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JP2012046040A - 車体振動推定装置およびこれを用いた車体制振制御装置 - Google Patents

車体振動推定装置およびこれを用いた車体制振制御装置 Download PDF

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JP2012046040A JP2010189106A JP2010189106A JP2012046040A JP 2012046040 A JP2012046040 A JP 2012046040A JP 2010189106 A JP2010189106 A JP 2010189106A JP 2010189106 A JP2010189106 A JP 2010189106A JP 2012046040 A JP2012046040 A JP 2012046040A
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Abstract

【課題】外乱ロバスト性に優れた高精度な推定が可能な車体振動推定装置を提供する。
【解決手段】演算部31,32で求めた前輪速VwFおよび後輪速VwRをバンドパスフィルタ33,34に通し、車体振動を表す車体共振周波数近傍振動成分fVwF,fVwRを抽出する。演算部35,36で、fVwF, fVwRから車体振動を表す前輪の前後方向変位Xtfおよび後輪の前後方向変位Xtrを求め、車体振動に起因した前軸上方車体部の上下変位および後軸上方車体部の上下変位を求め、これらから車体の上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθpを算出する。推定器25bではdZv,dθpをオブザーバ入力とし、制駆動トルクrTdから車両モデル37を用いた状態推定を行うことにより、車体の上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθpを推定する。
【選択図】図3

Description

本発明は、サスペンション装置を介して車輪を懸架された車両のバネ上質量である車体の振動、例えばピッチング振動や上下振動を推定するための車体振動推定装置、およびこれを用いた車体制振制御装置に関するものである。
車体振動推定装置は、サスペンション装置を用いた車体制振制御や、制駆動力による車体制振制御に有用であり、従来例えば特許文献1〜3に示すようなものが知られている。
特許文献1所載の車体振動推定技術は、車体の運動モデル(車両モデル)を用いて、運転者による操作に基づく制駆動力から車体のピッチング運動や上下運動を推定するものである。
また特許文献2,3に記載された車体振動推定技術は、特許文献1におけると同様に車体の運動モデル(車両モデル)を用いて、運転者による操作に基づく制駆動力から車体振動を推定するが、それに加え、車体に入力される外乱トルクを車輪速変動から推定し、この外乱トルクをも車体運動モデルへ入力することで、外乱による影響を排除しつつ車体振動を一層正確に推定することを狙ったものである。
特開2004−168148号公報 特開2009−127456号公報 特開2008−179277号公報
しかし、上記した特許文献1に記載の車体振動推定技術におけるように、運転者による操作に基づく制駆動力から車体運動モデル(車両モデル)を用いて車体振動を推定する場合、
路面の凹凸などにより外乱入力があると、車体振動を正確に推定することができない可能性がある。
更に特許文献2,3に記載された車体振動推定技術におけるように、車体運動モデル(車両モデル)を用いて制駆動力から車体振動を推定するに際し、車輪速変動から外乱トルクの大きさを予測し、この外乱トルクを車体運動モデルへ入力することで、外乱による影響を排除しつつ車体振動を一層正確に推定しようとしても、
各車輪速変動が必ずしもその車輪に加わる外乱トルクの大きさを表しておらず、結果として、当該車輪速変動から予測した外乱トルクの大きさも不正確で、これに基づく車体振動の推定精度も低いという問題を生ずる。
例えば、特許文献3に記載の車体振動推定技術では、輪荷重と車輪回転角速度の積から車輪にかかるトルクを算出しているが、輪荷重と車輪質量とが別のものであるため、車輪にかかるトルクの算出結果が必ずしも正しいとは言えず、
外乱による影響を排除しつつ車体振動を正確に推定するという上記本来の狙いを達成し得ないのが実情である。
本発明は、この外乱ロバスト性を高めるため、特許文献2,3におけるような前記の手法を用いたのでは、前記した通り車輪速変動から予測した外乱トルクの大きさが不正確であって、狙い通りに外乱ロバスト性を高めることができないとの事実に鑑み、
車輪速物理量を用いた車体振動推定技術による推定結果を、車両モデルを用いた車体運動推定装置(車両モデル)のオブザーバ入力としつつ、最終的な車体振動を推定することにより、外乱ロバスト性にも優れた車体運動推定装置を提供すると共に、この車体運動推定装置を具えた車体制振制御装置を提供することを目的とする。
この目的のため、本発明による車体振動推定装置は、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となる車体振動推定装置を説明するに、これは、
サスペンション装置を介して車輪を懸架された車両のバネ上質量である車体の振動を推定するものである。
本発明は、かかる車体振動推定装置に対し、
前記車輪の周速である車輪速に関した物理量を検出する車輪速物理量検出手段と、
該手段で検出した車輪速物理量から、前記車体の振動を推定する車輪速物理量基準車体振動推定手段と、
車両の制駆動力を検出する制駆動力検出手段と、
前記車輪速物理量基準車体振動推定手段で推定した車体の振動をオブザーバ入力としつつ、前記制駆動力検出手段で求めた車両の制駆動力から車両モデルを用いて前記車体の振動を推定して最終的な車体振動とする制駆動力基準車体振動推定手段とを設けたことを特徴とするものである。
本発明の車体制振制御装置は、上記の車体振動推定装置を具え、
前記制駆動力基準車体振動推定手段で推定した最終的な車体振動を軽減するのに必要な制駆動力補正量を演算する制駆動力補正量演算手段と、
該手段で求めた制駆動力補正量だけ前記車両の制駆動力を補正する制駆動力補正手段とを設けたことを特徴とするものである。
上記した本発明の車体振動推定装置によれば、車輪速物理量から車輪速物理量基準車体振動を推定し、
この車輪速物理量基準車体振動をオブザーバ入力としつつ、車両の制駆動力から車両モデルを用いて制駆動力基準車体振動を推定して最終的な車体振動とするため、以下の作用効果を奏し得る。
先ず、従来のように、バネ定数や車両質量など、経時劣化や乗員数の増減などに応じて変化するトルクや力を用いることなく、車輪速物理量から車輪速物理量基準車体振動を推定するため、その推定精度を高め得る。
更に、この高精度な車輪速物理量基準車体振動をオブザーバ入力としつつ、車両の制駆動力から車両モデルを用いて制駆動力基準車体振動(最終的な車体振動)を推定するため、
制駆動力基準車体振動(最終的な車体振動)を、外乱ロバスト性にも優れた高精度なものとなし得る。
また、車輪速物理量基準車体振動をそのまま最終的な車体振動とするのでは、この車輪速物理量基準車体振動が車体振動発生後のものであることから、車体制振制御がフィードフォワード制御であるとき、最終的な車体振動の推定が遅すぎて不向きであるが、
本発明の車体振動推定装置では、車輪速物理量基準車体振動をオブザーバ入力としつつ、車体振動発生前における車両の制駆動力から車両モデルを用いて推定した制駆動力基準車体振動を最終的な車体振動とするため、車体制振制御がフィードフォワード制御である場合でも、最終的な車体振動の推定が遅すぎることはない。
そして本発明の車体制振制御装置にあっては、上記の車体振動推定装置を具え、これにより推定した最終的な車体振動を軽減するのに必要な制駆動力補正量を演算し、この制駆動力補正量だけ車両の制駆動力を補正するため、
上記のように推定した最終的な車体振動が、外乱ロバスト性にも優れた高精度なものであることとも相まって、車体振動を常に狙い通りに軽減することができる。
本発明の第1実施例になる車体振動推定装置を具えた車両の車体制振制御システムを示す概略系統図である。 図1におけるモータコントローラの機能別ブロック線図である。 図2における車体制振制御演算部の機能別ブロック線図である。 図2,3における車体振動推定部および制駆動トルク補正量演算部が実行して、車体の振動を推定すると共にこの車体振動を抑制するトルク補正量を演算するための制御プログラムを示すフローチャートである。 車体重心点における上下方向バウンス運動Zvおよびピッチング運動θpと、車体の前軸上方箇所における上下変位Zfおよび車体の後軸上方箇所における上下変位Zrとの関係を示す車両諸元説明図である。 図5における車両の前輪に係わる前後方向変位量と上下方向変位量との関係を示す前輪サスペンションジオメトリ特性を示す特性線図である。 図5における車両の後輪に係わる前後方向変位量と上下方向変位量との関係を示す後輪サスペンションジオメトリ特性を示す特性線図である。 車両の運動モデルを説明するための説明図である。 本発明の第1実施例による車体振動推定プロセスおよび車体制振制御プロセスを示す概略系統図である。 本発明の第2実施例になる車体振動推定装置および車体制振制御装置を示す、図3に対応する車体制振制御演算部の機能別ブロック線図である。 図10における車体振動推定部および制駆動トルク補正量演算部が実行して、車体の振動を推定すると共にこの車体振動を抑制するのに必要な制駆動トルク補正量を演算するための制御プログラムを示す、図4に対応するフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<第1実施例の構成>
図1は、本発明の第1実施例になる車体振動推定装置を具えた車両の車体制振制御システムを示す概略系統図である。
図1において、1FL,1FRはそれぞれ左右前輪を示し、また1RL,1RRはそれぞれ左右後輪を示す。
左右前輪1FL,1FRはステアリングホイール2により転舵される操舵輪である。
また左右前輪1FL,1FRおよび左右後輪1RL,1RRはそれぞれ、図示せざるサスペンション装置により車体3に懸架され、この車体3は、サスペンション装置よりも上方に位置してバネ上質量を構成する。
図1における車両は、回転電機としてのモータ4により、ディファレンシャルギヤ装置を含む変速機5を介し左右前輪1FL,1FRを駆動することで走行可能な、前輪駆動式の電気自動車とする。
モータ4の制御に際しては、モータコントローラ6が、バッテリ(蓄電器)7の電力をインバータ8により直流−交流変換して、またこの交流電力をインバータ8による制御下でモータ4へ供給することで、モータ4のトルクがモータトルク指令値tTmに一致するよう、当該モータ4の制御を行うものとする。
なお、モータトルク指令値tTmが、モータ4に回生制動作用を要求する負極性のものである場合、モータコントローラ6はインバータ8を介し、バッテリ7が過充電とならないような発電負荷をモータ4に与え、
この時モータ4が回生制動作用により発電した電力を、インバータ8により交流−直流変換してバッテリ7に充電する。
モータコントローラ6は、後で詳述する車体振動推定演算を行うと共に、その推定結果である車体振動を抑制するようモータトルク指令値tTmを決定する車体制振制御演算を行うものである。
これらの演算のためモータコントローラ6には、
左右前輪1FL,1FRの周速である前輪速VwFL,VwFRを個々に検出する車輪速センサ11FL,11FR、および、左右後輪1RL,1RRの周速である後輪速VwRL,VwRRを個々に検出する車輪速センサ11RL,11RRからの信号と、
アクセル開度APO(アクセルペダル踏み込み量)を検出するアクセル開度センサ13からの信号と、
ブレーキペダル踏力BRPを検出するブレーキペダル踏力センサ14からの信号と、
変速機5からのギヤ比情報とを入力する。
なお本実施例では、左右前輪1FL,1FRの周速を表す物理量として前輪速VwFL,VwFRそのものを用い、また左右後輪1RL,1RRの周速を表す物理量として後輪速VwRL,VwRRそのものを用いることとしたが、
これらに限られるものではなく、左右前輪1FL,1FRおよび左右後輪1RL,1RRと共に回転する任意の箇所の回転速度から対応車輪の周速を求めるようにしても良いのは言うまでもない。
従って、車輪速は本発明における車輪速物理量に相当し、また前輪速および後輪速はそれぞれ本発明における前輪速物理量および後輪速物理量に相当し、
車輪速センサ11FL,11FR,11RL,11RRはそれぞれ、本発明における車輪速物理量検出手段を構成する。
モータコントローラ6は、上記の入力情報を基に、車体3の振動を推定すると共に、推定した車体3の振動を抑制するよう運転者の要求トルク(rTdの符号を付して後述する)を補正してモータトルク指令値tTmを決定する。
そこでモータコントローラ6は、全体を概ね図2のブロック線図で示すように、車速演算部20と、要求トルク演算部21と、車体制振制御演算部22と、モータトルク指令値演算部23と、加算器24とで構成する。
車速演算部20は、車輪速センサ11FL,11FR,11RL,11RR(図2では、車輪速センサ群11として示した)で検出した前輪速VwFL,VwFRおよび後輪速VwRL,VwRR(図2では、車輪速Vwとして示した)を基に車速VSPを求める。
要求トルク演算部21は、上記演算部20で求めた車速VSPと、センサ13,14でそれぞれ検出したアクセル開度APOおよびブレーキペダル踏力BRPとから、運転者が現在の車速VSPのもとで運転操作(アクセル開度APOおよびブレーキペダル踏力BRP)により要求している要求トルクrTd(正が駆動トルク、負が制動トルク)を、マップ検索などにより演算する。
従って要求トルク演算部21は、本発明における制駆動力検出手段を構成する。
車体制振制御演算部22は、車体振動推定部25および制駆動トルク補正量演算部26よりなり、
車体振動推定部25において、車輪速Vwおよび要求トルクrTdから後で詳述するごとくに車体3の振動を推定し、
制駆動トルク補正量演算部26において、当該推定した車体振動を抑制するのに必要な制駆動トルク補正量ΔTdを演算する。
なお車体振動推定部25は後で詳述するごとく、本発明における車輪速物理量基準車体振動推定手段および制駆動力基準車体振動推定手段を構成し、
また制駆動トルク補正量演算部26は後で詳述する処から明らかなごとく、本発明における制駆動力補正量演算手段を構成する。
加算器24は、演算部21で求めた運転者の要求トルクrTdを、制駆動トルク補正量演算部26で求めた車体振動抑制用制駆動トルク補正量ΔTdの加算により補正して、車体振動を抑制しつつ運転者の要求を満たす目標トルクtTdを求める。
従って加算器24は、本発明における制駆動力補正手段を構成する。
モータトルク指令値演算部23は、車両挙動を制御する挙動制御装置(VDC)や、駆動輪(前輪)1FL,1FRの駆動スリップを防止するトランクションコントロール装置(TCS)のような他システム27からトルク要求を受けて、この要求に叶うよう上記の目標トルクtTdを制限したり、加減することにより、これを実現するための最終的なモータトルク指令値tTmを求める。
モータコントローラ6は、上記のようにして求めたモータトルク指令値tTmに応じ、インバータ8による制御下でバッテリ7からモータ4へ電力を供給することで、モータ4のトルクがモータトルク指令値tTmに一致するよう、当該モータ4を駆動制御する。
<車体振動推定および車体制振制御>
車体制振制御演算部22の内部における車体振動推定部25および制駆動トルク補正量演算部26はそれぞれ、図3のブロック線図で示すように構成し、図4の制御プログラムを実行して車体3の振動(本実施例では、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp、および、上下変位量であるバウンス量fZp、上下変位速度であるバウンス速度dfZp)を推定すると共に、この推定した車体振動(fθp,dfθp,fZp,dfZp)を抑制するのに必要な制駆動トルク補正量ΔTdを演算する。
車体振動推定部25は、図3に明示するごとく車輪速基準車体振動推定器25a(本発明における車輪速物理量基準車体振動推定手段)と、制駆動力基準車体振動推定器25b(本発明における制駆動力基準車体振動推定手段)とで構成し、
先ず図4のステップS41において、そして図3に示すごとく車輪速基準車体振動推定器25aで左右前輪速VwFL,VwFRおよび左右後輪速VwRL,VwRRを読み込む。
車輪速基準車体振動推定器25aは図3に示すごとく、平均前輪速演算部31および平均後輪速演算部32と、前輪用バンドパスフィルタ処理部33および後輪用バンドパスフィルタ処理部34と、バウンス挙動演算部35およびピッチング挙動演算部36とで構成する。
図3の平均前輪速演算部31および平均後輪速演算部32(図4のステップS42)において、左右前輪速VwFL,VwFRから平均前輪速VwF=(VwFL+VwFR)/2を演算すると共に、左右後輪速VwRL,VwRRから平均後輪速VwR=(VwRL+VwRR)/2を演算する。
次に、図3の前輪用バンドパスフィルタ処理部33および後輪用バンドパスフィルタ処理部34(図4のステップS43)において、平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから車体共振周波数付近の成分のみを抽出して取り出すためのバンドパスフィルタにこれら平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRをそれぞれ通し、平均前輪速VwFの車体共振周波数近傍振動成分fVwFおよび平均後輪速VwRの車体共振周波数近傍振動成分fVwRを取得する。
かように平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRからフィルタ処理により車体共振周波数近傍振動成分fVwFおよびfVwRのみを抽出する理由は、車両全体の加減速による車輪速変動やノイズ成分を平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから除去し、車体振動を表す車輪速成分のみを抽出するためである。
次に、図3のバウンス挙動演算部35およびピッチング挙動演算部36(図4のステップS44)において、以下のごとくに平均前輪速VwFの車体共振周波数近傍振動成分fVwFおよび平均後輪速VwRの車体共振周波数近傍振動成分fVwRから、車輪速基準車体振動である車体3の上下バウンス速度dZvと、ピッチ角速度dθpとを求める。
車輪速振動成分fVwFおよびfVwRから車輪速基準車体振動(車体3のバウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)を求める方法を以下に説明する。
図5は、重心点−前軸間距離がLfであり、重心点−後軸間距離がLrである車両において、車体3の重心点における上下方向バウンス運動Zvおよびピッチング運動θpと、車体3の前軸上方箇所における上下変位Zfおよび車体3の後軸上方箇所における上下変位Zrとの関係を略示したものである。
この図に示す通り、車体3に上下変位Zvおよびピッチ角θpが発生すると、車体3の前軸上方箇所および後軸上方箇所にもそれぞれ上下変位ZfおよびZrが発生し、これらZv,θp,Zf,Zr間には次式の関係が成立する。
Zf=Zv+θp・Lf ・・・(1)
Zr=Zv−θp・Lr ・・・(2)
ここで、車体3に対する前輪1FL,1FRおよび後輪1RL,1RRの上下方向および前後方向における可動域を考察するに、これらの可動域は、それぞれのサスペンション装置を構成するリンク構造、つまりそれぞれのサスペンションジオメトリに応じた幾何学的拘束条件によって決まる。
従って、車体3と前輪1FL,1FRとがZfで示す上下方向に相対運動すると、車体3と前輪1FL,1FRとはXtfで示す前後方向へも、例えば図6の関係を持って相対変位し、また、
車体3と後輪1RL,1RRとがZrで示す上下方向に相対運動すると、車体3と後輪1RL,1RRとはXtrで示す前後方向へも、例えば図7の関係を持って相対変位する。
つまり、上記のごとく車体振動を表す車輪速成分のみを抽出して得られた前輪速車体共振周波数近傍振動成分fVwFおよび後輪速車体共振周波数近傍振動成分fVwRから、車体振動を表す前輪1FL,1FRの前後方向変位Xtf、および、車体振動を表す後輪1RL,1RRの前後方向変位Xtrを求めて監視すれば、図6,7の関係から、車体3の前軸上方箇所および後軸上方箇所における上下変位ZfおよびZrをそれぞれ予測することができる。
これら上下変位ZfおよびZrの予測を行う図3のバウンス挙動演算部35およびピッチング挙動演算部36(図4のステップS44)は、本発明における前輪上下運動推定部および後輪上下運動推定部に相当する。
なお、図6の前輪サスペンションジオメトリ特性および図7の後輪サスペンションジオメトリ特性はそれぞれ、そのままマップ化してメモリしておいたり、予めモデル化しておき、前輪の前後方向変位Xtfおよび後輪の前後方向変位Xtrから、車体3の前軸上方箇所および後軸上方箇所における上下変位ZfおよびZrをそれぞれ予測するのに用いるのが、これら上下変位Zf,Zrの予測が正確になって良い。
しかし本実施例ではコスト上の観点から、簡易的に、車両が平地に静止し、1Gの加速度が作用した状態での釣り合い点(図6,7の原点)付近における勾配KgeoF(図6の場合)およびKgeoR(図7の場合)で線形近似させ、これらKgeoF, KgeoRを比例係数として用いることとする。
これら比例係数KgeoF, KgeoRを用いる場合、前輪に係わる前後方向変位Xtfと上下変位Zfとの間、および、後輪に係わる前後方向変位Xtrと上下変位Zrとの間には、それぞれ次式の関係が成立する。
Zf=KgeoF・Xtf ・・・(3)
Zr=KgeoR・Xtr ・・・(4)
上記した4式の連立方程式を解くと、前輪の前後方向変位Xtfおよび後輪の前後方向変位Xtrから、車体振動(上下バウンス速度dZv、ピッチ角速度dθp)の基となる車体3の上下方向バウンス運動Zvおよびピッチング運動θpを求めるのに用いる次式を得ることができる。
θp=(KgeoF・Xtf−KgeoR・Xtr)/(Lf+Lr) ・・・(5)
Zv=(KgeoF・Xtf・Lf+KgeoR・Xtr・Lr)/(Lf+Lr) ・・・(6)
そして、上式の両辺を時間微分することで、車輪速基準車体振動である車体3の上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθpを求めるのに用いる次式を得ることができる。
ただし、「d」は簡易的に用いた微分演算子である。
dθp=(KgeoF・dXtf−KgeoR・dXtr)/(Lf+Lr) ・・・(7)
dZv=(KgeoF・dXtf・Lf+KgeoR・dXtr・Lr)/(Lf+Lr) ・・・(8)
これらの式から車輪速基準車体振動である車体3の上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθpを求めるに当たっては、図3のバンドパスフィルタ処理部33,34(図4のステップS43)で前述したごとく車体振動を表す車輪速成分のみを抽出して得られた前輪速車体共振周波数近傍振動成分fVwFおよび後輪速車体共振周波数近傍振動成分fVwRから、車体振動を表す前輪1FL,1FRの前後方向変位Xtf、および、車体振動を表す後輪1RL,1RRの前後方向変位Xtrをそれぞれ求め、これら前後方向変位Xtf, Xtrの時間微分値dXtf, dXtrを上記の(7)式および(8)式に代入することで、車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をそれぞれ演算して推定することができる。
以上のように車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)の推定が行われる間に、図3の制駆動力基準車体振動推定器25bでは図4のステップS45において、図2の演算部21で求めた要求トルクrTdを車両の制駆動トルクとして読み込む。
制駆動力基準車体振動推定器25bは図3に示すように車両モデル37を具え、図4のステップS46において、上記の車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をオブザーバ入力としつつ、要求トルクrTd(車両の制駆動トルク)から車両モデル37を用いてオブザーバによる状態推定を行うことにより、制駆動力基準車体振動(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)を算出して推定する。
図8は、オブザーバを構成する基本となる車両モデル37を示し、図5につき前述したと同じく、ホイールベースLのうちの重心点−前軸間距離がLfであり、重心点−後軸間距離がLrであり、また、前輪サスペンション装置のバネ定数および振動減衰係数がそれぞれKsf,Cfであり、後輪サスペンション装置のバネ定数および振動減衰係数がそれぞれKsr,Crであり、車体3の質量がMであり、車体3のピッチング慣性モーメントがIpである車両に制駆動トルクrTdが与えられた場合において、
車体3の重心点における制駆動力基準車体振動(上下バウンス量fZvおよびピッチ角fθp)を、車体3の前軸上方箇所における上下変位Zfおよび車体3の後軸上方箇所における上下変位Zrと共に示したものである。
図8の車両モデルにおいて、制駆動力基準車体振動(上下バウンス量fZvおよびピッチ角fθp)に関する運動方程式は、微分演算子を簡易的に「d」で表記すると、それぞれ次式のようになる。
M・ddfZv=-2Ksf(fZv+Lf・fθp)-2Cf(dfZv+Lf・dfθp)
-2Ksr(fZv-Lr・fθp)-2Cr(dfZv-Lr・dfθp) ・・・(9)
Ip・ddfθp=-2Lf{Ksf(fZv+Lf・fθp)+Cf(dfZv+Lf・dfθp)}
+2Lr{Ksr(fZv-Lr・fθp)+Cr(dfZv-Lr・dfθp)}+rTd ・・・(10)
これらの運動方程式を状態方程式に変換し、制駆動トルクrTdを入力として与えることにより、制駆動力基準車体振動である車体3のピッチング運動(ピッチ角fθpおよびピッチ角速度dfθp)および上下バウンス運動(上下バウンス量fZvおよび上下バウンス速度dfZv)を計算して推定することができる。
ただし、このままではモデル化誤差や外乱(路面凹凸)などに起因して、推定精度が低い。
そこで本実施例においては、図3の制駆動力基準車体振動推定器25bは、図4のステップS46において、要求トルクrTd(車両の制駆動トルク)から上記の車両モデル37を用いたオブザーバによる状態推定を行って、制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)を算出して推定するに際し、
図3に示すごとく演算部35,36からの車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をもオブザーバ入力としつつ、要求トルクrTd(車両の制駆動トルク)から車両モデル37を用いて、制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)を算出することとする。
かように図3の制駆動力基準車体振動推定器25bが車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をもオブザーバ入力として、要求トルクrTd(車両の制駆動トルク)から車両モデル37を基に制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)を算出することで、
制駆動力基準車体振動推定器25b(車両モデル37)の外乱ロバスト性と安定性とを両立させることができる。
また、車体振動の原因である要求トルクrTd(車両の制駆動トルク)から制駆動力基準車体振動xを推定するため、車体振動が発生した後ではなく、発生する前から制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)を最終的な車体振動として、フィードフォワード的に推定することができる。
図3の制駆動トルク補正量演算部26は、図4のステップS47において、これら最終的な車体振動である制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)を抑制するのに必要な制駆動トルク補正量ΔTdを以下のように演算する。
つまり制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)に対し、図3に38の符号を付して示すレギュレータゲインKrを与えて乗算し、その結果である乗算値の線形和を制駆動トルク補正量ΔTdとする。
その際レギュレータゲインKrは、最終的な車体振動である上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθpごとに抑制(軽減)度合いを重み付けして定めるのが、設計の自由度が高まって良い。
またレギュレータゲインKrは、上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθpごとに、つまり車体振動の種類ごとに抑制(軽減)度合いの重み付けパターンを変えて設定した複数のレギュレータゲインで構成し、
これら複数のレギュレータゲインと、上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθpとの積算値の総和を制駆動トルク補正量ΔTdとするようにしても良い。
更に、上記複数のレギュレータゲインに対するチューニングゲインを設定し、上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθpと、複数のレギュレータゲインと、チューニングゲインとの積算値の総和を制駆動トルク補正量ΔTdとするようにしても良い。
図3の制駆動トルク補正量演算部26(図4のステップS47)で上記のごとくに求めた制駆動トルク補正量ΔTdは図2の加算器24に供給され、
この加算器24は、演算部21で前記のごとくに求めた運転者の要求トルクrTdを車体振動抑制用制駆動トルク補正量ΔTdだけ補正して、車体振動を抑制しつつ運転者の要求を満たす目標トルクtTdを求める。
図2のモータトルク指令値演算部23は、他システム27からのトルク要求に叶うよう上記の目標トルクtTdを制限したり、加減することにより、これを実現するための最終的なモータトルク指令値tTmを求め、インバータ8を介したモータ4の駆動制御に資する。
上記した本実施例の車体振動推定および車体制振制御の流れは、図9に示すごときものとなる。
なお図9におけるA,B,C,Dは、図8に示す車両モデルを状態方程式で表記したときのA,B,C,D行列を示し、Koは、オブザーバ入力(dZv,dθp, dfZv,dfθp)に対するオブザーバゲインを表す。
<第1実施例の効果>
以上により本実施例の車体制振制御によれば、モータ4が、車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)を抑制しつつ運転者の要求トルクrTdを満足させるよう駆動制御されることとなり、
車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)の抑制により乗り心地を向上させ得るのは勿論のこと、車両旋回時の車体姿勢も安定させ得て操縦安定性も向上させることができる。
しかも本実施例によれば、上記の車体制振制御用に車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)を推定するに際し、
車体3に対する前輪1FL,1FRおよび後輪1RL,1RRの前後方向変位量Xtf,Xtrと上下方向変位量Zf,Zrとの間の図6,7に例示される予定の相関関係(サスペンションジオメトリ特性)に基づき、平均前輪速VwFの車体共振周波数近傍振動成分fVwFおよび平均後輪速VwRの車体共振周波数近傍振動成分fVwRから、車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)を推定し、
この車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をオブザーバ入力としつつ、要求駆動トルクrTd(車両の制駆動力)から車両モデル37を用いて制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)を推定して最終的な車体振動とするため、以下の作用効果を奏し得る。
先ず、従来のようにサスペンションストロークセンサを追加することなしに最終的な車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)の推定が可能であって、コスト的に有利である。
また、バネ定数や車両質量など、経時劣化や乗員数の増減などに応じて変化するトルクや力を用いることなく、平均前輪速VwFの車体共振周波数近傍振動成分fVwFおよび平均後輪速VwRの車体共振周波数近傍振動成分fVwRから、つまり車輪速に係わる情報から車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)を推定するため、その推定精度を高め得る。
更に、この高精度な車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をオブザーバ入力としつつ、要求駆動トルクrTd(車両の制駆動力)から車両モデル37を用いて、最終的な車体振動である制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)を推定するため、
この制駆動力基準車体振動(最終的な車体振動)xを、外乱ロバスト性にも優れた高精度なものとなし得て、上記制振制御による効果を顕著なものにすることができる。
また、車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をそのまま最終的な車体振動とするのでは、この車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)が車体振動発生後のものであることから、車体制振制御がフィードフォワード制御であるとき、最終的な車体振動の推定が遅すぎて不向きであるが、
本実施例の車体振動推定装置では、車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をオブザーバ入力としつつ、車体振動発生前における車両の制駆動力rTdから車両モデル37を用いて推定した制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)を最終的な車体振動とするため、本実施例のように車体制振制御がフィードフォワード制御である場合でも、最終的な車体振動の推定が遅すぎることはない。
そして本実施例の車体制振制御装置にあっては、上記のように推定した最終的な車体振動xを軽減するのに必要な制駆動力補正量ΔTdを演算し、この制駆動力補正量ΔTdだけ車両の制駆動力rTdを補正するため、
推定した最終的な車体振動xが、前記した理由により外乱ロバスト性にも優れた高精度なものであることとも相まって、車体振動を常に狙い通りに軽減することができる。
なお、図6の前輪サスペンションジオメトリ特性および図7の後輪サスペンションジオメトリ特性は、そのままマップ化してメモリしておいたり、予めモデル化しておき、これらマップまたはモデルを用いて、前輪の前後方向変位Xtfおよび後輪の前後方向変位Xtrから、車体3の前軸上方箇所および後軸上方箇所における上下変位ZfおよびZrをそれぞれ予測するのが、上下変位Zf,Zrの予測精度の点では有利であるものの、コスト的に不利になる。
しかし本実施例においては、一般的な走行を考えるとサスペンションストローク全域をカバーする必要がないとの観点から簡易的に、車両が平地に静止し、1Gの加速度が作用した状態での釣り合い点(図6,7の原点)付近における勾配KgeoF(図6の場合)およびKgeoR(図7の場合)で線形近似させ、これらKgeoF, KgeoRを比例係数として用い、これらと、前輪の前後方向変位Xtfおよび後輪の前後方向変位Xtrとから、車体3の前軸上方箇所および後軸上方箇所における上下変位ZfおよびZrをそれぞれ予測することとしたから、コスト的に有利である。
また本実施例では、図6の前輪サスペンションジオメトリ特性と、図7の後輪サスペンションジオメトリ特性とを個別に用い、前輪の前後方向変位Xtfおよび後輪の前後方向変位Xtrから、車体3の前軸上方箇所および後軸上方箇所における上下変位ZfおよびZrを個々に予測することとしたから、これら上下変位Zf,Zrの予測が正確になって、車体振動の推定を高精度に行うことができる。
更に本実施例では、車輪速基準車体振動(dZv,dθp)の推定に際し、平均前輪速VwFから抽出した車体共振周波数近傍振動成分fVwFおよび平均後輪速VwRから抽出した車体共振周波数近傍振動成分fVwRを用いることから、
車両全体の加減速による車輪速変動やノイズ成分を含まない、車体振動に伴う車輪速情報のみを用いて車輪速基準車体振動(dZv,dθp)の推定が行われることとなり、当該推定を高精度に行うことができる。
<第2実施例>
図10,11は、本発明の第2実施例になる車体振動推定装置および車体制振制御装置を示し、図10は、図3に対応するブロック線図、図11は、図4に対応する車体振動推定および車体制振制御プログラムである。
本実施例においても、車体制振制御システムは図1におけると同様なものとし、また、モータコントローラ6は図2におけると同様なものとするため、これら図に基づく車体制振制御システムやモータコントローラ6の説明をここでは省略し、以下に第1実施例との相違点のみを図10,11に基づき説明する。
本実施例においては、車体制振制御演算部22内の車体振動推定部25を図10のブロック線図で示すように構成し、この車体振動推定部25は図11の制御プログラムを実行して車体3の振動(本実施例でも第1実施例と同様に、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp、上下バウンス量fZp、および上下バウンス速度dfZp)を推定する。
車体振動推定部25は、先ず図11のステップS61において、図10に示すごとくに左右前輪速VwFL,VwFRおよび左右後輪速VwRL,VwRRを読み込む。
次いで、図10の平均前輪速演算部51および平均後輪速演算部52(図11のステップS62)において、左右前輪速VwFL,VwFRから平均前輪速VwF=(VwFL+VwFR)/2を演算すると共に、左右後輪速VwRL,VwRRから平均後輪速VwR=(VwRL+VwRR)/2を演算する。
次に、図10のバウンス挙動演算部53(図11のステップS63)において、平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから、車体に対する前輪1FL,1FRの前後方向変位Xtf(図5参照)、および、後輪1RL,1RRの前後方向変位Xtr(図5参照)を求め、これら前後輪の前後方向変位Xtf, Xtrを用いた前記(6)式の演算により車体3の上下バウンス量Zv(図5参照)を求め、これを時間微分して車体3の上下バウンス速度aZvを求める。
図10のピッチング挙動演算部54(図11のステップS63)において、平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから、車体に対する前輪1FL,1FRの前後方向変位Xtf(図5参照)、および、後輪1RL,1RRの前後方向変位Xtr(図5参照)を求め、これら前後輪の前後方向変位Xtf, Xtrを用いた前記(5)式の演算により車体3のピッチング運動θp(図5参照)を求め、これを時間微分して車体3のピッチ角速度aθpを求める。
次いで図10のバンドパスフィルタ処理部55(図11のステップS64)において、図10のバウンス挙動演算部53(図11のステップS63)で求めた車体3の上下バウンス速度aZvから車体共振周波数付近の成分のみを抽出して取り出すためのバンドパスフィルタにこの上下バウンス速度aZvを通し、上下バウンス速度aZvの車体共振周波数近傍振動成分である上下バウンス速度dZv(車輪速基準車体振動)を求める。
かように車体3の上下バウンス速度aZvからフィルタ処理により車体共振周波数付近の成分のみを抽出して取り出す理由は、当該車輪速基準上下バウンス速度aZvが車両全体の加減速による車輪速変動やノイズ成分を含んでおり、これらを上下バウンス速度aZvから除外して、車体振動のみを表す車輪速基準上下バウンス速度dZvとなす必要があるためである。
また図10のバンドパスフィルタ処理部56(図11のステップS64)において、図10のピッチング挙動演算部54(図11のステップS63)で求めた車体3のピッチ角速度aθpから車体共振周波数付近の成分のみを抽出して取り出すためのバンドパスフィルタにこのピッチ角速度aθpを通し、ピッチ角速度aθpの車体共振周波数近傍振動成分であるピッチ角速度dθp(車輪速基準車体振動)を求める。
かように車体3のピッチ角速度aθpからフィルタ処理により車体共振周波数付近の成分のみを抽出して取り出す理由は、当該ピッチ角速度aθpが車両全体の加減速による車輪速変動やノイズ成分を含んでおり、これらをピッチ角速度aθpから除外して、車体振動のみを表す車輪速基準ピッチ角速度dθpとなす必要があるためである。
以上のように車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)の推定が行われる間に、図10の制駆動力基準車体振動推定器25bでは図11のステップS65において、図2の演算部21で求めた要求トルクrTdを車両の制駆動トルクとして読み込む。
制駆動力基準車体振動推定器25bは、図3に示すと同様なもので車両モデル37を具え、図11のステップS66において、上記の車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をオブザーバ入力としつつ、要求トルクrTd(車両の制駆動トルク)から車両モデル37を用いてオブザーバによる状態推定を行うことにより、制駆動力基準車体振動(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)を算出して推定する。
ただし、このままではモデル化誤差や外乱(路面凹凸)などに起因して、推定精度が低い。
そこで本実施例においても、前記した第1実施例と同様、図10の制駆動力基準車体振動推定器25b(図4のステップS66)において、要求トルクrTd(車両の制駆動トルク)から車両モデル37を用いたオブザーバによる状態推定を行って、制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)を算出して推定するに際し、
図10に示すごとく演算部55,56からの車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をもオブザーバ入力としつつ、要求トルクrTd(車両の制駆動トルク)から車両モデル37を用いて、制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)を算出することとする。
かように図10の制駆動力基準車体振動推定器25bが車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をもオブザーバ入力として、要求トルクrTd(車両の制駆動トルク)から車両モデル37を基に制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)を算出することで、
制駆動力基準車体振動推定器25b(車両モデル37)の外乱ロバスト性と安定性とを両立させることができる。
また、車体振動の原因である要求トルクrTd(車両の制駆動トルク)から制駆動力基準車体振動xを推定するため、車体振動が発生した後ではなく、発生する前から制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)を最終的な車体振動として、フィードフォワード的に推定することができる。
図10の制駆動トルク補正量演算部26は、図11のステップS67において、これら最終的な車体振動である制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)を抑制するのに必要な制駆動トルク補正量ΔTdを以下のように演算する。
つまり制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、ピッチ角速度dfθp)に対し、図10に38の符号を付して示すレギュレータゲインKr(第1実施例と同様に設定)を与えて乗算し、その結果である乗算値の線形和を制駆動トルク補正量ΔTdとする。
図10の制駆動トルク補正量演算部26(図11のステップS67)で上記のごとくに求めた制駆動トルク補正量ΔTdは図2の加算器24に供給され、
この加算器24は、演算部21で前記のごとくに求めた運転者の要求トルクrTdを車体振動抑制用制駆動トルク補正量ΔTdだけ補正して、車体振動を抑制しつつ運転者の要求を満たす目標トルクtTdを求める。
図2のモータトルク指令値演算部23は、他システム27からのトルク要求に叶うよう上記の目標トルクtTdを制限したり、加減することにより、これを実現するための最終的なモータトルク指令値tTmを求め、インバータ8を介したモータ4の駆動制御に資する。
<第2実施例の効果>
以上により本実施例の車体制振制御においてもモータ4が、車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)を抑制しつつ運転者の要求トルクrTdを満足させるよう駆動制御されることとなり、
車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)の抑制により乗り心地を向上させ得るのは勿論のこと、車両旋回時の車体姿勢も安定させ得て操縦安定性も向上させることができる。
しかも本実施例によれば、上記の車体制振制御用に車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)を推定するに際し、
車体3に対する前輪1FL,1FRおよび後輪1RL,1RRの前後方向変位量Xtf,Xtrと上下方向変位量Zf,Zrとの間の図6,7に例示される予定の相関関係(サスペンションジオメトリ特性)に基づき、平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから、車輪速基準車体振動(上下バウンス速度aZvおよびピッチ角速度aθp)を推定し、
この推定結果aZv,aθpからバンドパスフィルタ処理部55,56(ステップS64)において車体共振周波数付近の成分のみを抽出し、車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)を推定し、
この車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をオブザーバ入力としつつ、要求駆動トルクrTd(車両の制駆動力)から車両モデル37を用いて制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)を求めて最終的な車体振動とするため、以下の作用効果を奏し得る。
つまり、従来のようにサスペンションストロークセンサを追加することなしに最終的な車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)の推定が可能であって、コスト的に有利である。
また、バネ定数や車両質量など、経時劣化や乗員数の増減などに応じて変化するトルクや力を用いることなく、平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから、つまり車輪速に係わる情報から車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)を推定するため、その推定精度を高め得る。
更に、この高精度な車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をオブザーバ入力としつつ、要求駆動トルクrTd(車両の制駆動力)から車両モデル37を用いて、最終的な車体振動である制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)を推定するため、
この制駆動力基準車体振動(最終的な車体振動)xを、外乱ロバスト性にも優れた高精度なものとなし得て、上記制振制御による効果を顕著なものにすることができる。
また、車輪速基準車体振動(上下バウンス速度dZvおよびピッチ角速度dθp)をそのまま最終的な車体振動とせず、これをオブザーバ入力としつつ、車体振動発生前における車両の制駆動力rTdから車両モデル37を用いて推定した制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)を車体振動とするため、車体制振制御がフィードフォワード制御である場合でも、車体振動の推定が遅れて、車体制振制御を狙い通りに遂行し得なくなるという問題を生ずることもない。
<その他の実施例>
上記した図示の実施例においては車体振動推定装置を、モータ4のみを動力源とする電気自動車の制駆動力操作を介した車体制振制御に用いる場合について説明したが、
内燃機関などのエンジン車を動力源として搭載する車両のエンジン制御を介した車体制振制御装置に対しても同様に用いることができるし、モータやエンジンの制駆動力操作に代え、サスペンション装置の操作を介した車体制振制御装置に対しても同様に用いることができる。
また、車体振動の推定に用いる車輪速情報は、図示のごとく平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRに限られず、車輪速VwFL,VwER,VwRL,VwRRを個々に用いて四輪モデルを基に車体振動を推定することもできる。
この場合、車両モデル37へのオブザーバ入力である車輪速基準車体振動は、図示例のピッチ角速度dθpおよび上下バウンス速度dZvに限られず、車体のロール運動など他の振動であっても、これらを容易に推定することができる。
なお第1実施例では、平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから車体振動を表す周波数成分(車体3に対する車輪の前後運動成分)を取り出すに際し、平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから車体共振周波数付近の成分のみを抽出するバンドパスフィルタを用いて、平均前輪速VwFの車体共振周波数近傍振動成分fVwFおよび平均後輪速VwRの車体共振周波数近傍振動成分fVwRを取得し、これらを車輪速基準車体振動(ピッチ角速度dθpおよび上下バウンス速度dZv)の推定に資することとしたが、これに代えて以下のような車輪速情報を用いるようにしてもよい。
つまり、車体3の対地速度である車体速を正確に検出、若しくは推定する手段を設け、この車体速と平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRとの偏差をそれぞれ、平均前輪速VwFの車体共振周波数近傍振動成分fVwFおよび平均後輪速VwRの車体共振周波数近傍振動成分fVwRの代わりに、車輪速基準車体振動(ピッチ角速度dθpおよび上下バウンス速度dZv)の推定に用いるようにしてもよい。
ただしこの手法は、駆動輪と従動輪のスリップ率差なども考慮すると、車体振動の推定精度の点で不利であり、第1実施例のようにバンドパスフィルタを用いて取得した平均前輪速VwFの車体共振周波数近傍振動成分fVwFおよび平均後輪速VwRの車体共振周波数近傍振動成分fVwRを用いる方が実用的である。
更に第2実施例では、平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから直接求めた車体3の上下バウンス速度aZvおよびピッチ角速度aθpからバンドパスフィルタ処理により車体共振周波数付近の成分のみを取り出して、車体振動のみを表す車輪速基準車体振動(ピッチ角速度dθpおよび上下バウンス速度dZv)となしたが、
その代わりに、上下バウンス速度aZvおよびピッチ角速度aθpに対し、ドリフト成分を除去するフィルタ処理を行って、または車体共振周波数近傍の周波数成分以下の低周波成分を除去するフィルタ処理を行って、車輪速基準車体振動(ピッチ角速度dθpおよび上下バウンス速度dZv)を求めるようにしてもよい。
なお図示例ではいずれも、制駆動力基準車体振動x(上下バウンス量fZv、上下バウンス速度dfZv、ピッチ角fθp、およびピッチ角速度dfθp)の推定に際し用いる制駆動力として、図2の演算部21で求めた要求トルクrTdを用いたが、これに限られず、車両の制駆動力を表す状態量であれば、任意のものを用いることができる。
また、車両が制駆動力を自動的に加減するアクチュエータを具えたものである場合は、当該アクチュエータの動作から車両の要求トルクを演算し、該要求トルクを車両の制駆動力として用いる必要があることは言うまでもない。
1FL,1FR 左右前輪
1RL,1RR 左右後輪
2 ステアリングホイール
3 車体(バネ上質量)
4 モータ
5 変速機
6 モータコントローラ
7 バッテリ(蓄電器)
8 インバータ
11FL,11FR,11RL,11RR 車輪速センサ(車輪速物理量検出手段)
13 アクセル開度センサ
14 ブレーキペダル踏力センサ
20 車速演算部
21 要求トルク演算部(制駆動力検出手段)
22 車体制振制御演算部
23 モータトルク指令値演算部
24 加算器(制駆動力補正手段)
25 車体振動推定部
25a 車輪速基準車体振動推定器(車輪速基準車体振動推定手段)
25b 制駆動力基準車体振動推定器(制駆動力基準車体振動推定手段)
26 制駆動トルク補正量演算部(制駆動力補正量演算手段)
31 平均前輪速演算部
32 平均後輪速演算部
33 前輪用バンドパスフィルタ処理部
34 後輪用バンドパスフィルタ処理部
35 バウンス挙動演算部(前輪上下運動推定部、後輪上下運動推定部)
36 ピッチング挙動演算部(前輪上下運動推定部、後輪上下運動推定部)
37 車両モデル
38 レギュレータゲイン
51 平均前輪速演算部
52 平均後輪速演算部
53 バウンス挙動演算部(前輪上下運動推定部、後輪上下運動推定部)
54 ピッチング挙動演算部(前輪上下運動推定部、後輪上下運動推定部)
55,56 バンドパスフィルタ処理部

Claims (24)

  1. サスペンション装置を介して車輪を懸架された車両のバネ上質量である車体の振動を推定するための装置において、
    前記車輪の周速である車輪速に関した物理量を検出する車輪速物理量検出手段と、
    該手段で検出した車輪速物理量から、前記車体の振動を推定する車輪速物理量基準車体振動推定手段と、
    車両の制駆動力を検出する制駆動力検出手段と、
    前記車輪速物理量基準車体振動推定手段で推定した車体の振動をオブザーバ入力としつつ、前記制駆動力検出手段で求めた車両の制駆動力から車両モデルを用いて前記車体の振動を推定して最終的な車体振動とする制駆動力基準車体振動推定手段とを具備してなることを特徴とする車体振動推定装置。
  2. 請求項1に記載の車体振動推定装置において、
    前記車輪速物理量基準車体振動推定手段は、前記車輪速物理量検出手段で検出した車輪速物理量、および、前記車体に対する車輪の前後方向変位量と上下方向変位量との間における相関関係から、前記車体の振動を推定するものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  3. 請求項2に記載の車体振動推定装置において、
    前記車輪速物理量検出手段は、前記車輪のうち、前輪の車輪速である前輪速に関した前輪速物理量および後輪の車輪速である後輪速に関した後輪速物理量を検出するものであり、
    前記車輪速物理量基準車体振動推定手段は、前記前輪速物理量、および、前記車体に対する前輪の前後方向変位量と上下方向変位量との間における相関関係、並びに、前記後輪速物理量、および、前記車体に対する後輪の前後方向変位量と上下方向変位量との間における相関関係から、前記車体の車輪速物理量基準車体振動を推定するものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  4. 請求項2または3に記載の車体振動推定装置において、
    前記車体に対する車輪の前後方向変位量と上下方向変位量との間における相関関係は、前記サスペンション装置のリンク構造に応じ決まる幾何学的拘束条件であって、予めマップ化したものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  5. 請求項2または3に記載の車体振動推定装置において、
    前記車体に対する車輪の前後方向変位量と上下方向変位量との間における相関関係は、前記サスペンション装置のリンク構造に応じ決まる幾何学的拘束条件であって、予めモデル化したものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  6. 請求項2または3に記載の車体振動推定装置において、
    前記車体に対する車輪の前後方向変位量と上下方向変位量との間における相関関係は、前記サスペンション装置のリンク構造に応じ決まる幾何学的拘束条件に線形近似させた比例係数を持つものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  7. 請求項2〜6のいずれか1項に記載の車体振動推定装置において、
    前記車体に対する車輪の前後方向変位量と上下方向変位量との間における相関関係は、少なくとも前輪用の相関関係と後輪用の相関関係とが個別のものであるものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の車体振動推定装置において、
    前記車輪速物理量基準車体振動推定手段が推定する車体の振動は、ピッチング振動および/または上下振動であることを特徴とする車体振動推定装置。
  9. 請求項3〜8のいずれか1項に記載の車体振動推定装置において、
    前記車輪速物理量基準車体振動推定手段は、前記前輪速物理量から前輪の前後方向変位量を演算し、該前輪の前後方向変位量、および、前記車体に対する前輪の前後方向変位量と上下方向変位量との間における相関関係から、前輪の上下方向変位量を推定する前輪上下運動推定部と、
    前記後輪速物理量から後輪の前後方向変位量を演算し、該後輪の前後方向変位量、および、前記車体に対する後輪の前後方向変位量と上下方向変位量との間における相関関係から、後輪の上下方向変位量を推定する後輪上下運動推定部とを有し、
    これら推定した前輪の上下方向変位量および後輪の上下方向変位量から、前記車体の車輪速物理量基準車体振動を推定するものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  10. 請求項3〜8のいずれか1項に記載の車体振動推定装置において、
    前記車輪速物理量基準車体振動推定手段は、前記前輪速物理量から前輪の上下方向変位量を算出する第1の運動方程式と、前記後輪速物理量から後輪の上下方向変位量を算出する第2の運動方程式と、前輪の上下方向変位量および後輪の上下方向変位量から車体のピッチング運動を算出する第3の運動方程式と、前輪の上下方向変位量および後輪の上下方向変位量から車体の上下運動を算出する第4の運動方程式との連立方程式を解いて、車体のピッチング運動および上下運動を求めることにより、前記車体の車輪速物理量基準車体振動を推定するものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の車体振動推定装置において、
    前記車輪速物理量基準車体振動推定手段は、前記車輪速物理量のうち、前記車体の前後振動に伴う車輪速物理量振動成分を、前記車輪速物理量基準車体振動の推定に資するものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  12. 請求項11に記載の車体振動推定装置において、
    前記車輪速物理量基準車体振動推定手段は、前記車輪速物理量と車体速との偏差を前記車輪速物理量振動成分として、前記車輪速物理量基準車体振動の推定に資するものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  13. 請求項11に記載の車体振動推定装置において、
    前記車輪速物理量基準車体振動推定手段は、前記車輪速物理量から車体共振周波数付近の成分のみを抽出して得られたフィルタ処理後の信号を前記車輪速物理量振動成分として、前記車輪速物理量基準車体振動の推定に資するものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  14. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の車体振動推定装置において、
    前記車輪速物理量基準車体振動推定手段は、前記推定した車輪速物理量基準車体振動に対し、車体共振周波数付近の成分のみ抽出するフィルタ処理を行って、最終的な車輪速物理量基準車体振動推定値とするものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の車体振動推定装置において、
    前記制駆動力検出手段は、運転操作から車両の要求トルクを演算し、該要求トルクを前記車両の制駆動力として前記車輪速物理量基準車体振動推定手段での推定に供するものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  16. 車両が制駆動力を自動的に加減するアクチュエータを具えたものである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の車体振動推定装置において、
    前記制駆動力検出手段は、前記アクチュエータの動作から車両の要求トルクを演算し、該要求トルクを前記車両の制駆動力として前記車輪速物理量基準車体振動推定手段での推定に供するものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  17. 請求項8〜16のいずれか1項に記載の車体振動推定装置において、
    前記制駆動力基準車体振動推定手段は、前記車輪速物理量基準車体振動推定手段が推定したピッチング振動および/または上下振動をオブザーバ入力としつつ、前記最終的な車体振動である制駆動力基準車体振動としてピッチング振動および/または上下振動を推定するものであることを特徴とする車体振動推定装置。
  18. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の車体振動推定装置を具え、
    前記制駆動力基準車体振動推定手段で推定した最終的な車体振動を軽減するのに必要な制駆動力補正量を演算する制駆動力補正量演算手段と、
    該手段で求めた制駆動力補正量だけ前記車両の制駆動力を補正する制駆動力補正手段とを設けてなることを特徴とする車体制振制御装置。
  19. 請求項18に記載の車体制振制御装置において、
    前記制駆動力補正量演算手段は、前記制駆動力基準車体振動推定手段で推定した最終的な車体振動に所定のゲインを乗じて前記制駆動力補正量を求めるものであることを特徴とする車体制振制御装置。
  20. 請求項18または19に記載の車体制振制御装置において、
    前記制駆動力補正量演算手段は、前記制駆動力基準車体振動推定手段で推定した最終的な車体振動に所定のゲインを乗じて得られる乗算値の線形和を前記制駆動力補正量とするものであることを特徴とする車体制振制御装置。
  21. 請求項20に記載の車体制振制御装置において、
    前記所定のゲインは、前記制駆動力基準車体振動推定手段で推定した最終的な車体振動の種類ごとに抑制度合いを重み付けして定めたレギュレータゲインであることを特徴とする車体制振制御装置。
  22. 請求項20に記載の車体制振制御装置において、
    前記所定のゲインは、前記制駆動力基準車体振動推定手段で推定した最終的な車体振動に対する抑制度合いの重み付けパターンを変えて設定した複数のレギュレータゲインから成るものであり、
    前記制駆動力補正量演算手段は、該複数のレギュレータゲインと前記最終的な車体振動との積算値の総和を前記制駆動力補正量とするものであることを特徴とする車体制振制御装置。
  23. 請求項20に記載の車体制振制御装置において、
    前記所定のゲインは、前記制駆動力基準車体振動推定手段で推定した最終的な車体振動に対する抑制度合いの重み付けパターンを変えて設定した複数のレギュレータゲインから成るものであり、
    前記制駆動力補正量演算手段は、該複数のレギュレータゲインと、これらレギュレータゲインに対するチューニングゲインと、前記最終的な車体振動との積算値の総和を前記制駆動力補正量とするものであることを特徴とする車体制振制御装置。
  24. 請求項18〜23のいずれか1項に記載の車体制振制御装置において、
    前記最終的な車体振動は、ピッチング振動および/または上下振動であるものであることを特徴とする車体制振制御装置。
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