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JP2013036421A - 気泡リフトシステム、及び、気泡リフト方法 - Google Patents

気泡リフトシステム、及び、気泡リフト方法 Download PDF

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JP2013036421A
JP2013036421A JP2011174249A JP2011174249A JP2013036421A JP 2013036421 A JP2013036421 A JP 2013036421A JP 2011174249 A JP2011174249 A JP 2011174249A JP 2011174249 A JP2011174249 A JP 2011174249A JP 2013036421 A JP2013036421 A JP 2013036421A
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雅樹 川瀬
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Abstract

【課題】ライザー管途中の浅水深領域でも遠心分離した気泡を脱気する脱気装置を設け、ライザー管の内部全体で、より均等に気泡を分布させ、効率よく大水深領域でも採用可能な気泡リフトシステム及び気泡リフト方法を提供する。
【解決手段】ライザー管11の上側部分に、ライザー管11の内部を上昇する混合流体に旋回流を生じさせて遠心力効果によって気泡及び気体を回転中心に集めると共に、集めた気泡及び気体を回転中心に開口部を設けた脱気管14cからライザー管11の外部に排出する脱気装置14を設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、水深の深い海底、湖底、川底等の水底、あるいは、更に水底の下の地中の砂、堆積物、鉱物等の固形状物質や液体状物質を水面上まで引き上げるための気泡リフトシステム、及び、気泡リフト方法に関するものである。
海水よりは若干軽い重質油を自噴圧力に乏しい海底油田から効率的に引き上げるために、ガスリフト技術が原油生産に広く利用されている。この技術は、ライザー管内部の液体中に、質量が相対的に無視できるほど小さい気体を注入することによって、その体積割合分だけ管内の液柱圧力を下げ、ライザー管の下端部において、ライザー管の外部の海水による圧力や油層圧力による押し込み力を発生させる技術である。比重の大きい鉱物などにおいても、細かく砕いて海水等と混ぜたスラリーとすることで気泡リフト(エアリフト、あるいは、ガスリフトを含む)技術を有効に使用できることが確認されている。
このような例として、例えば、海、湖、ダム、貯液タンクの底に沈殿して圧縮された土砂・汚泥等の堆積物の除去ができ、かつ、揚液能力が高い効率的な装置を目的にした、内部を水と空気が上昇するためのエアリフトライザー(ライザー管)、および、エアリフトライザーの底部に設けられた、気泡が混合された水を噴出するためのバブル噴流発生装置とからなるバブル噴流式エアリフトポンプ等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このような比重が周囲の液体(海水や水)と比べかなり大きいスラリーや土砂や汚泥など(以下、まとめてスラリーという)の場合には、相当量の気泡を注入しないと管内のスラリーと気体からなる混合流体の平均比重を周囲の液体以下にすることができず、ライザー管内に上昇流を発生することができないので、ライザー管の下端部における内外の圧力差による押し込み力を発生することができない。
一方、大水深領域、中水深領域でライザー管内に注入した気泡は、気泡とスラリーからなる混合流体が浅水深領域に上昇して、その圧力が低下するにつれて、気泡の体積が増加するが、液体や固体の体積は殆ど増加しないので、この気泡の混合流体中の体積の割合は加速度的に増加する。その結果、ライザー管の上端部に近づくにつれて上昇流の流速が大きくなり過ぎたり、混合流体中の引き上げ対象物の量の割合が相対的に下がって、引き上げ効率が悪化したり、最悪の場合は、引き上げ対象物を全く引き上げることができなくなったりするなどの問題が起こる。この問題は、気泡の体積と水深との関係が略反比例の関係にあるためであり、引き上げ対象物が存在する水深が大きい程顕著であり、しかも、ライザー管内の上下位置に関しては気泡が浅水深領域に浮上してきたところで顕著に起こる。
例えば、気泡リフトで、海底100mから引き上げ対象物を引き上げる場合、ライザー管の下端部で注入した気泡は、ライザー管の上端部でも10倍の体積にしかならない。しかし、水深5,000mの海底から引き上げ対象物を引き上げる場合では、ライザー管の下端部で注入した気泡の体積は、ライザー管の上端部では500倍にもなる。これをより詳細に見てみると、水深5,000mで注入された気泡の体積は水深4,000mまで浮上する間では、25%しか増加しないが、水深1,000mになると5倍に増加し、水深100mでは50倍になり、更に、水面近傍では500倍になる。
このため、典型的な例で試算してみると、海水だけを吸い込んでしまった場合でもエロージョン等を考慮してライザー管上端での流速が例えば10m/秒を超えないように気泡流量を設定し固定した条件下で海水より重いスラリーを引き上げようとした場合、仮にライザー管内の上端で混合流体中に気泡が占める割合(以下、気泡割合という)を90%以下に抑えようとした場合、周囲の海水よりわずか数パーセント重いスラリーしか引き上げることができない。
また、同じ条件で水深1,000mの海底からスラリーを引き上げる場合においては、最大でも、海水より約2割重たいスラリーまでしか引き上げられない。このため比重の大きい鉱物等を引き上げるためにはスラリー比重が1.2以下になるようにスラリー中の海水割合を保たなければならず、鉱物割合が大きくなってしまうとスタックしてしまうが、そのように深海での混合割合を管理するのは一般に容易ではない。
つまり、従来技術の気泡リフトでは、ライザー管の下側で注入した気泡がライザー管上端近くまで浮上してくると水深に略反比例して体積を増すために、大水深領域では、比重が周囲の海水などより高いものを引き上げるほどの量の気泡を注入することができず、気泡リフトが成り立たないか効率が非常に悪いという欠点があった。
特開2005−291171号公報
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、ライザー管途中の浅水深領域でも遠心分離した気泡を脱気する脱気装置を設け、ライザー管の内部全体で、より均等に気泡を分布させ、効率よく大水深領域でも採用可能な気泡リフトシステム及び気泡リフト方法を提供することにある。
つまり、大水深領域から、周囲の海水等より平均比重の大きいスラリー状等の対象物を引き上げる気泡リフトで、ライザー管内の平均的な液柱圧力を下げるため、有効な量の気泡を、大水深領域又は中水深領域でライザー管内に注入しても、浅水深領域、例えば、ライザー管の上側の1/10程度の部分、すなわち、水深1,000mなら上側の100m程度の部分即ち水面下100m程度から水面近傍までの部分において、気泡の体積が混合流体の体積の例えば90%を超えるような過剰な気泡割合となることを回避できる気泡リフトシステム、及び、気泡リフト方法を提供することにある。
また、更なる目的は、様々な大きさの粒子を含む泥や、小石程度の大きさに砕いた鉱物等を海水に混ぜたスラリー等を、連続的に引き上げる用途で使用できるようにするため、スラリー中の固形物濃度が低下して比重が海水と同じ程度になっても流速がエロージョンが問題になるほどにならず、逆に、スラリーの比重が固形物単体のそれに近づいてもスタックすることのない気泡リフトシステム、及び、気泡リフト方法を提供することにある。
また、更なる目的は、このようなスラリーを扱うために、破損折損、噛り付き、噛みこみ等で機能しなくなる恐れの高い回転機器、遮断弁、圧力調整弁、絞り弁、オリフィス等をライザー管内や受け入れ装置のスラリー系統に配置することがない気泡リフトシステム、及び、気泡リフト方法を提供することにある。
上記の目的を達成するための本発明の気泡リフトシステムは、水底、又は、該水底より下の固形状物質または液体状物質をライザー管を通して水面近傍まで引き上げるために前記ライザー管の下側部分で気体を注入して、この気体を気泡状態で上昇させて、この気泡によるライザー管内の流体柱圧力減圧効果によって前記ライザー管の下端部で引き上げ対象物をライザー管に吸引し、水面上に引き上げる気泡リフトシステムにおいて、前記ライザー管の上端部の近傍の途中に、前記ライザー管内の混合流体に回転を生じさせて遠心力効果によって混合流体中の気泡及び気体を回転中心に集めると共に、該回転中心から気泡及び気体を前記ライザー管の外部に排出する脱気装置を設けて構成される。
この構成により、この脱気装置を、例えば、水深200mの近辺等の適当な位置に設けることで、ライザー管の内部を気泡と共に上昇する混合流体を、渦巻き形状部分(ボリュート部分)で螺旋状に導いて回転を生じさせ、遠心力によって混合流体中の引き上げ対象物を含んだスラリーを外壁に押しつける遠心分離効果で気泡及び気体を回転中心部に集め、その回転中心部に挿入した脱気管(ベント管)から、余剰となっている気泡及び気体を脱気装置でライザー管の外部に排出し、この深度において気体体積を落とすことができる。気泡を減じた後の混合流体は、そこより上部でも効率的に引き上げられるように管内に設けた固定ベーン等によりスラリーと気泡を再度よく混ぜておく。
本発明の脱気装置は、異なる水深に複数個設置し、少量ずつ脱気(ベント)してもよい。この構成により、大水深領域から浅水深領域まで、気泡の占める体積の割合を均等化し、ひいては、流体の流速をより均等化することができ、流体の引き上げ効率を最大化することができる。
また、上記の気泡リフトシステムで、前記脱気装置を、前記ライザー管の下側部分で注入する気体注入量に引き込み状況に応じた動的制御を行わなくても済み、かつ、周囲の水だけを吸引しても混合流体の流速が予め設定した範囲に収まり、かつ、前記引き上げ対象物だけを吸引しても、その比重を上回るような設計上限比重を持つように、単数または複数設置するように構成する。
この構成によれば、引き上げ深度や引き上げ対象物の比重等を考慮して、事前の計算シミュレーション等で予め設定した圧力範囲内になるように、脱気装置を単数又は複数設定し、その圧力範囲内になるように、脱気量を調整するだけで、効率的に引き上げ対象物を引き上げることができる。
また、上記の気泡リフトシステムで、前記脱気装置において、前記ライザー管内の混合流体を螺旋状に導くことで回転を生じさせるように構成される。この構成によれば、非常に簡単な構成で旋回流を発生することができる。
また、上記の気泡リフトシステムで、前記脱気装置において、前記ライザー管の外部に排出された気泡又は気体を、前記脱気管に接続された脱気移送管で水面上に導いて大気中に開放するように構成される。この構成よれば、開放される時の圧力が大気圧となるので、脱気移送管内の圧力が低くなり、脱気装置における脱気が容易となる。
また、上記の気泡リフトシステムで、前記脱気装置において、前記ライザー管の外部に排出された気泡又は気体を、前記脱気管に接続された脱気移送管で水面上の圧縮機に導いて再度圧縮して前記ライザー管の下側に送り込むように構成する。この構成により、圧縮に必要なエネルギーを少なくできる。
また、上記の気泡リフトシステムで、前記圧縮機を多段圧縮機で構成し、かつ前記脱気装置を異なる水深に複数設置し、それぞれの前記脱気装置からの前記脱気移送管を前記多段圧縮機の異なる段に導くように構成する。この構成により、大水深領域から浅水深領域まで、気泡の占める体積の割合を均等化し、ひいては、流体の流速をより均等化することができ、流体の引き上げ効率を最大化することができる。その上、圧縮に必要なエネルギーを少なくできる。
また、上記の気泡リフトシステムで、前記脱気移送管において、水面上に圧力調整弁、絞り弁、オリフィス等を設けておくことで、水面上において脱気量を制御するように構成される。
これによれば、水深の深い海底、湖底、川底等、あるいは、さらにその下の地中から砂、堆積物、鉱物等の固形物を引き上げる場合には、一般に困難と考えられている、スラリー中の固形物と海水との混合割合の制御を不要とし、スラリーの比重等が時々刻々と変化する状況に対応することができる。
理想的には、ある一定の気泡注入量を保ったままで、海水のみを引き込んでしまった場合でもライザー管上端の混合流体の流速が設計最大流速内に収まり、かつ、固体ばかりを引き込んでしまってもスタック(立ち往生)することなく引き上げられる性能が望まれる。
本発明によれば、各脱気装置における脱気量を制御できるので、設計比重より軽いスラリーを引き込んでも過剰に流速が上がることがない。例えば、水深5, 000mでの気泡リフトで比重が海水の2倍を超える固形物を引き上げる場合に、スラリー中の海水濃度が100%になっても、また、固形物の濃度が100%になっても、気泡注入量の設定量を固定したままでの連続運転が実用的に可能となる。
また、上記の気泡リフトシステムで、前記脱気装置において、前記脱気管に、前記ライザー管の管内外の圧力差により作動する圧力逃がし弁を設け、該圧力逃がし弁により脱気量を制御して、前記ライザー管内の圧力を調整するように構成される。この構成によれば、脱気装置の脱気管に、ライザー管内外の圧力差が例えば当初と同じ5気圧で開閉する圧力逃がし弁を設けておくことで、より多くの気泡をライザー管の下側部分から注入しても、その気泡の体積がライザー管上部で過剰になる前に、脱気装置のある深度において当初と同様に、5気圧の圧力差になるまで気泡を排出することができる。
上記の目的を達成するための本発明の気泡リフト方法は、水面近傍から、水底、又は、該水底より下にライザー管を降下させて、前記ライザー管の下側に気体を気泡状にして注入して上昇させ、この気泡による前記ライザー管内の流体柱圧力減圧効果によって、前記ライザー管の下端近傍で集められた引き上げ対象物をライザー管の下端側で吸引し、前記ライザー管の上端に設けられた受け入れ装置に引き上げ対象物を含む混合流体を引き上げる気泡リフト方法において、前記ライザー管の上側に設けられた脱気装置により、混合流体中の気泡又は気体の一部を脱気することを特徴とする。
この方法によれば、ライザー管の上端近傍における混合流体中の気泡又は気体の体積の割合の増加をより抑制することができる。また、注入空気量に対して、引き込み状況に応じた動的制御をかけなくても、また、海水だけを引き込んでしまっても(比重が最低になってしまう)流速が設計範囲におさまり、更に、比重の大きい固形分ばかりを引き込んでしまっても設計上限比重におさまるようにすることができる。
本発明の気泡リフトシステム、及び、気泡リフト方法によれば、ライザー管の途中に脱気装置を設けることにより、その最大気泡割合が発生する場所をライザー管上端部だけでなく、浅水深領域に複数個所設定することができるため、大水深領域から浅水深領域までのライザー管全体で気泡の占める体積の割合を均等化できるので、最大流速を上げることなく気泡の割合を平均的に高くすることができる。
これにより、ライザー管内全体の流速、特に、ライザー管の上端部における流速を大幅に抑えることができるため、エロージョンの問題を激減することができ、ライザー管そのものやその上端から下流のプロセスへのつなぎこみ部分等に、より硬度の低い金属を使用したり、プラスチック、エラストマーなどの軽量材料や耐食性材料を使用したり、コーティングやライナー材料、防振性材料、振動減衰性材料や撓みを吸収できる弾性材料等を使用したりすることが可能となる。
その結果、軽量ライザー管の使用でより大水深に対応できる効果や、安価な耐食性コーティングやライナーの使用によるコストダウン効果、材料変更により波周期との縦振動共振や渦励起振動等を回避する効果を奏することができるようになる。また、肉厚の薄い金属板を内面に使用するフレキシブルライザーやベローズの使用等が可能となり、高価で複雑なライザーテンショナーやテレスコーピックジョイント等を不要にすることができる。
また、これにより、ライザー管内の流速が均等化されるため、ライザー管内の流れの脈動による問題や、スラリーと気泡の2相流の流動様式 (気泡流、スラグ流、環状流、噴霧流等)の変移の問題、停滞によるスラリー中の固液分離の問題などを解決し、長大なライザー管を効率的に実現できる。
これにより、従来技術の場合よりも、飛躍的に深い大水深においても、気泡リフトシステムによる引き上げ対象物の引き上げが可能になり、より比重の高い対象物の引き上げが可能になる。また流速の二乗に略比例する圧力損失を低減して効率的な引き上げが可能となる効果がある。例えば水深5,000mでの気泡リフトで、海水の2倍を超える比重の流体の引き上げが実用的に充分可能となる。
そして、大水深領域での引き上げ作業を、本発明の気泡リフトシステム及び気泡リフト方法で行うことにすると、深海部や中間水深部のポンプ等、動力や制御を必要とする高機能部品や重量部品を不要にすることができ、また、気泡によりライザー管内の混合流体の比重を周囲の海水や水等の液体の比重以下に下げるため、ライザー管の自重と流体重量、潮流力などの合力を支えるリグに必要な設計荷重を大幅に抑えることができる。
また、引き上げ作業中に海象状態が荒れた時には離脱が必要になるが、本発明の気泡リフトシステム及び気泡リフト方法によれば、従来技術のドリリングリグと全く同様にライザー管を引き上げるだけで、離脱することが可能となる。また、万一の非常時には船体外の部品は切り離して離脱し、切り離した物が回収不能となるような事態が生じても、高価な高機能部品等が切り離される可能性を排除するか最低限にすることができる。
更に、比較的細くかつ下端から上端まで同じ径のライザー管で効率よく引き上げが可能となるため、従来技術のドリリング船のライザー管やライザー管をハンドルするドリルリグシステムをそのまま使用しながら、大水深領域での引き上げを実現できる。そのため、開発コストを大幅に削減できる。
本発明に係る実施の形態の気泡リフトシステムの構成を模式的に示す図である。 脱気装置の構成を模式的に示す図である。 加圧チャンバー、遡上堰等を備えた受け入れ装置の構成を模式的に示す図である。 加圧チャンバーの設定圧力と引き上げられるスラリーの最大比重との関係を示す図である。 加圧チャンバーの設定圧力で引き上げられるスラリーの最大比重と水深の関係を示す図である。
以下、本発明に係る実施の形態の気泡リフトシステム、及び、気泡リフト方法について説明する。ここでは、海洋で、ドリルシップを用いて海底の資源を引き上げる例で説明するが、本発明は、海洋に限定されず、湖、川等でも適用可能である。
本発明に係る実施の形態の気泡リフトシステム10は、図1に示すような構成をしている。海面(水面)2に浮かぶドリルシップ(掘削船)1で、海底(水底)3または海底3の下にある資源を引き上げるのに使用されるシステムであり、ライザー管11、捕集装置12、気体送入装置13、脱気装置14、受け入れ装置20を備えて構成される。
この気泡リフトシステム10は、海底、湖底、川底等の水底、又は、該水底より下の砂、堆積物、鉱物等の固形状物質または液体状物質(引き上げ対象物)をライザー管11を通して水面2近辺まで引き上げるためにライザー管11の下側部分で気体を注入して上昇させ、この気体によるライザー管内の流体柱圧力減圧効果によって、ライザー管11の下端部で引き上げ対象物を周囲の水と共にライザー管11に吸引し、引き上げ対象物を水、気体と共に水面2上の引き上げるシステムである。
このドリルシップ1には、大水深の海底の堆積物を引き上げるために、自動船位保持システムを備えたドリルシップを使用する。また、気泡リフトシステム10のライザー管11として、ドリルシップ1のライザー管を利用する。このドリルシップ1のライザー管は、通常、ドリリングマッドを使用する工法を用いた掘削時にドリリングマッドを回収するため使用される。なお、ドリルシップ1の備えるドリリングリグの掘削機能自体は使用しなくて済む。
このライザー管11は、例えば、内径50cm、長さ27m程度の短管をフランジで多数連結して構成される。このライザー管11の流速が比較的高い浅水深領域ではエロージョンに強い材質を使用し、中水深領域や大水深領域では軽量材料を使用することが好ましい。このライザー管11には、下端に捕集装置12が設けられ、下側に気体送入装置13が、上側に脱気装置14が、それぞれ単数又は複数個所に設けられる。このライザー管11の上端側は受け入れ装置20の加圧チャンバー21に接続される。その他、ライザー管11の最下端や中間部では、必要に応じて、補助的なポンプや粉砕機等を併用してもよい このライザー管11の下端部には、ストレーナー等の捕集装置12を設ける。この気泡リフトシステム10では、最小限の装備でよいので、ロワーマリンライザーパッケージ(LMRP)等のような重量物、高機能部品は不要になり、その重量の分だけ、ライザー管11を長くすることができるので、より深い水深に対応することができるようになる。また、潮流力等に対抗して安定性を得るために、大水深部において、ライザー管11に浮力を与える浮力体(図示しない)を減らすことが考えられる。
ライザー管11の下側部分に設けた気体送入装置13に、気泡リフト用の圧縮空気を送るための配管として、通常は、ライザー管11の本管の外側に、噴出防止装置のために使用するキルライン、チョークラインと呼ばれる細管を配置及び保持しているので、これらと同様に配置及び保持される高圧細管を使用する。また、気体送入装置12は、圧縮空気をライザー管11の内部に注入するエアリフトバルブがついた特別仕様の短管で構成され、この気体送入装置13としての短管は、大水深部、中水深部で使用される短管の数本に使用される。
また、図2に示すような、脱気装置14を設けた特別仕様の短管を、浅水深部に使用される短管のうち数本に使用する。この脱気装置14は、外壁14a、渦巻き状配管14b、脱気管14c、及び、脱気移送管(ベント専用管)14dを備えて構成される。なお、脱気移送管(ベント専用管)14d、の代わりに圧力逃がし弁を設ける場合もある。図2では、白丸は、気泡を示し、クロスのハッチングが施された部分は、例えば海水と対象物(砂、砕いた鉱物など)の混合したスラリーを示し、シングルのハッチングが施された部分は海水のみの部分を示し、白い部分は気体部分を示す。
外壁14aはライザー管11の本管よりも太径に形成され、円筒部と、その下側の下側テーパー部と、円筒部の上側の上側テーパー部とから構成される。この外壁14aの内部に渦巻き状配管14bの全部と脱気管14cの一部を収容すると共に、下側のライザー管11の短管から流入してくる混合流体の旋回流を内包できる大きさに形成される
渦巻き状配管14bは、その下端が下側のライザー管11の本管に接続され、外壁14aの下側テーパー部の内側に沿って螺旋状に配置されている配管であり、外壁14aの円筒部に入った所に開口部がある。この渦巻き状配管14bから流出する混合流体は外壁14aに沿って旋回流を形成するように構成される。つまり、ライザー管11内の混合流体を螺旋状に導くことで旋回流を生じさせる。
脱気管14cは、外壁14aの円筒部の断面に関しての中心部分に開口を持ち、外壁14aを貫通して外部に出る配管で構成される。この脱気管14cは、ライザー管11の本管の外側に設けられた脱気移送管(ベント専用管)14dに接続される。
つまり、この脱気装置14は、ライザー管11の上側部分に、すなわち、ライザー管11の上端の近傍の途中に、ライザー管11の内部を上昇する混合流体に旋回流を生じさせて遠心力効果によって気泡を回転中心に集めると共に、集めた気泡をこの回転中心に開口部を設けた脱気管14cからライザー管11の外部に排出するように構成される。
この脱気装置14により、ライザー管11の内部を気泡と共に上昇する混合流体を巻貝形状の渦巻き状配管(ボリュート)14b内で螺旋状に導いて回転を生じさせ、遠心力によってスラリー等の引き上げ対象物を外壁14aに押しつける遠心分離効果で、気泡を回転中心部に集め、その回転中心部に挿入した脱気管14cから、過剰な気泡を脱気装置14の外部に排出することができる。
この脱気装置14において、ライザー管11の外部に排出された気泡又は気体は、脱気管14cに接続された脱気移送管14dで水面2上に導いて大気中に大気圧下で解放してもよいが、脱気管14cに接続された脱気移送管14dで加圧チャンバー21の内部に導いて加圧下で解放してもよい。この場合には、排出された気体を大気圧まで膨張させずに、加圧チャンバーで分離された気体とともに圧縮機に循環させてエアリフト用の気泡として再利用することにより、圧縮に必要なエネルギーを少なくすることができる。
更に、脱気移送管14dに、加圧チャンバーや圧縮機に流入する脱気量を調節できるよう、水面上に圧力調整弁、絞り弁、オリフィスを設けてもよい。この構成により、必要に応じて水面上で脱気量を調節することができる。
また、ライザー管11の下側に圧縮空気を注入するために、空気を圧縮する圧縮機を多段圧縮機構成し、加圧チャンバー21で分離された空気(気体)を圧縮してライザー管11の下側に再度送り込むように構成し、脱気装置14で脱気管14cによりライザー管11の外部に排出された気泡又は気体を、脱気管11cに接続された脱気移送管11dで多段圧縮機の前記加圧チャンバーからの気体より高圧段に導くようにする。これにより、排出された気体をより高い圧力のまま圧縮機に回して、気泡リフト用の気泡として再利用することにより、圧縮に必要なエネルギーを更に少なくできる。
ライザー管11の上端に加圧チャンバー21を設けることで、ライザー管11の内部の圧力が管外の水圧より高くなるという固有の現象を利用できるようになるので、脱気装置14を、加圧チャンバー21の効果によりライザー管11の管内の圧力が管外の圧力より高くなっている浅水深領域に設け、内外の圧力差を利用して気泡又は気体をライザー管11の外部の海中(水中)に排出してもよい。この場合は、脱気移送管14dを不要にすることができる。
更に、脱気管14cに、ライザー管11の管内外の圧力差により作動する圧力逃がし弁14eを設け、この圧力逃がし弁14eにより脱気量を制御して、ライザー管11内の圧力を調整するように構成する。この構成によれば、非常に単純な構成で、ライザー管11内の圧力を調整することができる。
更に、脱気装置14で、気泡を減じた後の混合流体を、気泡を減じた部分より上側でも効率的に上昇できるように、ライザー管11の内部に固定ベーン等を設けて、引き上げ対象物と気泡と海水を再度よく混合することが好ましい。
この脱気装置14は水深を異ならせて複数個所(図1では2個所)に設けて、複数の段階で徐々に脱気(ベント)するようにしてもよい。この構成により、ライザー管11の内部を上昇する混合流体中の気泡の占める体積割合を、大水深域から浅水域まで、略均等化し、ひいては、混合流体の流速をより均等化することができ、流体の引き上げ効率を最大化することができる。
この構成により、例えば、水深200mの近辺等の適当な位置に、脱気装置14を設けて、脱気管14cに、ライザー管11の内外の圧力差が例えば当初と同じ5気圧で開閉する圧力逃がし弁14eを設けておくと、より多くの気泡をライザー管の下側部分から注入しても、その気泡の体積がライザー管上部で過剰になる前に、水深200mの位置で、当初と同等に内外の圧力差が5気圧になるまで、脱気装置14内の気泡を外部に排出することができる。
図3に示すように、ライザー管11の上端部にあたるドリルシップ1上には、加圧チャンバー21、多段の遡上堰22A、22B、22C、分離用タンク23、Uシール液体補給ポンプ24、Uシール液体補給管25、Uシール液体溜まり26、Uシール(エアトラップ)27A、27B等からなる受け入れ装置(引き上げ対象物受け取りシステム)20と、気泡リフト用の圧縮空気を発生する圧縮機(図示しない)等を搭載し、受け入れ装置20の加圧チャンバー21にライザー管11の本管を接続し、気体送入装置12に圧縮空気を送るための圧縮機の送風側の配管がライザー管11の本管の外側に配した高圧細管に接続される。
このライザー管11の上端部に加圧チャンバー21を設けて、ライザー管11の上部の内部を加圧することで、浅水深領域でのライザー管11内を上昇する混合流体における気泡の体積の割合が増加するのを抑制するように構成する。
この加圧チャンバー21の加圧圧力を、ライザー管11の下側部分で注入する気体注入量に引き込み状況に応じた動的制御を行わなくても済み、かつ、周囲の水だけを吸引しても混合流体の流速が予め設定した範囲に収まり、かつ、前記引き上げ対象物だけを吸引しても、その比重を上回るような設計上限比重を持つような予め設定した圧力範囲内の圧力にするように構成する。この構成によれば、引き上げ深度や引き上げ対象物の比重等を考慮して、事前の計算シミュレーション等で予め設定した圧力範囲内に、加圧チャンバー21の加圧圧力を設定し、その圧力範囲内になるように、加圧チャンバー21の加圧圧力を調整するだけで、効率的に引き上げ対象物を引き上げることができる。
また、この加圧チャンバー21の圧力は、ライザー管11の下端部の水圧の1/50以上1/3以下、より好ましくは、1/50以上1/10以下の圧力に調整することが好ましい。この圧力が1/50より小さいと、加圧チャンバー21による気泡の体積の抑制効果が少なくなり、加圧チャンバー21を設けることに対するメリットがなくなる。また、この圧力が1/3より大きいと、加圧チャンバー21の耐圧性能が大きくなり、圧縮機の必要能力が大きくなる一方でそれ以上の引き上げ能力の向上は望めない。また、上限値を1/10にすることで、加圧チャンバー21の耐圧性能を低くすることができ、受け入れ装置20全体をコンパクトにすることができ、かつ、必要に応じ脱気システムの併用により十分な引き上げ性能を得られる。
また、図3に示すように、加圧チャンバー21を、サイクロン形状にして、ライザー管11からの混合流体を接線方向から加圧チャンバー21内に導入するように構成することで、旋回流を発生し、この混合流体の流速を利用した遠心分離効果により気体と等の引き上げ対象物を含んだスラリーを分離する分離器としての機能を持たせることができる。この場合にも、分離された気体Aを、加圧チャンバー21の頂部から抜き出して、大気圧にして膨張させることなく、加圧したまま圧縮機に回して気泡リフト用の圧縮空気として再利用することができる。なお、図3では、白丸は、気泡を示し、クロスのハッチングが施された部分は例えば海水と対象物(砂、砕いた鉱物など)が混合したスラリーを示し、シングルのハッチングが施された部分は海水のみを示し、白い部分は気体部分を示す。
また、加圧チャンバー21の圧力を設計範囲内に保つために、加圧チャンバー21の下流に圧力容器22aとこの圧力容器22aに収納されたスラリー管22bとからなる遡上堰22A、22B、22Cを単段又は多段(図3では3段)で設けて構成する。この各段の遡上堰22A、22B、22Cのスラリー管22bの下流の圧力を、スラリー管22bの上端を包含する圧力容器22aの気相部の圧力の制御によって設計範囲に保つように構成する。更に、遡上堰の22A、22B、22Cの圧力容器22aの気相部とUシール27A、27Bの上部とを連通する連通管28A、28Bを設け、この圧力容器22aの気相部の圧力制御を、単段又は複数段設けられた(図3では2段)、液体柱による圧力を利用するUシール27A、27Bにより行うように構成する。
この遡上堰22A、22B、22Cの各スラリー管22bは、前段の加圧チャンバー21や圧力容器22bの下部と連通しており、これらからの導入されるスラリーをスラリー管22bの下部から内部に導いて上部で圧力容器22b内に溢れ出させる。このスラリー管22bの高さとスラリーの比重とより、各段の圧力減少量を調整できる。また、スラリー管22bの下部の圧力は、圧力容器22aの気相部の圧力とスラリー管22bのスラリーの液圧との和になるので、圧力容器22aの気相部の圧力を調整することで、前段の圧力チャンバー21又は圧力容器22bの内部圧力を調整制御できる。
つまり、各遡上堰22A、22B、22Cのある各圧力容器22aの運転圧力は、各圧力容器22a内の気相圧力を制御することで保持することができる。この気相圧力の制御は気相に設けた圧力調整弁等によることもできるが、遡上堰22A、22B、22Cと段数をそろえて、液柱の圧力を利用する多段のUシール27A、27Bによることもできる。この多段のUシール27A、27Bによれば、例えば霧状に舞った砂、泥等による圧力調整弁等のトラブルを回避することができる。
図3に示す構成では、第1段目の遡上堰22Aの圧力容器22aの上部は、連通管28Aで第1段目のUシール27Aの上部と連通し、第2段目の遡上堰22Bの圧力容器22aの上部は、連通管28Bで、第2段目のUシール27Bの上部と連通し、第3段目の遡上堰22Cの圧力容器22aの上部は、開放管28Cで大気開放となっている。
この構成によれば、第3段目の遡上堰22Cの圧力容器22aの内部P3は大気圧Poになっており、第2段目の遡上堰22Bの圧力容器22aの内部の圧力P2は、大気圧Poと第2段目のUシール27Bの液柱の圧力Pbとの和になっている。また、第1段目の遡上堰22Aの圧力容器22aの内部の圧力P1は、圧力P2と第1段目のUシール27Aの液柱の圧力Paとの和になっている。つまり、P3=Po、P2=Po+Pb、P1=P2+Pa=Po+Pa+Pbとなる。従って、Uシール27A、27Bの液柱の圧力Pa、Pbを制御することにより、各圧力容器22a内の圧力P1、P2を制御することができる。
この遡上堰22A、22B、22Cの最終段の遡上堰22Cの出口に、分離用タンク23を接続して設け、引き上げ対象物を含むスラリーを一時的に貯蔵すると共に、引き上げ対象物を沈殿させて海水と分離する。スラリー状の引き上げ対象物自体スラリー状の場合には、沈殿する時間を考慮して下側から沈殿物Bを抜き出す。この沈殿物Bは、分離タンク23の下の方に溜まり、分離タンク23内の自重による圧力で下部の出口から押し出されるが、図示しないスラリーポンプなどで排出してもよい。また、沈殿物Bが除去された液体(海水)Cは、上澄みとなって上部の出口から分離タンク23の外部に排出され、混合物の除去等必要な後処理を行った後、海洋に戻される。また、分離タンク23の上側から液体(海水)の一部をUシール液体補給ポンプ24で排出して、Uシール液体補給管25から液体溜まり26に抜き出す。この液体はUシール27A、27Bの液柱に使用される。
上記の気泡リフトシステム10によれば、海面(水面)2に浮かぶドリルシップ1等の海面上から、海底2または海底2の下にライザー管11を降下させて、ライザー管11の下側に設けられた気体送入装置13に気体を気泡状にして注入して上昇させ、この気体によるライザー管内の流体柱圧力減圧効果によって、ライザー管11の下端に設けられた捕集装置12により集められた引き上げ対象物を、ライザー管11の下端側で吸引し、ライザー管11の上端に設けられた受け入れ装置20に引き上げ対象物を含む混合流体を引き上げる際に、ライザー管11の上端側に設けられた脱気装置14により、混合流体中の気泡又は気体の一部を脱気するとともに、ライザー管11の上端部に設けた加圧チャンバー21によりライザー管11の上端の内部に圧力を掛ける気泡リフト方法を取ることができるので、ライザー管の上端近傍における混合流体中の気泡又は気体の体積の割合の増加を抑制することができる。
また、この加圧チャンバー21の下部に溜まったスラリー等の引き上げ対象物は、加圧チャンバー21の内部の圧力によって押し出され、遡上堰22A、22B、22Cを遡上するが、すなわち、下流の専用の圧力容器22a内に設けられているスラリー管22bを遡上するが、引き上げ対象物を含むスラリーは遡上堰22A、22B、22Cの各スラリー管22bを遡上することにより、その液柱分の圧力を失い、その分減圧されるが、遡上堰専用の圧力容器22aの内部は、その減圧後のスラリーによる圧力と略釣り合うよう、加圧チャンバー21の内部圧力よりも一段低い内部圧力に保たれる。
スラリーは、遡上堰22A、22B、22Cの各スラリー管22bを遡上した後に、各圧力容器22aの内部を落下し、圧力容器22aの底部に溜まったスラリーは、更に下流の次の遡上堰22B又は22Cにある別の圧力容器22aに押し出される。これを繰り返し、引き上げ対象物を含むスラリーによる圧力は最終的には大気圧まで下げられる。
次に、上記の気泡リフトシステムを使用した本発明に係る実施の形態の気泡リフト方法について説明する。この気泡リフト方法は、水面2近傍から、水底、又は、該水底3より下にライザー管11を降下させて、ライザー管11の下側に気体を気泡状にして注入して上昇させ、この気泡によるライザー管11内の流体柱圧力減圧効果によって、ライザー管11の下端近傍で集められた引き上げ対象物をライザー管11の下端側で吸引し、ライザー管11の上端に設けられた受け入れ装置20に引き上げ対象物を含む混合流体を引き上げる方法であり、ライザー管11の上端部に設けた加圧チャンバー21によりライザー管11の上端の内部に圧力をかける方法である。
また、この気泡リフト方法において、ライザー管11の上側に設けられた脱気装置14により、混合流体中の気泡又は気体の一部を脱気する。
上記の構成の気泡リフトシステム10及び気泡リフト方法によれば、引き上げ対象物の引き上げの過程において、破損折損、噛り付き、噛みこみ等で機能しなくなる恐れの高い回転機器、遮断弁、圧力調整弁、絞り弁、オリフィス等をスラリー系統に設ける必要がない。
図4及び図5に計算シミュレーション結果を示す。図4は、加圧チャンバーの設定圧力と引き上げられる混合流体の最大比重との関係を示す図であり、横軸は加圧チャンバーの設定圧力を、縦軸は水深5,000mの気泡リフトでの上限のスラリーの比重を示す。また、図5は、加圧チャンバーの設定圧力で引き上げられるスラリーの最大比重と水深の関係を示す図であり、横軸は水深を、縦軸は加圧チャンバーの設定圧力が20気圧の場合での上限のスラリーの比重を示す。
この計算シミュレーションでは、上記の水底から対象物を引き上げる気泡リフトシステム10で、加圧チャンバー21の圧力と気泡注入量は固定としている。気泡注入量は、スラリー中の水濃度が100%になってしまった場合でもライザー管11の上端での混合流体流速が10m毎秒を超えない上限量に設定している。その設定のままで固形物濃度が上がってスラリーの比重が上がると、流速は下がる、その一方で気泡割合は上がっていく。ライザー管11の上端での気泡割合が90%に達するようなスラリー比重がその気泡リフトシステム10で引き上げられるスラリー比重の実用的な上限であるとする。
図4に、水深5,000mの場合で、加圧チャンバー21の圧力設定を変化させた場合の性能変化を示す。本発明を実施していない場合は、本発明の加圧チャンバー21の圧力が大気圧の場合に相当し、その場合には海水より比重の大きいスラリーは引き上げられないと言ってよいが、本発明の加圧チャンバー21の圧力を20気圧程度に設定すれば海水の1.5倍程度の比重のスラリーを引き上げられることがわかる。更に加圧チャンバー21の圧力を高く設定すれば海水の2倍以上の比重のスラリーを引き上げられることがわかるが、同様の効果は、加圧チャンバー圧力が20気圧のままでも、脱気装置14を1段設けるだけでも得ることができる(図示していない)。
また、図5に、加圧チャンバー21の圧力を20気圧とした気泡リフトシステム10を、様々な水深で使用した場合の性能変化を示す。水深1,000mでは海水の3倍程度の比重のスラリーを引き上げることができ、水深がより深ければ上限比重が小さくなっていくが、水深5,000mでも前述のように水海水の1.5倍程度のスラリーを引き上げられることを示している。
上記の構成の発明の気泡リフトシステム、及び、気泡リフト方法によれば、ライザー管11の上端部に加圧チャンバー21を設けることで、従来技術では、大水深領域、例えば水深5,000mでの気泡リフトは、気泡の占める体積割合がライザー管11の上端部において下端部の500倍にもなるために、現実的には海水よりわずか数パーセント重いスラリーまでしか引き上げることができず、実質不可能であったような場合においても、ライザー管11の上端部で気泡が占める体積割合の増加を実用的な数十倍以下に抑えることができる。
これにより、従来技術の場合よりも、飛躍的に深い大水深においても、気泡リフトシステム10による引き上げ対象物の引き上げが可能になり、より比重の高い対象物の引き上げが可能になる。また流速の二乗に略比例する圧力損失を低減して効率的な引き上げが可能となる効果がある。例えば水深5,000mでの気泡リフトで、海水の2倍を超える比重のスラリーの引き上げが実用的に充分可能となる。
更に、ライザー管11の途中に脱気装置14を設けることにより、その最大気泡割合が発生する場所をライザー管11上端部だけでなく、浅水深領域に複数個所設定することができるため、大水深領域から浅水深領域までのライザー管11全体で気泡の占める体積の割合を均等化できるので、最大流速を上げることなく気泡の割合を平均的に高くすることができる。
これにより、ライザー管11内全体の流速、特に、ライザー管11の上端部における流速を大幅に抑えることができるため、エロージョンの問題を激減することができ、ライザー管11そのものやその上端から下流のプロセスへのつなぎこみ部分等に、より硬度の低い金属を使用したり、プラスチック、エラストマーなどの軽量材料や耐食性材料を使用したり、コーティングやライナー材料、防振性材料、振動減衰性材料や撓みを吸収できる弾性材料等を使用したりすることが可能となる。
その結果、軽量ライザー管の使用でより大水深に対応できる効果や、安価な耐食性コーティングやライナーの使用によるコストダウン効果、材料変更により波周期との縦振動共振や渦励起振動等を回避する効果を奏することができるようになる。また、肉厚の薄い金属板を内面に使用するフレキシブルライザーやベローズの使用等が可能となり、高価で複雑なライザーテンショナーやテレスコーピックジョイント等を不要にすることができる。
そして、大水深領域での引き上げ作業を、上記の構成の気泡リフトシステム10及び気泡リフト方法で行うことにすると、深海部や中間水深部のポンプ等、動力や制御を必要とする高機能部品や重量部品を不要にすることができ、また、気泡によりライザー管11内の混合流体の比重を周囲の海水や水等の液体の比重以下に下げるため、ライザー管11の自重と流体重量、潮流力などの合力を支えるリグに必要な設計荷重を大幅に抑えることができる。
また、引き上げ作業中に海象状態が荒れた時には離脱が必要になるが、上記の構成の気泡リフトシステム10及び気泡リフト方法によれば、従来技術のドリリングリグと全く同様にライザー管11を引き上げるだけで、離脱することが可能となる。また、万一の非常時には船体外の部品は切り離して離脱し、切り離した物が回収不能となるような事態が生じても、高価な高機能部品等が切り離される可能性を排除するか最低限にすることができる。
更に、比較的細くかつ下端から上端まで同じ径のライザー管11で効率よく引き上げが可能となるため、従来技術のドリリング船のライザー管11やライザー管11をハンドルするドリルリグシステムをそのまま使用しながら、大水深領域での引き上げを実現できる。そのため、開発コストを大幅に削減できる。
本発明の気泡リフトシステム、及び、気泡リフト方法によれば、ライザー管の上側部分に、ライザー管の内部を上昇する混合流体に旋回流を生じさせて遠心力効果によって気泡及び気体を回転中心に集めると共に、集めた気泡及び気体を回転中心に開口部を設けた脱気管からライザー管の外部に排出する脱気装置を設けることで、大水深領域における気泡リフトにおいても、ライザー管の上端部で気泡が占める体積割合の増加を実用的な数十倍以下に抑えることができるので、海底熱水鉱床、マンガンノジュール、メタンガスハイドレート、レアアース、レアメタル、コバルトリッチクラスト、ダイヤモンド等の海底資源の採集、砂や砂利等の採集、海洋構造物設置工事等のためのドレッジングなど、海底、湖底、川底やそれより下の地中等から固形物、液体、スラリーを引き上げる全ての産業において利用できる。
1 ドリルシップ
2 海面(水面)
3 海底(水底)
10 気泡リフトシステム
11 ライザー管
12 捕集装置
13 ガス供給装置
14 脱気装置(ベントシステム)
14a 外壁
14b 渦巻き形状部分(ボリュート部分)
14c 脱気管
14d 脱気移送管(ベント専用管)
20 受け入れ装置
21 加圧チャンバー(気体・スラリー分離機能を併せ持つタイプ)
22A、22B、22C 遡上堰
22a 圧力容器
22b スラリー管
23 分離タンク
24 Uシール液体補給ポンプ
25 Uシール液体補給管
26 Uシール液体溜まり
27A、27B Uシール(エアトラップ)
28A、28B 連通管
A ガス(気泡及び気体)
B 固形分
C 液体(海水)

Claims (8)

  1. 水底、又は、該水底より下の固形状物質または液体状物質をライザー管を通して水面近傍まで引き上げるために前記ライザー管の下側部分で気体を注入して、この気体を気泡状態で上昇させて、この気泡によるライザー管内の流体柱圧力減圧効果によって前記ライザー管の下端部で引き上げ対象物をライザー管に吸引し、水面上に引き上げる気泡リフトシステムにおいて、
    前記ライザー管の上側部分に、前記ライザー管の内部を上昇する混合流体に旋回流を生じさせて遠心力効果によって気泡及び気体を回転中心に集めると共に、集めた気泡及び気体を前記回転中心に開口部を設けた脱気管から前記ライザー管の外部に排出する脱気装置を設けたことを特徴とする気泡リフトシステム。
  2. 前記脱気装置を、前記ライザー管の下側部分で注入する気体注入量に引き込み状況に応じた動的制御を行わなくても済み、かつ、周囲の水だけを吸引しても混合流体の流速が予め設定した範囲に収まり、かつ、前記引き上げ対象物だけを吸引しても、その比重を上回るような設計上限比重を持つように、単数または複数設置することを特徴とする請求項1記載の気泡リフトシステム。
  3. 前記脱気装置において、前記ライザー管内の混合流体を螺旋状に導くことで旋回流を生じさせることを特徴とする請求項1又は2に記載の気泡リフトシステム。
  4. 前記脱気装置において、前記ライザー管の外部に排出された気泡又は気体を、前記脱気管に接続された脱気移送管で水面上に導いて大気中に開放することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の気泡リフトシステム。
  5. 前記脱気装置において、前記ライザー管の外部に排出された気泡又は気体を、前記脱気管に接続された脱気移送管で水面上の圧縮機に導いて再度圧縮して前記ライザー管の下側に送り込むように構成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の気泡リフトシステム。
  6. 前記圧縮機を多段圧縮機で構成し、かつ前記脱気装置を異なる水深に複数設置し、それぞれの前記脱気装置からの前記脱気移送管を前記多段圧縮機の異なる段に導くことを特徴とする請求項5に記載の気泡リフトシステム。
  7. 前記脱気装置において、前記脱気管または前記脱気移送管に、前記ライザー管の管内外の圧力差により作動する圧力逃がし弁、圧力調節弁、絞り弁、またはオリフィスで形成される脱気量調整機器を設け、該脱気量調整機器により脱気量を制御して、前記ライザー管内の圧力を調整することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の気泡リフトシステム。
  8. 水面近傍から、水底、又は、該水底より下にライザー管を降下させて、前記ライザー管の下側に気体を気泡状にして注入して上昇させ、この気泡による前記ライザー管内の流体柱圧力減圧効果によって、前記ライザー管の下端近傍で集められた引き上げ対象物をライザー管の下端側で吸引し、前記ライザー管の上端に設けられた受け入れ装置に引き上げ対象物を含む混合流体を引き上げる気泡リフト方法において、前記ライザー管の上側に設けられた脱気装置により、混合流体中の気泡又は気体の一部を脱気することを特徴とする気泡リフト方法。
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