JP2012136994A - 高圧ポンプ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コイル71の径内側に固定コア72が設けられる。固定コア72の吸入弁側に設けられる可動コア73は、吸入弁を開弁方向又は閉弁方向に移動する。固定コア72の第1収容室61及び可動コア73の第2収容室62に収容される第2スプリング22は、可動コア73を吸入弁側に付勢する。固定コア72よりも高硬度に形成されたガイドピン80が、第1収容室61の深部で第2スプリング22を係止する。可動コア73の往復移動に起因して第1収容室61の燃料に発生するキャビティの崩壊により第1収容室61の内壁にエロージョンが生じることをガイドピンにより抑制することができる。
【選択図】図2
Description
電磁駆動部は、コイル、固定コア、可動コアおよびスプリングなどを有する。プランジャの往復移動に伴い、コイルに断続して通電されると、固定コアと可動コアとは当接と離間を高速で繰り返す。これにより、固定コア及び可動コアとの間でスプリングを収容する収容室の燃料に圧力変動が生じる。このため、収容室の燃料にキャビティが生じると、このキャビティの崩壊により収容室の内壁にエロージョンが生じるおそれがある。
特許文献1では、固定コアと可動コアとが当接する端面に表面硬度を高める機械的な処理をすることで、エロージョンを抑制している。
特許文献2では、固定コアと可動コアに設けられたスプリングの収容室と供給通路とを連通する孔(引用文献2の貫通孔17)を可動コアに設けている。これにより、可動コアの往復移動に対する収容室の燃料による圧力抵抗を低減し、可動コアの応答性を高めている。
特許文献2は、収容室と供給通路とを連通する孔を可動コアに設けることで、収容室の圧力変動が低減されると考えられる。しかし、このような孔を可動コアに設けると、可動コアの往復移動に対する収容室の燃料によるダンパ効果が得られなくなる。このため、可動コアと固定コアとが当接する時の衝撃力が増加する。これにより、可動コア又は固定コアが破損するおそれがある。また、可動コアと固定コアとの衝突による作動音の悪化が懸念される。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電磁駆動部のエロージョンを抑制することの可能な高圧ポンプを提供することを目的とする。
固定コアは、通電されることで磁界を発生するコイルの径内側に設けられる。固定コアの吸入弁側に設けられる可動コアは、吸入弁を開弁方向又は閉弁方向に移動する。固定コア及び可動コアの少なくともいずれか一方に設けられた収容室に収容される付勢手段は、可動コアを吸入弁側に付勢する。収容室を有する固定コア又は可動コアよりも高硬度のガイドピンが、収容室の深部で付勢手段を係止する。
コイルに通電されると、固定コア及び可動コアにより形成される磁気回路に磁束が流れ、可動コアは固定コアに磁気吸引される。コイルの通電が停止すると、可動コアは、付勢手段の付勢力により固定コアから離れる。これにより、付勢手段を収容する収容室には可動コアの移動により燃料の圧力変動が生じるので、収容室の燃料内にキャビティが発生する。ガイドピンは、収容室を有する固定コア又は可動コアよりも高硬度であるので、収容室の深部でキャビティの崩壊によりエロージョンが生じることを抑制することができる。
また、固定コア及び可動コアと別体でガイドピンを設けることで、固定コア及び可動コアを磁気特性の優れた磁性体で形成することが可能となる。このため、可動コアの応答性を高めることができる。
エロージョンは、容積の小さい空間を形成する壁面に生じやすい。このため、付勢手段の径外側と収容室の内壁との間に、エロージョンを抑制可能な距離の隙間を設けることで、収容室の内壁にエロージョンが生じることを抑制することができる。
また、収容室の内壁と付勢手段とが摺接することを抑制することができる。
これにより、案内面は、付勢手段の基部側の端部で案内し、付勢手段が伸縮する部分をテーパ状に縮径させることで、両者が摺接して軸方向の伸縮を阻害することなく、付勢手段の径方向の移動を制限する。これにより、付勢手段の伸縮機能を維持すると共に、付勢手段の径外側と収容室の内壁との間に隙間を設けることができる。
また、付勢手段の径内側をテーパ面に沿って凸部に挿入することで、付勢手段をガイドピンに容易に組み付けることができる。
これにより、付勢手段の軸方向の直立性が保たれるので、付勢手段の径外側と収容室の内壁との間の隙間を維持することができる。また、両者の摺接を回避できるので付勢手段の設定荷重特性を維持することができる。
係止側面取り部の軸方向の距離を小さくすることで、係止側面取り部と収容室の内壁との間に形成される略くさび状の空間の容積が小さくなる。このため、係止側面取り部の径外方向に位置する収容室の内壁にエロージョンが生じることを抑制することができる。
これにより、基部による収容室の底壁のフレッティング摩耗が抑制され、ガイドピンの姿勢が保たれる。このため、付勢手段の軸方向の直立性が保たれるので、付勢手段の径外側と収容室の内壁との間の隙間を維持することができる。また、付勢手段の設定荷重を維持することができる。
さらに、ガイドピンを収容室に挿入する際、底側面取り部が収容室の大径穴と小径穴の段差を滑らかに移動するので、ガイドピンを小径穴に容易に組み付けることができる。
これにより、収容室を形成する大径穴の内壁と付勢手段との間に設けられる隙間を大きくし、大径穴の内壁にエロージョンが生じることを抑制することができる。また、付勢手段が大径穴の内壁と摺接することを抑制することができる。
さらに、ガイドピンを収容室に挿入する際、ガイドピンの基部が大径穴を容易に通過するので、ガイドピンを小径穴に容易に組み付けることができる。
これにより、大径穴の内壁と基部の径外方向の外壁との間の微小な略くさび状空間を拡げることなく、小径穴の内壁と基部の外壁とが当接可能になる。したがって、収容室の内壁にエロージョンが生じることを抑制することができる。
これにより、収容室を有する固定コア又は可動コアの磁気特性を維持すると共に、表面硬度を高めることで、収容室の内壁にエロージョンが生じることを抑制することができる。
これにより、基部の外壁と収容室の内壁との隙間が略0になる。したがって、基部の径外側に位置する収容室の内壁にエロージョンが生じることを抑制することができる。
これにより、固定コア又は可動コアのガイドピン嵌合部を所定の内径公差範囲で容易に形成することができる。また、ガイドピンを所定の外径公差範囲で容易に形成することができる。
これにより、ガイドピンの係止面のフレッティング摩耗を抑制することが可能になる。このため、付勢手段の軸方向の直立性が保たれるので、付勢手段の径外側と収容室の内壁との間の隙間を維持することができる。また、付勢手段の設定荷重を維持することができる。
なお、請求項13に係る発明に、請求項2〜12に係る発明を適用してもよい。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による高圧ポンプを図1〜図3に示す。本実施形態の高圧ポンプ10は、内燃機関に燃料を供給する燃料供給系統に設けられる。燃料タンクから汲み上げられた燃料は、高圧ポンプ10により加圧され、デリバリパイプに蓄圧される。そしてデリバリパイプに接続するインジェクタから内燃機関の各気筒に噴射供給される。
ポンプボディ11とプランジャ13について説明する。
ポンプボディ11には、円筒状のシリンダ14が形成されている。シリンダ14には、プランジャ13が軸方向に往復移動可能に収容されている。プランジャ13は、シリンダ14の深部に形成された加圧室121に臨むように設けられている。プランジャ13の加圧室121と反対側に設けられたヘッド17は、スプリング座18と結合している。スプリング座18とオイルシールホルダ25との間には、スプリング19が設けられている。このスプリング19の弾性力により、スプリング座18は図示しないエンジンのカムシャフトの方向へ付勢される。これにより、プランジャ13は、図示しないタペットを介してカムシャフトのカムと接することで軸方向に往復移動する。プランジャ13の往復移動により、加圧室121の容積が変化することで燃料が吸入、加圧される。
ポンプボディ11には、シリンダ14の反対側に、シリンダ側14に凹む凹部203が設けられている。凹部203の周縁には、軸方向に突出する筒状の筒部205が設けられている。筒部205に有底筒状のカバー50が被さることで、ダンパ室201が形成される。
ダンパ室201には、パルセーションダンパ210、第1支持部材211、第2支持部材212及び波ばね213が収容されている。
パルセーションダンパ210は、2枚の金属ダイアフラムから構成され、内部に所定圧の気体が密封されている。パルセーションダンパ210は、2枚の金属ダイアフラムがダンパ室201の圧力変化に応じて弾性変形することで、ダンパ室201の燃圧脈動を低減する。
波ばね213は、第2支持部材212とカバー50との間に設けられている。波ばね213は、第2支持部材212を凹部203の穴110側に押圧している。これにより、第2支持部材212、パルセーションダンパ210及び第1支持部材211がダンパ室201内に固定される。
第1支持部材211は、径方向に燃料を通す孔を有している。これにより、第1支持部材211の内側と外側とを燃料が流れる。
ポンプボディ11には、シリンダ14の中心軸と略垂直に筒部15が設けられている。筒部15の内側に弁ボディ31は収容され、係止部材20によって固定されている。弁ボディ31の内側には、凹テーパ状の円周面を有する第1弁座34が形成されている。
吸入弁35は弁ボディ31の内側に配置されている。吸入弁35は、弁ボディ31の底部に設けられた孔の内壁に案内されて往復移動する。吸入弁35は、第1弁座34から離座することで供給通路100を開放し、第1弁座34に着座することで供給通路100を閉塞する。
ストッパ40には、ストッパ40の軸に対して傾斜する傾斜通路102が周方向に複数形成されている。この傾斜通路102を通り、加圧室121と弁ボディ31の内側の通路とを燃料が流れる。
電磁駆動部70は、フランジ75、コイル71、固定コア72、可動コア73、付勢手段としての第2スプリング22、及びガイドピン80などを有している。
固定コア72、可動コア73及びフランジ75は、例えばフェライト系ステンレスなどの磁性体を磁気焼鈍することで形成され、コイル71が励磁する磁界の磁束が流れる磁気回路を構成している。
この可動コア室74に可動コア73は軸方向に往復移動可能に収容されている。可動コア73は、軸方向に通じる複数の呼吸孔731を有している。呼吸孔731を通じ、可動コア室74内で可動コア73の軸方向の一方と他方を燃料が流通する。
フランジ75の中央に設けられた孔の内壁には、筒状のガイド筒76が固定されている。このガイド筒76の径内側にニードル38が往復移動可能に設けられている。ニードル38は、一方の端部が可動コア73に固定され、他方の端部が吸入弁35の電磁駆動部70側の端面に当接可能である。ニードル38の径外方向の外壁に設けられた切り欠き39を経由し、供給通路100から可動コア室74に燃料が流入する。
固定コア72は、ボビン78の径内側に可動コア73と向き合って配置されている。フランジ75と固定コア72との間に非磁性材料から形成された筒部材79が設けられている。筒部材79は、固定コア72と可動コア73の間に吸引力を生じさせるためのエアギャップへ磁束を通すための固定コア72とフランジ75との間の磁気遮断部に挿入され、外部と遮断された可動コア室74を構成する。
固定コア72の第1収容室61と可動コア73の第2収容室62とに第2スプリング22が収容されている。第2スプリング22は、第1スプリング21が吸入弁35を閉弁方向に付勢する力よりも強い力で、可動コア73を閉弁方向へ付勢している。
固定コア72の第1収容室61は、第1収容室61の深部の小径穴63と、この小径穴63より収容室の開口側で小径穴63より内径の大きい大径穴64から形成されている。
基部81は、第1収容室61の小径穴63の内壁にゆるみばめにより嵌合している。基部81の軸方向突部側に形成される係止面83は、ガイドピン80の軸に垂直に形成され、第2スプリング22を係止している。
凸部82の案内面84よりも基部81と反対側にテーパ面85が設けられている。テーパ面85は、第2スプリング22の軸方向の伸縮を阻害することなく、第2スプリング22の径方向の移動を制限する。また、テーパ面85が第2スプリング22を案内することで、第2スプリング22を凸部82に容易に挿入することが可能になる。
基部81の係止面83が第2スプリング22を係止し、凸部82の案内面84が第2スプリング22の径内側を案内することで、大径穴64の内壁と第2スプリング22との間に隙間が設けられる。この隙間を大きくすることで、大径穴64の内壁にエロージョンが生じることを抑制することができる。また、大径穴64の内壁と第2スプリング22との摺接を抑制することができる。
基部81の係止面83の径外側に係止側面取り部88が設けられている。係止側面取り部88の軸方向の距離hは小さいことが好ましい。これにより、係止側面取り部88と第1収容室61の内壁との間に形成される略くさび状空間の容積が小さくなるので、第1収容室61の内壁にエロージョンが生じることを抑制することができる。
凸部82は、基部81と案内面84との間で、径内方向に環状に凹む環状凹部89を有する。凸部82と基部81との接続箇所は、切削加工により曲面状に形成される。環状凹部89は、第2スプリング22の端末内径角部が凸部82の付根の隅に加工上でき得るRへの乗り上げを防止している。これにより、第2スプリング22の直立性が維持される。
コイル71に通電されると、固定コア72、可動コア73、フランジ75およびヨーク12によって形成される磁気回路に磁束が流れ、可動コア73が第2スプリング22の弾性力に抗し、固定コア72側に磁気吸引される。これにより、ニードル38は、吸入弁35に対する押圧力を解除する。
プランジャ13は、小径部131及び大径部133を有している。小径部131と大径部133との接続部分に段差面132が形成される。段差面132に向き合うように、略円環状のプランジャストッパ23が設けられている。
プランジャストッパ23は、加圧室121側の端面がポンプボディ11に当接している。プランジャ13は、プランジャストッパ23の中央部に設けられた孔233に挿通している。プランジャストッパ23は、径方向に放射状に延びる複数の溝路232を有している。
プランジャ13の段差面132、小径部131の外壁、シリンダ14の内壁、プランジャストッパ23およびシール部材24に囲まれる略円環状の空間により可変容積室122が形成される。
吐出弁部90は、吐出弁92、規制部材93、スプリング94などから構成されている。
ポンプボディ11には、シリンダ14の中心軸と略垂直に吐出通路114が形成されている。吐出通路114は加圧室121と燃料出口91とを連通している。
吐出弁92は、有底筒状に形成され、吐出通路114に往復移動可能に収容されている。吐出弁92は、第2弁座95に着座することで吐出通路114を閉塞し、第2弁座95から離座することで吐出通路114を開放する。
吐出弁92の燃料出口91側に設けられた筒状の規制部材93は、吐出通路114の内壁に固定されている。規制部材93は、吐出弁92の燃料出口91側への移動を規制する。
スプリング94は、一端が規制部材93に当接し、他端が吐出弁92に当接している。スプリング94は、吐出通路114の内壁に形成される第2弁座95側へ吐出弁92を付勢しており、規制部材93の設置位置によって、ばね荷重を変化させることで後述の吐出弁92の開弁圧を調整することができる。
一方、加圧室121の燃料の圧力が低下し、加圧室121側の燃料から吐出弁92が受ける力がスプリング94のばね力と第2弁座95の下流側の燃料から受ける力との和よりも小さくなると、吐出弁92は第2弁座95に着座する。これにより、第2弁座95の下流側の燃料が加圧室121へ逆流することが防止される。
(1)吸入行程
カムシャフトの回転により、プランジャ13が上死点から下死点に向かって下降すると、加圧室121の容積が増加し、燃料が減圧される。吐出弁92は弁座95に着座し、吐出通路114を閉塞する。吸入弁35は、加圧室121と供給通路100との差圧により、第1スプリング21の付勢力に抗して図1の右方向に移動し、開弁状態となる。このとき、コイル71への通電は停止されているので、可動コア73及びこの可動コア73と一体のニードル38は第2スプリング22の付勢力により図1の右方向に移動する。したがって、ニードル38と吸入弁35とが当接し、吸入弁35は開弁状態を維持する。これにより、供給通路100から加圧室121に燃料が吸入される。
ここで、大径部133と可変容積室122の断面積比は概ね1:0.6である。したがって、加圧室121の容積の増加分と可変容積室122の容積の減少分の比も1:0.6となる。よって、加圧室121が吸入する燃料の約60%が可変容積室122から供給され、残りの約40%が燃料入口から吸入される。これにより、加圧室121への燃料の吸入効率が向上する。
カムシャフトの回転により、プランジャ13が下死点から上死点に向かって上昇すると、加圧室121の容積が減少する。このとき、所定の時期まではコイル71への通電が停止されているので、第2スプリング22の付勢力によりニードル38と吸入弁35は図1の右方向に位置する。これにより、供給通路100は開放した状態が維持される。このため、一度加圧室121に吸入された低圧燃料が、供給通路100へ戻される。したがって、加圧室121の圧力は上昇しない。
このとき、加圧室121がダンパ室201側へ排出する低圧燃料の容積の約60%が、ダンパ室201から可変容積室122に吸入される。これにより、燃圧脈動の約60%が低減される。
プランジャ13が下死点から上死点に向かって上昇する途中の所定の時刻に、コイル71へ通電される。するとコイル71に発生する磁界により、固定コア72と可動コア73との間に磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力が第2スプリング22の弾性力と第1スプリング21の弾性力との差よりも大きくなると、可動コア73とニードル38は固定コア72側(図1の左方向)へ移動する。これにより、吸入弁35に対するニードル38の押圧力が解除される。吸入弁35は、第1スプリング21の弾性力、及び加圧室121からダンパ室201側へ排出される低圧燃料の流れによって生ずる力により、弁座34側へ移動する。したがって、吸入弁35は弁座34に着座し、供給通路100が閉塞される。
なお、加圧行程の途中でコイル71への通電が停止される。加圧室121の燃料圧力が吸入弁35に作用する力は、第2スプリング22の付勢力より大きいので、吸入弁35は閉弁状態を維持する。
コイル71へ通電するタイミングを早くすれば、調量行程の時間が短くなると共に、加圧行程の時間が長くなる。これにより、加圧室121から供給通路100へ戻される燃料が少なくなり、吐出通路114から吐出される燃料が多くなる。
一方、コイル71へ通電するタイミングを遅くすれば、調量行程の時間が長くなると共に、吐出行程の時間が短くなる。これにより、加圧室121から供給通路100へ戻される燃料が多くなり、吐出通路114から吐出される燃料が少なくなる。
このように、コイル71へ通電するタイミングを制御することで、高圧ポンプ10から吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御することができる。
ショットピーニングを施していない固定コア、ショットピーニングを施した固定コア72、第2スプリング22及びガイドピン80について、同一の構成の部材を5個づつ用意した。それぞれの部材について、キャビテーションによる5段階のストレスレベルで繰り返しストレスを与え、各部材の表面に損傷開始が確認された回数をプロットした。
キャビテーションによるストレスが同レベルの場合、ショットピーニングを施していない固定コア、ショットピーニングを施した固定コア72、第2スプリング22の順に損傷開始の回数が増加した。
また、マルテンサイト系ステンレスを焼き入れ加工したガイドピン80は、Eに示すように、キャビテーションによるストレスを最も高くしたときにおいても、約2.8×108回において損傷が確認されなかった。この結果、本実施形態のガイドピン80は、エロージョンが生じる可能性が極めて低いことが確認された。
(1)可動コア73の往復移動により、その離間時には第1収容室61と第2収容室62内の燃料圧力が低下し、燃料中にキャビティが発生する。次に着座時には燃料圧力が上昇し、キャビティが崩壊し、特に第1収容室61の深部にエロージョンが生じるおそれがある。本実施形態のガイドピン80は、第1収容室61を有する固定コア72よりも高硬度であるので、キャビティの崩壊により第1収容室61の深部にエロージョンが生じることを抑制することができる。
また、固定コア72及び可動コア73と別体でガイドピン80を設けることで、固定コア72及び可動コア73を磁気特性の優れた磁性体で形成することが可能となる。このため、可動コア73の応答性を高めることができる。
さらに、第1収容室61と第2収容室62の燃料圧力により、可動コア73と固定コア72とが衝突する時のダンパ効果が維持される。したがって、エロージョン抑制と、可動コア73と固定コア72とが当接する時の衝撃力の緩和を両立することができる。
また、ガイドピン80を第1収容室61に挿入する際、ガイドピン80の基部81が大径穴64を容易に通過するので、ガイドピン80を小径穴63の内壁に容易に組み付けることができる。
また、第2スプリング22の径内側をテーパ面85に沿って凸部82に挿入することで、第2スプリング22をガイドピン80に容易に組み付けることができる。
さらに、ガイドピン80を収容室に挿入する際、底側面取り部87が第1収容室61の大径穴64と小径穴63の段差を滑らかに移動するので、ガイドピン80を小径穴63に容易に組み付けることができる。
(8)ガイドピン80は、第2スプリング22よりも高硬度であるので、ガイドピン80の係止面83のフレッティング摩耗を抑制することが可能になる。このため、第2スプリング22の軸方向の直立性が保たれるので、第2スプリング22の径外側と大径穴64の内壁との間の隙間を維持することができる。また、第2スプリング22の設定荷重を維持することができる。
比較例では、第1収容室610の小径穴630と大径穴640との段差650が基部810の径外側に位置している。このため、基部810と大径穴640との間に環状の微小空間660が形成される。ここで、エロージョンは、圧力伝播によって、第1収容室610の深部、かつ、容積の小さい微小空間660部分に生じやすい。このため、比較例では、基部810の径外側に位置する大径穴640の内壁にエロージョンが生じるおそれがある。
(9)第1収容室61の小径穴63と大径穴64との段差は、ガイドピン80の係止面83よりも開口側に位置する。これにより、大径穴64の内壁と基部81の径外方向の外壁との間に微小空間が形成されることなく、小径穴63の内壁と基部81の外壁とが当接する。したがって、第1収容室61の内壁にエロージョンが生じることを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、ガイドピン80の係止側面取り部88の軸方向の距離hを小さくすることで、係止側面取り部88と小径穴63の内壁との間に形成される空間の容積が小さくなる。このため、係止側面取り部88の径外方向に位置する小径穴63の内壁にエロージョンが生じることを抑制することができる。
本発明の第2実施形態による燃料ポンプの電磁駆動部70を図5及び図6に示す。以下、複数の実施形態において上述した第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、ガイドピン80の基部81が第1収容室61の小径穴63の内壁に圧入されている。ガイドピン80には、軸方向に通じる孔801が設けられている。これにより、ガイドピン80の圧入時に第1収容室61の深部の空気を抜くことができる。したがって、ガイドピン80を小径穴63の内壁に確実に圧入することができる。
本実施形態では、上述した第1実施形態の作用効果に加え、ガイドピン80の基部81の外壁と小径穴63の内壁との隙間を略0にすることが可能になる。したがって、基部81の径外側に位置する小径穴63の内壁にエロージョンが生じることを確実に抑制することができる。
本発明の第3実施形態による燃料ポンプの電磁駆動部70を図7及び図8に示す。本実施形態では、ガイドピン80の基部81が第1収容室61の小径穴63の内壁に圧入されている。ガイドピン80には、径外方向の外壁に平面状の切欠部802が設けられている。この切欠部802と小径穴63の内壁との間に形成される通路67により、圧入時に第1収容室61の深部の空気を抜くことができる。したがって、ガイドピン80を小径穴63に確実に圧入することができる。
本実施形態では、上述した第1、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
本発明の第4実施形態による燃料ポンプの電磁駆動部70の要部拡大図を図9に示す。本実施形態では、固定コア72の第1収容室61の内径は、開口側から深部まで略同一に形成され、大径穴64と小径穴63が設けられていない。
ここで、エロージョンは、段差などの角部に生じることがある。本実施形態では、第1収容室61に段差が形成されないので、第1収容室61の内壁にエロージョンが生じることを更に抑制することができる。
上述した実施形態では、コイル71に通電していないとき、可動コア73が吸入弁35を開弁するノーマリーオープン弁について説明した。これに対し、本発明は、コイルに通電していないとき、可動コアが吸入弁を閉弁するノーマリークローズ弁に適用してもよい。
上述した実施形態では、固定コア72の有する第1収容室61にガイドピン80を設けた。これに対し、本発明は、可動コアの有する第2収容室にガイドピンを設けてもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
11 ・・・ポンプボディ
13 ・・・プランジャ
22 ・・・第2スプリング(付勢手段)
35 ・・・吸入弁
61 ・・・第1収容室(収容室)
62 ・・・第2収容室(収容室)
63 ・・・小径穴
64 ・・・大径穴
65 ・・・段差
70 ・・・電磁駆動部
71 ・・・コイル
72 ・・・固定コア
73 ・・・可動コア
80 ・・・ガイドピン
81 ・・・基部
82 ・・・凸部
83 ・・・係止面
84 ・・・案内面
85 ・・・テーパ面
87 ・・・底側面取り部
88 ・・・係止側面取り部
89 ・・・環状凹部
92 ・・・吐出弁
100 ・・・供給通路
114 ・・・吐出通路
121 ・・・加圧室
Claims (13)
- プランジャと、
前記プランジャの往復移動により燃料が加圧される加圧室を有するポンプボディと、
前記加圧室に供給される燃料が流れる供給通路を開放又は遮断する吸入弁と、
前記加圧室から吐出する燃料が流れる吐出通路を開放又は遮断する吐出弁と、
前記吸入弁の開弁動作又は閉弁動作を制御する電磁駆動部と、を備え、
前記電磁駆動部は、
通電されることで磁界を発生するコイルと、
前記コイルの径内側に設けられる固定コアと、
前記固定コアの前記吸入弁側に設けられ、前記吸入弁を開弁方向又は閉弁方向に移動する可動コアと、
前記固定コア及び前記可動コアの少なくともいずれか一方に設けられた収容室に収容され、前記可動コアを前記吸入弁側に付勢する付勢手段と、
前記収容室を有する前記固定コア又は前記可動コアよりも高硬度であり、前記収容室の深部で前記付勢手段を係止するガイドピンと、を有することを特徴とする高圧ポンプ。 - 前記ガイドピンは、前記収容室の内壁に嵌合すると共に前記付勢手段を係止する基部、及びこの基部から前記収容室の開口側へ延びる凸部を有し、
前記凸部が前記付勢手段の径内側を案内することで、前記付勢手段の径外側と前記収容室の内壁との間に隙間が設けられることを特徴とする請求項1に記載の高圧ポンプ。 - 前記ガイドピンは、
前記基部の軸方向凸部側で前記付勢手段を係止する係止面と、
前記凸部の径外側で前記付勢手段の径内側を案内する案内面と、
前記凸部の前記案内面よりも前記収容室の開口側に設けられるテーパ面と、を有することを特徴とする請求項2に記載の高圧ポンプ。 - 前記ガイドピンの前記凸部は、前記基部と前記案内面との間で径内方向に環状に凹み、前記付勢手段端末内側角部の前記凸部付根隅Rへの乗り上げを回避可能な環状凹部を有することを特徴とする請求項3に記載の高圧ポンプ。
- 前記ガイドピンは、前記基部の前記係止面の径外側に係止側面取り部が設けられ、
前記係止側面取り部の軸方向の距離は、前記係止側面取り部の径外方向に位置する前記収容室の内壁のエロージョンを抑制可能な程度に小さいことを特徴とする請求項3または4に記載の高圧ポンプ。 - 前記ガイドピンは、前記基部の前記凸部と反対側の底面の径外側に底側面取り部が設けられ、
前記底側面取り部と前記基部の前記底面とのなす角部は、前記基部の面圧による前記収容室の底壁の局部磨耗を抑制可能な程度に大きな角度またはR形状を有することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。 - 前記固定コア又は前記可動コアの有する前記収容室は、前記ガイドピンの前記基部が嵌合する小径穴と、この小径穴より前記収容室の開口側で前記小径穴より内径が大きい大径穴とにより形成されることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 前記固定コア又は前記可動コアの有する前記収容室は、前記小径穴と前記大径穴との間に段差を有し、
前記段差は、前記ガイドピンの前記係止面よりも前記収容室の開口側に位置することを特徴とする請求項7に記載の高圧ポンプ。 - 前記固定コア又は前記可動コアの有する前記収容室の内壁にショットピーニングが施されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 前記ガイドピンは、前記基部が前記収容室の内壁に圧入されることを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 前記ガイドピンは、前記基部が前記収容室の内壁にゆるみばめされることを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 前記ガイドピンは、前記付勢手段よりも高硬度であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
- 高圧ポンプの備えるプランジャの往復移動により燃料が加圧される加圧室に吸入又は排出される燃料の流れを断続する吸入弁の開弁動作又は閉弁動作を制御する電磁駆動装置において、
通電されることで磁界を発生するコイルと、
前記コイルの径内側に設けられる固定コアと、
前記固定コアの吸入弁側に設けられ、前記吸入弁を開弁方向又は閉弁方向に移動する可動コアと、
前記固定コア及び前記可動コアの少なくともいずれか一方に設けられた収容室に収容され、前記可動コアを前記吸入弁側に付勢する付勢手段と、
前記収容室の深部に設けられ、前記付勢手段を係止し、且つ前記収容室を有する前記固定コア又は前記可動コアよりも高硬度であり、前記収容室の深部で前記付勢手段を係止するガイドピンと、を有することを特徴とする電磁駆動装置。
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