(発明の概要)
本発明はゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する(例えば、増殖を阻害する)能力を予測する方法を提供する。本発明は、活性化されたMAPKシグナル伝達、野生型PI3Kシグナル伝達、または活性化されたMAPKシグナル伝達および野生型PI3Kシグナル伝達を有するがん細胞株が、ゼアラレノンアナログ化合物を用いた処置に対し感受性であるという発見を、少なくとも一部基礎としている。本発明は、サイトカイン(例えば、IL−8)のレベルまたは特定の他の応答マーカー(例えば、フォスフォERK、Cyclin D、フォスフォpRB、およびp27)のレベルが、被験者のがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いた処置に対し感受性であるか否かを決定するために用いられ得るという発見もまた、少なくとも一部基礎としている。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
ゼアラレノンアナログ化合物が被験者におけるがんを処置する能力を予測する方法であって、該方法は:
a)該被験者に由来するサンプルが、コントロールサンプルと比較して、活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定する工程;および
b)該サンプルが、コントロールサンプルと比較して、野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定する工程、を含み、
ここで、工程a)およびb)において決定される該サンプルにおける活性化されたMAPKシグナル伝達および野生型PI3Kシグナル伝達は、ゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を予測する、方法。
(項目2)
項目1の方法であって、ここで前記サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定する工程は、該サンプルにおいてBRAF遺伝子内の変異を同定する工程を含み、そしてここで該サンプルにおけるBRAF遺伝子内の変異の存在は活性化されたMAPKシグナル伝達の指標である、方法。
(項目3)
項目2の方法であって、ここでBRAF遺伝子内の前記変異が、V600E、G464E、G464V、G466A、G466E、G466V、G469A、G469E、E586K、F595L、G596R、L597V、L597R、L597SおよびV600Dからなる群から選択される、方法。
(項目4)
項目1の方法であって、ここで前記サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定する工程は、該サンプルにおいてBRAF活性を測定する工程を含み、そしてここでコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるBRAF活性の上昇は活性化されたMAPKシグナル伝達の指標である、方法。
(項目5)
項目1の方法であって、ここで前記サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定する工程は、該サンプルにおいてMEK1、MEK2、ERK1およびERK2からなる群から選択される一つまたはそれより多いタンパク質の活性を測定する工程を含み、そしてここでコントロールサンプルと比較して、該サンプル中の一つまたはそれより多い該タンパク質の活性における上昇は活性化されたMAPKシグナル伝達の指標である、方法。
(項目6)
項目1の方法であって、ここで前記サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定する工程は、該サンプルにおけるPTEN遺伝子の変異の状態を決定する工程を含み、そしてここで該サンプルにおいてPTEN遺伝子の変異が無いことは野生型PI3Kシグナル伝達の指標である、方法。
(項目7)
項目1の方法であって、ここで前記サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定する工程は、該サンプルにおける全AKTタンパク質のレベルと比較してまたはコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定する工程を含み、そしてここで該サンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは野生型PI3Kシグナル伝達の指標である、方法。
(項目8)
項目7の方法であって、ここでAKTリン酸化のレベルがウェスタンブロッティング、免疫組織化学(IHC)または蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって決定される、方法。
(項目9)
項目1の方法であって、ここで前記サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定する工程は、該サンプルにおけるAKTタンパク質の活性を測定する工程を含み、そしてここでコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるAKTタンパク質の活性の低から中程度のレベルは野生型PI3Kシグナル伝達の指標である、方法。
(項目10)
ゼアラレノンアナログ化合物が被験者におけるがんを処置する能力を予測する方法であって、該方法は:
a)該被験者に由来するサンプルが、BRAF遺伝子内の変異を提示するか否かを決定する工程;および
b)該サンプルにおける全AKTタンパク質のレベルと比較してまたはコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定する工程、を含み、
ここで、BRAF遺伝子内の変異の存在および工程b)において決定される該サンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を予測する、方法。
(項目11)
ゼアラレノンアナログ化合物が被験者におけるがんを処置する能力を予測する方法であって、該方法は:
a)該被験者に由来するサンプルが、BRAF遺伝子内の変異を提示するか否かを決定する工程;および
b)該サンプルが野生型PTEN配列を提示するか否かを決定する工程、を含み、
ここで、該サンプルにおけるBRAF遺伝子内の変異の存在および野生型PTEN配列は、ゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を予測する、方法。
(項目12)
前記被験者からのサンプルにおいてAKTタンパク質の活性を測定する工程をさらに含む項目11の方法であって、ここでコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるAKTタンパク質の活性の低から中程度のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の前記がんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を予測する、方法。
(項目13)
前記被験者からのサンプルにおける全AKTタンパク質のレベルと比較してまたはコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定する工程をさらに含む項目11の方法であって、ここで該サンプルにおける全AKTタンパク質のレベルと比較してまたはコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の前記がんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を予測する、方法。
(項目14)
ゼアラレノンアナログ化合物が被験者におけるがんを処置する能力を予測する方法であって、該方法は:
a)該被験者に由来するサンプルが、BRAF遺伝子内にV600E変異を提示するか否かを決定する工程;および
b)該サンプルにおける全AKTタンパク質のレベルと比較してまたはコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定する工程、を含み、
ここで、BRAF遺伝子内のV600E変異の存在および工程b)において決定される該サンプルにおけるリン酸化されたAKTの低から中程度のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を予測する、方法。
(項目15)
項目1、10、11および14の何れか一つの方法であって、ここで前記被験者由来の前記サンプルが腫瘍生検である、方法。
(項目16)
項目10または11の何れか一つの方法であって、ここでBRAF遺伝子内の前記変異がV600Eである、方法。
(項目17)
項目10または11の何れか一つの方法であって、ここでBRAF遺伝子内の前記変異がBRAFのキナーゼドメイン内の変異である、方法。
(項目18)
項目10または11の何れか一つの方法であって、ここでBRAF遺伝子内の前記変異が、V600E、G464E、G464V、G466A、G466E、G466V、G469A、G469E、E586K、F595L、G596R、L597V、L597R、L597SおよびV600Dからなる群から選択される、方法。
(項目19)
項目10または11の何れか一つの方法であって、ここで前記サンプルがBRAF遺伝子内に変異を提示するか否かを決定する工程が、該サンプルの、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、およびデオキシリボ核酸配列決定からなる群から選択される技術を用いて成し遂げられる、方法。
(項目20)
項目10または14の何れか一つの方法であって、ここで前記サンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質のレベルが、ウェスタンブロット、免疫組織化学(IHC)または蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって決定される、方法。(項目21)
項目10または14の何れか一つの方法であって、ここで前記サンプルにおける全AKTタンパク質のレベルと比較して、該サンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質のレベルが決定され、そしてここで該サンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質の前記低から中程度のレベルが、該サンプルにおける全AKTタンパク質のレベルと比較して約レベル1から約レベル4である、方法。
(項目22)
項目1、10、11および14の何れか一つの方法であって、ここで前記ゼアラレノンアナログ化合物が:
である化合物またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくはエステルである、方法。
(項目23)
項目1、10、11および14の何れか一つの方法であって、ここで前記ゼアラレノンアナログ化合物が:
である化合物またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくはエステルである、方法。
(項目24)
被験者におけるがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であるか否かを決定する方法であって、該方法は:
a)該ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に、該被験者から得られるサンプルにおけるサイトカインの発現レベルを測定する工程;
b)該ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に、該被験者から得られるサンプルにおける該サイトカインの発現レベルを測定する工程;
c)該ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプルにおける該サイトカインの発現レベルを、該ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプルにおける該サイトカインの発現レベルと比較する工程
を含み、ここで、該ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られる該サンプルにおける発現レベルと比較して、該ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られる該サンプルにおける発現レベルの低下は、該被験者の該がんが、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に感受性であることの指標である、方法。
(項目25)
項目24の方法であって、ここで工程a)およびb)においてサイトカインの発現レベルが、該サイトカインのmRNAのレベルを測定することによって測定される、方法。
(項目26)
項目24の方法であって、ここで工程a)およびb)においてサイトカインの発現レベルが、サイトカインタンパク質のレベルを測定することによって測定される、方法。
(項目27)
項目24の方法であって、ここで前記サイトカインがIL−8である、方法。
(項目28)
項目24の方法であって、ここで前記サイトカインがIL−6である、方法。
(項目29)
被験者におけるがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であるか否かを決定する方法であって、該方法は:
a)該ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に、該被験者から得られるサンプルにおける応答マーカーのレベルを測定する工程、ここで応答マーカーはフォスフォERK、Cyclin D1、フォスフォpRB、および(p27)からなる群から選択されるマーカーである;
b)該ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に、該被験者から得られるサンプルにおける該応答マーカーのレベルを測定する工程;
c)該ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られる該サンプルにおける該応答マーカーのレベルを、該ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られる該サンプルにおける該応答マーカーのレベルと比較する工程、
を含み、ここで該ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られる該サンプルにおける該応答マーカーのレベルと比較して、該ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られる該サンプルにおけるフォスフォERK、Cyclin D1、およびフォスフォpRBからなる群から選択される該応答マーカーのレベルの低下、または応答マーカー(p27)のレベルの上昇は、該被験者の該がんがゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であることの指標である、方法。
(項目30)
被験者におけるがんを処置する方法であって:
a)活性化されたMAPKシグナル伝達について、コントロールサンプルと比較して該被験者由来のサンプルの評価の結果を見きわめる工程および野生型PI3Kシグナル伝達について、コントロールサンプルと比較して該被験者由来のサンプルの評価の結果を見きわめる工程;ならびに
b)該評価の結果、該サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達および野生型PI3Kシグナル伝達を示す場合、該被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与する工程
を含む、方法。
(項目31)
項目1、10、11、14および30の何れか一つの方法であって、ここで前記がんがBRAFが変異したがんである、方法。
(項目32)
項目30の方法であって、ここで前記BRAFが変異したがんが、転移性メラノーマ、乳頭甲状腺癌、結腸直腸癌、および原発性脳腫瘍からなる群から選択される、方法。
(項目33)
項目1、10、11、14および30の何れか一つの方法であって、ここで前記がんがメラノーマ、甲状腺がん、結腸直腸がん、膵臓がん、脳腫瘍、卵巣がん、白血病、神経がん、神経膠腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、多発性骨髄腫およびB細胞リンパ腫からなる群から選択される、方法。
(項目34)
ゼアラレノンアナログ化合物が被験者におけるがんを処置する能力を予測するためのキットであって、該キットは:
a)サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定する工程のための試薬;および
b)該サンプルが、野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定する工程のための試薬、
を含む、キット。
(項目35)
項目34のキットであって、ここで前記サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定するための前記試薬が、BRAF変異を同定するためのプローブである、キット。
(項目36)
項目34のキットであって、ここで前記サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定するための前記試薬が、野生型PTEN配列を同定するためのプローブである、キット。
(項目37)
項目34のキットであって、ここで前記サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定するための前記試薬が抗体である、キット。
(項目38)
項目34のキットであって、ここで前記サンプルが野生型のシグナル伝達を提示するか否かを決定するための前記試薬がPTEN抗体である、キット。
(項目39)
ゼアラレノンアナログ化合物が被験者におけるがんを処置する能力を予測する方法であって、該方法は、該被験者由来のサンプルがBRAF遺伝子内の変異を提示するか否かを提示する工程を含み、ここでコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるBRAF遺伝子内の変異の存在は、ゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を予測する、方法。
(項目40)
項目39の方法であって、ここでBRAF遺伝子内の前記変異がV600Eである、方法。
(項目41)
項目39の方法であって、ここでBRAF遺伝子内の前記変異がBRAFのキナーゼドメイン内の変異である、方法。
(項目42)
項目39の方法であって、ここでBRAF遺伝子内の前記変異がV600E、G464E、G464V、G466A、G466E、G466V、G469A、G469E、E586K、F595L、G596R、L597V、L597R、L597SおよびV600Dからなる群から選択される、方法。
(項目43)
項目39の方法であって、ここで前記サンプルがBRAF遺伝子内に変異を提示するか否かを決定する工程が、該サンプルの、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、およびデオキシリボ核酸配列決定からなる群から選択される技術を用いて成し遂げられる、方法。
(項目44)
項目39の方法であって、ここで前記サンプルがBRAF遺伝子内に変異を提示するか否かを決定する工程が該サンプルにおけるBRAF活性を測定する工程を含み、そしてここでコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるBRAF活性の上昇はBRAF遺伝子内の変異の指標である、方法。
(項目45)
ゼアラレノンアナログ化合物が被験者におけるがんを処置する能力を予測する方法であって、該方法は、該サンプルにおける全AKTタンパク質のレベルと比較してまたはコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定する工程を含み、ここで該サンプルにおける全AKTタンパク質のレベルと比較してまたはコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を予測する、方法。
(項目46)
項目45の方法であって、ここでAKTリン酸化のレベルがウェスタンブロッティング、免疫組織化学(IHC)または蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって決定される、方法。
(項目47)
ゼアラレノンアナログ化合物が被験者におけるがんを処置する能力を予測する方法であって、該方法は、該被験者からのサンプルにおけるAKTタンパク質の活性を測定する工程を含み、ここでコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるAKTタンパク質の低から中程度の活性レベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を予測する、方法。
(項目48)
ゼアラレノンアナログ化合物が被験者におけるがんを処置する能力を予測する方法であって、該方法は、該被験者からのサンプルにおけるPTENの変異の状態を決定する工程を含み、ここでコントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるPTEN内に変異が存在しないことは、ゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を予測する、方法。
(項目49)
項目48の方法であって、ここで前記サンプルはPTEN内に変異が存在しないことを提示するか否かを決定する工程が、該サンプルの、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、およびデオキシリボ核酸配列決定からなる群から選択される技術を用いて成し遂げられる、方法。
(項目50)
ゼアラレノンアナログ化合物が被験者におけるがんを処置する能力を予測する方法であって、該方法はa)該被験者に由来するサンプルが、BRAF遺伝子内に変異を提示するか否かを決定する工程;およびb)コントロールサンプルと比較して、該サンプルにおけるAKTタンパク質の発現レベルを決定する工程、を含み、ここでBRAF遺伝子内の変異の存在および工程b)において決定されるAKTタンパク質の低から中程度の発現レベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が該被験者の該がんを処置する能力を予測する、方法。
BRAFの変異状態(例えばV600E)およびPTENの変異状態(フォスフォAKTレベルまたはAKT発現を通して、必要に応じ読み取り可能である)は、患者の選別に対して有用なマーカーとして同定された。変異BRAF、低から中程度のフォスフォAKTレベル、または変異BRAFおよび低から中程度のフォスフォAKTレベルを有する患者は、化合物106などのゼアラレノンアナログ化合物に対し反応することが予測される。一旦処置されたら、薬物処置への応答の初期の薬力学的兆候は、サイトカインのレベルの低下(血漿IL−6またはIL−8レベルの低下など)を測定することによって決定され得る。
フォスフォERK、サイクリンD1および/もしくはフォスフォpRBなどの薬力学的マーカーの低下、またはCDKインヒビターであるp27の上昇は、ゼアラレノンアナログ化合物を用いた処置への応答に対する、更なる代替マーカーを提供する。総合して、これらの知見は、ゼアラレノンアナログ化合物のためのバイオマーカープログラムを作成すること(これは患者の価値を高める戦略を提供する)と同様に、処置に対する追跡調査のための様式(薬力学的モニタリングによる薬物応答の初期の評価を有する)を作成することも可能にする。
一つの局面において、本発明はゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供する。この方法はa)被験者由来のサンプルが、コントロールサンプルと比較して活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定すること;およびb)このサンプルがコントロールサンプルと比較して野生型のPI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することを含む。ここで、a)およびb)の工程において決定される活性化されたMAPKシグナル伝達および野生型のPI3Kシグナル伝達は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
別の局面において、本発明はゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供する。この方法はa)被験者由来のサンプルが、BRAF遺伝子内の変異を提示するか否かを決定すること;およびb)このサンプル中の全AKTタンパク質レベルまたはコントロールサンプルと比較して、このサンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定することを含む。ここで、BRAF遺伝子内の変異の存在およびb)の工程において決定される、リン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
別の局面において、本発明はゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供する。この方法はa)被験者由来のサンプルが、BRAF遺伝子内の変異を提示するか否かを決定すること;およびb)コントロールサンプルと比較して、このサンプル中のAKTタンパク質の発現レベルを決定することを含む。ここで、BRAF遺伝子内の変異の存在およびb)の工程において決定される、AKTタンパク質の低から中程度の発現レベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
さらに別の局面において、本発明はゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供する。この方法はa)被験者由来のサンプルが、BRAF遺伝子内の変異を提示するか否かを決定すること;およびb)このサンプルが野生型PTEN配列を提示するか否かを決定することを含む。ここで、サンプル中のBRAF遺伝子内の変異の存在および野生型PTEN配列は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
一つの実施形態において、この方法は、被験者由来のサンプルにおけるAKTタンパク質の活性を測定することをさらに含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、このサンプルにおけるAKTタンパク質の低から中程度の活性レベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
別の実施形態において、この方法は、被験者由来のサンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを、このサンプルにおける全AKTタンパク質のレベルまたはコントロールサンプルと比較して決定することをさらに含む。ここで、このサンプルにおける全AKTタンパク質のレベルまたはコントロールサンプルと比較して、このサンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
別の局面において、本発明はゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供する。この方法はa)被験者由来のサンプルが、BRAF遺伝子内にV600E変異を提示するか否かを決定すること;およびb)このサンプル中の全AKTタンパク質のレベルまたはコントロールサンプルと比較して、このサンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定することを含む。ここで、BRAF遺伝子内のV600E変異の存在およびb)の工程において決定される、リン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
別の局面において、本発明はゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供する。この方法はa)被験者由来のサンプルが、BRAF遺伝子内にV600E変異を提示するか否かを決定すること;およびb)コントロールサンプルと比較して、このサンプル中のAKTタンパク質の発現レベルを決定することを含む。ここで、BRAF遺伝子内のV600E変異の存在およびb)の工程において決定される、AKTタンパク質の低から中程度の発現レベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
別の局面において、本発明はゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供する。この方法は、被験者由来のサンプルがBRAF遺伝子内に変異を提示するか否かを決定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、このサンプル中のBRAF遺伝子内の変異の存在は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
さらに別の局面において、本発明はゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供する。この方法は、被験者由来のサンプルにおけるリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを、このサンプル中の全AKTタンパク質のレベルまたはコントロールサンプルと比較して決定することを含む。ここで、このサンプル中の全AKTタンパク質のレベルまたはコントロールサンプルと比較して、このサンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
さらに別の局面において、本発明はゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供する。この方法は、被験者由来のサンプル中のAKTタンパク質の発現レベルを、コントロールサンプルと比較して決定することを含む。ここで、AKTタンパク質の低から中程度の発現レベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。一つの実施形態において、発現のレベルはmRNAのレベルを測定することによって決定される。別の実施形態において、発現のレベルはタンパク質のレベルでAKTのレベルを測定することによって決定される。
さらなる局面において、本発明はゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供する。この方法は、被験者由来のサンプル中のAKTタンパク質の活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、このサンプル中のAKTタンパク質の低から中程度の活性レベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
さらに別の局面において、本発明はゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供する。この方法は、被験者由来のサンプル中のPTENの変異の状態を決定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、このサンプル中のPTENが変異を有しないことは、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
一つの実施形態において、がんはBRAFが変異したがんである。別の実施形態において、BRAFが変異したがんは、転移性メラノーマ、乳頭甲状腺癌、結腸直腸癌、および原発性脳腫瘍からなる群から選択される。
別の実施形態において、がんは固形の腫瘍ならびに白血病、リンパ腫、および骨髄腫を含む血液学的悪性腫瘍からなる群から選択される。例えば、がんは、乳がん、メラノーマ、卵巣がん、甲状腺がん、膵臓がん、結腸直腸がん、脳腫瘍、神経がん、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、星状細胞腫などの神経膠腫、多形神経膠芽腫もしくは他のCNS腫瘍、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞リンパ腫(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫)、または多発性骨髄腫であり得る。
一つの実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物は、この化合物である:
別の実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物は、この化合物である:
BRAF遺伝子は、細胞質のセリン/スレオニンキナーゼであるBRAFをコードする。BRAF遺伝子内の体細胞変異は、ヒトのがんにおいて一般的である。多くのそのような変異は、コードされるタンパク質のキナーゼドメインに影響し(キナーゼドメイン変異)、そしてコードされる変異BRAFタンパク質のキナーゼ活性の上昇を導く。これらの変異は、RAS/RAF/MEK/ERK MAPKシグナル伝達経路の活性化を導き得る。
別の実施形態において、BRAF遺伝子内の変異は、キナーゼドメイン内の変異である。例えば、BRAF遺伝子内の変異は、BRAFのキナーゼ活性の上昇を導くキナーゼドメイン変異であり得る。別の実施形態において、BRAF遺伝子内の変異は、V600Eであり得る。さらに別の実施形態において、BRAF遺伝子内の変異は、V600E、G464E、G464V、G466A、G466E、G466V、G469A、G469E、E586K、F595L、G596R、L597V、L597R、L597SおよびV600Dからなる群から選択される。
一つの実施形態において、サンプルがBRAF遺伝子内の変異を提示するか否かを決定することは、サンプルの、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、およびデオキシリボ核酸配列決定からなる群から選択される技術を用いて成し遂げられる。
別の実施形態において、サンプルがBRAF遺伝子内の変異を提示するか否かを決定することは、サンプル中のBRAF活性(例えば、BRAFのタンパク質キナーゼ活性)を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、このサンプル中のBRAF活性の上昇は、BRAF遺伝子内の変異を示している。
別の実施形態において、AKTリン酸化のレベルは、ウェスタンブロット、免疫組織化学(IHC)、または蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって決定される。別の実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、サンプル中の全AKTタンパク質のレベルと比較して、約レベル1から約レベル4である。
一つの実施形態において、サンプルが、PTEN内に変異を有しないことを提示するか否かを決定することは、サンプルの、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、およびデオキシリボ核酸配列決定からなる群から選択される技術を用いて成し遂げられる。
一つの実施形態において、被験者由来のサンプルは腫瘍生検である。
別の実施形態において、サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のBRAF遺伝子内の変異を同定することを含む。ここで、サンプル中のBRAF遺伝子内の変異の存在は、活性化されたMAPKシグナル伝達を示す。活性化されたMAPKシグナル伝達を示すBRAF遺伝子内の変異は、コードされるタンパク質のキナーゼ活性を上昇させるキナーゼドメインの変異などの、機能獲得型変異を含む。さらに別の実施形態において、BRAF遺伝子内の変異は、V600E、G464E、G464V、G466A、G466E、G466V、G469A、G469E、E586K、F595L、G596R、L597V、L597R、L597SおよびV600Dからなる群から選択される。
別の実施形態において、サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のBRAFタンパク質キナーゼ活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のBRAF活性の上昇は、活性化されたMAPKシグナル伝達を示す。
別の実施形態において、サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のMEK1、MEK2、ERK1およびERK2からなる群から選択される一つまたはそれより多いタンパク質の活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のタンパク質の活性(例えば、タンパク質キナーゼ活性)の上昇は、活性化されたMAPKシグナル伝達を示している。
別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のPTEN遺伝子の変異の状態を決定することを含む。ここで、サンプル中のPTEN遺伝子内に機能喪失型変異が無いことは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。PTEN遺伝子(第10染色体上から欠失されるフォスファターゼおよびテンシンホモログともいわれる)は、タンパク質フォスファターゼ活性(セリン/スレオニン/チロシンフォスファターゼ)および脂質フォスファターゼ活性を有するタンパク質をコードしている。PTENは腫瘍抑制遺伝子であり、PI3K活性の負の調節因子である。PTEN遺伝子の体細胞変異は、様々なヒトのがんで発見されている。PTEN遺伝子内における機能喪失型変異は、同定されている。例えば、PTEN遺伝子のエキソン7および8は、(A)6リピートを含んでおり、そのような配列は変異の標的である(例えば、フレームシフト)。エキソン7の(A)6リピート内の1塩基対欠失、またはエキソン8の(A)6リピート内の1塩基対欠失はヒトのがんにおいて観察されている。これらの領域内のフレームシフトもまた、ヒトのがんにおいて観察されている(Guanti et al.、Human Mol.Gen.、9(2):283−287(2000)。PTEN遺伝子内の機能喪失型変異(例えば、欠失、挿入、点変異)は、PTENのタンパク質および/または脂質フォスファターゼ活性を低下させ得、PI3Kへの調節の解除およびその後のAKTの活性化が生じ得る。したがって、PTEN遺伝子内に機能喪失型変異が無いことまたは野生型のPTEN配列は、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定するために用いられ得る。反対に、PTEN内の機能喪失型変異の検出は、野生型PI3Kシグナル伝達を示すことにならない。
別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、コントロールと比較して、サンプル中のPTENプロモーターのDNA高度メチル化を検出することを含む。PTEN活性は、多くの原発性および転移性のヒトのがんにおいて、プロモーターメチル化サイレンシングによって失われ得る。これは腫瘍抑制遺伝子の不活性化に代わるメカニズムとして認識される現象である。(Carnero
et al.、Curr.Cancer Drug Targets、8(3):187−98(2008);Mirmohammadsadegh et al., Cancer Res.、66(13):6546−52(2006)もまた参照のこと)。メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(Hou et al.、Cancer.、113(9):2440−7(2008))または定量的位置メチル化分析(パイロシークエンシング)(Mirmohammadsadegh et al.、Cancer Res.、66(13):6546−52(2006))などのあらゆる適した方法が、DNA高度メチル化またはCpGアイランド高度メチル化を検出するため用いられ得る。
一つの実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中の全AKTタンパク質レベルと比較して、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定することを含む。ここで、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、コントロールサンプルと比較して、リン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定することを含む。ここで、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。いくつかの実施形態において、AKTリン酸化のレベルは、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学(IHC)または蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって決定される。
別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、コントロールサンプルと比較して、被験者由来のサンプル中のAKTタンパク質の発現レベルを決定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のAKTタンパク質の低から中程度の発現レベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。
別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のAKTタンパク質の活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のAKTタンパク質の低から中程度の活性レベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。
別の実施形態において、これらの方法の組合せが、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定するために用いられ得る。例えば、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、(a)サンプル中のPTEN遺伝子の変異の状態を決定すること、および/またはPTENプロモーターのDNA高度メチル化を検出すること;ならびに(b)サンプル中の全AKTタンパク質のレベルと比較して、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定すること;コントロールサンプルと比較して、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定すること;コントロールサンプルと比較して、サンプル中のAKTタンパク質の活性を測定すること;および/またはコントロールサンプルと比較して、被験者由来のサンプル中のAKTタンパク質の発現レベルを決定することを含み得る。
別の局面において、本発明は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんの増殖を阻害する能力を予測する方法を提供する。この方法は:a)コントロールサンプルと比較して、被験者由来のサンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定すること;b)コントロールサンプルと比較して、被験者由来のサンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中の活性化されたMAPKシグナル伝達および野生型PI3Kシグナル伝達は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんの増殖を阻害する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんの増殖を阻害する能力を予測する。
別の実施形態において、本発明は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんのアポトーシスの活性化を促進する能力を予測する方法を提供する。この方法は:a)コントロールサンプルと比較して、被験者由来のサンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定すること;b)コントロールサンプルと比較して、被験者由来のサンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中の活性化されたMAPKシグナル伝達および野生型PI3Kシグナル伝達は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんのアポトーシスの活性化を促進する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんのアポトーシスの活性化を促進する能力を予測する。
本発明は、被験者のがんを処置する種々の方法もまた提供する。いくつかの実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)本明細書に記載されているように、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法のステップを実行すること、および工程a)の結果がゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。他の実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)本明細書に記載されているように、被験者由来のサンプルの評価の結果を見きわめること、および工程a)の結果がゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。
本発明は、被験者のがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であるか否かを決定する方法もまた、提供する。一つの実施形態において、この方法は、a)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に、被験者から得られるサンプル中のサイトカインの発現レベルを測定すること:b)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に、被験者から得られるサンプル中のサイトカインの発現レベルを測定すること;c)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中のサイトカインの発現レベルを、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中のサイトカインの発現レベルと比較することを含む。ここで、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中の発現レベルと比較して、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中の発現レベルの低下は、被験者のがんが、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に感受性であることを示す。好ましい実施形態において、サイトカインはIL−6およびIL−8からなる群から選択される。
別の局面において、本発明は、被験者のがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であるか否かを決定する方法を提供する。この方法は:a)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に、被験者から得られるサンプル中の応答マーカーのレベルを測定すること、ここで応答マーカーはフォスフォERK、Cyclin D1、フォスフォpRB、およびp27からなる群から選択されるマーカーである;b)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に、被験者から得られるサンプル中の応答マーカーのレベルを測定すること;c)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中の応答マーカーのレベルを、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中の応答マーカーのレベルと比較することを含む。ここで、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中の応答マーカーのレベルと比較して、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中のフォスフォERK、Cyclin D1、およびフォスフォpRBからなる群から選択される応答マーカーのレベルの低下、または応答マーカーp27のレベルの上昇は、被験者のがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であることを示す。
別の局面において、本発明は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を評価するための試薬の使用に対し、向けられる。この使用は:a)コントロールサンプルと比較して、被験者由来のサンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定すること;およびb)コントロールサンプルと比較して、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することを含む。ここで、工程a)およびb)において決定される、サンプル中の活性化されたMAPKシグナル伝達および野生型PI3Kシグナル伝達は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示す。
別の局面において、本発明は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を評価するための試薬の使用に対し、向けられる。この使用は:a)被験者由来のサンプルがBRAF遺伝子内の変異を提示するか否かを決定すること;およびb)サンプル中の全AKTタンパク質のレベルまたはコントロールサンプルと比較して、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定することを含む。ここで、BRAF遺伝子内の変異の存在および工程b)において決定されるサンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示す。
別の局面において、本発明は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を評価するための試薬の使用に対し、向けられる。この使用は:a)被験者由来のサンプルがBRAF遺伝子における変異を提示するか否かを決定すること;およびb)このサンプルが野生型のPTEN配列を提示するか否かを決定することを含む。ここで、サンプル中のBRAF遺伝子における変異の存在および野生型のPTEN配列は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示す。
別の局面において、本発明は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を評価するための試薬の使用に対し、向けられる。この使用は:a)被験者由来のサンプルがBRAF遺伝子におけるV600E変異を提示するか否かを決定すること;およびb)サンプル中の全AKTタンパク質のレベルまたはコントロールサンプルと比較して、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定することを含む。ここで、BRAF遺伝子におけるV600E変異の存在および工程b)において決定されるリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示す。
別の実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)BRAF遺伝子における変異の存在に関し、被験者由来のサンプルの評価の結果を見きわめること、および評価の結果、サンプルがBRAF遺伝子における変異(例えば、BRAF遺伝子におけるV600E変異)を提示する場合;b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。
さらに別の実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)サンプル中の全AKTタンパク質のレベルまたはコントロールサンプルと比較して、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルに関して被験者由来のサンプルの評価の結果を見きわめること、および評価の結果、サンプルがリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルを提示することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。
さらなる実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)サンプル中の全AKTタンパク質のレベルまたはコントロールサンプルと比較して、サンプル中のAKTタンパク質の活性に関して被験者由来のサンプルの評価の結果を見きわめること、および評価の結果、サンプルがAKTタンパク質の低から中程度の活性レベルを提示することを示す場合;b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。
さらに別の実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)PTEN遺伝子の変異の状態に関して被験者由来のサンプルの評価の結果を見きわめること、および評価の結果、サンプルが野生型PTEN配列を提示することを示す場合;b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。
一つの実施形態において、がんはBRAFが変異したがんである。別の実施形態において、BRAFが変異したがんは、転移性メラノーマ、乳頭甲状腺癌、結腸直腸癌、および原発性脳腫瘍からなる群から選択される。
別の実施形態において、がんは固形の腫瘍ならびに白血病、リンパ腫、および骨髄腫を含む血液学的悪性腫瘍からなる群から選択される。例えば、がんは、乳がん、メラノーマ、卵巣がん、甲状腺がん、膵臓がん、結腸直腸がん、脳腫瘍、神経がん、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、星状細胞腫などの神経膠腫、多形神経膠芽腫もしくは他のCNS腫瘍、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞リンパ腫(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫)、または多発性骨髄腫であり得る。
一つの実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物はこの化合物である:
別の実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物はこの化合物である:
別の実施形態において、BRAF遺伝子内の変異はキナーゼドメイン内の変異である。別の実施形態において、BRAF遺伝子内の変異はV600Eである。さらに別の実施形態において、BRAF遺伝子内の変異はV600E、G464E、G464V、G466A、G466E、G466V、G469A、G469E、E586K、F595L、G596R、L597V、L597R、L597SおよびV600Dからなる群から選択される。
一つの実施形態において、サンプルがBRAF遺伝子内の変異を提示するか否かを決定することは、サンプルの、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、およびデオキシリボ核酸配列決定からなる群から選択される技術を用いて成し遂げられる。
別の実施形態において、サンプルがBRAF遺伝子内の変異を提示するか否かを決定することは、サンプル中のBRAF活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、このサンプル中のBRAF活性の上昇は、BRAF遺伝子内の変異を示している。
別の実施形態において、AKTリン酸化のレベルは、ウェスタンブロット、免疫組織化学(IHC)、または蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって決定される。別の実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、サンプル中の全AKTタンパク質のレベルと比較して、約レベル1から約レベル4である。
一つの実施形態において、サンプルが、PTEN内に変異を有しないことを提示するか否かを決定することは、サンプルの、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、およびデオキシリボ核酸配列決定からなる群から選択される技術を用いて成し遂げられる。
一つの実施形態において、被験者由来のサンプルは腫瘍生検である。
別の実施形態において、サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のBRAF遺伝子内の変異を同定することを含む。ここで、サンプル中のBRAF遺伝子内の変異の存在は、活性化されたMAPKシグナル伝達を示す。活性化されたMAPKシグナル伝達を示すBRAF遺伝子内の変異は、コードされるタンパク質のキナーゼ活性を上昇させるキナーゼドメインの変異などの、機能獲得型変異を含む。さらに別の実施形態において、BRAF遺伝子内の変異は、V600E、G464E、G464V、G466A、G466E、G466V、G469A、G469E、E586K、F595L、G596R、L597V、L597R、L597SおよびV600Dからなる群から選択される。
別の実施形態において、サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のBRAFタンパク質キナーゼ活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のBRAF活性の上昇は、活性化されたMAPKシグナル伝達を示す。別の実施形態において、サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のMEK1、MEK2、ERK1およびERK2からなる群から選択される一つまたはそれより多いタンパク質の活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のタンパク質の活性(例えば、タンパク質キナーゼ活性)の上昇は、活性化されたMAPKシグナル伝達を示している。
別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のPTEN遺伝子の変異の状態を決定することを含む。ここで、サンプル中のPTEN遺伝子内に機能喪失型変異が無いことは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。
一つの実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中の全AKTタンパク質レベルと比較して、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定することを含む。ここで、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、コントロールサンプルと比較して、リン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定することを含む。ここで、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。いくつかの実施形態において、AKTリン酸化のレベルは、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学(IHC)または蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって決定される。
別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のAKTタンパク質の活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のAKTタンパク質の低から中程度の活性レベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。
また別の局面において、本発明は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を評価するための試薬の使用に対し、向けられる。この使用は:a)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に、被験者から得られるサンプル中のサイトカインの発現レベルを測定すること;b)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に、被験者から得られるサンプル中のサイトカインの発現レベルを測定すること;c)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中の発現レベルを、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中の発現レベルと比較することを含む。ここで、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中のサイトカインの発現レベルと比較して、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中のサイトカインの発現レベルの低下は、被験者のがんが、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に感受性であることを示す。好ましい実施形態において、サイトカインはIL−6およびIL−8からなる群から選択される。
また別の局面において、本発明は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を評価するための試薬の使用に対し、向けられる。この使用は:a)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に、被験者から得られるサンプル中の応答マーカーのレベルを測定すること、ここで応答マーカーはフォスフォERK、Cyclin D1、フォスフォpRB、およびp27からなる群から選択されるマーカーである;b)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に、被験者から得られるサンプル中の応答マーカーのレベルを測定すること;c)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中の応答マーカーのレベルを、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中の応答マーカーのレベルと比較することを含む。ここで、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中の応答マーカーのレベルと比較して、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中のフォスフォERK、Cyclin D1、およびフォスフォpRBからなる群から選択される応答マーカーのレベルの低下、または応答マーカーp27のレベルの上昇は、被験者のがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であることを示す。
別の局面において、本発明は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測するためのキットを提供する。このキットは、サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定することのための試薬(例えばプローブまたは抗体)、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することのための試薬(例えばプローブまたは抗体)を含む。一つの実施形態において、サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定することのための試薬は、BRAF変異を同定するためのプローブである。別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することのための試薬は、野生型PTEN配列を同定するためのプローブである。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な記述および特許請求の範囲から明白になる。
(発明の詳細な記述)
RAS/RAF/MEK/ERK MAPKシグナル伝達経路は、多様な型の細胞における細胞増殖を調節している。この経路における変異は、形質転換された細胞株においてしばしば観察され、かつ、ヒトのがんと頻繁に関連付けられる(例えば、Wallace
et al.(2005)Current Topics in Medicinal
Chemistry5:215−219)。本発明の局面は、活性化されたMAPKシグナル伝達、野生型PI3Kシグナル伝達、または活性化されたMAPKシグナル伝達および野生型PI3Kシグナル伝達を有するがん細胞株が、ゼアラレノンアナログ化合物(例えば、化合物106)を用いる処置に対し感受性であるという発見を、少なくとも一部基礎としている。本発明は、とりわけ、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供する。
本発明の他の局面は、特定のタンパク質のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置への応答に対する代替マーカーとして用いられ得るという発見を少なくとも一部基礎としている。ならびに、本発明は被験者のがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であるか否かを決定することにおいて有用な方法を提供する。
特許請求の範囲の主題についてより明らかにかつ簡潔に記載するため、以下の定義は、本明細書で用いられる特異的な用語の意味としての手引きを提供することが意図される。
(定義)
本明細書で用いられる場合、単数形「ある、一つの(a、an)」および「この、その(the)」は、異なる明記がなされない限り、「少なくとも一つの(at least
one)」および「一つまたはそれより多い(one or more)」を含む。したがって、例えば、参考として「ある薬理学的に許容可能な担体」は、二つまたはそれより多い担体の混合物および一つの担体を含み得る。
本明細書で用いられる場合、用語「予測」、「予測する」、もしくは「予測すること」は、経過または結果の見込みの予想をいう。具体的には、「ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測すること」は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置するために有用であろうという予想をいう。例えば、この発明の予測方法は、サンプルが、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有するか否かを予想することに用いられ得る特異的な特性(例えば、活性化されたMAPKシグナル伝達、野生型PI3Kシグナル伝達、BRAF遺伝子内の変異、AKTリン酸化の状態、および/または野生型PTEN配列)を提示するか否かを決定することを提供する。
本明細書で用いられる場合、「処置する」、「処置」、「処置すること」もしくは「処置される」は、がんが治療される、治癒される、緩和される、軽減される、治される、改善される、または好転されることをいう。例えば、この発明の予測方法は、ゼアラレノンアナログ化合物が、特異的ながんもしくはがんの特異的なクラスの進行を、遅らせ得るまたは止め得るか否かを決定することにおいて有用である。
本明細書で用いられる場合、「被験者」は、哺乳類(ヒト、霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスまたは他のウシの、ヒツジの、ウマの、イヌの、ネコの、げっ歯動物のもしくはマウスの種を含むが、これらに制限されない)などの動物をいう。いくつかの実施形態において、被験者はヒトである。
本明細書で用いられる場合、用語「活性化されたMAPKシグナル伝達」は、MAPKシグナル伝達経路の活性もしくは機能の上昇に関連付けられるまたは影響されるシグナル伝達をいう(図1を参照のこと)。RAS/RAF/MEK/ERK MAPKシグナル伝達経路は、幅広い範囲のヒトの腫瘍からの細胞の、増殖および生存の調節におけるその中心的な役割に基づいて、抗がん治療に対する重要な経路としてみなされている。本発明の一つの実施形態において、サンプルが「活性化されたMAPKシグナル伝達」を提示するか否かを決定することは、サンプル中のBRAF遺伝子内の変異を同定することを含む。ここで、BRAF遺伝子内の変異(例えば、V600E)の存在は、活性化されたMAPKシグナル伝達を示す。別の実施形態において、サンプルが「活性化されたMAPKシグナル伝達」を提示するか否かを決定することは、サンプル中のBRAFタンパク質キナーゼ活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のBRAFタンパク質キナーゼ活性の上昇は、活性化されたMAPKシグナル伝達を示す。別の実施形態において、サンプルが「活性化されたMAPKシグナル伝達」を提示するか否かを決定することは、サンプル中のMAPKシグナル伝達経路に含まれるタンパク質(MEK1、MEK2、ERK1、および/もしくはERK2、またはこの経路に含まれているとして当該分野で周知のあらゆるタンパク質など、例えば図1において明らかにされているタンパク質)の活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のタンパク質の活性の上昇は、活性化されたMAPKシグナル伝達を示す。
本明細書で用いられる場合、用語「野生型PI3Kシグナル伝達」は、PI3Kシグナル伝達経路の通常の活性または機能に、関連付けられるシグナル伝達ををいう(図1を参照のこと)。PI3Kシグナル伝達経路は、細胞におけるアポートシスの調節におけるその中心的な役割に基づき、抗がん治療に対する重要な経路である。本発明の一つの実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、このサンプルが野生型PTEN配列を提示するか否かを決定することを含む。ここで、サンプル中のPTEN遺伝子内に変異を有しないことは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のPTENの活性(例えば、フォスファターゼ活性)を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のPTEN活性の低から中程度のレベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定することを含む。ここで、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のAKTタンパク質キナーゼの活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のAKTタンパク質のタンパク質キナーゼ活性の低から中程度のレベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。さらに別の実施形態において、野生型PI3Kシグナル伝達は、PI3Kシグナル伝達経路(AKT、BAD、BCL−XL、Caspase 9、PDK、AFXもしくは図1において明らかにされているあらゆるタンパク質を含む)に含まれるあらゆるタンパク質の活性または変異の状態を測定することによって決定され得る。
「サンプルが変異を提示するか否かを決定する方法」は、当該分野で利用可能な技術(例えば、サンプルのデオキシリボ核酸配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、逆転写酵素PCR分析、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、サザンブロット分析、またはウェスタンブロット分析)などのあらゆる適切な方法を用いて達成され得る。これらの技術は当業者に周知であり、かつ、Sambrook、J.et al.(1989)「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、(この全容が本明細書において援用される)に一般的に記述されている。サンプルが変異を提示するか否かを決定することは、変異の存在(例えば、キナーゼドメイン内)に関しての、遺伝子の全体または一部の検査を伴ない得る。
本明細書で用いられる場合、用語「BRAF遺伝子内の変異」は、BRAF機能の活性化もしくは獲得を導く一つまたはそれより多い変異を含むBRAF遺伝子配列をいう。BRAF変異は当該分野で周知である。BRAF変異の概説については、Davies et al.(2002)Nature417:949−954およびRodriguez−Viciana et al.(2006)Science311:1287−1290を参照のこと。BRAF遺伝子内の最も一般的な変異は、V600E変異(V599E変異としてもともとは記載された)であると言及されており、かつ、BRAF変異の90%を超える割合を占めている。上で引用されているDavies et al.およびRodriguez−Viciana et al.の文献中(各文献の全容が本明細書において援用される)に記載されているような、さらなる変異部位が当該分野において公知である。例えば、BRAF変異としてはG464E、G464V、G466A、G466E、G466V、G469A、G469E、E586K、F595L、G596R、L597V、L597R、L597SおよびV600Dが挙げられる。
本明細書で用いられる場合、「RAF」は、RAFタンパク質アイソフォームのRAF−1(C−RAF)、BRAFおよび/またはA−RAFを含む。
本明細書で用いられる場合、「ERK」あるいは「ERK1/2」は、リン酸化状態にかかわらず、細胞外シグナルに調節されるキナーゼERK1および/またはERK2をいう。「フォスフォERK1」あるいは「p−ERK」は、フォスフォERK1および/またはフォスフォERK2をいう。
本明細書で用いられる場合、「AKT」あるいは「AKTタンパク質」は、(リン酸化状態にかかわらず)AKT1、AKT2および/またはAKT3をいう。これらはタンパク質キナーゼのAKTファミリーの一員である。「フォスフォAKT」あるいは「p−AKT」は、フォスフォAKT1、フォスフォAKT2および/またはフォスフォAKT3をいう。
いくつかの実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルは、サンプル中の全AKTタンパク質のレベルと比較して決定される。他の実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルは、コントロールサンプルと比較して決定される。
野生型PI3Kシグナル伝達を有する細胞は、「リン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベル」を提示し得る。一方、活性化されたPI3Kシグナル伝達は、AKTのリン酸化を高める。いくつかの実施形態において、リン酸化されたAKTタンパク質のレベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を有する正常な組織中のリン酸化されたAKTのレベル(例えば、正常な組織サンプル中で観察されるフォスフォAKTのレベルから決定される範囲)などのコントロールサンプルと比較して決定される。これらの実施形態において、「リン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベル」は、正常な組織中に観察されるレベル(例えば、正常な組織サンプル中に観察される正常な範囲内で減少した値)と類似する。いくつかの実施形態において、リン酸化されたAKTのレベルは、他の被験者由来の腫瘍サンプル中のリン酸化されたAKTのレベルなどのコントロールサンプルと比較して決定される。例えば、種々の被験者由来の腫瘍サンプル中のリン酸化されたAKTのレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性となる低から中程度のレベルを明確に定めるために決定され得、そして目的の被験者のサンプルがこれらと比較される。
サンプル中の全AKTタンパク質のレベルと比較して決定されるとき、「リン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベル」は、例えば、約75%もしくはそれより少ない、約60%もしくはそれより少ない、約55%もしくはそれより少ない、約50%もしくはそれより少ない、約45%もしくはそれより少ない、約40%もしくはそれより少ない、約35%もしくはそれより少ない、約30%もしくはそれより少ない、約25%もしくはそれより少ない、約20%もしくはそれより少ない、約15%もしくはそれより少ない、約10%もしくはそれより少ない、約9%もしくはそれより少ない、約8%もしくはそれより少ない、約7%もしくはそれより少ない、約6%もしくはそれより少ない、約5%もしくはそれより少ない、約4%もしくはそれより少ない、約3%もしくはそれより少ない、約2%もしくはそれより少ない、または約1%もしくはそれより少ないAKTタンパク質がサンプル中でリン酸化されていることを示す。
一つの実施形態において、上記サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、このサンプル中の全AKTタンパク質のレベルの約1%から約75%である。別の実施形態において、上記サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、このサンプル中の全AKTタンパク質のレベルの約1%から約40%である。一つの実施形態において、上記サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、このサンプル中の全AKTタンパク質のレベルの約30%から約40%である。別の実施形態において、上記サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、このサンプル中の全AKTタンパク質のレベルの約1%から約10%;約1%から約20%;約10%から約50%;または約20%から約50%である。
リン酸化されたAKTタンパク質のレベルは、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学(IHC)、またはFISHなどのあらゆる適切な方法を用いて決定され得る。好ましい実施形態において、ウェスタンブロッティングが、リン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定するために用いられる。ウェスタンブロットを行った後、1から10に格付けをするシステムが、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルの特徴づけをするために、用いられ得る。各例において、サンプル中の全AKTタンパク質のレベルはレベル10が指定される。そして、この全AKTタンパク質のレベルは、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルと比較される。一つの実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルは、サンプル中の全AKTタンパク質の75%であり、そしてレベル7.5が指定される。別の実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTのレベルは、サンプル中の全AKTタンパク質の50%であり、そしてレベル5が指定される。別の実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTのレベルは、サンプル中の全AKTタンパク質の40%であり、そしてレベル4が指定される。別の実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTのレベルは、サンプル中の全AKTタンパク質の30%であり、そしてレベル3が指定される。別の実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTのレベルは、サンプル中の全AKTタンパク質の20%であり、そしてレベル2が指定される。別の実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTのレベルは、サンプル中の全AKTタンパク質の10%であり、そしてレベル1が指定される。別の実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTのレベルは、サンプル中の全AKTタンパク質の5%であり、そしてレベル0.5が指定される。
この格付けをするシステムが用いられるとき、「リン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベル」は、7.5またはそれより低いレベル(例えば、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2,1.5、1、0.5または0.1)に相当する。いくつかの実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルは、約レベル1から約レベル7.5、約レベル1から約レベル7、約レベル1から約レベル6、約レベル1から約レベル5、約レベル1から約レベル4、約レベル1から約レベル3、約レベル1から約レベル2、約レベル0.5から約レベル1、約レベル2から約レベル5、約レベル3から約レベル6、約レベル4から約レベル7または約レベル2から約レベル6である。
野生型PI3Kシグナル伝達を有する細胞は、「AKTタンパク質の低から中程度の発現レベル」を提示し得る。一方、活性化したPI3Kシグナル伝達は、AKT発現を高める。いくつかの実施形態において、AKTタンパク質の発現レベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を有する正常な組織中のAKTの発現レベル(例えば、正常な組織サンプル中で観察されるAKTの発現レベルから決定される範囲)などのコントロールサンプルと比較して決定される。これらの実施形態において、「AKTタンパク質の低から中程度の発現レベル」は、正常な組織中に観察されるレベル(例えば、正常な組織サンプル中に観察される正常な範囲内で減少した値)と類似する。いくつかの実施形態において、AKTの発現レベルは、他の被験者由来の腫瘍サンプル中のAKTの発現レベルなどのコントロールサンプルと比較して決定される。例えば、種々の被験者由来の腫瘍サンプル中のAKTの発現レベルは、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性となる低から中程度のレベルを明確に定めるために決定され得、そして目的の被験者のサンプルがこれらと比較される。
本明細書で用いられる場合、用語「野生型PTEN配列」は、PTEN機能における喪失を導くあらゆる変異を含まないPTEN配列または一つあるいはそれより多い変異のホットスポットについて調査されかつ調査が変異を明らかにしないPTEN配列をいう。100を超えるPTEN変異が同定されており、かつ当該分野で周知である。PTEN変異の概説については、Guanti et al.(2000)Human Molecular Genetics9(2):283−287(この全容が本明細書において援用される)を参照のこと。例えば、PTEN遺伝子配列のエキソン7および8は、(A)6リピートならびにモノヌクレオチドリピート配列を含む。これらのサイトは、がんにおける変異の頻繁なターゲットである。最も頻繁には、エキソン7またはエキソン8の(A)6リピート内の1塩基欠失が、未成熟での停止を引き起こし、このことが遺伝子機能の喪失を結果として導く。例えば、エキソン7および/またはエキソン8は、変異のホットスポットの例である。例えば、エキソン7および/またはエキソン8は配列決定され、もし変異が検出されないときは、その配列はこの試験の目的において「野生型PTEN配列」であると考えられ得る。
本明細書で用いられる場合、用語「BRAFが変異したがん」は、BRAF機能の活性化または獲得を導くBRAF遺伝子内の一つまたはそれより多い変異と関連付けられるがんをいう。ヒトのがんは、BRAF遺伝子内の体細胞ミスセンス変異をしばしば含む。(例えば、Davies et al.(2002)Nature417:949を参照のこと)。BRAF変異は、しばしばBRAFのキナーゼドメイン内に、優性変異であるV600E(BRAF変異の90%を占めている)を伴なって存在する。他のBRAF変異としてはG464E、G464V、G466A、G466E、G466V、G469A、G469E、E586K、F595L、G596R、L597V、L597R、L597SおよびV600Dが挙げられる。BRAF遺伝子内の変異の結果、BRAFが変異したがんは、上昇したキナーゼ活性を実証し、MEK(マイトジェンに活性化されるタンパク質キナーゼ/細胞外シグナルに調節されるキナーゼ)の活性化を導き、これがERKのリン酸化を引き起こし、そして下流の経路を活性化する。例示的なBRAFが変異したがんは、本明細書中でより詳細に論じられ、かつ、例えば、メラノーマ(例えば、転移性メラノーマ)、甲状腺がん(例えば、乳頭甲状腺癌)、結腸直腸がん(例えば、結腸直腸癌)脳腫瘍(例えば、原発性脳腫瘍、例えば、神経膠芽腫)、卵巣がん、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病および/または急性リンパ球芽性白血病(ALL))、乳がん、神経がん(例えば、神経膠腫、神経芽細胞腫または網膜芽細胞腫)、多発性骨髄腫、ならびにB細胞リンパ腫を含み得る。上に記載されているように、「BRAFに関連する」と指定されるがんは、これらの、BRAF内の特異的なタンパク質の変異との見かけ上の関連のため選び出されているがんである。
本明細書で用いられる場合、用語「耐性」は、被験者が時間とともにゼアラレノンアナログ化合物(例えば、化合物106)に対し反応が弱くなることをいう。それゆえ、いくつかの実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物への耐性は、この化合物に対して被験者の反応性が完全に無いことをいう(例えば、ここでの腫瘍の増殖の割合は阻害されない)。いくつかの実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物への耐性は、この化合物に対して被験者の反応性が部分的に無いことをいう(例えば、ここでの腫瘍の増殖の割合は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%または25%の腫瘍の増殖の阻害というように、とても低い程度でのみ阻害される)。ゼアラレノンアナログ化合物へ耐性であることの性質は非常に変化するものであり、種々の腫瘍が、種々の条件下で、与えられたゼアラレノンアナログ化合物に対して種々のレベルでの「耐性」を提示する。他の実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物に対する耐性は、化合物の以前の投与と比較して、化合物に対する被験者の完全なまたは部分的な反応性の無さをいう。
本明細書で用いられる場合、用語「処置に対し感受性」は、被験者のがんが、ゼアラレノンアナログ化合物(例えば、化合物106)を用いる処置に対し反応性があることをいう。いくつかの実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物へのがんの完全な反応性が観察される(例えば、ここでの腫瘍の増殖は阻害される)。いくつかの実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物へのがんの部分的な反応性が観察される(例えば、ここでの腫瘍の増殖の割合は、約95%、90%、85、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%または40%の腫瘍の増殖の阻害というように、いくらかの程度まで阻害される)。ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であることの性質は様々であり得、種々の腫瘍が、種々の条件下で、与えられたゼアラレノンアナログ化合物に対して種々のレベルでの「感受性」を提示する。一つの実施形態において、用語、処置に対し感受性は、ゼアラレノンアナログ化合物を用いるがんの有効な処置をいう。
本明細書で用いられる場合、用語「応答マーカー」は、がんがゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であることの指標として、客観的に測定されるおよび評価される遺伝子のまたはタンパク質のマーカーをいう。本発明の応答マーカーは、サイトカイン(例えば、IL−8、IL−1、IL−2、IL−6またはTNFα)であり得る。本発明の応答マーカーは、フォスフォERK、Cyclin D1、p27、フォスフォpRBまたはフォスフォAKTでもまたあり得る。応答マーカーのレベルは、定量PCR、ウェスタンブロッティングもしくはELISAの技術などのあらゆる適切な方法を用いて、mRNAまたはタンパク質のレベルでマーカーの発現を決定することによって測定され得る。
多数の値および範囲が、本発明の種々の実施形態との関連の中で列挙される(例えば、組成物中に存在する本発明の化合物の量)。ここで、範囲が与えられるとき(例えば、XからY)、この範囲は、異なる記述が明示的になされない限り、X、YおよびXとYの間で低下する全ての値を含むことが理解される。用語「約」が、本明細書でパラメーター、範囲および量とともに用いられる場合、そのパラメーターまたは量は、定められているパラメーターまたは量の±1%以内であることを意味する。
(予測の方法)
本発明は、ゼアラレノンアナログ化合物が、BRAFが変異したがん(例えば、メラノーマ(例えば、転移性メラノーマ)、甲状腺がん(例えば、乳頭甲状腺癌)、結腸直腸がん(例えば、結腸直腸癌)、脳腫瘍(例えば、原発性脳腫瘍、神経膠芽腫)、卵巣がん、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病および/または急性リンパ球芽性白血病(ALL))、乳がん、神経がん(例えば、神経膠腫、神経芽細胞腫または網膜芽細胞腫)、多発性骨髄腫、ならびにB細胞リンパ腫などのがんを処置する能力を予測するための方法を提供する。
一つの局面において、本発明の方法は、コントロールサンプルと比較して、がんを患っている被験者由来のサンプルが活性化したMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定することおよび/またはコントロールサンプルと比較して、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することを一般に含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中の活性化したMAPKシグナル伝達および/または野生型PI3Kシグナル伝達は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示し、これによってゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する。
RAS/RAF/MEK/ERK MAPKシグナル伝達経路(図1を参照のこと)は、種々の型の細胞における細胞増殖を調節していると考えられる。この経路における変異は、形質転換された細胞株中でしばしば観察され、かつ、ヒトのがんと頻繁に関連付けられる。Davies et al.(Nature417、949−954、2002)は、BRAF(RAFのアイソフォームをコードしている)体細胞ミスセンス変異が、全ての悪性メラノーマの67%、および全ての結腸直腸がんの12%に生じていることを以前に発見した。BRAF変異は、BRAFのキナーゼドメイン内の変異(BRAF変異の90%を占める優性変異のV600Eを有する)を一般的にコードする。他のBRAF変異としてはG464E、G464V、G466A、G466E、G466V、G469A、G469E、E586K、F595L、G596R、L597V、L597R、L597SおよびV600Dが挙げられる。BRAF遺伝子内の変異の結果、BRAFが変異したがんは、上昇したキナーゼ活性を実証し、MEK(マイトジェンに活性化されるタンパク質キナーゼ/細胞外シグナルに調節されるキナーゼキナーゼ)の活性化を導き、これがERKのリン酸化を引き起こし、そして下流の経路を活性化する。それゆえ、本発明は、がんを有する被験者由来のサンプル中のMAPKシグナル伝達のレベルを決定することによって、ゼアラレノンアナログ化合物ががんを処置する能力を予測するための新たな戦略を提供する。本発明は、がんを有する被験者由来のサンプルがBRAF変異を提示するか否かを決定することによって、ゼアラレノンアナログ化合物ががんを処置する能力を予測するための新たな戦略もまた提供する。
特定の実施形態において、本発明の方法は、ゼアラレノンアナログ化合物が活性化されたMAPKシグナル伝達を有する腫瘍(BRAF変異を有する腫瘍を含むが、これに限定されない)を処置する能力を予測するために有用である。3種のタンパク質が、活性化されたMAPKシグナル伝達(下の表1を参照のこと、Nature Reviews of Cancer:4、2004中の表1から改変)に対する標的として、最も注目を受けている。これらの3種のタンパク質における変異は、MEK−ERK経路の活性化を導き得る。具体的には、卵巣がん、甲状腺がん、結腸直腸がんおよびメラノーマは、高頻度でBRAF変異を示す。
(表1)
それゆえ、いくつかの実施形態において、サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、コントロールサンプル(例えば、同じ被験者由来の正常な組織)と比較して、サンプル中のBRAF遺伝子内の変異を同定することを含む。例えば、BRAF遺伝子内の変異は、V600E(V599Eとしてもともとは記載された)、G464E(G463Eとしてもともとは記載された)、G464V(G465Vとしてもともとは記載された)、G466A(G465Aとしてもともとは記載された)、G466E(G465Eとしてもともとは記載された)、G466V(G465Vとしてもともとは記載された)、G469A(G468Aとしてもともとは記載された)、G469E(G468Eとしてもともとは記載された)、E586K(E585Kとしてもともとは記載された)、F595L(F594Lとしてもともとは記載された)、G596R(G595Rとしてもともとは記載された)、L597V(L596Vとしてもともとは記載された)、L597R(L596Rとしてもともとは記載された)、L597S(L596Sとしてもともとは記載された)またはV600D(V599Dとしてもともとは記載された)であり得る。多くのこのような変異が公知であるので、このような変異を検出するときは、他の被験者の正常な組織由来の公知の野生型配列がコントロールとしてみなされ得る。
変異は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、逆転写酵素PCR分析、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、および遺伝子のデオキシリボ核酸配列決定などの、当該分野で公知の技術を含むあらゆる適切な方法によって決定され得る。これらの技術は当業者に周知であり、かつ、例えばSambrook、J.et al.(1989)「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press(この全容が本明細書において援用される)に記述されている。
サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のRAFタンパク質キナーゼ(例えば、RAF−1、A−RAF、BRAF)活性を測定することによってもまた達成され得る。ここでコントロールサンプルと比較して、サンプル中のRAFタンパク質キナーゼ活性の上昇は、活性化されたMAPKシグナル伝達を示す。他の実施形態において、上記サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のMAPKシグナル伝達経路に関与するタンパク質(MEK1、MEK2、ERK1、ERK2など、またはこの経路に含まれているとして当該分野で周知のあらゆるタンパク質、例えば図1において明らかにされているタンパク質)の活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のタンパク質の活性の上昇は、活性化されたMAPKシグナル伝達を示す。
タンパク質の活性は当該分野で公知のあらゆる種々の方法を含む、あらゆる適切な方法によって測定され得る。例えば、キナーゼ活性は、酵素が連結された免疫吸着剤アッセイ(ELISA)によって、放射性の手段(例えば、32Pもしくは33Pのγリン酸基への取込み)を用いて下流のタンパク質のリン酸化状態を決定することによって、免疫沈降、ブロッティング、およびゲル電気泳動を含む標識された抗体を使用するアッセイによって、免疫組織化学によって、または蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって測定され得る。キナーゼ活性を測定するための他の方法は、WO95/04136、EP0730740B1、米国特許第5,599,681号、および米国特許第6,942,987号(これらはキナーゼ活性を測定するための方法に関連するため、これらのそれぞれの全容は、本明細書において援用される)に記載されている。例えば、RAF−1またはBRAFキナーゼ活性はRAF−1免疫沈降キナーゼカスケードキットまたはBRAFキナーゼカスケードキット(Upstate Biotechnology(Millipore))を用いて決定され得る。ならびに、MEK/ERK活性は一対のMEK/ERK活性化アッセイ(例えば、Stokoe et al.(1994)Science264:1463−1467を参照のこと)を用いて測定され得る。ERK活性は、免疫沈降されたタンパク質を用いてまたはp42/p44MAPキナーゼ酵素アッセイキット(例えば、Yoon et al.(2004)Am.J.Physiol.Renal Physiol.286:F417−F424を参照のこと)を使用して決定され得る。
いくつかの実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、このサンプル中のPTEN遺伝子の変異の状態を決定することを含む。ここで、サンプル中のPTEN遺伝子内に機能喪失型変異が無いことは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。例えば、未成熟での停止を引き起こすエキソン7またはエキソン8の(A)6リピート内の1塩基欠失が検出されるならば、この変異の存在は、PI3Kシグナル伝達は野生型と比較して変化していることを示す。PTEN変異の存在または存在しないことは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、逆転写酵素PCR分析、一本鎖高次構造多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二本鎖分析、サザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、および遺伝子のデオキシリボ核酸配列決定を含む当該分野で公知の技術などの何れかの適切な方法によって決定され得る。
別の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを測定することを含む。ここで、サンプル中のリン酸化されたAKTの低から中程度のレベルは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。いくつの実施形態において、AKTリン酸化のレベルの測定は、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学または蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって決定される。
上で示されているように、いくつの実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルは、このサンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルとサンプル中の全AKTタンパク質のレベルとを比較して決定される。他の実施形態において、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルは、このサンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルとコントロールサンプルとを比較して決定される。
リン酸化されたAKTタンパク質のレベルは、ウェスタンブロッティング、免疫組織化学(IHC)、またはFISHなどのあらゆる適切な方法を用いて決定され得る。好ましい実施形態において、ウェスタンブロッティングが、リン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定するために用いられる。本明細書で説明されているように、ウェスタンブロットを行った後、1から10に格付けをするシステムが、サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルの特徴づけをするために用いられ得る。
他の実施形態において、サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定することは、サンプル中のAKTタンパク質の活性を測定することを含む。ここで、コントロールサンプルと比較して、サンプル中のAKTタンパク質の活性の上昇または低下が無いことは、野生型PI3Kシグナル伝達を示す。タンパク質の活性は種々の方法よって測定され得る。例えば、キナーゼ活性は、酵素が連結された免疫吸着剤アッセイ(ELISA)によって、放射性の手段(例えば、32Pもしくは33Pのγリン酸基への取込み)を用いて下流のタンパク質のリン酸化状態を決定することによって、免疫沈降、ブロッティング、およびゲル電気泳動を含む標識された抗体を使用するアッセイによって、免疫組織化学によって、または蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)によって測定され得る。キナーゼ活性を測定するための他の方法は、WO95/04136、EP0730740B1、米国特許第5,599,681号、および米国特許第6,942,987号に記載されている。
本発明の方法において有用なサンプルとしては、あらゆる組織、細胞、生検、体液サンプル、抽出物、画分またはそれらの成分(例えば、タンパク質もしくは核酸を含むサンプル)が挙げられる。例えば、サンプルは、組織、細胞、全血、血清、血漿、頬側を擦り取ったもの、唾液、脳脊髄液、尿、便、または気管支肺胞洗浄であり得る。一つの実施形態において、組織サンプルは、胃の組織サンプル、小腸の組織サンプル、大腸の組織サンプル、または皮膚のサンプルである。好ましい実施形態において、サンプルは腫瘍の生検サンプルであり、これは、腫瘍の生検由来の腫瘍の組織を含む。
サンプルはあらゆる適切な方法(例えば、生検を用いて、またはある領域を擦り取ることもしくはふき取ること、または体液を吸引するために針を用いることを含む)によって被験者から取得され得る。種々のサンプルを収集するための方法は、当該分野で周知である。被験者由来のサンプルは、そのような方法によって取得され得、かつ、必要に応じてさらなる処理の段階(例えば、凍結、分画、固定など)を受け得る。
MAPKシグナル伝達またはPI3Kシグナル伝達を検出することおよび定量化することに適した組織サンプルは、新鮮であり得、凍結され得、または当業者に公知の方法に従って固定され得る。適切な組織サンプルはさらなる分析のため、好ましくは切片にされ、そして顕微鏡のスライドの上に置かれる。また、固形のサンプル(すなわち組織サンプル)は、可溶化され得および/または均質化され得、そしてその後、可溶性抽出物として分析され得る。
一つの実施形態において、新たに取得された生検サンプルは、例えば、液体窒素またはジフルオロジクロロメタンを用いて凍結される。凍結されたサンプルは、切片にするために例えばOCTを用いてマウントされ、そしてクリオスタット内で連続的に切片にされる。連続的な切片は、ガラス顕微鏡スライド上に収集される。免疫組織化学染色のため、切片がスライド上に固定されることを確実にするため、スライドは例えばクロムミョウバン、ゼラチンまたはポリLリジンを用いて覆われ得る。別の実施形態において、サンプルは切片にする前に固定されそして包理される。例えば、組織サンプルは例えばホルマリン中で固定され得、段階的に脱水され得、そして例えばパラフィン中で包理され得る。フォスフォタンパク質が検出されるような実施形態においては、脱リン酸化のインヒビターがこの処理において用いられ得る。例えば、Phospho−GuardTMなどの試薬が、免疫組織化学のための標本またはサンプルを保存するために用いられ得る(例えば、Phospho−GuardTM IHC Fixation Kit(Targeted Molecular Diagnostics))。
当業者は、問題のアッセイに対する適切なコントロールサンプルを選択し得る。例えば、正常な組織のサンプルは、(例えば、同じ被験者由来の)腫瘍組織のコントロールとして機能し得る。いくつかの実施形態において、被験者由来のサンプルは、正常な被験者から得られたサンプルと比較される。いくつかの場合において、正常な被験者もしくは正常な組織から得られたサンプル由来の野生型の配列情報または応答マーカーの発現のレベルは、コントロールとして機能し得、被験者から別個のコントロールサンプルを取得する必要を回避する。例えば、被験者がBRAF遺伝子内に変異を提示するか否かを決定するとき、同じ被験者由来の正常な組織サンプルは、望む場合、コントロールとして用いられ得る。必要に応じて、V600E、G464E、G464V、G466A、G466E、G466V、G469A、G469E、E586K、F595L、G596R、L597V、L597R、L597SおよびV600DなどのBRAFを活性化する公知の変異の検出のため、他の被験者の正常な組織由来の公知の野生型配列は、コントロールとしてみなされ得る。本発明の方法において、各段階におけるコントロールサンプルは、適切なコントロールサンプルである。したがって、これらは、同じもしくは種々の組織および/または被験者由来であり得、かつ、問題の変異の状態、活性または応答マーカーを評価するために適切な様式で処理され得る。
一旦サンプルが取得されたら、MAPKまたはPI3Kシグナル伝達を(核酸のレベルもしくはタンパク質のレベルで)検出することおよび定量化することに適切であるあらゆる方法が用いられ得る。そのような方法は当該分野で周知であり、かつ、そのような方法としては、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、サザンブロット、免疫組織化学、ELISA(例えば、増幅されるELISA)、免疫沈降、免疫蛍光、フローサイトメトリー、免疫細胞化学、質量分析(例えば、MALDI−TOFおよびSELDI−TOF)、核酸ハイブリダイゼーション技術、核酸逆転写法、ならびに核酸増幅法が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、AKT、フォスフォAKT、BRAF、PTEN、RAF、BRAF、MEK1、MEK2、ERK1、ERK2、ERK、フォスフォERK、Cyclin D1、フォスフォpRB、およびp27タンパク質の発現または活性のレベルが、タンパク質のレベルで、例えば米国特許第6,982,318号、米国特許出願公開第2002/0150954号明細書、ならびに米国特許出願公開第2007/0020232号明細書(これらのそれぞれの全容が本明細書において援用される)に記載されているような、これらのタンパク質に特異的に結合する抗体を用いて検出される。
本発明は、被験者のがん(例えば、BRAFが変異したがん)を処置する種々の方法もまた提供する。いくつかの実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)本明細書に記載されているように、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法のステップを実行する工程、および工程a)の結果がゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。
他の実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)本明細書に記載されているように、被験者由来のサンプルの評価の結果を見きわめること、および工程a)の結果がゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を有することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。例えば、一つの実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)活性化されたMAPKシグナル伝達および野生型PI3Kシグナル伝達に関して、コントロールサンプルと比較して被験者由来のサンプルの評価の結果を見きめわること;および評価の結果が、サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達および野生型PI3Kシグナル伝達を提示することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。別の実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)サンプル中のBRAF遺伝子内の変異の存在およびリン酸化されたAKTタンパク質のレベルに関して、サンプル中の全AKTタンパク質のレベルまたはコントロールサンプルと比較して被験者由来のサンプルの評価の結果を見きめわること;および評価の結果が、サンプルがBRAF遺伝子内の変異(例えば、BRAF遺伝子内のV600E変異)およびリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルを提示することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。さらに別の実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)BRAF遺伝子内の変異の存在およびPTEN遺伝子の変異の状態に関して、被験者由来のサンプルの評価の結果を見きめわること;および評価の結果が、サンプルがBRAF遺伝子内の変異(例えば、BRAF遺伝子内のV600E変異)および野生型PTEN配列を提示することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。別の実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)BRAF遺伝子内の変異の存在に関して、被験者由来のサンプルの評価の結果を見きめわること;および評価の結果が、サンプルがBRAF遺伝子内の変異(例えば、BRAF遺伝子内のV600E変異)を提示することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。別の実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルに関して、サンプル中の全AKTタンパク質のレベルまたはコントロールサンプルと比較して被験者由来のサンプルの評価の結果を見きめわること;および評価の結果が、サンプルがリン酸化されたAKTタンパク質の低から中程度のレベルを提示することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。別の実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)サンプル中のAKTタンパク質の発現レベルに関して、コントロールサンプルと比較して被験者由来のサンプルの評価の結果を見きめわること;および評価の結果が、サンプルがAKTタンパク質の低から中程度の発現レベルを提示することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。さらに別の実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)サンプル中のAKTタンパク質の活性に関して、サンプル中のAKTタンパク質の活性またはコントロールサンプルと比較して被験者由来のサンプルの評価の結果を見きめわること;および評価の結果が、サンプルがAKTタンパク質の低から中程度の活性レベルを提示することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。さらに別の実施形態において、被験者のがんを処置する方法は、a)PTEN遺伝子の変異の状態に関して、被験者由来のサンプルの評価の結果を見きめわること;および評価の結果が、サンプルが野生型PTEN配列を提示することを示す場合、b)被験者へ治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含む組成物を投与することを含む。評価の結果を見きわめることは、被験者が処置から利益を得ることが可能か否かを決定することに関連した、サンプルの評価の結果の再検討を伴なう。
(がんがゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であるか否かを決定する方法)
本発明は、被験者のがんが、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる方法に対し感受性であるか否か決定する方法もまた提供する。一つの実施形態において、この方法は、a)処置前の被験者から得られるサンプル中の応答マーカーのレベルを測定すること、ここで応答マーカーは、サイトカイン、フォスフォERK、Cyclin D1、フォスフォpRB、またはp27である;b)処置後の被験者から得られるサンプル中の応答マーカーのレベルを測定すること;およびc)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中の応答マーカーのレベルを、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中の応答マーカーのレベルと比較することを含む。ここで、処置前に得られるサンプル中の応答マーカーのレベルと比較して、処置後に得られるサンプル中のサイトカイン(例えば、IL−6、IL−8)、フォスフォERK、Cyclin D1、もしくはフォスフォpRB応答マーカーのレベルの低下、または応答マーカーp27のレベルの上昇は、被験者のがんが、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であることを示す。一つの実施形態において、この方法は、処置に対する感受性を決定するため、一つまたはそれより多いこれらのマーカーのいずれかの使用を含む。応答マーカーのレベルは、発現レベルを測定することによって測定され得る。一つの実施形態において、応答マーカーのレベルは、タンパク質のレベルを測定することによって測定される。別の実施形態において、応答マーカーのレベルは、mRNAに対応するレベルを測定することによって測定される。いくつかの実施形態において、Ki−67または細胞増殖核抗原(PCNA)などの増殖マーカーの発現レベルがモニターされ、これによって、応答マーカーの発現の低下が、処置の結果としての細胞の増殖の低下と関連付けされ得る(例えば、Ki−67レベルは増殖が低下すると、低下する)。
一つの実施形態において、応答マーカーはサイトカインである。それゆえ、本発明は被験者のがんが、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる方法に対し感受性であるか否か決定する方法を提供する。この方法は、a)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に上記被験者から得られるサンプル中のサイトカインの発現レベルを測定すること;b)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に上記被験者から得られるサンプル中の上記サイトカインの発現レベルを測定すること;c)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中のサイトカインのレベルを、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中のサイトカインのレベルと比較することを含む。ここで、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中の発現レベルと比較して、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中の発現レベルの低下は、被験者のがんが、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であることを示す。一つの実施形態において、発現のレベルは、mRNAのレベルを測定することによって決定される。別の実施形態において、発現のレベルは、サイトカインのレベルを(タンパク質のレベルで)測定することによって決定される。
それゆえ、一つの局面において、本発明は、a)処置前の被験者から得られるサンプル中のサイトカイン(例えば、IL−8、IL−1、IL−2、IL−6またはTNFα)のレベルを測定すること;b)処置後の被験者から得られるサンプル中のサイトカインのレベルを測定すること;およびc)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中のサイトカインのレベルを、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中のサイトカインのレベルと比較することを含む。ここで、処置前に得られるサンプル中のサイトカインのレベルと比較して、処置後に得られるサンプル中のサイトカインのレベルの低下は、被験者のがんが、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であることを示す。
好ましい実施形態において、サイトカインはIL−8である。別の実施形態において、サイトカインはIL−6である。別の実施形態において、サイトカインはTNFαである。別の実施形態において、サイトカインはIL−1である。さらに別の実施形態において、サイトカインはIL−2である。別の実施形態において、サイトカインはGM−CSF、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、IL−12、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、MIP−1α、MIP−1β、TGF−β、TNFα、またはTNFβである。
一つの実施形態において、サンプル中のサイトカイン(例えば、IL−8、IL−1、IL−2、IL−6もしくはTNFα)の発現レベルは、PCR、標準のELISAまたはウェスタンブロッティングを用いて測定され得る。一つの実施形態において、サンプルは患者から採取された血漿または血液を含む。別の実施形態において、サンプルは腫瘍組織または生検サンプルを含む。
処置前に得られるサイトカインの発現レベルと比較して、処置後に得られるサンプル中のサイトカインの発現レベルの低下は、被験者のがんが、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であることを示す。一つの実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後の被験者から得られるサンプル中のサイトカインの発現レベルは、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前の被験者から得られるサンプル中のサイトカインの発現レベルと比較して、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%下げられる。
別の実施形態において、本発明は、被験者のがんが、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる方法に対し感受性であるか否か決定する方法を提供する。この方法は、a)処置前の被験者から得られるサンプル中の応答マーカーのレベルを測定すること、ここで応答マーカーは、フォスフォERK、Cyclin D1、フォスフォpRB、またはp27である;b)処置後の被験者から得られるサンプル中の応答マーカーのレベルを測定すること;およびc)ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前に得られるサンプル中の応答マーカーのレベルを、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に得られるサンプル中の応答マーカーのレベルと比較することを含む。ここで、処置前に得られるサンプル中の応答マーカーのレベルと比較して、処置後に得られる同じサンプル中のフォスフォERK、Cyclin D1、もしくはフォスフォpRB応答マーカーのレベルの低下、または応答マーカーp27のレベルの上昇は、被験者のがんが、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に対し感受性であることを示す。
一つの実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に被験者から得られるサンプル中の応答マーカー(例えば、フォスフォERK、CyclinD1、もしくはフォスフォpRB)のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前の被験者から得られるサンプルと比較して、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%下げられる。いくつかの実施形態において、フォスフォpRBまたはp−ERKのレベルは、それぞれ全フォスフォpRBまたは全p−ERKと比較して決定される。
一つの実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置後に被験者から得られるサンプル中の応答マーカー(例えば、p27)のレベルは、ゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置前の被験者から得られるサンプルと比較して、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、125%、150、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、または500%上げられる。
用語「処置後」は、ゼアラレノンアナログ化合物のあらゆる投与の後のあらゆる時間を含む。例えば、サンプルは投与前ならびに投与中および/もしくは投与後の一つまたはそれより多い時間点において得られ得る。例えば、薬物が、注入によって投与される場合、血漿中のサイトカインのレベルの決定のための血液サンプルは、注入前、注入終了の付近、注入の終了後8時間の付近、注入の終了後24時間の付近、注入の終了後48時間の付近、および/または注入の終了後72時間の付近で取得され得る。別の実施例において、腫瘍生検組織は処置前および処置後に取得され得、かつ、サイトカインレベルが(例えば、定量PCRなどのPCRによって)分析され得る。さらに別の実施例において、腫瘍生検組織は、処置前および処置後に取得され得、かつ、フォスフォERK、Cyclin D1、フォスフォpRB、および/またはp27などの応答マーカーのレベルが、(例えば、準定量IHCなどの免疫組織化学によって)決定され得る。例えば、薬物が注入によって投与される場合、生検は、注入前および注入後(例えば、注入後24から72時間)に取得され得る。処置のサイクルが用いられるとき、試料採取は、一回またはそれより多いサイクルにおいて行われ得る。
一つの実施形態において、サンプル中のサイトカインまたは応答マーカーのレベルは、ELISAによってサイトカインまたは応答マーカーのレベルを検査することによって測定され得る。別の実施形態において、サンプル中のサイトカインまたは応答マーカーのレベルは、ウェスタンブロッティングによって測定され得る。別の実施形態において、サンプル中のサイトカインまたは応答マーカーのレベルは、免疫組織化学によって測定され得る。
適切なサンプルおよび適切なサンプルを取得するための方法は、上に記載される。皮膚生検は代替組織として用いられ得、これらの応答マーカーのレベルにおける変化は、ゼアラレノンアナログ化合物を用いて処置される被験者の正常な皮膚サンプルにおいて、検出され得る。例えば、皮下組織のレベルまでの正常な皮膚の領域から得られる皮膚生検は、処置前および処置後に被験者から取得され得る。好ましくは、処置前および処置後の皮膚生検は、同じ解剖学的領域、しかし被験者の体の反対側(例えば、反対側の上部胸郭、鎖骨上の領域、上肢)から取得される。例えば、薬物が注入によって投与される場合、皮膚生検は、注入前および注入後(例えば、注入後24から72時間)に取得され得る。処置のサイクルが用いられるとき、試料採取は、一回またはそれより多いサイクル(例えば、一回目および/またはその後のサイクルにおける注入後)において行われ得る。一つの実施形態において、サンプルは正常な皮膚であり、かつ、応答マーカーはフォスフォERKおよびフォスフォpRBからなる群から選択される。
本発明の予測の方法の一般的原理は、適切な条件下で、かつ、サイトカインまたは応答マーカーおよびプローブが相互作用ならびに結合すること(つまり、反応混合物中で取除かれならびに/または検出され得る複合体を形成すること)を充分に許容する時間、サイトカインもしくは応答マーカーおよびプローブを含み得るサンプルまたは反応混合物を調製することを含む。これらのアッセイは、種々の方法で行われ得る。
例えば、そのようなアッセイを行うための方法は、プローブを固相支持体(基質ともいわれる)の上に固定させること、および反応終了時に固相上に固定されている標的のマーカー/プローブ複合体を検出することを含む。そのような方法の一つの実施形態において、被験者由来のサンプル(サイトカインまたは応答マーカーの存在および/または濃度について検査される)は、担体または固相支持体上に固定され得る。別の実施形態において、逆の状態が可能であり、そのような状態では、プローブが固相上に固定され得、かつ、被験者由来のサンプルが、固定されていないアッセイの成分として反応することが許容され得る。
アッセイの成分を固相に固定するための多くの確立された方法がある。これらは、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合によって動かないようにされているマーカーまたはプローブ分子を含むが、これらに限定されない。そのようなビオチニル化されたアッセイ成分は、当該分野で公知の技術(例えば、ビオチニル化キット、Pierce Chemicals、Rockford、IL)を用いて、ビオチンNHS(N−ヒドロキシコハク酸イミド)から調製され得、かつ、ストレプトアビジンで覆われた96穴プレート(Pierce Chemical)の穴の中に動かないようにされ得る。特定の実施形態において、動かないようにされたアッセイ成分を有する表面は事前に準備され得、そして保存され得る。このようなアッセイに適した他の担体または固相支持体は、マーカーもしくはプローブが属する分子のクラスと結合することが可能なあらゆる物質を含む。周知の支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然のおよび変えられたセルロース、ポリアクリルアミド、ハンレイ岩、ならびにマグネタイトが挙げられるが、これらに限定されない。
上で述べられている手法を用いるアッセイを行うために、動かないようにされていない成分が、第二の成分が固定されている固相に添加される。反応が完了した後、複合体にされていない成分は、形成されたいずれの複合体も固相上で動かないように残るような条件下で、(例えば、洗浄によって)除去され得る。固相に固定されたサイトカインまたは応答マーカー/プローブ複合体の検出は、本明細書で概説されている多数の方法において成し遂げられ得る。
好ましい実施形態において、プローブは、固定されていないアッセイ成分である場合、本明細書で議論される検出可能な標識を用いて、直接または間接的に、アッセイの検出および読み取りの目的のため標識され得る。かつ、それらは当業者で周知である。
マーカーもしくはプローブいずれかの成分のさらなる操作または標識無しに、例えば蛍光エネルギー移動の技術(例えば、Lakowicz et al.、米国特許第5,631,169;Stavrianopoulos、et al.、米国特許第4,868,103号を参照のこと)を利用することによって、サイトカインまたは応答マーカー/プローブ複合体形成を直接検出することもまた可能である。第一の「ドナー」分子上にフルオロフォア標識が選択され、それが適切な波長の入射光を用いて励起するとき、そこで放出される蛍光エネルギーは、第二の「アクセプター」分子上の蛍光標識によって吸収され得る。そして、吸収されたエネルギーのため、蛍光を発することが可能となる。この代わりに、「ドナー」タンパク質分子は、トリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを単純に利用し得る。標識は、光の種々の波長を放出する標識が選択される。そのような「アクセプター」分子標識は、「ドナー」の標識とは見分けられ得る。標識間でのエネルギー移動の効率は、離れている分子の距離に関連されるので、分子間の空間的関係は検査され得る。分子間での結合が起こる状況においては、アッセイにおける「ドナー」分子標識の蛍光の放出は、最大値であるはずである。FET結合事象は、当該分野で周知である標準の蛍光の検出手法で(例えば、蛍光光度計を用いて)、利便良く測定され得る。
別の実施形態において、プローブがサイトカインまたは応答マーカーを認識する能力の決定は、いすれかのアッセイ成分を標識することなく、リアルタイムBiomolecular Interaction Analysis(BIA)(例えば、Sjolander、S.およびUrbaniczky、C.、1991、Anal.Chem.63:2338−2345およびSzabo et al.、1995、Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705を参照のこと)などの技術を利用して達成され得る。本明細書で用いられる場合、「BIA」または「表面プラズモン共鳴」は、いずれの相互作用するものへの標識無しに、リアルタイムで生体分子特異的な相互作用を研究するための技術である(例えば、BIAcore)。結合の表面での質量の変化(結合の事象を示している)は、表面付近の光の屈折率の変化(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学的現象)となり、生物学的分子間でのリアルタイムの反応を示すものとして用いられ得る検出可能なシグナルを生じる。
また、別の実施形態において、類似している予測アッセイは、液相中の溶質として、サイトカインまたは応答マーカーおよびプローブを用いて行われ得る。そのようなアッセイにおいて、複合体にされているサイトカインまたは応答マーカーおよびプローブは、多数のあらゆる標準の技術(分画遠心分離(differential centrifugation)、クロマトグラフィー、電気泳動ならびに免疫沈降が挙げられるが、これらに限定されない)によって複合体にされていない成分から分離される。分画遠心分離において、サイトカインまたは応答マーカー/プローブ複合体は、それらの異なる大きさおよび密度に基づいた複合体の異なる沈降平衡のため、一連の遠心の段階を通して、複合体にされていないアッセイ成分から分離され得る(例えば、Rivas、G.、およびMinton、A.P.、1993、Trends Biochem Sci.18(8):284−7を参照のこと)。標準のクロマトグラフィーの技術もまた、複合体にされていない分子から複合体にされている分子を分離するために利用され得る。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーは大きさに基づき、かつカラムの型における適切なゲルろ過樹脂の利用を通して分子を分離する(例えば、相対的に大きな複合体は、相対的に小さな複合体にされていない分子から分離され得る)。同様に、複合体にされていない成分と比較して、サイトカインまたは応答マーカー/プローブ複合体の相対的に異なった電荷の性質は、例えばイオン交換クロマトグラフィー樹脂を通して、複合体にされていない成分から複合体を分けるために活用され得る。そのような樹脂およびクロマトグラフィー技術は、当業者に周知である(例えば、Heegaard、N.H.、1998、J.Mol.Recognit.Winter 11(1−6):141−8;Hage、D.S.、およびTweed、S.A. J Chromatogr B Biomed Sci Appl 1997 Oct10;699(1−2):499−525を参照のこと)。ゲル電気泳動もまた、結合されていない成分から結合されたアッセイ成分を分離するために使用され得る(例えば、Ausubel et al.、ed.、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、New York、1987−1999を参照のこと)。この技術において、タンパク質もしくは核酸の複合体は、例えば、大きさまたは電荷に基づいて分離される。電気泳動工程の間に相互作用の結合を維持するために、非変性ゲルマトリックス物質、および還元剤がない条件が通常好まれる。特定のアッセイおよびその成分に対する適切な条件は、当業者に周知である。
特定の実施形態において、サイトカインまたは応答マーカーのmRNAのレベルは、当該分野で公知の方法を用いて、被験者由来のサンプルにおいて、インサイチューおよびインビトロ両方の型によって決定され得る。多くの発現検出方法が単離されたRNAを使用する。インビトロの方法のために、mRNAの単離に対して選別しないあらゆるRNA単離技術が被験者由来の組織からのRNAの精製のために用いられ得る(例えば、Ausubel et al.、ed.、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、New York 1987−1999を参照のこと)。さらに、組織サンプル中の大きな分子は、例えば、Chomczynskiの一段階のRNA分離処理(1989,米国特許第4,843,155号)などの当業者に周知の技術を用いて容易に処理され得る。
単離されたmRNAは、ハイブリダイゼーションアッセイ(サザンもしくはノーザン分析が挙げられるが、これらに限定されない)または増幅アッセイ(ポリメラーゼ連鎖反応分析(例えば、定量PCR)およびプローブアッセイが挙げられるが、これらに限定されない)において用いられ得る。mRNAレベルを検出するための一つの好ましい診断上の方法は、単離されたmRNAと、検出される遺伝子によってコードされているmRNAとハイブリダイズし得る核酸分子(プローブ)とを接触させることを含む。核酸プローブは、例えば、少なくとも7、15、30、50、100、250もしくは500ヌクレオチドの長さであり、かつ本発明のマーカーをコードするmRNAもしくはゲノムDNAに対し、ストリンジェント条件下で特異的にハイブリダイズするために充分であるオリゴヌクレオチド、全長cDNA、またはそれらの一部であり得る。本発明の診断アッセイにおいて用いるための他の適したプローブは、本明細書で記載される。mRNAとプローブのハイブリダイゼーションは、問題になっているサイトカインまたは応答マーカーが発現されていることを示す。
一つの型において、mRNAは固相上に動かないようにされ、かつ、例えば単離されたRNAをアガロースゲル上で移動させることおよびニトロセルロースなどの膜にゲルからmRNAを移動させることによって、プローブと接触させられる。他の型において、プローブは固相上に動かないようにされ、かつmRNAはプローブと、例えばAffymetrix遺伝子チップアレイ中で接触させられる。当業者は、公知のmRNA検出方法を、本発明のマーカーによってコードされているmRNAのレベルを検出することにおける使用に、容易に適合させ得る。
サンプル中のサイトカインもしくは応答マーカーのmRNAレベルを決定するための他の方法は、例えばrtPCR(Mullis、1987、米国特許第4,683,202号に記載の実験の実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:189−193)、自家持続性配列複製(Guatelli et al.、1990、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、転写増幅システム(Kwoh et al.、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1178)、Qβレプリカーゼ(Lizardi et al.、1988、Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi et al.、米国特許第5,854,033号)またはあらゆる他の核酸増幅方法による、核酸増幅の処理(その後、当業者において周知である技術を用いて増幅された分子が検出される)を含む。これらの検出の案は、核酸分子が非常に少ない数で存在している場合、核酸分子の検出に特に有益である。本明細書で用いられるように、増幅プライマーは、遺伝子の5’または3’領域(それぞれプラスおよびマイナス鎖、また逆も真)にアニールし得、かつその間の短い領域を含み得る一対の核酸分子として定義される。一般に、増幅プライマーは、長さ約10から30ヌクレオチドに由来し、かつ長さ約50から200ヌクレオチド由来の領域を脇に配置している。適切な条件下でかつ適切な試薬を有するとき、そのようなプライマーは、プライマーの脇のヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能にする。
インサイチューの方法のために、mRNAは、検出前にサンプル(例えば、腫瘍細胞)から単離されることを必要としない。そのような方法において、細胞または組織サンプルは、公知の組織学的方法を用いて調製/処理される。そして、サンプルは支持体上(典型的にはガラススライド)に動かないようにされ、そしてマーカーをコードするmRNAとハイブリダイズし得るプローブと接触させられる。
サイトカインまたは応答マーカーの絶対的な発現レベルに基づいて決定を行うことの代替として、決定はサイトカインまたは応答マーカーの標準化された発現レベルに基づき得る。発現レベルは、サイトカインまたは応答マーカーではない遺伝子(例えば、恒常的に発現されているハウスキーピング遺伝子)の発現と比較することによるマーカーの絶対的な発現レベルの補正によって標準化され得る。標準化に適した遺伝子としては、アクチン遺伝子などのハウスキーピング遺伝子、または上皮細胞特異的遺伝子が挙げられる。この標準化は、一つのサンプル(例えば、がんを有する被験者由来のサンプル)における発現レベルを他のサンプル(例えば、がんを有しない被験者由来のサンプル)と比較すること、または種々の供給源由来のサンプル間で比較することを可能にする。
あるいは、発現レベルは相対的発現レベルとして提供され得る。例えば、マーカーの相対的発現レベルを決定するために、サイトカインもしくは応答マーカーの発現のレベルは、問題になっているサンプルの発現レベルの決定の前に、一つまたはそれより多いサンプル(例えば、10個またはそれより多い正常な単離物対がん細胞単離物、好ましくは50個またはそれより多いサンプル)について決定され得る。多数のサンプルにおいて検査される各遺伝子の平均発現レベルは決定され、そしてこれは、正常細胞対がん細胞におけるサイトカインまたは応答マーカーのための基線の発現レベルとして用いられる。試験サンプルについて決定されるサイトカインまたは応答マーカーの発現レベル(発現の絶対的レベル)は、その後、そのサイトカインまたは応答マーカーについて得られる平均発現値によって割られる。これは、相対的発現レベルを提供する。
本発明の別の実施形態において、サイトカインまたは応答マーカーは検出される。本発明のサイトカインもしくは応答マーカータンパク質を検出するための好ましい物質は、そのようなタンパク質またはそれらの断片と結合することが可能な抗体、好ましくは検出可能な標識を有する抗体である。抗体は多クローン性、またはより好ましくは単一クローン性であり得る。完全な抗体、またはその断片(例えば、Fab)もしくはその誘導体(例えばF(ab’)2)が用いられ得る。用語「標識される」は、プローブまたは抗体に関して、検出可能な物質とプローブまたは抗体を連結すること(すなわち物理的につなぐこと)によってプローブまたは抗体を直接標識すること、および直接標識されている他の試薬との反応性によってプローブまたは抗体を間接に標識することを含むことが意図される。間接標識することの実施例は、蛍光で標識された二次抗体を用いる一次抗体の検出、および末端がビオチンで標識されているDNAプローブ(蛍光で標識されたストレプトアビジンを用いて検出され得る)を含む。
がん細胞由来のタンパク質は、当業者に周知の技術を用いて単離され得る。タンパク質の使われている単離方法は、例えば、HarlowおよびLane(HarlowおよびLane、1988、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)に記載されているような方法であり得る。
種々の型が、サンプルが与えられた抗体に結合するタンパク質を含むか否かを決定するために使用され得る。そのような型の実施例としては、酵素免疫測定法(EIA)、放射性免疫測定法(RIA)、ウェスタンブロット分析および酵素が連結された免疫吸着剤アッセイ(ELISA)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、公知のタンパク質/抗体検出方法を、がん細胞が本発明のマーカーを発現しているか否かを決定することにおける使用に、容易に適合させ得る。
一つの型において、抗体、または抗体の断片もしくは誘導体は、発現されたタンパク質を検出するため、ウェスタンブロット、免疫組織化学または免疫蛍光技術などの方法において用いられ得る。そのような使用において、抗体またはタンパク質のいずれかを固体支持体上に動かないようにすることが一般的に好ましい。適切な固相支持体または担体は、抗原もしくは抗体と結合することが可能なあらゆる支持体を含む。周知の支持体または担体としては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然のおよび変えられたセルロース、ポリアクリルアミド、ハンレイ岩、ならびにマグネタイトが挙げられる。
当業者は、抗体または抗原と結合するための多くの他の適切なの担体を知っており、そのような支持体を、本発明を用いる使用に適合させることが可能である。例えば、腫瘍生検組織から単離されるタンパク質を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動上において移動させ得、かつニトロセルロースなどの固相支持体上に動かないようにさせ得る。その後支持体は適切な緩衝液を用いて洗浄され得、検出し得る標識された抗体を用いる処置がされ得る。固相支持体は、その後、結合されていない抗体を除去するために緩衝液を用いて2回洗浄され得る。固体支持体上に結合された標識の量は、その後、通常の手法によって検出され得る。
(ゼアラレノンアナログ化合物)
本発明は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測するための方法に対し、向けられる。ゼアラレノンアナログ化合物は当該分野で周知であり、かつ、2007年7月25日に出願された米国出願番号第60/951,901号、2007年7月25日に出願された60/951,906号、2008年7月25日に出願された米国出願番号第12/180,408号、2007年7月25日に出願された米国出願番号第60/951,892号、2008年7月25日に出願された米国出願番号第12/180,423号、米国特許出願第10/507,067号、米国出願公開第2004/0224936号、GB323845、EP606044、WO00/38674、JP840893、WO96/13259、米国特許第5,728,726号、米国特許第5,674,892号および米国特許第5,796,910号にて開示されているものを含む。上記出願のそれぞれの全容が本明細書において援用される。最近、ゼアラレノンアナログ化合物が特有の複数キナーゼ阻害プロフィールを有すること、および血液脳関門を通り抜け得ることが発見された。このことは、特異的ながんに対して有益であり得る。例えば、ゼアラレノンアナログ化合物は、MEK1およびMEKK1、増殖因子受容体チロシンキナーゼ(例えば、FLT−3、TRKB、EPHA2)、ABLチロシンキナーゼ、ならびにPAN−SRCチロシンキナーゼファミリーの一員(例えば、C−src、Fyn、Lyn、Lck、Yes)を含むMAPKKを阻害し得る。
いくつかの実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物は化学式(I):
の化合物またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくはエステルであり、ここで
R
3は、−NHR
1であり、かつR
1は、0、1、もしくは2個のヒドロキシ部分によって置換されたC
1−C
3アルキルである。
いくつかの実施形態において、R3は非置換型C1−3アルキルアミノである。いくつかの実施形態において、R3はメチルアミノである。他の実施形態において、R3はエチルアミノである。いくつかの実施形態において、R3は1個のヒドロキシ部分によって置換されたC1−3アルキルアミノである。いくつかの実施形態において、R3は2個のヒドロキシ部分によって置換されたC1−3アルキルアミノである。ヒドロキシ部分は、C1−3アルキル鎖におけるあらゆる数の炭素上であり得る。さらに、1より多い数のヒドロキシ部分は、C1−3アルキル鎖の一つの炭素上であり得る。いくつかの実施形態において、アルキル鎖の2−炭素上にヒドロキシル部分がある。いくつかの実施形態において、R3はヒドロキシエチルアミノ(例えば、2−ヒドロキシエチルアミノ)である。他の実施形態において、R3はジヒドロキシプロピルアミノ(例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルアミノ)である。いくつかの実施形態において、C1−3アルキルは、非環式のC1−3アルキル鎖である。
本明細書で用いられる場合、「アルキル」基は、直鎖アルキル基、環式アルキル基(または「シクロアルキル」もしくは「脂環式」もしくは「炭素環式」基)(例えば、シクロプロピル)、および分岐鎖アルキル基(例えば、イソプロピル)を含む、1個またはそれより多い数の炭素原子を有する飽和炭化水素を包含する。
いくつかの実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物は:
およびそれらの薬学的に許容可能な塩またはプロドラッグからなる群から選択される少なくとも一つの化合物である。
ゼアラレノンアナログ化合物は一つまたはそれより多い不斉中心を含み得、かつ、そのため、例えば、立体異性体および/またはジアステレオマーなどの種々の異性体において存在し得る。そのため、ゼアラレノンアナログ化合物およびゼアラレノンアナログ化合物を含む薬学的組成物は、個々の鏡像異性体、ジアステレオマーまたは幾何異性体の型であり得、または立体異性体の混合物の型であり得る。特定の実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物はエナンチオピュア(enantiopure)な化合物であり得る。特定の他の実施形態において、立体異性体またはジアステレオマーの混合物が、本発明の方法において用いられ得る。
異なる明記がなされない限り、本発明の方法において用いるためのゼアラレノンアナログ化合物は、ZもしくはEアイソマーいずれかとして存在し得る一つまたはそれより多い二重結合もまた有し得る。本発明は、他のアイソマーを実質的に含まない個々のアイソマーとして存在する化合物、および、あるいは例えば立体異性体のラセミ混合物などの種々のアイソマーの混合物として存在する化合物の使用もさらに含む。
本発明の方法において用いるための化合物はさらに、例えば、化学式(I)の化合物の多形体、溶媒和物あるいは水和物などの結晶の型の一つまたは組合せとして存在し得る。種々の結晶の型は、再結晶化(様々な温度で結晶化を行うことによって;多様な冷却の方法を用いて(結晶化の間の、非常に速いから非常に緩やかの範囲での冷却))のための様々な溶媒和物を用いて、あるいは溶媒和物の様々な混合物を用いることによって同定および/または調製され得る。種々の結晶の型は、化合物を加熱または融解させ、その後徐々にあるいは速く冷却することによって取得され得る。多形体の存在は、固体のプローブのNMR分光法、IR分光法、示差走査熱量測定、粉末X線回折図形、および/または他の技術によって決定され得る。
(合成の方法論)
本発明の方法を実施するために有益であるゼアラレノンアナログ化合物は、例えば2007年7月25日に出願された米国出願番号第60/951,901号、2007年7月25日に出願された米国出願番号第60/951,906号、2008年7月25日に出願された米国出願番号第12/180,408号、2007年7月25日に出願された米国出願番号第60/951,892号、2008年7月25日に出願された米国出願番号第12/180,423号、WO05/023792(例えば、ページ32−38)、およびWO03/076424(例えば、ページ28−36)に記載されている合成方法を用いて調製され得る。上記出願のそれぞれの全容が本明細書において援用される。本明細書に含まれる情報に組合わせたこれらの参考文献ならびにマクロライド化学に関する知識の更なる集合体は、当業者に合成の戦略、保護基、ならびに本発明の方法において用いられ得るゼアラレノンアナログ化合物の合成に有益な他の物質および方法についての案内を提供する。例えば、上記の特許文書は、本明細書に記載されているゼアラレノンアナログ化合物に類似の化合物または関連する中間体の調製における背景情報、ならびにそのような化合物の製造、使用、および投与についての情報を提供する。
(薬学的組成物)
ゼアラレノンアナログ化合物は、薬学的組成物を用いて被験者に投与され得る。適切な薬学的組成物は、本明細書に記載されているあらゆる化合物の一つ(またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくはエステル)を含み、かつ薬学的に許容可能な担体を必要に応じて含む。特定の実施形態において、これらの組成物は、一つまたはそれより多い更なる治療の薬剤を必要に応じてさらに含む。
本明細書で用いられる場合、用語「薬学的に許容可能な塩」は、信頼できる医学の判断の範囲内において、過度の毒性、刺激、アレルギー反応など無くヒトおよび下等動物の組織と接触することにおける使用に適していおり、かつ妥当な利益/危険の割合に相当する塩をいう。アミン、カルボン酸、および化合物の他の型の薬学的に許容可能な塩は当該分野で周知である。例えば、S.M.Berge、et al.は薬学的に許容可能な塩についてJ.Pharmaceutical Sciences、66:1−19(1977)(本明細書において援用される)の中で詳細に記載している。塩は、本発明の化合物の最終の分離および精製の間にインサイチューで調製され得る、または、これとは別に、以下に一般に記載されているように遊離塩基あるいは遊離酸の機能を適切な試薬と反応させることによって調製され得る。例えば、遊離塩基の機能は、適切な酸と反応させられ得る。さらに、本発明の化合物が酸性部分を有するとき、それらの適切な薬学的に許容可能な塩は、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムまたはカリウム塩);およびアルカリ土類金属塩(例えば、カルシウムまたはマグネシウム塩)などの金属塩を含み得る。薬学的に許容可能な非毒性酸付加塩の実施例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸によって形成されるアミノ基の塩または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸あるいはマロン酸などの有機酸によって形成されるアミノ基の塩またはイオン交換などの当該分野で用いられる他の方法を用いて形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容可能な塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘルニ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。薬学的に許容可能な塩としては、適切である場合、毒性の無いアンモニウム、四級アンモニウム、ならびにハロゲン化合物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成されるアミン陽イオンがさらに挙げられる。
本明細書で用いられる場合、用語「薬学的に許容可能なエステル」は、インビボで加水分解するエステルおよびヒトの体において容易に分解され親化合物またはそれらの塩を残すエステルを含む。適切なエステル基は、例えば、薬学的に許容可能な脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸、アルカンジオール酸(各アルキル部分またはアルケニル部分は、好都合であることに6個より多い炭素原子を有しない)に由来するエステル基を含む。特定のエステルの実施例としては、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、およびエチルコハク酸エステルが挙げられる。
上に記載されているように、薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含み得る。そのような担体は、所望の特定の用量に適合される、溶媒、希釈剤、もしくは他の液体のビヒクル、分散もしくは懸濁を補助するもの、表面活性剤、等張剤、増粘剤、乳化剤、保存剤、固体の結合剤、潤滑剤などのいずれかまたは全てを含む。RemingtonのPharmaceutical Sciences、Sixteenth Edition、E.W.Martin(Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1980)は薬学的組成物を作製することにおいて用いられる種々の担体およびそれらの調製のための公知の技術を開示している。いずれかの通常の担体媒介物がゼアラレノンアナログ化合物との相性が悪い場合(好ましくない生物学的効果を生じる、そうでなければ、薬学的組成物の何らかの他の成分と有害な様式で相互作用するなど)を除いて、この使用は、本発明の範囲内であると考えられる。薬学的に許容可能な担体として機能し得る物質のいくつかの実施例としては、乳糖、ブドウ糖およびスクロースなどの糖;トウモロコシのデンプンおよびポテト(potato)のデンプンなどのデンプン;セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースの誘導体;トラガカント末;麦芽;ゼラチン;滑石;ココアバターおよび座剤のワックスなどの賦形剤;ピーナッツオイル、綿実油などの油;ベニバナ油、ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油および大豆油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、リン酸緩衝液、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の毒性が無く適合性のある潤滑剤など挙げられるがこれらに限定されない。着色剤、解除剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、香料剤、保存剤、および酸化防止剤もまた、作製者の判断に従い、組成物中に存在し得る。
本発明における使用のための組成物は、あらゆる所望の濃度のゼアラレノンアナログ化合物を有するように作製され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも治療上有効な量のゼアラレノンアナログ化合物を含むように組成物は作製される。治療上有効な量は、投与の条件において、がんを処置するために十分な量というような、所望の治療上の効果を達成するために十分な量である。いくつかの実施形態において、組成物は、一つまたはそれより多い望まれない副作用を引き起こし得ない量を含むように作製される。特定の実施形態において、ゼアラレノンアナログ化合物が、約1mg/mLと約20mg/mLとの間;約1mg/mLと約15mg/mLとの間;約1mg/mLと約10mg/mLとの間;約2mg/mLと約9mg/mLとの間;約3mg/mLと約8mg/mLとの間;約4mg/mLと約7mg/mLとの間;約4mg/mLと約6mg/mLとの間の濃度で存在するように組成物は調製される。特定の実施形態において、化合物が約5mg/mLの濃度で存在するように組成物は調製される。
(キット)
本発明は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する、または被験者のがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いる処置に感受性であるか否かを決定するのための組成物およびキットもまた提供する。これらのキットは以下のものの一つまたはそれより多くのものを含む:例えば腫瘍生検もしくは血液サンプルなどのサンプルを取得するおよび/または調製するのための試薬;サンプルが活性化されたMAPKシグナル伝達を提示するか否かを決定するための試薬;サンプルが野生型PI3Kシグナル伝達を提示するか否かを決定するための試薬;サンプルが例えばRAF遺伝子、例えばBRAF遺伝子内の変異を提示するか否かを決定するためのプローブおよび試薬;サンプルが例えばPTEN遺伝子の野生型配列を提示するか否かを決定するためのプローブおよび試薬;サンプル中のDNA高度メチル化を決定するための試薬;サンプル中のリン酸化されたAKTタンパク質のレベルを決定するための試薬;サンプル中のAKTタンパク質の発現レベルを決定するための試薬;例えば、RAF活性(例えば、BRAF活性)、MEK1活性、ERK1活性、MEK2活性、ERK2活性、またはAKT活性などのタンパク質活性を決定するための試薬;サンプル中の例えばIL−8、IL−1、IL−2、IL−6、またはTNFαなどのサイトカインのレベルを測定するための試薬;サンプル中の例えばフォスフォERK、Cyclin D1、フォスフォpRB、またはp27などの他の応答マーカーのレベルを測定するための試薬;および使用のための指示書。
本発明のキットは、本発明の方法を実行するために有益なさらなる成分を必要に応じて含み得る。例として、キットは、相補的な核酸にアニールするまたは抗体が特異的に結合するようなタンパク質と結合するために適切である流体(例えば、SSC緩衝液)、一つまたはそれより多いサンプル区画、本発明の方法の実行について記載している指示のための資料、正常な細胞のサンプル、がん細胞のサンプルなどを含み得る。
本発明は、以下の実施例によってさらに例証されるが、制限するように解釈されるべきではない。この出願を通して、引用される全ての参考文献、特許、および公開された特許出願の全容は、本明細書において援用される。
(実施例)
(実施例1:BRAF変異細胞は、化合物106を用いた処置に対し感受性である)
BRAFおよび/またはRAS中に変異を有する種々の組織型由来のがん性細胞株のパネルにおいて、ゼアラレノンアナログ化合物である化合物106を用いた処置後の細胞増殖阻害を評価した。21種の細胞株のパネルを、化合物106の濃度を変化させて検査した。全てのアッセイは、96ウェルフォーマット内で行った。細胞生存率は、処置後4日後に、評価した。細胞生存率を、変異を有しないまたはBRAF(V600E)および/もしくはRAS変異を有する細胞株のパネルにおいて、MTS Assay(CellTiter96(登録商標)AqueousOne Solution Cell Proliferation Assay、Promega)を用いて評価し、薬物感受性に対するBRAFおよびRAS遺伝子型の効果を決定した。
これらの結果を、図3Aに示す。図3Aは、いくつかの種類の細胞株の細胞増殖阻害のIC50値を示しているグラフであり、BRAFが変異した結腸直腸がん細胞株、乳がん細胞株およびメラノーマがん細胞株は、化合物106を用いた処置に対し全て感受性であったことを実証している。結腸直腸がん細胞株HT−29およびColo−205、乳がん細胞株MDA−MB−435およびDU4475、ならびにメラノーマがん細胞株SK−MEL−3、SK−MEL−24、およびSK−MEL−28などのBRAFが変異した細胞株は、ゼアラレノンアナログ化合物106を用いた処置に対し高い感受性をもち、100nM未満のIC50値であった。これらの結果は、BRAF変異を有する細胞株は、ゼアラレノンアナログ化合物(例えば化合物106)を用いた処置に対し、より感受性であることを実証している。
別の実験において、化合物091および106を、種々の組織型由来の固形癌細胞株を用いて検査した(化合物091に対する21種の細胞株および化合物106に対する19種の細胞株を、図3Bに示す)。全ての細胞株を96ウェルプレートに導入し、化合物091または化合物106非存在下あるいは化合物091または化合物106が0.3−10000nMで継続的に存在する状況下で、96時間増殖させた。細胞増殖は、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)またはメチレンブルーアッセイを用いて評価した。IC50値は、処置していない細胞集団と比較して、50%細胞増殖を阻害する基質の濃度として決定した。図3B中に示されるように、BRAF V600E変異を有する細胞株は、低nMまたはμM未満濃度範囲の化合物091および106に対し、高い感受性であった。
BRAFに種々の変異を有する31種のメラノーマ細胞株のパネルにおいても、ゼアラレノンアナログ化合物の化合物106を用いた処置後の細胞生存率を評価した。すべのアッセイは、96ウェルフォーマット中で行った。細胞生存率を、処置後4日後に、評価した。様々なBRAF変異を有する細胞株のパネルにおいて、MTS Assay(CellTiter96(登録商標)AqueousOne Solution Cell Proliferation Assay、Promega)を用いて細胞生存率を評価し、薬物感受性に対するBRAF遺伝子型の効果を決定した。これらの細胞株の変異状況およびnmol/LでのIC50を、図3Cに示す。
これらの結果の分析を、表2に要約する。表2は、BRAF中に変異を有する細胞株は、化合物106への感受性と、統計的に関連があったことを例証している。感受性は、IC50が100nmol/L未満と定義した。具体的には、BRAFに変異を有する20種の細胞株において(20種細胞株)、これらの細胞株の75%が化合物106に対し感受性であった。反対に、野生型のBRAFを有する11種の細胞株においては、これらの細胞株の27%のみが、化合物106に対し感受性であった(フィッシャーの正確検定、両側=P<0.01)。
表2:31種のメラノーマ細胞株のパネルにおける、化合物106感受性に対するBRAF変異の効果
(実施例2:メラノーマ細胞株のパネルにおける化合物106感受性への、BRAFおよびPTEN変異の効果ならびにBRAFおよびリン酸化AKTのレベルの効果)
MEKインヒビターである化合物106を用いた処置後の、BRAFおよびPTEN内に種々の変異を有するメラノーマ細胞株のパネルにおいて、細胞生存率を評価した。8種の濃度の化合物106(濃度は10μmol/Lから0.0003μmol/Lの範囲である)を用いて、31種のメラノーマ細胞株のパネルを検査した。(細胞株のパネルは、がんに関連する一つまたはそれより多い遺伝子の変異もまた有する)。
全てのアッセイは、96ウェルフォーマット中で行った。細胞生存率を、処置後4日後に、評価した。細胞生存率を、MTS Assay(CellTiter96(登録商標)AqueousOne Solution Cell Proliferation Assay、Promega)を用いて評価し、薬物感受性に対する遺伝子型の効果を決定した。個々のIC50値を図3に示す。
結果のさらなる分析を行った。ここでは、感受性をIC50<500nmol/Lと定義した。この分析の結果を、表3に要約する。この分析の結果は、化合物106の感受性は、野生型PTENの状態と、統計的に関連があったことを明示している。具体的には、野生型PTENを有する23種の細胞株において、12種の細胞株が化合物106に対し感受性であった。反対に、変異型PTENを有するまたはPTENを欠失している8種の細胞株においては、3種の細胞株のみが、感受性であった(フィッシャーの正確検定、両側=P<0.01)。
フォスフォAKT発現レベルもまた評価した。表3は、フォスフォAKT発現は化合物106への感受性に影響することを例証している。
表3:PTEN変異/欠失またはp−AKTのレベルは、BRAF変異を有する20種のメラノーマ細胞株の化合物106への感受性を調節する
別の実験において、化合物106を、BRAF変異(V600E)メラノーマ細胞株のパネルにおいて検査した。図3Dに示しているように、この細胞株のいくつかは、PTEN遺伝子内に変異を含んでいた。(細胞株のこのセットは、図3Cと比較して、17種のさらなる細胞株を示している。)メラノーマ細胞株を96ウェルプレートに導入し、化合物106非存在下または継続的に存在する条件下で増殖させた。IC
50値は、処置していない細胞集団と比較して50%細胞増殖を阻害する基質の濃度として決定した。図3Dに示されるように、BRAF変異および野生型PTENを有する細胞株は、化合物106に対し高い感受性であった。
これらの結果は、活性化されたMAPKシグナル伝達および野生型PI3Kシグナル伝達を有する細胞株は、ゼアラレノンアナログ化合物(例えば、化合物106)に対してより感受性が高いことを実証している。
(実施例3:AKTリン酸化状態は、メラノーマ細胞株のパネルにおいて化合物106感受性に影響する)
化合物106耐性が、PI3Kシグナル伝達経路活性化の結果による恒常的AKTリン酸化と関連があるか否かを決定するため、10種のBRAF変異メラノーマ細胞株およびBRAF野生型神経膠芽腫がん細胞株SF−295のパネルを、種々の濃度の化合物106(10μmol/Lから0.0003μmol/Lの範囲である)を用いて、検査した。
全てのアッセイは、96ウェルフォーマット内で行った。これらの細胞株に対しては、タンパク質溶解物を別の実験で収集した。このことは、AKTリン酸化の恒常的レベルの評価、およびリン酸化されたAKT(pAKT)レベルと化合物106への感受性の間の関連性の評価を可能にした。細胞増殖は、CellTiter−Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega)を用いて評価した。リン酸化されたAKTタンパク質は、ウェスタンブロッティングによって分析した。ローディングコントロールとして全AKTを用いた。
pAKT発現の上昇(これはPI3Kシグナル伝達経路の活性化を反映し得る)を、RPMI−7951およびSF−295を含む、化合物106に対して耐性を有する細胞株(例としては、図2を参照のこと)において観察した。pAKT発現の上昇は、化合物106に感受性を有する細胞株では観察されなかった。これらのデータは、ゼアラレノンアナログ化合物(例えば、化合物106)は、活性化されたMAPKシグナル伝達および野生型PI3Kシグナル伝達を有する細胞株(例としては、図4を参照のこと)でのがんを、処置できる能力を有していることを実証している。これらのデータはさらに、ゼアラレノンアナログ化合物(例えば、化合物106)は、変異BRAFおよび野生型PTENを含むがん細胞株でのがんを、処置できる能力も有していることを実証している。総合すると、これらの技術は、ゼアラレノンアナログ化合物が被験者のがんを処置する能力を予測する方法を提供している。
(実施例4:BRAF変異がん細胞は、プロ炎症性(Pro−Inflammatory)サイトカインインターロイキン8(IL−8)を産生する)
IL−8がメラノーマ細胞によって産生されるか否かを決定するため、V600E BRAF変異を有する14種のメラノーマ細胞株について、IL−8サイトカイン発現レベルをELISAによってインビトロで評価した。図5に実証されているように、LOX、SK−MEL−24、UACC−62、およびCOLO−829細胞株(これらはBRAF変異を有する)は全て、タンパク質レベルでの高いIL−8発現を示した。
(実施例5:化合物106で処置した担腫瘍マウスの血漿IL−8における変化)
血漿IL−8レベルは腫瘍異種移植片を有するマウスにおいて測定可能か否か、および血漿IL−8レベルは化合物106を用いた処置後変化するか否かを決定するため、雌性のヌードマウスにおいて、COLO−829およびUACC−62メラノーマ異種移植片を化合物106感受性異種移植片として樹立した。雌性のヌードマウスにおいて、SF−295ヒト神経膠芽腫(BRAF野生型)異種移植片を化合物106耐性腫瘍モデルとして樹立した。雌性の無胸腺NU/NUマウスに、COLO−829、UACC−62ヒトメラノーマがん細胞、またはSF−295ヒト神経膠芽腫細胞を、皮下接種した。これらの動物から約250mm3の腫瘍を発生した動物を選び出し、無作為に2群に分けた。実験は、処置の1日目において、各群あたり、ビヒクル(vehicle)処置をした8匹のマウスおよび40mg/kgの化合物106で処置をした8匹のマウスからなった。化合物106を、QD×4(合計4回の注射を毎日行う)の投与計画で、静脈内に(i.v.)投与した。皮下腫瘍の体積を、処置の1日目および4回目の処置後24時間後に測定した。へパリン添加血液を、化合物106を用いた4回目の処置後24時間後のマウスから、心穿刺によって収集し、また血漿を分離した。血漿中のヒトIL−8のレベルは、ELISAによって決定した。
図7に実証されているように、化合物106に感受性である異種移植片(すなわちUACC−62およびCOLO−829)において、40mg/kgの化合物106は、4回目の投与後24時間後の血漿IL−8レベルを、ほぼ完全にブロック(block)した。対照的に、化合物106を用いた処置は、SF−295腫瘍を有するマウス(化合物106を用いた処置に耐性である)における血漿IL−8レベルを、変化させなかった。上記の結果に基づき、血漿IL−8の減少は、ゼアラレノンアナログ化合物(例えば、化合物106)に対する腫瘍の反応を測定するための代替マーカーとして働き得ることが明白である。
(実施例6:血漿IL−8レベルは化合物106への反応を検出するために用いられ得る)
血漿IL−8を、ヒトがん患者由来の血漿または血液中で検出できるか否かを決定するため、メラノーマ患者由来の6種の血漿サンプルを、腫瘍組織バンク(Asterand)から取得した。転移部位由来の6種のメラノーマ組織もまた、同じ患者から取得した。コントロールとして、6種の血漿サンプルもまた、健康なボランティアから取得した。IL−8血漿レベルを、ELISAによって決定した。BRAF変異を、PCR分析によって検出した。
表4に示されているように、検査した6種全ての臨床サンプルにおいて、IL−8を検出した。6人全てのがん患者は、PCR分析によって示されたように、BRAF変異を有していた。
表4:進行メラノーマ患者における血漿IL−8レベル
これらの結果は、IL−8を、進行した段階のメラノーマを有する患者由来の血漿中にて、検出し得ることを実証している。
(実施例7:ゼアラレノンアナログ化合物は、がん細胞株におけるIL−8およびIL−6のタンパク質レベルを低下させ、かつ、BRAF変異細胞によるIL−8およびIL−6の分泌に影響する)
本研究の目的は、BRAF変異LOXメラノーマ細胞によるIL−8およびIL−6の分泌に対する、インビトロでのゼアラレノンアナログ化合物(化合物106など)の効果を調査することであった。(Davies H.et al.、「Mutations of the BRAF gene in human cancer」、Nature、417:949−954(2002))。
化合物106(5.0mg)を量り取り、100%無水DMSO(ジメチルスルホキシド、Sigma−Aldrich(登録商標)、St.Louis、MO)中に溶解し、3.89mg/mLの10mmol/Lストック溶液を作製した。10mmol/Lストック溶液の一定分割量を、−80℃に保存した。そして、実験の各日において、ストック溶液の一定分割量を解凍し、RPMI−1640培地を添加することによって1:10に希釈し、1mmol/Lの溶液を取得した。4種の段階的1:10希釈液を、10%DMSO(RPMI−1640培地中)の添加によって1mmol/Lの作業溶液から作製し、4種のさらなる作業溶液を取得した。これらの各作業溶液を、培地を用いてさらに希釈し、1nmol/Lから10,000nmol/Lの範囲に希釈された作業溶液を取得した。これらの希釈された作業溶液の各5mlを、各ディッシュに添加した。
LOXヒトメラノーマ細胞は、もともとはDCTD腫瘍リポジトリ(Frederick、MD)から取得した。この細胞を、37℃の5%CO2加湿インキュベーター(incubator)において、10%のウシ胎仔血清(FBS)を含むRPMI−1640増殖培地中に単層培養で増殖させた。
LOXヒトメラノーマ細胞を、100mmディッシュに1×106細胞になるようにまいた。48時間後、細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)を用いて3回洗い、0.1%FBS含有RPMI−1640培地を用いて、さらに24時間培養した。細胞の培地を除去した後、化合物106を含むフレッシュなRPMI−1640培地(1、10、100、1000、または10,000nmol/L)を各培養ディッシュに添加し、24時間培養した(表5を参照のこと)。コントロールには、RPMI−1640培地中の0.1%DMSOのみを与え、IL−6およびIL−8の自然分泌(spontaneous secretion)を測定した。3回の別々の実験を、2連(duplicate)で行い、平均±SEMを計算した。
表5:IL−6およびIL−8の分泌を決定するためのサンプルの組合せ
化合物106または0.1%DMSO存在下での24時間の培養後、5mLの細胞の培地上清を収集した。遠心分離によってあらゆる粒子状物質を除去した。全てのサンプルは分析まで−80℃フリーザーに保存した。ELISAキット(Human IL−8 ELISA Set、カタログ番号555244、BD Biosciences、San
Diego、CAおよびHuman IL−6 ELISA Set、カタログ番号555220、BD Biosciences、San Diego、CA)をキットから提供されているアッセイ手順書を用いて使用し、ヒトIL−6またはIL−8の存在を決定した。吸光度は、VERSAMAX
TM(Molecular Devices、合併したため現在はMDS Analytical Technologiesの一部門である、Sunnyvale CA)上で読んだ。
細胞の培地上清の除去後、1.0mLのトリプシンを細胞に添加し、3分間の後、細胞数を数えるために4mLの10%FBS含有培地を添加した。0.1mmの深さの血球計数器(Bright Line Counting Chamber、Hausser Scientific、Horsham、PA)を用いて細胞を数えた。細胞の総数は、以下のように計算した:
5mL中の細胞の総数=C×104/mL×5mL(C:1mm2内での実際の細胞数)IL−6またはIL−8のレベルを、ng/1×106細胞として決定した。化合物106によるIL−6またはIL−8分泌の阻害を、以下の式を用いたコントロールのパーセントとして表した:
コントロールのパーセント=(処置したサンプルの値−ブランクの平均値)/(コントロールの値−ブランクの平均値)×100
ソフトウェアであるGraphpad Prism(登録商標)(バージョン4、San
Diego、CA)を、平均IC50値の計算のために用いた。
BRAF変異を有するLOXヒトメラノーマ細胞は、24時間以内にIL−6(15.5±5.1ng/100万個の細胞)およびIL−8(104.7±38.9ng/100万個の細胞)をそれぞれ自然に分泌した(表6および表7)。IL−6およびIL−8のタンパク質レベルは、LOXメラノーマ細胞株において、化合物106により濃度依存的な様式で低下した(計算したIC50値の平均は、IL−6が21.8nmol/LでありIL−8が10.5nmol/Lである)(図6ならびに表8および9)。これらの結果は、IL−6およびIL−8タンパク質のレベルの変化が、化合物106などのゼアラレノンアナログ化合物に対する生物学的反応を測定するための薬力学的マーカーとして働き得ることを実証している。
表6:3回の別々の実験における、IL−6の自然分泌に対する化合物106の阻害効果
表7:3回の別々の実験における、IL−8の自然分泌に対する化合物106の阻害効果
表8:3回の別々の実験における、IL−6のタンパク質レベルに対する化合物106の抑制効果
表9:3回の別々の実験における、IL−8のタンパク質レベルに対する化合物106の抑制効果
さらに、図6に実証されているように、化合物106を用いた処置は、LOXメラノーマ細胞株(V600E BRAF変異を有し、かつPTENに関しては野生型)におけるIL−6(21.8nmol/LのIC
50)およびIL−8(10.5nmol/LのIC
50)タンパク質の発現をほぼ完全に抑えた。上記の結果に基づき、血漿IL−8および/またはIL−6レベルの低下が、化合物106などのゼアラレノンアナログ化合物に対する腫瘍の反応を測定するための代替マーカーとして働くことが明白である。
(実施例8:IL−8およびIL−6のレベルは、あるがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いた処置に対し感受性であるか否かを示す)
あるがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いた処置に対し感受性であるか否かを決定するために、様々な時点の血漿中IL−6またはIL−8のレベルを、ELISAアッセイを用いて評価した。採血は処置前、処置中および処置後に行った。例えば、採血は注入前、注入終了の直前、注入終了後8、24、48および72時間経過後に行った。これは、処置サイクルの一回またはそれより多い回数の注入において、行われ得る。
加えて、定量PCRを処置前および注入後に得た腫瘍生検組織に対して行い、IL−6および/またはIL−8のmRNAレベルを決定した。
上述の各ケースにおいて、IL−6のレベルまたはIL−8のレベルを、ゼアラレノンアナログ化合物の効果を評価するための薬力学的マーカーとして(薬効の代替マーカーとして)用いた。処置中または処置後のIL−6またはIL−8レベルの低下は、そのがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いた処置に対し、感受性であることを示す。
(実施例9:化合物106を用いた処置後の、応答マーカーのタンパク質レベル)
ある被験者のあるがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いた処置に対して感受性であるか否かを決定するための応答マーカーとして働き得るマーカーを同定するために、化合物106に感受性である細胞株(例えば、SK−MEL−28)および化合物106に耐性である細胞株(例えば、AU−565)でのフォスフォERK、全ERKタンパク質、フォスフォpRB、全pRB、およびCyclin D1のタンパク質レベルを、ウェスタンブロッティングによって調べた。2×106のがん細胞(SK−MEL−28およびAU−565)を100mmディッシュ中にまき、2日間培養した。その後、テスト化合物(例えば、化合物106)を10nmol/Lから3μmol/Lの範囲の濃度で各ディッシュに添加し、24時間培養した。コントロールとして、培地を細胞に添加した。SK−MEL−28およびAU−565の細胞溶解タンパク質を、還元条件下でSDS−PAGEにかけ、そしてフォスフォERK1/2(カタログ番号9101、Cell Signaling Technology(登録商標)、Danvers、MA)、フォスフォpRB(カタログ番号9307、Cell Signaling Technology(登録商標)、Danvers、MA)、またはCyclin D1(カタログ番号sc−8396、Santa Cruz、CA)に対する抗体を用いてイムノブロット(immunoblot)した。ERK1(カタログ番号sc−93、Santa Cruz、CA)またはpRb(カタログ番号sc−102、Santa Cruz、CA)抗体は、タンパク質の全量の検出に用いた。
感受性細胞株(SK−MEL−28)および耐性細胞株(AU−565)において、ERKおよびG1/S移行に重要なタンパク質(Cyclin D1、p27、フォスフォpRB)の発現レベルをウェスタンブロッティングによって調べた。図8に示されているように、化合物106は、感受性細胞株および耐性細胞株いずれにおいても濃度依存的様式でフォスフォERKのタンパク質レベルを抑制した。重要なことに、感受性細胞株において、網膜芽細胞腫タンパク質(pRB)をリン酸化するCyclin D1のタンパク質レベルが、フォスフォpRBタンパク質の減少と並行して低下していた。CDKのインヒビターであるp27のタンパク質レベルは、感受性細胞株において、化合物106存在下で上昇した。これらの結果は、ゼアラレノンアナログ化合物が、Cyclin D1発現を転写段階で阻害していることを実証している。Cyclin D1発現の転写段階での阻害は、pRBタンパク質のリン酸化を阻害し、細胞周期停止を導く。よって、これらのマーカーは、ゼアラレノンアナログ化合物(例えば、化合物106)を用いた処置への反応に対する薬力学的マーカーとして働き得る。
(実施例10:ヒトメラノーマ組織の免疫組織化学)
ホルマリン固定し、パラフィン包理したヒトメラノーマ腫瘍サンプルを取得し、表10に記載されている抗体を用いて免疫組織化学(IHC)のための処理を行った。表10に示されているように、一次抗体とのインキュベーション(incubation)が1時間であった場合は、以下に記載されているIHC手順(1)を用いた。表10に示されているように、一次抗体とのインキュベーションが一晩であった場合は、以下に記載されているIHC手順(2)を用いた。
表10:免疫組織化学のための抗体、リトリーバル(retrieval)およびインキュベーション条件
1ウサギmAb 137F5は、全p44/42 MAPキナーゼ(ERK1/ERK2)タンパク質の内因性レベルを検出する。
2単一クローン性抗MAPキナーゼ抗体は、MAPキナーゼ(ERK−1およびERK−2)の二重にリン酸化された形態と特異的に反応する。
3AKT(pan)(C67E7)ウサギmAbは、全AKTタンパク質の内因性レベルを検出する。
4このウサギmAbは、Cyclin D1のC末端のエピトープを検出する。
5ウサギmAb 736E11は、セリン473でリン酸化されているAKT1を検出する。ならびに、対応する部位でリン酸化されているAKT2およびAKT3も検出する。
6抗フォスフォ網膜芽細胞腫(pSer780)抗体は、Ser780でリン酸化されているRBを認識する。しかしリン酸化されていないRBとは反応しない。
7マウス抗RB mAb 4H1は、全RBタンパク質の内因性レベルを検出する。
(a.IHC手順(1))
IHC手順(1)は、室温で一時間のインキュベーションを必要とする全ての一次抗体に対して用いた。IHC法は、Lab Vision Autostainer 360およびLab Vision LP−AP検出キット(UltraVision LP Large Volume Detection System AP Polymer(Ready−To−Use)、カタログ番号TL−125−AL)を用いて実施した。ヒトメラノーマ切片(厚さ5μ)を脱パラフィン化(deparafinize)し、さらに再水和させた。エピトープのリトリーバルはLab Vision Pretreatment Module(96℃(沸騰しないサイクル)20分の後、20分間の冷却期間(75℃まで))にて行った。リトリーバル緩衝液は表10に示してあるようにEDTA緩衝液またはクエン酸緩衝液であった:(a)EDTA緩衝液、pH8.0(Lab
Vision、カタログ番号TA−250−PM2X);または(b)クエン酸緩衝液、pH6.0(Lab Vision、カタログ番号TA−250−PM1X)。
切片をAutostainerに移した。そして以下のプログラムを用いた:プレリンス(pre−rinse)(TBS−Tween緩衝液、Lab Vision、カタログ番号TA−999−TT);非特異的タンパク質のブロック、10分(UVブロック、LP−APキットの一部分);一次抗体:60分;TBS−Tween緩衝液中で3回リンス;抗体のエンハンサー(enhancer)(LP−APキットの一部分)、10分;TBS−Tween緩衝液で3回リンス;ラベルされたポリマー−AP結合型(LP−APキットの一部分)、15分;TBS−Tween緩衝液で3回リンス;基質:Fast Red(Fast Red基質システムから調製した(Lab Vision、カタログ番号TA−125−AF));水で1回リンス;および蒸留水で2回リンス。
切片を、ヘマトキシリンGill III(VWR(登録商標)、カタログ番号15204−268)を用いて対比染色した。(この色素原は耐溶媒性ではない、そしてキシレン/アルコールと共に用いることができない)。ヘマトキシリン対比染色手順は、以下の通りであった:ヘマトキシリン、30秒;dH2O;水道水でリンス、5分;Bluing試薬、30秒;水道水でリンス、5分;dH2O。
Vision Mount Mounting Media(Lab Vision、カタログ番号TA−125−UG)を用いて、手作業で、切片をカバースリップで覆った。この封入剤は、Lab VisionのFast Redに対し適合性がある。番号1.5カバースリップガラスを、最善の顕微鏡分析(番号1.5カバースリップに最適化された対物レンズを用いる)を行うために用いた。Lab Vision Fast Redはいつまでも状態を保つことができないので、分析はIHC染色から1週間以内に行った。
(b.IHC手順(2))
IHC手順(2)は、4℃で一晩(18時間)のインキュベーションを必要とする全ての一次抗体に対して用いた。
IHC法は、Lab Vision Autostainer 360およびLab Vision LP−AP検出キット(UltraVision LP Large Volume Detection System AP Polymer(Ready−To−Use)、カタログ番号TL−125−AL)を用いて実施した。ヒトメラノーマ切片(厚さ5μ)を脱パラフィン化し、さらに再水和させた。エピトープのリトリーバルはLab Vision Pretreatment Module(96°C(沸騰しないサイクル)20分の後、20分間の冷却期間(75°Cまで))にて行った。リトリーバル緩衝液は表10に示してあるようにEDTA緩衝液またはクエン酸緩衝液であった:(a)EDTA緩衝液、pH8.0(Lab Vision、カタログ番号TA−250−PM2X);または(b)クエン酸緩衝液、pH6.0(Lab Vision、カタログ番号TA−250−PM1X)。
一次抗体までの工程および一次抗体を含む工程は、手作業で行った:プレリンス(TBS−Tween緩衝液、Lab Vision、カタログ番号TA−999−TT);非特異的タンパク質のブロック、10分(UVブロック、LP−APキットの一部分);一次抗体:加湿チャンバー(chamber)(切片から水分が抜けきることを防ぐため)内で4℃で一晩(18時間)。一晩のインキュベーション時に、抗体が長いインキュベーション期間中に切片から剥がれ落ちるのを防ぐため、疎水性バリアペンを用いて組織の周りに楕円を描いた。
その後、切片をAutostainerに移した。そして以下のプログラムを用いた:TBS−Tween Bufferで3回リンス;抗体のエンハンサー(LP−APキットの一部分)、10分;TBS−Tween緩衝液で3回リンス;ラベルされたポリマー−AP結合型(LP−APキットの一部分)、15分;TBS−Tween緩衝液で3回リンス;基質:Fast Red(Fast Red基質システムから調製した、Lab
Vision、カタログ番号TA−125−AF);水中で1回リンス;および蒸留水中で2回リンス。
切片を、ヘマトキシリンGill III(VWR(登録商標)、カタログ番号15204−268)を用いて対比染色した。(この色素原は耐溶媒性ではない、そしてキシレン/アルコールと共に用いることができない)。ヘマトキシリン対比染色手順は、以下の通りであった:ヘマトキシリン、30秒;dH2O;水道水でリンス、5分;ブルーイング試薬、30秒;水道水でリンス、5分;dH2O。
Vision Mount Mounting Media(Lab Vision、カタログ番号TA−125−UG)を用いて、手作業で、切片をカバースリップで覆った。番号1.5カバースリップガラスは、最善の顕微鏡分析(番号1.5カバースリップに最適化された対物レンズを用いる)を行うために用いた。Lab Vision Fast Redはいつまでも状態を保つことができないので、分析はIHC染色から1週間以内に行った。
上記の手順および条件は、ヒトメラノーマ腫瘍サンプル(市販の臨床サンプル)においてERK 1/2、フォスフォERK、AKT、Cyclin D1、p−AKT、p−RB、RBおよびKi67を検出する上で、効果的である。
(実施例11:LOX異種移植片におけるERKリン酸化およびフォスフォpRbリン酸化の時間依存的阻害)
LOXヒトメラノーマ細胞(V600E BRAF変異を有している)は、DCTD腫瘍リポジトリ(Frederick、MD)からもともとは取得した。この細胞を37℃の5%CO2加湿インキュベーターにおいて、DCTDが推奨する増殖培地中に単層培養で増殖させた。細胞を皮下注射(s.c.)する日に、増殖培地を除去し、フラスコをPBSで洗い、そして細胞をトリプシン処理を用いて収集した。これらの細胞を洗い、遠心分離によって収集した。その後、氷冷PBS中に1×107細胞/mLの密度で、再懸濁した。細胞(1×106細胞)を、27ゲージ針を用いて0.1mL量を雌性の無胸腺NU/NUマウスの右腋窩領域付近に接種し、接種後のマウスを生育した。化合物106を静脈内(i.v.)に、単一用量で(投与レベルは40mg/kgであり、体重10gあたり0.1mLの注入量であった)投与した。その後、投与後0、1、2、4、8、12、24、48、72時間を含む種々の時点でマウスを安楽死させた。腫瘍組織を解剖し、免疫組織化学のために10%ホルマリンで固定した。
フォスフォERK 1/2の免疫組織化学的な検出のために、ウサギmAb 20G11を0.36μg/mlの終濃度で用いた(Cell Signaling、カタログ番号4376)。このmAbは、ERK1のThr202およびTyr204(ERK2のThr185およびTyr187)が二重にリン酸化されているときならびにThr202のみがリン酸化されているとき、p44およびp42 MAPキナーゼ(ERK1およびERK2)の内因性レベルを検出する。条件は、本質的にはIHC手順(2)に記載されている条件であった(インキュベーションが4℃で一晩(18時間)、EDTAリトリーバル緩衝液を使用)。二次試薬は、アルカリフォスファターゼが結合しているヤギの抗ウサギ抗体であった。
結果を図9Aに示す。フォスフォERK染色を、0時間の時点で観察した。8時間の時点までに、フォスフォERK染色は、観察できる染色が基本的に無いことが明白である状態まで確実に減少した。12時間までにフォスフォERK染色は再び観察されるようになり、そして約24時間までに基線レベルまで本質的に回復した。細胞増殖のマーカーを検出するKi67染色は、最初の12時間後から大幅に減少し、そして24時間から48時間の間に検出下限より下に抑えられ、72時間まで抑えられた。
これらの結果は、フォスフォERKが、ゼアラレノンアナログ化合物を用いた処置の有効性をモニターするための薬力学的マーカーとして用いられ得ること、およびフォスフォERKレベルの低下はがんが処置に対して感受性であることを示していることを、実証している。
フォスフォRBの免疫組織化学的な検出のために、抗フォスフォ網膜芽細胞腫(pSer780)抗体(Sigma、カタログ番号R6275)を用いた(表10)。条件はIHC手順(1)に記載されている条件であった(インキュベーションは室温で1時間、およびEDTAリトリーバル緩衝液を用いた)。二次試薬は、ホースラディシュペルオキシダーゼが結合している抗ウサギ抗体であった。
結果を、図9Bに示す。顕著なフォスフォpRB染色を初めは観察した;しかしながら、フォスフォpRBレベルは48時間から72時間の間に検出下限より下に抑えられた。これらの結果は、フォスフォpRBは、ゼアラレノンアナログ化合物を用いた処置の有効性をモニターするための薬力学的マーカーとして用いられ得ること、およびフォスフォpRBレベルの低下はがんがゼアラレノンアナログ化合物を用いた処置に対して感受性であることを示していることを、実証している。
(実施例12:皮下DBTRG−05MGヒト神経膠芽腫異種移植片の増殖に対するインビボでの化合物106処置の効果)
本研究の目的は、ヒトDBTRG−05MG神経膠芽腫異種移植片モデルにおける化合物106の抗がん活性を調査することであった。DBTRG−05MGヒト神経膠芽腫がん細胞(BRAF(V600E)変異を有する)を37℃の5%CO2加湿インキュベーターにおいて、ATCCが推奨する増殖培地中に単層培養で増殖させた。インビボでの研究のため、細胞をT225フラスコ中で拡大させた。注射する日に、増殖培地を除去し、フラスコをPBSで洗い、そして細胞をトリプシン処理を用いて収集した。これらの細胞を洗い、遠心分離によって収集し、そして氷冷PBS中に再懸濁した。
雌性の無胸腺NU/NUマウス(6週齢、Charles River Laboratories(Wilmington、MA))に、5×106のDBTRG−05MGヒト神経膠芽腫がん細胞を皮下接種(s.c.)した。約150mm3の腫瘍を発生した動物を選び出し、無作為に5群に分けた。
この研究は、処置の1日目において、ビヒクル処置をされた群および4匹の薬物処置をされた群からなる8匹のマウスが一群である合計40匹のマウスからなった。全ての処置は21日目に開始した。化合物106を、Q4D×3(21、25および29日目)の投与計画で、静脈内に(i.v.)投与した(Q4D×3=合計3回の注射を4日ごとに行う)。投与は、5、10、20および40mg/kgの用量を、体重10gあたり0.1mLの注射量で行った。コントロールの群は、ビヒクルのみ(水中20%Captisol;Captisol(登録商標)(スルホブチルエーテルβシクロデキストリン(Sulfobutyl Ether Beta Cycolodextrin))、ナトリウム塩;Cydex、Inc.、KS))を用いて処置した。
毎日、マウスの全身の健康状態をモニターし、ならびに死亡数を記録した。処置の一日目から開始して、腫瘍の寸法および動物の体重を週に2回記録した。処置の一日目から開始して週に2回、s.c.腫瘍体積を測定し、動物の体重を量った。腫瘍体積をカリパス測定(mm)および以下の式を用いて決定した:
(l×w2)/2=mm3
ここで、lおよびwは各測定から得られた、大きい方の寸法、および小さい方の寸法をいう。
相対体重(RBW)を以下のように計算した:
RBW=測定日の体重/処置の一日目の体重
各実験群における腫瘍体積および相対体重の平均ならびに平均の標準誤差(SEM)を計算した。
本研究を、がん細胞移植後60日目に終了した。化合物106処置の各群において、平均の腫瘍体積が処置の一日目から二回倍加した体積(4倍の腫瘍体積)に達したときにもまた、測定を終了した。
コントロール群対化合物106処置群の統計分析を、一元配置分散分析(ANOVA)後にダネットの多重比較検定を用いて、腫瘍体積に対する実験の試験化合物の各用量について行った。P<0.05の値を両側仮説下で統計的に有意であるとみなした。全ての統計分析は、GraphPad Prism(登録商標)ソフトウェア(バージョン4、San Diego、CA)を用いて行った。この結果を図10に示す。データは平均+SEMで示している。21、25、および29日目(Q4D×3;図中に、矢印で示している)に動物の静脈内に処置した。アステリスク(*)は対コントロール群でP<0.01であることを示している。
検査された全4用量(5、10、20、および40mg/kg)での化合物106の投与は、統計上有意な抗がん活性を引き起こした。5mg/kgおよび20mg/kgそれぞれの用量の化合物106を用いて処置された各群における8匹の動物の中の1匹は、60日目においても腫瘍が無かった。これらの結果は、s.c.移植されたDBTRG−05MGヒト神経膠芽腫異種移植片(BRAF(V600E)変異を有する)の増殖は、試験された全ての用量(5、10、20、および40mg/kg)での化合物106の断続的投与に対し高感受性であったことを示している。
(実施例13.皮下LOXヒトメラノーマ異種移植片の増殖に対する化合物106処置のインビボでの効果)
本研究の目的は、LOXヒトメラノーマ異種移植片モデルにおける化合物106の抗がん活性を調査することであった。LOXヒトメラノーマ細胞(BRAF(V600E)変異を有する)を、DCTD腫瘍リポジトリ(Frederick、MD)から取得した。細胞を37℃の5%CO2加湿インキュベーターにおいて、RPMI−1640増殖培地を用いてT225フラスコ中に単層培養で増殖させた。インビボ研究のため、細胞をT225フラスコ内でさらに培養した。これらの細胞を皮下(s.c.)注射する日に、増殖培地を除去し、フラスコをPBSで洗い、そして細胞をトリプシン処理を用いて収集した。細胞を洗い、3分間遠心分離にかけ、そしてその後氷冷PBS中に再懸濁した。
雌性の無胸腺NU/NUマウスに1×106LOXヒトメラノーマ細胞をs.c.接種した。約150mm3の腫瘍を発生した動物を選び出し、無作為に5群に分けた。この研究は、処置の1日目において、ビヒクル処置をされた群および4匹の薬物処置をされた群からなる8匹のマウスが一群である合計40匹のマウスからなった。全ての処置は6日目に開始した。化合物106を、Q4D×3(6、10および14日目)の投与計画で、静脈内に(i.v.)投与した。投与は、5、10、20および40mg/kgの用量を、体重10gあたり0.1mLの注射量で行った。コントロールの群は、ビヒクル(水中20%Captisol)のみを用いて処置した。
処置の一日目から開始して週に2回、s.c.腫瘍体積を測定し、動物の体重を量った。腫瘍体積および相対体重は(RBW)を実施例12に記載されているように決定した。
本研究を、がん細胞移植後59日後に終了した。化合物106処置の各群において、平均の腫瘍体積が処置の一日目から二回倍加した体積(4倍の腫瘍体積)に達したときにもまた、測定を終了した。
ANOVAを用いて実施例12に記載されているように統計分析を行った。そしてその結果を図11に示す。データは平均+SEMで示している。6、10、および14日目(Q4D×3;図11中に、矢印で示されている)に、動物に対し、静脈内に処置を行った。全ての生き残っている群における担腫瘍マウスの腫瘍の測定を、37日目に停止した。そして、腫瘍測定を10mg/kg(1/8)、20mg/kg(5/8)、および40mg/kg(7/8)の化合物106で処置した群における腫瘍のないマウスについて、継続した。本研究を59日目で終わらせた。アステリスク(*)はコントロール群に対しP<0.05であることを示している。
検査した3種類の用量(10、20、および40mg/kg)での化合物106の投与は、統計的に有意な抗がん活性を引き起こした。加えて、10、20、または40mg/kgそれぞれの用量の化合物106を用いて処置された群の8匹の動物中、1、5、および7匹の動物は、研究の最後(59日目)まで腫瘍が無かった。これらの結果は、s.c.移植されたLOXヒトメラノーマ異種移植片(BRAF(V600E)変異を有し、PTENに関しては野生型である)の増殖は、10、20、および40mg/kgの用量の化合物106の断続的投与に対し高感受性であったことを示している。
化合物106を他の異種移植片モデル(胸部、結腸、およびメラノーマ細胞株が含まれるBRAF変異細胞、または膵細胞株が含まれる野生型細胞が雌性ヌードマウスに皮下に移植された)においても検査した。化合物106またはビヒクルコントロールを静脈に投与した。BRAF変異異種移植片モデルにおいて、化合物106が40mg/kgであって2週間QD×5の投与レジメンのとき、化合物106はその処置中において腫瘍の静止(しかし退縮ではない)(>80%の腫瘍の増殖阻害)から約73%の腫瘍の退縮までの範囲の阻害効果を示した。野生型異種移植片モデルにおいては、化合物106が40mg/kgであって2週間QD×5の投与レジメンのとき、化合物106は30%から40%の範囲で腫瘍退縮という阻害効果を示した。
(等価)
当業者は、本明細書に記載された特定の実施形態および方法に対する多くの等価なものを認識し、すなわち、慣用された実験法のみを用いて確かめることが可能である。そのような等価なものが、以下の特許請求の範囲に含まれることを意図する。