JP2011222133A - 電池パック入出力制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電池パックの内部の最大温度を推定し、その推定に基いて電池パックの入出力制限を行うことを可能とすることである。
【解決手段】電池パック入出力制限を処理する制御装置50は、電池パック14の内部の最大温度を推定する最大温度推定部52として、電池パック14の表面温度と内部温度との温度差を推定する内外温度差推定モジュール54と、各単位電池12の内部抵抗の相違に起因する温度差を推定するR起因温度差推定モジュール56とを含む。ここで、内外温度差とR起因温度差の推定には、吸気温度37、電流負荷31、冷却風量が考慮される。また、制御装置50は、推定された最大温度に基いて電池パック14の入出力電力の制限を行う入出力制限部64を含む。
【選択図】図1
【解決手段】電池パック入出力制限を処理する制御装置50は、電池パック14の内部の最大温度を推定する最大温度推定部52として、電池パック14の表面温度と内部温度との温度差を推定する内外温度差推定モジュール54と、各単位電池12の内部抵抗の相違に起因する温度差を推定するR起因温度差推定モジュール56とを含む。ここで、内外温度差とR起因温度差の推定には、吸気温度37、電流負荷31、冷却風量が考慮される。また、制御装置50は、推定された最大温度に基いて電池パック14の入出力電力の制限を行う入出力制限部64を含む。
【選択図】図1
Description
本発明は、電池パック入出力制御装置に係り、特に、複数の単位電池を組み合わせて構成される電池パックの表面温度に基いて入出力制限を行う電池パック入出力制御装置に関する。
所望の高出力電圧、あるいは大出力電力を得るために、複数の単位電池を直列接続し、あるいは並列接続し、あるいはこれらを組み合わせて1つの組電池または電池パックとして構成することが行われる。
電池は化学反応によって電力を取り出すものであるので、充放電によって発熱する。電池温度が上昇すると、電池の出力特性が低下する等の影響が出るので、電池温度を監視して、電池の入出力制限が行われる。電池パックの場合には、単位電池のばらつきが存在し、また、電池パックの構成上、その端部と中央部とでは放熱の程度が異なり、それによる温度差が生じることがあるので、電池パックの複数の箇所の温度監視に基いて入出力制限が行われる。
例えば、特許文献1には、二次電池の充放電制御装置として、温度に応じて充放電電力上限値を予め定め、またSOCに応じて充放電電力上限値を予め定め、電池の複数個所に温度センサを設け、その上限値を超えないように充放電制御を行うことが述べられている。
また、特許文献2には、二次電池の充放電制御装置として、(電流値の2乗×電池の内部抵抗)から内部発熱量による電池温度を推定し、あるいは、OCVから電池の電極界面の化学的損失による電池温度を推定し、推定されたバッテリ温度または実測温度との高い方の温度に基いて充放電電力を制限することが述べられている。充放電電力の制限には、0から1の値である出力制限割合とバッテリ温度の関係を用い、出力制限割合を0に近づけると充放電出力制限を強くできることが述べられている。
また、特許文献3には、電池電源装置として、複数のブロックに分けられる電池パックについて、電池パック全体の総電圧、各ブロック毎の電圧、電池パック全体の充放電電流、個々の単電池の温度、各ブロック毎の温度等に基いて、送風機を制御して電池パックを適正温度に保つことが開示されている。
また、特許文献4には、組電池制御装置として、複数のブロックからなる組電池において、温度補正を行ったブロック毎の内部抵抗を求め、その異常検出に基いて異常昇温判定を行うことが述べられている。
複数の単位電池を組み合わせる電池パックの温度監視は、限られた数のセンサで電池パックの表面温度を検出して行われる。実際には、電池の表面温度と内部温度との差が存在し、また、電池内部においても、各単位電池の内部抵抗のばらつきが存在する。また、センサと電池表面との接触状態にもばらつきが存在し、複数のセンサの間でも測温誤差が存在する。このように、電池パックには、個々の単位電池の間のばらつきと、個々のセンサのばらつきが存在するため、これらを電池パックの実測温度に正しく反映して、実際の電池パックの内部の最大温度を求める必要がある。
上記従来技術においては、複数の単位電池を組み合わせる電池パックにおいて、複数のセンサを用いて温度監視を行う他に、電流に基いて電池温度を推定し、また、電池の内部抵抗を求めてその異常監視を行うこと等が行われているが、単位電池の間のばらつき、センサに関するばらつきを電池パックの実測温度に反映させることが十分には行われていない。このために、電池パックの内部温度が十分に把握できず、電池パックの入出力制限が十分に行われていない恐れがある。電池パックの入出力制限が十分に行われていないと、電池パックの過熱が生じ、例えば、発煙温度特性を有する電池パックにおいては、発煙等を生じる恐れがある。
本発明の目的は、電池パックの内部の最大温度を推定し、その推定に基いて電池パックの入出力制限を行うことを可能とする電池パック入出力制御装置を提供することである。
本発明に係る電池パック入出力制御装置は、複数の単位電池を組み合わせて構成される電池パックと、電池パックの環境温度を取得する環境温度取得部と、電池パックに設けられ電池表面温度を検出する複数の電池温度センサと、電池パックの予め任意に定めた複数の配置位置における単位電池のそれぞれの電池電圧を検出する複数の電圧検出部と、電池パックに入出力する電流値を取得する電流値取得部と、電池パックの内部における最大温度を推定する最大温度推定部と、推定された最大温度に基いて電池パックの入出力制限を行う入出力制限部と、を備え、最大温度推定部は、電池内部温度と電池表面温度との間の差である電池内外温度差を、吸気温度と電流負荷と冷却風量の中の少なくとも1つに応じて推定する内外温度差推定手段と、複数の配置位置における各電池電圧と電流値とから各単位電池の内部抵抗を推定し、各単位電池の内部抵抗の相違に起因する電池パック内の温度差を推定する内部抵抗起因温度差推定手段と、を含み、これらによって推定される温度差の合計値を電池表面温度の最大値に加算して電池パックの最大温度を推定することを特徴とする電池パック入出力制御装置。
また、本発明に係る電池パック入出力制御装置において、吸気温度と電流負荷と冷却風量とに関連づけ、電池表面温度に対する電池内外温度差について予め求めたオフセット温度値のマップである過熱保護マップを記憶するマップ記憶部を含むことが好ましい。
また、本発明に係る電池パック入出力制御装置において、内部抵抗起因温度差推定手段は、各単位電池のそれぞれの内部抵抗について、標準内部抵抗からの最大偏差が予め定めた識別可能閾値以下のときは、識別可能閾値の内部抵抗差があるものとし、吸気温度と電流負荷と冷却風量の中の少なくとも1つに基いて、内部抵抗差による温度差を求め、電池パック内の温度差を推定することが好ましい。
また、本発明に係る電池パック入出力制御装置において、入出力制限部は、推定された最大温度と、電池パックの発煙温度とを比較して、入出力制限開始を行う使用限度温度を変更することが好ましい。
上記構成により、電池パック入出力制御装置は、電池パックの内部における最大温度を推定し、推定された最大温度に基いて電池パックの入出力制限を行う。ここで、電池パックの最大温度の推定は、電池内部温度と電池表面温度との間の差である電池内外温度差を、吸気温度と電流負荷と冷却風量の中の少なくとも1つに応じて推定し、複数の配置位置における各電池電圧と電流値とから各単位電池の内部抵抗を推定し、各単位電池の内部抵抗の相違に起因する電池パック内の温度差を推定する。そして、これらによって推定される温度差の合計値を電池表面温度の最大値に加算して電池パックの最大温度を推定する。このように、吸気温度や電流負荷や冷却風量の影響、単位電池の内部抵抗のばらつきの影響を反映して電池パックの最大温度を推定するので、電池パックの入出力制限を、より十分に行うことができる。
また、電池パック入出力制御装置において、吸気温度と電流負荷と冷却風量とに関連づけ、電池表面温度に対する電池内外温度差について予め求めたオフセット温度値のマップである過熱保護マップを記憶する。したがって、電池内外温度差を容易に取得することができる。
また、電池パック入出力制御装置において、各単位電池のそれぞれの内部抵抗について、標準内部抵抗からの最大偏差が予め定めた識別可能閾値以下のときは、識別可能閾値の内部抵抗差があるものとし、吸気温度と電流負荷と冷却風量の中の少なくとも1つに基いて、内部抵抗差による温度差を求め、電池パック内の温度差を推定する。電池の内部抵抗はある程度のばらつきを常に有しているので、余り細かく計算しても実情に合わない。上記構成によれば、意味のある内部抵抗のばらつきを規定し、それ以下のばらつきに関しては一律に意味のあるばらつきと擬制する。これによって、内部抵抗差による温度差を安全側に大きく設定することができ、電池パックの入出力制限を、より十分に行うことができる。
また、電池パック入出力制御装置において、推定された最大温度と、電池パックの発煙温度とを比較して、入出力制限開始を行う使用限度温度を変更する。例えば、リチウムイオン電池等は、発煙温度以上の温度になると、電池として作動しても発煙を生じることが知られている。発煙はユーザから見ると電池異常とされることが多い。上記構成によれば、発煙温度を考慮して入出力制限を行うので、ユーザから見て十分な入出力制限が行われていることになる。
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、電池パックとして、リチウムイオン電池パック、すなわちリチウムイオン単位電池を複数個組み合わせた電池パックを説明するが、これ以外の電池パックであってもよい。例えば、ニッケル水素電池パックであってもよい。また、電池パックは、複数の単位電池を直列に接続して構成されるものとして説明するが、勿論、複数の単位電池を並列に接続して電池パックを構成するものとしてもよい。また、複数の単位電池を直列接続と並列接続とを用いて1つの電池パックとして構成するものとしてもよい。
以下に述べる各種センサの数とその配置位置は、説明のための例示であって、これ以外の数のセンサを用いてもよく、また、その配置位置も任意に設定するものとできる。例えば、環境温度を検出するものとして、吸気温度センサを説明するが、吸気温度以外で外気温度、あるいは電池パックの近傍の温度を検出するものを用いることができる。
電池パックを含む電源回路の構成として、電池パック、システムメインリレー、電圧変換器、平滑コンデンサ、インバータを用いるものとして説明するが、必要に応じ、これ以外の要素を付加するものとしてもよい。例えば、DC/DCコンバータ、低電圧電源等を有する構成としてもよい。
また、電池パックを含む電源回路に接続される回転電機として、モータ機能と発電機機能とを有するモータ・ジェネレータを1台用いるものとして説明するが、これを2台のモータ・ジェネレータを用いるものとしてもよい。その場合に、モータ機能のみを有する回転電機を1台、発電機機能のみを有する回転電機を1台用いるものとしてもよい。
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、電池パックと回転電機とを搭載するハイブリッド車両の作動制御を行うハイブリッド車両制御システムのうち、電池パックの入出力の制御に関わる部分を抜き出して、電池パック入出力制御システム10として示す図である。この電池パック入出力制御システム10は、電池パックの表面温度に基づいて電池パックの入出力制限を行う機能を有するが、ここでは特に、電池パックの内部の最大温度を推定し、その推定された最大温度に基いて入出力制限を行う機能を有する。
この電池パック入出力制御システム10は、複数の単位電池12を組み合わせて構成される電池パック14と、システムメインリレー16、電池パック側平滑コンデンサ18、電圧変換器20、インバータ側平滑コンデンサ22、インバータ24、回転電機26、電池パック14に関連して設けられる電流センサ30、電圧センサ34、温度センサ32、環境温度センサとしての吸気温度センサ36、これらのセンサに接続されて、電流I、電圧V、温度Tをそれぞれ検出するI/V/T検出部40と、冷却風量の値を入力する冷却風量入力部38と、これらの各構成要素の作動を全体として制御する制御装置50を含んで構成される。この場合、制御装置50は、電池パック入出力制御装置に相当する。
電池パック14は、複数の単位電池12として、リチウムイオン単位電池を直列に接続して、所望の出力電圧と出力電流を得られるように構成された充放電可能な2次電池としての組電池である。所望の出力電圧としては、例えば約200Vの端子電圧とすることができる。この場合は、リチウムイオンの単位電池12を100個以上直列に接続して電池パック14を構成するものとできる。
電池パック14に設けられる電流センサ30は、電池パック14の入出力電流を検出する機能を有し、電池パック14の両端子の少なくともいずれか一方に直列に接続されて配置される。電流センサ30が1つの場合には、その電流センサ30の検出値は電池パック14における電流値を検出することになる。電流センサ30が電池パック14の両端子の双方にそれぞれ設けられるときは、I/V/T検出部40において、2つの電流センサの検出値の差異が取得され、例えば予め定めた許容差異値を超えるときは電流センサ30が異常であるとする検出が行われる。
このように、電流センサ30は、電池パック14に入出力する電流値を取得するために設けられる。電池パック14に入出力する電流値は、負荷である回転電機26の駆動電力、回生電力等によるので、その値の大きさは、電流負荷の大きさを示す。このように、電流センサ30によって取得された電流値のデータは、電流負荷31のデータとして、I/V/T検出部40を経由して、制御装置50に伝送される。複数の電流センサ30を用いてそれらの間の異常が監視されるときは、その旨を出力し、正しい電流値となるような処理を行い、1つの正しい電流値のデータが制御装置50に伝送される。
電池パック14に設けられる電圧センサ34は、電池パック14を構成する単位電池12の電池電圧を検出する機能を有し、複数個用いられる。図1の例では、1つの電池パック14を構成する単位電池12の配列方向に沿って、等間隔となるように、5個の電圧センサ34が配置される様子が示される。
このように、電圧センサ34は、電池パック14の予め任意に定めた複数の配置位置における単位電池12のそれぞれの電池電圧を検出する機能を有するので、これらを電圧検出部と呼ぶことができる。電圧センサ34は、I/V/T検出部40に接続され、ここを経由して、各単位電池12の電池電圧値のデータが制御装置50に伝送される。
電池パック14に設けられる温度センサ32は、電池パック14の表面に配置され、電池パックの表面温度を検出する機能を有し、複数個用いられる。図1の例では、1つの電池パック14の単位電池12の配列方向に沿って、等間隔となるように、3個の温度センサ32が配置される様子が示される。
温度センサ32は、例えばサーミスタ等の感温素子を用いることができる。各温度センサ32は、適当な取付手段によって電池パック14の表面に取り付け配置される。取付手段として、適当な接着材を用いることができる。また、サーミスタ等の感温素子を樹脂材料でモールドしながら、電池パック14と一体化させるモールド一体化技術を用いることもできる。以下では、モールド一体化技術によって電池パック14に取り付け配置されたものとして説明する。
このように、温度センサ32は、電池パック14の表面温度を検出する機能を有するので、これを電池表面温度センサ、あるいは電池温度センサと呼ぶことができる。温度センサ32は、I/V/T検出部40に接続され、ここを経由して、電池パック14の表面温度のデータが制御装置50に伝送される。
吸気温度センサ36は、電池パック14の周囲の環境温度を検出する機能を有し、電池パック14を空冷するときの吸気口に設けられる温度センサである。このように吸気温度センサ36は、電池パック14の環境温度を取得する機能を有するので、これを環境温度取得部と呼ぶこともできる。吸気温度センサ36が取得した温度値のデータは、吸気温度37のデータとして、I/V/T検出部を介して、制御装置50に伝送される。以下では、特に断らない限り、環境温度といえば、吸気温度を指すものとする。吸気温度センサ36は、吸気口に複数設けるものとしてもよい。また、吸気温度センサ36以外に、別のセンサを環境温度検出手段として設けてもよい。これらの場合には、各センサの検出値について平均化が行われ、その結果を電池パック14の環境温度とすることができる。
I/V/T検出部40は、各種のセンサと制御装置50との間に設けられるインタフェース回路である。各種センサの検出値は、例えば、アナログの電圧値である。I/V/T検出部40は、各センサによってまちまちであるアナログ信号レベルを、制御装置50における各種処理に適するように、規格化されたアナログ信号、またはディジタル信号に変換する機能を有する。
冷却風量入力部38は、電池パック14を空冷するときの吸気口を通る風量である冷却風量の値を制御装置50に入力するためのインタフェース回路である。具体的には、風量切替スイッチあるいは、風量設定ボタン等によって示される冷却風量のデータが入力値として取得されて、制御装置50に伝送される。
システムメインリレー16は、高電圧2次電池である電池パック14と、回転電機26を含む負荷側との間を電気的に接続あるいは遮断することができる電源開閉装置である。システムメインリレー16は、高電圧の接続あるいは遮断の際に発生するアーク放電等で端子間が溶着することを防止するため、正極母線と負極母線とにそれぞれ独立して設けられる複数のリレーが用いられる。これらのリレーの接続および遮断のタイミングは、端子間の溶着を防止するため、相互に適当にずらして設定される。
電圧変換器20は、電池パック14とインバータ24の間に配置され、電圧変換機能を有する回路である。電圧変換器20としては、リアクトルと、制御装置50の制御の下で作動するスイッチング素子等を含んで構成することができる。電圧変換機能としては、電池パック側の電圧をリアクトルのエネルギ蓄積作用を利用して昇圧しインバータ側に供給する昇圧機能と、インバータ側からの電力を電池パック側に降圧して充電電力として供給する降圧機能とを有する。
電池パック14と電圧変換器20との間に設けられる電池パック側平滑コンデンサ18と、電圧変換器20とインバータ24との間に設けられるインバータ側平滑コンデンサ22は、電圧、電流の変動を抑制し平滑化する機能を有するコンデンサである。
インバータ24は、交流電力と直流電力との間の電力変換を行う回路である。インバータ24は、制御装置50の制御の下で作動する複数のスイッチング素子を含んで構成される。インバータ24は、交流−直流変換も、直流−交流変換も行うことができる。回転電機26を発電機として機能させるとき、インバータ24は、回転電機26からの交流三相回生電力を直流電力に変換し、電池パック側に充電電流として供給する交直変換機能を有する。また、回転電機26をモータとして機能させる場合において、車両が力行のとき、インバータ24は、電池パック側からの直流電力を交流三相駆動電力に変換し、回転電機26に駆動電力として供給する直交変換機能を有し、また、車両が制動のとき、逆に回転電機26からの交流三相回生電力を直流電力に変換し、電池パック側に充電電流として供給する交直変換機能を有する。
ここで、電池パック14、システムメインリレー16、電池パック側平滑コンデンサ18、電圧変換器20、インバータ側平滑コンデンサ22、インバータ24は、回転電機26と接続されて1つの電源回路を構成する。
回転電機26は、車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(MG)であって、電池パック14を含む電源回路から電力が供給されるときはモータとして機能し、図示されていないエンジンによる駆動時、あるいは車両の制動時には発電機として機能する三相同期型回転電機である。
制御装置50は、電池パック入出力制御システム10の各構成要素の作動を全体として制御する機能を有する。ここでは、特に、電池パックの内部の最大温度を推定し、その推定された最大温度に基いて電圧変換器20とインバータ24の作動を制御することで、電池パック14の入出力電力を制限する機能を有する。かかる制御装置50は、車両の搭載に適したコンピュータ等で構成することができる。
制御装置50は、電池パック14の内部の最大温度を推定する最大温度推定部52と、最大温度推定部52において用いられる温度差マップを記憶する温度差マップ記憶部62と、推定された最大温度に基いて電池パック14の入出力電力の制限を行う入出力制限部64を含んで構成される。
ここで、温度差マップ記憶部62は、環境温度である吸気温度37のデータ、電流負荷31のデータ、冷却風量入力部38から入力されて取得される冷却風量のデータの中の少なくとも1つに関連付けて、電池表面温度に対する電池内外温度差について求めたオフセット温度値のマップである過熱保護マップを記憶する。過熱保護マップの内容の詳細については後述する。
最大温度推定部52は、電池パック14の表面温度と内部温度との温度差である内外温度差を推定する内外温度差推定モジュール54と、各単位電池12の内部抵抗の相違に起因する電池パック内の温度差を推定するR起因温度差推定モジュール56と、温度センサ32と電池パック14との接触状態に起因する温度差を推定する接触状態起因温度差推定モジュール58と、複数の温度センサ32の間の検出特性の相違に起因する温度差を推定するセンサ起因温度差推定モジュール60を含んで構成される。
かかる機能は、ソフトウェアによって実現でき、具体的には、電池パック入出力制御プログラムを実行することで実現できる。かかる機能の一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。
かかる構成の作用、特に制御装置50の各機能について、図2以下を用いて詳細に説明する。図2は、電池パック14の内部の最大温度の推定に基いて電池パック14の入出力制限を行う手順を示すフローチャートである。図3から図8は、制御装置50の最大温度推定部52の各機能を説明する図である。図9から図12は、電池パック14の入出力制限を行う様子を説明する図である。
図2は、上記のように、電池パック14の内部の最大温度の推定に基いて電池パック14の入出力制限を行う手順を示すフローチャートであり、各手順は、電池パック入出力制限プログラムの各処理手順にそれぞれ対応する。電池パック14の入出力制限を行うには、最初に、吸気温度、電流負荷、冷却風量、電池表面温度、電流I、電圧Vが取得される(S10)。具体的には、吸気温度センサ36を介して環境温度である吸気温度37が取得され、温度センサ32を介して電池表面温度が取得され、電流センサ30を介して電流負荷31に対応する電流値が取得され、電圧センサ34を介して単位電池の電池電圧が取得され、冷却風量入力部38から冷却風量データが取得される。
次に、4つの温度差の推定が行われる。すなわち、内外温度差推定(S12)と、R起因温度差推定(S14)と、センサ接触状態起因温度差推定(S16)と、センサ起因温度差推定(S18)が行われる。これらについて、図3から図8を用いて説明する。
内外温度差推定(S12)は、電池パック14の内部温度と、温度センサ32によって実際に検出される電池表面温度との間の差である電池内外温度差を、環境温度に応じて推定する工程である。この工程は、制御装置50の最大温度推定部52における内外温度差推定モジュール54の機能によって実行される。
具体的には、吸気温度センサ36を介して取得される環境温度である吸気温度37のデータ、電流センサ30を介して取得される電流負荷31のデータ、冷却風量入力部38を介して取得される冷却風量データを考慮して、温度センサ32によって実際に検出される電池表面温度と電池パック14の内部温度との間の差である温度差の推定が行われる。温度差の推定を精度よく行うためには、吸気温度37のデータ、電流負荷31のデータ、冷却風量のデータの全部を考慮することが好ましいが、電池パック14の入出力制限に余裕がある場合等には、例えば、吸気温度37のデータのみを用いるものとしてもよい。また、吸気温度37のデータと電流負荷31のデータの2つを考慮するものとしてもよい。
内外温度差推定には、上記考慮される要因と内外温度差との関係を示すマップを用いることができる。図3は、上記考慮される要因として、吸気温度37のデータのみを用いるときに用いられるマップである。ここでは、吸気温度37を環境温度として、環境温度と内外温度差との関係をマップ化したものが示されている。このマップは、温度差マップ記憶部62に記憶されているマップを読み出して用いることができる。このマップは、実験等によって予め求められたデータをマップ化したもので、横軸に環境温度、縦軸に電池表面温度を基準とした内外温度差、つまり、内外温度差=(電池パック14の内部温度)−(温度センサ32によって実測された電池表面温度)が取られている。
内外温度差は、環境温度が室温(Room Temperature:RT)から低温になるにつれ、増大する特性を有する。この特性は、電池パック14の構造で定まるものであるので、予め求めておくことができる。求められた環境温度と内外温度差とのマップは、制御装置50の温度差マップ記憶部62に記憶される。したがって、内外温度差推定を行うには、環境温度を検索キーとして、環境温度と内外温度差との関係を示すマップを検索して、対応する内外温度差を読み出すことで行うことができる。
環境温度と内外温度差との関係を示すマップは、環境温度と内外温度差を関連付けるものであれば、マップ形式以外の形式であってもよい。例えば、環境温度と内外温度差との関係をテーブル化したルックアップテーブル形式であってもよく、また、環境温度を入力して内外温度差が出力される関数形の形式であってもよい。
図4は、上記考慮される要因として、吸気温度37のデータと、電流負荷31のデータを用いるときに用いられるマップである。ここでは、吸気温度37と、電流負荷31をパラメータとして、これら2つのパラメータ値を定めたときに1つのオフセット温度が求まるように、2次元的な関係をマップ化したものが示されている。なお、オフセット温度とは、上記の内外温度差のことである。
図4は、横軸に吸気温度として、−40℃から+60℃まで10℃刻みで、縦軸に電流負荷を示すものとして、電流2乗平均値が0A2から10000A2まで1000A2刻みに取られ、それぞれの交点の欄に対応するオフセット温度値が記載されるテーブル形式のマップである。なお、ここでは、冷却風量が所定の一定値とされている。これらの温度、電流負荷の値は、説明の一例であって、勿論、電池パック14の仕様によって、これ以外の値であっても構わない。
図4のマップは、図3のマップと同様に、実験によって予め求めて温度差マップ記憶部62に記憶される。以下に、具体的なマップを作成するための実験条件の内容について、一例を用いて説明する。
吸気温度のデータとしては、最低温度検出値を予め定めた所定の平均化時間の間で平均化した値を用いる。例えば、吸気温度センサ36の検出値を予め定めたサンプリング間隔で取得し、以前の検出値よりも低温のデータが検出されるとその値に順次更新し、常にいままでの最低温度を保持するようにする。そして、その最低温度の推移を、先ほどの平均化時間の間で平均化し、その平均値を、その平均化時間経過した時点における吸気温度とする。
例えば、制御周期を100msとして、この制御周期でサンプリングするものとすると、平均化時間をN×100msとして、その平均化時間の間に最低温度がN点取得されるので、この場合には、そのN点の最低温度の平均値が吸気温度とされる。制御周期は、勿論、100ms以外の値でも構わない。なお、最低温度は、上記のように、順次更新されるが、以前より高い温度が検出されたときは更新が行われずに、その前の最低温度がそのサンプリング時の最低温度とされる。つまり、吸気温度は、単純な平均温度ではなく、低温側のデータを重視するようにして、オフセット温度値の算出において安全側に見積もられる。
なお、上記のように取得される吸気温度が予め定めた判定基準から見て異常であると判定されるときは、吸気温度異常として、予め定めた異常時対応吸気温度値が用いられる。この異常時対応吸気温度値は、オフセット温度値の算出において安全側に来るように設定されたフェールセーフ値である。具体的には、電池パック14の入出力制限が最も安全側に来るときの吸気温度が異常時対応吸気温度として設定される。吸気温度異常の判定基準としては、吸気温度センサ36の断線異常、吸気温度センサ接地ショート異常、吸気温度センサ偏差異常のいずれかと判断されたときに、吸気温度異常と判定するものとできる。
電流負荷のデータとしては、上記のように、電流2乗平均値のデータが用いられる。電流2乗平均値は、制御周期ごとに更新されるが、その際に、いままでの電流2乗平均値と、今回取得された電流値から計算される電流2乗値との間に重み付けが行われる。重み付けは、電流値を取得する制御周期と、電流負荷のデータとして用いるときの信頼性を考慮して制御周期より長めに取った時定数との関係から定めることができる。例えば、電流値を取得する制御周期を100msとして、信頼性を考慮した時定数をKbat×100msとすれば、電流2乗平均値に対する今回計算される電流2乗値の重み付けはKbatである。
ここで、今回、電流センサ30によって取得される電流値IB(n)とする。この電流値IB(n)は、制御周期を100msとして、その100msごとに取得される。この取得された電流値の電流2乗値は、{IB(n)}2である。いままでの電流2乗平均値をFbat(n)とすると、今回のIB 2を盛り込んだ今回の電流2乗平均値Fbat(n+1)は、重み付けをKbatとして、次のようにして計算される。すなわち、Fbat(n+1)=[{(Kbat−1)×Fbat(n)+{IB(n)}2]/Kbatである。
電流2乗平均値Fbatの初期値としては、電池パック14が補機等の駆動に用いられているときは、前回の制御のときの最終値のFbatを用いるものとできる。電池パック14が補機等の駆動に用いられていないいわゆる補機抜けの状態のときは、予め定めた固定値を用いる。予め定めた固定値としては、電池パック14の使用上限温度T1を下げない範囲で最大の電流2乗値を用いることがよい。電池パック14の使用上限温度T1を下げない範囲については、電池パック14の入出力制限に関連して図10、図11で説明する。
なお、電流センサ30が異常と判定されるときには、予め定めた異常時対応電流2乗値を、電流2乗平均値として用いる。この異常時対応電流2乗値は、オフセット温度値の算出において安全側に来るように設定されたフェールセーフ値である。すなわち、電池パック14の入出力制限が最も安全側と来るときの電流2乗値が異常時対応電流2乗値として設定される。具体的には、電池パック14の仕様上の電流2乗値の最大値を異常時対応電流値として用いる。例えば、図4の場合で、10000A2を異常時対応電流2乗値として用いることができる。
このような条件の下で、吸気温度と電流負荷との関係におけるオフセット温度値が実験的に求められ、図4のようなテーブル形式のマップとしてまとめられる。このマップは、電池パック14の過熱防止のために電池パック14の内部温度と、温度センサ32が検出する電池表面温度との差であるオフセット温度値をまとめたものであるので、過熱保護マップと呼ぶことができる。
図4では、その左上隅の欄に示されているように、冷却風量が所定の一定値とされている。つまり、図4では、冷却風量を標準的な固定値として、そのときの吸気温度37のデータと、電流負荷31のデータとに基いて実験的に予め求められるオフセット温度値がマップ化されている。ここで、上記考慮される要因として、さらに冷却風量のデータを用いたいときには、例えば、図4のマップを、数種類の冷却風量について揃えておき、冷却風量入力部38から入力されて取得された冷却風量のデータに対応するマップを用いるものとすればよい。これ以外に、3次元マップとして、温度差マップ記憶部62に記憶するものとしてもよい。このようにして、吸気温度37のデータ、電流負荷31のデータ、冷却風量のデータの3つを考慮して、オフセット温度値を求めることができる。
再び図2に戻り、R起因温度差推定(S14)は、複数の配置位置における各電池電圧Vと電流Iとから各単位電池12の内部抵抗Rを推定し、各単位電池12の内部抵抗Rの相違に起因する電池パック14内の温度差を推定する工程である。この工程は、最大温度推定部52のR起因温度差推定モジュール56の機能によって実行される。
図5は、R起因温度差を推定する様子を説明する図である。この図は、横軸に、電池パック14における各単位電池12の配置位置がとられ、縦軸には、下側から上側に向かって、電流I、単位電池12の電池電圧V、電池表面温度Tが順次表されている。
電流Iは、電池パック14について1つの値である。電池電圧Vは、電圧センサ34の配置される各単位電池12ごとに実測データがある。図5の例では、5つの電池電圧Vのデータが示されている。ここで、この5つの実測データの間は、内挿法によって、各単位電池12の電池電圧Vが推定計算される。図5では、5つの実測データを結ぶ直線で各単位電池12の電池電圧Vが示されている。このようにして、各単位電池12について電池電圧Vと電流Iが求められるので、R=V/Iによって、各単位電池12の内部抵抗Rを求めることができる。
内部抵抗Rは、元々各単位電池12の間でばらつきがかなりあるので、このようにして算出された内部抵抗Rの値をそのまま発熱のための抵抗値として用いると、実際よりも低い発熱と推定する恐れがある。そこで、内部抵抗Rに起因する温度差を安全側に持ってゆくために、計算された内部抵抗値と標準内部抵抗値と比較し、その偏差が予め定めた識別可能閾値以下のときは、識別可能閾値の内部抵抗差があるものとする。これによって、内部抵抗値が低く算出された場合に、所定の識別可能閾値の内部抵抗差まで引き上げることができ、内部抵抗Rに起因する温度差を安全側、つまり、温度差が大きくなるようにできる。
内部抵抗Rに起因する温度上昇は、V×Iで推定でき、Iはいまの場合一定値であるので、内部抵抗Rに起因する温度上昇はほぼVの分布と同様な傾向を示すことになる。図5において、温度センサ32の実測値は3点が示されている。この3点の間の温度は、内部抵抗Rに起因する温度分布の傾向をそのまま内挿して求める。図5の例では、Vの分布形で、温度センサ32の3点の間を補間するようにして、各単位電池12の内部抵抗Rに起因する温度が示されている。
図5に示されるように、温度センサ32の3つの実測値の最大値70よりも、内部抵抗Rに起因する発熱による推定温度の最大値72の方が高温となっている。この推定の最大値72と、実測値の最大値70の間の温度差が、内部抵抗Rに起因する温度差に相当することになる。このようにして、内部抵抗Rに起因する温度差の推定が行われる。
上記では、内部抵抗Rに起因する温度差の推定として、温度センサ32の3つの実測値を用いる場合を説明した。内部抵抗Rに起因する温度差の推定は、電池パック14の内部温度を用いることができると、その精度が格段によくなる。電池パック14の内部温度は、図3、図4で説明したように、吸気温度、電流負荷、冷却風量を考慮することで、例えば、温度差マップを用いて精度よく推定できる。
したがって、内部抵抗Rに起因する温度差の推定にも、図3、図4で説明したように、吸気温度と電流負荷と冷却風量の中の少なくとも1つに基いて、内部抵抗差による温度差を求めることが好ましい。具体的には、図3、図4で説明したオフセット温度値を、上記温度センサ32の実測値に対する補正値として用い、その補正温度値に基いて、内部抵抗Rに起因する温度差の推定を行うようにする。
センサ接触状態起因温度差推定(S16)は、複数の温度センサ32と電池パック14の表面との接触状態に起因して、電池パック14の実際の表面温度と各温度センサ32の検出値との間に偏差が生じることについて、その最大値を予め推定する工程である。この工程は、最大温度推定部52の接触状態起因温度差推定モジュール58の機能によって実行される。
図6は、複数の温度センサ32と電池パック14の表面との接触状態の様子を模式的に示す図である。ここでは、3つの温度センサ32と、電池パック14とが、それぞれ、d1,d2,d3の隙間を介して取り付けられている様子が示されている。本来は、これらの隙間はゼロであることが望ましいが、実際には多少なりの隙間が存在する。この隙間のために、温度センサ32の検出値と、実際の電池パック14の内部温度との間に偏差が生じる。この隙間によって生じる温度差は、実際に様々ではあるが、ある程度の範囲で推定を行うことができる。その場合、この接触状態に起因する温度差を電池パック14の入出力制限の観点から安全側に持ってゆくように、大き目の温度差に推定することが望ましい。
例えば、予め定めた安全側の一定値として推定することができる。電池パック14と温度センサ32の取り付け方にもよるが、10℃から20℃の範囲の適当な温度差をセンサ接触状態起因温度差として推定することができる。
なお、電池パック14と温度センサ32との間の隙間、すなわち接触状態のばらつきは、電池パック14の場所による冷却程度の差として現れるので、これを電池パック冷却ばらつきと考えることができる。
センサ起因温度差推定(S18)は、複数の温度センサ32の間の検出特性の相違による検出温度誤差を、環境温度に応じて推定する工程である。この工程は、最大温度推定部52のセンサ起因温度差推定モジュール60の機能によって実行される。
図7は、電池パック14と3つの温度センサ32の取付状態の様子を示す図である。ここで、電池パック14の表面の温度が一様でTBであったとしても、3つの温度センサ32の検出値はそれぞれTBとは異なる値となることがある。図7の例では、3つの温度センサ32について、TBからの温度偏差は、ΔT1,ΔT2,ΔT3で示されている。このように、3つの温度センサ32において検出値が異なるのは、複数の温度センサ32の間の検出特性の相違によるものである。検出特性の相違には、各温度センサ32の感温特性の相違の他に、一体化樹脂モールドに起因する相違、例えば、感温部の樹脂モールドされた位置関係等の相違によるものも含まれる。
そして、このセンサ起因温度差も、図3で説明した内外温度差の場合と同様に、環境温度が低温になるに応じて大きくなる。その様子を図8に示す。図8は、横軸に環境温度をとり、縦軸に測温誤差、つまり、各温度センサ間の検出温度の差をとってある。環境温度と測温誤差の関係は、予め実験等で求めてマップ化することができる。マップ化された環境温度と測温誤差の関係は、図3で説明したマップと同様に、制御装置50の温度差マップ記憶部62に記憶しておくことができる。
したがって、センサ起因温度差推定を行うには、環境温度を検索キーとして、環境温度と測温誤差との関係を示すマップを検索して、対応する測温誤差を読み出し、これをセンサ起因温度差とすることができる。環境温度と測温誤差との関係を示すマップは、環境温度と測温誤差を関連付けるものであれば、マップ形式以外の形式であってもよい。例えば、環境温度と測温誤差との関係をテーブル化したルックアップテーブル形式であってもよく、また、環境温度を入力して測温誤差が出力される関数形の形式であってもよい。
再び図2に戻り、4つの温度差推定処理が終わると、次に電池パック内部における最大温度の推定が行われる(S20)。そして、推定最大温度が予め定めた閾値温度以上か否かが判断される(S22)。閾値温度としては、リチウムイオン電池の特性である発煙温度T0を用いることが好ましい。リチウムイオン電池以外の電池パック14の場合は、その電池形式の特性に合わせて設定された閾値温度をT0として用いることができる。そして、S22の判断が肯定されると、電池パック14の入出力電力を制限して発煙が生じないように入出力制限が行われる(S24)。S24が実行され、あるいはS22の判断が否定されると、一連の電池パック入出力制御処理が終了する。
図9は、これらの流れを示す図である。ここでは、複数の電流センサ30について、検出値の間のズレ監視が行われた後、電流負荷としての1つの電流値が求められることが示されている。また、複数の吸気温度37についても、検出値の間のズレ監視が行われた後、平均化等の処理によって吸気温度である環境温度が求められることが示されている。さらに、冷却風量入力部38から冷却風量が取得されて求められることが示されている。また、複数の温度センサ32について、それらの検出値が最大値から最小値まで並べられ、最大値の監視、偏差の監視を経て、電池表面温度の最大値が求められることが示されている。
そして、電流負荷である電流値、吸気温度である環境温度、冷却風量、電池表面温度の最大値に基いて、電池パック14における入出力電力が算出され、これに基いて入出力電力の制限が行われることが示されている。
図10は、入出力電力の算出の詳細の流れを示す図である。ここでは、電流負荷と、吸気温度と、冷却風量とに基いて、内外温度差、R起因温度差、センサ接触状態起因温度差、センサ起因温度差が、電池パック14の使用上限温度T1に順次加算されて、電池パック14の内部の最大温度が推定される様子が示されている。そして、推定最大温度が、リチウムイオン電池の発煙を防止する限界温度である発煙温度T0と比較され、その結果に基いて使用上限温度の制限が行われることが示されている。この使用上限温度の制限に基いて、電池パック14の入出力電力が制限される入出力制限が行われる。
図11は、電池パック14の内部の推定最大温度を求める様子と、これに基いて電池パック14の入出力制限が行われる様子を、温度構成の面から説明する図である。図11の最も左側の図は、電池パック14の内部の推定最大温度を求める様子を説明する図である。この図の横軸は時間、縦軸は温度である。実線は、温度センサ32によって実測された電池表面温度の最大値を示している。破線は、電池パック14の内部の推定最大温度を示している。実線と破線の間に4つの白抜き矢印で示されている温度差は、図3から図8で説明した4つの推定温度差である。
つまり、電池パック14の内部の推定最大温度は、実測の電池表面温度の最大値に、内外温度差、R起因温度差、センサ接触状態起因温度差、センサ起因温度差が順次加算されたものである。
図11の右側の2つの棒グラフは、電池パック14の内部の推定最大温度をTMとして、電池パック14の使用上限温度T1と、発煙温度T0との関係を示す図である。ここで電池パック14の使用上限温度T1とは、温度センサ32によって検出される電池表面温度に基いて定められる使用上限温度のことである。すなわち、温度センサ32の検出値がこの使用上限温度T1を超えることのないように、通常は電池パック14の入出力電力の制限が行われる。
図11の右側の棒グラフのうち、当初として示されている状態は、通常の入出力制限処理によって電池表面温度が使用上限温度T1となる制御が行われている状態である。この例では、通常の入出力制限処理が行われているにもかかわらず、電池パック14の内部の推定最大温度TMは、発煙温度T0を超えていることが示されている。このような場合、リチウムイオン電池は、発煙を生じる。
そこで、電池パック14の内部の推定最大温度TMに基いた入出力制限が行われる。その様子が、図11の右側の棒グラフのうち、入出力制限として示されている状態である。ここでは、電池パック14の内部の推定最大温度TMと発煙温度T0との比較が行われる。そして、TMがT0を超えないように、使用上限温度がT1’に引き下げられる。これによって、電池パック14の内部の推定最大温度も、この引き下げ量に応じて低下し、TM’となる。このようにして、電池パック14の内部の推定最大温度に基いて、電池パック14の入出力制限が行われ、リチウムイオン電池の発煙が防止される。
図12は、電池パック14の入出力電力特性図を用いて、電池表面温度に基く入出力制限と、電池パック14の内部の推定最大温度に基く入出力制限の様子を示す図である。こここで、横軸は電池パック14の表面温度、縦軸は電池パック14の入出力電力、つまり充放電電力である。電池表面温度に基く入出力制限の場合は、上記のように、電池パック14の表面温度が使用上限温度T1以下となるように、入出力電力の制限が行われる。
これに対し、電池パック14の内部の推定最大温度に基く入出力制限の場合は、図11で説明したように、推定最大温度TMが発煙温度T0以上となるときは、電池パック14の表面温度をT1’に引き下げ、推定最大温度TM’が発煙温度T0を超えないように入出力制限が行われる。このようにして、電池パック14の内部の推定最大温度に基いて、電池パック14の入出力制限が行われ、リチウムイオン電池の発煙が防止される。
ここで、内外温度差とR起因温度差については、上記のように、予め吸気温度、電流負荷、冷却風量についてのオフセット温度値を実験的に求めておき、その値を用いることで、その算出精度を大幅に向上することができる。一例であるが、図4で説明したオフセット温度値のマップを用いる場合と、そのようなマップを用いずに内外温度差とR起因温度差を考えられる安全側に設定した場合とを比較すると、内外温度差とR起因温度差の合計で、およそ8℃程度の差が生じる。この精度向上分だけ、電池パック14の入出力制限を緩和することが可能となる。
本発明に係る電池パック入出力制御装置は、複数の単位電池を組み合わせて構成される電池パックを用いるシステムに利用できる。
10 電池パック入出力制御システム、12 単位電池、14 電池パック、16 システムメインリレー、18 電池パック側平滑コンデンサ、20 電圧変換器、22 インバータ側平滑コンデンサ、24 インバータ、26 回転電機、30 電流センサ、32 温度センサ、34 電圧センサ、36 吸気温度センサ、37 吸気温度、38 冷却風量入力部、40 I/V/T検出部、50 制御装置、52 最大温度推定部、54 内外温度差推定モジュール、56 R起因温度差推定モジュール、58 接触状態起因温度差推定モジュール、60 センサ起因温度差推定モジュール、62 温度差マップ記憶部、64 入出力制限部、70,72 最大値。
Claims (4)
- 複数の単位電池を組み合わせて構成される電池パックと、
電池パックの環境温度を取得する環境温度取得部と、
電池パックに設けられ電池表面温度を検出する複数の電池温度センサと、
電池パックの予め任意に定めた複数の配置位置における単位電池のそれぞれの電池電圧を検出する複数の電圧検出部と、
電池パックに入出力する電流値を取得する電流値取得部と、
電池パックの内部における最大温度を推定する最大温度推定部と、
推定された最大温度に基いて電池パックの入出力制限を行う入出力制限部と、
を備え、
最大温度推定部は、
電池内部温度と電池表面温度との間の差である電池内外温度差を、吸気温度と電流負荷と冷却風量の中の少なくとも1つに応じて推定する内外温度差推定手段と、
複数の配置位置における各電池電圧と電流値とから各単位電池の内部抵抗を推定し、各単位電池の内部抵抗の相違に起因する電池パック内の温度差を推定する内部抵抗起因温度差推定手段と、
を含み、これらによって推定される温度差の合計値を電池表面温度の最大値に加算して電池パックの最大温度を推定することを特徴とする電池パック入出力制御装置。 - 請求項1に記載の電池パック入出力制御装置において、
吸気温度と電流負荷と冷却風量とに関連づけ、電池表面温度に対する電池内外温度差について予め求めたオフセット温度値のマップである過熱保護マップを記憶するマップ記憶部を含むことを特徴とする電池パック入出力制御装置。 - 請求項1に記載の電池パック入出力制御装置において、
内部抵抗起因温度差推定手段は、
各単位電池のそれぞれの内部抵抗について、標準内部抵抗からの最大偏差が予め定めた識別可能閾値以下のときは、識別可能閾値の内部抵抗差があるものとし、吸気温度と電流負荷と冷却風量の中の少なくとも1つに基いて、内部抵抗差による温度差を求め、電池パック内の温度差を推定することを特徴とする電池パック入出力制御装置。 - 請求項1に記載の電池パック入出力制御装置において、
入出力制限部は、
推定された最大温度と、電池パックの発煙温度とを比較して、入出力制限開始を行う使用限度温度を変更することを特徴とする電池パック入出力制御装置。
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