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JP2013149387A - リチウム二次電池 - Google Patents

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JP2013149387A JP2012007307A JP2012007307A JP2013149387A JP 2013149387 A JP2013149387 A JP 2013149387A JP 2012007307 A JP2012007307 A JP 2012007307A JP 2012007307 A JP2012007307 A JP 2012007307A JP 2013149387 A JP2013149387 A JP 2013149387A
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Abstract

【課題】リチウム二次電池であって、従来に比べ性能の向上した負極を備える該電池を提供する。
【解決手段】正極と負極を有する電極体と、電解液とが所定の電池ケース内に収容されたリチウム二次電池が提供される。ここで上記負極は、負極集電体22と該集電体上に形成された負極活物質を含む負極合材層24を備えている。そして、上記負極合材層を厚み方向に二分した時に、相対的に集電体に近い領域26に含まれる負極活物質の単位重量あたりの吸油量(Fc)と、相対的に表面に近い領域28に含まれる負極活物質の単位重量あたりの吸油量(Fs)とが異なっており、上記Fcと上記Fsとが、Fc>Fsの関係にあることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、リチウム二次電池に関する。詳しくは、従来に比べ性能の向上した負極を備える該電池に関する。
リチウムイオン電池その他のリチウム二次電池は、既存の電池に比べ、小型、軽量かつ高エネルギー密度であって、出力密度に優れる。このため、近年、パソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源や、ハイブリッド車両や電気自動車等の車両駆動用電源として好ましく用いられている。
この種のリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)は、正極および負極を備える電極体と、電解質(典型的には電解液)とを電池ケースに収容した構成を備える。そして、該電極(正極および負極)は、対応する正負の集電体上に電荷担体(典型的にはリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出し得る活物質を主成分とする電極合材層(具体的には、正極合材層および負極合材層)を、それぞれ備えている。かかる電極は、例えば、活物質とバインダ等を適当な溶媒中で混合し調製したスラリー状(ペースト状、インク状を含む)の組成物(電極合材スラリー)を集電体上に塗工(塗布)し、電極合材層を形成することにより作製される。
リチウム二次電池では、充放電に伴って、活物質と電解液との間を電荷担体(リチウムイオン)が行き来する。よって、活物質としては、より電解液の親和性が高い性質のものが好ましい。この親和性を表す一つの指標として、「吸油量」が挙げられる。吸油量の大きな活物質を含む電極合材層内では電荷担体の移動が容易なため、かかる移動に伴う抵抗(拡散抵抗)を低く抑えることができる。しかし、活物質の吸油量があまりに大きい場合は、電極合材スラリーにおいて凝集を生じ塗工が困難となったり、塗工後に電極剥離を生じたりする虞がある。この種の従来技術として、例えば、特許文献1には、JIS K6217(2001)により測定された吸液量(吸油量)が43.5mL/100g〜44.3mL/100gの負極活物質(黒鉛材料)を用いることが提案されている。
特開2008−204886号公報
ところで、例えば車両駆動用電源に用いられるリチウム二次電池に要求される性能として、高いエネルギー密度(定格容量)や出力密度(出力特性)が挙げられる。したがって、かかる電池性能を向上させるためには、拡散抵抗(具体的には、電極合材層内および/または活物質内の拡散抵抗)を、より一層低減させることが求められている。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、例えば車両駆動用電源等に好ましく用いられるリチウム二次電池であって、従来に比べ電池抵抗の低減された該電池を提供することである。
上記目的を実現すべく、正極と負極を有する電極体と、電解液とが所定の電池ケース内に収容されたリチウム二次電池が提供される。ここで上記負極は、負極集電体と該集電体上に形成された負極活物質を含む負極合材層を備えている。そして、上記負極合材層を厚み方向に二分した時に、相対的に集電体に近い領域に含まれる負極活物質の単位重量あたりの吸油量(Fc)と、相対的に表面に近い領域に含まれる負極活物質の単位重量あたりの吸油量(Fs)とが異なっており、上記Fcと上記Fsとが、Fc>Fsの関係にあることを特徴とする。
吸油量の大きな(即ち、電解液との親和性が高い)負極活物質を含んだ負極合材層を集電体側に配置し、該負極合材層の厚み方向に吸油量の勾配をつけることで、集電体近傍まで電解液が行き渡り、負極合材層全体を効率的に使用し得る。このため、負極合材層内の拡散抵抗(典型的には、リチウムイオンの拡散抵抗)を低減することができ、該負極合材層を備えたリチウム二次電池では従来に比べ電池性能(例えば、定格容量や出力特性)を向上させることができる。
ここで開示されるリチウム二次電池の好適な一態様として、上記Fcと上記Fsとの比(Fc/Fs)が、1.02以上1.95以下の関係にあることが挙げられる。
Fc/Fs比が上記範囲にある場合、本発明の効果(即ち、負極合材層内に吸油量の勾配をつけることで、拡散抵抗を低減させること。)をより一層発揮することができ、該負極合材層を備えたリチウム二次電池では従来に比べ電池性能(例えば、定格容量や出力特性)を向上させることができる。
ここで開示されるリチウム二次電池の好適な一態様として、上記Fcが47mL/100g以上70mL/100g以下であることが挙げられる。
上記Fc値を有する負極活物質を用いた場合、電解液との親和性に優れ、且つ密度のムラが少ない負極合材層をより一層安定的に形成することができる。よって、従来に比べ電池性能が高く、且つ不良率の少ないリチウム二次電池を得ることができる。
ここで開示されるリチウム二次電池の好適な一態様として、上記Fsが30mL/100g以上46mL/100g以下であることが挙げられる。
上記吸油量の範囲を満たす負極活物質は、電解液との馴染みが良く、電解液と負極との界面抵抗を低く抑えることができる。また上記範囲の負極活物質を含む負極スラリーは分散性に優れ、塗工性が良好である。このため、電池性能が高く、且つ不良率の少ない、リチウム二次電池を得ることができる。
ここで開示されるリチウム二次電池の好適な一態様として、上記負極合材層は、上記集電体近傍領域からなる下層と、上記表面近傍領域からなる上層の二層構造からなることが挙げられる。
上記二層構造からなる負極合材層では、調製する負極合材スラリーは二種類で済むため、リチウム二次電池の作製に要する時間や費用を低く抑えることができ、効率的である。即ち、本発明の目的(即ち、負極の抵抗を低く抑えること)と、生産性を両立することができる。
ここで開示されるリチウム二次電池の好適な一態様として、上記負極合材層全体の密度は、1.2g/cm以上1.5g/cm以下であることが挙げられる。
上記電極密度を満たす場合、負極合材層内に適度な電解液を含浸し得るため、本発明の目的をより一層発揮することができる。
また、ここで開示されるリチウム二次電池を駆動用電源として備える車両が提供される。かかるリチウム二次電池は、従来に比べ電極の抵抗が低減されており、とりわけ高容量、高出力の電池に有効である。よって、例えば、車両(典型的には、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)のような電動機)に搭載されるモーター駆動のための動力源(駆動用電源)として好適に使用され得る。
本発明の一実施形態に係る、リチウム二次電池の外形を模式的に示す斜視図である。 図1のリチウム二次電池のII−II線における断面構造を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る、リチウム二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る、リチウム二次電池の負極の構成を模式的に示す断面図であり、(A)は負極合材層が二層の場合を、(B)は負極合材層が三層の場合を示す。 本発明の一実施形態に係る、リチウム二次電池を備えた車両(自動車)を示す側面図である。 負極活物質の単位重量あたりの吸油量の比と、該負極活物質を負極に含むリチウム二次電池の拡散抵抗との関係を示すグラフである。
本明細書において「リチウム二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動によって充放電が実現される二次電池をいう。一般にリチウムイオン電池(もしくはリチウムイオン二次電池)、リチウムイオンキャパシタ等と称される蓄電素子は、本明細書におけるリチウム二次電池に包含される典型例である。
以下、ここで開示されるリチウム二次電池の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。かかる構造のリチウム二次電池は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここで開示されるリチウム二次電池の正極としては、正極活物質と導電材とバインダ(結着剤)等とを適当な溶媒中で混合してスラリー状(ペースト状、インク状のものを包含する。)の組成物(以下、「正極合材スラリー」という。)を調製し、該スラリーを正極集電体上に付与して正極合材層(正極活物質層ともいう。)を形成した形態のものを用いる。
正極合材スラリーを調製する方法としては、上記正極活物質と導電材とバインダとを一度に混練してもよく、何回かに分けて段階的に混練してもよい。好ましくは、例えば、先ず導電材を溶媒に分散させ、後から正極活物質とバインダを段階的に投入する手法をとり得る。即ち、比較的分散性の悪い導電材を先ず溶媒中に分散させることで、正極活物質と導電材とバインダとが均一に分散した正極合材スラリーを得ることができる。特に限定されるものではないが、正極合材スラリーの固形分濃度(NV)は50%〜75%(好ましくは55%〜65%、より好ましくは55%〜60%)とすることができる。
正極合材層を形成する方法としては、上記正極合材スラリーを正極集電体の片面または両面に適量塗布して乾燥させる方法を好ましく採用することができる。
正極合材スラリーを正極集電体に塗布する操作は、従来の一般的なリチウム二次電池用正極を作製する場合と同様に行うことができる。例えば、適当な塗布装置(スリットコーター、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター等)を使用して、上記正極集電体上の片面または両面に所定量の上記正極合材スラリーを均一な厚さにコーティングすることにより作製することができる。その後、適当な乾燥手段で正極合材層を乾燥することにより、正極合材スラリーに含まれていた溶媒を除去する。乾燥にあたっては、自然乾燥、熱風、低湿風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線等を単独または組み合わせにて用いることができる。
正極集電体の素材としては、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等が挙げられる。集電体の形状は、得られた電極を用いて構築される電池の形状等に応じて異なり得るため特に限定されず、棒状体、板状体、箔状体、網状体等を用いることができる。後述する捲回電極体を備えた電池では、主に箔状体が用いられる。箔状集電体の厚みは特に限定されないが、電池の容量密度と集電体の強度との兼ね合いから、5μm〜50μm(より好ましくは8μm〜30μm)程度を好ましく用いることができる。
正極活物質としては、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMn)等のリチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含む酸化物(リチウム遷移金属酸化物)や、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等のリチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含むリン酸塩等が挙げられる。中でも、層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3)を主成分とする正極活物質(典型的には、実質的にリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質)は、熱安定性に優れ、かつエネルギー密度も高いため好ましく用いることができる。特に限定するものではないが、正極合材層全体に占める正極活物質の割合は典型的には50質量%以上(典型的には70質量%〜99質量%)であり、80質量%〜99質量%であることが好ましい。
ここで、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物とは、Li、Ni、Co、Mnを構成金属元素とする酸化物のほか、Li、Ni、Co、Mn以外に他の少なくとも一種の金属元素(Li、Ni、Co、Mn以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を含む酸化物をも包含する意味である。かかる金属元素は、例えば、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La、Ceのうちの一種または二種以上の元素であり得る。また、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、及びリチウムマンガン酸化物についても同様である。このようなリチウム遷移金属酸化物(典型的には粒子状)としては、例えば従来公知の方法で調製されるリチウム遷移金属酸化物粉末をそのまま使用することができる。特に限定するものではないが、例えば、累積50%粒径(D50)が1μm〜25μm(典型的には2μm〜10μm、例えば6μm〜10μm)の範囲にある二次粒子によって実質的に構成されたリチウム遷移金属酸化物粉末を正極活物質として好ましく用いることができる。
導電材としては、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック等)、コークス、黒鉛(天然黒鉛およびその改質体、人造黒鉛)、炭素繊維(PAN系、ピッチ系)等の炭素材料から選択される、一種または二種以上であり得る。あるいは金属繊維(例えばAl、SUS等)、導電性金属粉末(例えばAg、Ni、Cu等)、金属酸化物(例えばZnO、SnO等)、金属で表面被覆した合成繊維等を用いてもよい。なかでも好ましい導電材として、粒径が小さく比表面積の大きなカーボンブラック(典型的には、アセチレンブラック)が挙げられる。
特に限定するものではないが、正極合材層全体に占める導電材の割合は、例えば、0.1質量%〜15質量%とすることができ、1質量%〜10質量%(より好ましくは2質量%〜6質量%)とすることが好ましい。
バインダとしては、後述する溶媒中に均一に溶解または分散し得る化合物であって、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、溶剤系の液状組成物(分散媒の主成分が有機溶媒である溶剤系組成物)を用いて正極合材層を形成する場合には、有機溶剤に分散または溶解するポリマー材料を好ましく採用し得る。かかるポリマー材料としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等が挙げられる。あるいは、水系の液状組成物を用いて正極合材層を形成する場合には、水に溶解または分散するポリマー材料を好ましく採用し得る。かかるポリマー材料としては、セルロース系ポリマー、フッ素系樹脂、酢酸ビニル共重合体、ゴム類等が例示される。より具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)等が挙げられる。特に限定するものではないが、正極活物質100質量%に対するバインダの使用量は、例えば0.1質量%〜10質量%(好ましくは1質量%〜5質量%)とすることができる。
溶媒としては、従来からリチウム二次電池に用いられる溶媒のうち一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。かかる溶媒は水系と有機溶剤に大別され、有機溶媒としては、例えば、アミド、アルコール、ケトン、エステル、アミン、エーテル、ニトリル、環状エーテル、芳香族炭化水素等が挙げられる。より具体的には、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−プロパノール、エタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロペン酸メチル、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、アセトニトリル、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン等が挙げられ、典型的にはNMPを用いることができる。また、水系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒であることが好ましい。該混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。例えば、該水系溶媒の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒(例えば水)が挙げられる。
また、ここで調製される正極合材スラリーには、必要に応じて、各種添加剤(例えば、分散剤として機能し得る材料や、過充電時においてガスを発生させる無機化合物)等を添加してもよい。該分散剤としては、例えば、疎水性鎖と親水性基をもつ高分子化合物(例えばアルカリ塩、典型的にはナトリウム塩)や、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩などを有するアニオン性化合物やアミンなどのカチオン性化合物などが挙げられる。より具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチラール、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ等が例示され、CMC等の水溶性高分子材料が好ましく用いられる。
正極合材スラリーの乾燥後、適宜プレス処理(例えば、ロールプレス法、平板プレス法等の従来公知の各種プレス方法を採用することができる。)を施すことによって、正極合材層の厚みや密度を調整することができる。正極集電体上に形成された正極合材層の密度が極端に低い場合は、単位体積当たりの容量が低下する。また、該正極合材層の密度が極端に高い場合は、特に大電流充放電時や低温環境下での充放電時において内部抵抗が上昇する傾向にある。このため、正極合材層の密度は、例えば2.0g/cm以上(典型的には2.5g/cm以上)であって、4.5g/cm以下(典型的には4.2g/cm以下)とすることができる。
図4の模式図を参照しながら、ここで開示されるリチウム二次電池の負極の構成を説明する。なお、(A)は負極合材層が二層構造の場合を、(B)は負極合材層が三層構造の場合をそれぞれ示している。図4(A)はここで開示されるリチウム二次電池の負極20の一例を示した模式図である。ここで開示される負極20は、負極集電体22と、該集電体上22に形成された負極活物質を含む負極合材層24とを備えている。そして、上記負極合材層を厚み方向に二分した時に、相対的に集電体に近い領域26と、相対的に表面に近い領域28と、で吸油量が異なっている。
かかるリチウム二次電池の負極を作製する場合は、先ず、負極活物質とバインダ等とを混合してスラリー状(ペースト状、インク状のものを包含する。)の組成物(以下、「負極合材スラリー」という。)を調製する。そして、負極合材スラリーに含まれる負極活物質の単位重量あたりの吸油量が、該集電体に近い領域で大きく、上記表面に近い領域で小さくなるように上記調製したスラリーを負極集電体上に付与し、負極合材層(負極活物質層ともいう。)を形成する。
負極合材層を形成する方法は特に限定されないが、例えば、先ず単位重量あたりの吸油量の異なる負極活物質を用いて、少なくとも二種類の負極合材スラリーを調製する。そして、上記調製したスラリーのうちで、相対的に単位重量あたりの吸油量が最も大きな負極活物質を含む負極合材スラリーを負極集電体上の片面または両面に適当量塗布し乾燥させることにより、図4(A)および(B)に示すような下層26(集電体近傍領域からなる層)を形成する。そして、例えば、図4(B)に示すような三層の積層構造とする場合は、上記調製したスラリーを下層26の上に適当量塗布して乾燥させることにより、中層27(図4(B))を形成する。なお、図4(B)に示す例では中層が一層だが、数に限定はなく、適宜増やすことができる。最後に、上記調製したスラリーのうちで、相対的に単位重量あたりの吸油量が最も小さな負極活物質を含む負極合材スラリーを適当量塗布し乾燥させることにより、図4(A)および(B)に示すような上層28(表面近傍領域からなる層)を形成する。なお、塗布や乾燥の工程については、正極の場合と同様手法を適宜用いることができる。
上述の通り、中層27は二層以上の多層構造となり得るため、積層構造を形成する層の数は特に限定されないが、例えば図4(A)に示すように、負極合材層が、集電体近傍領域からなる下層26と、表面近傍領域からなる上層28の二層構造からなる場合は、調製する負極合材スラリーは二種類で済むため、リチウム二次電池の作製に要する時間や費用を低く抑えることができ、効率的である。なお、本明細書において「層」とは、単に厚み方向の一部を、他の部分と区別するのに用いる用語であって、物理的に微視的および/または巨視的に視認される必要はない。
負極集電体の素材としては、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等が挙げられる。なお、形態は特に限定されず、棒状体、板状体、箔状体、網状体等を用いることができる。後述する捲回電極体を備えた電池では、箔状が用いられる。箔状集電体の厚みは特に限定されないが、電池の容量密度と集電体の強度との兼ね合いから、5μm〜50μm(より好ましくは8μm〜30μm)程度を好ましく用いることができる。
ここで開示される負極合材層24は、厚み方向に二分した時に、相対的に集電体に近い領域26に含まれる負極活物質の単位重量あたりの吸油量(Fc)と、相対的に表面に近い領域28に含まれる負極活物質の単位重量あたりの吸油量(Fs)とが異なっており、上記Fcと上記Fsとが、Fc>Fsの関係にあることを特徴とする。吸油量の大きな(即ち、電解液との親和性が高い)負極活物質を含んだ負極合材層を集電体側に配置し、該負極合材層の厚み方向に吸油量の勾配をつけることで、集電体近傍まで電解液が行き渡り、負極合材層全体を効率的に使用し得る。このため、負極合材層内の抵抗(典型的には、リチウムイオンの拡散抵抗)を低減することができ、該負極合材層を備えたリチウム二次電池では従来に比べ電池性能(例えば、定格容量や出力特性)を向上させることができる。
上記Fcと上記Fsとの比(Fc/Fs)は、本発明の目的を大きく逸脱しない限りにおいて特に限定されるものではないが、例えば1.02以上(典型的には1.02以上2.0以下、例えば1.02以上1.95以下、好ましくは1.05以上1.95以下)とすることができる。Fc/Fs比が上記範囲にある場合、負極合材層内に吸油量の勾配があるため、負極合材層全体をより効率的に使用することができ、負極合材層内の抵抗(典型的には、リチウムイオンの拡散抵抗)を低減し得る。
上記Fc値の好適な値(絶対値)は、例えば電解液の種類等によっても変わり得るため特に限定されないが、例えば47mL/100g以上70mL/100g以下とすることができ、好ましくは49mL/100g以上67mL/100g以下とすることができる。電解液との親和性の観点からは、上記Fc値がより大きいことが好ましい。しかし、上記Fc値を大きく超過した負極活物質を用いた場合、負極スラリーの粘度が高くなりすぎて塗工性や保存性が低下する虞がある。また、集電体との接着性が低下して、塗工後に電極剥離を生じたりする虞がある。負極活物質のFc値が上記範囲にある場合、塗工性や結着性(負極集電体に対する結着性)に優れているため、負極集電体上に薄くムラの少ない負極合材層を形成することができる。このため、優れた電池性能と生産性を両立し得る。同様に、上記Fsの好適な値(絶対値)も特に限定されないが、例えば30mL/100g以上46mL/100g以下とすることができ、好ましくは33mL/100g以上46mL/100g以下とすることができる。上記吸油量の範囲を満たす負極活物質は、電解液との親和性が比較的高いため、電解液と負極との界面抵抗を低く抑えることができ、好ましい。
なお、上記吸油量はJIS K6217−4(2008)に準拠して求めることができる。ここでは、試薬液体として、DBP(ジブチルフタレート)に変えて亜麻仁油を用いる。そして、測定対象たる負極活物質粉末に定速度ビュレットで上記亜麻仁油を滴下していき、粘度特性の変化をトルク検出装置によって測定する。発生した最大トルクの70%のトルクに対応する、測定対象粉末の単位重量(100g)あたりの試薬液体の添加量(ml)を、亜麻仁油の吸油量mL/100gとして示す。なお、かかる単位重量あたりの吸油量は、例えば後述する負極活物質の種類(原料)や製法、焼成温度、粉砕方法等を適宜変更することで、調整することができる。
負極活物質としては、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上の材料を特に限定することなく使用することができる。例えば、天然黒鉛(石墨)およびその改質体や石油または石炭系の材料から製造された人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);ハードカーボン(難黒鉛化炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化炭素)、カーボンナノチューブ等少なくとも一部に黒鉛構造(層状構造)を有する(低結晶性の)炭素材料;リチウムチタン複合酸化物等の金属酸化物;スズ(Sn)やケイ素(Si)とリチウムの合金等が挙げられる。なかでも、大きな容量が得られる黒鉛質の炭素材料(典型的には、黒鉛)を好ましく使用することができる。負極合材層全体に占める負極活物質の割合は特に限定されないが、通常は50質量%以上とすることが適当であり、好ましくは90質量%〜99質量%(例えば95質量%〜99質量%)である。
負極活物質と電解液との親和性については、例えば、酸素原子(O)と炭素原子(C)との原子の比(O/C)についてもある程度把握し得る。かかるO/Cは、例えば、その表面についてX線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)によって分析し算出することができる。より具体的には、該負極活物質粒子サンプルをXPS装置で分析し、得られたC1SおよびO1Sのスペクトルのピーク面積を求め、Cの原子濃度およびOの原子濃度をそれぞれ算出する。そして、かかる原子濃度比(O原子濃度/C原子濃度)(単位:%)から求めることができる。負極活物質のO/C値は特に限定されないが、例えば、0.05以上1.0以下(典型的には0.1以上1.0以下、例えば0.2以上0.5以下)とすることができる。O/C値が0.05以上の負極活物質は、水酸基やカルボキシル基等の官能基を有しているため電解液との親和性に優れている。またO/C値を1.0以下とすることで、電解液との過剰な反応を抑制し不可逆容量を低減することができる。
負極活物質の粒径は、一般的な粒度分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製の型式「LA−920」)を用いて、レーザー回折・光散乱法により測定した粒度分布による累積50%粒径(D50)を、例えば15μm以下(典型的には10μm以下、好ましくは4μm以上10μm以下)とすることができる。上記粒径範囲を満たす負極活物質は、該活物質を含む合材層内に好適な導電経路(導電パス)を形成し得る。このため、かかる負極活物質を用いたリチウム二次電池では、電池性能(例えば、定格容量や出力特性)をより一層向上させることができる。
負極活物質の比表面積は、一般的な比表面積測定装置(例えば日本ベル株式会社製の「BELSORP(商標)−18PLUS」)を用いて、窒素ガスによる定容量式吸着法により測定した値(BET比表面積)を、例えば1m/g以上(好ましくは2m/g以上)であって、40m/g以下(典型的には30m/g以下、好ましくは20m/g以下)とすることができる。上記粒径範囲を満たす負極活物質は、電解液と馴染み易く、該活物質を含む合材層内の拡散抵抗を低く抑えることができる。このため、かかる負極活物質を用いたリチウム二次電池では、電池性能(例えば、定格容量や出力特性)をより一層向上させることができる。
負極活物質のタップ密度は、一般的なタッピング式の密度測定装置(例えば、筒井理化学器械社製の型式「TPM−3」)を用いて、JIS K1469に規定される方法により測定した値を、例えば、0.1g/cm以上(好ましくは0.5g/cm以上、より好ましくは0.7g/cm以上)であり、1.5g/cm以下(好ましくは1.3g/cm以下、より好ましくは1.2g/cm以下)とすることができる。上記タップ密度の範囲を満たす負極活物質は、該活物質を含む合材層内に適度な空隙を保持し得るため、電解液が潤浸し易く、かかる合材層内の拡散抵抗を低く抑えることができる。また負極活物質の体積が比較的小さいことで、相対的に負極合材層に含まれる負極活物質の割合を高めることができ、単位体積当たりの電池容量(エネルギー密度)を高める上でも有効である。このため、かかる負極活物質を用いたリチウム二次電池では、電池性能(例えば、定格容量や出力特性)をより一層向上させることができる。
なお、上述した吸油量は、上記比表面積やタップ密度によっても、概ね把握することができる。原料や製造方法に差がない場合は、一般的には、試料の吸油量が高いほど、比表面積は大きくなる傾向にあり、逆にタップ密度は小さくなる傾向にある。
また、負極活物質の黒鉛化度は、アルゴンレーザーを使用したラマン分光器(例えば、日本分光社製の型式「NRS−5000」)を用いて、一般的なレーザーラマン分光法によって得られたラマンスペクトルにおいて、1360cm−1付近のラマンバンド(Dピーク)の強度Iと、1580cm−1付近のラマンバンド(Gピーク)強度Iと、の比R値(R=I/I)を、0.2以上(例えば0.3以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上)であって、0.7以下(好ましくは0.6以下)とすることができる。上記R値を満たす負極活物質は、配向性に優れ、電極を高密度化した場合にも高い容量を発現し得るため好ましく用いることができる。
バインダとしては、上記正極合材層用のバインダとして例示したポリマー材料から適当なものを選択することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が例示される。負極活物質100質量%に対するバインダの使用量は、負極活物質の種類や量に応じて適宜選択すればよく、例えば1質量%〜10質量%(好ましくは2質量%〜5質量%)とすることができる。その他、既に上述した分散剤として機能し得る各種のポリマー材料(例えばカルボキシメチルセルロース(CMC))等の添加剤や導電材等も使用することができる。
負極合材スラリーの乾燥後は、適宜プレス処理(例えば、ロールプレス法、平板プレス法等の従来公知の各種プレス方法を採用することができる。)を施すことによって、負極合材層の厚みや密度を調製することができる。負極合材層の密度は特に限定されないが、例えば、1.2g/cm以上(典型的には1.25g/cm以上、例えば1.3g/cm以上)であって、1.5g/cm以下(典型的には1.49g/cm以下)とすることができる。上記電極密度を満たす場合、負極合材層内に適度な電解液を含浸し得るため、本発明の目的をより一層発揮することができる。なお、かかる密度が極端に低い(即ち、負極合材層内の活物質量が極端に少ない)場合は、単位体積当たりの容量が低下する虞がある。一方、該負極合材層の密度が極端に高い場合は、特に大電流充放電時や低温環境下での充放電時において内部抵抗が上昇する傾向にある。
上記正極および負極を積層した電極体を作製し、電解液とともに適当な電池ケースに収容してリチウム二次電池が構築される。なお、ここに開示されるリチウム二次電池の代表的な構成では、正極と負極との間にセパレータが介在される。
電池ケースとしては、従来のリチウム二次電池に用いられる材料や形状を用いることができる。材質としては、例えばアルミニウム、スチール等の比較的軽量な金属材料や、PPS、ポリイミド樹脂等の樹脂材料が挙げられる。また、形状(容器の外形)も特に限定されず、例えば、円筒型、角型、直方体型、コイン型、袋体型等の形状であり得る。また該ケースに電流遮断機構(電池の過充電時に、内圧の上昇に応じて電流を遮断し得る機構)などの安全機構を設けることもできる。
電解液としては、従来のリチウム二次電池に用いられる非水電解液と同様の一種または二種以上のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解液は、典型的には、適当な非水溶媒に電解質(リチウム塩)を含有させた組成を有する。
該非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。なかでもカーボネート類を主体とする非水溶媒が好ましく用いられる。例えば、非水溶媒として一種または二種以上のカーボネート類を含み、それらカーボネート類の合計体積が非水溶媒全体の体積の60体積%以上(より好ましくは75体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上であり、実質的に100体積%であってもよい。)を占める非水電解液を好ましく用いられる。
該電解質としては、例えばLiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiCSO、LiC(SOCF、LiClO等が例示される。なかでもLiPFが好ましく用いられる。電解質の濃度は特に制限されないが、電解質の濃度が低すぎると電解液に含まれるリチウムイオンの量が不足し、イオン伝導性が低下する傾向がある。また支持電解質の濃度が高すぎると非水電解液の粘度が高くなりすぎて、イオン伝導性が低下する傾向がある。このため、電解質を0.1mol/L〜5mol/L(好ましくは、0.8mol/L〜1.5mol/L)程度の濃度で含有する非水電解液が好ましく用いられる。
セパレータとしては、従来からリチウム二次電池に用いられるものと同様の各種多孔質シートを用いることができる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔質樹脂シート(フィルム、不織布等)が挙げられる。かかる多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複数構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。特に限定されるものではないが、セパレータとして用いられる好ましい多孔質シート(典型的には多孔質樹脂シート)の性状として、平均孔径が0.001μm〜30μm程度であり、厚みが5μm〜100μm(より好ましくは10μm〜30μm)程度のものが挙げられる。該多孔質シートの気効率(空隙率)は、例えば20体積%〜90体積%(好ましくは30体積%〜80体積%)程度であり得る。
特に限定することを意図したものではないが、ここで開示されるリチウム二次電池の一実施形態に係るリチウム二次電池の概略構成として、扁平に捲回された電極体(捲回電極体)と、非水電解液とを扁平な箱型(直方体形状)の容器に収容した形態のリチウム二次電池を例とし、図1〜3を参照しつつ説明する。以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、実際の寸法関係を反映するものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池100の外形を模式的に示す斜視図である。また図2は、上記図1に示したリチウム二次電池II−II線に沿う縦断面構造を模式的に示す図である。
図1および図2に示すように、本実施形態に係るリチウム二次電池100は、直方体形状の電池ケース50を備えている。かかる電池ケース50は、上端が開放された扁平な箱型(直方体形状)の電池ケース本体52と、その開口部を塞ぐ蓋体54とによって構成されている。そして、電池ケース50の上面(すなわち蓋体54)には、捲回電極体80の正極シート10と電気的に接続する正極端子70および該電極体の負極シート20と電気的に接続する負極端子72が設けられている。また、蓋体54には、従来のリチウム二次電池の電池ケースと同様に、電池異常の際にケース内部で発生したガスをケースの外部に排出するための安全弁55が備えられている。
また、電池ケース50の内部には、長尺状の正極シート10と長尺状の負極シート20が長尺状のセパレータ40Aおよび40Bを介して扁平に捲回された形態の電極体(捲回電極体)80が、図示しない非水電解液とともに収容されている。そして、正極シート10上の正極合材層が形成されていない端部(即ち正極集電体の露出部)に正極集電板が、負極シート20上の負極合材層が形成されていない端部(即ち負極集電体の露出部)に負極集電板がそれぞれ付設され、正極端子70および負極端子72とそれぞれ電気的に接続されている。
図3は、捲回電極体80を組み立てる前段階における長尺状のシート構造(電極シート)を模式的に示す図である。かかる電極体80を作製するには、先ず、長尺状の正極集電体12の片面または両面(典型的には両面)に長手方向に沿って正極合剤層14が形成された正極シート10と、長尺状の負極集電体22の片面または両面(典型的には両面)に長手方向に沿って負極合剤層24が形成された負極シート20とを、二枚の長尺状セパレータ40Aおよび40Bとともに重ね合わせて長尺方向に捲回する。そして、捲回した電極体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって、扁平形状の捲回電極体80を得ることができる。
正極シート10は、その長手方向に沿う一方の端部において、正極合材層14が設けられておらず(あるいは除去されて)、正極集電体12が露出するよう形成されている。同様に、捲回される負極シート20は、その長手方向に沿う一方の端部において、負極合材層24が設けられておらず(あるいは除去されて)、負極集電体22が露出するように形成されている。
ここで開示されるリチウム二次電池は、各種用途に利用可能であるが、従来に比べ電極の抵抗が低減されており、とりわけ高容量、高出力の電池に有効である。よって、例えば図5に示すように、自動車等の車両1に搭載されるモーター用の動力源(駆動用電源)として、ここで開示されるリチウム二次電池100(該電池100を複数接続してなる組電池の状態であり得る。)が好適に使用され得る。車両1の種類は特に限定されないが、典型的には、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)が挙げられる。また、かかるリチウム二次電池100は、単独で使用されてもよく、直列および/または並列に複数接続されてなる組電池の形態で使用されてもよい。
以下、具体的な実施例をいくつか示すが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
[リチウム二次電池の構築]
正極活物質粉末としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3粉末と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これら材料の質量比率が93:4:3となるよう、プラネタリーミキサー(浅田鉄工株式会社製、型式「PVM−15」)に投入し、固形分濃度(NV)が50質量%となるようにN−メチルピロリドン(NMP)で粘度を調製しながら混練し、正極合材スラリーを調製した。この正極合材スラリーを、厚み15μmの長尺状アルミニウム箔(正極集電体)の両面に、目付量が(片面あたり)30mg/cmとなるよう塗布し、乾燥することで正極合材層を形成した。得られた正極をロールプレスし、電極密度が2.8g/cmのシート状の正極(正極シート)を作製した。
表1に示す吸油量を有する負極活物質(天然黒鉛粉末)とスチレンブタジエンゴム(SBR)と、カルボキシメチルセルロース(CMC)とを、これら材料の質量比率が98:1:1であり、NVが45質量%となるようにイオン交換水で粘度を調製しながら混練し、各例につき二種類(即ち、集電体近傍領域(下層)用と、表面近傍領域(上層)用。)の負極合材スラリーを調製した。上記調製した負極合材スラリーのうち、先ず下層用のスラリーを、厚み10μmの長尺状銅箔(負極集電体)22(図4(A))の両面に目付量が(片面あたり)18mg/cmとなるよう塗布して下層26(図4(A))を形成した。かかる電極体を乾燥させた後、下層26(図4(A))の上に、上層用のスラリーを目付量が(片面あたり)18mg/cmとなるよう塗布し、乾燥することで上層用28(図4(A))を形成し、負極合材層20を得た。得られた負極をロールプレスし、電極密度が1.4g/cmのシート状の負極(負極シート)を作製した。
次に、上記で作製した正極シートと負極シートとを、セパレータ(ここでは、PE層の両面にPP層が積層された三層構造のものを用いた。)を介して重ね合わせて捲回し、得られた捲回電極体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状に成形した。そして、該捲回電極体の正極集電体の端部に正極端子を、負極集電体の端部に負極端子を溶接によりそれぞれ接合した。かかる電極体を非水電解液(ここでは、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、電解質としてのLiPFを1.1mol/Lの濃度で溶解させた電解液を用いた。)とともに電池ケースに収容し、電池ケースの開口部に蓋体を溶接して接合することによりリチウム二次電池(例1〜48)を構築した。
[拡散抵抗の測定]
上記構築した電池に対して、25℃の温度下において、適当なコンディショニング処理を行った(ここでは、0.3Cの充電レートで4.1Vまで定電流で充電する(CC充電)操作と、0.3Cの放電レートで3.0Vまで定電流で放電する(CC放電)操作を2回繰り返す初期充放電処理を行った)後、SOC60%に調整し、1Cの放電レートで45秒間定電流放電(CC放電)を行ない、放電後の電圧(V1C)を測定した。次に、かかる電池をふたたびSOC60%に調整し、30Cの放電レートで45秒間定電流放電(CC放電)を行い、放電後の電圧(V30C)を測定した。そして上記放電後の電圧の差(V1C−V30C)から、拡散抵抗(mΩ)を算出した。結果を表1の該当箇所および図6に示す。
なお、「SOC」とは、充電深度(State of Charge)を意味し、可逆的に充放電可能な稼動電圧の範囲において、その上限となる電圧が得られる充電状態(即ち、満充電状態)を100%とし、下限となる電圧が得られる充電状態(即ち、充電されていない状態)を0%としたときの充電状態を示す。
Figure 2013149387
表1および図6に示されるように、Fc<Fsの場合(即ち、負極合材層の該集電体に近い領域に含まれる上記負極活物質の単位重量あたりの吸油量(Fc)が小さく、上記表面に近い領域に含まれる上記負極活物質の単位重量あたりの吸油量(Fs)が大きい場合)、拡散抵抗が顕著に高い値を示した。かかる理由としては、集電体近傍領域が効率よく使用されなかったことが考えられる。これに対し、Fc>Fsの場合は、相対的に拡散抵抗が小さな値を示した。なかでも、上記Fcと上記Fsとの比(Fc/Fs)が、1.02以上1.95以下の場合はより一層拡散抵抗が低減されていた。さらに、本実施例における系では、49mL/100g≦Fc≦67mL/100gおよび/または33mL/100g≦Fs≦46mL/100gの範囲において、より一層低い拡散抵抗値を示した。これは、吸油量の大きな(即ち、電解液との親和性が高い)負極活物質を含んだ負極合材層を集電体側に配置し、該負極合材層の厚み方向に吸油量の勾配をつけることで、集電体近傍まで電解液が行き渡り、負極合材層全体を効率的に使用することができたためと考えられる。本結果は、ここで開示されるリチウム二次電池の技術的意義を裏付けるものである。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 自動車(車両)
10 正極シート(正極)
12 正極集電体
14 正極合材層
20 負極シート(負極)
22 負極集電体
24 負極合材層
26 下層(集電体に近い領域)
27 中層
28 上層(表面に近い領域)
40A、40B セパレータシート
50 電池ケース
52 ケース本体
54 蓋体
70 正極端子
72 負極端子
80 捲回電極体
100 リチウム二次電池

Claims (7)

  1. 正極と負極を有する電極体と、電解液とが所定の電池ケース内に収容されたリチウム二次電池であって、
    前記負極は、負極集電体と、該集電体上に形成された負極活物質を含む負極合材層を備えており、
    ここで、前記負極合材層を厚み方向に二分した時に、相対的に集電体に近い領域に含まれる負極活物質の単位重量あたりの吸油量(Fc)と、相対的に表面に近い領域に含まれる負極活物質の単位重量あたりの吸油量(Fs)とが異なっており、
    前記Fcと前記Fsとが、Fc>Fsの関係にあることを特徴とする、リチウム二次電池。
  2. 前記Fcと前記Fsとの比(Fc/Fs)が、1.02以上1.95以下の関係にある、請求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 前記Fcが47mL/100g以上70mL/100g以下である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
  4. 前記Fsが30mL/100g以上46mL/100g以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
  5. 前記負極合材層は、前記集電体近傍領域からなる下層と、前記表面近傍領域からなる上層の二層構造からなる、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
  6. 前記負極合材層全体の密度は、1.2g/cm以上1.5g/cm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池を駆動用電源として備える車両。
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