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JP2011252112A - ガスバリアフィルム及びこれを用いた太陽電池用裏面保護シート - Google Patents

ガスバリアフィルム及びこれを用いた太陽電池用裏面保護シート Download PDF

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JP2011252112A JP2010127981A JP2010127981A JP2011252112A JP 2011252112 A JP2011252112 A JP 2011252112A JP 2010127981 A JP2010127981 A JP 2010127981A JP 2010127981 A JP2010127981 A JP 2010127981A JP 2011252112 A JP2011252112 A JP 2011252112A
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Abstract

【課題】本発明は、酸素や水蒸気などのガスバリア性に優れたガスバリアフィルムを提供する。
【解決手段】本発明は、シクロオレフィン系樹脂と、下記式(I)で示されるシラン化合物により表面処理され、アスペクト比が5〜50であり、且つ平均サイズが50nm〜10μmであるシラン変性板状無機粒子とを含有することを特徴とするガスバリアフィルムを提供する。
1Si(OR23 (I)
(式中、R1は脂環式エポキシ基を有する基であり、R2は炭素数が1〜5のアルキル基である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、ガスバリアフィルム及びこれを用いた太陽電池用裏面保護シートに関する。
ガスバリアフィルムは、内容物の品質を変化させる原因となる酸素や水蒸気などの影響を防止するために、食品や医薬品の包装袋に用いられている。また、ガスバリアフィルムは、太陽電池モジュール、液晶表示パネル、有機EL(エレクトロルミネッセンス )表示パネルなどに使用される素子が、酸素や水蒸気に触れて性能劣化するのを防止するために、製品構成体の一部として或いはそれら素子のパッケージ材料としても用いられている。
このようなガスバリアフィルムとして、ポリビニルアルコールフィルムやエチレンビニルアルコール共重合体フィルムも用いられているが、水蒸気バリア性が不充分であり、高湿度条件下においては酸素バリア性が低下するといった問題点を有している。
特許文献1には、ガスバリアフィルムの製造方法として、フィルム表面に真空蒸着法で酸化珪素などの無機酸化物を蒸着させることが提案されている。この製造方法で製造されたガスバリアフィルムは、上述したガスバリアフィルムに比較して優れたガスバリア性を有している。
しかしながら、真空蒸着法によって形成された蒸着膜は、ピンホールやクラックなどを有している場合が多く、蒸着膜のピンホールやクラックなどの欠陥部分を通じて酸素や水蒸気が透過し、その結果、ガスバリア性が未だ不充分であるといった問題点を有している。
ところで、上記太陽電池用モジュールは、シリコン半導体などの発電素子をエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどの封止材によって表裏面から封止していると共に、表側の封止材上に透明保護部材としてガラス板を積層一体化し、裏側の封止材上に太陽電池用裏面保護シートをバックシートとして積層一体化してなる。
特許文献2には、耐加水分解性樹脂フィルムと金属酸化物被着樹脂フィルム及び白色樹脂フィルムとの3層積層体からなることを特徴とする太陽電池カバー材用バックシートが提案されている。
しかしながら、上記太陽電池カバー材用バックシートは、その金属酸化物被膜が蒸着法によって形成されたものであり、上述の理由から、酸素や水蒸気などのガスバリア性が不充分であるといった問題点を有している。
特開平8−176326号公報 特開2002−100788号公報
本発明は、酸素や水蒸気などのガスバリア性に優れたガスバリアフィルム及びこのガスバリアフィルムを用いた太陽電池用裏面保護シートを提供する。
本発明のガスバリアフィルムは、シクロオレフィン系樹脂と、下記式(I)で示されるシラン化合物により表面処理され、アスペクト比が5〜50であり、且つ平均サイズが20nm〜10μmであるシラン変性板状無機粒子とを含有する。
(R1O)3SiR2 (I)
(式中、R1は炭素数が1〜5のアルキル基であり、R2は脂環式エポキシ基を有する基である。)
本発明のガスバリアフィルムに用いられるシクロオレフィン樹脂としては、例えば、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が挙げられる。この熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、特開昭51−80400号公報、特開昭60−26024号公報、特開平1−168725号公報、特開平1−190726号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報、特開平4−63807号公報などにて開示されている。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、具体的には、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とオレフィンの付加共重合体などが挙げられる。
ノルボルネン系単量体としては、例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−オクチル−2−ノルボルネン、5−オクタデシル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−ノルボルネンなどが挙げられる。
ノルボルネン系単量体としては、ノルボルネンに一つ以上のシクロペンタジエンが付加した単量体又はその誘導体や置換体であってもよく、シクロペンタジエンの多量体である多環構造の単量体又はその誘導体や置換体であってもよく、シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン、インデン、ベンゾフランなどとその付加物又はその誘導体や置換体であってもよい。
ノルボルネン系単量体としては、さらに、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、及びこれらに置換基(アルキル基、アルキレン基、アルキリデン基、アルコキシカルボニル基等)を有するものも挙げられる。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂は、上記ノルボルネン系単量体を少なくとも1種以上含有する単量体を重合させて得られ、上記ノルボルネン系単量体以外に、ノルボルネン系単量体と共重合可能な単量体を共重合させてもよい。ノルボルネン系単量体と共重合可能な単量体としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロオレフィンが挙げられる。
熱可塑性ノルボルネン系樹脂がノルボルネン系単量体とオレフィンの付加共重合体である場合、オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンが用いられる。
シクロオレフィン樹脂としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂が好ましく、一種以上のノルボルネン系単量体の開環重合体水素添加物がより好ましく、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエンと7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンとの開環重合体水素添加物が特に好ましい。このようなシクロオレフィン樹脂中ではシラン変性板状無機粒子を高分散することができ、これによりガスバリア性及び透明性に優れるガスバリアフィルムを提供することができる。また、シクロオレフィン樹脂は耐熱性に優れることから、シクロオレフィン樹脂を含むガスバリアフィルムは高温環境下で使用されても寸法変化が抑制される。
シクロオレフィン樹脂中には、必要に応じて、フェノール系やリン系などの酸化防止剤、ベンゾフェノン系などの紫外線吸収剤、耐光安定剤、帯電防止剤、脂肪族アルコールのエステル、多価アルコールの部分エステル及び部分エーテルなどの滑剤などの添加剤が含有されていてもよい。
シクロオレフィン樹脂の融点又はガラス転移温度は、低いと、ガスバリアフィルムの耐熱性が低下し、太陽電池用裏面保護シートとして用いた場合に寸法安定性が低下することがあるので、120℃以上が好ましく、125〜300℃がより好ましい。なお、シクロオレフィン樹脂の融点又はガラス転移温度は、JIS K0064に準拠して測定されたものをいう。
本発明のガスバリアフィルムでは、上述したシクロオレフィン樹脂中にシラン変性板状無機粒子が分散される。このシラン変性板状無機粒子は、板状無機粒子を下記一般式(I)で示されるシラン化合物によって表面処理することにより得られる。
1Si(OR23 (I)
(式中、R1は脂環式エポキシ基を有する基であり、R2は炭素数が1〜5のアルキル基である。)
このように脂環式エポキシ基を有するシラン化合物によって表面処理された板状無機粒子は、シクロオレフィン樹脂中で均一に高分散されるため、透明性及びガスバリア性に優れたガスバリアフィルムを提供することが可能となる。
上記板状無機粒子としては、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ水和物、天然雲母族、及び人造雲母族の他に、着色の度合いは強いが、マスコバイト、フロゴバイトなどのマイカも挙げられる。水酸化アルミニウムとしては、ギブサイト[Al(OH)3]及びバイヤライト[Al(OH)3]が挙げられ、アルミナ水和物としてはベーマイト[AlO(OH)又はAl23・H2O]が挙げられる。天然雲母族としては、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)などが挙げられる。人造雲母族としては、フッ素金雲母、カリウム四珪素雲母、ナトリウム四珪素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライト、微紛カリウム・フッ素雲母、微粉ナトリウム・フッ素雲母等の合成雲母などが挙げられる。なかでも、板状無機粒子としてはベーマイトを用いるのが好ましい。シラン化合物により表面処理されたベーマイトによれば、ガスバリアフィルムのガスバリア性を向上することができる。
ベーマイトからなる板状無機粒子は、Sasol Germany GmbHから商品名「Disperal」、「Dispal」として、河合石灰工業株式会社から商品名「セラシュール」として市販されている。
そして、R1Si(OR23で示されるシラン化合物において、R1は、脂肪族環式骨格にエポキシ基を有する原子団を含む置換基を示す。R1は、脂環式エポキシ基を有する炭素数1〜5のアルキル基であるのが好ましい。脂環式エポキシ基としては、2,3−エポキシシクロペンチル基、及び3,4−エポキシシクロヘキシル基などが挙げられる。
1として、好ましくは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基などが挙げられ、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基がより好ましい。
又、R2は、炭素数が1〜5であるアルキル基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられ、メチル基が好ましい。
1Si(OR23で表されるシラン化合物としては、例えば、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシランなどが挙げられ、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好ましい。シラン化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
シラン化合物は、東レダウコーニング社から商品名「Z−6043」、信越化学社から商品名「KBM−303」にて市販されている。
そして、板状無機粒子をR1Si(OR23で表されるシラン化合物で表面処理する方法としては、特に限定されず、例えば、シラン化合物中に板状無機粒子を浸漬して板状無機粒子を乾燥させる方法、板状無機粒子にシラン化合物を噴霧して板状無機粒子を乾燥させる方法、シラン化合物の1〜20重量%の水溶液又はアルコール溶液中に板状無機粒子を30分〜5時間に亘って浸漬した後、板状無機粒子を60〜120℃にて12時間〜3日間に亘って乾燥する方法、シラン化合物の1〜20重量%の水溶液又はアルコール溶液を板状無機粒子に30分〜5時間に亘って噴霧し続けた後、板状無機粒子を60〜120℃にて12時間〜3日間に亘って乾燥する方法などが挙げられる。
板状無機粒子に接触させるシラン化合物の量は、少ないと、ガスバリアフィルム中におけるシラン変性板状無機粒子の分散性が低下してガスバリアフィルムのガスバリア性が低下することがあり、多いと、シラン化合物同士の結合が進行してシラン変性板状無機粒子の凝集が生じて、ガスバリアフィルムのガスバリア性が低下することがあるので、シラン変性板状無機粒子100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜2重量部がより好ましい。
そして、シラン変性板状無機粒子のアスペクト比は、小さいと、ガスバリアフィルムのガスバリア性が低下し、大きいと、ガスバリアフィルムの表面平滑性が低下するので、5〜50に限定され、10〜40が好ましい。
シラン変性板状無機粒子の平均サイズは、小さいと、ガスバリアフィルムのガスバリア性が低下することがあり、大きいと、ガスバリアフィルムが割れやすくなるので、20nm〜10μmに限定され、50nm〜5μmが好ましく、300nm〜5μmがより好ましい。
なお、シラン変性板状無機粒子の平均サイズとは、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察によって確認されたシラン変性板状無機粒子の最大長さと最小長さの和の相加平均値をいう。シラン変性板状無機粒子のアスペクト比は下記の通りに定義する。
アスペクト比=結晶表面の平均長さ/シラン変性板状無機粒子の最大厚み
但し、結晶表面の平均長さとは、TEM観察時の各シラン変性板状無機粒子の最大長さの相加平均値と定義し、シラン変性板状無機粒子の最大厚みとは、TEM観察時の各シラン変性板状無機粒子の厚みの相加平均値と定義する。
シクロオレフィン樹脂中にシラン変性板状無機粒子を含有させることによって、得られるガスバリアフィルムのガスバリア性を有効に向上させることができる。但し、シクロオレフィン樹脂中にシラン変性板状無機粒子を過剰に含有させると、シクロオレフィン樹脂が脆くなって必要な強度を維持できなくなったり、製膜困難になったりするので、シクロオレフィン樹脂中におけるシラン変性板状無機粒子の含有量は、シクロオレフィン樹脂100重量部に対して、3〜50重量部が好ましく、5〜30重量部がより好ましく、15〜30重量部が特に好ましい。
ガスバリアフィルムの厚みは、薄いと、酸素及び水蒸気に対するバリア性が低下することがあるので20μm以上とされるのが好ましく、上限は、特に限定されるものではないが、ハンドリング性等を勘案すれば400μm程度とされるのが好ましい。
本発明のガスバリアフィルムは、例えば、シクロオレフィン樹脂及びシラン変性板状無機粒子を押出機に供給して溶融練混し、これにより得られた溶融混練物をフィルム状に押し出すことにより製造することができる。このように押出時に溶融練混物にせん断応力を加えることによって製造されるガスバリアフィルム中では、シラン変性板状無機粒子は、その板面がガスバリアフィルムの主表面に対して略平行となるように配向され、更にこのシラン変性板状無機粒子はガスバリアフィルムの厚さ方向において幾重にも重なった状態で存在する。そして、シラン変性板状無機粒子自体はガス透過性がないので、ガスバリアフィルム中をその厚み方向に透過しようとする酸素や水蒸気などのガスは、その進行を幾重にも重なったシラン変性板状無機粒子によって遮られ、シラン変性板状無機粒子によればガスバリアフィルムをその厚み方向に通過するためのガスの経路を長くすることができ、ガスバリアフィルムにおけるガスの透過を抑制することが可能となる。
尚、本発明において、シラン変性板状無機粒子の板面とは、シラン変性板状無機粒子の外形を形成する複数の面うち、最も面積が広い面を意味する。また、ガスバリアフィルムの主表面とは、ガスバリアフィルムの外形を形成する外面うち、最も面積が広い面とこの面に対向する面とを意味する。
本発明のガスバリアフィルムは、太陽電池用途、食品用途、医薬品用途など様々な用途に用いることができる。本発明のガスバリアフィルムはガスバリア性、透明性、及び耐熱性に優れることから、これを各種用途に用いる場合にはガスバリアフィルムのみを用いてもよい。
又、ガスバリアフィルムに他の機能性層を更に積層し、積層ガスバリアフィルムとし各種用途に用いることもできる。例えば、図1に示したように、ガスバリアフィルム1上に、蒸着膜3及び基材フィルム4が、ラミネート用接着剤2を介して或いは介さずして積層一体化されている積層ガスバリアフィルムが挙げられる。
ガスバリアフィルムと蒸着膜及び基材フィルムとを積層一体化する方法としては、個別に製造されたガスバリアフィルムと、蒸着膜が形成された基材フィルムとを熱融着、高周波ウェルダーなどにより接着剤を使用せずに積層一体化させる方法、ガスバリアフィルム上にラミネート用接着剤又は接着性樹脂を介在させて蒸着膜及び基材フィルムを積層一体化させる方法が挙げられる。後者の場合の接着剤としては、ドライラミネーション可能なラミネート用接着剤を選択することが好ましい。また、接着性樹脂を介在させる溶融押出ラミネーションが採用されてもよい。これらラミネート用接着剤や接着性樹脂は、蒸着膜や基材の種類に応じて適宜のものが選択されればよい。なお、接着に先立ち、基材の表面に公知の易接着処理を施すことは任意である。又、蒸着膜が形成された基材フィルムの一方の面側に、ガスバリアフィルムを押出ラミネートすることで積層一体化する方法も挙げられる。
上記ラミネート用接着剤や接着性樹脂中に板状無機粒子が含有されていてもよい。ラミネート用接着剤や接着性樹脂中に板状無機粒子又はシラン変性板状無機粒子を含有させることによって、ガスバリアフィルムの酸素や水蒸気に対するバリア性を向上させることができる。なお、シラン変性板状無機粒子は、ガスバリアフィルムに含有されているシラン変性板状無機粒子と同様のものが使用できる。又、板状無機粒子は、シラン変性板状無機粒子の原料となる板状無機粒子と同様のものが使用できる。
上記基材フィルムを構成している合成樹脂としては、その表面に蒸着膜を形成することができればよく、例えば、ポリ乳酸などの生分解性プラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。なお、基材フィルム4は、延伸フィルム又は未延伸フィルムの何れであってもよいが、機械強度や寸法安定性、耐熱性に優れるものが好ましい。
基材フィルムには、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤などの公知の添加剤が含有されていてもよい。又、基材フィルム4の表面に、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理などの表面改質処理を施して蒸着膜との密着性を向上させてもよい。基材フィルムの厚さは、3〜200μmが好ましく、3〜30μmがより好ましい。
蒸着膜を構成している材料としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、炭化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタンなどが挙げられ、酸化ケイ素、酸化アルミニウムが好ましく、酸化ケイ素がより好ましい。
酸化ケイ素からなる蒸着膜は、主たる構成要素であるケイ素及び酸素の他に、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、チタン、ジルコニウム、イットリウムなどの金属や、炭素、ホウ素、窒素、フッ素などの非金属元素を含んでいてもよい。
蒸着膜は、単一層であっても、バリア性を向上させるために複数層を積層一体化させたものであってもよい。蒸着膜が複数層を積層一体化させてなるものである場合、各層を構成している材料は、同種類であっても異種類であってもよい。
蒸着膜の厚みは、薄いと、ガスバリアフィルムの酸素や水蒸気に対するバリア性が低下することがあり、厚いと、蒸着膜の形成時に基材フィルムとの間における収縮率の差に起因してクラックなどが生じやすくなり、かえってガスバリアフィルムのバリア性が低下することがあるので、5nm〜5000nmが好ましく、50nm〜1000nmがより好ましく、100nm〜500nmが特に好ましい。蒸着膜が酸化アルミニウム又は酸化ケイ素から形成されている場合には、蒸着膜の厚みは10nm〜300nmが好ましい。
基材フィルムの表面に蒸着膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法などの物理的気相成長法(PVD)や、化学的気相成長法(CVD)などが挙げられ、基材フィルムへの熱の影響を比較的抑えることができ、更に、均一な蒸着膜を生産効率良く形成することができるので、化学的気相成長法(CVD)が好ましい。
また、図2に示したように、積層ガスバリアフィルムのガスバリアフィルム1、又は、基材フィルム4若しくは蒸着膜3上、好ましくは基材フィルム4上には、積層ガスバリアフィルムの耐候性を向上させるために、ポリフッ化ビニルフィルム層5又はフッ素系コーティング層5が積層一体化されていてもよい。図2では、基材フィルム4上に、ポリフッ化ビニルフィルム層5又はフッ素系コーティング層5が積層一体化されてなる場合を示した。なお、ポリフッ化ビニルフィルム層5又はフッ素系コーティング層5の厚みは、1〜20μmが好ましい。
上記フッ素系コーティング層としては、例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)層、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)層、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)層などが挙げられる。
次に、積層ガスバリアフィルムの製造方法の一例について説明する。先ず、ガスバリアフィルムの製造方法としては、例えば、シクロオレフィン樹脂及びシラン変性板状無機粒子を押出機に供給して溶融混練しフィルム状に押出すことによってガスバリアフィルムを得ることができる。
一方、上述の要領で表面に蒸着膜が形成された基材フィルムを作製する。次いで、ガスバリアフィルムと、蒸着膜が形成された基材フィルムの好ましくは蒸着膜の間に接着性樹脂を溶融押出して、両者を積層一体化して積層ガスバリアフィルムを製造することができる。
積層ガスバリアフィルムのガスバリアフィルム、又は、基材フィルム若しくは蒸着膜上、好ましくは基材フィルム上に、ポリフッ化ビニルフィルム層又はフッ素系コーティング層を積層一体化させる場合には、上述の要領で製造されたガスバリアフィルム上に汎用の要領でポリフッ化ビニルフィルムを積層一体化させ或いはフッ素系塗料を塗布、乾燥させればよい。
次に、本発明のガスバリアフィルム及びこれを用いた積層ガスバリアフィルムは、太陽電池用途、食品用途、医薬品用途など様々な用途に用いることができる。本発明のガスバリアフィルムは、酸素や水蒸気などのガスの透過を高く遮断することができるとともに、高温環境下などの過酷な使用環境下であっても寸法変化の発生が高く抑制される。したがって、このようなガスバリアフィルム及びこれを用いた積層ガスバリアフィルムは、太陽電池用保護シート、特に太陽電池用裏面保護シートとして好適に用いられる。以下に、ガスバリアフィルムを太陽電池モジュールの太陽電池用裏面保護シートとして用いた場合を一例に挙げて説明する。
図3に示したように、シリコンなどから形成される発電素子6はエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどの封止材7、8によって上下方向から挟持されることによって封止されており、表側の封止材7上には透明保護部材としてガラス板9が積層一体化されていると共に、裏側の封止材8上には太陽電池用裏面保護シートAがバックシートとして積層一体化されることによって太陽電池モジュールBが構成されている。
このように構成されている太陽電池モジュールBの太陽電池用裏面保護シートAとしてガスバリアフィルム又は積層ガスバリアフィルムを用いることができる。なお、積層ガスバリアフィルムを用いる場合、積層ガスバリアフィルムの蒸着膜3又は基材フィルム4が発電素子6側に隣接する状態に積層することが望ましく、また、蒸着膜3又は基材フィルム4上に好ましく形成されたポリフッ化ビニルフィルム層5又はフッ素コーティング層5が発電素子6側に隣接する状態に積層することで、積層ガスバリアフィルムに太陽光に対する耐久性を付与することができる。
太陽電池モジュールBの発電素子6は酸素や水蒸気に触れると錆などの酸化劣化を生じて発電能力が低下する虞れがある。従って、発電素子6の表裏面は封止材7、8によって封止されているものの、封止材7、8の酸素や水蒸気に対するバリア性はそれほど充分ではない。
発電素子6の表面(受光面)側は保護層としてガラス板9が積層一体化されており、ガラス板9は、酸素や水蒸気に対するバリア性に優れているため、ガラス板9は封止材7のバリア性の不足を補っている。
一方、発電素子6の裏面側の封止材8上に本発明のガスバリアフィルム又は積層ガスバリアフィルムを太陽電池用裏面保護シートAとして積層一体化させることによって、ガスバリアフィルムが有する優れた酸素や水蒸気に対するバリア性により発電素子6に裏面側から酸素や水蒸気が浸入することに起因する発電素子6の酸化劣化を防止して、発電素子6の発電性能を長期間に亘って良好に維持することができる。
上記では、発電素子6の裏面側を封止している封止材8上にガスバリアフィルム又は積層ガスバリアフィルムを太陽電池用裏面シートとして積層一体化させた場合を説明したが、ガスバリアフィルム上、又は積層ガスバリアフィルムの蒸着膜3又は基材フィルム4上に最外層としてエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム層10を予め積層一体化させておくことにより、封止材とガスバリアフィルム又は積層ガスバリアフィルムとを別部材としてではなく、一部材として取り扱うことができ作業の効率化が可能である。なお、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム層が発電素子に対向した状態に積層一体化させる必要がある。
図4に示したように、積層ガスバリアフィルム上にポリフッ化ビニルフィルム層5又はフッ素系コーティング層5が積層一体化されている場合には、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム層10が最外層となるように形成する必要がある。
更に、図5に示したように、積層ガスバリアフィルムの何れか一方の面、好ましくは、蒸着膜3又は基材フィルム4上、より好ましくは、基材フィルム4上に封止層11が積層一体化されていてもよい。この封止層11は、変性ポリオレフィン系樹脂100重量部と、R3Si(OR43で示されるシラン化合物0.001〜20重量部とが含有されていることが好ましく、不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性され且つJIS K7121に準拠して測定された融点が120〜170℃である変性ポリオレフィン系樹脂100重量部と、R3Si(OR43で示されるシラン化合物0.001〜20重量部とが含有されていることがより好ましく、不飽和カルボン酸又はその無水物でグラフト変性され且つJIS K7121に準拠して測定された融点が120〜170℃である変性ポリプロピレン系樹脂と、R3Si(OR43で示されるシラン化合物を含有することが特に好ましい。封止層11は、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどの封止材に比べて、酸素や水蒸気に対するバリア性が優れており、封止兼用保護部材は優れたガスバリア性を発揮する。但し、R3は、非加水分解性であって且つ重合性を有する官能基を示す。R4は、炭素数が1〜5であるアルキル基を示す。なお、図5では、蒸着膜3又は基材フィルム4上に封止層11を積層一体化させた場合を示した。この封止層11は、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどの封止材に比べて、酸素や水蒸気に対するバリア性が優れており、積層ガスバリアフィルムと積層一体化して優れたガスバリア性を発揮する。
封止層11を構成している変性ポリオレフィン系樹脂としては、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物でグラフト変性したポリオレフィン樹脂、エチレン又は/及びプロピレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体、金属架橋ポリオレフィン樹脂などが挙げられ、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物でグラフト変性されたポリプロピレン系樹脂が好ましい。なお、変性ポリオレフィン系樹脂は、必要に応じて、ブテン成分、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、非晶質のエチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体などが5%重量以上添加されていてもよい。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレン成分を50重量%含有するプロピレンとα−オレフィンなどの他のモノマーとの共重合体などが挙げられ、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体が好ましい。なお、α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ネオヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
エチレン−プロピレンランダム共重合体におけるエチレン成分の含有量は、少ないと、封止層の接着性が低下することがあり、多いと、封止兼用保護部材がブロッキングすることがあるので、1〜10重量%が好ましく、1.5〜5重量%がより好ましい。
不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸などが挙げられ、マレイン酸が好ましい。又、不飽和カルボン酸の無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸などが挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂を不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物で変性する方法としては、例えば、有機過酸化物の存在下に、結晶性ポリプロピレンと、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物とを、溶媒中若しくは溶媒の不存在下で結晶性ポリプロピレンの融点以上に加熱処理する方法や、ポリオレフィン系樹脂を重合する際に、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物を共重合させることが挙げられる。
変性ポリオレフィン系樹脂中における不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物の総含有量(以下「変性率」という)は、小さいと、封止層の接着性が低下することがあり、大きいと、封止層がブロッキングする虞れがあるので、0.01〜20重量%が好ましく、0.05〜10重量%がより好ましい。
封止層11を構成している変性ポリオレフィン系樹脂におけるJIS K7121に準拠して測定された融点は、低いと、製膜性が低下し、高いと、封止層の接着性が低下するので、120〜170℃が好ましく、120〜145℃がより好ましい。
更に、封止層11には、太陽電池を構成している透明基板との長期接着性を確保するために、R3Si(OR43で示されるシラン化合物が含有されている。但し、R3は、非加水分解性であって且つ重合性を有する官能基を示す。R4は、炭素数が1〜5であるアルキル基を示す。
3としては、例えば、ビニル基、グリシドキシ基、グリシドキシエチル基、グリシドキシメチル基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシブチル基などが挙げられる。R4としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられる。
3Si(OR43で表されるシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシランなどが挙げられる。なお、これらシラン化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
封止層11中におけるシラン化合物の含有量は、少ないと、シラン化合物を添加した効果が発現しないことがあり、多いと、製膜性が低下することがあるので、変性ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.001〜20重量部が好ましく、0.005〜10重量部が好ましい。
更に、太陽電池モジュールの作製の際に熱プレスなどを一定時間行うため、太陽電池用裏面保護シートが熱収縮を起こし、熱収縮に起因して太陽電池用裏面保護シートに皺が発生するなどの不具合を生じることがある。そこで、ガスバリアフィルムと封止層との間、又は積層ガスバリアフィルムの蒸着膜又は基材フィルムと封止層との間に、ガスバリアフィルムを熱から保護するために熱緩衝層が介在されていてもよい。熱緩衝層は、融点が160℃以上で且つ曲げ弾性率が500〜1500MPaであるポリオレフィン系樹脂からなる。
例えば、図6に示したように、蒸着膜3又は基材フィルム4と封止層11との間に熱緩衝層12が介在される。なお、図6では、蒸着膜3又は基材フィルム4上に、熱緩衝層12及び封止層11をこの順序で積層一体化させた場合を示した。
熱緩衝層を構成しているポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン、エチレン成分を50重量%以上含有するエチレンとα−オレフィンなどの他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。なお、α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ネオヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、プロピレン成分を50重量%含有するプロピレンとα−オレフィンなどの他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。なお、α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ネオヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
熱緩衝層を構成しているポリオレフィン系樹脂におけるJIS K7121に準拠して測定された融点は、低いと、ガスバリアフィルムを熱から保護できないことがあるので、160℃以上が好ましく、高すぎると、取扱いが困難となることがあるので、160〜175℃がより好ましい。
熱緩衝層を構成しているポリオレフィン系樹脂の曲げ弾性率は、低いと、ポリオレフィン系樹脂の融点が低すぎる傾向にあるため、積層シートを熱から保護できないことがあり、高いと、取扱いが困難となることがあるので、500〜1500MPaが好ましく、700〜1200MPaがより好ましい。なお、ポリオレフィン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7127に準拠して測定されたものをいう。
ガスバリアフィルムの何れか一方の面に封止層11を積層一体化する方法としては、特に限定されず、例えば、封止層11を構成する変性ポリプロピレン系樹脂及びシラン化合物を押出機に供給して溶融混練し、押出機からガスバリアフィルムの何れか一方の表面に押出ラミネートすることによって、ガスバリアフィルム上に封止層11を積層一体化することができる。
又、積層ガスバリアフィルムと封止層11との間に熱緩衝層12が介在している場合には下記の方法で、積層ガスバリアフィルム上に熱緩衝層12及び封止層11を積層一体化することができる。
先ず、熱緩衝層12を構成するポリオレフィン系樹脂を第一押出機に供給して溶融混練する一方、封止層11を構成する変性ポリプロピレン系樹脂及びシラン化合物を第二押出機に供給して溶融混練して共押出することによって、熱緩衝層12と封止層11とが積層一体化されてなる重合シートを製造する。次に、積層ガスバリアフィルムの何れか一方の面に重合シートをその熱緩衝層12が積層ガスバリアフィルムに対向した状態となるように汎用の接着剤を用いて積層一体化して、積層ガスバリアフィルム上に熱緩衝層12及び封止層11をこの順序で積層一体化することができる。
封止層11を有するガスバリアフィルム又は積層ガスバリアフィルムは、薄膜太陽電池を用いて太陽電池モジュールを製造するにあたって太陽電池用裏面保護シートとして好適に用いることができる。
図7に示したように、薄膜太陽電池Cは、透明基板13上に、アモルファスシリコン、ガリウム−砒素、銅−インジウム−セレン、化合物半導体などからなる太陽電池素子14が薄膜状に積層一体化されている。
薄膜太陽電池Cの透明基板13における太陽電池素子14の形成面上に、太陽電池用裏面保護シートAをその封止層11が透明基板13に対向した状態となるように重ね合わせて一体化することによって、薄膜太陽電池Cの太陽電池素子14を太陽電池用裏面保護シートAによって封止して太陽電池モジュールDを製造することができる(図7参照)。
本発明のガスバリアフィルムは、透明性、ガスバリア性、及び耐熱性に優れる。さらに、本発明のガスバリアフィルムは、アルミニウム箔などの金属箔を用いていないので、太陽電池用裏面保護シートとして用いた場合にあっても、発電素子に対して短絡などの障害を生じさせることがない。
本発明のガスバリアフィルムを示した縦断面図である。 本発明のガスバリアフィルムの他の一例を示した縦断面図である。 太陽電池モジュールの一例を示した模式縦断面図である。 本発明のガスバリアフィルムの他の一例を示した縦断面図である。 本発明の太陽電池用裏面保護シートを示した縦断面図である。 本発明の太陽電池用裏面保護シートの他の一例を示した縦断面図である。 本発明の太陽電池モジュールを示した縦断面図である。 実施例及び比較例で得られたガスバリアフィルムにおけるガスバリアフィルム中における微粒子の分散状態を撮影した写真である。
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
(実施例1)
板状無機粒子(ベーマイト:Sasol社製 商品名「Dispal 60」、平均サイズ:60nm、アスペクト比:20)100重量部にシラン化合物A(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン:東レダウコーニング社製 商品名「Z−6043」)1重量部を噴霧した後、80℃、30分乾燥させて、板状無機粒子に表面処理を施し、シラン変性板状無機粒子(平均サイズ:60nm、アスペクト比:20)を得た。
次に、シラン変性板状無機粒子23重量部とシクロオレフィン樹脂(トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエンと7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンとの開環重合体水素添加物:日本ゼオン社製 商品名「Zeonor 1600」、ガラス転移温度:163℃)77重量部とを混合した上で二軸押出機(東芝機械社製 商品名「TEM35B」)に供給して280℃にて溶融混練して吐出量50kg/時間にて押出してペレットを得た。このペレットを押出機で溶融混練して押出し、ガスバリアフィルム(厚み200μm)を得た。
(実施例2)
板状無機粒子(ベーマイト:河合石灰工業社製 商品名「セラシュールBMF」、平均サイズ:5μm、アスペクト比:45)100重量部にシラン化合物A(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン:東レダウコーニング社製 商品名「Z−6043」)1重量部を噴霧した後、80℃、30分乾燥させて、板状無機粒子に表面処理を施し、シラン変性板状無機粒子(平均サイズ:5μm、アスペクト比:45)を得た。
次に、シラン変性板状無機粒子18重量部とシクロオレフィン樹脂(トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエンと7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンとの開環重合体水素添加物:日本ゼオン社製 商品名「Zeonor 1600」、ガラス転移温度:163℃)82重量部とを混合した上で二軸押出機(東芝機械社製 商品名「TEM35B」)に供給して280℃にて溶融混練して吐出量50kg/時間にて押出してペレットを得た。このペレットを押出機で溶融混練して押出し、ガスバリアフィルム(厚み200μm)を得た。
(比較例1)
シラン変性板状無機粒子に代えて、表面処理をしていない板状ベーマイト微粒子(Sasol社製 商品名「Dispal 60」、平均サイズ:60nm、アスペクト比:20)23重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。
(比較例2)
シラン化合物Aに代えて、シラン化合物B(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:信越シリコーン社製 商品名「KBM−403」)を使用した以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。
(比較例3)
シラン化合物Aに代えて、パラトルエンスルホン酸を使用した以外は、実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。
(比較例4)
板状無機粒子に代えて、無機微粒子(河合石灰工業社製 商品名「セラシュールBMB」、平均サイズ:2μm、アスペクト比:1.5)を用いた以外は実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、比較例4において得られたシラン変性無機微粒子は、平均サイズが2μmであり、アスペクト比が1.5であった。
(比較例5)
板状無機粒子に代えて、無機微粒子(コープケミカル社製 商品名「MK−300」、平均サイズ:20μm、アスペクト比:5)を用いた以外は実施例1と同様にしてガスバリアフィルムを得た。なお、比較例5において得られたシラン変性無機粒子は、平均サイズが20μmであり、アスペクト比が5であった。
(評価)
上記実施例1〜2及び比較例1〜5で得られたガスバリアフィルムについて、TEMによる分散性観察、水蒸気透過性、透明性を下記の要領で評価し、その結果を表1に示した。
(分散性観察)
得られたガスバリアフィルムを透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子社製 商品名「JEM−1200EX II」)を用いてガスバリアフィルム中における微粒子の分散性を観察し、下記判断基準により分散状態を評価した。なお、ガスバリアフィルム中における微粒子の分散状態を図8に示した。
○・・・微粒子の凝集がなく、分散性が良好であった。
△・・・若干微粒子の凝集が見られたが、概ね分散性が良好であった。
×・・・微粒子の凝集が多く見られ、分散性が不良であった。
(水蒸気透過性)
得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率をJIS K 7126(差圧法)に準拠した差圧式のガスクロマトグラフ法により、ガス・蒸気等の透過率・透湿度の測定が可能なガス・蒸気透過率測定装置(GTRテック社製 商品名「GTR−100GW/30X」)を用いて温度40℃、相対湿度90%の条件下にて測定し、下記判断基準により水蒸気透過性を評価した。
○・・・水蒸気透過率が0.1g/m2・day未満であった。
△・・・水蒸気透過率が0.1g/m2・day以上で且つ0.15g/m2・day
未満であった。
×・・・水蒸気透過率が0.15g/m2・day以上であった。
(透明性)
得られたガスバリアフィルムの光線透過率を、ヘーズ測定器(日本電色工業社製 商品名「NDH2000」)を用いて測定し、下記基準により透明性を評価した。
◎・・・光線透過率が70%以上であった。
○・・・光線透過率が60%以上で且つ70%未満であった。
×・・・光線透過率が60%未満であった。
1 ガスバリアフィルム
2 接着剤
3 蒸着膜
4 基材フィルム
5 ポリフッ化ビニルフィルム層、フッ素系コーティング層
6 発電素子
7 封止材
8 封止材
9 ガラス板
10 エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム層
11 封止層
12 熱緩衝層
13 透明基板
14 太陽電池素子
A 太陽電池用裏面保護シート
B 太陽電池モジュール
C 薄膜太陽電池
D 太陽電池モジュール

Claims (4)

  1. シクロオレフィン系樹脂と、下記式(I)で示されるシラン化合物により表面処理され、アスペクト比が5〜50であり、且つ平均サイズが20nm〜10μmであるシラン変性板状無機粒子とを含有することを特徴とするガスバリアフィルム。
    1Si(OR23 (I)
    (式中、R1は脂環式エポキシ基を有する基であり、R2は炭素数が1〜5のアルキル基である。)
  2. シラン変性板状無機粒子は、板状無機粒子100重量部に、シラン化合物0.01〜10重量部を接触させて得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
  3. シラン変性板状無機粒子を、シクロオレフィン系樹脂100重量部に対して、3〜50重量部含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを用いたことを特徴とする太陽電池用裏面保護シート。
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