JP2013204090A - ホットスタンプ用のテーラードブランク - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウムめっき鋼板を、溶接される部分のめっき層を取り除かずにそのまま突合せレーザ溶接して形成したホットスタンプ用のテーラードブランクであって、十分な継手強度を有するテーラードブランクを提供することを課題とする。
【解決手段】強度の異なるアルミニウムめっき鋼板を突合せレーザ溶接して形成したホットスタンプ用のテーラードブランクにおいて、突合せレーザ溶接によって形成される溶接金属中のAlの平均濃度を0.3質量%以上1.5質量%以下とし、溶接金属のAc3点温度を1250℃以下とし、さらに、ホットスタンプ後の溶接金属の硬さと溶接金属の最も薄い部分の厚さの積の値が、低強度側の鋼板のホットスタンプ後の硬さと板厚の積の値より高くなるように、前記突合せ溶接する鋼板を組み合わせて溶接する。
【選択図】なし
【解決手段】強度の異なるアルミニウムめっき鋼板を突合せレーザ溶接して形成したホットスタンプ用のテーラードブランクにおいて、突合せレーザ溶接によって形成される溶接金属中のAlの平均濃度を0.3質量%以上1.5質量%以下とし、溶接金属のAc3点温度を1250℃以下とし、さらに、ホットスタンプ後の溶接金属の硬さと溶接金属の最も薄い部分の厚さの積の値が、低強度側の鋼板のホットスタンプ後の硬さと板厚の積の値より高くなるように、前記突合せ溶接する鋼板を組み合わせて溶接する。
【選択図】なし
Description
本発明は、自動車の構造部材のような強度が必要とされる部材の製造に使用されるブランクであって、複数の鋼板を溶接して形成され、高温でのプレス(ホットプレスともいわれるが、ここでは、ホットスタンプと記載する。)により加工されるテーラードブランクに関するものである。
近年、地球環境保護の視点からCO2ガス排出量削減のために自動車車体軽量化が喫緊の課題であり、それに対して高強度鋼板を適用する検討が積極的に行われており、その鋼材強度も益々高まっている。
しかし、鋼板の高強度化はプレス時に必要なプレス力が高くなり、設備の大型化を伴って設備コストが上がるだけでなく、鋼板の高強度化に伴う成形の難しさによる金型の修正コスト、金型自体の耐磨耗対策費、形状凍結性向上のためのリストラィキングによる生産性の劣化など、コスト増をもたらす様々な問題点が指摘されている。
しかし、鋼板の高強度化はプレス時に必要なプレス力が高くなり、設備の大型化を伴って設備コストが上がるだけでなく、鋼板の高強度化に伴う成形の難しさによる金型の修正コスト、金型自体の耐磨耗対策費、形状凍結性向上のためのリストラィキングによる生産性の劣化など、コスト増をもたらす様々な問題点が指摘されている。
この問題を解決する方法の一つとしてホットスタンプが注目されている。ホットスタンプとは、鋼板を高温に加熱し、高温域でプレス加工する技術であり、特に鋼板をAr3変態温度以上でプレス加工し、金型による抜熱で急速に冷却し、プレス圧が掛かった状態で変態を起こさせることにより、高強度でかつ形状凍結性の優れたプレス加工品を製造することができる技術である。
一方、プレス品の歩留まりならびに生産性を向上させる手段としてテーラードブランクが自動車用部材のプレス素材に適用されている。
テーラードブランクとは、目的に応じて、複数の鋼板の端面をレーザ溶接などによって接合したプレス用素材である。このようなテーラードブランクを用いることにより、一つの部品の中で板厚や強度を自由に変化させることができるようになるため、部品の機能性を向上させ、また、部品点数の削減も可能となる。
テーラードブランクとは、目的に応じて、複数の鋼板の端面をレーザ溶接などによって接合したプレス用素材である。このようなテーラードブランクを用いることにより、一つの部品の中で板厚や強度を自由に変化させることができるようになるため、部品の機能性を向上させ、また、部品点数の削減も可能となる。
自動車用部材など耐食性を必要とするものの多くは亜鉛系のめっき鋼板が用いられるが、そのような鋼板を用いたブランクをホットスタンプする場合、ブランクは700〜1000℃に加熱される。この温度は、亜鉛の沸点に近いか沸点よりも高く、ホットスタンプで加熱したとき表面のめっき層は溶融して流れ落ちるか蒸発する。このため、ホットスタンプ用のブランクには、亜鉛系のめっきに比べて沸点が高いAl系めっきがなされた鋼板、いわゆるアルミニウムめっき鋼板(以下、アルミめっき鋼板と記載する。)を使用することが望ましい。
しかし、アルミめっき鋼板のレーザ溶接では、溶接金属中のアルミニウムの濃度が高くなって溶接強度が低下することが、例えば特許文献1などによって知られている。これは、アルミニウムの濃度が高くなった溶接金属では焼き入れ性が低下し、ホットスタンプ後も十分な継手強度が得られないことに起因する。
このため、アルミめっき鋼板を突合せ溶接してテーラードブランクを製造する際、このような問題を回避する必要があり、その方法として、引用文献1には、両面アルミめっき鋼板の重ね合わせレーザ溶接継手における溶接金属中のAlの割合を0.65wt%以下とすることが示され、特許文献2には、溶接される部分のめっき層を取り除いて溶接することが示されている。
上記特許文献1の方法は、両面アルミめっき鋼板の重ね合わせレーザ溶接継手に関するもので、1.5m/min以下の遅い溶接速度でレーザ溶接する必要があり、ホットスタンプ用のテーラードブランクの製造に直接適用できるものではなく、また、上記特許文献2の方法は、ホットスタンプ用のテーラードブランクの製造にそのまま適用することはできるが、溶接部にはめっき層がないので、ホットスタンプの際に溶接金属の脱炭や酸化が生じるという問題や、成形された部品の耐食性が劣るという問題がある。
そこで、本発明は、アルミニウムめっき鋼板を、溶接される部分のめっき層を取り除かずにそのまま突合せレーザ溶接して形成したホットスタンプ用のテーラードブランクであって、十分な継手強度を有するテーラードブランクを提供することを課題とする。
ホットスタンプ用のテーラードブランクでは、ホットスタンプにより鋼板母材部は焼入されて硬くなる。ホットスタンプ後において必要な継手強度を確保するためには、ホットスタンプ後の溶接金属の硬さが、少なくとも、継手部を形成する鋼板のうちの低強度側の鋼板母材部の硬さと同等以上であることが必要である。
そこで本発明では、アルミニウムめっき鋼板からなるテーラードブランクの溶接時に、ホットスタンプ後の低強度側の鋼板母材部と同等以上の硬さを有する溶接金属部が形成されるようにすることを検討し、その結果、そのような溶接金属部の形成に必要な条件を見出すことによって上記課題を解決した。
そのようにしてなされた本発明の要旨は、以下のとおりである。
そこで本発明では、アルミニウムめっき鋼板からなるテーラードブランクの溶接時に、ホットスタンプ後の低強度側の鋼板母材部と同等以上の硬さを有する溶接金属部が形成されるようにすることを検討し、その結果、そのような溶接金属部の形成に必要な条件を見出すことによって上記課題を解決した。
そのようにしてなされた本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)強度の異なるアルミニウムめっき鋼板を突合せレーザ溶接して形成したホットスタンプ用のテーラードブランクであって、
前記突合せレーザ溶接によって形成された溶接金属中のAlの平均濃度が0.3質量%以上、1.5質量%以下であり、下記の式(1)で定義される溶接金属のAc3点が1250℃以下であり、
さらに、ホットスタンプ後の溶接金属の硬さと溶接金属の最も薄い部分の厚さの積の値が、低強度側の鋼板のホットスタンプ後の硬さと板厚の積の値より高くなるように、前記突合せ溶接する鋼板が組み合わされて溶接されていることを特徴とするテーラ−ドブランク。
Ac3=910−230C0.5−15.2Ni+44.7Si+104V+31.5Mo+13.1W−30Mn
−11Cr−20Cu+700P+400Al+120As+400Ti ・・・式(1)
ここで、式(1)において、元素記号は溶接金属中のそれぞれの元素の含有量(質量%)を表す。また、含有していない元素は含有量0として計算する。
前記突合せレーザ溶接によって形成された溶接金属中のAlの平均濃度が0.3質量%以上、1.5質量%以下であり、下記の式(1)で定義される溶接金属のAc3点が1250℃以下であり、
さらに、ホットスタンプ後の溶接金属の硬さと溶接金属の最も薄い部分の厚さの積の値が、低強度側の鋼板のホットスタンプ後の硬さと板厚の積の値より高くなるように、前記突合せ溶接する鋼板が組み合わされて溶接されていることを特徴とするテーラ−ドブランク。
Ac3=910−230C0.5−15.2Ni+44.7Si+104V+31.5Mo+13.1W−30Mn
−11Cr−20Cu+700P+400Al+120As+400Ti ・・・式(1)
ここで、式(1)において、元素記号は溶接金属中のそれぞれの元素の含有量(質量%)を表す。また、含有していない元素は含有量0として計算する。
(2)前記溶接金属の最も薄い部分の厚みが、前記アルミニウムめっき鋼板の板厚の、突合せ溶接するアルミニウムめっき鋼板の厚みが異なる場合は薄い方の鋼板の板厚の90%以上であり、かつ、前記溶接金属の表裏面が、前記アルミニウムめっき鋼板の延長線より、突合せ溶接するアルミニウムめっき鋼板の厚みが異なる場合は厚い方の鋼板の延長線より300μmを超えて外側に突出しないようにされていることを特徴とする(1)に記載のテーラードブランク。
(3)前記溶接金属の表面が前記突合せ溶接の際に形成されたアルミニウム層によって覆われていることを特徴とする(1)または(2)に記載のテーラードブランク。
(3)前記溶接金属の表面が前記突合せ溶接の際に形成されたアルミニウム層によって覆われていることを特徴とする(1)または(2)に記載のテーラードブランク。
本発明によれば、鋼板端部におけるアルミめっきを除去しなくても、アルミめっき鋼板を突合せレーザ溶接した、継手強度の高いホットスタンプ用テーラードブランクを提供することができる。特に、ホットスタンプ後に強度の低い側の鋼板の強度と同等以上の継手強度が得られるテーラードブランクを提供することができる。
また、本発明のテーラードブランクでは溶接後の溶接ビードの表裏面はアルミニウムに覆われる結果、ホットスタンプ工程において、耐酸化性に優れた溶接部を得ることができ、さらに、ホットスタンプ後の耐食性も優れるテーラードブランクを提供することができる。
また、本発明のテーラードブランクでは溶接後の溶接ビードの表裏面はアルミニウムに覆われる結果、ホットスタンプ工程において、耐酸化性に優れた溶接部を得ることができ、さらに、ホットスタンプ後の耐食性も優れるテーラードブランクを提供することができる。
ホットスタンプ用の鋼板はC含有量が高く、突合せレーザ溶接により形成された溶接金属は、溶接後の冷却で焼入され、母材より硬くなる。しかし、アルミめっき鋼板を突合せレーザ溶接した場合には、めっき層のAlが溶接金属に混入するため、溶接金属中のAl濃度によっては、焼入性が低下して溶接後に十分な硬さを有する溶接金属が得られない場合がある。
また、アルミめっき鋼板を突合せレーザ溶接して形成したテーラードブランクをホットスタンプすると、母材部は焼入されて硬くなる。これに対し、溶接部はめっき層からAlが入ることにより、Ac3点温度が上昇しており、ホットスタンプの加熱温度(例えば900℃)では、十分にオーステナイト変態しないため、変態しない部分は焼きが入らずに焼戻されることになる。
また、アルミめっき鋼板を突合せレーザ溶接して形成したテーラードブランクをホットスタンプすると、母材部は焼入されて硬くなる。これに対し、溶接部はめっき層からAlが入ることにより、Ac3点温度が上昇しており、ホットスタンプの加熱温度(例えば900℃)では、十分にオーステナイト変態しないため、変態しない部分は焼きが入らずに焼戻されることになる。
ホットスタンプ用のテーラードブランクでは、互いに突合せ溶接するアルミめっき鋼板の一方が強度の高い鋼板で、他方がそれよりも強度の低い鋼板の組み合わせを採用することが多い。そのような強度の異なるアルミめっき鋼板をレーザ溶接して形成されたテーラードブランクでは、形成された溶接金属が、ホットスタンプ工程で焼戻されても、強度の低い側の鋼板のホットスタンプ後の硬さと同等以上の硬さを有していれば、必要な溶接継手部の強度を保つことができる。
そこで、アルミめっき鋼板をレーザ溶接してテーラードブランクを製造する際、そのような条件を満たす溶接金属が形成できれば、突合せ部端部のアルミめっきを除去しなくても溶接が可能であるとの観点から、そのために必要な溶接金属やアルミめっき鋼板の条件について検討した。
ホットスタンプ後の硬くなった母材部と同等以上の硬さを有するような溶接金属がレーザ溶接によって形成されるためには、少なくともレーザ溶接時に形成された溶接金属が溶接後の冷却過程においてオーステナイト変態し、さらに冷却される過程で焼きが入って十分硬くなることが必要である。また、焼きが入った溶接部が、ホットスタンプ工程において、再びオーステナイトに変態して焼き入れされるか、十分に変態できずに焼戻されても、強度の低い側の鋼板と同等以上の硬さを維持できることが必要である。
アルミめっき鋼板の突合せレーザ溶接では、溶接される鋼板組成、鋼板板厚、アルミめっき層の溶融量から溶接金属の組成が決まってくるから、焼きが入る溶接金属の条件を明らかにすれば、突合せ部端部のアルミめっきを除去しなくても溶接が可能である、鋼板組成、鋼板板厚、アルミめっき層の厚みの組み合わせが決定できるものと考えた。
そのような検討の結果、強度の異なるアルミニウムめっき鋼板を突合せレーザ溶接して形成される溶接金属のAlの平均濃度を0.3質量%以上、1.5質量%以下とし、かつ、溶接金属のAc3点温度を1250℃以下とし、さらに、ホットスタンプ後の溶接金属の硬さと溶接金属の最も薄い部分の厚さの積の値が、低強度側の鋼板のホットスタンプ後の硬さと板厚の積の値より高くなるように、前記突合せ溶接する鋼板が組み合わされて溶接される本発明のテーラードブランクに到達した。
そのような本発明について、必要な条件や好ましい条件について順次説明する。
そのような本発明について、必要な条件や好ましい条件について順次説明する。
(溶接金属のAlの平均濃度)
本発明者らは、ホットスタンプ用鋼板に対して、ホットスタンプする前の原板が270MPa、440MPaや590MPaなどの強度を有する鋼板を組み合わせ、各鋼板の板厚やアルミめっきの付着量を種々変化させて、突合せレーザ溶接する実験を行い、形成された溶接金属の組織観察を行うとともに、溶接金属の平均Al濃度と硬さを測定した。
また、ホットスタンプ用鋼板と組み合わせた鋼板を焼入れ処理して、その硬さを調べ、溶接金属の硬さと比較した。
本発明者らは、ホットスタンプ用鋼板に対して、ホットスタンプする前の原板が270MPa、440MPaや590MPaなどの強度を有する鋼板を組み合わせ、各鋼板の板厚やアルミめっきの付着量を種々変化させて、突合せレーザ溶接する実験を行い、形成された溶接金属の組織観察を行うとともに、溶接金属の平均Al濃度と硬さを測定した。
また、ホットスタンプ用鋼板と組み合わせた鋼板を焼入れ処理して、その硬さを調べ、溶接金属の硬さと比較した。
その結果、少なくとも一方がホットスタンプ用鋼板の場合には、溶接金属のAlの平均濃度が1.5質量%以下であれば、溶接金属にAlが入っていても、凝固過程でオーステナイト相に変態でき、冷却過程でマルテンサイト、あるいはマルテンサイトとベイナイトよりなる焼きが入った状態となることが見出された。
1.5質量%を超えてアルミが溶接金属に入ると、Alがフェライトフォーマーであることから、溶接金属がフェライト単相となり、レーザ溶接によって十分に焼きが入らなくなる。
1.5質量%を超えてアルミが溶接金属に入ると、Alがフェライトフォーマーであることから、溶接金属がフェライト単相となり、レーザ溶接によって十分に焼きが入らなくなる。
また、本発明者らは、上記実験を通して、端部まで鋼板表面がアルミめっき層を有する鋼板の突合せレーザ溶接では、図1に見られるように、溶接金属(溶接ビード)の表面が、突合せ溶接の際に形成されたアルミニウム層によって覆われていることを見出した。
この理由は必ずしも明確ではないが、熱影響部の溶融しためっき金属が、溶接ビード溶融池の湯流れに引き込まれ始め、鋼の融点よりめっき金属の融点の方が低いことから、溶融池の凝固の後も溶接ビードの表面に広がり、溶接ビードを覆ったものと考えられる。
この理由は必ずしも明確ではないが、熱影響部の溶融しためっき金属が、溶接ビード溶融池の湯流れに引き込まれ始め、鋼の融点よりめっき金属の融点の方が低いことから、溶融池の凝固の後も溶接ビードの表面に広がり、溶接ビードを覆ったものと考えられる。
テーラードブランクの溶接ビードがアルミニウム層によって覆われていれば、ホットスタンプ工程において溶接ビードの酸化が防止され、さらに、ホットスタンプ後も耐食性に優れた製品とすることができる。
これに対し、溶接金属のAlの平均濃度が0.3質量%を下回る場合には、溶融するめっき層のAlの量が少なく、溶接ビード上にアルミニウム層が形成されなくなり、上記のような溶接ビードの保護能力が失われることを見出したものである。
これに対し、溶接金属のAlの平均濃度が0.3質量%を下回る場合には、溶融するめっき層のAlの量が少なく、溶接ビード上にアルミニウム層が形成されなくなり、上記のような溶接ビードの保護能力が失われることを見出したものである。
以上の理由から、アルミめっき鋼板を突合せレーザ溶接して形成されたホットスタンプ用のテーラードブランクにおいて、鋼板の溶接部に形成される溶接金属のAlの平均濃度を0.3質量%以上、1.5質量%以下とする。
溶接金属のAlの平均濃度は、表裏の溶接ビード幅とめっき層の厚みを用いて、めっき層から溶接金属中に溶け込むAl量を算出し、その値と溶接金属の断面積より算出することができるので、組み合わされる鋼板のめっきの付着量と板厚から予め予想することができる。
例えば、付着量40/40gr/m2の両面アルミめっき鋼板では、板厚が0.8〜2.0mmの鋼板を用いることができ、付着量80/80gr/m2の両面アルミめっき鋼板では、板厚が1.4〜4.0mm、好ましくは3.0mm以下の鋼板を組み合わせることができる。
例えば、付着量40/40gr/m2の両面アルミめっき鋼板では、板厚が0.8〜2.0mmの鋼板を用いることができ、付着量80/80gr/m2の両面アルミめっき鋼板では、板厚が1.4〜4.0mm、好ましくは3.0mm以下の鋼板を組み合わせることができる。
めっきの付着量が多い場合には、鋼板の板厚にもよるが、溶接金属のAl濃度を1.5質量%以下とすることが困難な場合が生じる。そのような場合には、鋼板の突合せ部分に間隔を形成し、レーザ溶接の際にフィラーワイヤを用いてその間隔を溶接金属で充填するようにする。これにより、溶接金属の量が増加し、溶接金属のAl濃度を1.5質量%以下とすることができる。
(溶接金属のAc3点温度)
溶接金属のAl濃度が1.5質量%以下で、下記の式(1)で定義される溶接金属のAc3が1250℃以下であれば、レーザ溶接後において溶接金属に十分に焼きが入り、十分な溶接部硬さを有するテーラードブランクが製造できるので、ホットスタンプ工程によって溶接部が焼き戻されても十分な強度を保持することができる。
溶接金属のAl濃度が1.5質量%以下で、下記の式(1)で定義される溶接金属のAc3が1250℃以下であれば、レーザ溶接後において溶接金属に十分に焼きが入り、十分な溶接部硬さを有するテーラードブランクが製造できるので、ホットスタンプ工程によって溶接部が焼き戻されても十分な強度を保持することができる。
Ac3=910−230C0.5−15.2Ni+44.7Si+104V+31.5Mo+13.1W−30Mn
−11Cr−20Cu+700P+400Al+120As+400Ti ・・・式(1)
ここで、式(1)において、元素記号はそれぞれの元素の含有量(質量%)を表す。また、含有していない元素は含有量0として計算する。
なお、このAc3の式は、文献(Leslie,W.C.著、幸田成康/監訳「レスリー鉄鋼材料学」丸善(1985)発行、p.273)によりよく知られた式である。
−11Cr−20Cu+700P+400Al+120As+400Ti ・・・式(1)
ここで、式(1)において、元素記号はそれぞれの元素の含有量(質量%)を表す。また、含有していない元素は含有量0として計算する。
なお、このAc3の式は、文献(Leslie,W.C.著、幸田成康/監訳「レスリー鉄鋼材料学」丸善(1985)発行、p.273)によりよく知られた式である。
CやMnなどの含有量が少なく、Siの含有量が多い場合など、鋼材の化学組成によっては、溶接金属のAl濃度が1.5wt%以下であっても、レーザ溶接後、十分に焼きが入らない場合が生じる。本発明者らは、式(1)で見積もられるAc3点温度が1250℃以下であれば、レーザ溶接によって十分に焼きが入ることを実験的に確認した。
(ホットスタンプ後の溶接金属の硬さ)
テーラードプランクをホットスタンプして構造部材を製造した後、その部材が自動車に組み込まれ、衝突によって大変形を受けた際にも、溶接ビードで破断することなく、良好な変形能・エネルギー吸収特性・耐力を発揮しなければならない。
そのためには、ホットスタンプ後の溶接部の強度が、少なくとも強度の低い側の鋼板のホットスタンプ後の強度と同等またはそれ以上であることが必要である。
テーラードプランクをホットスタンプして構造部材を製造した後、その部材が自動車に組み込まれ、衝突によって大変形を受けた際にも、溶接ビードで破断することなく、良好な変形能・エネルギー吸収特性・耐力を発揮しなければならない。
そのためには、ホットスタンプ後の溶接部の強度が、少なくとも強度の低い側の鋼板のホットスタンプ後の強度と同等またはそれ以上であることが必要である。
すなわち、ホットスタンプ後の溶接金属の硬さHv(WM)と溶接金属の最も薄い部分の厚さt(WM)の積が、ホットスタンプ後の低強度側鋼板の硬さHv(LBM)と低強度側鋼板の板厚t(LBM)の積の値より高くなる、すなわち、
Hv(WM)×t(WM)>Hv(LBM)×t(LBM)
となるように、前記高強度側と低強度側の鋼板及び溶接金属が組み合わされて、溶接されていることが必要である。
ここで、溶接金属の硬さは、中心部のビード断面において板厚方向に5点測定し、中3点の測定値を平均したものとする。
Hv(WM)×t(WM)>Hv(LBM)×t(LBM)
となるように、前記高強度側と低強度側の鋼板及び溶接金属が組み合わされて、溶接されていることが必要である。
ここで、溶接金属の硬さは、中心部のビード断面において板厚方向に5点測定し、中3点の測定値を平均したものとする。
Ac3点温度が上昇すると、ホットスタンプの加熱温度では十分にオーステナイト変態せず、ホットスタンプにより溶接部は焼き戻されることになる。こうした場合でも、溶接する鋼板の組み合わせを選択して、式[Hv(WM)×t(WM)>Hv(LBM)×t(LBM)]の条件を満たすようにすることは可能であり、その場合には、ホットスタンプされた部材が、自動車の構造部材として十分な機能を発揮することが確かめられた。
製造しようとするテーラードブランクが、このような条件を満たすかどうかは、実際に製造して確認することが基本となるが、ホットスタンプ後の低強度側鋼板の硬さHv(BM)と溶接金属の硬さHv(BM)を予測して、テーラードブランクが上記の条件を満たすかどうか予め推定することもできる。
Hv(WM)は、両鋼板の化学成分と板厚より溶接金属のC量を推定し、推定されたC量によって、溶接金属がマルテンサイトである時の硬さHv(WM)を下記式(2)より計算し、計算された硬さから100を引いた値を溶接金属の下限として推定する。なお、100は、実験的に求められた数である。
Hv(M)=884C(1−0.3C2)+294 ・・・式(2)
Hv(M)=884C(1−0.3C2)+294 ・・・式(2)
溶接金属には、アルミが入ることからAc1、Ac3が上昇する。ホットスタンプ工程によって、アルミ量によっては、完全にオーステナイトに変態せず、2相域、あるいは単に焼き戻されるだけになる。単に焼き戻されるだけの場合に最も軟らかくなる。経験的にその硬さは、Hv(M)−100程度となることを確認した。
Hv(BM)は、式(2)から計算されるHv(M)値と鋼板の元素含有量(質量%)を用いて計算される、下記の式
{1650(C+f(B))+10Si+80(Mn+Cr+V+2Mo+2Nb
+Cu/2+Ni/4)}
の値の低い方を推定値として採用する。
ただし、B含有量≧0.0004質量%の場合は、f(B)=0.03とし、B含有量<0.0004質量%の場合は、f(B)=0とする。
{1650(C+f(B))+10Si+80(Mn+Cr+V+2Mo+2Nb
+Cu/2+Ni/4)}
の値の低い方を推定値として採用する。
ただし、B含有量≧0.0004質量%の場合は、f(B)=0.03とし、B含有量<0.0004質量%の場合は、f(B)=0とする。
以上のように予測された硬さと、組み合わせようとする鋼板の板厚、溶接金属の厚みを鋼板板厚〜0.9×鋼板板厚として、上記式を満たすかどうか判定して、テーラードブランクを構成する鋼板の組み合わせの可能性をあらかじめ予測することができる。
(溶接金属の厚み)
シャー切断されたままの鋼板の端面の突合せレーザ溶接では、端面の切断精度の関係で、通常は溶接ビード表面が鋼板表面に対して窪んだ状態(肉やせした状態)で溶接される。
しかし、溶接金属の肉厚が母材鋼板の板厚よりも小さくなり過ぎると、溶接継手部の強度が低下するため、溶接金属の最も薄いところの肉厚が、鋼板板厚(鋼板の板厚が異なる場合は、薄い方の板厚)の90%未満とならないようにする。
肉厚が90%未満の場合には、溶接金属が焼きが入りやすい組成であっても、高温となるホットスタンプ時に溶接部で破断したり、破断しなくても製品強度が低下したりするから、フィラーワイヤを用いて溶接して、肉やせ分を補う必要がある。
シャー切断されたままの鋼板の端面の突合せレーザ溶接では、端面の切断精度の関係で、通常は溶接ビード表面が鋼板表面に対して窪んだ状態(肉やせした状態)で溶接される。
しかし、溶接金属の肉厚が母材鋼板の板厚よりも小さくなり過ぎると、溶接継手部の強度が低下するため、溶接金属の最も薄いところの肉厚が、鋼板板厚(鋼板の板厚が異なる場合は、薄い方の板厚)の90%未満とならないようにする。
肉厚が90%未満の場合には、溶接金属が焼きが入りやすい組成であっても、高温となるホットスタンプ時に溶接部で破断したり、破断しなくても製品強度が低下したりするから、フィラーワイヤを用いて溶接して、肉やせ分を補う必要がある。
一方、溶接部の肉厚の薄い場合に限らず、溶接金属のAl濃度の調整のためにフィラーワイヤを用いて溶接する場合もある。
フィラーワイヤを用いて溶接する場合、溶接ビードの表裏面を鋼板表裏面に対して盛り上がらせて、溶接金属の肉厚を厚くする方が、溶接部の強度を確保することができるが、溶接金属の盛り上がり高さが過度になると、ホットスタンプ時に溶接部付近で鋼板と金型との接触が不良となり、鋼板に対する焼き入れが不足してしまう。
そこで、溶接金属の表裏面が、アルミめっき鋼板の表裏面(鋼板の板厚が異なる場合は、厚い方の鋼板の表裏面)の延長線を基準として、それより300μmを超えて外側に突出しないようにする。突出量が300μm以下であれば、金型、特に直水冷金型を用いて、鋼板に十分に焼きを入れることができる。ここで直水冷金型とは、金型より冷却水を噴出し、鋼板を冷却する金型である。
フィラーワイヤを用いて溶接する場合、溶接ビードの表裏面を鋼板表裏面に対して盛り上がらせて、溶接金属の肉厚を厚くする方が、溶接部の強度を確保することができるが、溶接金属の盛り上がり高さが過度になると、ホットスタンプ時に溶接部付近で鋼板と金型との接触が不良となり、鋼板に対する焼き入れが不足してしまう。
そこで、溶接金属の表裏面が、アルミめっき鋼板の表裏面(鋼板の板厚が異なる場合は、厚い方の鋼板の表裏面)の延長線を基準として、それより300μmを超えて外側に突出しないようにする。突出量が300μm以下であれば、金型、特に直水冷金型を用いて、鋼板に十分に焼きを入れることができる。ここで直水冷金型とは、金型より冷却水を噴出し、鋼板を冷却する金型である。
(アルミめっき鋼板)
本発明では、テーラードブランクに用いられるアルミめっき鋼板としては、特定のものに限定されるものではないが、鋼板母材やめっき層について本発明が適用可能な範囲について説明する。
本発明では、テーラードブランクに用いられるアルミめっき鋼板としては、特定のものに限定されるものではないが、鋼板母材やめっき層について本発明が適用可能な範囲について説明する。
[アルミめっき鋼板の母材]
母材鋼板として、強度の高い側の鋼板には、ホットスタンプ工程で焼入され、高い機械的強度(例えば、引張強さ・降伏点・伸び・絞り・硬さ・衝撃値・疲れ強さ・クリープ強さなど)を有する組成の鋼板を使用することが望ましい。そのような鋼板の例としては、質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.1〜0.35%、Mn:0.8〜1.8%、Cr:0.01〜0.5%、B:0.1%以下(0%を含む)を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる成分の鋼、あるいは、この鋼をベースに、さらに、Ti、Mo、Nbの1種または2種以上をさらに添加した鋼が例示できる。
このような鋼板に組み合わされる鋼板の例としては、冷延鋼板として270〜590MPa級の引張強度が得られる組成のアルミめっき鋼板が例示できる。但し、ホットスタンプ用の鋼板では、ホットスタンプ前の鋼板強度そのものは特に規定されるのもではない。
また、鋼板母材としては、板厚が0.8〜4mmの範囲のものに適用が可能である。
母材鋼板として、強度の高い側の鋼板には、ホットスタンプ工程で焼入され、高い機械的強度(例えば、引張強さ・降伏点・伸び・絞り・硬さ・衝撃値・疲れ強さ・クリープ強さなど)を有する組成の鋼板を使用することが望ましい。そのような鋼板の例としては、質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.1〜0.35%、Mn:0.8〜1.8%、Cr:0.01〜0.5%、B:0.1%以下(0%を含む)を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる成分の鋼、あるいは、この鋼をベースに、さらに、Ti、Mo、Nbの1種または2種以上をさらに添加した鋼が例示できる。
このような鋼板に組み合わされる鋼板の例としては、冷延鋼板として270〜590MPa級の引張強度が得られる組成のアルミめっき鋼板が例示できる。但し、ホットスタンプ用の鋼板では、ホットスタンプ前の鋼板強度そのものは特に規定されるのもではない。
また、鋼板母材としては、板厚が0.8〜4mmの範囲のものに適用が可能である。
[アルミめっき層]
アルミめっき層は、鋼板の腐食を防止するとともに、鋼板をホットスタンプにより加工する際に、高温に加熱された鋼板の表面が酸化することにより発生するスケール(鉄の酸化物)の生成を防止する。アルミめっき層は、有機系材料によるめっき被覆や他の金属系材料(例えばZn系)によるめっき被覆よりも沸点などが高いため、ホットスタンプ方法により成形する際に高い温度での加工が可能となり、溶接金属に焼きを入れるために有利である。これらの作用のため、アルミめっき層は両面に形成されたものが望ましい。
アルミめっき層は、鋼板の腐食を防止するとともに、鋼板をホットスタンプにより加工する際に、高温に加熱された鋼板の表面が酸化することにより発生するスケール(鉄の酸化物)の生成を防止する。アルミめっき層は、有機系材料によるめっき被覆や他の金属系材料(例えばZn系)によるめっき被覆よりも沸点などが高いため、ホットスタンプ方法により成形する際に高い温度での加工が可能となり、溶接金属に焼きを入れるために有利である。これらの作用のため、アルミめっき層は両面に形成されたものが望ましい。
このアルミめっき層は、例えば溶融めっき法により鋼板の表面に形成される。めっき層の成分としては、Alを含有していれば本発明を適用できる。Al以外の成分は、特に限定しないが、Siを3〜15質量%添加したものでもよい。
Siを添加すると、溶融めっき金属被覆時に生成される合金層を制御することができる。その量が3%未満の場合にはその効果が十分でなく、一方、15%を超えるとめっき層の加工性や耐食性が低下する恐れがある。
Siを添加すると、溶融めっき金属被覆時に生成される合金層を制御することができる。その量が3%未満の場合にはその効果が十分でなく、一方、15%を超えるとめっき層の加工性や耐食性が低下する恐れがある。
(テーラードブランクを製造するための溶接方法)
本発明では、アルミめっき鋼板をレーザ溶接によって溶接して形成されたテーラードブランクを対象とする。アルミめっき鋼板のテーラードブランクでは、溶接金属にめっき層のAlが溶け込むことで、溶接金属のAc3点温度が上昇し、ホットスタンプ工程では、十分にオーステナイト化できないことから、テーラードブランクを製造する際に、溶接後の冷却で十分に溶接部に焼きを入れることが必要となるため、溶接後の冷却速度の速いレーザ溶接が必要となるためである。
レーザ溶接方法は、レーザ発振器の種類などには特に限定されず、用いられる鋼板板厚に応じたレーザ出力で溶接すればよい。その際、前述のように、フィラーワイヤを供給して溶接することもできる。
本発明では、アルミめっき鋼板をレーザ溶接によって溶接して形成されたテーラードブランクを対象とする。アルミめっき鋼板のテーラードブランクでは、溶接金属にめっき層のAlが溶け込むことで、溶接金属のAc3点温度が上昇し、ホットスタンプ工程では、十分にオーステナイト化できないことから、テーラードブランクを製造する際に、溶接後の冷却で十分に溶接部に焼きを入れることが必要となるため、溶接後の冷却速度の速いレーザ溶接が必要となるためである。
レーザ溶接方法は、レーザ発振器の種類などには特に限定されず、用いられる鋼板板厚に応じたレーザ出力で溶接すればよい。その際、前述のように、フィラーワイヤを供給して溶接することもできる。
ホットスタンプ後に部分的に強度の異なるテーラードブランクを得るために、ホットスタンプにより引張強度が1470MPa級となる鋼板(鋼種HS)と、ホットスタンプ前で引張強度が270MPa、440MPa、590MPaとなる鋼板(鋼種270、440、590)をそれぞれレーザ溶接によって接合した。用いた鋼板の板厚は、1.0mmから1.8mmの範囲とした。
溶接金属中のアルミニウム平均濃度を作り分けるために、アルミめっきの無い鋼板の外に、アルミめっき付着量が、片面のみ20gr/m2、両面に片面当たり20gr/m2、両面に片面当たり40gr/m2、および両面に片面当たり80gr/m2の鋼板を試作した。
溶接金属中のアルミニウム平均濃度を作り分けるために、アルミめっきの無い鋼板の外に、アルミめっき付着量が、片面のみ20gr/m2、両面に片面当たり20gr/m2、両面に片面当たり40gr/m2、および両面に片面当たり80gr/m2の鋼板を試作した。
これらの鋼板を、シャー切断したままの状態で突合せ、ファイバレーザにより溶接した。レーザの集光スポット径は0.6mmである。溶接時のシールドは、レーザ光と同軸のシールドノズル(内径6mm)を用い、スタンドオフ(ノズル先端と鋼板表面との距離)を10mmに設定して、Arガス流量が20リットル/minとなる条件で行った。溶接速度は4m/minの一定とし、板厚に応じてレーザ出力を2kWから4kWの範囲で調整した。
溶接後に得られたテーラードブランク材を、次いでホットスタンプした。ホットスタンプは、炉加熱によりブランク材を900℃にまで加熱して金型で挟み込むことにより行い、平板に仕上げた。
レーザ溶接後、表面のAlの濃化層を研削除去した後に採取した溶接金属を用いて溶接金属中のアルミニウム平均濃度を分析して求めた。また、レーザ溶接後の溶接部の品質確認のために、溶接部の断面観察とビード厚計測を実施した。
さらに、ホットスタンプによる焼き入れ状態確認のため、ホットスタンプ後の母材部および溶接ビード部の硬さ測定を実施した。また、部分的に強度を作り分けたホットスタンプ後の部材性能評価として、ホットスタンプ時の溶接ビード表面の酸化状況の観察、溶接ビードと直交して負荷をかける引張試験を行った。
使用した鋼板や溶接後やホットスタンプ後の各種測定した結果を表1、2に示す。
さらに、ホットスタンプによる焼き入れ状態確認のため、ホットスタンプ後の母材部および溶接ビード部の硬さ測定を実施した。また、部分的に強度を作り分けたホットスタンプ後の部材性能評価として、ホットスタンプ時の溶接ビード表面の酸化状況の観察、溶接ビードと直交して負荷をかける引張試験を行った。
使用した鋼板や溶接後やホットスタンプ後の各種測定した結果を表1、2に示す。
実施したNo.1〜15の試験の結果は次のように評価できた。
めっきのないホットスタンプ用鋼板とめっきのない270MPa材を突合せ溶接した後、ホットスタンプした場合、溶接ビードには厚い酸化膜が形成され、触ると酸化膜が部分的に剥がれ落ちる状態となり、そのまま塗装しても、塗膜の密着性の得られる状態とはならなかった(No.1)。また、片面にのみ20gr/m2のめっきを付着させた鋼板でも同様の試験を行ったところ、やはり、ホットスタンプ工程において溶接ビード表面には厚い酸化膜が形成され、塗膜の密着性を確保することはできなかった(No.2)。
めっきのないホットスタンプ用鋼板とめっきのない270MPa材を突合せ溶接した後、ホットスタンプした場合、溶接ビードには厚い酸化膜が形成され、触ると酸化膜が部分的に剥がれ落ちる状態となり、そのまま塗装しても、塗膜の密着性の得られる状態とはならなかった(No.1)。また、片面にのみ20gr/m2のめっきを付着させた鋼板でも同様の試験を行ったところ、やはり、ホットスタンプ工程において溶接ビード表面には厚い酸化膜が形成され、塗膜の密着性を確保することはできなかった(No.2)。
そこで、めっき付着量や鋼板板厚を種々選択し、溶接金属中の平均アルミニウム濃度を作り分けた試験を行った結果、溶接金属中のアルミ濃度が、0.3mass%以上あれば、ホットスタンプ工程において、厚い酸化膜の形成を避けることができることが確認された(No.3〜5、9、11、12、14)。その際、めっきのアルミニウムにより、溶接ビード表面を覆うように濃化層が形成されていた。この濃化層が、溶接金属中に溶解したアルミニウムの選択酸化と相俟って、ホットスタンプ中に溶接ビード表面に緻密な酸化膜を形成し、厚い酸化膜の形成を抑制したものと考えられた。
一方、溶接金属中のアルミニウム平均濃度が高くなりすぎると、溶接金属の焼き入れ性が失われる(No.7)。めっき付着量が多くなったり、鋼板板厚が薄くなったりして、溶接金属中のアルミニウム平均濃度が高くなっていくと、ホットスタンプ工程での加熱温度では、完全にオーステナイトにできず、十分に焼きが入らなくなり、さらに高くなるとレーザ溶接においても焼きが入らなくなることが明らかとなった。試験によると、式(1)を用いたAc3点の推定値が1250℃を上回ると、レーザ溶接後の冷却過程でもオーステナイトに変態することが無くなり、焼きが入らなくなった。このため、アルミニウムが高濃度に溶解した溶接金属の硬さは、母材の硬さに比べて低くなり、ホットスタンプ後の引張試験で溶接金属破断となることが確認できた(No.6、7、13)。
さらに、溶接金属の厚さが母材鋼板の板厚よりも小さくなり過ぎると、溶接継手部の強度が低下してホットスタンプ後の引張試験で溶接金属破断した(No.8、13)。それを防ぐために、直径0.9mmのソリッドワイヤ(YGW12)を溶接中に供給して溶接金属の厚さを調整した。送給速度は、溶接速度の1倍と2倍の2種類である。送給速度1倍では、母材破断となる良好な継手が得られたが(No.9)、2倍にするとビードが高くなり、溶接ビード周囲の母材に焼きが入らなくなり、低強度で破断した(No.10)。
Claims (3)
- 強度の異なるアルミニウムめっき鋼板を突合せレーザ溶接して形成したホットスタンプ用のテーラードブランクであって、
前記突合せレーザ溶接によって形成された溶接金属中のAlの平均濃度が0.3質量%以上、1.5質量%以下であり、下記の式(1)で定義される溶接金属のAc3点が1250℃以下であり、
さらに、ホットスタンプ後の溶接金属の硬さと溶接金属の最も薄い部分の厚さの積の値が、低強度側の鋼板のホットスタンプ後の硬さと板厚の積の値より高くなるように、前記突合せ溶接する鋼板が組み合わされて溶接されていることを特徴とするテーラ−ドブランク。
Ac3=910−230C0.5−15.2Ni+44.7Si+104V+31.5Mo+13.1W−30Mn
−11Cr−20Cu+700P+400Al+120As+400Ti ・・・式(1)
ここで、式(1)において、元素記号は溶接金属中のそれぞれの元素の含有量(質量%)を表す。また、含有していない元素は含有量0として計算する。 - 前記溶接金属の最も薄い部分の厚みが、前記アルミニウムめっき鋼板の板厚の、突合せ溶接するアルミニウムめっき鋼板の厚みが異なる場合は薄い方の鋼板の板厚の90%以上であり、かつ、前記溶接金属の表裏面が、前記アルミニウムめっき鋼板の延長線より、突合せ溶接するアルミニウムめっき鋼板の厚みが異なる場合は厚い方の鋼板の延長線より300μmを超えて外側に突出しないようにされていることを特徴とする請求項1に記載のテーラードブランク。
- 前記溶接金属の表面が、前記突合せ溶接の際に形成されたアルミニウム層によって覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載のテーラードブランク。
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