化させない光送信装置を構成することが可能である。
図6は、従来技術の位相感応光増幅で用いられる信号光・励起光のスペクトルを模式的に示す図である。図6の(a)は、図4で示した従来技術のファイバレーザー増幅器および非線形媒質として光ファイバを利用した構成を用いた場合のスペクトルを、図6の(b)は、図5で示した非特許文献4による位相感応光増幅器を含む光送信装置の構成を用いた場合のスペクトルを、それぞれ模式的に示した図である。
図4に示したような従来技術の光ファイバを用いた位相感応光増幅器は、四光波混合を利用する。パラメトリック光増幅を行うための励起光の波長と、信号光の波長とが位相整合条件を満たすためには、これらの波長は近接した波長にならざるを得ない。図6の(a)で示したように、信号光601および2つの励起光は、それぞれ同じ1.55μm帯の波長を有している。2つの励起光602−1、602−2を用いる場合、光送信装置全体の構成を簡略化するために2つの励起光を1つの光ファイバ増幅器で増幅することが望ましい。しかし励起光を増幅する際、励起光波長の近傍に光ファイバ増幅器によって発生するASE光603が重畳されてしまう。
信号波長帯域にASE光を発生させないために、信号光が光ファイバ増幅器を通らないような構成にすることも不可能ではない。しかしながら、励起光を信号光と合波する際に両者の波長が接近しているため、波長選択性の良い光フィルタを実現することは困難であり、ASE光を完全に除去することができない。この結果、信号波長帯域に発生しているASE光が信号光に重畳し、ASE光の混入によって信号光のS/N比が劣化することとなる。
一方、図5に示した光送信装置の構成においては、図6の(b)に示すように、信号光601の波長と励起基本波光604の波長とは同一である。光通信で用いられる微弱な光パワーから、パラメトリック光増幅を利用するのに十分なパワーを得るために、励起基本波光604を光ファイバ増幅器によって増幅する。このときに励起基本波光604の波長近傍にASE光603が重畳する。
ここで、図5に示した光送信装置の構成によれば、図6の(b)に示すように、光増幅を行ったのちに、ASE光603が重畳された励起基本波光604を、第1の二次非線形光学素子(図5の502−1)に入射して、第二高調波605を発生させる。このときに励起光として使用される第二高調波605の波長帯域には、わずかなレベルでASE光603の第二高調波が発生する以外には雑音となる広帯域のASE光は発生しない。第二高調波605の波長は励起基本波光604の波長の半分であり、励起基本波光および第二高調波の各波長は十分に離れている。従って、励起基本波光および第二高調波から第二高調波のみを分離するような高い消光比を持ったフィルタをダイクロイックミラー等で実現することは、比較的容易である。そのようなフィルタを第1の二次非線形光学素子(図5の502−1)の出力に接続することにより、励起光波長帯域の励起基本波光604とASE光603とを完全に取り除くことができる。次いで、信号光601および第二高調波605のみを合波して第2の二次非線形光学素子(図5の502−2)に入射し、縮退パラメトリック増幅による位相感応増幅を実現することができる。
再び図5に戻ると、図5に示した光送信装置は、位相感応光増幅器500を含んでいる。光通信に用いられる微弱なレーザー光から非線形光学効果を得るのに十分なパワーを得るために、ファイバレーザー増幅器501−1を用いて励起基本波光521を増幅する。増幅された励起基本波光を第1の二次非線形光学素子502−1に入射させて第二高調波522を発生させる。EDFA501−1から発生する広帯域なASE光が第1の二次非線形光学素子502−1により変換されることを防ぐために、EDFA501−1と第1の二次非線形光学素子502−1との間にバンドパスフィルタ504−1を挿入し、不必要なASE光をカットした。第2の二次非線形光学素子502−2に、信号光520と第二高調波522とを入射して縮退パラメトリック増幅を行うことによって、光送信装置内の位相感応増幅を行う構成としている。本構成では、二次非線形光学素子502−1は、周期的に分極反転されたニオブ酸リチウム(PPLN)から成る光導波路505−1を備え、二次非線形光学素子502−2は、PPLNから成る光導波路505−2をそれぞれ備えている。
図5の光通信システムの光受信装置側の構成を簡単に説明すれば、アッテネータ512、光増幅器501−2、フィルタ504−2、検出器534、誤り検出器(ED)536およびクロックデータリカバリ(CDR)回路535から成る。
図5に示した光通信システムの光送信装置は、その信号源として、外部共振器レーザー(ECL)530、電界吸収型光変調器(EA変調器)531およびパルスパターン発生器(PPG)532を備えている。しかしながら、図5に示した非特許文献4による光送信装置の構成では、光源である外部共振器レーザー(ECL)530によって生成される信号光520のパワーを光分岐手段503−1によって分岐するため、分岐損失の分だけ、信号品質が損なわれてしまう問題があった。位相感応増幅器では、EDFAとは異なり、増幅の前後での信号のS/N比の劣化を原理的にゼロにすることができる。しかし、位相感応増幅器の前段で光信号に損失があると、その損失分がそのままS/N比の劣化に繋がってしまう。また、図5の従来技術の構成においては、光源と変調器との間に分岐手段が必要になるため、光源および変調器を別個の素子とする必要があった。このため、より安価で小型に実現できる、光源および変調器を集積化した変調器集積化光源を用いることができない問題があった。
本発明の目的は、上述のような従来技術の光送信装置の問題に鑑みてなされたもので、光通信に適用可能であり、十分な送信パワーが得られ、かつ信号品質の高い光送信装置を、小型で安価に提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、信号光を生成する半導体レーザー光源と、同一導波路上に、該半導体レーザー光源と隣接して形成された光変調手段と、励起基本波光を増幅する光ファイバレーザー増幅器、周期的に分極反転された二次非線形光学材料から成り、前記励起基本波光から和周波光を発生させる光導波路を有する第1の二次非線形光学素子、前記励起基本波光および前記和周波光から、前記和周波光のみを分離する第1のフィルタ、前記信号光および励起光である前記和周波光を合波する合波器、周期的に分極反転された二次非線形光学材料から成り、前記励起光を用いて前記信号光のパラメトリック増幅を行う光導波路を有する第2の二次非線形光学素子、前記増幅された信号光および前記励起光である前記和周波光を分離する第2のフィルタ、ならびに、前記増幅された信号光の位相および前記光ファイバレーザー増幅器へ入力される励起光の位相を同期する手段から構成された位相感応型光増幅器とを備えた光送信装置であって、前記励起基本波が、前記光半導体レーザー光源の共振器を形成する対となる反射鏡のうち、前記光変調手段が接続されていない側の反射鏡から取り出され、前記光ファイバレーザー増幅器に入力されることを特徴とする光送信装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1の光送信装置であって、前記光変調手段は、電界吸収型の光強度変調器を含んでいることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1の光送信装置であって、前記光変調手段は、少なくとも1つのマッハツェンダー干渉計型の光変調器を含んでいることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3いずれかの光送信装置であって、前記和周波光は、第2高調波であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4いずれかの光送信装置であって、前記基本波光および前記和周波光から、前記和周波光を分離する第1のフィルタ、ならびに、前記信号光と、前記和周波光とを合波する合波器は、誘電体膜を用いたダイクロックミラーであることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5いずれかの光送信装置であって、前記周期的に分極反転された二次非線形光学材料は、LiNbO、KNbO、LiTaO、LiNbTa1−x(0≦x≦1)、KTiOPO、または、それらにMg、Zn、Fe、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として含有していることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至5いずれかの光送信装置であって、前記第1の二次非線形光学素子の前記光導波路および前記第2の二次非線形光学素子の前記光導波路は、非線形光学効果を有する第1の基板と、該第1の基板に比べ屈折率の小さい第2の基板とを直接貼り合わせることによって作製された直接接合光導波路であることを特徴とする。
本発明によれば、光増幅器と非線形光学効果であるパラメトリック増幅効果を利用して信号光の特定の位相成分だけを増幅する位相感応光増幅器を備えた光送信装置において、従来技術の構成では利用することの出来なかった、安価で小型な、光源および変調器を集積した変調器集積化光源を用いることが可能となる。信号光のS/N比劣化を抑圧した信号品質の高い光送信装置を構成することができる。
図1は、従来技術の位相感応光増幅器の構成を説明する図である。 図2は、従来技術の二次非線形光学効果を利用した位相感応光増幅器の構成を説明する図である。 図3は、従従来技術の二次非線形光学効果を利用した位相感応光増幅器における、入力信号光‐励起光間の位相差Δφおよび利得の関係を示すグラフである。 図4は、従来技術の三次非線形光学効果を利用した位相感応光増幅器の構成を説明する図である。 図5は、分極反転された二次非線形光学材料から成る導波路を備えた二次非線形光学素子から構成される位相感応光増幅器を用いた従来技術の光送信装置を含む光通信システムの構成図である。 図6は、従来技術の光送信装置における位相感応光増幅動作を説明する図であり、(a)は図4の構成を用いた場合を、(b)は図5の構成を用いた場合を示す。 図7は、本発明の実施例1の光送信装置を含む光通信システムの構成を示す図である。 図8は、本発明の実施例1の光送信装置によって出力された信号の時間波形の説明図であり、(a)は励起光を入射しないときの出力波形を、(b)は励起光の位相および信号光の位相が同位相であるときの出力波形を、(c)は励起光の位相および信号光の位相が90度ずれたときの出力波形をそれぞれ示す。 図9は、本発明の実施例2の光送信装置を含む光通信システムの構成を示す図である。 図10は、本発明の光送信装置において、(a)は位相感応光増幅器によって増幅されていない信号の時間波形を、(b)は増幅後の信号をシングルモードファイバ中で所定距離伝送させた後の時間波形を、それぞれ説明する図である。 図11は、本発明の実施例1の光送信装置で使用されるEA変調器集積DFB(EA−DFB)レーザーの構成を示す図である。
本発明の光送信装置は、光源および変調器として、DFBレーザーからの連続光を励起光に利用し、光分岐手段を不要として位相感応増幅器の前段側の損失を最小限に抑えた、変調器を集積化したDFBレーザーを備える。これによって、低雑音増幅器における前段の損失を最小化して、直接的に増幅器全体のS/N比の改善に繋げることができる。LD光源およびEA変調器が一体になっていることで、これらを別個の構成とするよりも結合損を小さく抑えることができる。さらに、LD光源およびEA変調器を1つのパッケージに収めて、小型で安価に光源および変調器を実現できる。集積化した光源および変調器における信号光の低損失化すること、および、励起基本波光を抽出することを両立するための、光送信装置の新たな構成を提案する。
本発明の光送信装置は、信号光を生成する半導体レーザー光源と、同一導波路上に、該半導体レーザー光源と隣接して形成された光変調手段と、位相感応型光増幅器とを備える。位相感応型光増幅器は、励起基本波光を増幅する光ファイバレーザー増幅器、周期的に分極反転された二次非線形光学材料から成り、前記励起基本波光から和周波光を発生させる光導波路を有する第1の二次非線形光学素子、前記励起基本波光および前記和周波光から、前記和周波光のみを分離する第1のフィルタ、前記信号光および励起光である前記和周波光を合波する合波器、周期的に分極反転された二次非線形光学材料から成り、前記励起光を用いて前記信号光のパラメトリック増幅を行う光導波路を有する第2の二次非線形光学素子、前記増幅された信号光および前記励起光である前記和周波光を分離する第2のフィルタ、ならびに、前記増幅された信号光の位相および前記光ファイバレーザー増幅器へ入力される励起光の位相を同期する手段から構成される。
本発明の光送信装置は、前記励起基本波が、前記光半導体レーザー光源の共振器を形成する対となる反射鏡のうち、前記光変調手段が接続されていない側の反射鏡から取り出され、前記光ファイバレーザー増幅器に入力されることを特徴とする。上述の和周波光は、第二高調波を含む。以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の光送信装置の第1の実施形態について説明する。本実施例では、光源および変調器として、分布帰還型(DFB)半導体レーザーおよび電界吸収型(EA)変調器が一体に集積されたEA変調器集積DFB(EA−DFB)レーザー731を用いている。
図7は、本発明の実施例1の光送信装置を含む光通信システムの構成を示す図である。光通信システムは、伝送路である光ファイバ807−2の左側にある光送信装置と、光ファイバ807−2の右側にある光受信装置から構成されている。光受信装置側の構成は、図5で説明をした従来技術の構成と全く同じである。本発明に特徴的な光送信装置について説明する前に、その構成要素である位相感応光増幅器(PSA)700の基本的な動作および特性について述べる。
位相感応光増幅器700では、光通信に用いられる微弱なレーザー光から非線形光学効果を得るのに必要な十分なパワーを得るために、ファイバレーザー増幅器(EDFA)701−1を用いて、励起基本波光721を増幅する。増幅した励起基本波光721は、第1の二次非線形光学素子702−1に入射され、第1の二次非線形光学素子702−1において第二高調波722を発生させる。第2の二次非線形光学素子702−2に対して、信号光720および第二高調波722を入射され、縮退パラメトリック増幅を行うことによって、位相感応増幅が行われる。
より具体的には、波長が1.54μmの信号光720を増幅するために、信号光720の一部がEA変調器集積DFB(EA−DFB)レーザー731から得られ、位相感応光増幅器700の励起基本波光721として用いている。励起基本波光721は、エルビウム添加ファイバレーザー増幅器(EDFA)701−1を用いて増幅される。増幅された励起基本波光721は、第1の二次非線形光学素子702−1に入力される。EDFA701−1から発生する広帯域なASE光が第1の二次非線形光学素子702−1により変換されることを防ぐために、EDFA701−1と第1の二次非線形光学素子702−1との間にバンドパスフィルタ704−1を挿入し、不必要なASE光が除去される。
二次非線形光学素子702−1は、周期的に分極反転されたニオブ酸リチウム(PPLN)から成る光導波路705−1を備える。PPLN導波路705−1は擬似位相整合によりニオブ酸リチウムの最も高い非線形光学定数d33を利用することが可能である。さらに、光導波路構造により高い光パワー密度が得られるので、図7のような構成にすることで高い波長変換効率を得ることができる。PPLN導波路705−1に高レベルのパワーを入射した場合、フォトリフラクティブ効果による光損傷により位相整合波長が変化する場合がある。しかし、本実施例ではそのような問題が生じないように、非特許文献5に示された直接接合により作製された導波路を用いている。
本実施例の位相感応光増幅器700では、光損傷耐性に優れたZnを添加したニオブ酸リチウムをコアに用いた直接接合導波路を使用することによって、位相整合波長の変動を抑制した。また、ドライエッチング加工を使用してコア径を4μm程度まで小さくすることによって、高い波長変換効率を実現した。第1のPPLN導波路705−1から出射した第二高調波722および励起基本波光721は、ダイクロイックミラー706−2を用いて分離した。ダイクロイックミラー706−2で反射された0.77μmの第二高調波722は、この波長0.77μmにおいてシングルモード伝搬特性をもつ偏波保持ファイバ707−1を介して、第2の二次非線形光学素子702−2へと導かれる。
このとき、ダイクロイックミラー706−2で完全には取り除けなかった波長1.54μm付近の基本波励起光721およびASE光も、偏波保持ファイバ707−1に入射されることになる。しかし、0.77μmにおいてシングルモードであるこの偏波保持ファイバは、波長1.54μmの光に対しては光の閉じ込めが弱いために、1m程度の長さを伝搬させることにより、これらの不要な光を効果的に減衰させることができる。
偏波保持ファイバ707−1によって導かれた第二高調波722は、第2の二次非線形光学素子702−2のダイクロイックミラー706−3を用いて波長1.54μmの信号光720と合波される。ダイクロイックミラー706−3は、第二高調波722のみを反射させる。したがって、第1のPPLN導波路705−1から出射され、ダイクロイックミラー706−2および偏波保持ファイバ707−1を通ってくる波長1.54μm付近の励起基本波光721ならびにASE光の残留成分を効果的に取り除くことができる。
信号光720および第二高調波722は合波され、第2のPPLN導波路705−2に入射される。第2のPPLN導波路705−2は、第1のPPLN導波路705−1と同等の性能、位相整合波長を有しており、縮退パラメトリック増幅によって、信号光を位相感応増幅することができる。
本実施例の光送信装置では、2つのPPLN導波路705−1、705−2はそれぞれ、個別の温度調節器によって一定の温度となるように制御されている。2つのPPLN導波路の作製誤差のために同一温度において位相整合波長が一致しない場合が考えられる。しかし、そのような場合であっても、2つのPPLN導波路を個々に温度制御することによって、両者の位相整合波長を一致させることができる。第2のPPLN導波路705−2から出射された光は、ダイクロイックミラー706−4により励起光である第二高調波と増幅された信号光とに分離される。このときも第二高調波および増幅された信号光は、波長が全く異なるために、出力において不必要な第二高調波成分を効果的に取り除くことができる。
尚、本実施例の光送信装置における位相感応光増幅器700では、第二高調波722を例としているが、偏波保持ファイバ707−1およびダイクロイックミラー706−4によって分離が容易な、基本励起光に基づいた和周波光を利用する限り、第二高調波に限定されない。すなわち、第1のPPLN導波路705−1で生成される、基本励起光に基づいた和周波光を利用できる。
位相感応増幅では、励起光の位相および信号光の位相を同期させることが必要である。本実施例の位相感応増幅器700では出力した増幅信号光の一部を光分岐部703−3で分岐して光検出器708で受光したのちに、位相同期ループ回路(PLL)709により位相同期を行った。EDFA701−1の前段側に配置した位相変調器710を用いて、正弦波により微弱な位相変調を励起基本波光721に施す。光検出器708およびPLL回路709によって、その位相変調の位相ずれを検出して、この誤差信号が、EDFA701−1の前段側に配置したPZTによる光ファイバ伸長器711の駆動電圧および位相変調器710のバイアス電圧にフィードバックされる。このフィードバック動作によって、光ファイバ部品の振動や温度変動による光位相の変動を吸収して、安定的に位相感応増幅をできるようにした。
後述するように、本実施例の光送信装置における位相感応光増幅器700は、波形整形効果を持っている。この波形整形効果を利用することによって、チャープを持つような変調器を用いてもチャープ成分を除去して信号を伝送路ファイバへ送り出すことができる。
本発明の光送信装置では、従来技術の構成と異なり、分布帰還型(DFB)半導体レーザーおよび電界吸収型(EA)変調器が一体に集積されたEA変調器集積DFB(EA−DFB)レーザー731を光源および変調器として用いている。EA変調器集積DFB(EA−DFB)レーザー731を用いた場合、図5に示した従来技術の構成のように、光源と変調器との間に光分岐部503−1を配置することはできない。分布帰還型(DFB)半導体レーザーおよび電界吸収型(EA)変調器を集積化する目的は、損失を減らすことにある。したがって、光源と変調器との間に光分岐部を設けることは、この目的に反するからである。このため、位相感応光増幅器の励起基本波光として用いる光信号720の搬送波成分を、光分岐部から取り出すことができない。ここで発明者は、集積化した光源および変調器における信号光の低損失化、および、励起基本波光を抽出することを両立するための新たな着想に至った。
図11は、本実施例の光送信装置で使用されるEA変調器集積DFB(EA−DFB)レーザーの構成を示す図である。EA変調器集積DFBレーザー1100は、DFBレーザー部1101およびEA変調部1102が、接続部1107で接合されている。DFBレーザー部1101の端面1103からは連続光1105が出射し、EA変調部1102の端面1104からは変調光信号1106が出射する。
DFBレーザー部1101の端面1103から出力される連続光1105は、通常は光信号出力としては利用せずにフォトダイオードと光結合させ、レーザーの光強度をモニターするために用いられていることが多い。本発明の光送信装置では、この連続波光1105に着目し、これをレンズ結合により光ファイバに導入して、位相感応光増幅器700へ入力する励起基本波光821として利用した点に特徴がある。通常は、連続光を出射する端面1103側の反射鏡の反射率は、変調光信号を出射する端面1107側の反射鏡の反射率よりも高く設定する。このため、端面1103から出力する連続光のパワーレベルは、接続部1107からの出力光のパワーレベルよりも弱くなる。しかしながら、励起基本波光721は、第1の二次非線形光学素子702−1に入力される前にEDFA801−1によって十分に増幅されるため、実用上の問題は発生しない。本発明のように、EA変調器集積DFBレーザー731を利用することで、光分岐部で生じていた光損失をほぼ0とすることができるため、直接的に位相感応増幅器全体のS/N比の改善に繋げることできる。
EA変調器集積DFB(EA−DFB)レーザー731は、半導体技術を用いて作製でき、半導体レーザーと変調器とが一体集積されているため、安価に大量に生産することができる。しかし、電界吸収を利用することから変調信号に周波数チャープ成分が重畳し信号品質を劣化させる。すなわち、ON状態とOFF状態との間を遷移するときに変調器の出力の位相が変動し、ON状態の時を基準にすると、直交位相成分が生じてしまう。このような周波数チャープ成分が重畳した信号を用いると、伝送路である光ファイバの分散によって波形が劣化するため長距離伝送が難しいことが知られている。しかし、位相感応光増幅器はチャープした光信号の波形整形効果を有するため、チャープを持つ変調器を用いても周波数チャープ成分を除去して信号を送り出すことができる。
本実施例の光送信装置では、EA変調器集積DFB(EA−DFB)レーザー831のEA変調部において40Gb/sの変調速度でNRZ強度変調を施した後、位相感応光増幅器700により変調信号を増幅するよう構成した。
図8は、本実施例の光送信装置によって増幅された信号の時間波形を説明する図である。図8の(a)は位相感応光増幅器へ励起光が入射しないときの入射信号光の出力波形を、図8の(b)はPLLによって励起光および信号光の位相を式(1)の関係を満たすように設定したときの出力波形を、図8の(c)はPLLによって励起光の位相および信号光の位相を式(1)の関係から90度ずれるように設定したときの出力波形をそれぞれ示している。
本実施例の光送信装置では、励起光の位相および信号光の位相が式(1)の関係を満たすように同期させることによって、第2のPPLN導波路705−2に入射した第二高調波722のパワーが300mWという条件下で、約11dBの利得を得ることができた。一方、励起光の位相および信号光の位相を式(1)の関係から90度ずれるように設定したときは、図8の(c)に示すように、NRZ信号のONレベルおよびOFFレベルの間の過渡的な部分のみが増幅された波形が観測された。この現象は、NRZ信号を生成するのにEA変調器を用いているため、データ変調器によるチャープが生じることを反映している。すなわち、信号光が変調によってON状態とOFF状態との間を遷移するときに変調器の出力の位相が変動し、ON状態の時を基準にすると、直交位相成分が生じる。信号光の位相および励起光の位相を、式(1)の関係から90度ずれるように設定した場合、位相チャープ成分のみが位相感応増幅され、図8の(c)のような出力波形が得られる結果となる。
本実施例の光送信装置の構成を採ることにより、図4に示した従来技術の光送信装置に対して、図5に示した従来技術における光送信装置光ファイバ増幅器を用いることの利点をそのまま維持して、光ファイバ増幅器から発生するASE光の混入を防ぐことができる。このため、S/N比の劣化を防ぎながら、送信する光信号の増幅を行うことが可能になる。また、位相感応光増幅器が持っている波形整形効果を利用することによって、入力信号に位相チャープが含まれるような場合でも、チャープ成分を除去して、チャープのない信号として整形された光信号を送信できる光送信装置を実現する。
さらに、図5に示した従来技術の構成の光送信装置と比べて、図7に示した本発明の構成の光送信装置は、信号光の経路上に配置された、損失の原因となる信号光分岐手段を使用せずに、安価で小型な集積化したEA−DFBレーザーを用いることができる。位相感応増幅器は、従来技術のEDFAとは異なり、増幅の前後での信号のS/N比の劣化を原理的にゼロにできる。すなわち、NF(Noise Figure)を0dBとすることができる。しかし、位相感応増幅器の前段で光信号に損失があると、その損失分がそのまま増幅器のS/N比の劣化に繋がってしまう。位相感応増幅器の前段の損失を出来る限り減らすことが増幅器の雑音特性の観点から重要である。信号光分岐手段の実際の損失は1〜2dB程度ではあるが、低雑音増幅器で前段の損失を1〜2dB改善できれば、そのまま直接的に増幅器全体のS/N比の改善に繋げることできる。本発明のように分布帰還型(DFB)半導体レーザーおよび電界吸収型(EA)変調器が一体に集積されたEA−DFBレーザーを使用することによって、S/N比の劣化を抑制しながら送信光信号を生成させることができる。また、図5に示した従来技術の光送信装置の構成と比べて、集積化によって光送信装置のコストおよびサイズを大幅に低減させることができる。
尚、上述の本実施例に係る位相感応光増幅器の構成の説明では、入力信号光として単一の波長(1.54μm)を有する信号光を用いた縮退パラメトリック増幅による位相感応増幅を行う場合について説明した。本発明の光源および変調器の構成は、異なる波長を持つ複数の搬送波を入力信号とする非縮退パラメトリック増幅による位相感応増幅を行う場合に対しても適用することができる。
また本実施例において、周期的に分極反転された二次非線形光学材料としてZnを添加したニオブ酸リチウム(LiNbO)を用いたが、これに限定されない。タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウムとタンタル酸リチウムの混晶(LiNb(x)Ta(1−x)(0≦x≦1))、ニオブ酸カリウム(KNbO)、チタニルリン酸カリウム(KTiOPO)等に代表される二次非線形光学材料であれば、同様の効果が得られる。また二次非線形光学材料の添加物に関しても、Znだけに限定されず、Znの代わりにMg、Zn、Sc、In、Feを用いても良い。また、添加物を添加しなくても良い。
本発明の光送信装置によって、光通信に適用可能であり、十分な送信パワーが得られ、かつ信号品質の高い光送信装置を、小型で安価に提供することができる。
上述の本発明の実施例1の光送信装置では、分布帰還型(DFB)半導体レーザーおよぶEA変調器が一体に集積されたEA変調器集積DFB(EA−DFB)レーザーを用いる場合の構成とその効果について説明した。本実施例は、EA変調器集積DFB(EA−DFB)レーザーの代わりに、マッハツェンダー(MZ)干渉計型の光強度変調器を利用する点で、実施例1の構成と相違している。
図9は、本発明の実施例1の光送信装置を含む光通信システムの構成を示す図である。光通信システムは、伝送路である光ファイバ907−2の左側にある光送信装置と、光ファイバ907−2の右側にある光受信装置から構成されている。光受信装置側の構成は、図5で説明をした従来技術の構成と全く同じである。本実施例における位相感応光増幅器900は、第1の実施形態と同様に、1.54μmの信号光920を増幅するように装置を構成した。2つのPPLN導波路905−1、905−2を用いること、および、第二高調波922を発生させて縮退パラメトリック増幅を行うことも、実施例1と同じである。
図7に示した実施例1の構成と、図9に示した本実施例の構成との相違点は、光変調部のために、EA変調器ではなくマッハツェンダー(MZ)干渉計型の光強度変調器931を用いた点と、本発明の光送信装置における分散耐性を比較するために長尺のシングルモードファイバ(SMF)907−2を備えた点にある。
MZ干渉計型の光強度変調器を集積した、MZ変調器集積DFBレーザー931は、半導体レーザーおよび変調器が一体集積されているため、安価に大量に生産することができる。しかしながら、通常のMZ干渉計の片方のアームに対して変調を行う場合には、変調信号に周波数チャープ成分が重畳し信号品質を劣化させる要因となる。本実施例の光送信装置においても実施例1と同様に、位相感応光増幅器の有する波形整形効果を利用することができる。入力信号に位相チャープが含まれるMZ変調器集積DFBレーザーからの光信号920であっても、そのチャープ成分を除去して、チャープのない信号として整形して送信可能な光送信装置を実現することができる。本実施例では、さらに、位相感応光増幅器に入る前の信号と、位相感応光増幅器を通った後の信号とを、長尺のSMF907−2中を伝送させて、分散耐性の比較を行った。
図10は、シングルモードファイバ(SMF)中を伝送させた後の信号の時間波形を説明する図である。図10の(a)は、増幅前の変調信号をそれぞれ1.2km、2.4km、3.6km、4.8kmの長さを持つSMF907−2中を伝送させた後の出力波形を示す。図10の(b)は、本発明の光送信装置の位相感応光増幅器900を通過した後、それぞれ1.2km、2.4km、3.6km、4.8kmの長さを持つSMF907−2中を伝送させた後の出力波形を示す。
分散耐性を定量的に比較するために、図10の(a)および(b)に示すそれぞれの条件において、ビット誤り率を測定した。位相感応光増幅器900を通す前の信号を2.4kmよりも長いSMF中を伝送させると、ビット誤り率は非常に大きくなった。一方、本発明の位相感応光増幅器900を通した後では、信号を4.8kmのSMF中を伝送させても、位相感応光増幅器を通す前の信号を2.4km伝送させた信号と同程度のビット誤り率が得られた。本実施例の光送信装置の構成を用いることによって、SMF中の伝送に対する分散耐性は、伝送距離に関して2倍にすることができた。
なお、本実施例においては、光源および光変調器として、単一のMZ干渉計型の光強度変調器を集積したDFBレーザーを用いたが、光変調器の種類はこれに限定されない。変調器として、例えば光位相変調器や、複数のMZ干渉計を組み合わせた複合光変調器などを用いても同様の効果が得られる。本発明の光送信装置は、光源および変調器として、DFBレーザーからの連続光を励起光に利用することで、光分岐手段を不要として位相感応増幅器前段の損失を最小限に抑えた、変調器を集積化したDFBレーザーを利用する点に特徴がある。これによって、低雑音増幅器における前段の損失を最小化して、そのまま直接的に増幅器全体のS/N比の改善に繋げることできる。LD光源およびEA変調器が一体になっていることで、これらを別体にするよりも結合損が小さく抑えることができる。さらに、LD光源およびEA変調器を一つのパッケージに収めて、小型で安価に光源および変調器を実現できる。集積化した光源および変調器における信号光の低損失化と、励起基本波光の抽出とを両立するための光送信装置の新たな構成を実現した。
尚、上述の本実施例に係る位相感応光増幅器の構成の説明では、入力信号光として単一の波長(1.54μm)を有する信号光を用いた縮退パラメトリック増幅による位相感応増幅を行う場合について説明した。しかしながら、異なる波長を持つ複数の搬送波を入力信号とする非縮退パラメトリック増幅による位相感応増幅を行う場合に対しても適用することができる。
また、本実施形態においては、周期的に分極反転された二次非線形光学材料としてZnを添加したニオブ酸リチウム(LiNbO)を例として用いたが、これだけに限定されない。タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウムとタンタル酸リチウムの混晶(LiNb(x)Ta(1−x)(0≦x≦1))、ニオブ酸カリウム(KNbO)、チタニルリン酸カリウム(KTiOPO)等に代表される二次非線形光学材料であれば、同様の効果が得られる。また、二次非線形光学材料の添加物に関しても、Znだけに限定されず、Znの代わりにMg、Zn、Sc、In、Feを用いても良い。また、添加物を添加しなくても良い。
以上詳細に述べたように、本発明の光送信装置によって、集積化した光源および変調器における信号光の低損失化と、励起基本波光の抽出とを両立するための光送信装置の新たな構成を実現した。本発明の光送信装置によって、光通信に適用可能であり、十分な送信パワーが得られ、かつ信号品質の高い光送信装置を、小型で安価に提供することができる。
本発明は、一般的に通信システムに利用することができる。特に、本発明は光通信システムにおいて用いられる光送信装置に利用できる。
101、500、700、900 位相感応光増幅器
102、411−1、411−2 励起光源
103 励起光位相制御部
104−1、104−2、503−1 光分岐部
403、507−2、707−2、907−2、伝送ファイバ
501−1、701−1、901−1 ファイバレーザー増幅器
502−1、502−2、702−1、702−2、902−1、902−2 二次非線形光学素子
507−1、707−1、907−1 偏波保持ファイバ
531 EA変調器
532、732、932 パルスパターン発生器
731 EA変調器集積DFB(EA−DFB)レーザー
931 MZ変調器集積DFBレーザー

Claims (7)

  1. 信号光を生成する半導体レーザー光源と、
    同一導波路上に、該半導体レーザー光源と隣接して形成された光変調手段と、
    励起基本波光を増幅する光ファイバレーザー増幅器、
    周期的に分極反転された二次非線形光学材料から成り、前記励起基本波光から和周波光を発生させる光導波路を有する第1の二次非線形光学素子、
    前記励起基本波光および前記和周波光から、前記和周波光のみを分離する第1のフィルタ、
    前記信号光および励起光である前記和周波光を合波する合波器、
    周期的に分極反転された二次非線形光学材料から成り、前記励起光を用いて前記信号光のパラメトリック増幅を行う光導波路を有する第2の二次非線形光学素子、
    前記増幅された信号光および前記励起光である前記和周波光を分離する第2のフィルタ、ならびに、
    前記増幅された信号光の位相および前記光ファイバレーザー増幅器へ入力される励起光の位相を同期する手段
    から構成された位相感応型光増幅器と
    を備えた光送信装置であって、
    前記励起基本波が、前記光半導体レーザー光源の共振器を形成する対となる反射鏡のうち、前記光変調手段が接続されていない側の反射鏡から取り出され、前記光ファイバレーザー増幅器に入力されることを特徴とする光送信装置。
  2. 前記光変調手段は、電界吸収型の光強度変調器を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の光送信装置。
  3. 前記光変調手段は、少なくとも1つのマッハツェンダー干渉計型の光変調器を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の光送信装置。
  4. 前記和周波光は、第2高調波であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の光送信装置。
  5. 前記基本波光および前記和周波光から、前記和周波光を分離する第1のフィルタ、ならびに、前記信号光と、前記和周波光とを合波する合波器は、誘電体膜を用いたダイクロックミラーであることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の光送信装置。
  6. 前記周期的に分極反転された二次非線形光学材料は、LiNbO、KNbO、LiTaO、LiNbTa1−x(0≦x≦1)、KTiOPO、または、それらにMg、Zn、Fe、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として含有していることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の光送信装置。
  7. 前記第1の二次非線形光学素子の前記光導波路および前記第2の二次非線形光学素子の前記光導波路は、非線形光学効果を有する第1の基板と、該第1の基板に比べ屈折率の小さい第2の基板とを直接貼り合わせることによって作製された直接接合光導波路であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の光送信装置。
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