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JP2012011526A - 研磨材およびその製造方法 - Google Patents

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武 楊原
Miyuki Yamada
美幸 山田
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Abstract

【課題】ガラス等の研磨性を確保しつつ、酸化セリウム量を低減できる研磨材を提供する。
【解決手段】本発明の研磨材は、酸化セリウムよりも比重が小さい無機材からなる基粒子により形成されたコア部と合成された酸化セリウムを含み基粒子の外表面に形成されたシェル部とを有する複合砥粒を含有することを特徴とする。この複合砥粒は、研磨性に影響するシェル部に酸化セリウムを有し、研磨性に直接影響しないコア部は比重の小さい無機粒子からなる。このため、酸化セリウムによる研磨性の確保と酸化セリウムの低減が両立されることに加えて、複合砥粒のスラリー中における分散安定性も高まり、さらなる研磨性の向上も図られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、各種分野で用いられるガラス(特に光学ガラス)等の研磨に適した研磨材およびその製造方法に関する。
ガラスは種々の製品に用いられている。この中でも、光学用レンズ、記録媒体用ガラス、プラズマまたは液晶のディスプレイパネル用ガラス、液晶TV用カラーフィルター用ガラス、LSI用フォトマスク用ガラス等は、平坦性や表面粗さなどの要求が厳しく、高精度な表面研磨がなされる。
このようなガラスの研磨材には、酸化ジルコニウム、酸化鉄、二酸化ケイ素等もあるが、最近では化学機械研磨作用を発揮する酸化セリウムを含有する酸化セリウム系研磨材が主に用いられている。この研磨材に関連する記載が例えば下記の特許文献1にある。また酸化セリウムの製造に必要なセリウム塩の製造方法等に関する記載が下記の特許文献2にある。
WO2006/107116号公報 WO2005/26051号公報
ところで、セリウムなどの希土類元素を含む稀少原料の需要は年々増加しており、その価格も年々高騰する傾向にある。しかし、日本はそれらの殆どを中国からの輸入に依存しているのが現状である。そこで、酸化セリウム等の使用量を削減しつつも、従来と同等以上の高精度なガラス研磨等を行える研磨材の開発が求められている。
また、研磨材中の酸化セリウム粒子は比重が相当に大きいため、研磨スラリー中における分散性が好ましくない。このため従来の研磨材では、少量の酸化セリウム粒子を有効に活用して安定した研磨を行うことも困難であった。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、酸化セリウムの使用量を抑制しつつガラスなどを効率的に安定して研磨し得る研磨材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、酸化セリウムよりも比重の小さな無機粒子の外殻部にのみ、研磨に有効な酸化セリウムを存在させることを思いつき、実際にコア部とシェル部で材質が異なる複合砥粒を合成することに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《研磨材》
(1)本発明の研磨材は、酸化セリウムよりも比重が小さい無機材からなる基粒子により形成されたコア部と合成された酸化セリウムを含み該基粒子の外表面に形成されたシェル部とを有する複合砥粒を含有することを特徴とする。
(2)本発明の研磨材を用いると、貴重な酸化セリウムの使用量を抑制しつつ、従来の酸化セリウムからなる研磨材と同等以上の研磨性が得られる。この理由は次のように考えられる。先ず本発明の研磨材中の複合砥粒は、その外殻部分であるシェル部にガラス等の研磨に有効な酸化セリウムが存在する。このため本発明の研磨材によっても、従来の酸化セリウム粒子からなる研磨材と同等以上の研磨性が確保され得る。
その上で本発明に係る複合砥粒は、その体積の大部分を占めるコア部が酸化セリウム以外の無機材からなる基粒子によって構成されている。このため本発明に係る複合砥粒によれば、酸化セリウム特有の研磨性が確保されつつ、酸化セリウム量の大幅な低減が図られる。
しかもその複合砥粒のコア部は、酸化セリウムよりも比重の小さい無機材からなっている。このため本発明に係る複合砥粒は、従来の酸化セリウム(または希土類元素の酸化物)からなる研磨粒子よりも軽く、水などの分散媒中で沈降し難く、分散安定性に優れる。従って本発明に係る複合砥粒を用いれば、従来の酸化セリウム粒子等よりも分散性に優れた研磨スラリーが得られ、この研磨スラリーを用いることでより安定した研磨が可能となる。ちなみに複合砥粒のコア部は、ガラス等の研磨性とは別に、研磨粒子の要求仕様(例えば、粒径、粒形等の形態)を確保する上で必要である。
《研磨材の製造方法》
(1)本発明は上述の研磨材自体のみならずその製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、酸化セリウムよりも比重が小さい無機材からなる基粒子を分散させた基粒子分散液とセリウムを含むセリウム溶液とを混合し中和させた混合液を得る混合工程と、該混合液を固液分離して固体を抽出する分離工程と、該分離工程後の固体を加熱して焼成させた焼成物を得る焼成工程と、該焼成物を粉砕して粉末とする粉末化工程とを備え、上述した本発明に係る複合砥粒を含有する研磨材が得られることを特徴とする研磨材の製造方法としても把握できる。
(2)この本発明の製造方法により、上述した複合砥粒を含む研磨材が合成されるが、このような複合砥粒が形成されるメカニズムは、現状、必ずしも定かではない。
ここで基粒子の無機材、基粒子分散液の分散媒、セリウム溶液の種類は種々あり得る。例えば、複合砥粒のコア部を形成する基粒子として酸化ケイ素(シリカ)粒子や酸化アルミニウム(アルミナ)粒子等が、基粒子分散液の分散媒として水にアンモニア(NH)や炭酸水素アンモニウム(NHHCO)を溶解させたアルカリ性水溶液等が、セリウム溶液として塩化セリウム(CeCl)や硝酸セリウム(Ce(NO)などのセリウム塩の水溶液等が考えられる。もっとも本発明者が鋭意研究したところによれば、基粒子である酸化ケイ素粒子をアンモニア水(分散媒)に分散させたアンモニア分散液(基粒子分散液)と硝酸セリウム水溶液(セリウム溶液)とを混合して中和反応させると、コア部である酸化ケイ素粒子の外表面に酸化セリウムがほぼ均一的に分布結合したシェル部を有する複合砥粒が合成されることが解っている。
《その他》
特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の下限値または上限値は、任意に組合わされて「a〜b」のような範囲を構成し得る。さらに本明細書に記載した範囲内に含まれる任意の数値を、数値範囲を設定するための上限値または下限値とすることができる。
各試料の調製に用いた基粒子と調整後の粒子を示すSEM写真であり、同図(1a)は試料No.1の複合砥粒のSEM写真(20, 000倍)、同図(1b)は試料No.C1の処理後の粒子のSEM写真(10, 000倍)である。
発明の実施形態を挙げて本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含めて本明細書で説明する内容は、本発明に係る研磨材のみならず、その製造方法にも適宜適用され得る。従って、上述した本発明の構成に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成を付加し得る。この際、製造方法に関する構成は、プロダクトバイプロセスとして理解すれば物に関する構成ともなり得る。なお、いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《研磨材》
(1)本発明の研磨材は、上述した複合砥粒を少なくとも一部含むものであればよい。従って複合砥粒以外の異なる研磨粒子を一種または複数種含むものでもよい。複合砥粒のコア部を形成する基粒子の種類は、酸化セリウムよりも比重が小さくて粒径が大きければ、その種類を問わない。基粒子として種々の無機粒子が考えられ、例えば、酸化ケイ素(SiO)粒子、酸化アルミニウム(Al)粒子などがある。中でも基粒子は、ガラスと同様な組成をもち比重が小さい酸化ケイ素粒子が好ましい。ちなみに酸化セリウム(CeO)の比重は6.2であるが、酸化ケイ素(SiO)の比重は2.2である。
複合砥粒のシェル部は、酸化セリウムのみからなると好ましい。もっともシェル部は、それ以外の元素や化合物などを含んでもよい。例えばセリウム以外の希土類元素(La、Nd、Pr等)やそれらの酸化物等を含むものでもよい。バストネサイト鉱石を出発原料として得たセリウム塩を用いる場合、シェル部にCe以外の希土類元素を含むこともあり、必ずしもシェル部が酸化セリウムのみからなる必要もない。
(2)ちなみに、ガラスの研磨材として酸化セリウムが用いられるのは、研磨中に酸化セリウムがガラスと化学反応を生じ、ガラスが酸化セリウムにより化学機械研磨(CMP)されるためと考えられる。このような化学機械研磨が生じる場合、研磨対象の研磨面が化学的に軟らかくなるので、研磨速度の向上を図れ、研磨材よりも硬質な対象も研磨可能となったり、さらには研磨粒子の粒径等を厳しく管理しなくても高精度な研磨が可能となったりする。
しかも酸化セリウムを含む研磨粒子は、その化学機械研磨作用を水中で生じる。つまり、研磨対象と化学反応し得る分散媒をわざわざ用いる必要がない。そして分散媒が水なら研磨対象以外のものを腐食等させることも少ないので好都合である。
(3)複合砥粒のコア部を形成する基粒子はその形態を問わない。もっとも基粒子は球状であると好ましい。基粒子が球状であると、その外表面に酸化セリウムが合成されてできたシェル部もほぼ球状となる。これにより、各研磨粒子の形状が均一化して安定した研磨が可能となる。
基粒子の粒径は0.5〜20μmさらには1〜15μmであると好ましい。その粒径が過小では研磨能率が大きく低下し、過大ではスクラッチが生じる原因となる。ちなみに本明細書でいう粒径はレーザー回折散乱式粒度分布計および動的光散乱式粒度分布計により特定される。
シェル部の形態は、特に問わないが、球状あるいはそれに近い形状であると好ましい。最表面は研磨時に作用する面になるのでスクラッチ等を抑制する為だからである。
なお、酸化セリウム粒子(セリア粒子)は凝集し易い粒子であり、通常、酸化セリウム粒子を基粒子の表面に均一に結合させることは困難である。しかし本発明の製造方法によれば、中和反応を利用して酸化セリウムを合成させるので、基粒子の外表面に酸化セリウムをほぼ均一的に結合させることが可能となる。
《研磨材の製造方法》
本発明に係る複合砥粒は、前述したように、例えば、混合工程、分離工程、焼成工程および粉末化工程を経て得られる。混合工程は、基粒子分散液とセリウム溶液とを攪拌しつつ少量づつ混合する工程であると、最終的に、基粒子の外表面に酸化セリウムが均一的に分布した複合砥粒が得られて好ましい。
基粒子分散液は、アンモニア水などのアルカリ性液に酸化ケイ素粒子などの基粒子を投入して分散させたものでもよいし、イオン交換水などに予め酸化ケイ素(シリカ)粒子などの基粒子を分散させたところへアンモニア等を加えてpH調整等をしたものでもよい。セリウム溶液は、イオン交換水などに硝酸セリウム等のセリウム塩を溶解させることで得られる。なお、基粒子とセリウム塩と水とを直接混合して酸化セリウムを合成することも考えられるが、そうすると、各基粒子の外表面を酸化セリウムで均一的に囲繞した複合砥粒を最終的に得ることが困難となる。
混合工程後の混合液中には、基粒子とCe(OH)、Ce(CO 等との共存した固体(沈殿物)が生じる。分離工程でその固体を混合液から素速く固液分離して抽出する。この際の固液分離は、例えば、濾別や遠心分離などによりなされる。この分離された固体を加熱すると焼成物が得られる(焼成工程)。この焼成工程は、例えば、電気炉を用いて大気中で700〜900℃で1〜3時間程度の加熱によりなされる。加熱温度や加熱時間が過小では基粒子と微粒子の結合が弱く、過多では複合粒子が硬くなり過ぎてスクラッチの原因となって好ましくない。
この焼成物を粉砕すると本発明に係る複合砥粒を含む粉末が得られる(粉末化工程)。粉砕は、例えば、乾式ジェットミル、(株式会社セイシン企業製 FS−4)等により行うと好ましい。
《研磨対象》
本発明の研磨材による研磨対象として、各種のガラス、半導体基板、金属基板などがあり得る。もっとも酸化セリウムの化学機械研磨作用から、ガラスが研磨対象として好適である。特に高精度の研磨が要求される光学用レンズ、記録媒体用ガラス、プラズマまたは液晶のディスプレイパネル用ガラス、液晶TV用カラーフィルター用ガラス、LSI用フォトマスク用ガラス等の研磨に本発明の研磨材は好適である。
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
《研磨材の製造》
(1)原料
基粒子の原料として、平均粒径2μmの真球状酸化ケイ素粒子からなるシリカ粉末(株式会社アドマテックス製、アドファインSO−C6)を用意した。この酸化ケイ素粒子の真球度は0.98〜0.99である。平均粒径はレーザー回折散乱式粒度分布計により求めたものであり、真球度はフロー式粒子像分析装置により求めたものである。またセリウム塩として硝酸セリウム(三津和化学薬品株式会社製)を用意した。
(2)製造工程
先ず上記のシリカ粉末をイオン交換水に分散させた。このときの分散割合はシリカ:イオン交換水=10:90(重量比)とした。それらの分散液中に、アンモニア水(濃度:28質量%)を攪拌しつつ添加し、均一に混合した基粒子分散液(基粒子スラリー)を調製した。次に上記の硝酸セリウムをイオン交換水に溶解して、濃度10質量%の硝酸セリウム水溶液(セリウム溶液)を調製した。
上記の基粒子スラリーへ上記の硝酸セリウム水溶液を少量ずつチューブポンプを用いて滴下し、混合液を得た(混合工程)。この際の混合は基粒子スラリーを攪拌しながら行った。
こうして得られた混合液を速やかに遠心分離もしくは濾過操作により固液分離した(分離工程)。分離した固体(沈殿物)を電気炉を用いて800℃x2時間で加熱した(焼成工程)。得られた焼成物を乾式ジェットミルを用いて1.2m/minのエアー流量で粉砕した(粉末化工程)。こうして表1に示す配合からなる粉末(砥粒)を得た(試料No.1および試料No.2)。
上述したアンモニア水を濃度10質量%の炭酸水素アンモニウムに替えると共に、硝酸セリウム水溶液を濃度10質量%の塩化セリウム水溶液に替えて、同様な操作により粉末を得た(試料No.C1)。このときの配合も表1に併せて示した。
《観察および評価》
(1)上述した試料の製造により、コア部となる基粒子(酸化ケイ素粒子)の外表面に、酸化セリウムからなるシェル部が合成された複合砥粒が形成されているか否かを、最終的に得られた粉末粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して判定した。酸化セリウムが基粒子の外表面に合成されている場合を「○」、合成されていない場合を「X」として、各観察結果を表1に併せて示した。また試料No.1および試料No.C1の得られた粒子のSEM写真を図1にそれぞれ示した。
これらから、試料No.1または試料No.2の場合、乾式ジェットミルを用いた解砕後にも基粒子の外表面に酸化セリウムが強固に形成されており、酸化セリウムからなるシェル部が合成された複合砥粒が得られることが確認された。
(2)さらに、表1に示す試料No.1または試料No.2で得られた粉末をイオン交換水の中に分散させた分散液の沈降速度と、酸化セリウム粉末(昭和電工株式会社製、SHOROX A−10、平均粒径1μm)だけを単独でイオン交換水の中に分散させた分散液の沈降速度を観察した。前者の沈降速度は後者の沈降速度よりも十分に小さく、試料No.1または試料No.2の粉末からなる研磨材を用いると、分散安定性に優れるスラリーが得られることが解った。

Claims (5)

  1. 酸化セリウムよりも比重が小さい無機材からなる基粒子により形成されたコア部と合成された酸化セリウムを含み該基粒子の外表面に形成されたシェル部とを有する複合砥粒を含有することを特徴とする研磨材。
  2. 前記基粒子は、酸化ケイ素粒子である請求項1に記載の研磨材。
  3. 前記基粒子は、球状である請求項1または2に記載の研磨材。
  4. 酸化セリウムよりも比重が小さい無機材からなる基粒子を分散させた基粒子分散液とセリウムを含むセリウム溶液とを混合し中和させた混合液を得る混合工程と、
    該混合液を固液分離して固体を抽出する分離工程と、
    該分離工程後の固体を加熱して焼成させた焼成物を得る焼成工程と、
    該焼成物を粉砕して粉末とする粉末化工程とを備え、
    請求項1に記載の複合砥粒が得られることを特徴とする研磨材の製造方法。
  5. 前記基粒子分散液は、酸化ケイ素粒子をアンモニア水に分散させたアンモニア分散液であり、
    前記セリウム溶液は、硝酸セリウム水溶液である請求項4に記載の研磨材の製造方法。
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