以下に添付図面を参照して、本発明に係る熱処理物の冷却装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
図1は、本発明の一実施例に係る流動層乾燥装置を表す概略側面図、図2は、本実施例の流動層乾燥装置を表す概略背面図、図3は、本実施例の冷却器を表す概略図、図4は、本実施例の冷却器における乾燥炭水分率に対する冷却水温度を表すグラフ、図5は、本実施例の石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
本実施例の石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)は、空気を酸化剤としてガス化炉で石炭ガスを生成する空気燃焼方式を採用し、ガス精製装置で精製した後の石炭ガスを燃料ガスとしてガスタービン設備に供給して発電を行っている。即ち、本実施例の石炭ガス化複合発電設備は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備である。この場合、ガス化炉に供給する湿潤燃料として低品位炭を使用している。
本実施例において、図5に示すように、石炭ガス化複合発電設備10は、給炭装置11、流動層乾燥装置12、微粉炭機(ミル)13、石炭ガス化炉14、チャー回収装置15、ガス精製装置16、ガスタービン設備17、蒸気タービン設備18、発電機19、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)20を有している。
給炭装置11は、原炭バンカ21と、石炭供給機22と、クラッシャ23とを有している。原炭バンカ21は、低品位炭を貯留可能であって、所定量の低品位炭を石炭供給機22に投下することができる。石炭供給機22は、原炭バンカ21から投下された低品位炭をコンベアなどにより搬送し、クラッシャ23に投下することができる。このクラッシャ23は、投下された低品位炭を所定の大きさに破砕することができる。
流動層乾燥装置12は、給炭装置11により投入された低品位炭に対して乾燥用蒸気(過熱蒸気)を供給することで、この低品位炭を流動させながら加熱乾燥するものであり、低品位炭が含有する水分を除去することができる。そして、この流動層乾燥装置12は、下部から取り出された乾燥済の低品位炭を冷却する冷却器(熱処理物の冷却装置)31が設けられ、乾燥冷却済の乾燥炭が乾燥炭バンカ32に貯留される。また、流動層乾燥装置12は、上部から取り出された蒸気から乾燥炭の粒子を分離する乾燥炭サイクロン33と乾燥炭電気集塵機34が設けられ、蒸気から分離された乾燥炭の粒子が乾燥炭バンカ32に貯留される。なお、乾燥炭電気集塵機34で乾燥炭が分離された蒸気は、蒸気圧縮機35で圧縮されてから流動層乾燥装置12に乾燥用蒸気として供給される。
微粉炭機13は、石炭粉砕機であって、流動層乾燥装置12により乾燥された低品位炭(乾燥炭)を細かい粒子状に粉砕して微粉炭を製造するものである。即ち、微粉炭機13は、乾燥炭バンカ32に貯留された乾燥炭が石炭供給機36により投下され、この乾燥炭を所定粒径以下の低品位炭、つまり、微粉炭とするものである。そして、微粉炭機13で粉砕後の微粉炭は、微粉炭バグフィルタ37a,37bにより搬送用ガスから分離され、微粉炭供給ホッパ38a,38bに貯留される。
石炭ガス化炉14は、微粉炭機13で処理された微粉炭が供給可能であると共に、チャー回収装置15で回収されたチャー(石炭の未燃分)が戻されてリサイクル可能となっている。
即ち、石炭ガス化炉14は、ガスタービン設備17(圧縮機61)から圧縮空気供給ライン41が接続されており、このガスタービン設備17で圧縮された圧縮空気が供給可能となっている。空気分離装置42は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン43が石炭ガス化炉14に接続され、この第1窒素供給ライン43に微粉炭供給ホッパ38a,38bからの給炭ライン44a,44bが接続されている。また、第2窒素供給ライン45も石炭ガス化炉14に接続され、この第2窒素供給ライン45にチャー回収装置15からのチャー戻しライン46が接続されている。更に、酸素供給ライン47は、圧縮空気供給ライン41に接続されている。この場合、窒素は、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用され、酸素は、酸化剤として利用される。
石炭ガス化炉14は、例えば、噴流床形式のガス化炉であって、内部に供給された石炭、チャー、空気(酸素)、またはガス化剤としての水蒸気を燃焼・ガス化すると共に、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(生成ガス、石炭ガス)が発生し、この可燃性ガスをガス化剤としてガス化反応が起こる。なお、石炭ガス化炉14は、微粉炭の混入した異物を除去する異物除去装置48が設けられている。この場合、石炭ガス化炉14は噴流床ガス化炉に限らず、流動床ガス化炉や固定床ガス化炉としてもよい。そして、この石炭ガス化炉14は、チャー回収装置15に向けて可燃性ガスのガス生成ライン49が設けられており、チャーを含む可燃性ガスが排出可能となっている。この場合、ガス生成ライン49にガス冷却器を設けることで、可燃性ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収装置15に供給するとよい。
チャー回収装置15は、集塵装置51と供給ホッパ52とを有している。この場合、集塵装置51は、1つまたは複数のバグフィルタやサイクロンにより構成され、石炭ガス化炉14で生成された可燃性ガスに含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された可燃性ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製装置16に送られる。供給ホッパ52は、集塵装置51で可燃性ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵装置51と供給ホッパ52との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ52を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ52からのチャー戻しライン46が第2窒素供給ライン45に接続されている。
ガス精製装置16は、チャー回収装置15によりチャーが分離された可燃性ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製装置16は、可燃性ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン設備17に供給する。なお、このガス精製装置16では、チャーが分離された可燃性ガス中にはまだ硫黄分(H2S)が含まれているため、アミン吸収液によって除去することで、硫黄分を最終的には石膏として回収し、有効利用する。
ガスタービン設備17は、圧縮機61、燃焼器62、タービン63を有しており、圧縮機61とタービン63は、回転軸64により連結されている。燃焼器62は、圧縮機61から圧縮空気供給ライン65が接続されると共に、ガス精製装置16から燃料ガス供給ライン66が接続され、タービン63に燃焼ガス供給ライン67が接続されている。また、ガスタービン設備17は、圧縮機61から石炭ガス化炉14に延びる圧縮空気供給ライン41が設けられており、中途部に昇圧機68が設けられている。従って、燃焼器62では、圧縮機61から供給された圧縮空気とガス精製装置16から供給された燃料ガスとを混合して燃焼し、タービン63にて、発生した燃焼ガスにより回転軸64を回転することで発電機19を駆動することができる。
蒸気タービン設備18は、ガスタービン設備17における回転軸64に連結されるタービン69を有しており、発電機19は、この回転軸64の基端部に連結されている。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン設備17(タービン63)からの排ガスライン70に設けられており、空気と高温の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。そのため、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン設備18のタービン69との間に蒸気供給ライン71が設けられると共に、蒸気回収ライン72が設けられ、蒸気回収ライン72に復水器73が設けられている。従って、蒸気タービン設備18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69が駆動し、回転軸64を回転することで発電機19を駆動することができる。
そして、排熱回収ボイラ20で熱が回収された排ガスは、ガス浄化装置74により有害物質を除去され、浄化された排ガスは、煙突75から大気へ放出される。
ここで、本実施例の石炭ガス化複合発電設備10の作動について説明する。
本実施例の石炭ガス化複合発電設備10において、給炭装置11にて、原炭(低品位炭)が原炭バンカ21に貯留されており、この原炭バンカ21の低品位炭が石炭供給機22によりクラッシャ23に投下され、ここで所定の大きさに破砕される。そして、破砕された低品位炭は、流動層乾燥装置12により加熱乾燥された後、冷却器31により冷却され、乾燥炭バンカ32に貯留される。また、流動層乾燥装置12の上部から取り出された蒸気は、乾燥炭サイクロン33及び乾燥炭電気集塵機34により乾燥炭の粒子が分離され、蒸気圧縮機35で圧縮されてから流動層乾燥装置12に乾燥用蒸気として戻される。一方、蒸気から分離された乾燥炭の粒子は、乾燥炭バンカ32に貯留される。
乾燥炭バンカ32に貯留される乾燥炭は、石炭供給機36により微粉炭機13に投入され、ここで、細かい粒子状に粉砕されて微粉炭が製造され、微粉炭バグフィルタ37a,37bを介して微粉炭供給ホッパ38a,38bに貯留される。この微粉炭供給ホッパ38a,38bに貯留される微粉炭は、空気分離装置42から供給される窒素により第1窒素供給ライン43を通して石炭ガス化炉14に供給される。また、後述するチャー回収装置15で回収されたチャーが、空気分離装置42から供給される窒素により第2窒素供給ライン45を通して石炭ガス化炉14に供給される。更に、後述するガスタービン設備17から抽気された圧縮空気が昇圧機68で昇圧された後、空気分離装置42から供給される酸素と共に圧縮空気供給ライン41を通して石炭ガス化炉14に供給される。
石炭ガス化炉14では、供給された微粉炭及びチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉炭及びチャーがガス化することで、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(石炭ガス)を生成することができる。そして、この可燃性ガスは、石炭ガス化炉14からガス生成ライン49を通して排出され、チャー回収装置15に送られる。
このチャー回収装置15にて、可燃性ガスは、まず、集塵装置51に供給されることで、ここで可燃性ガスからこのガスに含有するチャーが分離される。そして、チャーが分離された可燃性ガスは、ガス排出ライン53を通してガス精製装置16に送られる。一方、可燃性ガスから分離した微粒チャーは、供給ホッパ52に堆積され、チャー戻しライン46を通して石炭ガス化炉14に戻されてリサイクルされる。
チャー回収装置15によりチャーが分離された可燃性ガスは、ガス精製装置16にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。そして、ガスタービン設備17では、圧縮機61が圧縮空気を生成して燃焼器62に供給すると、この燃焼器62は、圧縮機61から供給される圧縮空気と、ガス精製装置16から供給される燃料ガスとを混合し、燃焼することで燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスによりタービン63を駆動することで、回転軸64を介して発電機19を駆動し、発電を行うことができる。
そして、ガスタービン設備17におけるタービン63から排出された排気ガスは、排熱回収ボイラ20にて、空気と熱交換を行うことで蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン設備18に供給する。蒸気タービン設備18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69を駆動することで、回転軸64を介して発電機19を駆動し、発電を行うことができる。
その後、ガス浄化装置74では、排熱回収ボイラ20から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排ガスが煙突75から大気へ放出される。
以下、まず、上述した石炭ガス化複合発電設備10における流動層乾燥装置12について詳細に説明する。
流動層乾燥装置12は、プラグフロー式の乾燥装置であって、図1及び図2に示すように、乾燥容器101と、原炭投入口102と、乾燥炭排出口103と、流動化蒸気供給部104(104a,104b,104c)と、ガス排出口105と、伝熱管(加熱部)106,107,108とを有している。
乾燥容器101は、中空箱型形状をなしており、一端側に原炭を投入する原炭投入口102が形成される一方、他端側の下部に原炭を加熱乾燥した乾燥物を排出する乾燥炭排出口103が形成されている。この場合、原炭投入口102や乾燥炭排出口103を乾燥容器101の端部に1つずつ設けたが、複数であってもよい。この場合、乾燥容器101は、石炭供給機22(図5参照)により原炭投入口102から内部への原炭供給量を調整することができる。また、乾燥容器101は、乾燥炭排出口103に設けられた図示しないロータリバルブの回転数を調整することで、原炭排出量を調整することができる。
また、乾燥容器101は、下部に底板101aから所定距離をあけて複数の開口を有する分散板109が設けられることで、風箱110が区画されている。そして、乾燥容器101は、この底板101aに風箱110を介して分散板109の上方に流動化蒸気(過熱蒸気)を供給する流動化蒸気供給部104(104a,104b,104c)が設けられている。更に、乾燥容器101は、乾燥炭排出口103側の天井板101bに流動化蒸気及び発生蒸気を排出するガス排出口105が形成されている。
この乾燥容器101は、原炭投入口102から原炭が供給されると共に、流動化蒸気供給部104から風箱110及び分散板109を通して流動化蒸気が供給されることで、この分散板109の上方に所定厚さの流動層Sが形成されると共に、この流動層Sの上方にフリーボード部Fが形成される。
そして、乾燥容器101は、内部が原炭の流動方向の上流側に設けられた第1乾燥室111と、この第1乾燥室111より下流側に設けられた第2乾燥室112と、原炭の流動方向の最も下流側に設けられた第3乾燥室113とで構成されている。
詳細に説明すると、乾燥容器101は、複数(本実施例では、2個)の仕切板114,115により流動層Sが原炭の流動方向に複数に分割され、各仕切板114,115により原炭の通過開口部116,117が形成されている。この各仕切板114,115は、原炭の流動方向に直交する鉛直方向に沿って配置されると共に、原炭の流動方向に所定間隔で配置されており、左右の端部が乾燥容器101の内壁面に取付けられている。そして、各仕切板114,115は、下端部が分散板109と所定隙間をもって位置し、上端部が流動層Sより上方に延出するように位置している。即ち、各仕切板114,115と分散板109との間に、所定の高さと幅(開口面積)を有する通過開口部116,117が確保されており、この通過開口部116,117は、ほぼ同じ開口面積に設定されている。
このように乾燥容器101は、各仕切板114,115が設けられることで、第1乾燥室111と第2乾燥室112と第3乾燥室113に区画され、各乾燥室111,112,113は、この仕切板114,115の上方で連通されている。この場合、第1乾燥室111は、フリーボード部F1と流動層S1が形成され、原炭の初期乾燥を行う領域(予熱乾燥領域)となっている。第2乾燥室112は、フリーボード部F2と流動層S2が形成され、原炭の中期乾燥を行う領域(定率乾燥領域)となっている。第3乾燥室113は、フリーボード部F3と流動層S3が形成され、原炭の後期乾燥を行う領域(減率乾燥領域)となっている。
この場合、各乾燥室111,112,113は、床面積がほぼ同様となるように設定されているが、原炭の含水量などに応じて最適な比率に設定してもよく、例えば、第2乾燥室112の床面積を最大に設定することが望ましい。即ち、第1乾燥室111は、投入される原炭の含水率が高いことから、所定の含水率まで原炭の乾燥速度が上昇する予熱乾燥領域である。原炭の乾燥速度は、所定の乾燥速度まで上昇して一定となることから、第2乾燥室112は、原炭の乾燥速度が一定となる定率乾燥領域である。原炭の乾燥速度は、原炭の含水率が所定の含水率(限界含水率)になると、加工することから、第3乾燥室113は、原炭の乾燥速度が減少する減率乾燥領域である。従って、定率乾燥領域である第2乾燥室112の容積を最大にすることで、乾燥効率が向上する。
また、風箱110は、3つの乾燥室111,112,113に対応するように、仕切部材118,119により3つの風箱110a,110b,110cに区画され、この3つの風箱110a,110b,110cに対応するように3つの流動化蒸気供給部104a,104b,104cが設けられている。即ち、各仕切部材118,119は、各仕切板114,115の下方に配置されている。そして、流動化蒸気供給部104a,104b,104cは、図示しない流動化蒸気供給管が連結されており、この流動化蒸気供給管に設けられ流量調整弁の開度を調整することで、風箱110a,110b,110cに供給する流動化蒸気量を調整することができる。
即ち、乾燥容器101は、その室内において、供給された原炭が押し出し流れとなるようにプラグフロー方式として構成されている。この押し出し流れとは、流動層Sにおいて、原炭が流動方向に拡散しないように、この原炭を流動方向に押し出す流れである。
また、乾燥容器101は、各乾燥室111,112,113にて、外部から乾燥容器101を貫通して各流動層S1,S2,S3内を循環する複数の伝熱管106,107,108が配置されている。この伝熱管106,107,108は、各流動層S1,S2,S3内に埋設されるように位置し、内部を流れる流動化蒸気(過熱蒸気)により各流動層S1,S2,S3の原炭を加熱して乾燥することができる。この場合、伝熱管106,107,108は、供給される過熱蒸気の圧力を変更することで、その温度を調整することができる。
従って、第1乾燥室111に供給された原炭は、ここで流動化蒸気により流動されると共に、伝熱管106により加熱されることで乾燥される。そして、第1乾燥室111で初期乾燥された原炭は、仕切板114の下部の通過開口部116を通って第2乾燥室112に移動され、ここで、伝熱管107により加熱されることで中期乾燥される。そして、第2乾燥室112で中期乾燥された原炭は、仕切板115の下部の通過開口部117を通って第3乾燥室113に移動され、ここで、伝熱管108により加熱されることで後期乾燥される。
これにより、各乾燥室111,112,113の流動層S1,S2,S3を形成する原炭は、この流動層S1,S2,S3間を上流側から通過開口部116,117を通って順に移動することで、押し出し流れとすることができ、流動方向に拡散させることなく乾燥される。
次に、上述した石炭ガス化複合発電設備10における冷却器31について詳細に説明する。
冷却器31は、流動式冷却装置であって、図3に示すように、冷却容器201と、乾燥炭投入口(熱処理物投入部)202と、冷却炭排出口(冷却物排出部)203と、流動化ガス供給部204と、ガス排出口205と、伝熱管(冷却部)206とを有している。
冷却容器201は、中空箱型形状をなしており、一端側に流動層乾燥装置12で乾燥された乾燥炭を投入する乾燥炭投入口202が形成される一方、他端側の下部に乾燥炭を冷却した冷却炭を排出する冷却炭排出口203が形成されている。そして、乾燥炭投入口202は、流動層乾燥装置12における乾燥容器101の乾燥炭排出口103に連通する搬送配管(熱処理物搬送通路)207が連結され、この搬送配管207にロータリバルブ208が設けられている。
また、冷却容器201は、下部に複数の開口を有する分散板209が設けられることで、風箱210が区画されている。そして、冷却容器201は、この風箱210を介して分散板209の上方に流動化ガス(窒素ガスなどの不活性ガス)を供給する流動化ガス供給部204が設けられている。更に、冷却容器201は、冷却炭排出口203側の上部に流動化ガス及び発生蒸気を排出するガス排出口205が形成されている。
この冷却容器201は、乾燥炭投入口202から乾燥炭が供給されると共に、流動化ガス供給部204から風箱210及び分散板209を通して流動化ガスが供給されることで、この分散板209の上方に所定厚さの流動層Scが形成されると共に、この流動層Scの上方にフリーボード部Fcが形成される。
また、冷却容器201は、流動層Sc内を循環する複数の伝熱管206が配置されている。この伝熱管206は、流動層Sc内に埋設されるように位置し、内部を流れる冷却媒体(例えば、冷却水)により流動層Scの乾燥炭を冷却することができる。この伝熱管206は、一端部が冷却容器201に設けられた連結部211に連結され、他端部が冷却容器201に設けられた連結部212に連結されている。送水管213は、一端部が連結部211に連結され送水ポンプ214及び熱交換器215が設けられている。配水管216は、一端部が連結部212に連結されている。この熱交換器215は、送水管213内の冷却水と熱交換媒体との間で熱交換を行うと共に、熱交換媒体の温度を調節することで、冷却水を所定温度に冷却または加熱することができる。
また、冷却容器201は、外面に沿って冷却媒体(例えば、冷却水)を流動する冷却配管217が設けられている。そして、送水管213は、分岐部218が設けられ、この分岐部218からの分岐管219が冷却配管217の一端部に連結され、また、配水管216は、分岐部220が設けられ、この分岐部220からの分岐管221が冷却配管217の他端部に連結されている。
そして、流動層乾燥装置12は、乾燥炭排出口103にこの乾燥炭の水分率(水分量)を検出する水分率センサ(水分率検出装置)222が設けられており、検出結果が制御装置223に入力される。制御装置223は、乾燥炭の乾燥状況に応じて送水ポンプ214及び熱交換器215を駆動制御可能となっている。
本実施例にて、制御装置(冷却温度設定装置)223は、送水管213から伝熱管206に供給する冷却水の温度が冷却容器201内の露点温度より高くなるように調整する。即ち、制御装置223は、この冷却水の温度が冷却容器201内の露点温度より高くなるように乾燥炭の水分率に応じて変更する。
この場合、流動化ガス供給部204が冷却容器201内に供給する流動化ガスの流速(流量)を一定とすれば、冷却容器201内の圧力が一定となることから、冷却容器201内の露点温度は、計測することなく、予め実験等によりわかっている。但し、冷却器31の運転状態が変化するとき、つまり、流動化ガス供給部204が冷却容器201内に供給する流動化ガスの流速(流量)を変更する場合には、冷却容器201内の圧力が変動することから、冷却容器201内の露点温度も変化する。このような場合には、冷却容器201内に露点計を設ければよいものである。
そして、制御装置223は、図4に示すような制御マップを有しており、水分率センサ222が検出した乾燥炭の水分率からこの制御マップを用いて冷却水の最適温度を設定する。この制御マップは、予め実験により求めたものであり、乾燥炭の水分率に応じた冷却容器201内の露点温度TDと、冷却水の温度上限値TLを設定することで、乾燥炭の水分率に応じた冷却水の適正温度領域(図4の斜線部)を設定するものである。
従って、制御装置223は、水分率センサ222が検出した乾燥炭の水分率からこの制御マップを用いて冷却水の最適温度を設定し、熱交換器215を駆動制御することで送水管213から伝熱管206に供給する冷却水の温度を調整する。
また、このとき、送水管213は分岐管219を介して冷却配管217に連結されていることから、制御装置223は、水分率センサ222が検出した乾燥炭の水分率からこの制御マップを用いて冷却水の最適温度を設定し、熱交換器215を駆動制御することで送水管213から冷却配管217に供給する冷却水の温度も調整する。
また、冷却容器201は、搬送配管207にガス注入配管224が連結されると共に、流量調整弁225が設けられている。このガス注入配管224は、例えば、搬送配管207に不活性ガス(例えば、窒素ガス)を供給する不活性ガス供給装置であって、図示しない窒素タンクが連結されている。
ここで、本実施例の流動層乾燥装置12及び冷却器31の全体の作動について説明する。
流動層乾燥装置12において、図1及び図2に示すように、乾燥容器101に対して、原炭投入口102から原炭が供給されると共に、流動化蒸気供給部104から分散板109を通して流動化蒸気が供給されることで、この分散板109の上方に所定厚さの流動層S1,S2,S3が形成される。原炭は、流動化蒸気により流動層S1,S2,S3を乾燥炭排出口103側に移動し、このとき、伝熱管106,107,108から熱を受けることで加熱されて乾燥される。
即ち、原炭投入口102から原炭が供給されると、まず、第1乾燥室111では、流動化蒸気供給部104aから分散板109を通して流動化蒸気が供給されると共に、伝熱管106から熱を受けることで、流動層S1で流動しながら乾燥される。次に、第1乾燥室111で初期乾燥が終了した原炭は、仕切板114の通過開口部116を通って第2乾燥室112に流動する。この第2乾燥室112では、流動化蒸気供給部104bから分散板109を通して流動化蒸気が供給されると共に、伝熱管107から熱を受けることで、流動層S2で流動しながら乾燥される。そして、第2乾燥室112で中期乾燥が終了した原炭は、仕切板115の通過開口部117を通って第3乾燥室113に流動する。この第3乾燥室113では、流動化蒸気供給部104cから分散板109を通して流動化蒸気が供給されると共に、伝熱管108から熱を受けることで、流動層S3で流動しながら乾燥される。このように原炭は、流動層S1,S2,S3にて、伝熱管106,107,108により加熱されながら、供給される流動化蒸気により流動し、押し出し流れとなって流動方向に拡散することなく乾燥される。
その後、原炭が乾燥された乾燥炭は、乾燥炭排出口103から外部に排出され、流動層Sで原炭が加熱乾燥されることで発生した蒸気は、流動化蒸気と共に上昇し、乾燥炭排出口103側に流れ、ガス排出口105から外部に排出される。
流動層乾燥装置12で加熱乾燥された原炭は、乾燥炭として冷却器31に送られる。この冷却器31において、図3に示すように、冷却容器201に対して、乾燥炭投入口202から乾燥炭が供給されると共に、流動化ガス供給部204から分散板209を通して窒素ガスが供給されることで、この分散板209の上方に所定厚さの流動層Scが形成される。乾燥炭は、流動化ガスにより流動層Scを冷却炭排出口203側に移動し、このとき、伝熱管206に熱を奪われることで冷却される。その後、乾燥炭が冷却された冷却炭は、冷却炭排出口203から外部に排出され、流動層Scで乾燥炭から発生した蒸気は、流動化ガスと共に上昇し、ガス排出口205から外部に排出される。
このとき、水分率センサ222は、流動層乾燥装置12の乾燥炭排出口103から排出された乾燥炭、つまり、冷却器31の乾燥炭投入口202から投入される乾燥炭の水分率を検出しており、検出結果を制御装置223に出力している。制御装置223は、乾燥炭の水分率と図4に示す制御マップに基づいて冷却水の最適温度を設定し、熱交換器215を駆動制御することで送水管213を流れる冷却水の温度を調整する。具体的に、冷却水の温度が冷却容器201内の露点温度より高くなるように調整する。
すると、適正温度に調整された冷却水は、送水管213から伝熱管206に供給され、流動層Scの乾燥炭を冷却した後、配水管216に排出される。また、適正温度に調整された冷却水は、送水管213から冷却配管217に供給され、冷却容器201で冷却した後、配水管216に排出される。更に、乾燥炭が乾燥炭投入口202から冷却容器201に投入される前に、不活性ガスがガス注入配管224から搬送配管207に供給されることで、水蒸気分圧が低減される。加熱乾燥後の乾燥炭は高温であることから、冷却容器201に投入されても、水蒸気が発生している。しかし、冷却水の温度が冷却容器201内の露点温度より高いことから、この高温の乾燥炭から発生する水蒸気が凝結することはなく、乾燥炭同士の付着による塊状物の発生が防止される。
このように本実施例の熱処理物の冷却装置にあっては、一端側に乾燥炭投入部202が設けられると共に他端側に冷却炭排出口203が設けられる中空形状をなす冷却容器201と、冷却容器201に流動化ガスを供給することで乾燥炭と共に流動層Scを形成する流動化ガス供給部204と、内部に冷却水を流通させることで流動層Scの乾燥炭を冷却する伝熱管206と、冷却水の温度が冷却容器201内の露点温度より高くなるように設定する制御装置223とを設けている。
従って、流動化ガス供給部204が冷却容器201内に流動化ガスを供給することで、乾燥炭が流動層Scを移動し、伝熱管206の内部に冷却水を流通させることで、流動層Scを構成する乾燥炭が冷却される。このとき、冷却水の温度を冷却容器201内の露点温度より高く設定することで、乾燥炭から発生する水蒸気が凝結することはなく、乾燥炭同士の付着による塊状物の発生を防止し、その結果、流動層Scでの乾燥炭や冷却炭の流動不良を防止することができる。
また、本実施例の熱処理物の冷却装置では、制御装置223は、冷却水の温度が冷却容器201内の露点温度より高くなるように、冷却容器201に投入される前の乾燥炭の水分率に応じて変更している。従って、冷却水の温度が冷却容器201に投入される乾燥炭水分率に応じて最適な温度に変更されることとなり、乾燥炭から発生する水蒸気の凝結を適正に防止することができる。
また、本実施例の熱処理物の冷却装置では、冷却容器201の外面に沿って冷却水を流動する冷却配管217を設け、制御装置223は、冷却配管217を流動する冷却水の温度が冷却容器201内の露点温度より高くなるように変更している。従って、冷却容器201の外部の気温に拘わらず、乾燥炭から発生する水蒸気の凝結を抑制し、乾燥炭同士の付着による塊状物の発生を防止することができる。
また、本実施例の熱処理物の冷却装置では、乾燥炭投入口202に連結される搬送配管207に不活性ガスを供給するガス注入配管224を設けている。従って、搬送配管224に不活性ガスを供給することで、水蒸気分圧を低減することが可能となり、乾燥炭から発生する水蒸気の凝結を抑制し、乾燥炭同士の付着による塊状物の発生を防止することができる。
なお、上述した実施例では、冷却容器201内を1つの冷却室として構成したが、乾燥容器のように、複数の冷却室としてもよい。また、冷却容器201の形状、乾燥炭投入口202、冷却炭排出口203、流動化ガス供給部204、ガス排出口205、伝熱管206の各構成や配置は、実施例に限定されるものではなく、冷却器31の設置場所や用途などに応じて適宜変更が可能である。
また、上述した実施例にて、制御装置223は、水分率センサ222が検出した乾燥炭の水分率と図4に示す制御マップに基づいて、熱交換器215を制御することで、冷却水の最適温度を調整するようにしたが、この構成に限定されるものではない。即ち、流動層乾燥装置12で乾燥する原炭の性状が安定している場合には、流動層乾燥装置12から排出される乾燥炭の水分率も安定しており、水分率センサ222が不要となる。そのため、伝熱管206に供給する冷却水の温度が冷却容器201内の露点温度より高くなるように、伝熱管206に供給する冷却水の温度を予め設定しておけばよく、制御装置223や熱交換器215の調整機能が不要となる。
また、上述した実施例では、湿潤燃料として低品位炭を使用したが、高品位炭であっても適用可能であり、また、石炭に限らず、再生可能な生物由来の有機性資源として使用されるバイオマスであってもよく、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などを使用することも可能である。