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JP2013036760A - 触覚センサー素子、触覚センサー装置、把持装置および電子機器 - Google Patents

触覚センサー素子、触覚センサー装置、把持装置および電子機器 Download PDF

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JP2013036760A
JP2013036760A JP2011170537A JP2011170537A JP2013036760A JP 2013036760 A JP2013036760 A JP 2013036760A JP 2011170537 A JP2011170537 A JP 2011170537A JP 2011170537 A JP2011170537 A JP 2011170537A JP 2013036760 A JP2013036760 A JP 2013036760A
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Tomosuke Nakamura
友亮 中村
Kenji Murakami
謙二 村上
Manabu Nishiwaki
学 西脇
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Seiko Epson Corp
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Seiko Epson Corp
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Abstract

【課題】簡略な構成で剪断力の測定が可能な触覚センサー素子を提供すること。
【解決手段】開口部11A〜11Dを有する基板10と、開口部11A〜11Dを覆う支持膜12と、支持膜12上、かつ開口部11A〜11D上方に配置された検出部13A〜13Dと、検出部13A,13B上に配置された弾性部材16Aと、検出部13C,13D上に配置された弾性部材16Bと、を備え、基板10厚み方向で見た平面視で、開口部11Aの重心と開口部11Bの重心とを結ぶ線分と、開口部11Cの重心と開口部11Dの重心とを結ぶ線分とは離間し、かつ非平行であり、弾性部材16Aは、前記平面視で、検出部13A,13B、並びに検出部13A,13Bとに挟まれる領域の支持膜12の上を覆い、弾性部材16Bは、前記平面視において、検出部13C,13D、並びに検出部13C,13Dとに挟まれる領域の支持膜12の上を覆う触覚センサー素子2。
【選択図】図1

Description

本発明は、触覚センサー素子、この触覚センサー素子を備えた触覚センサー装置、この触覚センサー装置を備えた把持装置およびこの触覚センサー装置を備えた電子機器に関する。
従来、ロボットのアームなどにより、重量や摩擦係数が未知である対象物を把持して持ち上げる把持装置が知られている。このような把持装置では、対象物を破損することなく、かつ対象物を滑り落とすことなく把持するためには、把持面に対して直交する方向に作用する力(正圧)と、把持面の面方向(剪断方向)に作用する力(剪断力)を検出する必要があり、これらの力を検出するセンサーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の触覚センサーは、センサー基板に開設される開口の縁部から延伸するカンチレバー構造の構造体を有し、この構造体は、平板状の感応部と、感応部とセンサー基板とを連結するヒンジ部とから構成される。そして、この構造体の感応部には導電性磁性体膜が形成され、ヒンジ部には、ピエゾ抵抗膜が形成され、導電性磁性体膜とピエゾ抵抗膜とが導通している。また、ヒンジ部には電極が設けられ、圧力によりヒンジ部が曲がることで、ヒンジ部のピエゾ抵抗で発生する電流が電極から流れる構成となっている。そして、この触覚センサーは、センサー基板上に上記のような構造体が複数形成され、これらの構造体のうち一部がセンサー基板に対して起立し、他の一部がセンサー基板に対して平行に保持されている。また、このセンサー基板上には、弾性体が配置され、起立した構造体は、弾性体に埋め込まれている。そして、起立した構造体により剪断力が測定可能となり、基板面に平行な構造体により正圧が測定可能となる。
このような触覚センサーを製造するためには、センサー基板の表面に熱拡散法などによりP型抵抗領域を形成し、スパッタリングにより導電性磁性体層をパターニングする。そして、導電性磁性体層をマスクとして、イオンエッチングにより不純物層およびSi層を除去し、さらにヒンジ部の表面に形成される導電性磁性体膜をエッチングし、この後、反応性イオンエッチングなどにより、構造体の外形を成形する開口を形成する。そして、センサー基板の裏面側から磁場を加えることで、複数の構造体の一部を起立させ、触覚センサーを製造する。
また、特許文献2には、カンチレバーを含むセンサー素子を複数備える触覚センサーが記載されている。特許文献2の触覚センサーの当該カンチレバーは、結晶シリコン膜にホウ素をドーピングして当該結晶シリコン膜にドープ層とノンドープ層とを形成し、両層の境界面において格子定数の差に起因して生ずる歪みを緩和させる際に当該シリコン膜が湾曲する性質を利用して形成される。
特開2006−208248号公報 特開2009−294140号公報
ところで、上述の特許文献1や特許文献2に記載のような触覚センサーでは、カンチレバー構造の構造体を起立させた複雑な立体構造を有している。そして、その製造においても、特許文献1では、磁場を加えてカンチレバー構造の構造体を湾曲させたり、特許文献2では、ドーピングによって結晶シリコン膜を湾曲させたりするなど、複雑な製造工程を有し、生産性が悪いという問題がある。
本発明は、上記のような問題に鑑みて、簡略な構成で剪断力の測定が可能な触覚センサ素子、この触覚センサー素子を備えた触覚センサー装置、この触覚センサー装置を備えた把持装置およびこの触覚センサー装置を備えた電子機器を提供することを目的とする。
本発明の触覚センサー素子は、
第一の開口部、第二の開口部、第三の開口部および第四の開口部を有する基板と、前記第一の開口部、前記第二の開口部、前記第三の開口部および前記第四の開口部を覆う支持膜と、前記支持膜上、かつ前記第一の開口部の上方に配置された第一の検出部と、前記支持膜上、かつ前記第二の開口部の上方に配置された第二の検出部と、前記支持膜上、かつ前記第三の開口部の上方に配置された第三の検出部と、前記支持膜上、かつ前記第四の開口部の上方に配置された第四の検出部と、前記第一の検出部および前記第二の検出部の上に配置された弾性変形する第一の弾性部材と、前記第三の検出部および前記第四の検出部の上に配置された弾性変形する第二の弾性部材と、を備え、前記第一の検出部、前記第二の検出部、前記第三の検出部および前記第四の検出部のそれぞれは、前記支持膜側から順に下部電極、圧電体および上部電極が積層されて構成された圧電積層部を備え、前記基板の厚み方向で見た平面視において、前記第一の開口部の重心と前記第二の開口部の重心とを結ぶ線分と、前記第三の開口部の重心と前記第四の開口部の重心とを結ぶ線分とは離間し、かつ非平行であり、前記第一の弾性部材は、前記平面視において、少なくとも、前記第一の検出部、前記第二の検出部、並びに前記第一の検出部と前記第二の検出部とに挟まれる領域の支持膜の上を覆い、前記第二の弾性部材は、前記平面視において、少なくとも、前記第三の検出部、前記第四の検出部、並びに前記第三の検出部と前記第四の検出部とに挟まれる領域の支持膜の上を覆い、前記第一の弾性部材および前記第二の弾性部材の表面は、前記基板面と平行に形成されていることを特徴とする。
この発明では、触覚センサー素子に対して、第一弾性部材および第二の弾性部材側から押圧力が付与され、その状態からさらに前記基板面に沿う方向に剪断力が付与されると、第一弾性部材および第二の弾性部材は、当該剪断力の方向に弾性変形する。この際、第一の弾性部材および第二の弾性部材には、基板厚さ方向の断面視で、基板とは反対方向に引っ張られる引張力が加わる領域や、基板方向へさらに押し下げられる圧縮力が加わる領域が、当該剪断力の加わる向きに応じて生じる。ここで、当該剪断力の加わる向きを+X方向、それとは反対の向きを−X方向とすると、+X方向側の第一の弾性部材および第二の弾性部材の領域には、圧縮力が加わり、−X方向側の第一の弾性部材および第二の弾性部材の領域には、引張力が生じる。
引張力が加わる領域で第一の弾性部材および第二の弾性部材に覆われている検出部では、支持膜にも引張力が加わり、支持膜が押圧されていない状態に戻ろうとする。一方、圧縮力が加わる領域で第一の弾性部材および第二の弾性部材に覆われている別の検出部では、支持膜にも圧縮力が加わり、支持膜がさらに撓もうとする。
このように第一の弾性部材および第二の弾性部材の領域に応じて各検出部の支持膜の変位方向が反対方向になるので、各検出部の圧電積層部から出力される電気信号(電圧)の極性の正負が逆の関係になる。検出部ごとに電気信号を出力させ、当該電気信号の極性の正負を読み取ることで、剪断力を検出することができる。
そして、この発明では、基板の厚み方向で見た平面視において、第一の弾性部材は、少なくとも、第一の検出部、第二の検出部、並びに第一の検出部と第二の検出部とに挟まれる領域の支持膜の上を覆う。そのため、第一弾性部材の弾性変形に伴う引張力又は圧縮力が、当該弾性部材に覆われている第一の検出部および第二の検出部に対して加わり易くなる。特に、第一の検出部と第二の検出部とを結ぶ線分方向に剪断力が付与されると、当該線分上の検出部に対して引張力又は圧縮力が加わり易いので、支持膜の変位が大きくなり、当該電気信号の出力が大きくなる。
一方、第二の弾性部材は、前記平面視において、少なくとも、第三の検出部、第四の検出部、並びに第三の検出部と第四の検出部とに挟まれる領域の支持膜の上を覆う。そのため、第二の弾性部材の弾性変形に伴う引張力又は圧縮力が、当該弾性部材に覆われている第三の検出部および第四の検出部に対して加わり易くなる。特に、第三の検出部と第四の検出部とを結ぶ線分方向に剪断力が付与されると、当該線分上の検出部に対して引張力又は圧縮力が加わり易いので、支持膜の変位が大きくなり、当該電気信号の出力が大きくなる。
そして、この発明では、基板の厚み方向で見た平面視において、第一の開口部の重心と第二の開口部の重心とを結ぶ線分と、第三の開口部の重心と第四の開口部の重心とを結ぶ線分とは離間し、かつ非平行である。そのため、触覚センサー素子に対して剪断力が付与された際に、第一の検出部と第二の検出部とで検出する剪断力方向と、第三の検出部と第四の検出部とで検出する剪断力方向とを異ならせることができる。第一の検出部と第二の検出部とで検出できないような剪断力方向であっても、第三の検出部と第四の検出部とで検出できる。多方向の剪断力であっても、剪断力方向を、第一の検出部と第二の検出部とで検出可能な力の方向と、第三の検出部と第四の検出部とで検出可能な力の方向とに分けてそれぞれ検出し、それらの合力として剪断力を判定すればよいので、検出が可能である。
また、この発明では、第一の弾性部材および第二の弾性部材の表面は、基板面と平行に形成されているので、当該弾性部材が押圧されて剪断力が加わった時に、当該弾性部材が当該基板面と平行を維持して変形するようになる。そのため、検出部に対して当該弾性部材から局所的に引張力又は圧縮力が加わるのを防止できる。なお、本発明において、当該弾性部材の表面が当該基板面と平行というときは、厳密に平行である場合に限られない。当該弾性部材の変形時に検出部に対して局所的に引張力又は圧縮力が加わるのを防止できるような角度で形成されている場合も当該平行に含まれる。例えば、基板面と当該弾性部材の表面とが10度程度の角度を成している場合も、当該平行に含まれる。
したがって、このような触覚センサー素子を、対象物が接触する接触面に設けることで、各検出部から出力される電気信号により、接触した対象物から接触面に付与される剪断力の方向を判定できる。また、電気信号の大きさから、剪断力の大きさを演算することができる。
よって、本発明の触覚センサー素子は、上述のような簡略な構成でありながら多方向の剪断力の測定が可能である。
さらに、各検出部は、例えば磁場を加えて一部の構成を加工するなどの煩雑な製造工程が不要であり、各構成を積層するだけの簡単な方法により製造できる。それゆえ、触覚センサー素子の生産性が良好となり、製造に要するコストも低減できる。
また、例えばカンチレバー形状の構造体を立設させる構成では、構造体を立設させる分、厚み寸法が増大する。しかし、本発明では、基板上に支持膜、圧電積層部、および弾性部材を積層する構成であるため、厚み寸法の増大を抑えることができ、触覚センサー素子の小型化を図ることができる。
本発明の触覚センサー素子では、前記基板の厚み方向で見た平面視における前記第一の弾性部材の重心は、前記平面視における前記第一の開口部の重心と前記第二の開口部の重心とを結ぶ線分を直径とする円の内部に位置し、前記平面視における前記第二の弾性部材の重心は、前記平面視における前記第三の開口部の重心と前記第四の開口部の重心とを結ぶ線分を直径とする円の内部に位置することが好ましい。
この発明では、基板の厚み方向で見た平面視において、第一の弾性部材の重心は、第一の開口部の重心と第二の開口部の重心とを結ぶ線分を直径とする円の内部に位置している。そのため、第一の弾性部材の重心を通るある直線であって、第一の開口部の重心と第二の開口部の重心とを結ぶ線分とは重ならない直線を挟んで、第一の開口部上の第一の検出部および第二の開口部上の第二の検出部が位置する。そうすると、当該直線の手前側から奥側へと向かう剪断力に対して、圧縮力が加わる第一の弾性部材の領域と引張力が加わる第一の弾性部材の領域に検出部がそれぞれ配置されていることになり、より明確な反対符号の極性を有する電気信号を取り出すことができる。第二の弾性部材の重心についても、前記平面視における第三の開口部の重心と第四の開口部の重心とを結ぶ線分を直径とする円の内部に位置する。そのため、第一の検出部および第二の検出部の場合と同様に、より明確な反対符号の極性を有する電気信号を取り出すことができる。
その結果、触覚センサー素子の剪断力の測定精度が向上する。
本発明の触覚センサー素子では、前記第一の開口部と前記第二の開口部は、前記基板の厚み方向で見た平面視において前記第一の弾性部材の重心を通る直線に対して線対称に配置され、前記第三の開口部と前記第四の開口部は、前記平面視において前記第二の弾性部材の重心を通る直線に対して線対称に配置されていることが好ましい。
この発明では、第一の検出部および第二の検出部が、基板の厚み方向で見た平面視における第一弾性部材の重心を通る直線に対して、線対称に配置されている。そのため、圧縮力が加わる第一弾性部材の領域と引張力が加わる第一弾性部材の領域に検出部がそれぞれバランスよく配置されていることになる。その結果、第一の検出部の電気信号の極性と第二の検出部の電気信号の極性との判別がより明確になる。また、第三の検出部および第四の検出部が、基板の厚み方向で見た平面視における第二の弾性部材の重心を通る直線に対して、線対称に配置されている。そのため、第一の検出部および第二の検出部の場合と同様に、より明確な反対符号の極性を有する電気信号を取り出すことができる。
その結果、触覚センサー素子の剪断力の測定精度が向上する。
本発明の触覚センサー素子では、前記基板は、さらに第五の開口部、第六の開口部、第七の開口部および第八の開口部を有し、前記支持膜は、さらに前記第五の開口部、前記第六の開口部、前記第七の開口部および前記第八の開口部を覆い、前記支持膜上、かつ前記第五の開口部の上方に配置された第五の検出部と、前記支持膜上、かつ前記第六の開口部の上方に配置された第六の検出部と、前記支持膜上、かつ前記第七の開口部の上方に配置された第七の検出部と、前記支持膜上、かつ前記第八の開口部の上方に配置された第八の検出部と、をさらに備え、前記第一の弾性部材は、前記基板の厚み方向で見た平面視において、少なくとも、前記第一の検出部、前記第二の検出部、前記第五の検出部、前記第六の検出部、並びに前記第一の検出部と前記第二の検出部と前記第五の検出部と前記第六の検出部とを頂点とする第一の4角形領域の支持膜の上を覆い、前記第二の弾性部材は、前記基板の厚み方向で見た平面視において、少なくとも、前記第三の検出部、前記第四の検出部、前記第七の検出部、前記第八の検出部、並びに前記第三の検出部と前記第四の検出部と前記第七の検出部と前記第八の検出部とを頂点とする第二の4角形領域の支持膜の上を覆い、前記前記第五の検出部、前記第六の検出部、前記第七の検出部および前記第八の検出部の検出部のそれぞれは、前記支持膜側から順に下部電極、圧電体および上部電極が積層されて構成された圧電積層部を備え、前記平面視における前記第一の弾性部材の重心は、前記平面視における前記第一の4角形領域に位置し、前記平面視における前記第二の弾性部材の重心は、前記平面視における前記第二の4角形領域に位置し、前記平面視において前記第一の開口部の重心と前記第五の開口部の重心とを結ぶ線分と、前記第二の開口部の重心と前記第六の開口部の重心とを結ぶ線分とは離間しており、前記第一の検出部および前記第五の検出部は、電気的に直列に接続され、かつ前記第二の検出部および前記第六の検出部は、電気的に直列に接続されており、前記平面視において前記第三の開口部の重心と前記第七の開口部の重心とを結ぶ線分と、前記第四の開口部の重心と前記第八の開口部の重心とを結ぶ線分とは離間しており、前記第三の検出部および前記第七の検出部は、電気的に直列に接続され、かつ前記第四の検出部および前記第八の検出部は、電気的に直列に接続されていることが好ましい。
この発明では、第一の開口部、第二の開口部、第五の開口部および第六の開口部の4つの開口部について、第一の開口部および第五の開口部の重心間を結ぶ線分と第二の開口部および第六の開口部の重心間を結ぶ線分とが離間するように配置されている。第一の弾性部材は、このような4つの開口部の上方に形成されている、第一の検出部、第二の検出部、第五の検出部および第六の検出部に対して、上記所定の位置関係でこれらを覆うように配置されている。そのため、第一の弾性部材の弾性変形に伴う引張力又は圧縮力が、4つの検出部に対して加わり易くなる。
さらに、第一の検出部および第五の検出部は、電気的に直列に接続され、かつ第二の検出部および第六の検出部は、電気的に直列に接続されている。そのため、第一の検出部および第五の検出部から出力される電気信号、並びに第二の検出部および第六の検出部から出力される電気信号は、各検出部から出力される電気信号の加算値となる。そのため、1つずつの検出部から出力される場合と比べて、電気信号が大きくなる。第三の検出部、第四の検出部、第七の検出部および第八の検出部についても、これと同様に出力される電気信号の加算値となる。
よって、触覚センサー素子の剪断力の測定精度が向上する。
本発明の触覚センサー素子では、前記第一の弾性部材の表面に前記基板面と平行な表面を有し、前記第一の弾性部材よりも剛性が大きい第一剛性層が配置され、前記第二の弾性部材の表面に前記基板面と平行な表面を有し、前記第二の弾性部材よりも剛性が大きい第二剛性層が配置されていることが好ましい。
この発明では、第一の弾性部材表面に第一の剛性層が配置されているので、第一の剛性層に対して接触物が接触して剪断力が加わると、その剪断力が第一の弾性部材に対して局所的に伝達されることを防止できる。また、第二の弾性部材表面には、第二の剛性層が配置されているので、第一の弾性部材と同様に、剪断力が第二の弾性部材に対して局所的に伝達されることを防止できる。つまり、第一の弾性部材および第二の弾性部材における上述の圧縮力又は引張力が各検出部に対してより確実に加わるようにすることができる。
その結果、触覚センサー素子の剪断力の測定精度が向上する。
本発明の触覚センサー装置は、上述の本発明の触覚センサー素子と、前記第一の検出部前記第二の検出部、前記第三の検出部および前記第四の検出部の各々から電気信号を受信して当該電気信号の極性に基づいて、前記第一の弾性部材および前記第二の弾性部材に作用する剪断力を検出する処理部と、を備えることを特徴とする。
この発明では、上述したように、本発明の触覚センサー素子は、簡略な構成でありながら多方向の剪断力の検出が可能である。そして、触覚センサー装置では、処理部が前記複数の検出部ごとの電気信号に基づき、前記第一の弾性部材および第二の弾性部材に作用する剪断力を判定するので、簡略な構成でありながら、正確な剪断力の測定が可能となる。
本発明の触覚センサー装置は、上述の本発明の触覚センサー素子と、前記第一の検出部および前記第五の検出部からの電気信号と、前記第二の検出部および前記第六の検出部からの電気信号と、前記第三の検出部および前記第七の検出部からの電気信号と、前記第四の検出部および前記第八の検出部からの電気信号を受信して当該電気信号の極性に基づいて、前記第一の弾性部材および前記第二の弾性部材に作用する剪断力を検出する処理部と、を備えることが好ましい。
この発明では、上述したように、本発明の触覚センサー素子は、簡略な構成でありながら多方向の剪断力の検出が可能である。そして、複数の検出部は、上述したように、所定の組合せごとに電気的に直列に接続されているので、電気信号は、加算値として出力される。さらに、触覚センサー装置では、処理部が、出力された電気信号に基づいて前記弾性層第一の弾性部材および第二の弾性部材に作用する剪断力を判定するので、簡略な構成でありながら、正確な剪断力の測定が可能となる。
本発明の把持装置は、上述の本発明の触覚センサー装置を備えて、対象物を把持する把持装置であって、前記対象物を把持するとともに、前記対象物に接触する接触面に前記触覚センサー装置が配置される少なくとも一対の把持アームと、前記触覚センサー装置から出力される前記電気信号に基づいて、前記対象物のすべり状態を検出する把持検出手段と、前記すべり状態に基づいて、前記把持アームの駆動を制御する駆動制御手段と、を備えることを特徴とする。
この発明では、上述したように、触覚センサー装置により、把持の対象物を把持した際の剪断力を計測することで、対象物が把持アームから滑り落ちている状態であるか、把持されている状態であるかを計測することが可能となる。すなわち、対象物を把持する動作において、対象物を十分に把持できていない状態では、動摩擦力に応じた剪断力が働き、把持力を強めるほど、この剪断力も大きくなる。一方、把持力を強め、静摩擦力に応じた剪断力が検出される状態では、対象物の把持が完了した状態であり、把持力を強めた場合でも静摩擦力は一定であるため、剪断力も変化しない。したがって、例えば、対象物の把持力を徐々に増加させ、剪断力が変化しなくなった時点を検出することで、対象物を破損させることなく、最低限の把持力のみで対象物を把持することができる。
また、上述したように、把持装置を構成する触覚センサー装置において、触覚センサー素子の複数の検出部を第一弾性部材および第二の弾性部材で覆った構成を有するものであり、簡略な構成で、かつ容易に製造可能である。そのため、このような触覚センサー装置を用いた把持装置においても、同様に簡略な構成とすることができ、製造も容易となる。
本発明の電子機器は、上述の本発明の触覚センサー装置を備えたことを特徴とする。
この発明では、上述の触覚センサー装置により、接触物が当該接触センサー素子に接触した際の押圧力や剪断力を測定できる。したがって、本発明の電子機器は、上述の触覚センサー装置により検出される正確な情報に基づいて各種動作を実施することができ、高性能化を図ることができる。
また、上述したように、電子機器が備える触覚センサー装置は、複数の検出部を第一弾性部材および第二の弾性部材で覆った構成を有するものであり、簡略な構成で、かつ容易に製造可能であるため、このような触覚センサー素子を用いた電子機器においても、同様に簡略な構成とすることができ、製造も容易となる。
本発明の第一実施形態に係る触覚センサー装置を示す平面図。 (A)剪断力が付与される前の第一実施形態に係る触覚センサー素子を示す一部断面図。 (B)剪断力が付与された状態の第一実施形態に係る触覚センサー素子を示す一部断面図。 第一実施形態に係る触覚センサーの平面視における弾性部材の配置を示す平面図。 第一実施形態に係る触覚センサー素子の平面視における基板の外周位置を示す概略図。 第二実施形態に係る触覚センサー装置を示す平面図。 第三実施形態に係る触覚センサー装置を示す平面図。 第四実施形態に係る触覚センサー装置を示す平面図。 第五実施形態に係る把持装置の概略構成を示す装置ブロック図。 第五実施形態に係る把持装置の把持動作における触覚センサーに作用する正圧力および剪断力の関係を示す図。 第五実施形態に係る制御装置の制御による把持装置の把持動作を示すフローチャート。 第五実施形態に係る把持装置の把持動作時において、アーム駆動部への駆動制御信号、触覚センサーから出力される検出信号の発信タイミングを示すタイミング図。 第六実施形態に係る触覚センサー装置を示す平面図。 第六実施形態に係る近接センサーの概略構成を示すブロック図 第六実施形態に係るアイロンの概略構成を示すブロック図。 第六実施形態に係るアイロンの動作を示すフローチャート。 第七実施形態に係るノート型パソコンの概略構成を示す図。
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態の触覚センサー素子および触覚センサー装置について、図面に基づいて説明する。
図1は、第一実施形態の触覚センサー装置1の概略構成を示す平面図である。
図2は、触覚センサー素子2の概略構成を示す一部断面図であり、図1のII−II線方向に見た場合の図である。図2(A)は、触覚センサー素子2に対して剪断力が付与されていない状態を示し、図2(B)は、触覚センサー素子2に対して剪断力が付与された状態を示す。
〔1.触覚センサーの構成〕
触覚センサー装置1は、触覚センサー素子2と処理部20(図1参照)と、を備えて構成されている。
触覚センサー素子2は、図1に示すように、4つの開口部11A,11B,11C,11Dを有する基板10と、開口部11A,11B,11C,11Dを覆う支持膜12と、支持膜12上かつ開口部11A,11B,11C,11Dのそれぞれの上方に配置された4つの検出部13A,13B,13C,13Dと、検出部13A,13Bの上に配置された第一の弾性部材16Aと、検出部13C,13Dの上に配置された第二の弾性部材16Bと、第一の弾性部材16Aの上に配置された第一の剛性層17Aと、第二の弾性部材16Bの上に配置された第二の剛性層17Bと、を備える。触覚センサー素子2は、剛性層17A,17Bに接触物が接触した際に加わる正圧力、および剪断力の検出センサーである。
基板10は、例えばSi(シリコン)により形成され、厚み寸法が例えば200μmに形成されている。
4つの開口部は、第一の開口部11A,第二の開口部11B,第三の開口部11C,第四の開口部11Dで構成される。これらの開口部11A,11B,11C,11Dは、基板10の厚み方向で見た平面視(以下、センサー平面視という。)において、次のように形成されている。
開口部11A,11B,11C,11Dは、図1に示すように、センサー平面視において、第一の開口部11Aの重心および第二の開口部11Bの重心を結ぶ線分と、第三の開口部11Cの重心および第四の開口部11Dの重心を結ぶ線分とが離間し、かつ非平行となるように形成されている。
また、第一の開口部11Aおよび第二の開口部11Bは、図1に示すように、センサー平面視において、四角形状の第一の弾性部材16Aの重心K1に対して、左右側にそれぞれ形成されている。具体的には、第一の開口部11Aと第二の開口部11Bとが、第一の弾性部材16Aの重心K1を通る直線L1に対して線対称に配置されている。
さらに、第三の開口部11Cおよび第四の開口部11D、図1に示すように、センサー平面視において、四角形状の第二の弾性部材16Bの重心K2に対して、上下側にそれぞれ形成されている。具体的には、第三の開口部11Cと第四の開口部11Dとが、第二の弾性部材16Bの重心K2を通る直線L2に対して線対称に配置されている。
直線L1と直線L2とは交差する。
図3は、第一の弾性部材16Aと第一の開口部11Aおよび第二の開口部11Bとの位置関係を説明するための平面図であって、センサー平面視と同じ視点から見た状態である。なお、図3において、第一の弾性部材16A、第一の開口部11Aおよび第二の開口部11B以外の部材や部位は省略している。
第一の弾性部材16Aの重心K1は、図3に示すように、第一の開口部11Aの重心k1と第二の開口部11Bの重心k2とを結ぶ線分を直径とする円C1の内部に位置している。
第二の弾性部材16Bと第三の開口部11Cおよび第四の開口部11Dとの位置関係も、図3と同様の位置関係となっている。
なお、開口部11A,11B,11C,11Dは、センサー平面視において、円形状に形成されているが、例えば多角形状などに形成されていてもよい。また、基板10厚み方向を貫通する開口部11A,11B,11C,11Dを例示したが、例えば、基板10の弾性部材16A,16B側の面(図2(A)、(B)における上側)にエッチング等により凹状溝を形成して開口部11A,11B,11C,11Dとする構成としてもよい。さらには、基板10上に支持膜12を形成する構成を例示したが、基板10の弾性部材16A,16Bとは反対側の面(図2の下側)からエッチング等により凹状溝を形成し、溝底部を支持膜12とし溝内部を開口部11A,11B,11C,11Dとする構成としてもよい。
支持膜12は、基板10上に形成されている。支持膜12は、開口部11A,11B,11C,11Dを覆う。なお、本実施形態では、支持膜12は、共通の部材で開口部11A,11B,11C,11Dを覆うが、これに限定されない。例えば、開口部11A,11B,11C,11Dのそれぞれを覆う部材を、別部材とし、各開口部間で支持膜12が分離した形態であっても良い。
支持膜12は、図示は省略するが、基板10上に例えば厚み寸法が3μmに成膜されるSiO層と、このSiO層上に積層される厚み寸法が例えば400nmのZrO層との2層構造により形成されている。ここで、ZrO層は、後述する検出部13A,13B,13C,13Dの焼成形成時に、後述する圧電体141の剥離を防止するために形成される層である。すなわち、圧電体141が例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛:lead zirconate titanate)により形成される場合、焼成時にZrO層が形成されていないと、圧電体141に含まれるPbがSiO層に拡散して、SiO層の融点が下がり、SiO層の表面に気泡が生じ、この気泡によりPZTが剥離してしまう。また、ZrO層がない場合、圧電体141の歪みに対する撓み効率が低下するなどの問題もある。これに対して、ZrO層がSiO層上に形成される場合、圧電体141の剥離、撓み効率の低下などの不都合を回避することが可能となる。
以降の説明において、図1に示すようなセンサー平面視において、または図2に示すように、支持膜12のうち、開口部11A,11B,11C,11Dを閉塞する領域をメンブレン121と称する。
(1−2.検出部の構成)
4つの検出部は、第一の検出部13A,第二の検出部13B,第三の検出部13C,第四の検出部13Dで構成される。第一の検出部13A,第二の検出部13B,第三の検出部13C,第四の検出部13Dは、センサー平面視において、それぞれ、第一の開口部11A,第二の開口部11B,第三の開口部11C,第四の開口部11Dの内側領域に配置されている。
第一の検出部13Aは、図2に示すように、メンブレン121上、かつ第一の開口部11Aの上方に配置されている。第二の検出部13Bは、図2に示すように、メンブレン121上、かつ第二の開口部11Bの上方に配置されている。そのため、検出部13A,13Bは、センサー平面視において、第一の弾性部材16Aの重心K1に対して、左右側にそれぞれ配置されていることになる。さらには、図1に示すように、センサー平面視において、第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとが、第一弾性部材16Aの重心K1を通る直線L1に対して線対称に配置されている。
第三の検出部13Cは、メンブレン121上、かつ第三の開口部11Cの上方に配置されている。第四の検出部13Dは、メンブレン121上、かつ第四の開口部11Dの上方に配置されている。そのため、検出部13C,13Dは、センサー平面視において、第二の弾性部材16Bの重心K2に対して、上下側にそれぞれ配置されていることになる。さらには、図1に示すように、センサー平面視において、第三の検出部13Cと第四の検出部13Dとが、第二の弾性部材16Bの重心K2を通る直線L2に対して線対称に配置されている。
第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bは、図2に示すように、支持膜12側から順に下部電極142、圧電体141および上部電極143が積層されて構成された圧電積層部14を備える。なお、圧電積層部14は、メンブレン121の下側に接触して形成されていてもよい。また、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dも、図示省略するが、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bと同様の圧電積層部14を備える。
圧電体141は、例えばPZTを厚み寸法が例えば500nmとなる膜状に成膜することで形成される。なお、本実施形態では、圧電体141としてPZTを用いるが、膜の応力変化により電荷を発生することが可能な素材であれば、いかなる素材を用いてもよい。このような素材としては、例えば、チタン酸鉛(PbTiO)、ジルコン酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO)、窒化アルミ(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が挙げられる。
下部電極142、および上部電極143は、圧電体141の膜厚み方向を挟んで形成される電極であり、下部電極142は、圧電体141のメンブレン121に対向する面に形成され、上部電極143は、下部電極142が形成される面とは反対側の面に形成されている。
下部電極142は、厚み寸法が例えば200nmに形成される膜状の電極であり、メンブレン121上に形成される。下部電極142としては、導電性を有する導電薄膜であれば、いかなるものであってもよいが、本実施形態では、例えば、Ti/Ir/Pt/Tiの積層構造膜を用いる。
また、上部電極143は、厚み寸法が例えば50nmに形成される膜状の電極である。この上部電極143は、圧電体141の上面を覆って形成される。上部電極143としても、導電性薄膜であれば、いかなる素材を用いてもよいが、本実施形態では、Ir薄膜を用いる。
出力部15は、弾性部材16A,16Bの弾性変形に応じて各検出部13A,13B,13C,13Dから電気信号を取り出して出力するためのものである。出力部15は、例えば、基板10の外周部に検出部13A,13B,13C,13D毎に設置されている。
上述の支持膜12上には、下部電極142の外周部から延出する電極線142Aが形成されている。出力部15は、端子パッドとして形成され、電極線142Aは、当該端子パッドまで引き出され、当該端子パッドから後述する処理部20に接続される。
さらに、支持膜12上には、上部電極143の外周部から延出する電極線(図示略)が形成されている。この電極線は、例えば基板10の外周部に検出部13A,13B,13C,13D毎に配置される別の端子パッド(図示略)まで引き出され、この別の端子パッドから後述する処理部20に接続される。よって、本実施形態では、出力部は、電極線142A用の端子パッドと、上部電極143の外周部から延出する電極線用の別の端子パッドとで、一対の端子パッドが構成される。そして、一対の端子パッドが、各検出部13A,13B,13C,13Dのそれぞれに対して配置されている。そのため、触覚センサー素子2では、各検出部13A,13B,13C,13Dのそれぞれから個別に電気信号が取り出される。
第一の弾性部材16Aおよび第二の弾性部材16Bは、直方体状に形成され、センサー平面視において四角形状に形成されている。第一の弾性部材16Aは、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bを覆う部材であり、第二の弾性部材16Bは、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dを覆う部材である。
より具体的には、第一の弾性部材16Aは、センサー平面視において、少なくとも、第一の検出部13A、第二の検出部13B、並びに第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとに挟まれる領域の支持膜12の上を覆う。そのため、第一の弾性部材16Aは、センサー平面視において、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13B上だけでなく、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13B同士を結ぶ線分上も覆う。
また、第二の弾性部材16Bは、センサー平面視において、少なくとも、第三の検出部13C、第四の検出部13D、並びに第三の検出部13Cと第四の検出部13Dとに挟まれる領域の支持膜12の上を覆う。そのため、第二の弾性部材16Bは、センサー平面視において、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13D上だけでなく、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13D同士を結ぶ線分上も覆う。
弾性部材16A,16Bの表面は、基板10面と平行に形成されている。なお、ここでの平行についても、上述の説明と同様の考え方である。
この弾性部材16A,16Bは、各検出部13A,13B,13C,13Dの保護膜として機能するとともに、弾性部材16A,16Bに加わる押圧力や剪断力をメンブレン121に伝達して撓ませる。そして、この弾性部材16A,16Bの撓みにより、メンブレン121が撓むことで、各検出部13A,13B,13C,13Dも撓み、その撓み量に応じた電気信号が出力される。
この弾性部材16A,16Bとしては、本実施形態では、例えばシリコーンゴムを用いるが、これに限定されず、弾性を有する合成樹脂など、その他の弾性素材により形成されるものであってもよい。また、弾性部材16A,16Bの厚み寸法としては、特に限定されないが、例えば300μmに形成されている。
弾性部材16A,16Bと基板10とは、図示しない接着層などで接着されていることが好ましい。
第一の剛性層17Aは、第一の弾性部材16Aの表面を覆い、第一の弾性部材16Aよりも剛性が大きい層である。
第二の剛性層17Bは、第二の弾性部材16Bの表面を覆い、第二の弾性部材16Bよりも剛性が大きい層である。
剛性層17A,17Bは、接触物が触覚センサー素子2に対して接触して剪断方向に変位した際、その剪断力が弾性部材16A,16Bに対して局所的に伝達されることを防ぐための層である。
剛性層17A,17Bの表面は、基板10面と平行に形成されている。なお、ここでの平行についても、上述の説明と同様の考え方である。
剛性層17A,17Bとしては、本実施形態では、例えば、アクリル板を用いるが、これに限定されず、剛性を有する合成樹脂や金属など、その他の剛性を有する素材により形成されるものであってもよい。例えば、コーティングを施して、弾性部材16A,16B表面に剛性を有する合成樹脂からなる剛性層17A,17Bを形成しても良い。
また、剛性層17A,17Bの厚み寸法としては、特に限定されないが、例えば、100μmに形成されている。
弾性部材16A,16Bと剛性層17A,17Bとは、図示しない接着層などで接着されていることが好ましい。
処理部20は、各検出部13A,13B,13C,13Dから出力される電気信号を受信し、これに基づいて触覚センサー装置1に付与される押圧力および剪断力を検出する。処理部20は、上述のように各検出部13A,13B,13C,13Dのそれぞれに対して配置されている一対の端子パッドと接続され、各検出部13A,13B,13C,13Dのそれぞれから電気信号を受信する。
処理部20は、記憶部21と、演算部22と、を備えている。
記憶部21は、剪断力方向および押圧方向に応じた出力電圧極性パターンや演算部22の各種処理を実施するための各種プログラム等を記憶する。
演算部22は、受信した各検出部13A,13B,13C,13Dの電気信号(電圧)と、記憶部21に記憶された当該出力電圧極性パターンに基づいて剪断力の方向を判定する。
ここで、出力される電圧の大きさに対する剪断力および押圧力の関係を予め算出しておき、記憶部21に記憶させておくことで、演算部22は、剪断力および押圧力も演算することができる。
(2.触覚センサー素子の動作)
次に、上述の触覚センサー素子2の動作について、図面に基づいて説明する。
各検出部13A,13B,13C,13Dにおいては、剛性層17A,17Bに押圧力が付与され、さらにその状態で剪断力が所定方向に付与されると、弾性部材16A,16Bが弾性変形し、メンブレン121がその膜厚方向に変位する。
図4は、センサー平面視における基板10の外周位置を示すための平面図である。
ここで、図4に示すように、センサー平面視における基板10の外周位置をD1〜D8と表す。例えば、図1において、左側から右側への方向は、図4のD1からD5へ向かう方向に相当し、このような方向をD1⇒D5と表記し、他の方向についても同様とする。
図2は、触覚センサー素子2に接触物が接触し、D1⇒D5方向に応力(剪断力)が加えられた際の、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bが設置されている部位における状態を示す図である。第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bが設置されている部位においては、図2に示すように、D1⇒D5方向の剪断力は、第一の検出部13Aから第二の検出部13Bへ向かう方向の剪断力であり、その方向を矢印P1で表す。なお、矢印P1方向は、図1の直線L1と直行する方向でもある。
図2(A)は、矢印P1方向へ剪断力が付与される前の状態を示す図であり、図2(B)は、矢印P1方向へ剪断力が付与されて第一の弾性部材16Aが変形した状態を示す図である。
触覚センサー素子2にD1⇒D5方向の剪断力が加えられると、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bが設置されている部位では、図2(B)に示すように、第一弾性部材16Aに圧縮力および引張力が発生し、メンブレン121が撓んで変位する。
ここで、当該剪断力の矢印P1の先端へ向かう方向を+X方向、それとは反対の向きを−X方向とする。
第一弾性部材16Aの第一の検出部13A側(−X方向側)は、矢印P1の方向に向かって伸ばされ、第一の検出部13Aのメンブレン121には、押圧力で下方に押されていた状態から、押圧力が加えられてない状態の位置に戻ろうとする引張力が発生する。つまり、第一の検出部13Aのメンブレン121は、矢印M1方向に変位する。
また、第一弾性部材16Aの第二の検出部13B側(+X方向側)は、さらに下方に押圧され、第二の検出部13Bのメンブレン121には、下方への圧縮力が発生する。つまり、第二の検出部13Bのメンブレン121は、矢印M2方向に変位する。
このように矢印M1や矢印M2の方向にメンブレン121が変位すると、圧電体141の下部電極142側の面と上部電極143側の面とで電位差が発生し、下部電極142および上部電極143から圧電体141の変位量に応じた電気信号(電圧)が出力される。ここで、第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとでは、メンブレン121の変位方向が逆となるため、第一の検出部13Aから出力される電圧と第二の検出部13Bから出力される電圧は、正負が逆の関係になる。
一方で、触覚センサー素子2にD1⇒D5方向の剪断力が加えられた際の、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dが設置されている部位では、次のような挙動を示す。
第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dは、D1⇒D5方向において第二の弾性部材16Bの中間付近に位置する。第二の弾性部材16B内のこのような位置では、D1⇒D5方向に剪断力が加えられても第二の弾性部材16Bに圧縮力および引張力がほとんど生じない。そのため、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dの各メンブレン121の変位もほとんど生じず、第三の検出部13Cから出力される電圧と第四の検出部13Dから出力される電圧は、微量であるか、もしくは出力されない。微量な電圧の出力が得られても、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dから出力される電圧極性は同じである。
したがって、触覚センサー素子2にD1⇒D5方向の剪断力が加えられた際は、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bから出力される電圧の大きさに基づいて剪断力の大きさを検出し、電圧の極性の関係に基づいて剪断力の向きを検出できる。
図2(B)に示す矢印P1方向の剪断力を開放すると、第一の検出部13Aから出力される電圧と第二の検出部13Bから出力される電圧は、剪断力を加えたときのそれぞれの電圧と正負が逆転する。
次に、触覚センサー素子2に付与する剪断力の方向を変化させた場合の、各検出部13A,13B,13C,13Dの出力信号の極性パターンを表1に示す。表1中、各検出部13A,13B,13C,13Dからの出力電圧極性について、「+」は正の極性、「−」は負の極性、「0」は出力が微量もしくは無い状態であることを示す。各検出部13A,13B,13C,13Dのメンブレン121に引張力が発生する場合には、「+」となり、圧縮力が発生する場合には、「−」となる。
また、触覚センサー素子2に押圧力を付与した場合の各検出部13A,13B,13C,13Dの出力信号の極性も表1に示す。
処理部20の記憶部21には、上述の表1のような出力電圧極性パターンを記憶させておき、演算部22は、受信した電圧の極性と出力電圧極性パターンとに基づいて剪断力の方向を判定する。
表1に示すように、剪断力方向に応じて、各検出部13A,13B,13C,13Dから出力される電圧の極性が異なるので、処理部20にてこれらの極性に基づいて剪断力方向を判定できる。
ここで、処理部20における剪断力方向の判定について、例を挙げて説明する。
第一の検出部13Aから正の極性の電圧が出力され、第二の検出部13Bから負の極性の電圧が出力され、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dから微量な電圧が出力された場合、処理部20の演算部22は、入力されたこれらの電気信号の極性と、記憶部21に記憶された出力電圧極性パターンに基づいて剪断力の方向を判定する。この例の場合、出力電圧極性パターンの表1より、D1⇒D5方向に剪断力が付与されていると判定できる。
なお、触覚センサー素子10Aに対する押圧力が付与されると、各検出部13A,13B,13C,13Dのメンブレン121は、下方に撓むので、出力電圧の極性は、いずれも負となる。よって、このような出力電圧極性パターンとなった場合には、処理部20は、押圧力が付与されたと判定できる。
別の例として、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bから微量な電圧が出力され、第三の検出部13Cから負の極性の電圧が出力され、第四の検出部13Dから正の極性の電圧が出力された場合で説明する。この場合、出力電圧極性パターンの表1より、D3⇒D7方向に剪断力が付与されていると判定できる。D3⇒D7方向は、図1において、上方向の力であり、D1⇒D5方向と略直交する方向である。D3⇒D7方向の剪断力が触覚センサー素子2に対して付与された場合、各検出部13A,13B,13C,13Dの挙動が、D1⇒D5方向の場合と反対になる。つまり、D3⇒D7方向の剪断力が付与されると、第三の検出部13Cのメンブレン121には圧縮力が発生し、第四の検出部13Dのメンブレン121には引張力が発生し、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bでは、メンブレン121が変位しない。その結果、表1のような出力電圧極性となる。
さらに別の例として、第一の検出部13Aおよび第四の検出部13Dから正の極性の電圧が出力され、第二の検出部13Bおよび第三の検出部13Cから負の極性の電圧が出力された場合で考える。この場合、出力電圧極性パターンの表1より、D2⇒D6方向、すなわち、図1のセンサー平面視において右上方向の剪断力が、触覚センサー素子2に対して付与されていると判定できる。D2⇒D6方向の剪断力が付与された場合、触覚センサー素子2では、D2⇒D4方向の力と、D2⇒D8方向の力と、に分けて検出される。
D2⇒D4方向は、D1⇒D5方向と平行であり、D2⇒D8方向は、D3⇒D7方向と平行なので、D2⇒D6方向の剪断力が付与された場合、各検出部13A,13B,13C,13Dは、D1⇒D5方向およびD3⇒D7方向の剪断力が付与され場合に応じた検出を行う。第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bは、D1⇒D5方向の剪断力を検出し、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dは、D3⇒D7方向の剪断力を検出し、それに応じた極性の電気信号を出力する。このようにして、D2⇒D6方向のような斜め方向の剪断力は、D2⇒D4(D1⇒D5)方向の力とD2⇒D8(D3⇒D7)方向の力との合力として、検出できる。
〔第一実施形態の作用効果〕
触覚センサー装置1は、触覚センサー素子2と、処理部20と、を備える。触覚センサー素子2は、第一の検出部13A、第二の検出部13B、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dを備え、各検出部13A,13B,13C,13Dは、圧電積層部14を備える。第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bは、第一の弾性部材16Aに覆われ、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dは、第二の弾性部材16Bに覆われている。
第一弾性部材16Aおよび第二の弾性部材16Bが剪断力の方向へ弾性変形すると、各検出部13A,13B,13C,13Dの各メンブレン121は、第一の弾性部材16Aおよび第二の弾性部材16Bに対する位置に応じて、上方向又は下方向に変位する。そして、各メンブレン121の変位量に応じた電気信号(電圧)が出力され、その極性は、剪断力の方向に対する各検出部13A,13B,13C,13Dの位置に応じて正負が異なる。そして、処理部20は、出力部15を介して受信した電気信号に基づいて、剪断力の方向を判定するとともに、剪断力の大きさを演算できる。また、第一の弾性部材16Aおよび第二の弾性部材16Bが押圧された際も、各メンブレン121が下方向に変位する。その際の各検出部13A,13B,13C,13Dの電気信号により、処理部20は、押圧力付与を判定するとともに、押圧力の大きさを演算できる。
よって、本実施形態によれば、従来技術のような複雑な立体構造と比べてより簡略な構造でありながら押圧力および剪断力の測定が可能な触覚センサー装置1を提供できる。
触覚センサー装置1では、センサー平面視において、第一の開口部11Aの重心と第二の開口部11Bの重心とを結ぶ線分と、第三の開口部11Cの重心と第四の開口部11Dの重心とを結ぶ線分とは離間し、かつ非平行である。そのため、触覚センサー素子2に対して剪断力が付与された際に、第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとで検出する剪断力方向と、第三の検出部13Cと第四の検出部13Dとで検出する剪断力方向とを異ならせることができる。第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとで検出できないような剪断力方向であっても、第三の検出部13Cと第四の検出部13Dとで検出できる。多方向の剪断力であっても、剪断力方向を、第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとで検出可能な力の方向と、第三の検出部13Cと第四の検出部13Dとで検出可能な力の方向とに分けてそれぞれ検出し、それらの合力として剪断力を判定すればよいので、検出が可能である。
よって、触覚センサー装置1は、簡略な構造でありながら、付与される3軸方向の力を検出できる。ここで、3軸方向の力は、触覚センサー装置1に対する押圧力および触覚センサー装置1の基板10の面方向の剪断力である。
触覚センサー装置1では、第一の弾性部材16Aは、センサー平面視において、少なくとも、第一の検出部13A、第二の検出部13B、並びに第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとに挟まれる領域の支持膜12の上を覆う。第二の弾性部材16Bは、センサー平面視において、少なくとも、第三の検出部13C、第四の検出部13D、並びに第三の検出部13Cと第四の検出部13Dとに挟まれる領域の支持膜12の上を覆う。特に、第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとを結ぶ線分方向や第三の検出部13Cと第四の検出部13Dとを結ぶ線分方向に剪断力が付与されると、当該線分上の検出部に対して引張力又は圧縮力が加わり易いので、支持膜の変位が大きくなり、当該電気信号の出力が大きくなる。その結果、触覚センサー装置1の剪断力の測定精度が向上する。
触覚センサー装置1では、センサー平面視において、第一の弾性部材16Aの重心K1は、第一の開口部11Aの重心と第二の開口部11Bの重心とを結ぶ線分を直径とする円の内部に位置している。そのため、第一の弾性部材16Aの重心K1を通るとともに、第一の開口部11Aの重心と第二の開口部11Bの重心とを結ぶ線分とは重ならない直線L1を挟んで、第一の開口部11A上の第一の検出部13Aおよび第二の開口部11B上の第二の検出部13Bが位置する。そうすると、当該直線L1に交差する方向の剪断力に対して、第一の弾性部材16Aの圧縮力が加わる領域と引張力が加わる領域に検出部13A,13Bがそれぞれ配置されていることになり、より明確な反対符号の極性を有する電気信号を取り出すことができる。第二の弾性部材16Bの重心についても、センサー平面視における第三の開口部11Cの重心と第四の開口部11Dの重心とを結ぶ線分を直径とする円の内部に位置する。そのため、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bの場合と同様に、より明確な反対符号の極性を有する電気信号を取り出すことができる。その結果、触覚センサー装置1の剪断力の測定精度が向上する。
触覚センサー装置1では、センサー平面視において、第一弾性部材16Aの重心K1を通る直線L1に対して、第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとが線対称に配置され、第二の弾性部材16Bの重心K2を通る直線L2に対して第三の検出部13Cと第四の検出部13Dとが線対称に配置されている。そのため、剪断力が、弾性部材16A,16Bに加わった際に、弾性部材16A,16Bの圧縮力が加わる領域と、引張力が加わる領域とに各検出部13A,13B,13C,13Dがそれぞれバランスよく配置されていることになる。その結果、電気信号の極性の判別がより明確になり、触覚センサー装置1の剪断力の測定精度が向上する。
触覚センサー装置1では、第一の剛性層17Aおよび第二の剛性層17Bが配置されているので、剪断力が、弾性部材16A,16Bに対して局所的に伝達されることを防止できる。つまり、弾性部材16A,16Bにおける上述の圧縮力又は引張力が各検出部13A,13B,13C,13Dに対してより確実に加わるようにすることができる。その結果、触覚センサー装置1の剪断力の測定精度が向上する。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る触覚センサー装置素子について説明する。
図5は、第二実施形態に係る触覚センサー装置1Aを示す平面図である。
第二実施形態に係る触覚センサー装置1Aは、第一実施形態の触覚センサー装置1よりも多くの検出部を備え、さらに、検出部が電気的に直列に接続されている点で、第一実施形態に係る触覚センサー装置1と異なる。なお、第二実施形態以降の説明にあたり、第一実施形態と同一の構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
触覚センサー装置1Aは、触覚センサー素子2Aと処理部20(図5参照)と、を備えて構成されている。
触覚センサー素子2Aは、図5に示すように、8つの開口部11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hを有する基板10と、開口部11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hを覆う支持膜12と、支持膜12上かつ開口部11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11Hのそれぞれの上方に配置された8つの検出部13A,13B,13C,13D,13E,13F,13G,13Hと、検出部13A,13B,13E,13Fの上に配置された第一の弾性部材16Aと、検出部13C,13D,13G,13Hの上に配置された第二の弾性部材16Bと、第一の弾性部材16Aの上に配置された第一の剛性層17Aと、第二の弾性部材16Bの上に配置された第二の剛性層17Bと、を備える。
8つの開口部は、第一の開口部11A,第二の開口部11B,第三の開口部11C,第四の開口部11D,第五の開口部11E,第六の開口部11F,第七の開口部11G,第八の開口部11Hで構成される。これらの開口部11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11H(以下、これらの開口部をまとめていう場合は、開口部11A〜11Hと示す。)は、基板10の厚み方向で見たセンサー平面視において、次のように形成されている。
開口部11A〜11Hは、図5に示すように、センサー平面視において、円形状に形成されている。
また、第二実施形態においても、開口部11A,11B,11C,11D(以下、これらの開口部をまとめていう場合は、開口部11A〜11Dと示す。)は、図5に示すように、センサー平面視において、第一の開口部11Aの重心および第二の開口部11Bの重心を結ぶ線分と、第三の開口部11Cの重心および第四の開口部11Dの重心を結ぶ線分とが離間し、かつ非平行となるように形成されている。ここで、第二実施形態では、第一の開口部11Aの重心および第二の開口部11Bの重心を結ぶ線分と、第三の開口部11Cの重心および第四の開口部11Dの重心を結ぶ線分の両者を伸ばして直線とした場合、両直線は、略直交する。
第二実施形態においては、さらに、センサー平面視において、第一の開口部11Aの重心と第五の開口部11Eの重心を結ぶ線分と、第二の開口部11Bの重心と第六の開口部11Fの重心を結ぶ線分とは離間している。また、センサー平面視において、第三の開口部11Cの重心と第七の開口部11Gの重心とを結ぶ線分と、第四の開口部11Dの重心と第八の開口部11Hの重心とを結ぶ線分とは離間している。
図5に示すように、センサー平面視において、第一の開口部11Aおよび第五の開口部11Eは、直線L1に対して左側に配置され、第二の開口部11Bおよび第六の開口部11Fは、直線L1に対して右側に配置されている。具体的には、第一の開口部11Aと第二の開口部11Bとが、直線L1に対して線対称に配置され、第五の開口部11Eと第六の開口部11Fとが、直線L1に対して線対称に配置されている。
さらに、図5に示すように、センサー平面視において、第三の開口部11Cおよび第七の開口部11Gは、直線L2に対して上側に配置され、第四の開口部11D、および第八の開口部11Hは、直線L2に対して下側に配置されている。具体的には、第三の開口部11Cと第四の開口部11Dとが、直線L2に対して線対称に配置され、第五の開口部11Eと第六の開口部11Fとが、直線L2に対して線対称に配置されている。
支持膜12は、基板10上に形成されている。支持膜12は、開口部11A〜11Hを覆う。なお、本実施形態では、支持膜12は、共通の部材で開口部11A〜11Hを覆うが、これに限定されない。例えば、開口部11A〜11Hのそれぞれを覆う部材を、別部材とし、各開口部間で支持膜12が分離した形態であっても良い。
第一実施形態と同様に、図5に示すようなセンサー平面視において、支持膜12のうち、開口部11A〜11Hを閉塞する領域をメンブレン121と称する。
8つの検出部は、第一の検出部13A,第二の検出部13B,第三の検出部13C,第四の検出部13D、第五の検出部13E、第六の検出部13F、第七の検出部13Gおよび第八の検出部13Hで構成される。第一の検出部13A,第二の検出部13B,第三の検出部13C,第四の検出部13D、第五の検出部13E、第六の検出部13F、第七の検出部13Gおよび第八の検出部13H(以下、これらの検出部をまとめていう場合は、検出部13A〜13Hと示す。)は、センサー平面視において、それぞれ、開口部11A〜11Hの内側領域に配置されている。
開口部11A〜11Hと検出部13A〜13Hの配置関係は次の通りである。
第一の検出部13A:メンブレン121上、かつ第一の開口部11Aの上方
第二の検出部13B:メンブレン121上、かつ第二の開口部11Bの上方
第三の検出部13C:メンブレン121上、かつ第三の開口部11Cの上方
第四の検出部13D:メンブレン121上、かつ第四の開口部11Dの上方
第五の検出部13E:メンブレン121上、かつ第五の開口部11Eの上方
第六の検出部13F:メンブレン121上、かつ第六の開口部11Fの上方
第七の検出部13G:メンブレン121上、かつ第七の開口部11Gの上方
第八の検出部13H:メンブレン121上、かつ第八の開口部11Hの上方
また、図5に示すように、センサー平面視において、第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとが、直線L1に対して線対称に配置され、第五の検出部13Eと第六の検出部13Fとが直線L1に対して線対称に配置されている。
さらに、図5に示すように、センサー平面視において、第三の検出部13Cと第四の検出部13Dとが、直線L2に対して線対称に配置され、第七の検出部13Gと第八の検出部13Hとが直線L2に対して線対称に配置されている。直線L1と直線L2とは略直交する。
検出部13A〜13Hは、各々、圧電積層部14を備える。
第一の検出部13Aおよび第五の検出部13Eは、電気的に直列に接続され、第二の検出部13Bおよび第六の検出部13Fは、電気的に直列に接続され、第三の検出部13Cおよび第七の検出部13Gは、電気的に直列に接続され、第四の検出部13Dおよび第八の検出部13Hは、電気的に直列に接続されている。このような電気的接続は、図5に示すように、検出部同士を、電極線142Aにて接続することでなされる。
第一の検出部13A、第二の検出部13B、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dは、それぞれ出力部15に接続されている。出力部15と検出部13A〜13Dとの接続は、第一実施形態と同様である。なお、第二実施形態においても、出力部15は、圧電積層部14の下部電極に対応するものであり、上部電極に対応する出力部は、第一実施形態と同様に図示を省略する。
第一の弾性部材16Aは、センサー平面視において、少なくとも、第一の検出部13A、第二の検出部13B、第五の検出部13E、第六の検出部13F、並びに第一の検出部13Aと前記第二の検出部13Bと第五の検出部13Eと第六の検出部13Fとを頂点とする第一の4角形領域の支持膜12の上を覆う。そのため、第一の弾性部材16Aは、センサー平面視において、第一の検出部13A、第二の検出部13B、第五の検出部13Eおよび第六の検出部13Fの上だけでなく、これらを互いに結ぶ線分上も覆う。
また、第一の弾性部材16の重心K1は、センサー平面視における前記第一の4角形領域に位置する。
第二の弾性部材16Bは、センサー平面視において、少なくとも、第三の検出部13C、第四の検出部13D、第七の検出部13G、第八の検出部13H、並びに第三の検出部13Cと第四の検出部13Dと第七の検出部13Gと第八の検出部13Hとを頂点とする第二の4角形領域の支持膜12の上を覆う。そのため、第二の弾性部材16Bは、センサー平面視において、第三の検出部13C、第四の検出部13D、第七の検出部13Gおよび第八の検出部13Hの上だけでなく、これら互いに結ぶ線分上も覆う。
また、第二の弾性部材の重心K2は、センサー平面視における前記第二の4角形領域に位置する。
弾性部材16A,16Bの表面には、第一実施形態と同様に、剛性層17A,17Bが形成されている。
処理部20は、第一実施形態と同様の構成を備え、出力部15を介して検出部13A〜13Hから出力される電気信号を受信し、これに基づいて触覚センサー装置1Aに付与される押圧力および剪断力を検出する。
次に、第二実施形態における触覚センサー素子2Aの動作について説明する。
まず、第一実施形態で説明した、図4のD1⇒D5方向の剪断力が付与された場合で説明する。この場合、第一の検出部13Aおよび第五の検出部13Eでは、正の極性の電気信号が発生し、第二の検出部13Bおよび第六の検出部13Fでは、負の極性の電気信号が発生する。そうすると、第一の検出部13Aおよび第五の検出部13Eの電気信号は、加算されて一方の出力部15から出力され、第二の検出部13Bおよび第六の検出部13Fの電気信号は、加算されて他方の出力部15から出力される。
また、第三の検出部13Cでは、正の極性の電気信号が発生し、第七の検出部13Gでは、負の極性の電気信号が発生する。第四の検出部13Dでは、正の極性の電気信号が発生し、第八の検出部13Hでは、負の極性の電気信号が発生する。ここで、上述の通り、第三の検出部13Cと第七の検出部13Gとが電気的に接続され、第四の検出部13Dと第八の検出部13Hとが電気的に接続されていることにより、電気信号は、加算されて、微量であるか、または検出されない。
D1⇒D5方向と直行する方向の剪断力が付与された場合であれば、検出される電気信号は、D1⇒D5方向の場合と、反対の関係になる。
また、D2⇒D6方向、すなわち、図5のセンサー平面視において右上方向の剪断力が、触覚センサー素子2Aに付与された場合には、上記第一実施形態と同様にして、D2⇒D4(D1⇒D5)方向の力とD2⇒D8(D3⇒D7)方向の力とをそれぞれ分けて検出し、その合力とすることで斜め方向の剪断力も検出できる。
〔第二実施形態の作用効果〕
第二実施形態では、第一実施形態で説明した効果に加えて、次のような効果を奏する。
触覚センサー装置1Aでは、検出部13A〜13Hが、上記所定の関係で電気的に直列に接続されているので、出力される電気信号は、検出部13A〜13Hから出力される電気信号の加算値となる。そのため、1つずつの検出部13A〜13Hから電気信号が出力される場合に比べて、電気信号が大きくなり、剪断力の測定精度が向上する。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る触覚センサー装置素子について説明する。
図6は、第三実施形態に係る触覚センサー装置1Bを示す平面図である。
第三実施形態に係る触覚センサー装置1Bは、第一実施形態の触覚センサー素子2の構成をさらにもう一つ加えた構成の触覚センサー素子2Bを備える。
なお、第三実施形態以降の説明にあたり、第一実施形態と同一の構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
触覚センサー素子2Bは、図6に示すように、第一実施形態の触覚センサー素子2におけるD1⇒D5方向の剪断力を検出する検出部13A,13Bに関するブロックB1(開口部11A,11B,メンブレン121等を含む)と、第一実施形態の触覚センサー素子2におけるD3⇒D7方向の剪断力を検出する検出部13C,13Dに関するブロックB2(開口部11C,11D,メンブレン121等を含む)とを、さらに一つずつ備える。
触覚センサー装置1Bでは、このように、D1⇒D5方向の剪断力を検出するブロックB1およびD3⇒D7方向の剪断力を検出するブロックB2を2つずつ備えるので、剪断力の検出可能な箇所が増え、剪断力の測定精度が向上する。
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る触覚センサー装置素子について説明する。
図7は、第四実施形態に係る触覚センサー装置1Cを示す平面図である。
第四実施形態に係る触覚センサー装置1Cは、第二実施形態の触覚センサー素子2Aの構成をさらにもう一つ加えた構成の触覚センサー素子2Cを備える。
なお、第四実施形態以降の説明にあたり、第一実施形態および第二実施形態と同一の構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
触覚センサー素子2Cは、図7に示すように、第二実施形態の触覚センサー素子2AにおけるD1⇒D5方向の剪断力を検出する検出部13A,13B,13E,13Fに関するブロックB3(開口部11A,11B,11E,11F,メンブレン121等を含む)と、第二実施形態の触覚センサー素子2AにおけるD3⇒D7方向の剪断力を検出する検出部13C,13D,13G,13Hに関するブロックB4(開口部11C,11D,11G,11H、メンブレン121等を含む)とを、さらに一つずつ備える。
触覚センサー装置1Cでは、このように、D1⇒D5方向の剪断力を検出するブロックB3およびD3⇒D7方向の剪断力を検出するブロックB4を2つずつ備えるので、剪断力の検出可能な箇所が増え、剪断力の測定精度が向上する。
[第五実施形態]
次に、上述した触覚センサー装置1を用いた装置の応用例として、触覚センサー装置1を備えた把持装置について、図面に基づいて説明する。
図8は、本発明に係る第五実施形態の把持装置の概略構成を示す装置ブロック図である。
図8において、把持装置50は、少なくとも一対の把持アーム51を備え、この把持アーム51により、把持対象物Zを把持する装置である。この把持装置50としては、例えば製品を製造する製造工場などにおいて、ベルトコンベアーなどにより搬送された対象物を把持して持ち上げる装置である。そして、この把持装置50は、前記把持アーム51と、把持アーム51を駆動するアーム駆動部52と、アーム駆動部52の駆動を制御する制御装置54と、を備えて構成されている。
一対の把持アーム51は、それぞれ先端部に接触面である把持面53を備え、この把持面53を把持対象物Zに当接させて把持することで把持対象物Zを把持し、持ち上げる。ここで、本実施形態において、把持アーム51が一対設けられる構成を例示するが、これに限定されず、例えば3本の把持アーム51により、把持対象物Zを3点支持により把持する構成などとしてもよい。
把持アーム51に設けられる把持面53は、表面には、第一実施形態において説明した触覚センサー装置1が設けられており、触覚センサー装置1の剛性層17A,17Bが露出されている。そして、把持アーム51は、この剛性層17A,17Bを把持対象物Zに接触させ、把持対象物Zに所定の圧力(正圧力)を印加することで、把持対象物Zを把持する。このような把持アーム51では、把持面53に設けられる触覚センサー装置1により、把持対象物Zに印加する正圧力、および把持した際に把持対象物Zが把持面53から滑り落ちようとする剪断力を検出し、正圧力や剪断力に応じた電気信号を制御装置54に出力する。具体的には、触覚センサー装置1の処理部20にて、各検出部13A〜13Dから出力される電気信号を受信して、演算部22にて正圧力や剪断力を算出する。処理部20は、この算出結果を剪断力検出信号、および正圧力検出信号として制御装置54へと出力する。
アーム駆動部52は、一対の把持アーム51を互いに近接する方向、又は離隔する方向に移動させる装置である。このアーム駆動部52としては、把持アーム51を移動可能に保持する保持部材55と、把持アーム51を移動させる駆動力を発生する駆動源56と、駆動源の駆動力を把持アーム51に伝達させる駆動伝達部57を備えている。
保持部材55は、例えば把持アーム51の移動方向に沿う案内溝を備え、この案内溝内で把持アーム51を保持することで、把持アーム51を移動可能に保持する。また、保持部材55は、鉛直方向に移動可能に設けられている。
駆動源56は、例えば駆動モーターであり、制御装置54から入力される駆動制御信号に応じて駆動力を発生させる。
駆動伝達部57は、例えば複数のギアにより構成され、駆動源56で発生した駆動力を把持アーム51および保持部材55に伝達させ、把持アーム51および保持部材55を移動させる。
なお、本実施形態では、一例として上記構成を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、把持アーム51を保持部材55の案内溝に沿って移動させる構成に限らず、把持アームを回動可能に保持する構成などとしてもよい。駆動源56としても駆動モーターに限られず、例えば油圧ポンプなどにより駆動される構成としてもよく、駆動伝達部57としても、例えば駆動力を歯車により伝達する構成に限らず、ベルトやチェーンにより伝達する構成、油圧などにより駆動されるピストンを備えた構成などとしてもよい。
制御装置54は、把持アーム51の把持面53に設けられる触覚センサー装置1、およびアーム駆動部52に接続され、把持装置50における把持対象物Zの把持動作の全体を制御する。
具体的には、制御装置54は、図8に示すように、アーム駆動部52および触覚センサー装置1に接続され、把持装置50の全体動作を制御する。この制御装置54は、触覚センサー装置1から入力される剪断力検出信号、および正圧力検出信号を読み取る信号検出手段541、把持対象物Zの滑り状態を検出する把持検出手段542、およびアーム駆動部52に把持アーム51の駆動を制御するための駆動制御信号を出力する駆動制御手段543を備えている。また、この制御装置54としては、例えばパーソナルコンピューターなどの汎用コンピューターを用いることもでき、例えばキーボードなどの入力装置や、把持対象物Zの把持状態を表示させる表示部などを備える構成としてもよい。
また、信号検出手段541、把持検出手段542、および駆動制御手段543は、プログラムとして例えばメモリーなどの記憶部に記憶され、CPUなどの演算回路により適宜読み出されて実行されるものであってもよく、例えばICなどの集積回路により構成され、入力された電気信号に対して所定の処理を実施するものであってもよい。
信号検出手段541は、触覚センサー装置1に接続され、触覚センサー装置1から入力される正圧力検出信号や剪断力検出信号などを取得する。この信号検出手段541にて認識された検出信号は、例えば図示しないメモリーなどの記憶部に出力されて記憶されるとともに、把持検出手段542に出力される。
把持検出手段542は、剪断力検出信号に基づいて、把持アーム51により把持対象物Zを把持したか否かを判断する。
ここで、図9に、把持装置50の把持動作における触覚センサーに作用する正圧力および剪断力の関係を示す図を示す。
図9において、正圧力が所定値に達するまでは、正圧力の増加に応じて剪断力が増加する。この状態は、把持対象物Zと把持面53との間に動摩擦力が作用している状態であり、把持検出手段542は、把持対象物Zが把持面53から滑り落ちている滑り状態で、把持が未完了であると判断する。一方、正圧力が所定値以上となると、正圧力を増大させても剪断力が増加しない状態となる。この状態は、把持対象物Zと把持面53との間に静摩擦力が作用している状態であり、把持検出手段542は、把持対象物Zが把持面53により把持された把持状態であると判断する。
具体的には、剪断力検出信号の値が、静摩擦力に対応した所定の閾値を越える場合に、把持が完了したと判断する。
駆動制御手段543は、把持検出手段542にて検出された電気信号に基づいてアーム駆動部52の動作を制御する。
次に、制御装置54の動作について図面に基づいて説明する。
図10は、制御装置54の制御による把持装置50の把持動作を示すフローチャートである。図11は、把持装置50の把持動作時において、アーム駆動部52への駆動制御信号、触覚センサー装置1から出力される検出信号の発信タイミングを示すタイミング図である。
把持装置50で把持対象物Zを把持するためには、まず制御装置54の駆動制御手段543は、各把持アーム51を互いに近接させる方向に移動させる旨の駆動制御信号をアーム駆動部52に出力する(把持動作)。これにより、把持アーム51の把持面53が把持対象物Zに近接する(図10:ステップS11)。
次に、制御装置54の把持検出手段542は、把持対象物Zが把持面53に接触したか否かを判断する(図10:ステップS12)。具体的には、制御装置54は、信号検出手段541で正圧力検出信号の入力が検知されたか否かを判断する。ここで、正圧力検出信号が検出されない場合は、把持面53が把持対象物Zに接触していないと判断し、駆動制御手段543は、ステップS11を継続して、駆動制御信号を出力し、把持アーム51をさらに駆動させる。
一方、把持面53が把持対象物Zに接触する(図11:タイミングT1)と、触覚センサー装置1の弾性部材16A,16Bが歪み、その歪み量に基づいて算出された正圧力に対応する正圧力検出信号が出力される。
駆動制御手段543は、把持検出手段542において、正圧力検出信号を検出すると、把持アーム51の近接移動(把持対象物Zへの押圧)を停止させる(図10:ステップS13、図11:タイミングT2)。また、駆動制御手段543は、アーム駆動部52に駆動制御信号を出力し、把持アーム51を上方に持ち上げる動作(持上げ微動作)を実施させる(図10:ステップS14、図11:タイミングT2〜T3)。
ここで、把持対象物Zを持ち上げる際に、弾性部材16A,16Bが剪断力により剪断方向に歪み、触覚センサー装置1では、その歪み量に応じた剪断力が算出され、その剪断力に対応する剪断力検出信号が出力される。
把持検出手段542は、信号検出手段541に入力される剪断力検出信号に基づいて、滑りがあるか否かを判断する(図10:ステップS15)。
この時、把持検出手段542において、滑りがあると判断されると、駆動制御手段543は、アーム駆動部52を制御して、把持アーム51を、把持面53を把持対象物Zに押し付ける方向に移動させて、把持力(正圧力)を増大させる(図10:ステップS16)。
すなわち、制御装置54は、図11におけるタイミングT3において、駆動制御手段543にて把持動作を実施させ、把持対象物Zへの正圧力を増大させ、信号検出手段541にて、再び触覚センサー装置1から出力される剪断力検出信号を検出する。以上のような滑り検知動作(タイミングT2〜T6)を繰り返し、剪断力検出信号が、所定の閾値A1以上となった場合(タイミングT6)に、ステップS15において、滑りがない、すなわち把持が完了したと判断し、滑り検知動作を停止させる。
〔第五実施形態の作用効果〕
上述したような第五実施形態の把持装置50では、上記第一実施形態の触覚センサー装置1を備えている。このような触覚センサー装置1は、上述したように、簡略な構造であっても剪断力および正圧力を検出することができるものであるため、把持装置50においても剪断力検出信号および正圧力検出信号に基づいて、正確な把持動作を実施することができる。
触覚センサー装置1は、上述したように、センサー平面視において上下方向だけでなく、左右方向や斜め方向の剪断力を検出することができる。したがって、第五実施形態では、把持対象物Zを持ち上げる際の剪断力を測定したが、例えばベルトコンベアー上で搬送される対象物に対して把持を実施する際に、搬送方向への剪断力をも測定することができる。
[第六実施形態]
上記第五実施形態では、触覚センサー装置1が設けられた把持装置を例示したが、これに限定されない。触覚センサー装置を用いた装置の他の応用例として、アイロンについて、図面に基づいて説明する。
第六実施形態では、図14に示すような概略構成を備えるアイロン60が、接触物との距離を検出する近接センサー70(図12参照)を備えた触覚センサー装置1Dを用いる。
図12は、触覚センサー装置1Dの概略構成を示す平面図である。
触覚センサー装置1Dは、第三実施形態で説明した触覚センサー素子2Bが、さらに近接センサー70を備えた構成を有する。近接センサー70は、近接検出用超音波素子71と、制御部80と、を備えている。
この近接検出用超音波素子71は、図12に示すように、基板10に形成される開口部711と、開口部711を閉塞する支持膜72(メンブレン721)と、メンブレン721の内部領域に配置される圧電積層部73と、により構成されている。開口部711は、上述の開口部11A〜11Dと同様に形成されている。圧電積層部73は、上述の第一実施形態の圧電積層部14と同様に、圧電体と、当該圧電体を挟んで配置される下部電極および上部電極と、により構成されている。
近接検出用超音波素子71上には、弾性部材16A,16Bは配置されていない。したがって、近接検出用超音波素子71に交流電圧を印加すると、超音波は、触覚センサー装置1D直上に空気を伝搬して発信される。具体的には、制御部80(図13参照)から、圧電積層部73の下部電極および上部電極間に交流電圧が印加されると、圧電体が印加電圧に応じて伸縮する。これにより、メンブレン721が振動し、超音波が接触物側に発信される。
触覚センサー装置1Dの直上に接触物が近接すると、近接検出用超音波素子71から発信された超音波は、接触物で反射され、近接検出用超音波素子71で受信される。
図13は、触覚センサー装置1Dにおける制御部80の概略構成を示すブロック図である。制御部80は、図13に示すように、送受信切替回路81と、送受信切替制御部82と、超音波信号発信回路83と、時間計測部84と、記憶部85と、演算処理部86と、を備えている。
送受信切替回路81は、送受信切替制御部82から入力されるモード切替信号に基づいて、接続状態を切り替えるスイッチング回路である。
具体的には、送受信切替制御部82から超音波発信モードに切り替える旨の制御信号が入力された場合、送受信切替回路81は、超音波信号発信回路83から入力された駆動信号を、触覚センサー装置1Dの近接検出用超音波素子71に出力可能なスイッチング状態に切り替わる。
一方、送受信切替回路81は、送受信切替制御部82から超音波受信モードに切り替える旨の制御信号が入力された場合、触覚センサー装置1Dの近接検出用超音波素子71から入力される受信信号を時間計測部84に出力可能なスイッチング状態に切り替わる。
送受信切替制御部82は、近接検出用超音波素子71から超音波を発信させる超音波発信モードと、近接検出用超音波素子71にて超音波を受信させる超音波受信モードと、を切り替える。
具体的には、送受信切替制御部82は、例えば、アイロン60に電源が入り、触覚センサー装置1Dの電源がON状態に切り替わると、まず、超音波発信モードに切り替える処理を実施する。
この処理では、送受信切替制御部82は、送受信切替回路81に超音波発信モードに切り替える旨の制御信号を出力し、超音波信号発信回路83から駆動信号を出力させる旨の制御信号を出力する。
また、送受信切替制御部82は、図示しない計時部(タイマー)により計測される時間を監視し、超音波発信モードから所定の発信時間経過後に、超音波受信モードに切り替える処理を実施する。ここで発信時間は、近接検出用超音波素子71から例えば1〜2周波数のバースト波が発信される時間程度に設定されていればよい。
超音波受信モードでは、送受信切替制御部82は、送受信切替回路81に超音波受信モードに切り替える旨の制御信号を出力して、送受信切替回路81を、近接検出用超音波素子71から入力される受信信号を時間計測部84に入力可能な接続状態にスイッチングさせる。
超音波信号発信回路83は、発信モードにおいて、送受信切替制御部82から駆動信号を出力させる旨の制御信号が入力されると、近接検出用超音波素子71を駆動させるための駆動信号(駆動パルス)を送受信切替回路81に出力する。
時間計測部84は、計時部にて計測される時間を監視し、超音波が受信されるまでの時間を計測する。
具体的には、時間計測部84は、送受信切替制御部82が超音波発信モードに切り替える処理を実施した超音波発信タイミング、すなわち近接検出用超音波素子71から超音波が発信されてからの時間をカウントする。
なお、送受信切替制御部82は、超音波発信タイミングで、計時部でカウントされる時間をリセットする。そして、送受信切替制御部82が超音波受信モードに切り替える処理を実施し、近接検出用超音波素子71で受信された反射超音波に応じた受信信号が送受信切替回路81から時間計測部84に入力されると、時間計測部84は、その入力されたタイミングでの時間(TOFデータ:Time Of Flightデータ)を取得する。また、取得したTOFデータは、演算処理部86に入力される。
記憶部85は、演算処理部86の各種処理を実施するための各種プログラムや各種データなどを記憶する。
具体的には、記憶部85には、空気中の音速や、演算処理部86により実施される各種プログラムなどが予め記憶される。また、演算処理部86で算出された各種データが記憶される構成などとしてもよい。
演算処理部86は、距離算出部861を備えている。
この距離算出部861は、近接検出用超音波素子71から出力される受信信号に基づいて、時間計測部84でTOFデータが取得されると、触覚センサー装置1Dと接触物との距離を算出する。具体的には、時間計測部84は、取得したTOFデータと記憶部85から読み出した空気中の音速とに基づいて、触覚センサー装置1Dと接触物との距離を算出する。
図14は、本実施形態のアイロンの概略構成を示すブロック図である。
図14に示すように、アイロン60は、ヒーター61と、ベース部62と、ベース部62に設けられた温度センサー63と、ベース部62に設けられた触覚センサー装置1Dと、ヒーター駆動回路64と、を備えている。このアイロン60のヒーター駆動回路64は、温度センサー63および触覚センサー装置1Dからの信号に基づいてヒーター61に印加する電圧を制御し、ベース部62を対象布地に対して最適な温度に加熱する。
ヒーター61は、ヒーター駆動回路64から印加された電圧により発熱し、ベース部62を加熱する。
ベース部62は、対象布地に接触して、対象布地の皺を伸ばす部分であり、ヒーター61により加熱される。そして、このベース部62の一部には、図14に示すように、触覚センサー装置1Dが設けられ、触覚センサー装置1Dの剛性層17A,17Bが、対象布地に接触可能に露出されている。
また、ベース部62には、温度センサー63が設けられており、この温度センサー63は、ベース部62の温度を検出してヒーター駆動回路64に出力する。
ヒーター駆動回路64は、触覚センサー装置1D、温度センサー63、およびヒーター61に接続され、触覚センサー装置1Dおよび温度センサー63からの信号に基づいてヒーター61に印加する電圧を制御する。このヒーター駆動回路64は、図14に示すように、記憶部としてのメモリー641と、信号検出部642と、布地判別部643と、温度制御部644と、を備えている。
このヒーター駆動回路64としては、例えばCPU等の演算回路や、記憶回路を備えたコンピューターとして構成され、布地判別部643や温度制御部644が、演算回路による演算処理により実行されるソフトウェアとして機能される構成としてもよい。例えば、ヒーター駆動回路64としては、ICなどの集積回路により構成され、入力された電気信号に対して所定の処理を実施するものであってもよい。
メモリー641は、相関データである応力−粗さ値データを記憶している。この応力−粗さ値データには、触覚センサー装置1Dにより検出された応力に応じた、対象布地の粗さ値が記録されているデータであり、例えば、剪断力に対応する粗さ値が、正圧力毎に記録されている。
また、メモリー641には、粗さ値に対応したベース部62の最適温度が記録された粗さ−温度データが記憶されていてもよい。
信号検出部642は、触覚センサー装置1Dに接続され、触覚センサー装置1Dから入力される正圧力検出信号や剪断力検出信号などを取得する。具体的には、触覚センサー装置1Dの処理部20にて、各検出部13A〜13Dから出力される電気信号を受信して、演算手段にて正圧力や剪断力を算出し、この算出結果を剪断力検出信号、および正圧力検出信号として信号検出部642へと出力する。
この信号検出部642にて検出された検出信号は、メモリー641に出力されて記憶されるとともに、布地判別部643に出力される。
布地判別部643は、信号検出部642から入力された剪断力および正圧力、およびメモリー641に記憶された応力−粗さ値データに基づいて、対象布地の種別を判別する。
例えば、本実施形態では、応力−粗さ値データとして、正圧力毎に、剪断力に対応する粗さが記憶されている。この場合では、布地判別部643は、正圧力に対応した応力−粗さ値データをメモリー641から読み出し、この応力−粗さ値データから剪断力に対応した粗さ値を取得する。
そして、布地判別部643は、取得した粗さ値を温度制御部644に出力する。
温度制御部644は、布地判別部643から入力された粗さ値、および温度センサー63により検出されるベース部62の温度に基づいて、ヒーター61への印加電圧を制御する。
具体的には、温度制御部644は、メモリー641から粗さ−温度データを読み出し、布地判別部643から入力された粗さ値に応じたベース部62の最適温度を取得する。そして、温度制御部644は、温度センサー63から入力された検出温度と最適温度との差分値から、ベース部62を最適温度に設定するために必要なヒーター61への印加電圧値を算出して、ヒーター61に印加する。
〔アイロンの動作〕
次に、上記のようなアイロン60の動作について説明する。
図15は、第六実施形態のアイロンの動作を示すフローチャートである。
利用者によりアイロン60に電力が供給されると、近接センサー70の近接検出用超音波素子71が駆動される。時間計測部84において近接検出用超音波素子71から出力された受信信号に基づくTOFデータが取得されると、距離算出部861は、記憶部85から読み出した空気中の音速とに基づいて、対象布地と触覚センサー装置1D(ベース部62)との距離を算出する。そして、対象布地とベース部62との距離が予め設定された距離以内になると、触覚センサー装置1Dは、駆動モードに移行する(ステップS21)。駆動モードでは、処理部20は、各検出部13A〜13Dから出力される電気信号を処理可能な状態となる。
この後、アイロン60のヒーター駆動回路64は、対象布地がベース部62に接触したか否かを判断する(ステップS22)。具体的には、ヒーター駆動回路64は、信号検出部642で正圧力検出信号の入力が検知されたか否かを判断する。ここで、正圧力検出信号が検出されない場合は、ベース部62に対象布地が接触していないと判断する。この場合は、ヒーター駆動回路64は、ステップS22を継続し、対象布地とベース部62との接触判断処理を継続する。
また、ステップS22において、信号検出部642が正圧力検出信号の入力を検知した場合、さらに、剪断力検出信号の入力を検出し、剪断力の大きさが0より大きいか否かを判断する(ステップS23)。
つまり、正圧力の大きさは、利用者がアイロン60を対象布地に押し付ける強さにより変化するため、正圧力のみでは対象布地の種別を判別することはできない。したがって、剪断力の大きさが0である場合は、継続してステップS23の処理を実行する。
一方、ステップS23により、剪断力検出信号により検出された剪断力の大きさが0より大きい場合、布地判別部643は、メモリー641から、正圧力に対応した応力−粗さ値データを読み出し、剪断力に対応した粗さ値を取得する(ステップS24)。
この後、温度制御部644は、メモリー641から粗さ−温度データを読み出し、ステップS24で取得された粗さ値に対応した温度を取得し、最適温度として設定する(ステップS25)。
さらに、温度制御部644は、温度センサー63により検出された検出温度と、ステップS25により設定された最適温度との差分値から、ベース部62を最適温度に設定するために必要なヒーター61への印加電圧値を算出し、ヒーター61にその電圧値を印加する(ステップS26)。
これにより、アイロン60は、対象布地の種別に応じて、ベース部62の温度を、自動で設定することが可能となる。
(第六実施形態の作用効果)
上述したような第六実施形態のアイロン60では、上述の触覚センサー装置1Dを備えており、この触覚センサー装置1Dは、第三実施形態の触覚センサー装置1Bの構成を備えている。触覚センサー装置1Bは、上述したように、簡略な構造であっても剪断力および正圧力を検出することができるため、アイロン60においても、ベース部62に対象布地が接触した際の正圧力および剪断力を検出することができる。
そして、アイロン60のヒーター駆動回路64は、布地判別部643により、検出された正圧力および剪断力に対応した、対象布地の粗さを判別することができる。したがって、判断された対象布地の粗さから、対象布地の種別を判断することができ、温度制御部644は、布地の種別に対応してベース部62の温度を設定することができる。したがって、アイロン60において、布地に対応してベース部62の温度を自動で設定することができ、対象布地の種別に応じて、温度設定を変更する煩雑な作業を省略することができる。
なお、上記第六実施形態では、メモリー641に、正圧力および剪断力に応じた粗さ値が記録された応力−粗さ値データを記憶する例を示したが、例えば、正圧力および剪断力に応じた対象布地の種類を記録した応力−布地種別データがメモリー641に記憶される構成などとしてもよい。この場合では、布地判別部643は、正圧力および剪断力に応じて、対象布地の種別を直接判別し、温度制御部644は、判別された布地の種別に対応した温度を取得する。
また、相関データとして、正圧力および剪断力に対応したベース部62の最適温度が記憶された応力−温度データが記憶されていてもよく、この場合では、粗さ−温度データを記憶する必要がなくなり、より少ないデータ量で、ベース部62の温度を自動で設定可能なアイロン60を提供することができる。
さらに、上記アイロン60では、ヒーター駆動回路64により自動でベース部62の温度が設定される例を示したが、例えば、ベース部62の温度を自動設定する自動モードと、手動により温度を設定する手動モードと、を適宜切り替え可能な構成としてもよい。
[第七実施形態]
次に、本発明の第七実施形態として、上述したような触覚センサーを備えた電子機器について説明する。この第七実施形態では、電子機器としてのノート型パソコン90を例示する。
図16は、第七実施形態のノート型パソコン90の構成を模式的に示す斜視図である。
図16において、ノート型パソコン90は、装置本体91と、表示部92と、第一入力部93と、第二入力部94とを備えている。
表示部92は、例えば液晶パネルや有機パネルなどにより構成され、装置本体91の内部に収容された図示略の演算制御部に接続され、この演算制御部により、種々の操作画像やその他の情報を表示するように構成されている。
第一入力部93は、キーボードやテンキー等で構成される。
第二入力部94は、第一入力部93よりも手前側の位置に設けられており、この第二入力部94に、上述の触覚センサー装置1が用いられている。図16に示されるように第二入力部94の表面には、触覚センサー装置1の剛性層17A,17Bの表面を覆う板状部材95を載せて配置し、この板状部材95の表面上で、利用者が指を動かしたり、タッチペンなどを動かしたりすると、これらの動きにより剪断力や正圧力が発生する。この剪断力および正圧力を触覚センサー装置1により検出することで、利用者の指やタッチペンの接触位置座標、移動方向を検出して電気信号として出力することができる。そして、出力された電気信号に基づいて、利用者が所望する入力操作の内容を正確に認識することができ、ノート型パソコン90の操作性を向上させることができる。
〔その他の実施形態〕
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上述の実施形態では、触覚センサー装置1等の弾性部材16A,16Bの表面に剛性層17A,17Bが配置されている構成について説明したが、剛性層17A,17Bが配置されていない構成としてもよい。
また、弾性部材16A,16Bの表面に対して共通の剛性層を配置する構成としても良い。
また、支持膜12は、各々の開口部の間で分離した形態であっても良い。例えば、第一開口部11Aを覆う支持膜12と、第二開口部11Bを覆う支持膜12とが、連続していなくても良い。ただし、この場合、弾性部材16A,16Bは、支持膜12が形成されていない領域の基板上、かつ第一開口部11Aと第二開口部11Bとで挟まれる領域を連続して覆うように配置される。
触覚センサー素子における検出部の配置は、上述の実施形態で説明したものに限定されない。例えば、図1に示すようなセンサー平面視において、重心K1を通る第一弾性部材16Aの対角線上に検出部を設ける構成としてもよい。
上述の実施形態では、触覚センサー素子の開口部は、共通の基板に形成されている態様で説明したが、これに限定されない。例えば、第一実施形態の変形として、触覚センサー素子2の第一の開口部11Aおよび第二の開口部11Bが、第一副基板に形成され、各開口部に対して検出部が配置された第一の検出部ユニットと、第三の開口部11Cおよび第四の開口部11Dが、第二副基板に形成され、これらの各開口部に対して検出部が配置された第二の検出部ユニットとを、共通基板に対して取り付けた構成とすることもできる。また、このような共通基板に第一副基板および第二副基板の形状に応じた凹溝をそれぞれ形成しておき、当該凹溝内に、第一の検出部ユニットおよび第二の検出部ユニットをそれぞれ収容させる構成としてもよい。
上述の実施形態では、弾性部材16A,16Bが、センサー平面視で、四角状のものを例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、センサー平面視で、円形状や楕円形状、その他多角形状の弾性部材16A,16Bであってもよい。
上述のとおり説明した、触覚センサー素子2,2A,2B,2Cは、いずれも上述の説明で示した例に限定されず、その他の形態に対しても適用できる。
第五実施形態において、把持装置50として、一対の把持アーム51が配置される構成を例示したが、3本以上の把持アームを互いに近接離間する方向に移動させて把持対象物Zを把持する構成としてもよい。また、アーム駆動部により駆動される駆動アームと、駆動しない固定アームまたは固定壁とを備え、駆動アームを固定アーム(固定壁)側に移動させて対象物を把持する構成などとしてもよい。
また、第六実施形態では、接触物判別部として、メモリー641に記憶された応力−粗さ値データに基づいて、布地の種別(粗さ値)を判別する布地判別部643を例示したが、これに限らない。例えば、触覚センサー装置1等を、パン製造装置に設け、パン生地の柔らかさ(捏ね状態)を判断する接触物判別部を設ける構成としてもよい。この場合、接触部判別部は、パン生地に対して加えた応力と、その応力に対して最適弾性力との関係データをメモリーに記憶する。そして、接触物判別部は、触覚センサー装置1等で検出された正圧力や剪断力が、最適弾性力を中心とした所定閾値以内であれば、捏ね状態が最適であると判断する。このような構成のパン製造装置では、パン生地の捏ね状態を一定に維持することができ、安定した品質のパン生地を製造することができる。
そして、上述の圧電積層部14,73として、膜上の圧電体、下部電極、上部電極を備える構成を例示したが、膜状に限られず、例えばバルク状の圧電体や、電極を用いてもよい。
また、上述の実施形態で説明した電子機器は、ノート型パソコンを例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、PDA(Personal Data Assistance)や携帯ゲーム機や携帯電話、パーソナルコンピューターや電子辞書などにおける入力装置として、本発明の触覚センサーを適用することも可能である。
以上、本発明を実施するための最良の構成について具体的に説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形および改良を加えることができるものである。
1,1A,1B,1C,1D…触覚センサー装置、2,2A,2B,2C…触覚センサー素子、10…基板、11A,11B,11C,11D,11E,11F,11G,11H…開口部、12…支持膜、13A,13B,13C,13D,13E,13F,13G,13H…検出部、14…圧電積層部、141…圧電体、142…下部電極、143…上部電極、16A,16B…弾性部材、17A,17B…剛性層、20…処理部、50…把持装置、51…把持アーム、542…把持検出手段、543…駆動制御手段、90…ノート型パソコン(電子機器)。

Claims (9)

  1. 第一の開口部、第二の開口部、第三の開口部および第四の開口部を有する基板と、
    前記第一の開口部、前記第二の開口部、前記第三の開口部および前記第四の開口部を覆う支持膜と、
    前記支持膜上、かつ前記第一の開口部の上方に配置された第一の検出部と、
    前記支持膜上、かつ前記第二の開口部の上方に配置された第二の検出部と、
    前記支持膜上、かつ前記第三の開口部の上方に配置された第三の検出部と、
    前記支持膜上、かつ前記第四の開口部の上方に配置された第四の検出部と、
    前記第一の検出部および前記第二の検出部の上に配置された弾性変形する第一の弾性部材と、
    前記第三の検出部および前記第四の検出部の上に配置された弾性変形する第二の弾性部材と、
    を備え、
    前記第一の検出部、前記第二の検出部、前記第三の検出部および前記第四の検出部のそれぞれは、前記支持膜側から順に下部電極、圧電体および上部電極が積層されて構成された圧電積層部を備え、
    前記基板の厚み方向で見た平面視において、前記第一の開口部の重心と前記第二の開口部の重心とを結ぶ線分と、前記第三の開口部の重心と前記第四の開口部の重心とを結ぶ線分とは離間し、かつ非平行であり、
    前記第一の弾性部材は、前記平面視において、少なくとも、前記第一の検出部、前記第二の検出部、並びに前記第一の検出部と前記第二の検出部とに挟まれる領域の支持膜の上を覆い、
    前記第二の弾性部材は、前記平面視において、少なくとも、前記第三の検出部、前記第四の検出部、並びに前記第三の検出部と前記第四の検出部とに挟まれる領域の支持膜の上を覆い、
    前記第一の弾性部材および前記第二の弾性部材の表面は、前記基板面と平行に形成されている
    ことを特徴とする触覚センサー素子。
  2. 請求項1に記載の触覚センサー素子において、
    前記基板の厚み方向で見た平面視における前記第一の弾性部材の重心は、前記平面視における前記第一の開口部の重心と前記第二の開口部の重心とを結ぶ線分を直径とする円の内部に位置し、
    前記平面視における前記第二の弾性部材の重心は、前記平面視における前記第三の開口部の重心と前記第四の開口部の重心とを結ぶ線分を直径とする円の内部に位置する
    ことを特徴とする触覚センサー素子。
  3. 請求項1または請求項2に記載の触覚センサー素子において、
    前記第一の開口部と前記第二の開口部は、前記基板の厚み方向で見た平面視において前記第一の弾性部材の重心を通る直線に対して線対称に配置され、
    前記第三の開口部と前記第四の開口部は、前記平面視において前記第二の弾性部材の重心を通る直線に対して線対称に配置されている
    ことを特徴とする触覚センサー素子。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の触覚センサー素子において、
    前記基板は、さらに第五の開口部、第六の開口部、第七の開口部および第八の開口部を有し、
    前記支持膜は、さらに前記第五の開口部、前記第六の開口部、前記第七の開口部および前記第八の開口部を覆い、
    前記支持膜上、かつ前記第五の開口部の上方に配置された第五の検出部と、前記支持膜上、かつ前記第六の開口部の上方に配置された第六の検出部と、前記支持膜上、かつ前記第七の開口部の上方に配置された第七の検出部と、前記支持膜上、かつ前記第八の開口部の上方に配置された第八の検出部と、をさらに備え、
    前記第一の弾性部材は、前記基板の厚み方向で見た平面視において、少なくとも、前記第一の検出部、前記第二の検出部、前記第五の検出部、前記第六の検出部、並びに前記第一の検出部と前記第二の検出部と前記第五の検出部と前記第六の検出部とを頂点とする第一の4角形領域の支持膜の上を覆い、
    前記第二の弾性部材は、前記基板の厚み方向で見た平面視において、少なくとも、前記第三の検出部、前記第四の検出部、前記第七の検出部、前記第八の検出部、並びに前記第三の検出部と前記第四の検出部と前記第七の検出部と前記第八の検出部とを頂点とする第二の4角形領域の支持膜の上を覆い、
    前記前記第五の検出部、前記第六の検出部、前記第七の検出部および前記第八の検出部の検出部のそれぞれは、前記支持膜側から順に下部電極、圧電体および上部電極が積層されて構成された圧電積層部を備え、
    前記平面視における前記第一の弾性部材の重心は、前記平面視における前記第一の4角形領域に位置し、
    前記平面視における前記第二の弾性部材の重心は、前記平面視における前記第二の4角形領域に位置し、
    前記平面視において前記第一の開口部の重心と前記第五の開口部の重心とを結ぶ線分と、前記第二の開口部の重心と前記第六の開口部の重心とを結ぶ線分とは離間しており、
    前記第一の検出部および前記第五の検出部は、電気的に直列に接続され、かつ
    前記第二の検出部および前記第六の検出部は、電気的に直列に接続されており、
    前記平面視において前記第三の開口部の重心と前記第七の開口部の重心とを結ぶ線分と、前記第四の開口部の重心と前記第八の開口部の重心とを結ぶ線分とは離間しており、
    前記第三の検出部および前記第七の検出部は、電気的に直列に接続され、かつ
    前記第四の検出部および前記第八の検出部は、電気的に直列に接続されている
    ことを特徴とする触覚センサー素子。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれかに記載の触覚センサー素子において、
    前記第一の弾性部材の表面に前記基板面と平行な表面を有し、前記第一の弾性部材よりも剛性が大きい第一剛性層が配置され、
    前記第二の弾性部材の表面に前記基板面と平行な表面を有し、前記第二の弾性部材よりも剛性が大きい第二剛性層が配置される
    ことを特徴とする触覚センサー素子。
  6. 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の触覚センサー素子と、
    前記第一の検出部、前記第二の検出部、前記第三の検出部および前記第四の検出部の各々から電気信号を受信して当該電気信号の極性に基づいて、前記第一の弾性部材および前記第二の弾性部材に作用する剪断力を検出する処理部と、を備える
    ことを特徴とする触覚センサー装置。
  7. 請求項4に記載の触覚センサー素子と、
    前記第一の検出部および前記第五の検出部からの電気信号と、前記第二の検出部および前記第六の検出部からの電気信号と、前記第三の検出部および前記第七の検出部からの電気信号と、前記第四の検出部および前記第八の検出部からの電気信号を受信して当該電気信号の極性に基づいて、前記第一の弾性部材および前記第二の弾性部材に作用する剪断力を検出する処理部と、を備える
    ことを特徴とする触覚センサー装置。
  8. 請求項6または請求項7に記載の触覚センサー装置を備えて、対象物を把持する把持装置であって、
    前記対象物を把持するとともに、前記対象物に接触する接触面に前記触覚センサー装置が配置される少なくとも一対の把持アームと、
    前記触覚センサー装置から出力される前記電気信号に基づいて、前記対象物のすべり状態を検出する把持検出手段と、
    前記すべり状態に基づいて、前記把持アームの駆動を制御する駆動制御手段と、
    を備えることを特徴とする把持装置。
  9. 請求項6または請求項7に記載の触覚センサー装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021081265A (ja) * 2019-11-18 2021-05-27 凸版印刷株式会社 触覚センサー、センシング装置および状態再現装置

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