JP2013200447A - 偏光板、その製造方法及び液晶表示パネル - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリプロピレン系樹脂フィルムの剛性を向上させ、それを偏光板の保護フィルムとして適用することにより、高温条件のような過酷な環境下でも変形を伴うことの少ない偏光板及びその製造方法を提供し、その偏光板を液晶表示パネルに適用する。
【解決手段】二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルム11と、その片面又は両面に貼合された透明保護フィルム12,13とを備える偏光板10において、透明保護フィルム12,13の少なくとも一方(好ましくは液晶セルに貼り合わせるための粘着剤層22から遠い側のフィルム12)は、エチレンユニットの含有量が1重量%以下のポリプロピレン系樹脂フィルムを二軸延伸したフィルムであり、80℃で200MPa以上の引張弾性率を示すもので構成する。
【選択図】図1
【解決手段】二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルム11と、その片面又は両面に貼合された透明保護フィルム12,13とを備える偏光板10において、透明保護フィルム12,13の少なくとも一方(好ましくは液晶セルに貼り合わせるための粘着剤層22から遠い側のフィルム12)は、エチレンユニットの含有量が1重量%以下のポリプロピレン系樹脂フィルムを二軸延伸したフィルムであり、80℃で200MPa以上の引張弾性率を示すもので構成する。
【選択図】図1
Description
本発明は、偏光板、その製造方法及び液晶表示パネルに関するものであり、特に、ポリプロピレン系樹脂フィルムを保護フィルムとする偏光板、その製造方法及びその偏光板を備える液晶表示パネルに関するものである。
液晶表示パネルを表示素子とする液晶表示装置は、液晶テレビ、液晶モニタ、パーソナルコンピュータなど、薄型の表示装置として、用途が急拡大している。特に液晶テレビの市場拡大は著しく、それに伴って低コスト化の要求も強い。液晶テレビなどの液晶表示装置は、液晶セルと偏光板を構成部材とする液晶パネルに、バックライトをはじめとする各種部材を組み込んで構成されている。
偏光板は通常、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの片面又は両面に接着剤層を介して、透明保護フィルム、例えば、トリアセチルセルロースに代表される酢酸セルロース系樹脂からなる保護フィルムを貼合した構成となっている。これを、必要により他の光学フィルムを介して液晶セルに粘着剤で貼り合わせ、液晶表示装置の構成部品とされる。
しかし、酢酸セルロース系樹脂のような親水性の樹脂からなる保護フィルムを偏光板の両面に使用すると、高温多湿の条件下では、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの水分量に影響を与え、偏光板としての性能が多少なりとも変化してしまうことがある。そのため、親水性樹脂からなる保護フィルムの代わりに、疎水性の樹脂、例えばポリプロピレン系樹脂からなる保護フィルムを使用し、環境による影響を極力抑制できる構成の偏光板が検討されるようになった。例えば、特開 2007-334295号公報(特許文献1)には、偏光フィルムの少なくとも一方の表面にポリプロピレン系樹脂からなる保護フィルムを貼合して偏光板とすることが開示されており、また特開 2009-258588号公報(特許文献2)には、偏光板の保護フィルムとなるポリプロピレン系樹脂フィルムを、20℃におけるキシレン可溶分が1重量%以下のもので構成することが開示されている。
ポリプロピレン系樹脂フィルムを偏光板の保護フィルムとする場合、その剛性の低さが指摘されている。例えば特開 2011-197642号公報(特許文献3)には、ポリプロピレン系樹脂フィルムのような剛性の低い樹脂フィルムを液晶セル側の保護フィルムとすることを前提として、その表面に粘着剤層とセパレートフィルムとがこの順で形成された粘着剤層付き樹脂フィルムを予め作製し、その樹脂フィルム表面に表面活性化処理を施してから、接着剤層を介して偏光フィルムを貼合し、偏光板を製造する方法が開示されている。
一方、液晶表示装置の中でも車載用途などにおいては、使用環境が高温になることがあり、またテレビやモニタなどにおいても、バックライトからの熱により、構成部材である偏光板が高温状態となることがある。そのような過酷な状態でも安定的な性能を発揮するには、特許文献1〜3に示されるポリプロピレン系樹脂からなる保護フィルムを使用した偏光板をさらに高性能とすることが望まれている。
ポリプロピレン系樹脂フィルムを偏光フィルムの少なくとも一方の面に配置した偏光板は、使用環境による偏光フィルムへの影響が少ないものである。しかし、ポリプロピレン系樹脂フィルムは、そのガラス転移温度が低くて柔軟な素材であることから、高温下で使用されてポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムが大きく収縮する場合、その収縮を抑える性能が若干不足することがあり、偏光板として変形を伴う可能性があるという課題を有していた。
本発明者らは、ポリプロピレン系樹脂フィルムを偏光フィルムの少なくとも一方の面に配置した偏光板が、高温条件のような過酷な環境下で変形する原因は、保護フィルムであるポリプロピレン系樹脂フィルムが柔軟でありすぎることにあると考えた。そのため、ポリプロピレン系樹脂フィルムの高温下での剛性を改良する必要がある。
そこで、本発明の課題は、ポリプロピレン系樹脂フィルムの剛性を向上させ、それを偏光板の保護フィルムとして適用することにより、高温条件のような過酷な環境下でも変形を伴うことの少ない偏光板を提供することにある。本発明のもう一つの課題は、剛性が向上されたポリプロピレン系樹脂フィルムを製造し、それを偏光板の保護フィルムに適用して、過酷な環境下でも変形を伴うことの少ない偏光板を製造する方法を提供することにある。本発明のさらにもう一つの課題は、上記の偏光板を液晶セルに適用し、液晶表示パネル及び液晶表示装置とすることにある。
本発明者らは、かかる課題のもとで研究を行った結果、エチレンユニットの含有量を特定したポリプロピレン系樹脂フィルムに対して二軸延伸を施すことが、その剛性の向上に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、その偏光フィルムの片面又は両面に貼合された透明保護フィルムとを備え、その透明保護フィルムの少なくとも一方は、エチレンユニットの含有量が1重量%以下のポリプロピレン系樹脂フィルムを二軸延伸したフィルムであり、80℃において200MPa 以上の引張弾性率を示すもので構成される偏光板が提供される。
この偏光板において、上記ポリプロピレン系樹脂フィルムは、エチレンユニットの含有量が 0.01重量%以上1重量%以下であるプロピレンとエチレンの共重合体で構成されることが好ましい。これらの偏光板は、偏光フィルムの片面に上記の引張弾性率が高められたポリプロピレン系樹脂からなる透明保護フィルムが貼合されており、他面には別の透明保護フィルムが貼合されている形態をとることができる。この場合、偏光フィルムの他面に貼合される別の透明保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂又は酢酸セルロース系樹脂で構成するのが有利である。
また本発明によれば、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに、ポリプロピレン系樹脂フィルムを貼合し、偏光板を製造する方法であって、そのポリプロピレン系樹脂フィルムを、80℃において200MPa 以上の引張弾性率を示すように二軸延伸する延伸工程と、二軸延伸が施されたポリプロピレン系樹脂フィルムを偏光フィルムに貼合する貼合工程とを備える偏光板の製造方法も提供される。
この方法において、上記の延伸工程は、縦延伸倍率と横延伸倍率の積が20倍以上となるように行われることが好ましい。
上記本発明の偏光板は、液晶セルと組み合わせて液晶表示パネルとすることができる。偏光フィルムの片面に上記の引張弾性率が高められたポリプロピレン系樹脂からなる透明保護フィルムが貼合されており、他面には別の透明保護フィルム、例えば環状オレフィン系樹脂又は酢酸セルロース系樹脂からなるフィルムが貼合されている偏光板であれば、当該別の透明保護フィルム側で液晶セルに貼着するのが有利である。
本発明の偏光板は、エチレンユニットの含有量が1重量%以下のポリプロピレン系樹脂フィルムを二軸延伸したフィルムであり、80℃において200MPa 以上の引張弾性率を示すものを、偏光フィルムの少なくとも一方の面に貼合される保護フィルムとして用いている。そのため、偏光板を長期間使用してもそのポリプロピレン系樹脂フィルムが剥がれにくく、したがって耐久性に優れる偏光板とすることができる。また、本発明の方法によれば、この偏光板を工業的有利に製造することができる。この偏光板を適用した液晶表示パネル及び液晶表示装置は、長期にわたって高い耐久性を維持し続けることができる。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。図1を参照して、偏光板10は、偏光フィルム11の片面又は両面に、透明樹脂からなる保護フィルム12,13が貼合された構成を有している。通常はその一方の面、具体的には液晶パネルとするときに液晶セルに貼着される面に、粘着剤層22が設けられ、その表面がセパレートフィルム24によって仮着保護され、市場に流通する。セパレートフィルム24は、液晶セルへ貼着する直前に剥離除去される。また、粘着剤層22を介して別の光学フィルムを貼り合わせ、その上に粘着剤層をもう一層設けて、その粘着剤層を介して液晶セルに貼着することもある。
図示の例では、偏光フィルム11の両面に、それぞれ透明保護フィルム12,13が貼合されており、一般にはこのような形態をとることが多いが、偏光フィルム11の片面にのみ透明保護フィルムを貼合することもある。その場合は、液晶パネルとするときに偏光フィルム11の液晶セルから遠い側となる面に、透明保護フィルム12を設けるのが普通である。このように偏光フィルム11の片面にのみ透明保護フィルム12を設ける場合、偏光フィルム11の他面には通常、粘着剤層22が直接設けられる。すなわち、偏光フィルム11の片面にのみ透明保護フィルムを貼合する形態では、図1において、一方の透明保護フィルム13を省略した状態となるのが一般的である。
そして本発明では、透明保護フィルムの少なくとも一方、すなわち、偏光フィルム11の両面に保護フィルム12,13を貼合する場合は、その少なくとも一方、また偏光フィルム11の片面にのみ保護フィルムを貼合する場合はその保護フィルム、通常は液晶パネルとするときに液晶セルから遠い側となる透明保護フィルム12を、エチレンユニットの含有量が1重量%以下のポリプロピレン系樹脂フィルムを二軸延伸したフィルムで構成する。偏光フィルム11の両面に透明保護フィルム12,13を設ける場合も、液晶セルから遠い側となる透明保護フィルム12を、上記したポリプロピレン系樹脂フィルムの二軸延伸フィルムで構成するのが有利である。このポリプロピレン系樹脂フィルムは、エチレンユニットの含有量を1重量%以下とし、かつ二軸延伸することによって、80℃における引張弾性率を200MPa 以上とし、剛性が高められている。
まず、偏光板10を構成する各フィルムについて説明する。
[偏光フィルム]
偏光板10の中心要素となる偏光フィルム11は、自然光を直線偏光に変換する機能を有するフィルムである。偏光フィルム11は、ポリビニルアルコール系樹脂からなり、そこに二色性色素を吸着配向させたもので構成される。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体であることができる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
偏光板10の中心要素となる偏光フィルム11は、自然光を直線偏光に変換する機能を有するフィルムである。偏光フィルム11は、ポリビニルアルコール系樹脂からなり、そこに二色性色素を吸着配向させたもので構成される。ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体であることができる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用できる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000程度であり、好ましくは1,500〜5,000程度である。
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルム11の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚さは、例えば3〜150μm 程度であることができる。
偏光フィルム11は通常、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する延伸工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる染色工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理するホウ酸処理工程、及びホウ酸処理後に水で洗浄する水洗工程を経て製造される。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、染色工程の前、染色工程と同時、又は染色工程の後に行うことができる。一軸延伸を染色工程の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理工程の前に行ってもよいし、ホウ酸処理工程中で行ってもよい。また、複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸は、周速度の異なるロール間で一軸に延伸する方法や、加熱ロールを用いて一軸に延伸する方法などによって行うことができる。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸で行ってもよいし、水等の溶剤を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸で行ってもよい。延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素又は二色性有機染料が用いられる。またポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水に浸漬して膨潤させる処理を施しておくことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり、通常 0.01〜1重量部程度であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒程度である。
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部程度であり、好ましくは1×10-3〜1重量部程度である。この水溶液は、硫酸ナトリウムなどの無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる二色性有機染料水溶液の温度は、通常20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒程度である。
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部程度である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸水溶液は、さらにヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部程度であり、好ましくは5〜12重量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒程度であり、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜80℃である。
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5〜40℃程度であり、浸漬時間は、通常1〜120秒程度である。
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルム11が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30〜100℃程度であり、好ましくは50〜80℃である。乾燥処理の時間は、通常60〜600秒程度であり、好ましくは120〜600秒である。
こうして、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色及びホウ酸処理が施され、その二色性色素が吸着配向している偏光フィルム11が得られる。偏光フィルム11の厚さは、例えば2〜40μm 程度とすることができる。
このようして得られる偏光フィルム11は、引き続く製造ラインにおいて、透明保護フィルム12,13と貼合されることが好ましい。これにより、ポリビニルアルコール系樹脂の原反フィルムからスタートして、偏光板10を連続的に生産することができる。
透明保護フィルム12,13は、偏光フィルム11が高度に延伸されていることに起因してその延伸方向に裂けやすいことから、それを防止し、偏光フィルム11の表面を保護する目的で設けられる。偏光フィルム11の片面に透明保護フィルムを貼合するだけでも相応の効果を発揮するが、一般には、偏光フィルム11の両面に透明保護フィルムを貼合するのが好ましい。偏光フィルム11の両面に透明保護フィルム12,13を貼合する場合、液晶表示パネルとしたときに液晶セル側となる透明保護フィルム13には、保護フィルムとしての機能のほか、液晶セルに対する光学補償の機能をもたせることもある。本発明で規定する剛性が高められた二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、液晶表示パネルとしたときに液晶セルから遠い側となる透明保護フィルム12とするのが有効である。
[ポリプロピレン系樹脂フィルム]
偏光フィルム11の少なくとも一方の面、好ましくは液晶セルから遠い側となる面に貼合されるポリプロピレン系樹脂フィルムについて説明する。このポリプロピレン系樹脂フィルムは、エチレンユニットの含有量が1重量%以下のポリプロピレン系樹脂フィルムに対して二軸延伸を施すことにより、80℃における引張弾性率が200MPa 以上と高められている。
偏光フィルム11の少なくとも一方の面、好ましくは液晶セルから遠い側となる面に貼合されるポリプロピレン系樹脂フィルムについて説明する。このポリプロピレン系樹脂フィルムは、エチレンユニットの含有量が1重量%以下のポリプロピレン系樹脂フィルムに対して二軸延伸を施すことにより、80℃における引張弾性率が200MPa 以上と高められている。
このポリプロピレン系樹脂フィルムは、剛性の観点から、エチレンユニットの含有量が1重量%以下とされる。すなわち、このフィルムを構成するポリプロピレン系樹脂は、エチレンユニットを含有しないプロピレンの単独重合体とするか、又はエチレンユニットの含有量が1重量%以下のプロピレンとエチレンの共重合体とする。
ポリプロピレン系樹脂におけるエチレンユニットの含有量が1重量%を上回ると、樹脂のガラス転移温度(Tg)が低くなるため、得られるフィルムは、たとえ二軸延伸を施しても、本発明で規定するほどに剛性を高めることが難しくなる。フィルムの剛性を高める観点からは、エチレンユニットの含有量を0.75重量%以下、さらには0.5重量%以下とするのが好ましい。
一方、エチレンユニットの含有量が少なすぎると、得られるフィルムの加工性や透明性が必ずしも十分でなくなる可能性がある。そこで、エチレンユニットの含有量を 0.01重量%以上、さらには0.05重量%以上、とりわけ0.1重量%以上とした、プロピレンとエチレンの共重合体とするのが好ましい。プロピレンとエチレンの共重合体とする場合は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいが、エチレンユニットの含有量が上記のとおり少ないので、一般にはランダム共重合体として製造されることが多い。共重合体中のエチレンユニットの含有量は、例えば、「高分子分析ハンドブック」(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている方法により赤外線(IR)スペクトル測定を行い、求めることができる。
ポリプロピレン系樹脂の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、又はアタクチックのいずれでもありうるが、耐熱性や剛性、透明性の観点からは、アイソタクチックであるのが好ましい。このポリプロピレン系樹脂は、 JIS K 7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、温度230℃、荷重 21.18Nで測定されるメルトマスフローレイト(MFR)が、 0.1〜200g/10分の範囲内、さらには 0.5〜50g/10分の範囲内にあることが好ましい。MFRがこの範囲内にあるポリプロピレン系樹脂を用いれば、押出機に大きな負荷をかけることなく、均一なフィルムを得ることができる。
このポリプロピレン系樹脂は、公知の重合用触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法や、プロピレンとエチレンとを共重合する方法によって、製造することができる。公知の重合用触媒としては、例えば、次のようなものを挙げることができる。
(1)マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分からなるTi−Mg系触媒、
(2)マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物等の第三成分とを組み合わせた触媒系、
(3)メタロセン系触媒など。
(1)マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分からなるTi−Mg系触媒、
(2)マグネシウム、チタン及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物等の第三成分とを組み合わせた触媒系、
(3)メタロセン系触媒など。
上記(1)及び(2)の固体触媒成分として、例えば、特開昭 61-218606号公報、特開昭 61-287904号公報、特開平 7-216017 号公報などに記載の触媒系が挙げられる。また、上記(3)のメタロセン系触媒として、例えば、特許第 2587251号公報、特許第 2627669号公報、特許第2668732号公報などに記載の触媒系が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン又はキシレンのような炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶液重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマーをそのまま重合させる気相重合法などによって製造することができる。これらの方法による重合は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。
ポリプロピレン系樹脂には、公知の添加物が配合されていてもよい。配合されうる添加物の例を挙げると、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤などがある。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、また1分子中に例えば、フェノール系の酸化防止機構とリン系の酸化防止機構とを併せ持つユニットを有する複合型の酸化防止剤も用いることができる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が代表的である。紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ベンゾエート系の紫外線吸収剤などが挙げられる。帯電防止剤は、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型のいずれであってもよい。滑剤としては、エルカ酸アミドやオレイン酸アミドのような高級脂肪酸アミド、ステアリン酸のような高級脂肪酸及びその塩などが挙げられる。造核剤としては、例えば、ソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、ポリビニルシクロアルカンのような高分子系造核剤などが挙げられる。アンチブロッキング剤としては、無機系、有機系を問わず、球状あるいはそれに近い形状の微粒子を使用することができる。これらの添加物は、複数種が併用されてもよい。
ポリプロピレン系樹脂は、工業的に用いられている公知の方法で成形することにより、フィルム状に製膜することができる。具体的な製膜法の例を挙げると、押出成形法、ブロー成形法、射出成形法、圧縮成形法、カレンダ成形法などがある。ポリプロピレン系樹脂は特に、Tダイ成形法やチューブラー成形法のような押出成形法により、好適に製造することができる。これらのうち特に好ましいのは、Tダイを用いた溶融押出成形法である。
こうして製膜されるポリプロピレン系樹脂フィルムが、本発明で規定する二軸延伸に供するための原反フィルムとなる。この原反フィルムの厚さは、100〜3,000μm程度とすることができるが、好ましくは1,500〜2,500μm である。原反フィルムの厚さが100μm を下回ると、二軸延伸後のフィルムがハンドリング性に劣る傾向にある。逆にその厚さが3,000μmを超えると、フィルムの剛性が高くなりすぎて、ハンドリング性が低下しやすくなる。
本発明では、以上のようにして得られるポリプロピレン系樹脂フィルムに対して、二軸延伸を施すことにより、温度80℃における引張弾性率が200MPa 以上と、有意に高められたフィルムを採用する。二軸延伸については、後で改めて説明するが、二軸延伸によって得られるフィルムは、透明で実質的に面内位相差のない状態とすることが好ましい。またそのフィルムの厚さは、5〜200μm 程度であることが好ましく、より好ましくは10〜85μm である。
引張弾性率は、一般の引張試験機を用いて測定することができる。引張試験機の例を挙げると、(株)島津製作所製のオートグラフ“AG-1”がある。適当な大きさの試験片を裁断し、80℃の乾燥オーブンの中で5分ほど保持して温度を安定させてから引張試験を行う。オーブン温度は80℃±2℃程度に管理する。後述の実施例では、フィルムを20mm×100mmの大きさに裁断し、その長手方向の両端20mmずつをチャックでつかみ、標点距離を60mmとし、引張速度5mm/分で引張試験を行った。引張弾性率は、材料の引張試験により得られた応力ひずみ線図における弾性域の傾きとして定義される。このとき、応力σとひずみεの関係は、式:σ=Eεで表すことができ、ここでいうEが、縦弾性係数であり、引張弾性率となる。
ポリプロピレン系樹脂は、光弾性係数が2×10-13cm2/dyne前後と小さく、また透湿度が小さいため、ポリプロピレン系樹脂フィルムを保護膜として有する偏光板10を液晶セルに適用すれば、湿熱条件下での耐久性に優れる液晶パネル及び液晶表示装置とすることができる。さらに、ポリプロピレン系樹脂フィルムの偏光フィルム11に対する接着性は、トリアセチルセルロースフィルムほどではないにしても良好であり、公知の各種接着剤を用いた場合に、ポリプロピレン系樹脂フィルムを十分な強度で偏光フィルム11に接着することができる。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂フィルムは、内部ヘーズが5%以下、さらには3%以下であり、全ヘーズが30%以下であることが好ましい。内部ヘーズが5%を超えるか、又は全ヘーズが30%を超えると、フィルムを透過する光が散乱し、液晶セルに貼着して液晶表示パネル又は液晶表示装置としたときに、表示特性が低下してしまう可能性がある。
ここでヘーズとは、フィルムに可視光を入射したときの全光線透過率に対する拡散光線透過率の割合であり、ヘーズが小さいほど、そのフィルムは透明性に優れることを意味する。フィルムにそのまま可視光を入射して得られるヘーズは、全ヘーズとも呼ばれ、これは、フィルムの表面形状による光拡散に起因する外部ヘーズと、フィルム内部に存在する光拡散要因(光拡散剤や結晶粒界など)による光拡散に起因する内部ヘーズの和となる。例えば、そのフィルムとほぼ等しい屈折率を有する液体の中にフィルムを入れてその片面から可視光を入射してやれば、表面形状による光拡散がない状態のヘーズ、すなわち内部ヘーズを求めることができる。したがって外部ヘーズは、全ヘーズから内部ヘーズを差し引いた値として表すことができる。
[もう1枚の透明保護フィルム]
図1を参照して先に述べたとおり、本発明では、偏光板10を液晶セルに貼着するときに液晶セルから遠い側になる透明保護フィルム12として、ポリプロピレン系樹脂フィルムに二軸延伸を施すことにより、剛性が高められたフィルムを用いるのが好ましい。偏光フィルム11のもう一方の面にも透明保護フィルム13を設ける場合、その保護フィルム13は、偏光板10の用途に応じて種々の透明樹脂フィルムで構成することができる。透明保護フィルム13は、保護フィルムの機能とともに、位相差フィルムの機能を有するものであってもよい。
図1を参照して先に述べたとおり、本発明では、偏光板10を液晶セルに貼着するときに液晶セルから遠い側になる透明保護フィルム12として、ポリプロピレン系樹脂フィルムに二軸延伸を施すことにより、剛性が高められたフィルムを用いるのが好ましい。偏光フィルム11のもう一方の面にも透明保護フィルム13を設ける場合、その保護フィルム13は、偏光板10の用途に応じて種々の透明樹脂フィルムで構成することができる。透明保護フィルム13は、保護フィルムの機能とともに、位相差フィルムの機能を有するものであってもよい。
透明保護フィルム13となりうる樹脂の例を挙げると、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を包含するポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースを包含する酢酸セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂などがある。これらの透明樹脂からなるフィルムは、延伸されていないものであることもできるし、一軸又は二軸に延伸されたものであることもできる。透明保護フィルム13の膜厚は、通常10〜200μm程度であり、好ましくは20〜120μmである。
この透明保護フィルム13が延伸フィルムである場合は、延伸によって適当な位相差が付与されたものとなる。位相差が付与されたフィルムは、1/4波長板や1/2波長板のような波長板であってもよいし、光学補償のためのフィルムであってもよい。透明保護フィルム13として光学補償のための位相差フィルムを用いる場合、液晶セルに採用されているモードを考慮して、適当な位相差が付与されたものを選択すればよい。
例えば、垂直配向(Vertical Alignment:VA)モードの液晶セルであれば、正の固有複屈折を有する高分子フィルムが一軸延伸され、屈折率楕円体がnx>ny≒nz の関係を有するポジティブAプレート、横延伸又は二軸延伸が施され、nx>ny>nz の関係を有する二軸性のフィルム、又はnx≒ny>nz の関係を有するネガティブCプレートを用いることができる。ここで、nx はフィルムの面内遅相軸(x軸)方向の屈折率、ny は面内進相軸(y軸:遅相軸と面内で直交する軸)方向の屈折率、そしてnz は厚み(z軸)方向の屈折率である。
これらの中でも、二軸延伸された位相差フィルムが、透明保護フィルム13として好適に用いられる。フィルムの二軸性の目安となるNz係数は、次の式(1)で定義される。さらに、フィルムの膜厚をdとして、面内の位相差Re及び厚み方向の位相差Rthは、それぞれ次の式(2)及び(3)で定義される。
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) ・・・(1)
Re=(nx−ny)×d ・・・(2)
Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d ・・・(3)
Nz=(nx−nz)/(nx−ny) ・・・(1)
Re=(nx−ny)×d ・・・(2)
Rth=〔(nx+ny)/2−nz〕×d ・・・(3)
また、上記式(1)〜(3)から、Nz係数と、面内の位相差Re及び厚み方向の位相差Rthとは、次の式(4)で表される関係を有する。
Nz=Rth/Re+0.5 ・・・(4)
Nz=Rth/Re+0.5 ・・・(4)
透明保護フィルム13として二軸性の位相差フィルムを用いる場合、その面内の位相差Reは、30〜300nmの範囲、とりわけ50〜260nmの範囲にあることが好ましい。またNz係数は、1.1〜7の範囲、とりわけ1.4〜5の範囲にあることが好ましい。これらの範囲から、適用される液晶表示装置に要求される視野角特性に合わせて、適宜の値に設定すればよい。
透明保護フィルム13が位相差フィルムである場合、偏光フィルム11と、位相差フィルムである透明保護フィルム13とは、前者の吸収軸と後者の遅相軸とのなす角度を、その用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、透明保護フィルム13が光学補償のための位相差フィルムである場合には、偏光フィルム11の吸収軸とその位相差フィルムの遅相軸とのなす角度は、実質的に0°又は90°とされる。
一方、透明保護フィルム13が延伸されていないフィルムの場合、面内の位相差Reはほとんど発現せず、偏光フィルム11の保護フィルムとして機能する。中でも、面内の位相差Reがほぼゼロであり、厚み方向の位相差Rthもほぼゼロ、例えば10nm以下とされた事実上無配向のフィルムは、例えば、横電解(In Plane Switching:IPS)モードの液晶セルに対して、一種の光学補償フィルムとして機能するので、好適に用いられる。
液晶表示パネルとするときに液晶セル側となる透明保護フィルム13として、以上説明した位相差フィルムや事実上無配向のフィルムを用いる場合、その透明保護フィルム13は、環状オレフィン系樹脂又は酢酸セルロース系樹脂で構成するのが、光弾性係数が小さいことや入手のしやすさなどから、有利である。とりわけ位相差フィルムとする場合は、延伸条件によって、望まれる各種の位相差を付与しやすいことから、環状オレフィン系樹脂が好適に用いられる。
[偏光板の製造方法]
本発明の偏光板は、ポリプロピレン系樹脂フィルムを二軸延伸することにより、80℃において200MPa 以上の引張弾性率を示すようにする延伸工程と、二軸延伸が施されたポリプロピレン系樹脂フィルムを偏光フィルムに貼合する貼合工程とを備える方法によって、製造することができる。
本発明の偏光板は、ポリプロピレン系樹脂フィルムを二軸延伸することにより、80℃において200MPa 以上の引張弾性率を示すようにする延伸工程と、二軸延伸が施されたポリプロピレン系樹脂フィルムを偏光フィルムに貼合する貼合工程とを備える方法によって、製造することができる。
(延伸工程)
まず、延伸工程について説明する。ポリプロピレン系樹脂フィルムは、先に説明したとおり、溶融押出成形などの適宜な方法によって製膜される。本発明では、こうして得られるポリプロピレン系樹脂の原反フィルムに対して、二軸延伸を施すことにより、そのフィルムの80℃における引張弾性率を大きくし、いわゆる「こし」を強くする、換言すれば剛性を高める。
まず、延伸工程について説明する。ポリプロピレン系樹脂フィルムは、先に説明したとおり、溶融押出成形などの適宜な方法によって製膜される。本発明では、こうして得られるポリプロピレン系樹脂の原反フィルムに対して、二軸延伸を施すことにより、そのフィルムの80℃における引張弾性率を大きくし、いわゆる「こし」を強くする、換言すれば剛性を高める。
二軸延伸を採用するため、長尺フィルムとして製造される原反フィルムをその長手方向に搬送しながら、機械流れ方向(MD)及びこれに直交する方向(TD)の双方に対して延伸を行う。二軸延伸は、二つの延伸方向に同時に延伸する同時二軸延伸でもよいし、ある方向に延伸した後、それと直交するもう一つの方向に延伸する逐次二軸延伸でもよい。二軸延伸処理は、例えば、出口側の周速度を早くした二対以上のニップロールを用いて長手方向(機械流れ方向:MD)に延伸する縦延伸と、フィルムの両側端をチャックで把持して機械流れ方向に直交する幅方向(TD)に広げる横延伸とを組み合わせることによって、行われる。
機械流れ方向(MD)への延伸倍率、すなわち縦延伸倍率と、機械流れ方向に直交する方向(TD)への延伸倍率、すなわち横延伸倍率は、両者の積が20倍以上となるようにすることが好ましく、さらには、その積が30倍以上となるようにすることが一層好ましい。この延伸倍率の積が20倍を下回ると、得られるポリプロピレン系樹脂フィルムの機械的強度が向上しにくくなる。一方で、それぞれの延伸倍率をあまり大きくすると、得られるフィルムが薄くなりすぎて破断しやすくなったり、ハンドリング性が低下しやすくなったりする。そこで、上記の縦延伸倍率と横延伸倍率の積は、60倍以下、さらには50倍以下となるようにすることが好ましい。
それぞれの延伸倍率は、原反フィルムにおいて、長手方向(MD)の基準長さL(0) 及び幅方向(TD)の基準長さW(0) を定めておき、延伸終了後のフィルムにおける前者に相当する部位の長さL(1) 及び後者に相当する部位の長さW(1) から、以下の式(5)及び(6)によって求めることができる。
縦延伸倍率(MD延伸倍率)=L(1)/L(0) ・・・(5)
横延伸倍率(TD延伸倍率)=W(1)/W(0) ・・・(6)
縦延伸倍率(MD延伸倍率)=L(1)/L(0) ・・・(5)
横延伸倍率(TD延伸倍率)=W(1)/W(0) ・・・(6)
例えば、原反フィルムの長手方向(MD)基準長さ L(0)=2mだったところが、延伸後に L(1)=10mとなり、原反フィルムの幅方向(TD)基準長さ W(0)=1mだったところが、延伸後に W(1)=6mになった場合、縦延伸倍率は、L(1)/L(0)=10m/2m=5倍、横延伸倍率は、W(1)/W(0)=6m/1m=6倍となる。したがって、この場合の両者の積は、5倍×6倍=30倍となる。
こうして二軸延伸が施されたポリプロピレン系樹脂フィルムは、その二軸延伸処理により、原反フィルムに比べて機械的強度が高く、破断しにくいものになるとともに、引張弾性率が高められ、高い剛性が付与される。また、二軸延伸後のフィルムは、原反フィルムに比べればはるかに薄肉となる。
(貼合工程)
延伸工程を経た後のポリプロピレン系樹脂フィルムは、次の貼合工程で、偏光フィルムに貼り合わされる。図1を参照して、偏光フィルム11の一方の面に、透明保護フィルム12として本発明で規定するポリプロピレン系樹脂フィルムを、他方の面に同種の又は異なる透明保護フィルム13を貼り合わせる場合、他方の透明保護フィルム13も、この貼合工程で同時に貼り合わせるのが有利である。偏光フィルム11に対する透明保護フィルム12と透明保護フィルム13の貼合には通常、接着剤が用いられる。偏光フィルム11と透明保護フィルム12とを貼合するための接着剤及び偏光フィルム11と透明保護フィルム13とを貼合するための接着剤は、同種であっても、異種であってもよいが、適度な接着力が得られるなら、同種のものとするほうが、生産性の観点からは有利である。
延伸工程を経た後のポリプロピレン系樹脂フィルムは、次の貼合工程で、偏光フィルムに貼り合わされる。図1を参照して、偏光フィルム11の一方の面に、透明保護フィルム12として本発明で規定するポリプロピレン系樹脂フィルムを、他方の面に同種の又は異なる透明保護フィルム13を貼り合わせる場合、他方の透明保護フィルム13も、この貼合工程で同時に貼り合わせるのが有利である。偏光フィルム11に対する透明保護フィルム12と透明保護フィルム13の貼合には通常、接着剤が用いられる。偏光フィルム11と透明保護フィルム12とを貼合するための接着剤及び偏光フィルム11と透明保護フィルム13とを貼合するための接着剤は、同種であっても、異種であってもよいが、適度な接着力が得られるなら、同種のものとするほうが、生産性の観点からは有利である。
接着剤としては、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、アクリルアミド系樹脂などを接着剤成分とするものを用いることができる。好ましく用いられる接着剤の一つは、無溶剤型の接着剤である。無溶剤型の接着剤は、有意量の溶剤を含まず、加熱や活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光、電子線、X線等)の照射により反応硬化する硬化性成分(モノマー又はオリゴマー)を含み、当該硬化性成分の硬化により接着剤層を形成するものであり、典型的には、加熱や活性エネルギー線の照射により反応硬化する硬化性成分と、重合開始剤とを含む。
特に本発明においては、透明保護フィルム12,13のうち、少なくとも一方をポリプロピレン系樹脂で構成するが、ポリプロピレン系樹脂フィルムは透湿度が小さいため、水系接着剤を用いた場合には水抜けが悪く、接着剤の水分によって偏光フィルム11の損傷や偏光性能の劣化などを引き起こす可能性がある。そこで、水分の存在を嫌う場合には、無溶剤型の接着剤が好ましく用いられる。
速硬化性及びこれに伴う偏光板10の生産性向上の観点から、好ましい接着剤の例として、活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性接着剤を挙げることができる。このような活性エネルギー線硬化性接着剤の例として、紫外線を代表例とする光エネルギーで硬化する光硬化性接着剤が挙げられる。光硬化性接着剤は、反応性の観点から、カチオン重合で硬化するものが好ましく、特に、エポキシ化合物を硬化性成分とする無溶剤型のエポキシ系接着剤は、透明保護フィルム12,13の種類によらず、偏光フィルム11に対して高い接着性を示すので、好ましく用いられる。
無溶剤型のエポキシ系接着剤において、硬化性成分となるエポキシ化合物は、一般にカチオン重合によって硬化する。特に、耐候性や屈折率などの観点から、分子内に芳香環を有しないエポキシ化合物が、好ましく用いられる。分子内に芳香環を有しないエポキシ化合物として、芳香族エポキシ化合物の核水素化物、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などが例示できる。硬化性成分となるエポキシ化合物は通常、1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する。
未硬化のエポキシ系接着剤を介して偏光フィルム11に透明保護フィルム12,13を貼合した後は、活性エネルギー線の照射又は加熱により、接着剤を硬化させ、偏光フィルム11上に透明保護フィルム12,13を固着させる。活性エネルギー線の照射により硬化させる場合、好ましくは紫外線が用いられる。具体的な紫外線光源の例を挙げると、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、ブラックライトランプ、メタルハライドランプなどがある。
活性エネルギー線、例えば紫外線の照射強度や照射量は、カチオン重合開始剤を十分に活性化させ、かつ硬化後の接着剤層や偏光フィルム11などのフィルムに悪影響を与えないように適宜選択される。また、加熱により硬化させる場合は、一般的に知られた方法で加熱すればよく、そのときの温度や時間も、カチオン重合開始剤を十分に活性化させ、かつ硬化後の接着剤層や偏光フィルム11などのフィルムに悪影響を与えないように適宜選択される。
エポキシ系接着剤を用いた場合、活性エネルギー線の照射又は加熱による硬化後の接着剤層は、一般にその厚さを20μm 以下とすることができ、好ましくは10μm 以下、さらに好ましくは3μm 以下とすることができる。
また、水の存在を嫌わない場合には、接着剤層を薄くする観点から、水系接着剤を用いることもできる。水系接着剤は、接着剤成分を水に溶解した、又は接着剤成分を水に分散させた接着剤である。このような水系接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を主成分とするものを挙げることができる。
偏光フィルム11の表面に、水系接着剤を用いて透明保護フィルム12,13を貼合する場合は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクターブレード法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法などにより、偏光フィルム11及び/又はこれに貼合される透明保護フィルム12,13の接着面に接着剤を塗布し、両者を重ね合わせる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物であるフィルムを、概ね垂直方向、概ね水平方向、又は両者の間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤を流下して拡布させる方法である。
水系接着剤を用いて偏光フィルム11に透明保護フィルム12,13を貼り合わせた場合は通常、その後乾燥処理が施され、水分を除去するとともに接着剤を硬化させる。乾燥処理は、例えば熱風を吹き付ける方法により行うことができる。乾燥温度は、通常40〜100℃程度の範囲から選択され、好ましくは60〜100℃である。乾燥時間は、例えば 20〜1,200秒程度である。乾燥後の接着剤層の厚さは、0.001〜5μm程度とすることができ、好ましくは0.01μm以上、また好ましくは2μm 以下、さらに好ましくは1μm 以下である。接着剤層が厚すぎると、偏光板10の外観不良となりやすい。
いずれの接着剤を用いる場合も、偏光フィルム11及び/又はそれに貼合される透明保護フィルム12,13の接着表面には、接着性を向上させるため、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム(火炎)処理、ケン化処理などの表面処理を適宜施してもよい。ケン化処理は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリの水溶液にフィルムを浸漬する方法によって行うことができる。
[粘着剤層及びセパレートフィルム]
かくして得られる偏光板10は通例、図1を参照して先にも述べたとおり、その一方の面、具体的には液晶パネルとするとき液晶セルに貼合される面に、粘着剤層22が設けられ、さらにその表面にセパレートフィルム24が設けられる。粘着剤層22は、アクリル樹脂を粘着剤成分とし、これに架橋剤が配合され、好ましくはさらにシランカップリング剤が配合された、いわゆるアクリル系粘着剤から形成するのが一般的である。また、セパレートフィルム24は、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートなどの透明樹脂フィルムで構成するのが一般的であり、液晶セルに貼着する直前に剥離除去される。
かくして得られる偏光板10は通例、図1を参照して先にも述べたとおり、その一方の面、具体的には液晶パネルとするとき液晶セルに貼合される面に、粘着剤層22が設けられ、さらにその表面にセパレートフィルム24が設けられる。粘着剤層22は、アクリル樹脂を粘着剤成分とし、これに架橋剤が配合され、好ましくはさらにシランカップリング剤が配合された、いわゆるアクリル系粘着剤から形成するのが一般的である。また、セパレートフィルム24は、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートなどの透明樹脂フィルムで構成するのが一般的であり、液晶セルに貼着する直前に剥離除去される。
[液晶パネル及び液晶表示装置]
図1に示す層構成を代表例とする本発明の偏光板10は、液晶パネルの構成部材として使用することができる。図3は、液晶パネル20及びこれを適用した液晶表示装置30の基本的な層構成の例を示す断面模式図である。この図に示すように、偏光板10は、粘着剤層22を介して液晶セル27に貼合され、液晶パネル20となる。液晶パネル20は、液晶セル27と、その背面側に貼着された背面側偏光板10と、液晶セル17の視認側に貼着された前面側偏光板15とにより構成されている。図示の例では、背面側偏光板が、図1に示した本発明の偏光板10で構成されている。
図1に示す層構成を代表例とする本発明の偏光板10は、液晶パネルの構成部材として使用することができる。図3は、液晶パネル20及びこれを適用した液晶表示装置30の基本的な層構成の例を示す断面模式図である。この図に示すように、偏光板10は、粘着剤層22を介して液晶セル27に貼合され、液晶パネル20となる。液晶パネル20は、液晶セル27と、その背面側に貼着された背面側偏光板10と、液晶セル17の視認側に貼着された前面側偏光板15とにより構成されている。図示の例では、背面側偏光板が、図1に示した本発明の偏光板10で構成されている。
前面側偏光板15も、偏光フィルム16と、その少なくとも一方の面、好ましくは両面に貼合された透明保護フィルム17,18とを備えており、その一方の透明保護フィルム18側で、粘着剤層23を介して液晶セル27に貼着されている。偏光フィルム16に対しては、先に図1を参照して偏光フィルム11についてした説明と同様の説明があてはまる。透明保護フィルム17,18に対しては、必要に応じて樹脂が変更される以外は、先に図1を参照して透明保護フィルム12,13についてした説明と同様の説明があてはまる。なお、前面側偏光板15の液晶セル27から遠い側となる透明保護フィルム17の表面には、ハードコート層、防眩層、反射防止層などの表面処理層を設けることが多い。粘着剤層23も、通常はアクリル系粘着剤から形成される。
液晶表示装置30は、液晶パネル20とバックライト35とで構成されている。この図からわかるように、液晶パネル又は液晶表示装置において、背面側とは、液晶パネル20を液晶表示装置30に搭載したときのバックライト35側を意味し、視認側とは、液晶パネル20を液晶表示装置30に搭載したときのバックライト35とは反対側を意味し、こちら側で表示を見ることになる。
液晶セル27は、2枚のガラス基板の間に液晶物質が封入されたセルを電気的に制御することで、画像を表示するようにした素子である。液晶セル17は、先に述べたVAモードやIPSモードのほか、ブルー相の液晶を用いた液晶駆動モードなど、公知の各種モードのものであることができる。
バックライト35は、液晶セル27に表示用の光を供給するための装置であって、やはり、エッジライト型や直下型を含む、この分野において公知のもので構成することができる。エッジライト型のバックライトは、導光板とその側面に配置された冷陰極管やLEDなどからなる光源とで構成され、光源から発せられる光が導光板を通じて液晶セル27に供給されるようになっている。導光板は、アクリル樹脂やポリスチレンなど、透明な樹脂で構成される。一方、直下型のバックライトは、液晶セル27の真下に、冷陰極管などが複数本配置された光源と、その上(液晶セル側)に配置され、光源からの光を拡散させて均一化させるための光拡散板とで構成され、均一に分散された光が液晶セル27に供給されるようになっている。光拡散板は、例えば、熱可塑性樹脂に光拡散剤である粒子を分散させて光拡散性を付与したもの、熱可塑性樹脂シートの表面に凹凸を形成して光拡散性を付与したもの、熱可塑性樹脂シートの表面に粒子が分散された樹脂組成物の塗布層を設けて光拡散性を付与したものなどで構成することができる。その厚さは、通常0.1〜5mm 程度である。
図示は省略するが、バックライト35と液晶パネル20との間には、光拡散シート、プリズムシート、輝度向上シート〔反射型偏光フィルムとも呼ばれ、3M社から販売されている“DBEF”(商品名)がこれに該当する〕など、他の光学機能性を示すシート又はフィルムが配置されることが多い。他の光学機能性を示すシート又はフィルムは、必要に応じて複数種類配置されてもよい。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%は、特記ない限り重量基準である。以下の実施例、特に表においては、ポリプロピレン系樹脂の融点を「Tm 」と表記することがある。また、ポリプロピレン系樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)及び融点は、以下の方法によって測定した値である。
・メルトマスフローレイト(MFR)
JIS K 7210:1999 「プラスチック − 熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に従って、温度
230℃、荷重 21.18Nで測定した。
JIS K 7210:1999 「プラスチック − 熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に従って、温度
230℃、荷重 21.18Nで測定した。
・融点
ポリプロピレン系樹脂のプレスフィルム10mgをサンプルとし、これを示差走査型熱量計(DSC)に入れて、窒素雰囲気下、230℃で5分間加熱処理した後、降温速度10℃/分で30℃まで冷却して同温度で5分間保温し、さらに30℃から230℃まで昇温速度10℃/分で加熱して、そのときの融解ピーク温度を融点とした。
ポリプロピレン系樹脂のプレスフィルム10mgをサンプルとし、これを示差走査型熱量計(DSC)に入れて、窒素雰囲気下、230℃で5分間加熱処理した後、降温速度10℃/分で30℃まで冷却して同温度で5分間保温し、さらに30℃から230℃まで昇温速度10℃/分で加熱して、そのときの融解ピーク温度を融点とした。
[実施例1]
(a)ポリプロピレン系樹脂フィルムの作製
エチレンユニットの含有量が 0.4%で、MFRが9g/10分、融点が162℃であるプロピレン/エチレンランダム共重合体をポリプロピレン系樹脂として用い、260℃に加熱した50mmφの押出機で溶融混練し、次いで600mm幅のTダイから溶融状態で押し出し、25℃に温度調節した冷却ロールで冷却して、厚さ2mmのシートを得た。このシートを、バッチ式二軸延伸機を用いて、160℃で縦方向に5倍延伸し、次に165℃で横方向に9倍延伸して、厚さ約45μm の二軸延伸フィルムを製造した。このときの縦延伸倍率と横延伸倍率の積は、5倍×9倍=45倍となる。
(a)ポリプロピレン系樹脂フィルムの作製
エチレンユニットの含有量が 0.4%で、MFRが9g/10分、融点が162℃であるプロピレン/エチレンランダム共重合体をポリプロピレン系樹脂として用い、260℃に加熱した50mmφの押出機で溶融混練し、次いで600mm幅のTダイから溶融状態で押し出し、25℃に温度調節した冷却ロールで冷却して、厚さ2mmのシートを得た。このシートを、バッチ式二軸延伸機を用いて、160℃で縦方向に5倍延伸し、次に165℃で横方向に9倍延伸して、厚さ約45μm の二軸延伸フィルムを製造した。このときの縦延伸倍率と横延伸倍率の積は、5倍×9倍=45倍となる。
(b)引張弾性率の測定
こうして二軸延伸が施されたポリプロピレン系樹脂フィルムから20mm×100mmの試験片を裁断し、(株)島津製作所製のオートグラフ“AG-1”を用いて引張試験を行った。試験は、上記サンプルの長さ方向両端20mmずつをチャックでつかみ、したがって標点距離を60mmとして、温度が80℃±2℃に管理された乾燥オーブンの中に入れて5分間保持した後、速度5mm/分で引っ張って、引張弾性率を求めた。結果は表1に示した。
こうして二軸延伸が施されたポリプロピレン系樹脂フィルムから20mm×100mmの試験片を裁断し、(株)島津製作所製のオートグラフ“AG-1”を用いて引張試験を行った。試験は、上記サンプルの長さ方向両端20mmずつをチャックでつかみ、したがって標点距離を60mmとして、温度が80℃±2℃に管理された乾燥オーブンの中に入れて5分間保持した後、速度5mm/分で引っ張って、引張弾性率を求めた。結果は表1に示した。
(c)ヘーズの測定
上記(a)で二軸延伸が施されたポリプロピレン系樹脂フィルムにつき、(株)村上色彩技術研究所製のヘーズメータ“HM-150”を用いて、ヘーズを測定した。結果は表1に示した。
上記(a)で二軸延伸が施されたポリプロピレン系樹脂フィルムにつき、(株)村上色彩技術研究所製のヘーズメータ“HM-150”を用いて、ヘーズを測定した。結果は表1に示した。
(d)偏光フィルムの作製
重合度2,400、ケン化度99.9モル%、厚さ60μm、幅3,300mmの長尺のポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の“クラレビニロン VF-PE#6000”〕 を原反フィルムとし、以下のように操作して偏光フィルムを作製した。延伸は、処理槽前後の駆動ニップロールに周速差をつけて行った。
重合度2,400、ケン化度99.9モル%、厚さ60μm、幅3,300mmの長尺のポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の“クラレビニロン VF-PE#6000”〕 を原反フィルムとし、以下のように操作して偏光フィルムを作製した。延伸は、処理槽前後の駆動ニップロールに周速差をつけて行った。
まず、原反フィルムが弛まないよう機械方向に緊張状態を保ったまま、37℃の純水が入った膨潤槽に80秒間浸漬し、フィルムを十分に膨潤させた。膨潤に伴う膨潤槽の入口と出口のロール速度比は 1.2であった。膨潤槽出口に設けたニップロールで水切りを行った後、30℃の純水が入った水浸漬槽に160秒間浸漬した。水浸漬槽中での機械方向の延伸倍率は1.04倍とした。次に、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水が重量比で0.04/1.5/100の水溶液が入った染色槽に浸漬しつつ、延伸倍率約1.6倍で一軸延伸を行った。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で 12/3.6/100の水溶液が入った第一のホウ酸槽に 56.5℃で130秒間浸漬して第一のホウ酸処理を施しつつ、原反からの積算延伸倍率が 5.3倍になるまで一軸延伸を行った。さらに、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で 12/1.5/100の水溶液が入った第二のホウ酸槽に30℃で60秒間浸漬して第二のホウ酸処理を行った。引き続き、10℃の純水が入った水洗槽に約16秒間浸漬して洗浄した後、約60℃の乾燥炉、次に約85℃の乾燥炉を順次通過させ、それら乾燥炉での滞留時間を合計160秒間として乾燥を行った。こうして、ヨウ素が吸着配向している厚さ23μm の偏光フィルムを得た。
(e)ポリプロピレン系樹脂フィルムと偏光フィルムの貼合
上記(a)で作製した二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの片面にコロナ処理を施した後、コロナ処理面に光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含む光硬化性接着剤を厚さ4μm で塗工した。一方、二軸延伸された厚さ50μm のノルボルネン系樹脂フィルム(面内の位相差Re=55nm、厚み方向の位相差Rth=124nm)の片面にコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面に上と同じ光硬化性接着剤を厚さ4μm で塗工した。次いで、上記(d)で作製した偏光フィルムの一方の面に、上記接着剤が塗工されたポリプロピレン系樹脂フィルムの接着剤塗工面を重ねるとともに、他方の面に上記接着剤が塗工されたノルボルネン系樹脂フィルムの接着剤塗工面を重ね、100mmφの一対のニップロールで挟圧した。その後、ノルボルネン系樹脂フィルム側から紫外線を照射し、両方の接着剤を硬化させて偏光板を得た。
上記(a)で作製した二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの片面にコロナ処理を施した後、コロナ処理面に光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含む光硬化性接着剤を厚さ4μm で塗工した。一方、二軸延伸された厚さ50μm のノルボルネン系樹脂フィルム(面内の位相差Re=55nm、厚み方向の位相差Rth=124nm)の片面にコロナ処理を施した後、そのコロナ処理面に上と同じ光硬化性接着剤を厚さ4μm で塗工した。次いで、上記(d)で作製した偏光フィルムの一方の面に、上記接着剤が塗工されたポリプロピレン系樹脂フィルムの接着剤塗工面を重ねるとともに、他方の面に上記接着剤が塗工されたノルボルネン系樹脂フィルムの接着剤塗工面を重ね、100mmφの一対のニップロールで挟圧した。その後、ノルボルネン系樹脂フィルム側から紫外線を照射し、両方の接着剤を硬化させて偏光板を得た。
(f)偏光板の耐久試験
上記(e)で作製した偏光板をワイド42型サイズ(横943mm×縦532mm)に裁断し、アクリル酸ブチルとアクリル酸の共重合体に架橋剤とシランカップリング剤が配合された粘着剤を介してコーニング社製のガラスに板に貼合し、80℃で500時間保持する耐久試験を行った。試験後のサンプルにおけるガラス板からの粘着剤の剥離状況を観察して、粘着剤層の端からの剥離長さで耐久性を評価した。結果を表1に示した。
上記(e)で作製した偏光板をワイド42型サイズ(横943mm×縦532mm)に裁断し、アクリル酸ブチルとアクリル酸の共重合体に架橋剤とシランカップリング剤が配合された粘着剤を介してコーニング社製のガラスに板に貼合し、80℃で500時間保持する耐久試験を行った。試験後のサンプルにおけるガラス板からの粘着剤の剥離状況を観察して、粘着剤層の端からの剥離長さで耐久性を評価した。結果を表1に示した。
[比較例1]
ポリプロピレン系樹脂として、エチレンユニットの含有量が5%、MFRが2g/10分、融点が138℃であるプロピレン/エチレンランダム共重合体を用い、その他は実施例1と同じ条件で実験を行った。得られたポリプロピレン系樹脂フィルムの引張弾性率及びヘーズ、並びに偏光板の耐久試験の結果を表1にまとめた。
ポリプロピレン系樹脂として、エチレンユニットの含有量が5%、MFRが2g/10分、融点が138℃であるプロピレン/エチレンランダム共重合体を用い、その他は実施例1と同じ条件で実験を行った。得られたポリプロピレン系樹脂フィルムの引張弾性率及びヘーズ、並びに偏光板の耐久試験の結果を表1にまとめた。
表1に示すように、エチレンユニットの含有量が 0.4%のポリプロピレン系樹脂を用いた実施例1では、二軸延伸後のポリプロピレン系樹脂フィルムの80℃における引張弾性率が400MPa 以上となり、偏光板の耐久試験においても、ポリプロピレン系樹脂フィルム表面に設けられた粘着剤層がガラスから剥がれることはなかった。これに対し、エチレンユニットの含有量が5%のポリプロピレン系樹脂を用いた比較例1では、ポリプロピレン系樹脂フィルムの引張弾性率が実施例1のものに比べて半分以下であり、偏光板の耐久試験においても、ポリプロピレン系樹脂フィルム表面に設けられた粘着剤層の剥がれが生じた。
これらの結果から、エチレンユニットの含有量が1%以下のポリプロピレン系樹脂フィルムに二軸延伸を施すことにより、フィルムの引張弾性率が向上し、それが適用された偏光板の耐久性を向上させることがわかる。
10……偏光板、
11……偏光フィルム、
12……透明保護フィルム(ポリプロピレン系樹脂フィルム)、
13……透明保護フィルム、
15……前面側偏光板、
16……偏光フィルム、
17,18……透明保護フィルム、
20……液晶表示パネル、
22,23……粘着剤層、
24……セパレートフィルム、
27……液晶セル、
30……液晶表示装置、
35……バックライト。
11……偏光フィルム、
12……透明保護フィルム(ポリプロピレン系樹脂フィルム)、
13……透明保護フィルム、
15……前面側偏光板、
16……偏光フィルム、
17,18……透明保護フィルム、
20……液晶表示パネル、
22,23……粘着剤層、
24……セパレートフィルム、
27……液晶セル、
30……液晶表示装置、
35……バックライト。
Claims (8)
- 二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、該偏光フィルムの片面又は両面に貼合された透明保護フィルムとを備え、
前記透明保護フィルムの少なくとも一方は、エチレンユニットの含有量が1重量%以下のポリプロピレン系樹脂フィルムを二軸延伸したフィルムであり、80℃において200MPa 以上の引張弾性率を示すことを特徴とする偏光板。 - 前記ポリプロピレン系樹脂フィルムは、エチレンユニットの含有量が 0.01重量%以上1重量%以下であるプロピレンとエチレンの共重合体で構成される、請求項1に記載の偏光板。
- 前記偏光フィルムの片面に前記ポリプロピレン系樹脂フィルムを二軸延伸したフィルムが貼合されており、他面には別の透明保護フィルムが貼合されている、請求項1又は2に記載の偏光板。
- 前記偏光フィルムの他面に貼合される別の透明保護フィルムは、環状オレフィン系樹脂又は酢酸セルロース系樹脂からなる、請求項3に記載の偏光板。
- 二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムに、ポリプロピレン系樹脂フィルムを貼合し、偏光板を製造する方法であって、
前記ポリプロピレン系樹脂フィルムを二軸延伸する延伸工程と、
二軸延伸が施された前記ポリプロピレン系樹脂フィルムを前記偏光フィルムに貼合する貼合工程と、を備えることを特徴とする偏光板の製造方法。 - 前記延伸工程は、縦延伸倍率と横延伸倍率の積が20倍以上となるように行われる、請求項5に記載の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板と、液晶セルとを備えることを特徴とする液晶表示パネル。
- 請求項3又は4に記載の偏光板と、液晶セルとを備え、前記偏光板は、偏光フィルムの他面に貼合された別の透明保護フィルム側で前記液晶セルに貼着されている、請求項7に記載の液晶表示パネル。
Priority Applications (1)
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JP2012068791A JP2013200447A (ja) | 2012-03-26 | 2012-03-26 | 偏光板、その製造方法及び液晶表示パネル |
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ID=49520734
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018017925A (ja) * | 2016-07-28 | 2018-02-01 | 住友化学株式会社 | 偏光板 |
CN108020950A (zh) * | 2016-10-28 | 2018-05-11 | 住友化学株式会社 | 偏振板组及液晶面板 |
CN109983377A (zh) * | 2016-11-30 | 2019-07-05 | 日本瑞翁株式会社 | 偏振片及偏振片的制造方法 |
JP2019185007A (ja) * | 2018-04-11 | 2019-10-24 | 住友化学株式会社 | 偏光板および表示装置 |
-
2012
- 2012-03-26 JP JP2012068791A patent/JP2013200447A/ja active Pending
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