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JP2013237934A - 耐食導電被覆材料の製造方法 - Google Patents

耐食導電被覆材料の製造方法 Download PDF

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JP2013237934A JP2013149281A JP2013149281A JP2013237934A JP 2013237934 A JP2013237934 A JP 2013237934A JP 2013149281 A JP2013149281 A JP 2013149281A JP 2013149281 A JP2013149281 A JP 2013149281A JP 2013237934 A JP2013237934 A JP 2013237934A
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Abstract

【課題】強酸性物質や強酸化性物質に晒されても、錆びることなく、導電性に優れた、めっき装置や電気化学的装置を構成するための材料を提供すること。また、ヨウ素等に代表される腐食性物質、酸化性物質の存在雰囲気下での使用においても長時間耐えうる、信頼性に優れた耐食導電被覆材料の製造方法を提供すること。
【解決手段】特定の金属基体と白金めっき層との間に、熱分解法による4族金属の酸化物及び/または5族金属の酸化物層、白金族金属層及び/またはその酸化物層、およびそれらの混合層が形成される工程を包含し、白金族金属層及び/またはその酸化物層を形成する工程における焼成温度が、350℃以上600℃以下であることを特徴とする耐食導電被覆材料の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐食性かつ導電性に優れ、高耐久性である耐食導電被覆材料に関するものであり、より詳しくは、めっき装置や電気化学反応槽の構成部材である陰極への給電用ロールまたは電解槽、あるいは腐食性の電解質を具備した色素増感型太陽電池向けの電極等を用途とする耐食導電被覆材料に関するものである。
本発明は例えばめっき装置の給電ロールに使用される新規な材料に関するものである。近年、携帯電話や大画面ディスプレイなどの電子機器は薄型化する傾向にあり、薄型化を支える技術として、高分子フィルム上に金属配線が形成された金属配線付きフィルムが回路基板、電磁波シールド材、タッチパネルなどの用途に多用されている。この金属配線付きフィルムは、例えば特許文献1に記載されているように、フィルムを搬送しながら連続的に電解めっきし、被膜を形成する方法にて製造されている。より詳しくは、銀塩法やスパッタリング法により非常に薄い金属配線が形成された高分子フィルムを、陰極給電ロールに接触させながら、その前後に陽極が配置されためっき液中に該高分子フィルムを搬送させ、陰極−陽極間を通電させることにより金属を電析させて金属配線をさらに形成させる。このようなめっき浴槽を多数配置し、順次搬送させ電析することで、該フィルム上に所望厚みのめっき被膜を得、上記金属配線付きフィルムを製造している。
本発明はまた、電解槽の構成材料となりうる新規な材料に関するものである。ロケット用固体燃料の原料である過塩素酸塩、半導体製造工程時に使用されるCMPスラリー中の酸化剤として使用される過よう素酸塩などの過ハロゲン酸化合物は、白金族金属電極を陽極、鉄系合金電極を陰極とし、塩素酸ナトリウムを陽極酸化することで得られるが、工業的には鉄系合金製の電解槽を用い、該電解槽自体を陰極としても兼用することで生産性をあげて製造されている。
上述した陰極給電ロールや電解槽に使用される材料は、酸性度が低く、酸化性の高い溶液や高濃度の過ハロゲン酸化合物に晒されるため、高い耐食性を有するものが求められ、かつ電力を抑制して環境負荷を低減するための高い導電性を有するものが求められている。さらに、電解時において電解槽自体を陰極と兼用する場合などは、水素過電圧が低く、水素脆化にも耐えうる材料ではなくてならず、一般的には炭素鋼やステンレスなどが用いられている。
ところで、このステンレスの防食機構は、ステンレス基体表層に形成される不動態被膜によってステンレス基体を腐食環境から保護するシールド効果によるものである。該不動態被膜は絶縁性の金属酸化物であり、電気的には抵抗成分として働くため、高い導電性を得ることは困難である。
また、ステンレス基体は、非常に強い腐食環境下では、錆の発生や、金属成分の溶出が生じる。ステンレス基体をめっき用電解槽に用いた場合、この錆が表面を覆うことで金属基体内部を保護する機能が発揮するが、その錆がめっき浴中に混入して、電析金属中に不純物として取り込まれ、該電析金属の物性に悪影響を及ぼす。一方、過ハロゲン酸化合物を電解生成する電極あるいは電解槽としてステンレス基体を用いた場合、金属成分の溶出により生成した過ハロゲン酸化合物の純度低下を来たすという問題点があった。
従って、めっき装置や電気化学反応槽に用いられる材料において、ステンレス基体では、高い導電性と耐食性との両立という観点から不十分であり、該両特性を兼ね備え、かつ安価で生産性に優れる耐食導電被覆材料が要望されている。
さらに、耐食導電被覆材料は以下に示す用途への応用が期待できる。例えば、色素増感太陽電池用電極に求められる性能は、まさしく前記両特性を兼ね備えたものであり、すなわち、チタニア極側で励起された電子を効率よく伝達する良好な導電性や、直射日光下の高温下における耐久性などが重要である。また、一般に色素増感太陽電池の電解質には酸化還元対物質としてヨウ素が混合されているが、該ヨウ素は腐食性が非常に強いため、電極材料には高い耐食性が特に求められる。
しかしながら、安価な金属基体を用いた色素増感太陽電池用電極材料は若干の事例を除きほとんど提案されていない。例えば非特許文献1に開示されているものは、耐熱性とフレキシブル性を兼備することを主眼としており、ステンレス基体上にケイ素酸化物薄膜を形成し、その上から導電性金属酸化物であるITOを被覆することで耐食性を持たせているものの、実用的な耐久性不足と材料自身の高電気抵抗により、得られる太陽電池特性が大幅に低下するという問題点がある。そのため、一般的には、ヨウ素により腐食しないITO、FTOなどの導電性金属酸化物により被覆したガラス基体電極が用いられている。又、特に対極側の電極として、酸化還元対の酸化体を還元する触媒作用を有し、かつ耐食性を有するスパッタリング法などの乾式法によって白金を被覆されたガラス電極が用いられている。
このような金属酸化物被覆電極の製造には大型の設備が必要であるなどコストが高いという問題点があり、加えて電極の電導度も不足しているため、特に実用的な面積では大幅に性能が低下してしまうという問題点があった。また、乾式法により作製された白金被覆ガラス電極においても、材料コストが高いという問題点があった。さらに、該白金被覆ガラス電極の白金層は非常に薄いために、基体を保護する機能がほとんどなく、ガラスなどの基体しか用いることができず、大型化、軽量化、フレキシブル化が困難であるという問題点が挙げられ、さらに、ITO、FTOなどの導電性金属酸化物は金属基体に比べて抵抗が高いため、発電特性、すなわち取り出せる電流に悪影響を及ぼす。従って、依然としてより安価な製造コストとプロセスで作製でき、かつ良好な導電性と高い耐食性を有する色素増感太陽電池用電極材料が求められている。
特開平7−22473号公報 Man Gu Kang,外4名,「A 4.2% efficient flexible dye−sensitized TiO2 solar cells using stainless steel substrate」,Solar Energy Materials & Solar Cells,2006年,90,p.574−581
めっき装置や電気化学反応槽の構成用材料、あるいは色素増感太陽電池用の電極として好適に用いることができ、過ハロゲン酸化合物、ヨウ素、硫酸等に代表される腐食性物質、酸化性物質の存在雰囲気下での使用においても長時間耐えうる、安価で信頼性に優れ、耐食性と導電性に優れた耐食導電被覆材料の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下に示すものである。
(1)第4族及び第5族からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属からなる基体上に、
熱分解法によって4族金属の酸化物及び/または5族金属の酸化物層を形成する工程、
次いで、該酸化物層上に、含白金族金属化合物のアルコール溶液からなる塗布液を塗布、乾燥、焼成し、白金族金属含有層及び/またはその酸化物層を形成する工程、
次いで、白金族金属めっき層を前記白金族金属含有層及び/またはその酸化物層上に形成する工程、
を包含する耐食導電被覆材料の製造方法において、
白金族金属層及び/またはその酸化物層を形成する工程における焼成温度が、350℃以上600℃以下であることを特徴とする耐食導電被覆材料の製造方法。
(2)前記熱分解法による4族金属の酸化物及び/または5族金属の酸化物層が、
チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属酸化物層であり、かつ、該層の厚さが50nm以上700nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐食導電被覆材料の製造方法。
(3)前記白金族金属含有層及び/またはその酸化物層が、
イリジウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金からなる群から選ばれる少なくとも一つの白金族金属又はその酸化物層を含んでなる層であり、かつ、該層の厚さが10nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐食導電被覆材料の製造方法。
(4)前記金属からなる基体が、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属、またはそれらの金属を主成分とする合金からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の耐食導電被覆材料の製造方法。
本発明によれば、金属基体と白金族金属めっき層との間に、含4族金属化合物溶液及び/又は含5族金属化合物溶液の熱分解によって形成された4族金属の酸化物及び/または5族金属の酸化物層からなる第一の中間層、白金族金属層及び/またはその酸化物層およびそれらの混合層からなる第二の中間層が形成されることにより、金属基体と白金族金属めっき層との密着性と導電性が飛躍的に向上し、導通性と耐食性が著しく改善する。
すなわち、熱処理によって金属基体表層に形成される金属酸化物層と白金族金属層及び/またはその酸化物層は、耐食性と導電性に優れ、白金族金属めっき膜と金属基体の導電経路を長期間にわたり良好に保持、維持することができる。この結果、該白金族金属めっき層が電極表層の耐食性導電膜として有効に作用し、腐食性の強い過ハロゲン酸化合物や強酸などから金属基体を保護し、長期にわたって、めっき装置または電気化学反応槽を構成する材料として機能する。
さらに、色素増感型太陽電池用電極においても、強い酸化性および腐食性を示すヨウ素に対して、金属基体表層に形成される金属酸化物層と白金族金属層及び/またはその酸化物層は金属基体を保護し、金属基体が持つ高い導電体特性により、良好な発電特性を発揮する。
本発明の耐食導電被覆材料において、使用する基体は金属基体であり、特に強酸性および強酸化性の使用環境における耐食性の観点から周期律表第4族金属及び第5族金属からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属およびそれを主成分とする合金であることが好ましく、具体的にはチタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウムおよびそれを主成分とする合金からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属基体であるが、その中でも耐食性が優れ、かつ導電性が高い酸化物を形成し易いチタン、ニオブ、タンタルおよびそれを主成分とする合金が最も好ましい。また、この基体とその基体表層に形成する白金族金属めっき層との密着性を強化するため、事前に該基体表面を、ブラストやエッチング処理等を行い、表面積拡大、表面粗化を行ったものを使用することが好ましい。
ブラストやエッチング処理後、表面の選択エッチングを行い清浄化及び活性化を行うことができる。この清浄化および活性化の手法としては酸洗浄が挙げられ、代表的なものは、硫酸、塩酸及びフッ酸などの液に前記金属基体を浸漬し表面の一部を溶解することにより活性化を行うことができる。
次いで、活性化した金属基体表面に、第一中間層である4族金属の酸化物及び/または5族金属の酸化物層を形成する。
この第一中間層の形成方法は、4族及び/または5族金属化合物と水酸基を有する有機溶媒からなる塗布液を塗布、乾燥、焼成する熱分解法によって形成することができる。
ところで、4族及び/または5族金属化合物と水酸基を有する有機溶媒とからなる塗布液を塗布、乾燥、焼成する方法として、他にゾルゲル法による方法も考えられるが、該ゾルゲル法にて形成された酸化物層を第一中間層に適用した場合は、導電性が劣化するので不適である。なぜなら、ゾルゲル法にて作製された酸化物層は、金属−酸素結合のネットワークがより完全であるために、導電性の高い酸化物層を形成できないためである。
熱分解法によって第一中間層である4族金属の酸化物及び/または5族金属の酸化物層を形成する場合には、塗布液を塗布した金属基体を50〜100℃で10分程度乾燥させた後、350℃以上600℃以下、耐食性と導電性の観点から、より好ましくは425〜525℃の範囲で熱処理を行う熱分解法により第一中間層である4族金属の酸化物及び/または5族金属の酸化物層を形成する。
塗布液に用いる第4族及び/または5族金属化合物としては金属アルコキシド、塩化物、酢酸塩、有機金属化合物があり、具体的な例としてはチタニウム(IV)エトキシド、チタニウム‐iso‐プロポキシド、チタニウム‐n‐ブトキシド、チタニウム(IV)−t‐ブトキシド、四塩化チタン、チタニウム(IV)オキシアセチルアセトナート、ビス(tert‐ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウムテトラ‐n‐ブトキシド、ジルコニウム(IV)−t‐ブトキシド、ジルコニウム−iso‐プロポキシド、塩化ジルコニウム(IV)、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)ジルコニウム、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリドヒドリド、ビス(n‐ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2‐メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロリド、バナジウム(V)−トリイソプロポキシド−オキシド、バナジウム(V)−t‐トリプロポキシド、バナジウム(V)−n‐トリブドキシド、酸化バナジウムアセチルアセトナート、塩化バナジウム、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロリド、ジクロロエトキシオキソバナジウム(V)、シクロペンタジエニルバナジウムテトラカルボニル、ペンタイソプロポキシニオブ、ペンタエトキシニオブ、ペンタエトキシニオブ(V)、ペンタエトキシニオブ(V)、塩化ニオブ(V)、シクロペンタジエニルニオブ(V)−テトラクロリド、2−エチルヘキサン酸ニオブ(V)、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)ニオブ(IV)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)ニオブ(IV)、タンタル(V)エトキシド、タンタル(V)メトキシド、タンタル(V)−2,2,2−トリフルオロエトキシド、タンタル(V)ブドキシド、タンタルテトラエトキシジメチルアミノエトキシド、五塩化タンタル、四塩化ペンタメチルシクロペンタジエニルタンタル、トリス(ジエチルアミド)−t−ブチルイミドタンタル、ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル(V)、ペンタメチルシクロペンタジエニルタンタルテトラクロリド、2,4−ペンタンジオン酸タンタル(V)テトラエトキシド、テトラエトキシアセチルアセトナトタンタル(V)などが挙げられるが、塗布液の保存安定性や経済的観点から、好ましくはアルコキシドまたは塩化物である第4族及び/または5族金属化合物を用いるのが良い。
また、塗布液に用いる水酸基を有する有機溶媒としては具体的にはメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールが挙げられ、好ましくはプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノールが挙げられる。
第一中間層である4族金属の酸化物及び/または5族金属の酸化物層の上記溶液−熱分解法による形成は、より耐食性を向上させる効果があるが、金属酸化物は抵抗成分としても機能するため、導電性を特に重視する場合には本工程は省いても良い。なぜなら、次工程の第二中間層の形成時に、基体金属の最表に極薄い金属酸化物層である第一中間層も形成され、この酸化物層のみでも充分に耐食性を発揮することができる。
第一中間層である4族金属の酸化物及び/または5族金属の酸化物層の厚みは、50nm未満では耐食性が充分に発揮することができず、700nm超では抵抗が高くなって導電特性が悪化するため、50nm以上700nm以下が好ましい。
次いで、第一中間層の上層に第二中間層である白金族金属層及び/またはその酸化物層を形成する。該白金族金属層及び/またはその酸化物層は熱分解法やゾルゲル法などの方法で形成するのが好ましい。
前記白金族金属層及び/またはその酸化物層の成分としては、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金からなる群から選ばれる少なくとも一つを含んだものであることが好ましく、各金属の有機金属化合物または金属塩化物を、水酸基を有する有機溶媒、例えばエタノール、プロピルアルコール、シクロヘキサノールなどの溶媒に溶解させて塗布液を調製する。
さらに、耐食性が特に求められる場合、前記塗布液にチタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、バナジウム、錫の有機金属化合物または塩化物をさらに添加することにより得られる白金族金属層及び/またはその酸化物層の耐食性を向上することができる。添加する割合として、前記塗布液中に、タンタル、バナジウム、ニオブでは20〜48モル%、チタン、ジルコニウム、錫では5〜20モル%となるように調製することが好ましい。
中間層を形成するための塗布方法として特に限定されず従来公知のものを使用することができ、例えば、スプレー塗布法、噴霧法、カーテンフローコート法、ドクターブレード法、ディップ塗布法、刷毛塗法、スピンコート法などを用いることができる。
塗布液を塗布した金属基体を50〜100℃で10分程度乾燥させた後、350℃以上、より好ましくは380〜600℃の範囲で焼成を行う熱分解法により白金族金属層及び/またはその酸化物層を形成する。
上記焼成工程では、金属基体の最表に形成させた極薄い絶縁性の金属酸化物中へ、熱処理によって形成される白金族金属層及び/またはその酸化物結晶粒子が熱拡散によって浸透する。すなわち、4族金属の酸化物及び/または5族金属の酸化物層中に白金族金属層及び/またはその酸化物粒子が分散した混合層が形成され、該白金族金属層及び/またはその酸化物粒子を介することで、絶縁性の金属酸化物層に導電経路が形成される。この結果、金属基体と白金族金属層及び/またはその酸化物との良好な導電性が保持できるようになる。
白金族金属層及び/またはその酸化物層、該金属酸化物層中に白金族金属層及び/またはその酸化物粒子が分散した混合層は、金属基体を保護する機能を持つ。しかし、塗布から熱分解の工程を複数回繰り返すと、該白金族金属層の厚みは増すが、基体金属表層の酸化物層も同時に成長するため、耐食性導電被覆材料の導電特性に悪影響を及ぼしてしまう。さらに、熱分解法による白金族金属層及び/またはその酸化物層は厚くなると多数のクラックを生じやすく、金属基材との密着性が急激に低下するため、この上層に設ける白金族金属めっき被膜の形成が困難になる。逆に、薄すぎると基体金属への保護機能が低下してしまうため、導電性と保護機能が高く発現できるように厚みは10nm〜300nmの範囲が好ましいが、経済的観点から50nm〜150nmの範囲がより好ましい。
次いで第二中間層の上層に白金族金属めっき層を形成する。
第二中間層として10nm〜300nm厚みの白金族金属層及び/またはその酸化物層を設けただけでは、基体金属の酸化物層が主であるために、導電性が悪く、基体金属を腐食環境下から完全に保護することが難しいため、めっき法によりイリジウム、白金、金のいずれかの被膜を形成させる必要があるが、耐食性と導電性の観点から本発明においては白金が最も適している。
白金族金属めっき被膜の形成法には、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電気めっき法、無電解めっき法などがあるが、複雑な装置を必要とせず、複雑な形状にも均一に形成が可能な電気めっき法または無電解めっき法が好適である。
形成する白金族金属めっき層の厚みは、0.2μm以上8μm以下が適当であるが、経済的観点から、1μm以上5μm以下がより好ましく、2μm以上4μm以下が最も好ましい。
金属基体上に、白金に代表されるめっき層が施された従来の材料と本発明の中間層を有する耐食導電被覆材料の違いについて説明する。
チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウムなどの金属基体には表層に自然酸化被膜層が形成されている。該酸化被膜層を除去せずに、金属めっき層を形成した場合、金属めっき層と金属酸化物層間との密着性が悪いために、通常は基体の活性化処理直後に、または置換めっきにより基体金属酸化物層を除去した後に、めっきを行う。
白金めっきに限らず、金属めっき膜には必ず欠陥(ピンホール、クラックなど)が存在する。そのため、金属基体の活性化処理直後に白金めっきされた材料を腐食環境下に置いた場合、この欠陥に腐食液が入り込み、局部電池が形成されることになる。白金は最も貴な電極電位を持つ金属であるため、耐食性に優れるチタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウムなどでも例外ではなく、局部電池が形成されてしまう。
その結果、金属基体の溶解が始まり時間の経過とともに白金めっき層の剥離が起こるため、強酸性のめっき液に接する電解槽や給電用端子、色素増感型太陽電池用の電極など、特に耐食性が強く求められる環境での使用は困難である。欠陥を低減する方法として白金めっき層を厚くする方法もあるが、白金は高価な貴金属であり経済的ではない。
一方、本発明による耐食導電被覆材料では、白金族金属めっき層に欠陥があっても、熱処理工程で形成された金属基体表面の極薄い絶縁性の金属酸化物層により金属基体が腐食環境から保護されているため、局部電池の形成が抑制される。さらに、均一に分散している白金族金属層及び/またはその酸化物層の電極電位は白金金属と同等かそれ以上のため、白金族金属層及び/またはその酸化物層が侵されることもなく、高い耐食性能を長時間にわたり発揮する。
さらに、基体表層の金属酸化物層中には、白金族金属層及び/またはその酸化物粒子が分散した混合層があり、該白金族金属層及び/またはその酸化物粒子を介することで、絶縁性の金属酸化物層に導電経路が形成されているため、金属基体と白金族金属層及び/またはその酸化物との良好な導電性が長時間にわたり保持できる。
また、あらかじめ基体にプレス加工等の曲げ加工、切削加工、エッチング加工等の機械加工後に、白金族金属層及び/またはその酸化物層からなる中間層を、次いで、その上層に白金族金属めっき層の形成を行うことによって、複雑な形状の基体形成時にも白金族金属めっき層を損傷することなく、該白金族金属めっき膜の効果を確実に得ることができる。例えば、白金族金属めっき層の形成に関し、上記のように加工後の基体を陰極として電気めっきを行えば、加工によって基体表面が凹凸状態にあっても、均一に白金族金属めっき層を形成することが可能となり、安定した性能を得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例によりなんら限定されるものではない。なお、本実施例中wt%とあるのは質量%を指す。
(実施例1)
金属基体としてTi基体(JIS2種)を用いた。Ti基体は大きさが20×30mm、厚さが0.5mmの圧延材である。該基体に、蓚酸10wt%水溶液中で8時間エッチングを行うことにより、梨地仕上げを行った。次に、有機溶媒による脱脂処理後、0.1Nフッ酸中に30秒間浸漬させて酸化被膜除去を行い、Ti基体表面処理工程を終了した。
ジルコニウムテトラ‐n‐ブトキシド3.83g、ブタノール95ml、アセチルアセトン5mlを混ぜて、窒素雰囲気下で8時間攪拌、濃縮後、エタノールで希釈し濃度が0.005Mに調製することで中間層用塗布液を準備した。表面処理工程を終了したTi基体上にデッィプ法により塗布後、400℃で1時間の熱処理を行うことで、厚み230nmのZrO層を形成した。
三塩化イリジウム三水和物2.47g、タンタル(V)エトキシド1.22g、イソプロパノール98ml、シクロヘキサノール2mlを混ぜて、窒素雰囲気下で8時間攪拌することで中間層用塗布液を調整した。ZrO層を形成したTi基体上にデッィプ法により塗布後、500℃で1時間の熱処理を行うことで、厚み110nmのIrO−Ta層および導電経路が形成されたZrO/TiO層を形成後、該基体を陰極として電気めっき法によって厚さ3μmの白金めっき膜を形成した耐食導電被覆材料を合計10枚作製した。
比較参考例1
金属基体としてTi基体(JIS2種)を用いた。Ti基体は大きさが20×30mm、厚さが0.5mmの圧延材である。該基体に、ジルコンショットを用いたショットブラスト加工により、梨地仕上げを行った。次に、有機溶媒による脱脂処理後、3N塩酸中に30秒間浸漬させて酸化被膜除去を行い、Ti基体表面処理工程を終了した。
三塩化イリジウム三水和物3.52g、エタノール98ml、シクロヘキサノール2mlを混ぜて、窒素雰囲気下で8時間攪拌することで中間層用塗布液を調整した。表面処理工程を終了したTi基体上に刷毛塗法により塗布後、490℃で1時間の熱処理を行うことで、厚み50nmのIrO層および導電経路が形成されたTiO層(約100nm)を形成後、該基体を陰極として電気めっき法によって厚さ3μmの白金めっき膜を形成した耐食導電被覆材料を合計10枚作製した。
比較参考例2
金属基体としてNb基体を用いた。Nb基体は大きさが20×30mm、厚さが0.2mmの圧延材である。該基体に、ジルコンショットを用いたショットブラスト加工により、梨地仕上げを行った。次に、有機溶媒による脱脂処理後、6Nフッ酸中に1分間浸漬させて酸化被膜除去を行い、Nb基体表面処理工程を終了した。
表面処理工程を終了したNb基体を空気中、400℃で1時間の熱処理を行うことで、厚み225nmのNbO層を形成した。
三塩化ルテニウム三水和物2.09g、ニオブ(V)エトキシド0.64g、エタノール90ml、アセチルアセトン10mlを混ぜて、窒素雰囲気下で8時間攪拌することで中間層用塗布液を調整した。表面処理工程を終了したNb基体上にデッィプ法により塗布後、500℃で1時間の熱処理を行うことで、厚み75nmのRuO層および導電経路が形成されたNbO層を形成後、該基体を陰極として電気めっき法によって厚さ3μmの白金めっき膜を形成した耐食導電被覆材料を合計10枚作製した。
比較参考例3
金属基体としてNb基体を用いた。Nb基体は大きさが20×30mm、厚さが0.2mmの圧延材である。該基体に、ジルコンショットを用いたショットブラスト加工により、梨地仕上げを行った。次に、有機溶媒による脱脂処理後、6Nフッ酸中に1分間浸漬させて酸化被膜除去を行い、Nb基体表面処理工程を終了した。
三塩化ルテニウム三水和物2.61g、エタノール98ml、シクロヘキサノール2mlを混ぜて、窒素雰囲気下で8時間攪拌することで中間層用塗布液を調整した。表面処理工程を終了したNb基体に刷毛塗法により塗布後、475℃で1時間の熱処理を行うことで、厚み50nmのRuO層および導電経路が形成されたNbO層(約120nm)を形成後、該基体を陰極として電気めっき法によって厚さ3μmの白金めっき膜を形成した耐食導電被覆材料を合計10枚作製した。
実施例2
金属基体としてZr基体を用いた。Zr基体は大きさが20×30mm、厚さが0.2mmの圧延材である。該基体に、ジルコンショットを用いたショットブラスト加工により、梨地仕上げを行った。次に、有機溶媒による脱脂処理後、6Nフッ酸中に1分間浸漬させて酸化被膜除去を行い、Zr基体表面処理工程を終了した。
チタニウムテトラ‐n‐ブトキシド3.40g、ブタノール95ml、アセチルアセトン5mlを混ぜて、窒素雰囲気下で8時間攪拌、濃縮後、ブタノールで希釈し濃度が0.005Mに調製することで中間層用塗布液を準備した。表面処理工程を終了したZr基体上にデッィプ法により塗布後、400℃で1時間の熱処理を行うことで、厚み310nmのTiO層を形成した。
三塩化ロジウム三水和物2.11g、ジルコニウムテトラ‐n‐ブトキシド0.77g、エタノール50ml、ブタノール45ml、シクロヘキサノール2ml、アセチルアセトン3mlを混ぜて、窒素雰囲気下で8時間攪拌することで中間層用塗布液を調整した。TiO層を形成したZr基体上に刷毛塗法により塗布後、500℃で1時間の熱処理を行うことで、厚み150nmのRh−ZrO層および導電経路が形成されたTiO/ZrO層を形成後、還元剤にヒドラジンを用いた無電解めっき法によって厚さ2μmの白金めっき膜を形成した耐食導電被覆材料を合計10枚作製した。
比較参考例4
金属基体としてTa基体を用いた。Ta基体は大きさが20×30mm、厚さが0.2mmの圧延材である。該基体に、炭化珪素を用いたショットブラスト加工により、梨地仕上げを行った。次に、有機溶媒による脱脂処理後、6Nフッ酸中に1分間浸漬させて酸化被膜除去を行い、Ta基体表面処理工程を終了した。
表面処理工程を終了したTa基体を空気中、525℃で1時間の熱処理を行うことで、厚み115nmのTa層を形成した。
パラジウム(II)アセチルアセトナート1.37g、塩化白金(IV)酸六水和物2.33g、無水四塩化すず0.26g、トルエン45ml、ブタノール45ml、エタノール5ml、純水5mlを混ぜて、窒素雰囲気下で8時間攪拌することで中間層用塗布液を調整した。Ta層を形成したTa基体上にデッィプ法により塗布後、500℃で1時間の熱処理を行うことで、厚み130nmのPd−Pt−SnO層および導電経路が形成されたTa層を形成後、還元剤にヒドラジンを用いた無電解めっき法によって厚さ2μmの白金めっき膜を形成した耐食導電被覆材料を合計10枚作製した。
実施例3
金属基体としてV基体を用いた。V基体は大きさが20×30mm、厚さが0.2mmの圧延材である。該基体に、炭化珪素を用いたショットブラスト加工により、梨地仕上げを行った。次に、有機溶媒による脱脂処理後、6Nフッ酸中に1分間浸漬させて酸化被膜除去を行い、V基体表面処理工程を終了した。
タンタル(V)‐n‐ブトキシド5.47g、ブタノール97ml、アセチルアセトン3mlを混ぜて、窒素雰囲気下で8時間攪拌することで中間層用塗布液を調整した。表面処理工程を終了したV基体上にデッィプ法により塗布後、520℃で1時間の熱処理を行うことで、厚み400nmのTa層を形成した。
塩化白金酸六水和物5.18g、ブタノール100mlを混ぜて、窒素雰囲気下で8時間攪拌することで中間層用塗布液を調整した。Ta層を形成したV基体上に刷毛塗法により塗布後、500℃で1時間の熱処理を行うことで、厚み150nmのPt層および導電経路が形成されたTa/V層を形成後、還元剤にヒドラジンを用いた無電解めっき法によって厚さ2μmの白金めっき膜を形成した耐食導電被覆材料を合計10枚作製した。
(比較例1)
実施例1において、中間層をストライクめっき法にてCr層を形成した以外は、同様に実施して白金めっき膜を形成し、被覆材料を合計10枚作製した。
(比較例2)
比較参考例1において、中間層を形成しなかった以外は、同様に実施して白金めっき膜を形成し、被覆材料を合計10枚作製した。
(比較例3)
比較参考例2において、中間層をストライクめっき法にてNi層を形成した以外は、同様に実施して白金めっき膜を形成し、被覆材料を合計10枚作製した。
(比較例4)
比較参考例3において、中間層を形成しなかった以外は、同様に実施して白金めっき膜を形成し、被覆材料を合計10枚作製した。
(比較例5)
実施例2において、中間層を形成しなかった以外は、同様に実施して無電解白金めっき膜を形成し、被覆材料を合計10枚作製した。
(比較例6)
比較参考例4において、中間層をストライクめっき法にてNi層を形成した以外は、同様に実施して無電解白金めっき膜を形成し、被覆材料を合計10枚作製した。
(比較例7)
実施例3において、第一中間層として置換めっきにてZnめっきを、続いて第二中間層としてストライクめっき法にてCu層を形成した以外は、同様に実施して無電解白金めっき膜を形成し、被覆材料を合計10枚作製した。
(各材料の用途評価)
1:給電用端子・ロールなどめっき装置構成用材料としての評価
このようにして作製した本発明にかかる耐食導電被覆材料と比較例に対して、硫酸銅めっき浴環境に近い模擬液である60℃に保持された、塩酸を50ppm含む硫酸水溶液(250g/L)を用いて浸漬試験を90日間実施し、金属基体から模擬液中に溶出された金属イオン濃度をシーケンシャル形高周波プラズマ発光分析装置によって測定し、耐食性を比較した結果(5回実施した平均値)を表1に示す。また、電気的特性を図るために、初期表面抵抗と浸漬試験実施後の比較を行った結果を表2に示す。
2:色素増感太陽電池用電極としての評価
次に、作製した本発明にかかる耐食導電被覆材料と比較例で作製した材料に対して、太陽電池作動環境に近い模擬液である50℃に保持された4wt%Iおよびヨウ化物塩含有アセトニトリル溶液を用いて浸漬試験を30日間実施し、金属基体から模擬液中に溶出された金属イオン濃度をシーケンシャル形高周波プラズマ発光分析装置によって測定し、耐食性を比較した結果を表3に示す。また集電特性を図るために、初期表面抵抗と浸漬試験実施後表面処理抵抗の比較を行った結果を表4に示す。
さらに、実施例1および比較例1において作製した被覆材料を対極電極として用いて色素増感太陽電池セルを作製した。さらに、実施例1および比較例1に対して、太陽電池作動環境に近い模擬液である50℃に保持された4wt%Iおよびヨウ化物塩含有アセトニトリル溶液を用いて浸漬試験を30日間実施後、同様にセルを作製し、浸漬試験前後における太陽電池特性の変化について評価した結果について表5に示す。
すなわち、透明導電膜付きの透明基体としてFTOガラス(日本板ガラス製25mm×50mm)を用い、その表面に二酸化チタンペースト(昭和電工製)をバーコーターで塗布し、乾燥後450℃で30分焼成してそのまま室温となるまで放置し、10μmの厚さの多孔質酸化チタン半導体電極を形成した。
続いて色素吸着工程に移った。増感色素として、一般にN3dyeと呼ばれるビス(4,4’−ジカルボキシ−2,2’−ビピリジン)ジイソチオシアネートルテニウム錯体を使用し、色素濃度0.5mmol/Lとなるよう調製したエタノール溶液中に、一旦150℃まで加熱した前記多孔質酸化チタン半導体電極を浸漬し、遮光下1晩静置した。その後エタノールにて余分な色素を洗浄してから風乾することで太陽電池の半導体電極を作製した。さらに、得られた半導体電極の酸化チタン投影面積が25mm2になるよう、半導体層を研削した。
前記のように作製した半導体電極と、実施例1もしくは比較例1において作製した電極を対極として該半導体電極に対向するよう設置し、電解質を毛管現象にて両電極間に含浸させた。電解質としては、溶媒をメトキシアセトニル、還元剤としてヨウ化リチウム、酸化剤としてヨウ素、添加剤としてt−ブチルピリジン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドを含む溶液を用いた。
上記の太陽電池セルについて、5mm角の窓をつけた光照射面積規定用マスクを装着させた上で、光量100mW/cm2の擬似太陽光を照射して開放電圧(以下、「Voc」と略記する。)、短絡電流密度(以下、「Jsc」と略記する。)、形状因子(以下、「FF」と略記する。)、および光電変換効率を評価した。
「Voc」、「Jsc」、「FF」及び光電変換効率の各測定値については、より大きい値が太陽電池セルの性能として好ましいことを表す。
3:電気化学反応槽:固体高分子型燃料電池用セパレータとしての評価
さらに、プレス加工にてガス流路を形成したTi基体を用いて、比較参考例1および比較例2に記載の方法に従って基体を処理後、白金めっきの代わりに、2μm厚みの金めっき膜を形成しセパレータを製造した。両極に触媒を担持した固体電解質膜、ガス拡散電極、前述のセパレータを用いて単電池を組み立て、燃料として高純度水素ガスおよび空気を用いて発電を行い、I−V特性を調べた。続いて、1000時間の連続発電試験を実行した後に同様にI−V特性を調べた結果を図1に示した。
その表1の結果によれば、本発明にかかる各耐食導電被覆材料は、浸漬試験90日後においてもほとんど変化することなく基体が保護され、給電用端子・ロールなどめっき装置構成用材料用途に必要な耐食特性に優れていることが認められた。これに対し、同様に浸漬試験を行った比較例2、4、5では金属基体上に直接Ptめっき層を形成したために、密着性が非常に悪く、いずれの試験片もPtめっき層が剥離し、基体が大きく腐食されているのが確認された。比較例1、3、6、7では、Ptめっき層のピンホールから腐食液がしみ込み、初期には中間層とPtめっき層間で局部電池が形成することで基体が保護されていたが、最終的には中間層が消失した部位から基体の腐食が開始されることが確認できた。
その表2の結果によれば、本発明にかかる各耐食導電被覆材料は、浸漬試験90日後においてもほとんど変化することなく基体の導電特性を維持し、給電用端子・ロールなどめっき装置構成用材料用途に必要な導電特性に優れていることが認められた。これに対し、同様に浸漬試験を行った比較例2、4、5では金属基体上に直接Ptめっき層を形成したために、密着性が非常に悪く、いずれの試験片もPtめっき層が剥離し基体の腐食が進行しているために、導電特性を測定することができなかった。比較例1、3、6、7では、Ptめっき層のピンホールから腐食液がしみ込み、初期には中間層とPtめっき層間で局部電池が形成することで基体が保護されていたが、基体表面には酸化被膜が形成されて、浸漬日数が経過すると、耐食導電被覆材自身の抵抗が高くなる傾向になることが確認できた。
その表3の結果によれば、本発明にかかる各耐食導電被覆材料は、浸漬試験30日後においてもほとんど変化することなく基材を保護し、色素増感太陽電池用電極に必要な耐食特性に優れていることが認められた。これに対し、同様に浸漬試験を行った比較例2、4、5では金属基体上に直接Ptめっき層を形成したために、密着性が非常に悪く、いずれの試験片もPtめっき層の剥離し、基体が大きく腐食されているのが確認された。比較例1、3、6、7では、Ptめっき層のピンホールから腐食液がしみ込み、初期には中間層とPtめっき層間で局部電池が形成することで基体が保護されていたが、最終的には中間層が消失した部位から基体の腐食が開始されることが確認できた。
その表4の結果によれば、本発明にかかる各耐食導電被覆材料は、浸漬試験30日後においてもほとんど変化することなく基体の導電特性を維持し、色素増感太陽電池用電極に必要な導電特性に優れていることが認められた。これに対し、同様に浸漬試験を行った比較例2、4、5では金属基体上に直接Ptめっき層を形成したために、密着性が非常に悪く、いずれの試験片もPtめっき層が剥離し基体の腐食が進行しているために、導電特性を測定することができなかった。比較例1、3、6、7では、Ptめっき層のピンホールから腐食液がしみ込み、初期には中間層とPtめっき層間で局部電池が形成することで基体が保護されていたが、基体表面には酸化被膜が形成されて、浸漬日数が経過すると、耐食導電被覆材自身の抵抗が高くなる傾向になることが確認できた。
表5の結果によれば、本発明における耐食導電被覆材料は、浸漬試験後30日においても良好な太陽電池特性を維持できていることが認められた。これに対し、同様に浸漬試験を行なった比較例1では、浸漬時間の経過とともに金属基体からがPtめっき層の一部が剥離し、中間層であるCr層および金属基体の溶解が始まるとともに、電解液との接触により短絡して発電が不可能になることが確認できた。
図1によれば、初期には比較参考例1(金めっき)および比較例2(金めっき)のI−V特性曲線は良好な発電特性を示した。しかし、1000時間の連続発電試験を実施後のI−V特性曲線を比較すると、比較参考例1においては性能の劣化がほとんど見られず、耐食導電被覆材料が良好な集電性能を維持され、優れた発電特性を確認した。それに対して比較例2では、耐食導電被覆材料のTi基体が腐食して抵抗が高くなったうえに、溶解した金属イオンがプロトン伝導性電解質膜に悪影響を与えた結果、I−V特性の低下が見られ、耐食導電被覆材料として劣ることが確認された。
Figure 2013237934
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本発明の耐食導電被覆材料は、めっき装置や電気化学反応槽の構成用部材、例えば給電用の端子、ロール、電解槽そして色素増感太陽電池用電極を主たる用途とするが、固体高分子形燃料電池セパレータへも好適に使用できる。
比較参考例1および比較例2にて製作したセパレータを用いた単電池の電池特性(I−V特性曲線)を示す図である。

Claims (4)

  1. 第4族及び第5族からなる群から選ばれる少なくとも一つの金属からなる基体上に、
    熱分解法によって4族金属の酸化物及び/または5族金属の酸化物層を形成する工程、
    次いで、該酸化物層上に、含白金族金属化合物のアルコール溶液からなる塗布液を塗布、乾燥、焼成し、白金族金属含有層及び/またはその酸化物層を形成する工程、
    次いで、白金族金属めっき層を前記白金族金属含有層及び/またはその酸化物層上に形成する工程
    を包含する
    耐食導電被覆材料の製造方法において、
    白金族金属層及び/またはその酸化物層を形成する工程における焼成温度が、350℃以上600℃以下であることを特徴とする耐食導電被覆材料の製造方法。
  2. 前記熱分解法による4族金属の酸化物及び/または5族金属の酸化物層が、
    チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属酸化物層であり、かつ、該層の厚さが50nm以上700nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐食導電被覆材料の製造方法。
  3. 前記白金族金属含有層及び/またはその酸化物層が、
    イリジウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金からなる群から選ばれる少なくとも一つの白金族金属又はその酸化物を含んでなる層であり、かつ、該層の厚さが10nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐食導電被覆材料の製造方法。
  4. 前記金属からなる基体が、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの金属、またはそれらの金属を主成分とする合金からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の耐食導電被覆材料の製造方法。
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