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JP2013215774A - フランジ構造体およびフランジ構造体製造方法 - Google Patents

フランジ構造体およびフランジ構造体製造方法 Download PDF

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JP2013215774A JP2012088569A JP2012088569A JP2013215774A JP 2013215774 A JP2013215774 A JP 2013215774A JP 2012088569 A JP2012088569 A JP 2012088569A JP 2012088569 A JP2012088569 A JP 2012088569A JP 2013215774 A JP2013215774 A JP 2013215774A
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Koji Matsunaga
浩司 松永
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Abstract

【課題】冷間鍛造による表面仕上げ状態と寸法精度の水準を確保しつつ、より成形荷重を低減可能であり、しかも低コスト化を図ることが可能なフランジ構造体およびフランジ構造体を用いた車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】中実又は中空状の所定形状素材に対して軸方向の荷重を付与することによって圧縮する側方押出し成形する。フランジ27に対して軸方向の荷重を付与することなくこのフランジ27が形成されてなる。側方押出し成形は常温以上で300℃以下の予熱を伴う成形である。
【選択図】図4

Description

本発明は、軸部材と、この軸部材から外径方向へ延びるフランジとを備えたフランジ構造体(例えば、車輪用軸受装置のハブ輪等)を成形するフランジ構造体およびこのようなフランジ構造体を用いた車輪用軸受装置に関する。
車輪用軸受装置には、第1世代と称される複列の転がり軸受を単独に使用する構造から、外方部材に車体取付フランジを一体に有する第2世代に進化し、さらに、車輪取付フランジを一体に有するハブ輪の外周に複列の転がり軸受の一方に内側転走面が一体に形成された第3世代、さらには、ハブ輪に等速自在継手が一体化され、この等速自在継手を構成する外側継手部材の外周に複列の転がり軸受の他方の内側転走面が一体に形成された第4世代のものまで開発されている。
車輪用軸受装置(3世代)は、前記したように、ハブ輪と、転がり軸受とが一体化されてなるものである。第3世代の車輪用軸受装置を図10に示す。ハブ輪10は、軸部材1と、この軸部材1の外径面から外径方向へ突出される車輪取付用フランジ2と、車輪取付用フランジ2の根元部に反軸部側に突設されるブレーキパイロット部3とを備えている。車輪取付用フランジ2は、軸部材1のアウトボード側端部(自動車への組み付け状態で車幅方向外側の端部:図10の左端部)に設けられる。各車輪取付用フランジ2にはスタッドボルト(ハブボルト)4が装着されている。
ハブ輪10のインボード側端部(自動車への組み付け状態で車幅方向内側の端部:図10の右端部)には小径段部6が形成されており、この小径段部6には内輪7が嵌め込まれている。内輪7の外周面には内側軌道面9が形成され、また、ハブ輪10の軸方向の中間部外周面には内側軌道面8が形成されている。ハブ輪10のインボード側の先端が径方向外方に加締めて広げられることにより加締部11が形成され、内輪7がハブ輪10に加締め固定されている。
転がり軸受の一部を構成する外方部材(外輪)12は、その内周に2列の外側軌道面13、14が設けられる中空の軸部材としての筒状本体部15と、その筒状本体部15の外周にフランジ(車体取付フランジ)16とを備える。そして、外方部材12の第1外側軌道面13とハブ輪10の第1内側軌道面8とが対向し、外方部材12の第2外側軌道面14と、内輪7の軌道面9とが対向し、これらの間に転動体17が介装される。また、転動体17は、ハブ輪10の軸部材1の外径面と外方部材12の内径面との間に配設される保持器18にて支持されている。
ところで、ハブ輪(内方部材)10や外方部材12は、一般には鍛造にて製造される。しかしながら、ハブ輪(内方部材)10や外方部材12は、前記したように、フランジ2,16が形成されている。しかも、これらのフランジ2,16は比較的面積が大きい。このため、これらを冷間鍛造にて成形する場合、大きな成形荷重を必要とする。また、熱間鍛造では、成形荷重を小さくできるが、酸化スケールや熱影響による変形のため寸法精度が劣り、後工程の取代を大きくとる必要がある。
そこで、従来には、フランジに対しては直接的に軸方向の荷重を付加せず、軸部のみに軸方向の荷重を付加することによって、フランジを成形するようにしたものがある(特許文献1)。また、温間域のうち300℃から500℃又は600℃から700℃の温度に加熱して低い成形荷重で成形する方法も提案されている(特許文献2)。
特許4581615号公報 特開2008−264871号公報
前記特許文献1における冷間側方押出しでは、通常の冷間鍛造に対して総荷重は低減されるものの、軸中央を加圧する金型の面圧は非常に高くなり、金型の変形や面圧過大による金型短寿命をきたすことになる。
また、前記特許文献2に記載されるように、温間域を使用する場合では、成形荷重をより下げることは可能である。しかしながら、それ以下の温度で適用可能な潤滑油、潤滑ボンデ皮膜などの高性能な潤滑剤が使用できず、鍛造後の表面の仕上げ状態と寸法精度が劣り、後工程の取代を大きくとる必要がある。
以上のように、冷間鍛造による表面仕上げ状態と寸法精度の水準を確保しつつ、より成形荷重を低減可能であり、しかも低コスト化を図ることが可能なフランジ構造体およびフランジ構造体を用いた車輪用軸受装置を提供する。
本発明のフランジ構造体は、中実又は中空状の軸部と、軸部から外径方向に延びる取り付け用のフランジとを有する車輪用軸受装置のフランジ構造体であって、中実又は中空状の所定形状素材に対して軸方向の荷重を付与することによって圧縮する側方押出し成形して、前記フランジが軸方向の荷重を付与することなく形成されてなり、前記側方押出し成形は常温以上300℃以下の予熱を伴う成形であるものである。
本発明のフランジ構造体によれば、側方押出し成形は常温以上300℃以下の予熱を伴うものであるので、潤滑性能を十分に得ることができる。しかも、常温以上300℃以下に予熱下で鍛造成形されるので、荷重低減の効果も発揮できる。ところで、一般的に材料を加熱し、再結晶温度以上、固相線温度未満の温度範囲で行う鍛造を熱間鍛造と呼び、冷間鍛造は積極的に材料を加熱しないで室温または室温に近い温度で行なう鍛造をいう。また、熱間鍛造と冷間鍛造の中間の温度で行う鍛造を温間鍛造という。冷間鍛造は熱間鍛造に比べて精度の高いものを生産する事が可能だが、室温で鍛造する為、ワーク(被加工物)の硬度が高く、ワークの大きさに比して大きな成形圧力を必要とする。従って、比較的小さい物の方が適している。
フランジに関して軸部と反対側に位置決め用の筒部を有し、この筒部は前記側方押出し成形の押し残し部からなるようにできる。また、フランジは、軸部から放射状に延びる複数個有し、各フランジにはそれぞれ取り付け孔が設けられ、かつ、各フランジは取り付け孔のピッチ円位置で繋がらないものであってもよい。
本発明の車輪用軸受装置は、内周に外側転走面を有する外方部材と、外周に内側転走面を有する内方部材と、内方部材と外方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容される転動体とを備えた車輪用軸受装置であって、外方部材と内方部材との少なくともいずれか一方に、前記フランジ構造体を用いるものである。
車輪用軸受装置のフランジ構造体製造方法は、中実又は中空状の軸部と、軸部から外径方向に延びる取り付け用のフランジとを有する車輪用軸受装置のフランジ構造体製造方法であって、中実又は中空状の所定形状素材を、前記中実又は中空状の軸部を成形する軸部形成部と軸部形成部から外径方向に延びるフランジ形成部とを備えた成形型に投入して、所定形状素材に常温以上で300℃以下の予熱を付与した状態で、その軸方向に圧縮して、この圧縮によりフランジ形成部に所定形状素材の一部を流動させることにより、フランジに軸方向の成形荷重を作用させないで、軸部とフランジとを一体に側方押出しにて成形するものである。
車輪用軸受装置のフランジ構造体製造方法によれば、側方押出し成形は常温以上300℃以下の予熱を伴うものであるので、潤滑性能を十分に得ることができる。しかも、常温以上300℃以下に予熱下で鍛造成形されるので、荷重低減の効果も発揮できる。
前記予熱の付与は、所定形状素材を成形するための素材と、所定形状素材と、成形型と、潤滑用加工油との少なくとも一つ以上を常温以上として行うことができる。
所定形状素材を成形するための素材と所定形状素材とのいずれかに、少なくとも1回以上焼鈍を行って、前記所定形状素材のビッカース硬度をHv170以下とした後、所定形状素材を成形型に投入することも可能である。焼鈍とは、加工硬化による内部のひずみを取り除き、組織を軟化させ、展延性を向上させる熱処理である。
本発明のフランジ構造体によれば、潤滑性能を十分に得ることができ、摩擦係数の増大を防止でき、表面に傷等がない高品質の製品を提供できる。しかも、荷重低減の効果も発揮できる。このため、冷間鍛造による表面仕上げ状態と寸法精度の水準を確保しつつ、より成形荷重を低減でき、予熱が300℃以下であるので、比較的低コストに抑えることができる。
位置決め用筒部が側方押出し成形の押し残し部からなるものでは、この位置決め用筒部と軸部と一体の高精度で成形でき、高品質の製品を提供できる。また、位置決め用筒部を別部材として成形して、軸部と一体化する場合に比べて、製造工程の簡略化や材料の節約等を図ることができ、低コストを達成できる。
フランジが取り付け孔のピッチ円位置で繋がらないものであれば、比較的大きなフランジを形成でき、しかも、軸部とフランジとの繋ぎ部において、肉厚が大きくならずに十分な強度を確保できる。
素材、所定形状素材、金型(成形型)、加熱用の潤滑油の少なくとも一方以上を温間域に達することの無い温度まで加熱することで、成形荷重の低減および金型寿命の確保と、鍛造後の表面仕上げと寸法精度の確保を両立させることができる。
焼鈍処理により、成形前の硬度をHvで170以下とさせた素材を使用することにより、成形型による成形が安定する。
本発明のフランジ構造体を用いた車輪用軸受装置の断面図である。 前記図1に示す車輪用軸受装置のハブ輪の平面図である。 前記図1に示す車輪用軸受装置の外方部材の簡略平面図である。 車輪用軸受装置のハブ輪を成形するための成形型を示し、(a)は成形前を示す断面図であり、(b)は成形中を示す断面図である。 前記図2に示すハブ輪の成形工程を示す簡略図である。 車輪用軸受装置の外方部材を成形するための成形型を示し、(a)は成形前を示す断面図であり、(b)は成形中を示す断面図である。 前記図3に示す外方部材の成形工程を示す簡略図である。 温度と荷重比との関係を示すグラフ図である。 温度と摩擦係数との関係を示すグラフ図である。 一般的な車輪用軸受装置の簡略断面図である。
以下本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図1は、本発明のフランジ構造体を用いた車輪用軸受装置を示す。車輪用軸受装置は、内周に外側転走面21A,21Bを有する外方部材22と、外周に内側転走面23A,23Bを有する内方部材24と、外方部材22と内方部材24のそれぞれの転走面21A,21B、23A、23B間に転動自在に収容される転動体25とを備えたものである。また、転動体25は、外方部材22の内面と内方部材24の外径面との間に配設される保持器40にて保持される。
内方部材24は、ハブ輪30と、このハブ輪30に付設される内輪31とからなる。ハブ輪30は、中実状の軸部26と、この軸部26から外径方向に延びる取り付け用フランジ(車輪取り付けフランジ)27と、フランジ27に関して軸部26と軸方向反対側に設けられる位置決め用筒部(パイロット部)28とからなる。このパイロット部28は、軸部26と同一軸線上に配設される。
フランジ27は、図2に示すように、周方向に沿って約90°ピッチで4個配設され、各フランジ27には取り付け孔29が設けられる。この場合、各取り付け孔29は、同一円周上に配設される。また、ピッチ円(取り付け孔29の中心を通る円)PCD上において、繋がらないように設定している。この取り付けボルト35が装着されている。
ハブ輪30の軸部26の反フランジ側(インボード側)には、小径段部32が形成され、この小径段部32に前記内輪31が嵌着されている。この際、軸部26の小径段部32の反フランジ側端部に筒部32a(図5(d)参照)が形成され、この筒部32aの端部が外径方向に加締られて加締部33を形成する。この加締部33と、小径段部32を形成するための段部34をもって、小径段部32に装着された内輪31の軸方向の抜けを規制する。なお、車両に取付けた状態で車両の車幅方向の外側寄りとなる側をアウトボード側と呼び、車両の中央寄りとなる側をインボード側と呼ぶ。
ハブ輪30の軸部26のフランジ側の外径面に、アウトボード側の転走面23Aが形成され、内輪31の外径面にインボード側の転走面23Bが形成される。
外方部材22は、内径面のアウトボード側の転走面21A及びインボード側の転走面21Bが形成された短筒状(中空状)の軸部36と、この軸部36から外径方向に延びる車体取り付け用の4個のフランジ37とを備える。すなわち、中空状の軸部36と、この軸部36から外径方向に延びる取り付け用フランジ(車輪取り付けフランジ)37と、フランジ37に関して軸部36と軸方向反対側に設けられる位置決め用筒部(パイロット部)38とからなる。このパイロット部38は、軸部36と同一軸線上に配設される。
4個のフランジ37は、前記フランジ27と相違して周方向に等ピッチで配設されるものではなく、37aのフランジと37bのフランジとの配設ピッチと、37cのフランジと37dのフランジとの配設ピッチとを同一の短ピッチとし、37dのフランジと37aのフランジとの配設ピッチと、37bのフランジと37cのフランジとの配設ピッチとを同一の長ピッチとしている。
各フランジ37には取り付け孔39が設けられる。この場合、各取り付け孔39は、同一円周上に配設される。また、ピッチ円(取り付け孔29の中心を通る円)PCD上において、繋がらないように設定している。
図4は、内方部材24に用いられるハブ輪30を成形するための成形型50を示す。成形型50は、上金型51と下金型52とを備え、上金型51には、パイロット部28の外径φDと略同径の孔51a(図5(d)参照)が形成される。また、孔51a内には、リングパンチ55とパンチ54が摺動自在に配置される。上金型51の下面と下金型52の上面との間に、径方向外方に向かって延びる放射状溝53が形成されている。なお、放射状溝53は、上金型51又は下金型52のみに形成されてもよい。
また、下金型52には軸部を成形する孔52aが設けられ、この下金型52は保持体57にて受けられる。この保持体57にはエジェクタピン58が挿通され、このエジェクタピン58にて、素材(所定形状素材Sa)が受けられる。下金型52の孔52aが軸部形成部41を構成し、放射状溝53がフランジ形成部42を構成する。
ところで、ハブ輪30を成形する場合、まず、図5(c)に示すような所定形状素材Saを成形する。この場合、中実状(円柱状)の素材S(図5(a)参照)に前方押出し成形を施すことにより、図5(b)に示すような前素材S1を成形し、次いで、前素材S1の頭部をヘディングしてパイロット部28の外径φDとほぼ同径まで漬すことで、図5(c)に示す所定形状素材Saを成形する。そして、この所定形状素材Saに対して前記図5に示す成形型50を用いて押し込み方向と直交する側方押出し成形を施すことにより、図5(d)及び図6(b)に示すように、車輪取り付けフランジ27とパイロット部28が一体のハブ輪30を成形する。
図5(a)の素材Sは例えばせん断またはのこ刃による切断によって形成することができ、この素材Sを形成した後、図5(b)、図5(c)、図5(d)の各工程を順次行うことになる。
この場合、成形型50では、図4(a)に示すように、下金型52の孔52aに所定形状素材Saの軸部を挿入する。この状態では、エジェクタピン58にてこの所定形状素材Saを受ける。次に、パンチ54とリングパンチ55とを下降させることによって、図4(b)に示すように、パンチ54が所定形状素材Saの頭部上面に窪みを成形し、更にリングパンチ55が所定形状素材Saの頭部端面に接して軸方向に圧縮することにより、所定形状素材Saの頭部外周部が放射状溝53にパンチの進行方向とは直交する方向(側方)に押し出される。これにより、車輪取り付けフランジ27が軸部26と一体に成形され、該成形でのφDの頭部の押し残り部がパイロット部28となる。
本発明のフランジ構造体の製造方法においては、球状化焼鈍に代表される各種の焼鈍処理を、成形負荷の図5(d)に示す側方押出し成形までに実施するが好ましい。このため、図5(a)に示す素材Sを切り出す前、切り出した後、図5(b)に示す前方押出し前後、図5(c)に示すヘディングの前後等のいずれであってもよい。ところで、焼鈍(焼きなまし)には、完全焼きなまし(完全焼鈍)、応力除去焼きなまし、低温焼きなまし、球状化焼きなまし等がある。このため、本発明の焼鈍処理として、これらから最適なものを種々選択できる。
また、このフランジ構造体の成形時には、皮膜処理、または加工用の油などの適切な潤滑措置を選択することができる。この際、素材Sa、成形途中の製品、成型型(金型)50、潤滑用の加工油の少なくとも1つ以上を加熱手段を用いて、温間温度300℃未満の例えば120℃に加熱する。一般的な炭素鋼では常温から300℃付近では変形抵抗は単調に低下するため、潤滑剤の性能によって適切な温度に設定することで、最大の効果を得ることができる。
図8に潤滑皮膜である「燐酸亜鉛皮膜+金属石鹸」を使用した事例での、常温での成形荷重を1としたときの成形荷重比の温度との関係を示す。300℃を超えると成形荷重の低減効果が認められなくなっている。さらに330℃においては潤滑効果不足により、表面にかじり傷も発生している。また図9に潤滑皮膜である「燐酸亜鉛皮膜+金属石鹸」の温度に対する摩擦係数を示す。以上の通り、300℃を超えると十分な潤滑性能が得られず摩擦係数が増大しており、製品の表面にかじりキズが生じ、表面仕上げ、寸法精度の水準の悪化が発生するため、荷重低減の効果も考慮して300℃以下常温以上の温度に設定することがよい。なお、250℃付近が最適な設定であるが、加熱にはコストがかかるため、金型負荷も考慮して必要最小限の温度設定するのが好ましい。
また、潤滑に加工油を使用した場合においても、同様な荷重低減傾向を示す。本加工のような事例に使用される一般的な加工油の場合、引火点が200℃近辺であることが多く、例えば引火点が210℃の加工油を使用したときにはそれ以下の範囲で温度設定すべきなのは当然である。
このため、前記側方押出し成形時には、素材に300℃以下の予熱を付与するのが好ましい。ところで、前記成形では、成形荷重は頭部の内側面積のみに作用し、車輪取り付けフランジ27の長さ(面積)には影響されないので、車輪取り付けフランジ27の長さ(面積)が大きい場合は、車輪取り付けフランジ27を圧縮成形する場合と比較して極めて小さな成形荷重で成形できることになる。
図6は、外方部材22を成形するための成形型60を示す。この成形型60は、上金型61と下金型62とを備え、上金型61には、パイロット部38の外径φD1と略同径の孔61aが形成される。また、孔61a内には、リングパンチ65とパンチ64が摺動自在に配置される。上金型61の下面と下金型62の上面との間に、径方向外方に向かって延びる放射状溝63が形成されている。なお、放射状溝63は、上金型61又は下金型62のみに形成されてもよい。
また、下金型62には軸部を成形する孔62aが設けられ、この下金型62は保持体67にて受けられる。この保持体67には受けピン69およびエジェクタピン68が挿通される。パンチ64と受けピン69との間にはマンドレル70が介在される。エジェクタピン68にて、素材(所定形状素材Sa)が受けられる。この下金型62の孔62aが軸部形成部43を構成し、放射状溝63がフランジ形成部44を構成する。
図6に示す成形型には、図7(a)に示すように、円筒形状(中空形状)の素材(所定形状素材)Saを成形した後、図6(a)に示すように投入することになる。すなわち、所定形状素材Saはエジェクタピン68に受けられ、かつ内部にはマンドレル70が挿入された状態となる。この場合も、球状化焼鈍に代表される各種の焼鈍処理を、成形負荷の図7(b)に示す側方押出し成形までに実施することになる。
パンチ64およびリングパンチ65を下降させると、パンチ64が所定形状素材Saのインボード側端部内径に外輪軌道面21Bに対応する段部72(図7(b)参照)を成形し、更にリングパンチ65が所定形状素材Saのインボード側端面に接して軸方向に圧縮することにより、所定形状素材Saの外周部が放射状溝63にパンチの進行方向とは直交する方向(側方)に押し出されて懸架装置取り付けフランジ37が軸部36と一体に成形され、この成形でのφD1の押し残り部がパイロット部38となる。この側方押出し成形時には、素材に300℃以下の予熱を付与することになる。なお、この側方押出し成形が終了すれば、図7(c)に示すように、段付け加工を行って、軌道面21A,21Bを成形する。
このとき、成形荷重は所定形状素材Saのリング状部のみに作用し、懸架装置取り付けフランジ37の長さ(面積)には影響されないので、懸架装置取り付けフランジ37の長さ(面積)が大きい場合は、懸架装置取り付けフランジ37を圧縮成形する場合と比較して極めて小さな成形荷重で成形できることになる。
本発明によれば、側方押出し成形は常温以上300℃以下の予熱を伴うものであるので、潤滑性能を十分に得ることができる。このため、摩擦係数の増大を防止でき、表面に傷等がない高品質の製品を提供できる。しかも、荷重低減の効果も発揮できる。このため、冷間鍛造による表面仕上げ状態と寸法精度の水準を確保しつつ、より成形荷重を低減でき、予熱が300℃以下であるので、比較的低コストに抑えることができる。
位置決め用筒部28(38)が側方押出し成形の押し残し部からなるものでは、この位置決め用筒部28(38)と軸部26(36)と一体の高精度で成形でき、高品質の製品を提供できる。また、位置決め用筒部28(38)を別部材として成形して、軸部26(36)と一体化する場合に比べて、製造工程の簡略化や材料の節約等を図ることができ、低コストを達成できる。
フランジ27(37)が取り付け孔29(39)のピッチ円位置で繋がらないものであれば、比較的大きなフランジ27(37)を形成でき、しかも、軸部28(38)とフランジ27(37)との繋ぎ部において、肉厚が大きくならずに十分な強度を確保できる。
素材S、所定形状素材Sa、金型(成形型)、加熱用の潤滑油の少なくとも一方以上を温間域に達することの無い温度まで加熱することで、成形荷重の低減および金型寿命の確保と、鍛造後の表面仕上げと寸法精度の確保を両立させることができる。
焼鈍処理により、成形前の硬度をHvで170以下とさせた素材を使用することにより、成形型による成形が安定する。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、フランジの数は4つに限るものではなく、その数の増減は任意である。また、車輪用軸受装置として、内輪回転の従動輪用であっても、内輪回転の駆動輪用であっても、外輪回転の従動輪用であっても、外輪回転の駆動輪用であってもよい。車輪用軸受装置の転動体として、前記実施形態ではボール(鋼球)を用いるものであったが、円すいころを用いるものであってもよい。
21 外側転走面
22 外方部材
23 内側転走面
24 内方部材
25 転動体
26、36 軸部
27、37 フランジ
28、38 位置決め用筒部(パイロット部)
29 孔
41,43 軸部形成部
42,44 フランジ形成部
50、60 成形型
S 素材
Sa 所定形状素材

Claims (7)

  1. 中実又は中空状の軸部と、軸部から外径方向に延びる取り付け用のフランジとを有する車輪用軸受装置のフランジ構造体であって、
    中実又は中空状の所定形状素材に対して軸方向の荷重を付与することによって圧縮する側方押出し成形により、フランジが軸方向の荷重を付与することなく形成されてなり、前記側方押出し成形は常温以上で300℃以下の予熱を伴う成形であることを特徴とする車輪用軸受装置のフランジ構造体。
  2. フランジに関して軸部と反対側に位置決め用の筒部を有し、この筒部は前記側方押出し成形の押し残し部からなることを特徴とする請求項1に記載の車輪用軸受装置のフランジ構造体。
  3. フランジは、軸部から放射状に延びる複数個有し、各フランジにはそれぞれ取り付け孔が設けられ、かつ、各フランジは取り付け孔のピッチ円位置で繋がらないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輪用軸受装置のフランジ構造体。
  4. 内周に外側転走面を有する外方部材と、外周に内側転走面を有する内方部材と、外方部材と内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容される転動体とを備えた車輪用軸受装置であって、
    外方部材と内方部材との少なくともいずれか一方に、前記請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフランジ構造体を用いることを特徴とする車輪用軸受装置。
  5. 中実又は中空状の軸部と、軸部から外径方向に延びる取り付け用のフランジとを有する車輪用軸受装置のフランジ構造体製造方法であって、
    中実又は中空状の所定形状素材を、前記中実又は中空状の軸部を成形する軸部形成部と軸部形成部から外径方向に延びるフランジ形成部とを備えた成形型に投入して、所定形状素材に常温以上で300℃以下の予熱を付与した状態で、その軸方向に圧縮して、この圧縮によりフランジ形成部に所定形状素材の一部を流動させることにより、フランジに軸方向の成形荷重を作用させないで、軸部とフランジとを一体に側方押出しにて成形することを特徴とするフランジ構造体製造方法。
  6. 前記予熱の付与は、所定形状素材を成形するための素材と、所定形状素材と、成形型と、潤滑用加工油との少なくとも一つ以上を常温以上として行うことを特徴とする請求項5に記載のフランジ構造体製造方法。
  7. 所定形状素材を成形するための素材と所定形状素材とのいずれかに、少なくとも1回以上焼鈍を行って、前記所定形状素材のビッカース硬度をHv170以下とした後、所定形状素材を成形型に投入することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のフランジ構造体製造方法。
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