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JP2012086824A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐異物噛み込み性能を向上できる空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】この空気入りタイヤ1では、ラグ溝31、32のタイヤ周方向の断面視にて、ラグ溝31、32が溝深さ方向に対して傾斜角γにて傾斜する。このとき、周方向主溝21(22)を挟んで隣り合う陸部41、41(41、42)のうち、一方の陸部41におけるラグ溝31の傾斜角γと、他方の陸部41(42)におけるラグ溝31(32)の傾斜角γとが相互に逆方向となる。また、この周方向主溝21(22)の溝壁角度がタイヤ周方向に向かうに連れて変化する。また、これらの陸部41、41(41、42)に挟まれた周方向主溝21(22)の左右の溝壁が、タイヤ周方向への投射図にて重複部を有する。
【選択図】図1

Description

この発明は、空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、耐異物噛み込み性能を向上できる空気入りタイヤに関する。
重荷重車両に装着される空気入りタイヤでは、周方向主溝に石が噛み込んで抜けなくなり、この石噛みによりタイヤの耐久性能が低下するという課題がある。このような課題に関する従来の空気入りタイヤとして、特許文献1〜4に記載される技術が知られている。
特開平5−338413号公報 特開2002−337514号公報 特開2008−087628号公報 特開2004−155382号公報
この発明は、耐異物噛み込み性能を向上できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝と、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝と、前記周方向主溝および前記ラグ溝に区画されて成る陸部とを備える空気入りタイヤであって、前記ラグ溝のタイヤ周方向の断面視にて、前記ラグ溝が溝深さ方向に対して傾斜角γにて傾斜すると共に、前記周方向主溝を挟んで隣り合う前記陸部のうち一方の前記陸部における前記ラグ溝の傾斜角γと、他方の前記陸部における前記ラグ溝の傾斜角γとが相互に逆方向となり、且つ、前記周方向主溝の溝壁角度がタイヤ周方向に向かうに連れて変化すると共に、前記周方向主溝の対向する溝壁がタイヤ周方向への投射図にて重複部を有することを特徴とする。
この空気入りタイヤでは、タイヤ接地時にて、隣り合う陸部がタイヤ周方向に対して相互に逆方向に倒れ込むことにより、周方向主溝の溝壁が噛み込んだ異物を押し上げて周方向主溝の外部に排出させる。これにより、タイヤの耐異物噛み込み性能が向上する利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記周方向主溝の溝壁のタイヤ周方向への投射図にて、対向する前記溝壁の重複部の面積Saと総投射影面積SとがSa/S≧0.15である。
この空気入りタイヤでは、重複部の面積Saが適正化されるので、タイヤの耐異物噛み込み性能がさらに向上する利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記ラグ溝の傾斜角γが5[deg]≦|γ|≦45[deg]の範囲内にある。
この空気入りタイヤでは、傾斜角γの範囲が適正化されるので、タイヤ接地時にて、タイヤ周方向への陸部の動きが良好となる。これにより、タイヤの耐異物噛み込み性能がさらに向上する利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、一方の前記陸部における前記ラグ溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角θと、他方の前記陸部における前記ラグ溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角φとが|θ−φ|<20[deg]の関係を有する。
この空気入りタイヤでは、ラグ溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角θ、φの関係が適正化されるので、タイヤ接地時における隣り合う陸部の倒れ込み方向がほぼ逆方向となる。これにより、タイヤの耐異物噛み込み性能が効果的に向上する利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、前記ラグ溝の溝深さhがh≧6[mm]の範囲にある。
この空気入りタイヤでは、ラグ溝の溝深さhが適正化されるので、タイヤ接地時における隣り合う陸部の倒れ込み作用が適正に得られる。これにより、タイヤの耐異物噛み込み性能が適正に向上する利点がある。
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、重荷重用ラジアルタイヤに適用される。
この発明にかかる空気入りタイヤでは、タイヤ接地時にて、隣り合う陸部がタイヤ周方向に対して相互に逆方向に倒れ込むことにより、周方向主溝の溝壁が噛み込んだ異物を押し上げて周方向主溝の外部に排出させる。これにより、タイヤの耐異物噛み込み性能が向上する利点がある。
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。 図2は、図1に記載した空気入りタイヤのラグ溝を示すA−A視断面図である。 図3は、図1に記載した空気入りタイヤのラグ溝を示すタイヤ周方向のB−B視断面図である。 図4は、図1に記載した空気入りタイヤの周方向主溝の溝壁を示すC部斜視図である。 図5は、図1に記載した空気入りタイヤの周方向主溝の溝壁を示す投射図である。 図6は、図1に記載した空気入りタイヤの作用を示す説明図である。 図7は、図1に記載した空気入りタイヤの作用を示す説明図である。 図8は、図1に記載した空気入りタイヤのラグ溝の変形例を示す説明図である。 図9は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。 図10は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す表である。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。
この空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21、22と、タイヤ幅方向に延在するラグ溝31、32と、これらの周方向主溝21、22およびラグ溝31、32に区画されて成る陸部41、42とをトレッド部に備える(図1参照)。例えば、この実施の形態では、タイヤ赤道線CL上の周方向主溝21を中心として、3本の周方向主溝21、22が形成されている。また、タイヤ幅方向に延在してこれらの周方向主溝21、22に開口する複数のラグ溝31、32が形成されている。そして、これらの周方向主溝21、22およびラグ溝31、32により4列の陸部(ブロック列)41、42が区画されている。また、タイヤ赤道線CLを中心とした左右対称なトレッドパターンが形成されている。
なお、この実施の形態では、タイヤ幅方向の最も外側にある周方向主溝22、22を境界としてトレッド部のタイヤ幅方向内側にある陸部41をセンター陸部と呼び、タイヤ幅方向外側にある陸部42をショルダー陸部と呼ぶ。また、周方向主溝21、22とは、溝幅6[mm]以上かつ溝深さが最も深い位置で10[mm]以上となる周方向溝をいうものとする。
[石噛み抑制構造]
図2および図3は、図1に記載した空気入りタイヤのラグ溝を示すA−A視断面図(図2)およびB−B視断面図(図3)である。これらの図は、周方向主溝を挟んで隣り合う陸部のラグ溝をそれぞれ示している。図4は、図1に記載した空気入りタイヤの周方向主溝の溝壁を示すC部斜視図である。同図は、タイヤ周方向に変化する溝壁角度の単位周期あたりの様子を示している。図5は、図1に記載した空気入りタイヤの周方向主溝の溝壁を示す投射図である。
この空気入りタイヤ1は、周方向主溝21、22における石噛みを抑制するために、以下の構造を備える(図1〜図5参照)。
まず、ラグ溝31、32のタイヤ周方向の断面視にて、ラグ溝31、32が溝深さ方向に対して傾斜角γにて傾斜する(図1〜図3参照)。また、周方向主溝21(22)を挟んで隣り合う陸部41、41(41、42)のうち、一方の陸部41におけるラグ溝31の傾斜角γと、他方の陸部41(42)におけるラグ溝31(32)の傾斜角γとが相互に逆方向(異符号)となる。また、この周方向主溝21(22)の溝壁角度がタイヤ周方向に向かうに連れて変化する(図1および図4参照)。また、これらの陸部41、41(41、42)に挟まれた周方向主溝21(22)の左右の溝壁が、タイヤ周方向への投射図にて重複部(面積Sa)を有する(図5参照)。
例えば、この実施の形態では、左右一対のセンター陸部41、41およびショルダー陸部42、42が、それぞれ複数のラグ溝31、32を有している(図1〜図3参照)。また、これらのラグ溝31、32がタイヤ周方向に対して所定の傾斜角にて傾斜しつつ各陸部41、42を横断している。また、図1の左側のショルダー陸部42および右側のセンター陸部41では、ラグ溝32、31が溝深さ方向に対してタイヤ周方向かつ一方向(図1の下側)に傾斜している。一方、図1の左側のセンター陸部41および右側のショルダー陸部42では、ラグ溝31、32が溝深さ方向に対してタイヤ周方向かつ他方向(図1の上側)に傾斜している。これにより、周方向主溝21(22)を挟んで隣り合う陸部41、41(41、42)のラグ溝31、31(31、32)が、相互に逆方向に傾斜している(周方向主溝21、22を跨ぐたびに傾斜角γの向きを反転させている)。
また、周方向主溝21、22の溝底が、溝開口幅よりも狭い溝幅を有し、タイヤ周方向に向かってジグザグ状に延在している(図1および図4参照)。また、かかる立体的な溝壁面により、周方向主溝21、22の溝壁角度がタイヤ周方向に向かうに連れて変化している。また、一方の陸部41側にある周方向主溝21(22)の溝壁と、他方の陸部41(42)側にある周方向主溝21(22)の溝壁とが、タイヤ周方向への投射図にて、周方向主溝21(22)の最大溝深さ位置に重複部を有している(図5参照)。
また、この実施の形態では、周方向主溝21、22がストレート溝である(図1参照)。しかし、これに限らず、周方向主溝21、22がジグザグ溝であっても良い(図9参照)。
なお、周方向主溝21、22の溝底における溝幅Dは、D>0[mm]である。これにより、溝底におけるクラックの発生が抑制される。
なお、ラグ溝の傾斜角γとは、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に無負荷状態とされたときの、ラグ溝の溝深さ方向の進展角度であり、以下のように定義される(図2および図3参照)。まず、ラグ溝のタイヤ周方向の断面視にて、ラグ溝の溝開口幅の中点と、最大溝深さ位置(溝底幅の中点)とを結ぶ直線を引く。そして、この直線と、溝深さ方向(陸部の踏面に対する法線)とのなす角を傾斜角γとする。この傾斜角γは、ラグ溝の溝壁面が溝深さ方向に屈曲する構成(図8参照)においても、同様に定義される。また、ラグ溝の傾斜角γがラグ溝の溝長さ方向に向かうに連れて変化する構成(図示省略)では、傾斜角γがラグ溝の溝長さの全域における平均値として算出される。
また、周方向主溝の溝壁角度とは、タイヤ子午線方向の断面視にて、周方向主溝の溝壁面と溝深さ方向とのなす角をいうものとする。また、タイヤ周方向への投射図における周方向主溝の溝壁の重複部の有無は、接地長あたりの投射図に基づいて判断される。ここで、タイヤの接地長とは、タイヤが規定リムに装着されて規定内圧を付与されると共に静止状態にて平板に対して垂直に置かれて規定荷重に対応する負荷を加えられたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ周方向の長さをいう。
なお、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、ただし、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
図6および図7は、図1に記載した空気入りタイヤの作用を示す説明図である。これらの図において、図6の矢印は、タイヤ接地時における陸部41、42の倒れ込み方向を示している。また、図7は、周方向主溝21(22)に噛み込んだ異物X(例えば、小石)が排出される様子を示している。
この空気入りタイヤ1では、タイヤ転動時にて陸部41、42に接地圧が作用すると、隣り合う陸部41、41(41、42)のラグ溝31、31(31、32)が逆方向の傾斜角γを有するので、隣り合う陸部41、41(41、42)がタイヤ周方向に対して相互に逆方向に倒れ込む(図6参照)。すると、周方向主溝21(22)の溝壁が、この隣り合う陸部41、41(41、42)の動きに連動してタイヤ周方向かつ相互に逆方向に変位する。すると、周方向主溝21(22)がタイヤ周方向に向かうに連れて変化する溝壁角度を有するので、対向する溝壁が溝幅を溝底側から溝開口部側に向かって絞り込むように変位する(図7参照)。これにより、対向する溝壁が噛み込んだ異物Xを押し上げて、周方向主溝21(22)の外部に排出させる。
なお、この空気入りタイヤ1では、周方向主溝21(22)の溝壁のタイヤ周方向への投射図にて、対向する溝壁の重複部の面積Saと総投射影面積SとがSa/S≧0.15の関係を有することが好ましく、さらに、Sa/S≧0.25の関係を有することが好ましい(図5参照)。これにより、重複部の面積Saが適正化される。
ここで、総投射影面積Sは、対向する陸部のエッジ部を結んだ直線(陸部の踏面の延長線)と、対向する陸部のエッジ部からそれぞれ引いた陸部の踏面に対する垂線と、溝底を通り陸部の踏面に平行な直線とに囲まれる領域の面積をいう(図5参照)。なお、重複部の面積Saおよび総投射影面積Sは、周方向主溝21、22がタイヤ周方向に屈曲あるいは湾曲しつつ延在する構成においても、同様に定義される(図9参照)。また、Sa/Sの上限値は、ストレート溝であれば、Sa/S=0.25であり、振幅の大きなジグザグ溝であれば、最大Sa/S=1.0となる。
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝31、32の傾斜角γが5[deg]≦|γ|≦45[deg]の範囲内にあることが好ましく、さらに、15[deg]≦|γ|≦25[deg]の範囲内にあることが好ましい(図2および図3参照)。これにより、ラグ溝31、32の傾斜角γが適正化される。
また、この空気入りタイヤ1では、周方向主溝21(22)を挟んで隣り合う陸部41、41(41、42)のうち、一方の陸部41におけるラグ溝31のタイヤ幅方向に対する傾斜角θと、他方の陸部41(42)におけるラグ溝31(32)のタイヤ幅方向に対する傾斜角φとが|θ−φ|<20[deg]の関係を有することが好ましく、さらに、|θ−φ|=0[deg]であることがより好ましい。これにより、ラグ溝31、32のタイヤ幅方向に対する傾斜角θ、φが適正化される。
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝31、32の溝深さhがh≧6[mm]の範囲にあることが好ましく、さらに、h≧8[mm]の範囲にあることが好ましい(図2および図3参照)。これにより、ラグ溝31、32の溝深さhが適正化される。なお、溝深さhの上限は、トレッド部の溝下ゲージに依存する。
また、この実施の形態では、周方向主溝21、22がストレート溝であり、これらの周方向主溝21、22の溝壁角度がタイヤ周方向に向かうに連れて変化している(図1参照)。このとき、周方向主溝21、22の溝壁角度の変化の周期が、陸部41のブロック長さの整数倍(2倍以上)となることが好ましい。例えば、図1に示す構成では、周方向主溝21、22の溝壁角度の2周期と、陸部41のブロック長さとが一致するように構成されている。かかる構成では、周方向主溝21(22)を挟む陸部41、41(41、42)のラグ溝31、31(31、32)の開口部と、周方向主溝21、22の溝壁角度の変化の節とを容易に一致させ得る。これにより、ラグ溝31、31(31、32)の排水性を向上させ得る。なお、陸部41のブロック長さがタイヤ周方向に変化する構成では、この変化にあわせて、周方向主溝21、22の溝壁角度の変化の周期が変化しても良い。
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝31、32のタイヤ周方向の断面視にて、ラグ溝31、32が溝深さ方向に対して傾斜角γにて傾斜する(図1参照)。このとき、周方向主溝21(22)を挟んで隣り合う陸部41、41(41、42)のうち、一方の陸部41におけるラグ溝31の傾斜角γと、他方の陸部41(42)におけるラグ溝31(32)の傾斜角γとが相互に逆方向(異符号)となる(図2および図3参照)。また、この周方向主溝21(22)の溝壁角度がタイヤ周方向に向かうに連れて変化する(図1および図4参照)。また、これらの陸部41、41(41、42)に挟まれた周方向主溝21(22)の左右の溝壁が、タイヤ周方向への投射図にて重複部を有する(図5参照)。
かかる構成では、タイヤ接地時にて、隣り合う陸部41、41(41、42)がタイヤ周方向に対して相互に逆方向に倒れ込むことにより、周方向主溝21(22)の溝壁が噛み込んだ異物Xを押し上げて周方向主溝21(22)の外部に排出させる(図6および図7参照)。これにより、タイヤの耐異物噛み込み性能が向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、周方向主溝21(22)の溝壁のタイヤ周方向への投射図にて、対向する溝壁の重複部の面積Saと総投射影面積SとがSa/S≧0.15の関係を有する(図5参照)。かかる構成では、重複部の面積Saが適正化されるので、タイヤの耐異物噛み込み性能がさらに向上する利点がある。例えば、Sa/S<0.15では、耐異物噛み込み性能が十分に得られないため、好ましくない。
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝31、32の傾斜角γが5[deg]≦|γ|≦45[deg]の範囲内にある(図2および図3参照)。かかる構成では、傾斜角γの範囲が適正化されるので、タイヤ接地時にて、タイヤ周方向への陸部41、42の動きが良好となる。これにより、タイヤの耐異物噛み込み性能がさらに向上する利点がある。例えば、|γ|<5[deg]では、タイヤ接地時にて、タイヤ周方向への陸部の変動が小さくなり、耐異物噛み込み性能が十分に得られないため、好ましくない。また、45[deg]<|γ|では、陸部の変動が大きくなり偏摩耗(例えば、ヒールアンドトゥ摩耗)が発生するおそれがあり、好ましくない。
なお、ラグ溝31、32の傾斜角γがラグ溝31、32の溝長さ方向に向かう途中で反転する構成(図示省略)では、ラグ溝31、32の溝長さの50%以上の領域にて、隣り合う陸部41、42のラグ溝31、32が上記した所定方向に傾斜することが好ましい。これにより、タイヤ接地時における隣り合う陸部41、42の倒れ込み方向が相互に逆方向となるので、タイヤの耐異物噛み込み性能が適正に向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、周方向主溝21(22)を挟んで隣り合う陸部41、41(41、42)のうち、一方の陸部41におけるラグ溝31のタイヤ幅方向に対する傾斜角θと、他方の陸部41(42)におけるラグ溝31(32)のタイヤ幅方向に対する傾斜角φとが|θ−φ|<20[deg]の関係を有する。かかる構成では、ラグ溝31、32のタイヤ幅方向に対する傾斜角θ、φの関係が適正化されるので、タイヤ接地時における隣り合う陸部41、41(41、42)の倒れ込み方向がほぼ逆方向となる。これにより、タイヤの耐異物噛み込み性能が効果的に向上する利点がある。例えば、20[deg]≦|θ−φ|となると、タイヤ接地時における隣り合う陸部の倒れ込み方向が逆方向とならないため、周方向主溝の溝壁の動作が小さくなる。すると、耐異物噛み込み性能が十分に得られないため、好ましくない。
また、上記の構成では、ラグ溝31、32の傾斜角θ、φが10≦θ≦40、10≦φ≦40の範囲内にあることが好ましく、15≦θ≦30、15≦φ≦30の範囲内にあることがより好ましい。かかる構成では、ラグ溝31、32がタイヤ周方向に対して適正な傾斜角θ、φを有するので、タイヤ接地時にて陸部41、42が倒れ込んだときに、周方向主溝21(22)の対向する溝壁面が溝形状を捻り込むように変位する。すると、噛み込んだ異物が溝壁面に押し出されて排出され易くなる。これにより、タイヤの耐異物噛み込み性能が効果的に向上する利点がある。
また、この空気入りタイヤ1では、ラグ溝31、32の溝深さhがh≧6[mm]の範囲にある(図2および図3参照)。かかる構成では、ラグ溝31、32の溝深さhが適正化されるので、タイヤ接地時における隣り合う陸部41、42の倒れ込み作用が適正に得られる。これにより、タイヤの耐異物噛み込み性能が適正に向上する利点がある。例えば、h<6[mm]となると、タイヤ接地時における隣り合う陸部41、42の倒れ込み量が小さくなり、耐異物噛み込み性能が十分に得られないため、好ましくない。
[適用対象]
また、この空気入りタイヤ1は、重荷重用ラジアルタイヤを適用対象とすることが好ましい。重荷重用ラジアルタイヤでは、周方向主溝における異物の噛み込みが発生し易い傾向にある。したがって、重荷重用ラジアルタイヤを適用対象とすることにより、タイヤの耐異物噛み込み性能がより顕著に向上する利点がある。
[性能試験]
この実施の形態では、条件が異なる複数の空気入りタイヤについて、耐異物噛み込み性能に関する性能試験が行われた(図10参照)。この性能試験では、タイヤサイズ11/R22.5の空気入りタイヤがJATMA規定の適用リムに組み付けられ、この空気入りタイヤにJATMA規定の規定内圧および規定荷重が負荷される。また、8本の空気入りタイヤが2−DD方式の試験車両のドライブ軸に装着される。そして、試験車両が所定のテストコースを走行した後に、周方向主溝に噛み込んだ石の個数が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例1を基準(100)とした指数評価が行われる。この指数評価は、数値が大きいほど好ましい。
従来例1は、周方向主溝がストレート溝であり、また、ラグ溝が溝深さ方向に対して傾斜していない(傾斜角γ=0)。また、周方向主溝の溝壁角度がタイヤ周方向全周に渡って一定である。このため、周方向主溝の左右の溝壁が、タイヤ周方向への投射図にて重複しない(Sa/S=0)。
従来例2は、周方向主溝がストレート溝であり、また、ラグ溝が溝深さ方向に対して傾斜していない(傾斜角γ=0)。また、周方向主溝の溝壁角度がタイヤ周方向に向かうに連れて変化している。このため、周方向主溝の左右の溝壁が、タイヤ周方向への投射図にて重複部を有している(Sa/S=0.20)。
比較例は、周方向主溝がストレート溝である。また、周方向主溝を挟んで隣り合う陸部のラグ溝がタイヤ周方向に対して相互に逆方向に傾斜している(傾斜角|γ|=20[deg])。また、周方向主溝の溝壁角度がタイヤ周方向全周に渡って一定である。このため、周方向主溝の左右の溝壁が、タイヤ周方向への投射図にて重複しない(Sa/S=0)。
従来例3は、周方向主溝がジグザグ溝であり、また、ラグ溝が溝深さ方向に対して傾斜していない(傾斜角γ=0)。また、周方向主溝の溝壁角度がタイヤ周方向全周に渡って一定である。ただし、周方向主溝がジグザグ溝なので、周方向主溝の左右の溝壁が、タイヤ周方向への投射図にて重複部を有している(Sa/S=0.40)。
実施例1〜実施例7は、図1に記載した空気入りタイヤ1であり、周方向主溝21、22がストレート溝である。これらの実施例1〜実施例7では、周方向主溝21(22)を挟んで隣り合う陸部41、41(41、42)のラグ溝31、31(31、32)がタイヤ周方向に対して相互に逆方向かつ傾斜角γにてに傾斜している(図2および図3参照)。また、この周方向主溝21(22)の溝壁角度がタイヤ周方向に向かうに連れて変化している(図1および図4参照)。また、これらの陸部41、41(41、42)に挟まれた周方向主溝21(22)の左右の溝壁が、タイヤ周方向への投射図にて重複部(面積Sa)を有している(図5参照)。
また、実施例8は、図10に記載した空気入りタイヤ1であり、周方向主溝21、22がジグザグ溝である。この実施例8において、周方向主溝21、22およびラグ溝31、32の構成は、実施例1〜実施例7の空気入りタイヤ1と同じである。
試験結果に示すように、実施例1と従来例1〜3とを比較すると、実施例1の空気入りタイヤ1では、タイヤの耐異物噛み込み性能が向上することが分かる。また、実施例1と従来例2および比較例とを比較すると、周方向主溝21(22)を挟んで隣り合う陸部41、41(41、42)におけるラグ溝31、31(31、32)のタイヤ周方向に対する傾斜角γを逆方向とし、同時に、周方向主溝21、22の溝壁角度を変化させることにより、タイヤの耐異物噛み込み性能が飛躍的に向上することが分かる。
また、実施例1、2を比較すると、重複部の面積Saを適正化することにより、タイヤの耐異物噛み込み性能がさらに向上することが分かる。また、実施例1、3、4を比較すると、傾斜角γの範囲を適正化することにより、タイヤの耐異物噛み込み性能がさらに向上することが分かる。また、実施例1、5、6を比較すると、ラグ溝31、32のタイヤ幅方向に対する傾斜角θ、φの関係が適正化されることにより、タイヤの耐異物噛み込み性能が効果的に向上することが分かる。また、実施例1、7を比較すると、ラグ溝31、32の溝深さhが適正化されることにより、タイヤの耐異物噛み込み性能が効果的に向上することが分かる。
また、実施例8と従来例3とを比較すると、周方向主溝21(22)がジグザグ溝である場合(図9参照)にも、周方向主溝21(22)を挟んで隣り合う陸部41、41(41、42)におけるラグ溝31、31(31、32)のタイヤ周方向に対する傾斜角γを逆方向とし、また、周方向主溝21(22)の溝壁角度を変化させることにより、タイヤの耐異物噛み込み性能が飛躍的に向上することが分かる。
以上のように、この発明にかかる空気入りタイヤは、タイヤの耐異物噛み込み性能を向上できる点で有用である。
1 空気入りタイヤ
21、22 周方向主溝
31、32 ラグ溝
41 センター陸部
42 ショルダー陸部
X 異物

Claims (6)

  1. タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝と、タイヤ幅方向に延在する複数のラグ溝と、前記周方向主溝および前記ラグ溝に区画されて成る陸部とを備える空気入りタイヤであって、
    前記ラグ溝のタイヤ周方向の断面視にて、前記ラグ溝が溝深さ方向に対して傾斜角γにて傾斜すると共に、前記周方向主溝を挟んで隣り合う前記陸部のうち一方の前記陸部における前記ラグ溝の傾斜角γと、他方の前記陸部における前記ラグ溝の傾斜角γとが相互に逆方向となり、且つ、
    前記周方向主溝の溝壁角度がタイヤ周方向に向かうに連れて変化すると共に、前記周方向主溝の対向する溝壁がタイヤ周方向への投射図にて重複部を有することを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記周方向主溝の溝壁のタイヤ周方向への投射図にて、対向する前記溝壁の重複部の面積Saと総投射影面積SとがSa/S≧0.15である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記ラグ溝の傾斜角γが5[deg]≦|γ|≦45[deg]の範囲内にある請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 一方の前記陸部における前記ラグ溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角θと、他方の前記陸部における前記ラグ溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角φとが|θ−φ|<20[deg]の関係を有する請求項1〜3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記ラグ溝の溝深さhがh≧6[mm]の範囲にある請求項1〜4のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
  6. 重荷重用ラジアルタイヤに適用される請求項1〜5のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
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