JP2014068620A - 不溶性食物繊維配合食品及びその製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】食品、例えばベーカリー製品等で不溶性食物繊維を配合する場合に問題となる食感の劣化、すなわち粉感・ボソボソ感を改善し、ソフトでしっとりとした食感を有し、かつ口溶け感が良く、風味も良好な食品、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】不溶性食物繊維を配合するベーカリー製品等の食品の製造に際して、希少糖含有シロップを配合した原料粉を用いることにより、粉感・ボソボソ感が低減され、ソフトでしっとりとし、かつ口溶感の良さを付与した食品を製造すること。
【選択図】なし
【解決手段】不溶性食物繊維を配合するベーカリー製品等の食品の製造に際して、希少糖含有シロップを配合した原料粉を用いることにより、粉感・ボソボソ感が低減され、ソフトでしっとりとし、かつ口溶感の良さを付与した食品を製造すること。
【選択図】なし
Description
本発明は、不溶性食物繊維を含む食品、すなわちベーカリー製品や、かまぼこ等の水練製品等の食品において、不溶性食物繊維の添加に由来する食感の劣化、すなわち粉感・ボソボソ感を改善して、ソフトでしっとりとした食感を有し、かつ口溶け感が良く、風味も良好な食品を提供すること及びその製造方法に関する。特に、ソフトでしっとりとした食感と口溶け感等の食感が良好な、食パン等のベーカリー製品の製造方法に関する。
生活習慣病対策として、食品の低カロリー化、並びに繊維成分の積極的な摂取が推奨されて久しいところである。実際に食品において低カロリー化、並びに繊維成分の付与を検討する場合、最も一般的な手法として食物繊維素材を配合する手法が挙げられる。
食物繊維は、食品中の成分のうち、人間の消化酵素で消化されない成分の総称である。食物繊維は多くの効能があるため、五大栄養素に続く、「第六の栄養素」として、大変重要視されている。食物繊維は、水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維に大別され、それぞれ生体内で異なる生理機能を示す事から水溶性食物繊維と不溶性食物繊維それぞれの値が食品成分表に記載されるとともに、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両区分の総和が総食物繊維として食品成分表に記載されている。
既存の水溶性食物繊維として、ペクチン質、植物ガム(グアーガム)、粘質物(マンナン)、海藻多糖類(アルギン酸、ラミナリン、フコイダン)、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、イヌリン等があるが、ペクチン質、グアーガム、マンナン等を食品に配合した場合、配合量に応じて、食品製造過程におけるドウやバッターの物性に与える影響、更には最終製品に与える形状や食感への影響が大きくなる。また、低粘性の水溶性食物繊維はドウやバッターの性状に大きな影響を与えるため、これらを生成する工程を含む食品にそのまま適用することは困難であった。また、膨化を伴うパン類や焼き菓子類は、低粘性の水溶性食物繊維を配合することで膨化が妨げられるため、最終製品の火通りが悪くなったり、製品表面が硬くなったりする、といった問題点も見られた。したがって、水溶性食物繊維素材の適用は、食品の既存原料に単純に追加したり、小麦粉等の穀粉原料との置換では困難である。
一方、既存の不溶性食物繊維素材としては、例えばレジスタントスターチ、アップルファイバー、コーンファイバー、ビートファイバー、大豆ファイバー、小麦ファイバー、大豆ふすま、小麦ふすま、セルロース、結晶セルロース、及びヘミセルロース等がある。これらの素材は、水溶性食物繊維に比べてバッターやドウへの物性に与える影響が総じて小さく、より多量の配合が可能であり、特に一部のレジスタントスターチなどは小麦粉製品において小麦粉の一部を代替することで、簡単に処方組みができる場合もあり、きわめて汎用性が高い。具体的にはベーカリー製品や麺製品などで幅広く活用されている。しかしながら、不溶性食物繊維素材は加熱調理を経た後もその構造がほとんど変化しないものが多く、配合された食品の食感を粉っぽく、ボソボソとした感じに改質してしまうという問題点がみられた。
こうした点を改善する方法として、例えばパン類のようなベーカリー製品において、製品にソフト感やしっとり感等の食感を付与させるために、製造原料に種々の配合成分や配合剤を配合することが開示されている。例えば、パン製造生地に、食用油脂類或いは食用油脂類と糖類或いは水溶性多糖類、水溶性蛋白質等からなる組成物を添加することが開示されている(特許文献1〜5)。また、パン原料である小麦粉に、ホエー蛋白質や、鶏卵粉末や乳蛋白、小麦蛋白、大豆蛋白等の蛋白素材を添加することが開示されている(特許文献6,7)。
更に、パン類の製造に際して、マルトヘキサオースやマルトペンタオースのような糖類を配合すること(特許文献8)、デキストランやセルロースのような多糖類を含有するパン改良剤を添加すること(特許文献9,10)、グルコース重合度600以上、グルコース重合度200〜600、グルコース重合度40以上の糖質を特定割合で配合した糖質からなる品質改良剤を配合すること(特許文献11)、平均粒子径が20μm以下のグアーガム、ペクチン、ローカストビーンガムのような増粘安定剤を添加すること(特許文献12)も開示されている。
また、パン類の製造に際して、原料に、小麦粉やトウモロコシ、ジャガイモ等のα化澱粉を配合すること(特許文献13〜15)、パン類の製造に際し、パン原料に、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、架橋エーテル化澱粉、或いは架橋エステル化澱粉のような化工澱粉を配合すること(特許文献16〜18)、及び、パン類の製造に際し、パン原料に、α化架橋澱粉を配合すること(特許文献19)、水溶性低分子食物繊維と不溶性食物繊維を併用すること(特許文献20)も開示されている。このように、既にタンパク質、油脂、澱粉類や多糖類といった、高分子物質を利用する検討事例は数多くあるものの、製品味覚への影響や付与された食感等において、必ずしも満足のいくものではなかった。
食物繊維と希少糖を含む生体機能改善組成物に関する技術(特許文献21)も開示されている。しかしながら、水溶性食物繊維と希少糖もしくは希少糖を含む異性化糖を配合することに関する技術であり、不溶性食物繊維と希少糖含有シロップの配合については何ら検証されておらず、得られる食品に対する食感的な影響を確認できていなかった。
食品と開発 第44巻 第2号 57−64(2009)
本発明の目的は、食品において低カロリー化、並びに繊維成分の付与を実現するための簡便且つ有力な手法である食物繊維素材、とりわけ不溶性食物繊維素材を添加・配合された食品の質を向上させることにある。より具体的には不溶性食物繊維の添加に由来する食感の劣化、すなわち粉っぽさやボソボソ感を改善して、ソフトでしっとりとした食感を有し、かつ口溶け感が良い食品を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、不溶性食物繊維素材と、希少糖含有シロップとを組み合わせて配合した食品を調製したところ、ベーカリー製品の場合においては、ソフトでしっとりとし、かつ口溶感の良さを付与したベーカリー製品を製造することができることを見いだし、かつ、他の食品の場合においても容易に食品の製造が処方組み、試作が可能であり、得られた製品が総じて粉っぽさが軽減され、ソフトな食感となることを検証して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の食品に関する製造方法を提供する。
1)食物繊維含量が30%以上である不溶性食物繊維と、希少糖含有シロップを配合していることを特徴とする食品の製造方法。
2)不溶性食物繊維の食物繊維含量が40%以上である(1)に記載の食品の製造方法。
3)不溶性食物繊維の食物繊維含量が50%以上である(1)又は(2)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
4)不溶性食物繊維の食物繊維含量が60%以上である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
5)不溶性食物繊維がレジスタントスターチであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
6)レジスタントスターチが架橋タイプである(5)に記載の食品の製造方法。
7)希少糖含有シロップが、D−プシコースを0.5〜17質量%及びD−アロースを0.2〜10質量%含むシロップである、(1)〜(6)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
8)希少糖含有シロップが、D−グルコース及び/若しくはD−フラクトースを原料とし、D−グルコース及び/若しくはD−フラクトース含量が55〜99質量%になるまでアルカリ異性化したシロップである、(1)〜(7)のいずれか一項に記載のベーカリー製品の製造方法。
9)不溶性食物繊維の含有量が食品総量の5%以上を占めることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
10)不溶性食物繊維の含有量が食品総量の10%以上を占めることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
11)不溶性食物繊維の含有量が食品総量の20%以上を占めることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
12)食品がベーカリー製品である(1)〜(11)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
1)食物繊維含量が30%以上である不溶性食物繊維と、希少糖含有シロップを配合していることを特徴とする食品の製造方法。
2)不溶性食物繊維の食物繊維含量が40%以上である(1)に記載の食品の製造方法。
3)不溶性食物繊維の食物繊維含量が50%以上である(1)又は(2)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
4)不溶性食物繊維の食物繊維含量が60%以上である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
5)不溶性食物繊維がレジスタントスターチであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
6)レジスタントスターチが架橋タイプである(5)に記載の食品の製造方法。
7)希少糖含有シロップが、D−プシコースを0.5〜17質量%及びD−アロースを0.2〜10質量%含むシロップである、(1)〜(6)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
8)希少糖含有シロップが、D−グルコース及び/若しくはD−フラクトースを原料とし、D−グルコース及び/若しくはD−フラクトース含量が55〜99質量%になるまでアルカリ異性化したシロップである、(1)〜(7)のいずれか一項に記載のベーカリー製品の製造方法。
9)不溶性食物繊維の含有量が食品総量の5%以上を占めることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
10)不溶性食物繊維の含有量が食品総量の10%以上を占めることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
11)不溶性食物繊維の含有量が食品総量の20%以上を占めることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
12)食品がベーカリー製品である(1)〜(11)のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
また、本発明は、以下に記載のベーカリー製品を提供する。
13)(1)〜(12)のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された食品。
13)(1)〜(12)のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された食品。
本発明により、不溶性食物繊維を配合する食品に見られる粉っぽさやボソボソ感を解消し、ソフトでしっとりとし、かつ口溶感の良さを付与した食品を製造することができる。
本発明でいう不溶性食物繊維は、水に不溶の繊維素材で、プロスキー変法(五訂 日本食品標準成分表分析マニュアルの解説(中央法規出版))によって測定される食物繊維含量が30%以上の物をいう。具体的にはレジスタントスターチ、コーンファイバー、ビートファイバー、大豆ファイバー、小麦ファイバー、アップルファイバー、大豆ふすま、小麦ふすま、セルロース、結晶セルロース、及びヘミセルロース等があるが、例示されるものに限るものではなく、プロスキー変法によって測定される食物繊維含量が30%以上の物であればよく、このうちの1種類もしくは2種類以上を併用してよい。市販品の例は非特許文献1等で確認することができ、それらの繊維含有率は概ね30%以上となっている。
本発明で用いられる不溶性食物繊維は食品へ多量に配合することの容易なレジスタントスターチを選択することが好ましく、より好ましくは味の点でクセがなく、多量の配合に適した架橋タイプのレジスタントスターチを選択した場合に大きな効果を発揮する。
本発明は食品の原材料として、食物繊維含量が30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは60%以上である不溶性食物繊維と、希少糖含有シロップを配合することで実現される。
本発明のレジスタントスターチとは、消化酵素に対して抵抗性を示す澱粉の総称である。一般にRS1〜RS4と分類されるが、本特許においてはこのいずれを選択してもよい。なおRS1の例として小麦ふすまであるブランエース粉状(日本製粉(株)製)、RS2の例として日食ロードスター(日本食品化工(株)製)、ハイメイズ1043(日本エヌエスシー(株)製)、RS3の例としてC☆Actistar 11700((株)カーギルジャパン製)、RS4の例としてパインスターチRT、ファイバージムRW(いずれも松谷化学工業(株)製)、Actistar RT 75330((株)カーギルジャパン製)を挙げることができる。架橋タイプのレジスタントスターチとはRS4の一形態であり、澱粉に架橋処理を施して酵素抵抗性を発現しているレジスタントスターチをいう。先にRS4として例示したパインスターチRT、ファイバージムRW、Actistar RT 75330はいずれも架橋タイプのレジスタントスターチである。なおRS4にはエーテル化、エステル化により酵素抵抗性を発現しているタイプもあり、本特許ではどちらでも用いることができるが、架橋タイプの方が粉っぽさは強く出るため、本発明の技術は架橋タイプのレジスタントスターチに対して実施されるほうがその効果が高い。
本発明でいう食品は不溶性食物繊維を配合・添加しうる食品であればどのような食品でもかまわない。すなわちベーカリー製品類、和洋菓子類、米飯類、調味料類、水練り製品、畜肉製品、各種クリームやフラワーペースト類などに加えて、低カロリーや食物繊維付与の要望が高い健康食品全般、たとえば錠剤やタブレット、青汁(顆粒、粉末を含む)、エネルギーゼリー、ヨーグルトなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。このような食品に対して、甘味を補強するために、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、スクラロースなどの高甘味度甘味料、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコールを併用しても差し支えない。本発明の食品は、小麦粉を不溶性食物繊維に置き換え、砂糖などの甘味成分を希少糖あるいは希少糖を含む異性化糖に置き換えることで、比較的容易に処方組みが可能なベーカリー製品が特に適している。
上記食品においては、不溶性食物繊維の添加目的である食物繊維の増強、食品の低カロリー化に達成するために、不溶性食物繊維の含有量が食品総量の5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上を占めるように配合するのがよい。
本発明でいうベーカリー製品は、一種または二種以上の主原料粉に、少なくとも水、食塩及び/又は気泡を生じせしめる材料を加え、更にそれぞれの食品を製造する上で必要な副材料を加えてドウもしくはバッターを形成し、これを加熱調理して含水率が約2〜50%とした食品であって、加熱調理前又は加熱調理中にパン酵母、ベーキングパウダー、全卵、卵白等によって大なり小なり気泡を生じせしめた食品である。主原料粉である穀粉は、主に小麦粉を挙げることができるが、その他、米粉、澱粉(例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、米澱粉、もち米澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉など)、加工澱粉(例えば、架橋澱粉、アセチル化澱粉、エーテル化澱粉、アセチル化架橋澱粉、エーテル化架橋澱粉、酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉など)、酸処理澱粉、酸焙焼澱粉、全粒粉、トウモロコシ粉、ライ麦粉なども含む。また、全粒粉、ライ麦、米、トウモロコシ、大麦、ひえ、あわ、きび、発芽玄米、黒米、赤米、大豆、小豆、アマランサス、キヌアなどを混入しても良く、組成的には特に限定されるものではなく、一般的な原材料が使用可能である。また副材料は、一般にベーカリー製品の製造に使用されている副材料、或いはベーカリー製品の種類、望まれる品質などによって使用されている副材料で、具体的には砂糖、グルコース、異性化糖、オリゴ糖、還元澱粉分解物等の糖質、脱脂粉乳、全乳粉末などの乳製品、ショートニング、マーガリン、バター、乳化油脂等の油脂類、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム等の乳化剤、シナモン、バジリコ等の香辛料、ブランデー、ラム酒などの洋ベーカリー製品、レーズン、ドライチェリー等のドライフルーツ、アーモンド、ピーナツ等のナッツ類、αアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、香料(例えばバニラエッセンス)、人工甘味料(例えばアスパルテーム)、ペクチン、グアガム分解物、アガロース、グルコマンナン、ポリデキストロース、アルギン酸ナトリウム、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン、難消化性デキストリン等の食物繊維、レジスタントスターチ、活性グルテン、ココアパウダー等が例示できる。
本発明における希少糖とは、糖の基本単位である単糖のうち、自然界に大量に存在するD−グルコース(ブドウ糖)に代表される「天然型単糖」に対して、自然界に微量にしか存在しない単糖を「希少糖」と定義付けられている。単糖は全部で59種類あり、そのうち天然型単糖は7種類、希少糖は52種類確認されている。希少糖の存在量は非常に少なく、例えばD−アロースは、D−グルコース(ブドウ糖)に比べて圧倒的に存在量が少ない。
そのなかでも、現在、大量生産が可能な希少糖は、D−プシコースとD−アロースである。D−プシコースは、ケトヘキソースに分類されるプシコースのD体であり、六炭糖である。また、D−アロースは、アルドースに分類されるアロースのD体であり、同じく六炭糖である。D−プシコースは、自然界から抽出されたもの、化学的又は生物学的な方法により合成されたもの等を含め、どのような手段により入手してもよい。D−アロースは、D−プシコースを含有する溶液にD−キシロースイソメラーゼを作用させて、D−プシコースからD−アロースを生成させる(特許文献22)などして入手できるが、この方法に限定せず、どのような手段により入手してもよい。
本発明における希少糖含有シロップは、上述の希少糖(例えば、D−ソルボース、D−タガトース、L−ソルボース、D−プシコース、D−アロース、D−アルトロース)を適宜選択し、一般的なシロップ(液糖)に適宜混合することでも得られるが、市販品「レアシュガースウィート」(発売元:(株)レアスウィート、販売者:松谷化学工業(株))として、容易に入手することができる。
「レアシュガースウィート」は、異性化糖を原料とし、特許文献23に開示される手法により得られる希少糖を含有するシロップであり、希少糖として主にD−プシコース及びD−アロースが含まれるように製造されたものである。該手法により得られる希少糖含有シロップに含まれる希少糖は、D−プシコース0.5〜17質量%、D−アロース0.2〜10質量%であるが、未同定の希少糖も含まれる。
この希少糖含有シロップを得る方法は、上記手法に限られるものではなく、単糖(D−グルコースやD−フラクトース)にアルカリを作用させ、19世紀後半に発見された反応、ロブリー・ドブリュイン−ファン エッケンシュタイン転位反応やレトロアルドール反応とそれに続くアルドール反応を起こさせ(以上の反応をアルカリ異性化反応と呼ぶ)、生じた各種単糖(希少糖含む)を含むシロップを広く「希少糖含有シロップ」と呼ぶことができ、D−グルコース及び/若しくはD−フラクトースを原料として、D−グルコース及び/若しくはD−フラクトース含量が55〜99質量%になるまでアルカリ異性化したシロップであればよい。
希少糖の測定方法は種々存在するが、高速液体クロマトグラフィーにより分離測定する方法が一般的であり、測定条件の一例として、特許文献23に記載の測定条件が挙げられる(検出器;RI、カラム;三菱化成(株)MCI GEL CK 08EC、カラム温度;80℃、移動相;精製水、移動相流量;0.4mL/min、試料注入量;10μL)。
前記希少糖含有シロップの製造に使用される原料としては、でん粉、砂糖、異性化糖などが挙げられる。異性化糖とは、特定組成比のD−グルコースとD−フラクトースを主組成分とする混合糖として広く捉えられ、一般的には、でん粉をアミラーゼ等の酵素又は酸により加水分解して得られた、主にブドウ糖からなる糖液を、グルコースイソメラーゼまたはアルカリにより異性化したブドウ糖及び果糖を主成分とする液状の糖のことを指す。JAS規格においては、果糖含有率(糖のうちの果糖の割合)が50%未満のものを「ブドウ糖果糖液糖」、50%以上90%未満のものを「果糖ブドウ糖液糖」、90%以上のものを「高果糖液糖」、及びブドウ糖果糖液糖にブドウ糖果糖液糖を超えない量の砂糖を加えたものを「砂糖混合果糖ブドウ糖液糖」とよぶが、本発明の希少糖含有シロップの原料としては、何れの異性化糖を用いても構わない。
本発明における食品を製造する際には、上記希少糖含有シロップが含まれるよう設定することが必須であり、その使用量は、粉っぽさやボソボソ感を改善して、ソフトでしっとりとした食感を有し、かつ口溶け感が良苦なる効果を得ることができるのであれば特に制限はなく、その食品本来の味のバランス等を考慮して適宜調整すればよい。
例えば、食パン、フランスパンなど、元々甘味が殆どないベーカリー製品の場合、希少糖含有シロップを主原料粉100質量%に対して、0.1〜10質量%となるように設定して添加することにより、効果的に改善効果を得ることができる。最終製品中における添加した糖の含有量が0.1質量%未満の場合、改善効果が不十分なため、0.1%以上、好ましくは0.5質量%以上添加するのがよい。また、10質量%以上では、菓子パンなどのような元来甘味の強いベーカリー製品等に対しては問題ないが、それ以外のベーカリー製品には強い甘味を与えて全体的な味のバランスを損ねてしまうことになるし、経済的観点からも、10質量%までに留めるほうが良い。
菓子パンのような元来甘味の強いベーカリー製品等の場合は、主原料粉100質量%に対して、希少糖含有シロップの割合が、1〜30質量%となるように設定して添加することにより、効果的に改善効果を得ることができるし、スポンジケーキなどの場合は、原料粉100質量%に対して、希少糖含有シロップの割合が、5〜160質量%となるように設定して添加することにより、効果的に改善効果を得ることができる。
また、本発明の効果は、いずれの食品でも得られるが、希少糖含有シロップは、通常の糖質と比べ、カロリーが低い、資化されない糖質を含むことから、低カロリー、低糖質の食品において、更に本発明の改善効果を持たせることができる。このようにして得られる食品は、食感・食味に優れ、さらに、低カロリー食品に利用された場合には、健康と嗜好性が両立されるという、産業上利用上、非常に高い価値を有するものとなる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。この実施例及び参考例においては、「部」は重量部を示す。
以下の実施例においては、希少糖含有シロップとして、「レアシュガースウィート(以下RSSと省略)」(発売元:(株)レアスウィート、販売者:松谷化学工業(株))を用いた。
(食パン)
表1,3に従って食パンを試作し、表4に従って粉っぽさと製品ボリュームを比較した。不溶性食物繊維サンプルとして、表2に示す4種を選択し試験に供した。不溶性食物繊維の種類、容量に依らず、RSSの添加による粉っぽさ、ボソボソした食感の改善が認められた。
表1,3に従って食パンを試作し、表4に従って粉っぽさと製品ボリュームを比較した。不溶性食物繊維サンプルとして、表2に示す4種を選択し試験に供した。不溶性食物繊維の種類、容量に依らず、RSSの添加による粉っぽさ、ボソボソした食感の改善が認められた。
(繊維強化ロールパン)
表5,6に従って、繊維強化ロールパンを作成した。単純に不溶性食物繊維を添加したコントロールに比べて、粉っぽさが改善された繊維強化ロールパンを得ることができた。
表5,6に従って、繊維強化ロールパンを作成した。単純に不溶性食物繊維を添加したコントロールに比べて、粉っぽさが改善された繊維強化ロールパンを得ることができた。
(低糖質・低カロリークッキー)
表7に従って、低糖質・低カロリークッキーを作成した。すなわち、卓上縦型ミキサーでビーターを用いてすべての原料を混合した後、30分間休ませた。生地を4.5mmに圧延後、型抜きしベーキングシートを敷いた天板に並べ上火170℃、下火150℃のオーブンで17分間焼成した。得られた実施例3のクッキーは良好な食感を有し、比較例3のクッキーに比べて、糖質65.7%カット、カロリー20.8%カットのクッキーとなった。
表7に従って、低糖質・低カロリークッキーを作成した。すなわち、卓上縦型ミキサーでビーターを用いてすべての原料を混合した後、30分間休ませた。生地を4.5mmに圧延後、型抜きしベーキングシートを敷いた天板に並べ上火170℃、下火150℃のオーブンで17分間焼成した。得られた実施例3のクッキーは良好な食感を有し、比較例3のクッキーに比べて、糖質65.7%カット、カロリー20.8%カットのクッキーとなった。
(低糖質フィナンシェ)
表8に従って、低糖質フィナンシェを作成した。すなわち、卓上縦型ミキサーでビーターを用いて卵白、グラニュー糖を混合した後、RSS、薄力粉、パインスターチRT、アーモンドパウダー、ベーキングパウダーを加えて混合し、そこに予め温めてとかしたバターを混合した後、30分間休ませた。生地をフィナンシェ型に注ぎ、上火200℃、下火170℃のオーブンで13分間焼成した。得られた実施例4のフィナンシェは良好な食感を有し、比較例4のフィナンシェに比べて、糖質24.9%カットのフィナンシェとなった。
表8に従って、低糖質フィナンシェを作成した。すなわち、卓上縦型ミキサーでビーターを用いて卵白、グラニュー糖を混合した後、RSS、薄力粉、パインスターチRT、アーモンドパウダー、ベーキングパウダーを加えて混合し、そこに予め温めてとかしたバターを混合した後、30分間休ませた。生地をフィナンシェ型に注ぎ、上火200℃、下火170℃のオーブンで13分間焼成した。得られた実施例4のフィナンシェは良好な食感を有し、比較例4のフィナンシェに比べて、糖質24.9%カットのフィナンシェとなった。
(低糖質蒸しパン)
表9に従って、低糖質蒸しパンを作成した。すなわち、上白糖、トレハ、RSSを水に溶かしておき、卵白、生クリームを加えた後、薄力粉、ファイバージムRW、ベーキングパウダー、食塩、ノヴァザン80、スクラロース、シュガーエステルを一緒に篩い入れ、全材料をダマがなくなる程度を目安とし低速2分ミキシングした。得られた生地を30分ねかした後、カップ型(底なし)にグラシンカップをしき、生地重量100gで分注した後、1気圧の蒸気で15分蒸し上げた。得られた低糖質蒸しパンはソフトで不溶性食物繊維特有のボソボソ感が弱い蒸しパンだった。
表9に従って、低糖質蒸しパンを作成した。すなわち、上白糖、トレハ、RSSを水に溶かしておき、卵白、生クリームを加えた後、薄力粉、ファイバージムRW、ベーキングパウダー、食塩、ノヴァザン80、スクラロース、シュガーエステルを一緒に篩い入れ、全材料をダマがなくなる程度を目安とし低速2分ミキシングした。得られた生地を30分ねかした後、カップ型(底なし)にグラシンカップをしき、生地重量100gで分注した後、1気圧の蒸気で15分蒸し上げた。得られた低糖質蒸しパンはソフトで不溶性食物繊維特有のボソボソ感が弱い蒸しパンだった。
(低カロリー中華まん)
表10,11に従って低カロリー中華まんを作成した。得られた中華まんを常法に従って加温し、喫食したところ、実施例6は比較例6に比べてソフトな舌触りであり、粉っぽさが緩和されていた。
表10,11に従って低カロリー中華まんを作成した。得られた中華まんを常法に従って加温し、喫食したところ、実施例6は比較例6に比べてソフトな舌触りであり、粉っぽさが緩和されていた。
(蒲鉾)
表12に従って、揚げ蒲鉾を製造した。すなわち、冷凍すり身をフードカッターで5分間荒ずりし、食塩を添加して塩ずりを10分行い、でん粉、調味料類、及び氷水を加えて本ずりを10分間行った。得られた肉糊を一定形状に成型し、160℃の油で4分間の油調後冷却し、揚げ蒲鉾を得た。得られた揚げ蒲鉾は、良好な食感であった。
表12に従って、揚げ蒲鉾を製造した。すなわち、冷凍すり身をフードカッターで5分間荒ずりし、食塩を添加して塩ずりを10分行い、でん粉、調味料類、及び氷水を加えて本ずりを10分間行った。得られた肉糊を一定形状に成型し、160℃の油で4分間の油調後冷却し、揚げ蒲鉾を得た。得られた揚げ蒲鉾は、良好な食感であった。
(ソフトヨーグルト)
表13に従って、ソフトヨーグルトを作成した。すなわち、スターター以外の原料を攪拌しながら90℃まで加熱溶解した後、TKホモミキサーで5,000rpm1分間ホモジナイズした。得られた乳液を90℃10分間静置加熱した後、40℃まで冷却した。そこにスターターを添加して35℃17時間発酵させ、冷蔵庫で冷やしてソフトヨーグルトを得た。このソフトヨーグルトは官能的に違和感のない良好な製品だった。
表13に従って、ソフトヨーグルトを作成した。すなわち、スターター以外の原料を攪拌しながら90℃まで加熱溶解した後、TKホモミキサーで5,000rpm1分間ホモジナイズした。得られた乳液を90℃10分間静置加熱した後、40℃まで冷却した。そこにスターターを添加して35℃17時間発酵させ、冷蔵庫で冷やしてソフトヨーグルトを得た。このソフトヨーグルトは官能的に違和感のない良好な製品だった。
(食物繊維強化焼売)
食物繊維強化焼売を表14の配合に従って作成した。すなわち表14に示した配合原料を混合して具材とし、市販されている焼売用の皮4gに、具材25gを包餡した後、100℃、12分間常法に従って蒸し上げた。得られた焼売の粗熱を取り、急速冷凍を行って焼売製品とした。得られた焼売を常法に従って加温し、喫食したところ、実施例は比較例に比べてソフトな舌触りであり、粉っぽさが緩和されていた。
食物繊維強化焼売を表14の配合に従って作成した。すなわち表14に示した配合原料を混合して具材とし、市販されている焼売用の皮4gに、具材25gを包餡した後、100℃、12分間常法に従って蒸し上げた。得られた焼売の粗熱を取り、急速冷凍を行って焼売製品とした。得られた焼売を常法に従って加温し、喫食したところ、実施例は比較例に比べてソフトな舌触りであり、粉っぽさが緩和されていた。
生活習慣病対策として、食品の低カロリー化、並びに繊維成分の積極的な摂取を促すため、不溶性食物繊維を配合する食品を設計した際に、その欠点となる食感の粉っぽさを容易に改善できる方法として、希少糖含有シロップを利用することで不溶性食物繊維を配合する食品の利用を拡大させ、より良好な食感で健康に良い食品を食べたいという消費者のニーズに応えた新しい手段を提供するものである。
Claims (13)
- 食物繊維含量が30%以上である不溶性食物繊維と、希少糖含有シロップを配合していることを特徴とする食品の製造方法。
- 不溶性食物繊維の食物繊維含量が40%以上である請求項1に記載の食品の製造方法。
- 不溶性食物繊維の食物繊維含量が50%以上である請求項1又は2のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
- 不溶性食物繊維の食物繊維含量が60%以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
- 不溶性食物繊維がレジスタントスターチであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
- レジスタントスターチが架橋タイプである請求項5に記載の食品の製造方法。
- 希少糖含有シロップが、D−プシコースを0.5〜17質量%及びD−アロースを0.2〜10質量%含むシロップである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
- 希少糖含有シロップが、D−グルコース及び/若しくはD−フラクトースを原料とし、D−グルコース及び/若しくはD−フラクトース含量が55〜99質量%になるまでアルカリ異性化したシロップである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
- 不溶性食物繊維の含有量が食品総量の5%以上を占めることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
- 不溶性食物繊維の含有量が食品総量の10%以上を占めることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
- 不溶性食物繊維の含有量が食品総量の20%以上を占めることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
- 食品がベーカリー製品である請求項1〜11のいずれか一項に記載の食品の製造方法。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された食品。
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