以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁ユニット4、室外熱交換器5、第2制御弁ユニット6、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFC−134a)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
車両用冷暖房装置1は、また、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。そして、この冷凍サイクルは、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として並列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。すなわち、冷房運転時および暖房運転時に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時にのみ冷媒が循環する第2冷媒循環通路、冷房運転時にのみ冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→第2制御弁ユニット6→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→第2制御弁ユニット6→室外熱交換器5→第1制御弁ユニット4→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→第1制御弁ユニット4→室外熱交換器5→第2制御弁ユニット6→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第2冷媒循環通路が開放された場合と第3冷媒循環通路が開放された場合とで逆転する。つまり、室外熱交換器5における冷媒の入口と出口は、第2冷媒循環通路が開放された場合と第3冷媒循環通路が開放された場合とで切り替わる。
具体的には、圧縮機2の吐出室につながる通路が分岐し、その一方である第1通路21が室内凝縮器3の入口につながり、他方である第2通路22が室外熱交換器5の一方の出入口につながっている。室内凝縮器3の出口につながる第3通路23は、その下流側で分岐し、その一方である第1分岐通路26が第4通路24を介して蒸発器7につながり、他方である第2分岐通路27が第5通路25を介して室外熱交換器5の他方の出入口につながっている。第4通路24と第5通路25とは、接続通路28により接続されている。また、第2通路22の中間部においてバイパス通路29が分岐し、アキュムレータ8ひいては圧縮機2につながっている。さらに、蒸発器7の出口につながる戻り通路30が、バイパス通路29と第2制御弁32(後述する)の下流側にて接続され、アキュムレータ8ひいては圧縮機2につながっている。
第1冷媒循環通路は、第1通路21,第3通路23,第1分岐通路26,第4通路24,戻り通路30を接続して構成される。第2冷媒循環通路は、第1通路21,第3通路23,第2分岐通路27,第5通路25,第2通路22,バイパス通路29を接続して構成される。第3冷媒循環通路は、第2通路22,第5通路25,接続通路28,第4通路24,戻り通路30を接続して構成される。そして、このような冷媒循環通路の切り替えを実現するために、圧縮機2と室外熱交換器5との接続部に第1制御弁ユニット4が設けられ、室内凝縮器3と室外熱交換器5と蒸発器7との接続部に第2制御弁ユニット6が設けられている。
車両用冷暖房装置1は、空気の熱交換が行われるダクト10を有し、そのダクト10における空気の流れ方向上流側から室内送風機12、蒸発器7、室内凝縮器3が配設されている。室内凝縮器3の上流側には、エアミックスドア14が回動自在に設けられ、室内凝縮器3を通過する風量と室内凝縮器3を迂回する風量との比率が調節される。また、室外熱交換器5に対向するように室外送風機16が配置されている。
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。この圧縮機2としては、レシプロ式、ロータリ式、スクロール式など、様々な形式の圧縮機を採用することができるが、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明については省略する。
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。エアミックスドア14の開度に応じて振り分けられた空気は、室内凝縮器3を通過する過程でその熱交換が行われる。
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外送風機16は、吸い込み式の送風機であり、軸流ファンをモータにより回転駆動することにより外気を導入する。室外熱交換器5は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、第2制御弁ユニット6を構成する各制御弁(後述する)の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。ダクト10の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア14の開度に応じて室内凝縮器3を通過するものと、室内凝縮器3を迂回するものとに振り分けられる。室内凝縮器3を通過する空気は、その通過過程で加熱される。室内凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが室内凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。例えば、ベント吹出口、フット吹出口、デフ吹出口等から車室内所定場所に向かって吹き出される。
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。その結果、圧縮機2の圧縮動作に支障をきたすこともない。一方、本実施形態では、その液相部の冷媒の一部を圧縮機2に供給できるようにされており、圧縮機2に必要量の潤滑オイルを戻すことができるようになっている。
第1制御弁ユニット4は、第1制御弁31および第2制御弁32を含む。第1制御弁31は、第2通路22を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流の有無によって弁部を開閉することにより第2通路22の開度を調整する。本実施形態では、第1制御弁31として、通電有無によって開閉する開閉弁(オン/オフ弁)が用いられる。一方、第2制御弁32は、バイパス通路29を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流値に応じて弁部の開度を調整することによりバイパス通路29の開度を調整する。本実施形態では、第2制御弁32として、通電有無によって開閉する開閉弁(オン/オフ弁)が用いられる。
なお、変形例においては、第2制御弁32は、前後差圧(第2制御弁32の上流側圧力と下流側圧力との差圧)が設定値(予め設定する開弁差圧)を超えると自律的に開弁する差圧弁であってもよい。あるいは、その前後差圧が供給電流値に応じた一定の値となるように弁部が自律的に動作する定差圧弁であってもよい。あるいは、弁部の開度が駆動力に応じた一定の開度となるように動作する比例弁であってもよい。その場合、弁部の開度が供給電流値に応じた一定の開度となるものでもよい。第2制御弁32は、また、供給電流に応じた一定の流量となるよう冷媒の流れを制御する流量制御弁であってもよい。あるいは、その上流側圧力が供給電流値に応じた一定の値となるように動作する定圧弁であってもよい。あるいは、室外熱交換器5の過熱度(スーパーヒート)を供給電流に応じた一定の過熱度となるよう冷媒の流れを制御する制御弁(「蒸発過熱度制御弁」)として構成してもよい。第1制御弁31および第2制御弁32は、それぞれアクチュエータとしてソレノイドを備える電磁弁であってもよいが、アクチュエータとしてステッピングモータ等の電動機を備える電動弁であってもよい。
第2制御弁ユニット6は、第1比例弁41(「調整弁」として機能する)および第2比例弁42(「複合弁」として機能する)を含む。第1比例弁41は、第1分岐通路26を開閉する弁部と、その弁部を駆動するアクチュエータを備え、弁部の開度が制御されることにより第1冷媒循環通路の開度を調整する。第2比例弁42は、第2分岐通路27を開閉する第1弁と、接続通路28を開閉する第2弁と、これら第1弁および第2弁を駆動する共通のアクチュエータを備える。ただし、第1弁と第2弁の一方が開弁されるときには他方が閉弁され、第1弁と第2弁とが同時にリニア制御されることがない。言い換えれば、同時にリニア制御されることがないため、一つのアクチュエータにて駆動制御することが可能となっている。本実施形態では、第2比例弁42のアクチュエータがソレノイドからなるが、変形例においてはステッピングモータからなるものでもよい。
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、制御部100により制御される。制御部100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部100には、車両用冷暖房装置1に設置された図示しない各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。制御部100は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部100は、第1制御弁ユニット4の各制御弁(第1制御弁31,第2制御弁32)の開閉制御、第2制御弁ユニット6の各制御弁(第1比例弁41,第2比例弁42)の開閉制御のほか、圧縮機2,室内送風機12,室外送風機16およびエアミックスドア14の駆動制御も実行する。
制御部100は、第2制御弁ユニット6の各制御弁の駆動回路に設定したパルス信号を出力する駆動信号出力部を有する。具体的には、制御部100にて演算され、設定されたデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部が設けられるが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。制御部100は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各比例弁の設定開度を決定し、各比例弁の開度がその設定開度となるようソレノイドに電流を供給する。なお、変形例として各比例弁のアクチュエータをステッピングモータにより構成する場合には、各比例弁の開度がその設定開度となるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。
このような制御により、図示のように、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。このとき、第2制御弁ユニット6における圧力は図示のようになる。すなわち、第1比例弁41および第2比例弁42の第1弁の上流側は高圧の上流側圧力P1となり、第1比例弁41および第2比例弁42の第2弁の下流側は低圧の下流側圧力P3となる。第2比例弁42の第1弁の下流側で第2弁の上流側は中間圧力P2となる。
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示し、(D)は特殊冷暖房運転時の状態を示している。ここでいう「冷房運転」は、冷房機能が暖房機能よりも大きく機能する運転状態であり、「暖房運転」は、暖房機能が冷房機能よりも大きく機能する運転状態である。また、「特定暖房運転」は、蒸発器7を機能させない暖房運転(実質的に冷房機能なし)である。「特殊冷暖房運転」は、室外熱交換器5を機能させない冷房運転および暖房運転である。
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜gはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。なお、同図の下段は図1に対応するが、エアミックスドア14等の図示を省略するなど便宜上簡略表記されている。
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁ユニット4において第1制御弁31が開弁され、第2制御弁32が閉弁される。一方、第2制御弁ユニット6において第1比例弁41が開弁される。また、第2比例弁42の第1弁が閉弁され、第2弁が開弁される。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、第1比例弁41、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように第1冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻り、他方で第1制御弁31、室外熱交換器5、第2比例弁42の第2弁、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように第3冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で室内凝縮器3を、他方で室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室内凝縮器3を経由した冷媒が第1比例弁41にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。また、室外熱交換器5を経由した冷媒が第2比例弁42の第2弁にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。このとき、蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入されるが、そのとき圧縮機2に潤滑オイルを戻すようになる。
一方、図2(B)に示すように、暖房運転時においては、第1制御弁ユニット4において第1制御弁31が閉弁され、第2制御弁32が開弁される。一方、第2制御弁ユニット6において第1比例弁41が開弁される。また、第2比例弁42の第1弁が開弁され、第2弁が閉弁される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、第1比例弁41、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように第1冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻り、他方で室内凝縮器3、第2比例弁42の第1弁、室外熱交換器5、第2制御弁32、アキュムレータ8を経由するように第2冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮される。そして、第1比例弁41にて断熱膨張された冷温・低圧の気液二相冷媒が、蒸発器7にて蒸発する。一方、第2比例弁42の第1弁にて断熱膨張された冷温・低圧の気液二相冷媒は、室外熱交換器5にて蒸発する。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が、第1比例弁41と第2比例弁42の第1弁の各開度の設定により制御される。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保でき、除湿機能を確保することができる。また、潤滑オイルを蒸発器7に滞留させることなく圧縮機2へ戻すことができる。
この暖房運転においては除湿運転を良好に行うことが必要となるが、その除湿制御の概要については以下のとおりである。すなわち、図2(B)に示すように、アキュムレータ8によって圧縮機2の入口の冷媒の状態が常に飽和蒸気圧曲線上に保持される(a点)。一方、蒸発器7の出口の冷媒の状態(e点)は、室外熱交換器5の出口の冷媒の状態(g点)とバランスするように変化する。すなわち、蒸発器7の出口における冷媒の湿り度は、室外熱交換器5の出口における冷媒の過熱度(スーパーヒート)とバランスする。このため、その室外熱交換器5の出口の過熱度が適正となるように第1比例弁41および第2比例弁42の第1弁のそれぞれの開度を調整することにより、蒸発器7における湿り度を確保し、その除湿性能を維持することができる。
制御部100は、例えば室外熱交換器5の出口の温度からその過熱度を算出し、これを適正値となるよう第1比例弁41および第2比例弁42の第1弁のそれぞれの開度を調整する。なお、本実施形態では、室外熱交換器5において過熱度が発生する例を示したが、蒸発器7において過熱度を発生させるべき運転モードがある場合には、逆に、蒸発器7の出口の温度からその過熱度を算出し、これを適正値となるよう第1比例弁41および第2比例弁42の第1弁のそれぞれの開度を調整することにより、室外熱交換器5における湿り度を調整することもできる。
また、図2(C)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁ユニット4において第2制御弁32が開弁され、第1制御弁31が閉弁される。一方、第2制御弁ユニット6において第1比例弁41が閉弁される。また、第2比例弁42の第1弁が開弁され、第2弁が閉弁される。このため、冷媒は蒸発器7を通過せず、蒸発器7は実質的に機能しなくなる。つまり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第2比例弁42の第1弁、室外熱交換器5、第2制御弁32、アキュムレータ8を経由するように第2冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、第2比例弁42の第1弁にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5を通過して蒸発される。室外熱交換器5を通過した冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に戻る。すなわち、冷温・低圧の冷媒が蒸発器7にて熱交換されないため、車室内に導入された空気は室内凝縮器3により加熱されるのみとなる。このように、一時的に蒸発器7に低温・低圧の液冷媒が供給されなくなるため、ダクト10を通過する空気により蒸発器7が温められる。制御部100は、外部温度等に応じて外部環境が極低温であると判定すると、暖房運転から特定暖房運転に適宜切り替えることにより、蒸発器7が凍結するのを防止または抑制する。
また、図2(D)に示すように、特殊冷暖房運転時においては、第1制御弁ユニット4において第1制御弁31および第2制御弁32が閉弁される。第2制御弁ユニット6において第1比例弁41が開弁される。また、第2比例弁42の第1弁および第2弁がともに閉弁される。このため、冷媒は室外熱交換器5を通過せず、室外熱交換器5は実質的に機能しなくなる。つまり、蒸発器7のみが蒸発器として機能する内気循環の状態となる。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第1比例弁41、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように第1冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、第1比例弁41にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7を通過して蒸発される。蒸発器7を通過した冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に戻る。車室内に導入された空気は、蒸発器7を経由して冷却・除湿され、室内凝縮器3により加熱されることでその温度調整が行われる。このような特殊冷暖房運転は、外部からの吸熱が困難な場合、例えば車両が極寒状況におかれた場合などに有効に機能する。
次に、第2制御弁ユニット6の具体的構成および動作について説明する。上述のように、第2制御弁ユニット6は、第1比例弁41および第2比例弁42を含む。まず、第1比例弁41の具体的構成および動作について説明する。図3は、第1比例弁41の具体的構成を表す断面図である。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
第1比例弁41は、弁本体101とソレノイド102とを組み付けて構成されている。第1比例弁41は、ソレノイド102への供給電流値に応じて任意の開度をとり得るパイロット作動式の電磁弁である。弁本体101は、有底円筒状のボディ103に主弁105とパイロット弁106とを中心軸に同軸状に収容して構成される。ボディ103の一方の側部には入口ポート110が設けられ、他方の側部には出口ポート112が設けられている。入口ポート110は冷凍サイクルにおける上流側通路(第1分岐通路26)に連通し、出口ポート112は冷凍サイクルの下流側通路(第4通路24)に連通する。
ボディ103の内部空間は、高圧通路114を介して入口ポート110に連通し、低圧通路115を介して出口ポート112に連通している。そして、高圧通路114と低圧通路115とを中心軸に沿って接続するように主弁孔120が設けられている。すなわち、ボディ103の内部空間は、主弁孔120が形成される区画壁によって高圧通路114側の圧力室116と低圧通路115側の圧力室118とに区画されている。また、主弁孔120の上流側開口部を囲むように、環状のシール部材121が嵌着されている。シール部材121は、弾性体(本実施形態ではゴム)からなり、取付リング122によりボディ103に固定されている。ボディ103の上半部の内部空間には、有底段付円筒状の主弁体124が配設されている。
主弁体124は、高圧通路114の側から主弁孔120に接離して主弁105を開閉する。主弁105は、いわゆるスプール弁となっており、主弁体124の下端部が主弁孔120に挿抜されるようにして主弁105を開閉する。すなわち、主弁体124は、閉弁状態で軸線方向に所定範囲ストロークすることが可能となり、シール部材121に係止されることによりその下死点が規定される。図示のような閉弁状態においては、主弁体124がシール部材121の上端面に密着するため、主弁孔120との間隙を介した冷媒の漏洩が確実に防止される。主弁体124の上端開口部には半径方向外向きに延出するフランジ部126が設けられ、ボディ103の内周面に摺動可能に支持されている。フランジ部126の外周面にはシール用のOリング128が嵌着されている。この主弁体124により、圧力室116が高圧室130と背圧室132とに区画される。
ボディ103の上端開口部を封止するように段付円板状の区画部材134が圧入されている。区画部材134は、下方に向けてその外径が段階的に縮径し、その下端部が背圧室132を上方から封止するように設けられている。区画部材134の下端部外周面とボディ103の内周面との間には、シール用のOリング136が介装されている。すなわち、主弁体124は、区画部材134との間に背圧室132を形成する。区画部材134の下端面は、主弁体124を係止してその上死点を規定する係止部として機能する。
区画部材134には軸線に沿って貫通孔138が設けられ、その貫通孔138の下端部によりパイロット弁孔140が形成され、上半部によりガイド孔142が形成されている。また、貫通孔138から半径方向外向きに連通路144が延設され、区画部材134の内外を連通させている。一方、ボディ103の周縁部近傍には、上端開口部と低圧通路115とを上下に連通させる連通路146が設けられている。これら連通路144と連通路146によりパイロット通路148が形成されている。
主弁体124の側部には、高圧室130と背圧室132とを連通させるオリフィス150(「リーク通路」として機能する)が設けられている。高圧室130の圧力(上流側圧力P1)は、このオリフィス150を通過することで背圧室132にて中間圧力Ppとなる。また、上流側圧力P1は主弁105を経て減圧されて圧力(下流側圧力P3)となる。中間圧力Ppは、パイロット弁106の開閉状態によって変化する。高圧室130と圧力室118とを主弁105を介してつなぐ通路が「主通路」を構成し、高圧室130と圧力室118とを背圧室132、パイロット弁106およびパイロット通路148を介してつなぐ通路が「副通路」を構成する。
パイロット弁106は、パイロット弁孔140に挿抜されるパイロット弁体152を有する。パイロット弁体152は、長尺円筒状の作動ロッド154の下端部に一体成形されている。作動ロッド154は、ソレノイド102の中心軸に沿って延在し、その下端部がガイド孔142に摺動可能に支持され、上端部がプランジャ172(後述する)に連結されている。パイロット弁体152は、そのテーパ面につながる縮径部を介して作動ロッド154の下端部に連設されている。作動ロッド154にはその軸線に沿って貫通孔156が形成されている。貫通孔156は、ソレノイド102の内部と背圧室132とを連通させる。貫通孔156の一端は、冷媒の導入口157としてパイロット弁体152の側部に開口し、他端はソレノイド102の内部空間に開口している。また、作動ロッド154の中間部にも、内外を連通させる連通孔158が形成されている。
パイロット弁体152の軸線方向中央部には、環状の弾性体(本実施形態ではゴム)からなるシール部材155が嵌着されている。図示のようなパイロット弁106の全閉状態においては、シール部材155がパイロット弁孔140の開口縁部に着座し、パイロット弁106を介した冷媒の漏洩を確実に防止するとともに、貫通孔156を介した冷媒の流通も遮断する。
背圧室132における主弁体124とパイロット弁体152との間には、スプリングの二重構造によるバランス機構が設けられている。すなわち、パイロット弁体152の下半部には、有底円筒状のばね受け部材160がその上底部にて接合されている。ばね受け部材160の下端部には、半径方向外向きにやや突出したフランジ部161が設けられている。また、円筒状のばね受け部材162が、ばね受け部材160に外挿されるように配設され、ばね受け部材の2重構造を構成している。ばね受け部材162の上端部には半径方向内向きにやや突出したフランジ部163が設けられ、下端部には半径方向外向きにやや突出したフランジ部164が設けられている。
そして、フランジ部161とフランジ部163との間にスプリング165(弾性部材)が介装され、フランジ部164と区画部材134との間にスプリング166(弾性部材)が介装されている。すなわち、スプリング165は、ばね受け部材160に外挿され、ばね受け部材162に内挿されるように配設されている。スプリング166は、ばね受け部材162に外挿され、主弁体124の上半部および区画部材134の下端部に内挿されるように配設されている。このようにしてスプリングの二重構造が実現されている。このような構成により、主弁体124はスプリング166によって閉弁方向に付勢され、パイロット弁体152はスプリング165により開弁方向に付勢されている。なお、ばね受け部材162は、スプリング166の荷重によって常に主弁体124に押し付けられており、主弁体124と一体に動作する。このように、ばね受け部材とスプリングとが同軸に異なる径を有して軸方向に重なるように背圧室132に収容されているため、比較的長いスプリング166を背圧室132にコンパクトに収容できる。なお、変形例においては、ばね受け部材162を主弁体124に圧入するなどして固定してもよい。
ここで、パイロット弁孔140は、オリフィス150よりも十分に大きい流路断面積を有する。本実施形態では、パイロット弁孔140がオリフィス150よりも少なくとも5倍、好ましくは10倍以上大きい流路断面積をもつ。このため、パイロット弁106が開弁すると、背圧室132からの冷媒の流出量が、背圧室132への冷媒の流入量よりも相当大きくなる。すなわち、図示のようにパイロット弁106が閉じた状態においては、中間圧力Ppは上流側圧力P1にほぼ等しい高圧に保持されるが、パイロット弁106が開弁すると、中間圧力Ppが速やかに低下して下流側圧力P3に近づくようになる。
一方、ソレノイド102は、ボディ103の上端部を封止するように取り付けられている。ソレノイド102とボディ103との間には、シールリング168が介装されている。ソレノイド102は、円筒状のスリーブ170と、スリーブ170の下部に固定された円筒状のコア171(「第2鉄心」、「固定鉄心」として機能する)と、スリーブ170内でコア171と軸線方向に対向配置されたプランジャ172(「第1鉄心」、「可動鉄心」として機能する)とを有する。スリーブ170の外周部にはボビン173が設けられ、そのボビン173に電磁コイル174が巻回されている。そして、電磁コイル174を外部から覆うようにケース176が設けられている。スリーブ170は、ケース176を軸線方向に貫通している。電磁コイル174からは通電用のハーネス178が引き出されている。
コア171は、円筒状をなし、その下部がケース176の貫通孔に圧入されるようにして固定されている。前述の作動ロッド154は、コア171をその軸線にそって貫通し、その上端部がプランジャ172の中央部に圧入されるようにして固定されている。すなわち、パイロット弁体152は、プランジャ172と一体的に動作する。
プランジャ172は、円筒状をなし、その軸線方向中央部に半径方向内向きに突出するばね受け部180が設けられている。そのばね受け部180の内周面に作動ロッド154の上端部が圧入されている。プランジャ172のばね受け部180とコア171の上端面との間にはスプリング182(「付勢部材」に該当する)が介装されている。また、プランジャ172のばね受け部180とスリーブ170の底部との間にはスプリング184(「付勢部材」に該当する)が介装されている。スプリング182は、プランジャ172を介してパイロット弁体152を閉弁方向に付勢する。スプリング184は、スプリング182の荷重調整用のスプリングである。
第1比例弁41を機能させる場合には、所望の最小開度を実現する最低電流(「開弁電流」ともいう。例えば全閉状態を実現する非通電)と所望の最大開度を実現する最大電流(例えば全開状態を実現する所定の電流値)とで定まる範囲でソレノイド102の供給電流が制御される。この制御範囲におけるプランジャ172のストロークよりもスプリング165の弾性変形量の範囲が大きくなるように、スプリング165の力学特性が設定されている。例えばスプリング165のばね定数を比較的小さくすることにより制御電流範囲に対応する弾性変形範囲を大きくすることができる。
以上のように構成された第1比例弁41は、ソレノイド102への供給電流値に応じた任意の開度で上流側から下流側への流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として機能する。以下、その動作について詳細に説明する。
図4は、第1比例弁の動作状態を表す説明図である。図4は、ソレノイド102がオンにされた制御状態を表している。なお、既に説明した図3は、ソレノイド102がオフにされた状態を表している。
ソレノイド102がオフにされた非通電状態では、第1比例弁41は、弁開度調整制御は行わずに閉弁状態を保持する(図2(C)参照)。すなわち図3に示すように、ソレノイド力が作用しないため、スプリング182によってパイロット弁体152が閉弁方向に付勢され、パイロット弁106が閉弁状態となる。このとき、背圧室132には上流側からオリフィス150を介して冷媒が導入されるため、中間圧力Ppは上流側圧力P1に近づく。その結果、主弁体124に閉弁方向の差圧(Pp−P3)が大きく作用するようになり、主弁105も閉弁状態となる。このとき、図示のようにシール部材155が区画部材134に着座することにより、パイロット弁106を密閉するとともに貫通孔156を介した冷媒の流通をも遮断する。このため、パイロット弁体152にも閉弁方向の差圧(Pp−Pso)が作用するようになり、パイロット弁106の安定した閉弁状態を維持することができる(Pso:ソレノイド102のスリーブ170内の圧力)。その結果、第1分岐通路26を介した蒸発器7への冷媒の供給は遮断される。
一方、ソレノイド102がオンにされた通電状態では、第1比例弁41は、その開度が供給電流値に応じた設定開度となるよう動作する(図2(A),(B),(D)参照)。すなわち、図4に示すように、ソレノイド力によってコア171とプランジャ172との間に吸引力が作用するため、パイロット弁体152が開弁方向に付勢され、パイロット弁106が開弁状態となる。それにより、中間圧力Ppが低下して下流側圧力P3に近づくため、主弁体124に開弁方向の差圧(P1−Pp)が大きく作用するようになり、主弁105も開弁状態となる。主弁体124は、差圧(P1−Pp)による開弁方向の力と、スプリング166による閉弁方向の力とがバランスする位置に保持され、主弁105の開度が設定開度に調整される。
このとき、パイロット弁体152は、パイロット弁孔140から離間してパイロット弁106を微小開度に保つように制御される。このとき、シール部材155が区画部材134から離間することにより、貫通孔156を介した冷媒の流通が許容される。また、パイロット弁孔140とガイド孔142の有効径が等しいため、パイロット弁体152に作用する中間圧力Ppによる力がキャンセルされる。パイロット弁体152は、ソレノイド102による開弁方向の吸引力と、スプリング182による閉弁方向の力と、スプリング165による開弁方向の力とがバランスする微少開度位置に保持される。
このようにして主弁105が設定開度に調整された状態において、主弁体124が開度Δdだけ閉弁方向(図の下方)に変位された場合、スプリング165の弾性力によりパイロット弁106は開弁方向(下方)に動作する。そうすると、背圧室132の中間圧力Ppは下流側圧力P3へと近づくため、その差圧の作用により主弁体124は開弁方向(上方)へと戻される。逆に、主弁体124が開度Δdだけ開弁方向(上方)に変位された場合には、スプリング165の変形量ひいてはスプリング力も減少される。よって、スプリング力の減少分が復元力として作用し、パイロット弁106は閉弁方向(上方)に動作する。その結果、中間圧力Ppが上昇し、主弁体124は閉弁方向(下方)へと戻される。このようにして主弁105の開度が制御電流に応じた大きさに保たれる。この制御状態においては、第1分岐通路26を介した蒸発器7への冷媒の供給が許容される。すなわち、第1比例弁41の開度に応じた流量の冷媒が蒸発器7に供給されるようになる。
第1比例弁41の設定開度は、ソレノイド102への供給電流値を変化させることにより変更することができる。本実施形態の第1比例弁41は、常閉型の電磁比例弁として構成されているため、制御電流を増加させると比例的に弁開度が増加する。本実施形態では、パイロット弁孔140がオリフィス150よりも十分に大きい流路断面積をもつことが、プランジャ172の変位量をごく小さく抑えることに寄与している。パイロット弁孔140が十分に大きい流路断面積をもつことにより、パイロット弁106の微小移動に対して背圧室132の中間圧力Ppの感度を大きくすることができる。つまり、比例制御状態においてパイロット弁106がわずかに開弁されたときに中間圧力Ppが急速に下流側圧力P3へと減圧される。
すなわち、パイロット弁孔140の流路断面積をオリフィス150のそれよりも相当大きくすることで、パイロット弁106の小さな開度変化によって中間圧力Ppを上流側圧力P1と下流側圧力P3との間で大きく変化させることを可能にしている。すなわち、主弁105の設定開度を変更するために供給電流値を変化させて中間圧力Ppを大きく変化させても、パイロット弁体152の変位量を小さく抑えることができる。このとき、中間圧力Ppの変化によって主弁体124に負荷される差圧が変化するため、これにバランスするスプリング荷重を発生させるようスプリング165の長さ、つまり主弁体124のストロークは大きく変化するようになる。すなわち、スプリング165の変形範囲が、コア171とプランジャ172との間隙の変動範囲よりも大きくなり、コア171とプランジャ172との相対移動ストロークよりも主弁体124のストロークが大きくなる。
次に、第2比例弁42の具体的構成および動作について説明する。図5は、第2比例弁42の具体的構成を表す断面図である。なお、第2比例弁42は、既に説明した第1比例弁41と同様の構成を含むため、その同様の構成については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。
第2比例弁42は、弁本体201とソレノイド102とを組み付けて構成されている。弁本体201は、有底円筒状のボディ203に主弁105(「第1弁」として機能する)、パイロット弁106、副弁205(「第2弁」として機能する)を中心軸に同軸状に収容して構成される。弁本体201にはさらに、副通路を切り替えるための差圧弁207(「第1の差圧弁」として機能する)が設けられている。ボディ203の入口ポート110と同じ側の側部には出入口ポート212が設けられている。入口ポート110は第2分岐通路27に連通し、出入口ポート212は第5通路25に連通し、出口ポート112は接続通路28に連通する(図1参照)。
ボディ203における主弁105と副弁205との間には、中間通路210が設けられている。中間通路210は、高圧通路114と低圧通路115との間に両通路を離間させるように設けられ、出入口ポート212に連通している。そして、高圧通路114と中間通路210とを中心軸に沿って接続するように主弁孔120が設けられ、中間通路210と低圧通路115とを中心軸に沿って接続するように副弁孔214が設けられている。すなわち、ボディ103の内部空間は、主弁孔120が形成される区画壁によって高圧通路114側の圧力室116と中間通路210側の圧力室117とに区画されている。また、副弁孔214が形成される区画壁によって中間通路210側の圧力室117と低圧通路115側の圧力室118とに区画されている。
主弁体224は、第1実施形態の主弁体124とは異なり、その下端部に軸線方向に内外を連通させるガイド孔226が設けられている。また、主弁体224の上面を封止するように封止部材228が圧入されており、その封止部材228と主弁体224とに囲まれた空間に圧力室229が形成されている。圧力室229には、圧力室117の中間圧力P2の冷媒がガイド孔226を介して導入される。
副弁205は、副弁孔214に接離してこれを開閉する副弁体230を有する。副弁体230はテーパ面を有するスプール弁の構成を有し、低圧通路115側から副弁孔214に挿抜されることにより副弁205を開閉する。すなわち、副弁体230は、閉弁状態で軸線方向に所定範囲ストロークすることができる。一方、副弁体230から上方に向けて長尺状の作動ロッド232が延設されている。作動ロッド232は、中間通路210を横断してガイド孔226を貫通し、その先端部が圧力室229に配置される。作動ロッド232の先端部には、円筒状のストッパ234が圧入されている。作動ロッド232がガイド孔226に沿って軸線方向に摺動することにより、主弁体224と副弁体230とが独立変位可能となっている。ただし、ストッパ234が主弁体224に係止されることでその独立変位は規制され、主弁体224と副弁体230とが一体動作するようになる。
副弁体230の軸線方向中央部には、環状の弾性体(本実施形態ではゴム)からなるシール部材236が嵌着されている。図示のような副弁205の全閉状態においては、シール部材236が副弁孔214の開口縁部に着座し、副弁205を介した冷媒の漏洩を確実に防止する。副弁体230の下半部は円筒状に拡径され、ボディ203の内壁に沿って摺動する。その円筒部には、内外を連通する連通孔238が形成されている。ボディ203の下端部中央にはばね受け部材240が圧入され、副弁体230とばね受け部材240との間には、副弁体230を閉弁方向に付勢するスプリング242が介装されている。
このスプリング242が配置される空間は小背圧室244となっており、連通孔238を介して下流側圧力P3が導入される。つまり、副弁体230の下面に下流側圧力P3が作用することを確保している。副弁体230は、その前後差圧(P2−P3)が設定差圧ΔPset1(開弁差圧)より大きくなったときに開弁する。設定差圧ΔPset1は、ばね受け部材240のボディ203への圧入量によって決まるスプリング242の荷重調整により設定される。すなわち、副弁205は、後述のように比例弁として機能するとともに差圧弁(第2の差圧弁)としても機能する。
差圧弁207は、中間通路210と低圧通路115とパイロット通路148との接続部に設けられ、第2比例弁42における副通路を切り替える。差圧弁207は、第1弁部251および第2弁部252を含む弁であり、段付円筒状のボディ250に共用弁体253を挿通するようにして構成されている。ボディ250の側部中央には、パイロット通路148に連通するポート254が設けられている。ボディ250の外周面におけるポート254の一方の側にOリング256が設けられ、他方の側にOリング258が設けられることで、ボディ250の外周面とボディ203との間隙を介した冷媒の漏洩が防止されている。
ボディ250内におけるポート254の一方の側に弁孔260が設けられ、その開口端部に弁座262が設けられている。また、ボディ250内におけるポート254の他方の側に弁孔264が設けられ、その開口端部に弁座266が設けられている。弁孔260と弁孔264とはその中心軸に同軸状に設けられている。共用弁体253は、弁孔260および弁孔264を貫通し、その一端側に差圧弁体270が設けられ、他端側に差圧弁体272が設けられている。本実施形態では、弁孔260と弁孔264の有効径が等しく構成されているため、パイロット通路148から導入された冷媒による共用弁体253に作用する圧力の影響がキャンセルされる。
差圧弁体270には環状の弾性体(本実施形態ではゴム)からなる弁部材274が嵌着され、その弁部材274が弁座262に着脱して第1弁部251を開閉する。また、差圧弁体272には環状の弾性体(本実施形態ではゴム)からなる弁部材276が嵌着され、その弁部材276が弁座266に着脱して第2弁部252を開閉する。ボディ250と差圧弁体270との間には、共用弁体253を第1弁部251の開弁方向(第2弁部252の閉弁方向)に付勢するスプリング278が介装されている。
共用弁体253は、その前後差圧(P2−P3)が設定圧力ΔPset2以下であれば、図示のように第1弁部251を開弁させ第2弁部252を閉弁させる状態を維持する。前後差圧(P2−P3)が設定差圧ΔPset2より大きくなると、共用弁体253がスプリング278の付勢力に抗して図の左方へ動作し、第1弁部251を閉弁させ第2弁部252を開弁させる。設定差圧ΔPset2は、スプリング278の荷重調整により設定される。本実施形態では、設定差圧ΔPset2が副弁205の設定差圧ΔPset1と概ね等しくなるように設定されている。このため、これらの設定差圧については設定差圧ΔPsetとも表記する。なお、副弁205の安定した開閉動作を維持するために、差圧弁207の設定差圧ΔPset2は、副弁205の設定差圧ΔPset1と等しいか、または設定差圧ΔPset1より小さいほうがよい(ΔPset2≦ΔPset1)。
共用弁体253の側面には連通溝280が設けられており、第1弁部251および第2弁部252の開閉状態に応じて中間通路210および低圧通路115の一方とパイロット通路148とを連通させる。すなわち、パイロット通路148は、図示のように第1弁部251が開弁状態にあるときには中間通路210に連通し、第2弁部252が開弁状態にあるときには低圧通路115に連通する。
このような構成において、高圧通路114と中間通路210とを主弁105を介してつなぐ通路が「第1主通路」を構成し、高圧通路114と中間通路210とを背圧室132、パイロット弁106、パイロット通路148および第1弁部251を介してつなぐ通路が「第1副通路」を構成する。また、中間通路210と低圧通路115とを副弁205を介してつなぐ通路が「第2主通路」を構成し、高圧通路114と低圧通路115とを背圧室132、パイロット弁106、パイロット通路148および第2弁部252を介してつなぐ通路が「第2副通路」を構成する。
以上のように構成された第2比例弁42は、ソレノイド102への供給電流値に応じた任意の開度で上流側から下流側への流れを制御可能なパイロット作動式の複合弁として機能する。以下、その動作について詳細に説明する。
図6および図7は、第2比例弁の動作状態を表す説明図である。図6は、ソレノイド102がオンにされた制御状態において差圧弁207の前後差圧が設定差圧よりも大きい状態(P2−P3>ΔPset)を示している。図7は、制御状態において前後差圧が設定差圧よりも小さい状態(P2−P3<ΔPset)を示している。なお、図6の制御状態は図2(A)に対応し、図7の制御状態は図2(B)および(C)に対応する。既に説明した図5は、ソレノイド102がオフにされた状態を表しており、図2(D)に対応する。
すなわち、図5に示すようにソレノイド102がオフにされた非通電状態では、第2比例弁42は、弁開度調整制御は行わずに閉弁状態を保持する。すなわちソレノイド力が作用しないため、パイロット弁106が閉弁状態となる。このとき、背圧室132には上流側からオリフィス150を介して冷媒が導入されるため、中間圧力Ppは上流側圧力P1に近づく。その結果、主弁体124に閉弁方向の差圧(Pp−P2)が大きく作用し、主弁105も閉弁状態となる。また、主弁105の閉弁により中間圧力P2が高まらないため、差圧(P2−P3)が設定差圧ΔPsetよりも小さく、副弁205も閉弁状態となる。また、差圧弁207は第1弁部251の開弁状態が維持される。その結果、第2冷媒循環通路による冷媒の循環および第3冷媒循環通路による冷媒の循環はいずれも遮断される(図2(D)参照)。
一方、ソレノイド102がオンにされた通電状態では、ソレノイド力によってコア171とプランジャ172との間に吸引力が作用するため、パイロット弁体152が開弁方向に付勢され、パイロット弁106が開弁状態となる。それにより、中間圧力Ppが低下するため、主弁体224に開弁方向の差圧(P1−Pp)が作用するようになり、主弁105が開弁方向に変位する。主弁体224および副弁体230はスプール弁であるため、それぞれ所定範囲の閉弁ストロークを有し、所定ストローク変位しなければ開弁状態とはならない。主弁105または副弁205は、その開度が供給電流値に応じた設定開度となるよう動作する(図2(A)〜(C)参照)。
すなわち、図6に示すように、差圧(P2−P3)が設定差圧ΔPsetよりも大きい制御状態においては、副弁体230がスプリング242の付勢力に抗して開弁方向に動作し、副弁205が開弁する。また、差圧弁207においては第2弁部252が開弁し、第1弁部251が閉弁する。このとき、ストッパ234が主弁体224に係止されることにより副弁体230と主弁体224とが軸線方向に互いに引き合うような形で一体動作し、主弁105は閉弁状態を維持する。すなわち、副弁体230は、主弁体224と一体に動作し、差圧(P1−Pp)による閉弁方向の力と、スプリング166による開弁方向の力と、差圧(P2−P3)による開弁方向の力と、スプリング242による閉弁方向の力とがバランスする位置に保持され、それにより、副弁205が設定開度に維持される。この設定開度は、ソレノイド102にへの供給電流値に応じて比例的に変化する。その結果、第2冷媒循環通路による冷媒の循環はほぼ遮断されるが(スプール弁の間隙を介した若干の漏れはあってよい)、第3冷媒循環通路による冷媒の循環は許容される(図2(A)参照)。
一方、図7に示すように、差圧(P2−P3)が設定差圧ΔPsetよりも小さい制御状態においては、スプリング242の付勢力により副弁205が閉弁状態を維持する。差圧弁207は第1弁部251の開弁状態が維持される。このとき、ストッパ234は主弁体224の動作を規制しないため、主弁体224は、副弁体230とは独立に動作する。すなわち、主弁105は、基本的に第1実施形態における第1比例弁41の主弁105と同様の動作をするようになる。
ソレノイド102への供給電流値が最大である場合、主弁体224が上死点まで変位し、主弁105は全開状態となる。一方、ソレノイド102への供給電流値が最大電流値と最小電流値との間の所定電流値に設定された場合、主弁体224は、その所定電流値に対応する位置に保持される。すなわち、主弁105は、ソレノイド102への供給電流値に応じた設定開度となるよう比例的に動作する。その結果、第3冷媒循環通路による冷媒の循環は遮断されるが、第2冷媒循環通路による冷媒の循環は許容される(図2(B),(C)参照)。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、第2制御弁ユニットの第1比例弁と第2比例弁42とが一体化された点を除き、第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図8は、第2実施形態に係る第2制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
第2制御弁ユニット206は、図1に示した第1比例弁41と第2比例弁42とを一体化したものに相当する。第2制御弁ユニット206は、共用のボディ303に対し、第1比例弁41と第2比例弁42を隣接させるように組み付けて構成される。ボディ303は、第3通路23につながる入口ポート110、第5通路25につながる出入口ポート212、および第4通路24につながる出口ポート112を有する。ボディ303は、隔壁310によって第1比例弁41として機能する領域と第2比例弁42として機能する領域とに区画されている。
第1比例弁41は、符号にて示すように、図3に示したものとほぼ同様の構成を有する。また、第2比例弁42も符号にて示すように、図5に示したものとほぼ同様の構成を有する。なお、各比例弁の高圧室130は、図示が一部省略されている(図示の断面には表示されない)高圧通路114の部分を介して互いに連通接続されている。制御部100は、第1比例弁41および第2比例弁42のそれぞれを通電制御することにより各弁を開閉し、図2に示したものと同様の制御を実現する。図示のように、第1比例弁41と第2比例弁42とは多くの共通した構成部分を有する。言い換えれば、第1比例弁41および第2比例弁42の一方の構成を少し変更することで他方を構成することができ、これら異なる種類の制御弁の設計および製造が簡素化されるといったメリットがある。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、第2比例弁のアクチュエータとしてステッピングモータが採用された点で第1実施形態と異なるが、共通部分も多い。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図9は、第3実施形態に係る第2比例弁の具体的構成を表す断面図である。
第2比例弁42は、弁本体301とアクチュエータ302とを組み付けて構成されている。アクチュエータ302は、電気信号のパルスに応じて予め定められた回転角だけ回転するステッピングモータを含んで構成され、その回転量は制御部100からの制御パルスによって制御される。アクチュエータ302には、ステッピングモータの回転によって駆動軸305が回転するとともに並進するギア機構が内蔵されている。なお、このようなステッピングモータとしては公知のものを採用することができるため、その詳細な説明については省略する。
主弁体324が駆動軸305の先端部に固定されており、アクチュエータ302の駆動により主弁105の開度が任意の開度に制御される。一方、副弁205の動作については第1実施形態と同様である。このような構成によれば、アクチュエータ302の駆動により主弁105が直接制御されるため、パイロット機構を設ける必要がない。このため、第1実施形態のように主弁105を駆動するための複雑な機構が不要となり、差圧弁207を設ける必要もなくなる。したがって、第2比例弁342を簡易かつ低コストに製造することが可能となる。なお、本実施形態では述べないが、第1比例弁についても同様にアクチュエータ302により駆動するように構成してもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。