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JP2012092939A5 - - Google Patents

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JP2012092939A5
JP2012092939A5 JP2010242609A JP2010242609A JP2012092939A5 JP 2012092939 A5 JP2012092939 A5 JP 2012092939A5 JP 2010242609 A JP2010242609 A JP 2010242609A JP 2010242609 A JP2010242609 A JP 2010242609A JP 2012092939 A5 JP2012092939 A5 JP 2012092939A5
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自動変速機
本発明は、自動変速機に関する。
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報では、車両の減速度が所定減速度以上であって、指令変速段のギヤ比に対して、変速機の入力回転数と出力回転数から求めた実際のギヤ比が所定範囲外であるときに、インターロックが発生していると判定するものが開示されている。
特開2008−232355号公報
上記従来技術では、変速機の入力回転数が、変速機の出力回転数に指令変速段のギヤ比をかけて所定のスリップ回転数を加えた値となるようにスリップ制御を行っているときには、出力回転数に対して入力回転数が高くなるため、インターロックを含むギヤ比異常の誤判定をしてしまうおそれがあった。
本発明は、上記問題に着目されたもので、その目的とするところは、スリップ制御中であっても、自動変速機の異常の誤判定を低減できる自動変速機を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明においては、スリップ制御中は、実際の変速比をスリップ回転数に基づき補正した値が、目標変速比の所定範囲外であるときには、変速機内に異常が発生していると判定することとした。
よって、スリップ制御中であっても、自動変速機の異常の誤判定を低減することができる。
実施例1のハイブリッド車両を示す全体システム図である。 実施例1の統合コントローラの制御ブロック図である。 実施例1の目標駆動トルクマップである。 実施例1のモードマップ選択部の選択ロジックを表す概略図である。 実施例1の通常モードマップである。 実施例1のMWSCモードマップである。 実施例1の目標充放電量マップである。 実施例1のWSC走行モードにおけるエンジン動作点設定処理を表す概略図である。 実施例1のWSC走行モードにおけるエンジン目標回転数を表すマップである。 実施例1のエンジン回転数マップである。 実施例1のギヤ比異常判定部において行われるギヤ比異常判定処理のフローの流れを示すフローチャートである。 変速時のタイムチャートである。 目標変速比が1のときのギヤ比異常判定範囲を示すグラフである。
[実施例1]
〔駆動系構成〕
まず、ハイブリッド車両の駆動系構成を説明する。図1は実施例1の後輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。
実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1クラッチCL1と、モータジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。尚、FLは左前輪、FRは右前輪である。
エンジンEは、例えばガソリンエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。尚、エンジン出力軸にはフライホイールFWが設けられている。
第1クラッチCL1は、エンジンEとモータジェネレータMGとの間に介装されたクラッチであり、後述する第1クラッチコントローラ5からの制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された制御油圧により、スリップ締結を含み締結・開放が制御される。
モータジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。尚、このモータジェネレータMGのロータは、図外のダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結されている。
第2クラッチCL2は、モータジェネレータMGと左右後輪RL,RRとの間に介装されたクラッチであり、後述するATコントローラ7からの制御指令に基づいて、AT油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、スリップ締結を含み締結・開放が制御される。
自動変速機ATは、前進7速後退1速等の有段階の変速比を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える変速機であり、第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用している。
そして、自動変速機ATの出力軸は、車両駆動軸としてのプロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。尚、前記第1クラッチCL1と第2クラッチCL2には、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチを用いている。
このハイブリッド駆動系には、第1クラッチCL1の締結・開放状態に応じて3つの走行モードを有する。第1走行モードは、第1クラッチCL1の開放状態で、モータジェネレータMGの動力のみを動力源として走行するモータ使用走行モードとしての電気自動車走行モード(以下、「EV走行モード」と略称する。)である。第2走行モードは、第1クラッチCL1の締結状態で、エンジンEを動力源に含みながら走行するエンジン使用走行モード(以下、「HEV走行モード」と略称する。)である。第3走行モードは、第1クラッチCL1の締結状態で第2クラッチCL2をスリップ制御させ、エンジンEを動力源に含みながら走行するエンジン使用スリップ走行モード(以下、「WSC走行モード」と略称する。)である。このモードは、特にバッテリSOCが低いときやエンジン水温が低いときに、クリープ走行を達成可能なモードである。なお、EV走行モードからHEV走行モードに遷移するときは、第1クラッチCL1を締結し、モータジェネレータMGのトルクを用いてエンジン始動を行う。
また、路面勾配が所定値以上における上り坂等で、運転者がアクセルペダルを調整し車両停止状態を維持するアクセルヒルホールドが行われるような場合、WSC走行モードでは、第2クラッチCL2のスリップ量が過多の状態が継続されるおそれがある。エンジンEをアイドル回転数より小さくすることができないからである。そこで、実施例1では、エンジンEを作動させたまま、第1クラッチCL1を解放し、モータジェネレータMGを作動させつつ第2クラッチCL2をスリップ制御させ、モータジェネレータMGを動力源として走行するモータスリップ走行モード(以下、「MWSC走行モード」と略称する)を備える。尚、詳細については後述する。
上記「HEV走行モード」には、「エンジン走行モード」と「モータアシスト走行モード」と「走行発電モード」との3つの走行モードを有する。
「エンジン走行モード」は、エンジンEのみを動力源として駆動輪を動かす。「モータアシスト走行モード」は、エンジンEとモータジェネレータMGの2つを動力源として駆動輪を動かす。「走行発電モード」は、エンジンEを動力源として駆動輪RR,RLを動かすと同時に、モータジェネレータMGを発電機として機能させる。
定速運転時や加速運転時には、エンジンEの動力を利用してモータジェネレータMGを発電機として動作させる。また、減速運転時は、制動エネルギを回生してモータジェネレータMGにより発電し、バッテリ4の充電のために使用する。
また、更なるモードとして、車両停止時には、エンジンEの動力を利用してモータジェネレータMGを発電機として動作させる発電モードを有する。
〔制御系構成〕
次に、ハイブリッド車両の制御系構成を説明する。実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、AT油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。尚、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、互いの情報交換が可能なCAN通信線11を介して接続されている。
エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数Ne、アクセルペダル開度センサ15からアクセルペダル開度APO、スロットル開度センサ16からスロットル開度の情報を入力する。統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne:エンジン回転数,Te:エンジントルク)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。尚、エンジン回転数Ne等の情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
モータコントローラ2は、モータジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報を入力し、統合コントローラ10からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、モータジェネレータMGのモータ動作点(Nm:モータジェネレータ回転数,Tm:モータジェネレータトルク)を制御する指令をインバータ3へ出力する。尚、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電状態を表すバッテリSOCを監視していて、バッテリSOC情報は、モータジェネレータMGの制御情報に用いると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
第1クラッチコントローラ5は、第1クラッチ油圧センサ14から第1クラッチ油圧PCL1の情報を入力し、統合コントローラ10からの第1クラッチ制御指令に応じ、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令を第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
ATコントローラ7は、サイドブレーキスイッチ17、ブレーキスイッチ18、運転者の操作するシフトレバーの位置に応じた信号を出力するインヒビタスイッチ19、自動変速機ATに入力される入力回転数Ninを検出する入力回転数センサ20、自動変速機ATから出力される出力回転数Noutを検出する出力回転数センサ21、第2クラッチCL2油圧PCL2を検出する第2クラッチ油圧センサ22を入力する。ATコントローラ7は、入力された情報に基づいて変速段を決定し、決定した変速段に基づいて各締結要素の締結・開放を制御する指令をAT油圧ユニット8に出力する。尚、インヒビタスイッチ、入力回転数Nin、出力回転数Nout等の情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ25とブレーキストロークセンサ26からのセンサ情報を入力し、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(摩擦ブレーキによる制動力)で補うように、統合コントローラ10からの回生協調制御指令に基づいて回生協調ブレーキ制御を行う。
統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、AT油温センサ23から自動変速機AT内の油温と、前後加速度センサ24から前後加速度と、CAN通信線11を介して得られた情報を入力する。
また、統合コントローラ10は、エンジンコントローラ1への制御指令によるエンジンEの動作制御と、モータコントローラ2への制御指令によるモータジェネレータMGの動作制御と、第1クラッチコントローラ5への制御指令による第1クラッチCL1の締結・開放制御と、ATコントローラ7への制御指令による第2クラッチCL2の締結・開放制御とを行う。
〔統合コントローラの構成〕
図2は、統合コントローラ10の制御ブロック図である。以下に、図2を用いて、実施例1の統合コントローラ10にて演算される制御を説明する。例えば、この演算は、制御周期10[msec]毎に統合コントローラ10で演算される。統合コントローラ10は、目標駆動トルク演算部100と、モード選択部200と、目標充放電演算部300と、動作点指令部400と、変速制御部500、ギヤ異常判定部600とを有する。
図3は目標駆動トルクマップである。目標駆動トルク演算部100では、図3に示す目標駆動トルクマップを用いて、アクセルペダル開度APOと車速VSPとから、目標駆動トルクTdを演算する。
モード選択部200は、前後加速度センサ24の検出値に基づいて路面勾配を推定する路面勾配推定演算部201を有する。路面勾配推定演算部201は、車輪速センサ25の車輪速加速度平均値等から実加速度を演算し、この演算結果と前後加速度センサ24の検出値との偏差から路面勾配を推定する。
更に、モード選択部200は、推定された路面勾配に基づいて、後述する二つのモードマップのうち、いずれかを選択するモードマップ選択部202を有する。図4はモードマップ選択部202の選択ロジックを表す概略図である。モードマップ選択部202は、通常モードマップが選択されている状態から推定勾配が所定値g2以上になると、MWSC対応モードマップに切り換える。一方、MWSC対応モードマップが選択されている状態から推定勾配が所定値g1(<g2)未満になると、通常モードマップに切り換える。すなわち、推定勾配に対してヒステリシスを設け、マップ切り換え時の制御ハンチングを防止する。
次に、モードマップについて説明する。モードマップとしては、推定勾配が所定値未満のときに選択される通常モードマップと、推定勾配が所定値以上のときに選択されるMWSC対応モードマップとを有する。図5は通常モードマップ、図6はMWSCモードマップを表す。
通常モードマップ(図5)内には、EV走行モードと、WSC走行モードと、HEV走行モードとを有し、アクセルペダル開度APOと車速VSPとから、目標モードを演算する。但し、EV走行モードが選択されていたとしても、バッテリSOCが所定値以下であれば、強制的に「HEV走行モード」を目標モードとする。
図5の通常モードマップにおいて、HEV→WSC切換線は、所定アクセル開度APO1未満の領域では、自動変速機ATが1速段のときに、エンジンEのアイドル回転数よりも小さな回転数となる下限車速VSP1よりも低い領域に設定されている。また、所定アクセル開度APO1以上の領域では、大きな駆動トルクを要求されることから、下限車速VSP1よりも高い車速VSP1'領域までWSC走行モードが設定されている。尚、バッテリSOCが低く、EV走行モードを達成できないときには、発進時等であってもWSC走行モードを選択するように構成されている。
アクセルペダル開度APOが大きいとき、その要求をアイドル回転数付近のエンジン回転数に対応したエンジントルクとモータジェネレータMGのトルクで達成するのは困難な場合がある。ここで、エンジントルクは、エンジン回転数が上昇すればより多くのトルクを出力できる。このことから、エンジン回転数を引き上げてより大きなトルクを出力させれば、例え下限車速VSP1よりも高い車速までWSC走行モードを実行しても、短時間でWSC走行モードからHEV走行モードに遷移させることができる。この場合が図5に示す下限車速VSP1'まで広げられたWSC領域である。
MWSCモードマップ(図6)内には、EV走行モード領域が設定されていない点で通常モードマップとは異なる。また、WSC走行モード領域として、アクセルペダル開度APOに応じて領域を変更せず、下限車速VSP1のみで領域が規定されている点で通常モードマップとは異なる。また、WSC走行モード領域内にMWSC走行モード領域が設定されている点で通常モードマップとは異なる。MWSC走行モード領域は、下限車速VSP1よりも低い所定車速VSP2と所定アクセル開度APO1よりも高い所定アクセル開度APO2とで囲まれた領域に設定されている。尚、MWSC走行モードの詳細については後述する。
図7は、目標充放電量マップである。目標充放電演算部300では、図7に示す目標充放電量マップを用いて、バッテリSOCから目標充放電電力tPを演算する。
動作点指令部400では、アクセルペダル開度APOと、目標駆動トルクTdと、目標モードと、車速VSPと、目標充放電電力tPとから、これらの動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルク/目標エンジン回転数と目標モータジェネレータトルク/目標モータジェネレータ回転数と目標第2クラッチ伝達トルク容量と自動変速機ATの目標変速比と第1クラッチソレノイド電流指令を演算する。また、動作点指令部400には、EV走行モードからHEV走行モードに遷移するときにエンジンEを始動するエンジン始動制御部が設けられている。
変速制御部500では、シフトマップに示すシフトスケジュールに沿って、目標第2クラッチ伝達トルク容量と目標変速段を達成するように自動変速機AT内のソレノイドバルブを駆動制御する。尚、シフトマップは、車速VSPとアクセルペダル開度APOに基づいて予め目標変速段が設定されたものである。
ギヤ異常判定部600は、前後加速度、自動変速機ATの入力回転数Nin、出力回転数Noutを入力して、自動変速機AT内にギヤ比異常が発生しているか否かを判定している。
〔WSC走行モードについて〕
次に、WSC走行モードの詳細について説明する。WSC走行モードとは、エンジンEが作動した状態を維持している点に特徴があり、目標駆動トルク変化に対する応答性が高い。具体的には、第1クラッチCL1を完全締結し、第2クラッチCL2を目標駆動トルクに応じた伝達トルク容量としてスリップ制御し、エンジンE及び/又はモータジェネレータMGの駆動トルクを用いて走行する。
実施例1のハイブリッド車両では、トルクコンバータのように回転数差を吸収する要素が存在しないため、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2を完全締結すると、エンジンEの回転数に応じて車速が決まってしまう。エンジンEには自立回転を維持するためのアイドル回転数による下限値が存在し、このアイドル回転数は、エンジンの暖機運転等によりアイドルアップを行っていると、更に下限値が高くなる。また、目標駆動トルクが高い状態では素早くHEV走行モードに遷移できない場合がある。
一方、EV走行モードでは、第1クラッチCL1を解放するため、上記エンジン回転数による下限値に伴う制限はない。しかしながら、バッテリSOCに基づく制限によってEV走行モードによる走行が困難な場合や、モータジェネレータMGのみで目標駆動トルクを達成できない領域では、エンジンEによって安定したトルクを発生する以外に手段がない。
そこで、上記下限値に相当する車速よりも低車速領域であって、かつ、EV走行モードによる走行が困難な場合やモータジェネレータMGのみでは目標駆動トルクを達成できない領域では、エンジン回転数を所定の下限回転数に維持し、第2クラッチCL2をスリップ制御させ、エンジントルクを用いて走行するWSC走行モードを選択する。
図8はWSC走行モードにおけるエンジン動作点設定処理を表す概略図、図9はWSC走行モードにおけるエンジン目標回転数を表すマップである。
WSC走行モードにおいて、運転者がアクセルペダルを操作すると、図9に基づいてアクセルペダル開度に応じた目標エンジン回転数特性が選択され、この特性に沿って車速に応じた目標エンジン回転数が設定される。そして、図8に示すエンジン動作点設定処理によって目標エンジン回転数に対応した目標エンジントルクが演算される。
ここで、エンジンEの動作点をエンジン回転数とエンジントルクにより規定される点と定義する。図8に示すように、エンジン動作点は、エンジンEの出力効率が高い動作点を結んだ線(以下、α線)上で運転することが望まれる。
しかし、上述のようにエンジン回転数を設定した場合、運転者によるアクセルペダル開度APO(目標駆動トルク)によってはα線から離れた動作点を選択することとなる。そこで、エンジン動作点をα線に近づけるために、目標エンジントルクは、α線を考慮した値にフィードフォワード制御される。
一方、モータジェネレータMGは、設定されたエンジン回転数を目標回転数とする回転数フィードバック制御が実行される。今、エンジンEとモータジェネレータMGは直結状態とされていることから、モータジェネレータMGが目標回転数を維持するように制御されることで、エンジンEの回転数も自動的にフィードバック制御されることとなる。
このとき、モータジェネレータMGが出力するトルクは、α線を考慮して決定された目標エンジントルクと目標駆動トルクとの偏差を埋めるように自動的に制御される。モータジェネレータMGでは、上記偏差を埋めるように基礎的なトルク制御量(回生・力行)が与えられ、更に、目標エンジン回転数と一致するようにフィードバック制御される。
あるエンジン回転数において、目標駆動トルクがα線上の駆動トルクよりも小さい場合、エンジン出力トルクを大きくした方がエンジン出力効率は上昇する。このとき、出力を上げた分のエネルギをモータジェネレータMGにより回収することで、第2クラッチCL2に入力されるトルク自体は運転者の要求トルクとしつつ、効率の良い発電が可能となる。
ただし、バッテリSOCの状態によって発電可能なトルク上限値が決定されるため、バッテリSOCからの要求発電出力(SOC要求発電電力)と、現在の動作点におけるトルクとα線上のトルクとの偏差(α線発電電力)との大小関係を考慮する必要がある。
図8(a)は、α線発電電力がSOC要求発電電力よりも大きい場合の概略図である。SOC要求発電電力以上にはエンジン出力トルクを上昇させることができないため、α線上に動作点を移動させることはできない。ただし、より効率の高い点へ移動させることで燃費効率を改善する。
図8(b)は、α線発電電力がSOC要求発電電力よりも小さい場合の概略図である。SOC要求発電電力の範囲内であれば、エンジン動作点をα線上に移動させることができるため、この場合は、最も燃費効率の高い動作点を維持しつつ発電することができる。
図8(c)は、エンジン動作点がα線よりも高い場合の概略図である。目標駆動トルクに応じた動作点がα線よりも高いときは、バッテリSOCに余裕があることを条件として、エンジントルクを低下させ、不足分をモータジェネレータMGの力行により補う。これにより、燃費効率を高くしつつ目標駆動トルクを達成することができる。
次に、WSC走行モード領域を、推定勾配に応じて変更している点について説明する。図10は車速を所定状態で上昇させる際のエンジン回転数マップである。
平坦路において、アクセルペダル開度がAPO1よりも大きな値の場合、WSC走行モード領域は下限車速VSP1よりも高い車速領域まで実行される。このとき、車速の上昇に伴って図9に示すマップのように徐々に目標エンジン回転数は上昇する。そして、VSP1'に相当する車速に到達すると、第2クラッチCL2のスリップ状態は解消され、HEV走行モードに遷移する。
推定勾配が所定勾配(g1もしくはg2)より大きい勾配路において、上記と同じ車速上昇状態を維持しようとすると、それだけ大きなアクセルペダル開度となる。このとき、第2クラッチCL2の伝達トルク容量TCL2は平坦路に比べて大きくなる。この状態で、仮に図5に示すマップのようにWSC走行モード領域を拡大してしまうと、第2クラッチCL2は強い締結力でのスリップ状態を継続することとなり、発熱量が過剰となるおそれがある。そこで、推定勾配が大きい勾配路のときに選択される図6のMWSC対応モードマップでは、WSC走行モード領域を不要に広げることなく、車速VSP1に相当する領域までとする。これにより、WSC走行モードにおける過剰な発熱を回避する。
〔MWSC走行モードについて〕
次に、MWSC走行モード領域を設定した理由について説明する。推定勾配が所定勾配(g1もしくはg2)より大きいときに、例えば、ブレーキペダル操作を行うことなく車両を停止状態もしくは微速発進状態に維持しようとすると、平坦路に比べて大きな駆動トルクが要求される。自車両の荷重負荷に対抗する必要があるからである。
第2クラッチCL2のスリップによる発熱を回避する観点から、バッテリSOCに余裕があるときはEV走行モードを選択することも考えられる。このとき、EV走行モード領域からWSC走行モード領域に遷移したときにはエンジン始動を行う必要があり、モータジェネレータMGはエンジン始動用トルクを確保した状態で駆動トルクを出力するため、駆動トルク上限値が不要に狭められる。
また、EV走行モードにおいてモータジェネレータMGにトルクだけを出力し、モータジェネレータMGの回転を停止もしくは極低速回転すると、インバータのスイッチング素子にロック電流が流れ(電流が1つの素子に流れ続ける現象)、耐久性の低下を招くおそれがある。
また、1速でエンジンEのアイドル回転数に相当する下限車速VSP1よりも低い領域(VSP2以下の領域)において、エンジンE自体は、アイドル回転数より低下させることができない。このとき、WSC走行モードを選択すると、第2クラッチCL2のスリップ量が大きくなり、第2クラッチCL2の耐久性に影響を与えるおそれがある。
特に、勾配路では、平坦路に比べて大きな駆動トルクが要求されていることから、第2クラッチCL2に要求される伝達トルク容量は高くなり、高トルクで高スリップ量の状態が継続されることは、第2クラッチCL2の耐久性の低下を招きやすい。また、車速の上昇もゆっくりとなることから、HEV走行モードへの遷移までに時間がかかり、更に発熱するおそれがある。
そこで、エンジンEを作動させたまま、第1クラッチCL1を解放し、第2クラッチCL2の伝達トルク容量を運転者の目標駆動トルクに制御しつつ、モータジェネレータMGの回転数が第2クラッチCL2の出力回転数よりも所定回転数高い目標回転数にフィードバック制御するMWSC走行モードを設定した。
言い換えると、モータジェネレータMGの回転状態をエンジンのアイドル回転数よりも低い回転数としつつ第2クラッチCL2をスリップ制御するものである。同時に、エンジンEはアイドル回転数を目標回転数とするフィードバック制御に切り換える。WSC走行モードでは、モータジェネレータMGの回転数フィードバック制御によりエンジン回転数が維持されていた。これに対し、第1クラッチCL1が解放されると、モータジェネレータMGによってエンジン回転数をアイドル回転数に制御できなくなる。よって、エンジンE自体によりエンジン回転数フィードバック制御を行う。
MWSC走行モード領域の設定により、以下に列挙する効果を得ることができる。
1) エンジンEが作動状態であることからモータジェネレータMGにエンジン始動分の駆動トルクを残しておく必要が無く、モータジェネレータMGの駆動トルク上限値を大きくすることができる。具体的には、目標駆動トルク軸で見たときに、EV走行モードの領域よりも高い目標駆動トルクに対応できる。
2) モータジェネレータMGの回転状態を確保することでスイッチング素子等の耐久性を向上できる。
3) アイドル回転数よりも低い回転数でモータジェネレータMGを回転することから、第2クラッチCL2のスリップ量を小さくすることが可能となり、第2クラッチCL2の耐久性の向上を図ることができる。
〔ギヤ比異常について〕
自動変速機ATは、複数の摩擦締結要素を選択的に締結または開放し、摩擦締結要素の締結開放状態の組み合わせによって所定の変速段を達成している。
しかし、摩擦締結要素を締結方向に駆動するアクチュエータとしてのバルブがスティックする、また摩擦締結要素が締結したまま固着すると所望の変速段に応じた変速比(ギヤ比ともいう)を得ることができないギヤ比異常が発生する。特に、ギヤ比異常により車両の急減速が発生するものはインターロックと呼ばれる。インターロックが発生したときには、他の摩擦締結要素を開放し別の変速段にして急減速を回避する。
〔μスリップ制御について〕
EV走行モード中に、運転者がアクセルペダルなどを踏み込むと運転領域がWSC走行モードやHEV走行モードに移行する。このときエンジン始動が行われるが、このときエンジン始動時のトルク変動が駆動輪RL,RR側に伝達しないように、自動変速機AT内の第2クラッチCL2はスリップ制御されている。
EV走行モード中には、通常第2クラッチCL2は完全締結されているが、エンジン始動の応答性を高めるため第2クラッチCL2をスリップ制御し、自動変速機ATの入力回転数Ninを出力回転数Noutに目標変速比をかけた値よりも高くなるように制御している。具体的には、目標変速比が1であるときに自動変速機ATの出力回転数Noutが1000[rpm]であるときに入力回転数Ninが1050[rpm]となるよう制御し、また目標変速比が3であるときに出力回転数Noutが1000[rpm]であるときに入力回転数Ninが3050[rpm]となるよう制御している。尚、変速比は入力回転数Nin/出力回転数Noutによって定義される。
このように、第2クラッチCL2をスリップ制御させて、入力回転数Ninを出力回転数Noutに目標変速比をかけた値よりも高くする制御をμスリップ制御と呼ぶ。実施例1では目標変速比に関わりなく、出力回転数Noutに目標変速比をかけた値にスリップ回転数(50[rpm])加えた値を入力回転数Ninに設定している。尚、スリップ回転数は50[rpm]より高くても低くても良く、また目標変速比に応じて可変に設定しても良い。つまり、エンジン始動時のトルク変動を第2クラッチCL2で吸収できるようにできれば良い。
〔ギヤ比異常判定処理〕
図11は、ギヤ比異常判定部600において行われるギヤ比異常判定処理のフローの流れを示すフローチャートである。
ステップS1では、自動変速機ATが変速中であるか否かを判定し、変速中であるときには処理を終了し、変速中でないときにはステップS2へ移行する。
ステップS2では、自動変速機ATが変速の前処理中であって、コースト走行中であるか否かを判定し、前処理中であってコースト走行中であるときには処理を終了し、前処理中でないもしくはコースト走行中でないときにはステップS3へ移行する。
ステップS3では、μスリップ制御中であるか否かを判定し、μスリップ制御中であるときにはステップS4へ移行し、μスリップ制御中でないときにはステップS9へ移行する。
ステップS4では、減速度の大きさが所定値d1以上であるか否かを判定し、所定値d1以上であるときにはステップS5へ移行し、所定値d1未満であるときには処理を終了する。
ステップS5では、入力回転数Ninからスリップ回転数αを引いた値を補正入力回転数N'inとして演算する。
ステップS6では、補正入力回転数N'in/出力回転数Noutが目標変速比に対して±15%の範囲にあるか否かを判定し、±15%の範囲にあるときにはステップS7へ移行し、±15%の範囲外にあるときにはステップS8へ移行する。
ステップS7では、ギヤ比異常が発生していないと判定し、処理を終了する。
ステップS8では、ギヤ比異常が発生していと判定し、処理を終了する。
ステップS9では、入力回転数Nin/出力回転数Noutが目標変速比に対して±6%の範囲にあるか否かを判定し、±6%の範囲にあるときにはステップS10へ移行し、±6%の範囲外にあるときにはステップS11へ移行する。
ステップS10では、ギヤ比異常が発生していないと判定し、処理を終了する。
ステップS11では、ギヤ比異常が発生していと判定し、処理を終了する。
〔ギヤ比異常判定処理動作〕
ギヤ比異常判定処理の動作について説明する。
自動変速機ATが変速中であるときには、処理を終了する。自動変速機ATの変速中には、変速比は不安定であり、加減速度の変化も大きい。このため、ギヤ比異常であるか、変速特性によるものであるか判定が困難であり、誤判定を避けるためにギヤ比異常判定処理を終了している。
自動変速機ATが変速中でないときには、ステップS1→ステップS2へと移行する。ステップS2において、自動変速機ATが変速の前処理中であって、コースト走行中であるときには処理を終了する。変速の直前には、開放する摩擦締結要素の油圧を摩擦締結要素が滑らない程度に低下させ、締結する摩擦締結要素の油圧を摩擦締結要素が締結しない程度に上昇させて、変速時に素早く締結・開放を行えるようにしている。
実施例1のハイブリッド車両では、コースト時にモータジェネレータMGにより回生させるため、自動変速機ATに過大なトルクが作用し、開放する摩擦締結要素の油圧を摩擦締結要素が滑らない程度に低下させていたとしても、滑りが生じることがある。
図12は、変速時の各要素のタイムチャートである。図12(a)は変速段を、図12(b)は変速比、図12(c)は摩擦締結要素の締結油圧を示すタイムチャートである。図12(c)に示すように開放する摩擦締結要素の油圧を低下させたときに、図12(b)の摩擦締結要素の滑り発生により、点線で示した変速比が実線で示した変速比まで低下している。この滑りにより、ギヤ比異常であると誤判定するおそれがあるため、ギヤ比異常判定処理を終了している。
μスリップ制御中でないときであって、入力回転数Nin/出力回転数Noutが目標変速比に対して±6%の範囲内にあるときには、ステップS3→ステップS9→ステップS10へと移行してギヤ比正常と判定する。一方、μスリップ制御中でないときであって、入力回転数Nin/出力回転数Noutが目標変速比の±6%の範囲内にないときには、ステップS3→ステップS9→ステップS11へと移行してギヤ比異常と判定する。
図13は、目標変速比が1のときのギヤ比異常判定範囲を示すグラフである。例えば変速比が1のときには、0.94≦Nin/Nout≦1.06の範囲にあればギヤ比正常と判定し、それ以外の範囲にあるときにはギヤ比異常と判定する。
入力回転数Nin/出力回転数Noutと目標変速比との差が大きいときには、自動変速機AT内で摩擦締結要素の締結・開放が正常に行われず、所望の変速段に応じた変速比が得られていないと判断している。
μスリップ制御中であって減速度の大きさが所定値d1以上であるときには、ステップS3→ステップS4→ステップS5へと移行する。一方、μスリップ制御中であって減速度の大きさが所定値d1未満であるときには、ステップS3→ステップS4→ENDと進み、処理を終了する。
μスリップ制御中は第2クラッチCL2をスリップ制御させているため、入力回転数Nin/出力回転数Noutと目標変速比との差からギヤ比異常判定を行う本処理では、判定精度が低下する。インターロックは急減速を伴うため、急減速を回避するためにギヤ比異常判定を続ける必要はあるが、急減速を伴わないギヤ比異常では精度の低い判定を回避している。
ステップS5では、補正入力回転数N'inを求めることで、第2クラッチCL2をスリップ制御することにより増加している変速比を補正している。
続くステップS6以降では、補正入力回転数N'in/出力回転数Noutが目標変速比の±15%の範囲内にあるときには、ステップS6→ステップS7へと移行してギヤ比正常と判定する。一方、補正入力回転数N'in/出力回転数Noutが目標変速比に対して±15%の範囲内にないときには、ステップS6→ステップS8へと移行してギヤ比異常と判定する。例えば変速比が1のときには、0.85≦N'in/Nout≦1.15の範囲にあればギヤ比正常と判定し、それ以外の範囲にあるときにはギヤ比異常と判定する(図13)。
前述の通り、μスリップ制御中は第2クラッチCL2をスリップ制御させているため、入力回転数Nin/出力回転数Noutと目標変速比との差からギヤ比異常判定を行う本処理では、判定精度が低下する。μスリップ制御中のギヤ比異常判定範囲(ステップS6)を、μスリップ制御中でないときのギヤ比異常判定範囲(ステップS9)に対して広く設定することにより、誤ってギヤ比異常と判定する可能性を小さくしている。
〔作用〕
自動変速機ATのギヤ比異常は、実際の変速比(入力回転数Nin/出力回転数Nout)が目標変速比に対して所定の範囲外であることで判定することができる。しかし、μスリップ制御中は入力回転数Ninが高めに制御されるため、上記の判定方法では、ギヤ比異常を誤判定するおそれがある。
そこで実施例1では、μスリップ制御中は、実際の変速比(入力回転数Nin/出力回転数Nout)をスリップ回転数α分補正した値が、目標変速比の所定範囲外であるときには、自動変速機AT内にギヤ比異常が発生していると判定することとした。具体的には、入力回転数Ninからスリップ回転数αを引いた値を補正入力回転数N'inとし、補正後の変速比(補正入力回転数N'in/出力回転数Nout)を用いてギヤ比異常判定を行うこととした。
これにより、μスリップ制御中であってもギヤ比異常判定を行うことができ、ギヤ比異常の誤判定を低減することができる。
またμスリップ制御中は、第2クラッチCL2をスリップ制御させているためギヤ比異常の判定精度が低くなる。
そこで実施例1では、μスリップ制御中でないときのギヤ比異常を判定する所定範囲(目標変速比±6%)よりも、μスリップ制御中のギヤ比異常を判定する所定範囲(目標変速比±15%)を大きく設定した。
これにより、μスリップ制御中の外乱などにより、実際の変速比が変動してもギヤ比異常の発生の誤判定することを抑制することができる。
またμスリップ制御中は、第2クラッチCL2をスリップ制御させているためギヤ比異常の判定精度が低くなる。
そこで実施例1では、スリップ制御中は、減速度の大きさが所定値d1よりも小さいときには、ギヤ比異常判定を行わないようにした。
これにより、ギヤ比異常のなかでも急減速を伴うインターロックが発生しているときには、ギヤ比異常判定を行い、急減速を回避することができる。一方、急減速を伴わないギヤ比異常では精度の低い判定を回避することができる。
〔効果〕
実施例1の効果を以下に列記する。
(1)車両の駆動トルクを出力するエンジンEおよびモータジェネレータMG(駆動源)からの出力回転数を変速して出力する自動変速機ATと、自動変速機ATの出力回転数Noutに対する入力回転数Ninの比である変速比が目標変速比となるように制御し、入力回転数Ninが、出力回転数Noutに目標変速比をかけた値に所定のスリップ回転数αを加えた値となるようにμスリップ制御する変速制御部500(変速機制御手段、スリップ制御手段)、μスリップ制御が行われていないときに、実際の変速比が目標変速比の所定範囲外であるときには、自動変速機At内にギヤ比異常が発生していると判定し、μスリップ制御が行われているときに、実際の変速比をスリップ回転数α分補正した値(N'in/Nout)が目標変速比の所定範囲外であるときには、自動変速機AT内にギヤ比異常が発生していると判定するギヤ比異常判定部600(異常判定手段)とを設けた。
よって、μスリップ制御中であってもギヤ比異常判定を行うことができ、ギヤ比異常の誤判定を低減することができる。
(2)エンジンEおよびモータジェネレータMG(駆動源)が出力する車両の駆動トルクが摩擦締結要素を介して供給されるとともに、エンジンEおよびモータジェネレータMGが出力した回転数を変速して、駆動輪RL,RRに出力する自動変速機ATと、エンジンEおよびモータジェネレータMGと摩擦締結要素との間に設けられ、自動変速機ATの入力軸側の回転数である入力回転数Ninを検出する入力回転数センサ20(第1の回転数センサ)と、自動変速機ATと駆動輪RL,RRとの間に設けられ、自動変速機ATの出力軸側の回転数である出力回転数Noutを検出する出力回転数センサ21(第2の回転数センサ)と、出力回転数Noutに対する入力回転数Ninの比である変速比が目標変速比となるように制御し、入力回転数Ninが、出力回転数Noutに目標変速比をかけた値に所定のスリップ回転数αを加えた値となるように、摩擦締結要素をスリップ制御する変速制御部500(変速機制御手段、スリップ制御手段)と、スリップ制御が行われていないときに、実際の変速比が目標変速比の所定範囲外であるときには、自動変速機AT内に異常が発生していると判定し、スリップ制御が行われているときに、実際の変速比をスリップ回転数αに基づき補正した値が目標変速比の所定範囲外であるときには、自動変速機AT内に異常が発生していると判定するギヤ比異常判定部600(異常判定手段)と、を設けた。
よって、μスリップ制御中であってもギヤ比異常判定を行うことができ、ギヤ比異常の誤判定を低減することができる。
(3)車両の駆動トルクを出力するエンジンEおよびモータジェネレータMG(駆動源)が出力した回転数を変速するとともに、変速した回転数を摩擦締結要素を介して駆動輪に出力する自動変速機にATと、エンジンEおよびモータジェネレータMG(駆動源)と自動変速機ATとの間に設けられ、自動変速機ATの入力軸側の回転数である入力回転数Ninを検出する入力回転数センサ20(第1の回転数センサ)と、摩擦締結要素と駆動輪RL,RRとの間に設けられ、自動変速機ATの出力軸側の回転数である出力回転数Noutを検出する出力回転数センサ(第2の回転数センサ)と、出力回転数Noutに対する入力回転数Ninの比である変速比が目標変速比となるように制御し、入力回転数Ninが、出力回転数Noutに目標変速比をかけた値に所定のスリップ回転数αを加えた値となるように、摩擦締結要素をスリップ制御する変速制御部500(変速制御手段、スリップ制御手段)と、スリップ制御が行われていないときに、実際の変速比が目標変速比の所定範囲外であるときには、自動変速機AT内に異常が発生していると判定し、スリップ制御が行われているときに、実際の変速比をスリップ回転数αに基づいて補正した値が目標変速比の所定範囲外であるときには、自動変速機AT内に異常が発生していると判定するギヤ比異常判定部600(異常判定手段)と、を設けた。
よって、μスリップ制御中であってもギヤ比異常判定を行うことができ、ギヤ比異常の誤判定を低減することができる。
(4)ギヤ比異常判定部600は、μスリップ制御が行われていないときに自動変速機AT内にギヤ比異常が発生していると判定する際に用いる所定範囲よりも、μスリップ制御が行われているときに用いる所定範囲を大きく設定した。
よって、μスリップ制御中の外乱などにより、実際の変速比が変動してもギヤ比異常の発生の誤判定することを抑制することができる。
(5)ギヤ比異常判定部600は、μスリップ制御が行われている場合には、減速度の大きさが所定値よりも小さいときにはギヤ比異常が発生していることを判定しないようにした。
よって、ギヤ比異常のなかでも急減速を伴うインターロックが発生しているときには、ギヤ比異常判定を行い、急減速を回避することができる。一方、急減速を伴わないギヤ比異常では精度の低い判定を回避することができる。
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
実施例1では、FR型のハイブリッド車両について説明したが、FF型のハイブリッド車両であっても構わない。
実施例1では、入力回転数Ninからスリップ回転数αを引いた補正入力回転数N'inを用いて、補正変速比を補正入力回転数N'in/出力回転数Noutとして求めている。これを、出力回転数Noutにスリップ回転数αを変速比で除した値を加えた補正出力回転数N'outを用いて、補正変速比を入力回転数Nin/補正出力回転数N'outとして求めても良い。または、実際の変速比(入力回転数Nin/出力回転数Nout)に、(入力回転数Nin-スリップ回転数α)/入力回転数Ninをかけた値を補正変速比として用いても良い。
実施例1では、スリップ制御が行なわれる第2クラッチとして、自動変速機AT内の摩擦締結要素を流用する場合について説明したが、第2クラッチを別途、設けるようにしてもよい。この場合、第2クラッチは、駆動源であるモータジェネレータMGと自動変速機ATの間に設けてもよいし、自動変速機ATと駆動輪(左後輪RL、右後輪RR)の間に設けてもよい。更に、第2クラッチをモータジェネレータMGと自動変速機ATの間に設けた場合には、自動変速機ATの入力軸の回転数である入力回転数Ninは、モータジェネレータMGと第2クラッチの間に設けられた回転数センサによって検出される。また、第2クラッチを自動変速機ATと駆動輪(左後輪RL、右後輪RR)との間に設けた場合には、自動変速機ATの出力軸の回転数である出力回転数Noutは、第2クラッチと駆動輪(左後輪RL、右後輪RR)との間に設けられた回転数センサによって検出される。
E エンジン(駆動源)
MG モータジェネレータ(駆動源)
AT 自動変速機
RL 左駆動輪(駆動輪)
RR 右駆動輪(駆動輪)
20 入力回転数センサ(第1の回転数センサ)
21 出力回転数センサ(第2の回転数センサ)
500 変速制御部(変速機制御手段、スリップ制御手段)
600 ギヤ比異常判定部(異常判定手段)
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