JP2013221792A - タイヤバランス検査装置の校正方法及びタイヤバランス検査装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のタイヤバランス検査装置1の校正方法は、タイヤを装着可能なリムが上部に設けられていて且つリムを鉛直方向を向く回転軸回りに回転させるスピンドル軸2と、スピンドル軸2の軸方向に離間した所定の2箇所に設けられてスピンドル軸2に発生する荷重を計測する荷重計測部と、を有するものであって、スピンドル軸2に発生する荷重の計測値Fをタイヤに生じる不釣り合い量Bへ変換する荷重変換パラメータCに関し、不釣合い計測を行う状態での装置の固有振動数と固有振動モードを基にして、荷重変換パラメータCを算出することを特徴とするものである。
【選択図】図1
Description
図1及び図2には、特許文献1、特許文献2に開示された代表的なタイヤバランス検査装置の模式図が示してある。これらの図に示す如く、リムを介してタイヤが取り付けられたスピンドル軸は回転駆動自在に支持されていて、回転時にタイヤに発生するアンバランス荷重の大きさ、方向、回転位相を装置に備えられた上下2つのロードセルにて検知し、このタイヤバランス検査装置では得られた検出値を基にタイヤのアンバランス荷重が測定される。
この式(2)の行列Cを精確に求めることができれば、計測された荷重F1及びF2からアンバランス力B1、B2を精確に算出することができる。変換行列Cを精確に求めることを、変換行列Cの校正又はタイヤ試験装置の校正などと呼ぶ。
この図3に示すように、スピンドル軸の回転周波数が検査装置の固有振動数に近づくにつれてタイヤから発生する実際の不釣合い力よりも増幅された値が計測部で観測される。図3においてスピンドル軸の回転周波数が検査装置の固有振動数の50%(横軸の値が0.5)まで近づくと、静的状態の時に比べて30%程度増幅された荷重が検出荷重Fで計測される。つまり、上述したように力の釣合いとモーメントの釣合いから求められる変換行列Cには、固有振動による増幅効果が含まれていないために、固有振動によって計測値が増加した分がそのまま誤差となってしまうのである。
しかしながら、リムの大きさや位置変更によって装置の固有振動数が変わる為に、変換行列Cも変化する。それゆえ、各種リム状態に応じて、予め、数多くの変換行列を求めておく必要があり、検査の手間や効率を著しく低下させてしまう。
即ち、本発明のタイヤバランス検査装置の校正方法は、タイヤを装着可能なリムが上部に設けられていて且つ前記リムを鉛直方向を向く回転軸回りに回転させるスピンドル軸と、前記スピンドル軸の軸方向に離間した所定の2箇所に設けられて前記スピンドル軸に発生する荷重を計測する荷重計測部と、を有するタイヤバランス検査装置の校正方法であって、前記スピンドル軸に発生する荷重の計測値Fを前記タイヤに生じる不釣り合い量Bへ変換する荷重変換パラメータCに関し、不釣合い計測を行う状態での装置の固有振動数と固有振動モードを基にして、前記荷重変換パラメータCを算出することを特徴とするものである。
本発明者は、リムの径・幅によって変化する固有振動数の状態に応じて適切な荷重変換パラメータCを算出すれば、毎回校正作業を行わなくても済むことを知見し、本発明を完成させたのである。
なお、好ましくは、前記リムに質量が既知であって回転時に発生する不釣り合い量Bも既知である校正用ウェイトを設置し、校正用ウェイトを回転させた際に発生する不釣合い力Bと、前記2箇所の荷重計測部で計測される計測値Fと、回転軸の固有振動数及び固有振動モードと、を計測し、計測された不釣合い力Bと計測値Fと固有振動数及び固有振動モードとを基に、前記基準変換パラメータAstを求めるとよい。
一方、本発明のタイヤバランス検査装置は、タイヤを装着可能なリムが上部に設けられていて且つ前記リムを鉛直方向を向く回転軸回りに回転させるスピンドル軸と、前記スピンドル軸の軸方向に離間した所定の2箇所に設けられて前記スピンドル軸に発生する荷重を計測する荷重計測部と、前記荷重計測部から得られるスピンドル軸に発生する荷重の計
測値Fを用いて、上述した校正方法を行う不釣り合い算出部と、を備えていることを特徴とする。
本発明のタイヤバランス検査装置1を、図面に基づき以降に説明する。
本実施形態のタイヤバランス検査装置1は、タイヤTの回転させたときに発生するバランス力(不釣り合い力)を測定する検査装置である。
図1に模式的に示されるように、タイヤバランス検査装置1は、タイヤTを保持するスピンドル軸2と、このスピンドル軸2を軸心回りに回転自在に支持するハウジング3と、を備えている。
ハウジング3は、スピンドル軸2の外径より大きな内径を備えた円筒体であり、この円筒体の内壁に設けられた上下一対の軸受部4を介してスピンドル軸2を回転自在に支持している。このハウジング3は、1方向の力成分(図1参照)を計測できるロードセル5(荷重計測部)を介して固定フレーム6に連結されている。なお、図1の例では、ハウジング3は上下一対のロードセル5を介して固定フレーム6に取り付けられている。
回転中のタイヤTに発生したバランス荷重は、ロードセル5(荷重計測部)で計測され、不釣り合い算出部8にアンバランス荷重(不釣り合い力)の波形信号として送られる。なお、2箇所のロードセル5は、タイヤTから発生する偏心による不釣合い力のうち、図2に示す方向の荷重F1、F2をそれぞれ測定する。
以下、この不釣り合い算出部8で用いられる変換行列Cの導出について、詳細に述べる。
出荷重F1及びF2は、荷重とモーメントの釣合いから式(1)に示すように表すことができる。なお、a,b,cは、図1の如く、タイヤバランス検査装置1の下端からの各部への距離である。
なお、実験データとして得られたバランス力Bや計測荷重Fは、複素数で表現されて式(4)や式(5)のように記述される。式中のReは実部、Imは虚部、nは2以上の整数である。
つまり、図9に示す如く、このようにして行われた校正実験時のウェイトの位置をb0、c0、またその時の変換行列をC0とおき、実際にタイヤバランス(アンバランス)を評価する際の位置をb、cとすると、実際の変換行列Cは、式(7)で表される。
ところで、本発明の校正方法では、次のようにして校正行列Cを算出している。
まず、上述した式(3)と同様に、各パラメータが未知数の変換行列Cを式(8)に示すように考える。
固有振動数の算出は計測荷重Fの実験データを周波数分析することで行われ、また固有振動数はこの実験データを1次成分(図4(a)に示す成分)と2次成分(図4(b)に示す成分)とに分離してそれぞれ求められる。
また、固有振動モードは、各成分の固有振動数において上側のロードセル5で計測される計測荷重F1と下側のロードセル5で計測される計測荷重F2との振幅比r(=F2/F1)として表現される。
具体的には、固有振動数及び固有振動モードは、タイヤの急激なインフレーション(膨張)時に伴って起こる振動やハンマーなどの治具を用いて意図的に起こされる振動を用い、FFTなどの周波数分析により求められる。応答拡大係数αとモード分離行列Rは、式(9)のように求められる。
このようにして求められた1次の応答拡大係数α1、2次の応答拡大係数α2、モード分離行列R1及び2次のモード分離行列R2を用いれば、校正実験データの計測荷重F1、F2における1次モード成分と2次モード成分とが導かれる。
次に、有限要素法(FEM)を用いて、本発明の校正方法の効果を検証した。
解析に用いたタイヤ試験装置(タイヤバランス検査装置1)は、上述したa、b、c(図2中に示すa、b、c)の距離がa=180mm、b=555mm、c=165mmとされたものであり、スピンドル軸2を梁要素、ハウジング3を剛体要素、ロードセル5と軸受部4とをバネ要素としてモデル化したものである。なお、装置全体の質量は約400kgとした。
このことから、上述した校正手段を用いることにより、従来の方法に比べてバランス荷重Bを正確に求めることができると判断される。
(ステップ1)
まず、代表的なタイヤ(校正用のタイヤ)を用意し、このタイヤをリムを介してスピンドル軸2の上端側に取り付ける。そして、取り付けられたタイヤにエアを送り、タイヤをインフレーション(膨張)させる。
(ステップ2)
インフレーションに伴って発生するタイヤの振動をロードセル5などを用いて計測する。なお、インフレーション時の振動が小さい場合には、ハンマーなどの打撃具を用いて振動を発生させても良い。
(ステップ3)
計測されたインフレーション時または打撃時の振動データに対してフーリエ変換(FFT)に基づく振動解析を行い、タイヤが取り付けられた状態での1次の固有振動数f1と2次の固有振動数f2とを算出する。また、各固有振動数におけるモード荷重の値から1次の振動モードr1と2次の振動モードr2を算出する。さらに、上述した式(9)から応答拡大係数α1、α2とモード分離行列R1、R2とを算出する。
(ステップ4)
校正ウェイトを取り付けずにタイヤバランス検査装置1を運転させ、差分データの基準となる計測データF0を計測する。
(ステップ5)
次に、重さが既知の校正ウェイトを取り付けてタイヤバランス検査を行い、ロードセル5で計測される計測荷重Fとアンバランス荷重Bのデータを得る。
(ステップ6)
ステップ5で得られた実験データのデータ数が所定の実験回数nに達したか否かを判断する。得られたデータ数が所定の実験回数nに達していないときはステップ7に進み、得られたデータ数が所定の実験回数nに達した際にはステップ8に進む。
(ステップ7)
ステップ7では、校正ウェイトの取り付け位置を変更し、さらにステップ5に戻って新たな位置(異なる実験条件)での実験データを採集する。
(ステップ8)
ステップ8では、得られたn個の計測データと、ステップ4で求められた計測データF0との差分を計算する。
(ステップ9)
ステップ3で求められた応答拡大係数α1、α2とモード分離行列R1、R2、及びステップ8で求められたn個の差分データを式(10’)に代入して、行列(基準変換行列)Astを算出する。
(ステップ10)
最後に、得られた行列Astと行列Astを算出した際のb0、c0を記憶して、校正作業を終了する。
(ステップ11)
上述した校正作業におけるステップ1と同じように、バランスの計測を行うタイヤを用意し、このタイヤをリムを介してスピンドル軸2の上端側に取り付ける。
(ステップ12)
ステップ2と同じように、インフレーションや打撃に伴って発生するタイヤの振動をロードセル5などを用いて計測する。
(ステップ13)
計測された振動データに対してフーリエ変換(FFT)に基づく振動解析を行い、タイヤが取り付けられた状態での1次の固有振動数f1と2次の固有振動数f2とを算出する。また、各固有振動数におけるモード荷重の値から1次の振動モードr1と2次の振動モードr2を算出する。さらに、式(9)から応答拡大係数α1、α2とモード分離行列R1、R2とを算出する。
(ステップ14)
上述した校正作業で求められた基準変換行列である行列Astと、この基準変換行列が求められた際の距離データb0、c0をメモリなどから呼び出し、式(7)に代入して変換行列C’を求める。
(ステップ15)
次に、取り付けたタイヤを回転させて、計測荷重Fを計測する。この計測荷重Fは、上述した式(5)のような行列として与えられる。
(ステップ16)
上述したステップ8と同じように、予め求められていたF0との差分を算出し、装置の不釣り合いやリムの偏心などに由来する誤差荷重を取り除く。
(ステップ17)
ステップ16で誤差荷重が取り除かれた計測荷重Fのデータと、ステップ14で得られた変換行列C’に基づいて、タイヤのアンバランス荷重Bを算出する。
まず、変換行列Cの逆行列C−1を、以降では行列A(変換行列A)とおく。つまり、この行列Aは式(13)のように表現できる。
なる。
このようにして求められた変換行列A1stを、静的係数行列Ast(基準変換パラメータAst)と動的効果による増分を示す行列Adyとに分けて式(21)のように表示する。
なお、上述したように校正実験を実施して、行列Astや行列Adyが求められた状態においては、式(3)で定義される変換行列Cは、次式(28)により算出できる。
タイヤを実際に回転させてそのアンバランス荷重を計測する前に、前述の方法により検査装置の固有振動数f1'とf2'、固有振動モードr1'とr2'を求める。これら固有振動数と固有振動モードから、式(23)から動的増幅係数α1'とα2'を、式(17)、(18)からモード変換行列R1'とR2'を算出する。
ことから、式(29)〜(31)を用いて、次式(32)で表される。
それゆえ、次に示す方法を用いて補正を行う。まず、図9(a)に示す様に、校正実験時のリム位置をb0、c0とおく。この位置で算出される荷重Bを図9(b)に示す実運転時のリム位置b、cでの値に変換する。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 スピンドル軸
3 ハウジング
4 軸受部
5 ロードセル(荷重計測部)
6 固定フレーム
7 駆動用モータ
8 不釣り合い算出部
T タイヤ
Claims (6)
- タイヤを装着可能なリムが上部に設けられていて且つ前記リムを鉛直方向を向く回転軸回りに回転させるスピンドル軸と、前記スピンドル軸の軸方向に離間した所定の2箇所に設けられて前記スピンドル軸に発生する荷重を計測する荷重計測部と、を有するタイヤバランス検査装置の校正方法であって、
前記スピンドル軸に発生する荷重の計測値Fを前記タイヤに生じる不釣り合い量Bへ変換する荷重変換パラメータCに関し、不釣合い計測を行う状態での装置の固有振動数と固有振動モードを基にして、前記荷重変換パラメータCを算出することを特徴とするタイヤバランス検査装置の校正方法。 - 前記固有振動モードを基にして荷重変換パラメータCを求めるにあたっては、2箇所の荷重計測部で計測された計測値の比率を利用し前記荷重変換パラメータCを算出することを算出することを特徴とする請求項1に記載のタイヤバランス検査装置の校正方法。
- 固有振動の影響を受けないパラメータである基準変換パラメータAstを予め求めておき、求められた基準変換パラメータAstを用いて荷重変換パラメータCを算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤバランス検査装置の校正方法。
- 前記リムに質量が既知であって回転時に発生する不釣り合い量Bも既知である校正用ウェイトを設置し、
校正用ウェイトを回転させた際に発生する不釣合い力Bと、前記2箇所の荷重計測部で計測される計測値Fと、回転軸の固有振動数及び固有振動モードと、を計測し、
計測された不釣合い力Bと計測値Fと固有振動数及び固有振動モードとを基に、前記基準変換パラメータAstを求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤバランス検査装置の校正方法。 - 回転軸の固有振動数及び固有振動モードとを計測するに際しては、前記タイヤをリムに取り付けた状態においてタイヤに振動を加えることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤバランス検査装置の校正方法。
- タイヤを装着可能なリムが上部に設けられていて且つ前記リムを鉛直方向を向く回転軸回りに回転させるスピンドル軸と、
前記スピンドル軸の軸方向に離間した所定の2箇所に設けられて前記スピンドル軸に発生する荷重を計測する荷重計測部と、
前記荷重計測部から得られるスピンドル軸に発生する荷重の計測値Fを用いて、請求項1〜5のいずれかに記載された校正方法を行う不釣り合い算出部と、
を備えていることを特徴とするタイヤバランス検査装置。
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