JP2012190553A - 無機固体電解質及びリチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 リチウム原子及び硫黄原子を含有する無機固体電解質であって、該無機固体電解質は、硫化リチウム、α−アルミナ及び第3成分からなる3種の必須成分を原料として得られ、該第3成分は、周期律表第13〜15族のうち少なくとも1つの原子を有する化合物であり、該3種の必須成分の原料中における硫化リチウムのモル比をx、α−アルミナのモル比をy、第3成分のモル比をzとすると、x=45〜69、y=9〜40、z=100−x−y、z>0であることを特徴とする無機固体電解質。
【選択図】なし
Description
特に、本発明の無機固体電解質は、全固体リチウムイオン電池の電解質や電極活物質との合材に用いることができる硫化物系リチウムイオン伝導性無機固体電解質として好適なものである。
従来技術におけるリチウムイオン伝導性固体電解質においても高いイオン伝導性を発現させるための電解質組成が種々検討されてはいたが、α−アルミナの含有量が多い領域(以下、高アルミナ領域ともいう。)においてもそのイオン伝導性を維持できるものは得られていなかった。したがって、単に電解質組成が最適化されたというものではなく、高アルミナ領域においても高いイオン伝導性を維持できるという、従来の技術では達成されなかった効果が得られることを見いだしたものである。このような固体電解質によれば、安価なα−アルミナの含有量(含有率)を従来と比較して増加させることができ、リチウムイオン二次電池等、需要が増大する分野において固体電解質の製造コストを充分に低減することができるため、その技術的意義は極めて大きいといえる。
このように、上記3成分をこれまでにない特定の範囲内とした固体電解質とすることによって上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
以下に本発明を詳述する。
無機固体電解質の原料は、これら3種の必須成分を含むものである限り、硫化リチウム、α−アルミナ、及び、周期律表第13〜15族の原子の化合物のいずれにも該当しないその他の成分を含んでいてもよいが、原料全体を100質量%として、これら3種の必須成分の割合が80質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、90質量%以上であり、更に好ましくは、95質量%以上であり、特に好ましくは、97質量%以上であり、最も好ましくは、原料が実質的にこれら3種の必須成分のみからなることである。ここで、上記硫化リチウムは、硫黄元素とリチウム元素とを1:2(モル比)で含むものであれば特に限定されるものではなく、化合物である硫化リチウムを用いてもよく、硫黄と金属リチウムとを1:2(モル比)となるように別々に加えても差し支えない。
上記α−アルミナ(Al2O3)としては特に限定されず、通常α−アルミナと呼ばれるものを用いることができる。
これらの中でも、周期律表第13〜15族の原子の化合物は、硫化リン、硫化ケイ素、硫化ゲルマニウム及び硫化ホウ素からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましい。これらの化合物を具体的に表すと、P2S3、P2S5、P4S3、P4S5、P4S7、P4S10等の硫化リン、SiS2等の硫化ケイ素、GeS2等の硫化ゲルマニウム、B2S3等の硫化ホウ素が挙げられる。これらの中でも、より好ましくは、硫化リン、硫化ケイ素であり、更に好ましくは硫化リンであり、中でも、P2S5が特に好ましい。
周期律表第13〜15族の原子の化合物は、1種を用いてもよく2種以上を用いてもよい。
また、周期律表第13〜15族の原子の化合物としては、周期律表第13〜15族の原子が硫化物、酸化物等の化合物の形態となったものを用いてもよく、周期律表第13〜15族の原子(単体)と、該原子と反応して周期律表第13〜15族の原子の化合物を形成する原料となる物質(単体や化合物)とを、周期律表第13〜15族の原子の化合物を形成するための適切なモル比で別々に加えても差し支えない。
上記x/zの範囲として、より好ましくは2〜4であり、更に好ましくは2.5〜3.5である。
本発明の最も好ましい形態の1つである、硫化リチウム、α−アルミナ、周期律表第13〜15族の原子の化合物として硫化リン(P2S5、又は、リンと硫黄とを2:5のモル比となるように加えたもの)を用いた場合、下記式(1);
(100−a)Li3PS4・aAl2O3 (1)
(式中、aは、mol%を表す。)で表される組成物が生成していると推定され、これにより、リチウムイオンと対イオンとなるネットワーク構造が形成されているものと考えられる。
上記式(1)で表される組成物において、aが9〜40となる場合に、特に優れたイオン伝導性が発揮される。すなわち、上記式(1)で表される組成物において、aが9〜40となる割合で硫化リチウム、α−アルミナ及び硫化リンを含む原料を用いて無機固体電解質を得ることが本発明の好適な実施形態である。
より具体的には、無機固体電解質をX線回折(XRD)測定により分析すると、α−アルミナ含有量が少ない形態(例えば、上記yが9より大幅に小さい形態)においては、電解質は結晶性を持たないガラス状態(非晶質)であるが、α−アルミナ含有量が増えるにしたがって、未反応のα−アルミナに相当する結晶相が観察されるようになる。更にα−アルミナ含有量が増加し、本発明の組成範囲となると、2θ=15〜20°の範囲に未反応のα−アルミナとは異なる結晶相に由来するピークも観察されるようになり、この結晶相が高いイオン伝導性を有しているものと推測される。このように、α−アルミナとは異なる結晶相を含むことは、本発明の無機固体電解質の好適な実施形態の1つである。
なお、α−アルミナとは異なる結晶相を含むことは、上記のようにX線回折(XRD)測定による分析によって、2θ=15〜20°の範囲にα−アルミナとは異なる結晶相に由来するピークが観察されることで確認することができる。
溶融急冷法としては、1000℃前後で融解した原料混合物を液体窒素や双冷却ロールに流下する方法を用いることができる。メカニカルミリングとしては、ボールミル等の高せん断粉砕混合装置を用いて原料を混合する方法を用いることができる。
メカニカルミリングによる方法、不活性ガス又は真空中で500℃以下で焼成する方法、又は、原料混合物の粉砕/ペレット化/焼成を繰り返す方法を用いる場合、原料を粉砕し、50μm以下、好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下にまで小粒径化するとともに、反応前に均一に混合することが好ましい。これにより、反応時間を短縮し、また、得られる硫化物系リチウムイオン伝導性固体電解質の特性の振れを小さくすることができる。
本発明の無機固体電解質は、硫化リチウム、α−アルミナ、及び、周期律表第13〜15族の原子の化合物からなる3種の必須成分を上述したような特定の割合で含む原料を用いることにより、高温による熱処理を行わず、最も簡便な製造方法であるメカニカルミリングによる方法、またメカニカルミリングと500℃以下の熱処理を組み合わせる方法によって製造しても高いイオン伝導性を有する無機固体電解質を得ることができることになる。
上記3種の必須成分は、全てが1つの工程において混合されてもよいし、例えば予め硫化リチウムと周期律表第13〜15族の原子の化合物とから硫化物系リチウムイオン伝導性固体電解質を合成した後、α−アルミナを混合及び反応させる形態のように、複数の工程にわたって混合されてもよい。製造工程数を少なくする観点からは、上記3種の必須成分の全てが1つの工程において混合されることが好ましい。このように、高いイオン伝導性を有する無機固体電解質が、必須成分の全てを一度に混合する簡便な製造方法によって製造できることも、本発明の無機固体電解質の特徴の一つであり、このような無機固体電解質の製造方法もまた、本発明の1つである。
すなわち、硫化リチウム、α−アルミナ及び周期律表第13〜15族のうち少なくとも1つの原子を有する化合物からなる3種の必須成分を一度に混合する工程を含む無機固体電解質の製造方法であって、該3種の必須成分の原料中における硫化リチウムのモル比をx、α−アルミナのモル比をy、第3成分のモル比をzとすると、x=45〜69、y=9〜40、z=100−x−y、z>0であることを特徴とする無機固体電解質の製造方法もまた、本発明の一つである。
メカニカルミリングによる方法を用いる場合、粉砕用ジルコニアボールを備える遊星ボールミル粉砕機(フリッチュ社製)を用いて、回転数300rpm以上で30時間以上混合粉砕することが好ましい。
このような、本発明の無機固体電解質を用いるリチウム二次電池もまた、本発明の1つである。
これらの中でも、硫黄、遷移金属硫化物、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン−コバルト複合酸化物系正極活物質、ニッケル−マンガン−コバルト複合酸化物系正極活物質、オリビン型リン酸鉄のリチウム塩が好ましい。蓄電容量の面から、硫黄、遷移金属硫化物が更に好ましく、硫黄が特に好ましい。
このような、硫黄を正極活物質として用いるリチウム二次電池は、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、上記正極合剤組成物や負極合剤組成物が、本発明の無機固体電解質を含む場合、当該無機固体電解質のバインダー能により、バインダーを用いることなく正極合剤や負極合剤を形成することができる。上記正極合剤組成物や負極合剤組成物が本発明の無機固体電解質を含むことは、本発明の好適な実施形態の1つである。
本発明の無機固体電解質は、後述する実施例と同様の方法によりイオン伝導度を測定した場合に、25℃におけるイオン伝導度が0.4mS/cm以上であることが好ましい。より好ましくは、0.5mS/cm以上である。
また、本発明の無機固体電解質を用いたリチウム二次電池は、初期容量、サイクル特性等の電気的特性に優れるものである。このような、本発明の無機固体電解質を用いたリチウム二次電池もまた、本発明の1つである。
X線回折装置(RINT2000、Rigaku社製)を用いて測定を行った。
乳鉢で充分すり潰した無機固体電解質120mgを内径10mmの金型に計り取り、均一に充填した後プレス機にかけ、3.8t/cm2で加圧成型した。
[イオン伝導度]
作成したペレットをIn電極で挟み込み、E4980A(Agilent社製)を用い、複素インピーダンス法にて測定した。
硫化リチウム(Li2S)34.2部、硫化リン(P2S5)55.2部、α−アルミナ(Al2O3)10.6部をグローブボックス中で秤量し、これをメノウ乳鉢で粉砕・混合した後、粉砕用ジルコニアボールと共に遊星ボールミル用ステンレスポット内に充填・密封し、グローブボックスから取り出し、遊星ボールミル粉砕機を用いて380rpmで、35時間混合粉砕し、無機固体電解質を得た。
合成に用いる原料の組成を表1に示す様にしたこと以外は、実施例1と同様の方法で無機固体電解質を得た。得られた電解質のイオン伝導度を表1、図1に示す。実施例1〜8においてはいずれの電解質も25℃で0.4mS/cm程度以上の高いイオン伝導度を示したのに対して、比較例1〜7においてはいずれも上記実施例におけるイオン伝導度より低い値であった。
これらより、yが7.7以下では、結晶相が存在しないか、存在してもイオン伝導性の比較的低い未反応のα−アルミナであるため、電解質のイオン伝導性は低い水準に留まるが、yが9.5以上では、α−アルミナとは異なる高いイオン伝導性を有する結晶相が生じるため、電解質のイオン伝導性が高くなるものと推察される。
Claims (6)
- リチウム原子及び硫黄原子を含有する無機固体電解質であって、
該無機固体電解質は、硫化リチウム、α−アルミナ及び第3成分からなる3種の必須成分を原料として得られ、
該第3成分は、周期律表第13〜15族のうち少なくとも1つの原子を有する化合物であり、
該3種の必須成分の原料中における硫化リチウムのモル比をx、α−アルミナのモル比をy、第3成分のモル比をzとすると、
x=45〜69、y=9〜40、z=100−x−y、z>0
であることを特徴とする無機固体電解質。 - 前記第3成分は、硫化リン、硫化ケイ素、硫化ゲルマニウム及び硫化ホウ素からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の無機固体電解質。
- 前記xと前記zとの比x/zが、x/z=1〜9を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の無機固体電解質。
- 前記無機固体電解質は、一部が結晶性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無機固体電解質。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の無機固体電解質を用いることを特徴とするリチウム二次電池。
- 硫黄及び/又は遷移金属硫化物を正極活物質として用いることを特徴とする請求項5に記載のリチウム二次電池。
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