<電極張出し部の平面形状>
図1のAは、電極張出し部間の絶縁間隔の平面形状を示している。図1のBは溶接ラインと絶縁間隔との関係を示している。
この電気二重層コンデンサ2(以下単に「コンデンサ2」と称する)には、巻回素子であるコンデンサ素子4が用いられている。このコンデンサ素子4の素子端面6には、陽極側の電極張出し部8−1と、陰極側の電極張出し部8−2とが形成されている。電極張出し部8−1は陽極側の電極箔10−1、電極張出し部8−2は陰極側の電極箔10−2で形成されている。これら電極箔10−1、10−2との間はセパレータ12(図4)の介在により絶縁されている。したがって、素子端面6は、これら電極箔10−1、10−2の一部とセパレータ12の縁部の集合体面である。
素子端面6の中心部には中心Oを基準にして円形の素子中心部14が存在している。この素子中心部14は、コンデンサ素子4の巻芯によって形成される円筒状の空間部を形成している。コンデンサ素子4は、この素子中心部14(巻芯部)を中心とした同心円筒である。
素子端面6には、陽極側の電極張出し部8−1と陰極側の電極張出し部8−2との対向面間に絶縁間隔16が形成されている。この絶縁間隔16は一例として、素子中心部14を通過する陽極側の電極張出し部8−1側の面部18−1と、素子中心部14を通過する陰極側の電極張出し部8−2の面部18−2とで形成されている。
面部18−1と面部18−2は素子中心部14を包囲する円弧面20で対向する。面部18−2は、円弧面20の近傍に平行面22を備え、この平行面22は面部18−1と平行している。そして、面部18−2の大半部分は、面部18−1と平行な仮想線24に対して交差方向に形成されている。絶縁間隔16は素子中心部14からコンデンサ素子4の外周方向に拡開している。つまり、この実施の形態では、陰極側の電極張出し部8−2の幅を電極張出し部8−1の幅より狭く形成することにより、面部18−2側を面部18−1に対して周面方向に拡開し、電極張出し部8−1、8−2の平面形状が扇形形状に形成されている。これにより、面部18−1と面部18−2とのコンデンサ素子4の周面側の絶縁性が高められている。
各電極張出し部8−1、8−2は成形により素子端面6側に押しつけられ、電極部26−1、26−2に成形される。各電極部26−1、26−2には個別に集電板28−1、28−2が設置される。集電板28−1、28−2には素子接続部30と端子接続部32とが設定される。素子接続部30には電極部26−1または電極部26−2が溶接により接続される。この溶接は溶接ライン34−1、34−2でたとえば、レーザ照射により接続される。集電板28−1、28−2は同一形状であり、対向側には絶縁間隔33が設定されている。この絶縁間隔33は、電極張出し部8−1、8−2間の絶縁間隔16より狭くしかも同一幅である。
各溶接ライン34−1、34−2は、コンデンサ素子4の素子中心Oから放射状に所定の角度を以て設定されている。溶接ライン34−2は、集電板28−2側の素子接続部30に設定されている。各溶接ライン34−2に対し、既述の電極張出し部8−2から成形された電極部26−2の面部18−2が平行に配置されている。つまり、溶接ライン34−2に対して溶接性および接続性を損なうことなく、既述の面部18−2が形成されている。
斯かる構成によれば、集電板28−2との接続を損なわない範囲で絶縁間隔16が設定されており、陽極側の電極張出し部8−1つまり、電極部26−1と、陰極側の電極張出し部8−2つまり、電極部26−2との絶縁が図られる。なお、集電板28−2についても、電極張り出し部8−1と同様に素子中心部14からコンデンサ素子4の外周方向に拡開させ、扇形形状に形成してもよい。これにより、集電板間での絶縁間隔が設定され、絶縁性が高められることになる。また、コンデンサ素子4の素子端面6に電極張出し部8−1、8−2や集電板28−1、28−2の形状または面積が占める割合が小さくなるため、コンデンサ素子4の内部への電解液の含浸性が高められる。コンデンサ素子4の内部で発生するガス(いわゆる内部ガス)の素子端面6からの放出が容易化され、ガス排出性を向上させることができる。
<コンデンサ2>
図2は、コンデンサ2の断面を示している。図3は、コンデンサ2を構成部材に分解して示している。
このコンデンサ2は本発明のコンデンサの一例である。コンデンサ素子4の電極部26−1、26−2には既述の集電板28−1、28−2が接続されている。集電板28−1には陽極側の外部端子36−1が接続されている。集電板28−2には陰極側の外部端子36−2が接続されている。これらはそれぞれの接続部38で接続されている。これらの接続にはたとえば、レーザ照射による溶接が用いられている。
コンデンサ素子4は外装ケース40に収納されている。この外装ケース40は、たとえば、アルミニウムの成形体である。この外装ケース40と既述の接続部38との絶縁を行うため、接続部38の周囲には円筒状の絶縁部材42が設置されている。この絶縁部材42はたとえば、絶縁紙や絶縁テープ等の絶縁材料を用いればよい。コンデンサ素子4の周囲部には保持テープ44が巻かれており、コンデンサ素子4の巻き戻しを防止している。
外部端子36−1、36−2は、外装ケース40を封口する封口板46に設置されている。封口板46は外装ケース40の開口部を閉止し、空間部48の気密性を保持する手段であるとともに、外部端子36−1、36−2を固定する固定部材であり、コンデンサ素子4の支持部材である。この封口板46にベース部50と、封止部52とが備えられる。ベース部50は絶縁材料であるたとえば、合成樹脂の成形体である。ベース部材50にはインサート成形により外部端子36−1、36−2が固定されている。封止部52は密閉性の高い材料たとえば、ゴム環で構成されている。
封口板46は、外装ケース40に挿入され、外装ケース40に形成された位置決め段部54により位置決めされている。外装ケース40の開口端部56はカーリング処理により加締められ、封止部52に食い込ませて固定されている。これにより、外装ケース40が強固に封止されている。そして、封口板46のベース部50には、透孔58が形成されるとともに、薄ゴムからなる圧力開放機構である圧力弁60が設置されている。
<コンデンサ素子4>
図4は、コンデンサ素子4を分解して示している。コンデンサ素子4は、陽極側の電極箔10−1と、陰極側の電極箔10−2との間に2枚のセパレータ12を挟み込んで巻回され、円筒状の巻回素子を構成している。電極箔10−1、10−2にはベース材にたとえば、アルミニウム箔が用いられ、このアルミニウム箔の両面に活性炭等の活物質および結着剤等を含む分極性電極が形成されている。
電極張出し部8−1、8−2は、分極性電極を形成していないアルミニウム面を露出させた基材部で構成されている。
電極張出し部8−1、8−2は、セパレータ12の幅Wより突出し、各電極張出し部8−1、8−2の円弧長に対応する長さLに形成されている。この長さLを以て突出する各電極張出し部8−1、8−2には、折り曲げ加工の準備加工として、素子端面6と平行に素子端面6から僅かに露出する位置に折り目線62が形成されている。この折り目線62は、各電極張出し部8−1、8−2に対し、折り曲げ方向部を谷折りとする屈曲部である。また、電極張出し部8−1、8−2の端面面積は、各電極張出し部8−1、8−2の長さLに依存する。つまり、この電極張出し部8−1、8−2の長さLの加減により、絶縁間隔16を調整することができる。
<電極張出し部8−1、8−2の成形>
図5のAは、成形前の電極張出し部8−1、8−2を備えるコンデンサ素子4を示している。図5のBは、成形後の電極張出し部8−1、8−2を備えるコンデンサ素子4を示している。
素子中心Oに電極張出し部8−1の面部18−1と平行にY軸をとる。このY軸と直交方向にX軸を取る。X軸を中心に左右に角度θ1 、θ2 (>θ1 )を設定し、これら角度2×θ1、θ2に電極張出し部8−1を区画する。角度2×θ1 、θ2 で電極張出し部8−1に放射状方向に切込み64を入れる。これにより、電極張出し部8−1は、区画部8−1A、区画部8−1B、区画部8−1Cに区画される。
たとえば、角度θ1 =33〔°〕とすれば、区画部8−1Aの角度2×θ1 =66〔°〕となる。この区画部8−1Aを挟んで形成された区画部8−1B、8−1Cの角度θ2 =57〔°〕となる。
一方、電極張出し部8−2側の面部18−2はY軸と平行ではない。そこで、電極張出し部8−2は、角度2×θ1 の区画部8−2A、角度θ3 の区画部8−1B、区画部8−1Cに区画されている。角度2×θ1 、θ3 で電極張出し部8−2に放射状方向に切込み64を入れる。Y軸と面部18−2の成す角度をΔθとすれば、θ3 ={180〔°〕−2×θ1 −2×Δθ}÷2となる。角度Δθを一例として、Δθ=10〔°〕とする。この場合、2×θ1 =66〔°〕とすれば、角度θ3 =(180〔°〕−66〔°〕−20〔°〕)÷2=47〔°〕となる。
切込み64の深さはたとえば、電極張出し部8−1、8−2の素子端面6からの張出し高さをh1 、区画部8−1A、8−2Aの折り目線62の高さをh2 、区画部8−1B、8−1C、8−2B、8−2Cの折り目線62の高さをh3 とする。これらの大小関係はh1 >h2 >h3 とする。これにより、区画部8−1A、8−2Aは、集電板28−1、28−2の端子接続部32に対応させることができ、区画部8−1B、8−1C、8−2B、8−2Cは、集電板28−1、28−2の素子接続部30に対応させることができる。
コンデンサ素子の電極部26−1、26−2は、図5のBに示すように、このように素子中心方向に向かって区画部8−1A、8−1B、8−1C、8−2A、8−2B、8−2Cの圧縮成形により、高さ寸法を抑制できる。この実施の形態では、電極部26−1、電極部26−2の区画部8−1B、8−1C、8−2B、8−2Cを先に圧縮形成して平坦状の接続面を形成し、その後、区画部8−1A、8−2Aを圧縮成形し、各区画部間8−1A〜8−1B間、8−1A〜8−1C間、8−2A〜8−2B間、8−2A〜8−2C間の重なりによって生じる境界部の高さ寸法を調整している。
図6のAは、区画部8−1B、8−1C、8−2B、8−2Cの折り曲げ途上の角度を示している。図6のBは、区画部8−1B、8−1C、8−2B、8−2Cの折り曲げられた角度を示している。
電極張出し部8−1、8−2から電極部26−1、26−2に成形され、集電板28−1、28−2を押し付けて圧縮することにより、電極部26−1、26−2の区画部8−1B、8−1C、8−2B、8−2Cが平坦状となり、各集電板28−1、28−2に密着する。
電極張出し部8−1、8−2の折り曲げ成形前に予め折り目線62にV字状の凹部を形成し、折り曲げを容易化してもよい。折り目線62は、素子端面6から一定の幅(たとえば、0.5mm以上)の位置に形成され、これにより電極張出し部8−1、8−2の折り曲げ時に素子端面6からセパレータ部位に加わる機械的ストレスが減少させることができる。これにより、電極箔10−1、10−2間の接触によるショートなどを防止できる。
なお、この折り目線62はたとえば、罫書き線であって、これにより、電極張出し部8−1、8−2の折り曲げ時の座屈を防止できる。この折り目線62は溝であり、断面形状は三角、四角又は湾曲(R)であってもよい。この折り目線62の形成にはたとえば、プレス、レーザ、切削等の方法を用いればよい。折り目線62は1本であってもよいが、電極張出し部8−1、8−2の幅に応じて複数本としてもよい。折り目線62の形成面部は、電極張出し部8−1、8−2の片面に形成してもよいが、両面に形成してもよい。また、折り目線62は、素子端面の素子中心部14に対向する面が谷折りになるように形成してもよい。
<集電板28−1、28−2>
図7のAは、集電板28−1、28−2の平面形状を示している。図7のBは、集電板28−1、28−2の対向面側から見た側面形状を示している。
各集電板28−1、28−2は電極材料と同一のたとえば、アルミニウム板で形成され、同一形状である。各集電板28−1、28−2はコンデンサ素子4の素子端面6の2分の1の大きさであり、ほぼ半円形板である。各集電板28−1、28−2には既述した二つの素子接続部30と、素子接続部30に挟まれた端子接続部32とを備えている。素子接続部30は、電極部26−1、26−2の既述の区画部8−1B、8−1C、8−2B、8−2Cに対応し、レーザ溶接面を構成している。端子接続部32は、電極部26−1、26−2の既述の区画部8−1A、8−2Aに対応する。
集電板28−1、28−2には、図7のBに示すように、弦側中心部にコンデンサ素子4の素子中心部14に対応して円弧状切欠部66が形成され、その弧側には、X軸を中心にX軸と直交方向に直線状に切り落とされた接続面部68が形成されている。また、この集電板28−1、28−2には、X軸を中心に左右に角度θ1 を持って直角に屈曲させた段部70を以て円弧状に既述の素子接続部30および端子接続部32が形成されている。各素子接続部30および端子接続部32はそれぞれ平坦面に形成され、段部70を挟んで平行面である。
この集電板28−1、28−2において、端子接続部32の高さをh4 、集電板28−1、28−2の厚さをt、端子接続部32の内側の高さをh5 とすると、
h5 =h4 −t≧h2 −h3 ・・・(1)
に設定されている。従って、端子接続部32の内側の高さh5 は、区画部8−1A、8−2Aの突出高さh2 と各区画部8−1B、8−1C、8−2B、8−2Cの高さh3 との差分Δh(≧h2 −h3 )を吸収し、集電板28−1、28−2が各区画部8−1B、8−1C、8−2B、8−2Cに密着し、且つ区画部8−1A、8−2Aを収納して設置される。
なお、集電板28−1の厚さtは、素子接続部30と端子接続部32とで変更してもよい。たとえば、端子接続部32を素子接続部30に比べて厚く設定(1.2倍以上)してもよい。この厚み設定により、比熱が高まり、電極部26−1、26−2とのレーザ溶接の際に素子接続部30または端子接続部32に生じる発熱を端子接続部32で吸収できる。この結果、レーザ溶接の接続精度を向上させることができる。
<集電板28−1、28−2の接続>
図8のAは、コンデンサ素子4と集電板28−1、28−2を示している。図8のBは集電板28−1、28−2のレーザ溶接を示している。
集電板28−1、28−2は図8のAに示すように、コンデンサ素子4の一端面に素子中心部14を中心にし、且つ素子中心部14に円弧状切欠部66を合わせて配置する。集電板28−1には、端子接続部32の下面側にコンデンサ素子4の電極部26−1の区画部8−1A、素子接続部30の下面側にコンデンサ素子4の電極部26−1の区画部8−1B、8−1Cを位置決めして密着させる。そして、レーザ照射接続部である溶接ライン34−1、34−2では、コンデンサ素子4の周縁方向から素子中心部14方向に向かうレーザ照射により、区画部8−1B、8−1Cを部分的又は全面的に溶融させて接続する。このような接続は集電板28−2側でも同様である。
図9は、レーザ照射部位を示している。レーザ照射の部位は、集電板28−1、28−2の段部70で隔てた素子接続部30の各2箇所即ち、各溶接ライン34−1、34−2である。この場合、溶接ライン34−1、34−2に付した矢印〔1〕、〔2〕、〔3〕および〔4〕で示すように、レーザ照射を行う。このレーザ照射は、シールドガスにアルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを用いてコンデンサ素子4をシールドし、コンデンサ素子4に対するレーザ熱やスパッタの影響を回避する。
〔1〕このレーザ照射は、コンデンサ素子4の外周側より、素子中心方向に向かって直線状に一方の集電板28−1の素子接続部30に照射する。
〔2〕次に、素子中心部14を隔てて対向する他方の集電板28−2の素子接続部30に素子中心部14側より、素子外周方向に向かって直線上にレーザ照射することにより、一連の動作にて溶接される。
〔3〕また、同じく、レーザ照射は、コンデンサ素子4の外周側より、素子中心部14方向に向かって直線状に一方の集電板28−1の素子接続部30に照射する。
〔4〕そして、素子中心部14を隔てて対向する他方の集電板28−2の素子接続部30に素子中心部14側より素子外周側に向かって直線上にレーザを照射する一連の動作にて溶接される。
このように、素子中心部14を隔てて直線状にレーザ照射する一連の動作にて、電極部26−1と集電板28−1、電極部26−2と集電板28−2が接続される。つまり、電極部26−1、26−2と各集電板28−1、28−2とを素子中心部14を隔ててコンデンサ素子4の直径方向に向かう溶接ライン34−1、34−2(レーザ照射接続部)で溶接するので、電極部26−1、26−2と各集電板28−1、28−2との接続のための溶接の時間短縮を図ることができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
なお、レーザ照射72の〔1〕および〔2〕の一連の動作を2回繰り返す。又は、レーザ照射72の〔1〕ないし〔4〕の一連の動作を2回繰り返し、近傍に溶接部を配することで接続抵抗を更に低減することも可能である。レーザ照射72の〔1〕および〔2〕の一連の動作にて接続することも可能であるが、集電板28−1、28−2の各素子接続部30を、それぞれ素子中心部14側より素子外周側に向かって直線上に照射するなど、個別に接続することもできる。
また、レーザ照射72の〔1〕ないし〔4〕の連続動作について、同一箇所を連続してレーザ照射するのではなく、レーザ溶接を〔1〕から〔4〕で行い、その後、再び〔1〕から〔4〕にレーザ照射すれば、同一箇所のレーザ照射に時間間隔を設けることができ、この結果、レーザ照射箇所の冷却化を図ることができ、レーザ溶接による接続の安定化が図られる。また、同一箇所に時間間隔を設けて複数回のレーザ照射を行うことも可能であるが、1回目のレーザ溶接を〔1〕から〔4〕で行い、再びレーザ溶接を〔1〕から〔4〕で行うので、冷却間隔を取りながら、レーザ照射を連続的に行うことができ、レーザ照射による溶接時間の短縮化を図ることができる。
このレーザ照射72の〔1〕ないし〔4〕の連続動作について、各レーザ照射の始点から終点に至る溶接ライン34−1、34−2に対するレーザ出力を段階的又は連続的に減衰させるとよい。具体的には、レーザ出力を始点から終点にかけて3区間を設け、始点区間のレーザ出力Pa、中間区間のレーザ出力Pb、終点区間のレーザ出力Pcとし、レーザ出力をPa>Pb、Pb>Pcに減衰させてもよい。始点区間のレーザ出力Paは最も高い値に設定され、一例として50〔W〕〜3000〔W〕である。レーザ出力Pbはレーザ出力Paの90〔%〕以下のレーザ出力とし、またレーザ出力Pcはレーザ出力Paの80〔%〕以下のレーザ出力としている。このように、各レーザ照射の始点から終点に至る溶接ライン34−1、34−2に対するレーザ出力を段階的又は連続的に減衰させることで、集電板28−1、28−2、電極部26−1、26−2に加えられる溶接エネルギーを均一化でき、接続性を向上させることができ、安定した溶接接続を実現できる。即ち、レーザ照射を受けた集電板28−1、28−2および電極部26−1、26−2の溶接ライン34−1、34−2およびその近傍部が加熱され、レーザ照射72を溶接ライン34−1、34−2に沿って行えば、レーザ照射の走査に応じて加熱がその走査とともに連鎖状態で移動するので、レーザ出力を同一に設定しなくても、連鎖的に溶融状態となる。このため、レーザ出力を段階的および連続的に減衰させても、溶接部に加わるレーザ照射による熱エネルギーは均一化する。このため、集電板28−1、28−2と電極部26−1、26−2との接続性が向上する。
なお、コンデンサ素子4の素子端面6には電極部26−1、26−2が形成されているので、電極部26−1、26−2には、中心方向に向かって圧縮成形した際に、絶縁間隔16が設定されている。このため、コンデンサ素子4の素子中心部14近傍(素子中心部から2mm以内)では、電極部26−1、26−2が形成されていない。また、電極部26−1、26−2は、その形成部位が多いほど(又は面積が大きいほど)、抵抗の低減につながるため、コンデンサ素子4の周面方向に拡開する絶縁間隔16を備えたことにより、電極部26−1、26−2の間に十分な隙間があるために接触せず、また、低抵抗化が図れる絶縁間隔16として、たとえば、3〔mm〕〜15〔mm〕を設定している。また、コンデンサ素子4の最外周では、電極部26−1、26−2の圧縮成形時にずれ等が生じても電極部26−1、26−2が外装ケース40に接触しないように、集電板28−1と接続された電極部26−1、陰極集電板28−2と接続された電極部26−2の外周面に絶縁紙や絶縁テープ等の絶縁部材42(図2)を設置すればよい。この絶縁部材42を電極部26−1、26−2に加え、外部端子36−1、36−2、集電板28−1、28−2を覆うように外周に沿って設置すれば、外装ケース40との絶縁が図られる。
<外部端子36−1、36−2の接続>
図10のAは、集電板28−1、28−2と外部端子36−1、36−2の接続前の状態を示している。図10のBは、集電板28−1、28−2と外部端子36−1、36−2のレーザ溶接を示している。
集電板28−1、28−2が接続されたコンデンサ素子4には、図10のAに示すように、封口板46にある外部端子36−1、36−2を溶接部位に位置決めする。外部端子36−1、36−2の側面部には端子側接続面74が形成され、この端子側接続面74は、集電板28−1、28−2側の接続面部68と同一面に形成された側壁面である。そこで、これら接続面部68および端子側接続面74を合致させ、レーザ照射72を行えば、接続面部68および端子側接続面74間を溶着させることができる。
従って、コンデンサ素子4の電極部26−1には集電板28−1を介して外部端子36−1がレーザ照射72によって接続され、また、コンデンサ素子4の電極部26−2には集電板28−2を介して外部端子36−2がレーザ照射72によって接続される。これにより、コンデンサ素子4に外部端子36−1、36−2が形成される。
ここで、コンデンサ素子4と封口板46との間隔(距離)を長く取ると、その分抵抗が増えてしまうとともに、コンデンサ2の高さ寸法が大きくなってしまうため、コンデンサ素子4と封口板46との間隔(距離)を極力短くしている。このような小スペースにおいて、外部端子36−1、36−2と、集電板28−1、28−2とを接続するために、接続面部68および端子側接続面74を一致した共通の面部とし、この部位に局所的に溶接可能なレーザ照射72にて溶接することで溶接の簡易化および強化が図られている。ここで、集電板28−1、28−2、外部端子36−1、36−2の厚み(接続面部68および端子側接続面74の高さ寸法)は、それぞれ0.5〔mm〕〜5〔mm〕の範囲で設定されており、これによると、レーザ溶接が可能な寸法で且つ内部抵抗が増大され難く、また、コンデンサ2の高さ寸法を短くすることができる。
また、接続面部68および端子側接続面74は、レーザ照射の際に他の部材(電極部26−1、26−2)への過剰なストレスを防ぐためにも、コンデンサ素子4の外周面近傍に設置されることが好ましく、具体的には、コンデンサ素子4の外周面より、たとえば、10〔mm〕以内とすることが好ましい。
また、集電板28−1、28−2において、コンデンサ素子4の電極部26−1、26−2との接続領域と、外部端子36−1、36−2との接続領域とが異なる位置に設定されているので、各電極部26−1、26−2と集電板28−1、28−2、各外部端子36−1、36−2と集電板28−1、28−2との接続を安定化させることができ、コンデンサ素子4の低抵抗化とともに接続の強化を図ることができる。
<コンデンサ2の製造方法>
図11は、コンデンサ2の製造工程の一例を示している。
この製造工程は、本発明のコンデンサの製造方法の一例であって、図11に示すように、コンデンサ素子4および電極部(電極張出し部)の形成工程(ステップS11)、電極張出し部8−1、8−2の成形工程(ステップS12)、第1の接続工程(ステップS13)、第2の接続工程(ステップS14)、電解液含浸および封止工程(ステップS15)を含んでいる。
(1) コンデンサ素子4および電極部(電極張出し部)の形成工程(ステップS11)
図4に示すように、電極箔10−1、10−2の間にセパレータ12を挟み込み、素子中心部14を中心に円筒状に巻回することにより、コンデンサ素子4が形成される。このコンデンサ素子4には、素子端面6側に電極箔10−1、10−2の一部を張り出させ、電極張出し部8−1、8−2が形成される。電極張出し部8−1、8−2の間には絶縁間隔16が設定されている。
(2) 電極張出し部8−1、8−2の成形工程(ステップS12)
この成形工程では、電極張出し部8−1、8−2を図5のB、図6のA、Bに示すように、既述の区画部8−1A、8−2A、8−1B、8−2B、8−1C、8−2Cに区画し、図6のBに示すように、それぞれを素子中心部14の方向に折曲げ、成形する(ステップS12)。その成形は、図5のBに示すように、集電板28−1、28−2の屈曲形状に対応し、密着可能な高さに成形される。
(3) 第1の接続工程(ステップS13)
この接続工程(ステップS13)では、コンデンサ素子4の電極部26−1に集電板28−1、電極部26−2に集電板28−2を位置決めし、それぞれをレーザ溶接により接続する。このレーザ溶接では、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスをシールドガスに用いることにより、コンデンサ素子4をシールドし、レーザ熱や飛翔するスパッタからコンデンサ素子4を分離させる。
(4) 第2の接続工程(ステップS14)
この接続工程(ステップS14)では、図10に示すように、電極部26−1に接続された集電板28−1に外部端子36−1をレーザ溶接により接続する。同様に、電極部26−2外部端子36−2をレーザ溶接により接続する。このレーザ溶接においても、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスをシールドガスに用いることにより、コンデンサ素子4をシールドし、レーザ熱や飛翔するスパッタからコンデンサ素子4を分離させる。
(5) 電解液含浸および封止工程(ステップS15)
コンデンサ素子4は、電解液を含浸した後、外装ケース40に収容し、外装ケース40の開口端部56のカーリング処理により封止し(ステップS15)、製品であるコンデンサ2(図2)を完成する。
以上説明した一実施の形態における効果を列挙すれば以下の通りである。
(1) コンデンサ素子4の一端面側に電極箔10−1の基材で電極部26−1、電極箔10−2の基材で電極部26−2が形成され、電極部26−1と外部端子36−1とが集電板28−1を介して接続され、電極部26−2と外部端子36−2とが集電板28−2を介して接続されるので、端子接続のシンプル化が図られている。しかも、接続を容易化することができる。
(2) 電極張出し部8−1、8−2との対向面部に設定された絶縁間隔16の幅がコンデンサ素子4の素子中心部14から外周に向かって拡開する構成としているので、電極張出し部8−1、8−2を対向面側に折り曲げても両者が接触することがなく、ショートなどの不都合を回避できる。この結果、信頼性の高いコンデンサ2が得られる。
(3) 巻回素子であるコンデンサ素子4に巻回されている電極箔10−1、10−2から複数の側縁部を集合させて電極張出し部8−1、8−2が形成され、各電極張出し部8−1、8−2に集電板28−1、28−2を介在させて外部端子36−1、36−2を接続しているので、コンデンサ素子4およびコンデンサ2の低抵抗化を図ることができ、等価直列抵抗の低い製品を提供できる。
(4) 上記製造工程によれば、既述のコンデンサ2を容易に製造でき、端子接続工程の簡略化を図ることができる。
<電極張出し部8−1、8−2または絶縁間隔16の変形例>
図12のAおよびBは、電極張出し部8−1または絶縁間隔16の変形例を示している。上記実施の形態では電極張出し部8−2の形状を電極張出し部8−1と異ならせて、絶縁間隔16をコンデンサ素子4の周面方向に拡開する形状とした。これに対し、図12のAに示すように、電極張出し部8−1側の形状を小さくし、同様に絶縁間隔16をコンデンサ素子4の周面方向に拡開する構成としてもよい。
また、図12のBに示すように、図1に示す電極張出し部8−2と同様に電極張出し部8−1を形成し、左右対称形の二つの電極張出し部8−1、8−2を以て絶縁間隔16をコンデンサ素子4の周面方向に拡開する形状としてもよい。
<電極張出し部8−1、8−2、集電板28−1、28−2の形状、絶縁間隔16、33および圧力弁60の配置>
図13のAは、電極張出し部8−1、8−2、集電板28−1、28−2、各絶縁間隔16、33の形状および圧力弁60の位置を示している。
各電極張出し部8−1、8−2および集電板28−1、28−2はたとえば、約120度の角度の扇形形状に形成する。斯かる角度設定により、各電極張出し部8−1、8−2の絶縁間隔16、集電板28−1、28−2の絶縁間隔33のそれぞれが扇形状に拡開されている。各絶縁間隔16、33を封口板46の圧力弁60の位置に設定する。つまり、圧力弁60の位置に絶縁間隔16、33の拡開位置を対応させ、この対応位置では絶縁間隔16、33を圧力弁60のガス透過膜76(図13のB)の面積と同等またはそれ以上の幅に設定する。
図13のBは、図13のAのXIIIB − XIIIB線断面を示している。圧力弁60の位置に絶縁間隔16、33が一致し、絶縁間隔16、33は圧力弁60のガス透過膜76のガス透過面の面積より大きい幅を備えている。これにより、ガス透過膜76は、電極張出し部8−1、8−2や集電板28−1、28−2に塞がれることなく、コンデンサ素子4の素子端面6に対向させることができる。
斯かる構成とすれば、次のような効果が得られる。
(1) コンデンサ素子4に含浸された電解液が圧力弁60のガス透過面に付着すると、付着した電解液で圧力弁60のガス透過面の全面または一部が塞がれ、ガス透過機能を低下させるおそれがある。ガス透過機能が低下すれば、ガス透過量が減少し、基準動作圧力以下で圧力弁60に開弁を生じるというおそれがある。圧力弁60の位置に絶縁間隔16、33を対応させることにより、斯かる不都合を回避することができる。つまり、圧力弁60の位置から電極引出部8−1、8−2や集電板28−1、28−2を遠ざけることで、電極引出部8−1、8−2や集電板28−1、28−2から圧力弁60への電解液が導かれることを防止でき、圧力弁60に対する電解液の付着が防止される。
(2) 電極張出し部8−1、8−2や集電板28−1、28−2の面積ないし形状が小さくなるので、コンデンサ素子4の素子端面6に電極引出部8−1、8−2や集電板28−1、28−2が占める割合が小さくなる。これにより、コンデンサ素子4の内部への電解液の含浸性が高められ、素子内部で発生するガス(いわゆる内部ガス)の素子端面6からの放出が容易になる。つまり、コンデンサ素子4のガス放出性が高められる。
(3) 図1のAに示すコンデンサ素子4の電極引出部8−2の形成角度は160度程度であるのに対し、電極張出し部8−1、8−2を100度程度の角度に設定すれば、既述のレーザ溶接角度は70度程度となる。斯かる角度によっても、十分に溶接を行うことができる。
図14は、電極張出し部8−1、8−2、集電板28−1、28−2、絶縁間隔16、33の形状および圧力弁60の位置の変形例を示している。
図13のAでは、圧力弁60に対向しない位置も同様に電極引出部8−1、8−2や集電板28−1、28−2の角度を狭め、絶縁間隔16、33を扇形状に拡開している。これに対し、図14に示すように、圧力弁60に対向しない位置は、絶縁間隔16、33を狭く形成してもよい。つまり、圧力弁60に対向しない位置では、電極張出し部8−1、8−2や集電板28−1、28−2の絶縁間隔16、33側の各縁部を平行に配置してもよい。
〔他の実施の形態〕
(1) 上記実施の形態では、コンデンサ素子4として巻回素子を例示したが、巻回素子に限定されない。積層型素子や固体素子であってもよい。
(2) 上記実施の形態では、コンデンサ2として電気二重層コンデンサを例示したが、本発明はこれに限定されない。同一の構造および方法は、電解コンデンサにも同様に適用でき、同様の効果が得られる。
(3) 上記実施の形態では、集電板28−1、28−2を例示したが、本発明は上記実施の形態に限定されない。接続面は、フラット面としたが、外部端子の形状に合致する形状として、曲面であってもよい。この接続面の位置についても、集電板の面内又は周面の何れでもよいし、接続用凸部を設けてもよい。
(4) 上記実施の形態では、電極部間の絶縁間隔16内に絶縁部材を設置してもよい。
(5) 上記実施の形態では、溶接手段として、レーザ溶接や電子ビーム溶接を例示したが、本発明はこれに限定されない。アーク溶接等を用いることもできる。この場合は、集電板の外周面側を凸状として接続面を形成し、該接続面と端子接続面をアーク溶接すればよい。
〔実験結果〕
この実験結果を図15に示している。実験では電極張出し部8−1、8−2の端面面積を変更して内部抵抗の変化を観測した。電極張出し部8−1、8−2の端面面積は、電極張出し部8−1、8−2の形成幅L(図4)に依存する。そこで、電極張出し部8−1、8−2の端面面積の削減率(%)を求める。この削減率は、絶縁間隔16を平行間隔となる電極張出し部8−1、8−2の端面面積を基準(100%)とし、電極張出し部8−1、8−2の形成幅Lによって生成される端面面積の減少比率(%)を表す。
この実験の意図は、電極張出し部8−1、8−2の端面面積を減少させることにより、絶縁間隔16を拡開して電極張出し部8−1、8−2間の絶縁性を高めることに対し、端面面積の減少による内部抵抗の増加との関係を測定する。これにより、絶縁性の確保と内部抵抗の増加を適正化した値を求めることができる。
このような実験により、コンデンサの内部抵抗(mΩ)を測定したところ、陽極側の電極部26−1(電極張出し部8−1)および陰極側の電極部26−2(電極張出し部8−2)の全端面面積を例1では10〔%〕、例2では20〔%〕、例3では30〔%〕、例4では40〔%〕だけ減少させた。これに対して端面面積を減少させていないものを例5 とした。これら例1ないし例5を比較すると、例1ないし例3にかけては内部抵抗が比例的に上昇しているのに対し、例3および例4では内部抵抗の上昇が鈍化している。この実験から明らかなように、例5では内部抵抗は低いが、電極張出し部8−1、8−2の端面面積が減少していないために絶縁間隔16が狭く、絶縁性に難がある。例1ないし例3から明らかなように、陽極側の電極部26−1および陰極側の電極部26−2の全端面面積の削減率が30〔%〕以下であれば、絶縁性を維持しつつ、内部抵抗を低減させることがわかる。
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。