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JP2012059599A - カーボン系電極及び電気化学装置 - Google Patents

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JP2012059599A
JP2012059599A JP2010202867A JP2010202867A JP2012059599A JP 2012059599 A JP2012059599 A JP 2012059599A JP 2010202867 A JP2010202867 A JP 2010202867A JP 2010202867 A JP2010202867 A JP 2010202867A JP 2012059599 A JP2012059599 A JP 2012059599A
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electrode layer
dye
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Takeshi Morozumi
武 両角
Yuichi Sasaki
勇一 佐々木
Seikichi Ri
成吉 李
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Abstract

【課題】 塗液の塗布や塗液層からの溶媒の蒸発などの簡易な低温工程で形成でき、安価でかつ耐電解液特性が良好なカーボン系電極、及び、このカーボン系電極を有し、色素増感型太陽電池などとして有用な電気化学装置を提供すること。
【解決手段】 支持体(対向基板6に相当)と、支持体上に配置された、バインダであるポリアミドイミドと、炭素を主体とし、かつポリアミドイミドに親和性を有するカーボン系微粒子とを含有し、両者を含む塗液層から溶媒が蒸発除去されてなる多孔質電極層(対向電極5に相当)とで、カーボン系電極を構成する。この際、カーボン系微粒子が、酸化処理されておらず、蒸留水との混合液が中性又は弱塩基性を示し、かつ中空状でない(中身のつまった)カーボンブラックであり、多孔質電極層におけるカーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比が1/15〜1/7であり、多孔質電極層の厚さが20μm以下であるのがよい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、塗液の塗布や塗液層からの溶媒の蒸発などの簡易な低温工程で形成でき、安価かつ耐電解液特性が良好なカーボン系電極、及び、このカーボン系電極を有し、色素増感型太陽電池などとして有用な電気化学装置に関するものである。
エネルギー源として石炭や石油などの化石燃料を用いると、二酸化炭素が発生する。二酸化炭素は地球温暖化を引き起こす原因物質の1つである。原子力エネルギーの利用では放射性元素が生成し、放射能汚染などの危険性が伴う。また、これらのエネルギー資源は有限であり、いずれ枯渇する。従って、これらのエネルギー源に過度に依存していくことには問題がある。近年、これらに代わる、クリーンで、無尽蔵なエネルギー源として、太陽光が注目されている。太陽電池は、太陽光のもつエネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換装置であり、太陽光をエネルギー源としているため、地球環境に与える影響が極めて小さい。このため、太陽電池のより一層の普及が期待されている。
太陽電池の原理や構成材料として、様々なものが提案されている。そのうち、半導体のpn接合を利用する太陽電池は、現在最も普及しており、シリコンを半導体材料とした太陽電池が多数市販されている。しかし、pn接合を用いる太陽電池の製造には、高純度の半導体材料を製造する工程や、pn接合を形成する工程が必要である。このため、高温プロセスなどの製造工程におけるエネルギー消費が大きいという問題がある。また、製造工程数が多く、クリーンルームや真空装置などの大がかりな装置が必要であるので、製造コストが高くなるという問題もある。
一方、色素によって光増感された光誘起電子移動を応用した色素増感型太陽電池が、グレッツェルらによって提案されている(特許公報第2664194号(第2および3頁、図1)、およびB.O'Regan and M.Graetzel,Nature,353,p.737-740(1991)など参照。)。
図7は、従来の、一般的な色素増感型太陽電池100の構造を示す要部断面図である。色素増感型太陽電池100は、主として、ガラスなどの透明基板101、透明導電層(負極集電体)102、光増感色素を保持した半導体電極層103(負極)、電解質層104、対向電極(正極)105、対向基板106、および(図示省略した)封止材などで構成されている。
透明基板101上に設けられた透明導電層102は、ITO(Indium Tin Oxide;インジウム・スズ複合酸化物)やFTO(フッ素がドープされた酸化スズ)などからなり、負極集電体として機能する。負極である半導体電極層103は、透明導電層102に接して設けられている。半導体電極層103としては、酸化チタンTiO2などの金属酸化物半導体の微粒子が焼結された多孔質層が用いられることが多い。光増感色素は、半導体電極層103を構成する金属酸化物の表面に吸着されている。電解質層104としては、酸化還元種(レドックス対)を含む電解液などが用いられる。対向電極105は白金層などで構成され、対向基板106上に設けられている。
色素増感型太陽電池100は、光が透明基板101側から入射するように構成されている。入射した光の一部は光増感色素によって吸収され、この光吸収によって励起された電子の一部が半導体電極層103に取り出される。一方、電子を失った光増感色素は、電解質層104中の還元種(還元剤)によって還元される。この反応によって電解質層104中に生じた酸化種(酸化剤)は、対向電極105から電子を受け取り、還元種にもどる。この結果、色素増感型太陽電池100は、透明導電層102および半導体電極層103を負極、対向電極105を正極とする光電池として動作する。
色素増感型太陽電池には、製造に真空処理工程が必要ないので、大がかりな装置を必要とせず、また、酸化チタンなどの安価な酸化物半導体を用いて、少ない工程で、生産性よく製造できる長所がある。また、可視光領域を中心として広い波長領域に、各波長領域の光を吸収できる光増感色素が種々存在するので、用いる色素を変えることによって、吸収する光の波長を選択したり、あるいは複数の色素を組み合わせることによって、広い波長領域の光を利用したりできる長所がある。加えて、プラスチックなどの、軽量でフレキシブルな基材を用いて、ロール・ツー・ロール・プロセスによって、さらに生産性よく安価に製造できる可能性を秘めている。このため、新世代の太陽電池として、近年非常に注目されている。
さて、従来、色素増感型太陽電池の対向電極(正極)105としては、優れた触媒作用と耐腐食性とをあわせもつことなどから、主として白金層が用いられている。白金層の形成には、スパッタリング法や、塩化白金酸溶液を塗布後、塩化白金酸を加熱分解して白金を遊離させる湿式法などが用いられる。白金層は触媒活性や耐腐食性や導電性に優れているが、白金が資源的に希少であり、高価であることや、作製に高真空工程もしくは高温工程を要することなどの問題点もある。そこで、プラスチック基材を用いて製造する太陽電池には、塗液の塗布や溶媒の蒸発などの、150℃以下程度の低温工程で、簡易かつ安価に電極層を形成できる電極材料および電極構造が求められている(斉藤恭輝、「色素増感太陽電池の電解質・対極材料開発」、化学工学、2007年、71(7)、p.452 参照。)。そこで、対向電極の電極材料としてカーボンを用いる構成や導電性高分子を用いる構成も報告されている。
例えば、後述の特許文献1には、対極基板の一面に抵抗率が0.001〜0.1Ω・cmであるカーボン含有導電層が設けられ、さらにその表面に比表面積が500〜3000m2/gであるカーボン含有触媒層が設けられた対向電極を有する色素増感型太陽電池が提案されている。特許文献1には下記のように説明されている。
上記の構成によれば、カーボン含有導電層によって十分な導電性が得られ、カーボン含有触媒層によって十分な触媒作用が得られるので、光電変換効率の高い色素増感型太陽電池を実現することができる。しかも、カーボン含有導電層およびカーボン含有触媒層はカーボンを主成分とするので、優れた耐腐食性を有する。
カーボン含有導電層は、導電性カーボンと樹脂とを含有するペーストから溶媒を蒸発させて形成する場合には、集電抵抗を十分に低く抑えることができる。導電性カーボンはとくに限定されないが、グラファイト、ケッチェンブラックおよびカーボンナノチューブのうちの少なくとも1種である場合に、集電抵抗をより低くすることができるので好ましく、グラファイトであるのがとくに好ましい。樹脂はとくに限定されず、熱硬化性樹脂でもよく、熱可塑性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂およびポリウレタン樹脂等を用いることができる。また、熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリアミド樹脂等を用いることができる。
また、導電性を向上させるために、カーボン含有導電層に他の導電性物質を含有させることもできる。この導電性物質としては、金属、導電性酸化物および導電性高分子等を用いることができる。導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等が挙げられる。カーボン含有導電層に含有される導電性物質は電解液と接触しないため、耐腐食性にかかわりなく、いずれの導電性物質も用いることができる。
カーボン含有触媒層は、多孔質樹脂シートと、この多孔質樹脂シートに保持された、触媒作用を有するカーボンとを備える。多孔質樹脂シートがカーボン含有導電層の表面に接合されていると、十分な触媒作用が発現するので好ましい。触媒作用を有するカーボンは、とくに限定されないが、活性炭であるのが好ましい。
多孔質樹脂シートを構成する樹脂はとくに限定されず、熱可塑性樹脂でもよく、熱硬化性樹脂でもよい。熱可塑性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリアミド樹脂等を用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂およびポリウレタン樹脂等を用いることができる。これらの樹脂のうち、耐久性が高いフッ素樹脂が好ましい。
カーボン含有触媒層は、導電性とともに十分な多孔性を有していなければならない。多孔質樹脂シートは連通孔を有し、この連通孔の壁面に触媒用カーボンを保持している。多孔質樹脂シートの作製方法はとくに限定されず、例えば、樹脂シートを冷延伸することで、多数の空隙を有する多孔質樹脂シートとすることができる。多孔質樹脂シートに触媒用カーボンを保持させる方法もとくに限定されず、例えば、触媒用カーボンを溶媒に分散させた分散液に多孔質樹脂シートを浸漬し、分散液を含浸させ、その後、溶媒を加熱などで除去するなどの方法を用いることができる。
カーボン含有触媒層とカーボン含有導電層とを接合する方法もとくに限定されない。例えば、カーボン含有導電層を形成させるための塗膜に、触媒用カーボンが保持された多孔質樹脂シートを積層し、その後、塗膜から溶媒を蒸発させることにより、カーボン含有導電層を作製すると同時に、カーボン含有触媒層とカーボン含有導電層とを接合することができる。また、両部材を各種の接着剤により接着することもできる。
また、後述の特許文献2には、光散乱粒子を含む半導体電極と、導電性高分子および/またはカーボン系材料を用いた対極とを有することを特徴とする光電変換素子が提案されている。特許文献2には下記のように説明されている。
対極に用いる導電性高分子として、一般的に知られているものはおよそ用いることができる。例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリアセン、ポリアズレン、ポリインドールあるいはそれらの誘導体を用いることができ、とくにポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)やポリアルキルチオフェン類等を好適に用いることができる。
対極に用いるカーボン系材料は、種々のものであってよいが、針状炭素、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、フラーレン、およびカーボンナノチューブ等である。迅速な電荷移動を実現するために、このカーボン系材料に白金などの金属が好適に担持される。カーボン系材料は、典型的にはバインダ(結着剤)と複合体化される。バインダは電解液に不溶であることが好ましく、ピッチ、フッ素ゴム、フッ素樹脂などの合成樹脂等を用いることができる。とくにポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、溶剤を用いて溶解させることができ、光や熱に対する安定性に優れている点で好ましい。
カーボン系材料は、触媒性能および耐電解液特性が良好で、かつ安価な材料が容易に得られることから、プラスチック基材を用いて製造する色素増感型太陽電池などの、対向電極の材料として好適である。しかし、カーボン系材料単独では成膜できないので、プラスチック基材などにカーボン系材料からなる電極層を形成する場合、多孔質樹脂シートの貫通孔に活性炭を保持する構成や、カーボン系材料を何らかのバインダと複合体化して電極層を形成する構成などが必要になる。この際、電極層が十分な触媒性能を発現するには、電極層が十分な多孔性を有していること、電極層におけるカーボン系材料の含有率が十分に大きいこと、および電極層が十分な導電性を有していることなどが必要である。
特許文献1のカーボン含有触媒層のように、多孔質樹脂シートを用いる構成でこれらの要求を高いレベルで満たすことは難しいと考えられる。なぜなら、多孔質樹脂シートでは、その強度を維持するために、多孔質樹脂シートの空孔率を極端に大きくすることはできないので、強度を維持し、かつ活性炭の脱落を防止しながら、貫通孔に保持できる活性炭の含有率は、高々50質量%程度に制限されると考えられる。また、特許文献1において多孔質樹脂シートとして例示されている材料には導電性がないので、カーボン含有触媒層が厚くなりすぎると導電性が低下し、光電変換効率が低下する。このためカーボン含有触媒層の厚さは制限されるが、そうなると単位面積当たりの活性炭量が制限されるので、大きな電流密度を得ることが難しくなる。
特許文献1に提案されている、対向電極の機能をカーボン含有導電層とカーボン含有触媒層とに分担させる構成は、一見すると合理的であるように思われるが、上述した多孔質樹脂シートを用いる構成の問題点を考慮すると、期待通りの性能を実際に得ることは難しいと考えられる。さらに、カーボン含有触媒層とカーボン含有導電層との接合部による導電性の低下や、電極層を2層構成にすることによる作製工程数やコストの増加および耐久性や信頼性の低下も考慮すると、電極層を2層構成にするメリットは少なく、単層構成の電極層によって問題解決をはかることが望ましいと考えられる。
カーボン系材料をバインダと複合体化して電極層を形成する場合、バインダが導電性を有することが好ましい。ただし、バインダの成膜性能が高く、少量のバインダの添加で成膜でき、カーボン系材料同士の接触によって導電性が確保される場合には、バインダに導電性がなくてもよい。長期的な信頼性を確保するためには、バインダは電解液と反応したり、電解液に溶解したりするものであってはいけない。塗布法や印刷法などの簡易な方法によって電極層を形成するためには、適当な溶媒を用いてカーボン系材料とバインダとを一緒に塗液化できることが必要である。このような観点から、従来、バインダとして、特許文献1や特許文献2に例示されているフッ素樹脂や導電性ポリマーが好適であるとされてきた。しかし、プラスチック基材を用いて製造する太陽電池では、電極層をより安価に形成できることが強く求められるので、フッ素樹脂や導電性ポリマーの使用量を抑えたり、より安価な別の材料で代替したりすることが求められる。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、塗液の塗布や塗液層からの溶媒の蒸発などの簡易な低温工程で形成でき、安価でかつ耐電解液特性が良好なカーボン系電極、及び、このカーボン系電極を有し、色素増感型太陽電池などとして有用な電気化学装置を提供することにある。
本発明者は、カーボン系微粒子を成膜するために添加する、安価なバインダについて鋭意研究した結果、本発明を完成させるに到った。
即ち、本発明は、
支持体と、
前記支持体上に配置され、バインダであるポリアミドイミドと、炭素を主体とし、か つ前記ポリアミドイミドに親和性を有するカーボン系微粒子とを含有し、両者を含む塗 液層から溶媒が蒸発除去されてなる多孔質電極層と
を有する、カーボン系電極に係わるものである。
また、本発明は、前記カーボン系電極を有する電気化学装置に係わるものである。
本発明のカーボン系電極において、前記ポリアミドイミドに親和性を有する前記カーボン系微粒子からなり、前記ポリアミドイミドをバインダとして有する前記多孔質電極層は、後述の実施例で示すように優れた耐電解液特性を示し、かつ安価である。しかも、前記多孔質電極層では、カーボン系微粒子が有する、優れた触媒性能および導電性が発現し、前記多孔質電極層は優れた触媒電極として機能する。この多孔質電極層は、前記カーボン系微粒子と前記ポリアミドイミドとを含有する塗液の塗布や、塗液層からの溶媒の蒸発などの簡易な低温工程で形成可能である。
本発明の電気化学装置は、電極として本発明の前記カーボン系電極を有するので、電極を簡易な低温工程でかつ安価に形成することが望まれる電気化学装置、例えば前記多孔質電極層の前記支持体としてプラスチック基材を用いる電気化学装置などとして好適である。
本発明の実施の形態に基づく色素増感型太陽電池の断面構造を示す概略図である。 本発明の実施例2−2で得られた多孔質電極層および実施例3−1で得られた多孔質電極層の断面のSEM観察像である。 本発明の実施例1および2による色素増感型太陽電池の電流−電圧特性を示すグラフである。 同、色素増感型太陽電池のインピーダンス特性を示すグラフである。 本発明の実施例3による色素増感型太陽電池の電流−電圧特性を示すグラフである。 同、色素増感型太陽電池のインピーダンス特性を示すグラフである。 従来の、一般的な色素増感型太陽電池の構造を示す要部断面図である。
本発明のカーボン系電極において、前記カーボン系微粒子が、酸化処理されておらず、蒸留水との混合液が中性又は弱塩基性を示し、かつ中空状でない(中身のつまった)カーボンブラックであるのがよい。
また、前記多孔質電極層におけるカーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比が、1/15〜1/7であるのがよい。
また、前記多孔質電極層の厚さが20μm以下であるのがよい。
また、前記溶媒がN−メチルピロリドンであるのがよい。
また、前記支持体の材料がプラスチック材料であるのがよい。
本発明の電気化学装置において、少なくとも、金属酸化物多孔質層からなる半導体電極層と、その対向電極としての前記カーボン系電極と、これらの間に挟持された電解質層とを有するのがよい。
この際、前記半導体電極層が光増感色素を保持しており、光が入射すると、この光を吸収して励起された前記光増感色素の電子が前記半導体電極層へ取り出されるとともに、前記電子を失った前記光増感色素は、前記電解質層中の還元種(還元剤)によって還元され、この結果、前記電解質層中に生じた酸化種(酸化剤)は、前記対向電極から電子を受け取り、還元種にもどる色素増感型太陽電池として構成されているのがよい。
以下、本発明の実施の形態に基づき、詳細を図面参照下に具体的に説明する。本実施の形態では、請求項7〜9に記載した電気化学装置の例として、色素増感型太陽電池として構成された電気化学装置について説明する。また、請求項1〜6に記載した電極の例として、色素増感型太陽電池の対向電極として用いられた電極について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に基づく色素増感型太陽電池10の断面構造を示す概略図である。色素増感型太陽電池10は、主として、光透過性基板1、光透過性導電層(負極集電体)2、光増感色素を保持する半導体電極層(負極)3、電解質層4、対向電極(正極)5、対向基板6、および(図示省略した)封止材などで構成されている。対向電極(正極)5および対向基板6以外の部材は、従来の色素増感型太陽電池と同様である。
すなわち、光透過性基板1は、ガラス板や、ポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックフィルムなどからなる。光透過性導電層(負極集電体)2は、ITOやFTOなどからなり、光透過性基板1上に設けられている。
半導体電極層(負極)3は、酸化チタンTiO2などの金属酸化物半導体微粒子からなる多孔質層であり、金属酸化物半導体微粒子11および12などの表面に光増感色素13が吸着されている。半導体電極層(負極)3は、平均粒子径の小さい半導体微粒子11からなる透過層3aと、平均粒子径の小さい半導体微粒子11と平均粒子径の大きい半導体微粒子12とが含まれており、透過層3aで吸収されずに透過してきた透過光を散乱させ、透過層3aへ戻す働きを有する散乱層3bとからなるのがよい。これにより光の利用率を高めることができる。
電解質層4は半導体電極層3と対向電極5との間に配置され、I-/I3 -(三ヨウ化物イオンI3 -は、I2がヨウ化物イオンI-と結びついてイオンとして存在している化学種である。)などの酸化還元種(レドックス対)を含む電解液などで構成されている。電解液は、半導体電極層3に浸潤できるように配置されている。
本実施の形態の特徴として、対向電極5および対向基板6は、請求項1〜6に記載したカーボン系電極であり、対向基板6が前記支持体であり、対向電極5が、前記支持体上に配置された前記多孔質電極層である。
多孔質電極層である対向電極5は、ポリアミドイミドに親和性を有するカーボン系微粒子からなり、ポリアミドイミドをバインダとして備える。この多孔質電極層は、後述の実施例で示すように優れた耐電解液特性を示し、かつ安価である。しかも、この多孔質電極層では、カーボン系微粒子が有する、優れた触媒性能および導電性が発現し、対向電極5は優れた触媒電極として機能する。
この際、カーボン系微粒子が、酸化処理されておらず、蒸留水との混合液が中性又は弱塩基性を示し、かつ中空状でない(中身のつまった)カーボンブラックであるのがよい。また、多孔質電極層におけるカーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比が1/15以上、1/7以下であるのがよい。また、多孔質電極層の厚さが20μm以下であるのがよい。このようであると、電極層が多孔質層である効果が最大限に発揮される。
この多孔質電極層は、ポリアミドイミドに親和性を有するカーボン系微粒子とポリアミドイミドとを含有する塗液の塗布、および塗液層からの溶媒の蒸発除去などの簡易な低温工程によって形成される。この際、塗液の形成に用いる溶媒としては、ポリアミドイミドに親和性を有するカーボン系微粒子およびポリアミドイミドに親和できる溶媒がよく、例えばN−メチルピロリドンなどがよい。カーボン系微粒子とポリアミドイミドとの両方に親和できる溶媒を用いることによって、確実に多孔質の電極層が形成される。
多孔質電極層(対向電極5)の支持体である対向基板6は、ガラス板やプラスチックフィルムなどからなるが、プラスチック材料からなる場合に、本発明の、低温工程で安価に電極層を形成できる効果が、最もよく生かされるので好ましい。
色素増感型太陽電池10は、光が入射すると、半導体電極層3を負極、対向電極5を正極とする光電池として動作する。
すなわち、光透過性基板1および光透過性導電層2を透過してきた光子を光増感色素13が吸収すると、光増感色素13中の電子が基底状態から励起状態へ励起される。励起状態の電子は、光増感色素13と半導体電極層3との間の電気的結合を介して、半導体電極層3の伝導帯に取り出され、半導体電極層3を通って光透過性導電層2に到達する。
一方、電子を失った光増感色素13は、電解質層4中の還元種(還元剤)、例えばI-から下記の反応
2I- → I2 + 2e-
2 + I- → I3 -
によって電子を受け取り、電解質層4中に酸化種(酸化剤)、例えばI3 -を生成させる。生じた酸化種は拡散によって対向電極5に到達し、上記の反応の逆反応
3 - → I2 + I-
2 + 2e- → 2I-
によって対向電極5から電子を受け取り、もとの還元種に戻る。
光透過性導電層2から外部回路へ流れ出した電子は、外部回路で電気的仕事をした後、対向電極5に戻る。このようにして、光増感色素13にも電解質層4にも何の変化も残さず、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
色素増感型太陽電池10を作製するには、まず、光透過性基板1に設けられた光透過性導電層2上に、金属酸化物半導体微粒子からなる微粒子層を形成した後、焼成して金属酸化物半導体多孔質層(半導体電極層)3を形成する。次に、半導体電極層3に光増感色素13を吸着させる。色素を吸着させる方法に特に制限はないが、例えば、色素分子を溶解させた溶液を調製し、半導体電極層3が形成された光透過性基板1を色素溶液に浸漬するか、または、半導体電極層3に色素溶液を塗布、噴霧、または滴下するかなどして、半導体電極層3に色素溶液をしみこませた後、溶媒を蒸発させる。次に、半導体電極層3と対向電極5とが対向するように光透過性基板1と対向基板6とを配置して、封止剤を介して貼り合わせる。最後に、電解液を注入して電解質層4を形成する。
以下、従来の色素増感型太陽電池と同様であるが、光透過性基板1〜電解質層4についてより詳しく説明する。
半導体電極層3は、典型的には光透過性導電性基板上に設けられる。この光透過性導電性基板は、図1に示したように、導電性または非導電性の光透過性基板1上に光透過性導電層2を形成したものであってもよいし、全体が導電性の光透過性基板であってもよい。光透過性基板1の材質は特に制限されず、光透過性であれば種々の基材を用いることができる。光透過性基板1は、色素増感型太陽電池10の外部から侵入する水分やガスの遮断性、耐溶剤性、耐候性などに優れているものが好ましく、具体的には、石英、サファイア、ガラスなどの光透過性無機材料基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、テトラアセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルフォン類、ポリオレフィン類などの光透過性プラスチック基板が挙げられ、これらの中でも特に可視光領域の透過率が高い基板を用いるのが好ましい。加工性や軽量であることなどを考慮すると、光透過性基板1として光透過性プラスチック基板を用いるのが好ましい。また、光透過性基板1の厚さは特に制限されず、光の透過率、色素増感型太陽電池10の内部と外部との遮断性などによって選択することができる。
光透過性導電性基板の表面抵抗(シート抵抗)は低いほど好ましい。具体的には、光透過性導電性基板の表面抵抗は500Ω/□以下が好ましく、100Ω/□がさらに好ましい。光透過性基板上に光透過性導電膜を形成する場合、この光透過性導電膜の材料としては公知のものを使用可能であり、具体的には、インジウム・スズ複合酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム・亜鉛複合酸化物(IZO)などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、これらを2種類以上組み合わせて用いることもできる。また、光透過性導電性基板の表面抵抗を低減し、集電効率を向上させる目的で、光透過性導電性基板上に、導電性の高い金属などやカーボンなどの導電材料からなる配線を別途設けてもよい。この配線に用いる導電材料に特に制限はないが、耐食性、耐酸化性が高く、導電材料自体の漏れ電流が低いことが望ましい。ただし、耐食性が低い導電材料でも、金属酸化物などからなる保護層を別途設けることで使用可能となる。また、この配線を腐食などから保護する目的で、配線は光透過性導電性基板と保護層との間に設置することが好ましい。
半導体電極層(金属酸化物半導体多孔質層)3は、多くの光増感色素を吸着することができるように、多孔質層内部の空孔に面する微粒子表面も含めた実表面積の大きいものが好ましく、半導体電極層3の実表面積は、半導体電極層3の外側表面の面積(投影面積)に対して10倍以上であることが好ましく、さらに100倍以上であることが好ましい。
一般に、半導体電極層3の厚さが増し、単位投影面積当たりに含まれる半導体微粒子11または12の数が増加するほど、実表面積が増加し、単位投影面積あたりに保持できる色素量が増加するので、入射光に対する光吸収率が高くなる。一方、半導体電極層3の厚さが増加すると、光増感色素13から半導体電極層3に移行した電子が光透過性導電層2に達するまでに拡散する距離が増加するため、半導体電極層3内での電荷再結合による電子のロスも大きくなる。従って、半導体電極層3には好ましい厚さが存在するが、一般的には0.1〜100μmであり、1〜30μmであるのがより好ましい。
半導体電極層3の材料として、各種の金属酸化物半導体や、ペロブスカイト構造を有する化合物などを用いることができる。この際、半導体微粒子の材料が、光励起下で伝導帯電子がキャリアとなり、アノード電流を生じるn型半導体材料であることが好ましい。このような半導体材料は、具体的に例示すると、TiO2、ZnO、WO3、Nb25、SrTiO3、およびSnO2などであり、これらの中でもアナターゼ型のTiO2がとくに好ましい。ただし、半導体微粒子の材料はこれらに限定されるものではない。また、これらの材料を2種類以上混合して用いることもできる。さらに、半導体微粒子は粒子状、チューブ状、棒状など必要に応じて様々な形態を取ることが可能である。
半導体電極層3の厚さは1〜30μmであるのがよい。厚さが1μm未満である場合、十分な光電変換効率が得られない。厚さが厚いほど光電変換効率は向上するが、厚さが30μmをこえると、膜厚の増加による光電変換効率向上の効果が乏しくなる。従って、厚さは30μm以下が好ましい。半導体微粒子の形状は、特に限定されるものではなく、一般的な形状であってよい。半導体微粒子の粒子径は、可視光を透過させるために、一次粒子の平均粒子径が1〜100nmであるのが好ましい。
半導体微粒子の粒径に特に制限はないが、一次粒子の平均粒径で1〜200nmが好ましく、特に好ましくは5〜100nmである。また、図1に示したように、この平均粒径の半導体微粒子にこれより大きい平均粒径の半導体微粒子を混合し、平均粒径の大きい半導体微粒子により入射光を散乱させ、入射光の利用率を向上させることも可能である。この場合、別途混合する半導体微粒子の平均粒径は20〜500nmであることが好ましい。
半導体電極層3の作製方法に特に制限はないが、物性、利便性、製造コストなどを考慮した場合には湿式製膜法が好ましく、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを水や有機溶媒などの溶媒に均一分散したペーストを調製し、光透過性導電性基板上に塗液の層を被着させるのが好ましい。その方法に特に制限はなく、公知の方法、例えば、塗布法または印刷法などによって行うことができる。塗布方法としては、例えば、ディップ法、スプレーコート法、ワイヤーバーコート法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法としては、例えば、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、およびスクリーン印刷法などにより行うことができる。半導体微粒子の材料として結晶酸化チタンを用いる場合、その結晶型はアナターゼ型が光触媒活性の点から好ましい。アナターゼ型酸化チタンは市販の粉末、ゾル、スラリーでもよいし、あるいは、酸化チタンアルコキシドを加水分解するなどの公知の方法によって所定の粒径のものを作ってもよい。市販の粉末を使用する際には粒子の二次凝集を解消することが好ましく、塗布液調製時に乳鉢やボールミルや超音波分散装置などを使用して粒子の分散を行うことが好ましい。このとき、二次凝集が解かれた粒子が再度凝集するのを防ぐため、アセチルアセトン、塩酸、硝酸、界面活性剤、キレート剤などを添加することができる。また、増粘の目的でポリエチレンオキシドやポリビニルアルコールなどの高分子、セルロース系の増粘剤など、各種の増粘剤を添加することもできる。
半導体微粒子からなる半導体電極層3、言い換えると半導体微粒子層は多くの光増感色素を吸着することができるように、表面積の大きいものが好ましい。このため、半導体微粒子層を基板上に塗設した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限に特に制限はないが、通常1000倍程度である。半導体微粒子層は一般に、その厚さが増大するほど単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、注入した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。従って、半導体微粒子層には好ましい厚さが存在するが、その厚さは一般的には0.1〜100μmであり、1〜50μmであることがより好ましく、3〜30μmであることが特に好ましい。半導体微粒子層は基板に塗布した後に粒子同士を電子的にコンタクトさせ、膜強度の向上や基板との密着性を向上させるために、焼成することが好ましい。焼成温度の範囲に特に制限はないが、温度を上げ過ぎると基板の抵抗が高くなってしまい、溶融することもあるため、通常は40〜700℃であり、より好ましくは40〜650℃である。また、焼成時間も特に制限はないが、通常は10分〜10時間程度である。焼成後、半導体微粒子層の表面積を増大させたり、半導体微粒子間のネッキングを高めたりする目的で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学めっきや三塩化チタン水溶液を用いたネッキング処理や直径10nm以下の半導体超微粒子ゾルのディップ処理などを行ってもよい。光透過性導電性基板にプラスチック基板を用いる場合は、結着剤を含むペーストを基板上に塗布し、加熱プレスによる基板への圧着を行うことも可能である。
半導体電極層3に保持させる光増感色素としては、増感作用を示すものであれば特に制限はないが、例えば、ローダミンBやローズベンガルやエオシンやエリスロシンなどのキサンテン系色素、メロシアニンやキノシアニンやクリプトシアニンなどのシアニン系色素、フェノサフラニンやカブリブルーやチオシンやメチレンブルーなどの塩基性染料、その他のアゾ色素、クロロフィルや亜鉛ポルフィリンやマグネシウムポルフィリンなどのポルフィリン系化合物、フタロシアニン系化合物、クマリン系化合物、ルテニウムRuのビピリジン錯体やテルピリジン錯体、アントラキノン系色素、多環キノン系色素、スクアリリウム系色素などが挙げられる。中でも、配位子がピリジン環を有するルテニウムRuのビピリジン錯体は、量子収率が高く、光増感色素として好ましい。ただし、光増感色素はこれに限定されるものではなく、単独で、もしくは2種類以上を混合して用いることができる。
半導体電極層3に光増感色素を吸着させる方法に特に制限はないが、上記の光増感色素を例えばアルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水などの溶媒に溶解させ、これに半導体電極層3を浸漬したり、色素溶液を半導体電極層3上に塗布したりすることができる。また、酸性度の高い色素を用いる場合には、色素分子同士の会合を低減する目的でデオキシコール酸などを添加してもよい。
光増感色素を吸着させた後に、過剰に吸着した色素の除去を促進する目的で、アミン類を用いて半導体電極層3の表面を処理してもよい。アミン類の例としてはピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンなどが挙げられ、これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
電解質層4としては、電解液、またはゲル状あるいは固体状の電解質が使用可能である。電解質としては、酸化還元種(レドックス対)を含む溶液が挙げられ、具体的には、ヨウ素I2と金属ヨウ化物塩または有機ヨウ化物塩との組み合わせや、臭素Br2と金属臭化物塩または有機臭化物塩との組み合わせを用いる。そのほか、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩やフェロセン/フェリシニウムイオンなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール/アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン/キノンなどを用いることができる。上記金属化合物を構成するカチオンは、リチウムLi+、ナトリウムNa+、カリウムK+、セシウムCs+、マグネシウムMg2+、およびカルシウムCa2+などであり、上記有機化合物を構成するカチオンは、テトラアルキルアンモニウムイオン類、ピリジニウムイオン類、イミダゾリウムイオン類などの第4級アンモニウムイオンが好適であるが、これらに限定されるものではなく、単独もしくは2種類以上を混合して用いることができる。
上記の中でも特に、ヨウ素I2と、ヨウ化リチウムLiI、ヨウ化ナトリウムNaI、またはイミダゾリウムヨーダイドなどの第4級アンモニウム化合物とを組み合わせた電解質が好適である。電解液における電解質塩の濃度は0.05M〜5Mが好ましく、さらに好ましくは0.2M〜3Mである。ヨウ素I2または臭素Br2の濃度は0.0005M〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.3Mである。
電解液を構成する溶媒として、水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、および炭化水素などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、単独で、もしくは2種類以上を混合して用いることができる。また、溶媒としてテトラアルキル系、ピリジニウム系、イミダゾリウム系第4級アンモニウム塩の室温イオン性液体を用いることも可能である。
色素増感型太陽電池10の製造方法は特に限定されないが、例えば電解質組成物が液状、もしくは電池内部でゲル化させることが可能であり、導入前は液状の電解質組成物の場合、半導体電極層3と対向電極とを向かい合わせ、これらの電極が接しないように半導体電極層3が形成されていない基板部分を封止する。このとき、半導体電極層3と対向電極との隙間の大きさに特に制限はないが、通常1〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmである。この電極間の距離が長すぎると、導電率の低下から光電流が減少してしまう。封止方法は特に制限されないが、耐光性、絶縁性、防湿性を備えた材料を用いることが好ましく、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、アクリル系接着剤、EVA(エチレンビニルアセテート)、アイオノマー樹脂、セラミック、各種熱融着フィルムなどを用いることができ、また、種々の溶接法を用いることができる。また、電解質組成物の溶液の注液方法に特に制限はないが、外周が予め封止され、溶液の注入口を開けられた上記セルの内部に減圧下で注液を行う方法が好ましい。この場合、注入口に溶液を数滴垂らし、毛細管現象により注液する方法が簡便である。また、必要に応じて減圧もしくは加熱下で注液の操作を行うこともできる。完全に溶液が注入された後、注入口に残った溶液を除去し、注入口を封止する。この封止方法にも特に制限はないが、必要であればガラス板やプラスチック基板を封止剤で貼り付けて封止することもできる。また、この方法以外にも、液晶パネルの液晶滴下注入(ODF;One Drop Filling)工程のように、電解液を基板上に滴下して減圧下で貼り合わせて封止することもできる。また、ポリマーなどを用いたゲル状電解質や全固体型の電解質の場合、半導体電極層3上で電解質組成物と可塑剤とを含むポリマー溶液をキャスト法により揮発除去させる。可塑剤を完全に除去した後、上記方法と同様に封止を行う。この封止は真空シーラーなどを用いて、不活性ガス雰囲気下、もしくは減圧中で行うことが好ましい。封止を行った後、電解質を半導体電極層3へ十分に含漬させるため、必要に応じて加熱、加圧の操作を行うことも可能である。
色素増感型太陽電池10はその用途に応じて様々な形状で作製することが可能であり、その形状は特に限定されない。色素増感型太陽電池10は、最も典型的には太陽光が有する光エネルギーを電力に変換する光電変換装置であるが、それ以外のもの、例えば色素増感光センサーなどであってもよい。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。実施例1〜3では、実施の形態で説明した多孔質電極層、およびそれを対向電極5として有する色素増感型太陽電池10(図1参照。)を作製し、その光電変換特性を測定した。
<色素増感型太陽電池10の作製>
(半導体電極層(金属酸化物半導体多孔質層)3の形成)
(1)光透過性基板1および光透過性導電層2として、アモルファス太陽電池用のFTO層付き導電性ガラス基板(日本板硝子(株)製、シート抵抗10Ω/□、厚さ1.1mm)を用いた。この導電性ガラス基板を縦25mm×横25mmの正方形に加工し、洗浄用溶媒としてアセトン、アルコール、アルカリ系洗浄液、および超純水を順に用いて超音波洗浄した後、十分に乾燥させた。
(2)次に、スクリーン印刷機と、直径5mmの円形スクリーンマスクとを用い、上記導電性ガラス基板の中心部に厚さ20μmの酸化チタン微粒子ペースト層を形成した。この際、まずFTO層上に透明なTi-Nanoxide TSPペースト(商品名;Solaronix社製)層を7μmの厚さで形成し、次に散乱粒子を含むTi-Nanoxide DSPペースト(商品名;Solaronix社製)層を13μmの厚さで積層し、合計20μmの厚さの酸化チタン微粒子ペースト層を形成した。
(3)次に、電気炉を用いて、500℃の下で30分間酸化チタンペースト層を焼成し、酸化チタン多孔質層を作製した。放冷後、酸化チタン多孔質層を0.1mol/Lの四塩化チタンTiCl4水溶液中に浸漬し、70℃の下で30分間保持した。次に、純水およびエタノールを用いて酸化チタン多孔質層を十分に洗浄し、乾燥させた。この後、電気炉を用いて500℃の下で30分間酸化チタン多孔質層を再び焼成した。これらの工程で、次式
TiCl4 + 2H2O → TiO2 + 4HCl
で表される化学反応が起こり、生成した酸化チタンによって、酸化チタン多孔質層における酸化チタン微粒子間のネッキングが強化される。
次に、エキシマーランプを用いて酸化チタン多孔質層に紫外光を3分間照射し、酸化チタン多孔質層の活性を高める処理を行った。このとき、酸化チタン多孔質層に含まれる有機物などの不純物が、酸化チタンの触媒作用によって酸化分解され、除去される。
(4)次に、室温にて48時間酸化チタン多孔質層をN719色素溶液に浸漬し、酸化チタン多孔質層に光増感色素N719を吸着させた。N719は、シス-ビス(イソチオシアナト)-N,N-ビス(2,2'-ジピリジル-4,4'-ジカルボン酸)ルテニウム(II)ジテトラブチルアンモニウム塩である。色素溶液は、tert−ブチルアルコールとアセトニトリルとを1:1の体積比で混合した混合溶媒に、N719を0.5mMの濃度で溶解させた溶液を用いた。次に、アセトニトリルを用いて酸化チタン多孔質層を洗浄した後、暗所でアセトニトリルを蒸発させ、酸化チタン多孔質層を乾燥させた。この結果、光増感色素が吸着されている半導体電極層3を得た。
(対向電極(多孔質電極層)5の作製)
(5)次に、対向基板6として、FTO層付き導電性ガラス基板(前述の、日本板硝子(株)製、シート抵抗10Ω/□、厚さ1.1mmの基板)を縦25mm×横25mmの正方形に加工した。この対向基板の中心部を外れた位置に、電解液の注入口として直径0.5mmの孔を形成した。
対向電極(多孔質電極層)5を作製するための塗液の材料として、カーボンブラック♯40(商品名;三菱化学(株)製)とHR11NN(商品名;東洋紡(株)製)とを用いた。HR11NNは、ポリアミドイミドをN−メチルピロリドンに15質量%の濃度で溶解させた溶液である。カーボンブラックとHR11NNとN−メチルピロリドンとを所定の割合で混合し、固形分質量の10倍の質量のジルコニアビーズ(直径0.3mm)とペイントシェイカーとを用いて5時間攪拌処理(周波数65Hz)を行い、カーボンブラックとポリアミドイミドをN−メチルピロリドン中に均一に分散させ、塗液を調製した。塗液における固形分の割合を15質量%とし、カーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比を1/15とした。
(ポリアミドイミドの質量)/(カーボンブラックの質量)= 1/15
次に、スキージを用いた手塗り塗布によって上記塗液をFTO層上に被着させた後、ホットプレート上で150℃に15分間加熱して溶媒を蒸発させ、多孔質電極層5を形成した。膜厚測定装置DEKTAC3(商品名;アルバック(株)製)を用いて多孔質電極層5の厚さを測定したところ、20μmであった。
(色素増感型太陽電池の組み立て)
(6)次に、スクリーン印刷法によって上記多孔質電極層5上に紫外線(UV)硬化性接着剤を被着させた。この際、外側に集電部分が残るように、外形が縦20mm×横20mm、幅が2mmのサイズの接着剤層を形成した。次に、半導体電極層3と対向電極(多孔質電極層)5とが向かい合うように、2枚の導電性ガラス基板を対向させ、貼り合せた。この際、前述の、対向基板6に設けられた注入口が空気の逃げ道として機能する。この後、紫外線を照射して紫外線硬化性接着剤層を硬化させた。
(7)一方、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムヨーダイド(0.6M)、N-メチル-ベンズイミダゾール(0.5M)、およびヨウ素I2(0.1M)を、それぞれ、上記括弧内に示したモル濃度で3-メトキシプロピオニトリルに溶解させた電解液を調製した。
(8)次に、上記電解液を注入口から減圧注入した。この後、0.4MPaの窒素ガス が充填された加圧容器内に静置することによって、セル内部に完全に電解液を注入した。次に、注入口を紫外線硬化性接着剤で埋めて封止した後、紫外線を照射して接着剤を硬化させ、色素増感型太陽電池10を作製した。
<色素増感型太陽電池の評価>
擬似太陽光(AM1.5、100mW/cm2)を照射しながら、作製した色素増感型太陽電池10の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクタ(FF)および光電変換効率(η)を24℃にて測定した。
実施例2ではカーボンブラックとして♯40(商品名;三菱化学(株)製)の代わりに♯2300(商品名;三菱化学(株)製)を用いた。また、カーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比および対向電極(多孔質電極層)5の厚さを変更し、その影響を調べた。これら以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池10を作製し、その光電変換効率を測定した。
[実施例2−1]
カーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比を1/7とした。対向電極(多孔質電極層)5の厚さは20μmのままとした。
[実施例2−2]
カーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比を1/10とした。対向電極(多孔質電極層)5の厚さは20μmのままとした。
[実施例2−3]
カーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比を1/10とした。また、対向電極(多孔質電極層)5の厚さを10μmとした。
[実施例2−4]
カーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比を1/10とした。また、対向電極(多孔質電極層)5の厚さを2μmとした。
実施例3では、実施例2と同様、カーボンブラックとして♯2300(商品名;三菱化学(株)製)を用いたが、カーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比および対向電極(多孔質電極層)5の厚さを大きく変更し、その影響を調べた。これら以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池10を作製し、その光電変換効率を測定した。
[実施例3−1]
実施例3−1ではカーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比を1/1とした。
[実施例3−2]
実施例3−2ではカーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比を1/3とした。
[実施例3−3]
実施例3−3ではカーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比を1/5とした。
[実施例3−4]
実施例3−4ではカーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比を1/20とした。また、対向電極層5の厚さを40μmとした。
[比較例1]
比較例1ではカーボンブラックとして♯2350(商品名;三菱化学(株)製)を用いた。カーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比は1/7とした。
[比較例2]
比較例2ではカーボンブラックとしてMA8(商品名;三菱化学(株)製)を用いた。カーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比は1/7とした。
[比較例3]
比較例3ではカーボンブラックとしてMA100(商品名;三菱化学(株)製)を用いた。カーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比は1/7とした。
[比較例4]
比較例4ではカーボンブラックとしてケッチェンブラックEC300J(商品名;ライオン(株)製)を用いた。カーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比は1/1とした。
[比較例5]
比較例5では、実施例1と同様の対向基板にスパッタリング法によって白金層を成膜し、対向電極とした。それ以外は実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。この色素増感型太陽電池の性能を基準として、実施例による色素増感型太陽電池10の性能を評価した。
表1は、実施例1〜3および比較例1〜5で用いたカーボンブラックの種類とその特徴的な物性値を示す表である(三菱化学(株)カーボンブラック http://www.carbonblack.jp/product/list2.html、およびライオン(株) http://www.lion.co.jp/ja/chem/seihin/sangyo/carbon/k_proper.html 参照。)。表中、粒子径は、カーボンブラック粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径である。吸着比表面積は、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積(JIS K6217)で、一般に粒子径が小さいほど比表面積は大きくなる。DBP吸収量は、カーボンブラック100gが吸収するDBP(ジブチルフタレート)の量(JIS K6221)で、一般にストラクチャーが発達しているほど、吸収量が大きくなる。揮発分は、カーボンブラックを950℃で7分間加熱した際の揮発分(質量の減少率)で、一般に表面官能基が多いほど、揮発する成分は多くなる。pH値は、カーボンブラックと蒸留水の混合液をガラス電極pHメーターで測定した値である。
表2および表3は、本発明の実施例1〜3におけるカーボンブラックの種類、塗液の組成と塗布性、塗膜特性および色素増感型太陽電池10の性能を示す表である。表3には、比較例5による色素増感型太陽電池の性能も示した。
表4は、本発明の比較例1〜4におけるカーボンブラックの種類、塗液の組成および塗布性を示す表である。
<実施例1〜3の評価>
表1に示したように、カーボンブラック♯40(商品名)および♯2300(商品名)は、表面が酸化処理されておらず、蒸留水との混合液が中性又は弱塩基性を示し、かつ中空状でない中空状でない(中身のつまった)カーボンブラックである。これらのカーボンブラックを用いた実施例1〜3では、塗布性の良好な塗液が得られた。これらのカーボンブラックは、ポリアミドイミドおよびN−メチルピロリドンとの親和性が良好であるため、このような結果が得られたと考えられる。
一方、カーボンブラック♯2350(商品名)、MA80(商品名)およびMA100(商品名)は、表面が酸化処理され、蒸留水との混合液が酸性を示す、中空状でない(中身のつまった)カーボンブラックである。これらのカーボンブラックを用いた比較例1〜3で得られた塗液は、のりのようにゲル化した塗液で、塗布によって良好な塗膜を形成することができなかった。これらのカーボンブラックは、カルボキシ基などの極性の大きな基が表面に多数導入されているため、ポリアミドイミドとの親和性が不足しているため、このような結果が得られたと考えられる。
カーボンブラックとしてケッチェンブラック♯2350(商品名)を用いた比較例4で得られた塗液は、粘土のような感触の塗液で、塗布によって良好な塗布膜を形成することができなかった。ケッチェンブラックは中空形状を有し、比表面積が大きい。このため、ポリアミドイミドがケッチェンブラックを覆いきれていないため、このような結果が得られたと考えられる。比表面積が大きすぎるカーボンブラックは、多くのポリアミドイミド樹脂が必要となり、カーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比が小さい多孔質電極層5の作製が困難になる。以上から、本発明の電極に用いるカーボン系微粒子としては、酸化処理されておらず、蒸留水との混合液が中性または弱塩基性を示し、かつ中空状でない(中身のつまった)カーボンブラックであるのがよいことが判明した。
図2(a)は、実施例2−2で得られた多孔質電極層5の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した観察像である。図2(a)のほぼ全体にわたって見られる「ぶどうの房」状の構造が、カーボン系微粒子が形成するストラクチャーである。図2(a)から、実施例2−2で得られた多孔質電極層5は、全体にわたってストラクチャーが形成されており、多孔質構造(ポーラス構造)が発達した、カーボン系微粒子の表面積の大きい構造を有することがわかる。
図3は、実施例1および2並びに比較例5による色素増感型太陽電池10の電流−電圧特性を示すグラフである。表2に示したように、実施例1および2による色素増感型太陽電池10の光電変換効率は、比較例5による色素増感型太陽電池の光電変換効率の0.80倍以上である。
図4は、実施例1および2並びに比較例5による色素増感型太陽電池のインピーダンス特性を示すグラフである。電解液と対向電極間の電子輸送抵抗を示す第一円弧の半径Rctは、実施例1および2による色素増感型太陽電池10では4Ω以下であり、比較例5による色素増感型太陽電池での6Ωより小さい。
以上から、多孔質電極層5におけるカーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比が1/15以上、1/7以下である実施例1および2による色素増感型太陽電池10では、対向電極として白金層を用いた、比較例5による色素増感型太陽電池10とほぼ同程度、あるいはそれ以上の光電変換効率を実現でき、多孔質電極層5の触媒性能は白金層の触媒性能を上回り得ることが判明した。また、実施例2−2〜実施例2−4の比較から、色素増感型太陽電池10の光電変換効率は多孔質電極層5の厚さによって変化し、2〜20μmの範囲では薄い方が光電変換効率が高くなることが判明した。
一方、表3から、実施例2と同じ材料からなるものの、多孔質電極層5におけるカーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比が1/1〜1/5と大きい実施例3−1〜実施例3−3では、色素増感型太陽電池10の光電変換効率が0.4〜2.9%と低い。図5は、実施例3による色素増感型太陽電池10の電流−電圧特性を示すグラフであるが、このグラフにも光電変換効率の低さが示されている。図6は、実施例3よる色素増感型太陽電池10のインピーダンス特性を示すグラフである。図6から、電解液と対向電極間の電子輸送抵抗を示す第一円弧の半径Rctは、測定不能なほど大きいことがわかる。
図2(b)は、実施例3−1で得られた多孔質電極層5の断面をSEMを用いて観察した観察像である。図2(a)のほぼ全体にわたって見られた「ぶどうの房」状の構造(ストラクチャー)が、図2(b)ではほとんど見られない。図2(b)から、実施例3−1で得られた多孔質電極層5では、多孔質構造(ポーラス構造)が十分に形成されず、カーボン系微粒子の表面積が小さいことがわかる。以上から、多孔質電極層5におけるカーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比が大きすぎる場合には、多孔質電極層5に多孔質構造が形成されにくく、カーボンブラックと電解液との接触が不十分になり、カーボンブラックの触媒性能が十分に発揮されないことがわかる。
一方、多孔質電極層5におけるカーボンブラックの質量に対するポリアミドイミドの質量の比が、実施例2−2〜2−4と同じく1/10であるが、多孔質電極層5の厚さが40μmである実施例3−4では、多孔質電極層5の剥離が生じた。このように、多孔質電極層5が厚くなりすぎると、塗液層の状態では問題ないが、溶媒が蒸発で除かれる工程の間に電極層に剥がれが生じることがある。この電極層の剥がれは、電極層の厚さが20μm以下である場合には発生しないので、多孔質電極層5の厚さの上限は20μmと40μmとの間にある。
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
本発明は、光利用効率のよい色素増感型太陽電池などの電気化学装置を提供し、その普及に寄与する。
1…光透過性基板、2…光透過性導電層(負極集電体)、
3…光増感色素を保持する半導体電極層(負極)、3a…透過層、3b…散乱層、
4…電解質層、5…対向電極(多孔質電極層)(正極)、6…対向基板、
10…色素増感型太陽電池、11…平均粒子径の小さい半導体微粒子、
12…平均粒子径の大きい半導体微粒子、13…光増感色素、
14…異方的形状を有する高屈折率微粒子、15…球状微粒子、
100…光増感型太陽電池、101…透明基板、102…透明導電層(負極集電体)、
103…光増感色素を保持した半導体電極層(負極)、104…電解質層、
105…対向電極(正極)、106…対向基板
特開2009−218179号公報(第3,4及び6−11頁、図1及び2) 特開2005−116302号公報(第4−7頁、図1)

Claims (9)

  1. 支持体と、
    前記支持体上に配置され、バインダであるポリアミドイミドと、炭素を主体とし、か つ前記ポリアミドイミドに親和性を有するカーボン系微粒子とを含有し、両者を含む塗 液層から溶媒が蒸発除去されてなる多孔質電極層と
    を有する、カーボン系電極。
  2. 前記カーボン系微粒子が、酸化処理されておらず、蒸留水との混合液が中性又は弱塩基性を示し、かつ中空状でない(中身のつまった)カーボンブラックである、請求項1に記載したカーボン系電極。
  3. 前記多孔質電極層における前記カーボンブラックの質量に対する前記ポリアミドイミドの質量の比が、1/15〜1/7である、請求項2に記載したカーボン系電極。
  4. 前記多孔質電極層の厚さが20μm以下である、請求項2に記載したカーボン系電極。
  5. 前記溶媒がN−メチルピロリドンである、請求項1に記載したカーボン系電極。
  6. 前記支持体の材料がプラスチック材料である、請求項1に記載したカーボン系電極。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載したカーボン系電極を有する、電気化学装置。
  8. 少なくとも、金属酸化物多孔質層からなる半導体電極層と、その対向電極としての前記カーボン系電極と、これらの間に挟持された電解質層とを有する、請求項7に記載した電気化学装置。
  9. 前記半導体電極層が光増感色素を保持しており、光が入射すると、この光を吸収して励起された前記光増感色素の電子が前記半導体電極層へ取り出されるとともに、前記電子を失った前記光増感色素は、前記電解質層中の還元種(還元剤)によって還元され、この結果、前記電解質層中に生じた酸化種(酸化剤)は、前記対向電極から電子を受け取り、還元種にもどる色素増感型太陽電池として構成されている、請求項8に記載した電気化学装置。
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