以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の一実施形態による高圧ポンプおよびその一部を図1〜4に示す。高圧ポンプ10は、例えばディーゼルエンジンやガソリンエンジンのインジェクタに燃料を供給する燃料ポンプである。
図2に示すように、高圧ポンプ10は、ハウジング本体11、カバー12、プランジャ13、弁ボディ30、弁部材40、スプリング21、ニードル49、スプリング22、電磁駆動部70、係止部材60、および皿バネ80などを備えている。
ハウジング本体11およびカバー12は、特許請求の範囲の「ハウジング」を構成している。ハウジング本体11は、例えばマルテンサイト系のステンレスなどで形成されている。ハウジング本体11は、円筒状のシリンダ14を形成している。ハウジング本体11のシリンダ14には、プランジャ13が軸方向へ往復移動可能に支持されている。
ハウジング本体11は、導入通路111、吸入通路112、加圧室113および吐出通路114などを形成している。ハウジング本体11は、筒部15を有している。筒部15は、内部に導入通路111と吸入通路112とを連通する通路151を形成している。ここで、通路151は、特許請求の範囲における「燃料通路」の一部を構成している。当該通路151は、筒部15の内壁である円筒面状の通路壁面152に囲まれることにより形成されている。本実施形態では、筒部15は、通路壁面152の径外方向へ凹むとともに通路壁面152に沿って円環状に形成される係止溝153を有している。通路151の加圧室113側端部は、内径が小さくなっている。これにより、通路151の係止溝153と加圧室113との間に、通路壁面152の径内方向へ環状に延びる環状壁面154が形成されている。通路壁面152の内側、係止溝153と環状壁面154との間に弁ボディ30が設けられている。すなわち、弁ボディ30は、環状壁面154の加圧室113とは反対側に設けられている。
ハウジング本体11とカバー12との間には、燃料室16が形成されている。ハウジング本体11には、燃料室16に連通する図示しない燃料入口が形成されている。燃料室16には、当該燃料入口を通じて、図示しない低圧燃料ポンプによって燃料タンクから燃料が供給される。導入通路111は、燃料室16と筒部15の内周側に形成されている通路151とを連通している。吸入通路112は、一方の端部が加圧室113に連通している。吸入通路112の他方の端部は、環状壁面154の内周側に開口している。導入通路111と吸入通路112とは、図1に示すように弁ボディ30の内周側を経由して接続している。加圧室113は、図2に示すように吸入通路112とは反対側において吐出通路114と連通している。ここで、導入通路111、通路151および吸入通路112は、特許請求の範囲の「燃料通路」を構成している。本実施形態では、当該「燃料通路」を燃料通路100で示している。
プランジャ13は、ハウジング本体11のシリンダ14に、軸方向へ往復移動可能に支持されている。加圧室113は、プランジャ13の往復移動方向の一端側に形成されている。プランジャ13の他端側に設けられたヘッド17は、スプリング座18と結合している。スプリング座18とハウジング本体11に固定されたオイルシールホルダ28との間には、スプリング19が設けられている。スプリング座18は、スプリング19の付勢力により、図示しないカムの方向へ付勢されている。プランジャ13は、図示しないタペットを介してカムと接することにより、往復駆動される。
スプリング19は、一方の端部がオイルシールホルダ28に接し、他方の端部がスプリング座18に接している。スプリング19は、軸方向へ伸びる力を有している。これにより、スプリング19は、スプリング座18を経由して図示しないタペットをカム側へ付勢する。プランジャ13のヘッド17側の外周面と、オイルシールホルダ28との間は、オイルシール23により液密にシールされている。オイルシール23は、エンジン内から加圧室113へのオイルの浸入を防止するとともに、加圧室113からエンジンへの燃料の流出を防止する。
燃料出口91を形成する吐出弁部90は、ハウジング本体11の吐出通路114側に設けられている。吐出弁部90は、加圧室113において加圧された燃料の排出を断続する。吐出弁部90は、逆止弁92、規制部材93およびスプリング94を有している。逆止弁92は、底部921、および底部921から反加圧室113側へ筒状に延びる筒部922からなる有底筒状に形成され、吐出通路114において往復移動可能に設けられている。規制部材93は、筒状に形成され、吐出通路114を形成するハウジング本体11に固定されている。スプリング94は、一方の端部が規制部材93に接し、他方の端部が逆止弁92の筒部922に接している。逆止弁92は、スプリング94の付勢力により、ハウジング本体11が形成する弁座95側へ付勢されている。逆止弁92は、底部921側の端部が弁座95に着座することにより吐出通路114を閉鎖し、弁座95から離座することにより吐出通路114を開放する。逆止弁92は、弁座95とは反対側へ移動したとき、筒部922の反底部921側端部が規制部材93と接することにより移動が規制される。
加圧室113の燃料の圧力が上昇すると、加圧室113側の燃料から逆止弁92が受ける力は増大する。そして、加圧室113側の燃料から逆止弁92が受ける力がスプリング94の付勢力と弁座95の下流側の燃料、すなわち図示しないデリバリパイプ内の燃料から受ける力との和よりも大きくなると、逆止弁92は弁座95から離座する。これにより、加圧室113内の燃料は、吐出通路114、すなわち逆止弁92の筒部922に形成された通孔923、および筒部922の内側を経由して燃料出口91から高圧ポンプ10の外部へ吐出される。
一方、加圧室113の燃料の圧力が低下すると、加圧室113側の燃料から逆止弁92が受ける力は減少する。そして、加圧室113側の燃料から逆止弁92が受ける力がスプリング94の付勢力と弁座95の下流側の燃料から受ける力との和よりも小さくなると、逆止弁92は弁座95に着座する。これにより、図示しないデリバリパイプ内の燃料は、吐出通路114を経由して加圧室113へ流入することが防止される。
弁ボディ30は、図1に示すように通路壁面152の内側、係止溝153と環状壁面154との間に設けられている。弁ボディ30は、係止溝153に嵌め込まれる係止部材60と環状壁面154に設けられる弾性部材としての皿バネ80とにより、通路壁面152の内側で係止されている。係止部材60および皿バネ80については、後に詳述する。
弁ボディ30は、底部31、および底部31から加圧室113側へ筒状に延びる筒部32からなる有底筒状に形成されている。弁ボディ30は、底部31の加圧室113側に、反加圧室113側へ凹む凹部33を有している。底部31の加圧室113側の壁面には、凹部33の外縁に弁座34が形成されている。すなわち、弁ボディ30は、加圧室113側壁面に弁座34を有している。弁座34は、弁ボディ30の軸に対し所定の角度をなすテーパ状に形成されている。
弁ボディ30は、底部31の中央部に第1ガイド部35を有している。第1ガイド部35は、底部31の中央部から反凹部33側へ筒状に突出するように形成されている。弁ボディ30は、第1ガイド部35の凹部33を形成する壁面と反凹部33側の壁面とを接続する第1挿通孔351を有している。また、底部31の第1挿通孔351の外周側には、凹部33を形成する壁面と反凹部33側の壁面とを接続する第1通路121が形成されている。第1通路121は、弁ボディ30の軸に対し周方向に複数形成されている。
弁ボディ30の筒部32の外周壁と通路壁面152との間には、環状のシール部材36およびバックアップリング37が設けられている。シール部材36およびバックアップリング37は、筒部32の外周に形成された環状の溝内に設けられている。シール部材36が筒部32および通路壁面152と密に接することにより、筒部32の外周壁と通路壁面152との間を通じて、加圧室113および導入通路111間で燃料が漏れるのを防止している。
弁部材40は、略円柱状の軸部41、および軸部41の加圧室113側端部に接続する略円盤状の傘部42とからなる。弁部材40は、軸部41が第1ガイド部35の第1挿通孔351に挿通され、弁ボディ30の内側において軸部41の軸方向へ往復移動可能に設けられている。傘部42の弁座34側の壁面は、弁座34の形状に対応し、軸部41の軸に対し所定の角度をなすテーパ状に形成されている。弁部材40は、往復移動することにより傘部42が弁座34に着座または弁座34から離座して燃料通路100を流通する燃料の流れを断続する。また、弁部材40は、傘部42が弁座34から離座しているとき、弁座34との間に環状の第2通路122を形成する。
第1ガイド部35の第1挿通孔351の径は、弁部材40の軸部41の径とほぼ同一、または軸部41の径よりもわずかに大きく形成されている。これにより、弁部材40は、軸部41の外壁が、第1挿通孔351を形成する第1ガイド部35の壁面に摺動しながら、弁ボディ30の内側で往復移動する。そのため、弁部材40は、往復移動するとき、第1ガイド部35によって、その往復移動が案内される。
弁部材40の加圧室113側には、ストッパ50が設けられている。ストッパ50は、筒部51、筒部51の反弁部材40側の端部を塞ぐ底部52、および底部52の径外側に形成される環状の拡張部53からなる。ストッパ50は、弁ボディ30の筒部32の内周壁に拡張部53の外周壁が溶接されて弁ボディ30に固定されている。
ストッパ50と弁部材40との間に、第1付勢部材としてのスプリング21が設けられている。スプリング21は、ストッパ50の筒部51の内側において、一方の端部が底部52に当接し、他方の端部が弁部材40に当接している。スプリング21は、軸方向に伸びる力を有し、弁部材40を、反ストッパ50側すなわち閉弁方向へ付勢している。
ストッパ50の筒部51の弁部材40側端部と弁部材40のストッパ50側端部とは当接可能である。ストッパ50は、弁部材40がストッパ50に当接したとき、弁部材40と筒部51の内壁と底部52とに囲まれた容積室54を形成する。また、このとき、ストッパ50は、弁部材40の、加圧室113側すなわち開弁方向への移動を規制する。
弁部材40がストッパ50の筒部51に当接しているとき、ストッパ50は、弁部材40の加圧室113側を覆っている。これにより、このとき、加圧室113側から弁部材40側へ向かう燃料は、弁部材40への衝突が緩和される。
ストッパ50の拡張部53には、拡張部53の加圧室113側の壁面と反加圧室113側の壁面とを接続する第3通路123が形成されている。第3通路123は、ストッパ50の軸に対し周方向に複数形成されている。
第2通路122と第3通路123との間には、弁ボディ30の筒部32の内周壁とストッパ50の筒部51の外周壁とに囲まれた略環状の中間通路124が形成されている。ストッパ50の筒部51には、容積室54と中間通路124とを連通する連通路55が形成されている。
上述した第1通路121、第2通路122、第3通路123および中間通路124は、それぞれハウジング本体11に形成された通路151に含まれている。すなわち、燃料通路100は、第1通路121、第2通路122、第3通路123および中間通路124を含んでいる。これにより、燃料が燃料室16側から加圧室113側へ向かうとき、燃料は、第1通路121、第2通路122、中間通路124および第3通路123を、この順で流通する。一方、燃料が加圧室113側から燃料室16側へ向かうとき、燃料は、第3通路123、中間通路124、第2通路122および第1通路121を、この順で流通する。
図2に示すように、電磁駆動部70は、コイル71、固定コア72、可動コア73、フランジ75などを有している。コイル71は、樹脂製のスプール78に巻かれており、通電することにより磁界を発生する。固定コア72は、磁性材料から形成されている。固定コア72は、コイル71の内周側に収容されている。可動コア73は、磁性材料から形成されている。可動コア73は、固定コア72と対向して配置されている。可動コア73は、非磁性材料から形成されている筒部材79およびフランジ75の内周側に軸方向へ往復移動可能に収容されている。筒部材79は、固定コア72とフランジ75との間の磁気的な短絡を防止する。
フランジ75は、磁性材料から形成されている。図1に示すように、フランジ75は、ハウジング本体11の筒部15に取り付けられている。これにより、フランジ75は、電磁駆動部70をハウジング本体11に保持するとともに、筒部15の端部を塞いでいる。フランジ75は、中央部に、筒状に形成された第2ガイド部76を有している。第2ガイド部76は、フランジ75の弁ボディ30側と反弁ボディ30側とを連通する第2挿通孔761を有している。
ニードル49は、略円柱状に形成され、フランジ75の第2ガイド部76に形成された第2挿通孔761に挿通されている。ニードル49は、第2挿通孔761の内側において軸方向へ往復移動可能に設けられている。第2挿通孔761の径は、ニードル49の径とほぼ同一、またはニードル49の径よりもわずかに大きく形成されている。これにより、ニードル49は、外壁が、第2挿通孔761を形成する第2ガイド部76の壁面に摺動しながら往復移動する。そのため、ニードル49は、往復移動するとき、第2ガイド部76によって、その往復移動が案内される。
ニードル49は、一方の端部が可動コア73に圧入または溶接されることで可動コア73と一体に組み付けられている。また、ニードル49は、他方の端部が、弁部材40の軸部41の反傘部42側端部と当接可能である。なお、ニードル49は、弁部材40の開弁または閉弁時の移動方向と同一の方向へ移動可能である。
固定コア72と可動コア73との間に、第2付勢部材としてのスプリング22が設けられている。スプリング22は、可動コア73を弁部材40側へ付勢している。スプリング22が可動コア73を付勢する力は、スプリング21が弁部材40を付勢する力よりも大きい。すなわち、スプリング22は、可動コア73およびニードル49をスプリング21の付勢力に抗して弁部材40側、すなわち弁部材40の開弁方向へ付勢している。これにより、コイル71に通電していないとき、固定コア72と可動コア73とは互いに離れている。そのため、コイル71に通電していないとき、可動コア73と一体のニードル49はスプリング22の付勢力により弁部材40側へ移動するとともに、弁部材40は弁ボディ30の弁座34から離座している。電磁駆動部70のコイル71、固定コア72、可動コア73、フランジ75、スプール78および筒部材79は、特許請求の範囲の「コイル部」を構成している。
次に、係止部材60、皿バネ80およびその近傍について説明する。
図1に示すように、本実施形態では、係止部材60は、2つの板部材(板部材61および板部材62)からなる。板部材61および板部材62は、例えばステンレス等の金属により形成され、所定の硬度を有するよう熱処理が施されている。板部材61は、弧状に形成されている。板部材62も、板部材61と同じく弧状に形成されている。板部材61および板部材62は、ハウジング本体11に形成された円環状の係止溝153に嵌め込まれ、かつ、弁ボディ30の加圧室113とは反対側の壁面に当接することで、弁ボディ30を係止可能である。
板部材61および板部材62は、それぞれの端部同士を当接した状態では環状をなす。係止部材60は、この状態のとき、その内周端部に、弁ボディ30側の面から軸方向に所定の距離離れた位置まで凹むようにして形成される環状の段差面を有する。当該段差面と弁ボディ30との間、すなわち係止部材60の内側には、Cリング600が設けられている。
Cリング600は、例えばステンレス等の金属により略C字状に形成されている。Cリング600は、係止部材60の内側に設けられた状態では、径外方向の弾性力を有する。これにより、Cリング600は、係止部材60(板部材61および板部材62)を径外方向へ押圧することで、係止部材60が係止溝153から脱落するのを抑制している。
皿バネ80は、図3(A)に示すように、略円環状に形成されている。皿バネ80は、例えばステンレス等の金属からなる薄板をプレス加工することにより形成されている。皿バネ80は、所定の強度および疲労耐久度を有するよう設計されており、熱処理が施されている場合もある。皿バネ80は、図3(B)に示すように、テーパ状の内壁および外壁をもつテーパ筒部81、当該テーパ筒部81の軸方向の一方の端部から径内方向に円環状に延びる内フランジ部82、および前記テーパ筒部81の軸方向の他方の端部から径外方向に円環状に延びる外フランジ部83からなる。この構成により、皿バネ80は、軸方向の両端部が縮む方向に押圧されたとき、軸方向に伸びる力(弾性力)を有する。なお、本実施形態では、皿バネ80はプレス加工することにより形成されているため、図3(C)に示すように、外フランジ部83とテーパ筒部81との境界部分、および内フランジ部82とテーパ筒部81との境界部分は、比較的滑らかな曲面状に形成されている。
図1および図4(A)に示すように、皿バネ80は、ハウジング本体11に形成された円環状の環状壁面154と弁ボディ30との間に設けられる。皿バネ80の高さ、すなわち軸方向の長さは、弁ボディ30が係止部材60に当接した状態のときの、弁ボディ30と環状壁面154との距離よりも大きく設定されている。そのため、皿バネ80は、弁ボディ30と環状壁面154との間に設けられた状態では、軸方向の弾性力を生じ、弁ボディ30を係止部材60に押し付けている。
この構成により、弁ボディ30は、皿バネ80によって加圧室113とは反対側へ押圧されるとともに、係止部材60に当接することで係止部材60に係止される。そのため、弁ボディ30は、通路壁面152の内側において、その位置が安定する。ここで、皿バネ80が生じる弾性力は、高圧ポンプ10の作動時に加圧室113の圧力が変動しても弁ボディ30が軸方向に移動しない程度の大きさ以上に設定されていることが望ましい。また、係止部材60で弁ボディ30を係止することにより、弁ボディ30が加圧室113とは反対側へ抜け出るのを抑制することができる。
図4(A)および(B)に示すように、弁ボディ30の筒部32の皿バネ80側の端面38には、皿バネ80とは反対側へ凹むようにして形成される連通路301が設けられている。連通路301は、円環状の端面38の径外方向へ延びるようにして形成されている。本実施形態では、連通路301は、端面38の周方向に2箇所、端面38の中心を挟んで互いに略対向する位置に形成されている(図1参照)。
連通路301は、皿バネ80が弁ボディ30と環状壁面154とに接した状態において、皿バネ80の内側と外側とを連通可能である。すなわち、弁ボディ30の皿バネ80側端面38には、皿バネ80の内側と外側とを連通する連通路301が形成されている。
上記構成では、燃料が連通路301を流通することにより、皿バネ80の内側と外側との圧力は、略同じになる。皿バネ80の内側と加圧室113とは、常に連通している。よって、加圧室113の圧力が変動すると皿バネ80の内側の圧力も変動するが、皿バネ80の内側と外側との間で差圧が生じるのが抑制される。
次に、弁ボディ30、係止部材60、Cリング600および皿バネ80のハウジング本体11への組み付けについて、図1に基づいて説明する。
(1)皿バネ80を、ハウジング本体11の環状壁面154に接するようにして設置する。
(2)弁ボディ30、弁部材40、ストッパ50、スプリング21、シール部材36およびバックアップリング37を一体にしたものを、弁ボディ30の加圧室113側端部が皿バネ80に接するよう通路壁面152の内側に挿入する。
(3)板部材61および板部材62の端部同士を当接させた状態の係止部材60を、弁ボディ30の加圧室113とは反対側の端部に接するよう通路壁面152の内側に挿入する。
(4)係止部材60を、皿バネ80の弾性力に抗して加圧室113側へ押圧しつつ、径外方向へ広がるように滑らせ係止溝153に嵌め込む。
(5)Cリング600を、係止部材60の内側に設置する。
上記(1)〜(5)の工程を経てハウジング本体11に組み付けられた弁ボディ30は、皿バネ80によって加圧室113とは反対側へ押圧されるとともに、係止部材60に当接することで係止部材60に係止される。
次に、本実施形態の皿バネ80と比較例の皿バネとの違いについて、図5および6に基づいて説明する。なお、図5では、説明を容易にするため、部材の寸法および形状の特徴を強調して示している。
図5(A)に示すように、比較例の皿バネ900は、一般的な形状の皿バネであり、テーパ状の内壁および外壁をもつテーパ筒部901のみからなる。皿バネ900は、本実施形態の皿バネ80と同様、例えばステンレス等の金属からなる円環状の薄板をプレス加工することにより形成されている。皿バネ900は、軸方向の両端部を例えば面501と面502とに挟まれて軸方向へ縮む方向に押圧されたとき、テーパ筒部901を構成する壁面が内側に倒れるようにして変形する(図5(A)参照)。このとき、テーパ筒部901の軸方向端部は、例えば図5(B)に「変形量」で示した分、潰れるようにして変形する。テーパ筒部901の軸方向端部の、軸を含む平面による断面は、略直角の形状を呈している。そのため、皿バネ900は、テーパ筒部901の軸方向端部が角接触となり、材料の限界面圧になるまで潰れるようにして変形する。皿バネ900は、変形量(軸方向端部が潰れるようにして変形する箇所の変形の量)に対する接触幅(軸方向端部と当接面との接触の幅)が比較的小さいといえる。
一方、本実施形態の皿バネ80は、図5(C)に示すように、テーパ筒部81、内フランジ部82および外フランジ部83からなり、軸方向の両端部を例えば面501と面502とに挟まれて軸方向へ縮む方向に押圧されたとき、テーパ筒部81を構成する壁面が内側に倒れるようにして変形する。このとき、皿バネ80は、外フランジ部83とテーパ筒部81との境界部分が面501に当接し、内フランジ部82とテーパ筒部81との境界部分が面502に当接する(図5(C)参照)。上述のように、本実施形態では、外フランジ部83とテーパ筒部81との境界部分、および内フランジ部82とテーパ筒部81との境界部分は、比較的滑らかな曲面状に形成されている。皿バネ80は、変形量(軸方向端部が潰れるようにして変形する箇所の変形の量)に対する接触幅(軸方向端部と当接面との接触の幅)が比較的大きいといえる。皿バネ80は、曲面状の境界部分が面501に接触することにより、面501から受ける面圧が低減される。
図6(A)は、皿バネ900の軸方向端部が受ける「面圧」と「接触幅」との関係を示した図であって、皿バネ900の面501側端部が面501から受ける「面圧」と「接触幅」との関係を一点鎖線で示し、皿バネ900の面502側端部が面502から受ける「面圧」と「接触幅」との関係を二点鎖線で示している。図6(B)は、同じ材料から形成された本実施形態の皿バネ80および比較例の皿バネ900の、「接触幅」と「変形量」との関係を示した図であって、皿バネ80の「接触幅」と「変形量」との関係を実線で示し、皿バネ900の「接触幅」と「変形量」との関係を破線で示している。
図6(A)および(B)からわかるように、比較例の皿バネ900は、面501側端部が面501から受ける面圧が「限界面圧」のときの面501側端部の変形量が約0.044mm、面502側端部が面502から受ける面圧が「限界面圧」のときの面502側端部の変形量が約0.054mmのため、このときの変形量の合計は、約0.098mmである。一方、本実施形態の皿バネ80は、面501側端部が面501から受ける面圧が「限界面圧」のときの面501側端部の変形量、および面502側端部が面502から受ける面圧が「限界面圧」のときの面502側端部の変形量は、いずれも約0.0005mmのため、このときの変形量の合計は、約0.001mmである。このように、本実施形態の皿バネ80は、比較例の皿バネ900と比べて、軸方向端部が所定の面圧(例えば「限界面圧」)を受けたときの変形量(潰れるようにして変形する箇所の変形の量)が小さい。これにより、皿バネ80の荷重抜けに対するロバスト性を向上することができる。ただし、特性は上記数値のみに限定されるものではない。
次に、上記構成の高圧ポンプ10の作動について説明する。
「吸入行程」
プランジャ13が図2の下方へ移動するとき、コイル71への通電は停止されている。そのため、弁部材40は、電磁駆動部70のスプリング22から力を受けている可動コア73と一体のニードル49により加圧室113側へ付勢されている。その結果、弁部材40は、弁ボディ30の弁座34から離座している。また、プランジャ13が図2の下方へ移動するとき、加圧室113の圧力は低下する。そのため、弁部材40が凹部33側の燃料から受ける力は、加圧室113側の燃料から受ける力よりも大きくなる。これにより、弁部材40には弁座34から離座する方向へ力が加わり、弁部材40は弁座34から離座する。弁部材40は、ストッパ50の筒部51に当接するまで移動する。弁部材40が弁座34から離座、すなわち開弁することにより、燃料室16は、導入通路111、通路151および吸入通路112を経由して加圧室113に連通する。したがって、燃料室16の燃料は、第1通路121、第2通路122、中間通路124および第3通路123をこの順で経由して加圧室113に吸入される。また、このとき、弁部材40は、ストッパ50と当接することにより、加圧室113側がストッパ50で覆われている。さらに、このとき、中間通路124の燃料は、連通路55を通じて容積室54へ流入可能である。そのため、容積室54の圧力は、中間通路124の圧力と同等になる。
「調量行程」
プランジャ13が下死点から上死点に向かって上昇するとき、加圧室113から弁部材40側すなわち燃料室16側へ排出される燃料の流れにより、弁部材40には加圧室113側の燃料から弁座34に着座する方向へ力が加わる。しかし、コイル71に通電していないとき、ニードル49は、スプリング22の付勢力により弁部材40側へ付勢されている。そのため、弁部材40は、ニードル49によって弁座34側への移動が規制される。また、弁部材40は、加圧室113側がストッパ50によって覆われている。これにより、加圧室113から燃料室16側へ排出される燃料の流れが、弁部材40に直接衝突することはない。そのため、燃料の流れにより弁部材40に加わる閉弁方向への力が緩和される。
調量行程においては、コイル71への通電が停止されている間、弁部材40は弁座34から離座した状態を維持する。これにより、プランジャ13の上昇によって加圧室113から排出される燃料は、燃料室16から加圧室113へ吸入される場合と逆に、第3燃料通路123、中間通路124、第2通路122および第1通路121をこの順で経由して燃料室16へ戻される。
調量行程の途中にコイル71へ通電すると、コイル71に発生した磁界により、固定コア72、フランジ75および可動コア73に磁気回路が形成される。これにより、互いに離間している固定コア72と可動コア73との間には磁気吸引力が発生する。固定コア72と可動コア73との間に発生する磁気吸引力がスプリング22の付勢力よりも大きくなると、可動コア73は固定コア72側へ移動する。そのため、可動コア73と一体のニードル49も、固定コア72側へ移動する。ニードル49が固定コア72側へ移動すると、弁部材40とニードル49とは離間し、弁部材40はニードル49から力を受けない。その結果、弁部材40は、スプリング21の付勢力、および、加圧室113から燃料室16側へ排出される燃料の流れにより弁部材40に加わる閉弁方向の力によってストッパ50から離間し弁座34側へ移動する。これにより、弁部材40が閉弁する。
本実施形態では、ストッパ50は、筒部51に中間通路124と容積室54とを連通する連通路55を有している。そのため、筒部51の内壁により形成されている容積室54の圧力は、筒部51の外周側に位置する中間通路124の圧力と同等になる。つまり、中間通路124の圧力が高圧になったとしても、中間通路124の圧力が容積室54の圧力よりも高くなることはない。そのため、弁部材40をストッパ50の筒部51から容易に離間させることができる。これにより、所望のタイミングで弁部材40を閉弁させることが可能となる。
弁部材40が弁座34側へ移動し、弁部材40が弁座34に着座、すなわち閉弁することにより、第2通路122が閉鎖され、燃料通路100を流通する燃料の流れが遮断される。これにより、加圧室113から燃料室16へ燃料を排出する調量行程は終了する。プランジャ13が上昇するとき、第2通路122、すなわち加圧室113と燃料室16との間を閉鎖することにより、加圧室113から燃料室16へ戻される燃料の量が調整される。その結果、加圧室113で加圧される燃料の量が決定される。
「加圧行程」
加圧室113と燃料室16との間が閉鎖された状態でプランジャ13がさらに上死点に向けて上昇すると、加圧室113の燃料の圧力は上昇する。加圧室113の燃料の圧力が所定の圧力以上になると、吐出弁部90のスプリング94の付勢力と弁座95の下流側の燃料から逆止弁92が受ける力とに抗して、逆止弁92は弁座95から離座する。これにより、吐出弁部90が開弁し、加圧室113で加圧された燃料は吐出通路114を通り高圧ポンプ10から吐出される。高圧ポンプ10から吐出された燃料は、図示しないデリバリパイプに供給されて蓄圧され、インジェクタに供給される。
プランジャ13が上死点まで移動すると、コイル71への通電が停止され、弁部材40は再び弁座34から離座する。このとき、プランジャ13は再び図2の下方へ移動し、加圧室113の燃料の圧力は低下する。これにより、加圧室113には燃料室16から燃料が吸入される。
なお、弁部材40が閉弁し、加圧室113の燃料の圧力が所定値まで上昇したとき、コイル71への通電は停止してもよい。加圧室113の燃料の圧力が上昇すると、弁部材40が弁座34から離座する方向へ受ける力よりも、加圧室113側の燃料によって弁座34へ着座する方向へ受ける力が大きくなる。そのため、コイル71への通電を停止しても、弁部材40は加圧室113側の燃料から受ける力によって弁座34への着座状態を維持する。このように、所定の時期にコイル71への通電を停止することにより、電磁駆動部70の消費電力を低減することができる。
上記の「吸入行程」、「調量行程」および「加圧行程」を繰り返すことにより、高圧ポンプ10は吸入した燃料を加圧して吐出する。燃料の吐出量は、電磁駆動部70のコイル71への通電タイミングを制御することにより調節される。本実施形態では、高圧ポンプ10の作動時、上記「吸入行程」、「調量行程」および「加圧行程」が繰り返されるため、加圧室113の圧力が変動する。
以上説明したように、本実施形態では、係止部材60は、ハウジング本体11に形成された係止溝153に嵌め込まれ、かつ、弁ボディ30の加圧室113とは反対側の壁面に当接することで弁ボディ30を係止可能である。これにより、弁ボディ30が加圧室113とは反対側へ抜け出るのを抑制することができる。皿バネ80は、略円環状に形成され、弁ボディ30と環状壁面154との間に設けられる。皿バネ80は、軸方向に弾性変形することで弁ボディ30を係止部材60に押し付ける。これにより、弁ボディ30は、係止部材60に接した状態で、その位置が安定する。そのため、高圧ポンプ10の作動時に加圧室113の圧力が変動しても、弁ボディ30は、加圧室113の圧力変動の影響を受けることなく、その位置を保ち続けることができる。この構成により、加圧室113の圧力が変動しても、ニードル49の初期位置の変動が抑制される。したがって、弁部材40の応答性の変動が抑制され、高圧ポンプ10からの燃料の吐出量を高精度に制御することができる。また、本実施形態によれば、ニードル49を吸引する電磁駆動部70とニードル49とが所定の距離以上離れることを抑制できるため、弁部材40の作動不良を抑制することができる。
また、本実施形態では、皿バネ80が弁ボディ30を係止部材60に押し付ける構成のため、係止部材60は、係止溝153の壁面に押し付けられる。そのため、係止溝153と係止部材60との間にガタが生じるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、弁ボディ30の皿バネ80側端面38には、皿バネ80の内側と外側とを連通する連通路301が形成されている。これにより、燃料は連通路301を通じて皿バネ80の内側と外側との間を流通可能なため、皿バネ80の内側の圧力と外側の圧力とを同じにすることができる。そのため、高圧ポンプ10の作動時に加圧室113の圧力が変動することで皿バネ80の内側の圧力が変動しても、皿バネ80の内側と外側との間で差圧が生じるのを抑制することができる。したがって、皿バネ80の破損を抑制することができる。よって、皿バネ80を長期に亘って使用でき、高圧ポンプ10の耐久性を高めることができる。
さらに、本実施形態では、弾性部材としての皿バネ80は、テーパ状の内壁および外壁をもつテーパ筒部81、当該テーパ筒部81の軸方向の一方の端部から径内方向に円環状に延びる内フランジ部82、および前記テーパ筒部81の軸方向の他方の端部から径外方向に円環状に延びる外フランジ部83からなる。外フランジ部83とテーパ筒部81との境界部分、および内フランジ部82とテーパ筒部81との境界部分は、比較的滑らかな曲面状に形成されている。これにより、皿バネ80の軸方向端部が所定の面圧を受けたときの変形量(潰れるようにして変形する箇所の変形の量)を小さくすることができる。その結果、皿バネ80の荷重抜けに対するロバスト性を向上することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態による高圧ポンプの一部を図7に示す。図7では、図が煩雑になるのを避けるため、第2実施形態による高圧ポンプの弁ボディのみを示している。第2実施形態では、弁ボディに形成される連通路の形状等が第1実施形態と異なる。
図7(A)および(B)に示すように、弁ボディ30の筒部32の皿バネ80(不図示)側の端面38には、皿バネ80とは反対側へ凹むようにして形成される連通路302が設けられている。第2実施形態では、連通路302は、2つ形成されている。連通路302は、互いに略平行に延びる直線状の溝により形成されている。
連通路302は、皿バネ80が弁ボディ30と環状壁面154(不図示)とに接した状態において、皿バネ80の内側と外側とを連通可能である。すなわち、弁ボディ30の皿バネ80側端面38には、皿バネ80の内側と外側とを連通する連通路302が形成されている。この構成では、燃料が連通路302を流通することにより、皿バネ80の内側と外側との圧力は、略同じになる。皿バネ80の内側と加圧室113(不図示)とは、常に連通している。よって、加圧室113の圧力が変動すると皿バネ80の内側の圧力も変動するが、皿バネ80の内側と外側との間で差圧が生じるのが抑制される。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態による高圧ポンプの一部を図8に示す。図8では、図が煩雑になるのを避けるため、第3実施形態による高圧ポンプの弁ボディのみを示している。第3実施形態では、弁ボディに形成される連通路の形状等が第1実施形態と異なる。
図8(A)および(B)に示すように、弁ボディ30の筒部32の皿バネ80(不図示)側の端面38には、皿バネ80とは反対側へ凹むようにして形成される連通路303が設けられている。第3実施形態では、連通路303は、2つ形成されている。連通路303は、端面38の径方向の両端部に端面38から所定量凹む段差面を形成することにより構成されている。すなわち、連通路303は、第2実施形態で示した溝状の連通路302を段差面状にした形状であるということもできる。
連通路303は、皿バネ80が弁ボディ30と環状壁面154(不図示)とに接した状態において、皿バネ80の内側と外側とを連通可能である。すなわち、弁ボディ30の皿バネ80側端面38には、皿バネ80の内側と外側とを連通する連通路303が形成されている。この構成では、燃料が連通路303を流通することにより、皿バネ80の内側と外側との圧力は、略同じになる。皿バネ80の内側と加圧室113(不図示)とは、常に連通している。よって、加圧室113の圧力が変動すると皿バネ80の内側の圧力も変動するが、皿バネ80の内側と外側との間で差圧が生じるのが抑制される。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態による高圧ポンプの一部を図9に示す。図9では、図が煩雑になるのを避けるため、第4実施形態による高圧ポンプの弁ボディのみを示している。第4実施形態では、弁ボディに形成される連通路の形状等が第1実施形態と異なる。
図9に示すように、弁ボディ30の筒部32の皿バネ80(不図示)側の端面38には、皿バネ80とは反対側へ凹むようにして形成される連通路304が設けられている。第4実施形態では、連通路304は、3つ形成されている。連通路304は、端面38の周方向の3箇所に端面38から所定量凹む段差面を形成することにより構成されている。すなわち、連通路304それぞれの形状は、第3実施形態で示した連通路303と類似しているということもできる。
連通路304は、皿バネ80が弁ボディ30と環状壁面154(不図示)とに接した状態において、皿バネ80の内側と外側とを連通可能である。すなわち、弁ボディ30の皿バネ80側端面38には、皿バネ80の内側と外側とを連通する連通路304が形成されている。この構成では、燃料が連通路304を流通することにより、皿バネ80の内側と外側との圧力は、略同じになる。皿バネ80の内側と加圧室113(不図示)とは、常に連通している。よって、加圧室113の圧力が変動すると皿バネ80の内側の圧力も変動するが、皿バネ80の内側と外側との間で差圧が生じるのが抑制される。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態による高圧ポンプの一部を図10に示す。図10では、図が煩雑になるのを避けるため、第5実施形態による高圧ポンプの弁ボディのみを示している。第5実施形態では、弁ボディに形成される連通路の形状等が第1実施形態と異なる。
図10に示すように、弁ボディ30の筒部32の皿バネ80(不図示)側の端面38には、皿バネ80とは反対側へ凹むようにして形成される連通路305が設けられている。第5実施形態では、連通路305は、2つ形成されている。連通路305は、端面38の外縁部と内縁部とを接続するようにして延びる渦巻状の溝により形成されている。
連通路305は、皿バネ80が弁ボディ30と環状壁面154(不図示)とに接した状態において、皿バネ80の内側と外側とを連通可能である。すなわち、弁ボディ30の皿バネ80側端面38には、皿バネ80の内側と外側とを連通する連通路305が形成されている。この構成では、燃料が連通路305を流通することにより、皿バネ80の内側と外側との圧力は、略同じになる。皿バネ80の内側と加圧室113(不図示)とは、常に連通している。よって、加圧室113の圧力が変動すると皿バネ80の内側の圧力も変動するが、皿バネ80の内側と外側との間で差圧が生じるのが抑制される。
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態による高圧ポンプの一部を図11に示す。第6実施形態では、連通路の形成される箇所等が第1実施形態と異なる。
図11に示すように、ハウジング本体11の環状壁面154には、皿バネ80とは反対側へ凹むようにして形成される連通路306が設けられている。連通路306は、皿バネ80が弁ボディ30と環状壁面154とに接した状態において、皿バネ80の内側と外側とを連通可能である。すなわち、環状壁面154には、皿バネ80の内側と外側とを連通する連通路306が形成されている。この構成では、燃料が連通路306を流通することにより、皿バネ80の内側と外側との圧力は、略同じになる。皿バネ80の内側と加圧室113(不図示)とは、常に連通している。よって、加圧室113の圧力が変動すると皿バネ80の内側の圧力も変動するが、皿バネ80の内側と外側との間で差圧が生じるのが抑制される。
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態による高圧ポンプの一部を図12に示す。第7実施形態では、連通路の形成される箇所等が第1実施形態と異なる。
図12に示すように、皿バネ80のテーパ筒部81には、皿バネ80の内側と外側とを連通する連通路307が形成されている。このような皿バネ80は、例えば、円環状の薄板に、一方の端面と他方の端面とを接続する孔を形成してこれを連通路307とし、その後、当該薄板をプレス加工することにより簡単に製造することができる。
上記構成では、燃料が連通路307を流通することにより、皿バネ80の内側と外側との圧力は、略同じになる。皿バネ80の内側と加圧室113(不図示)とは、常に連通している。よって、加圧室113の圧力が変動すると皿バネ80の内側の圧力も変動するが、皿バネ80の内側と外側との間で差圧が生じるのが抑制される。
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態による高圧ポンプの一部を図13に示す。第8実施形態では、弾性部材の形状等が第1実施形態と異なる。
図13に示すように、第8実施形態では、弁ボディ30と環状壁面154との間に、弾性部材としての波バネ85が設けられている。波バネ85は、第1実施形態の皿バネ80と同様、弁ボディ30と環状壁面154との間に設けられた状態では、軸方向の弾性力を生じ、弁ボディ30を係止部材60(不図示)に押し付けている。
波バネ85は、その形状から、軸方向の両端部が弁ボディ30および環状壁面154に当接した状態において、波バネ85の内側と外側とを連通する連通路308を有しているといえる。すなわち、波バネ85と弁ボディ30の端面38との間、および波バネ85と環状壁面154との間に複数の連通路308(隙間)が形成されている。
この構成では、燃料が連通路308を流通することにより、波バネ85の内側と外側との圧力は、略同じになる。波バネ85の内側と加圧室113(不図示)とは、常に連通している。そのため、加圧室113の圧力が変動すると波バネ85の内側の圧力も変動するが、波バネ85の内側と外側との間で差圧が生じるのが抑制される。したがって、波バネ85の破損を抑制することができる。よって、波バネ85を長期に亘って使用でき、高圧ポンプの耐久性を高めることができる。
このように、弾性部材として波バネ85を用いた場合、第1〜7実施形態のように弁ボディ30の弾性部材側端面、環状壁面154、および弾性部材のうち少なくとも1つに、別途、連通路を設ける必要はない。よって、高圧ポンプの耐久性を高めつつ、製造コストを低減することができる。
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態では、弾性部材は、略円環状に形成され、軸方向の弾性力を有することが可能であれば、いかなる形状に形成されていてもよい。
上述の実施形態では、弁ボディの弾性部材側端面、環状壁面、および弾性部材のうちいずれか1つに、弾性部材の内側と外側とを連通する連通路が形成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、弁ボディの弾性部材側端面、環状壁面、および弾性部材のうち複数箇所に連通路を形成することとしてもよい。あるいは、このような連通路を1つも設けない構成としてもよい。
上述の第8実施形態では、弾性部材として波バネを用い、波バネ自体が連通路を有する構成のため、弁ボディの弾性部材(波バネ)側端面または環状壁面には別途連通路を形成しない例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、弾性部材に波バネを用いる場合でも、弁ボディの弾性部材(波バネ)側端面および環状壁面のうち少なくとも一方に、別途、連通路を設けてもよい。
また、本発明の他の実施形態では、ハウジングに形成される係止溝の形状は、係止部材が嵌り込み可能であれば、円環状に限らず、いかなる形状であってもよい。係止部材も、係止溝に嵌り込むことで弁ボディを係止可能であれば、いかなる形状および個数であってもよい。また、係止部材はハウジングと一体に設けられていてもよい。例えば、ハウジングの通路壁面から径内方向へ突出するよう形成される突出部により弁ボディを係止してもよい。
上述の実施形態では、弁部材とニードルとが別体で構成される例を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、弁部材とニードルとが接続し一体に形成される構成としてもよい。
上述の実施形態では、電磁駆動部のコイル部に通電していないとき弁部材は開弁しており、コイル部に通電したとき弁部材が閉弁する、常開型の弁構造を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、コイル部に通電したとき弁部材が開弁する、常閉型の弁構造としてもよい。
このように、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。